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特許7657188磁気回路部品、送風機、圧縮機、及び冷凍装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】磁気回路部品、送風機、圧縮機、及び冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20250328BHJP
   H02K 5/24 20060101ALI20250328BHJP
【FI】
H02K1/18 A
H02K5/24 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022154431
(22)【出願日】2022-09-28
(65)【公開番号】P2024048492
(43)【公開日】2024-04-09
【審査請求日】2023-09-26
【審判番号】
【審判請求日】2024-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中 祥司郎
【合議体】
【審判長】河本 充雄
【審判官】中野 浩昌
【審判官】棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/065676(WO,A1)
【文献】特開平05-191935(JP,A)
【文献】特開2002-034221(JP,A)
【文献】特開2011-019398(JP,A)
【文献】特開2011-055576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K1/18
H02K5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気回路の一部を構成する磁気回路部品であって、
支持部材(11)が有する円筒形の胴部(12)に保持されるとともに軟磁性材料で構成され、環状のヨーク部(34)を有するコア(32)と、
前記コア(32)に設けられ、該コア(32)の振動を低減する動吸振器(50)とを備え、
前記動吸振器(50)は、錘部(51)と、該錘部(51)と前記ヨーク部(34)とを接続するとともに弾性変形する接続部(52)とを有し、
前記動吸振器(50)は、前記コア(32)と一体に形成され、
前記錘部(51)は、前記胴部(12)の内周面及び、前記ヨーク部(34)の外周面に接触しない
磁気回路部品。
【請求項2】
前記錘部(51)は、前記ヨーク部(34)の周方向に沿って延びる
請求項1に記載の磁気回路部品。
【請求項3】
前記動吸振器(50)は、前記ヨーク部(34)の外周又は内部に設けられる
請求項1又は2に記載の磁気回路部品。
【請求項4】
前記コア(32)は、互いに積層される複数の電磁鋼板(M)によって構成され、
前記複数の電磁鋼板(M)は、前記錘部(51)において互いに締結される
請求項1又は2に記載の磁気回路部品。
【請求項5】
前記磁気回路は、回転軸(20)の軸心を中心に回転可能に構成されるロータ(40)と、該回転軸(20)の径方向において前記ロータ(40)と対向して配置されるステータ(31)とを備え、
前記ステータ(31)は、前記コア(32)としてのステータコア(32)と、該ステータコア(32)に巻き回されるコイル(33)とを有し、
前記動吸振器(50)は、前記径方向において前記ロータ(40)と反対側に配置される
請求項1又は2に記載の磁気回路部品。
【請求項6】
前記磁気回路部品は、電動機(30)の一部を構成する
請求項1又は2に記載の磁気回路部品。
【請求項7】
前記磁気回路部品は、磁気軸受の一部を構成する
請求項1又は2に記載の磁気回路部品。
【請求項8】
前記磁気回路部品は、リアクトルの一部を構成する
請求項1又は2に記載の磁気回路部品。
【請求項9】
請求項6に記載の磁気回路部品を備える電動機(30)と、
前記電動機(30)によって駆動されるファンとを備える
送風機。
【請求項10】
請求項6に記載の磁気回路部品を備える
圧縮機。
【請求項11】
請求項10に記載の圧縮機(10)と、
前記圧縮機(10)で圧縮された冷媒が流れる冷媒回路(R)とを備える
冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気回路部品、送風機、圧縮機、及び冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、磁束を含む閉回路で構成される磁気回路が知られている。磁気回路では、磁力の変化に起因して振動が発生する。磁気回路の分野において、この振動を低減したいという課題がある。
【0003】
特許文献1では、磁気回路の一種である電動機が開示されている。特許文献1の電動機は、固定子鉄心と、該固定子鉄心の外周に配置された固定子外周板とを有する。この電動機では、固定子外周板と固定子鉄心との間に複数の補強板が設けられる。この補強板は、弾性を有する第1はり部材と第2はり部材とを有する。第1はり部材と第2はり部材とは、連結部材で結合される。このような構造により、固定子鉄心の支持剛性を低減し、固定子鉄心に発生する電磁振動を吸収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-254012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の電動機では、複数の補強板を設けることにより振動を低減できる一方、補強板の追加に伴ってコストが増加する。加えて、製造工程においても、電動機に補強板を組み付ける工程が追加となるため、更にコストが増加するという問題があった。
