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特許7657129位置検出システム、ターゲット、及び位置検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】位置検出システム、ターゲット、及び位置検出方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/46 20060101AFI20250328BHJP
【FI】
B66C13/46 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021159370
(22)【出願日】2021-09-29
(65)【公開番号】P2023049565
(43)【公開日】2023-04-10
【審査請求日】2024-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅人
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0329333(US,A1)
【文献】特開平01-174903(JP,A)
【文献】特開平09-267990(JP,A)
【文献】特開2010-091517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00 - 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンの吊部材及び吊部で吊られた対象物の位置を検出する位置検出システムであって、
前記吊部材の吊点と共に移動する前記クレーンの構造体に設けられ、前記対象物を撮影する撮影部と、
前記撮影部の撮影情報から、色情報を抽出して、抽出領域を特定する色情報抽出部と、
前記色情報抽出部の抽出結果に基づいて、前記対象物と前記クレーンとの相対位置を検出する位置検出部と、を備え
前記位置検出部は、互いに異なる特性として、互いに異なる色情報を有する複数のターゲットを検出する、位置検出システム。
【請求項2】
前記位置検出部は、互いに異なる特性を有する複数の前記ターゲットの位置関係に基づいて、前記対象物の水平面内での回転方向における姿勢を検出する、請求項に記載の位置検出システム。
【請求項3】
前記位置検出部は、単一の前記撮影部からの前記撮影情報に基づいて、前記対象物に加え、当該対象物の設置場所を検出する、請求項1又は2に記載の位置検出システム。
【請求項4】
前記構造体の動作に関わらず、前記撮影部を下方へ向けるように前記撮影部の姿勢を調整する姿勢調整機構を備える、請求項1~の何れか一項に記載の位置検出システム。
【請求項5】
クレーンの吊部材及び吊部で吊られた対象物の位置を検出するためのターゲットであって、
画像内で抽出可能な任意の色情報を有し、
互いに異なる特性として、互いに異なる色情報を有する、複数のターゲットを含む、ターゲット。
【請求項6】
クレーンの吊部材及び吊部で吊られた対象物の位置を検出する位置検出方法であって、
前記吊部材の吊点と共に移動する前記クレーンの構造体に設けられた撮影部によって、前記対象物を撮影する撮影工程と、
前記撮影工程での撮影情報から、色情報を抽出して、抽出領域を特定する色情報抽出工程と、
前記色情報抽出工程での抽出結果に基づいて、前記対象物と前記クレーンとの相対位置を検出する位置検出工程と、を備える、
前記位置検出工程では、互いに異なる特性として、互いに異なる色情報を有する複数のターゲットを検出する、位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出システム、ターゲット、及び位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、クレーンに設けられた撮影部によって、吊部上に設けられたマーカを撮影し、当該撮影情報に基づいて、吊部で吊られた対象物の位置を検出する位置検出システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-12259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような位置検出システムにおいて、吊部上に設けられたマーカは、帯状または放射状の形状を有している。従って、位置検出システムは、撮影情報の中の、マーカの形状のみの情報から、対象物の位置を検出している。そのため、例えば、吊部上に出来た水たまりからの太陽の反射光が撮影部に入ると、マーカの形状が区別できず、帯状の形状が崩れて正常な位置検出が出来ないかもしれない。また、手すり等の突起物からの反射光をマーカと誤認識するかもしれない。