(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】ガンマイベントの時間領域フィルタリング
(51)【国際特許分類】
H04N 25/30 20230101AFI20250328BHJP
G01J 1/42 20060101ALI20250328BHJP
G01S 7/4863 20200101ALI20250328BHJP
G01T 1/20 20060101ALI20250328BHJP
G01T 1/161 20060101ALI20250328BHJP
【FI】
H04N25/30
G01J1/42 H
G01S7/4863
G01T1/20 E
G01T1/20 F
G01T1/20 G
G01T1/161 A
G01T1/161 C
(21)【出願番号】P 2021576229
(86)(22)【出願日】2020-07-14
(86)【国際出願番号】 EP2020069808
(87)【国際公開番号】W WO2021013616
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-05-15
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】318015161
【氏名又は名称】アバゴ・テクノロジーズ・インターナショナル・セールス・プライベート・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Avago Technologies International Sales Pte.Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Yishun Avenue 7,Singapore 768923,Singapore
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】フラヒ トマス
(72)【発明者】
【氏名】ソルフ トルステン
(72)【発明者】
【氏名】フロベン デニス
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0048711(US,A1)
【文献】特表2007-524104(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0123611(US,A1)
【文献】特表2011-513761(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0230037(US,A1)
【文献】特開2005-159822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/30
G01J 1/42
G01T 1/161
G01T 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一光子アバランシェダイオードのブレークダウン電圧より高く逆バイアスされる前記単一光子アバランシェダイオードをそれぞれ含むセルのアレイと、
ブレークダウンを受けている前記アレイの前記単一光子アバランシェダイオードに応答してトリガ線上にパルスを生成するように構成されるトリガネットワークと、
パルス幅が閾値幅未満である前記トリガ線上のパルスを阻止するように構成されるパルス幅フィルタと
を有し、
前記トリガネットワークは、前記アレイのセルを前記トリガ線に接続するORゲートのネットワークを備える
、光検出器。
【請求項2】
前記パルス幅フィルタを通過するトリガパルスにタイムスタンプを割り当てるように構成されるタイムスタンプ回路をさらに備える、請求項
1に記載の光検出器。
【請求項3】
前記タイムスタンプ回路は、時間デジタル変換器を有する、請求項
2に記載の光検出器。
【請求項4】
前記パルス幅フィルタを通過するトリガパルスによってトリガされる積分時間期間にわたって、前記セルのアレイ内の前記単一光子アバランシェダイオードブレークダウンイベントのカウントを蓄積するように構成される積分回路をさらに有する、請求項1乃至
3の何れか一項に記載の光検出器。
【請求項5】
前記パルス幅フィルタを通過する前記トリガ線上の前記パルスを検証するように構成されるエネルギーベースの検証ロジックをさらに含み、前記検証の失敗に応答して、前記光検出器がリセットする、請求項1乃至
4の何れか一項に記載の光検出器。
【請求項6】
単一光子アバランシェダイオードのブレークダウン電圧より高く逆バイアスされる前記単一光子アバランシェダイオードをそれぞれ含むセルのアレイと、
ブレークダウンを受けている前記アレイの前記単一光子アバランシェダイオードに応答してトリガ線上にパルスを生成するように構成されるトリガネットワークと、
パルス幅が閾値幅未満である前記トリガ線上のパルスを阻止するように構成されるパルス幅フィルタと
を有し、
前記パルス幅フィルタは、
4つのトランジスタを有するスターブドインバータと、
ゲート酸化物キャパシタ対と、
前記キャパシタ対上の電圧が所定の電圧レベルに達するときに電圧発振を防止するように構成される反転シュミットトリガと、
を有する
、光検出器。
【請求項7】
単一光子アバランシェダイオードのブレークダウン電圧より高く逆バイアスされる前記単一光子アバランシェダイオードをそれぞれ含むセルのアレイと、
ブレークダウンを受けている前記アレイの前記単一光子アバランシェダイオードに応答してトリガ線上にパルスを生成するように構成されるトリガネットワークと、
