(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】塗布容器
(51)【国際特許分類】
B65D 83/00 20060101AFI20250328BHJP
A45D 34/04 20060101ALI20250328BHJP
【FI】
B65D83/00 J
A45D34/04 515C
(21)【出願番号】P 2021141351
(22)【出願日】2021-08-31
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】本間 友梨
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-103014(JP,U)
【文献】米国特許第04403624(US,A)
【文献】米国特許第05349972(US,A)
【文献】特開2007-160116(JP,A)
【文献】特開2004-073525(JP,A)
【文献】実開昭59-122812(JP,U)
【文献】実開昭63-005908(JP,U)
【文献】実開平03-088409(JP,U)
【文献】特開2008-125843(JP,A)
【文献】特開2010-259545(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0187625(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端が開口する口部を有し、内側に内容液の収容空間を有する容器と、軸部の先端に塗布部を有し、該軸部を前記口部に挿入して該容器に保持される塗布用器具とを備える塗布容器であって、
前記容器は、前記口部の内側に設けられるしごき部材を備え、
前記しごき部材は、
前記口部の内側において前記軸部に沿って延在する筒状部と、
前記筒状部の内周面から下方に向けて延在し、前記塗布用器具を前記口部から取り外す際に前記塗布部の外周面に当接するしごき部と、
前記筒状部の周方向において局所的に下方に向けて延在し、前記塗布用器具を前記口部から取り外す際に上方に向けて屈曲する一方、前記塗布部が通過した後は復元する屈曲部と、を有し、
前記屈曲部は、前記しごき部よりも下側で前記しごき部材に1つ
のみ連結している塗布容器。
【請求項2】
前記しごき部材は、前記口部に係合して、該口部に対して該しごき部材を抜け止め保持する係合部を有し、
前記屈曲部は、前記係合部よりも下側で前記しごき部材に連結する請求項1に記載の塗布容器。
【請求項3】
前記屈曲部は、上下方向に延在して該屈曲部を分割する切り欠きを有する請求項1又は2に記載の塗布容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容液を塗布するための塗布用器具を備える塗布容器に関する。
【背景技術】
【0002】
リップグロスやマニキュア、マスカラ、アイライナー等の内容液を収容する容器として、例えば特許文献1に示されているような、ブラシ状や筆状になる塗布部が軸部の先端に設けられた塗布用器具を備える塗布容器が既知である。この種の塗布容器は、塗布用器具を容器の口部に装着することによって塗布部に内容液を付着させることができるため、塗布用器具を取り外して内容液をすぐに塗布することができる。また容器の口部には、下方に向けて延在するしごき部が設けられているため、塗布用器具を取り外す際、しごき部によって軸部や塗布部の外周側に付着した余分な内容液を掻き落とすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでしごき部は、口部に挿入された軸部の外周面にしごき部の先端が当接する程度の長さで形作られている。このため上記のように、軸部や塗布部の外周側に付着した内容液はしごき部で掻き落とすことができるものの、塗布部の先端に付着した内容液は、塗布用器具を容器から取り外す際に掻き落とされずに先端に溜まることがある。従ってこの状態のまま塗布先(例えばまつ毛)に塗布すると、まつ毛に内容液のダマができたり、内容液が瞼に付着して汚れたりすることがあった。また、容器の口部に塗布部の先端を擦りつけることによって溜まった内容液を落とそうとすると、口部周辺が内容液で汚れてしまうことがあった。
【0005】
本発明はこのような問題点を解決することを課題とするものであって、塗布用器具を容器から取り外す際に塗布部の先端に付着した余分な内容液を取り除くことができる塗布容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上端が開口する口部を有し、内側に内容液の収容空間を有する容器と、軸部の先端に塗布部を有し、該軸部を前記口部に挿入して該容器に保持される塗布用器具とを備える塗布容器であって、
前記容器は、前記口部の内側に設けられるしごき部材を備え、
前記しごき部材は、
前記口部の内側において前記軸部に沿って延在する筒状部と、
前記筒状部の内周面から下方に向けて延在し、前記塗布用器具を前記口部から取り外す際に前記塗布部の外周面に当接するしごき部と、
前記筒状部の周方向において局所的に下方に向けて延在し、前記塗布用器具を前記口部から取り外す際に上方に向けて屈曲する一方、前記塗布部が通過した後は復元する屈曲部と、を有し、
前記屈曲部は、前記しごき部よりも下側で前記しごき部材に1つのみ連結している塗布容器である。
【0008】
