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7657029制御デバイス、インバータ、インバータおよび電気機械を備える装置、インバータを動作させる方法、ならびに、コンピュータープログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】制御デバイス、インバータ、インバータおよび電気機械を備える装置、インバータを動作させる方法、ならびに、コンピュータープログラム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20250328BHJP
【FI】
H02M7/48 F
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020127471
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2021023097
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】10 2019 120 436.4
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518334554
【氏名又は名称】ヴァレオ ジーメンス エーアオトモーティヴェ ゲルマニー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Valeo Siemens eAutomotive Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114502
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 俊則
(72)【発明者】
【氏名】パナギオティス マンツァナス
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル キュブリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ダーバウム
(72)【発明者】
【氏名】アクレクサンダー ブッチャー
(72)【発明者】
【氏名】アクレクサンダー パウェルク
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン ハセノール
(72)【発明者】
【氏名】ハラルド ホフマン
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-041490(JP,A)
【文献】特開2011-182606(JP,A)
【文献】特開2010-057243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42- 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械(3)に給電するインバータ(2)のための制御デバイス(8)であって、該制御デバイス(8)は、パルス幅変調スイッチング信号(15)に、前記インバータ(2)のスイッチング素子(12)を作動させるためのキャリア周波数を提供するように設計されており、
該制御デバイス(8)は、
前記電気機械(3)の速度およびトルクによって規定される動作点を記述する動作点情報に応じて、第1の動作モードと、前記第1の動作モードとは異なる、部分負荷動作を記述する第2の動作モードとを想定し、
前記インバータ(2)のDC側電圧を記述する電圧情報(17)を取得し、
前記第1の動作モードにおいて、少なくとも前記DC側電圧の電圧区間(23)内において、前記DC側電圧が低下するにつれて前記キャリア周波数が上昇するように、前記電圧情報(17)に応じて前記キャリア周波数を決定し、
前記第2の動作モードにおいて、前記キャリア周波数を、不変に指定、または、前記動作点に応じて決定する、
ように設計されていることを特徴とする、制御デバイス。
【請求項2】
前記動作モード中に、前記キャリア周波数を、
前記電圧区間(23)の上限(22)より上では、一定の基礎周波数(21)に、および/または
前記電圧区間(23)の下限(24)より下では、一定の最大周波数(25)に、
決定するように適合されている、請求項1に記載の制御デバイス。
【請求項3】
キャリア周波数値を前記DC側電圧の値と関連付ける特性マップから、前記キャリア周波数を選択するように設計されている、請求項1または2に記載の制御デバイス。
【請求項4】
前記特性マップは、前記DC側電圧の前記値と前記キャリア周波数値との少なくとも部分的な線形関係を記述し、または
前記特性マップは、前記DC側電圧の離散値によって規定され、前記制御デバイス(8)は、前記離散値に関連付けられた前記キャリア周波数値の、部分的に線形の補間によって、前記キャリア周波数を決定するように設計されている、請求項3に記載の制御デバイス。
【請求項5】
