(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20250328BHJP
B60L 58/18 20190101ALI20250328BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20250328BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20250328BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20250328BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/00 P
B60L58/18
B60L1/00 L
H01M10/48 P
H01M10/44 P
(21)【出願番号】P 2021045740
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】小熊 宏和
(72)【発明者】
【氏名】山田 保雄
(72)【発明者】
【氏名】大石 新
(72)【発明者】
【氏名】長澤 稔
(72)【発明者】
【氏名】金丸 善博
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-70726(JP,A)
【文献】特開2011-109816(JP,A)
【文献】特開2015-139328(JP,A)
【文献】特表2015-505778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01M 10/42-10/48
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1バッテリの状態と、第2バッテリの状態とを取得する第1取得部と、
少なくとも、前記第1バッテリにより実際に出力された実出力電力である第1実出力電力の情報を表す第1実出力電力情報を取得する第2取得部と、
前記第1バッテリの状態に基づいて前記第1バッテリの出力上限値である第1出力上限値を算出し、前記第2バッテリの状態に基づいて前記第2バッテリの出力上限値である第2出力上限値を算出し、算出した前記第1出力上限値および前記第2出力上限値と、車両の他制御装置から要求された、走行用の動力を出力するモータに出力する要求電力と、前記第1実出力電力情報が表す前記第1実出力電力とに基づいて、前記第1バッテリにより出力された電力、または前記第1バッテリおよび前記第2バッテリにより出力された電力を前記モータに出力する電力に変換する電力変換部による電力の変換を制御する出力電力制御部と、
を備え、
前記出力電力制御部は、繰り返し前記電力変換部における電力変換を指示するための出力指示内容を決定する際に、前回の前記要求電力である第1要求電力と、前記第1要求電力に応じて出力された前記第1実出力電力との差分に基づいて、今回の前記要求電力を補正した第2要求電力を求め、前記第1バッテリから前記第2要求電力の電力が出力されるように、前記出力指示内容を決定
し、
前記出力電力制御部は、前記第2要求電力が前記第1出力上限値以下の第1閾値に達するタイミングで前記第2バッテリからの電力が追加して出力されるように、前記出力指示内容を決定し、
前記出力電力制御部は、前記第2要求電力が、前記第1出力上限値と前記第2出力上限値とを合わせた電力最大値よりも低い第2閾値に達するタイミングで、前記モータ以外で電力を消費する機器への電力供給を停止させる、
車両制御装置。
【請求項2】
前記第1バッテリは、高容量かつ低出力のバッテリであり、
前記第2バッテリは、前記第1バッテリよりも低容量かつ高出力のバッテリである、
請求項
1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記第2取得部は、前記第2バッテリにより実際に出力された実出力電力である第2実出力電力の情報を表す第2実出力電力情報をさらに取得し、
前記出力電力制御部は、前記第2要求電力が前記第1閾値に達した場合、
前記第2要求電力が前記第1出力上限値よりも低い場合には、前記第2要求電力と前記第1閾値との差分の電力が前記第2バッテリから出力されるように、前記出力指示内容を決定し、
前記第2要求電力と前記第1閾値との差分の電力と、前記第2実出力電力情報が表す前記第2実出力電力とが一致した以降は、前記第2要求電力と前記第1出力上限値との差分の電力が前記第2バッテリから出力されるように、前記出力指示内容を決定する、
請求項
1または請求項
2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記モータ以外で消費する電力である走行外消費電力を取得する第3取得部、をさらに備え、
前記第2閾値は、前記電力最大値から前記走行外消費電力を差し引いた値である、
請求項
1から請求項3のうちいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記出力電力制御部は、前記機器への電力供給を停止させたときから所定時間が経過したタイミングで、前記第2要求電力が少なくとも前記第2閾値となるように前記電力変換部における前記第2バッテリから出力される電力の変換を制御するとともに、前記機器への電力供給を復帰させる、
請求項
4に記載の車両制御装置。
【請求項6】
コンピュータが、
第1バッテリの状態と、第2バッテリの状態とを取得し、
少なくとも、前記第1バッテリにより実際に出力された実出力電力である第1実出力電力の情報を表す第1実出力電力情報を取得し、
前記第1バッテリの状態に基づいて前記第1バッテリの出力上限値である第1出力上限値を算出し、前記第2バッテリの状態に基づいて前記第2バッテリの出力上限値である第2出力上限値を算出し、算出した前記第1出力上限値および前記第2出力上限値と、車両の他制御装置から要求された、走行用の動力を出力するモータに出力する要求電力と、前記第1実出力電力情報が表す前記第1実出力電力とに基づいて、前記第1バッテリにより出力された電力、または前記第1バッテリおよび前記第2バッテリにより出力された電力を前記モータに出力する電力に変換する電力変換部による電力の変換を制御し、
繰り返し前記電力変換部における電力変換を指示するための出力指示内容を決定する際に、前回の前記要求電力である第1要求電力と、前記第1要求電力に応じて出力された前記第1実出力電力との差分に基づいて、今回の前記要求電力を補正した第2要求電力を求め、前記第1バッテリから前記第2要求電力の電力が出力されるように、前記出力指示内容を決定
し、
前記第2要求電力が前記第1出力上限値以下の第1閾値に達するタイミングで前記第2バッテリからの電力が追加して出力されるように、前記出力指示内容を決定し、
前記第2要求電力が、前記第1出力上限値と前記第2出力上限値とを合わせた電力最大値よりも低い第2閾値に達するタイミングで、前記モータ以外で電力を消費する機器への電力供給を停止させる、
車両制御方法。
【請求項7】
コンピュータに、
第1バッテリの状態と、第2バッテリの状態とを取得させ、
少なくとも、前記第1バッテリにより実際に出力された実出力電力である第1実出力電力の情報を表す第1実出力電力情報を取得させ、
前記第1バッテリの状態に基づいて前記第1バッテリの出力上限値である第1出力上限値を算出させ、前記第2バッテリの状態に基づいて前記第2バッテリの出力上限値である第2出力上限値を算出させ、算出させた前記第1出力上限値および前記第2出力上限値と、車両の他制御装置から要求された、走行用の動力を出力するモータに出力する要求電力と、前記第1実出力電力情報が表す前記第1実出力電力とに基づいて、前記第1バッテリにより出力された電力、または前記第1バッテリおよび前記第2バッテリにより出力された電力を前記モータに出力する電力に変換する電力変換部による電力の変換を制御させ、
繰り返し前記電力変換部における電力変換を指示するための出力指示内容を決定する際に、前回の前記要求電力である第1要求電力と、前記第1要求電力に応じて出力された前記第1実出力電力との差分に基づいて、今回の前記要求電力を補正した第2要求電力を求めさせ、前記第1バッテリから前記第2要求電力の電力が出力されるように、前記出力指示内容を決定させ
、
前記第2要求電力が前記第1出力上限値以下の第1閾値に達するタイミングで前記第2バッテリからの電力が追加して出力されるように、前記出力指示内容を決定させ、
前記第2要求電力が、前記第1出力上限値と前記第2出力上限値とを合わせた電力最大値よりも低い第2閾値に達するタイミングで、前記モータ以外で電力を消費する機器への電力供給を停止させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、ハイブリッド電気自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)や、プラグインハイブリッド自動車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)など、少なくとも、バッテリ(二次電池)により供給される電力によって駆動される電動モータによって走行する電動車両の開発が進んでいる。これらの電動車両では、バッテリに蓄電された電力量に基づいて電動モータの駆動を制御している。さらに、近年の電動車両のシステムには、例えば、低出力であるが高容量であるバッテリ(以下、「容量型バッテリ」という)と、低容量であるが高出力であるバッテリ(以下、「出力型バッテリ」という)というような異なる2種類のバッテリを組み合わせたものも実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