パルス幅が閾値幅未満である前記トリガ線上のパルスを阻止するように構成されるパルス幅フィルタと
を有し、
前記パルス幅フィルタは、
スターブドインバータと、
キャパシタ対と、
反転シュミットトリガと
を有する
、光検出器。
【請求項8】
単一光子アバランシェダイオードのブレークダウン電圧より高く逆バイアスされる前記単一光子アバランシェダイオードをそれぞれ含むセルのアレイと、
ブレークダウンを受けている前記アレイの前記単一光子アバランシェダイオードに応答してトリガ線上にパルスを生成するように構成されるトリガネットワークと、
パルス幅が閾値幅未満である前記トリガ線上のパルスを阻止するように構成されるパルス幅フィルタと
を有し、
前記トリガネットワークは、
トリガ信号の立ち上がりエッジを遅延させるが、立ち下がりエッジを遅延させないように構成されるスターブドインバータと、
前記スターブドインバータの出力を受信するように構成されるシュミットトリガと、
(i)前記トリガ信号を有する第1の入力信号と、
(ii)前記シュミットトリガの出力信号を有する第2の入力信号と、
を受信することによってパルス幅フィルタリングされた信号を出力するように構成されるANDゲートと
を含む可変幅パルス発生器を有するパルス発生器を含む
、光検出器。
【請求項9】
単一光子アバランシェダイオードのブレークダウン電圧より高く逆バイアスされる前記単一光子アバランシェダイオードをそれぞれ含むセルのアレイと、
ブレークダウンを受けている前記アレイの前記単一光子アバランシェダイオードに応答してトリガ線上にパルスを生成するように構成されるトリガネットワークと、
パルス幅が閾値幅未満である前記トリガ線上のパルスを阻止するように構成されるパルス幅フィルタと
を有し、
前記トリガネットワークは、
トリガ信号の立ち上がりエッジを遅延させるが、立ち下がりエッジを遅延させないように構成されるスターブドインバータと、
前記スターブドインバータの出力を受信するように構成されるシュミットトリガと、
前記トリガ信号を受信し、前記シュミットトリガの内部遅延を補償することによって静的に遅延される出力信号を生成するように構成される静的遅延要素と、
(i)前記静的に遅延される出力信号を有する第1の入力信号と、
(ii)前記シュミットトリガの出力信号を有する第2の入力信号と
を受信することによってパルス幅フィルタリングされた信号を出力するように構成されるANDゲートと
を有する可変幅パルス発生器を有するパルス発生器を有する
、光検出器。
【請求項10】
単一光子アバランシェダイオードのブレークダウン電圧より高く逆バイアスされる前記単一光子アバランシェダイオードをそれぞれ含むセルのアレイと、
ブレークダウンを受けている前記アレイの前記単一光子アバランシェダイオードに応答してトリガ線上にパルスを生成するように構成されるトリガネットワークと、
パルス幅が閾値幅未満である前記トリガ線上のパルスを阻止するように構成されるパルス幅フィルタと
を有し、
前記トリガネットワークは、
トリガ信号の立ち上がりエッジを遅延させるが、立ち下がりエッジを遅延させないように構成されるスターブドインバータと、
前記スターブドインバータの出力を受信するように構成されるシュミットトリガと、
前記トリガ信号を受信するように構成される複数の静的遅延要素と、
前記複数の静的遅延要素の出力を受信するように構成されるマルチプレクサと、
(i)前記マルチプレクサの出力を有する第1の入力信号と、
(ii)前記シュミットトリガの出力信号を有する第2の入力信号と
を受信することによってパルス幅フィルタリングされた信号を出力するように構成されるANDゲートと
を含む可変幅パルス発生器を備えるパルス発生器を有する
、光検出器。
【請求項11】
請求項1乃至
10の何れか一項に記載の光検出器を有する光検出及び測距システム。
【請求項12】
請求項1乃至
10の何れか一項に記載の光検出器を有する一つ又はそれより多くのPET検出器リングを有する陽電子放出断層撮影システム。
【請求項13】
トリガネットワークを用いて、ブレークダウンを受けるセルのアレイの単一光子アバランシェダイオードに応答してトリガ線上にパルスを発生するステップと、
パルス幅フィルタを用いて、パルス幅が閾値幅未満であるトリガ線上のパルスを阻止するステップと
を有
し、
前記トリガネットワークは、アレイのセルを前記トリガ線に接続するORゲートのネットワークを有する、方法。
【請求項14】
前記セルの各々が、単一光子アバランシェダイオードのブレークダウン電圧より高く逆バイアスされる単一光子アバランシェダイオードを含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
タイムスタンプ回路を用いて、前記パルス幅フィルタを通過するトリガパルスにタイムスタンプを割り当てるステップ
をさらに有する、請求項
13又は14に記載の方法。
【請求項16】
積分回路を用いて、前記パルス幅フィルタを通過するトリガパルスによってトリガされる積分時間周期にわたって、前記セルのアレイ内の単一光子アバランシェダイオードブレークダウンイベントのカウントを蓄積するステップ
をさらに有する、請求項
13乃至
15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
単一光子アバランシェダイオードのブレークダウン電圧より高く逆バイアスされる前記単一光子アバランシェダイオードを各々有するセルのアレイを有するシリコン光電子増倍管のためのトリガネットワークであって、前記トリガネットワークは、
前記アレイのセルをトリガ線に接続するORゲートのネットワーク、ブレークダウンを受ける前記アレイの前記単一光子アバランシェダイオードに応答して前記トリガ線上にパルスを発生するORゲートの前記ネットワークと、
