(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】リサイクルシステム
(51)【国際特許分類】
C25B 1/23 20210101AFI20250328BHJP
C21B 5/00 20060101ALI20250328BHJP
C25B 1/042 20210101ALI20250328BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20250328BHJP
C25B 9/67 20210101ALI20250328BHJP
C25B 13/07 20210101ALI20250328BHJP
C07C 29/152 20060101ALN20250328BHJP
C07C 31/04 20060101ALN20250328BHJP
【FI】
C25B1/23
C21B5/00 321
C25B1/042
C25B9/00 A
C25B9/67
C25B13/07
C07C29/152
C07C31/04
(21)【出願番号】P 2021210831
(22)【出願日】2021-12-24
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】松尾 健
(72)【発明者】
【氏名】碓井 志典
(72)【発明者】
【氏名】浅野 耕司
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 宏之
(72)【発明者】
【氏名】中桐 基裕
(72)【発明者】
【氏名】小城 育昌
(72)【発明者】
【氏名】原 伸英
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/220667(WO,A1)
【文献】特開平04-244035(JP,A)
【文献】特開平04-261130(JP,A)
【文献】国際公開第2011/087036(WO,A1)
【文献】特開2012-052162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
700℃以上1000℃以下の水蒸気に含有される熱エネルギーである高温領域の熱エネルギーの供給源としての高温ガス炉と、
前記高温ガス炉から供給される熱エネルギーを高温側から低温側に向けて段階的に利用可能とするとともに、前記高温ガス炉の熱エネルギーを利用した二酸化炭素と水蒸気との共電解によって、一酸化炭素及び水素を製造する共電解用SOEC
を有した共電解設備を有する熱利用設備と、
前記共電解用SOECから一酸化炭素を供給可能に設けられ、一酸化炭素を利用するCO利用設備と、
を備え
、
前記熱利用設備は、
前記高温ガス炉の前記高温領域の熱エネルギーを供給する中間熱交換器と、
前記中間熱交換器と複数のラインを介して接続される水素製造設備と、
前記CO利用設備内に設けられる熱供給用蒸気製造設備と、
をさらに有するリサイクルシステム。
【請求項2】
前記CO利用設備及び外部のいずれかから二酸化炭素を回収するとともに、前記共電解用SOECに二酸化炭素を供給可能に設けられたCO2回収供給設備を備える請求項
1に記載のリサイクルシステム。
【請求項3】
前記熱利用設備は、
前記CO2回収供給設備内の二酸化炭素を吸収する吸収材に、
100℃以上300℃以下の水蒸気に含有される熱エネルギーである低温領域の熱エネルギーを供給する再生用熱利用設備をさらに有する請求項
2に記載のリサイクルシステム。
【請求項4】
前記水素製造設備は、前記高温ガス炉の熱エネルギーを利用した水蒸気の電気分解によって水素を製造する水素製造用SOECを備える請求項1から
3のいずれか一項に記載のリサイクルシステム。
【請求項5】
前記CO利用設備は、前記共電解用SOECから一酸化炭素及び水素を供給可能、且つ、前記水素製造用SOECから水素を供給可能に設けられ、一酸化炭素及び水素から炭化水素化合物を製造する炭化水素製造設備を有する請求項
4に記載のリサイクルシステム。
【請求項6】
前記CO利用設備は、前記共電解用SOECから一酸化炭素を供給可能、且つ、前記水素製造用SOECから水素を供給可能に設けられ、一酸化炭素及び水素を利用した鉄鉱石の還元によって製鉄する製鉄設備を有し、
前記製鉄設備は、前記共電解用SOEC及び前記水素製造用SOECとで製造される酸素を供給されるように設けられている請求項
4又は
5に記載のリサイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工場等から排気される二酸化炭素を再利用し、二酸化炭素の排出量を低減し、また、熱エネルギーを高温領域から低温領域に向けて段階的に利用するリサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水蒸気を吸熱反応させて水素を製造する水素製造装置と、一酸化炭素及び二酸化炭素の少なくとも一部を含む気体と、製造された水素とを反応させて炭化水素を製造する炭化水素製造装置と、を備える燃料製造システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、二酸化炭素と水素とを反応させて炭化水素を製造する場合、二酸化炭素から一酸化炭素、一酸化炭素から炭化水素と、段階的に還元される。二酸化炭素から一酸化炭素を得るには、高温化で反応を行う必要があり、多くの電気エネルギーを必要とする。また、炭化水素の製造の過程で、一酸化炭素から炭素が析出されて(コーキング現象)、装置に不具合を引き起こす等のリスクが生じる場合がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、少ない電気エネルギーで二酸化炭素を再利用することができるとともに、炭素析出のリスクの低減することができるリサイクルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係るリサイクルシステムは、700℃以上1000℃以下の水蒸気に含有される熱エネルギーである高温領域の熱エネルギーの供給源としての高温ガス炉と、前記高温ガス炉から供給される熱エネルギーを高温側から低温側に向けて段階的に利用可能とするとともに、前記高温ガス炉の熱エネルギーを利用した二酸化炭素と水蒸気との共電解によって、一酸化炭素及び水素を製造する共電解用SOECを有した共電解設備を有する熱利用設備と、前記共電解用SOECから一酸化炭素を供給可能に設けられ、一酸化炭素を利用するCO利用設備と、を備え、前記熱利用設備は、前記高温ガス炉の前記高温領域の熱エネルギーを供給する中間熱交換器と、前記中間熱交換器と複数のラインを介して接続される水素製造設備と、前記CO利用設備内に設けられる熱供給用蒸気製造設備と、をさらに有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示のリサイクルシステムによれば、少ない電気エネルギーで二酸化炭素を再利用することができるとともに、炭素析出のリスクの低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の第一実施形態に係るリサイクルシステムの図である。
【
図2】本開示の第一実施形態に係るCO
2回収供給設備の構成図である。
【
図3】本開示の第二実施形態に係るリサイクルシステムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第一実施形態>
(リサイクルシステム)
以下、本開示の第一実施形態に係るリサイクルシステム100について、
図1、
図2を参照して説明する。