2種類のバッテリを組み合わせた電動車両のシステムでは、例えば、平地や緩やかな坂道を登坂するときなど、電動モータに必要となる駆動力が小さい通常の走行では、容量型バッテリから電力が供給され、例えば、急な坂道を登坂するときや加速をするときなど、電動モータに必要となる駆動力が大きくなった場合に、出力型バッテリからの電力が、容量型バッテリからの電力に追加して供給される。電動車両のシステムでは、電動車両の利用者(運転者)による運転の操作に応じて電動車両から要求されて、電動モータに電力が出力される。ここで、2種類のバッテリを組み合わせた電動車両のシステムにおいて容量型バッテリからの電力に出力型バッテリからの電力を追加する場合、電動車両からの要求に応じて電動モータに出力する電力が容量型バッテリにおける電力の出力上限値を超えるタイミングのときに、出力型バッテリから電力を出力させることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電動車両からの電力の要求は、運転者による運転の操作に依存する。そして、従来から、電動車両のシステムにおいて、電動車両から要求される電力量を推定によって求めることが行われている。この場合、電動車両から要求される電力量は、その推定精度によって変わってくる。このため、要求される電力量が容量型バッテリにおける電力の出力上限値を超えるタイミングも、推定精度によって変わってくる。つまり、実際に容量型バッテリの出力上限値を超えるタイミングと、推定したタイミングとに誤差が生じてしまう場合がある。
【0006】
電動車両から要求される電力量を多く推定してしまった場合、容量型バッテリの出力上限値を超えるタイミングを早めに推定し、実際に容量型バッテリが出力する電力が出力上限値を超える前に出力型バッテリから電力が出力されることになってしまう。この場合、容量型バッテリにおける電力の出力性能を最大限に引き出すことができず、電動車両において電動モータに出力する全体の電力量が少なくなってしまう。これは、電動車両の加速性能が低下してしまう要因となり得る。逆に、電動車両から要求される電力量を少なく推定してしまった場合、容量型バッテリの出力上限値を超えるタイミングを遅めに推定し、実際に容量型バッテリが出力上限値を超える電力を出力している状態となった後に、出力型バッテリから電力が出力されることになってしまう。この場合、容量型バッテリは過放電の状態となり、容量型バッテリの劣化を早めてしまう要因となり得る。
【0007】
さらに、出力型バッテリからの電力を追加する指示をした場合でも、すぐに出力型バッテリから電力が出力されて容量型バッテリからの電力に追加されるとは限らない。つまり、実際に出力型バッテリから電力が出力されるまでに遅延が生じてしまうことも考えられる。この場合も、出力型バッテリからの電力の出力が遅延している間に容量型バッテリが過放電の状態となり、容量型バッテリの劣化を早めてしまうことも考えられる。
【0008】
このように、従来の技術では、2種類のバッテリを組み合わせた電動車両において、一方のバッテリから出力されている電力に他方のバッテリから出力する電力を追加するタイミングを好適にすることができない場合があった。
【0009】
本発明は、上記の課題認識に基づいてなされたものであり、2種類のバッテリを組み合わせた電動車両において、一方のバッテリから出力されている電力に他方のバッテリから出力する電力を追加するタイミングを好適にすることができる車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る車両制御装置は、第1バッテリの状態と、第2バッテリの状態とを取得する第1取得部と、少なくとも、前記第1バッテリにより実際に出力された実出力電力である第1実出力電力の情報を表す第1実出力電力情報を取得する第2取得部と、前記第1バッテリの状態に基づいて前記第1バッテリの出力上限値である第1出力上限値を算出し、前記第2バッテリの状態に基づいて前記第2バッテリの出力上限値である第2出力上限値を算出し、算出した前記第1出力上限値および前記第2出力上限値と、車両の他制御装置から要求された、走行用の動力を出力するモータに出力する要求電力と、前記第1実出力電力情報が表す前記第1実出力電力とに基づいて、前記第1バッテリにより出力された電力、または前記第1バッテリおよび前記第2バッテリにより出力された電力を前記モータに出力する電力に変換する電力変換部による電力の変換を制御する出力電力制御部と、を備え、前記出力電力制御部は、繰り返し前記電力変換部における電力変換を指示するための出力指示内容を決定する際に、前回の前記要求電力である第1要求電力と、前記第1要求電力に応じて出力された前記第1実出力電力との差分に基づいて、今回の前記要求電力を補正した第2要求電力を求め、前記第1バッテリから前記第2要求電力の電力が出力されるように、前記出力指示内容を決定する、車両制御装置である。
【0011】
(2):上記(1)の態様において、前記出力電力制御部は、前記第2要求電力が前記第1出力上限値以下の第1閾値に達するタイミングで前記第2バッテリからの電力が追加して出力されるように、前記出力指示内容を決定するものである。
【0012】
(3):上記(2)の態様において、前記第1バッテリは、高容量かつ低出力のバッテリであり、前記第2バッテリは、前記第1バッテリよりも低容量かつ高出力のバッテリであるものである。
【0013】
(4):上記(2)または(3)の態様において、前記第2取得部は、前記第2バッテリにより実際に出力された実出力電力である第2実出力電力の情報を表す第2実出力電力情報をさらに取得し、前記出力電力制御部は、前記第2要求電力が前記第1閾値に達した場合、前記第2要求電力が前記第1出力上限値よりも低い場合には、前記第2要求電力と前記第1閾値との差分の電力が前記第2バッテリから出力されるように、前記出力指示内容を決定し、前記第2要求電力と前記第1閾値との差分の電力と、前記第2実出力電力情報が表す前記第2実出力電力とが一致した以降は、前記第2要求電力と前記第1出力上限値との差分の電力が前記第2バッテリから出力されるように、前記出力指示内容を決定するものである。
【0014】
(5):上記(2)から(4)のうちいずれか一態様において、前記出力電力制御部は、前記第2要求電力が、前記第1出力上限値と前記第2出力上限値とを合わせた電力最大値よりも低い第2閾値に達するタイミングで、前記モータ以外で電力を消費する機器への電力供給を停止させるものである。
【0015】
(6):上記(5)の態様において、車両制御装置は、前記モータ以外で消費する電力である走行外消費電力を取得する第3取得部、をさらに備え、前記第2閾値は、前記電力最大値から前記走行外消費電力を差し引いた値であるものである。
【0016】
(7):上記(6)の態様において、前記出力電力制御部は、前記機器への電力供給を停止させたときから所定時間が経過したタイミングで、前記第2要求電力が少なくとも前記第2閾値となるように前記電力変換部における前記第2バッテリから出力される電力の変換を制御するとともに、前記機器への電力供給を復帰させるものである。
【0017】
(8):この発明の一態様に係る車両制御方法は、コンピュータが、第1バッテリの状態と、第2バッテリの状態とを取得し、少なくとも、前記第1バッテリにより実際に出力された実出力電力である第1実出力電力の情報を表す第1実出力電力情報を取得し、前記第1バッテリの状態に基づいて前記第1バッテリの出力上限値である第1出力上限値を算出し、前記第2バッテリの状態に基づいて前記第2バッテリの出力上限値である第2出力上限値を算出し、算出した前記第1出力上限値および前記第2出力上限値と、車両の他制御装置から要求された、走行用の動力を出力するモータに出力する要求電力と、前記第1実出力電力情報が表す前記第1実出力電力とに基づいて、前記第1バッテリにより出力された電力、または前記第1バッテリおよび前記第2バッテリにより出力された電力を前記モータに出力する電力に変換する電力変換部による電力の変換を制御し、繰り返し前記電力変換部における電力変換を指示するための出力指示内容を決定する際に、前回の前記要求電力である第1要求電力と、前記第1要求電力に応じて出力された前記第1実出力電力との差分に基づいて、今回の前記要求電力を補正した第2要求電力を求め、前記第1バッテリから前記第2要求電力の電力が出力されるように、前記出力指示内容を決定する、車両制御方法である。
【0018】
(9):この発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、第1バッテリの状態と、第2バッテリの状態とを取得させ、少なくとも、前記第1バッテリにより実際に出力された実出力電力である第1実出力電力の情報を表す第1実出力電力情報を取得させ、前記第1バッテリの状態に基づいて前記第1バッテリの出力上限値である第1出力上限値を算出させ、前記第2バッテリの状態に基づいて前記第2バッテリの出力上限値である第2出力上限値を算出させ、算出させた前記第1出力上限値および前記第2出力上限値と、車両の他制御装置から要求された、走行用の動力を出力するモータに出力する要求電力と、前記第1実出力電力情報が表す前記第1実出力電力とに基づいて、前記第1バッテリにより出力された電力、または前記第1バッテリおよび前記第2バッテリにより出力された電力を前記モータに出力する電力に変換する電力変換部による電力の変換を制御させ、繰り返し前記電力変換部における電力変換を指示するための出力指示内容を決定する際に、前回の前記要求電力である第1要求電力と、前記第1要求電力に応じて出力された前記第1実出力電力との差分に基づいて、今回の前記要求電力を補正した第2要求電力を求めさせ、前記第1バッテリから前記第2要求電力の電力が出力されるように、前記出力指示内容を決定させる、プログラムである。