パルス幅が閾値幅未満である前記トリガ線上のパルスを阻止するように構成されるパルス幅フィルタと
を有する、トリガネットワーク。
【請求項18】
請求項
17に記載のトリガネットワークを有する一つ又はそれより多くのPET検出器リングを有する陽電子放出断層撮影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下は、デジタル陽電子放出断層撮影(PET)システム、天文学検出器、光検出及び測距(LIDAR)システム等にしばしば使用されるタイプのシリコン光電子増倍管(SiPM)検出器アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルPETに使用されるSiPMでは検出器アレイの各画素はそれ自体、セルのアレイで構成され、各セルはそのブレークダウン電圧以上に逆バイアスされる単一のフォトンアバランシェダイオード(SPAD)と、支持回路の一部とを含む。サポート回路はSPADがブレークダウンしたときにトリガイベントを生成し、検証し、トリガイベントの後の時間隔の間、画素のセルのアレイにわたってブレークダウンイベントをカウントするサブモジュールを含む。トリガイベント(ブレークダウン後など)に続いて、クエンチ回路やリフレッシュ回路を使用して、SPADの再インストールを高速化する。PET用のSiPM検出器アレイのいくつかの例示的な例は、Frachらの「TOFPET用ディジタルシリコン光電子増倍管」と題する米国特許第9,268,033号、及びSolfの「Timestamping Detected Radiation Quanta」と題する米国特許公開第2016/0011321 A1号に記載されている。
【0003】
しかし、ノイズによって特定の問題が発生する可能性がある。具体的にはいわゆるダークカウントが光子検出には関係しないが、大部分は単一光子アバランシェダイオード接合における熱的に発生したキャリアによるSPADブレークダウンである。このような暗カウントは誤ったトリガをもたらす可能性があり、それによって、誤ったトリガが処理され、拒絶され、SiPMがリセットされるときに、望ましくない検出器のデッドタイムもたらされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下は、この問題及び他の問題に対処する特定の改善を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示される一態様では、システムがSPADのブレークダウン電圧以上に逆バイアスされる単一光子アバランシェダイオード(SPAD)を各々含むセルのアレイと、ブレークダウンを受けているアレイのSPADに応答してトリガ線上にパルスを生成するように構成されるトリガネットワークと、パルス幅が閾値幅未満であるトリガ線上のパルスをブロックするように構成されるパルス幅フィルタとを含む。
【0006】
別の開示される態様では、方法がトリガネットワークを備え、ブレークダウンを受けるアレイの単一光子アバランシェダイオードに応答してトリガ線上にパルスを生成するステップと、パルス幅フィルタを備え、パルス幅が閾値幅未満であるトリガ線上のパルスを阻止するステップとを含む。
【0007】
別の開示される態様では、SPADのブレークダウン電圧を上回って逆バイアスされる単一光子アバランシェダイオード(SPAD)を各々含むセルのアレイを含むシリコン光電子増倍管(SiPM)のためのトリガネットワークであって、該アレイのセルをトリガ線と接続するORゲートのネットワークであって、前記トリガネットワークは、該アレイのSPADがブレークダウン電圧を受けるのに応じて該トリガ線上にパルスを生成するORゲートのネットワークと、パルス幅が閾値幅未満である該トリガ線上のパルスをブロックするように構成されるパルス幅フィルタとを含むトリガネットワークが開示される。
【0008】
一つの利点は、暗計数を効率的に排除するトリガ線ノイズフィルタを提供することにある。
【0009】
別の利点はエネルギーベースの妥当性確認論理を呼び出すことなくダークカウントを効率的に排除し、それによって不必要な検出器のデッドタイムを回避するトリガ線ノイズフィルタを提供することにある。
【0010】
別の利点は積分及びタイムスタンピング回路をトリガすることなくダークカウントを効率的に拒絶し、それによって不必要な検出器リセット処理を回避するトリガ線ノイズフィルタを提供することにある。
【0011】
別の利点は、改善される撮像能力を有する改善されるPETシステムにある。
【0012】
別の利点は、改良される光検出及び測距(LIDAR)システムにある。
【0013】
所与の実施形態は本開示を読んで理解すると当業者に明らかになるように、前述の利点のいずれも提供しない、1つ、2つ、より多く、又はすべてを提供することができ、及び/又は他の利点を提供することができる。
【0014】
本発明は、様々なコンポーネント及び構成要素の配置、ならびに様々なステップ及びステップの配置の形成をとることができる。図面は好ましい実施形態を例示する目的のためだけのものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】PET走査システムの実施形態を概略的に示す。
【
図2A】検出器ピクセル(又はより一般的にはシリコン光電子増倍管、すなわち、SiPM)の実施形態を図式的に示す。単一列の回路構成を示す図である。
【