図1に示すリサイクルシステム100は、工場等から排気される二酸化炭素を再利用し、二酸化炭素の排出量を低減し、また、熱エネルギーを高温領域から低温領域に向けて段階的に利用するシステムである。
【0010】
図1に示すように、リサイクルシステム100は、高温ガス炉1と、中間熱交換器2と、水素製造設備3と、共電解設備4と、CO利用設備5と、CO
2回収供給設備6と、を備える。
【0011】
リサイクルシステム100は、これらの設備及び装置等に熱媒体を介して熱エネルギーを供給する熱利用設備8を備える。本実施形態では、熱媒体としてヘリウムと水蒸気(水)とが用いられている。
以下では、リサイクルシステム100の各構成について詳細に説明する。
【0012】
(高温ガス炉)
高温ガス炉1は、核熱の多目的利用を目標に高温熱を取り出せる原子炉として開発されている。高温ガス炉1は、高温領域の熱エネルギーの供給源として利用される。
以下では、概念的に700℃以上1000℃以下の水蒸気に含有される熱エネルギーを高温領域の熱エネルギーと称し、300℃以上700℃以下の水蒸気に含有される熱エネルギーを中温領域の熱エネルギーと称し、100℃以上300℃以下の水蒸気に含有される熱エネルギーを低温領域の熱エネルギーと称する場合がある。
高温ガス炉1の熱エネルギーは、熱利用設備8を流れるヘリウムと水蒸気を介して、他の設備及び装置に供給される。
【0013】
高温ガス炉1は、第一熱交換ライン10及び第二熱交換ライン11によって、中間熱交換器2と接続されている。第一熱交換ライン10には、高温ガス炉1から中間熱交換器2に向けてヘリウムが流れる。第二熱交換ライン11には、中間熱交換器2から高温ガス炉1に向けてヘリウムが流れる。このように、ヘリウムは、高温ガス炉1と中間熱交換器2との間で循環する。
【0014】
以下では、高温ガス炉1と中間熱交換器2との間で循環するヘリウムを一次ヘリウムと称する。
一次ヘリウムは、高温ガス炉1内に入り、高温ガス炉1から高温領域の熱エネルギーが直接供給される。ヘリウムは、熱化学的に安定な物質のため、高温ガス炉1の中に入っても、放射化することがない。
【0015】
(中間熱交換器)
中間熱交換器2は、一次ヘリウムと、一次ヘリウムとは別の流路を流れるヘリウム(以下、二次ヘリウムと称する。)とで熱交換を行う。二次ヘリウムは、高温ガス炉1と接触せずに一次ヘリウムと熱交換を行い、高温ガス炉1の高温領域の熱エネルギーを得る。
【0016】
中間熱交換器2は、供給ライン20によって、水素製造設備3と、共電解設備4と、CO利用設備5と、に接続されている。
【0017】
供給ライン20は、上流側供給ライン21と、供給ヘッダ部22と、下流側供給ライン23と、を有する。上流側供給ライン21は、中間熱交換器2と供給ヘッダ部22とを接続している。供給ヘッダ部22には、下流側供給ライン23が複数設けられている。複数の下流側供給ライン23のうち一部の下流側供給ライン23は、供給ヘッダ部22と水素製造設備3とを接続し、別の一部の下流側供給ライン23は、供給ヘッダ部22と共電解設備4とを接続し、さらに別の一部の下流側供給ライン23は、供給ヘッダ部22とCO利用設備5とを接続している。二次ヘリウムは、一次ヘリウムとの熱交換後、供給ライン20を通じて水素製造設備3、共電解設備4、及びCO利用設備5に供給される。
【0018】
(水素製造設備)
水素製造設備3は、水素用蒸気製造設備30と、水素製造用SOEC31(Solid Oxide Electrolysis Cell)と、を有する。
【0019】
(水素用蒸気製造設備)
水素用蒸気製造設備30には、供給ライン20を流れる二次ヘリウムを介して高温ガス炉1の高温領域の熱エネルギーが供給される。水素用蒸気製造設備30は、高温ガス炉1の熱エネルギーを利用して高温の水蒸気を製造する。
【0020】
水素用蒸気製造設備30は、水素用蒸気発生器32と、水素用蒸気予熱器33と、水素用蒸気過熱器34と、を有する。水素用蒸気発生器32は、水素製造用SOEC31と、水素用蒸気流路35によって接続されている。水素用蒸気流路35では、水蒸気が水素用蒸気発生器32から水素製造用SOEC31に向けて流れる。水素用蒸気流路35の中流部には、水素用蒸気予熱器33と、水素用蒸気過熱器34とが設けられている。水素用蒸気予熱器33は、水素用蒸気過熱器34よりも上流に配置されている。
【0021】
(水素用蒸気発生器)
水素用蒸気発生器32には、水素用蒸気過熱器34から中温領域の熱エネルギーが供給される。水素用蒸気過熱器34から水素用蒸気発生器32への熱エネルギーの供給については、後述する。また、水素用蒸気発生器32には、外部から水が供給される。水素用蒸気発生器32は、水素用蒸気過熱器34で使った後の中温領域の熱エネルギーで水を加熱し、水蒸気を発生させる。水素用蒸気過熱器34で使った後の熱は水素製造用中間ライン36から供給するが、下流側供給ライン23から供給される熱よりも低い中温領域の熱であり、水素用蒸気発生器32で使うことで、高温ガス炉1の熱を効率よく利用する。
【0022】
(水素用蒸気予熱器)
水素用蒸気予熱器33には、水素用蒸気発生器32から水蒸気が供給される。また、水素用蒸気予熱器33は、下流側供給ライン23によって、供給ヘッダ部22と接続されている。水素用蒸気予熱器33には、供給ヘッダ部22から二次ヘリウムが供給される。水素用蒸気予熱器33には、二次ヘリウムを介して高温ガス炉1の高温領域の熱エネルギーが供給される。
【0023】
(水素用蒸気過熱器)
水素用蒸気過熱器34には、水素用蒸気予熱器33から水蒸気が供給される。また、水素用蒸気過熱器34は、下流側供給ライン23によって、供給ヘッダ部22と接続されている。水素用蒸気過熱器34には、供給ヘッダ部22から二次ヘリウムが供給される。水素用蒸気過熱器34には、二次ヘリウムを介して高温ガス炉1の高温領域の熱エネルギーが供給される。水素用蒸気過熱器34は、二次ヘリウムに含有された高温領域の熱エネルギーを利用して、水蒸気をさらに加熱する。水素用蒸気過熱器34で加熱された水蒸気には、高温ガス炉1の高温領域の熱エネルギーが含有される。
【0024】
水素用蒸気過熱器34は、水素製造用中間ライン36によって、水素用蒸気発生器32と接続されている。二次ヘリウムの熱エネルギーは、水素用蒸気過熱器34に供給された後、中温領域まで減少する。二次ヘリウムは、水素用蒸気過熱器34から水素製造用中間ライン36を通って水素用蒸気発生器32に供給される。この二次ヘリウムによって、水素用蒸気発生器32には、水素用蒸気過熱器34で使った後の中温領域の熱エネルギーが供給される。このため、水素用蒸気発生器32では、水蒸気の発生に中温領域の熱エネルギーが利用される。
【0025】
(水素製造用SOEC)
水素製造用SOEC31には、水素用蒸気過熱器34から水蒸気が供給される。また、水素製造用SOEC31は、水素製造用水素極31aと、水素製造用酸素極31bと、を有する。水素製造用水素極31aと水素製造用酸素極31bとの間には、電解電圧が印加され、水素製造用SOEC31に電気エネルギーが供給される。水素製造用SOEC31は、水蒸気に含有される高温ガス炉1の高温領域の熱エネルギーを利用して水蒸気を電気分解し、水素を製造する。水素製造用SOEC31は、回収ライン71によって、CO利用設備5と接続されている。水素製造用SOEC31で製造された水素は、回収ライン71を通じてCO利用設備5に供給される。水素製造用SOEC31では、水素製造時に酸素が製造される。水素製造用SOEC31で製造された酸素は、外部に排出される。
【0026】
(共電解設備)
共電解設備4は、共電解用蒸気製造設備40と、共電解用SOEC41と、を有する。
【0027】
(共電解用蒸気製造設備)