【発明の効果】
【0019】
上述した(1)~(9)の態様によれば、2種類のバッテリを組み合わせた電動車両において、一方のバッテリから出力されている電力に他方のバッテリから出力する電力を追加するタイミングを好適にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態に係る車両の構成の一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る車両が備える制御装置の制御によって走行用モータに供給される電力の変化の一例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る車両が備える制御装置の構成の一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る車両が備える制御装置において走行用モータに出力する電力を制御する際に実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し、本発明の車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0022】
[車両の構成]
図1は、実施形態に係る車両の構成の一例を示す図である。車両1は、走行用のバッテリ(二次電池)から供給される電力によって駆動される電動機(電動モータ)によって走行する電気自動車(EV:Electric Vehicle)(以下、単に、「車両」という)である。車両1は、低出力であるが高容量である容量型バッテリと、低容量であるが高出力である出力型バッテリとの異なる2種類のバッテリを搭載したマルチバッテリシステムの電気自動車であり、いずれか一方のバッテリから供給される電力、あるいは両方のバッテリから供給される電力の組み合わせで電動モータを駆動して走行する。本発明が適用される車両は、例えば、四輪の車両のみならず、鞍乗り型の二輪の車両や、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)の車両、さらには、アシスト式の自転車など、走行用のバッテリから供給される電力によって駆動される電動モータによって走行する車両の全般であってもよい。車両1は、例えば、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなど、燃料をエネルギー源とする内燃機関の稼働によって供給される電力をさらに組み合わせて走行するハイブリッド電気自動車(HEV)であってもよい。
【0023】
車両1は、例えば、走行用モータ10と、駆動輪12と、ブレーキ装置14と、減速機16と、PDU(Power Drive Unit)20と、電力センサ22と、容量型バッテリ30と、バッテリセンサ32と、電力センサ34と、VCU(Voltage Control Unit)40と、電力センサ42と、出力型バッテリ50と、バッテリセンサ52と、運転操作子70と、車両センサ80と、車輪速センサ82と、補機90と、制御装置100と、を備える。
【0024】
走行用モータ10は、車両1の走行用の回転電機である。走行用モータ10は、例えば、三相交流電動機である。走行用モータ10の回転子(ロータ)は、減速機16に連結されている。走行用モータ10は、容量型バッテリ30から供給される電力、あるいは容量型バッテリ30から供給される電力に出力型バッテリ50からVCU40を介して供給される電力を加えた電力によって駆動(回転)される。走行用モータ10は、自身の回転動力を減速機16に伝達させる。走行用モータ10は、車両1の減速時の運動エネルギーを用いた回生ブレーキとして動作して発電してもよい。走行用モータ10は、特許請求の範囲における「モータ」の一例である。
【0025】
駆動輪12に配置されたブレーキ装置14は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、を備える。ブレーキ装置14は、ブレーキペダル(不図示)に対する車両1の利用者(運転者)による操作によって発生した油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてもよい。ブレーキ装置14は、上記説明した構成に限らず、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0026】
減速機16は、例えば、デファレンシャルギアである。減速機16は、駆動輪12が連結された車軸に、走行用モータ10が連結された軸の駆動力、つまり、走行用モータ10の回転動力を伝達させる。減速機16は、例えば、複数の歯車や軸が組み合わされ、変速比(ギア比)に応じて走行用モータ10の回転速度を変速して車軸に伝達させる変速機構、いわゆる、トランスミッション機構を含んでもよい。減速機16は、例えば、走行用モータ10の回転動力を車軸に直接的に連結または分離するクラッチ機構を含んでもよい。
【0027】
PDU20は、例えば、AC―DCコンバータである。PDU20は、容量型バッテリ30から供給される、あるいは容量型バッテリ30からの供給に加えてVCU40を介して出力型バッテリ50から供給される直流の電力を、走行用モータ10を駆動するための交流の電力に変換して走行用モータ10に出力する。PDU20は、回生ブレーキとして動作した走行用モータ10により発電された交流の電力を直流の電力に変換して、容量型バッテリ30やVCU40(つまり、出力型バッテリ50)に出力する。PDU20は、電力の出力先に合わせて昇圧あるいは降圧してから出力してもよい。PDU20は、特許請求の範囲における「電力変換部」の一例である。
【0028】
PDU20における走行用モータ10側の電力配線には、電力センサ22が取り付けられている。電力センサ22は、例えば、電力計や、電圧計、電流計などの計測器を備え、これらの計測器の計測値に基づいて、PDU20が走行用モータ10に実際に出力している電力(以下、「PDU実出力電力」という)を計測する。電力センサ22は、計測したPDU20のPDU実出力電力の情報(以下、「PDU実出力電力情報」という)を制御装置100に出力する。PDU実出力電力は、特許請求の範囲における「第1実出力電力」の一例であり、PDU実出力電力情報は、特許請求の範囲における「第1実出力電力情報」の一例である。
【0029】
VCU40は、例えば、DC―DCコンバータである。VCU40は、出力型バッテリ50から供給(放電)された電力を、容量型バッテリ30がPDU20に電力を供給する際の電圧と同様の電圧に昇圧して、PDU20に出力する。VCU40は、PDU20により出力された、回生ブレーキとして動作した走行用モータ10が発電した電力を降圧して出力型バッテリ50に出力し、蓄電(充電)させる。VCU40は、特許請求の範囲における「電力変換部」の一例でもある。
【0030】
VCU40におけるPDU20側の電力配線には、電力センサ42が取り付けられている。電力センサ22の構成は、電力センサ22と同様である。電力センサ22は、計測器の計測値に基づいて、VCU40がPDU20に実際に出力している出力型バッテリ50からの電力(以下、「VCU実出力電力」という)を計測する。電力センサ42は、計測したVCU40のVCU実出力電力の情報(以下、「VCU実出力電力情報」という)を制御装置100に出力する。VCU実出力電力は、特許請求の範囲における「第2実出力電力」の一例であり、VCU実出力電力情報は、特許請求の範囲における「第2実出力電力情報」の一例である。
【0031】
容量型バッテリ30および出力型バッテリ50は、例えば、リチウムイオン電池などのように、充電と放電とを繰り返すことができる二次電池を蓄電部として備えるバッテリである。容量型バッテリ30と出力型バッテリ50とのそれぞれは、例えば、カセット式のバッテリパックなど、車両1に対して容易に着脱可能な構成であってもよいし、車両1に対する着脱が容易ではない据付式の構成であってもよい。例えば、容量型バッテリ30は、据付式の構成であり、出力型バッテリ50は、着脱可能な構成である。容量型バッテリ30と出力型バッテリ50とのそれぞれが備える二次電池は、例えば、リチウムイオン電池である。容量型バッテリ30と出力型バッテリ50とのそれぞれが備える二次電池としては、例えば、鉛蓄電池、ニッケル・水素電池、ナトリウムイオン電池などの他、電気二重層キャパシタなどのキャパシタ、または二次電池とキャパシタとを組み合わせた複合電池なども考えられるが、二次電池の構成は、いかなるものであってもよい。容量型バッテリ30と出力型バッテリ50とのそれぞれは、車両1の外部の充電器(不図示)から導入される電力を蓄え(充電し)、蓄えた電力を、車両1を走行させるために放電する。容量型バッテリ30と出力型バッテリ50とのそれぞれは、PDU20、あるいはVCU40を介して供給された、回生ブレーキとして動作した走行用モータ10が発電した電力を蓄え(充電し)、蓄えた電力を車両1の走行(例えば、加速)のために放電する。容量型バッテリ30は、特許請求の範囲における「第1バッテリ」の一例であり、出力型バッテリ50は、特許請求の範囲における「第2バッテリ」の一例である。
