(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】運行調整装置、運行管理装置、運行調整方法および運行調整プログラム
(51)【国際特許分類】
B61L 27/12 20220101AFI20250328BHJP
B61L 27/18 20220101ALI20250328BHJP
【FI】
B61L27/12
B61L27/18
(21)【出願番号】P 2022019296
(22)【出願日】2022-02-10
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】橋本 遼太
(72)【発明者】
【氏名】立石 大輔
(72)【発明者】
【氏名】菅原 浩介
(72)【発明者】
【氏名】井原 真之
(72)【発明者】
【氏名】島吉 翔太
(72)【発明者】
【氏名】高見 敦
(72)【発明者】
【氏名】石川 貴弘
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-140683(JP,A)
【文献】特開2019-073146(JP,A)
【文献】特開2019-059315(JP,A)
【文献】国際公開第2014/121328(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車を構成する車両における前記車両ごとの旅客の乗車率に基づいて、前記車両ごとの将来の混雑度を予測する混雑予測部と、
前記混雑予測部で予測された前記混雑度と規定された閾値とを比較した結果に基づいて、前記列車を含む複数の列車の運行計画を示す運行ダイヤにおいて1以上の列車の運行計画を変更するか否かを判定する運行調整部と、
前記運行ダイヤを記憶する記憶部と、
を備え
、
前記運行ダイヤは、通常時は運行されていないが増便の対象となる前記列車である第1の列車の運行用の第1の運行ダイヤ、通常時は運行されているが減便の対象となる前記列車である第2の列車の運行用の第2の運行ダイヤ、および増便および減便の対象外の前記列車である第3の列車の運行用の第3の運行ダイヤを含む、
ことを特徴とする運行調整装置。
【請求項2】
列車を構成する車両における前記車両ごとの旅客の乗車率に基づいて、前記車両ごとの将来の混雑度を予測する混雑予測部と、
前記混雑予測部で予測された前記混雑度と規定された閾値とを比較した結果に基づいて、前記列車を含む複数の列車の運行計画を示す運行ダイヤにおいて1以上の列車の運行計画を変更するか否かを判定する運行調整部と、
を備え、
前記運行調整部は、前記混雑度に基づいて、前記列車の停車駅を変更する、
ことを特徴とす
る運行調整装置。
【請求項3】
前記運行ダイヤを記憶する記憶部、
を備え、
前記運行ダイヤは、通常時は運行されていないが増便の対象となる前記列車である第1の列車の運行用の第1の運行ダイヤ、通常時は運行されているが減便の対象となる前記列車である第2の列車の運行用の第2の運行ダイヤ、および増便および減便の対象外の前記列車である第3の列車の運行用の第3の運行ダイヤを含む、
ことを特徴とする請求
項2に記載の運行調整装置。
【請求項4】
前記運行調整部は、前記混雑度が前記閾値であって前記第1の列車の増便を判定するための第1の閾値以上の場合、前記第1の列車を増便すると判定し、前記混雑度が前記閾値であって前記第2の列車の減便を判定するための第2の閾値未満の場合、前記第2の列車を減便すると判定する、
ことを特徴とする請求項
1または3に記載の運行調整装置。
【請求項5】
前記運行調整部は、前記第1の列車が複数ある場合、増便することによって最も混雑を緩和可能な前記第1の列車を選択し、前記第2の列車が複数ある場合、減便することによって最も混雑の増加を抑制可能な前記第2の列車を選択する、
ことを特徴とする請求項4に記載の運行調整装置。
【請求項6】
前記運行調整部は、前記第1の列車を増便するために前記第2の列車を減便する必要がある場合、乗務員のシフト情報に基づいて、前記第1の列車および前記第2の列車を選択する、
ことを特徴とする請求項5に記載の運行調整装置。
【請求項7】
前記運行調整部は、前記第1の列車を増便する場合、前記第1の列車を途中の駅から運行を開始させると判定する、
ことを特徴とする請求項5または6に記載の運行調整装置。
【請求項8】
前記運行調整部は、前記第2の列車を減便する場合、前記第2の列車を途中の駅まで運行させてから運休させると判定する、
ことを特徴とする請求項5から7のいずれか1つに記載の運行調整装置。
【請求項9】
前記運行調整部は、前記混雑予測部で予測された前記列車の前記車両ごとの混雑度のうち最も混雑度の高い車両の混雑度と前記閾値とを比較した結果に基づいて、前記運行ダイヤにおいて1以上の列車の運行計画を変更するか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項1
から8のいずれか1つに記載の運行調整装置。
【請求項10】
前記混雑予測部は、前記車両ごとの定員に対する旅客の乗車率、前記車両ごとの旅客の乗車人数、前記車両ごとの旅客の乗降時間、および規定された旅客の乗降時間に対する前記車両ごとの遅延時間のうち少なくとも1つによって前記混雑度を予測する、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1つに記載の運行調整装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1つに記載の運行調整装置を備えることを特徴とする運行管理装置。
【請求項12】
列車を構成する車両における前記車両ごとの旅客の乗車率に基づいて、前記車両ごとの将来の混雑度を予測する混雑予測ステップと、
予測された前記混雑度と規定された閾値とを比較した結果に基づいて、前記列車を含む複数の列車の運行計画を示す運行ダイヤにおいて1以上の列車の運行計画を変更するか否かを判定する運行調整ステップと、
を含
み、
前記運行ダイヤは、通常時は運行されていないが増便の対象となる前記列車である第1の列車の運行用の第1の運行ダイヤ、通常時は運行されているが減便の対象となる前記列車である第2の列車の運行用の第2の運行ダイヤ、および増便および減便の対象外の前記列車である第3の列車の運行用の第3の運行ダイヤを含む、
ことを特徴とする運行調整方法。
【請求項13】
列車を構成する車両における前記車両ごとの旅客の乗車率に基づいて、前記車両ごとの将来の混雑度を予測する混雑予測ステップと、
予測された前記混雑度と規定された閾値とを比較した結果に基づいて、前記列車を含む複数の列車の運行計画を示す運行ダイヤにおいて1以上の列車の運行計画を変更するか否かを判定する運行調整ステップと、
を含み、
前記運行調整ステップにおいて、運行調整部は、前記混雑度に基づいて、前記列車の停車駅を変更する、
ことを特徴とす
る運行調整方法。
【請求項14】
前記運行ダイヤは、通常時は運行されていないが増便の対象となる前記列車である第1の列車の運行用の第1の運行ダイヤ、通常時は運行されているが減便の対象となる前記列車である第2の列車の運行用の第2の運行ダイヤ、および増便および減便の対象外の前記列車である第3の列車の運行用の第3の運行ダイヤを含む、
ことを特徴とする請求
項13に記載の運行調整方法。
【請求項15】
前記運行調整ステップにおいて、運行調整部は、前記混雑度が前記閾値であって前記第1の列車の増便を判定するための第1の閾値以上の場合、前記第1の列車を増便すると判定し、前記混雑度が前記閾値であって前記第2の列車の減便を判定するための第2の閾値未満の場合、前記第2の列車を減便すると判定する、
ことを特徴とする請求項
12または14に記載の運行調整方法。
【請求項16】
前記運行調整ステップにおいて、前記運行調整部は、前記第1の列車が複数ある場合、増便することによって最も混雑を緩和可能な前記第1の列車を選択し、前記第2の列車が複数ある場合、減便することによって最も混雑の増加を抑制可能な前記第2の列車を選択する、
