(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】紫外線波長変換物質、炭化水素油及び/又は直鎖シリコーン油、並びに粉末を含有する肌用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/67 20060101AFI20250328BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20250328BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20250328BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20250328BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20250328BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20250328BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20250328BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20250328BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20250328BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20250328BHJP
A61K 8/87 20060101ALI20250328BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20250328BHJP
A61K 8/894 20060101ALI20250328BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20250328BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20250328BHJP
【FI】
A61K8/67
A61K8/02
A61K8/19
A61K8/25
A61K8/27
A61K8/29
A61K8/31
A61K8/49
A61K8/64
A61K8/81
A61K8/87
A61K8/891
A61K8/894
A61Q17/04
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2020076747
(22)【出願日】2020-04-23
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185856
【氏名又は名称】朝倉 栄二
(72)【発明者】
【氏名】杉原 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 和之
(72)【発明者】
【氏名】金丸 哲也
(72)【発明者】
【氏名】レノ ジレ
(72)【発明者】
【氏名】ビアンカ マッカーシー
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-006727(JP,A)
【文献】特開2019-065010(JP,A)
【文献】特開2019-137679(JP,A)
【文献】特開平06-032723(JP,A)
【文献】特開2015-187101(JP,A)
【文献】特表2018-512063(JP,A)
【文献】特開平04-054110(JP,A)
【文献】特開2009-209093(JP,A)
【文献】特開2018-131422(JP,A)
【文献】特開2015-174833(JP,A)
【文献】特開平05-117127(JP,A)
【文献】特開2013-216590(JP,A)
【文献】国際公開第2019/032059(WO,A1)
【文献】特開2018-065780(JP,A)
【文献】特開2005-314670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 31/00-33/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)紫外線波長変換物質、(B)合計の含有量が15重量%以上の炭化水素油及び/又は直鎖シリコーン油を含み、かつ(C)粉末の合計の含有量が0~65重量%であり、
前記(A)紫外線波長変換物質が、フィコビリ蛋白
、βカロテン、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB2誘導体、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ナイアシン
、クチナシ色素、ベニバナ色素、ウコン色素、コチニール色素、シソ色素、赤キャベツ色素
、キノイド、ポルフィリン類、アントシアニン類
、赤色401号、赤色227号、赤色504号、赤色218号、橙色205号P
、黄色5号、緑色201号、ピラニンコンク、青色1号、塩酸2,4-ジアミノフェノキシエタノール、アリズリンパープルSS、紫色401号、黒色401号、へリンドンピンク、黄色401号、ベンチジンエローG、青色404号
、メタアミノフェノール、非晶質シリカ粒子とセリウムとリン及び/又はマグネシウムとを含む青色蛍光体、アルカリ土類金属硫化物とガリウム化合物との混晶物にユーロピウムを賦活した化合物を含む赤色蛍光体、酸化亜鉛蛍光体、チタン酸マグネシウム蛍光体、並びにリン酸カルシウム蛍光体から選ばれる1又は複数種を含み、かつ、前記ビタミンB2誘導体が、酢酸リボフラビンエステル、酪酸リボフラビン、リン酸リボフラビン又はリン酸リボフラビンのナトリウム若しくはモノジエタノールアミンの塩、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、リボフラビンテトラ酪酸エステル、及びリボフラビンテトラニコチン酸エステルから選択される少なくとも一種であり、
前記(B)炭化水素油及び/又は直鎖シリコーン油が、イソドデカン、イソヘキサデカン、水添ポリデセン、デカメチルテトラシロキサン及びメチルポリシロキサンから選ばれる1又は複数種を含み、
前記(C)粉末は、ポリメタクリル酸メチル、架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体、シリカ、タルク、スターチ、及びポリウレタンから選択される少なくとも一種である、
肌用組成物。
【請求項2】
(A)紫外線波長変換物質、(B)合計の含有量が15重量%以上の炭化水素油及び/又は直鎖シリコーン油、並びに(D)紫外線吸収剤及び/又は(E)紫外線散乱剤を含み、かつ(C)粉末の合計の含有量が0~65重量%であり、
前記(A)紫外線波長変換物質が、フィコビリ蛋白、ビタミンA、βカロテン、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB2誘導体、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ナイアシン、クチナシ色素、ベニバナ色素、ウコン色素、コチニール色素、シソ色素、赤キャベツ色素、キノイド、ポルフィリン類、アントシアニン類、赤色401号、赤色227号、赤色504号、赤色218号、橙色205号P、黄色5号、緑色201号、ピラニンコンク、青色1号、塩酸2,4-ジアミノフェノキシエタノール、アリズリンパープルSS、紫色401号、黒色401号、へリンドンピンク、黄色401号、ベンチジンエローG、青色404号、メタアミノフェノール、非晶質シリカ粒子とセリウムとリン及び/又はマグネシウムとを含む青色蛍光体、アルカリ土類金属硫化物とガリウム化合物との混晶物にユーロピウムを賦活した化合物を含む赤色蛍光体、酸化亜鉛蛍光体、チタン酸マグネシウム蛍光体、並びにリン酸カルシウム蛍光体から選ばれる1又は複数種を含み、かつ、前記ビタミンB2誘導体が、酢酸リボフラビンエステル、酪酸リボフラビン、リン酸リボフラビン又はリン酸リボフラビンのナトリウム若しくはモノジエタノールアミンの塩、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、リボフラビンテトラ酪酸エステル、及びリボフラビンテトラニコチン酸エステルから選択される少なくとも一種であり、
前記(B)炭化水素油及び/又は直鎖シリコーン油が、イソドデカン、イソヘキサデカン、水添ポリデセン、デカメチルテトラシロキサン及びメチルポリシロキサンから選ばれる1又は複数種を含み、
前記(C)粉末は、ポリメタクリル酸メチル、架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体、シリカ、タルク、スターチ、及びポリウレタンから選択される少なくとも一種である、
肌用組成物。
【請求項3】
(A)紫外線波長変換物質、(B)合計の含有量が15重量%以上の炭化水素油及び/又は直鎖シリコーン油、並びに分散剤を含み、かつ(C)粉末の合計の含有量が0.01~65重量%であり、
前記(A)紫外線波長変換物質が、フィコビリ蛋白、ビタミンA、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB2誘導体、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ナイアシン、サリチル酸、クチナシ色素、ベニバナ色素、ウコン色素、コチニール色素、シソ色素、赤キャベツ色素、カロテノイド、キノイド、ポルフィリン類、ポリフェノール類、赤色401号、赤色227号、赤色504号、赤色218号、橙色205号P、黄色4号、黄色5号、緑色201号、ピラニンコンク、青色1号、塩酸2,4-ジアミノフェノキシエタノール、アリズリンパープルSS、紫色401号、黒色401号、へリンドンピンク、黄色401号、ベンチジンエローG、青色404号、赤色104号、メタアミノフェノール、非晶質シリカ粒子とセリウムとリン及び/又はマグネシウムとを含む青色蛍光体、アルカリ土類金属硫化物とガリウム化合物との混晶物にユーロピウムを賦活した化合物を含む赤色蛍光体、酸化亜鉛蛍光体、チタン酸マグネシウム蛍光体、並びにリン酸カルシウム蛍光体から選ばれる1又は複数種を含み、かつ、前記ビタミンB2誘導体が、酢酸リボフラビンエステル、酪酸リボフラビン、リン酸リボフラビン又はリン酸リボフラビンのナトリウム若しくはモノジエタノールアミンの塩、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、リボフラビンテトラ酪酸エステル、及びリボフラビンテトラニコチン酸エステルから選択される少なくとも一種であり、