【0032】
容量型バッテリ30には、バッテリセンサ32が接続されている。バッテリセンサ32は、容量型バッテリ30の電圧や、電流、温度などの物理量を検出する。バッテリセンサ32は、例えば、電圧センサ、電流センサ、温度センサを備える。バッテリセンサ32は、電圧センサによって容量型バッテリ30の電圧を検出し、電流センサによって容量型バッテリ30の電流を検出し、温度センサによって容量型バッテリ30の温度を検出する。バッテリセンサ32は、検出した容量型バッテリ30の電圧値、電流値、温度などの情報(以下、「容量型バッテリ情報」という)を制御装置100に出力する。
【0033】
容量型バッテリ30におけるPDU20側の電力配線には、電力センサ34が取り付けられている。電力センサ34の構成は、電力センサ22や電力センサ42と同様である。電力センサ34は、計測器の計測値に基づいて、容量型バッテリ30がPDU20に実際に出力している電力(以下、「容量型実出力電力」という)を計測する。電力センサ34が備える計測器は、バッテリセンサ32が備える電圧センサや電流センサを共通するものであってもよい。電力センサ34は、計測した容量型バッテリ30の容量型実出力電力の情報(以下、「容量型実出力電力情報」という)を制御装置100に出力する。容量型バッテリ30により出力された電力のみが走行用モータ10に供給されている場合、容量型実出力電力は、特許請求の範囲における「第1実出力電力」の一例でもあり、容量型実出力電力情報は、特許請求の範囲における「第1実出力電力情報」の一例でもある。
【0034】
出力型バッテリ50には、バッテリセンサ52が接続されている。バッテリセンサ52は、出力型バッテリ50の電圧や、電流、温度などの物理量を検出する。バッテリセンサ52の構成は、バッテリセンサ32と同様である。バッテリセンサ52は、検出した出力型バッテリ50の電圧値、電流値、温度などの情報(以下、「出力型バッテリ情報」という)を制御装置100に出力する。
【0035】
運転操作子70は、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ステアリングホイール、異形ステアリングホイール、ジョイスティック、その他の操作子を含む。運転操作子70には、車両1の利用者(運転者)によるそれぞれの操作子に対する操作の有無、あるいは操作量を検出するセンサが取り付けられている。運転操作子70は、センサの検出結果を、制御装置100に出力する。例えば、アクセルペダルには、アクセル開度センサが取り付けられ、運転者によるアクセルペダルの操作量を検出し、検出した操作量をアクセル開度として制御装置100に出力する。例えば、ブレーキペダルには、ブレーキ踏量センサが取り付けられ、運転者によるブレーキペダルの操作量を検出し、検出した操作量をブレーキ踏量として制御装置100に出力する。アクセル開度は、車両1の走行において運転者が、容量型バッテリ30や出力型バッテリ50から走行用モータ10への電力の供給を制御装置100に指示(要求)するための情報である。言い換えれば、アクセル開度は、運転者によって要求された走行用モータ10に供給させる電力量を表す情報である。アクセル開度センサは、特許請求の範囲における「他制御装置」の一例である。
【0036】
車両センサ80は、車両1の走行状態を検出する。車両センサ80は、例えば、車両1の各駆動輪12の回転速度(回転数)など、それぞれの駆動輪12の車輪速を検出する車輪速センサ82を含む。車輪速センサ82は、例えば、それぞれの駆動輪12が連結された車軸の部分に取り付けられ、車軸の回転数を検出することにより、各駆動輪12の車輪速を検出する。車輪速センサ82は、検出したそれぞれの駆動輪12の車輪速を表す情報(以下、「車輪速情報」という)を制御装置100に出力する。車両センサ80は、例えば、車両1の速度を検出する車速センサや、車両1の加速度を検出する加速度センサを含んでもよい。車速センサは、例えば、速度計算機を備え、車両1の各駆動輪12に取り付けられた車輪速センサ82により検出された車輪速を統合することにより、車両1の速度(車速)を導出(検出)してもよい。車両センサ80は、例えば、車両1の鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサや、車両1の向きを検出する方位センサなどを含んでもよい。車両センサ80は、検出した車両1の走行状態を表す情報(以下、「走行状態情報」という)を制御装置100に出力する。走行状態情報には、車輪速情報を含んでもよい。
【0037】
補機90は、例えば、空調装置(いわゆる、エア・コンディショナー;air conditioner)や、電源供給用のアクセサリソケット(いわゆる、シガーソケット)など、車両1が備える車載機器である。補機90は、例えば、USB(Universal Serial Bus)端子や、家庭用の電化製品やパーソナルコンピュータを動作させるための商用電源のコンセントなどであってもよい。補機90は、車両1の走行に直接的に関係する機器ではないが、容量型バッテリ30やVCU40を介して出力型バッテリ50から供給される電力を消費して動作する、つまり、走行用モータ10以外で電力を消費する機器である。補機90には、容量型バッテリ30や出力型バッテリ50とは別のものとして車両1に搭載された、例えば、鉛蓄電池などの不図示のバッテリ(以下、「鉛バッテリ」という)により出力された電力で動作する機器を含んでもよい。
【0038】
制御装置100は、運転操作子70が備えるそれぞれのセンサにより出力された検出結果、つまり、車両1の利用者(運転者)によるそれぞれの操作子に対する操作に応じて、PDU20およびVCU40の稼働や動作を制御する。例えば、制御装置100は、アクセル開度センサが検出したアクセル開度に応じて、PDU20およびVCU40の稼働や動作を制御する。このとき、制御装置100は、例えば、自身が制御している変速機構の変速比(ギア比)や、車両センサ80により出力された走行状態情報に含まれる車速なども考慮して、PDU20およびVCU40の稼働や動作を制御する。これにより、制御装置100は、走行用モータ10への電力の供給量、つまり、走行用モータ10の駆動力を制御する。
【0039】
制御装置100は、例えば、モータ制御部や、PDU制御部、バッテリ制御部、VCU制御部というような、それぞれ別体の制御装置で構成されてもよい。制御装置100は、例えば、モータECU(Electronic Control Unit)や、PDU-ECU、バッテリECU、VCU-ECUといった制御装置に置き換えられてもよい。
【0040】
制御装置100や、制御装置100を構成するモータ制御部と、PDU制御部と、バッテリ制御部と、VCU制御部とは、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。これらの構成要素の機能のうち一部または全部は、専用のLSIによって実現されてもよい。プログラムは、予め車両1が備えるHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体が車両1が備えるドライブ装置に装着されることで車両1が備えるHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0041】
制御装置100は、車両1が走行する際に、容量型バッテリ30からの電力の放電および容量型バッテリ30への電力の充電と、出力型バッテリ50からの電力の放電および出力型バッテリ50への電力の充電とを制御する。車両1における通常の走行において、制御装置100は、容量型バッテリ30からの電力をPDU20に出力させる。これにより、車両1は、容量型バッテリ30から供給(放電)された電力で駆動された走行用モータ10の回転動力によって走行する。さらに、例えば、急な坂道を登坂するときや加速をするときなど、車両1が走行するために走行用モータ10の大きな駆動力が必要な場合において、容量型バッテリ30が出力することができる上限値(以下、「出力上限値」という)を超える電力の供給が必要な場合、制御装置100は、VCU40に、出力型バッテリ50からの電力をPDU20に出力させる。つまり、制御装置100は、容量型バッテリ30から出力される電力に、出力型バッテリ50から出力される電力を追加させる。これにより、車両1は、容量型バッテリ30から供給(放電)された電力と、出力型バッテリ50から供給(放電)された電力とを合わせた電力で駆動された走行用モータ10の回転動力によって走行する。容量型バッテリ30の出力上限値は、バッテリセンサ32により出力された容量型バッテリ情報に基づいて算出することができる。より具体的には、例えば、容量型バッテリ情報に含まれる電圧値と電流値とに基づいて容量型バッテリ30の充電状態を表すSOC(State Of Charge:充電率)を求め、求めたSOCと容量型バッテリ情報に含まれる温度の情報とに基づいて、容量型バッテリ30における現時点での出力上限値を算出することができる。出力型バッテリ50の出力上限値も、同様に算出することができる。以下の説明においては、容量型バッテリ30の出力上限値を「容量型出力上限値」といい、出力型バッテリ50の出力上限値を「出力型出力上限値」という。容量型出力上限値は、特許請求の範囲における「第1出力上限値」の一例であり、出力型出力上限値は、特許請求の範囲における「第2出力上限値」の一例である。
【0042】