ことを特徴とする請求項15に記載の運行調整方法。
【請求項17】
前記運行調整ステップにおいて、前記運行調整部は、前記第1の列車を増便するために前記第2の列車を減便する必要がある場合、乗務員のシフト情報に基づいて、前記第1の列車および前記第2の列車を選択する、
ことを特徴とする請求項16に記載の運行調整方法。
【請求項18】
前記運行調整ステップにおいて、前記運行調整部は、前記第1の列車を増便する場合、前記第1の列車を途中の駅から運行を開始させると判定する、
ことを特徴とする請求項16または17に記載の運行調整方法。
【請求項19】
前記運行調整ステップにおいて、前記運行調整部は、前記第2の列車を減便する場合、前記第2の列車を途中の駅まで運行させてから運休させると判定する、
ことを特徴とする請求項16から18のいずれか1つに記載の運行調整方法。
【請求項20】
前記運行調整ステップにおいて、運行調整部は、混雑予測部で予測された前記列車の前記車両ごとの混雑度のうち最も混雑度の高い車両の混雑度と前記閾値とを比較した結果に基づいて、前記運行ダイヤにおいて1以上の列車の運行計画を変更するか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項12
から19のいずれか1つに記載の運行調整方法。
【請求項21】
前記混雑予測ステップにおいて、混雑予測部は、前記車両ごとの定員に対する旅客の乗車率、前記車両ごとの旅客の乗車人数、前記車両ごとの旅客の乗降時間、および規定された旅客の乗降時間に対する前記車両ごとの遅延時間のうち少なくとも1つによって前記混雑度を予測する、
ことを特徴とする請求項12から20のいずれか1つに記載の運行調整方法。
【請求項22】
列車を構成する車両における前記車両ごとの旅客の乗車率に基づいて、前記車両ごとの将来の混雑度を予測する混雑予測ステップと、
予測された前記混雑度と規定された閾値とを比較した結果に基づいて、前記列車を含む複数の列車の運行計画を示す運行ダイヤにおいて1以上の列車の運行計画を変更するか否かを判定する運行調整ステップと、
をコンピュータに実施させ
、
前記運行ダイヤは、通常時は運行されていないが増便の対象となる前記列車である第1の列車の運行用の第1の運行ダイヤ、通常時は運行されているが減便の対象となる前記列車である第2の列車の運行用の第2の運行ダイヤ、および増便および減便の対象外の前記列車である第3の列車の運行用の第3の運行ダイヤを含む、
ことを特徴とする運行調整プログラム。
【請求項23】
列車を構成する車両における前記車両ごとの旅客の乗車率に基づいて、前記車両ごとの将来の混雑度を予測する混雑予測ステップと、
予測された前記混雑度と規定された閾値とを比較した結果に基づいて、前記列車を含む複数の列車の運行計画を示す運行ダイヤにおいて1以上の列車の運行計画を変更するか否かを判定する運行調整ステップと、
をコンピュータに実施させ、
前記運行調整ステップにおいて、運行調整部は、前記混雑度に基づいて、前記列車の停車駅を変更する、
ことを特徴とする運行調整プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、列車の運行を調整する運行調整装置、運行管理装置、運行調整方法および運行調整プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道などの公共交通機関は、旅客が多くなって混雑すると、列車の乗降などに時間が掛かって列車が遅延し、さらに列車が混雑する事態になる。そのため、公共交通機関では、移動需要を予測し、混雑が予想される場合に列車などを増便することが行われている。例えば、特許文献1には、移動需要を予測して列車の混雑度を算出し、混雑が予想される場合には列車を増便する制御を行いつつ、移動需要が少ないと予想される場合には列車を減便する制御を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
列車の混雑度は各車両で均一ではなく、特定の車両、例えば、降車駅の階段、改札などに近い車両が混雑することがある。このような場合、他の車両が空いていても特定の車両が混雑していると、特定の車両での旅客の乗降に時間が掛かるので列車の遅延の原因となる。しかしながら、上記従来の技術によれば、列車の乗車可能人数に対する乗車人数によって列車の混雑度を評価しているので、列車の特定の車両が混雑していても列車全体として乗車率に余裕がある場合には列車が遅延する予兆を検出できない。そのため、列車の増便などの対応が遅れてしまう、という問題があった。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、列車の実際の乗車状況に即して列車の増便または減便を調整可能な運行調整装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の運行調整装置は、列車を構成する車両における車両ごとの旅客の乗車率に基づいて、車両ごとの将来の混雑度を予測する混雑予測部と、混雑予測部で予測された混雑度と規定された閾値とを比較した結果に基づいて、列車を含む複数の列車の運行計画を示す運行ダイヤにおいて1以上の列車の運行計画を変更するか否かを判定する運行調整部と、運行ダイヤを記憶する記憶部と、を備える。運行ダイヤは、通常時は運行されていないが増便の対象となる列車である第1の列車の運行用の第1の運行ダイヤ、通常時は運行されているが減便の対象となる列車である第2の列車の運行用の第2の運行ダイヤ、および増便および減便の対象外の列車である第3の列車の運行用の第3の運行ダイヤを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、運行調整装置は、列車の実際の乗車状況に即して列車の増便または減便を調整できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る運行調整装置の構成例を示すブロック図
【
図2】実施の形態1に係る運行調整装置の運行ダイヤ作成部で作成される運行ダイヤの例を示す第1の図
【
図3】実施の形態1に係る運行調整装置の運行ダイヤ作成部で作成される運行ダイヤの例を示す第2の図
【
図4】実施の形態1に係る運行調整装置の運行ダイヤ作成部で作成される運行ダイヤの例を示す第3の図
【
図5】実施の形態1に係る運行調整装置の運行ダイヤ作成部で作成される運行ダイヤに対応する時刻表の例を示す図
【
図6】実施の形態1に係る運行調整装置の運行ダイヤデータベースで保持される運行ダイヤの例を示す図
【
図7】実施の形態1に係る運行調整装置の混雑度データベースで保持される列車の車両ごとの混雑度の例を示す図
【
図8】実施の形態1に係る運行調整装置の運行調整部が列車の増便、減便などを判定する際の対象となる車両の例を示す図
【
図9】実施の形態1に係る運行調整装置の運行調整部が増便および減便を行うことを判定したときの運行ダイヤの例を示す図
【
図10】実施の形態1に係る運行調整装置の運行調整部が乗車率モデルを生成する際の基となる乗車率の変化を示す図
【
図11】実施の形態1に係る運行調整装置の運行調整部で生成された乗車率モデルを示す第1の図
【
図12】実施の形態1に係る運行調整装置の運行調整部で生成された乗車率モデルを示す第2の図
【
図13】実施の形態1に係る運行調整装置の運行調整部が複数の候補から増便する列車を決定するときの例を示す図
【
図14】実施の形態1に係る運行調整装置の運行調整部が増便および減便の対象とする列車を運行ダイヤ上で示す図
【
図15】実施の形態1に係る運行調整装置の運行調整部が運行経路の途中から増便用の列車の運行を開始させる例を示す図
【
図16】実施の形態1に係る運行調整装置の運行調整部が運行経路の途中で減便用の列車を運休させる例を示す図
【