前記(B)炭化水素油及び/又は直鎖シリコーン油が、イソドデカン、イソヘキサデカン、水添ポリデセン、デカメチルテトラシロキサン及びメチルポリシロキサンから選ばれる1又は複数種を含み、
前記(C)粉末は、ポリメタクリル酸メチル、架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体、シリカ、タルク、スターチ、及びポリウレタンから選択される少なくとも一種であり、
前記分散剤が、PEG-10ジメチコン、ビスブチルジメチコンポリグリセリル-3、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、イソステアリン酸、もしくはカルボキシデシルトリシロキサン、又はこれらの2以上の組み合わせを含む、
肌用組成物。
【請求項4】
前記紫外線波長変換物質がビタミンB2及び/又はその誘導体を含む、請求項1
~3のいずれか一項に記載の肌用組成物。
【請求項5】
(A‘)ビタミンB2及び/又はその誘導体、(B)合計の含有量が15重量%以上の炭化水素油及び/又は直鎖シリコーン油を含み、かつ(C)粉末の合計の含有量が0~65重量%であり、
前記誘導体は、酢酸リボフラビンエステル、酪酸リボフラビン、リン酸リボフラビン又はリン酸リボフラビンのナトリウム若しくはモノジエタノールアミンの塩、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、リボフラビンテトラ酪酸エステル、及びリボフラビンテトラニコチン酸エステルから選択される少なくとも一種であり、
前記(B)炭化水素油及び/又は直鎖シリコーン油が、イソドデカン、イソヘキサデカン、水添ポリデセン、デカメチルテトラシロキサン及びメチルポリシロキサンから選ばれる1又は複数種を含み、
前記(C)粉末は、ポリメタクリル酸メチル、架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体、シリカ、タルク、スターチ、及びポリウレタンから選択される少なくとも一種である、
肌用組成物。
【請求項6】
前記ビタミンB2及び/又はその誘導体の合計の含有量が0.005~10重量%である、請求項
4又は
5に記載の肌用組成物。
【請求項7】
さらに分散剤を含み、かつ、前記分散剤が、PEG-10ジメチコン、ビスブチルジメチコンポリグリセリル-3、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、イソステアリン酸、もしくはカルボキシデシルトリシロキサン、又はこれらの2以上の組み合わせを含む、請求項1
、2、4~
6のいずれか1項に記載の肌用組成物。
【請求項8】
さらに(D)紫外線吸収剤及び/又は(E)紫外線散乱剤を含む、請求項1
、3~
7のいずれか1項に記載の肌用組成物。
【請求項9】
油性組成物である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の肌用組成物。
【請求項10】
日焼け止め化粧料である、請求項1~
9のいずれか1項に記載の肌用組成物。
【請求項11】
蛍光強度増大効果を示す、請求項1~
10のいずれか1項に記載の肌用組成物。
【請求項12】
細胞賦活効果を示す、請求項1~
11のいずれか1項に記載の肌用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,細胞賦活作用を有する、紫外線波長変換物質、炭化水素油及び/又は直鎖シリコーン油、並びに粉末を含有する肌用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線は体内にフリーラジカルを生成することにより、皮脂の酸化や細胞DNAの傷害を引き起こすとされている。紫外線のこのような作用による皮膚に対する弊害としては,例えば,皮膚癌,光老化,しみ,しわ,炎症といった悪影響があり,健康や美容の観点からも好ましくない。紫外線の利用としては殺菌効果を目的とするもの等が存在するものの,紫外線による弊害とのバランスを考えると,紫外線を積極的に利用するよりもむしろ防御することに焦点が当てられているのが現状である。
【0003】
よって,紫外線から肌を防御するための方策が数多く取られている。例えば,日焼け止め剤の使用や,日光に当たらないような屋内での活動,UVカット加工された帽子や衣類,紫外線カットフィルムの使用等があげられる。
【0004】
例えば特許文献11にはリボフラビン酪酸エステル、タルク等の粉末、及び流動パラフィン等の油分を含む化粧料の記載があるが、リボフラビン酪酸エステルは黄色の着色顔料として記載されており、細胞賦活効果を奏するための紫外線波長変換物質ではなく、本発明とは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6424656号公報
【文献】特許第6361416号公報
【文献】国際公開第2018/004006号
【文献】特開2018-131422号公報
【文献】特開平05-117127号公報
【文献】特許第4048420号公報
【文献】特許第4677250号公報
【文献】特許第3303942号公報
【文献】特開2017-88719号公報
【文献】国際公開第2018/117117号
【文献】特開平04-054110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は,紫外線波長変換物質及び油分を含む、紫外線を利用した細胞賦活作用を有する新規な肌用組成物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは,紫外線を皮膚に対し有用に利用できるよう鋭意研究を行った。その結果,細胞賦活作用に優れた、紫外線波長変換物質及び油分を含有する肌用組成物に想到した。
【0008】
本願は,以下の発明を提供する。
(1)(A)紫外線波長変換物質、(B)合計の含有量が10重量%以上の炭化水素油及び/又は直鎖シリコーン油を含み、かつ(C)粉末の合計の含有量が0~65重量%である、肌用組成物。
(2)前記紫外線波長変換物質がビタミンB2及び/又はその誘導体を含む、(1)に記載の肌用組成物。
(3)(A‘)ビタミンB2及び/又はその誘導体、(B)合計の含有量が10重量%以上の炭化水素油及び/又は直鎖シリコーン油を含み、かつ(C)粉末の合計の含有量が0~65重量%である、肌用組成物。
(4)前記ビタミンB2及び/又はその誘導体の合計の含有量が0.005~10重量%である、(2)又は(3)に記載の肌用組成物。
(5)前記(B)炭化水素油及び/又は直鎖シリコーン油が、イソドデカン、イソヘキサデカン、水添ポリデセン、デカメチルテトラシロキサン及びメチルポリシロキサンから選ばれる1又は複数種を含む、(1)~(4)のいずれか1項に記載の肌用組成物。
(6)さらに(D)紫外線吸収剤及び/又は(E)紫外線散乱剤を含む、(1)~(5)のいずれか1項に記載の肌用組成物。
(7)油性組成物である、(1)~(6)のいずれか1項に記載の肌用組成物。
(8)日焼け止め化粧料である、(1)~(7)のいずれか1項に記載の肌用組成物。
(9)蛍光強度増大効果を示す、(1)~(8)のいずれか1項に記載の肌用組成物。
(10)細胞賦活効果を示す、(1)~(9)のいずれか1項に記載の肌用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る紫外線波長変換物質は,紫外線を有効活用して皮膚細胞を賦活させることに適しており,皮膚に好ましい作用を奏することができ、本発明の肌用組成物の成分組成は紫外線波長変換物質が紫外線を可視光(蛍光)に変換するために適している。従来,紫外線は皮膚に好ましくないため,皮膚をなるべく紫外線に当てないような対策を採るのが当分野の技術常識である。一方,本発明は紫外線波長変換物質が紫外線を逆に利用して細胞を賦活することにより、皮膚に好ましい作用を与えるという知見に基づいており,非常に驚くべきものである。従って,本発明に係る肌用組成物は,これまで美容や健康上の理由よりなるべく紫外線を避けていた者であっても積極的に外出する気分になれるといった生活の質の向上にもつながることもある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図2は,実験1における各紫外線を使用してUVを照射した際の細胞活性を示す。縦軸は,相対蛍光強度(au)を示す。
【
図3】
図3は,実験2における各濃度のC-フィコシアニンを使用して各強度のUVを照射した際の細胞活性を,相対蛍光強度(au)として示す。
【
図5】
図5は,実験3において細胞活性を一旦低下させた細胞にC-フィコシアニンを使用してUVを照射した際の細胞活性を,相対蛍光強度(au)として示す(P検定)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体的な実施の形態に即して詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
【0012】
なお、本開示で引用する特許公報、特許出願公開公報、及び非特許文献等は、何れもその全体が援用により、あらゆる目的において本開示に組み込まれるものとする。
【0013】
本開示において、数値に対して適用された場合の「~」とは、規定された基準値以上で、かつ規定された基準値以下の範囲に入る値の範囲を指す。
【0014】