制御装置100は、車両1の走行モードに基づいて、それぞれのバッテリからの電力の放電およびバッテリへの電力の充電を制御してもよい。この場合、車両1の走行モードは、制御装置100が、運転操作子70により出力されたアクセル開度やブレーキ踏量、車両センサ80により出力された走行状態情報に基づいて自動的に切り替えてもよいし、例えば、運転操作子70に設けられた走行モード切り替えスイッチ(不図示)によって、運転者が手動で意図的に切り替えてもよい。運転者が手動で走行モードを切り替える場合、走行モード切り替えスイッチ(不図示)は、運転者によって設定(指定)された走行モードの情報(以下、「走行モード情報」という)を制御装置100に出力する。
【0043】
このように、制御装置100は、運転者による運転操作子70の操作に応じてPDU20およびVCU40の稼働や動作を制御し、容量型バッテリ30や出力型バッテリ50から電力を出力させて、走行用モータ10を駆動させる。制御装置100は、特許請求の範囲における「車両制御装置」の一例である。
【0044】
[走行用モータに対する電力供給の制御]
図2は、実施形態に係る車両1が備える制御装置100の制御によって走行用モータ10に供給される電力の変化の一例を示す図である。
図2には、走行用モータ10に供給される電力[kW]の変化の一例を上側に示し、それぞれのバッテリが出力する電力[kW]の変化の一例を下側に示し、制御装置100の制御によって時間[秒]ごとに変わるそれぞれの電力[kW]の変化の関係を対応付けている。
【0045】
制御装置100は、アクセル開度に示された運転者の要求に応じて、容量型バッテリ30や出力型バッテリ50からの走行用モータ10への電力の供給を制御するための電力制御信号を、PDU20およびVCU40に出力する。電力制御信号は、PDU20やVCU40に電力変換を指示するための信号である。制御装置100は、例えば、車輪速センサ82により出力された車輪速情報が表す現在の駆動輪12の車輪速や、車両センサ80により出力された走行状態情報が表す現在の車両1の速度(車速)などに基づいて、P(Proportional)、I(Integral)、D(Differential)制御を行い、指示する電力をそれぞれのバッテリから出力させるためにPDU20やVCU40が備えるスイッチング素子などの電気回路の動作やパラメータを決定する。制御装置100は、決定した電気回路の動作やパラメータの内容を表す電力制御信号を生成して、PDU20およびVCU40に出力する。電力制御信号は、特許請求の範囲における「出力指示内容」の一例である。
【0046】
ところで、容量型バッテリ30や出力型バッテリ50から出力された電力は、走行用モータ10に供給されるまでの間に、PDU20やVCU40が備える電気回路を含めた様々な電気回路を通過する。さらに、車両1の走行においては、減速機16を含む変速機構の変速比(ギア比)なども変化する。つまり、車両1では、電力が通過する電気回路における効率やギアの効率などが、走行用モータ10に供給される電力、つまり、車両1の走行に関係する。このため、車両1では、制御装置100が、アクセル開度が表す運転者に要求された電力(以下、「要求電力」という)に制御するための電力制御信号を生成してPDU20やVCU40に出力した場合でも、必ずしも要求電力と同じ(要求電力が反映された)電力が走行用モータ10に供給されるとは限らない。そこで、制御装置100は、走行用モータ10に実際に出力しているPDU実出力電力(容量型実出力電力であってもよい)と、そのときの要求電力との差分とに基づいて、次の要求電力を補正し、補正した要求電力が走行用モータ10に供給されるように制御するための電力制御信号を生成してPDU20やVCU40に出力する。言い換えれば、制御装置100は、今回の要求電力(以下、「補正要求電力」という)を表す電力制御信号を生成する際に、PID制御に加えて、前回出力した電力制御信号が表す前回の要求電力(以下、「出力済要求電力」という)と、この出力済要求電力に応じて出力されたPDU実出力電力とに基づいたフィードバック制御を行う。出力済要求電力は、特許請求の範囲における「第1要求電力」の一例であり、補正要求電力は、特許請求の範囲における「第2要求電力」の一例である。
【0047】
図2の上側には、PDU実出力電力Paに近づくように、補正要求電力Prをフィードバック制御している場合の一例を示している。そして、
図2の下側には、電力制御信号に応じて容量型バッテリ30から出力される出力電力P-Eが、容量型バッテリ30の容量型出力上限値Max-Eまで変化している一例を示している。
【0048】
さらに、制御装置100は、容量型バッテリ30が出力する電力が容量型出力上限値を超えるタイミングで、容量型バッテリ30から出力される電力に、出力型バッテリ50から出力される電力を追加させる。このとき、例えば、出力型バッテリ50が電力を出力していない状態である場合、電力制御信号に応じてVCU40が直ちに動作を開始したとしても、出力型バッテリ50からの電力が直ちにVCU40からPDU20側の電力配線に出力されるとは限らない。つまり、VCU40においても、出力型バッテリ50から出力された電力がVCU40内の様々な電気回路を通過するため、電力制御信号に応じた電力がVCU40から出力されるまでには遅延がある。そこで、制御装置100は、VCU40における電力出力の遅延を考慮して、補正要求電力が第1閾値に達するタイミングで、出力型バッテリ50からの電力を出力させるような電力制御信号を生成して、VCU40に出力する。第1閾値は、出力型バッテリ50の電力がVCU40から出力されるまでの遅延時間に基づいて、容量型出力上限値Max-E以下の低い電力値を設定する。このとき、制御装置100は、補正要求電力が第1閾値に達した場合において、補正要求電力が容量型出力上限値よりも低いときには、補正要求電力と第1閾値との差分の電力がVCU40から出力されるように、VCU40が備える電気回路の動作やパラメータを決定し、決定した電気回路の動作やパラメータの内容を表す電力制御信号を生成して、VCU40に出力する。その後、制御装置100は、補正要求電力がVCU実出力電力(PDU実出力電力から容量型実出力電力を差し引いた電力であってもよい)と一致したタイミングから以降は、補正要求電力と容量型出力上限値との差分の電力がVCU40から出力されるように、VCU40が備える電気回路の動作やパラメータを決定し、決定した電気回路の動作やパラメータの内容を表す電力制御信号を生成して、VCU40に出力する。
【0049】
図2の上側には、補正要求電力Prが容量型出力上限値Max-Eを超える(一致する)タイミングTよりもVCU40の遅延時間Dvだけ早いタイミングTbのときの電力[kW]を、第1閾値Th1に設定している場合の一例を示している。そして、
図2の下側には、タイミングTbのときに、制御装置100が、VCU40に対する電力制御信号Sc-Vを出力している場合の一例を示している。これにより、
図2の下側に示したように、電力制御信号Sc-Vから遅延時間Dvだけ遅れて、出力型バッテリ50からの電力が、出力電力P-PとしてVCU40から出力される。さらに、
図2の下側には、タイミングTのときに、制御装置100が、VCU40に出力している電力制御信号Sc-Vを変更している場合の一例を示している。
図2の下側には、電力制御信号Sc-Vに応じて出力される出力電力P-Pが、出力型バッテリ50の出力型出力上限値Max-Pまで変化している一例を示している。
【0050】
ところで、車両1が走行しているとき、例えば、容量型バッテリ30から出力される出力電力P-Eは、補機90によって車両1の走行以外の目的でも消費される。この場合、車両1の走行のために走行用モータ10に供給することができる電力は、容量型バッテリ30と出力型バッテリ50とのそれぞれの出力上限値を合わせた、車両1における電力最大値ではなくなる。言い換えれば、補正要求電力に応じて走行用モータ10に供給することができる出力上限値(以下、「要求出力上限値」という)は、電力最大値から、補機90によって車両1の走行以外に消費される電力(以下、「走行外消費電力」という)の分だけ低くなる。この場合、例えば、車両1の加速性能などが低下することになる。そこで、制御装置100は、車両1が走行において、より大きな駆動力が走行用モータ10に必要な場合には、補機90に供給している電力を一時的に停止させて、より多くの電力を走行用モータ10に供給させる。より具体的には、制御装置100は、補正要求電力が第2閾値に達するタイミングで、補機90に供給している電力を一時的に停止させ、最大電力値までの電力を走行用モータ10に供給することができるようにする。制御装置100は、補機90に供給している電力を一時的に低減させてもよい。この場合、制御装置100は、一部の補機90(例えば、空調装置)に供給している電力を停止させてもよいし、補機90に供給している全体の電力を低減させてもよい。補機90が、例えば、電力配線からの電力を変換する電力変換器により出力された電力で動作する場合、制御装置100は、この電力変換器に供給する電力を一時的に停止させてもよい。第2閾値は、車両1における電力最大値から、補機90における走行外消費電力を差し引いた電力値を設定する。走行外消費電力は、例えば、制御装置100が動作させた補機90が備えるそれぞれの機器の定格値の電力の合計を求めることによって得てもよいし、補機90におけるPDU20側の電力配線に取り付けられた不図示の電力センサ(例えば、電力計や、電圧計、電流計などの計測器)の計測値から求めることによって得てもよい。補機90に不図示の電力センサが取り付けられている場合、この不図示の電力センサは、計測した補機90の実消費電力の情報を、走行外消費電力の情報(以下、「走行外消費電力情報」という)として制御装置100に出力する。