図2B】検出器ピクセル(又はより一般的にはシリコン光電子増倍管、すなわち、SiPM)の実施形態を図式的に示す。行を結合する回路を示す。
【
図3】暗カウント及びガンマ事象によって引き起こされるパルスの例を示す。
【
図4】パルス幅フィルタの一実施形態を示す図である。
【
図5】
図2Aの行トリガパルス発生器の可変幅パルス発生器実施例を示す図である。
【
図6】時間領域フィルタの効率を示す図である。より具体的には、異なるパルス幅/トリガフィルタ設定の同時計数分解時間スペクトルが示されている。
【
図7】時間領域フィルタ単独の効果を示し、より具体的には、第2レベル高速検証フィルタを無効にしたパルス幅フィルタ及び可変パルス幅の効果を示す測定値が示される。
【
図8】パルス幅フィルタに関連する実施形態を図式的に示す。
【
図9】可変幅パルス発生器に関連する実施形態を図式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下は、デジタル陽電子放出断層撮影(PET)システムのような医療用核イメージングシステムにおいてしばしば使用されるタイプのシリコン光電子増倍管(SiPM)検出器アレイに関する。しかしながら、開示されるアプローチには、核医学イメージングの分野の内側及び外側の両方に多くの用途がある。
【0017】
図1を参照すると、放射イメージングシステム10はスキャナ12を含む。スキャナ12は、検査領域においてうつ伏せの人間の被験者を受け入れるように配置され、大きさが決められる。
【0018】
医療用核イメージングでは、様々な走査技術及び変形を使用することができる。そのような技術の1つはPETである。PETの一例では、陽電子放出放射性同位元素を含む放射性医薬品を対象に投与する。放射性医薬品は、脳、肺、腫瘍などの関心器官又は組織に凝集するように設計され得る。放射性医薬品の投与後、被験体を検査領域に装填する。時間が進むにつれて、放射性医薬品は放射性崩壊事象において陽電子を放出するのであろう。放射性医薬品によって放出される陽電子は、電子と相互作用する前に短い(一般に無視できる)距離を移動する。いったん陽電子が電子と相互作用すると、陽電子と電子の両方が消滅し、対向するガンマ光子(消滅光子とも呼ばれる)が一対生成される。ガンマ光子は反対方向に移動し、スキャナ12内のシンチレータ100に到達すると、それぞれが検出され得る。この例は、一対のガンマ光子の同時検出に依存し得る。したがって、いくつかのアルゴリズムは、同時に到着しないガンマ光子を割り引くことができる。
【0019】
ガンマ光子を検出するために、シリコン光電子増倍管(SiPM)検出器アレイを用いた。これらの検出器では、検出器アレイの各画素がそれ自体、セルのアレイで構成され、各セルは単一のフォトンアバランシェダイオード(SPAD)を含み、そのブレークダウン電圧を上回って逆バイアスされ、支持回路の一部を含む。(以下ではPETアプリケーションではセルのこのアレイがより大きなPET検出器アレイの1つの画素を形成するので、用語「画素」はSPADセルのアレイを指すために使用される。しかしながら、いくつかの他のアプリケーションではSPADセルの単一のアレイが例えば、LIDARシステムにおける放射線検出器として使用されてもよく、この場合、単一の「画素」のみが存在してもよい)、サポート回路はSPADが故障に入ったときにトリガイベントを生成し、検証し、トリガイベントの後の時間隔の間、画素のセルのアレイにわたってブレークダウンイベントをカウントし、デジタルタイムスタンプをイベントに割り当てるためのサブモジュールを含む。急冷及びリフレッシュ回路はSPADの再設置を加速するために、破壊後に使用される。PET検出器設計において高い空間分解能を提供するために、各セルによって占有されるシリコン面積は、実行可能な限り小さくされる。一部の支持回路はアレイ内のセルの領域内になければならないが、支持回路の実現可能な部分は画素の周辺部に配置され、また、複数のセル(例えば、セルの行全体)にサービスを提供するようにも設計される。PET用のSiPM検出器アレイのいくつかの例示的な例は、Frachらの「TOFPET用ディジタルシリコン光電子増倍管」と題する米国特許出願公開第9,268,033号、及びSolfの「タイムスタンピング検出放射量」と題する米国特許出願公開第2016/0011321号A1号に記載されている。両者の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
ガンマ線を検出する完全なPET放射線検出器は、ガンマ線が吸収されると閃光(シンチレーション)を発生するシンチレータ100をさらに含む。SiPM画素110は、シンチレーションを構成する光子のバーストを検出する。積分時間隔にわたるカウントの総数は検出イベントの光子エネルギーのメトリックであり、トリガ信号のタイミングは、イベントのタイムスタンプを提供する。さらに、室温で、又は少なくとも冷却量を制限するために、SiPMを操作することが望ましい。
【0021】
ここで関心はトリガ検出及び妥当性確認回路がピクセル領域の周辺部に位置し、セルのトリガ線は、論理「OR」ユニットを含むトリガネットワークによって結合されることである。これの効果は、最終出力が画素のすべてのSPADによって生成されるトリガパルスの列である。従って、画素全体に対して単一のトリガ検出回路を採用することができる。いくつかの設計の目標は最高の時間分解能を提供するために、まさに最初のSPADブレークダウンをトリガすることである。
【0022】