従って、対象物の位置を確実に検出できる位置検出システムが求められていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、対象物の位置を確実に検出できる位置検出システム、ターゲット、及び位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る位置検出システムは、クレーンの吊部材及び吊部で吊られた対象物の位置を検出する位置検出システムであって、吊部材の吊点と共に移動するクレーンの構造体に設けられ、対象物を撮影する撮影部と、撮影部の撮影情報から、色情報を抽出して、抽出領域を特定する色情報抽出部と、色情報抽出部の抽出結果に基づいて、対象物とクレーンとの相対位置を検出する位置検出部と、を備える。
【0007】
本発明に係る位置検出システムにおいて、色情報抽出部は、撮影部の撮影情報から、色情報を抽出して、抽出領域を特定する。また、位置検出部は、色情報抽出部の抽出結果に基づいて、対象物とクレーンとの相対位置を検出することができる。このように、位置検出部が、撮影情報の色情報の抽出に基づく場合、例えば太陽光の反射などの外乱の影響を低減した状態で、対象物の位置検出を行うことができる。以上より、対象物の位置を確実に検出することができる。
【0008】
位置検出部は、互いに異なる特性を有する複数のターゲットを検出してよい。この場合、位置検出部は、各々のターゲットの個別の特性を有効に活用することで、対象物の位置をより詳細に検出することができる。
【0009】
位置検出部は、互いに異なる特性として、互いに異なる色情報を有する複数のターゲットを検出してよい。この場合、各々のターゲットの色情報を変えるだけで、容易に異なる特性の複数のターゲットを準備することができる。
【0010】
位置検出部は、互いに異なる色情報を有する複数のターゲットの位置関係に基づいて、対象物の水平面内での回転方向における姿勢を検出してよい。すなわち、複数のターゲットの特性が互いに異なっているため、位置検出部は、回転方向における各ターゲットの位置関係を参照することで、容易に回転方向における対象物の姿勢を検出できる。
【0011】
位置検出部は、単一の撮影部からの撮影情報に基づいて、対象物に加え、当該対象物の設置場所を検出してよい。この場合、複数の撮影部を用いなくとも、位置検出部は、単一の撮影部からの撮影情報に基づいて、容易に対象物と設置場所との相対的な位置関係を把握することができる。
【0012】
位置検出システムは、構造体の動作に関わらず、撮影部を下方へ向けるように撮影部の姿勢を調整する姿勢調整機構を備えてよい。この場合、例えばジブクレーンのように構造体の動作によって撮影部の姿勢が変わりやすいクレーンの場合であっても、姿勢調整機構が、撮影部を下方へ向けるように姿勢を調整することができる。
【0013】
本発明に係るターゲットは、クレーンの吊部材及び吊部で吊られた対象物の位置を検出するためのターゲットであって、画像内で抽出可能な任意の色情報を有する。
【0014】
このターゲットを対象物に設けることによって、位置検出システムは、画像内でターゲットの色情報を抽出して、位置検出を行うことができる。この場合、上述の位置検出システムと同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【0015】
本発明に係る位置検出方法は、クレーンの吊部材及び吊部で吊られた対象物の位置を検出する位置検出方法であって、吊部材の吊点と共に移動するクレーンの構造体に設けられた撮影部によって、対象物を撮影する撮影工程と、撮影工程での撮影情報から、色情報を抽出して、抽出領域を特定する色情報抽出工程と、色情報抽出工程での抽出結果に基づいて、対象物とクレーンとの相対位置を検出する位置検出工程と、を備える。
【0016】
この位置検出方法によれば、上述の位置検出システムと同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、対象物の位置を確実に検出できる位置検出システム、ターゲット、及び位置検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る位置検出システムを示す概略図である。
図2図1が適用されるクレーンの概略構成図である。
図3】撮影部によって撮影された画像の一例である。
図4】姿勢調整機構の構成を示す斜視図である。
図5】色情報抽出部の処理内容を説明するための図である。
図6】位置検出部の処理内容を説明するための図である。
図7】撮影部によって撮影された画像の一例である。