共電解用蒸気製造設備40には、供給ライン20を流れる二次ヘリウムを介して高温ガス炉1の高温領域の熱エネルギーが供給される。共電解用蒸気製造設備40は、高温ガス炉1の熱エネルギーを利用して高温の水蒸気を製造する。
【0028】
共電解用蒸気製造設備40は、共電解用蒸気発生器42と、共電解用蒸気予熱器43と、共電解用蒸気過熱器44と、を有する。共電解用蒸気発生器42は、共電解用蒸気流路45によって、共電解用SOEC41と接続されている。共電解用蒸気流路45では、水蒸気が共電解用蒸気発生器42から共電解用SOEC41に向けて流れる。共電解用蒸気流路45の中流部には、共電解用蒸気予熱器43と、共電解用蒸気過熱器44とが設けられている。共電解用蒸気予熱器43は、共電解用蒸気過熱器44よりも上流に配置されている。
【0029】
(共電解用蒸気発生器)
共電解用蒸気発生器42には、共電解用蒸気過熱器44から中温領域の熱エネルギーが供給される。共電解用蒸気過熱器44から共電解用蒸気発生器42への熱エネルギーの供給については、後述する。また、共電解用蒸気発生器42には、外部から水が供給される。共電解用蒸気発生器42は、共電解用蒸気過熱器44で使った後の中温領域の熱エネルギーで水を加熱し、水蒸気を発生させる。共電解用蒸気過熱器44で使った後の熱は共電解用中間ライン46から供給するが、下流側供給ライン23から供給される熱よりも低い中温領域の熱であり、共電解用蒸気発生器42で使うことで、高温ガス炉1の熱を効率よく利用する。
【0030】
(共電解用蒸気予熱器)
共電解用蒸気予熱器43には、共電解用蒸気発生器42から水蒸気が供給される。また、共電解用蒸気予熱器43は、下流側供給ライン23によって、供給ヘッダ部22と接続されている。共電解用蒸気予熱器43には、供給ヘッダ部22から二次ヘリウムが供給される。共電解用蒸気予熱器43には、二次ヘリウムを介して高温ガス炉1の高温領域の熱エネルギーが供給される。共電解用蒸気予熱器43は、二次ヘリウムに含有された高温領域の熱エネルギーを利用して、水蒸気を加熱する。共電解用蒸気予熱器43で加熱された水蒸気には、中温領域の熱エネルギーが含有される。
【0031】
(共電解用蒸気過熱器)
共電解用蒸気過熱器44には、共電解用蒸気予熱器43から水蒸気が供給される。また、共電解用蒸気過熱器44は、下流側供給ライン23によって、供給ヘッダ部22と接続されている。共電解用蒸気過熱器44には、供給ヘッダ部22から二次ヘリウムが供給される。共電解用蒸気過熱器44には、二次ヘリウムを介して高温ガス炉1の高温領域の熱エネルギーが供給される。共電解用蒸気過熱器44は、二次ヘリウムに含有された高温領域の熱エネルギーを利用して、水蒸気をさらに加熱する。共電解用蒸気過熱器44で加熱された水蒸気には、高温ガス炉1の高温領域の熱エネルギーが含有される。
【0032】
共電解用蒸気過熱器44は、共電解用中間ライン46によって共電解用蒸気発生器42と接続されている。二次ヘリウムの熱エネルギーは、共電解用蒸気過熱器44に供給された後、中温領域まで減少する。二次ヘリウムは、共電解用蒸気過熱器44から共電解用中間ライン46を通って共電解用蒸気発生器42に供給される。この二次ヘリウムによって、共電解用蒸気発生器42には、共電解用蒸気過熱器44で使った後の中温領域の熱エネルギーが供給される。このため、共電解用蒸気発生器42では、水蒸気の発生に中温領域の熱エネルギーが利用される。
【0033】
(共電解用SOEC)
共電解用SOEC41には、共電解用蒸気過熱器44から水蒸気が供給され、CO2回収供給設備6から二酸化炭素が供給される。また、共電解用SOEC41は、共電解用水素極41aと、共電解用酸素極41bとを有する。共電解用水素極41aと、共電解用酸素極41bとの間には、電解電圧が印加され、共電解用SOEC41には、電気エネルギーが供給される。共電解用SOEC41は、水蒸気に含有される高温ガス炉1の高温領域の熱エネルギーを利用して二酸化炭素と水蒸気とを共電解し、合成ガスを製造する。合成ガスは、水素と一酸化炭素の混合ガスである。共電解用SOEC41は、回収ライン71によって、CO利用設備5と接続されている。共電解用SOEC41で製造された合成ガスは、回収ライン71を通じてCO利用設備5に供給される。共電解用SOEC41では、合成ガス製造時に酸素が製造される。共電解用SOEC41で製造された酸素は、外部に排出される。
【0034】
(CO利用設備)
CO利用設備5は、共電解用SOEC41から供給される混合ガス中の一酸化炭素を利用する設備である。CO利用設備5は、炭化水素製造設備5aを有する。本実施形態では、CO利用設備5は、炭化水素製造設備5aのみから構成されている。
【0035】
(炭化水素製造設備)
炭化水素製造設備5aには、回収ライン71を通じて、水素製造用SOEC31で製造された水素と、共電解用SOEC41で製造された一酸化炭素と水素の合成ガスとが供給される。炭化水素製造設備5aは、水素製造用SOEC31と共電解用SOEC41で製造された一酸化炭素及び水素から炭化水素を製造する。炭化水素製造設備5aは、熱供給用蒸気製造設備50と、メタノール等合成装置51と、を有する。本実施形態では、炭化水素製造設備5aは、メタノール等合成装置51によってメタノールやエタノール等を製造する。
【0036】
(熱供給用蒸気製造設備)
熱供給用蒸気製造設備50には、供給ライン20を流れる二次ヘリウムを介して高温ガス炉1の高温領域の熱エネルギーが供給される。熱供給用蒸気製造設備50は、高温ガス炉1の熱エネルギーを利用して水蒸気を製造する。
【0037】
熱供給用蒸気製造設備50は、熱供給用蒸気発生器52と、熱供給用蒸気加熱器53と、を有する。熱供給用蒸気発生器52は、熱供給用蒸気流路54によって、メタノール等合成装置51と接続されている。熱供給用蒸気流路54では、水蒸気が熱供給用蒸気発生器52からメタノール等合成装置51に流れる。熱供給用蒸気流路54の中流部には、熱供給用蒸気加熱器53が設けられている。
【0038】
(熱供給用蒸気発生器)
熱供給用蒸気発生器52は、接続ライン28によって、水素用蒸気予熱器33と接続されている。熱供給用蒸気発生器52には、水素用蒸気予熱器33で使った後の二次ヘリウムが供給される。また、熱供給用蒸気発生器52には、外部から水が供給される。熱供給用蒸気発生器52は、水素用蒸気予熱器33で使った後の中温領域の熱を利用して水蒸気を発生させる。発生した水蒸気は、低温領域の熱エネルギーを有効利用する。
【0039】
(熱供給用蒸気加熱器)
熱供給用蒸気加熱器53には、熱供給用蒸気発生器52から水蒸気が供給される。また、熱供給用蒸気加熱器53は、下流側供給ライン23によって、供給ヘッダ部22と接続されている。熱供給用蒸気加熱器53には、供給ヘッダ部22から二次ヘリウムが供給される。熱供給用蒸気加熱器53には、二次ヘリウムを介して高温ガス炉1の高温領域の熱エネルギーが供給される。熱供給用蒸気加熱器53は、二次ヘリウムに含有される高温領域の熱エネルギーを利用して、水蒸気を加熱する。
【0040】
(メタノール等合成装置)
メタノール等合成装置51には、熱供給用蒸気加熱器53から水蒸気が供給される。メタノール等合成装置51には、水蒸気を介して高温ガス炉1の熱エネルギーが供給される。また、メタノール等合成装置51には、回収ライン71を通じて、水素製造用SOEC31で製造された水素と、共電解用SOEC41で製造された一酸化炭素と水素の混合ガスとが供給される。メタノール等合成装置51は、水蒸気を介して供給された熱エネルギーを利用して、一酸化炭素と水素からメタノールやエタノール等を合成する。
【0041】
(CO
2回収供給設備)
CO