前記しごき部材は、前記口部に係合して、該口部に対して該しごき部材を抜け止め保持する係合部を有し、
前記屈曲部は、前記係合部よりも下側で前記しごき部材に連結することが好ましい。
【0009】
前記屈曲部は、上下方向に延在して該屈曲部を分割する切り欠きを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の塗布容器は、下方に向けて延在する屈曲部を有していて、この屈曲部は、塗布用器具を容器から取り外す際、口部から引き上げられる軸部と塗布部によって上方に向けて屈曲する一方、塗布部が通過した後は復元する。すなわち復元する屈曲部は、塗布部の先端を擦るようにして下方に向けて延在する初期状態に戻るため、この際に塗布部の先端に付着した余分な内容液を取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に従う塗布容器の一実施形態を示す正立姿勢での断面図である。
【
図2】
図1に示した容器に関し、A-Aに沿う向きでの部分拡大断面図である。
【
図3】軸部が引き上げられて塗布部が屈曲部の先端に差し掛かった状態での部分拡大図である。
【
図4】
図3の状態から更に軸部が引き上げられて屈曲部が上方に向けて屈曲した状態での部分拡大図である。
【
図5】
図4の状態から屈曲部が復元して塗布部先端に溜まっていた内容液が取り除かれた状態での部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明に従う塗布容器の一実施形態(塗布容器10)について説明する。なお便宜上、
図1に示すように塗布容器10を正立姿勢にした状態の向きで説明する。以下の説明において上下方向とは、図示した軸線Oに沿う方向である。また径方向とは、軸線Oに対して垂直な面内で軸線Oと直交する方向であり、周方向とは、この面内で軸線Oを中心として周回する方向である。
【0013】
本実施形態の塗布容器10は、本明細書等における「容器」を構成するものとして、容器本体1としごき部材2を備えている。また塗布容器10は、本明細書等における「塗布用器具」を構成するものとして、キャップ本体3、軸部材4、塗布部材5を備えている。
図1に示すように容器本体1、しごき部材2、キャップ本体3、軸部材4、塗布部材5は、基本的に軸線Oを中心とする形状で形作られている。
【0014】
容器本体1は、有底筒状をなすように形作られている。具体的には、円板状をなす底部1aと、底部1aの縁部から上側に延在する円筒状の胴部1bと、胴部1bの上端部から径方向内側に向けて延在する肩部1cと、肩部1cの内縁部に連結し、上端が開口する円筒状の口部1dと、口部1dの外周面に設けられた雄ねじ部1eとを備えるものである。また、容器本体1の内側に設けられる空間(収容空間S)には、内容液(例えばマスカラ)が収容される。
【0015】
しごき部材2は、例えばゴムやエラストマー、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の軟材質の素材で形成されていて、弾性変形させることが可能である。本実施形態のしごき部材2は、水平方向に延在するフランジ部2aと、フランジ部2aの内縁部から下側に延在する筒状部2bと、筒状部2bの下端部の外周面から径方向外側に膨出させた係合部2cを備えている。しごき部材2を口部1dの内側に挿入すると、フランジ部2aが口部1dの上端部に支持され、係合部2cが口部1dの下端部(口部1dと肩部1cとの連結部)に係合して、しごき部材2は口部1dに保持される。
【0016】
このしごき部材2における筒状部2bの内周面には、径方向内側に傾きつつ下方に向けて延在するしごき部2dを備えている。しごき部2dの先端(径方向内側端)における内径は、後述する上側軸部4b及び下側軸部5aの外径と略同一、又はこの外径よりも若干小さくなっている。
【0017】
またしごき部材2は、屈曲部2eを備えている。
図1に示すように本実施形態の屈曲部2eは、係合部2cよりも下側において、しごき部材2に連結している。また屈曲部2eは、径方向内側に傾きつつ下方に向けて延在している。なお、本明細書等において「下方に向けて延在する」とは、軸線Oに対して平行になるように下向きに延在する場合だけを意味するものではなく、上記のように、径方向内側に傾きつつ下向きに延在する(軸線Oに対して傾くように下向きに延在する)場合も含む。そして本実施形態の屈曲部2eの長さは、
図1に示すように口部1dに挿入された後述する上側軸部4bの凹部4dに対し、屈曲部2eの先端が当接する程度である。なお本明細書等で「当接」とは、2つのものが接触している状態だけでなく、僅かな隙間をもって離れている状態も含む。また屈曲部2eの幅(周方向長さ)は、
図2に示すように、筒状部2bの直径の半分程度である。更に本実施形態の屈曲部2eには、上下方向に延在する切り欠き部2fが2本設けられていて、屈曲部2eは幅方向に3つに分割されている。なお、屈曲部2eは、切り欠き部2bを設けず、下向きに少なくとも1つ設けて(延在)あればよく、間隔をおいて複数設けてもよい。
【0018】
キャップ本体3は、有蓋筒状になるカバー部3aを備えている。カバー部3aの下部外周面には、雄ねじ部1eに螺合する雌ねじ部3bが設けられている。
【0019】