前記DC側電圧に応じて前記キャリア周波数を決定することができる解析計算規則によって、前記キャリア周波数を決定するように設計されている、請求項1または2に記載の制御デバイス。
【請求項6】
更新された電圧情報(17)が受信されるときに、および/または
予め決められた、もしくは予め決めることができる時間の周期が経過した後に、および/または
前記電気機械(3)の電気的周期が完了した後に、および/または
スイッチング信号(15)の周期が完了した後に、
更新されたキャリア周波数を決定するように設計されている、請求項1乃至のいずれか一項に記載の制御デバイス。
【請求項7】
前記DC側電圧は、前記インバータ(2)に給電する直流電圧源(4)の中間回路電圧(16)または出力電圧(16a)である、請求項1乃至のいずれか一項に記載の制御デバイス。
【請求項8】
インバータ(2)であって、
中間回路コンデンサ(6)と、
スイッチング素子(12)であって、前記中間回路コンデンサ(6)に印加される電圧を、前記スイッチング素子(12)を作動させるスイッチング信号(15)に応じて、単相または多相の交流電圧に変換するように相互接続されているスイッチング素子(12)と、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の制御デバイス(8)と、
を備える、インバータ。
【請求項9】
請求項に記載のインバータ(2)と、前記交流電圧によって動作可能な電気機械(3)とを有する装置(1)。
【請求項10】
前記キャリア周波数の決定は、前記装置の動作中に次の関係
【数1】
を満たし、
ここで、
【数2】
は、キャリア周波数fPWM,n(n=1,2)のときに前記中間回路コンデンサ(6)に印加される前記電圧のピーク・バレー値を記述し、
PWM,1 は第1のキャリア周波数を記述し、
PWM,2 は第2のキャリア周波数を記述する、請求項に記載の装置。
【請求項11】
電気機械(3)に給電するためのインバータ(2)を動作させる方法であって、
制御デバイス(8)によって実行される以下の各ステップ、すなわち、
前記電気機械の速度およびトルクによって規定される動作点を記述する動作点情報を取得するステップと、
前記動作点が前記電気機械の部分負荷動作を記述するか否かを確認するステップと、
前記インバータ(2)のDC側電圧を記述する電圧情報(17)を取得するステップと、
部分負荷動作がない場合に想定される第1の動作モードにおいて、前記インバータ(2)を作動させるためのパルス幅変調スイッチング信号(15)のキャリア周波数を、DC側電圧の低下に伴って前記キャリア周波数が上昇するように、前記電圧情報(17)に応じて決定するステップと、
部分負荷動作がある場合に想定される第2の動作モードにおいて、前記キャリア周波数を固定して指定し、または、前記キャリア周波数を前記動作点に応じて決定するステップと、
前記スイッチング信号(15)を、前記インバータ(2)のスイッチング素子(12)に提供するステップと、
を備えている、方法。
【請求項12】
コンピュータによって実行されると、前記制御デバイス(8)によって実行される請求項11に記載の前記方法の前記ステップを前記コンピュータに実行させる命令を備えている、コンピュータープログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械に給電するインバータのための制御デバイスに関し、制御デバイスは、パルス幅変調スイッチング信号に、インバータのスイッチング素子を作動させるためのキャリア周波数を提供するように構成されている。
【0002】
加えて、本発明は、インバータ、インバータおよび電気機械を備える装置、インバータを動作させる方法、ならびに、コンピュータープログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
電気駆動される車両の重要性の高まりのため、そのような適用分野のインバータおよび関連する制御デバイスは、産業開発努力の焦点となっている。そのような制御デバイスは、既知であり、インバータのスイッチング素子を作動させるために、パルス幅変調スイッチング信号に一定のキャリア周波数を提供する。
【発明の概要】
【0004】
インバータの重要な素子は、その中間回路コンデンサである。これは、可能な限り一定である中間回路電圧を提供する必要がある。スイッチング素子の高周波スイッチング動作は、高周波電流を引き起こし、この高周波電流は、理想的には、直流電圧源が全体的に直流である電流を供給する間、理想的には、中間回路コンデンサを通って流れる。したがって、中間回路コンデンサはフィルターとして働く。しかしながら、高周波コンデンサ電流は、中間回路コンデンサにおいて高周波リップル電圧を発生させる。中間回路コンデンサの静電容量が高いほど、中間回路コンデンサの内部抵抗が低いほど、リップル電圧は低くなる。しかし、静電容量が増大した場合、中間回路コンデンサに必要なスペース、その重量および製造コストが増大する。この結果、特にエレクトロモビリティの分野における使用に関して、コストが不所望に高くなる。
【0005】
