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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】二次電池及び当該二次電池を備える装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/133 20100101AFI20250328BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20250328BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20250328BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20250328BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20250328BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20250328BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20250328BHJP
   C01B 32/21 20170101ALN20250328BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/131
H01M4/36 D
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/58
H01M4/587
C01B32/21
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022532164
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(86)【国際出願番号】 CN2020081688
(87)【国際公開番号】W WO2021189423
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-05-30
【審判番号】
【審判請求日】2024-03-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】13/F., LKF29, 29 Wyndham Street, Central, Hong Kong, China
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】馬建軍
(72)【発明者】
【氏名】沈睿
(72)【発明者】
【氏名】何立兵
(72)【発明者】
【氏名】陳雷
(72)【発明者】
【氏名】朱宝健
【合議体】
【審判長】井上 信一
【審判官】畑中 博幸
【審判官】山本 章裕
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106252569号明細書(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109888368号明細書(CN,A)
【文献】特開2005-259689号公報(JP,A)
【文献】特開2016-152077号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 4/64-4/84
C01B 32/00-32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極シート及び負極シートを備え、前記正極シートが正極集電体と前記正極集電体の少なくとも一つの表面に配置され且つ正極活性材料を有する正極フィルムシートとを備え、前記負極シートが負極集電体と前記負極集電体の少なくとも一つの表面に配置され且つ負極活性材料を有する負極フィルムシートとを備える二次電池であって、
前記正極活性材料は、層状リチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含み、ここで、その改質化合物とは、層状リチウム遷移金属酸化物がドーピング改質及び/又は表面被覆改質を行われるものであり、
前記負極活性材料は、人造黒鉛を有する第1の材料と天然黒鉛を有する第2の材料とを含み、
前記負極フィルムシートにおける前記負極集電体に背向する表面の平滑度 Lは、40≦L≦50を満たし、前記平滑度 Lは明細書に記載の方法で測定される、
二次電池。
【請求項2】
前記負極活性材料における前記天然黒鉛の質量占有率は、10%~50%である
請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
30000N 圧力下での前記負極活性材料の粉体圧縮密度は、1.7g/cm3~1.9g/cm3ある
請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記負極活性材料の黒鉛化度は、92%~96%であり、前記黒鉛化度は明細書に記載の方法で測定される、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記負極活性材料の体積平均粒径 Dv50は、11μm~15μmである
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記負極フィルムシートの圧縮密度は、1.6g/cm3~1.8g/cm3であり、及び/又は、
前記負極フィルムシートの面密度は、10mg/cm2~13mg/cm2ある
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
正極シート及び負極シートを備え、前記正極シートが正極集電体と前記正極集電体の少なくとも一つの表面に配置され且つ正極活性材料を有する正極フィルムシートとを備え、前記負極シートが負極集電体と前記負極集電体の少なくとも一つの表面に配置され且つ負極活性材料を有する負極フィルムシートとを備える二次電池であって、
前記正極活性材料は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含み、ここで、改質化合物とは、化合物がドーピング改質及び/又は表面被覆改質を行われるものであり、
前記負極活性材料は、人造黒鉛を有する第1の材料と天然黒鉛を有する第2の材料とを含み、
前記負極フィルムシートにおける前記負極集電体に背向する表面の平滑度 Lは、45≦L≦55を満たし、前記平滑度 Lは明細書に記載の方法で測定される、
二次電池。
【請求項8】
前記負極活性材料における前記天然黒鉛の質量占有率は、10%~50%である
請求項7に記載の二次電池。
【請求項9】
30000N 圧力下での前記負極活性材料の粉体圧縮密度は、1.8g/cm3~1.9g/cm3ある
請求項7又は8に記載の二次電池。
【請求項10】
前記負極活性材料の黒鉛化度は、92%~95%であり、前記黒鉛化度は明細書に記載の方法で測定される、
請求項7乃至9のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項11】
前記負極活性材料の体積平均粒径Dv50は、15μm~19μmである
請求項7乃至10のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項12】
前記負極フィルムシートの圧縮密度は、1.5g/cm3~1.7g/cm3であり、及び/又は、
前記負極フィルムシートの面密度は、7mg/cm2~10mg/cm2ある