2回収供給設備6は、製油所や工場等の排ガスGに含まれる二酸化炭素を、二酸化炭素の吸収材を用いて分離・回収し、回収した二酸化炭素を共電解用SOEC41に供給する。吸収材として、アミン吸収液Aを用いている。CO
2回収供給設備6は、
図2に示すように、冷却塔60と、吸収塔61と、再生塔62と、リボイラ63と、再生用熱交換器64と、再生用冷却器65と、を有する。
【0042】
(冷却塔)
冷却塔60には、二酸化炭素を含有する排ガスGが供給される。冷却塔60は、排ガスGを冷却する。冷却塔60は、排ガス移送ライン66によって吸収塔61の底部と接続されている。排ガス移送ライン66は、冷却塔60で冷却された排ガスGを吸収塔61に供給する。
【0043】
(吸収塔)
吸収塔61は、上部から下方に向けてアミン吸収液Aをスプレイする。アミン吸収液Aは、排ガスGと接触することにより排ガスG中の二酸化炭素を吸収する。二酸化炭素が除去された排ガスGは、冷却後、クリーンなガスとして吸収塔61の塔頂から排出される。吸収塔61の底部は、第一吸収液移送ライン67によって、再生塔62の上部と接続されている。第一吸収液移送ライン67は、再生塔62の上部にアミン吸収液Aを供給する。吸収塔61と再生塔62を接続する第一吸収液移送ライン67の中流部には再生用熱交換器64が設けられる。再生用熱交換器64については後述する。
【0044】
(再生塔)
再生塔62では、アミン吸収液Aが送られる。再生塔62の底部には、リボイラ63が設けられている。
リボイラ63は、リボイラ用中間ライン69によって熱供給用蒸気発生器52と接続されている。
【0045】
(リボイラ)
リボイラ63には、リボイラ用中間ライン69を通じて、熱供給用蒸気発生器52から二次ヘリウムが供給される。この二次ヘリウムは、熱供給用蒸気発生器52に熱エネルギーを供給した後の二次ヘリウムであり、中温領域の熱エネルギーを含有する。
【0046】
リボイラ63は、熱供給用蒸気発生器52で使用した後の中温領域の熱エネルギーを利用して、二酸化炭素を含有するアミン吸収液Aを加熱する。アミン吸収液Aには、熱供給用蒸気発生器52で使用した後の熱エネルギーによって、100℃以上140℃以下程度に昇温されることで二酸化炭素の飽和溶解度が低下し、アミン吸収液Aの中から二酸化炭素を放出し、再生用熱交換器64で冷却することによって二酸化炭素の吸収能力が再生される。再生塔62の底部及びリボイラ63は、第二吸収液移送ライン68によって、吸収塔61の上部と接続されている。
【0047】
再生塔62及びリボイラ63は、第二吸収液移送ライン68を通じて、吸収塔61の上部にアミン吸収液Aを移送する。第二吸収液移送ライン68の中流部には、再生用熱交換器64と、再生用冷却器65と、が設けられている。再生用熱交換器64は、再生用冷却器65よりも上流に設けられている。再生用熱交換器64は、第一吸収液移送ライン67の中流部にも接続されている。再生用熱交換器64は、吸収塔61から再生塔62に移送されるアミン吸収液Aと、再生塔62から吸収塔61に移送されるアミン吸収液Aとで、熱交換を行い、再生塔62から吸収塔61に移送されるアミン吸収液Aを冷却する。再生用冷却器65は、再生用熱交換器64で冷却されたアミン吸収液Aをさらに冷却して、吸収塔61に戻す。吸収塔61に戻されたアミン吸収液Aは、二酸化炭素の吸収に再利用される。
【0048】
再生塔62でアミン吸収液Aから放出される二酸化炭素は、純度99.9%以上100%未満の高純度の二酸化炭素である。再生塔62の塔頂は、CO2供給ライン70によって、共電解用蒸気流路45のうち、共電解用蒸気予熱器43よりも下流側、且つ、共電解用蒸気過熱器44よりも上流側に接続されている。再生塔62は、CO2供給ライン70及び共電解用蒸気流路45を通じて、共電解用SOEC41に二酸化炭素を供給する。
【0049】
再び
図1を参照して、戻りライン24は、上流側戻りライン25と、戻りヘッダ部26と、下流側戻りライン27と、を有する。上流側戻りライン25は、複数設けられている。複数の上流側戻りライン25は、それぞれ水素用蒸気発生器32と戻りヘッダ部26、共電解用蒸気発生器42と戻りヘッダ部26、共電解用蒸気予熱器43と戻りヘッダ部26、熱供給用蒸気加熱器53と戻りヘッダ部26、リボイラ63と戻りヘッダ部26、を接続している。戻りヘッダ部26には、複数の上流側戻りライン25を通じて、水素用蒸気発生器32、共電解用蒸気発生器42、共電解用蒸気予熱器43、熱供給用蒸気加熱器53、リボイラ63、のそれぞれから、熱エネルギー供給後の二次ヘリウムが戻される。
【0050】
戻りヘッダ部26は、下流側戻りライン27によって、中間熱交換器2に接続されている。下流側戻りライン27を通じて、戻りヘッダ部26から中間熱交換器2に二次ヘリウムが戻される。下流側戻りライン27には、ファンFが設けられている。ファンFは、下流側戻りライン27を流れる二次ヘリウムを圧縮し、中間熱交換器2を介して循環させる。
【0051】
(熱利用設備)
熱利用設備8は、上述した中間熱交換器2と、第一熱交換ライン10と、第二熱交換ライン11と、供給ライン20と、戻りライン24と、接続ライン28と、水素製造設備3と、水素製造用中間ライン36と、水素用蒸気流路35と、共電解設備4と、共電解用中間ライン46と、共電解用蒸気流路45と、熱供給用蒸気製造設備50と、熱供給用蒸気流路54と、リボイラ63と、リボイラ用中間ライン69と、を有する。
【0052】
熱利用設備8は、高温ガス炉1の高温領域の熱エネルギーを、ヘリウムを介して中間熱交換器2で回収する。熱利用設備8は、中間熱交換器2で回収された高温ガス炉1の熱エネルギーを、上述したラインや流路等を通じて、水素製造設備3、共電解設備4、CO利用設備5及びリボイラ63に供給し、高温ガス炉1の熱エネルギーを、高温側から低温側に向けて段階的に利用可能とする。
熱利用設備8の一部は、後述する蒸気用熱利用設備80や、再生用熱利用設備81を構成している。
【0053】
(蒸気用熱利用設備)
蒸気用熱利用設備80は、第一熱交換ライン10と、中間熱交換器2と、供給ライン20と、接続ライン28と、水素用蒸気製造設備30と、水素製造用中間ライン36と、水素用蒸気流路35と、共電解用蒸気製造設備40と、共電解用中間ライン46と、共電解用蒸気流路45と、熱供給用蒸気製造設備50と、熱供給用蒸気流路54と、を有する。
蒸気用熱利用設備80は、高温ガス炉1から供給される高温領域から中温領域、低温領域の全温度領域の熱エネルギーを水蒸気の製造に利用可能とする。
【0054】
(再生用熱利用設備)
再生用熱利用設備81は、第一熱交換ライン10と、中間熱交換器2と、上流側供給ライン21と、供給ヘッダ部22と、水素用蒸気予熱器33に接続される下流側供給ライン23と、水素用蒸気予熱器33と、接続ライン28と、熱供給用蒸気発生器52と、リボイラ用中間ライン69と、リボイラ63と、を有する。
再生用熱利用設備81は、CO2回収供給設備6内の二酸化炭素を吸収するアミン吸収液Aに、低温領域の熱エネルギーを供給する。
【0055】
(高温ガス炉の熱エネルギー利用の流れ)
以下、高温ガス炉1の熱エネルギー利用の流れについて、
図1を参照して説明する。
まず、高温ガス炉1の高温領域の熱エネルギーは、高温ガス炉1に供給された一次ヘリウムに伝達される。一次ヘリウムは、約950℃の高温となる。続いて、一次ヘリウムは、中間熱交換器2に供給される。中間熱交換器2では、一次ヘリウムと二次ヘリウムとで熱交換が行われる。これにより、高温ガス炉1の高温領域の熱エネルギーが二次ヘリウムに伝達される。二次ヘリウムは、約890℃の高温となる。
【0056】
その後、二次ヘリウムは、中間熱交換器2から供給ヘッダ部22に供給される。供給ヘッダ部22に供給された二次ヘリウムは、水素用蒸気製造設備30と、共電解用蒸気製造設備40と、熱供給用蒸気製造設備50と、に分配される。
