(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】製氷機
(51)【国際特許分類】
F25C 1/25 20180101AFI20250328BHJP
【FI】
F25C1/25 303B
(21)【出願番号】P 2021121970
(22)【出願日】2021-07-26
【審査請求日】2024-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】石富 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】門脇 静馬
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-058115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 1/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方に開口する製氷室(11a)を画成した製氷部(11)と、前記製氷室(11a)を閉成する閉成位置および製氷室(11a)を開放する開放位置に姿勢変化されると共に、製氷水を貯留可能な製氷水タンク(13)を有する製氷水供給部(12,13)と、を備える製氷機において、
前記製氷水タンク(13)内の液体を排出可能に設けられ、前記製氷水供給部(12,13)の開放位置において製氷水タンク(13)に所定量の製氷水を残留させ得る排出口(27a)と、
前記製氷水タンク(13)内に入口(31a,42a,44a,49a)が連通すると共に出口(31b,43a,48a)が製氷水タンク(13)外で開口し、サイフォン作用によって製氷水タンク(13)内の液体を排出可能なサイフォン手段(SF1,SF
2)と、
前記サイフォン手段(SF1,SF
2)の内部に液体を導入する導入手段(IC
1)と、を備え、
前記サイフォン手段(SF1,SF
2)は、前記製氷水供給部(12,13)の開放位置において、前記導入手段(IC
1)により液体が導入されない場合はサイフォン作用が発生することなく、該導入手段(IC
1)により液体が導入される場合にサイフォン作用が発生するよう構成し
、
前記導入手段(IC1)は、前記製氷水タンク(13)に水を供給する給水手段(22,23)であって、
前記排出口(27a)による単位時間当たりの排出量は、前記給水手段(22,23)による単位時間当たりの給水量より少なくなるよう構成した
ことを特徴とする製氷機。
【請求項2】
一方に開口する製氷室(11a)を画成した製氷部(11)と、前記製氷室(11a)を閉成する閉成位置および製氷室(11a)を開放する開放位置に姿勢変化されると共に、製氷水を貯留可能な製氷水タンク(13)を有する製氷水供給部(12,13)と、を備える製氷機において、
前記製氷水タンク(13)内の液体を排出可能に設けられ、前記製氷水供給部(12,13)の開放位置において製氷水タンク(13)に所定量の製氷水を残留させ得る排出口(27a)と、
前記製氷水タンク(13)内に入口
(42a,44a,49a)が連通すると共に出口(31b,43a,48a)が製氷水タンク(13)外で開口し、サイフォン作用によって製氷水タンク(13)内の液体を排出可能なサイフォン手段
(SF2,SF3,SF4)と、
前記サイフォン手段
(SF2,SF3,SF4)の内部に液体を導入する導入手段(IC1,IC2,IC3)と、を備え、
前記サイフォン手段
(SF2,SF3,SF4)は、前記製氷水供給部(12,13)の開放位置において、前記導入手段(IC1,IC2,IC3)により液体が導入されない場合はサイフォン作用が発生することなく、該導入手段(IC1,IC2,IC3)により液体が導入される場合にサイフォン作用が発生するよう構成し
、
前記サイフォン手段(SF2,SF3,SF4)の入口(42a,44a,49a)は、前記製氷水供給部(12,13)の閉成位置での前記製氷水タンク(13)内の最も低い位置で開口するよう構成した
ことを特徴とする製氷機。
【請求項3】
一方に開口する製氷室(11a)を画成した製氷部(11)と、前記製氷室(11a)を閉成する閉成位置および製氷室(11a)を開放する開放位置に姿勢変化されると共に、製氷水を貯留可能な製氷水タンク(13)を有する製氷水供給部(12,13)と、を備える製氷機において、
前記製氷水タンク(13)内の液体を排出可能に設けられ、前記製氷水供給部(12,13)の開放位置において製氷水タンク(13)に所定量の製氷水を残留させ得る排出口(27a)と、
前記製氷水タンク(13)内に入口
(49a)が連通すると共に出口
(48a)が製氷水タンク(13)外で開口し、サイフォン作用によって製氷水タンク(13)内の液体を排出可能なサイフォン手段
(SF4)と、
前記サイフォン手段
(SF4)の内部に液体を導入する導入手段(IC1
,IC3)と、
前記サイフォン手段(SF4)に設けられ、該サイフォン手段(SF4)における液体が流通する通路(50c)を開閉可能なドレンバルブ(50)と、を備え、
前記サイフォン手段
(SF4)は、前記製氷水供給部(12,13)の開放位置において、前記導入手段(IC1
,IC3)により液体が導入されない場合はサイフォン作用が発生することなく、該導入手段(IC1
,IC3)により液体が導入される場合にサイフォン作用が発生するよう構成した
ことを特徴とする製氷機。
【請求項4】
一方に開口する製氷室(11a)を画成した製氷部(11)と、前記製氷室(11a)を閉成する閉成位置および製氷室(11a)を開放する開放位置に姿勢変化されると共に、製氷水を貯留可能な製氷水タンク(13)を有する製氷水供給部(12,13)と、を備える製氷機において、
前記製氷水タンク(13)内の液体を排出可能に設けられ、前記製氷水供給部(12,13)の開放位置において製氷水タンク(13)に所定量の製氷水を残留させ得る排出口(27a)と、
前記製氷水タンク(13)内に入口(31a,42a,44a,49a)が連通すると共に出口(31b,43a,48a)が製氷水タンク(13)外で開口し、サイフォン作用によって製氷水タンク(13)内の液体を排出可能なサイフォン手段(SF1,SF2,SF3,SF4)と、
前記サイフォン手段(SF1,SF2,SF3,SF4)の内部に液体を導入する導入手段(IC1,IC2,IC3)と、を備え、
前記サイフォン手段(SF1,SF2,SF3,SF4)の入口(31a,42a,44a,49a)は、前記製氷水供給部(12,13)の開放位置での前記排出口(27a)より低い位置で開口すると共に、
前記サイフォン手段(SF1,SF2,SF3,SF4)は、前記導入手段(IC1,IC2,IC3)により液体が導入されることでサイフォン作用が発生する作動液位(L3,L5)が、前記製氷水供給部(12,13)の開放位置において前記排出口(27a)で規定される製氷水タンク(13)内の液体の液位(L2)より高く設定されている
ことを特徴とする製氷機。
【請求項5】
前記導入手段(IC1)は、前記製氷水タンク(13)に水を供給する給水手段(22,23)であって、
前記排出口(27a)による単位時間当たりの排出量は、前記給水手段(22,23)による単位時間当たりの給水量より少なくなるよう構成した請求項
4記載の製氷機。
【請求項6】
前記サイフォン手段(SF2,SF3,SF4)の入口(42a,44a,49a)は、前記製氷水供給部(12,13)の閉成位置での前記製氷水タンク(13)内の最も低い位置で開口するよう構成した請求項
4または5記載の製氷機。
【請求項7】
前記サイフォン手段(SF4)に設けられ、該サイフォン手段(SF4)における液体が流通する通路(50c)を開閉可能なドレンバルブ(50)を備えた請求項
4~6の何れか一項に記載の製氷機。
【請求項8】
一方に開口する製氷室(11a)を画成した製氷部(11)と、前記製氷室(11a)を閉成する閉成位置および製氷室(11a)を開放する開放位置に姿勢変化されると共に、製氷水を貯留可能な製氷水タンク(13)を有する製氷水供給部(12,13)と、を備える製氷機において、
前記製氷水タンク(13)内の液体を排出可能に設けられ、前記製氷水供給部(12,13)の開放位置において製氷水タンク(13)に所定量の製氷水を残留させ得る排出口(27a)と、
前記製氷水タンク(13)内に入口(
44a)が連通すると共に出口(
43a)が製氷水タンク(13)外で開口し、サイフォン作用によって製氷水タンク(13)内の液体を排出可能なサイフォン手段(
SF3)と、
前記
サイフォン手段(SF3)に接続され、該サイフォン手段(
SF3)の内部に
水を直接供給する水供給手段(46,47)と、を備え、
前記製氷水供給部(12,13)の
閉成位置および開放位置において、
前記水供給手段(46,47)によって前記サイフォン手段(SF3)の内部に水を供給することで、該サイフォン手段(SF3)にサイフォン作用を発生させ得るよう構成した
ことを特徴とする製氷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、製氷水タンクに貯留した製氷水を、製氷水タンクと製氷部との間で循環して該製氷部に氷を生成する製氷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下向きに開口する多数の製氷小室に製氷水を下方から噴射供給して、該製氷小室に氷塊を生成する噴射式の製氷機(例えば、特許文献1参照)が、喫茶店やレストラン等の施設その他の厨房で好適に使用されている。製氷機の概略構成を説明すれば、筐体内に水平に配置した製氷部に、下方に開口する製氷小室が碁盤目状に多数画成されると共に、該製氷部の上面には、冷凍機構を構成する蒸発器が密着的に蛇行配置される。また製氷部の下方には、支軸を介して水皿が傾動可能に枢支されると共に、該水皿の下部には所定量の製氷水を貯留する製氷水タンクが一体的に設けられている。
【0003】