軸部材4は、有底筒状なし、カバー部3aの内側に挿入されてこれに嵌合保持される保持部4aを備えている。保持部4aの下面には、棒状になる上側軸部4bが設けられている。上側軸部4bには、径方向外側に向かって膨らむ形状になる膨出部4cと、膨出部4cの下側に位置して上側軸部4bを径方向内側に向けて凹ませた凹部4dとを備えている。膨出部4cは、
図1に示すようにキャップ本体3を口部1dに装着した状態において、しごき部2dの上面に当接する。またこの状態において屈曲部2eの先端は、凹部4dの外周面に当接する。
【0020】
塗布部材5は、上側軸部4bの下端部に連結する棒状の下側軸部5aを備えている。連結した上側軸部4bと下側軸部5aは、本明細書等の「軸部」に相当する。そして下側軸部5aの下端部には、内容液を塗布するための塗布部5bが設けられている。本実施形態の塗布部5bは、下側軸部5aから径方向外側に伸びる多数の毛材によってブラシ状に形作られている。また塗布部5bにおける上部と中間部は、下側軸部5aよりも外形が大きくなるように形作られていて、塗布部5bにおける下部は、先細りになるように形作られている。なお塗布部5bの形態はブラシ状になるものに限られず、例えば下向きに伸びる多数の毛材によって筆状に形成されたものでもよい。
【0021】
このような部材により構成される塗布容器10は、
図1に示すように雄ねじ部1eと雌ねじ部3bを螺合させると、フランジ部2aが口部1dと保持部4aに挟持される。従って、収容空間Sの内容液が塗布容器10から漏れ出す不具合を防止することができる。またこの状態においては、収容空間Sへの外気の侵入を抑制することができるため、内容液の品質劣化等も防止される。
【0022】
また雄ねじ部1eと雌ねじ部3bを螺合させた状態において、上側軸部4bは、口部1dの内側(筒状部2bの内側)を延伸し、下側軸部5aの下端部に設けられた塗布部5bは、収容空間Sにおける底部1aの近傍に位置する。すなわち、収容空間Sに収容されている内容液の量が少なくなっても、塗布部5bに内容液を付着させることができる。
【0023】
収容空間Sに収容した内容液を塗布するにあたっては、容器本体1に対してキャップ本体3を回転して雄ねじ部1eと雌ねじ部3bとの螺合を解除し、キャップ本体3をそのまま引き上げる。ここで、容器本体1にキャップ本体3が装着されている状態において、上側軸部4bと下側軸部5aの外周面には内容液が付着していることがあるが、しごき部2dの先端(径方向内側端)は、上側軸部4bと下側軸部5aの外径と略同一、又はこの外径よりも若干小さくなっていて、上側軸部4bと下側軸部5aの外周面に当接する(
図3参照)。従ってキャップ本体3を引き上げることによって、上側軸部4bと下側軸部5aの外周面に付着した内容液をしごき部2dで掻き落とすことができる。
【0024】
またキャップ本体3を引き上げていくと、
図3に示すように屈曲部2eの先端は、塗布部5bに接触してこれに持ち上げられる。このため屈曲部2eは、
図4に示すように上方に向けて反転するように屈曲する。またキャップ本体3を引き上げていくと、塗布部5bはしごき部2dを通り抜けるため、塗布部5bの外周面に付着した余分な内容液を掻き落とすことができる。
【0025】
そしてキャップ本体3の引き上げが継続され、塗布部5bの先端が屈曲した屈曲部2eの先端付近を通過すると、
図5に示すように屈曲部2eは、径方向内側に傾くように下方に向けて延在していた初期状態に復元する。ここで、復元する屈曲部2eは、塗布部5bの先端を擦るようにして初期の状態に戻るため、塗布部5bの先端に付着した余分な内容液Nを取り除くことができる。
【0026】
また本実施形態の屈曲部2eは、
図2に示すように切り欠き部2fによって幅方向に分割されている。すなわち、分割された屈曲部2eのそれぞれを個別に屈曲させ、また復元させることができるため、塗布部5bが軸線Oに対して傾くように移動する場合でも、塗布部5bの先端に付着した余分な内容液をより確実に取り除くことができる。
【0027】
また屈曲部2eは、しごき部材2の何れの部位に設けてもよい(例えばしごき部2dの先端に設けても、しごき部2dよりも上側に位置する筒状部2bの内周面に設けても、又はしごき部2dと係合部2cとの間に位置する筒状部2bの内周面に設けてもよい)が、本実施形態のように係合部2cよりも下側に設ける場合は、屈曲部2eの周辺に比較的広いスペースが確保されるため、屈曲部2eが屈曲する際に他の部位に引っ掛かる等の不具合がより確実に防止できる。
【0028】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0029】
例えば上述した実施形態における、軸部材4と塗布部材5は、これらを連結して一つの部材として構成してもよい。また雄ねじ部1eと雌ねじ部3bによらず、アンダーカットによりキャップ本体3を口部1dに取り付けるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0030】
1:容器本体
1a:底部
1b:胴部
1c:肩部
1d:口部
1e:雄ねじ部
2:しごき部材
2a:フランジ部
2b:筒状部
2c:係合部
2d:しごき部
2e:屈曲部
2f:切り欠き部
3:キャップ本体
3a:カバー部
3b:雌ねじ部
4:軸部材
4a:保持部
4b:上側軸部(軸部)
4c:膨出部
4d:凹部
5:塗布部材
5a:下側軸部(軸部)
5b:塗布部
10:塗布容器
N:塗布部の先端に付着した内容液
O:軸線
S:収容空間