図17】実施の形態1に係る運行調整装置の運行調整部が列車を増便する処理を行うか列車を減便する処理を行うかを判定する処理を示すフローチャート
【
図18】実施の形態1に係る運行調整装置の運行調整部における増便モードの処理を示すフローチャート
【
図19】実施の形態1に係る運行調整装置の運行調整部が増便する列車を決定する処理を示すフローチャート
【
図20】実施の形態1に係る運行調整装置の運行調整部が減便する列車を決定する処理を示すフローチャート
【
図21】実施の形態1に係る運行調整装置の運行調整部における減便モードの処理を示すフローチャート
【
図22】実施の形態1に係る運行調整装置を実現する処理回路をプロセッサおよびメモリで実現する場合の処理回路の構成の一例を示す図
【
図23】実施の形態1に係る運行調整装置を実現する処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の処理回路の構成の一例を示す図
【
図24】実施の形態2に係る運行調整装置の構成例を示すブロック図
【
図25】実施の形態3に係る運行調整装置の構成例を示すブロック図
【
図26】実施の形態4に係る運行調整装置の構成例を示すブロック図
【
図27】実施の形態5に係る運行調整装置の運行調整部において列車の増便を決定したときの運行ダイヤの変化を示す図
【
図28】実施の形態5に係る運行調整装置の運行調整部における増便モードの処理を示すフローチャート
【
図29】実施の形態6に係る運行調整装置の運行調整部が予測された混雑度によって増便する列車の種別を決定した例を示す図
【
図30】実施の形態6に係る運行調整装置の運行調整部が予測された混雑度によって運行中の列車の種別を変更した例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の実施の形態に係る運行調整装置、運行管理装置、運行調整方法および運行調整プログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る運行調整装置30の構成例を示すブロック図である。運行管理装置20は、運行調整装置30を備える。運行調整装置30は、列車10の増便、列車10の減便など、列車10の運行を調整する。運行管理装置20は、列車10の運行を管理する。列車10は、運行管理装置20が運行を管理する対象である。なお、
図1では列車10の数が2つであるが、運行管理装置20が運行を管理する対象の列車10の数は3つ以上であってもよい。また、
図1では記載を簡略化しているが、列車10は、実際には複数の車両によって構成されているものとする。以降の図においても同様とする。
【0011】
運行調整装置30の構成および動作について説明する。
図1に示すように、運行調整装置30は、運行ダイヤ作成部31と、混雑予測部33と、運行調整部35と、記憶部37と、を備える。記憶部37は、運行ダイヤデータベース32と、混雑度データベース34と、乗務員シフトデータベース36と、を記憶する。なお、
図1では、運行ダイヤデータベース32などの「データベース」をDB(Data Base)と表記している。以降の図においても同様とする。また、
図1では1つの記憶部37が3つのデータベースを記憶しているが、運行調整装置30は、データベースごとに記憶部を設ける構成でもよい。
【0012】
運行ダイヤ作成部31は、列車10の運行ダイヤを作成する。運行ダイヤ作成部31は、運行調整装置30が列車10の運行を調整する対象の路線についての運行ダイヤを作成する。運行ダイヤには、各路線について、上り用および下り用の運行ダイヤ、平日用および休日用の運行ダイヤなどが含まれる。運行ダイヤ作成部31は、運行ダイヤについて、自動で作成してもよいし、鉄道会社の担当者などからの操作を受け付けて作成してもよい。運行ダイヤ作成部31で作成される運行ダイヤについて説明する。
図2は、実施の形態1に係る運行調整装置30の運行ダイヤ作成部31で作成される運行ダイヤの例を示す第1の図である。
図2において、横軸は時刻を示し、縦軸は列車10が停車する駅などの列車10の位置を示す。以降についても同様とする。運行ダイヤには、通常時は運行されていないが増便の対象となる列車10の運行用のスジ、通常時は運行されているが減便の対象となる列車10の運行用のスジ、および増便および減便の対象外の列車10の運行用のスジが含まれる。スジとは、列車10の運行ダイヤにおいて個々の列車10の運行を表すものであり、運行ダイヤを紙面などで表した場合にグラフ状の線のように表される。以降の説明において、増便の対象となる列車10を第1の列車と称し、第1の列車の運行用のスジを第1の運行ダイヤと称することがある。また、減便の対象となる列車10を第2の列車と称し、第2の列車の運行用のスジを第2の運行ダイヤと称することがある。また、増便および減便の対象外の列車10を第3の列車と称し、第3の列車の運行用のスジを第3の運行ダイヤと称することがある。なお、
図2では、第1の運行ダイヤを臨時ダイヤと表記し、第2の運行ダイヤを通常ダイヤ(運休の可能性あり)と表記し、第3の運行ダイヤを通常ダイヤと表記している。以降の図においても同様とする。
【0013】
図2に示すように、運行ダイヤ作成部31で作成される運行ダイヤでは、第3の列車用のスジの間に第1の列車用のスジが用意されることになる。そのため、運行ダイヤ作成部31は、第3の列車用のスジ同士の間隔が広い時間帯に第1の列車用のスジを設けておくことが好ましい。第2の列車は、運休の可能性のある列車10である。第2の列車は通常は運行が予定されていることから、運行ダイヤ作成部31は、第2の列車のスジが連続しないように、例えば、規定された第3の列車のスジの数ごとに第2の列車のスジを1つ設けるように、運行ダイヤを作成する。
【0014】
運行ダイヤ作成部31で作成される運行ダイヤの性質について説明する。運行ダイヤ作成部31で作成される運行ダイヤが、第3の列車が中心で第1の列車および第2の列車が極一部に設定された運行ダイヤの場合、列車10を運行する鉄道会社は、確定的に列車10の運行が行いやすく、車両、人員などに余剰が発生しにくい。一方、列車10を利用する旅客は、予定が立てやすいが、混雑していても列車10の増便などの対応は期待できない。
図3は、実施の形態1に係る運行調整装置30の運行ダイヤ作成部31で作成される運行ダイヤの例を示す第2の図である。
図3では、8本の列車10のうち6本の列車10が確実に運行されることを示している。
【0015】
また、運行ダイヤ作成部31で作成される運行ダイヤが、第3の列車が最小限で第1の列車および第2の列車が多めに設定された運行ダイヤの場合、鉄道会社は、旅客の需要の増減に応じて列車10の運行本数をより柔軟に変更することができる。一方、旅客は、混雑しているときに列車10の増便を期待できるが、確実に運行される列車10の本数が少ないので乗り継ぎなどの予定を立てにくい。
図4は、実施の形態1に係る運行調整装置30の運行ダイヤ作成部31で作成される運行ダイヤの例を示す第3の図である。
図4では、8本の列車10のうち1本の列車10のみが確実に運行されることを示している。
【0016】
なお、パーソナルコンピュータ、スマートフォンなどのアプリケーションにおいて、旅客が乗車予定の列車10の出発時刻などを検索することが一般的に行われているが、乗車予定の列車10が急に減便、すなわち運休になると旅客の利便性が低下する。そのため、減便の可能性のある列車10、すなわち第2の列車については、アプリケーションの検索対象外の設定にするなどの対策をしておくことが好ましい。また、運行ダイヤ作成部31は、第2の列車について、他の列車10への乗り継ぎが無いような列車10にすることで、旅客の利便性の低下を抑制することができる。