【0006】
本開示の目的は、磁気回路の一部を構成する磁気回路部品において、製品コストの増加を抑制しつつ、コアで発生する振動を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、磁気回路の一部を構成する磁気回路部品であって、軟磁性材料で構成され、環状のヨーク部(34)を有するコア(32)と、前記コア(32)に設けられ、該コア(32)の振動を低減する動吸振器(50)とを備え、前記動吸振器(50)は、錘部(51)と、該錘部(51)と前記ヨーク部(34)とを接続するとともに弾性変形する接続部(52)とを有し、前記動吸振器(50)は、前記コア(32)と一体に形成される。
【0008】
第1の態様では、コア(32)の振動を低減する動吸振器(50)を備え、動吸振器(50)がコア(32)と一体に形成される。そのため、新たな部材を追加することなく、コア(32)の振動を低減できる。加えて、本態様では、動吸振器(50)がコア(32)と別部材で構成される場合に比べて、コア(32)に動吸振器(50)を組み付ける作業も生じない。これにより、磁気回路部品(31)の製品コストの増加を抑制しつつ、コア(32)で発生する振動を低減できる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様において、前記錘部(51)は、前記ヨーク部(34)の周方向に沿って延びる。
【0010】
第2の態様では、錘部(51)は環状のヨーク部(34)の周方向に沿って延びるように形成されるので、ヨーク部(34)の磁路を確保しつつ、コア(32)全体の大きさを小さくできる。
【0011】
第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記動吸振器(50)は、前記ヨーク部(34)の外周又は内部に設けられる。
【0012】
第3の態様では、ヨーク部(34)の外周又は内部に設けられる動吸振器(50)によって、コア(32)の振動が低減される。
【0013】
第4の態様は、第1~第3のいずれか1つの態様において、前記コア(32)は、互いに積層される複数の電磁鋼板(M)によって構成され、前記複数の電磁鋼板(M)は、前記錘部(51)において互いに締結される。
【0014】
第4の態様では、コア(32)を構成する複数の電磁鋼板(M)が錘部(51)で互いに締結されるので、磁束が通らない部分に締結部が形成される。そのため、締結に起因する鉄損の増加を抑制できる。
【0015】
第5の態様は、第1~第4のいずれか1つの態様において、前記磁気回路は、回転軸(20)の軸心を中心に回転可能に構成されるロータ(40)と、該回転軸(20)の径方向において前記ロータ(40)と対向して配置されるステータ(31)とを備え、前記ステータ(31)は、前記コア(32)としてのステータコア(32)と、該ステータコア(32)に巻き回されるコイル(33)とを有し、前記動吸振器(50)は、前記径方向において前記ロータ(40)と反対側に配置される。
【0016】
第5の態様では、回転軸(20)の径方向においてロータ(40)と反対側に配置される動吸振器(50)によって、コア(32)の振動が低減される。
【0017】
第6の態様は、第1~第5のいずれか1つの態様において、前記磁気回路部品は、電動機(30)の一部を構成する。
【0018】
第6の態様では、電動機(30)の製品コストの増加を抑制しつつ、コア(32)の振動を低減できる。
【0019】
第7の態様は、第1~第5のいずれか1つの態様において、前記磁気回路部品は、磁気軸受の一部を構成する。
【0020】
第7の態様では、磁気軸受の製品コストの増加を抑制しつつ、コア(32)の振動を低減できる。
【0021】
第8の態様は、第1~第4のいずれか1つの態様において、前記磁気回路部品は、リアクトルの一部を構成する。
【0022】
第8の態様では、リアクトルの製品コストの増加を抑制しつつ、コア(32)の振動を低減できる。
【0023】
第9の態様は、第6の態様の磁気回路部品を備える電動機(30)と、前記電動機(30)によって駆動されるファンとを備える送風機である。
【0024】
第9の態様では、製品コストの増加を抑制しつつ振動を低減した送風機を提供できる。
【0025】
第10の態様は、第6又は第7の態様の磁気回路部品を備える圧縮機である。
【0026】
第10の態様では、製品コストの増加を抑制しつつ振動を低減した圧縮機を提供できる。
【0027】
第11の態様は、第10の態様の圧縮機(10)と、前記圧縮機(10)で圧縮された冷媒が流れる冷媒回路(R)とを備える冷凍装置である。
【0028】
第11の態様では、製品コストの増加を抑制しつつ振動を低減した冷凍装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、実施形態1に係る冷凍装置の概略の配管系統図である。
図2図2は、実施形態1に係る圧縮機の軸方向断面図である。
図3図3は、実施形態1に係る電動機の断面形状を模式的に示す軸方向に垂直な方向における断面図である。
図4図4は、図3の枠IVの拡大図である。
図5図5は、図4のVーV線矢視断面図である。
図6図6は、シミュレーションの結果を示すグラフである。