したがって、本発明はインバータを実現するためのより経済的な可能性を特定するという課題に対処するものであり、この場合、特に、中間回路コンデンサの設置スペース、重量およびコストが低減される。
【0006】
本発明によると、この課題は、冒頭で述べたタイプの制御デバイスが、インバータのDC側電圧を記述する電圧情報を取得するとともに、少なくともDC側電圧の電圧区間内で、かつ、少なくとも制御デバイスの動作モード中に、DC側電圧の低下に伴ってキャリア周波数が上昇するように、電圧情報に応じてキャリア周波数を決定するように設計されることにより、解決される。
【0007】
本発明は、インバータの中間回路コンデンサにおけるリップル電圧のピーク・バレー値が、DC側電圧とパルス幅変調スイッチング信号のキャリア周波数とによって極めて有意に決定されるという発見に基づくものである。一方では、パルス幅変調の変調指数の変化のため、低いDC側電圧において、それより高いDC側電圧における場合と比べ、リップル電圧のより高いピーク・バレー値が生じ、他方で、キャリア周波数の上昇に伴って、リップル電圧のより低いピーク・バレー値が生じることを発見した。したがって、本発明による制御デバイスは、例えばインバータに給電するバッテリーの放電が進行した場合には、DC側電圧の低下に伴ってより高いキャリア周波数を指定し、これによりリップル電圧のピーク・バレー値の上昇に対抗するように設計されている。
【0008】
したがって、本発明による制御デバイスを使用する場合、低い中間回路電圧における中間回路電圧の高いピーク・バレー値の発生に対して、インバータの中間回路コンデンサの静電容量を設計する必要がもはやない。その結果、従来の制御デバイスの使用と比較して、よりスペースを節減し、より軽量かつ安価な中間回路コンデンサを使用することができ、これは、インバータのより経済的な実現を都合よく可能にする。
【0009】
この状況において、キャリア周波数の上昇が実際に、スイッチング素子のスイッチング損失の増大につながることに留意されたい。しかし、これらのスイッチング損失は、DC側電圧の低下とともに再び減少する。さらに、DC側電圧およびキャリア周波数の変化は、インバータにおける伝導損失に対してわずかな影響しか有しない。したがって、少なくとも実際に関連する動作の場合に、本発明に従って提供される、DC側電圧が低下するにつれてキャリア周波数が上昇することの結果として、中間回路電圧のピーク・バレー値の低減を達成することが可能であり、それによって、スイッチング損失および伝導損失から構成される全体的な損失を、意図される最大のDC側電圧において生じる値を超えて増加させることはない。
【0010】
本発明による制御デバイスは、動作モード中に、電圧区間の上限より上では、キャリア周波数を一定の基礎周波数に決定するように、好ましくは設計されている。その結果、基礎周波数は、電圧区間が電圧区間の上限を下回るまで、高いDC側電圧に対して指定することができ、キャリア周波数は、電圧区間が上限を下回った後でのみ上昇させることができる。
【0011】
代替的にまたは加えて、本発明による制御デバイスは、電圧区間の下限より下では、動作モード中のキャリア周波数を、一定の最大周波数に決定するように設計されてもよい。その結果、最大周波数は、電圧区間が電圧区間の下限を下回った後、低いDC側電圧に対して指定することができる。これは、非常に低いDC側電圧においてキャリア周波数が不所望に高いレベルに達することを防止する。
【0012】
当然ながら、電圧区間が、ゼロボルトから意図される最大のDC側電圧までの範囲をカバーできることもまた、考えられる。
【0013】
本発明による制御デバイスの特に経済的な実施を可能にするために、後者は、DC側電圧の値にキャリア周波数値を割り当てる特性マップからキャリア周波数を選択するように、好ましくは設計されてもよい。特性マップは、例えば、ルックアップテーブルによって提供してもよい。通常、制御デバイスは、特性マップが格納されるメモリユニットを有する。
【0014】
特性マップが、DC側電圧の値とキャリア周波数値との間の少なくとも部分的に線形の関係を記述することを提供してもよい。代替的には、特性マップをDC側電圧の減少値によって規定し、制御デバイスが、減少値に関連付けられるキャリア周波数の、部分的に線形の補間によってキャリア周波数を決定するように設計することが可能である。
【0015】
特性マップの使用の代替として、本発明による制御デバイスは、DC側電圧に応じてキャリア周波数を決定することができる解析計算規則によって、キャリア周波数を決定するように設計されてもよい。
【0016】
特性マップまたは計算規則は、例えば、インバータおよび電気機械の具体的な構成についての測定またはシミュレーションによって決定したものでもよい。
【0017】
本発明による制御デバイスが、電気機械の速度およびトルクによって規定される動作点を記述する動作点情報に応じて、第1の前記動作モードとは異なる、部分負荷動作を記述する第2の動作モードを想定するとともに、第2の動作モードにおいてキャリア周波数を、不変に指定、または、動作点に応じて決定するように設計されても、都合がよい。この方法において、インバータまたは電気機械の部分負荷効率が、低いDC側電圧において低下することを、防止することが可能である。