図5は、実施の形態1に係る運行調整装置30の運行ダイヤ作成部31で作成される運行ダイヤに対応する時刻表の例を示す図である。駅などに表示される時刻表において、例えば、第1の列車については△マークを付与し、第2の列車については※マークを付与することで、旅客に対して列車10の運行が流動的であることを認識させることができる。
【0017】
運行ダイヤデータベース32は、運行ダイヤ作成部31で作成された運行ダイヤを保持する。すなわち、記憶部37は、運行ダイヤ作成部31で作成された運行ダイヤを記憶する。
図6は、実施の形態1に係る運行調整装置30の運行ダイヤデータベース32で保持される運行ダイヤの例を示す図である。前述のように、運行ダイヤ作成部31は、運行調整装置30が列車10の運行を調整する対象の路線についての運行ダイヤとして、路線ごとに、上り用および下り用の運行ダイヤ、平日用および休日用の運行ダイヤなどを作成している。そのため、運行ダイヤデータベース32は、運行ダイヤ作成部31で作成された複数の運行ダイヤを保持することになる。
【0018】
混雑予測部33は、列車10を構成する車両における車両ごとの旅客の乗車率に基づいて、車両ごとの将来の混雑度を予測する。まず、混雑予測部33は、無線通信によって、各列車10から列車10の車両ごとの乗車率のデータを含む列車データを取得する。なお、列車10は、応荷重装置などのセンサを用いて車両の重量を計測することで、車両ごとの乗車率を推測することができる。混雑予測部33は、各列車10から取得した列車データから車両ごとの乗車率のデータを抽出する。混雑予測部33は、列車10の車両ごとの乗車率のデータから現在の列車10の車両ごとの混雑度を推定し、さらに将来の列車10の車両ごとの混雑度を予測する。
【0019】
混雑予測部33における将来の列車10の車両ごとの混雑度を予測する方法は特に問わない。混雑予測部33は、例えば、推定した現在の列車10の車両ごとの混雑度と、混雑度データベース34に保持されている過去の列車10の車両ごとの混雑度とを比較し、混雑度の変化の推移から将来の列車10の車両ごとの混雑度を予測してもよいし、推定した現在の列車10の車両ごとの混雑度からAI(Artificial Intelligence)などを用いて将来の列車10の車両ごとの混雑度を予測してもよい。混雑予測部33は、将来の列車10の車両ごとの混雑度を予測する場合、各列車10から取得した列車10の車両ごとの乗車率のデータを用いて、車両ごとの定員に対する旅客の乗車率によって混雑度を予測する他、車両ごとの旅客の乗車人数によって混雑度を予測してもよいし、車両ごとの旅客の乗降時間によって混雑度を予測してもよいし、規定された旅客の乗降時間に対する車両ごとの遅延時間によって混雑度を予測してもよいし、これらのうち少なくとも1つによって混雑度を予測する。
【0020】
なお、混雑予測部33は、ある駅での列車10の車両ごとの混雑度を予測する場合、条件を変えて複数の条件ごとに混雑度を予測してもよい。例えば、混雑予測部33は、ある駅での列車10の車両ごとの混雑度について、進行方向、すなわち上り列車および下り列車ごとに予測してもよいし、曜日ごとに予測してもよいし、天候、すなわち晴れまたは雨によって予測してもよいし、季節、すなわち1年を週単位または月単位に分けて予測してもよいし、これらのいくつかを組み合わせて予測してもよい。混雑予測部33は、進行方向、曜日、天候、季節などの情報について、例えば、運行管理装置20から取得してもよいし、運行管理装置20以外の装置から取得してもよいし、各情報の取得方法は特に問わない。
【0021】
混雑度データベース34は、混雑予測部33で推定された列車10の車両ごとの混雑度を保持する。すなわち、記憶部37は、混雑予測部33で推定された列車10の車両ごとの混雑度を記憶する。
図7は、実施の形態1に係る運行調整装置30の混雑度データベース34で保持される列車10の車両ごとの混雑度の例を示す図である。前述のように、混雑予測部33は、現在の列車10の車両ごとに混雑度を推定している。そのため、混雑度データベース34は、混雑予測部33で推定された列車10の車両ごとの混雑度の結果を推定されたときの時刻に対応させて保持することになる。混雑度データベース34で保持される混雑度の情報は、過去の実績値を表すものである。なお、混雑予測部33が進行方向、曜日、天候、季節などの情報を取得して列車10の車両ごとの混雑度を予測していることから、混雑度データベース34は、混雑予測部33で推定された列車10の車両ごとの混雑度を、各種の情報ごとに保持するようにしてもよい。混雑予測部33は、混雑度データベース34に保持されている列車10の車両ごとの混雑度の情報を、列車10の車両ごとの混雑度を推定するごとに更新してもよい。混雑度データベース34は、混雑予測部33が列車10から取得した乗車率のデータを、そのまま保持してもよいし、時刻などの条件が同じで規定された期間で平均化したものを保持してもよい。
【0022】
乗務員シフトデータベース36は、列車10の運転士、車掌などの乗務員の勤務シフトの情報などを保持する。すなわち、記憶部37は、列車10の運転士、車掌などの乗務員の勤務シフトの情報などを記憶する。なお、列車10がワンマン運転の場合、乗務員シフトデータベース36は、列車10の運転士の勤務シフトの情報を保持していればよい。また、列車10が自動運転の場合、運行調整装置30の記憶部37は、乗務員シフトデータベース36を記憶していなくてもよい。
【0023】
運行調整部35は、運行ダイヤデータベース32から運行ダイヤを取得し、混雑予測部33から予測された混雑度を取得し、混雑度データベース34から混雑度を取得する。運行調整部35は、混雑予測部33で予測された混雑度と規定された閾値とを比較した結果に基づいて、混雑予測部33で列車データを取得した対象の列車10を含む複数の列車10の運行計画を示す運行ダイヤにおいて1以上の列車10の運行計画を変更するか否かを判定する。ここで、混雑予測部33で予測された車両ごとの将来の混雑度は、車両ごとに均一ではなく、車両ごとに異なることがある。一般的に、列車10の混雑によって旅客が列車10を乗降する時間が掛かると、列車10の遅延の原因となる。すなわち、列車10を構成する複数の車両のうち、混雑していて旅客の乗降に時間の掛かる車両が1つでもあると、列車10の遅延の原因となる。そのため、運行調整部35は、混雑が予測される列車10の車両、時刻、駅などに着目して、列車10の増便、減便などを判定する。
【0024】
図8は、実施の形態1に係る運行調整装置30の運行調整部35が列車10の増便、減便などを判定する際の対象となる車両の例を示す図である。例えば、旅客の乗降が多い駅で
図8に示す列車10の先頭車両側に階段が設置されている場合、混雑予測部33は、当該駅において列車10の先頭車両が混雑することを示すような混雑度を予測することになる。そのため、
図8の例の場合、運行調整部35は、列車10の先頭車両のみに着目して、列車10の先頭車両の混雑度と規定された閾値とを比較することによって、列車10を増便するか否かを判定する。このように、運行調整部35は、混雑予測部33で予測された列車10の車両ごとの混雑度のうち最も混雑度の高い車両の混雑度と閾値とを比較した結果に基づいて、運行ダイヤにおいて1以上の列車10の運行計画を変更するか否かを判定する。なお、混雑予測部33で混雑度が予測された結果、列車10の特定の車両、特定の時刻、特定の駅などで著しく混雑度が高いことがなく、満遍なく混雑するような予測の結果であった場合、運行調整部35は、列車10の全ての車両、全ての時刻、全ての駅を対象にして、列車10を増便するか否かを判定してもよい。
【0025】
運行調整部35は、混雑予測部33で予測された列車10の車両ごとの混雑度が前述の閾値であって第1の列車の増便を判定するための第1の閾値以上の場合、第1の列車を増便すると判定する。このとき、運行調整部35は、増便の対象の第1の列車が複数ある場合、増便することによって最も混雑を緩和可能な第1の列車を選択する。また、運行調整部35は、混雑予測部33で予測された列車10の車両ごとの混雑度が前述の閾値であって第2の列車の減便を判定するための第2の閾値未満の場合、第2の列車を減便すると判定する。このとき、運行調整部35は、減便の対象の第2の列車が複数ある場合、減便することによって最も混雑の増加を抑制可能な第2の列車を選択する。なお、第1の閾値は、第2の閾値よりも大きいものとする。