図7図7は、実施形態1の変形例1に係る要部の拡大図である。
図8図8は、実施形態1の変形例2に係る要部の拡大図である。
図9図9は、実施形態1の変形例3に係る要部の拡大図である。
図10図10は、実施形態1の変形例4に係る要部の拡大図である。
図11図11は、実施形態1の変形例5に係る要部の拡大図である。
図12図12は、実施形態1の変形例6に係る図5に相当する図である。
図13図13は、実施形態1の変形例7に係る図5に相当する図である。
図14図14は、実施形態1の変形例8に係る要部の拡大図である。
図15図15は、実施形態2に係る図3に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比または数を誇張または簡略化して表す場合がある。
【0031】
《実施形態1》
実施形態1について説明する。本開示の磁気回路部品(31)は、電動機(30)の一部を構成する。本実施形態の電動機(30)は、冷凍装置(1)の圧縮機(10)に設けられる。
【0032】
(1)冷凍装置の概要
図1に示すように、冷凍装置(1)は、圧縮機(10)を備える。冷凍装置(1)は、冷媒が充填された冷媒回路(R)を有する。冷媒回路(R)は、圧縮機(10)、放熱器(2)、減圧機構(3)、及び蒸発器(4)を有する。減圧機構(3)は、膨張弁である。冷媒回路(R)は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。
【0033】
冷凍サイクルでは、圧縮機(10)によって圧縮された冷媒が、放熱器(2)において空気に放熱する。放熱した冷媒は、減圧機構(3)によって減圧され、蒸発器(4)において蒸発する。蒸発した冷媒は、圧縮機(10)に吸入される。
【0034】
冷凍装置(1)は、空気調和装置である。空気調和装置は、冷房専用機、暖房専用機、あるいは冷房と暖房とを切り換える空気調和装置であってもよい。この場合、空気調和装置は、冷媒の循環方向を切り換える切換機構(例えば四方切換弁)を有する。冷凍装置(1)は、給湯器、チラーユニット、庫内の空気を冷却する冷却装置などであってもよい。冷却装置は、冷蔵庫、冷凍庫、コンテナなどの内部の空気を冷却する。減圧機構(3)は、電子膨張弁、感温式膨張弁、膨張機、またはキャピラリーチューブで構成されてもよい。
【0035】
(2)圧縮機
図2に示すように、圧縮機(10)は、ケーシング(11)と、電動機(30)と、駆動軸(20)と、圧縮機構(22)とを有する。圧縮機(10)は、ロータリ型の圧縮機である。厳密には、圧縮機(10)は揺動ピストン型の圧縮機である。圧縮機(10)は、スクロール型、スクリュー型、あるいはターボ型の圧縮機であってもよい。
【0036】
(2-1)ケーシング
ケーシング(11)は、電動機(30)、駆動軸(20)、及び圧縮機構(22)を収容する。ケーシング(11)は全密閉型の容器である。ケーシング(11)の内部は、圧縮機構(22)から吐出された高圧の冷媒で満たされる。
【0037】
ケーシング(11)は、金属材料で構成される。ケーシング(11)は、胴部(12)、底部(13)、及び頂部(14)を有する。胴部(12)は、金属製の円筒状の部材である。胴部(12)の軸方向の両端にはそれぞれ開口が形成される。本実施形態では、胴部(12)の軸方向が鉛直方向に対応する。底部(13)は、胴部(12)の下側の開口を閉塞する。頂部(14)は、胴部(12)の上側の開口を閉塞する。
【0038】
(2-2)電動機
図2及び図3に示す電動機(30)は、磁気回路の一例である。電動機(30)は、圧縮機構(22)の上方に配置される。電動機(30)は、インバータ装置によって運転周波数が制御される。言い換えると、圧縮機(10)は、運転周波数が可変なインバータ式である。
【0039】
図2に示すように、電動機(30)は、ステータ(31)と、ロータ(40)とを有する。ステータ(31)は、ケーシング(11)の胴部(12)に支持される。ステータ(31)は、本開示の磁気回路部品(31)に対応する。
【0040】
図3に示すように、ステータ(31)は、ステータコア(32)と、ステータコア(32)に巻き回されるコイル(33)と、動吸振器(50)とを有する。ステータコア(32)は、本開示のコアに対応する。電動機(30)は、コイル(33)に通電することにより、ロータ(40)に回転トルクを発生させる電磁装置である。
【0041】
ステータコア(32)は、軟磁性材料である電磁鋼板(M)が軸方向に互いに積層されて構成される。ステータコア(32)は、筒状に構成される。図3に示すように、ステータコア(32)は、環状のヨーク部(34)と、ヨーク部(34)の内周から径方向内方に延びる複数(本実施形態では、9つ)のティース部(35)とを有する。
【0042】
動吸振器(50)は、ステータコア(32)に設けられる。動吸振器(50)は、ステータコア(32)の振動を低減するためのものである。ステータ(31)の詳細については、後述する。
【0043】
ロータ(40)は、ステータコア(32)の内側に配置される。ロータ(40)の軸心には駆動軸(20)が固定される。言い換えると、ステータコア(32)は、駆動軸(20)の径方向においてロータ(40)と対向して配置される。ロータ(40)の内部には、複数の永久磁石(42)が埋め込まれる。ステータ(31)のティース部(35)とロータ(40)との間には、軸方向視において環状の空隙(いわゆる、エアギャップ)が形成される。
【0044】
(2-3)駆動軸