(A)紫外線波長変換物質
本発明の肌用組成物は,紫外線波長変換物質を有効成分として含有する。紫外線波長変換物質とは,入射光に含まれる紫外線の波長を変換して前記紫外線の波長よりも長い波長の出射光を放出する物質を指す。有機紫外線波長変換物質とは、有機化合物である紫外線波長変換物質を指し、無機紫外線波長変換物質とは、無機化合物である紫外線波長変換物質を指す。
【0015】
紫外線は,UVA,UVB,UVC等を含んでもよい。ある実施形態では,紫外線は,200nm~400nmにピーク波長を有する光である。また,例えば太陽光といった入射光に紫外線が含まれていてもよい。あるいは,入射光が紫外線であってもよく,人工的に生成された紫外線を用いてもよい。
【0016】
紫外線波長変換物質により放出される出射光は,紫外線よりも波長が長く,好ましくは500nm~700nmにピーク波長を有する。出射光は,例えば,限定されないものの,510nm,520nm,530nm,540nm,550nm,560nm,570nm,580nm,590nm,600nm,610nm,620nm,630nm,640nm,650nm,660nm,670nm,680nm,690nm,700nm,あるいはこれらの数値の任意の範囲内に1又は複数のピークを有してもよいし,あるいは,赤色光,橙色光,緑色光,青色光等であってもよい。ある実施形態では,紫外線波長変換物質は,200nm~400nmの励起光で励起した際に発する光の主波長が500nm~700nmを示す。
【0017】
紫外線波長変換物質の例として,以下の成分があげられる:フィコシアニン(アロフィコシアニン,C-フィコシアニン,R-フィコシアニン),フィコエリスロシアニン,フィコエリスリン(B-フィコエリスリン,b-フィコエリスリン,C-フィコエリスリン,R-フィコエリスリン)等のフィコビリ蛋白;ビタミンA,βカロテン,ビタミンK,ビタミンB1,ビタミンB2,ビタミンB6,ビタミンB12,葉酸,ナイアシン,サリチル酸,リコピン,クチナシ色素,ベニバナ色素,ウコン色素,コチニール色素,シソ色素,赤キャベツ色素,フラボノイド,カロテノイド,キノイド,ポルフィリン類,アントシアニン類,ポリフェノール類等の天然由来又は合成成分;赤色401号,赤色227号,赤色504号,赤色218号,橙色205号P,黄色4号,黄色5号,緑色201号,ピラニンコンク,青色1号,塩酸2,4-ジアミノフェノキシエタノール,アリズリンパープルSS,紫色401号,黒色401号,へリンドンピンク,黄色401号,ベンチジンエローG,青色404号,赤色104号,メタアミノフェノール等の色素;無機化合物にドープし蛍光を持たせた蛍光体,例えば,特許第6424656号に記載の非晶質シリカ粒子と,セリウムと,リン及び/又はマグネシウムとを含む青色蛍光体及び特許第6361416号に記載のアルカリ土類金属硫化物とガリウム化合物との混晶物にユーロピウムを賦活した化合物を含む赤色蛍光体,国際公開第2018/004006号に記載の酸化亜鉛の蛍光体,特開2018-131422号に記載の酸化亜鉛の蛍光体;特開平5-117127号に記載の無機蛍光体;等があげられる(以下、酸化亜鉛に由来する蛍光体を「酸化亜鉛蛍光体」という。)。ある実施形態では,無機蛍光体は,ZnO:Zn,Zn1+z,ZnO1-xのように表すことができる酸化亜鉛を国際公開第2018/004006号に記載の,例えば硫化亜鉛,硫酸亜鉛等の硫化塩及び/又は硫酸塩といった硫黄含有化合物でドープした蛍光体,MgTiO3,Mg2TiO4といったチタン酸マグネシウムをマンガンでドープしたチタン酸マグネシウムの蛍光体(以下、チタン酸マグネシウムに由来する蛍光体を「チタン酸マグネシウム蛍光体」という。),及びCa(H2PO4)2,CaHPO4,Ca3(PO4)2といったリン酸カルシウムをセリウムでドープしたリン酸カルシウム蛍光体から選択される1種又は複数種の蛍光体である。
【0018】
さらに、無機蛍光体である無機紫外線波長変換物質は、表面処理がなされていてもよい。表面処理は、例えば、シラン化合物処理(オクチルトリエトキシラン等)、シリコーン化合物処理、フッ素変性シリコーン化合物処理、フッ素化合物処理、高級脂肪酸処理(ステアリン酸等)、高級アルコール処理、脂肪酸エステル処理、金属石鹸処理、アミノ酸処理、アルキルフォスフェート処理等があげられる。
【0019】
紫外線波長変換物質は,動物,植物,藻類等の天然物から抽出等の方法により得ても,化学的な合成といった人工的な方法により得てもよい。例えば,フィコビリ蛋白は,スピルリナ(Spirulina platensis)等の藍藻類,チノリモ(Porphyridium purpureum)等の紅藻類といった藻類を,例えば特許第4048420号,特許第4677250号,特許第3303942号等に記載の方法で抽出することにより調製してもよい。酸化亜鉛蛍光体は,例えば国際公開第2018/004006号,特開2018-131422号,特開平5-117127号に記載の方法により製造してもよい。チタン酸マグネシウム蛍光体は,特開2017-88719号に記載の方法により製造してもよい。リン酸カルシウム蛍光体は,国際公開第2018/117117号に記載の方法により製造してもよい。
【0020】
これらの紫外線波長変換物質は,本発明の波長変換効果を損なわない限り,上で例示した成分から構成されてもよく,含まれていてもよく,単体で使用しても複数種を混合してもよい。例えば,上記フィコビリ蛋白や無機物蛍光体に他の紫外線波長変換物質,例えば,ビタミンB(ビタミンB1,ビタミンB2,ビタミンB6,ビタミンB12等)を混合し相乗的な効果を目指してもよい。しかしながら,これらの成分は例示であり本発明の波長変換効果を奏するいかなる物質も使用可能である。
【0021】
紫外線波長変換物質であるビタミンB2は、紫外線波長変換物質である限りその誘導体であってもよい。ビタミンB2誘導体としては、例えば、酢酸リボフラビンエステル、酪酸リボフラビン、リン酸リボフラビン(ナトリウム又はモノジエタノールアミンの塩であってもよい)、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、リボフラビンテトラ酪酸エステル、リボフラビンテトラニコチン酸エステルがあげられ、また、リボフラビンの立体異性体であるリキソフラビンの誘導体であってもよい。
【0022】
また,本発明の化粧料における紫外線波長変換物質の含有量は本発明の波長変換効果を損なわない限り特に限定されず,紫外線波長変換物質の種類や紫外線波長変換物質を含む化粧料の用途により適宜決定できる。例えば,0.001~99.99重量%、0.001~10重量%、0.01~99.99重量%,0.01~10重量%、0.1%~99.9重量%、0.1~10重量%等の範囲内で任意である。
【0023】
本発明の一態様としては、肌用組成物における紫外線波長変換物質は酸化亜鉛蛍光体を含み、本発明の肌用組成物での好ましい酸化亜鉛蛍光体の含有量は、肌用組成物全体に対して0.1重量%以上であり、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5重量%以上であり、さらに好ましくは2重量%以上であり、また、20重量%以下であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下であり、また肌用組成物全体に対して0.01~99.99重量%,0.1~99.9重量%、0.1~50重量%、0.1~40重量%、0.1~30重量%、0.1~20重量%、0.1~10重量%又は1~10重量%である。
【0024】
本発明の一態様としては、肌用組成物における紫外線波長変換物質は酸化チタン酸マグネシウム蛍光体を含み、本発明の肌用組成物での好ましいチタン酸マグネシウム蛍光体の含有量は、肌用組成物全体に対して0.1重量%以上であり、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5重量%以上であり、さらに好ましくは2重量%以上であり、また、20重量%以下であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下であり、また肌用組成物全体に対して0.01~99.99重量%,0.1~99.9重量%、0.1~50重量%、0.1~40重量%、0.1~30重量%、0.1~20重量%、0.1~10重量%、0.5~10重量%又は1~10重量%である。
【0025】
本発明の一態様としては、肌用組成物における紫外線波長変換物質はフィコシアニンを含み、本発明の肌用組成物での好ましいフィコシアニンの含有量は、肌用組成物全体に対して0.00001重量%以上であり、好ましくは0.0001質量%以上であり、また、20重量%以下であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下であり、また肌用組成物全体に対して0.00001~99.99重量%,0.0001~99.9重量%、0.0001~50重量%、0.0001~40重量%、0.0001~30重量%、0.0001~20重量%、0.0001~10重量%、0.0001~5重量%、0.001~5重量%、0.01~5重量%、0.05~5重量%、0.1~5重量%、0.1~3重量%又は0.1~1重量%である。
【0026】
本発明の一態様としては、肌用組成物における紫外線波長変換物質はビタミンB2を含み、本発明の肌用組成物での好ましいビタミンB2の含有量は、肌用組成物全体に対して0.00001重量%以上であり、好ましくは0.0001重量%以上であり、また、20重量%以下であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下であり、また肌用組成物全体に対して0.00001~99.99重量%,0.0001~99.9重量%、0.0001~50重量%、0.0001~40重量%、0.0001~30重量%、0.0001~20重量%、0.0001~10重量%、0.0001~5重量%、0.001~5重量%、0.005~5重量%、0.01~5重量%、0.01~1重量%、0.01~0.5重量%又は0.01~0.1重量%である。