請求項7乃至11のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の二次電池を備える、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、二次電池の技術分野に属し、特に、二次電池及び当該二次電池を備える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、動作性能が信頼でき、汚染がなく、メモリ効果がない等の利点を有するため、広く応用される。例えば、環境保護問題が日増しに重視されることに伴い、新エネルギー自動車が日増しに普及し、動力型二次電池の需要は爆発的な増加を呈する。しかしながら、二次電池の応用範囲がますます広くなるにつれて、二次電池の低温電力性能及びエネルギー密度に対していずれも高い要求を提起する。二次電池の低温電力性能が低いため、その低温環境での使用に影響を与える。エネルギー密度は、電池の航続性能に影響を与え、即ち一回充電した後の使用時間に影響を及ぼす。したがって、如何に二次電池が高いエネルギー密度を有する前提で低温電力性能を向上させるかは、早急に解決する必要がある技術的課題となっている。
【発明の概要】
【0003】
本願の第1の態様は、正極シート及び負極シートを備え、前記正極シートが正極集電体と前記正極集電体の少なくとも一つの表面に配置され且つ正極活性材料を有する正極フィルムシートとを備え、前記負極シートが負極集電体と前記負極集電体の少なくとも一つの表面に配置され且つ負極活性材料を有する負極フィルムシートとを備える二次電池を提供し、そのうち、前記正極活性材料は、層状リチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含み、前記負極活性材料は、人造黒鉛を有する第1の材料と天然黒鉛を有する第2の材料とを含み、前記負極フィルムシートにおける前記負極集電体に背向する表面の平滑度 Lは、40≦L≦50を満たし、好ましくは、43≦L≦48を満たす。
【0004】
本願の第2の態様は、正極シート及び負極シートを備え、前記正極シートが正極集電体と前記正極集電体の少なくとも一つの表面に配置され且つ正極活性材料を有する正極フィルムシートとを備え、前記負極シートが負極集電体と前記負極集電体の少なくとも一つの表面に配置され且つ負極活性材料を有する負極フィルムシートとを備える二次電池を提供し、そのうち、前記正極活性材料は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含み、前記負極活性材料は、人造黒鉛を有する第1の材料と天然黒鉛を有する第2の材料とを含み、前記負極フィルムシートにおける前記負極集電体に背向する表面の平滑度 Lは、45≦L≦55を満たし、好ましくは、48≦L≦52を満たす。
【0005】
本願の第3の態様は、本願の第1の態様に係る二次電池を備える装置を提供する。
【0006】
驚くべきことに、本願の二次電池において、正極シートが特定の正極活性材料を使用し、負極シートの負極活性材料が人造黒鉛及び天然黒鉛を同時に有し、負極フィルムシートにおける負極集電体に背向する表面の平滑度を特定の範囲内に制御することにより、負極シートが高いエネルギー密度を有すると同時に、負極シートの活性イオン輸送性能を効果的に向上させることができるため、二次電池が高いエネルギー密度を有する前提で、良好な低温電力性能を有するようにすることができることを見出した。より好ましくは、二次電池は、低い高温サイクル膨張及び高い高温サイクル容量維持率を同時に有することもできる。本願の装置は、本願に係る二次電池を備えるため、少なくとも前記二次電池と同じ利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
以下、本願の実施例の技術的解決手段をより明瞭に説明するために、本願の実施例に必要な図面を簡単に紹介し、当然のことながら、以下で説明する図面は本願の一部の実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的労働をしない前提で、さらに図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【0008】
図1】二次電池の一実施形態の模式図である。
図2図1の分解図である。
図3】電池モジュールの一実施形態の模式図である。
図4】電池パックの一実施形態の模式図である。
図5図4の分解図である。
図6】二次電池が電源として用いられる装置の一実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願の発明目的、技術的解決手段及び有益な技術的効果をより明確にするために、実施例と組み合わせて本願を詳細に説明する。理解すべきことは、本明細書に記載の実施例は、単に本願を解釈するためのものであり、本願を限定するためのものではない。
【0010】
簡単のために、本明細書ではいくつかの数値範囲のみを明確に開示している。ただし、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成してもよく、任意の下限は、他の下限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成してもよく、同様に、任意の上限は、任意の他の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成してもよい。また、明確に記載されていないが、範囲の端点間の各点又は単一の数値はその範囲内に含まれる。したがって、各点又は単一の数値は、それ自体の下限又は上限として、任意の他の点又は単一の数値と組み合わせて、又は他の下限又は上限と組み合わせて、明確に記載されていない範囲を形成してもよい。
【0011】
本明細書の記載において、特に説明しない限り、「以上」及び「以下」は、対象となる数字を含み、「1種類又は複数種類」のうち「複数種類」は、2種類又は2種類以上を意味することに留意すべきである。
【0012】
本願の上記発明の概要は、本願に開示の各実施形態又は各実現形態を説明することを意図するものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示して説明する。本願全体を通して、様々な組み合わせの形で使用できる一連の実施例によってガイダンスが提供される。各実施例において、列挙は、代表的なグループとしてのみ使用され、網羅的であると解釈されてはいけない。
二次電池
【0013】
本願の第1の態様は、二次電池を提供する。当該二次電池は、正極シート、負極シート及び電解質を含む。電池の充放電過程において、活性イオンは、正極シートと負極シートの間で、挿入と脱離を往復する。電解質は、正極シートと負極シートの間で、イオンを伝導する作用を果たす。
[正極シート]
【0014】
正極シートは、正極集電体と前記正極集電体の少なくとも一つの表面に配置される正極フィルムシートとを備える。例として、正極集電体は、その厚さ方向において対向する二つの表面を有し、正極フィルムシートは、正極集電体の前記二つの表面のうちの任意の一つ又は両者に積層される。
【0015】
正極集電体は、良好な導電性及び機械的強度を有する材質を用いて、導電と集電の作用を果たすことができる。一部の実施例において、正極集電体は、アルミニウム箔を用いることができる。
【0016】
正極フィルムシートは、正極活性材料を有する。正極活性材料は、本分野で周知の二次電池用正極活性材料を用いることができる。一部の実施例において、正極活性材料は、層状リチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、及び上記材料の改質化合物等のうちの1種類又は複数種類を含み得る。
【0017】
「改質化合物」における「改質」とは、材料に対するドーピング改質及び/又は表面被覆改質であってもよい。
【0018】