前記製氷機では、製氷工程において前記製氷小室を下方から閉成する閉成位置に水皿を保持した状態で、前記蒸発器に冷媒を循環供給して製氷小室を強制的に冷却すると共に、製氷水タンク内の製氷水を循環ポンプによって水皿に送り、該水皿から製氷小室に製氷水を噴射供給する。製氷工程では、製氷小室で製氷水の一部が氷結し、残りの製氷水(未氷結水)が水皿の戻し孔を介して製氷水タンクに回収されて、製氷水として製氷小室に再び供給される。そして、製氷小室に氷塊が生成されると、製氷工程から除氷工程に移行し、蒸発器にホットガスを循環供給して製氷部を加熱すると共に、水皿を開閉機構により支軸を中心として斜め下方の開放位置へ傾動して、製氷小室を開放するよう構成される。なお、製氷工程が完了した時点で製氷水タンクに残留している略全ての製氷水(特に区別する場合は製氷残水という)は、該製氷水タンクが除氷工程により水皿と共に傾動することで外部に排出される。除氷工程において、ホットガスの循環供給により製氷小室と氷塊との氷結部が融解し、該氷塊は自重により製氷小室から離脱落下し、開放位置の水皿上を滑落して貯氷室に放出される。製氷部から氷塊が離脱すると、除氷工程から製氷工程に移行し、水皿が再び閉成位置に復帰するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記製氷機において、製氷工程の完了時点で製氷水タンクに残留している製氷残水は、製氷工程において0℃近くまで冷却されており、該製氷残水を除氷工程において略全て排出するとエネルギーの無駄となる。そこで、製氷水タンクに、水皿の閉成位置および開放位置に対応する製氷水タンクの閉成姿勢および開放姿勢での最も低くなる位置より上方位置で外部に開口する排出口を設け、閉成姿勢において製氷水タンクに貯留する製氷水の上限水位を排出口で規定する一方、開放姿勢において製氷水タンク内に所定量の製氷残水が残るように製氷残水の一部のみを排出口から排出し、残った製氷残水を次回の製氷水として再利用することが行われている。
【0006】
しかしながら、製氷残水を再利用することを繰り返すと、製氷水中のマグネシウムやカルシウム等のミネラル分の濃縮を原因とするスケール等の不純物が発生し、該不純物が、循環ポンプ、水皿の噴射孔や戻り孔等の製氷水の循環経路に付着することで、詰まり等の弊害が発生する問題を招いていた。
【0007】
すなわち本発明は、前述した従来技術に内在する前記課題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、製氷工程の完了時に製氷水タンクに残留する製氷水を再利用し得ると共に、製氷水タンク内に貯留されている液体を略全て排出することが可能な製氷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、第1の手段は、
一方に開口する製氷室を画成した製氷部と、前記製氷室を閉成する閉成位置および製氷室を開放する開放位置に姿勢変化されると共に、製氷水を貯留可能な製氷水タンクを有する製氷水供給部と、を備える製氷機において、
前記製氷水タンク内の液体を排出可能に設けられ、前記製氷水供給部の開放位置において製氷水タンクに所定量の製氷水を残留させ得る排出口と、
前記製氷水タンク内に入口が連通すると共に出口が製氷水タンク外で開口し、サイフォン作用によって製氷水タンク内の液体を排出可能なサイフォン手段と、
前記サイフォン手段の内部に液体を導入する導入手段と、を備え、
前記サイフォン手段は、前記製氷水供給部の開放位置において、前記導入手段により液体が導入されない場合はサイフォン作用が発生することなく、該導入手段により液体が導入される場合にサイフォン作用が発生するよう構成したことを要旨とする。
この構成では、製氷水タンク内の液体を排出可能なサイフォン手段を設け、導入手段によってサイフォン手段の内部に液体を導入しない場合とする場合とによって、サイフォン作用を発生させたり発生させないように構成したので、製氷工程の完了時には排出口までは製氷水タンク内に製氷水を残すことができ、該製氷水を次回の製氷工程の製氷水として再利用することができる。また、導入手段によってサイフォン手段の内部に液体を導入してサイフォン作用を発生させることで、製氷水タンク内に残留する製氷水等を略全て排出することができるので、スケール等の不純物に起因する詰まり等の弊害が発生するのを防ぐことができる。すなわち、製氷水の再利用と、製氷水を略全て排出する全排出とを切り替えることができるので、エネルギーが無駄となるのを抑制しつつ、不純物に起因する詰まり等の弊害が発生するのを防ぐことができる。
【0009】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、第2の手段は、
一方に開口する製氷室を画成した製氷部と、前記製氷室を閉成する閉成位置および製氷室を開放する開放位置に姿勢変化されると共に、製氷水を貯留可能な製氷水タンクを有する製氷水供給部と、を備える製氷機において、
前記製氷水タンク内の液体を排出可能に設けられ、前記製氷水供給部の開放位置において製氷水タンクに所定量の製氷水を残留させ得る排出口と、
前記製氷水タンク内に入口が連通すると共に出口が製氷水タンク外で開口し、サイフォン作用によって製氷水タンク内の液体を排出可能なサイフォン手段と、
前記サイフォン手段の内部に液体を導入する導入手段と、を備え、
前記サイフォン手段の入口は、前記製氷水供給部の開放位置での前記排出口より低い位置で開口すると共に、
前記サイフォン手段は、前記導入手段により液体が導入されることでサイフォン作用が発生する作動液位が、前記製氷水供給部の開放位置において前記排出口で規定される製氷水タンク内の液体の液位より高く設定されていることを要旨とする。
この構成では、製氷水タンク内の液体を排出可能なサイフォン手段を設け、該サイフォン手段でサイフォン作用が発生する作動液位を、製氷水供給部の開放位置において排出口で規定される製氷水タンク内の液体の液位より高い位置に設定したので、製氷工程の完了時には排出口までは製氷水タンク内に製氷水を残すことができ、該製氷水を次回の製氷工程の製氷水として再利用することができる。また、導入手段によってサイフォン手段の内部に液体を導入してサイフォン作用を発生させることで、製氷水タンク内に残留する製氷水等を略全て排出することができるので、スケール等の不純物に起因する詰まり等の弊害が発生するのを防ぐことができる。すなわち、製氷水の再利用と、製氷水を略全て排出する全排出とを切り替えることができるので、エネルギーが無駄となるのを抑制しつつ、不純物に起因する詰まり等の弊害が発生するのを防ぐことができる。
【0010】
第3の手段は、
前記サイフォン手段は、前記導入手段により液体が導入されることでサイフォン作用が発生する作動液位が、前記製氷水供給部の閉成位置において前記排出口で規定される製氷水タンク内の液体の液位より高く設定されていることを要旨とする。
この構成では、製氷水供給部を閉成位置に位置付ける製氷工程において、排出口で規定される水位で製氷水を製氷水タンク内に貯留することができる。
【0011】
第4の手段は、
前記導入手段は、前記製氷水タンクに水を供給する給水手段であって、
前記排出口による単位時間当たりの排出量は、前記給水手段による単位時間当たりの給水量より少なくなるよう構成したことを要旨とする。
この構成では、給水手段により製氷水タンクに水を供給してタンク内の液位を上昇させて、サイフォン作用が発生する液位とすることができるので、排出口の高さ位置を変更したり製氷水タンク自体の構造を変更する必要はなく、製造コストを大幅に抑えることができる。
【0012】
第5の手段は、
前記サイフォン手段の入口は、前記製氷水供給部の閉成位置での前記製氷水タンク内の最も低い位置で開口するよう構成したことを要旨とする。
この構成では、閉成位置の製氷水タンク内に貯留されている液体を、サイフォン手段によって略全て排出することができるので、例えば薬液洗浄の際の洗浄・すすぎの都度、製氷水タンク内の薬液やすすぎ水を排出するために製氷水タンクを傾動させる工程を省くことができ、洗浄・すすぎ運転に係る時間を短縮することができる。また、製氷水タンク内の薬液を排出するために該製氷水タンクを傾動する構成では、開放された製氷部に付着していた薬液が貯氷室内に滴下する可能性があるが、第5の手段では、製氷水タンクを閉成位置のまま薬液を排出することができるので、製氷部に付着していた薬液は製氷水タンク(製氷水供給部)で受けることができ、貯氷室内に薬液が滴下するのを防ぐことができる。
【0013】
第6の手段は、
前記導入手段は、前記サイフォン手段の内部に水を供給する水供給手段であって、
前記水供給手段によってサイフォン手段の内部に水を供給することで、該サイフォン手段にサイフォン作用を発生させるよう構成したことを要旨とする。
この構成では、サイフォン手段に直接水を供給してサイフォン作用を発生させるようにしたので、サイフォン作用を発生させるのに必要な給水量を少なくすることができる。また、製氷水供給部の位置や製氷水タンクに貯留されている製氷水等の水位に関わらず、任意の状態で製氷水等を排出することができる。
【0014】
第7の手段は、
前記サイフォン手段に設けられ、該サイフォン手段における液体が流通する通路を開閉可能なドレンバルブを備えたことを要旨とする。
この構成では、サイフォン手段によるサイフォン作用が、意図しないときに発生するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る製氷機によれば、製氷水の再利用と、製氷水等を略全て排出する全排出とを切り替えることができるので、エネルギーが無駄となるのを抑制しつつ、不純物に起因する詰まり等の弊害が発生するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1に係る製氷機の製氷機構を、水皿が閉成位置の状態で示す概略正面図である。
【
図2】実施例1に係る製氷機の製氷機構を、水皿が開放位置の状態で示す概略正面図である。
【
図3】実施例1に係る製氷水タンク、オーバーフローパイプ、サイフォンチューブを示す要部分解斜視図である。
【
図4】実施例1に係る製氷機の制御ブロック図である。
【
図5】実施例2に係る製氷機の製氷機構を、水皿が閉成位置の状態で示す概略正面図である。
【
図6】実施例2に係る製氷機の製氷機構を、水皿が開放位置の状態で示す概略正面図である。
【
図7】実施例2の製氷機における製氷水タンクを示す要部概略斜視図である。
【
図8】実施例2の製氷機における製氷機構を縦断して示す要部概略斜視図である。
【
図9】実施例3に係る製氷機の製氷機構を、水皿が閉成位置の状態で示す概略正面図である。
【
図10】実施例3に係る製氷機の製氷機構を、水皿が閉成位置の状態で縦断して示す要部概略側面図である。