【0027】
細胞賦活とは,限定されないものの,ヒトを含む動物の細胞,例えば,皮膚の線維芽細胞及び/又は角化細胞の新陳代謝やターンオーバーの促進,機能の向上,増殖の促進,酸化の抑制,疲労や外部刺激に対する耐性の向上,機能や活性の低下の抑制等があげられる。皮膚の細胞が賦活されると,しわ,シミ,皮膚老化,光老化等の予防・改善といった効果が期待される。
【0028】
細胞賦活効果の測定は,例えば実施例のように,Alamar Blueを用いて生細胞の生存率、還元能力や増殖を測定することで行ってもよいし,その他の色素アッセイ,ミトコンドリア膜電位異存的色素アッセイ,細胞内チトクロームcアッセイ、エラスターゼ切断色素アッセイ,ATP,ADEアッセイ,解糖フラックスと酸素消費アッセイ、コラーゲンアッセイ、光老化アッセイ、コラーゲン糖化アッセイ、炎症性物質(インターロイキン1α、インターロイキン8、腫瘍壊死因子α等)のアッセイ、皮膚バリア機能関連タンパク質(コルネオデスモシン、スフィンゴミエリンホスホジエステラーゼ、フィラグリン、インボルクリン、ロリクリン、トランスグルタミナーゼ1、カスパーゼ14等)のアッセイ、血管新生調節因子(VEGF-A、ANGPT1等)のアッセイ、酸化及び/又は皮膚ストレス関連タンパク質(芳香族炭化水素受容体リプレッサー、チトクロームP4501B1、芳香族炭化水素受容体リプレッサー、ヘムオキシゲナーゼ1等)のアッセイ、ヒアルロン酸アッセイ等任意の方法が使用できる。
【0029】
本発明の化粧料は,紫外線波長変換物質の機能の発揮に適しており、細胞を賦活することにより、紫外線照射時及び照射後の皮膚のダメージを緩和、又はより積極的に改善、回復するのに適している。より具体的には、線維芽細胞等によるコラーゲン産生、ヒアルロン酸産生、光老化によるダメージの抑制に適しており、また、角化細胞等の酸化ストレスを抑制し、バリア機能を亢進し、炎症反応を抑制し、さらに、皮膚でのコラーゲンの糖化や血管新生を抑制することに適している。
【0030】
蛍光強度の測定は、例えば実施例のように,基体表面に肌用組成物の塗膜を形成し、紫外線を照射したときの蛍光強度を、分光蛍光強度計を用いて測定することができる。基体としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ナイロン、又はアクリル板等の樹脂基板、ガラスや石英等の無機物板を用いることができ、例えば、表面にV字形状の溝を設けたPMMA板(「Sプレート」ともいう:特許第4453995号参照)等を用いることができる。蛍光強度の測定は特定の単一波長の蛍光値でもよく、特定の波長領域の積算値でもよい。
【0031】
本発明の肌用組成物の一態様は,(A‘)ビタミンB2及び/又はその誘導体、(B)合計の含有量が10重量%以上の炭化水素油及び/又は直鎖シリコーン油を含み、かつ(C)粉末の合計の含有量が0~65重量%である、肌用組成物である。本発明の肌用組成物の一態様は,(A‘)ビタミンB2及び/又はその誘導体、(B)合計の含有量が10重量%以上の、イソドデカン、イソヘキサデカン、水添ポリデセン、デカメチルテトラシロキサンもしくはメチルポリシロキサン又はこれらの2以上の組み合わせを含み、かつ(C)粉末の合計の含有量が0~65重量%である、肌用組成物である。なお、ビタミンB2誘導体としては、例えば、酢酸リボフラビンエステル、酪酸リボフラビン、リン酸リボフラビン(ナトリウム又はモノジエタノールアミンの塩)、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、リボフラビンテトラ酪酸エステル、リボフラビンテトラニコチン酸エステルがあげられ、また、リボフラビンの立体異性体であるリキソフラビンの誘導体であってもよい。
【0032】
(B)炭化水素油及び/又は直鎖シリコーン油
本発明の肌用組成物は,炭化水素油及び/又は直鎖シリコーン油である油分を含有する。油分とは、本発明の肌用組成物の成分である、水と相分離する疎水性の物質を指す。炭化水素油とは、炭素骨格を有する油分を指す。シリコーン油とはシロキサン結合を有する、比較的重合度の低いシリコーンであり、油状のものを指し、直鎖シリコーン油とは、シリコーン油の直鎖状のものを指す。本発明の肌用組成物に含まれる炭化水素油及び直鎖シリコーン油は常温にて液体の油分であることが好ましい。
【0033】
炭化水素油としては、化粧料に一般に用いられるものであれば特に制限はなく、流動パラフィン、テトライソブタン、水添ポリデセン、オレフィンオリゴマー、イソドデカン、イソヘキサデカン、スクワラン、水添ポリイソブテン(流動イソパラフィン)等があげられる。本発明の肌用組成物は、流動パラフィン、テトライソブタン、水添ポリデセン、オレフィンオリゴマー、イソドデカン、イソヘキサデカン、スクワラン、水添ポリイソブテン、及びこれらの組み合わせの炭化水素油を含むことが好ましく、紫外線波長変換物質の波長変換機能を亢進することから、水添ポリデセン、イソドデカン、イソヘキサデカン、及びこれらの組み合わせの炭化水素油を含むことが好ましい。
【0034】
直鎖シリコーン油としては、化粧料に一般に用いられるものであれば特に制限はなく、直鎖アミノ変性ポリシロキサン、直鎖ポリエーテル変性ポリシロキサン、直鎖アルキル変性ポリシロキサン(メチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン(ジメチコンともいう)、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン等)、直鎖フッ素変性ポリシロキサン、及び直鎖のポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体等があげられる。本発明の肌用組成物は、紫外線波長変換物質の波長変換機能を亢進することから、デカメチルテトラシロキサン、及び/又はメチルポリシロキサンのシリコーン油を含むことが好ましい。
【0035】
本発明の肌用組成物に含まれる油分としては、炭化水素油、直鎖シリコーン油が好ましく、さらに好ましくは、紫外線波長変換物質の波長変換機能を亢進する効果が高い、炭化水素油である。例えば、本発明の肌用組成物は、イソドデカン、イソヘキサデカン、水添ポリデセン、デカメチルテトラシロキサン、メチルポリシロキサン又はこれらの2以上の組み合わせを含む。本発明の肌用組成物は、ビタミンB2の紫外線波長変換物質の機能を亢進することから、イソドデカン、イソヘキサデカン、水添ポリデセン、デカメチルテトラシロキサンもしくはメチルポリシロキサン又はこれらの2以上の組み合わせを含むことが好ましい。
【0036】
本発明の肌用組成物に含まれる炭化水素油及び/又は直鎖シリコーン油の合計の含有量は、肌用組成物全体に対して、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上であり、好ましくは15重量%以上、より好ましくは20重量%以上であり、さらに好ましくは25重量%以上であり、また、80重量%以下であり、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下であり、さらに好ましくは40重量%又は30重量%以下であり、また肌用組成物全体に対して10~80重量%,10~60重量%、10~50重量%、10~40重量%、10~30重量%、15~80重量%,15~60重量%、15~50重量%、15~40重量%、15~30重量%、20~80重量%,20~60重量%、20~50重量%、20~40重量%、20~30重量%、25~80重量%,25~60重量%、25~50重量%、25~40重量%、又は25~30重量%である。
【0037】
(C)粉末
本発明の肌用組成物は,粉末を含有してもよい。粉末とは、固体物質が非常に細かく砕けたものを指す。本発明の肌用組成物に含まれる粉末としては、化粧料に通常用いられているものであれば特に限定されず、例えば、ポリメタクリル酸メチル、架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体、シリカ、疎水化タルク、トウモロコシデンプン、疎水化処理ポリウレタン等があげられる。
【0038】
本発明の肌用組成物に含まれうる粉末の合計の含有量は、肌用組成物全体に対して0.01重量%以上であり、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1重量%以上であり、さらに好ましくは0.5重量%以上であり、また、70重量%以下であり、65重量%以下であり、60重量%以下であり、50重量%以下であり、40重量%以下であり、30重量%以下であり、25重量%以下であり、20重量%以下であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下であり、また肌用組成物全体に対して0~99.99重量%,0~70重量%、0~65重量%、0~60重量%、0~50重量%、0~40重量%、0~30重量%、0~20重量%、0~15重量%、0~10重量%、0.1~99.9重量%、0.1~70重量%、0.1~65重量%、0.1~60重量%、0.1~50重量%、0.1~40重量%、0.1~30重量%、0.1~20重量%、0.1~15重量%、0.1~10重量%、0.5~70重量%、0.5~65重量%、0.5~60重量%、0.5~50重量%、0.5~40重量%、0.5~30重量%、0.5~20重量%、0.5~15重量%、0.5~10重量%、1~70重量%、1~65重量%、1~60重量%、1~50重量%、1~40重量%、1~30重量%、1~20重量%、1~15重量%、又は1~10重量%である。
【0039】
(D)紫外線吸収剤
紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤は、入射する紫外線を吸収又は散乱させるため、紫外線波長変換物質の機能を間接的に阻害してしまうと考えられるが、驚くべきことに、本発明の肌用組成物は,紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤を含有することができ、紫外線波長変換物質の機能を発揮することができる。