【0026】
図9は、実施の形態1に係る運行調整装置30の運行調整部35が増便および減便を行うことを判定したときの運行ダイヤの例を示す図である。例えば、混雑予測部33においてある時間帯の列車10で混雑することが予測されていた場合、運行調整部35は、当該時間帯に合わせて列車10を増便することで、混雑が予測されていた他の列車10の混雑を緩和させることができる。
【0027】
このとき、運行調整部35は、増便または減便による効果を確認するため、各駅および列車10の各車両における乗車率モデルを生成する。運行調整部35は、乗車率モデルを生成する場合、対象の駅において列車10のドアが開いているときの各車両の乗車率のデータを用いる。
図10は、実施の形態1に係る運行調整装置30の運行調整部35が乗車率モデルを生成する際の基となる乗車率の変化を示す図である。対象の駅において列車10のドアが開いてから乗車率が最も低くなるまでの期間が旅客の降車時間となり、乗車率が最も低くなってから列車10のドアが閉まるまでの期間が乗車時間となる。乗車率モデルは、駅ごとの列車10の各車両の乗車率の増減を表すものであるが、乗車人数および降車人数に換算して乗車人数モデルとしてもよい。この場合、乗車人数および降車人数は、実際に数えた数ではなく、前述のように計測された車両重量と旅客の平均体重との関係から推測することが可能である。運行調整部35は、例えば、混雑予測部33で予測された混雑度と進行方向、曜日、天候、季節などが同じ条件のもので、混雑度データベース34に保持されている混雑度の情報または乗車率のデータを用いることで、乗車率モデルを生成することができる。
【0028】
図11は、実施の形態1に係る運行調整装置30の運行調整部35で生成された乗車率モデルを示す第1の図である。
図11は、運行調整部35が、乗車率の増加量によって乗車率モデルを生成したものである。運行調整部35は、ある列車10を増便することで、増便された列車10に乗った旅客分、増便された列車10の後を走行する列車10に乗る旅客を減少させることができる。一方、運行調整部35は、ある列車10を減便することで、減便された列車10に乗れなかった旅客分、減便された列車10の後を走行する列車10に乗る旅客を増加させることになる。
【0029】
図12は、実施の形態1に係る運行調整装置30の運行調整部35で生成された乗車率モデルを示す第2の図である。
図12は、運行調整部35が、乗車率の減少量によって乗車率モデルを生成したものである。運行調整部35は、ある列車10を増便することで、増便された列車10に乗った旅客分、増便された列車10の後を走行する列車10から降りる旅客を減少させることができる。一方、運行調整部35は、ある列車10を減便することで、減便された列車10に乗れなかった旅客分、減便された列車10の後を走行する列車10から降りる旅客を増加させることになる。
【0030】
運行調整部35は、
図11および
図12に示す乗車率モデルに基づいて、列車10を増便する場合は、増便する列車10の後の列車10の乗車率の増加量または減少量をどの程度改善できるかによって、増便する列車10を決定する。また、運行調整部35は、
図11および
図12に示す乗車率モデルに基づいて、列車10を減便する場合は、減便する列車10の後の列車10の乗車率の増加量または減少量の悪化をどの程度抑制できるかによって、減便する列車10を決定する。なお、運行調整部35は、
図11および
図12に示す乗車率モデルについて、2つとも生成する必要はなく、乗車率の変動が把握できるのであればどちらか一方のみを生成することにしてもよい。また、運行調整部35は、混雑度データベース34に保持されている混雑度の情報または乗車率のデータを用いることで乗車率モデルを生成できるが、混雑予測部33における混雑度の予測の精度が高い場合、混雑予測部33で予測された混雑度を用いて乗車率モデルを生成してもよい。
【0031】
図13は、実施の形態1に係る運行調整装置30の運行調整部35が複数の候補から増便する列車10を決定するときの例を示す図である。
図13に示すように、増便可能な列車10が3つある場合、運行調整部35は、増便することによって最も効果が得られる列車10を選択する。
図13の例では列車1、列車2、および列車3において、乗車量も降車量も列車3が一番大きく、列車1および列車2については乗車量も降車量も大きな相違はないことから、運行調整部35は、列車3の旅客を分散させるため、増便させる列車10として候補bの列車10を選択する。このとき、運行調整部35は、乗車率モデルとともに、規定された評価関数などを用いて最も効果が得られる増便用の列車10を選択してもよい。評価関数については、混雑が予測される時間帯の列車10において、各駅での乗降人数の合計値が規定された閾値を超える確率を最小化する増便用の列車10を選択するもの、混雑が予測される時間帯の列車10において、駅ごとの乗降人数の最大値を最小化する増便用の列車10を選択するもの、などがあるがこれらに限定されない。
【0032】
ここで、列車10が無人運転列車ではなく運転士が必要な場合、列車10を運行させるためには運転士が必要になる。予め列車10を増便することを想定して運転士を確保しておくことで列車10の増便に対応できるが、列車10を増便しなかった場合は確保していた運転士が運転をせずに業務を終了することもあり、鉄道会社にとって効率的ではない。そのため、運行調整部35は、乗務員シフトデータベース36から乗務員のシフト情報を取得し、増便する列車10を運転可能な運転士が運転予定であった列車10、すなわち第2の列車を減便することで、増便する列車10のための運転士を確保することができる。
図14は、実施の形態1に係る運行調整装置30の運行調整部35が増便および減便の対象とする列車10を運行ダイヤ上で示す図である。
図14の例では、運行調整部35が列車10を増便する際に運転士を確保するため列車10を1つ減便させる必要がある場合、運行調整部35は、増便する列車10を運転可能な運転士Bが運転予定であった列車10を減便するように決定する。運行調整部35は、増便する列車10を運転不可の運転士Aについては、運行ダイヤの通りに列車10の運転をさせることを決定する。このように、運行調整部35は、第1の列車を増便するために第2の列車を減便する必要がある場合、乗務員のシフト情報に基づいて、第1の列車および第2の列車を選択する。
【0033】
なお、ここまでの説明では、運行調整装置30の運行調整部35は、列車10を増便する場合は運行ダイヤに規定されているスジの通りに最初から運行を開始させ、列車10を減便する場合は運行ダイヤに規定されているスジの通りに最初から運休させるようにしていたが、これらに限定されない。運行調整部35は、例えば、増便用の列車10を待機可能な駅が運行経路上にある場合、当該駅から増便用の列車10の運行を開始させてもよい。
図15は、実施の形態1に係る運行調整装置30の運行調整部35が運行経路の途中から増便用の列車10の運行を開始させる例を示す図である。運行調整部35は、混雑し始めた列車10より前を走る列車10を増便する。これにより、運行調整部35は、増便用の列車10が運行を開始する駅での列車10からの旅客の乗降数を減少させ、混雑を緩和させることができる。このように、運行調整部35は、第1の列車を増便する場合、第1の列車を途中の駅から運行を開始させると判定することができる。
【0034】
また、運行調整部35は、例えば、減便対象の列車10から乗り換え可能な列車10がある場合、乗り換え可能な駅で減便用の列車10を運休させてもよい。