【
図11】実施例3に係る製氷機の製氷機構を、水皿が開放位置の状態で示す概略正面図である。
【
図12】実施例3に係る製氷機の製氷機構を、水皿が開放位置の状態で縦断して示す要部概略側面図である。
【
図13】実施例3に係るサイフォン手段および導入手段を示す概略斜視図である。
【
図14】実施例4に係る製氷機の製氷機構を、水皿が閉成位置の状態で示す概略正面図である。
【
図15】実施例4に係る製氷機の製氷機構を、水皿が開放位置の状態で示す概略正面図である。
【
図16】実施例4の製氷水タンクおよびサイフォン手段を示す要部概略斜視図である。
【
図17】実施例4の製氷水タンクおよびサイフォン手段を示す要部概略平面図である。
【
図18】実施例4に係るサイフォン手段を示す分解斜視図である。
【
図19】別実施例に係る製氷機の製氷機構を、水皿が閉成位置の状態で示す概略正面図である。
【
図20】別実施例に係る製氷機の製氷機構を、水皿が開放位置の状態で示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係る製氷機につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。実施例では、製氷機として、所謂クローズドセルタイプの製氷機構を備えた噴射式の製氷機を挙げて説明する。
【実施例1】
【0018】
図1、
図2に示す実施例1の製氷機は、その本体となる箱体10の内部に貯氷室10aが画成されると共に、箱体10の内部上方には、製氷部11、水皿12および製氷水タンク13等からなる製氷機構14が配設されている。具体的には、箱体10の上部に水平に配置した取付部材15の下方に、下向き(一方)に開口する多数の製氷小室(製氷室)11aを画成した製氷部11が固定支持される。製氷部11の上面には、冷凍機構を構成する蒸発器16が密着的に蛇行配置され、製氷工程時に冷媒を循環させて製氷部11(製氷小室11a)を強制冷却し、除氷工程時に高温冷媒(ホットガス)を循環させて製氷部11(製氷小室11a)を加熱するよう構成される。また、製氷部11の下方に水皿12が配設され、この水皿12の下側に、製氷水を貯留する製氷水タンク13が一体的に配設されている。なお、図示しないが、箱体10には、貯氷室10aから氷塊(氷)を取り出すための取出口が前方に開放するように開設されると共に、この取出口を開閉する扉が配設されている。以下の説明において、扉が設けられる側を前側として、前後方向を指称し、左右方向とは、製氷機を正面から見た
図1の状態での左右方向をいう。
【0019】
前記冷凍機構は、圧縮機、凝縮器、膨張弁(膨張手段)および蒸発器16の順番で冷媒が循環するよう構成され、製氷工程では、圧縮機で圧縮された気化冷媒は、凝縮器で凝縮液化された後、膨張弁で減圧され、蒸発器16に流入してここで一挙に膨張して蒸発し、前記製氷部11と熱交換を行って該製氷部11を氷点下にまで強制冷却させる。そして蒸発器16で蒸発し熱交換した気化冷媒は、圧縮機に帰還するサイクルを反復する。冷凍機構は、製氷工程では、ホットガス弁の切り替えによってホットガスを蒸発器16に供給し、製氷部を加熱するよう構成される。
【0020】
図1、
図2に示す如く、前記水皿12は、前記取付部材15の左側に偏った位置に設けられた支持部15aに対して前後方向に延在する支持軸17を介して回動可能に枢支される。水皿12には、各製氷小室11aと対応する位置に、前記製氷水タンク13内の製氷水を製氷部11の各製氷小室11aへ噴射するための噴射孔12aおよび製氷部11へ供給されて氷結に至らなかった製氷水(未氷結水)を製氷水タンク13へ戻す戻り孔12bが夫々開設されている(
図3に一部図示)。
【0021】
図1、
図2に示す如く、前記水皿12の上方に、図示しない水道源に連通する給水管22が設けられると共に、該給水管22に給水弁23が介挿されており、該給水弁23を開放することで、給水管22から常温の水が水皿12の表面へ供給されるよう構成される。水皿表面に供給された水は、水皿12に設けた前記戻り孔12b等を介して製氷水タンク13に貯留され、製氷水等として使用される。製氷水タンク13に、該製氷水タンク13に貯留されている製氷水を水皿12に供給する循環ポンプ19が配設されており、該循環ポンプ19によって水皿12に供給された製氷水は、該水皿12に設けた前記噴射孔12aから製氷部11の各製氷小室11aに噴射供給される。そして、製氷部11で氷結しなかった製氷水は、戻り孔12bを介して製氷水タンク13に回収され、再度の循環に供される。実施例1では、製氷水タンク13、製氷部11、水皿12および製氷水タンク13と水皿12とを循環ポンプ19を介して接続して製氷水が流通する管体(図示せず)が、製氷水タンク13と製氷部11との間で製氷水が循環する循環経路となる。なお、製氷水タンク13の前面側には、後述する洗浄モードにおいて、製氷水の循環経路を洗浄するための薬液を注入する薬液注入口13aが設けられている。また、前記製氷機構14の下方には、該製氷機構14から流下する排水(製氷残水、オーバーフロー水、結露水等)を受けるドレンパン24が配設されており、該ドレンパン24で受けた排水は機外へ排出される。
【0022】
前記製氷機構14には、前記水皿12の枢支側と反対側(右側)に、前記製氷部11に対して水皿12および製氷水タンク13からなる製氷水供給部を開閉(傾動)させるための傾動機構18が設けられている。製氷機構14では、製氷工程において製氷水供給部の水皿12が、
図1に示す如く、傾動機構18によって製氷部11の各製氷小室11aの下面を塞いだ閉成位置に保持され、製氷水タンク13に貯留されている製氷水が、前記循環ポンプ19により水皿12から前記蒸発器16によって冷却された各製氷小室11aに対して噴射供給されて、該製氷小室11aに氷塊(氷)が生成される。また、製氷機構14では、除氷工程において製氷水供給部の水皿12が、
図2に示す如く、傾動機構18によって製氷部11から下方へ離間して製氷小室11aからの氷塊の放出を許容する傾斜姿勢となる開放位置で保持され、蒸発器16によって加熱された製氷小室11aから離脱した氷塊が、水皿12の傾斜した上面に案内されて前記貯氷室10aに落下するよう構成される。なお、傾動機構18は、製氷水供給部を傾動して閉成位置と開放位置とで姿勢変化させるものであるが、以下の説明では、単に水皿12を傾動するというと共に、水皿12の閉成位置、開放位置という。
【0023】
前記傾動機構18は、ギヤードモータ等のモータ(駆動手段)20により正転方向または逆転方向に回転するカム部材(図示せず)を備え、該カム部材を正転方向または逆転方向に回転することで、前記水皿12は、前記閉成位置と開放位置とに変位する。傾動機構18には、閉成位置から傾動した水皿12が開放位置に至ったことを検知すると共に、開放位置から傾動した水皿12が閉成位置に至ったことを検知する検知手段21(
図4参照)が設けられ、該検知手段21が水皿12の開放位置または閉成位置を検知してモータ20を停止することで、水皿12を開放位置または閉成位置に保持するよう構成される。
【0024】
前記製氷水タンク13には、タンク内に貯留する製氷水や薬液等の液体を排出可能なオーバーフローパイプ25が設けられている。オーバーフローパイプ25は、
図3に示す如く、第1筒部26と第2筒部27とをL字状に連結した筒状の部材であって、第1筒部26の開放端に入口26aが形成されると共に、第2筒部27の開放端に出口(排出口)27aが形成されている。オーバーフローパイプ25は、製氷水タンク13に設けられて内外方向に貫通する通孔28aが形成された取着部28に対し、第1筒部26を通孔28aに嵌挿することで、入口26aが製氷水タンク13の内部に連通した状態で製氷水タンク13に取り付けられて、出口27aが製氷水タンク13の外部で開口する。オーバーフローパイプ25は、つまみ付きボルト等の固定手段38によって、製氷水タンク13に対して工具を用いることなく簡単に着脱可能に構成される。なお、オーバーフローパイプ25の出口27aから排出される液体は、前記ドレンパン24で受けられる。
【0025】
前記取着部28の通孔28aは、前記水皿12の枢支側とは反対側において、該水皿12の閉成位置において閉成姿勢となっている前記製氷水タンク13内の最も低くなる位置より所定高さだけ上方位置で、かつ水皿12の開放位置において開放姿勢となっている製氷水タンク13内の最も低くなる位置においてタンク内に連通している。すなわち、通孔28aに第1筒部26が嵌挿された前記オーバーフローパイプ25の入口26aは、水皿12の開放位置において開放姿勢となっている製氷水タンク13内の最も低くなる位置においてタンク内に連通する。そして、取着部28に前記第1筒部26を介して取り付けられる前記オーバーフローパイプ25の第2筒部27は、
図1、
図2に示す如く、水皿12の枢支側に向けて延在する。また、第2筒部27は、水皿12の閉成位置(製氷水タンク13の閉成姿勢)では略水平または出口27aが僅かに斜め上を向く姿勢になると共に、水皿12の開放位置(製氷水タンク13の開放姿勢)では出口27aが水平姿勢の状態より大きく斜め上を向く傾斜姿勢で延在するよう構成される。すなわち、オーバーフローパイプ25の出口27aは、水皿12の閉成位置および開放位置の何れにおいても、閉成姿勢および開放姿勢となっている製氷水タンク13におけるタンク内の最も低くなる位置より所定高さだけ上方に位置し、出口27aの下端27bまでは、製氷水タンク13内に所定量の製氷水等を貯留し得るよう構成される。言い替えると、オーバーフローパイプ25は、水皿12を閉成位置に保持した製氷工程の開始時において、タンク内に貯留する製氷水の量を規定すると共に、水皿12を開放位置に保持した除氷工程において、タンク内に残留させる製氷水(製氷残水)の量を規定する貯留量規定手段として機能する。実施例1では、水皿12の閉成位置において、製氷水タンク13内に製氷水を、出口27aの下端27bで規定される第1規定水位L1まで貯留し、水皿12の開放位置において、製氷水タンク13内に製氷残水を、出口27aの下端27bで規定される第2規定水位L2まで残留させるよう構成される。また、オーバーフローパイプ25の出口27aからの単位時間当りの製氷水等の液体の排出量は、前記給水管22(給水手段)からの単位時間当りの水の供給量(給水量)より少なくなるよう設定されて、出口27aから製氷水等を排出しつつ給水管22から水を供給することで、製氷水タンク13内の水位(液位)を、出口27aの下端位置より上昇させ得るよう構成されている。