【0018】
一般原則として、キャリア周波数は、第1の動作モードにおいて動作点に応じて決定してもよい。
【0019】
本発明による制御デバイスは、更新された電圧情報が受信されると、および/または、予め決められた、もしくは予め決めることができる時間の周期が経過した後に、および/または、電気機械の電気的周期が完了した後に、および/または、スイッチング信号の周期が完了した後に、更新されたキャリア周波数を決定するように設計されてもよい。この方法において、キャリア周波数は、適切な時点においてDC側電圧に適合させることができる。
【0020】
DC側電圧は、中間回路電圧、または、インバータに給電する直流電圧源、特にバッテリー、の出力電圧であってもよい。
【0021】
制御デバイスは、DC側電圧を検出して電圧情報を提供するように設計されている測定デバイスを、一般原則として備えてよい。しかし、制御デバイスは、電圧情報を外部の測定デバイスから入手可能な入力部を有することが、好ましい。
【0022】
本発明によって対処される課題は、中間回路コンデンサと、スイッチング素子であって、中間回路コンデンサに印加される電圧を、スイッチング素子を作動させるスイッチング信号に応じて単相または多相の交流電圧に変換するように相互接続されたスイッチング素子と、本発明による制御デバイスとを備えるインバータによって、さらに解決される。
【0023】
中間回路コンデンサは、単一のコンデンサ素子、または、並列におよび/もしくは直列に相互接続された複数のコンデンサ素子によって形成してもよい。
【0024】
インバータは、アナログの測定信号をデジタルの電圧情報に変換するように設計されている、アナログ-デジタル変換器もまた、含んでよい。
【0025】
本発明によって対処される課題は、本発明によるインバータと、交流電圧によって動作可能な電気機械とを有する装置によってもまた、解決される。
【0026】
好ましくは、キャリア周波数は、装置の動作中に、次の関係を満たすように決定する。
【数1】
ここで、
【数2】
は、キャリア周波数fPWM,n(n=1,2)において中間回路コンデンサに印加される電圧のピーク・バレー値を記述し、
PWM,1 は、第1のキャリア周波数を記述し、
PWM,2 は、第2のキャリア周波数を記述する。
【0027】
本発明によって対処される課題は、電気機械に給電するためにインバータを動作させる方法によって、さらに解決され、この方法は、制御デバイスによって実行される以下のステップ、すなわち、インバータのDC側電圧を記述する電圧情報を取得するステップと、インバータを作動させるパルス幅変調スイッチング信号のキャリア周波数を、DC側電圧の低下に伴ってキャリア周波数が上昇するように、電圧情報に応じて決定するステップと、インバータのスイッチング素子にスイッチング信号を提供するステップと、を含む、
【0028】
本発明による方法は、以下のステップ、すなわち、DC側電圧が電圧区間内にあるか否かを確認し、次いで、DC側電圧が電圧区間内にある場合、電圧情報に応じてキャリア周波数を決定するステップもまた、含んでよい。DC側電圧が電圧区間の上限を上回る場合、キャリア周波数は、一定の基礎周波数に決定することができる。代替的にまたは加えて、DC側電圧が電圧区間の下限を下回る場合、キャリア周波数は、一定の最大周波数に決定することができる。
【0029】
本発明による方法は、以下のステップ、すなわち、電気機械の速度およびトルクによって規定される動作点を記述する動作点情報を取得するステップと、動作点が電気機械の部分負荷動作を記述するか否かを確認するステップもまた、含んでよい。部分負荷動作がない場合に、電圧情報に応じてキャリア周波数を決定することを含む第1の動作モードを想定すること、および/または、部分負荷動作がある場合に、キャリア周波数が固定して指定されるか、もしくは、動作点に応じて決定される第2の動作モードを想定することが、提供されてもよい。
【0030】
最後に、本発明によって対処される課題は、コンピュータによって実行されると、制御デバイスによって実行される本発明による方法のステップをコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータープログラムによって、さらに解決される。
【0031】
本発明による制御デバイス、本発明によるインバータ、および、本発明による装置に関する全ての説明は、本発明による方法および本発明によるコンピュータープログラムに同様に転換することができ、それによって、上述した利点をこれらによっても達成することができる。
【0032】
本発明のさらなる利点および詳細は、これ以降に記載される例示的な実施形態から、および、図面に基づいて明らかになるであろう。これらの図面は概略的な表現である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明によるインバータの例示的な実施形態と本発明による制御デバイスの例示的な実施形態とを伴う、本発明による装置の例示的な実施形態のブロック図である。