一部の実施例において、正極活性材料は、層状リチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含む。具体的な例として、正極活性材料は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含むが、これらに限定されない。好ましくは、正極活性材料は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含む。
【0019】
一部の実施例において、正極活性材料は、LiNiCoM’及び少なくとも一部の表面に被覆層を有するLiNiCoM’のうちの1種類又は複数種類を含む。そのうち、0.8≦a≦1.2、0.5≦b<1、0<c<1、0<d<1、0≦e≦0.1、1≦f≦2、0≦g≦1であり、Mは、Mn及びAlのうちの1種類又は複数種類から選択され、M’は、Zr、Al、Zn、Cu、Cr、Mg、Fe、V、Ti及びBのうちの1種類又は複数種類から選択され、好ましくは、Zr、Al、Zn及びBのうちの1種類又は複数種類を含み、Aは、N、F、S及びClのうちの1種類又は複数種類から選択される。
【0020】
一部の実施例において、Mは、Mnから選択され、M’は、Zr、Al、Zn、Cu、Cr、Mg、Fe、V、Ti及びBのうちの1種類又は複数種類から選択され、好ましくは、Zr、Al、Zn及びBのうちの1種類又は複数種類から選択される。若しくは、Mは、Alから選択され、M’は、Zr、Zn、Cu、Cr、Mg、Fe、V、Ti及びBのうちの1種類又は複数種類から選択され、好ましくは、Zr、Zn及Bのうちの1種類又は複数種類から選択される。
【0021】
正極活性材料は、高ニッケル三元正極活性材料を含むことにより、より高い1グラム当たりの容量を有するため、電池のエネルギー密度を高めることができる。
【0022】
一部の実施例において、LiNiCoM’粒子は、80%~100%の表面に被覆層を有することができる。さらに、LiNiCoM’粒子は、90%~100%の表面に被覆層を有することができる。
【0023】
他の一部の些実施例において、正極活性材料は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含む。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例として、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材料及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含むが、これらに限定されない。
【0024】
リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料は、被覆型複合材料、挿入型複合材料のうちの1種類又は複数種類であってもよい。被覆型複合材料は、リン酸鉄リチウム粒子の少なくとも一部の表面に炭素被覆層を有する。例えば、炭素被覆層は、リン酸鉄リチウム粒子の80%~100%(例えば、90%~100%)の表面に被覆される。炭素被覆層は、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラック、コークス等のうちの1種類又は複数種類を含み得る。挿入型複合材料は、リン酸鉄リチウムがカーボン担体に分散される。カーボン担体は、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラック、コークス等のうちの1種類又は複数種類を含み得る。
【0025】
リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材料は、被覆型複合材料、挿入型複合材料のうちの1種類又は複数種類であってもよい。被覆型複合材料は、リン酸マンガンリチウム粒子の少なくとも一部の表面に炭素被覆層を有する。例えば、炭素被覆層は、リン酸マンガンリチウム粒子の80%~100%(例えば、90%~100%)の表面に被覆される。炭素被覆層は、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラック、コークス等のうちの1種類又は複数種類を含み得る。挿入型複合材料は、リン酸マンガンリチウムがカーボン担体に分散される。カーボン担体は、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラック、コークス等のうちの1種類又は複数種類を含み得る。
【0026】
一部の実施例において、正極フィルムシートは、接着剤をさらに選択的に含む。接着剤の種類は特に限定されず、当業者であれば実際の需要に応じて選択することができる。例として、正極フィルムシート用接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうちの1種類又は複数種類を含み得る。
【0027】
一部の実施例において、正極フィルムシートは、導電剤をさらに選択的に含む。導電剤の種類は特に限定されず、当業者であれば実際の需要に応じて選択することができる。例として、正極フィルムシート用導電剤は、黒鉛、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの1種類又は複数種類を含み得る。
[負極シート]
【0028】
負極シートは、負極集電体と負極集電体の少なくとも一つの表面に配置される負極フィルムシートとを備える。例として、負極集電体は、その厚さ方向において対向する二つの表面を有し、負極フィルムシートは、負極集電体の前記二つの表面のうちの任意の一つ又は両者に積層される。
【0029】
負極集電体は、良好な導電性及び機械的強度を有する材質を用いて、導電と集電の作用を果たすことができる。一部の実施例において、負極集電体は、銅箔を用いることができる。
【0030】
負極フィルムシートは、負極活性材料を有し、負極活性材料は、人造黒鉛を有する第1の材料と天然黒鉛を有する第2の材料とを含む。驚くべきことに、同時に負極フィルムシートにおける負極集電体に背向する表面の平滑度 Lを特定の範囲内に制御する場合、負極シートが高いエネルギー密度を有すると同時に、負極シートの活性イオン輸送性能を効果的に向上させるため、それを用いる二次電池が高いエネルギー密度を有する前提で、低温電力性能を高めることを見出した。より好ましくは、二次電池は、低い高温サイクル膨張及び高い高温サイクル容量維持率も同時に有することができる。
【0031】
平滑度 Lは、負極フィルムシートにおける負極集電体に背向する表面の粗さを表す。第1の材料の選択タイプ、第2の材料の選択タイプ、第1の材料及び第2の材料の比例、天然黒鉛の占有率、負極フィルムシートの圧縮密度、導電剤の種類、導電剤の含有量等のうちの一つ又は複数を調整することにより、平滑度 Lを所望の範囲内にすることができる。第1の材料、第2の材料の選択タイプは、それぞれ別々に、その組成、黒鉛化度、粒径分布、表面被覆改質等のうちの一つ又は複数を含むが、これらに限定されない。
【0032】
本発明者らは、更なる研究により、電池に用いられる正極活性材料と組み合わせて負極シートを協調設計することにより、二次電池がより優れた性能を発揮することができることを見出した。発明者らは、鋭意研究により、正極シートの正極活性材料が層状リチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含む場合、負極フィルムシートにおける負極集電体に背向する表面的平滑度 Lが40≦L≦50を満たすことを見出した。
【0033】