生じる可能性のある1つの問題は、SPADもノイズによってトリガされる可能性があることである。具体的にはいわゆるダークカウントが光子検出には関係しないトリガー事象であるが、大部分は単一光子アバランシェダイオード接合における熱的に発生したキャリアによるものである。一般的に、温度が上昇すると、ノイズ(例えば、ダークカウントトリガイベント)も増加する。この点に関して、画素は最初のSPADブレークダウンでトリガするので、これは誤ったトリガにつながる可能性がある。エネルギーベースの検証回路は、この問題に部分的に対処することができる。トリガー検証回路はトリガー信号を検証し、トリガー信号が(例えば、熱的に誘発されるSPAD破壊に起因して)偽であると判定される場合、カウントの積分を中止する。1つのアプローチでは、トリガ検証回路がSiPMのバイアスネットワークを流れる電流を測定する。合計電流が弁別器又は他の回路によって測定される捕捉期間内の選択される時間隔の間、ある電流閾値を下回ったままである場合、捕捉(すなわち、積分時間隔にわたるカウント)は中止され、次のトリガに備えて自動リセットシーケンスが開始される。電流が閾値を超えると、弁別器出力は「高い」レベルに上昇し、捕捉が継続する。このアプローチは、その逆バイアスされる静止状態のSPADが非常に低い電流を伝導するのに対して、破壊時には大きな電流を伝導するために働く。したがって、トリガパルスがランダムな熱破壊によって生成される場合、バイアス回路網電流は低くなる(ランダム破壊率に対応する)一方、トリガパルスがシンチレーション事象の最初の光子検出である場合、より大きなバイアス回路網電流を生成する多数のSPAD破壊が存在することはずである。デジタル領域で動作する別のトリガ検証アプローチは積分時間隔への短い時間隔でのカウント数を検出し、カウントが低すぎる場合に積分を中止することである。これらのトリガ検証アプローチは検証メトリックがシンチレーションのエネルギー(したがって、間接的にはシンチレーションを生成するガンマ線)の評価であるため、本明細書ではエネルギーベース検証と呼ばれる。
【0023】
時間分解能は、システム設計において考慮されるさらなるファクタである。より具体的には飛行時間型シンチレータに結合される場合、デジタルシリコン光電子増倍管の適切な高速トリガロジックは典型的には100ps乃至200psの範囲の時間分解能を可能にする。しかしながら、最良の時間分解能を得て、無視できるシンチレーションパルス立ち上がり時間を仮定するためには、デジタルシリコン光電子増倍管の積分時間期間が装置によって検出されるごく最初の光子で開始するようにトリガされるべきである(すなわち、最初のSPAD破壊の発生時)。しかしながら、デジタルシリコン光電子増倍管は理想的ではなく、一定レベルのノイズ(例えば、ダークカウント)を有する。したがって、最良の時間分解能のための装置構成は、暗カウント毎にトリガするので、装置のデッドタイムの増大を自動的にもたらす。検証は暗電流誘起トリガの問題に部分的に対処することができるが、この解決策は完全には満足のいくものではない。これは、積分時間隔のトリガと、それに続く検証回路の動作による積分の中止との間に時間隔があり、続いて、自動ピクセルコントローラリセットシーケンス(積分及びタイムスタンプ回路のリセットを含む)があるためである。これは、SPADアレイがシンチレーションイベントを検出することができないセンサ不感時間を導入する。例えば、トリガパルスをタイムスタンプする時間/デジタルコンバータ(TDC)をリセットすると、一部の実施形態では最大50 nsかかる可能性がある(Solf、米国特許出願公開2016/0011321 A1を参照)。これは、200 psの時間分解能のために設計する場合に問題となる。
【0024】
この問題に対処するためのアプローチは、先行特許出願Solf, 米国特許出願公開2016/0011321 A1に記載されている。このアプローチは(結合される)トリガ線の出力に5 nsの遅延ラインを挿入し、実際にピクセルコントローラをトリガする前に、エネルギーベースの検証ロジックを使用してトリガを検証する時間を提供する。ここでは、基本原理が第1光子トリガパルスを、より高い「エネルギー」閾値だけゲートすることである。一例として、各光子(及び暗カウント)は、トリガネットワーク上に1nsの長さのトリガパルスを生成する。トリガネットワークの出力では、パルス列は5nsの遅延ラインで送信され、続いてANDゲートの最初の入力が行われる。ANDゲートの他方の入力はより高いエネルギーレベルを検出するロジック(例えば、バイアスネットワーク内の電流又はSPADブレークダウンの早期カウントを測定することによってより高いエネルギーレベルを検出する検証ロジック)に接続され、それによって、遅延線の終わりにおける特定のパルスが実際のガンマイベントに属するか、又は暗雑音イベントに属するかを決定する。このように、ダークノイズイベントは抑制され、ピクセルコントローラをトリガしないため、センサのデッドタイムには寄与しない。結果として生じるデッドタイムを抑えることができ、室温でも高い同時計数時間分解能を可能にした。
【0025】
さらに、Solf, 米国特許出願公開2016/0011321 A1のイベントフィルタは、トリガイベントのパルス符号化を使用している。したがって、トリガパルス幅に敏感である。長いパルス幅はトリガネットワーク内にデッドタイムを生成し、イベント及び暗雑音トリガが一緒にマージされることにつながる可能性がある。したがって、トリガパルスのパルス幅をできるだけ短く保つことが有益であり、特に、センサをより高い温度、従って高いノイズレベルで動作させる場合に有益である。
【0026】