図2図2はDC側電圧に対するキャリア周波数のグラフである。
図3図3は従来技術による装置の速度に対する中間回路電圧のピーク・バレー値のグラフである。
図4図4は、図1において示されている装置の例示的な形態での、図2において示されているキャリア周波数における、速度に対する中間回路電圧のピーク・バレー値のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、部分的または完全な電気駆動が可能な車両を駆動するように設計されている、インバータ2および電気機械3の例示的な実施形態を含む、装置1の例示的な実施形態のブロック図である。装置1は、この場合は高電圧バッテリーとして形成される直流電圧源4をさらに備える。
【0035】
インバータ2は、この場合はEMCフィルターとして形成されるフィルターデバイス5と、中間回路コンデンサ6と、電源ユニット7と、制御デバイス8の例示的な実施形態と、第1の測定デバイス9と、第2の測定デバイス10と、分かりやすくするために2つのブロックによって表されているアナログ-デジタル変換デバイス11とを備える。
【0036】
電源ユニット7は、半導体スイッチング素子、例えばIGBTまたはパワーMOSFETとして形成される複数のスイッチング素子12を備える。スイッチング素子12は、ハーフブリッジを形成するように対で接続されている。それぞれのスイッチング素子12の制御入力部13の上流に、ドライバ14が接続されている。分かりやすくするために、1つスイッチング素子12および1つのドライバ14にのみ、参照符号が付されている。ドライバ14は、制御デバイス8からパルス幅変調スイッチング信号15を受信する。パルス幅変調スイッチング信号15は、電気機械3に給電する電圧がハーフブリッジの対応するタップに供給されるように、提供される。したがって、電源ユニット7は、中間回路コンデンサ6によって平滑化される中間回路電圧16を、スイッチング信号15に応じて交流電圧に変換し、この場合は三相交流電圧に変換する。
【0037】
第1の測定デバイス9は、中間回路電圧を、インバータ2のDC側電圧として検出するとともに、アナログ測定信号をアナログ-デジタル変換デバイス11に提供するように設計されている。これは、アナログ測定信号をデジタル電圧情報17に変換する。第2の測定デバイス10は、それに合うように、相電流を検出するとともに、測定信号をアナログ-デジタル変換デバイス11に提供するように設計されている。アナログ-デジタル変換デバイス11は、第2の測定デバイス10のアナログ測定信号を、デジタル電流情報18に変換する。最後に、第3の測定デバイス10aは、電気機械3の速度を検出して、測定信号をアナログ-デジタル変換デバイス11に提供するように設計されている。アナログ-デジタル変換デバイス11は、第3の測定デバイス10aのアナログ測定信号を、デジタル速度情報18aに変換する。制御デバイス8は、電圧情報17と、電流情報18と、速度情報18aとを、入力側で受信する。
【0038】
電流情報18および速度情報18aを使用して、制御デバイス8は、電気機械3の速度およびトルクによって規定される動作点を記述する動作点情報を確定する。動作点から、電気機械3が部分負荷動作では動作していないと結論付けられる場合、制御デバイス8は第1の動作モードを想定する。他方で、動作点情報が、電気機械が部分負荷動作にあることを示す場合、制御デバイス8は第2の動作モードを想定し、この場合、パルス幅変調のキャリア周波数は、固定して指定されるか、またはそうでなければ、動作点に応じて決定される。
【0039】
制御デバイス8は、第1の動作モードにおけるパルス幅変調スイッチング信号15のキャリア周波数を、DC側電圧の低下に伴ってキャリア周波数が上昇するように、電圧情報17に応じて決定するように設計されている。このために、制御デバイス8はメモリユニット19を備え、メモリユニット19に、キャリア周波数値をDC側電圧の値と関連付ける特性マップが格納される。
【0040】
図2は、DC側電圧Uin に対するキャリア周波数fPWM のグラフである。このグラフは、DC側電圧の値とキャリア周波数値との部分的な線形関係を記述する特性マップを描写している。
【0041】
最大のDC側電圧20の場合、第1の動作モードにおいて基礎周波数21が指定される。電圧Uin が、例えば直流電圧源4が放電したため、電圧区間23の上限22まで低下すると、電圧区間23の下限24に達するまで、DC側電圧Uin の低下する値に対する特性マップは、キャリア周波数fPWM の上昇を提供する。DC側電圧Uin が下限24よりも下がると、特性マップは、キャリア周波数として一定の最大周波数25を提供する。
【0042】
電圧区間23において、特性マップは、装置1の動作中に次の関係
【数3】
を満たす。
ここで、
【数4】