正極活性材料が層状リチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含み、負極シートの負極活性材料が人造黒鉛及び天然黒鉛を同時に含み、且つ負極フィルムシートの平滑度 Lが40≦L≦50を満たす場合、正極活性材料と負極活性材料の間に効果的な配合を形成させ、両者の利点の相乗効果を十分に発揮させ、電池が高いエネルギー密度を有することを保証する前提で、さらに負極シートに電解液の浸潤に適する表面気孔率を形成させ、負極での活性イオンの固相拡散速度を向上させるため、正極と負極の間での活性イオンの輸送性能をさらに向上させることができる。これにより、電池の動力学的性能が顕著に向上され、低温環境下でも、負極は正極からの活性イオンを迅速に受けるため、二次電池の低温電力性能を向上させることができる。当該二次電池は大倍率充放電に適し、低温で大倍率充電を行う時にリチウム析出が発生される確率を明らかに減少させ、同時に二次電池が高い安全性能を有するようにすることができる。また、正極活性材料が層状リチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含むことにより、正極シートに高い面密度(例えば、14mg/cm~20mg/cm)及び圧縮密度(例如3.3g/cm~3.5g/cm)を有させるため、電池は、高いエネルギー密度を有することができる。
【0034】
これらの実施例において、より好ましくは、正極活性材料は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含む。これにより、上記効果をより良好に発揮することができる。
【0035】
発明者らは、さらに、正極活性材料がリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含む場合、負極活性材料が人造黒鉛及び天然黒鉛を同時に有し、且つ負極フィルムシートの平滑度 Lが40≦L≦50を満たすと、負極シートに高い凝集力及び接着力も有させ、電池サイクル過程での負極の膨張をさらに減少させ、電極シートでの電解液保持能力を向上させることができるため、高い体積エネルギー密度を保持すると同時に、動力学的性能をさらに高めることを見出した。
【0036】
なお、負極シートが高いイオン及び電子の輸送性能を有するため、電池は低い抵抗を有することができる。また、負極シートは、人造黒鉛及び天然黒鉛を同時に含み、且つ負極フィルムシートの平滑度 Lは40≦L≦50を満たし、例えば、Lは、40.5、41.6、42.3、43.5、44.8、45.5、46.0、46.5、47.0、47.5、48.0、48.5又は49.7であり、これにより、粒子の接触不良による活性材料の損失も低減させ、及び/又は電解液の分布の不均一等による電池分極現象を低減することができる。そのため、電池に高い高温サイクル容量維持率も両立させることができる。
【0037】
これらの実施例において、好ましくは、43≦L≦48である。負極フィルムシートの平滑度 Lが適切な範囲内にある場合、電池の低温電力性能をさらに向上させ、電池の高温サイクル膨張をさらに減少させ、電池の高温サイクル容量維持率をさらに高めることができる。
【0038】
発明者らは、更なる研究により、正極活性材料がリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含み、負極活性材料が人造黒鉛及び天然黒鉛を同時に含み、且つ負極フィルムシートの平滑度 Lが40≦L≦50を満たす場合、負極活性材料が下記条件のうちの1種類又は複数種類をさらに満たすと、電池の性能をさらに改善することができることを見出した。
【0039】
一部の好ましい実施例において、負極活性材料における天然黒鉛の質量占有率は、10%~50%であってもよく、好ましくは、15%~30%であり、より好ましくは、15%~25%であり、例えば、15%、17%、19%、20%、21%、23%である。負極活性材料に適量の天然黒鉛を含有する場合、負極活性材料に高い1グラム当たりの容量を有させることができ、特に負極シートのイオン固相拡散速度をさらに高めることができるため、電池に高いエネルギー密度を有させると同時に、電池の電力性能をさらに高めることができる。また、適量の天然黒鉛は、負極活性材料粒子間及び負極活性材料と負極集電体の間の接着力を改善して、負極シートに高い凝集力及び接着力を有させると同時に、負極表面の副反応を減少させるため、電池に低い高温サイクル膨張を有させることができる。電池の高温サイクル性能もさらに改善させることができる。
【0040】
一部の好ましい実施例において、30000N 圧力下での負極活性材料の粉体圧縮密度は、1.7g/cm~1.9g/cmであってもよく、好ましくは、1.75g/cm~1.85g/cmである。負極活性材料の粉体圧縮密度が適切な範囲内にある場合、負極フィルムシートに高い圧縮密度を有させることができるため、電池のエネルギー密度を高めることができる。
【0041】
負極活性材料の粉体圧縮密度を上記所定の範囲内にするために、一部の好ましい実施例において、30000N圧力下での天然黒鉛の粉体圧縮密度は、好ましくは、1.75g/cm~1.9g/cmであり、より好ましくは、1.75g/cm~1.85g/cmであり、30000N圧力下での人造黒鉛の粉体圧縮密度は、好ましくは、1.7g/cm~1.9g/cmであり、より好ましくは、1.8g/cm~1.9g/cmである。
【0042】
一部の好ましい実施例において、負極活性材料の黒鉛化度は、92%~96%であってもよく、好ましくは、93%~95%である。負極活性材料の黒鉛化度が適切な範囲内にある場合、小さい粉末抵抗率を有し、負極シートの抵抗を低下させると同時に、イオンの挿入及び脱離に適する層間隔を有することができるため、電池の低温電力性能をさらに高めることができる。また、当該負極活性材料を用いる負極シートは、さらに、高い凝集力及び接着力を有し、電池の低サイクル膨張性能を高めることができる。
【0043】
発明者らは、さらに、正極活性材料がリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含み、負極活性材料が人造黒鉛及び天然黒鉛を含み、且つ負極フィルムシートの平滑度 Lが特定の範囲内にある場合、負極活性材料の黒鉛化度を上記範囲内にすると、電池の高温サイクル性能も高めることができることを見出した。
【0044】
負極活性材料の黒鉛化度を上記所定の範囲内にするために、一部の好ましい実施例において、天然黒鉛の黒鉛化度は、95%~98.5%であってもよく、好ましくは、96%~98%であり、より好ましくは、96.5%~97.6%であり、人造黒鉛の黒鉛化度は、90%~97.5%であってもよく、好ましくは、90%~95%であり、より好ましくは、91%~93.5%である。
【0045】
一部の好ましい実施例において、負極活性材料の体積平均粒径 D50は、10μm~18μmであってもよく、好ましくは、11μm~15μmであり、より好ましくは、12μm~14μmである。負極活性材料のD50が小さいほど、負極フィルムシートの表層粒子が多く、冷間プレス後に電極シートのリバウンドが大きく、表層粒子が互いに挿入され、表層の粗さが増加するため、負極フィルムシートの表面平滑度が小さく、これにより、電解液の浸潤及び負極フィルムシートでのイオンの移動速度を高めることができる。負極活性材料のD50が適切である場合、負極フィルムシートに高い活性イオン移動速度を有させると同時に、負極活性材料の1グラム当たりの容量を向上させ、電極シートの表面活性部位を減少させることができるため、電池の低温電力性能、エネルギー密度及び高温サイクル性能を向上させることができる。
【0046】
負極活性材料のD50を上記所定の範囲内にするために、一部の好ましい実施例において、天然黒鉛のD50は、10μm~16μmであってもよく、好ましくは、10μm~14μmであり、より好ましくは、11μm~13μmであり、人造黒鉛のD50は、12μm~19μmであってもよく、好ましくは、12μm~16μmであり、より好ましくは、13μm~15μmである。