図8】位置検出システムの制御処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明による位置検出システムの好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る位置検出システムを示す概略図である。図2は、図1が適用されるクレーンの概略構成図である。
【0020】
本実施形態に係る位置検出システム100は、クレーン1の吊部材17及び吊部16で吊られた吊荷SL(対象物)の位置を検出するシステムである。位置検出システム100は、システム構成としては、計測装置10と、制御装置40と、入力部51と、出力部52と、ターゲット50A,50Bと、を備える。
【0021】
図2に示すように、本実施形態において例示されるクレーン1として、旋回を行うと共に走行を行うことができるジブクレーンが挙げられる。クレーン1は、装置構成としては、走行体11、塔体12、旋回体13、ジブ14、及びマスト15を有している。
【0022】
走行体11は、車輪が走行レール上を駆動されることで、走行レールに沿ってクレーン1を走行させる。塔体12は、走行体11上に立設された柱状の構造体である。旋回体13は、塔体12の上端に設けられ、塔体12に対して鉛直軸線CL回りに旋回可能である。旋回体13は、その上部に運転室13aを含んでいる。ジブ14は、旋回体13の一部にピン結合されている。マスト15は、旋回体13上に立設されている。旋回体13の後側の端部、マスト15の上端部であるマストトップ、及びジブ14の先端部は、ワイヤーロープW1により互いに支持されている。ワイヤーロープW1が巻取り及び巻戻しされることにより、ジブ14は、その基端部を支点として起伏動作を行う。また、ワイヤーロープW2は、吊部16と連結されている。ワイヤーロープW2が巻き取り及び巻戻しされることにより、吊部16は、上下方向へ移動する。なお、ワイヤーロープW2のうち、ジブ14の上端から下方へ延びることで、吊部16及び吊荷SLを吊っている部分を吊部材17と称する。なお、吊部材17の振幅の基点となる箇所を「吊点SP」と称する。
【0023】
吊部16には、ターゲット50A,50Bが設けられている。図3に示すように、ターゲット50A,50Bは、後述の撮影部21が上側から撮影できるように、吊部16の上面16aに設けられている。ターゲット50A,50Bは、吊部16の中央よりも一方側に寄せられた位置にて、互いに並べられた状態で配置されている。また、ターゲット50A、50Bは円形状を有している。ただし、ターゲット50A,50Bの位置、形状、及び大きさは特に限定されない。また、ターゲットの数量も特に限定されない。
【0024】
ターゲット50A,50Bは、互いに異なる特性を有する。互いに異なる特性は、画像中でターゲット50Aとターゲット50Bとを区別可能な特性であればよく、例えば、互いに異なる色情報、互いに異なる形状などが挙げられる。本実施形態では、ターゲット50A,50Bは、互いに異なる色情報を有している。ターゲット50A,50Bは、画像内で抽出可能な任意の色情報をそれぞれ有する。画像内で抽出可能な任意の色情報とは、後述の色情報抽出部42の処理によって抽出可能な色情報であればよい。このような色情報は、具体的には、赤色、緑色、青色などの様々な色が挙げられ、白色以外の色であればよい。例えば、ターゲット50Aは全体が赤色となっており、ターゲット50Bは全体が緑色となっている。ただし、ターゲット50A,50Bの色は特に限定されない。
【0025】
図1に戻り、計測装置10は、撮影部21と、距離計測部22と、傾斜検出部23と、を備えている。計測装置10は、撮影部21、距離計測部22、及び傾斜検出部23によって検出された検出情報を制御装置40へ送信する。また、計測装置10は、制御装置40からの指令信号を受信する。
【0026】
撮影部21は、吊荷SLを撮影する計測機器である。撮影部21は、吊点SPと共に移動するクレーン1の構造体30に設けられる。本実施形態では、図2に示すように、撮影部21は、ジブ14の先端部に設けられた取付部材31に取り付けられている。撮影部21は、レンズ部が鉛直方向の下側を向くように配置されている。撮影部21は、下方へ広がる撮影範囲E内の撮影情報を取得することができる。撮影範囲Eは、吊荷SLの振れ角度が許容できる最大の値となっても、吊荷SLが撮影範囲E外に出ないような大きさに設定される。撮影部21は、一台の撮影範囲Eだけで吊荷SLの移動範囲の全範囲を網羅できることが好ましい。撮影部21によって取得された撮影情報、すなわち画像の一例を図3に示す。撮影部21は、一般的なカラーカメラによって構成されてよい。従って、撮影部21によって撮影された画像は、カラーの画像である。
【0027】
撮影部21は、吊点SPの近傍に設けられている。ただし、撮影部21は、吊点SPと共に移動する構造体30であり、且つ、吊荷SLを撮影可能な位置であれば、どこに設けられてもよい。例えば、ジブ14の長手方向における中央付近の位置、またはジブ14の旋回体13との接続部付近の位置に設けられてもよい。