は、キャリア周波数fPWM,n(n=1,2)において中間回路コンデンサに印加される電圧のピーク・バレー値を記述し、fPWM,1 は第1のキャリア周波数を記述し、fPWM,2 は第2のキャリア周波数を記述する。中間回路コンデンサ6に印加される電圧のピーク・バレー値uDC,pp は、次のように定義される。
【数5】
ここで、uDC(t) は、1電気モータ周期にわたる中間回路電圧16(図1を参照)の時間曲線を記述している。
【0043】
制御デバイス8は、キャリア周波数を定期的に更新するように設計されている。例えば、更新された電圧情報の受信時、予め決定された、もしくは予め決定めることができる時間の周期の経過後、電気機械3の電気的周期の完了後、または、対応するスイッチング信号15の周期の完了後に、更新される。上述した更新事象の組み合わせも可能である。
【0044】
制御デバイス8のさらなる例示的な実施形態によると、特性マップは、DC側電圧の離散値によって定義され、制御デバイス8は、離散値と関連付けられたキャリア周波数値の線形補間によって、キャリア周波数を決定するように設計されている。さらなる例示的な実施形態によると、特性マップを使用する代わりに、制御デバイス8は、キャリア周波数をDC側電圧に応じて決定することができる解析計算規則によって、キャリア周波数を決定するように設計される。最後に、さらなる例示的な実施形態によると、直流電圧源4の出力電圧16aがDC側電圧として使用されることが提供される。この場合、第1の測定デバイス9の代わりに、アナログ-デジタル変換デバイス11の対応する測定信号を提供する第1の測定デバイス9aを備える。さらなる例示的な実施形態によると、動作点情報の一部としてのトルクは、電流情報18に基づいて定められず、スイッチング信号15を定める制御システムの範囲内において、制御デバイス8によって推定される。
【0045】
以下、例示的な形態に基づいて、装置1の機能を、さらに詳細に記載する。
【0046】
このために、まず、図3は、従来技術による装置の速度frot に対する中間回路電圧のピーク・バレー値uDC,pp のグラフを示しており、この場合、キャリア周波数は常に一定の10kHzに設定されている。図3は、中間回路電圧が270Vのときのピーク・バレー値uDC,pp の曲線26と、中間回路電圧が350Vのときのピーク・バレー値uDC,pp の曲線27と、中間回路電圧が450Vのときのピーク・バレー値uDC,pp の曲線28とを示している。
【0047】
電気機械が界磁弱化動作に移行するか、または、最大のトルクにおいて動力制限に移行するおよそ4000min-1 あたりでの速度におけるピーク・バレー値が、270Vの低い中間回路電圧において最高であり、450Vの中間回路電圧において最低であることが分かる。これは、中間回路コンデンサの容量を、曲線26の最大値に適応させなければならないことを意味する。
【0048】
次の表1は、異なる中間回路電圧UDC 及びキャリア周波数fPWM=10kHzに対する、従来技術の装置の、中間回路コンデンサ6に印加される電圧のピーク・バレー値の最大値uDC,pp,max と、インバータのスイッチング損失の最大値PS,max と、インバータの線路損失の最大値PL,max と、インバータの全体的な損失の最大値PL,max とを示している。
【表1】
【0049】
図4は、キャリア周波数が予め可変に決められている装置1の例示的な実施形態の速度frot に対する中間回路電圧のピーク・バレー値uDC,pp のグラフである。図4には、中間回路電圧が270Vのときのピーク・バレー値uDC,pp の曲線29と、中間回路電圧が350Vのときのピーク・バレー値uDC,pp の曲線30と、中間回路電圧が450Vのときのピーク・バレー値uDC,pp の曲線31とが示されている。
【0050】
およそ4000min-1 あたりでの速度における曲線29,30,31の最大値が、図3における曲線28のレベルに基本的に適合されていることが分かる。これは、中間回路コンデンサ6は、一定のキャリア周波数を使用する場合よりも、はるかに低い静電容量を選択できることを意味する。
【0051】
次の表2は、例示的な実施形態による、異なる中間回路電圧UDC および適合されたキャリア周波数に対する、装置1の中間回路コンデンサ6に印加される電圧のピーク・バレー値の最大値uDC,pp,max と、インバータのスイッチング損失の最大値PS,max と、インバータの線路損失の最大値PL,max と、インバータの全体的な損失の最大値Ptot,max とを示している。
【表2】
【0052】
表1及び表2の比較から分かるように、中間回路電圧が低いほど、より高いキャリア周波数を使用することは、有利なことに、可能な限りの最も高い中間回路電圧UDC =450Vにおけるレベルを上回るスイッチング損失または全体的な損失の増加にはつながらない。
【符号の説明】
【0053】
2 インバータ
3 電気機械
4 直流電圧源
6 中間回路コンデンサ
8 制御デバイス
12 スイッチング素子
15 パルス幅変調スイッチング信号
16 中間回路電圧
16a 出力電圧
17 デジタル電圧情報
22 上限
23 電圧区間
24 下限
図1
図2
図3
図4