【0026】
図3に示す如く、前記オーバーフローパイプ25の第2筒部27における第1筒部26との連結部位に対応して、外方に向けて延出するパイプ状の接続部29が設けられている。そして、該接続部29に、後述するサイフォンチューブ31の一端部を接続することで、オーバーフローパイプ25とサイフォンチューブ31とが連通接続されるよう構成される。また、オーバーフローパイプ25の第2筒部27における出口側の端部に、サイフォンチューブ31を支持するホルダ30が設けられており、一端部を接続部29に接続したサイフォンチューブ31の後述する第1管部33を、ホルダ30で支持するよう構成される。
【0027】
前記製氷水タンク13には、除氷工程において該製氷水タンク13に残留する製氷残水を、サイフォン作用によって排出可能なサイフォン手段SF1が配設されている。実施例1のサイフォン手段SF1は、1本のサイフォンチューブ31で構成される。このサイフォンチューブ31は、
図3に示す如く、略ヘ字状に形成された部材であって、屈曲部32から一方に延在する第1管部33と、屈曲部32から他方に延在する第2管部34と、第1管部33の延在端側に設けられて前記オーバーフローパイプ25の前記接続部29に着脱自在に被着される被着部35と、を備える。サイフォンチューブ31は、軟質な合成樹脂またはゴムを材質として形成されて、オーバーフローパイプ25における接続部29に被着部35を被着することで、オーバーフローパイプ25に対してサイフォンチューブ31は連通状態で接続される。サイフォンチューブ31は、第1管部33における被着部35側の端部開口が、チューブ内に液体が流れ込む入口(サイフォン手段SF1の入口)31aとされると共に、第2管部34における屈曲部32から離間する側の端部開口が、チューブ内の液体が流れ出る出口(サイフォン手段SF1の出口)31bとされる。すなわち、サイフォンチューブ31は、被着部35を接続部29に被着した状態で、該サイフォンチューブ31の入口31aが、オーバーフローパイプ25の入口26aを介して製氷水タンク13内に連通すると共に、該サイフォンチューブ31の出口31bが製氷水タンク13外で開口し、製氷水タンク13に貯留されている製氷水等をサイフォン作用によって排出し得るよう構成される。また、サイフォンチューブ31は、被着部35を接続部29に被着した状態で、屈曲部32が前記第2筒部27の出口側に位置すると共に、第1管部33の屈曲部側が前記ホルダ30に支持されて、該第1管部33は第2筒部27と略平行に延在するよう構成される。なお、サイフォンチューブ31の内径は、要求される製氷水等の排出能力に合わせて設定される。
【0028】
前記サイフォンチューブ31は、
図1に示す如く、前記水皿12の閉成位置において、前記入口31aが、前記オーバーフローパイプ25の入口26aと同じ位置で製氷水タンク13に連通し、前記第1管部33が水平か僅かに屈曲部32に向けて上方傾斜する姿勢で延在すると共に、屈曲部32に連続する第2管部34が下方に延在する。すなわち、水皿12の閉成位置において屈曲部32が、サイフォンチューブ31において最も高い位置に位置するよう構成される。そして、水皿12の閉成位置における屈曲部32の内部上端(サイフォンチューブ31内における最も高い位置)は、オーバーフローパイプ25における出口27aの下端27b(出口27aで規定される第1規定水位L1)より上方に位置するよう設定される。すなわち、水皿12の閉成位置において、製氷水タンク13内に貯留されている製氷水の水位が、前記第1規定水位L1より低い場合は、製氷水タンク13内の製氷水がサイフォンチューブ31に流れ込むことはなく、チューブ内が製氷水で満たされてサイフォン作用が発生して製氷水が排出されることはない。
【0029】
また、前記サイフォンチューブ31は、
図2に示す如く、前記水皿12の開放位置において、前記入口31aが、開放姿勢となっている製氷水タンク13内の最も低くなる位置においてタンク内に連通し、前記第1管部33が屈曲部32に向けて上方傾斜する姿勢で延在すると共に、屈曲部32に連続する第2管部34が下方に延在する。すなわち、水皿12の開放位置において、サイフォンチューブ31は、屈曲部32が頂部となる山形の姿勢となって、該屈曲部32がサイフォンチューブ31において最も高い位置に位置するよう構成される。また、水皿12の開放位置におけるサイフォンチューブ31の入口31aは、前記オーバーフローパイプ25における出口27aの下端27bより低い位置で製氷水タンク13に連通するよう開口すると共に、該サイフォンチューブ31の出口31bは、入口31aより低い位置で開口するようになっている。そして、水皿12の開放位置における屈曲部32の内部上端(サイフォンチューブ31内における最も高い位置)は、オーバーフローパイプ25における出口27aの下端27bより上方で、かつ開放姿勢となっている製氷水タンク13において出口27aの下端27bで規定される前記第2規定水位L2より高い位置に位置するよう設定される。実施例1のサイフォンチューブ31における屈曲部32の内部上端は、水皿12の閉成位置および開放位置の何れの位置においても、オーバーフローパイプ25における出口27aの下端27b(出口27aで規定される製氷水タンク13内の製氷水の第1規定水位L1および第2規定水位L2)より高い位置となるよう設定されている。
【0030】
実施例1の製氷機は、前記水皿12の開放位置において、前記サイフォンチューブ31の内部に水(液体)を導入して、該サイフォンチューブ31の内部を水で満たすことでサイフォン作用を発生させるための導入手段IC1を備えている。実施例1の導入手段IC1は、前記製氷水タンク13に水を供給する前記給水管22および給水弁23からなる給水手段であって、水皿12の開放位置において、給水弁23を開放して給水管22から水を製氷水タンク13内に供給し、タンク内の水位を、前記屈曲部32の内部上端以上の作動水位(作動液位)L3まで上昇することで、サイフォンチューブ31にサイフォン作用を発生させるよう構成される。すなわち、
図2に示す如く、水皿12の開放位置において製氷水タンク13内に残留する製氷残水に対して給水管22からの水が供給されることで、該製氷残水の水位が作動水位L3まで上昇すると、サイフォンチューブ31に流れ込んだ(導入された)タンク内の製氷残水によってチューブ内が製氷残水で満たされることでサイフォン作用が発生し、製氷水タンク13内の製氷残水を略全て排出し得るようになっている。すなわち、実施例1のサイフォンチューブ(サイフォン手段SF1)31は、水皿12の開放位置において、給水管22からタンク内に水を供給しない場合は、製氷水タンク13内の製氷残水の水位は作動水位L3を越えないので、サイフォンチューブ31内に製氷残水が導入されてもサイフォン作用が発生することはないのに対し、給水管22からタンク内に水を供給して製氷水タンク13の製氷残水の水位が作動水位L3に至り、サイフォンチューブ31内に導入された製氷残水でチューブ内が満された場合にサイフォン作用が発生するよう構成される。なお、サイフォンチューブ31の出口27aから排出される製氷残水等は、前記ドレンパン24に受けられる。
【0031】
製氷機の制御手段36には、前記冷凍機構を構成する各機器の他に、
図4に示す如く、前記循環ポンプ19、傾動機構18のモータ20、給水弁23、検知手段21等の各機器と電気的に接続され、冷凍機構および製氷機構14を統括的に制御する。制御手段36は、検知手段21から検知信号が入力されると、モータ20に対して停止信号を出力して該モータ20を停止し、水皿12を閉成位置または開放位置に停止保持するよう構成される。制御手段36には、前記給水弁23および給水管22による給水時間をカウントする給水タイマ37や、後述する洗浄モードでの洗浄時間やすすぎ時間等をカウントする各種のタイマ(図示せず)が設けられている。制御手段36は、除氷工程から製氷工程に移行する際に、給水管22による給水を開始すると共に給水タイマ37でのカウントを開始し、前記水皿12の閉成位置での製氷水タンク13に貯留される製氷水の水位が、前記オーバーフローパイプ25(出口27a)で規定される前記第1規定水位L1となる第1給水時間T1を給水タイマ37がカウントしたときに、給水弁23を閉成して給水を停止するよう該給水弁23を制御するよう構成される。なお、第1給水時間T1は、除氷工程において製氷水タンク13に前記第2規定水位L2まで製氷残水が残留していることを前提として、水皿12の閉成位置での製氷水タンク13に第1規定水位L1まで製氷水を貯留し得る時間に設定されている。また、制御手段36は、水皿12の開放位置において製氷水タンク13に製氷残水が残留している状態で、給水管22による給水を開始すると共に給水タイマ37でのカウントを開始し、新たに供給される水で希釈された製氷残水の水位が、前記作動水位L3となる第2給水時間T2を給水タイマ37がカウントしたときに、給水弁23を閉成して給水を停止するよう該給水弁23を制御するよう構成される。
【0032】
実施例1の製氷機は、製氷工程において、前記製氷部11に配設された温度センサ(図示せず)が製氷完了温度を検知した際に、製氷小室11aに所定の大きさの氷塊が生成されたと判断した制御手段36によって、前記循環ポンプ19が停止されて製氷工程が完了され、除氷工程に移行するよう構成される。また、製氷機は、除氷工程において、前記温度センサが除氷完了温度を検知した際に、製氷部11の加熱により全ての氷塊が離脱したと判断した制御手段36によって、前記蒸発器16による製氷部11の加熱が停止されると共に、前記モータ20が逆駆動されて前記水皿12が開放位置から閉成位置まで戻され、除氷工程が終了される。
【0033】