【0028】
ここで、図4に示すように、位置検出システム100は、構造体30の動作に関わらず、撮影部21を下方へ向けるように撮影部21の姿勢を調整する姿勢調整機構60を備える。姿勢調整機構60は、保持部61と、ヒンジ部62と、固定部63と、を備える。保持部61は、撮影部21を保持する部材である。保持部61は、底板部61aと、上板部61bと、底板部61aと上板部61bとを四隅で連結する柱部61cと、を備える。底板部61aの下面には、撮影部21が設けられる。また、底板部61aの上面には傾斜検出部23が設けられる。底板部61aは、上板部61bに比して厚みが厚く、且つ、重く構成されている。ヒンジ部62は、保持部61の上板部61bと、固定部63と、を回転可能に連結する部材である。
【0029】
固定部63は、クレーン1の構造体30に姿勢調整機構60を固定するための部材である。クレーン1の構造体30の姿勢が変化することに伴って、固定部63の姿勢も変化する。例えば、図4(a)に示す状態では、固定部63は水平な状態で構造体30に取り付けられている。この状態では、保持部61の底板部61aも水平な状態となっている。これに対し、ジブ14が起伏すると、図4(b)に示すように、固定部63は、水平に対して傾斜するような姿勢となる。このとき、保持部61は、ヒンジ部62によって、固定部63に対して相対的に回転する。従って、保持部61の底板部61aの水平な状態が保たれる。このとき、底板部61aの重量が大きいことにより、固定部63に対して回転し易くなっている。これにより、構造体30の動作に関わらず、撮影部21が下側を向いた状態が維持される。
【0030】
図1に示すように、距離計測部22は、撮影部21と吊荷SLとの距離を検出する計測機器である。当該距離は、吊部材17の長さに近似させることができる。従って、距離計測部22は、ワイヤーロープW2を巻き取る巻取装置32に設けられた巻き出し量の検出センサによって構成されてよい(図2参照)。当該検出センサは、巻き出されたワイヤーロープW2の巻き出し量に基づいて、吊部材17の長さを検出可能である。なお、距離計測部22は、このような巻取装置32に設けられた検出センサに限定されず、例えば、撮影部21付近に設けられたレーザ式やレーダ式の距離計測器によって構成されてもよい。また、距離計測部22は省略されてもよい。
【0031】
傾斜検出部23は、撮影部21の傾斜量を検出する計測機器である。傾斜検出部23は、水平方向に対する撮影部21の傾斜量が変化した場合、当該傾斜量を検出する。傾斜検出部23は、撮影部21の傾斜量が変化した時に、同じ傾斜量で傾斜する位置に設けられる。傾斜検出部23は、撮影部21が取り付けられている部材と、同じ部材に取り付けられればよい。例えば、傾斜検出部23は、撮影部21が取り付けられた底板部61aに設けられてよい(図4参照)。なお、傾斜検出部23は省略されてもよい。
【0032】
入力部51は、ユーザーが制御装置40に対して情報入力を行うインターフェースである。入力部51は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、マイクなどが採用される。出力部52は、制御装置40からの情報をユーザーに出力するインターフェースである。出力部52は、例えば、モニタ、スピーカなどが採用される。
【0033】
制御装置40は、位置検出システム100全体を制御する装置である。制御装置40は、プロセッサ、メモリ、ストレージ、通信インターフェース及びユーザインターフェースを備え、一般的なコンピュータとして構成されている。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)などの演算器である。メモリは、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体である。ストレージは、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶媒体である。通信インターフェースは、データ通信を実現する通信機器である。プロセッサは、メモリ、ストレージ、通信インターフェース及びユーザインターフェースを統括し、後述する機能を実現する。制御装置40では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。制御装置40は、複数のコンピュータから構成されていてもよい。
【0034】
制御装置40は、情報取得部41と、色情報抽出部42と、位置検出部43と、記憶部44と、を備える。
【0035】