【0047】
一部の好ましい実施例において、負極フィルムシートの圧縮密度は、1.6g/cm~1.8g/cmであり、好ましくは、1.65g/cm~1.75g/cmであり、特に好ましくは、1.68g/cm~1.73g/cmである。正極活性材料がリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含み、負極活性材料が人造黒鉛及び天然黒鉛を含み、負極フィルムシートの平滑度 Lが特定の範囲内にあり、負極フィルムシートの圧縮密度が所定の範囲内にある場合、電池が高いエネルギー密度を有するよう保証することができ、同時に負極フィルムシートに高い電解液浸潤性及び良好なイオン固相拡散速度を有させるため、電池の電力性能をさらに向上させる。また、適切な圧縮密度は、負極活性材料粒子構造の完全性も保護することができ、負極シートの凝集力及び接着力を改善し、電池高温サイクル過程での膨張及び副反応を低下させるのに有利であるため、電池の高温サイクル寿命をさらに向上させる。
【0048】
一部の好ましい実施例において、負極フィルムシートの面密度は、10mg/cm~13mg/cmであり、好ましくは、10.5mg/cm~11.5mg/cmである。正極材料がリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含み、負極活性材料が人造黒鉛及び天然黒鉛を含み、負極フィルムシートの平滑度 Lが特定の範囲内にあり、負極フィルムシートの面密度が所定の範囲内にある場合、電池に高いエネルギー密度を有させることができる。同時に、電池はさらに良好なイオン及び電子の輸送性能を有するため、電池の動力学的性能をさらに改善させる。また、電池が上記設計を満たす場合、分極及び副反応を低下させるため、電池の高温サイクル性能さらに改善させることができる。
【0049】
発明者らは、さらに、正極シートの正極活性材料がオリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含む場合、好ましくは、負極フィルムシートにおける負極集電体に背向する表面的平滑度 Lが45≦L≦55を満たすことを見出した。
【0050】
正極活性材料がオリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含み、負極シートの負極活性材料が人造黒鉛及び天然黒鉛を同時に含み、且つ負極フィルムシートの平滑度 Lが45≦L≦55を満たす場合、正極活性材料と負極活性材料の間に効果的な配合を形成させ、両者の利点の相乗効果を十分に発揮させ、電池が高いエネルギー密度を有することを保証する前提で、正極と負極の間での活性イオンの固相拡散速度を向上させ、これにより、電池の動力学的性能がさらに向上され、低温環境下でも、負極は正極からの活性イオンを迅速に受けるため、二次電池の低温電力性能を向上させることができる。当該二次電池は大倍率充放電に適し、低温で大倍率充電を行う時にリチウム析出が発生される確率を明らかに減少させる。
【0051】
これらの実施例において、より好ましくは、正極活性材料は、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含む。これにより、上記効果をより良好に発揮することができる。
【0052】
発明者らは、さらに、正極活性材料がリン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含み、負極活性材料が人造黒鉛及び天然黒鉛を同時に含み、且つ負極フィルムシートの平滑度 Lが45≦L≦55を満たす場合、電池サイクル過程での膨張もさらに低下させることができ、また、電極シートにおける活性材料間の電解液保持能力が増加され、高い体積エネルギー密度を保持すると同時に動力学的性能を高めるのに有利であることを見出した。
【0053】
また、負極シートが高いイオン及び電子の輸送性能を有するため、電池に低い抵抗を有させることができる。また、負極シートが人造黒鉛及び天然黒鉛を同時に含み、且つ負極フィルムシートの平滑度 Lが45≦L≦55を満たし、これにより、粒子の接触不良による活性材料の損失も低減させ、及び/又は電解液の分布の不均一等による電池分極現象を低減することができる。そのため、電池に高い高温サイクル容量維持率も両立させることができる。
【0054】
これらの実施例において、より好ましくは、48≦L≦52である。例えば、Lは、48.5、49.0、49.5、50.0、50.5、51.0又は51.5である。負極フィルムシートの平滑度 Lが適切な範囲内にある場合、電池の低温電力性能をさらに向上させ、電池の高温サイクル膨張をさらに減少させ、電池の高温サイクル容量維持率をさらに高めることができる。
【0055】
発明者らは、更なる研究により、正極活性材料がオリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含み、負極活性材料が人造黒鉛及び天然黒鉛を同時に含み、且つ負極フィルムシートの平滑度 Lが45≦L≦55を満たす場合、負極活性材料が下記条件のうちの1種類又は複数種類をさらに満たすと、電池の性能をさらに改善することができることを見出した。
【0056】
一部の好ましい実施例において、負極活性材料における天然黒鉛の質量占有率は、10%~50%であってもよく、好ましくは、15%~50%であり、より好ましくは、35%~50%であり、例えば、30%、35%、40%、42%、45%、48%又は50%である。負極活性材料に適量の天然黒鉛を含有する場合、負極活性材料に高い1グラム当たりの容量を有させることができ、特に負極シートのイオン固相拡散速度をさらに高めることができるため、電池に高いエネルギー密度を有させると同時に、電池の電力性能をさらに高めることができる。また、適量の天然黒鉛は、負極活性材料粒子間及び負極活性材料と負極集電体の間の接着力を改善して、負極シートに高い凝集力及び接着力を有させると同時に、負極表面の副反応を減少させるため、電池に低い高温サイクル膨張を有させることができる。電池の高温サイクル性能もさらに改善させることができる。
【0057】
一部の好ましい実施例において、30000N 圧力での負極活性材料の粉体圧縮密度は、好ましくは、1.8g/cm~1.9g/cmであり、より好ましくは、1.82g/cm~1.88g/cmである。負極活性材料の粉体圧縮密度が適切な範囲内にある場合、負極フィルムシートに高い圧縮密度を有させることができるため、電池のエネルギー密度を高めることができる。
【0058】
負極活性材料の粉体圧縮密度を上記所定の範囲内にするために、一部の好ましい実施例において、30000N 圧力下での天然黒鉛の粉体圧縮密度は、好ましくは、1.85g/cm~1.95g/cmであり、より好ましくは、1.90g/cm~1.95g/cmであり、30000N 圧力下での人造黒鉛の粉体圧縮密度は、1.75g/cm~1.85g/cmであり、より好ましくは、1.77g/cm~1.80g/cmである。
【0059】
一部の好ましい実施例において、負極活性材料の黒鉛化度は、92%~95%であり、好ましくは、93%~94%である。負極活性材料の黒鉛化度が適切な範囲内にある場合、小さい粉末抵抗率を有し、負極シートの抵抗を低下させると同時に、イオンの挿入及び脱離に適する層間隔を有することができるため、電池の低温電力性能をさらに高めることができる。また、当該負極活性材料を用いる負極シートは、さらに、高い凝集力及び接着力を有し、電池の低サイクル膨張性能を高めることができる。
【0060】