ここで、前記製氷水タンク13に供給される製氷水には、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル分等の様々なものが含まれているので、製氷工程と除氷工程とからなる製氷サイクルを繰り返し行うことで、製氷部11や配管等の製氷水の循環経路に、前記ミネラル分が濃縮したスケールや水垢などの不純物が付着してしまう。そこで、実施例1の製氷機では、製氷サイクルを繰り返す製氷モードと、前記製氷機構14において製氷水の循環経路を薬液で洗浄する洗浄モードとを選択し得るよう構成される。洗浄モードでは、循環経路に薬液を循環する洗浄工程の終了後に、循環経路を水(水道水)ですすぐすすぎ工程を行うようになっている。洗浄工程では、前記製氷水タンク13に貯留されている製氷水を、前記製氷残水を排出する場合と同様にサイフォンチューブ31を介して略全量排出した後に前記水皿12を閉成位置に保持し、製氷水タンク13に設けた前記薬液注入口13aを介して薬液を製氷水タンク13に供給した後、前記循環ポンプ19を洗浄時間に亘って運転することで、製氷水タンク13に貯留した薬液を循環経路に循環させる。そして、洗浄時間を経過すると循環ポンプ19を停止し、前記傾動機構18によって水皿12を開放位置まで傾動し、製氷水タンク13の薬液を、サイフォンチューブ31を介して略全量排出した後に、傾動機構18によって水皿12を閉成位置まで戻し、洗浄工程が終了する。
【0034】
すすぎ工程では、所定の給水時間に亘って前記給水弁23を開放して、前記製氷水タンク13にすすぎ水(水道水)を所定量供給する。そして、前記循環ポンプ19をすすぎ時間に亘って運転することで、製氷水タンク13に貯留したすすぎ水を循環経路に循環させて該循環経路をすすぐ。すすぎ時間を経過すると循環ポンプ19を停止し、前記傾動機構18によって前記水皿12を開放位置まで傾動し、製氷水タンク13のすすぎ水をサイフォンチューブ31を介して略全量排出した後に、傾動機構18によって水皿12を閉成位置まで戻し、すすぎ工程を終了する。なお、すすぎ工程は、予め設定されたすすぎ回数だけ繰り返され、設定すすぎ回数に達すると、洗浄モードでの運転が終了される。
【0035】
〔実施例1の作用〕
次に、実施例1に係る製氷機の作用について説明する。
【0036】
〔製氷水タンクに製氷残水を残留する場合〕
製氷機の製氷工程に際し、前記水皿12は、
図1に示す如く、前記製氷部11を下方から閉成する閉成位置にあって、前記製氷水タンク13は閉成姿勢に保持されている。前記サイフォンチューブ31における屈曲部32の内部上端は、水皿12の閉成位置において、オーバーフローパイプ25で規定される製氷水タンク13内の製氷水の第1規定水位L1より高い位置に位置しているので、サイフォンチューブ31内が製氷水で満たされてサイフォン作用が発生することはなく、製氷工程の開始時には、製氷水タンク13内には、前記オーバーフローパイプ25で規定される第1規定水位L1まで製氷水が貯留されている。水皿12が閉成位置に臨む状態で製氷工程が行われ、前記製氷小室11aに氷塊が生成されたことを温度センサが検知することで製氷工程を終了して除氷工程に移行すると、前記傾動機構18によって水皿12は開放位置に向けて傾動し、前記検知手段21が水皿12の開放位置を検知すると傾動機構18が停止し、
図2に示す如く、水皿12は開放位置に停止保持される。水皿12の閉成位置から開放位置への傾動に際し、製氷水タンク13内の製氷水は、オーバーフローパイプ25を介して前記ドレンパン24に排出され、水皿12の開放位置において製氷水タンク13には、前記第2規定水位L2まで製氷水(製氷残水)が残留する。なお、サイフォンチューブ31における屈曲部32の内部上端は、水皿12の開放位置において、オーバーフローパイプ25で規定される製氷水タンク13内の製氷水の第2規定水位L2より高い位置にあるので、サイフォンチューブ31の内部が製氷残水で満たされてサイフォン作用が発生することはなく、製氷水タンク13内の製氷残水がサイフォンチューブ31によって外部に排出されてしまうことはない。
【0037】
前記水皿12が開放位置で停止している間に除氷工程が進行し、各製氷小室11aから脱氷された氷塊は、水皿12の上面を滑落して貯氷室10aに向けて放出される。前記製氷部11から全ての氷塊が落下したことを温度センサが検知すると、前記傾動機構18によって水皿12は閉成位置に向けて傾動する。また、水皿12が開放位置から閉成位置に向けて傾動を開始すると、前記制御手段36は、前記給水弁23を開放して前記製氷水タンク13に、次回の製氷工程で使用される製氷水としての水を供給すると共に、前記給水タイマ37のカウントを開始する。前記検知手段21が水皿12の閉成位置を検知すると傾動機構18が停止し、水皿12は閉成位置に停止保持され、再び製氷工程に入る。給水タイマ37が第1給水時間T1をカウントすると、制御手段36は、給水弁23を閉成して給水を停止する。これにより、前記製氷機構14の製氷水タンク13に、前記第1規定水位L1まで製氷水が貯留された状態で製氷工程が実行される。
【0038】
〔製氷水タンクに製氷残水を残留しない場合〕
実施例1の製氷機では、除氷工程の際に所定量の製氷残水を製氷水タンク13に残留して、該製氷残水を次回の製氷水として再利用することを繰り返すと、不純物による問題を招くため、製氷サイクルが予め設定された回数だけ繰り返された後に、製氷残水を略全て排出する全排出除氷工程が実行される。すなわち、全排出除氷工程では、前記水皿12を開放位置に保持した状態で、前記制御手段36は、前記給水弁23を開放して給水管22からの水を製氷水タンク13に供給する。製氷水タンク13に水が供給されるとタンク内の水位が上昇し、前記第2規定水位L2を越えると、製氷残水は前記オーバーフローパイプ25から外部に排出されるが、該オーバーフローパイプ25からの単位時間当りの製氷残水の排出量は、給水管22からの単位時間当りの給水量より少ないため、製氷水タンク13内の水位は、第2規定水位L2を越えて上昇する。そして、製氷水タンク13内の水位が、前記作動水位L3まで上昇すると、前記サイフォンチューブ31の内部が製氷残水で満たされ、サイフォン作用が発生して製氷水タンク13内の製氷残水は、サイフォンチューブ31を介して外部に排出される。
【0039】
全排出除氷工程において、前記給水管22による給水の開始によりカウントを開始した前記給水タイマ37が第2給水時間T2をカウントしたときに、前記制御手段36は給水弁23を閉成して給水を停止する。給水を停止しても、前記サイフォンチューブ31のサイフォン作用によって、製氷残水の排出は継続される。サイフォンチューブ31の入口31aは、開放姿勢となっている製氷水タンク13内の最も低くなる位置においてタンク内に連通しているので、サイフォンチューブ31によって製氷水タンク13内の製氷残水は略全て排出される。なお、全排出除氷工程から製氷工程に移行する際に、給水管22から製氷水タンク13に供給される水の給水量が、製氷残水を製氷水タンク13内に残留させる通常の除氷工程における量より多くなるように給水時間が設定されて、全排出除氷工程後の製氷工程の開始時には、製氷水タンク13内に前記第1規定水位L1で製氷水が貯留されるよう構成されている。
【0040】
実施例1の製氷機では、前記洗浄モードにおける洗浄工程およびすすぎ工程において、前記全排出除氷工程と同様に、前記水皿12を開放位置に保持した状態で、前記製氷水タンク13に水を供給し、タンク内の水位(液位)を前記作動水位L3まで上昇することで、製氷水タンク13内に残留している薬液やすすぎ水を、前記サイフォンチューブ31を介して略全て排出することができる。また、実施例1の製氷機では、長期間の機械停止があった場合の起動時や、前記貯氷室10aが満杯となったことを検知して前記製氷機構14による製氷サイクルを停止する場合に、全排出除氷工程と同様に、水皿12を開放位置に保持した状態で製氷水タンク13に水を供給し、タンク内の水位(液位)を作動水位L3まで上昇させ、製氷水タンク13内に残留している製氷残水等を、サイフォンチューブ31を介して略全て排出するようにすれば、製氷水タンク13内に長期に亘って貯留されていた製氷残水を排出したり、製氷水タンク13内に製氷残水が残留したまま製氷サイクルが停止するのを防ぐことができ、衛生的である。なお、製氷水タンク13内に残留している製氷残水等を略全て排出する全排出の制御は、貯氷室10aの満杯状態が解消されて、製氷機構14による製氷サイクルを再開するときに行うようにしてもよい。
【0041】
実施例1の製氷機では、前記オーバーフローパイプ25によって、除氷工程において所定量の製氷残水を残留して再利用する構成において、該製氷残水を、前記サイフォンチューブ31によって略全て排出し得るよう構成したので、製氷工程において0℃近くまで冷却された製氷残水を再利用してエネルギーが無駄となるのを抑制しつつ、製氷残水を再利用することを続けることによる不純物に起因する詰まり等の弊害が発生するのを防ぐことができる。また、サイフォンチューブ31にサイフォン作用を発生させる導入手段IC1として、既存の給水管22および給水弁23を用いているので、部品点数が増加したり構成が複雑となることはなく、製造コストも上昇しない。
【0042】
ここで、前記製氷水タンク13内の水位を、前記作動水位L3まで上昇させるために前記給水弁23を制御する手段として、例えばフロート式や電極式等のように検知部が製氷水に接触する検知手段を用いた場合、検知部に経時的に不純物が付着して動作不良等を招き、誤検知したり製氷水タンク13内の水位を検知できなくなる問題を招く。これに対し、実施例1では、前記給水タイマ37によって給水弁23を制御するようにしているので、フロート式や電極式等の検知手段を用いる構成のような問題を招くことはない。また、給水タイマ37は、製氷工程において製氷水タンク13に所定量の製氷水を貯留するために設けられている既存のタイマであるので、制御のための専用の部品を設けることにより製造コストが上昇することはない。また、実施例1の製氷機では、製氷水タンク13の構造を変更することなく、オーバーフローパイプ25を、サイフォンチューブ31を接続可能な構成とする変更のみで、製氷残水等を略全て排出できる構成とし得るので、製造コストの上昇を抑えることができる。また、オーバーフローパイプ25に対してサイフォンチューブ31を、前記接続部29に被着部35を被着する簡単な構成で着脱可能としたので、サイフォンチューブ31の洗浄や交換に際して工具を用いることなくサイフォンチューブ31を容易に取り外すことができる。また、飲食店等に製氷機を設置した状態で、現地においてオーバーフローパイプ25を交換するだけで、製氷残水等を略全て排出する機能を容易に追加できる。
【0043】
ここで、実施例1の製氷機において、除氷工程で前記製氷水タンク13に残留させる製氷残水の量を低減するべく、前記オーバーフローパイプ25の姿勢を、