【0040】
紫外線吸収剤とは、紫外線を吸収し、熱や赤外線等のエネルギーに変化させて放出させる物質を指す。本発明で使用しうる紫外線吸収剤は、直接的に紫外線波長変換物質の機能を損なわない限り特に限定されず、例えば、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸エチルヘキシル、ホモサレート、サリチル酸トリエタノールアミン等のサリチル酸系紫外線吸収剤;
パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、2,5-ジイソプロピルケイ皮酸メチル、2,4,6-トリス[4-(2-エチルへキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン(以下、「エチルヘキシルトリアゾン」とも呼ぶ。)、トリメトキシケイ皮酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、p-メトキシハイドロケイ皮酸ジエタノールアミン塩等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;
2-フェニル-ベンズイミダゾール-5-硫酸、4-イソプロピルジベンゾイルメタン、4-tert-ブチル-4´-メトキシジベンゾイルメタン等のベンゾイルメタン系紫外線吸収剤;
オクトクリレン、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル、1-(3,4-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-1,3-ペンタンジオン、シノキサート、メチル-O-アミノベンゾエート、3-(4-メチルベンジリデン)カンフル、オクチルトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン及びメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール;
があげられ、これらから選ばれる1種又は2種以上を肌用組成物中に含むことができる。
【0041】
本発明の肌用組成物に含まれうる紫外線吸収剤全体の含有量は、日焼け止めとして機能するために、肌用組成物全体に対して0.5重量%以上であり、好ましくは1重量%以上であり、より好ましくは5重量%以上であり、さらに好ましくは、7重量%以上であり、最も好ましくは10重量%以上であり、また、入射光に含まれる紫外線を吸収しすぎないために、肌用組成物全体に対して、40重量%以下であり、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下であり、さらに好ましくは20重量%以下である。本発明の肌用組成物に含まれうる紫外線吸収剤全体の含有量の範囲は、0.5~40重量%、1~40重量%、1~30重量%、5~40重量%、5~30重量%、5~25重量%、7~30重量%、7~25重量%、7~20重量%、10~30重量%、10~25重量%、10~20重量%である。
【0042】
(E)紫外線散乱剤
本発明の肌用組成物は,紫外線散乱剤を含有してもよい。紫外線散乱剤とは、紫外線を反射・散乱させて皮膚等を紫外線から防御することができる物質を指す。本発明で使用し得る紫外線散乱剤の材料としては、酸化チタン、成分(A)以外の酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等があげられる。また、紫外線散乱剤としてこれらの材料を微粒子化したものや、複合化したものがあげられる。紫外線散乱剤は、好ましくは、酸化チタン及び成分(A)以外の酸化亜鉛から選択される1種又は2種以上を含む。
【0043】
紫外線散乱剤として用いられる酸化チタン及び酸化亜鉛は、化粧料に通常用いられている酸化チタン及び酸化亜鉛であってよい。好ましくはより分散性に優れたもの、例えば必要に応じて公知の方法で表面を表面処理、具体的には疎水化処理したものを肌用組成物中に含有することができる。
【0044】
表面処理の方法としては、メチルハイドロゲンポリシロキサン、メチルポリシロキサン等のシリコーン処理;パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルコール等によるフッ素処理;N-アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理;オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン処理;その他、レシチン処理;金属石鹸処理;脂肪酸処理;アルキルリン酸エステル処理等があげられる。なかでも、表面をシリコーン処理した酸化亜鉛が好ましく用いられる。
【0045】
表面処理に用いられるシリコーンは制限されないが、例えばメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロゲンポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルセチルオキシシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルステアロキシシロキサン共重合体等の各種シリコーン油をあげることができる。好ましくは、メチルハイドロゲンポリシロキサンやメチルポリシロキサンである。
【0046】
本発明の肌用組成物に含まれうる紫外線散乱剤全体の含有量は、日焼け止めとして機能するために、肌用組成物全体に対して0.1重量%以上であり、好ましくは0.5重量%以上であり、より好ましくは1重量%以上であり、さらに好ましくは、2重量%以上であり、最も好ましくは3重量%以上であり、また、入射光に含まれる紫外線を散乱しすぎないために、肌用組成物全体に対して、40重量%以下であり、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下であり、さらに好ましくは20重量%以下である。本発明の肌用組成物に含まれうる紫外線散乱剤全体の含有量の範囲は、0.1~40重量%、0.5~40重量%、0.5~30重量%、0.5~25重量%、0.5~20重量%、1~40重量%、1~30重量%、1~25重量%、1~20重量%、3~30重量%、3~25重量%、3~20重量%である。
【0047】
分散剤
本発明の肌用組成物は,分散剤を含有してもよい。分散剤とは、水相又は油相中に分散された粒子の表面に吸着することで、水性又は油性媒体中に均一に分散せしめることのできる物質を指す。本発明で使用しうる分散剤は、紫外線波長変換物質の機能を損なわない限り特に限定されず、油系の分散剤が好ましく、油系の分散剤としては、非イオン性界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、脂肪酸等があげられる。本発明においては、特に、化粧品、医薬品に通常使用される、非イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤及び/又は脂肪酸の使用が好ましい。
【0048】
本発明の肌用組成物に含まれうる好ましい分散剤としては、PEG-10ジメチコン、ビスブチルジメチコンポリグリセリル-3、PEG-ポリジメチルポリシロキサンエチルジメチコン、ラウリルPEG-ポリジメチルポリシロキサンエチルジメチコン、セチルPEG/PPG-10/ジメチコン、イソステアリン酸、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2、カルボキシデシルトリシロキサン、PEG-12ジメチコン、もしくはモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン又はこれらの2以上の組み合わせを含む。
【0049】
本発明の肌用組成物に含まれうる分散剤の好ましい例としては、紫外線波長変換物質の機能を亢進することから、PEG-10ジメチコン、ビスブチルジメチコンポリグリセリル-3、PEG-9ポリジメチルポリシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルポリシロキシエチルジメチコン、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、イソステアリン酸、もしくはカルボキシデシルトリシロキサン、又はこれらの2以上の組み合わせを含む。
【0050】
また,本発明の肌用組成物における分散剤の含有量は本発明の波長変換効果を損なわない限り特に限定されず,紫外線波長変換物質の種類や紫外線波長変換物質を含む肌用組成物の用途により適宜決定できる。例えば,0.01~99.99重量%,0.1%~99.9重量%等の範囲内で任意である。
【0051】
本発明の肌用組成物に含まれうる好ましい分散剤の含有量は、肌用組成物全体に対して0.1重量%以上であり、好ましくは0.8%よりも多く、0.9%質量以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは1.5重量%以上、又は2重量%以上であり、また、20重量%以下であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下であり、また肌用組成物全体に対して0.01~99.99重量%,0.1~99.9重量%、0.1~50重量%、0.1~40重量%、0.1~30重量%、0.1~20重量%、0.1~10重量%、0.5~10重量%、1~10重量%、1.5~10重量%、0.8~5重量%又は0.8~3重量%である。
【0052】