本開示は、実際のエネルギーベースの高速検証トリガフィルタ130の前にパルス幅フィルタ120を追加することによって、暗雑音イベントの識別を向上させるための異なる及び/又は追加の手法を説明する。パルス幅フィルタ120は、典型的には暗カウントに由来する単一のトリガパルス(又はより一般的にはパルス幅がある最小閾値未満であるパルス)をブロックするように構成される。これにより、ダークノイズイベントがブロックされ、ピクセルコントローラのデッドタイムが減少する。一例では、実際のイベントが第1のナノ秒における数十個の光子の検出によって表される。それらの光子のトリガパルスはトリガネットワーク内で重なり合い、それによって、パルス幅フィルタ120に入るトリガパルスを長くする。パルス幅フィルタ120は時間領域フィルタであり、より長いパルスを通過させ、下流側のコンポーネントをトリガするためのトリガパルスとして機能させる。有利には、開示されるパルス幅フィルタ120が下流側の妥当性確認ロジック及びタイムスタンピング及び積分回路を起動する前に誤ったトリガを拒絶し、それによって、これらのプロセスの誤ったトリガに関連するデッドタイム及び後続の画素リセット時間を回避する。
【0027】
別のやり方をすれば、ある態様では、プログラム可能なパルス幅フィルタ/弁別器がある。したがって、いくつかの実施形態ではパルス幅フィルタの閾値(すなわち、渡される最小パルス幅)はプログラム可能なフィルタパラメータである。各トリガのパルス幅を可変/調整することもできる。
【0028】
検出器ピクセル(又はより一般的には、シリコン光電子増倍管、すなわちSiPM)の例示的な実施形態が
図2A及び2Bに示される。PET検出器は、典型的には検出器ピクセルのリングからなる。各検出器ピクセルは
図2Aの挿入
図Aに概略的に示されるように、セル(202)のアレイ(200)を含む。挿入
図AはSiPMチップを平面図(挿入
図Aの下部)で図式的に示し、SPAD行210及び行トリガパルス発生器214の適切なレイアウト、及び1つの例示的な行(挿入
図Aの上部)のより詳細なレイアウトを示す。
図2Aの挿入
図Bに図式的に示されているように、各セル202は、SPAD 204の降伏電圧以上に逆バイアスされる単一光子アバランシェダイオード204を含む。設計上の理由から、これらのSPADセルは行210に配置され、
図2Aの挿入
図Bは単一の行の2つのセル202を示す。SPADセル210の各行は、行内の1つ又は複数のSPADがブレークダウンすると、有限幅(典型的には1ナノ秒以下)のトリガパルスを生成する。
図2Aは、トリガパルスを生成するための回路を示す。SPAD 202のトリガ線は、論理ORゲート212のツリーによって、ブレークダウンに入る行の任意のSPAD 202に応答してパルス216を発生する行トリガパルス発生器214に接続される(したがって、論理ORゲート212のツリー上に論理ハイを発生する)。細胞202の制御ロジック206はまた、感度を回復するために、故障したSPADを自動的にクエンチし、再充電する。行210は、極端な場合には単一のSPADセルから構成することができることに留意される。
【0029】
図2Bを参照すると、差し込みCは平面図でSiPMチップを図式的に示し、SPAD列210及び関連する行トリガパルス発生器214を含むSPADアレイ210、214、ならびにSPADアレイ210、214の周辺部におけるコンポーネント120、220、130、240、250のための適切なレイアウトを示す。これは単に1つの例示的な例であり、シリコンチップ領域上の構成要素の詳細なレイアウトは、特定の用途のために適切に設計される。
図2Bはさらに、論理ORゲート220のツリーからなる(ただし、これに限定されない)トリガネットワークを示し、このトリガネットワークは、SPAD行210、214のトリガ出力216を単一のトリガ線230に結合する。(本明細書で使用される「論理ORゲート」という用語は、De Morganの等価物、A OR B = NOT[NOT A AND NOT B]などの論理等価物を包含することを意図していることに留意される)。ここで、
図2Bに示されるように、個々の行210、214のパルスは、時間的に組み合わされる。ブレークダウンの非同期性により、トリガパルスは部分的に重なり合い、より長いトリガパルスにマージする可能性がある。パルス幅フィルタ120はトリガ線230をフィルタリングして、そのパルス幅が閾値幅未満であるトリガ線230上のパルスをブロックし、そのパルス幅が閾値幅を超えるトリガパルスを通過させる。タイムスタンプ回路240は、パルス幅フィルタ120を通過するトリガパルスにタイムスタンプを割り当てるように構成される。タイムスタンプ回路240は例えば、少なくとも1つの時間デジタル変換器(TDC)を含むことができる。1つのアプローチでは、パルス幅フィルタ120を通過したトリガパルスの立ち上がりエッジがタイムスタンプを提供するために、カウンタ又は他の基準クロックの値をラッチする役割を果たす。高い時間分解能(例えば、飛行時間型PETに有用)を有するタイムスタンピングを提供するためのより複雑なTDC回路はFrachら、米国特許出願公開2012/0068077 A1号「デジタルシリコン光電子増倍管の時間分解能を改善する方法」に記載されている。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。さらに、集積回路250は、パルス幅フィルタ120を通過するトリガパルスによってトリガされる集積時間期間にわたって、細胞202のアレイ200内のSPADブレークダウンイベントのカウントを蓄積するように構成される。積分回路は、好適には積分時間隔にわたって発生するSPADブレークダウンイベントの数をカウントするデジタルカウンタを含む。