図1の状態から前記出口27aが下向きとなる低残留姿勢とする場合がある。この状態において、前記水皿12が開放位置まで傾動すると、該開放位置においてオーバーフローパイプ25は、実施例1と同様に、出口27aが上向きになると共に、屈曲部32がサイフォンチューブ31の最も高い位置に位置し、製氷水タンク13内には該出口27aの下端27bで規定される水位で製氷残水が残留し、サイフォンチューブ31でサイフォン作用が発生する作動水位は、出口27aの下端27bで規定される水位より高くなる。これに対し、前記水皿12の閉成位置では、オーバーフローパイプ25の出口27aが下向きとなり、該閉成位置において製氷水タンク13内に貯留される製氷水の水位は、オーバーフローパイプ25の入口26aで規定される。この場合において、サイフォンチューブ31では、前記入口31aが、当該サイフォンチューブ31において最も高い位置に位置し、該入口31aは、オーバーフローパイプ25の入口26aの内部下端より高い位置にある。すなわち、オーバーフローパイプ25を低残留姿勢とした場合において、サイフォンチューブ31でサイフォン作用が発生する入口31aの内部上端以上の作動水位(作動液位)は、オーバーフローパイプ25の入口26aで規定される製氷水タンク13内の水位より高い位置に位置する。すなわち、サイフォンチューブ31でサイフォン作用が発生する作動水位(作動液位)は、オーバーフローパイプ25の姿勢に関わらず、該オーバーフローパイプ25において製氷水タンク13内に残留させる製氷残水の水位を規定する排出口として機能する出口27aや入口26aで規定される製氷水タンク13内の液体の液位以上であればよい。
【0044】
次に、製氷機の別の実施例(実施例2~実施例4および別実施例)について、実施例1の構成と異なる部分についてのみ説明する。なお、実施例1と同じ部材等には、同じ符号を付すものとする。
【実施例2】
【0045】
図5~
図8は、実施例2に係る製氷機の製氷機構を示すものであって、実施例2のサイフォン手段SF2は、前記オーバーフローパイプ25に接続されて前記製氷水タンク13の外部に配置される第1サイフォンチューブ41と、該第1サイフォンチューブ41に連通接続されて製氷水タンク13の内部に配置される第2サイフォンチューブ42とから構成される。第1サイフォンチューブ41は、実施例1のサイフォンチューブ31と、第2管部34の形状が異なるだけで、その他の構成は同じであって、第2管部34は、前記屈曲部32から下方に延在した後に前記水皿12の枢支側に向けて折曲されて製氷水タンク13の外底面に略沿うように延在するよう形成されている。第2サイフォンチューブ42は、延在方向の一端部が、オーバーフローパイプ25の前記接続部29に嵌挿されて、第1サイフォンチューブ41に連通するよう構成される。実施例2のサイフォン手段SF2は、第2サイフォンチューブ42における他端側の端部開口である入口42aが、サイフォン手段SF2の入口とされると共に、第1サイフォンチューブ41における第2管部34の出口31bが、サイフォン手段SF2の出口とされる。
【0046】
図5、
図6に示す如く、前記製氷水タンク13は、前記水皿12の閉成位置(製氷水タンク13の閉成姿勢)において、水皿12の枢支側が最も深くなるように形成され、この最深部に、水皿12に製氷水を送る前記循環ポンプ19の吸込口39(
図8参照)が設けられている。製氷水タンク13の底部は、閉成姿勢において枢支側と反対側から最深部に向けて下方傾斜するよう形成されており、該底部の傾斜上端側の内底面40に近接して前記取着部28の通孔28aが開口している。前記第2サイフォンチューブ42は、製氷水タンク13の前記内底面40に沿って延在し、前記入口42aが製氷水タンク13の最深部に臨むように配置される。すなわち、第2サイフォンチューブ42の入口42a(サイフォン手段SF2の入口)は、水皿12の閉成位置において製氷水タンク13内の最も低い位置で開口している。また、第1サイフォンチューブ41の出口31bは、水皿12の閉成位置(製氷水タンク13の閉成姿勢)において、第2サイフォンチューブ42の入口42aより低い位置に位置するよう設定される。なお、第1サイフォンチューブ41および第2サイフォンチューブ42は、何れも軟質な合成樹脂またはゴムを材質として形成されており、該サイフォンチューブ41,42の前記接続部29に対して容易に着脱し得るよう構成される。また、第2サイフォンチューブ42の内径は、要求される製氷水等の排出能力に合わせて設定される。
【0047】
〔実施例2の作用〕
次に、実施例2に係る製氷機の作用について、実施例1とは異なる作用について詳細に説明する。
【0048】
実施例2の製氷機において、前記水皿12の閉成位置および開放位置における第1サイフォンチューブ41の屈曲部32と、オーバーフローパイプ25の出口27aの下端27bとの位置関係は、実施例1と同じである。すなわち、実施例2の製氷機においても、水皿12の閉成位置において製氷水タンク13内に第1規定水位L1まで製氷水を貯留して製氷工程を実行し得ると共に、除氷工程において水皿12を開放位置まで傾動した際に、製氷水タンク13内に第2規定水位L2まで製氷残水を残留することができる。
【0049】
実施例2の製氷機では、前記水皿12の閉成位置(製氷水タンク13の閉成姿勢)において、製氷水タンク13から略全ての製氷水を排出することができる。すなわち、除氷工程から製氷工程に移行する際に、前記給水管22から製氷水タンク13に供給する給水量を制御して、
図5に示す如く、水皿12を閉成位置に保持した状態で製氷水タンク13内の水位を、前記第1サイフォンチューブ41における屈曲部32の内部上端以上の(オーバーフローパイプ25で規定される第1規定水位L1より高い)作動水位(作動液位)L4まで上昇することで、サイフォン手段SF2にサイフォン作用が発生する。実施例2のサイフォン手段SF2における入口42aは、閉成姿勢の製氷水タンク13の最深部に臨んでいるので、給水管22からの給水を停止した後に当該製氷水タンク13に貯留されている製氷水は、サイフォン手段SF2のサイフォン作用によって略全て排出することができる。なお、製氷水タンク13への給水量の制御は、前記給水タイマ37でカウントされる給水時間の設定によって容易に行い得る。
【0050】
実施例2の製氷機では、実施例1の製氷機で得られる作用効果の他に、以下の作用効果が得られる。
前記水皿12の閉成位置において、前記製氷水タンク13に貯留されている製氷水等を略全て排出することができるので、前記洗浄モードにおける洗浄工程およびすすぎ工程の都度、製氷水タンク13内の薬液やすすぎ水を排出するために水皿12を閉成位置と開放位置との間で傾動させる工程を省くことができ、洗浄モードに係る時間を短縮することができる。すなわち、洗浄工程における洗浄時間やすすぎ工程におけるすすぎ時間が経過した後、循環ポンプ19を停止して水皿12を閉成位置に保持したもとで、前記給水弁23を開放して給水管22から製氷水タンク13に、タンク内の水位(液位)が前記作動水位L4となるまで水を供給して停止する。これにより、サイフォン手段SF2のサイフォン作用によって製氷水タンク13内の薬液やすすぎ水を略全て排出することができる。
【0051】
また、洗浄モードにおいて、前記製氷水タンク13内の薬液を排出するために前記水皿12を開放位置まで傾動する構成では、開放された前記製氷部11に付着していた薬液が貯氷室10a内に滴下する可能性があるが、実施例2の製氷機では、製氷部11を水皿12で閉成したまま薬液を排出することができるので、製氷部11に付着していた薬液が貯氷室10a内に滴下するのを防ぐことができる。また、製氷水タンク13を傾動しないので、傾動中の製氷水タンク13から薬液が貯氷室10a内に飛散するおそれもない。なお、実施例2においても、前記オーバーフローパイプ25を低残留姿勢とした場合におけるサイフォン作用が発生する作動水位(作動液位)は、サイフォンチューブ31において最も高い位置に位置する部分(実施例2では第1サイフォンチューブ41と第2サイフォンチューブ42との接続部)において、オーバーフローパイプ25の入口26aで規定される製氷水タンク13内の液位より高く設定されていればよい。
【実施例3】
【0052】
図9~
図13は、実施例3の製氷機の製氷機構等を示すものであって、実施例3のサイフォン手段SF3は、前記製氷水タンク13の外部に配置される第1サイフォンチューブ43と、該第1サイフォンチューブ43に連通接続されて前記製氷水タンク13の内部に一部が配置される第2サイフォンチューブ44と、両サイフォンチューブ43,44を連通接続する接続管45とから構成される。接続管45は、直線状に延在する第1管体45aと、該第1管体45aの延在方向の中間から外方に延在する第2管体45bとからT型に形成されたチーズであって、第1管体45aの一端部に、第1サイフォンチューブ43の延在方向の一端部が連通接続されると共に、該第1管体45aの他端部に、第2サイフォンチューブ44の延在方向の一端部が連通接続されている。実施例3のサイフォン手段SF3は、接続管45から延在する第2サイフォンチューブ44が、製氷水タンク13の前記薬液注入口13aからタンク内に挿入された状態で該製氷水タンク13に対して取り付けられる。また、第2サイフォンチューブ44は、実施例2と同様に、タンク内に位置する部分が、製氷水タンク13の内底面40に沿って最深部に向けて延在し、該最深部で他端側の端部開口である入口44aが開口するよう構成される。すなわち、第2サイフォンチューブ44の入口44aは、前記水皿12の閉成位置において製氷水タンク13内の最も低い位置で開口している。
【0053】
前記第1サイフォンチューブ43は、
図9に示す如く、前記接続管45から下方に延在した後に前記水皿12の枢支側に向けて折曲されて前記製氷水タンク13の外底面に略沿うように延在するよう形成されて、該第1サイフォンチューブ43における他端側の端部開口である出口43aは、第2サイフォンチューブ44の入口44aより低い位置で開口するよう構成される。実施例3のサイフォン手段SF3は、第2サイフォンチューブ44の入口44aが、サイフォン手段SF3の入口とされると共に、第1サイフォンチューブ43の出口43aが、サイフォン手段SF3の出口とされる。また、実施例3のサイフォン手段SF3は、前記接続管45が、当該サイフォン手段SF3において最も高い位置に位置すると共に、水皿12の閉成位置および開放位置の何れの位置においても、接続管45はオーバーフローパイプ25における出口27aの下端27b(オーバーフローパイプ25で規定される第1規定水位L1や第2規定水位L2)より上方に位置するよう構成される。なお、第1サイフォンチューブ43および第2サイフォンチューブ44は、何れも軟質な合成樹脂またはゴムを材質として形成されており、該サイフォンチューブ43,44は、接続管45に対して容易に着脱し得るよう構成される。