発明者らは、さらに、正極活性材料がオリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含み、負極活性材料が人造黒鉛及び天然黒鉛を含み、負極フィルムシートの平滑度 Lが特定の範囲内にあり、負極活性材料の黒鉛化度が上記範囲内にある場合、電池の高温サイクル性能も高めることができることを見出した。
【0061】
負極活性材料の黒鉛化度在上記所定の範囲内にするために、一部の好ましい実施例において、天然黒鉛の黒鉛化度は、95%~98.5%であってもよく、好ましくは、97.5%~98.5%であり、人造黒鉛の黒鉛化度は、89%~95%であってもよく、好ましくは、90%~93%である。
【0062】
一部の好ましい実施例において、負極活性材料の体積平均粒径 D50は、15μm~19μmであり、好ましくは、16μm~18μmである。負極活性材料のD50が小さいほど、負極フィルムシートの表面気孔が多く、負極フィルムシートの表面平滑度が小さいため、電解液の浸潤及び負極フィルムシートでの活性イオンの移動速度を高めることができる。負極活性材料のD50が適切である場合、負極フィルムシートに高いイオン移動速度を有させると同時に、負極活性材料の1グラム当たりの容量を向上させ、電極シートの表面活性部位を減少させることができるため、電池の低温電力性能、エネルギー密度及び高温サイクル性能を共に向上させることができる。
【0063】
負極活性材料のD50を上記所定の範囲内にするために、一部の好ましい実施例において、天然黒鉛のD50は、15μm~20μmであってもよく、好ましくは、15μm~19μmであり、より好ましくは、16μm~18μmであり、人造黒鉛のD50は、14μm~19μmであってもよく、好ましくは、14μm~18μmであり、より好ましくは、15μm~17μmである。
【0064】
一部の好ましい実施例において、負極フィルムシートの圧縮密度は、1.5g/cm~1.7g/cmであり、好ましくは、1.55g/cm~1.65g/cmである。正極活性材料がオリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含み、負極活性材料が人造黒鉛及び天然黒鉛を同時に含み、負極フィルムシートの平滑度 Lが特定の範囲内にあり、負極フィルムシートの圧縮密度が所定の範囲内にある場合、電池が高いエネルギー密度を有するよう保証することができ、同時に負極フィルムシートに高い電解液浸潤性及び良好なイオン固相拡散速度を有させるため、電池の低温電力性能をさらに向上させる。また、適切な圧縮密度は、負極活性材料粒子構造の完全性も保護することができ、負極シートの凝集力及び接着力を改善し、電池高温サイクル過程での膨張及び副反応を低下させるのに有利であるため、電池の高温サイクル寿命をさらに向上させる。
【0065】
一部の好ましい実施例において、負極フィルムシートの面密度は、7mg/cm~10mg/cmであり、好ましくは、7mg/cm~8mg/cmである。正極材料がオリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含み、負極活性材料が人造黒鉛及び天然黒鉛を含み、負極フィルムシートの平滑度 Lが特定の範囲内にあり、負極フィルムシートの面密度が所定の範囲内にある場合、電池に高いエネルギー密度を有させることができる。同時に、電池はさらに良好なイオン及び電子の輸送性能を有するため、電池の動力学的性能をさらに改善させる。また、電池が上記設計を満たす場合、分極及び副反応を低下させるため、電池の高温サイクル性能さらに改善させることができる。
【0066】
本願の任意の負極シートにおいて、選択的に、負極活性材料は、ハードカーボン、ソフトカーボン、ケイ素系材料、スズ系材料のうちの1種類又は複数種類をさらに含み得る。ケイ素系材料は、ケイ素単体、ケイ素酸素化合物、ケイ素炭素複合物、ケイ素合金のうちの1種類又は複数種類から選択することができる。スズ系材料は、スズ単体、スズ酸素化合物、スズ合金のうちの1種類又は複数種類から選択することができる。
【0067】
一部の実施例において、負極フィルムシートは、接着剤をさらに含み得る。例として、負極フィルムシート用接着剤は、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの1種類又は複数種類から選択することができる。
【0068】
一部の実施例において、負極フィルムシートは、増粘剤をさらに選択的に含む。例として、増粘剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)であってもよい。
【0069】
一部の実施例において、負極フィルムシートは、導電剤をさらに選択的に含む。例として、負極フィルムシート用導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの1種類又は複数種類から選択することができる。
【0070】
本願において、負極フィルムシートの平滑度 Lは、本分野の周知の意味であり、本分野で既知の方法により測定することができる。例示的な測定方法は、以下の通りである。先ず、負極シートを精密色差計(例えば、多機能精密色差計NR60CP)の測定口の下方に置き、精密色差計の測定口を負極フィルムシートに近接させ且つ位置を調整して位置合わせを実現し、測定を行い、測定結果を記す。測定結果の正確性を確保するために、10群の試験試料を取り、この10群の試験試料の平均値を算出する。
【0071】
本願において、負極活性材料の粉体圧縮密度は、本分野の周知の意味であり、本分野で既知の方法により測定することができる。例えば、GB/T 24533-2009を参照し、電子圧力試験機(例えば、UTM7305)を用いて測定することができる。例示的な測定方法は、以下の通りである。質量 Mの試験粉末を圧密専用金型(底面積S)に置き、異なる圧力(本願において30000Nを用いる)を設定し、圧力を30s保持してから、圧力を解除し、10s待ち、機器によって当該圧力下での粉末圧密後の厚さ Hを読み出し、当該圧力下での負極活性材料の粉体圧縮密度=M/(H×S)である。
【0072】
本願において、負極フィルムシートの面密度は、本分野の周知の意味であり、本分野で既知の方法により測定することができる。例えば、片面塗布且つ冷間プレス後の負極シート(両面塗布の電極シートである場合、先ず、そのうちの一面の負極フィルムシートを拭くことができる)を取り、面積 Sの小さい円型シートに打ち抜き、その重量を秤量し、Mと記す。次に、上記秤量後の負極シートの負極フィルムシートを拭き取り、負極集電体の重量を秤量し、Mと記し、負極フィルムシートの面密度=(負極シートの重量M-負極集電体的重量M)/Sである。
【0073】
本願において、負極フィルムシートの圧縮密度は、本分野の周知の意味であり、本分野で既知の方法により測定することができる。例えば、片面塗布且つ冷間プレス後の負極シート(両面塗布の電極シートである場合、先ず、そのうちの一面の負極フィルムシートを拭くことができる)を取り、負極フィルムシートの厚さを測定し、さらに上記方法に従って、負極フィルムシートの面密度を測定し、負極フィルムシートの圧縮密度=負極フィルムシートの面密度/負極フィルムシートの厚さである。
【0074】
本願において、負極活性材料のD50は、本分野の周知の意味であり、本分野で既知の方法により測定することができる。例えば、標準GB/T 19077.1-2016を参照し、レーザー粒度分析計(例えば、Malvern Master Size 3000)を用いて測定することができる。そのうち、D50の物理的定義は、材料累積体積分布百分率が50%に達する際に対応する粒径である。
【0075】