情報取得部41は、計測装置10から検出情報を取得する。情報取得部41は、撮影部21によって撮影された撮影情報(すなわち画像)を取得する。また、情報取得部41は、距離計測部22による計測結果、及び/又は傾斜検出部23による検出結果を取得する。
【0036】
記憶部44は、位置検出システム100の位置検出に用いられる各種情報を記憶する。記憶部44は、吊部16に設けられたターゲット50A,50Bに関する情報を記憶する。このような情報として、例えば、ターゲット50A,50Bの色情報、形状情報、大きさ情報、位置情報などが挙げられる。
【0037】
色情報抽出部42は、撮影部21の撮影情報から、色情報を抽出して、抽出領域を特定する。色情報抽出部42は、画像の中から、特定の色情報を抽出し、当該色情報を有する領域を抽出領域として特定する。色情報抽出部42は、少なくともターゲット50A,50Bに対応する領域は、抽出領域として特定する。色情報抽出部42は、画像の中において、ターゲット50A,50B以外の領域であっても、特定の色情報を有している領域であれば、抽出領域として特定する。
【0038】
位置検出部43は、色情報抽出部42の抽出結果に基づいて、吊荷SLとクレーン1との相対位置を検出する。位置検出部43は、吊荷SLとクレーン1との相対位置として、吊荷SLの振れ角を検出することができる。例えば、図3に示すように、位置検出部43は、撮影部21の画像に対し、吊点SP鉛直下の位置を振れ角の原点OP(振れ角0点)とする。位置検出部43は、画像中のターゲット50A,50Bによる色彩パターンと、原点OPとの距離を振れ角として検出する。ここでは、位置検出部43は、色彩パターンの重心WPと、原点OPとのX方向の距離をX方向振れ角θxとして検出する。位置検出部43は、色彩パターンの重心WPと、原点OPとのY方向の距離をY方向振れ角θyとして検出する。このように、位置検出部43は、色彩パターン重心WPの振れ角に基づいて、吊荷SLのクレーン1に対する相対位置を検出する。
【0039】
位置検出部43は、互いに異なる特性を有する複数のターゲット50A,50Bを検出する。位置検出部43は、互いに異なる特性として、互いに異なる色情報を有する複数のターゲット50A,50Bを検出する。
【0040】
次に、図5及び図6を参照して、色情報抽出部42及び位置検出部43の具体的な処理の一例について説明する。図5(a)は、撮影部21によって撮影されたカラー画像CPを示す。このカラー画像CPは、RGB(赤緑青)の画像信号によって構成された画像である。カラー画像CPには、吊部16及びターゲット50A,50Bが写っている。カラー画像CP内において、ターゲット50Aは赤色で表示され、ターゲット50Bは緑色で表示され、吊部16は光の影響で白色に表示される。また、カラー画像CPには、吊部16よりも遠方の様子も写り込んでいる。このうち、物体OB1,OB2は赤色で表示され、物体OB3,OB4,OB5は緑色で表示される。
【0041】
色情報抽出部42は、色情報を抽出するために、カラー画像CPのRGB(赤緑青)の画像信号をHSV(色相、彩度、明度)に変換する。そして、色情報抽出部42は、H(色相)画像において、ターゲット50A,50Bの色でフィルタを掛けたフィルタ画像FP1,FP2を取得する。図5(b)は、ターゲット50Aの色である赤色でフィルタを掛けたフィルタ画像FP1を示す。図5(c)は、ターゲット50Bの色である緑色でフィルタを掛けたフィルタ画像FP2を示す。図5(b)に示すように、フィルタ画像FP1において、赤色の色情報を有する領域は明るく表示され、他は暗く表示される。また、図5(b)に示すように、フィルタ画像FP2において、緑色の色情報を有する領域は明るく表示され、他は暗く表示される。
【0042】
そのため、色情報抽出部42は、フィルタ画像FP1の中から、赤色の色情報を抽出し、当該赤色の色情報を有する領域を抽出領域RE1,RE2,RE6として抽出する。なお、抽出領域RE1は物体OB1に対応し、抽出領域RE2は物体OB2に対応し、抽出領域RE6はターゲット50Aに対応する。色情報抽出部42は、フィルタ画像FP2の中から、緑色の色情報を抽出し、当該緑色の色情報を有する領域を抽出領域RE3,RE4,RE5,RE7として抽出する。なお、抽出領域RE3は物体OB3に対応し、抽出領域RE4は物体OB4に対応し、抽出領域RE5は物体OB5に対応し、抽出領域RE7はターゲット50Bに対応する。
【0043】
次に、位置検出部43は、抽出領域RE1~RE7の中から、ターゲット50A,50Bに該当するものを特定する。なお、図6は、フィルタ画像FP1とフィルタ画像FP2とを合成した合成フィルタ画像FP3である。図6に示すように、位置検出部43は、抽出領域RE1~RE7を評価して、各々の重心位置、及び面積を演算する。図6において、「Pr」は赤色の抽出領域であることを示し、「Pg」は緑色の抽出領域であることを示し、「Pr」「Pg」に付された番号は識別番号であり、カッコの中の数値は抽出領域の面積を示しており、十字のマークは抽出領域の重心を示している。