【0054】
実施例3のサイフォン手段SF3には、
図9~
図13に示す如く、当該サイフォン手段SF3の内部に液体を導入して、内部を液体で満たすことでサイフォン作用を発生させる導入手段IC2が接続されている。該導入手段IC2は、図示しない水道源に流入部46aが連通接続するウォータバルブ46と、該ウォータバルブ46の流出部46bに一端が連通接続されると共に、他端が前記接続管45における第2管体45bに連通接続される給水チューブ47とからなる水供給手段であって、ウォータバルブ46を開放することで、水道源からサイフォン手段SF3の内部に水を供給するよう構成される。また、第1サイフォンチューブ43および第2サイフォンチューブ44の内径や長さ等は、給水チューブ47からの給水時にサイフォン手段SF3の内部が水で満たされるよう設定されている。なお、給水チューブ47は、軟質な合成樹脂またはゴムを材質として形成され、前記取付部材15に配設固定されているウォータバルブ46に対して給水チューブ47は、前記製氷水タンク13の閉成姿勢と開放姿勢との間の傾動に追従して可動し得るようになっている。
【0055】
実施例3に係る製氷機では、
図11に示す如く、前記水皿12の開放位置においてサイフォン手段SF3内を水で満たすことで、該サイフォン手段SF3内の水位を、前記第1管体45aの内部上端以上の作動水位(作動液位)L5とすることで、サイフォン手段SF3にサイフォン作用を発生させ得るよう構成される。また、
図9に示す如く、水皿12の閉成位置においてサイフォン手段SF3内を水で満たすことで、該サイフォン手段SF3内の水位を、前記第1管体45aの内部上端以上の作動水位(作動液位)L6とすることで、サイフォン手段SF4にサイフォン作用を発生させ得るよう構成される。なお、実施例3のように、各サイフォンチューブ43,44の内径や長さ等が、給水時に内部が水で満たされるように設定される構成では、給水チューブ47からの給水時には水は上から下に順に満たされ、サイフォン手段SF3内で上向きの水面は存在しないが、実施例3では、第1管体45aの内部上端の水の位置を、サイフォン作用を発生させる作動水位L5,L6と指称している。そして、作動水位L5、L6は、前記オーバーフローパイプ25における出口27aの下端27b(オーバーフローパイプ25で規定される製氷水タンク13内の液体の液位)より上方に位置するよう設定される。
【0056】
次に、実施例3に係る製氷機の作用について、実施例1および2とは異なる作用について詳細に説明する。
【0057】
実施例3の製氷機において、
図9、
図11に示す如く、前記水皿12の閉成位置および開放位置におけるサイフォン手段SF3の接続管45は、前記オーバーフローパイプ25の出口27aの下端27bより高い位置に位置している。従って、実施例3の製氷機においても、水皿12の閉成位置において製氷水タンク13内に第1規定水位L1まで製氷水を貯留して製氷工程を実行し得ると共に、除氷工程において水皿12を開放位置まで傾動した際に、製氷水タンク13内に第2規定水位L2まで製氷残水を残留することができる。
【0058】
実施例3の製氷機において、前記水皿12の閉成位置において、前記製氷水タンク13に貯留されている製氷水等を略全て排出する場合は、前記ウォータバルブ46を開放し、前記サイフォン手段SF3に水を供給する。サイフォン手段SF3の内部が、供給された水によって作動水位L6まで満たされるとサイフォン作用が発生する。第1サイフォンチューブ43の出口43aは、第2サイフォンチューブ44の入口44aより低い位置にあるので、ウォータバルブ46を閉成して水の供給を停止すると、サイフォン作用によって製氷水タンク13内の製氷水等がサイフォン手段SF3を介して排出される。水皿12の閉成位置において、第2サイフォンチューブ44の入口44aは製氷水タンク13の最深部で開口しているので、該製氷水タンク13内の製氷水等を略全て排出することができる。
【0059】
また、前記水皿12の開放位置において、前記製氷水タンク13に残留している製氷残水を排出する場合は、閉成位置でタンク内の製氷水等を略全て排出する場合と同様に、前記ウォータバルブ46を開放して前記サイフォン手段SF3に水を供給する。サイフォン手段SF3の内部が、供給された水によって作動水位L5まで満たされるとサイフォン作用が発生し、該サイフォン手段SF3によって製氷水タンク13内の製氷残水を略全て排出することができる。
【0060】
実施例3の製氷機では、前記ウォータバルブ46を開放してサイフォン手段SF3に水を供給してサイフォン作用を発生させ得るよう構成したので、前記製氷水タンク13の姿勢やタンク内の製氷水や製氷残水の量に関係なく、任意の時期に製氷水タンク13内の製氷水や製氷残水、あるいは薬液やすすぎ水を略全て排出することができる。また、製氷水タンク13の閉成姿勢において、該製氷水タンク13内の薬液やすすぎ水を略全て排出することができるので、実施例2の製氷機と同様に、洗浄モードにおける水皿12の傾動工程を省き得ると共に、薬液が前記貯氷室10a内に飛散するのを防止し得る。また、サイフォン手段SF3に直接水を供給してサイフォン作用を発生させるので、製氷水タンク13内の水位を、作動水位とする構成に比べて、サイフォン作用を発生させるのに必要な給水量を少なくすることができる。
【実施例4】
【0061】
図14~
図18は、実施例4の製氷機の製氷機構等を示すものであって、実施例4のサイフォン手段SF4は、前記製氷水タンク13の外部に配置される第1サイフォンチューブ48と、製氷水タンク13の内部に配置される第2サイフォンチューブ49と、第1および第2サイフォンチューブ48,49を連通接続するドレンバルブ50と、から構成される。ドレンバルブ50は、流入部50aが、前記オバーフローパイプ25の前記接続部29に外側から嵌挿されて、オーバーフローパイプ25内において該流入部50aに、第2サイフォンチューブ49の延在方向の一端部が連通接続される。第2サイフォンチューブ49は、前記実施例2と同様に、前記製氷水タンク13の内底面40に沿って最深部に向けて延在し、該最深部で他端側の端部開口である入口49aが開口するよう構成される。
【0062】
前記ドレンバルブ50の流出部50bに、前記第1サイフォンチューブ48の延在方向の一端部が連通接続され、該第1サイフォンチューブ48は、
図14に示す如く、流出部50bとの接続部から前記製氷水タンク13の外底面に略沿うように延在するよう形成される。また、第1サイフォンチューブ48における他端側の端部開口である出口48aは、第2サイフォンチューブ49の入口49aより低い位置で開口するよう構成される。実施例4のサイフォン手段SF4は、第2サイフォンチューブ49の入口49aが、サイフォン手段SF4の入口とされると共に、第1サイフォンチューブ48の出口48aが、サイフォン手段SF4の出口とされる。なお、第1サイフォンチューブ48および第2サイフォンチューブ49は、何れも軟質な合成樹脂またはゴムを材質として形成されており、該サイフォンチューブ48,49は、ドレンバルブ50に対して容易に着脱し得るよう構成される。
【0063】
前記ドレンバルブ50は、サイフォン手段SF4における入口49aと出口48aとの間の製氷水等の液体が流通する通路50cを開閉するものであって、該ドレンバルブ50で通路50cを開放した状態で、サイフォン手段SF4にサイフォン作用を発生させ得るよう構成される。実施例4のサイフォン手段SF4は、ドレンバルブ50における両サイフォンチューブ48,49を接続する通路50cが、当該サイフォン手段SF4において最も高い位置に位置するよう構成される。また、実施例4の製氷機では、前記給水管22、給水弁23およびドレンバルブ50から、サイフォン手段SF4の内部に製氷水等の液体を導入する導入手段IC3が構成される。
【0064】
実施例4に係る製氷機では、
図14に示す如く、前記水皿12の閉成位置において、前記サイフォン手段SF4において最も高い位置である通路50cの内部上端は、当該閉成位置において前記オーバーフローパイプ25(図示例では出口27a)で規定される第1規定水位L1より高い位置に位置しており、前記ドレンバルブ50によって通路50cを開放した状態で、製氷水タンク13内の製氷水等の水位を、通路50cの内部上端以上の作動水位(作動液位)L8まで上昇することで、サイフォン手段SF4にサイフォン作用を発生させ得るよう構成される。また、実施例4に係る製氷機では、
図15に示す如く、水皿12の開放位置において、サイフォン手段SF4において最も高い位置である通路50cの内部上端は、オーバーフローパイプ25で規定される第2規定水位L2より低い位置に位置しており、ドレンバルブ50によって通路50cを閉成することで、サイフォン手段SF4の内部が製氷水タンク13内の製氷残水等によって満たされてサイフォン作用が発生することはないが、ドレンバルブ50によって通路50cを開放することで、サイフォン手段SF4の内部を製氷残水等によって満たしてサイフォン作用を発生させることができる。すなわち、実施例4のサイフォン手段SF4は、水皿12の開放位置において、ドレンバルブ50による通路50cの閉成により製氷残水等の液体が導入されない場合はサイフォン作用が発生することなく、ドレンバルブ50による通路50cの開放によって製氷残水等の液体が導入される場合にサイフォン作用を発生させ得るよう構成される。
【0065】
次に、実施例4に係る製氷機の作用について、実施例1および2とは異なる作用について詳細に説明する。
【0066】
実施例4の製氷機において、前記ドレンバルブ50で通路50cを閉成することで、前記水皿12の閉成位置において製氷水タンク13内に第1規定水位L1まで製氷水を貯留して製氷工程を実行し得ると共に、除氷工程において水皿12を開放位置まで傾動した際に、製氷水タンク13内に第2規定水位L2まで製氷残水を残留することができる。