本願において、負極活性材料の黒鉛化度は、本分野の周知の意味であり、本分野で既知の方法により測定することができる。例えば、X線回折計(例えば、Bruker D8 Discover)を用いて測定することができる。測定は、JIS K 0131-1996、JB/T 4220-2011を参照して、d002の大きさを測定した後、公式G=(0.344-d002)/(0.344-0.3354)×100%に基づいて、黒鉛化度を算出することができ、そのうち、d002は、nmで計算された黒鉛結晶構造における層間隔である。X線回折分析試験において、CuKα放射線を放射源とし、放射線波長 λ=1.5418Åであり、走査2θ角度範囲が20°~80°であり、走査速度が4°/minである。
[電解質]
【0076】
電解質は、正極シートと負極シートの間に位置してイオンを伝導する作用を果たす。本願は、電解質の種類を特に限定せず、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、固体電解質及び液体電解質(即ち電解液)のうちの少なくとも1種類から選択することができる。
【0077】
一部の実施例において、電解質として電解液を使用する。電解液は、電解質塩及び溶媒を含む。
【0078】
一部の実施例において、電解質塩は、LiPF(六フッ化リン酸リチウム)、LiBF(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO(過塩素酸リチウム)、LiAsF(六フッ化ヒ酸リチウム)、LiFSI(リチウムビスフルオロスルホニルイミドリチウム)、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート)、LiBOB(リチウムビスオキサレートボラート)、LiPO(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(リチウムジフルオロビス(オキサレート)ホスフェート)及びLiTFOP(リチウムテトラフルオロオキサラートホスフェート)のうちの1種類又は複数種類から選択することができる。
【0079】
一部の実施例において、溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)のうちの1種類又は複数種類から選択することができる。
【0080】
一部の実施例において、電解液は、添加剤をさらに選択的に含む。例えば、添加剤は、負極成膜用添加剤を含んでもよいし、正極成膜用添加剤を含んでもよいし、電池の特定の性能を改善できる添加剤を含んでもよいし、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤等を含んでもよい。
[セパレータ]
【0081】
電解液を用いる二次電池、及び固体電解質を用いる一部の二次電池において、セパレータをさらに含む。セパレータは、正極シートと負極シートの間に配置されて、隔離の作用を果たす。本願は、セパレータの種類を特に限定せず、良好な化学安定性及び機械安定性を有する任意の周知の多孔質構造のセパレータを選択することができる。一部の実施例において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリフッ化ビニリデンのうちの1種類又は複数種類から選択することができる。セパレータは、単層フィルムであってもよいし、多層複合フィルムであってもよい。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同じであってもよいし、異なってもよい。
【0082】
本願は、二次電池の形状を特に限定せず、円筒形、四角形、又は他の任意の形状であってもよい。図1は、一例としての四角形構造の二次電池5である。
【0083】
一部の実施例において、二次電池は、外装を含んでもよい。この外装は、正極シート、負極シート及び電解質を封止するのに用いられる。
【0084】
一部の実施例において、二次電池の外装は、ソフトパックであってもよく、例えば、袋状のソフトパックである。ソフトパックの材質は、プラスチックであってもよく、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)等のうちの1種類又は複数種類を含み得る。二次電池の外装は、硬質ケースであってもよく、例えば、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース及び鋼ケース等である。
【0085】
一部の実施例において、図2を参照すると、外装は、ケース51及びカバープレート53を備える。そのうち、ケース51は、底板と、底板に接続された側板と、を備え、底板及び側板により囲まれて収容室が形成される。ケース51は、収容室に連通している開口を有し、カバープレート53は、前記収容室を密閉するように、前記開口をカバーする。
【0086】
正極シート、負極シート及びセパレータは、巻回工程又は積層工程を経て電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容室内に封止されている。電解質は電解液を用いることができ、電解液は電極アセンブリ52内に浸潤されている。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の個数は1つまたは複数であってもよく、需要に応じて調整することができる。
【0087】
一部の実施例において、二次電池は、組み立てられて、電池モジュールを形成することができ、電池モジュールに含まれる二次電池の個数は複数であってもよく、具体的な個数は電池モジュールの用途及び容量に応じて調整することができる。
【0088】
図3は、一例としての電池モジュール4である。図3を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は電池モジュール4の長さ方向に沿って順次に配列されてもよい。当然のことながら、他の任意の方式により配列することも可能である。さらに、この複数の二次電池5を締結具によって固定してもよい。
【0089】
選択的に、電池モジュール4はさらに収容空間を有するケースを含み、複数の二次電池5は当該収容空間に収容される。
【0090】
一部の実施例において、上記電池モジュールはさらに組み立てられて電池パックを形成することができ、電池パックに含まれる電池モジュールの個数は、電池パックの用途及び容量に応じて調整することができる。
【0091】
図4及び図5は、一例としての電池パック1である。図4及び図5を参照すると、電池パック1には、電池ボックスと、電池ボックス内に配置された複数の電池モジュール4とが含まれてもよい。電池ボックスは、上部筐体2及び下部筐体3を備え、上部筐体2は、下部筐体3を覆うように配置され、電池モジュール4を収容する密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方式により電池ボックス内に配置されてもよい。
[製造方法]
【0092】
二次電池の製造方法は、負極シート、正極シート及び電解質を組み立てて二次電池を形成する工程を含み得る。一部の実施例において、正極シート、セパレータ、負極シートは、セパレータが正極シートと負極シートの間で隔離の作用を果たすように、順次に巻回又は積層されて、電極アセンブリ(即ちコア)が得られる。コアを外装内に配置し、電解液を注入し、封止して、二次電池を得る。
【0093】
一部の実施例において、二次電池の製造は、正極シートを製造する工程をさらに含み得る。例として、正極活性材料、導電剤及び接着剤を溶媒(例えば、N-メチルピロリドン、NMPと略称)で分散させて、均一な正極スラリーを形成することができる。正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥や冷間プレス等の工程を経た後、正極シートが得られる。
【0094】