【0051】
制御装置100は、車両1の走行モードが、例えば、車両1の加速性能などを優先する性能優先走行モードである場合に、補機90に供給している電力を一時的に停止させて、より多くの電力を走行用モータ10に供給させるようにしてもよい。これにより、運転者は、車両1における通常の走行モードの走行性能と、性能優先走行モードの走行性能との違いを体感(実感)することができる。性能優先走行モードは、例えば、スポーツモードなどといわれるような走行モードである。
【0052】
補機90に不図示の鉛バッテリにより出力された電力で動作する機器を含んでいる場合、制御装置100は、これらの機器への電力の供給を停止あるいは低減させなくてもよい。ただし、例えば、鉛バッテリへの充電を容量型バッテリ30や出力型バッテリ50により出力される電力で行っている場合など、不図示の鉛バッテリからの電力で動作する機器が動作することによって要求出力上限値が低くなるような場合には、制御装置100は、これらの機器への電力の供給を停止あるいは低減させるようにしてもよい。
【0053】
図2の上側には、車両1における要求出力上限値Max-Rから補機90が消費している走行外消費電力Peを差し引いた電力[kW]を、第2閾値Th2に設定している場合の一例を示している。そして、
図2の上側には、補正要求電力Prが第2閾値Th2を超えるタイミングTsのときに、制御装置100が、補機90に供給している電力を停止させ、停止期間Psが経過したタイミングTrのときに、制御装置100が、補機90への電力の供給を再開(復帰)させている場合の一例を示している。これにより、
図2の上側に示したように、走行外消費電力Peは、タイミングTsのときから低くなり始めて、例えば、タイミングTseのときに0[kW]となり、停止期間Psが経過したタイミングTrのときから高くなり始めて、例えば、タイミングTreのときに元の走行外消費電力Peの電力[kW]に戻る。停止期間Psは、補機90が停止しても運転者に不都合を感じさせない(例えば、空調装置が停止しても運転者に不快を感じさせない)時間である。停止期間Psは、例えば、10[秒]である。
【0054】
図2では、制御装置100が、停止期間Psが経過したタイミングTrのときに補機90への電力の供給を再開させる場合を示している、つまり、補機90の動作が停止あるいは制限される期間が、タイミングTsからタイミングTreまでの間の期間である場合を示している。しかし、制御装置100は、補機90の動作が停止あるいは制限される期間が、停止期間Psとなるように、補機90に供給している電力を制御してもよい。この場合、制御装置100は、例えば、補機90への電力の供給を再開してから補機90の動作が復帰するまでに要する時間(
図2の上側では、タイミングTrからタイミングTreまでの間の期間)だけ前倒しして、補機90への電力の供給を再開させるように制御すればよい。補機90への電力の供給を再開させる(補機90の動作を復帰させる)タイミングは、所定の停止期間が経過したタイミングに限定されない。例えば、制御装置100は、補正要求電力が第2閾値を下回ったタイミングで、補機90への電力の供給を再開させるようにしてもよい。例えば、制御装置100は、車両1の走行モードが性能優先走行モードから、例えば、通常の走行モードなどの性能優先走行モード以外の走行モードに切り替わった(切り替えられた)タイミングで、補機90への電力の供給を再開させるようにしてもよい。例えば、制御装置100は、不図示の鉛バッテリが出力する電圧が、所定値(例えば、11[V])を下回ったタイミングで、補機90への電力の供給を再開させるようにしてもよい。
【0055】
このようにして、制御装置100は、PID制御に加えて、出力済要求電力と、この出力済要求電力に応じて出力されたPDU実出力電力とに基づいたフィードバック制御を行うことにより、容量型バッテリ30や出力型バッテリ50から、補正要求電力をより正確に反映した電力を走行用モータ10に供給させる。これにより、制御装置100は、容量型バッテリ30から出力されている電力に、出力型バッテリ50から出力される電力を追加する際のより好適なタイミング(より具体的には、補正要求電力に応じて容量型バッテリ30が出力する電力が容量型出力上限値を超えるタイミング)を正確に把握して、出力型バッテリ50からの電力をVCU40に出力させるように制御することができる。さらに、制御装置100は、より好適なタイミング(より具体的には、第2閾値を超えるタイミング)で補機90に供給している電力を一時的に停止させることにより、補正要求電力に応じた電力が走行外消費電力の分だけ低くなってしまわないように、走行用モータ10に、要求出力上限値までの電力を供給させることができる。
【0056】
[制御装置の構成]
図3は、実施形態に係る車両1が備える制御装置100の構成の一例を示す図である。制御装置100は、例えば、バッテリ状態取得部120と、実電力取得部140と、補機電力取得部160と、出力電力制御部180と、を備える。
図3には、走行用モータ10に供給する電力の制御に関連する制御装置100の構成要素を示している。
【0057】
バッテリ状態取得部120は、バッテリセンサ32により出力された容量型バッテリ情報と、バッテリセンサ52により出力された出力型バッテリ情報とのそれぞれを取得する。バッテリ状態取得部120は、取得した容量型バッテリ情報と出力型バッテリ情報とのそれぞれを、出力電力制御部180に出力する。バッテリ状態取得部120は、特許請求の範囲における「第1取得部」の一例である。
【0058】
実電力取得部140は、電力センサ22により出力されたPDU実出力電力情報と、電力センサ34により出力された容量型実出力電力情報と、電力センサ42により出力されたVCU実出力電力情報とのそれぞれを取得する。実電力取得部140は、取得したPDU実出力電力情報と、容量型実出力電力情報と、VCU実出力電力情報とのそれぞれを、出力電力制御部180に出力する。実電力取得部140は、特許請求の範囲における「第2取得部」の一例である。
【0059】
補機電力取得部160は、補機90が消費する電力(走行外消費電力)を取得する。補機90に不図示の電力センサが取り付けられている場合、補機電力取得部160は、不図示の電力センサにより出力された走行外消費電力情報を取得する。補機電力取得部160は、例えば、補機90がオン状態であるかオフ状態であるかなど情報や、補機90の現在の利用状況を表す情報と、取得した走行外消費電力の情報とを、出力電力制御部180に出力する。補機電力取得部160は、特許請求の範囲における「第3取得部」の一例である。
【0060】
出力電力制御部180は、変速機構のギア比の情報や、アクセル開度の情報、車速の情報などに基づいて、PDU20から走行用モータ10に出力(供給)させる電力を制御する。このとき、出力電力制御部180は、バッテリ状態取得部120により出力された容量型バッテリ情報と出力型バッテリ情報とのそれぞれに基づいて、それぞれのバッテリにおける現在のSOCを算出し、さらに、それぞれのバッテリにおける出力上限値を算出する。より具体的には、出力電力制御部180は、容量型バッテリ情報に含まれる電圧値と電流値とに基づいて容量型バッテリ30における現在のSOC(容量型バッテリSOC)を算出し、算出した容量型バッテリSOCと容量型バッテリ情報に含まれる温度の情報とに基づいて、容量型バッテリ30の容量型出力上限値を算出する。さらに、出力電力制御部180は、出力型バッテリ情報に含まれる電圧値と電流値とに基づいて出力型バッテリ50における現在のSOC(出力型バッテリSOC)を算出し、算出した出力型バッテリSOCと出力型バッテリ情報に含まれる温度の情報とに基づいて、出力型バッテリ50の出力型出力上限値を算出する。出力電力制御部180は、さらに、それぞれのバッテリ情報に含まれる対応するバッテリの内部抵抗値を用いて、容量型出力上限値および出力型出力上限値を算出してもよい。容量型バッテリSOCと出力型バッテリSOCとのそれぞれは、バッテリ状態取得部120が算出し、容量型バッテリ情報や出力型バッテリ情報に含めて出力電力制御部180に出力してもよい。その後、出力電力制御部180は、算出した容量型出力上限値および出力型出力上限値と、アクセル開度が表す要求電力とに基づいて、容量型バッテリ30により出力された電力、または容量型バッテリ30および出力型バッテリ50により出力された電力を変換させてPDU20から走行用モータ10に出力(供給)させる電力を決定する。
【0061】
出力電力制御部180は、実電力取得部140により出力されたPDU実出力電力情報が表すPDU実出力電力と、そのときの補正要求電力(つまり、前回のアクセル開度が表す要求電力に応じて決定した後に補正して出力した出力済要求電力)との差分とに基づいて、今回決定した電力を補正し、補正要求電力とする。より具体的には、出力電力制御部180は、出力済要求電力に応じて出力されたPDU実出力電力が出力済要求電力よりも低い場合には、今回決定した電力を高くするように補正し、出力済要求電力に応じて出力されたPDU実出力電力が出力済要求電力よりも高い場合には、今回決定した電力を低くするように補正して、補正要求電力とする。このとき出力電力制御部180が今回決定した電力を高くしたり低くしたりして補正する補正量に関しては、特に限定されない。例えば、補正量は、PDU実出力電力と出力済要求電力との差分の1/2の電力量であってもよいし、所定の電力量であってもよいし、その他の考え方に基づいた電力量であってもよい。