【0067】
実施例4の製氷機では、
図14に示す前記水皿12の閉成位置において、前記製氷水タンク13に貯留されている製氷水等を略全て排出する場合は、前記ドレンバルブ50で通路50cを開放したもとで、前記給水弁23を開放して給水管22から製氷水タンク13に水を供給する。製氷水タンク13内の水位が作動水位L8を越えると、サイフォン手段SF4の内部が水で満たされてサイフォン作用が発生するので、給水を停止すれば、その後は製氷水タンク13内の製氷水等はサイフォン手段SF4を介して略全て排出される。
【0068】
前記水皿12の開放位置において、
図15に示す如く、前記サイフォン手段SF4にサイフォン作用を発生させる作動水位L7は、前記オーバーフローパイプ25で規定される第2規定水位L2より低い位置にある。従って、当該開放位置において前記製氷水タンク13に残留している製氷残水を略全て排出する場合は、前記ドレンバルブ50で通路50cを開放するだけで、製氷水タンク13内に第2規定水位L2で残留している製氷残水によりサイフォン手段SF4の内部が満たされてサイフォン作用が発生するので、製氷水タンク13内の製氷残水はサイフォン手段SF4を介して略全て排出される。
【0069】
実施例4の製氷機では、前記ドレンバルブ50で通路50cを開閉して、サイフォン手段SF4でサイフォン作用を発生させ得る状態と発生させ得ない状態とに切り替え得るよう構成したので、前記水皿12の閉成位置(製氷水タンクの閉成姿勢)および開放位置(製氷水タンクの開放姿勢)の何れの位置においても、製氷水タンク13に供給する水の供給量と、ドレンバルブ50の開閉制御によって、通常の製氷工程と、製氷水や製氷残水等を略全て排出する全排出との切り替えができる。また、水皿12の閉成位置において、製氷水タンク13内の薬液やすすぎ水を略全て排出することができるので、実施例2の製氷機と同様に、洗浄モードにおける水皿12の傾動工程を省き得ると共に、薬液が前記貯氷室10a内に飛散するのを防止し得る。
【0070】
ここで、製氷工程時には前記製氷小室11aで氷結しなかった未氷結水が前記戻り孔12bから前記製氷水タンク13内に落下するため、該未氷結水の落下により製氷水タンク13に貯留されている製氷水が波立っている。この場合に、特に製氷工程の初期における製氷水タンク13内の製氷水の水位は、前記ドレンバルブ50の通路50c(サイフォン手段SF4における最上位の部位)の近傍に位置しているため、波立ちによって前記第2サイフォンチューブ49から第1サイフォンチューブ48へ製氷水が流れ込んでサイフォン作用が働いてしまうおそれがある。しかしながら、実施例4の製氷機では、ドレンバルブ50で通路50cを閉成すれば、サイフォン手段SF4でサイフォン作用が発生しないようにできる。従って、製氷工程の初期における製氷水の波立ちによって通路50c近傍の水位が高くなっても、サイフォン手段SF4の内部が製氷水で満たされてサイフォン作用が発生することはなく、意図せずに製氷水タンク13から製氷水が排出されてしまうのを防ぐことができる。
【0071】
図19~
図20は、別実施例に係る製氷機の製氷機構を示すものであって、別実施例のサイフォン手段SF5は、前記実施例4と同一構造であって、前記製氷水タンク13に対する当該サイフォン手段SF5の配設位置が異なっている。すなわち、別実施例のサイフォン手段SF5は、製氷水タンク13の外部(前側)に配設されたドレンバルブ50の流入部50aに接続する第2サイフォンチューブ49が、製氷水タンク13の壁に穿設した穴に挿通されてタンク内に引き込まれるよう構成される。製氷水タンク13に配設されたドレンバルブ50における通路50cの位置は、前記水皿12の開放位置および閉成位置において、前記オーバーフローパイプ25における出口27aの下端27bより下方に位置するよう設定される。
【0072】
別実施例に係る製氷機では、
図20に示す如く、前記水皿12の開放位置において製氷水タンク13内の製氷残水等の水位を、前記通路50cの内部上端以上の作動水位(作動液位)L9まで上昇することで、サイフォン手段SF5にサイフォン作用を発生させ得るよう構成される。また、
図19に示す如く、水皿12の閉成位置において製氷水タンク13内の製氷水等の水位を、通路50cの内部上端以上の作動水位(作動液位)L10まで上昇することで、サイフォン手段SF5にサイフォン作用を発生させるよう構成される。そして、作動水位L9、L10は、何れもオーバーフローパイプ25における出口27aの下端27b(オーバーフローパイプ25で規定される第1規定水位L1および第2規定水位L2)より下方に位置するよう設定される。
【0073】
別実施例の製氷機では、前記水皿12の閉成位置において、前記オーバーフローパイプ25で規定される第1規定水位L1より前記作動水位L10が低い位置に設定されているので、前記製氷水タンク13に貯留されている製氷水等が第1規定水位L1まで貯留されている状態で、前記ドレンバルブ50で通路50cを開放することで、サイフォン手段SF5の内部は製氷水で満たされてサイフォン作用が発生し、製氷水タンク13内の製氷水等を略全て排出することができる。また、前記洗浄モードの洗浄工程およびすすぎ工程において、水皿12の閉成位置において製氷水タンク13内の薬液やすすぎ水の液位を、作動水位L10より高くなるよう設定しておけば、水皿12を傾動することなくサイフォン手段SF5によって薬液やすすぎ水を略全て排出することができ、前記実施例2と同様な作用効果が得られる。また、水皿12の開放位置において、オーバーフローパイプ25で規定される第2規定水位L2より前記作動水位L9が低い位置に設定されているので、製氷水タンク13に給水することなく、ドレンバルブ50で通路50cを開放するだけで、サイフォン手段SF5によって製氷残水を略全て排出することができる。
【0074】
ここで、製氷機では、製造する氷のサイズを変更する場合があり、従来は、製氷工程に際して前記製氷水タンク13に、サイズの大きな氷を製造するのに適した量の製氷水を貯留し得るようにオーバーフローパイプ25を配置していた。このため、サイズの小さな氷を製造する場合には、除氷工程に際してオーバーフローパイプ25から排出される製氷水の量が多くなる難点があった。別実施例の製氷機では、オーバーフローパイプ25で規定される第1規定水位L1より低い位置に、サイフォン手段SF5の通路50cが位置しているので、前記ドレンバルブ50で通路50cを開放することで、製氷工程に際して製氷水タンク13に貯留し得る製氷水の貯留量を変更することができる。すなわち、オーバーフローパイプ25により規定される第1規定水位L1を、製氷水がサイズの大きな氷を製造する場合の貯留量となるよう設定すると共に、サイフォン手段SF5の通路50cの下端で規定可能な第3規定水位L11を、製氷水がサイズの小さな氷を製造する場合の貯留量となるよう設定し、製氷工程に際して前記給水管22からの給水量を、各サイズに適した量とする。
【0075】
別実施例では、前記ドレンバルブ50で通路50cを閉成し、前記製氷水タンク13内に第1規定水位L1まで製氷水を貯留したもとで製氷工程を行うことで、サイズの大きな氷を製造することができる。また、ドレンバルブ50で通路50cを開放し、製氷水タンク13内の水位を第3規定水位L11としたもとで製氷工程を行うことで、サイズの小さな氷を製造することができる。すなわち、ドレンバルブ50で通路50cを開閉するだけで、製造する氷のサイズの大きさに応じた量の製氷水を、製氷水タンク13に貯留することができる。従って、製氷工程において製氷水タンク13への給水量を、氷のサイズに応じた適正量とすれば、サイズの小さな氷を製造する場合にオーバーフローパイプ25から排出される製氷水の量が多くなるのを防ぎ、節水することができる。
【0076】
〔変更例〕
本願は、前述した各実施例の構成に限定されるものでなく、その他の構成を適宜に採用することができる。また、以下の各変更例を相互に組み合わせた構成を採用することができる。
(1) 中型や大型の製氷機では、製氷水タンクのサイズが大きいことから、該製氷水タンクに配設されたオーバーフローパイプの出口から大きく離間する位置に不純物が残り易く、除氷工程において水皿を開放位置に保持したもとで、給水管から水を製氷水タンクに供給して不純物を希釈しつつ排出を行う希釈排出工程が行われる。この希釈排出工程における水の供給時間は、製氷水タンク内の水位が作動水位とならない時間に設定されているが、当該時間を延長することで製氷水タンク内の水位を作動水位とすることで、製氷残水を全排出する構成を採用することができる。なお、小型の製氷機では、希釈排出工程は行われていないが、該希釈排出工程を行うと共に製氷残水の全排出を行うようにしてもよい。
(2) 実施例1、2、3では、サイフォン手段を、オーバーフローパイプに取り付けたが、オーバーフローパイプとは別の箇所、例えば製氷水タンクの壁に穴を開けて、タンクにサイフォン手段を直接取り付ける構成を採用することができる。
(3) 実施例2では、第1サイフォンチューブと第2サイフォンチューブとを別体としたが、両サイフォンチューブは一体であってもよい。
(4) 実施例3では、製氷水タンクに設けた薬液注入口から第1サイフォンチューブをタンク内に引き込むよう構成したが、該第1サイフォンチューブをタンク内に引き込む位置は、別の部位であってもよい。例えば、水皿における戻り孔が設けられた上壁に通孔を設け、該通孔から第1サイフォンチューブをタンク内に引き込む構成であってもよい。
(5) 各実施例の構成については、本発明の主旨の範囲内において相互に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0077】
11 製氷部,11a 製氷小室(製氷室),12 水皿(製氷水供給部)
13 製氷水タンク(製氷水供給部),22 給水管(導入手段,給水手段)
23 給水弁(導入手段、給水手段),27a 出口(排出口),31a 入口
31b 出口,42a 入口,43a 出口,46 ウォータバルブ(給水手段)
47 給水チューブ(給水手段),48a 入口,49a 出口,50 ドレンバルブ
50c 通路,SF1、SF2、SF3、SF4 サイフォン手段
IC1、IC2、IC3 導入手段
L3、L4、L5、L6、L8 作動水位(作動液位)