【0057】
水素用蒸気製造設備30では、二次ヘリウムが、水素用蒸気予熱器33と、水素用蒸気過熱器34と、にそれぞれ供給される。
【0058】
水素用蒸気予熱器33には、二次ヘリウムに含有される高温領域の熱エネルギーが供給される。水素用蒸気予熱器33は、供給された高温領域の熱エネルギーを利用して、蒸気発生器から供給される約150℃の水蒸気を加熱する。これにより、水蒸気の温度は、約600℃となる。
【0059】
水素用蒸気過熱器34には、二次ヘリウムに含有される高温領域の熱エネルギーが供給される。水素用蒸気過熱器34は、供給された高温領域の熱エネルギーを利用して、水素用蒸気予熱器33から供給される水蒸気をさらに加熱する。これにより、水蒸気の温度は、約800℃となる。二次ヘリウムは熱エネルギーの一部を失い、二次ヘリウムに含有される熱エネルギーは、中温領域の熱エネルギーとなる。その後、二次ヘリウムは、水素用蒸気過熱器34から水素用蒸気発生器32に供給される。
【0060】
水素用蒸気発生器32には、高温領域の熱エネルギーが使われた後の二次ヘリウムの中温領域の熱エネルギーが供給される。水素用蒸気発生器32は、供給された中温領域の熱エネルギーを利用して外部から供給される水を加熱し、約150℃の水蒸気を発生させる。
【0061】
このように、高温側の水素用蒸気過熱器34から低温側の水素用蒸気発生器32に向けて、段階的に熱エネルギーが利用される。
水素用蒸気予熱器33に熱エネルギーを供給した二次ヘリウムは、接続ライン28を通じて、熱供給用蒸気発生器52に送られる。また、水素用蒸気発生器32に熱エネルギーを供給した二次ヘリウムとは、それぞれ戻りヘッダ部26に戻される。
【0062】
共電解用蒸気製造設備40では、二次ヘリウムが、共電解用蒸気予熱器43と、共電解用蒸気過熱器44と、にそれぞれ供給される。
【0063】
共電解用蒸気予熱器43には、二次ヘリウムに含有される高温領域の熱エネルギーが供給される。共電解用蒸気予熱器43は、供給された高温領域の熱エネルギーを利用して、共電解用蒸気発生器42から供給される約150℃水蒸気を加熱する。これにより、水蒸気の温度は、約600℃となる。
【0064】
共電解用蒸気過熱器44には、二次ヘリウムに含有される高温領域の熱エネルギーが供給される。共電解用蒸気過熱器44は、供給された高温領域の熱エネルギーを利用して、共電解用蒸気予熱器43から供給される水蒸気をさらに加熱する。これにより、水蒸気の温度は、約800℃となる。二次ヘリウムは熱エネルギーの一部を失い、二次ヘリウムに含有される熱エネルギーは、中温領域の熱エネルギーとなる。その後、二次ヘリウムは、共電解用蒸気過熱器44から共電解用蒸気発生器42に供給される。
【0065】
共電解用蒸気発生器42には、高温領域の熱エネルギーが使われた後の二次ヘリウムの中温領域の熱エネルギーが供給される。共電解用蒸気発生器42は、供給された中温領域の熱エネルギーを利用して外部から供給される水を加熱し、約150℃の水蒸気を発生させる。
【0066】
このように、高温側の共電解用蒸気過熱器44から低温側の共電解用蒸気発生器42に向けて、段階的に熱エネルギーが利用される。
共電解用蒸気予熱器43に熱エネルギーを供給した二次ヘリウムと、共電解用蒸気発生器42に熱エネルギーを供給した二次ヘリウムとは、それぞれ戻りヘッダ部26に戻される。
【0067】
熱供給用蒸気製造設備50では、二次ヘリウムが、熱供給用蒸気発生器52と、熱供給用蒸気加熱器53と、にそれぞれ供給される。
【0068】
熱供給用蒸気発生器52には、水素用蒸気予熱器33から、水素用蒸気予熱器33で高温領域の熱エネルギーが使われた後の中温領域の熱エネルギーが供給される。熱供給用蒸気発生器52は、供給された中温領域の熱エネルギーを利用して外部から供給される水を加熱し、水蒸気を発生させる。これにより、二次ヘリウムは熱エネルギーの一部を失い、二次ヘリウムに含有される熱エネルギーは、低温領域の熱エネルギーとなる。
【0069】
熱供給用蒸気加熱器53には、二次ヘリウムに含有される高温領域の熱エネルギーが供給される。熱供給用蒸気加熱器53は、供給された高温領域の熱エネルギーを利用して、蒸気発生器から供給される水蒸気を加熱する。
熱供給用蒸気加熱器53に熱エネルギーを供給した二次ヘリウムは、戻りヘッダ部26に戻される。
【0070】
熱供給用蒸気発生器52に熱エネルギーを供給した二次ヘリウムは、リボイラ63に供給される。すなわち、リボイラ63には、供給された二次ヘリウムに含有される低温領域の熱エネルギーが供給される。リボイラ63は、供給された二次ヘリウムから低温領域の熱エネルギーを取り出し、アミン吸収液Aに供給する。これにより、アミン吸収液Aが加熱され、二酸化炭素の吸収性が再生される。
【0071】
このように、高温側の水素用蒸気予熱器33から中温側の熱供給用蒸気発生器52、中温側の熱供給用蒸気発生器52から低温側のリボイラ63、リボイラ63からアミン吸収液A、と段階的に熱エネルギーが利用される。
リボイラ63用蒸気発生器に熱エネルギーを供給した二次ヘリウムは、戻りヘッダ部26に戻される。
【0072】
戻りヘッダ部26に戻された二次ヘリウムは、ファンFによって昇圧され、中間熱交換器2に戻される。中間熱交換器2に戻された二次ヘリウムは、一次ヘリウムとの熱交換によって高温ガス炉1の高温領域の熱エネルギーを再び供給され、各設備及び装置への熱エネルギーの供給に再び利用される。
【0073】
ところで、二酸化炭素は吸収塔61で100℃以下の温度域でアミン吸収液Aに吸収され、再生塔62で140℃程度に昇温してアミン吸収液Aを再生するが、これはアミン吸収液Aが温度帯でよって二酸化炭素の飽和吸収量に違いがあり、100℃以下の低い温度域では二酸化炭素の吸収量が多く、100℃~140℃の温度域では飽和吸収量が低いという性質を利用しており、低い温度域で吸収していた二酸化炭素を高温域で放出させ、アミン吸収液Aを再生させている。本実施形態では、二次ヘリウムを介して、低温領域の熱エネルギーをアミン吸収液Aに供給している。
【0074】
このように、リサイクルシステム100は、熱利用設備8によって、高温ガス炉1から高温領域の熱エネルギーを得る中間熱交換器2を介して水素製造設備3と、共電解設備4と、CO利用設備5内に設けられる熱供給用蒸気製造設備50とに熱エネルギーを分配し、高温ガス炉1から供給される熱エネルギーを高温領域から低温領域に向けて段階的に利用する。このため、リサイクルシステム100で、熱エネルギーを温度帯に応じて段階的にリサイクルすることができる。
【0075】
(水素製造用SOECによる水素製造)
以下、水素製造用SOEC31による水素製造について説明する。
水素製造用SOEC31では、水素製造用水素極31aと、水素製造用酸素極31bと、の間に電解電圧が印加される。これにより、水素製造用水素極31aでは(1)式に示す反応が生じ、水素製造用酸素極31bでは(2)式に示す反応が生じる。
【0076】
【0077】
【0078】
水素製造用SOEC31全体としては、(3)式に示す吸熱反応が生じる。
【0079】
【0080】
水素製造用SOEC31の電気分解では、水蒸気に含有される高温ガス炉1の高温領域の熱エネルギーが利用される。このため、発熱反応と吸熱反応とがバランスする熱中立点(水素製造用SOEC31では約1.29V)以下の電解電圧で水蒸気が電気分解される。
【0081】
(共電解用SOECによる水素製造)
以下、共電解用SOEC41による二酸化炭素と水蒸気との共電解について説明する。