集積回路のいくつかの適切な実施形態は、Frachらの米国特許No.9,268,033及びSolf, 米国特許出願公開2016/0011321 A1に記載されている。いくつかの実施形態では、パルス幅フィルタ120によって通過されるトリガパルスがまた、パルス幅フィルタを通過するトリガ線上のパルスを妥当性確認するように構成されるエネルギーベースの妥当性確認トリガフィルタ130に通過する。検証の失敗に応答して、光学検出器はリセットする(例えば、タイムスタンプ回路240はリセットされ、積分回路250によるブレークダウンカウントの蓄積は中止される)。トリガ線230上のより短いパルスを除去するためにパルス幅フィルタ120を介在させることの利点は、以下の通りである。トリガネットワークの入力における典型的な暗カウントレートは数100 kcpsのオーダーであるので、トリガネットワークの出力におけるトリガパルスの平均距離は典型的には>1マイクロ秒であり、パルス幅は1ナノ秒のオーダーである。したがって、同時計数によるトリガパルス幅の拡張確率は非常に低くなる(これは、センサ/シンチレータにおける光クロストークが低いことを前提としている)。
【0030】
言い換えると、
図2Bでは時間領域パルス幅フィルタ120が最後の結合OR 220の後であるが、ダウンストリームタイムスタンプ、積分、及びトリガ検証ロジックに入る前に、トリガ線上に挿入される。前提条件は現実ガンマ線に対しては光子のバーストが多くのSPADの迅速なトリガーをもたらし、その結果、これらが論理的な「OR」チェーンによって組み合わされて単一の組み合わされるトリガー信号になると、結果は長いパルスになるということである。対照的に、SPADブレークダウンは孤立したイベントであり、熱ブレークダウン率はかなり高いかもしれないが、ランダムな熱ブレークダウンが結合して真のガンマ検出と同程度の長さの複合パルスを発生する可能性は低い。したがって、時間領域パルス幅フィルタを、ある最小閾値長より長い長さのパルスのみを通過させるように設定することによって、熱雑音によるパルスは拒絶される。
【0031】
オーバーラップするトリガパルスの一例が
図3に示されており、十分なエネルギーを有するガンマイベントの場合、多くの行が短い時間ウィンドウ内でトリガし、十分に長いトリガパルスを生成する確率が増加する。
図3 ではガンマイベントの検出されるタイムトリガ時間ウィンドウがTe と表示されているが、検出されるダークカウントイベントの検出されるトリガ時間ウィンドウはTd と表示されている。結晶内のより高いエネルギーの堆積は、結晶によってより多くの光子が放出され、したがって、フィルタを通過させることができるトリガパルスを生成するより高い確率をもたらす。このようにして、時間領域フィルタは、プログラム可能なパルス幅と組み合わせて、エネルギー閾値として作用する。可変トリガパルス幅及びフィルタパラメータにより、与えられた検出器構成に対するノイズ抑制の最適化が可能になる。例えば、1:1結合検出器における光子密度は例えば、光共有検出器と比較してはるかに高い。従って、1:1結合検出器では、十分な長さのパルスをトリガするために狭いトリガパルスが依然として重複し、トリガネットワークのデッドタイムが最小化される。低光子密度を有する光共有検出器ではトリガパルス幅は拡張されなければならず、パルス幅フィルタウィンドウはノイズからの現実イベントの十分な識別を依然として可能にするように適合されなければならない。非常に低い光子密度(例えば、BGO又は光共有検出器)の場合、時間領域フィルタリングは効果が低くなり、時間領域フィルタをバイパス/ディスエーブルする手段が実施される。
【0032】
トリガパルス幅を狭くしすぎると、高光子密度の状況で別の効果が発生する可能性がある。この場合、パルス幅フィルタはローパスフィルタとして動作し、次のシュミットトリガの閾値は、最初の光子のトリガではなく、最初のN個の狭いパルスの積分値(フィルタ入力のデューティサイクル)によって決まる。これはフィルタを通過するトリガ信号につながる可能性があり、このトリガのタイムスタンプは第1の検出される光子にもはや相関せず、コインシデンス時間分解能の劣化につながる。したがって、いくつかの実施形態は、可変トリガパルス幅を含む調節可能なフィルタパラメータも含む。いくつかの実施形態はまた、異なるシンチレータ結晶及び/又は異なるノイズレベル(例えば、異なる動作温度で)の特性を調整するために、フィルタパラメータ調整を提供することを含む。
【0033】
パルス幅フィルタ120の1つの可能な実施が
図4に示されており、例示的なパルス幅フィルタ120は、スター
ブドインバータN1、N2/P1、P2に続いて、ゲート酸化物キャパシタ対Cn/Cpと、反転シュミットトリガ410とを備えている。シュミットトリガ410はCn/Cp上の電圧がしきい電圧(例えば、約100mV)に近いレベルに達したときに、発振を防止することを目的とする。スターブドインバータは、入力信号のデューティサイクルに応じてゲートキャパシタを充放電するために調整可能な電流を有するスイッチト電流源として使用される。シュミットトリガ410はヒステリシスを提供し、平均化される入力信号がロジック1又は0に対応するかどうかを決定する。電圧Vn及びVpは、立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの電流、したがってCn/Cpの充放電レートをそれぞれ調整するために使用される。
【0034】
図5は可変パルス幅を提供するように、各行の行トリガパルス発生器214(
図2A参照)として適切に機能する可変幅パルス発生器500の一例を示す。ここで提示される実施形態は