本発明の一態様としては、肌用組成物に含まれうる分散剤はPEG-10ジメチコンを含み、肌用組成物における分散剤の含有量は、肌用組成物全体に対して、0.1重量%以上であり、好ましくは0.8%よりも多く、0.9%質量以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは1.5重量%以上、又は2重量%以上であり、また、20重量%以下であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下であり、また肌用組成物全体に対して0.01~99.99重量%,0.1~99.9重量%、0.1~50重量%、0.1~40重量%、0.1~30重量%、0.1~20重量%、0.1~10重量%、0.5~10重量%、1~10重量%、1.5~10重量%、0.8~5重量又は0.8~3重量%である。
【0053】
本発明の一態様としては、肌用組成物に含まれうる分散剤はビスブチルジメチコンポリグリセリル-3、PEG-9ポリジメチルポリシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルポリシロキシエチルジメチコン、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、イソステアリン酸及びカルボキシデシルトリシロキサンの群から選択される1以上の分散剤とPEG-10ジメチコンの組み合わせを含み、肌用組成物におけるPEG-10ジメチコンの含有量は、肌用組成物全体に対して、0.1重量%以上であり、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5重量%以上であり、さらに好ましくは2重量%以上であり、また、20重量%以下であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下であり、また肌用組成物全体に対して0.01~99.99重量%,0.1~99.9重量%、0.1~50重量%、0.1~40重量%、0.1~30重量%、0.1~20重量%、0.1~10重量%、0.5~10重量%、1~10重量%、1.5~10重量%又は0.8~3重量%であり、組み合わせの各分散剤の含有量は、肌用組成物全体に対して0.1重量%以上であり、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5重量%以上であり、さらに好ましくは2重量%以上であり、20重量%以下であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下であり、また肌用組成物全体に対して0.1~50重量%、0.1~40重量%、0.1~30重量%、0.1~20重量%、0.1~10重量%、0.5~10重量%、1~10重量%、1.5~10重量%、0.8~5重量又は0.8~3重量%である。
【0054】
ワックス
本発明の肌用組成物は、常温で固体であるワックスを含有してもよい。ワックスとは融点の高い油脂状の物質を指し、動物の油脂、植物の油脂、及び鉱物・石油等由来の蝋質の炭化水素があげられる。該ワックスは、標準気圧で常温より高い融点、例えば35℃より高く約250℃まで、又は例えば40℃より高く約100℃までの融点を有する。本発明の肌用組成物に含まれうるワックスは、室温で固体又は半固体である。
【0055】
本発明の肌用組成物に含まれうるワックスは、約0.001MPa(メガPa)~約15MPa、又は例えば約1MPa~約12MPa、又は例えば約3MPa~約10MPaの範囲の硬度値を有するワックスから選択される。ワックスの硬度は、針貫通、あるいはジュロメーター又はテクスチュロメーターの使用等のいずれかの既知の方法又は装置で決定されてよい。
【0056】
好ましいワックスの例には、限定されないが、蜜蝋、水素化アルキルオリーブエステル(商標名phytowax oliveで商業的に入手可能)、カルナウバワックス、カンデリラワックス、オーリクリーワックス(ouricoury wax)、漆蝋、コルクファイバーワックス又はサトウキビワックス、ライスワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、亜炭ワックス、微結晶ワックス、セレシン又はオゾケライト、パーム核グリセリド/水素化パームグリセリド、ならびに水素化油、例えば、水素化ヒマシ油又はホホバ油、サトウキビ油、レタモ油、ヤマモモ油、米糠油、大豆油、キャスター油、エスパルト油、漆蝋、ヒドロキシオクタコサニルヒドロキシステアレート、チャイニーズワックス、セチルパルミテート、ラノリン、セラック及び鯨蝋;合成ワックス、例えば、炭化水素型のもの及びエチレンの重合又は共重合から得られるポリエチレンワックス、及びFischer-Tropsch(登録商標)ワックス、又は他の脂肪酸のエステル、例えば、オクタコサニルステアレート、35℃より高い温度で固体であるグリセリド、シリコーンワックス、例えば、10~45個の炭素原子の範囲のアルキル又はアルコキシ鎖を有するアルキル-又はアルコキシジメチコン、30℃で固体であり、かつそのエステル鎖が少なくとも10個の炭素原子を含んでなるポリ(ジ)メチルシロキサンエステル、あるいはHetereneによってHEST(登録商標)2T-4Sの名称で販売又は製造されるジ(1,1,1-トリメチロールプロパン)テトラステアレート、ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0057】
本発明の肌用組成物に含まれうるワックスは、肌用組成物全体に対して、40重量%以下であり、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下であり、さらに好ましくは20重量%以下であり、また肌用組成物全体に対して0~40重量%、0~30重量%、0~25重量%、0~20重量%、0~15重量%、0~10重量%、5~40重量%、5~30重量%、5~25重量%、5~20重量%、5~15重量%、5~10重量%、10~40重量%、10~30重量%、10~25重量%、10~20重量%、又は10~15重量%の範囲の量で利用されうる。
【0058】
(その他の任意成分)
本発明の肌用組成物は、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、各種成分を適宜配合することができる。各種成分としては、化粧料に通常配合し得るような添加成分、例えば、粘土鉱物(ジメチルジステアリルアアンモニウムヘクトライト等)、キレート剤(エデト酸ナトリウム水和物等)、香料、保湿剤(グリセリン、ジプロピレングリコール等)、防腐剤、油相固化剤(トリ酢酸テトラステアリン酸スクロース、パルミチン酸デキストリン、パルミチン酸、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセル、N-ラウロイルL-グルタミン酸ジブチルアミド、ポリアミド‐8等)、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、シリコーン化多糖類等の皮膜形成剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、エステル油(セバシン酸ジイソプロピル、パルミチン酸オクチル、イソオクタン酸セチル(2-エチルヘキサン酸セチル)、トリエチルヘキサノイン、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリイソステアリン、リンゴ酸ジイソステアリル、ジピバリン酸PPG-3、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、2-エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル、オクタカプリル酸ポリグリセリル-6、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル等)、上記以外の液体油脂(アボカド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ミンク油、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン等)、高級アルコール(イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ブチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体(例えば、PBG/PPG-9/1コポリマー)等)、各種抽出液、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、(A)又は(A‘)以外のビタミン、医薬品、医薬部外品、化粧品等に適用可能な水溶性薬剤、酸化防止剤、緩衝剤、酸化防止助剤、噴射剤、顔料、染料、色素、水、酸成分、アルカリ成分等をあげることができる。これらの任意成分は、油相中及び水相中に適宜配合することができる。さらに,本発明の効果を高めるために,他の細胞賦活化剤等を含有又は併用してもよい。
【0059】
本発明の肌用組成物の一態様としては、油中水型組成物がある。本発明の油中水型組成物は通常の製造方法に従って製造することができる。
具体的には、以下の手順により本実施形態における肌用組成物が得られる。すなわち、成分(B)、成分(C)、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤及び適宜他の油性成分を混合して油相を調製し、油相に分散する場合には成分(A)又は(A‘)を混合する。つづいて、適宜他の水溶性成分を混合して水相を調製する(水相に分散する場合には、成分(A)又は(A‘)を水相として混合する)。前記水相を油相に添加し、撹拌することにより、肌用組成物を得る。
【0060】
本発明の肌用組成物の一態様としては、粉末を含む油中水型組成物がある。粉末としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体、シリカ、疎水化タルクを包含するタルク、トウモロコシデンプン等のスターチ、疎水化処理ポリウレタンを包含するポリウレタン等があり、本発明の粉末を含む油中水型組成物は通常の製造方法に従って製造することができる。
【0061】
本発明の肌用組成物としては、化粧下地、サンスクリーンクリーム等の日焼け止め化粧料等に使用される肌用組成物が含まれる。また、剤型としては、例えば乳液類、クリーム類、固形スティック等とすることができる。