【0044】
撮影部21とターゲット50A,50Bとの間の距離、画像内のターゲット50A,50Bの面積、ターゲット50A,50B間の要素間距離との関係は、演算又は計測を事前に行われ、関連付けした対比データとして記憶部44に記憶される。位置検出部43は、距離計測部22で計測された距離と、記憶部44の対比データとを照らし合わせることで、合成フィルタ画像FP3内におけるターゲット50A,50Bの面積、及びターゲット50A,50B間の要素間距離の予定値を取得する。また、合成フィルタ画像FP3内でのターゲット50A,50Bの外接長方形(図6において、白色の破線で示す長方形)の縦横比の予定値は、予め記憶部44に記憶されている。
【0045】
位置検出部43は、合成フィルタ画像FP3内の抽出領域RE1~RE7のうち、ターゲット50A,50Bに該当しないものを候補から外すことで、ターゲット50A,50Bに該当する抽出領域を特定する。具体的に、位置検出部43は、面積の値と、外接長方形の縦横比の値が、ターゲット50A,50Bの予定値から一定以上外れている抽出領域については、候補から除去する。位置検出部43は、抽出領域RE2,RE3,RE4の面積が、ターゲット50A,50Bの予定値に比べて小さ過ぎるため、候補から外す。位置検出部43は、抽出領域RE1の外接長方形の縦横比が、ターゲット50A,50Bの予定値から大きく外れているため、候補から外す。これにより、抽出領域RE5,RE6,RE7が候補として残る。位置検出部43は、抽出領域RE6と抽出領域RE7との要素間距離D1、及び抽出領域RE5と抽出領域RE6との要素間距離D2を演算する。位置検出部43は、ターゲット50A,50Bの要素間距離の予定値と、要素間距離D1,D2とを比較する。これにより、位置検出部43は、予定値に最も近い要素間距離D1に係る抽出領域RE6と抽出領域RE7が、ターゲット50A,50Bであると認識する。
【0046】
位置検出部43は、抽出領域RE6は赤色の領域であるためターゲット50Aに対応すると認識し、抽出領域RE7は緑色の領域であるためターゲット50Bに対応すると認識する。ここで、位置検出部43は、互いに異なる色情報を有する複数のターゲット50A,50Bの位置関係に基づいて、吊荷SLの水平面内での回転方向における姿勢を検出することができる。なお、ここでの回転方向は、鉛直方向に延びる中心軸を基準とした回転方向である。例えば、抽出領域RE6がターゲット50Aに対応し、抽出領域RE7がターゲット50Bに対応する姿勢が、吊荷SLの正規の姿勢(回転方向における0°の姿勢)であるものとする。これに対し、位置検出部43が、抽出領域RE6がターゲット50Bに対応し、抽出領域RE7がターゲット50Aに対応することを検出した場合、吊荷SLの水平面内での回転方向における姿勢が、180°回転していることを検出する。
【0047】
位置検出部43は、抽出領域RE6,RE7の重心をターゲット50A,50Bのターゲット位置とする。また、位置検出部43は、両者のターゲット位置から、色彩パターンの重心WPを演算する。位置検出部43は、事前に分かっているターゲット50A,50B間の幾何学的配置の特徴から、スキュー角度を演算する。
【0048】
ここで、撮影部21の姿勢(レンズの向き)が、鉛直方向に対して一定の場合には、位置検出部43は、事前に計測等で求めた振れ角の原点OP1の位置と、上記で得られた色彩パターンの重心WPとの距離に基づいて、振れ角θx,θy(図3参照)を検出する。予め求められた原点OP1の位置は、記憶部44に記憶される。ここで、撮影部21の姿勢が変化する場合には、振れ角の原点の位置が変化する。図6では、原点OP1から原点OP2に変化している。従って、位置検出部43は、傾斜検出部23の検出結果に基づいて、振れ角の原点OP2を、元の位置である原点OP1に補正する。
【0049】
なお、制御装置40は、撮影部21の撮影情報、傾斜検出部23の検出結果、及び距離計測部22の計測結果を常時取込、振れ角の評価演算を常時行ってよい。そして、制御装置40は、振れ角の情報を、上位側の運転画面(出力部52)や振れ止めシステム等に送信してよい。
【0050】