駆動軸(20)は、ケーシング(11)の軸心に沿って鉛直方向に延びる。駆動軸(20)は、電動機(30)によって回転駆動される。駆動軸(20)は、軸受け(21,29)によって回転可能に支持される。駆動軸(20)は、本開示の回転軸に対応する。
【0045】
(2-4)圧縮機構
圧縮機構(22)は、シリンダ(23)と、シリンダ(23)の内部に設けられるピストン(24)とを有する。シリンダ(23)の内周面とピストン(24)の外周面との間にシリンダ室(25)が形成される。シリンダ室(25)では、駆動軸(20)によって駆動されるピストン(24)により流体が圧縮される。
【0046】
(2-5)吸入管及び吐出管
圧縮機(10)は、吸入管(26)及び吐出管(27)を有する。吸入管(26)は、胴部(12)を径方向に貫通し、シリンダ室(25)と連通する。冷媒回路(R)の低圧冷媒が、吸入管(26)を介してシリンダ室(25)に吸い込まれる。吐出管(27)は、頂部(14)を軸方向に貫通し、ケーシング(11)の内部空間と連通する。圧縮機構(22)で圧縮された冷媒は、電動機(30)のエアギャップを流れた後、吐出管(27)より冷媒回路(R)へ送られる。
【0047】
(3)ステータの詳細
ステータ(31)の詳細について、図3図5を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、特に言及しない限り、「軸方向」、「周方向」、及び「径方向」は、ステータ(31)のヨーク部(34)における軸方向、周方向、及び径方向をそれぞれ意味する。本実施形態では、ヨーク部(34)の軸方向は、図2に示すように駆動軸(20)の軸方向に相当する。
【0048】
ステータ(31)は、上述のように、ステータコア(32)と、コイル(33)と、動吸振器(50)とを有する。また、ステータコア(32)は、環状のヨーク部(34)と、複数のティース部(35)とを有する。
【0049】
ティース部(35)は、ヨーク部(34)の内周から径方向内方に延びる。各ティース部(35)には、例えば集中巻方式によってコイル(33)が巻き回されている。互いに隣接するティース部(35)の間には、コイル(33)を収容するための空間であるコイル用スロット(36)が形成される。
【0050】
本実施形態では、ステータコア(32)を構成する複数の電磁鋼板(M)は、ヨーク部(34)において互いに締結される。本実施形態では、電磁鋼板(M)同士は、カシメによって締結される。なお、電磁鋼板(M)を締結する手段としては、カシメ以外に、溶接、接着などであってもよい。
【0051】
(3-1)支持部
図3に示すように、ステータコア(32)は、複数(本実施形態では、9つ)の支持部(37)を有する。支持部(37)によって、ステータコア(32)は、ケーシング(11)の胴部(12)に支持される。各支持部(37)は、周方向に所定の間隔を空けて互いに配置される。各支持部(37)は、ヨーク部(34)の外周から径方向外方に突出している。各支持部(37)は、胴部(12)の内周面に接触するように嵌め入れられて、固定されている。これにより、ステータコア(32)がケーシング(11)に保持される。
【0052】
(3-2)動吸振器
ステータ(31)は、複数(本実施形態では、18)の動吸振器(50)を有する。各動吸振器(50)は、ヨーク部(34)の外周に設けられる。各動吸振器(50)は、胴部(12)の内周面とヨーク部(34)の外周面との間に形成される僅かな隙間(G)に配置される。各動吸振器(50)は、径方向においてロータ(40)と反対側に配置される。
【0053】
隣り合う動吸振器(50)は、一つの支持部(37)を挟んで周方向の両側に配置される。なお、隣り合う動吸振器(50)は、一つの支持部(37)を挟むことなく、隣接してもよい。各動吸振器(50)は、コイル用スロット(36)の径方向外方に配置される。また、図5に示すように、各動吸振器(50)は、ステータコア(32)における軸方向の一端から他端に亘って形成される。
【0054】
図4に示すように、動吸振器(50)は、軸方向視でL字状に構成される。動吸振器(50)は、錘部(51)と、接続部(52)とを有する。錘部(51)は、ヨーク部(34)の周方向に沿って延びる。錘部(51)は、略直方体状に形成される。錘部(51)は、軸方向視で、周方向を長辺とし、径方向を短辺とする略矩形状に形成される。錘部(51)は、胴部(12)の内周面と接触しない。また、錘部(51)は、ヨーク部(34)の外周面とも接触しない。
【0055】
接続部(52)は、錘部(51)とヨーク部(34)とを接続する。詳細には、接続部(52)は、ヨーク部(34)の外周と、錘部(51)の周方向一端部とを接続する。接続部(52)は、径方向に延びる。接続部(52)は、略直方体状に形成される。接続部(52)は、弾性変形する。図4に示すように、接続部(52)の周方向の長さW1は、錘部(51)の周方向の長さW2よりも極めて小さい。したがって、接続部(52)は、錘部(51)よりも弾性変形しやすい。
【0056】
動吸振器(50)は、ステータコア(32)のヨーク部(34)が固有振動数で振動したとき、該ヨーク部(34)の振動と異なる位相で振動することにより、ステータコア(32)の振動を低減する。
【0057】
なお、ここでいう「ヨーク部(34)の振動と異なる位相で振動する」とは、ヨーク部(34)の固有振動数と異なる周波数で振動することを含む。この場合、ヨーク部(34)の固有振動と動吸振器(50)の振動との位相の差は、時間と共に変化する。