共電解用SOEC41では、共電解用水素極41aと、共電解用酸素極41bと、の間に電解電圧が印加される。これにより、共電解用水素極41aでは(4)式、(5)式に示す反応が生じ、共電解用酸素極では(6)式に示す反応が生じる。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
共電解用SOEC41全体としては、(7)式に示す吸熱反応が生じる。
【0086】
【0087】
共電解用SOECの共電解では、水蒸気に含有される高温ガス炉1の高温領域の熱エネルギーが利用される。このため、発熱反応と吸熱反応とがバランスする熱中立点(共電解用SOEC41では約1.35V)以下の電解電圧で、二酸化炭素と水蒸気が共電解される。
【0088】
(炭素資源の循環)
続いて、リサイクルシステム100による炭素資源の循環について、
図1を参照して説明する。
まず、CO
2回収供給設備6が製油所や工場等から排出される排ガスGに含まれる二酸化炭素を分離・回収する。回収された二酸化炭素は、CO
2供給ライン70を通じて、高温ガス炉1の熱エネルギーを含有する高温の水蒸気とともに、共電解用SOEC41に供給される。
【0089】
共電解用SOEC41では、二酸化炭素と水蒸気との共電解が行われ、一酸化炭素と水素との合成ガスが製造される。すなわち、共電解用SOEC41では、二酸化炭素が一酸化炭素に還元される。合成ガスは、水素製造用SOEC31で製造された水素とともに、CO利用設備5の炭化水素製造設備5aに供給される。
【0090】
本実施形態の炭化水素製造設備5aは、共電解用SOEC41で製造した合成ガス(一酸化炭素及び水素)からメタノールやエタノール等の炭化水素化合物を製造する。製造されたメタノールやエタノール等は化学品の基幹物質であるオレフィン(エチレンやプロピレン等)等の原料に利用される。
【0091】
このように、リサイクルシステム100は、CO2回収供給設備6によって製油所や工場等の排ガスGに含まれる二酸化炭素を分離・回収し、二酸化炭素を炭素資源として再利用する。このため、リサイクルシステム100では、回収した二酸化炭素を共電解SOECで合成ガス(CO+H2)を製造し、メタノール等の炭化水素化合物にし、メタノール等はオレフィン等の化学品の原料となり、最終的にポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のプラスティック樹脂となって、プラスティック樹脂等の最終製品で二酸化炭素が固定され、カーボンニュートラルが達成される。
【0092】
本実施形態では、リサイクルシステム100は、高温領域の熱エネルギーの供給源としての高温ガス炉1と、高温ガス炉1の熱エネルギーを利用した二酸化炭素と水蒸気との共電解反応によって、合成ガスとして一酸化炭素及び水素を製造する共電解用SOEC41と、共電解用SOEC41から一酸化炭素を供給可能に設けられ、一酸化炭素を利用するCO利用設備5と、を備える。
【0093】
これにより、吸熱反応である共電解反応を、高温ガス炉1から熱エネルギーを供給することにより行うことができる。したがって、熱中立点以下の電解電圧で運転することが可能となるため、電気エネルギーがジュール熱に変換する際に生じるエネルギーのロスを抑制することができる。よって、少ない電気エネルギーで一酸化炭素を得ることができる。また、二酸化炭素を水とともに電気分解することができるので、局所的なH2O濃度欠乏に伴う共電解用SOEC41での炭素析出を抑制することができる。よって、一酸化炭素から炭素が析出されて(コーキング現象)、装置に不具合を引き起こす等のリスクを低減することができる。さらに、共電解用SOEC41で製造された一酸化炭素を利用することができる。
したがって、少ない電気エネルギーで二酸化炭素を再利用できるとともに、炭素析出のリスクを低減することができる。
【0094】
本実施形態では、リサイクルシステム100は、高温ガス炉1から供給される熱エネルギーを高温側から低温側に向けて段階的に利用可能とする熱利用設備8をさらに備え、熱利用設備8は、高温ガス炉1の高温領域の熱エネルギーを供給する中間熱交換器2と、中間熱交換器2と複数のラインを介して接続される水素製造設備3と、共電解設備4と、CO利用設備5内に設けられる熱供給用蒸気製造設備50と、を有する。
複数のラインとは、供給ライン20、戻りライン24、接続ライン28、水素製造用中間ライン36、共電解用中間ライン46である。
【0095】
これにより、リサイクルシステム100内において、高温ガス炉1から供給される熱エネルギーを高温側から低温側に向けて段階的に利用して、いわゆる熱のカスケード利用を図ることができる。
具体的に、水素製造設備3では、水素製造用中間ライン36を通じて水素用蒸気過熱器34から水素用蒸気発生器32に二次ヘリウムを供給することで、高温側の水素用蒸気過熱器34で高温ガス炉1の熱エネルギーを利用した後、低温側の水素用蒸気発生器32で高温ガス炉1の熱エネルギーを利用することができる。
また、共電解設備4では、共電解用中間ライン46を通じて共電解用蒸気過熱器44から共電解用蒸気発生器42に二次ヘリウムを供給することで、高温側の共電解用蒸気過熱器44で高温ガス炉1の熱エネルギーを利用した後、低温側の共電解用蒸気発生器42で高温ガス炉1の熱エネルギーを利用することができる。
また、再生用熱利用設備81では、接続ライン28を通じて高温側の水素用蒸気予熱器33から中温側の熱供給用蒸気発生器52に、リボイラ用中間ライン69を通じて中温側の熱供給用蒸気発生器52から低温側のリボイラ63に二次ヘリウムを供給することで、高温側の水素用蒸気予熱器33、中温側の熱供給用蒸気発生器52で高温ガス炉1の熱エネルギーを利用した後、低温側のリボイラ63で高温ガス炉1の熱エネルギーを利用することができる。これにより、リボイラ63は、二次ヘリウムから低温領域の熱エネルギーを取り出し、アミン吸収液Aの再生のために利用することができる。
このように、リサイクルシステム100では、熱利用設備8によって熱エネルギーの有効利用を図ることができる。
【0096】
本実施形態では、リサイクルシステム100は、CO利用設備5及び外部のいずれかから二酸化炭素を回収するとともに、共電解用SOEC41に二酸化炭素を供給可能に設けられたCO2回収供給設備6を備える。
【0097】
これにより、製油所や工場等の排ガスGから二酸化炭素を分離し、排気される二酸化炭素を回収することができる。回収された二酸化炭素は、共電解用SOEC41で一酸化炭素に還元され、CO利用設備5で利用される。したがって、二酸化炭素の排出量を削減することができる。よって、二酸化炭素の排出量を正味で0にするという、いわゆるカーボンニュートラルを達成することができる。
【0098】
本実施形態では、熱利用設備8は、CO2回収供給設備6内の二酸化炭素を吸収するアミン吸収液Aに、低温領域の熱エネルギーを供給する再生用熱利用設備81をさらに有する。
【0099】
これにより、高温ガス炉1の熱エネルギーを利用して、アミン吸収液Aを加熱することができる。したがって、アミン吸収液Aは二酸化炭素を放出し、アミン吸収液Aの備える二酸化炭素の吸収能力が再生される。よって、アミン吸収液Aを再生するために熱源を別途用意することがないため、熱エネルギーを節約することができる。
【0100】
本実施形態では、リサイクルシステム100は、高温ガス炉1の熱エネルギーを利用した水蒸気の電気分解によって水素を製造する水素製造用SOEC31を備える。
【0101】
これにより、吸熱反応である水の電気分解を、高温ガス炉1の熱エネルギーを利用して行うことができる。したがって、熱中立点以下の電解電圧で運転することが可能となる。よって、少ない電気エネルギーで水素を得ることができる。さらに、水素製造用SOEC31は、高温ガス炉1の高温領域の熱エネルギーを水蒸気の電気分解に利用しているため、より少ない電気エネルギーで水素を製造することができる。