ここで、図7に示すように、位置検出部43は、単一の撮影部21からの撮影情報に基づいて、吊荷SLに加え、当該吊荷SLの設置場所71を検出する。設置場所71は、クレーン1が吊っている吊荷SLを設置する場所、またはクレーン1の吊対象となる吊荷SLが設置されている場所である。図7に示す例では、クレーン1が吊っている吊荷SLを設置する場所としての設置場所71が例示されている。設置場所71には、ターゲット70A、70Bが設けられている。ターゲット70A,70Bは互いに異なり、且つターゲット50A,50Bとも異なる色情報を有する。設置場所71の中には、吊荷SLを設置する領域を厳密に規定した吊荷設置枠72が設定されている。ターゲット70A,70Bは、吊荷設置枠72の外側に設けられている。位置検出部43は、ターゲット50A,50Bと同様な方法で、ターゲット70A,70Bの位置を特定する。ターゲット70A,70Bと吊荷設置枠72との位置関係は予め設定されているため、位置検出部43は、ターゲット70A,70Bに基づいて、画像内における吊荷設置枠72の位置を検出することができる。
【0051】
上述のように、ターゲット50A,50Bの色彩パターンとターゲット70A,70Bの色彩パターンによって、位置検出部43は、吊部16と設置場所71の区別を行うことができ、同じ画像上での位置と角度を評価できる。また、クレーン1が自動で吊荷SLの保持、または荷降ろし時には、吊部16と設置場所71の検出内容に基づいて、両者の相対位置を検出することができる。これにより、クレーン1は、吊荷SLの保持・荷降ろしが出来る相対位置、及び角度範囲に収まる事を確認しながら、吊荷SLのハンドリングを行うことができる。
【0052】
次に、図8を参照して、位置検出システム100による位置検出方法の内容について説明する。図8に示すように、撮影部21は、吊荷SLを撮影する(ステップS110:撮影工程)。撮影部21は撮影情報を制御装置40へ送信し、制御装置40の情報取得部41が撮影情報を取得する。
【0053】
次に、色情報抽出部42は、ステップS110での撮影情報から、色情報を抽出して、抽出領域を特定する(ステップS120:色情報抽出工程)。次に、位置検出部43は、ステップS120での抽出結果に基づいて、吊荷SLとクレーン1との相対位置を検出する(ステップS130:位置検出工程)。
【0054】
具体的に、ステップS130では、位置検出部43は、複数の抽出領域の中から、ターゲット50A,50Bに対応するものを特定する(ステップS140)。次に、位置検出部43は、ターゲット50A,50Bの重心に基づいて、振れ角を検出する(ステップS150)。次に、位置検出部43は、ステップS150で検出した振れ角に基づいて、吊荷SLの位置を検出する(ステップS160)。ステップS160が終了したら、図8に示す制御処理が終了し、再びステップS110から処理が開始される。
【0055】
次に、本実施形態に係る位置検出システム100、ターゲット50A,50B、及び位置検出方法の作用・効果について説明する。
【0056】
本実施形態に係る位置検出システム100において、色情報抽出部42は、撮影部21の撮影情報から、色情報を抽出して、抽出領域を特定する。また、位置検出部43は、色情報抽出部42の抽出結果に基づいて、吊荷SLとクレーン1との相対位置を検出することができる。このように、位置検出部43が、撮影情報の色情報の抽出に基づく場合、例えば太陽光の反射などの外乱の影響を低減した状態で、吊荷SLの位置検出を行うことができる。以上より、位置検出部43は、ターゲット以外の光源を誤検出することなく、吊荷SLの位置を確実に検出することができる。
【0057】
位置検出部43は、互いに異なる特性を有する複数のターゲット50A,50Bを検出してよい。この場合、位置検出部43は、各々のターゲット50A,50Bの個別の特性を有効に活用することで、吊荷SLの位置をより詳細に検出することができる。
【0058】
位置検出部43は、互いに異なる特性として、互いに異なる色情報を有する複数のターゲット50A,50Bを検出してよい。この場合、各々のターゲット50A,50Bの色情報を変えるだけで、容易に異なる特性の複数のターゲット50A,50Bを準備することができる。例えば、形状を変えることで異なる特性とする場合、各ターゲットの形状を工夫する必要があり、且つ、吊部16の設置場所の制約などを考慮する必要がある。これに対し、ターゲット50A,50Bは、両方ともシンプルな円形として、互いの色を変えるだけで容易に特性を変えている。
【0059】
位置検出部43は、互いに異なる色情報を有する複数のターゲット50A,50Bの位置関係に基づいて、吊荷SLの水平面内での回転方向における姿勢を検出してよい。すなわち、複数のターゲット50A,50Bの特性が互いに異なっているため、位置検出部43は、回転方向における各ターゲット50A,50Bの位置関係を参照することで、容易に回転方向における吊荷SLの姿勢を検出できる。
【0060】