【0058】
また、「ヨーク部(34)の振動と異なる位相で振動する」とは、ヨーク部(34)の固有振動数と同じ周波数且つヨーク部(34)の固有振動と位相の異なる位相で振動することを含む。この場合、例えば、ヨーク部(34)の固有振動と動吸振器(50)の振動の位相の差が90度から270度のとき、ヨーク部(34)の固有振動と動吸振器(50)の振動が互いに打ち消し合うように振動することで、ステータコア(32)の振動が低減される。例えば、ヨーク部(34)の固有振動と動吸振器(50)の振動の位相の差が0度から90度、又は270度から360度のとき、ヨーク部(34)の固有振動と動吸振器(50)の振動とのピークがずれることで、ステータコア(32)の振動のピークが低減される。
【0059】
ロータ(40)が回転すると、ロータ(40)とステータ(31)との間に磁気吸引力が発生する。この力を電磁力という。電磁力がステータコア(32)に作用することにより、ステータコア(32)が振動する。
【0060】
本実施形態の動吸振器(50)では、ステータコア(32)が振動すると、接続部(52)が節となり、錘部(51)の先端部(周方向他端部)が腹となって振動する。このように、ステータコア(32)の振動に連動して錘部(51)が振動することにより、電磁力に起因するステータコア(32)の径方向の振動を低減できる。
【0061】
ここで、本開示の動吸振器(50)は、片持ち梁の構造とみなすことができる。片持ち梁の固有振動数fは、以下の式[数1]で表すことができる。
【0062】
【数1】
【0063】
上記式[数1]において、mは梁先端に作用する質量(kg)であり、kは片持ち梁の剛性(N/m)である。なお、片持ち梁の剛性kは、以下の式[数2]で表すことができる。
【0064】
【数2】
【0065】
上記式[数2]において、Eはヤング率であり、Iは断面二次モーメントであり、Lは梁の長さである。
【0066】
上記式[数1]によれば、例えば、接続部(52)の周方向の長さW1を大きくすると、接続部(52)の断面積が増加するので断面二次モーメントIが増加する。その結果、接続部(52)の剛性kが増加することで、動吸振器(50)の固有振動数fを大きくできる。一方、例えば、錘部(51)の周方向の長さW2を小さくすると、錘部(51)の質量mが小さくなる。そのため、この場合の動吸振器(50)の固有振動数fを大きくできる。このように、本実施形態の動吸振器(50)では、接続部(52)の周方向の長さW1及び錘部(51)の周方向の長さW2を変更することにより、動吸振器(50)の固有振動数fを所望の固有振動数に設定できる。
【0067】
動吸振器(50)は、ステータコア(32)と一体に形成される。具体的には、動吸振器(50)は、ステータコア(32)と同じ軟磁性材料で構成され、ステータコア(32)を構成する電磁鋼板(M)によって構成される。動吸振器(50)は、プレス加工等により、ステータコア(32)に相当する部分と動吸振器(50)に相当する部分とが一体となった形状の金型を用いて電磁鋼板(M)を打ち抜き、該打ち抜いた電磁鋼板(M)を積層することにより形成される。言い換えると、ステータコア(32)を形成する過程において、同時に動吸振器(50)を形成できる。
【0068】
上記によれば、動吸振器(50)がステータコア(32)と一体に形成されるので、ステータ(31)に新たな部材を追加することなく、動吸振器(50)を設けることができる。加えて、ステータコア(32)を製造する工程とは別に動吸振器(50)を組み付ける工程を必要としないので、組み付け工程の増加を抑制できる。したがって、ステータ(31)の製造コストの増加を抑制しつつ、ステータコア(32)で発生する振動を低減できる。
【0069】
また、上記構造によれば、ステータコア(32)に動吸振器(50)を組み付ける工程を必要としないため、動吸振器(50)の組み付け精度のばらつきが生じない。そのため、ステータ(31)ごとに動吸振器(50)の性能にばらつきが生じることを抑制できる。
【0070】
加えて、本実施形態の動吸振器(50)は、ケーシング(11)の内周面とステータ(31)の外周面との間の僅かな隙間に配置される。このため、動吸振器(50)を設けるために、例えば、電動機(30)自体を大きくする必要や、ステータコア(32)を小さくする必要がない。そのため、本実施形態では、電動機(30)としての性能を維持しつつ、ステータコア(32)で発生する振動を低減できる。
【0071】
(4)シミュレーション
本実施形態の動吸振器(50)の振動低減効果を確認するために行ったシミュレーションについて説明する。本シミュレーションは、6極9スロットモータを対象とする。本シミュレーションでは、ステータ(31)の固有振動数(共振周波数)の加振力をステータ(31)に印加した場合におけるステータコア(32)の外周面の加速度を調べた。
【0072】
図6は、本シミュレーションから得られたステータコア(32)の外周面における周波数-加速度を示すグラフである。図中の実線は、動吸振器を備えない従来のステータに加振力を加えた場合の結果である。図中の破線は、本実施形態の動吸振器(50)を備えるステータ(31)に加振力を加えた場合の結果である。
【0073】
同図における3200Hz~3300Hzでは、従来のステータに比べて、本実施形態のステータ(31)は、加速度のピーク値が約98%低減していることが確認された。これは、動吸振器(50)がステータコア(32)の振動に対して逆位相で振動することにより、ステータコア(32)の振動を低減できたと考えられる。この結果から、本実施形態の動吸振器(50)によって、ステータコア(32)の振動を低減したステータ(31)を実現できることが確認された。