図16は、実施の形態1に係る運行調整装置30の運行調整部35が運行経路の途中で減便用の列車10を運休させる例を示す図である。運行調整部35は、混雑が緩和し始めた列車10より後を走る列車10について、近い時刻で走る列車10があって当該列車10に乗り換えが容易にできる場合、乗り換え可能な駅から先の区間を減便、すなわち運休させてもよい。近い時刻で走る列車10は、同じ路線を走行する列車10の他、他路線からの直通運転によって乗り入れてくる列車10であってもよい。これにより、運行調整部35は、混雑が緩和している区間について、列車10の運行本数を削減し、列車10による輸送力が過剰になることを防止することができる。このように、運行調整部35は、第2の列車を減便する場合、第2の列車を途中の駅まで運行させてから運休させると判定することができる。
【0035】
運行調整部35の動作を、フローチャートを用いて説明する。
図17は、実施の形態1に係る運行調整装置30の運行調整部35が列車10を増便する処理を行うか列車10を減便する処理を行うかを判定する処理を示すフローチャートである。運行調整部35は、混雑予測部33で予測された混雑度が第1の閾値以上の場合(ステップS101:Yes)、増便モードに移行する(ステップS102)。運行調整部35は、混雑予測部33で予測された混雑度が第1の閾値未満(ステップS101:No)、かつ第1の閾値よりも小さい第2の閾値未満の場合(ステップS103:Yes)、減便モードに移行する(ステップS104)。運行調整部35は、混雑予測部33で予測された混雑度が第1の閾値未満(ステップS101:No)、かつ第1の閾値よりも小さい第2の閾値以上の場合(ステップS103:No)、動作を終了する。運行調整部35は、
図17に示すフローチャートの動作を定期的に繰り返し実施する。
【0036】
図18は、実施の形態1に係る運行調整装置30の運行調整部35における増便モードの処理を示すフローチャートである。
図18に示すフローチャートは、
図17に示すフローチャートのステップS102の増便モードの処理の詳細を示すものである。運行調整部35は、増便する列車10を決定する(ステップS201)。運行調整部35は、乗務員シフトデータベース36を参照し、増便を決定した列車10について列車編成および乗務員が確保されている場合(ステップS202:Yes)、運行ダイヤを変更し(ステップS203)、変更内容を確定し(ステップS204)、増便モードの処理を終了する。運行調整部35は、乗務員シフトデータベース36を参照し、増便を決定した列車10について列車編成および乗務員が確保されていない場合(ステップS202:No)、減便可能な列車10が存在するか否かを判定する(ステップS205)。運行調整部35は、減便可能な列車10が存在する場合(ステップS205:Yes)、減便する列車10を決定する(ステップS206)。運行調整部35は、運行ダイヤを変更し(ステップS203)、変更内容を確定し(ステップS204)、増便モードの処理を終了する。運行調整部35は、減便可能な列車10が存在しない場合(ステップS205:No)、列車10を増便することなく、増便モードの処理を終了する。
【0037】
図19は、実施の形態1に係る運行調整装置30の運行調整部35が増便する列車10を決定する処理を示すフローチャートである。
図19に示すフローチャートは、
図18に示すフローチャートのステップS201の増便する列車10を決定する処理の詳細を示すものである。運行調整部35は、増便候補の列車10が複数ある場合は増便候補の列車10を1つ選択する(ステップS301)。運行調整部35は、選択した増便候補の列車10を実際に増便した場合について、乗車率モデル、評価関数などを用いて評価を行う(ステップS302)。運行調整部35は、増便候補の列車10が複数あって選択していない増便候補の列車10がある場合(ステップS303:No)、ステップS301に戻って未選択の増便候補の列車10を1つ選択する。運行調整部35は、上記の処理を繰り返し行い、増便候補の列車10を全て選択した場合(ステップS303:Yes)、増便候補の各列車10の評価の結果に基づいて、最適な列車10を選択する(ステップS304)。最適な列車10とは、前述のように、増便することによって他の列車10の混雑を最も緩和させることが可能な列車10である。
【0038】
図20は、実施の形態1に係る運行調整装置30の運行調整部35が減便する列車10を決定する処理を示すフローチャートである。
図20に示すフローチャートは、
図18に示すフローチャートのステップS206の減便する列車10を決定する処理の詳細を示すものである。運行調整部35は、減便候補の列車10が複数ある場合は減便候補の列車10を1つ選択する(ステップS401)。運行調整部35は、選択した減便候補の列車10を実際に減便した場合について、乗車率モデル、評価関数などを用いて評価を行う(ステップS402)。運行調整部35は、減便候補の列車10が複数あって選択していない減便候補の列車10がある場合(ステップS403:No)、ステップS401に戻って未選択の減便候補の列車10を1つ選択する。運行調整部35は、上記の処理を繰り返し行い、減便候補の列車10を全て選択した場合(ステップS403:Yes)、減便候補の各列車10の評価の結果に基づいて、最適な列車10を選択する(ステップS404)。最適な列車10とは、前述のように、減便することによって他の列車10の混雑の増加を最も抑制可能な列車10である。
【0039】
図21は、実施の形態1に係る運行調整装置30の運行調整部35における減便モードの処理を示すフローチャートである。
図21に示すフローチャートは、
図17に示すフローチャートのステップS104の減便モードの処理の詳細を示すものである。運行調整部35は、減便可能な列車10が存在する場合(ステップS501:Yes)、減便する列車10を決定する(ステップS502)。運行調整部35は、運行ダイヤを変更し(ステップS503)、変更内容を確定し(ステップS504)、減便モードの処理を終了する。運行調整部35は、減便可能な列車10が存在しない場合(ステップS501:No)、列車10を減便することなく、減便モードの処理を終了する。なお、ステップS502における減便する列車10を決定する処理は、
図18に示すフローチャートのステップS206の処理、すなわち
図20に示すフローチャートの処理と同じである。
【0040】
なお、実施の形態1では、運行管理装置20が運行調整装置30を備える構成である。そのため、運行調整装置30が運行ダイヤ作成部31、記憶部37が記憶する運行ダイヤデータベース32、記憶部37が記憶する乗務員シフトデータベース36などと同一または類似する構成を備える場合、運行管理装置20は、運行調整装置30が備える構成を利用することで、構成を簡略化させてもよい。
【0041】
つづいて、実施の形態1に係る運行調整装置30のハードウェア構成について説明する。運行調整装置30において、記憶部37はメモリである。運行ダイヤ作成部31、混雑予測部33、および運行調整部35は、処理回路により実現される。処理回路は、プログラムを格納するメモリ、およびメモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサであってもよいし、専用のハードウェアであってもよい。処理回路は制御回路とも呼ばれる。
【0042】
図22は、実施の形態1に係る運行調整装置30を実現する処理回路をプロセッサ91およびメモリ92で実現する場合の処理回路90の構成の一例を示す図である。