また、水素製造用SOEC31は、高温ガス炉1の熱エネルギーを利用して、水蒸気を電気分解することができるので、水素製造時に二酸化炭素が発生することない、いわゆるCO2フリーな水素を製造することができる。
【0102】
本実施形態では、CO利用設備5は、共電解用SOEC41から一酸化炭素及び水素を供給可能、且つ、水素製造用SOEC31から水素を供給可能に設けられ、一酸化炭素及び水素から炭化水素化合物を製造する炭化水素製造設備5aを有する。
【0103】
これにより、共電解用SOEC41で製造された一酸化炭素を炭化水素化合物に還元することができる。さらに、水素製造用SOEC31からCO利用設備5には、水素のみ供給することができる。したがって、一酸化炭素に対する水素の供給量を調整することができるので、一酸化炭素の還元に水素が不足することを防止することができる。
【0104】
<第二実施形態>
(リサイクルシステム)
以下、本開示の第二実施形態に係るリサイクルシステム200について、
図3を参照して説明する。
図3に示すリサイクルシステム200では、CO利用設備205は、製鉄設備5bを有する。本実施形態のCO利用設備205は、製鉄設備5bのみから構成されている。
【0105】
(製鉄設備)
製鉄設備5bは、熱供給用蒸気製造設備50と、製鉄設備本体251と、を有する。製鉄設備本体251には、熱供給用蒸気製造設備50から水蒸気を介して高温ガス炉の熱エネルギーが供給される。製鉄設備本体251は、回収ライン71によって水素製造用SOEC31及び共電解用SOEC41と接続されている。製鉄設備本体251には、回収ライン71を通じて、水素製造用SOEC31から水素が供給され、共電解用SOEC41から一酸化炭素と水素とが供給される。製鉄設備本体251は、一酸化炭素及び水素を利用したDRI(Directly Reduced Iron)法で鉄鉱石の還元を行い、製鉄する。製鉄の際、二酸化炭素が発生する。製鉄設備本体251は、CO2回収供給設備6の冷却塔60と、CO2移送ライン72によって接続されている。製鉄設備本体251は、CO2移送ライン72を通じて二酸化炭素を冷却塔60に移送する。製鉄設備本体251から移送された二酸化炭素は、CO2回収供給設備6で精製された後、共電解用SOEC41に供給される。
【0106】
また、製鉄設備本体251は、酸素回収ライン73によって、水素製造用SOEC31と共電解用SOEC41とに接続されている。製鉄設備本体251には、酸素回収ライン73を通じて、水素製造用SOEC31と共電解用SOEC41とで製造される酸素が供給される。
【0107】
本実施形態では、CO利用設備205は、共電解用SOEC41から一酸化炭素を供給可能、且つ、水素製造用SOEC31から水素を供給可能に設けられ、一酸化炭素及び水素を利用した鉄鉱石の還元によって製鉄する製鉄設備5bを有する。
【0108】
ところで、従来のDRIシステムでは、天然ガス(メタン)を原料に一酸化炭素を発生させ、一酸化炭素で鉄鉱石を還元する。一方で、本実施形態のリサイクルシステム200は、上記構成を採用することにより、DRIシステムに共電解用SOEC41を組み合わせた形態をとり、天然ガス(メタン)ではなく、共電解用SOEC41で製造された一酸化炭素と水素、及び水素製造用SOEC31で製造された水素を用いて、DRI法で鉄鉱石を還元して製鉄することができる。このため、天然ガスを原料として使用することなく製鉄することができる。
一般的に製鉄では鉄鉱石にコークス(炭素)を投入し、コークスで鉄鉱石を還元することでCO2を排出しながら銑鉄を製造する。このコークスを用いる製鉄方法は発熱反応であり、鉄鉱石にコークスを投じることで自発的に還元反応が進む。しかしながら、大量のCO2を排出するため、水素で鉄鉱石を還元する水素還元製鉄が開発されているが、水素還元製鉄は吸熱反応であるため、高温雰囲気の維持に課題がある。一方、DRI法はCOで鉄鉱石を還元する方法であり、コークスを使った製鉄方法同様、DRI法も発熱反応である。しかしながら、DRI法は鉄鉱石を還元する過程でCO2を排出することから、このCO2を回収して、共電解用SOEC41で合成ガスとしてCOとH2を製造し、この合成ガスをDRI法で製鉄に使用すれば、水素還元製鉄をしながら、DRI法で発熱し、水素還元製鉄の吸熱反応を補うことが可能となる。水素による水素還元製鉄が鉄鉱石(酸化鉄)還元が吸熱反応であるのに対し、DRI法が発熱反応で自発的に進行することから、水素還元製鉄法と同時にDRI法で鉄鉱石を還元して製鉄することによって、DRI法のCO還元による発熱反応が水素還元製鉄の吸熱反応を補うため、共電解SOEC41で製造される合成ガスは熱キャリアの位置付けになる。
【0109】
また、本実施形態では、製鉄設備5bは、DRI法による製鉄過程で発生した二酸化炭素を、CO2回収供給設備6に送り、CO2回収供給設備6から共電解用SOEC41に供給する。これにより、共電解用SOEC41で、供給された二酸化炭素を一酸化炭素の製造に再利用することができる。共電解用SOEC41で製造された一酸化炭素は、製鉄設備5bでDRI法によって再び鉄鉱石の還元に使用される。このように、リサイクルシステム200は、一酸化炭素を外部の環境に排出することがない、CO2クローズシステムであり、カーボンニュートラルなシステムとなる。
【0110】
本実施形態では、製鉄設備5bは、水素製造用SOEC31と共電解用SOEC41とで製造される酸素を供給されるように設けられている。
【0111】
ところで、DRI法では、高温の還元ガスに高純度の酸素を吹き込む必要があるが、本実施形態によれば、製鉄過程において、別途、高純度の酸素を吹き込むことなく、水素製造用SOEC31と共電解用SOEC41とで製造される酸素をDRI法製鉄に利用することができる。
【0112】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0113】
なお、上記実施形態では、高温ガス炉1の中に入り、高温ガス炉1の熱エネルギーを直接供給される熱媒体として、ヘリウムを用いたが、これに限らない。高温ガス炉1の中に入る熱媒体は、ヘリウムのように熱化学的に安定であればよい。
【0114】
なお、上記実施形態では、製油所や工場等の排ガスGから二酸化炭素を分離・回収した後、共電解用SOEC41に直接供給するとしたが、これに限るものではない。例えば、分離・回収された二酸化炭素は、直接地中や廃油田等の地中等に貯留してもよい。
【0115】
なお、上記実施形態では、CO2回収供給設備6は、製油所や工場等の排ガスGから分離・回収された二酸化炭素だけでなく、大気中から捕集された二酸化炭素を回収し、共電解用SOEC41に供給してもよい。この場合、DAC(Direct Air Capture)も二酸化炭素の回収源・供給源となる。大気中からCO2を回収することによりネガティブ・エミッションを達成することが可能となり、より広範囲なカーボンニュートラルを達成することができる。
【0116】
なお、上記実施形態では、二酸化炭素の吸収材として、アミン吸収液Aを用いるとしたが、これに限るものではない。二酸化炭素の吸収材として、例えばセラミックス吸収材等の固体の吸収材を用いてもよい。この場合、吸収塔61と再生塔62とを1つの塔に纏め、その1つの塔内に固体の吸収材を配置し、二酸化炭素を吸収する工程と、吸収材を再生する工程と、を順次切り替える必要がある。
【0117】