【0074】
(5)特徴
(5-1)
本実施形態のステータ(31)では、動吸振器(50)がステータコア(32)と一体に形成される。そのため、新たな部材を追加することなく、ステータコア(32)の振動を低減できる。加えて、動吸振器(50)がステータコア(32)と別部材で構成される場合に比べて、ステータコア(32)に動吸振器(50)を組み付ける作業も生じない。これにより、ステータ(31)の製品コストの増加を抑制しつつ、ステータコア(32)で発生する振動を低減できる。
【0075】
(5-2)
本実施形態の錘部(51)は、環状のヨーク部(34)の周方向に沿って延びる。そのため、ヨーク部(34)の磁路を確保しつつ、ステータコア(32)全体の大きさを小さくできる。
【0076】
(5-3)
本実施形態の動吸振器(50)は、ヨーク部(34)の外周に設けられる。これにより、ヨーク部(34)の外周においてステータコア(32)の振動が低減される。また、動吸振器(50)がヨーク部(34)の外周に設けられるので、動吸振器(50)を簡単に形成できる。
【0077】
(5-4)
本実施形態の動吸振器(50)は、径方向においてロータ(40)と反対側に配置される。これにより、径方向におけるロータ(40)と反対側の部分において、ステータコア(32)の振動が低減される。
【0078】
(5-5)
本実施形態のステータ(31)は、電動機(30)の一部を構成する。そのため、電動機(30)の製品コストの増加を抑制しつつ、ステータコア(32)の振動を低減できる。
【0079】
(5-6)
本実施形態の動吸振器(50)は、ステータコア(32)において、軸方向の一端から他端に亘って配置される。これにより、軸方向に生じる振動を低減できる。軸方向に生じる振動とは、例えば、駆動軸(20)の中心軸ずれや、偏心時における電磁力のアンバランスなどに起因する振動が含まれる。
【0080】
(5-7)
本実施形態の動吸振器(50)は、L字状に形成される。これによれば、錘部(51)の周方向の長さW2を比較的自由に設定しやすいので、動吸振器(50)の固有振動数を所望の固有振動数に設定しやすい。
【0081】
(5-8)
本実施形態の動吸振器(50)は、コイル用スロット(36)の径方向外方に配置される。ここで、ステータコア(32)において、コイル用スロット(36)の径方向外方に位置する部分は、ティース部(35)の径方向外方に位置する部分に比べて振動しやすい。そのため、本実施形態では、動吸振器(50)がコイル用スロット(36)の径方向外方に配置されることにより、ステータコア(32)の振動をより低減できる。
【0082】
(6)変形例
上記実施形態については以下のような変形例としてもよい。なお、以下の説明では、原則として上記実施形態と異なる点について説明する。
【0083】
(6-1)変形例1:錘部の形状
図7に示すように、本実施形態の動吸振器(50)では、錘部(51)は、軸方向視において、径方向の長さが周方向一端から他端に亘って同じでなくてもよい。本変形例においても上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0084】
具体的には、錘部(51)は、径方向の長さが異なる第1錘部(51a)と第2錘部(51b)を有する。第1錘部(51a)は、錘部(51)において接続部(52)寄りの部分である。第2錘部(51b)は、錘部(51)において接続部(52)から離れた部分である。第1錘部(51a)と第2錘部(51b)は連続している。接続部(52)は、第1錘部(51a)の周方向一端部に接続される。第2錘部(51b)の径方向の長さD2は、第1錘部(51a)の径方向の長さD1よりも長い(D1<D2)。言い換えると、錘部(51)は、その先端部が中途部分よりも重くなるように構成されている。
【0085】
本変形例では、例えば、図7(a)に示すように、錘部(51)は、径方向において、第1錘部(51a)の外縁部の位置と第2錘部(51b)の外縁部の位置とが同じになるように構成されてもよい。この場合、第2錘部(51b)の内縁部の位置は、第1錘部(51a)の内縁部の位置よりも径方向内方に位置する。
【0086】
また、本変形例では、図7(b)に示すように、錘部(51)は、径方向において、第1錘部(51a)の外縁部の位置と第2錘部(51b)の外縁部の位置とが異なるように構成されてもよい。図7(b)では、第2錘部(51b)の外縁部は、第1錘部(51a)の外縁部よりも径方向外方に位置する。この場合、第2錘部(51b)の内縁部の位置は、第1錘部(51a)の内縁部の位置よりも径方向内方に位置する。
【0087】
(6-2)変形例2:錘部の形状
図8に示すように、本実施形態の動吸振器(50)は、軸方向視でI字状に構成されてもよい。この場合、接続部(52)は、ステータコア(32)の支持部(37)に設けられる。接続部(52)は、支持部(37)の側縁部と錘部(51)の周方向一端部とを接続する。接続部(52)は、周方向に延びる。本変形例においても上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0088】
本変形例では、例えば図8(a)に示すように、錘部(51)は、軸方向視において、径方向の長さDが周方向の一端から他端に亘って同じに構成されてもよい。