図4のパルス幅フィルタ120の例示的実施形態におけるものと同様のスター
ブドインバータ構成540も使用するが、
図5のスター
ブドインバータ構成540では可変遅延要素として使用される。チップ面積を節約するために、N2のバイアス電圧Vnを調整することにより、入力信号の立ち上がりエッジだけを遅らせることができる。トリガ入力インの立ち下がりエッジは、出力アウトでトリガパルスにつながらないため、調整する必要はない。スタティック、アクティブハイトリガ信号はANDゲート510入力Aに接続され、その反転コピーは可変遅延素子540を介して入力Bに接続される。したがって、トリガ入力inが0から1に切り替わるとき、入力Bは依然としてロジック1にあり、ANDゲート510の出力Zはロジック1に切り替わる。調整される遅延Tpの後、ANDゲート510入力Bは論理0に変化し、その結果、ANDゲート510は、短時間後に出力する。したがって、可変遅延素子540は、パルス幅Tpを調整するために利用される。追加の静的遅延要素530(バッファ)は
図5に示されるように、オプションとして、ANDゲート510の入力Aの前に追加され、シュミットトリガ520の内部遅延ΔTを補償することができ、これは、さもなければ、最小パルス幅を制限することになる。代替の実施形態では、可変遅延素子540がマルチプレクサに接続される複数の固定遅延素子(例えば、バッファ又はインバータチェーン、固定遅延素子のチェーン)に置き換えることができ、マルチプレクサは次に、好ましい遅延を選択するために使用される。これにはアナログ電圧及びデジタル/アナログコンバータ(チップ面積、ノイズ感度)を回避できるという利点があるが、比較的少数のパルス幅しか選択できない。
【0035】
図6は、時間領域フィルタの効率を示す。より具体的には、
図6が異なるパルス幅/トリガフィルタ設定の同時計数分解時間スペクトルを示す。パルス幅の短いトリガーでは、ノイズフロアが大幅に減少する。時間領域フィルタは暗計数雑音を一大きさ抑制する。これは、より長いトリガパルスを使用するトリガフィルタ構成と比較して、無相関の同時計数対(#30パルス0.5 nsに対応するラインとして
図6に示される)のノイズフロアの抑制をもたらす。同時ピークの周りの「ショルダー」はソルフ(Solf)の米国特許出願公開No.2016/0011321 A1に記載されているように、後続の高速検証トリガフィルタによるものである。
【0036】
図7は、時間領域フィルタのみの効果を示す。より具体的には、
図7が第2のレベル高速検証フィルタを無効にした、パルス幅フィルタ及び可変パルス幅の影響を示す測定値を示す。短いトリガパルスと組み合わせたパルス幅フィルタは、コインシデンスタイミングヒストグラムのテールを効率的に低減する。タイムスタンプのうちの少なくとも1つが暗カウントヒットによって生成される確率は強く低減され(8倍)、一方、より短いトリガパルス長は2倍の低減のみを与える。ここに記載される実施形態はデッドタイムの減少を示し、高温(ここでは、98%の感度で35℃)においてもシステム感度の増加をもたらす。
【0037】
図8は、パルス幅フィルタに関する実施形態のフローチャートを示す図である。これを参照すると、ステップ802において、SPADがブレークダウンされる。(任意選択)ステップ804で、ORツリーは行トリガを生成する。ステップ806では、行トリガパルス発生器214がパルスSPAD行トリガ信号216を発生する。ステップ810では、SPAD行トリガ信号216が複数のORゲートで受信される。ステップ820では、複数のORゲートとともに、SPAD行トリガ信号216からのトリガ信号230が生成される。ステップ830では、パルス幅フィルタ120とともに、トリガ信号230が複数のORゲートから受信される。ステップ840では、パルス幅フィルタ120とともに、受信トリガ信号からパルス幅フィルタリングされる信号が生成される。ステップ850において、エネルギーベースの高速検証トリガフィルタを用いて、パルス幅フィルタリングされる信号がパルス幅フィルタから受信される。
【0038】
PETに加えて、特に高温で使用される場合、開示されるデジタルシリコン光電子増倍管の多くの他の用途がある。より一般的には、高時間分解能タイムスタンピングによる光パルスの検出を必要とする他のアプリケーションが考えられる。他の用途としては、例えば、PET/CT、PET/MR、SPECT、高エネルギー物理学、LIDAR、及び蛍光寿命イメージング顕微鏡が挙げられる。特に興味深いのは、レーザビームの放射とその反射の検出との間の飛行時間に基づく光学測距を実行するLIDARシステムである。ライダーは例えば、非常ブレーキを作動させるためのトリガー装置として使用される自動車を含む多様な産業に適用される。
【0039】
さらに、本明細書で開示される技法は、開示される技法を実行するために電子データ処理デバイスによって可読可能かつ実行可能な命令を格納する非一時的格納媒体によって実施され得ることが理解されるのであろう。そのような非一時的記憶媒体は、ハードドライブ又は他の磁気記憶媒体、光ディスク又は他の光記憶媒体、RAIDディスクアレイ、フラッシュメモリ又は他の不揮発性電子記憶媒体などのクラウドベースの記憶媒体を備えることができる。
【0040】
本発明は、好ましい実施形態を参照して説明されてきた。前述の詳細な説明を読み、理解すると、修正及び変更が他者に思い浮かぶ可能性がある。これら例示的な実施形態は、そのような修正及び変更が請求の範囲及びその等価物の範囲に包含される限りにおいて、それら全てを含むと解釈されることを意図している。