なお、第一実施形態では、炭化水素製造設備5aは、メタノール等合成装置51有し、メタンを製造するとしたが、これに限るものではない。炭化水素製造設備5aは、メタノールやエチレンを製造してもよく、FT(Fischer-Tropsch)合成によって、他のオレフィンやパラフィン等の炭化水素を製造してもよい。この場合、製造されたメタノールやエタノール等の炭化水素化合物は、化学製品の原料の他に、ガソリン、軽油、ジェット燃料等の代替合成燃料の原料としても利用することも可能である。
【0118】
なお、第一実施形態では、CO利用設備5は、炭化水素製造設備5aのみから構成され、第二実施形態では、CO利用設備205は、製鉄設備5bのみから構成されているとしたが、CO利用設備5,205は、炭化水素製造設備5aと、製鉄設備5bとの両方を有してもよい。
【0119】
<付記>
各実施形態に記載のリサイクルシステム100,200は、例えば以下のように把握される。
【0120】
(1)第1の態様に係るリサイクルシステム100,200は、高温領域の熱エネルギーの供給源としての高温ガス炉1と、前記高温ガス炉1の熱エネルギーを利用した二酸化炭素と水蒸気との共電解によって、一酸化炭素及び水素を製造する共電解用SOEC41と、前記共電解用SOEC41から一酸化炭素を供給可能に設けられ、一酸化炭素を利用するCO利用設備5,205と、を備える。
【0121】
これにより、吸熱反応である共電解反応を、高温ガス炉1から熱エネルギーを供給することにより行うことができる。したがって、熱中立点以下の電解電圧で運転することが可能となるため、少ない電気エネルギーで一酸化炭素を得ることができる。また、二酸化炭素を水とともに電気分解することができるので、局所的なH2O濃度欠乏に伴う共電解用SOEC41での炭素析出を抑制することができる。さらに、共電解用SOEC41で製造された一酸化炭素を利用することができる。
【0122】
(2)第2の態様のリサイクルシステム100,200は、(1)のリサイクルシステム100,200であって、前記高温ガス炉1から供給される熱エネルギーを高温側から低温側に向けて段階的に利用可能とする熱利用設備8をさらに備え、前記熱利用設備8は、前記高温ガス炉1の高温領域の熱エネルギーを供給する中間熱交換器2と、前記中間熱交換器2と複数のラインを介して接続される水素製造設備3と、共電解設備4と、前記CO利用設備5内に設けられる熱供給用蒸気製造設備50と、を有してもよい。
複数のラインの例示として、供給ライン20、戻りライン24、接続ライン28、水素製造用中間ライン36、共電解用中間ライン46が挙げられる。
【0123】
これにより、リサイクルシステム100,200内において、高温ガス炉1から供給される熱エネルギーを高温側から低温側に向けて段階的に利用して、いわゆる熱のカスケード利用を図ることができる。
【0124】
(3)第3の態様のリサイクルシステム100,200は、(2)のリサイクルシステム100,200であって、前記CO利用設備5,205及び外部のいずれかから二酸化炭素を回収するとともに、前記共電解用SOEC41に二酸化炭素を供給可能に設けられたCO2回収供給設備6を備えてもよい。
【0125】
これにより、排気される二酸化炭素を回収することができる。回収された二酸化炭素は、共電解用SOEC41で一酸化炭素に還元され、CO利用設備5,205で利用される。したがって、二酸化炭素の排出量を削減することができる。また、大気から二酸化炭素を回収することもできる。
【0126】
(4)第4の態様のリサイクルシステム100,200は、(3)のリサイクルシステム100,200であって、前記熱利用設備は、前記CO2回収供給設備6内の二酸化炭素を吸収する吸収材に、低温領域の熱エネルギーを供給する再生用熱利用設備81をさらに有してもよい。
吸収材の一例として、アミン吸収液Aが挙げられる。
【0127】
これにより、高温ガス炉1の熱エネルギーを利用して、吸収材を加熱することができる。したがって、吸収材は二酸化炭素を放出し、吸収材の備える二酸化炭素の吸収能力が再生される。
【0128】
(5)第5の態様のリサイクルシステム100,200は、(1)から(4)のいずれかのリサイクルシステム100,200であって、前記高温ガス炉1の熱エネルギーを利用した水蒸気の電気分解によって水素を製造する水素製造用SOEC31を備えてもよい。
【0129】
これにより、吸熱反応である水の電気分解を、高温ガス炉1の熱エネルギーを利用して行うことができる。したがって、熱中立点以下の電解電圧で運転することが可能となる。
【0130】
(6)第6の態様のリサイクルシステム100,200は、(5)のリサイクルシステム100,200であって、前記CO利用設備5,205は、前記共電解用SOEC41から一酸化炭素及び水素を供給可能、且つ、前記水素製造用SOEC31から水素を供給可能に設けられ、一酸化炭素及び水素から炭化水素化合物を製造する炭化水素製造設備5aを有してもよい。
【0131】
これにより、共電解用SOEC41で製造された一酸化炭素を炭化水素に還元することができる。さらに、水素製造用SOEC31からCO利用設備5,205には、水素のみ供給することができる。
【0132】
(7)第7の態様のリサイクルシステム100,200は、(5)又は(6)のリサイクルシステム100,200であって、前記CO利用設備5,205は、前記共電解用SOEC41から一酸化炭素を供給可能、且つ、前記水素製造用SOEC31から水素を供給可能に設けられ、一酸化炭素及び水素を利用した鉄鉱石の還元によって製鉄する製鉄設備5bを有し、前記製鉄設備5bは、前記共電解用SOEC41及び前記水素製造用SOEC31とで製造される酸素を供給されるように設けられていてもよい。
【0133】
これにより、共電解用SOEC41で製造された一酸化炭素及び水素製造用SOEC31で製造された水素を用いて、鉄鉱石を還元して製鉄することができる。さらに、製鉄過程において、別途、高純度の酸素を吹き込むことなく、共電解用SOEC41及び水素製造用SOEC31とで製造される酸素を利用することができる。
【符号の説明】
【0134】
1…高温ガス炉 2…中間熱交換器 3…水素製造設備 4…共電解設備 5…CO利用設備 5a…炭化水素製造設備 5b…製鉄設備 6…CO2回収供給設備 8…熱利用設備 10…第一熱交換ライン 11…第二熱交換ライン 20…供給ライン 21…上流側供給ライン 22…供給ヘッダ部 23…下流側供給ライン 24…戻りライン 25…上流側戻りライン 26…戻りヘッダ部 27…下流側戻りライン 28…接続ライン 30…水素用蒸気製造設備 31…水素製造用SOEC 31a…水素製造用水素極 31b…水素製造用酸素極 32…水素用蒸気発生器 33…水素用蒸気予熱器 34…水素用蒸気過熱器 35…水素用蒸気流路 36…水素製造用中間ライン 40…共電解用蒸気製造設備 41…共電解用SOEC 41a…共電解用水素極 41b…共電解用酸素極 42…共電解用蒸気発生器 43…共電解用蒸気予熱器 44…共電解用蒸気過熱器 45…共電解用蒸気流路 46…共電解用中間ライン 50…熱供給用蒸気製造設備 51…メタノール等合成装置 52…熱供給用蒸気発生器 53…熱供給用蒸気加熱器 54…熱供給用蒸気流路 60…冷却塔 61…吸収塔 62…再生塔 63…リボイラ 64…再生用熱交換器 65…再生用冷却器 66…排ガス移送ライン 67…第一吸収液移送ライン 68…第二吸収液移送ライン 69…リボイラ用中間ライン 70…CO2供給ライン 71…回収ライン 72…CO2移送ライン 73…酸素回収ライン 80…蒸気用熱利用設備 81…再生用熱利用設備 100…リサイクルシステム 200…リサイクルシステム 205…CO利用設備 251…製鉄設備本体 A…アミン吸収液(吸収材) F…ファン G…排ガス