図22に示す処理回路90は制御回路であり、プロセッサ91およびメモリ92を備える。処理回路90がプロセッサ91およびメモリ92で構成される場合、処理回路90の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ92に格納される。処理回路90では、メモリ92に記憶されたプログラムをプロセッサ91が読み出して実行することにより、各機能を実現する。すなわち、処理回路90は、運行調整装置30の処理が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ92を備える。このプログラムは、処理回路90により実現される各機能を運行調整装置30に実行させるためのプログラムであるともいえる。このプログラムは、プログラムが記憶された記憶媒体により提供されてもよいし、通信媒体など他の手段により提供されてもよい。
【0043】
上記プログラムは、混雑予測部33が、列車10を構成する車両における車両ごとの旅客の乗車率に基づいて、車両ごとの将来の混雑度を予測する混雑予測ステップと、運行調整部35が、混雑予測部33で予測された混雑度と規定された閾値とを比較した結果に基づいて、列車10を含む複数の列車10の運行計画を示す運行ダイヤにおいて1以上の列車10の運行計画を変更するか否かを判定する運行調整ステップと、を運行調整装置30に実行させるプログラムであるとも言える。
【0044】
ここで、プロセッサ91は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、またはDSP(Digital Signal Processor)などである。また、メモリ92は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)などが該当する。
【0045】
図23は、実施の形態1に係る運行調整装置30を実現する処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の処理回路93の構成の一例を示す図である。
図23に示す処理回路93は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。処理回路93については、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、処理回路93は、専用のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態によれば、運行調整装置30は、列車10を構成する車両における車両ごとの旅客の乗車率に基づいて車両ごとの将来の混雑度を予測し、予測した混雑度と規定された閾値とを比較した結果に基づいて、混雑度を予測した列車10を含む複数の列車10の運行計画を示す運行ダイヤにおいて1以上の列車10の運行計画を変更するか否かを判定することとした。これにより、運行調整装置30は、列車10の実際の乗車状況に即して列車10の増便または減便を調整することができる。
【0047】
実施の形態2.
実施の形態1では、運行管理装置20が運行調整装置30を備える構成であった。実施の形態2では、運行調整装置30が運行管理装置の外部にある場合について説明する。
【0048】
図24は、実施の形態2に係る運行調整装置30の構成例を示すブロック図である。実施の形態1と異なり、運行調整装置30は、運行管理装置20aの外部にある。運行管理装置20aは、無線通信によって、各列車10から列車10の車両ごとの乗車率のデータを含む列車データを取得する。運行管理装置20aは、取得した列車データを運行調整装置30に送信する。運行管理装置20aと運行調整装置30との間の通信については、有線通信でもよいし、無線通信でもよい。運行調整装置30は、各列車10から列車10の車両ごとの乗車率のデータを含む列車データを、運行管理装置20aを経由して取得する。実施の形態2において運行調整装置30が列車データを取得してからの動作は、実施の形態1のときの運行調整装置30の動作と同様である。そのため、実施の形態2における運行調整装置30の詳細な動作の説明は省略する。
【0049】
実施の形態1の構成は、例えば、鉄道会社が運行管理装置20を新規に購入する場合を想定したものである。一方、実施の形態2の構成は、例えば、鉄道会社が既存の運行管理装置20aを継続して使用する場合において、運行調整装置30を追加で導入する場合を想定したものである。実施の形態2では、運行調整装置30は、運行管理装置20aから列車データを取得できればよいので、列車10から無線通信によって直接列車データを取得する実施の形態1のときと比較して、混雑予測部33の通信機能を簡略化することができる。
【0050】
実施の形態3.
実施の形態3では、運行調整装置30が、クラウドを経由して各列車10からの列車10の車両ごとの乗車率のデータを含む列車データを取得する場合について説明する。
【0051】
図25は、実施の形態3に係る運行調整装置30の構成例を示すブロック図である。データ収集装置41は、無線通信によって、各列車10から列車10の車両ごとの乗車率のデータを含む列車データを取得する。データ収集装置41は、取得した列車データを運行調整装置30に送信する。データ収集装置41と運行調整装置30との間の通信については、有線通信でもよいし、無線通信でもよい。実施の形態3では、運行調整装置30は、クラウド40に設置されたデータ収集装置41を経由して、各列車10からの列車10の車両ごとの乗車率のデータを含む列車データを取得する。実施の形態3において運行調整装置30が列車データを取得してからの動作は、実施の形態1のときの運行調整装置30の動作と同様である。そのため、実施の形態3における運行調整装置30の詳細な動作の説明は省略する。
【0052】
実施の形態3の構成は、鉄道会社が、列車10からの列車データを収集可能なデータ収集装置41を予め備えていることを想定している。実施の形態3では、運行調整装置30は、鉄道会社が保有しているネットワークなどを経由してデータ収集装置41から列車データを取得できればよいので、列車10から無線通信によって直接列車データを取得する実施の形態1のときと比較して、混雑予測部33の通信機能を簡略化することができる。
【0053】
実施の形態4.
実施の形態4では、運行調整装置30が、クラウド40、および運行管理装置20aを経由して各列車10からの列車10の車両ごとの乗車率のデータを含む列車データを取得する場合について説明する。
【0054】
図26は、実施の形態4に係る運行調整装置30の構成例を示すブロック図である。実施の形態4は、実施の形態2および実施の形態3の構成を組み合わせたものである。データ収集装置41は、無線通信によって、各列車10から列車10の車両ごとの乗車率のデータを含む列車データを取得する。データ収集装置41は、取得した列車データを運行管理装置20aに送信する。データ収集装置41と運行管理装置20aとの間の通信については、有線通信でもよいし、無線通信でもよい。運行管理装置20aは、取得した列車データを運行調整装置30に送信する。運行管理装置20aと運行調整装置30との間の通信については、有線通信でもよいし、無線通信でもよい。実施の形態4では、運行調整装置30は、クラウド40に設置されたデータ収集装置41、および運行管理装置20aを経由して、各列車10からの列車10の車両ごとの乗車率のデータを含む列車データを取得する。実施の形態4において運行調整装置30が列車データを取得してからの動作は、実施の形態1のときの運行調整装置30の動作と同様である。そのため、実施の形態4における運行調整装置30の詳細な動作の説明は省略する。
【0055】
実施の形態4の構成は、鉄道会社が、列車10からの列車データを収集可能なデータ収集装置41、および運行管理装置20aを予め備えていることを想定している。実施の形態4では、運行調整装置30は、鉄道会社が保有しているネットワークなどを経由して運行管理装置20aから列車データを取得できればよいので、列車10から無線通信によって直接列車データを取得する実施の形態1のときと比較して、混雑予測部33の通信機能を簡略化することができる。
【0056】
実施の形態5.