【0062】
本発明の肌用組成物は、皮膚、中でも頭髪を除く皮膚、好ましくは顔、身体、手足等のいずれかに適用、好ましくは塗布することにより、使用することができる。例えば、本実施形態の肌用組成物を皮膚に適用、好ましくは塗布することにより、紫外線を防御して皮膚への悪影響を抑制するだけにとどまらず、皮膚細胞を賦活して肌に自然で好ましい外観を与えることも可能となる。また、本発明の肌用組成物は少ない量の蛍光体で強い蛍光を発することができ、肌を明るく見せる効果も期待できる。
【実施例】
【0063】
次に実施例によって本発明を更に詳細に説明する。なお,本発明はこれにより限定されるものではない。
【0064】
実施例1:各種紫外線波長変換物質の細胞賦活効果
実験1-1:紫外線波長変換物質の調製
紫外線波長変換物質を以下のように調製した。
(1)B-フィコエリスリン
B-フィコエリスリン(B-phycoerythrin)は,チノリモ(Porphiridium Cruentum)抽出物から得られ,吸収スペクトルは305nmにピーク波長を有し,発光スペクトルは570nm及び610nmにピーク波長を有していた。
(2)C-フィコシアニン
C-フィコシアニン(C-phycocyanin)は,スピルリナ(Spirulina platensis)抽出物から得られ,吸収スペクトルは350nmにピーク波長を有し,発光スペクトルは640nm及び700nmにピーク波長を有していた。DIC社製のLinablueを使用した。
(3)酸化亜鉛蛍光体
堺化学工業株式会社製のLumate Gを使用した。Lumate Gは,国際公開第2018/004006号に記載のようにZnOを硫黄含有化合物でドープした酸化亜鉛蛍光体であり,吸収スペクトルは365nmにピーク波長を有し,発光スペクトルは510nmにピーク波長を有していた。
(4)チタン酸マグネシウム蛍光体
堺化学工業株式会社製のLumate Rを使用した。Lumate Rは,MgTiO3をマンガンでドープしたチタン酸マグネシウム蛍光体であり,吸収スペクトルは365nmにピーク波長を有し,発光スペクトルは660~680nmの帯域にピーク波長を有していた。
(1)~(2)の紫外線波長変換物質を水に溶解し,1%及び5%の濃度の溶液を調製した。
(3)~(4)の紫外線波長変換物質はアルコールに分散し5%及び10%の分散液を調整した。
【0065】
実験1-2:細胞試料の調製
細胞試料を以下のように調製した。
1. Kurabo社から購入したヒト皮膚線維芽細胞及びヒト皮膚角化細胞を使用した。液体窒素で保存されていた細胞懸濁液(1mL)を湯浴(37℃)にかけ小さな氷ペレットが残る程度に解凍し,次いで9mLの温培地で希釈した。
2. 希釈物を穏やかに混合してからT75フラスコに移し,37℃で一晩インキュベートした。
3. 翌日,培地を10mLの新鮮培地に交換した。
4. 培地を定期的に交換し(線維芽細胞では2日に1回,角化細胞では2~3日に1回),細胞の増殖を継続した。その間,顕微鏡を用いて細胞を観察し,細胞が正しい形態で増殖していることを確認した。
5. 細胞が約80%のコンフルエントに達してから,細胞を継代した。細胞の継代は,10mLの温PBSで細胞を1回洗浄してから,5mLの温トリプシンをT75フラスコに加え,トリプシン溶液でフラスコの底面をカバーし1分間室温においてから吸引することにより行った。
6. 線維芽細胞では(最大)2分間,角化細胞では(最大)7分間,フラスコを37℃のオーブン内に静置した。顕微鏡を用いて細胞を観察し,細胞が小さく楕円形であることを確認した。
7. その後,T75フラスコの側面を軽く叩いて細胞を遊離させた。顕微鏡を用いて細胞を観察し,細胞が自由に動いていることを確認した。
8. 線維芽細胞は,5mLの温FGM(10%血清含有)に再懸濁し,滅菌50mLファルコンチューブに移した。フラスコをさらに5mLの温FGMで洗い流してファルコンチューブに加えることにより確実に全ての細胞を移すようにした。
9. 細胞を10,000rpmで5分間遠心し(4℃),細胞ペレットを乱さないよう注意しながら上清を除去した。
10. 細胞の種類に応じ,線維芽細胞は2×104cells/well(500μL),角化細胞は4×104cells/well(500μL)の濃度でFGM又はKGMに再懸濁し,24ウェルプレートにプレーティングした。
11. 24ウェルプレートに細胞を播種し,培地を定期的に交換し(線維芽細胞では2日に1回,角化細胞では2~3日に1回),60~70%のコンフルエント(実験の種類により異なる)に達するまで細胞を増殖させた。(注:線維芽細胞は,2×104cells/wellの細胞密度だと24時間で所望のコンフルエンシーに達するはずである。細胞密度が,例えば1×104cells/well等と低い場合,線維芽細胞が所望のコンフルエンシーに達するのに48時間かかる。)
12. 照射の24時間前に,サプリメント無添加の培地(角化細胞の場合)又は低濃度の血清を含有する(0.5%FCS)培地(線維芽細胞の場合)に変更した。
【0066】
実験1-3:紫外線の照射
1. 照射の少なくとも30分前にソーラーシミュレータの電源を入れてランプをウォームアップした。ソーラーシミュレータは,UG11フィルターを使用する設定にした。UG11フィルターは,UVBのみを通過させ他の波長光をカットするフィルターである。UG11フィルターを通過したUV光は300nm~385nmにピーク波長を有していた。
2. 温度制御プレートをオンにして33℃に設定した。
3. 実験1-2で調製した細胞を温PBSで1回洗浄した。
4. 各ウェルに0.5mLの温めたMartinez溶液(145mM NaCl, 5.5mM KCl, 1.2mM MgCl
2.6H
2O, 1.2mM NaH
2PO
4.2H
2O, 7.5mM HEPES, 1mM CaCl
2, 10mM D-グルコース)を加えた。
5.
図1に示すように,細胞ウェルをプレート上に載置し,更にその上に,実験1-1で調製した紫外線波長変換物質(1)~(4)を含む溶液を24ウェルプレートの各穴に0.4ml注入し,細胞入りのウェルを覆うように載置し,紫外線波長変換物質の溶液が細胞溶液と直接触れずに,UV光が紫外線波長変換物質の溶液を通過して細胞溶液に照射されるようにした。
6. 合計が100mJ/cm
2の線量になるよう照射を行った。また,対照として,細胞ウェルの上に紫外線波長変換物質のプレートを載せず細胞に直接UV光を照射した試料と,細胞にUV光を照射せず暗所で培養した試料を作成した。
7. 照射後,Martinezを温めたKGM(サプリメント無添加)又はFGM(0.5%FCS含有)と交換し,プレートを37℃のインキュベータに戻した。
【0067】
実験1-4:細胞活性の測定
実験1-3の後インキュベータ内で48時間保持した細胞を用いて,以下の方法により活性を測定した。
1. 培地(サプリメント無添加のKGM培地又は0.5%FCS含有FGM培地)に10%Alamar Blueを添加し37℃に温めた(溶液は暗所で保持)。
2. ウェル内の培地を500μLの上記10%Alamar Blue溶液に交換し,プレートを37℃のインキュベータに戻し約3時間保持した。対照のウェルも同様にインキュベータ内で保持した。これらの溶液を光から保護するため暗所で保持した。
3. 3時間後,100μLのアリコートを採取し,黒色の96ウェルプレートに移した。
4. 蛍光測定器 (OPwave+, Ocean Photonics)を用いて544nm/590nmでの蛍光測定値を読み取った。
【0068】
結果を
図2に示す。UVを照射すると照射しない対照に比べて細胞活性が低下していた。しかし,紫外線波長変換物質を通してUVを照射した細胞の活性は,照射しない対照に比べていずれの紫外線波長変換物質でも上昇していた。以上の結果より,UV照射により細胞活性は低下するものの,紫外線波長変換物質を用いると細胞活性低下が抑制されることがわかった。
【0069】
実施例2:紫外線波長変換物質の濃度及びUVの強度の違いによる細胞活性への影響
紫外線波長変換物質としてC-フィコシアニンを使用し0%,0.4%,2%となるように添加した溶液入りのプレートで細胞培養物を覆い,0,10,25,50,75,100mJ/cm2の線量でUVを照射した以外は実験1と同じ方法を行った。
【0070】
結果を
図3に示す。紫外線波長変換物質を用いない場合,UV照射量が上がるほど細胞活性は低下した。しかし,0.4%のC-フィコシアニンを添加するとUV照射しても細胞活性の低下は抑制されており,2%のC-フィコシアニンを添加するとUV照射をしない場合よりも細胞活性がむしろ亢進されていた。以上の結果より,UV照射により細胞活性は低下するものの,紫外線波長変換物質を用いると濃度依存的に細胞活性低下が抑制されるのみならず,細胞活性が亢進されることがわかった。
【0071】
実施例3:UV照射により低下した細胞活性の回復
図4に示すように,紫外線波長変換物質を使用せずに照射量が400mJ/cm
2となるまでUV照射を行い細胞活性を一旦低下させた後に,紫外線波長変換物質としてC-フィコシアニンを0%,0.4%,2%となるように添加した溶液入りのプレートで細胞培養物を覆い,0,10,25,50,75,100,200mJ/cm
2の線量になるまでUVを照射した以外は実験1と同じ方法を行った。
【0072】
結果を
図5に示す。紫外線波長変換物質を使用せずUV照射により一旦活性が低下した細胞であっても,紫外線波長変換物質を用いてUV照射を施すことにより細胞活性が回復したことがわかる。また,この効果は,C-フィコシアニンが0.4%の濃度であっても2%の場合と同等であり,0.4%でも十分な細胞賦活効果があることが示唆される。一方,紫外線波長変換物質を用いずにUV照射を行った場合,細胞活性はUV線量依存的に低下した。
【0073】
以上,ヒト皮膚線維芽細胞についての結果を示したが,角化細胞についても同様の結果が見られた(データ示さず)。これらの結果により,紫外線波長変換物質はUV照射による細胞活性の低下を抑制するのみならず,UV光を利用して細胞を賦活する効果があることがわかった。皮膚の細胞が賦活されると,しわ,シミ,皮膚老化,光老化等の予防・改善が期待される。