【0062】
出力電力制御部180は、補正要求電力が第1閾値以上の電力であるか否かを判定する。補正要求電力が第1閾値以上の電力ではない(第1閾値未満の電力である)場合、出力電力制御部180は、補正要求電力を容量型バッテリ30から出力させるための電力制御信号を生成し、生成した電力制御信号をPDU20に出力する。この場合、出力電力制御部180は、出力型バッテリ50から電力を出力させない電力制御信号を生成してVCU40に出力してもよい。一方、補正要求電力が第1閾値以上の電力である場合、出力電力制御部180は、容量型出力上限値までの間の補正要求電力を容量型バッテリ30から出力させ、さらに、第1閾値を超える分の補正要求電力を出力型バッテリ50から出力させるための電力制御信号を生成する。このとき、出力電力制御部180は、補正要求電力が容量型出力上限値よりも低いときには、補正要求電力から第1閾値を減算した電力を出力型バッテリ50から出力させ、補正要求電力がVCU実出力電力と一致したときから、補正要求電力から容量型出力上限値を減算した電力を出力型バッテリ50から出力させるための電力制御信号を生成する。出力電力制御部180は、生成した電力制御信号をPDU20およびVCU40に出力する。
【0063】
さらに、出力電力制御部180は、補正要求電力が第2閾値以上の電力であるか否かを判定する。補正要求電力が第2閾値以上の電力ではない場合、出力電力制御部180は、特に追加の制御は行わない。ここで、例えば、容量型バッテリ30や、VCU40、出力型バッテリ50に対して、補機90に電力を供給させるための制御を出力電力制御部180が行っている場合において、「追加の制御を行わない」とは、この制御を継続することである。一方、補正要求電力が第2閾値以上の電力である場合、出力電力制御部180は、補機90の動作を停止あるいは制限させる。このとき、出力電力制御部180は、車両1の走行モードや、不図示の鉛バッテリの電圧値も考慮して、補機90の動作を停止あるいは制限させる。補機90の動作を停止させる場合、出力電力制御部180は、補機90に供給する電力をゼロとした電力制御信号を生成して、例えば、VCU40や補機90に出力する。補機90の動作を制限させる場合、出力電力制御部180は、補機90に供給可能な電力(以下、「補機供給電力」という)を算出し、算出した補機供給電力を表す電力制御信号を生成して、例えば、VCU40や補機90に出力する。補機供給電力は、例えば、所定の電力、あるいは補正要求電力から第2閾値を減算した電力(以下、「制限電力」という)を、走行外消費電力から減算した電力である。出力電力制御部180は、補機90の動作を停止あるいは制限させた後、例えば、不図示のタイマーの動作を開始させて、停止期間が経過するのを待つ。そして、出力電力制御部180は、停止期間が経過した場合、補機90への電力の供給を再開させる電力制御信号を生成して、例えば、VCU40や補機90に出力する。補機90への電力の供給を再開させる電力制御信号は、例えば、動作を停止あるいは制限させる前の走行外消費電力を補機供給電力として表すものであってもよいし、動作を停止あるいは制限させた後の現在の走行外消費電力に制限電力を加算した補機供給電力を表すものであってもよい。これにより、車両1の走行のための補正要求電力は、少なくとも電力最大値から走行外消費電力を差し引いた電力、つまり、第2閾値となる。このため、出力電力制御部180は、少なくともこの補正要求電力を表す電力制御信号を生成して、PDU20およびVCU40に出力する。
【0064】
[制御装置の処理]
図4は、実施形態に係る車両1が備える制御装置100において走行用モータ10に出力する電力を制御する際に実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、車両1が走行している間、繰り返し実行される。以下の説明においては、例えば、レジスタや、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)など、制御装置100が備える不図示の記憶装置に、少なくとも前回の出力済要求電力が記憶されているものとする。
【0065】
運転操作子70からアクセル開度が入力されると、制御装置100は、入力されたアクセル開度が表す要求電力に応じた電力制御信号を生成して、PDU20、VCU40、および補機90に出力する処理を開始する。電力制御信号を生成する処理を開始すると、バッテリ状態取得部120は、バッテリセンサ32により出力された容量型バッテリ情報を取得して出力電力制御部180に出力する。これにより、出力電力制御部180は、容量型出力上限値を算出する。さらに、バッテリ状態取得部120は、バッテリセンサ52により出力された出力型バッテリ情報を取得して出力電力制御部180に出力する。これにより、出力電力制御部180は、出力型出力上限値を算出する。そして、出力電力制御部180は、算出した容量型出力上限値および出力型出力上限値と、入力されたアクセル開度が表す要求電力とに基づいて、走行用モータ10に出力(供給)させる電力を決定する。
【0066】
その後、出力電力制御部180は、不図示の記憶装置に記憶されている出力済要求電力を取得する(ステップS100)。
【0067】
実電力取得部140は、PDU実出力電力情報(容量型実出力電力情報であってもよい)を取得する(ステップS102)。実電力取得部140は、取得したPDU実出力電力情報(容量型実出力電力情報)を出力電力制御部180に出力する。
【0068】
出力電力制御部180は、取得した出力済要求電力と、実電力取得部140により出力されたPDU実出力電力(容量型実出力電力)とに基づいて、今回決定した走行用モータ10に出力させる電力を補正し、補正要求電力を決定(仮決定)する(ステップS104)。
【0069】
出力電力制御部180は、補正要求電力が第1閾値以上の電力であるか否かを判定する(ステップS106)。ステップS106において、補正要求電力が第1閾値以上の電力ではないと判定した場合、出力電力制御部180は、出力型バッテリ50から出力させる電力を指示する指示電力をゼロとする(ステップS108)。つまり、出力電力制御部180は、出力型バッテリ50から電力を出力させない。そして、出力電力制御部180は、処理をステップS118に進める。
【0070】
一方、ステップS106において、補正要求電力が第1閾値以上の電力であると判定した場合、出力電力制御部180は、出力型バッテリ50から出力させる電力(出力電力)を算出する(ステップS110)。ステップS110において、出力電力制御部180は、補正要求電力から第1閾値を減算した電力を、出力型バッテリ50の出力電力として算出する。
【0071】
実電力取得部140は、VCU実出力電力情報を取得する(ステップS112)。実電力取得部140は、取得したVCU実出力電力情報を出力電力制御部180に出力する。
【0072】
出力電力制御部180は、算出した出力型バッテリ50の出力電力が、実電力取得部140により出力されたVCU実出力電力と一致するか否かを判定する(ステップS114)。ステップS114において、出力型バッテリ50の出力電力がVCU実出力電力と一致しないと判定した場合、出力電力制御部180は、処理をステップS118に進める。
【0073】
一方、ステップS114において、出力型バッテリ50の出力電力がVCU実出力電力と一致すると判定した場合、出力電力制御部180は、出力型バッテリ50の指示電力を算出する(ステップS116)。ステップS116において、出力電力制御部180は、補正要求電力から容量型実出力電力を減算した電力を、出力型バッテリ50の指示電力として算出する。
【0074】
出力電力制御部180は、容量型出力上限値と出力型出力上限値とに基づいて、車両1における電力最大値を算出する(ステップS118)。ステップS118において、出力電力制御部180は、容量型出力上限値と出力型出力上限値を加算することにより、電力最大値を算出する。このとき、出力電力制御部180は、バッテリ状態取得部120に、容量型バッテリ情報と出力型バッテリ情報とを再度取得させて、容量型出力上限値と出力型出力上限値とのそれぞれを再度してから、電力最大値を算出してもよい。
【0075】
補機電力取得部160は、走行外消費電力を取得する(ステップS120)。補機電力取得部160は、取得した走行外消費電力を表す走行外消費電力情報を出力電力制御部180に出力する。
【0076】
出力電力制御部180は、算出した電力最大値と、補機電力取得部160により出力された走行外消費電力とに基づいて、第2閾値を設定する(ステップS122)。ステップS122において、出力電力制御部180は、最大電力値から走行外消費電力を減算した電力値を第2閾値として設定する。
【0077】