実施の形態1では、運行調整装置30は、乗務員のシフトなどを考慮して、列車10を増便する場合は同じ数の列車10を減便させるようにしていた。この場合、列車編成、乗務員などを余分に確保する必要はないが、減便によって旅客の利便性が低下する。実施の形態5では、列車10を増便するための列車10の減便を伴わない場合の運行調整装置30の動作について説明する。
【0057】
実施の形態5において、運行調整装置30の構成は
図1に示す実施の形態1のときの構成と同様である。実施の形態5では、いくつかの増便用の列車10および乗務員が確保されている状況において、運行調整装置30は、列車10の増便および列車10の減便を判定する。増便用の列車10については、拠点駅の留置線、拠点駅の近くの車庫などに留置させておく。運行調整装置30は、列車10を増便すると判定した場合、増便用の列車10が留置されている駅から、または増便用の列車10の運行を開始する駅まで増便用の列車10を回送させてから、増便用の列車10の運行を開始させる。
図27は、実施の形態5に係る運行調整装置30の運行調整部35において列車10の増便を決定したときの運行ダイヤの変化を示す図である。実施の形態5では、運行調整装置30は、混雑すると予測した場合、増便用の列車編成および乗務員を確保するために別の時間帯の列車10を減便、すなわち運休させることなく、列車10の増便を行う。運行調整装置30の運行ダイヤ作成部31は、上記のような処理が可能なように、予めいくつかの増便用の列車10が確保され、回送運転が可能な運行ダイヤを作成する。
【0058】
図28は、実施の形態5に係る運行調整装置30の運行調整部35における増便モードの処理を示すフローチャートである。
図28に示すフローチャートは、
図17に示すフローチャートのステップS102の増便モードの処理の詳細を示すものである。運行調整部35は、増便する列車10を決定する(ステップS201)。運行調整部35は、乗務員シフトデータベース36を参照し、増便を決定した列車10について乗務員が確保されている場合(ステップS601:Yes)、列車編成が確保されているか否かを判定する(ステップS602)。運行調整部35は、列車編成が確保されている場合(ステップS602:Yes)、運行ダイヤを変更し(ステップS203)、変更内容を確定し(ステップS204)、増便モードの処理を終了する。運行調整部35は、列車編成が確保されていないが(ステップS602:No)、列車編成の送り込み回送が可能な場合(ステップS603:Yes)、運行ダイヤを変更し(ステップS203)、変更内容を確定し(ステップS204)、増便モードの処理を終了する。運行調整部35は、乗務員シフトデータベース36を参照し、増便を決定した列車10について乗務員が確保されていない場合(ステップS601:No)、または列車編成の送り込み回送が不可の場合(ステップS603:No)、減便可能な列車10が存在するか否かを判定する(ステップS205)。運行調整部35は、減便可能な列車10が存在する場合(ステップS205:Yes)、減便する列車10を決定する(ステップS206)。運行調整部35は、運行ダイヤを変更し(ステップS203)、変更内容を確定し(ステップS204)、増便モードの処理を終了する。運行調整部35は、減便可能な列車10が存在しない場合(ステップS205:No)、列車10を増便することなく、増便モードの処理を終了する。
【0059】
なお、ステップS201における増便する列車10を決定する処理は、
図18に示すフローチャートのステップS201の処理、すなわち
図19に示すフローチャートの処理と同じである。また、ステップS206における減便する列車10を決定する処理は、
図18に示すフローチャートのステップS206の処理、すなわち
図20に示すフローチャートの処理と同じである。運行調整装置30の運行調整部35が
図28のフローチャートに示すステップS205の処理を行う場合は、予め確保していた増便用の列車10を使い切った場合である。
【0060】
このように、運行調整装置30は、予めいくつかの増便用の列車10および乗務員を確保しておくことで、別の時間帯の列車10を減便、すなわち運休させることなく、列車10の増便を行うことができる。
【0061】
実施の形態6.
実施の形態1から実施の形態5では、運行調整装置30は、列車10を増便する場合、前後の時間帯の列車10と同じ種別の列車10を増便することを想定していた。実施の形態6では、運行調整装置30は、予測された混雑度によって増便する列車10の種別を変更する場合について説明する。
【0062】
実施の形態6において、運行調整装置30の構成は
図1に示す実施の形態1のときの構成と同様である。運行調整装置30において、運行調整部35は、混雑予測部33で予測された将来の列車10の車両ごとの混雑度がある駅のみで大きく増加するもの、すなわち駅ごとに需要が大きく異なる場合、需要の大きい駅のみに停車する種別の列車10を増便するように決定してもよい。
図29は、実施の形態6に係る運行調整装置30の運行調整部35が予測された混雑度によって増便する列車10の種別を決定した例を示す図である。運行調整部35は、
図29に示すように、B駅での乗降人数が多くて混雑が予測される場合、A駅、C駅などに停車せず、B駅に停車するような種別、例えば、快速列車の列車10を増便することを決定する。これにより、運行調整部35は、B駅での列車10の乗降による混雑を緩和させることができる。
【0063】
なお、運行調整部35は、前述と同様、B駅での乗降人数が多くて混雑が予測される場合、既に運行している列車10の種別を変更させてもよい。
図30は、実施の形態6に係る運行調整装置30の運行調整部35が予測された混雑度によって運行中の列車10の種別を変更した例を示す図である。運行調整部35は、
図30に示すように、B駅での乗降人数が多くて混雑が予測される場合、列車10の種別を、A駅、C駅などに停車せず、B駅に停車するような種別、例えば、快速列車に変更することを決定する。これにより、運行調整部35は、B駅での列車10の乗降による混雑を緩和させることができる。なお、運行調整装置30の運行ダイヤ作成部31は、上記のような処理が可能なように、予め1つの列車10の運行に対して複数の種別から選択可能な運行ダイヤを作成する。この場合、ある列車10用として各駅停車用の運行ダイヤが選択されても、他の列車10用として快速用の運行ダイヤを選択できないようにしておく。
【0064】
このように、運行調整部35は、混雑度に基づいて、列車10の種別を変更、すなわち列車10の停車駅を変更させてもよい。
【0065】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 列車、20,20a 運行管理装置、30 運行調整装置、31 運行ダイヤ作成部、32 運行ダイヤデータベース、33 混雑予測部、34 混雑度データベース、35 運行調整部、36 乗務員シフトデータベース、37 記憶部、40 クラウド、41 データ収集装置。