【0089】
また、本変形例では、図8(b)及び図8(c)に示すように、上記変形例1と同様に、錘部(51)が、径方向の長さが異なる第1錘部(51a)と第2錘部(51b)を有してもよい。この場合、図8(b)に示すように、錘部(51)は、径方向において、第1錘部(51a)の外縁部の位置と第2錘部(51b)の外縁部の位置とが同じになるように構成されてもよい。また、図8(c)に示すように、錘部(51)は、径方向において、第1錘部(51a)の外縁部の位置と第2錘部(51b)の外縁部の位置とが異なるように構成されてもよい。
【0090】
(6-3)変形例3:錘部の形状
図9に示すように、本実施形態の動吸振器(50)は、軸方向視でT字状に構成されてもよい。この場合、接続部(52)は、ヨーク部(34)の外周面と、錘部(51)の周方向中央部とを接続する。本変形例においても上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0091】
本変形例では、例えば図9(a)に示すように、錘部(51)は、軸方向視において、径方向の長さDが周方向の一端から他端に亘って同じに構成されてもよい。
【0092】
また、本変形例では、図9(b)及び図9(c)に示すように、上記変形例1と同様に、錘部(51)は、径方向の長さが異なる第1錘部(51a)と第2錘部(51b)を有してもよい。本変形例では、錘部(51)は、一つの第1錘部(51a)と二つの第2錘部(51b)とを有する。第1錘部(51a)は、錘部(51)において中央に形成される部分である。各第2錘部(51b)は、第1錘部(51a)の周方向両端部のそれぞれに形成される部分である。第2錘部(51b)の径方向の長さD2は、第1錘部(51a)の径方向の長さD1よりも長い(D1<D2)。言い換えると、錘部(51)は、その周方向両側の先端部が中途部分よりも重くなるように構成されている。
【0093】
本変形例では、図9(b)に示すように、錘部(51)は、径方向において、第1錘部(51a)の外縁部の位置と第2錘部(51b)の外縁部の位置とが同じになるように構成されてもよい。また、図9(c)に示すように、錘部(51)は、径方向において、第1錘部(51a)の外縁部の位置と第2錘部(51b)の外縁部の位置とが異なるように構成されてもよい。
【0094】
(6-4)変形例4:動吸振器の配置
図10に示すように、動吸振器(50)は、ティース部(35)の径方向外方に配置されてもよい。図10では、隣り合う動吸振器(50)は、一つの支持部(37)を挟むことなく隣接しているが、本変形例では、隣り合う動吸振器(50)は、一つの支持部(37)を挟んで周方向の両側に配置されてもよい。本変形例においても、上記実施形態と同様に、製品コストの増加を抑制しつつ、ステータコア(32)で発生する振動を低減できる。
【0095】
(6-5)変形例5:動吸振器の配置
図11に示すように、動吸振器(50)は、ヨーク部(34)の内部に設けられてもよい。具体的には、ヨーク部(34)の内部に比較的小さな空間を形成し、該空間に動吸振器(50)が収容される。本変形例においても、上記実施形態と同様に、製品コストの増加を抑制しつつ、ステータコア(32)で発生する振動を低減できる。なお、図11では、軸方向視でT字状に構成された動吸振器(50)を例として図示したが、上記実施形態及び変形例1、2のように軸方向視でL字状又はI字状に構成される動吸振器(50)であってもよい。
【0096】
(6-6)変形例6:動吸振器の軸方向の配置
図12に示すように、動吸振器(50)は、ステータコア(32)における軸方向の一端から他端に亘って形成されなくてもよい。この場合、動吸振器(50)の軸方向の長さは、ステータコア(32)の軸方向の長さよりも短い。本変形例においても、上記実施形態と同様に、製品コストの増加を抑制しつつ、ステータコア(32)で発生する振動を低減できる。
【0097】
本変形例では、例えば、図12(a)に示すように、軸方向において一つの動吸振器(50)が、軸方向の中央部に配置されてもよい。この場合、ステータコア(32)を構成する電磁鋼板(M)のうち、上側及び下側の電磁鋼板(M)には、動吸振器(50)が形成されていない。
【0098】
また、本変形例では、図12(b)に示すように、軸方向において複数(本変形例では、2つ)の動吸振器(50)が配置されてもよい。言い換えると、動吸振器(50)は、軸方向に連続して形成される必要はない。図12(b)では、ステータコア(32)を構成する電磁鋼板(M)のうち、上側及び下側の電磁鋼板(M)に動吸振器(50)が形成されている。
【0099】
本変形例によれば、錘部(51)の軸方向の長さを変更することにより、錘部(51)の質量が変更される。これにより、動吸振器(50)の固有振動数を所望の固有振動数に変更できる。
【0100】
(6-7)変形例7:動吸振器の軸方向の形状
図13に示すように、動吸振器(50)は、径方向視において、T字状に構成されてもよい。具体的には、本変形例の動吸振器(50)では、錘部(51)の軸方向の長さが、接続部(52)の錘部(51)の長さよりも長い。
【0101】
本変形例においても、上記実施形態と同様に、製品コストの増加を抑制しつつ、ステータコア(32)で発生する振動を低減できる。加えて、上記変形例6と同様に、錘部(51)の軸方向の長さを変更することにより、錘部(51)の質量が変更される。これにより、動吸振器(50)の固有振動数を所望の固有振動数に変更できる。