【0074】
前記実施例1~3により、紫外線波長変換物質が紫外線を波長変換し、発光した可視光(主波長が500nm~700nmの蛍光)が線維芽細胞や角質細胞等の皮膚の細胞を賦活するものと考えられた。そこで、以下紫外線波長変換物質を含む種々の肌用組成物を製造して、紫外線照射時の発光する蛍光量について評価を行った。
【0075】
蛍光量の測定は、肌用組成物をSプレート(特許第4453995号参照)に2mg/cm2で塗布し、乾燥させて肌用組成物の塗膜を調製した。得られた塗膜に所定波長の紫外線を照射し、所定波長領域の蛍光積算値を分光蛍光光度計RF-5300PC(島津製作所)を用いて測定した。紫外線波長変換物質が酸化亜鉛蛍光体の場合は365nmの紫外線で照射し、400-600nmの蛍光積算値を同様に測定した。紫外線波長変換物質がチタン酸マグネシウム蛍光体の場合は340nmの紫外線で照射し、550-800nmの蛍光積算値を同様に測定した。紫外線波長変換物質がC-フィコシアニンの場合は350nmの紫外線で照射し、550-800nmの蛍光積算値を同様に測定した。紫外線波長変換物質がビタミンB2の場合は270nmの紫外線で照射し、400-750nmの蛍光積算値を同様に測定した。
【0076】
実施例4:紫外線吸収剤/紫外線散乱剤共存下での紫外線波長変換物質の機能
表1に記載の組成の肌用組成物(処方例U1、U2)を通常の製造方法に従って製造した。処方例U1、U2は紫外線波長変換物質である酸化亜鉛蛍光体を含み、処方例U2は更に紫外線吸収剤(オクトクリレン、サリチル酸エチルヘキシル及びホモサレート)及び紫外線散乱剤(微粒子酸化亜鉛)を含む。処方例U1の蛍光積算値が25624に対し、処方例U2の蛍光積算値3570と低下したものの、紫外線波長変換物質は、紫外線吸収剤/紫外線散乱剤共存下でも波長変換機能を有していることが分かった。
【0077】
【0078】
実施例5:紫外線波長変換物質酸化亜鉛蛍光体の効果
表2に記載の組成の肌用組成物(処方例G1~G6)を通常の製造方法に従って製造した。いずれの処方例も紫外線波長変換物質である酸化亜鉛蛍光体を含む。G1~G6の各処方例の蛍光積算値はそれぞれ、669、2230、4273、16116、23515、43316であり、酸化亜鉛蛍光体は肌用組成物に含めても用量依存的に波長変換機能を有していることが分かった。
【0079】
【0080】
実施例6:紫外線波長変換物質チタン酸マグネシウム蛍光体の効果
表3に記載の組成の肌用組成物(処方例R1~R5)を通常の製造方法に従って製造した。いずれの処方例も紫外線波長変換物質であるチタン酸マグネシウム蛍光体を含む。R1~R5の各処方例の蛍光積算値はそれぞれ、4986、7537、5797、5488、8746であり、チタン酸マグネシウム蛍光体は肌用組成物に含めても用量依存的に波長変換機能を有していることが分かった。
【0081】
【0082】
実施例7:紫外線波長変換物質C-フィコシアニンの効果
表4に記載の組成の肌用組成物(処方例L1~L5)を通常の製造方法に従って製造した。いずれの処方例も紫外線波長変換物質であるC-フィコシアニンを含む。L1~L5の各処方例の蛍光積算値はそれぞれ、6308、11937、9287、5608、3946であり、C-フィコシアニンは肌用組成物に含めても波長変換機能を有しており、紫外線波長変換効果はC-フィコシアニンが0.5%~3%の濃度で最適な、ベルシェイプな用量依存性であることが分かった。
【0083】
【0084】
実施例8:分散剤PEG-10ジメチコンの効果
表5に記載の組成の肌用組成物(処方例D1~D4)を通常の製造方法に従って製造した。いずれの処方例も紫外線波長変換物質である酸化亜鉛蛍光体を含む。D1~D4の各処方例の蛍光積算値はそれぞれ、3570、4015、5657、6500であり、分散剤PEG-10ジメチコンは用量依存的に酸化亜鉛蛍光体の波長変換機能を亢進し、また別の分散剤ラウリルPEG-9ポリジメチルポリシロキシエチルジメチコンと組み合わせることにより、さらに波長変換機能を高めることが分かった。
【0085】
【0086】
実施例9:分散剤の組み合わせの効果
表6に記載の組成の肌用組成物(処方例M1~M10)を通常の製造方法に従って製造した。いずれの処方例も紫外線波長変換物質である酸化亜鉛蛍光体を含む。M1~M10の各処方例の蛍光積算値はそれぞれ、4294、5685、6779、7412、7608、7016、4309、7305、3633、1531であり、分散剤PEG-10ジメチコンにビスブチルジメチコンポリグリセリル-3、PEG-9ポリジメチルポリシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルポリシロキシエチルジメチコン、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、イソステアリン酸又はカルボキシデシルトリシロキサンを組み合わせることにより、PEG-10ジメチコンのみと比較して、酸化亜鉛蛍光体の波長変換機能を高めることが分かった。
【0087】
【0088】
実施例10:粉末の効果
表7に記載の組成の肌用組成物(処方例P1~P7)を通常の製造方法に従って製造した。いずれの処方例も紫外線波長変換物質である酸化亜鉛蛍光体を含む。M1~M10の各処方例の蛍光積算値はそれぞれ、19133、21805、19486、23191、21689、21788、22552であり、肌用組成物に各種粉末を含めても酸化亜鉛蛍光体の波長変換機能を抑制せず、シリカ粉末等では酸化亜鉛蛍光体の波長変換機能を高めることが分かった。このことから、粉末を含む油中水型の肌用組成物も細胞賦活剤として製造可能であると考えられた。
【0089】
【0090】
実施例11:各種油分のビタミンB2の紫外線波長変換機能への効果
表8に記載の組成の肌用組成物(処方例O1~O7)を通常の製造方法に従って製造した。いずれの処方例も紫外線波長変換物質であるビタミンB2(リボフラビン)及び各種油分を含む。処方例O1~O7の蛍光積算値はそれぞれ、2963、6179、5507、5055、4810、4286、2679であり、ビタミンB2は紫外線波長変換物質として機能した。油分として、PBG/PPG-9/1コポリマー及びパルミチン酸オクチルのみを含む処方例O1の蛍光積算値を100%とした場合、他の各種油分を含む処方例O2~O7の各処方例の蛍光積算値はそれぞれ、209%、186%、171%、162%、145%、90%であり、油分の種類によりビタミンB2の紫外線波長変換物質の機能に対する効果は異なっており、中でもイソドデカン、イソヘキサデカン、水添ポリデセン、デカメチルテトラシロキサン、メチルポリシロキサンは高い効果を有することが分かった。なお、イソドデカン、イソヘキサデカン、水添ポリデセン、デカメチルテトラシロキサン、メチルポリシロキサンがビタミンB2の紫外線波長変換機能の亢進に高い効果を有することは、分散剤を変更(PEG-12ジメチコンのみ)、UV吸収剤を変更(サリチル酸エチルヘキシルのみ)して油中水型組成物を調製した際も同様な傾向であり、これらのような他の成分にあまり影響されないものと考えられた(データ示さず)。
【0091】
【0092】
実施例12:チトクロームc含量への効果
前記実施例1~3にて、波長変換された可視光がAlamarBlueアッセイでミトコンドリア呼吸鎖からの電子受容による還元能力を亢進することがわかった。チトクロームcはミトコンドリアの電子伝達系に関与する分子であり、還元剤であるNDH分子の生産に重要な機能を果たす。そこで、次に本発明の肌用組成物が細胞のチトクロームcの細胞内濃度に影響するかについて検討した。
【0093】
本発明の肌用組成物を24well plateに0.1g/wellずつ塗布・分注し、乾燥させた。ヒト皮膚由来線維芽細胞(ScienCell Research Lab.#2320)を24well プレートに1x105 cells/wellの密度で播種し、DMEM培地で(Thermo Fisher, #11965-092)3日間培養した。細胞をPBSによる洗浄後に、1mLのPBSを添加した。乾燥させた肌用組成物を含む24well plateを、細胞を含む24well plateに重ね、約70cm離れた距離から人工太陽ライト(セリック社、XC-500BF)により最大出力量で40分間照射した。なお、すべての細胞プレートは20℃の蓄熱材の上に設置することにより、温度上昇を防止した。照射時間経過後に、PBSを除去し、0.3mLの細胞抽出液(RIPA buffer:50mM Tris-HCl(pH8.0), 150mM NaCl, 0.5%(w/v) Sodium Deoxycholate, 0.1%(w/v)SDS, 1.0%(w/v)NP-40 substitute, 1mM PMSF)を加え、ピペッティングにより細胞を完全に溶解した。細胞溶解液を4℃、10000×gで10分間遠心し、上清中のチトクロームcを測定した(Proteintech Group社、KE00079)。
【0094】
太陽光照射前後で細胞の外観に影響は見られなかった。肌用組成物を介しない細胞でのチトクロームc含量が、3782pg/mLに対し、紫外線波長変換機能の高かった、処方例M4及びM5のチトクロームc含量は、それぞれ、5150pg/mL、5448pg/mLであり、細胞内のチトクロームcの含量を高めていることが分かった。
以上の結果から、検討した肌用組成物は紫外線波長変換物質の機能の発揮に好適であり、細胞のチトクロームcの濃度を高め、ミトコンドリアの活性を高めることにより、細胞を賦活するものと考えられた。
【0095】
本発明の肌用組成物の1例として、表9に示す以下の肌用組成物を処方することができる。
【0096】
【0097】
以上,本発明の肌用組成物の実施の形態について説明してきた。しかしながら,本発明はこれらに限定されるものではなく,発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。