位置検出部43は、単一の撮影部21からの撮影情報に基づいて、吊荷SLに加え、当該吊荷SLの設置場所を検出してよい。この場合、複数の撮影部21を用いなくとも、位置検出部43は、単一の撮影部21からの撮影情報に基づいて、容易に吊荷SLと設置場所との相対的な位置関係を把握することができる。
【0061】
位置検出システム100は、構造体30の動作に関わらず、撮影部21を下方へ向けるように撮影部21の姿勢を調整する姿勢調整機構60を備えてよい。この場合、例えばジブクレーンのように構造体30の動作によって撮影部21の姿勢が変わりやすいクレーンの場合であっても、姿勢調整機構60が、撮影部21を下方へ向けるように姿勢を調整することができる。
【0062】
本実施形態に係るターゲット50A,50Bは、クレーン1の吊部材17及び吊部16で吊られた吊荷SLの位置を検出するためのターゲット50A,50Bであって、画像内で抽出可能な任意の色情報を有する。
【0063】
このターゲット50A,50Bを吊荷SLに設けることによって、位置検出システム100は、画像内でターゲット50A,50Bの色情報を抽出して、位置検出を行うことができる。この場合、上述の位置検出システム100と同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【0064】
本実施形態に係る位置検出方法は、クレーン1の吊部材17及び吊部16で吊られた吊荷SLの位置を検出する位置検出方法であって、吊部材17の吊点SPと共に移動するクレーン1の構造体30に設けられた撮影部21によって、吊荷SLを撮影する撮影工程と、撮影工程での撮影情報から、色情報を抽出して、抽出領域を特定する色情報抽出工程と、色情報抽出工程での抽出結果に基づいて、吊荷SLとクレーン1との相対位置を検出する位置検出工程と、を備える。
【0065】
この位置検出方法によれば、上述の位置検出システム100と同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【0066】
また、位置検出システム100は、色情報を使うことにより、太陽光反射などの外乱に対してロバスト性の高い位置検出を行うことができる。更に、色情報を用いて位置検出を行うため、撮影部21として一般的なカラーカメラの利用が可能となる。従って、安価なシステムとなり、また監視用途のカメラとの兼用が可能となりシステムの導入が容易になる。また、吊部16上に光源などの特別なターゲットの配置を不要とすることができるため、システムの導入が容易となる。
【0067】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0068】
例えば、上述の実施形態では、クレーン1としてジブクレーンを例示したが、クレーンの種類は特に限定されるものではない。例えば、天井クレーン、ゴライアスクレーン、レードルクレーンなどのクレーンに対して、本発明を適用してもよい。レードルクレーンの場合、溶融して赤くなった金属が存在する環境で作業が行われる。従って、位置検出システム100は、吊荷SLの背景の赤くなった高熱の金属の色を抽出して、吊荷SLの位置を検出してよい。このように、レードルクレーンのように吊荷にターゲットが置けない場合や、吊具の色パターンが粉塵等で埋もれてしまうような場合でも、位置検出システムは、溶鋼の色を検出の対象とする事ができるので、吊荷の振れの検出を行うことが可能となる。
【0069】
上述の実施形態では、距離計測部22を用いて撮影部21と吊荷SLとの距離を計測していた。距離計測部22を省略する場合、画像中のターゲット50A,50Bの情報のみに基づいて吊荷SLを認識し、その画像上のターゲット50A,50Bのサイズ基づいて、撮影部21と吊荷SL間の距離を推定してよい。
【0070】
振れ検出のロバスト性向上させる時には、色彩形状パターンを吊部16上の光源で作り、輝度の情報も利用して位置検出を行ってよい。これにより、外乱を除去してロバスト性を向上させることができる。なお、パトランプなどの色付きの光源をターゲットとして、色情報の抽出が行われてもよい。
【0071】
位置検出部43は、異なる複数の吊荷SLの色彩パターンを同時に検出可能としてもよい。この場合、各吊荷SLに固有の色彩パターンを与える事により、位置検出部43は、振れ角と同時に吊荷SLの識別も行うことができる。
【0072】
上述の実施形態では、位置検出システム100は、単一の撮影部21によって吊荷SLの位置検出を行っていたが、複数の撮影部21を用いてもよい。
【符号の説明】
【0073】
10…クレーン、21…撮影部、42…色情報抽出部、43…位置検出部、50A,50B,70A,70B…ターゲット、60…姿勢調整機構、100…位置検出システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8