【0102】
(6-8)変形例8:電磁鋼板の締結位置
図14に示すように、ステータコア(32)を構成する複数の電磁鋼板(M)は、動吸振器(50)の錘部(51)において互いに締結される。本変形例では、電磁鋼板(M)同士は、カシメによって締結される。例えば、図14に破線で示すように、錘部(51)の中央部分にカシメによって形成される締結部(38)が設けられる。
【0103】
本変形例によれば、ステータコア(32)を構成する複数の電磁鋼板(M)が、錘部(51)で互いに締結されるので、磁束が通らない部分に締結部(38)が形成される。そのため、締結に起因する鉄損の増加を抑制できる。なお、電磁鋼板(M)を締結する手段としては、溶接、接着などである場合においても、錘部(51)において複数の電磁鋼板(M)を締結可能である。
【0104】
《実施形態2》
実施形態2について説明する。実施形態1の電動機(30)は、ステータ(31)の内側にロータ(40)が配置されるインナーロータ型であった。これに対し、本実施形態の電動機(30)は、ステータ(31)の外側にロータ(40)が配置されるアウターロータ型の電動機である。ここでは、本実施形態の電動機(30)について、実施形態1の電動機(30)と異なる点を説明する。
【0105】
図15に示すように、ステータコア(32)は、環状のヨーク部(34)と、該ヨーク部(34)から径方向外方に延びるティース部(35)とを有する。ティース部(35)には、コイル(33)が備えられている。ステータコア(32)は、複数(本実施形態では、4つ)の支持部(37)を更に有する。支持部(37)によって、ステータコア(32)は、軸(28)に支持される。各支持部(37)は、ヨーク部(34)の内周から径方向内方に突出している。各支持部(37)は、軸(28)の外周面に接触して固定される。
【0106】
ステータ(31)は、複数(本実施形態では、8つ)の動吸振器(50)を有する。各動吸振器(50)は、ヨーク部(34)の内周に設けられる。各動吸振器(50)は、ヨーク部(34)の内周面と軸(28)の外周面との間に形成される僅かな隙間に配置される。各動吸振器(50)は、径方向においてロータ(40)と反対側に配置される。各動吸振器(50)の構成は、実施形態1と同様である。
【0107】
本実施形態の動吸振器(50)においても、実施形態1と同様に、ステータコア(32)のヨーク部(34)が固有振動数で振動したとき、該ヨーク部(34)の振動と異なる位相で振動する。これにより、ステータコア(32)の振動を低減する。このように、ステータコア(32)の振動に連動して錘部(51)が振動することによって、電磁力に起因するステータコア(32)の径方向の振動を低減できる。
【0108】
また、本実施形態の動吸振器(50)は、ステータコア(32)と一体に形成される。そのため、ステータ(31)に新たな部材を追加することなく、動吸振器(50)を設けることができる。加えて、ステータコア(32)を製造する工程とは別に動吸振器(50)を組み付ける工程を必要としないので、組み付け工程の増加を抑制できる。したがって、ステータ(31)の製造コストの増加を抑制しつつ、ステータコア(32)で発生する振動を低減できる。
【0109】
また、上記構造によれば、ステータコア(32)に動吸振器(50)を組み付ける工程を必要としないため、動吸振器(50)の組み付け精度のばらつきが生じない。そのため、ステータ(31)ごとに動吸振器(50)の性能にばらつきが生じることを抑制できる。なお、本実施形態においても、実施形態1の変形例1~8を適用できる。
【0110】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0111】
上記各実施形態の電動機(30)は、圧縮機(10)以外に適用されてもよい。例えば、上記各実施形態の電動機(30)は、送風機に適用されてもよい。送風機は、電動機(30)と該電動機(30)によって駆動されるファンとを備える。ファンは、特定のファンには限定されず、例えばシロッコファンやプロペラファンなどであってもよい。
【0112】
上記各実施形態の構造は、磁気回路としての他の電磁装置に採用されてもよい。具体的には、他の電磁装置は、コイルに通電することでロータに浮上力が発生する磁気軸受や、コイルに通電することで電流パルスを平滑化するリアクトルを含む。これにより、上記実施形態と同様に、電磁装置の製品コストの増加を抑制しつつ、コア(32)の振動を低減できる。
【0113】
以上、実施形態及び変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態に係る要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0114】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0115】
以上説明したように、本開示は、磁気回路部品、送風機、圧縮機、及び冷凍装置について有用である。
【符号の説明】
【0116】
1 冷凍装置
10 圧縮機
20 駆動軸(回転軸)
30 電動機(磁気回路)
31 ステータ(磁気回路部品)
32 ステータコア(コア)
33 コイル
34 ヨーク部
40 ロータ
50 動吸振器
51 錘部
52 接続部
M 電磁鋼板
R 冷媒回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15