出力電力制御部180は、補正要求電力が第2閾値以上の電力であるか否かを判定する(ステップS124)。ステップS124において、補正要求電力が第2閾値以上の電力ではないと判定した場合、出力電力制御部180は、補機90の動作を停止あるいは制限させないと決定する。一方、ステップS124において、補正要求電力が第2閾値以上の電力であると判定した場合、出力電力制御部180は、車両1の走行モードが性能優先走行モードであるか否かを判定する(ステップS126)。ステップS126において、車両1の走行モードが性能優先走行モードではないと判定した場合、出力電力制御部180は、補機90の動作を停止あるいは制限させないと決定する。一方、ステップS126において、車両1の走行モードが性能優先走行モードであると判定した場合、出力電力制御部180は、不図示の鉛バッテリの電圧値が所定値(例えば、11[V])を下回ったか否かを判定する(ステップS128)。ステップS128において、不図示の鉛バッテリの電圧値が所定値を下回っていないと判定した場合、出力電力制御部180は、補機90の動作を停止あるいは制限させないと決定する。ステップS124、ステップS126、およびステップS128のいずれかの処理において、補機90の動作を停止あるいは制限させないと決定した場合、出力電力制御部180は、補機90に供給する電力を指示する補機供給電力を変更しない、つまり、現在の走行外消費電力のままとする(ステップS130)。そして、出力電力制御部180は、今回の処理を終了する。
【0078】
一方、ステップS128において、不図示の鉛バッテリの電圧値が所定値を下回っていると判定した場合、出力電力制御部180は、補機90の動作を停止あるいは制限させると決定する。そして、出力電力制御部180は、補機供給電力を算出する(ステップS132)。ステップS132において、出力電力制御部180は、走行外消費電力から制限電力を減算した電力を、補機供給電力として算出する。そして、出力電力制御部180は、容量型出力上限値までの間の補正要求電力を容量型バッテリ30から出力させ、ステップS116において算出した指示電力を出力型バッテリ50から出力させるための電力制御信号を生成して、PDU20およびVCU40に出力する。さらに、出力電力制御部180は、ステップS132において算出した補機供給電力を表す電力制御信号を生成して、補機90(PDU20やVCU40を含めてもよい)に出力する。
【0079】
出力電力制御部180は、不図示のタイマーの動作を開始させる(ステップS134)。
【0080】
出力電力制御部180は、不図示のタイマーが動作している時間が所定時間を経過したか否かを確認する(ステップS200)。ステップS200において、所定時間が経過していないことを確認した場合、出力電力制御部180は、処理をステップS130に進める。一方、ステップS200において、所定時間が経過したことを確認した場合、出力電力制御部180は、補機90の動作を再開(復帰)させると決定する。そして、出力電力制御部180は、補機90の動作を復帰させる補機供給電力を算出する(ステップS202)。ステップS202において、出力電力制御部180は、走行外消費電力に制限電力を加算した電力を、補機供給電力として算出する。そして、出力電力制御部180は、ステップS202において算出した補機供給電力を表す電力制御信号を生成して、補機90(容量型バッテリ30やVCU40を含めてもよい)に出力する。さらに、出力電力制御部180は、容量型出力上限値までの電力を容量型バッテリ30から出力させ、第2閾値までの電力を出力型バッテリ50から出力させるための電力制御信号を生成して、PDU20およびVCU40に出力する。
【0081】
このような処理の流れによって、制御装置100は、入力されたアクセル開度が表す要求電力を、フィードバック制御を行うことにより補正する。これにより、制御装置100は、容量型バッテリ30から出力されている電力に出力型バッテリ50から出力される電力を追加するタイミングをより正確に把握する。つまり、制御装置100は、容量型バッテリ30における電力の出力性能を最大限に引き出す容量型出力上限値となるタイミングをより正確に把握する。そして、制御装置100は、補正した補正要求電力を表す電力制御信号を好適なタイミングで生成して、PDU20およびVCU40に出力して、走行用モータ10に電力を供給させる。さらに、制御装置100は、補正要求電力が、補機90によって使用されている電力の領域に入るタイミングをより正確に把握する。つまり、制御装置100は、補機90に供給している電力を一時的に停止あるいは制限させて、走行用モータ10に電力最大値までの電力を供給させるように制御する好適なタイミングをより正確に把握する。そして、制御装置100は、把握した好適なタイミングで補機90に供給している電力を停止あるいは制限させる電力制御信号を生成して、補機90(PDU20やVCU40を含めてもよい)に出力して、走行用モータ10に電力を供給させる。これらのことにより、制御装置100が搭載された車両1では、容量型バッテリ30および出力型バッテリ50における電力の出力性能を最大限に引き出して、走行を行うことができる。
【0082】
上記に述べたとおり、実施形態の車両1によれば、制御装置100が、走行用モータ10に電力を供給させる制御において、好適なタイミングで、それぞれのバッテリから電力を出力させる。これにより、実施形態の車両1では、搭載されたそれぞれのバッテリが過放電の状態となってしまうなどの劣化を早めてしまう要因を低減させた上で、それぞれのバッテリにおける電力の出力性能を最大限に引き出した走行を行うことができる。
【0083】
以上説明した実施形態の車両1によれば、容量型バッテリ30の状態と、出力型バッテリ50の状態とを取得するバッテリ状態取得部120と、少なくとも、容量型バッテリ30により実際に出力された実出力電力である容量型実出力電力の情報を表す容量型実出力電力情報を取得する実電力取得部140と、容量型バッテリ30の状態に基づいて容量型バッテリ30の出力上限値である容量型出力上限値を算出し、出力型バッテリ50の状態に基づいて出力型バッテリ50の出力上限値である出力型出力上限値を算出し、算出した容量型出力上限値および出力型出力上限値と、車両の他制御装置(運転操作子70やアクセル開度センサ)から要求された、走行用の動力を出力する走行用モータ10に出力する要求電力と、容量型実出力電力情報が表す容量型実出力電力とに基づいて、容量型バッテリ30により出力された電力、または容量型バッテリ30および出力型バッテリ50により出力された電力を走行用モータ10に出力する電力に変換する電力変換部(PDU20やVCU40)による電力の変換を制御する出力電力制御部180と、を備え、出力電力制御部180は、繰り返し電力変換部における電力変換を指示するための出力指示内容(電力制御信号)を決定する際に、前回の要求電力である第1要求電力(出力済要求電力)と、第1要求電力に応じて出力された容量型実出力電力との差分に基づいて、今回の要求電力を補正した第2要求電力(補正要求電力)を求め、容量型バッテリ30から第2要求電力の電力が出力されるように、出力指示内容を決定することにより、2種類のバッテリを組み合わせた車両1において、容量型バッテリ30から出力されている電力に出力型バッテリ50から出力する電力を追加するタイミングを好適にすることができる。これにより、実施形態の車両1では、バッテリが劣化する要因を低減させるとともに、バッテリにおける電力の出力性能を最大限に引き出した走行を行うことができ、車両1の商品性を高めることができる。
【0084】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
ハードウェアプロセッサと、
プログラムを記憶した記憶装置と、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記記憶装置に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、
第1バッテリの状態と、第2バッテリの状態とを取得し、
少なくとも、前記第1バッテリにより実際に出力された実出力電力である第1実出力電力の情報を表す第1実出力電力情報を取得し、
前記第1バッテリの状態に基づいて前記第1バッテリの出力上限値である第1出力上限値を算出し、前記第2バッテリの状態に基づいて前記第2バッテリの出力上限値である第2出力上限値を算出し、算出した前記第1出力上限値および前記第2出力上限値と、車両の他制御装置から要求された、走行用の動力を出力するモータに出力する要求電力と、前記第1実出力電力情報が表す前記第1実出力電力とに基づいて、前記第1バッテリにより出力された電力、または前記第1バッテリおよび前記第2バッテリにより出力された電力を前記モータに出力する電力に変換する電力変換部による電力の変換を制御し、
繰り返し前記電力変換部における電力変換を指示するための出力指示内容を決定する際に、前回の前記要求電力である第1要求電力と、前記第1要求電力に応じて出力された前記第1実出力電力との差分に基づいて、今回の前記要求電力を補正した第2要求電力を求め、前記第1バッテリから前記第2要求電力の電力が出力されるように、前記出力指示内容を決定する、
ように構成されている、車両制御装置。
【0085】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形および置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0086】
1・・・車両
10・・・走行用モータ
12・・・駆動輪
14・・・ブレーキ装置
16・・・減速機
20・・・PDU
22・・・電力センサ
30・・・容量型バッテリ
32・・・バッテリセンサ
34・・・電力センサ
40・・・VCU
42・・・電力センサ
50・・・出力型バッテリ
52・・・バッテリセンサ
70・・・運転操作子
80・・・車両センサ
82・・・車輪速センサ
90・・・補機
100・・・制御装置
120・・・バッテリ状態取得部
140・・・実電力取得部
160・・・補機電力取得部
180・・・出力電力制御部