一部の実施例において、二次電池の製造は、負極シートを製造する工程をさらに含み得る。例として、負極活性材料、接着剤、及び選択可能な増粘剤及び導電剤を溶媒で分散させて、均一な負極スラリーを形成することができ、溶媒は、脱イオン水であってもよい。負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥や冷間プレス等の工程を経た後、負極シートが得られる。
装置
【0095】
本願の第2の態様は、本願の第1の態様に係る二次電池を備える装置を提供する。前記二次電池は、前記装置の電源として用いられてもよく、前記装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記装置は、モバイル機器(例えば、携帯電話、ノートパソコン等)、電気車両(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラック等)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システム等であってもよいが、これらに限定されない。
【0096】
前記装置は、その使用の需要に応じて、二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0097】
図6は、一例としての装置である。当該装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車等である。二次電池の高電力及び高エネルギー密度に対する当該装置の要求を満たすために、電池パック又は電池モジュールを使用してもよい。
【0098】
他の例としての装置は、携帯電話、タブレット、ノートパソコン等であってもよい。当該装置は、一般的に軽量化及び薄型化を必要とし、電源として二次電池を用いることができる。
実施例
【0099】
以下の実施例は、本願に開示の内容をより具体的に説明する。これらの実施例は、単に説明のためのものであり、本願に開示の範囲内での様な修正及び変更は、当業者にとって自明である。特に説明しない限り、以下の実施例で報告される全ての部、百分率、及び比率は、重量を基にしたものであり、実施例で使用される全ての試薬は、市販のものであるか、又は常用の方法に従って合成されたものであり、さらに処理することなく直接使用することができる。また、実施例で使用される装置は、市販のものである。
実施例1
正極シート
【0100】
正極活性材料 LiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811と略記)、導電剤 Super P、接着剤 PVDFを、質量比 96.5:1.5:2に応じて、適量のNMPに十分に撹拌且つ混合して、均一な正極スラリーを形成する。正極スラリーを正極集電体 アルミニウム箔の二つの表面に塗布し、乾燥や冷間プレスを経た後、正極シートが得られる。
負極シート
【0101】
負極活性材料(75重量%の人造黒鉛及び25重量%の天然黒鉛)、導電剤 Super P、接着剤 SBR、増粘剤 CMC-Naを、質量比 96.2:0.8:1.8:1.2に応じて、適量の脱イオン水に十分に撹拌且つ混合して、均一な負極スラリーを形成する。負極スラリーを負極集電体 銅箔の二つの表面に塗布し、乾燥や冷間プレスを経た後、負極シートが得られる。
セパレータ
【0102】
PP/PE複合セパレータを使用する。
電解液の製造
【0103】
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を、体積比 1:1:1で混合した後、LiPFを上記溶液中に均一に溶解させて、電解液を得る。当該電解液において、LiPFの濃度は、1mol/Lである。
二次電池の製造
【0104】
正極シート、セパレータ、負極シートを順次に積層且つ巻回して、電極アセンブリを得る。電極アセンブリを外装内に配置し、上記調製された電解液を注入し、封止、静置、化成、エイジング等の工程を経た後、二次電池が得られる。
実施例2~25及比較例1~12
【0105】
製造方法は、実施例1と類似し、相違とは、負極シート製造工程における関連パラメータを調整することにより、応じる二次電池を得ることであり、詳細は表1及び表2に示す通りである。表1における実施例1~12及び比較例1~6の電池は、いずれも正極活性材料 NCM811を使用し、正極フィルムシートは、圧縮密度が3.5g/cmで、面密度が18.5mg/cmであり、表2における的実施例13~25及び比較例7~12の電池は、いずれも正極活性材料 リン酸鉄リチウム(LFPと略記)を使用し、正極フィルムシートは、圧縮密度が2.3g/cmで、面密度が16.2mg/cmである。
試験部分
【0106】
以下の試験において、正極活性材料がリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物である場合、放電カットオフ電圧は、2.8Vであり、充電カットオフ電圧は、4.2Vである。正極活性材料がリン酸鉄リチウムである場合、放電カットオフ電圧は、2.5Vであり、充電カットオフ電圧は、3.65Vである。
1)負極シートのサイクル膨張率試験
【0107】
各実施例及び比較例における負極シートの初期厚さをHと記す。次に、25℃の環境で、電池に対する充放電試験を行い、1.0C(即ち、1h内に理論容量を完全に放出する電流値)の放電電流で放電カットオフ電圧になるまで定電流放電する。その後、1.0Cの充電電流で充電カットオフ電圧になるまで定電流充電し、続いて電流が0.05Cになるまで定電圧充電し、この時の電池は、満充電状態であり、即ち100%SOC(State of Charge、荷電状態)である。満充電の電池を5min静置した後、1.0Cの放電電流で放電カットオフ電圧になるまで定電流放電し、この時の放電容量は、電池の1.0Cでの実容量であり、Cと記す。45℃で、二次電池をNeware充放電試験機机で100%DOD(100%放電深度、即ち満充電後に完全に放電)の1C/1C充放電サイクルを行う。サイクル回数が600に達する時に、サイクルを停止する。その後、二次電池を100%SOCに充電し、二次電池を解体して応じる負極シートの厚さを測定し、Hと記す。電池に対して、45℃で、1C/1Cサイクルを600回行った後の負極シートのサイクル膨張率は、(H/H-1)×100%である。
2)電池の低温リチウム析出性能試験
【0108】
先ず、1)の方法に従って、電池の1.0Cでの実容量Cを測定する。次に、電池を-10℃の環境に配置し、xCの定電流で充電カットオフ電圧になるまで充電し、さらに電流が0.05Cになるまで定電圧充電し、5min静置し、コアを解体して、界面リチウム析出状況を観察する。負極表面にリチウムが析出されていない場合、負極表面にリチウムが析出されるまで、充電倍率を増大させてさらに試験を行う。負極表面にリチウムが析出されない最大充電倍率を記し、低温リチウム析出倍率を確定する。
3)電池の高温サイクル性能試験
【0109】
先ず、1)の方法に従って、電池の1.0Cでの実容量Cを測定する。次に、60℃の環境で、電池を1.0Cの充電電流で充電カットオフ電圧になるまで定電流充電し、さらに電流が0.05Cになるまで定電圧充電した後、1.0Cの放電電流で放電カットオフ電圧になるまで定電流放電し、これを1回の充放電サイクルとし、今回の放電容量が初回サイクルの放電容量である。その後、充電と放電サイクルを連続的に行って、サイクル過程での放電容量値を記し、毎回サイクルの容量維持率を算出する。サイクル容量維持率が初回サイクル放電容量の80%まで低下される場合、電池のサイクル回数を記す。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
実施例1~12と比較例1~6の比較結果から分かるように、正極シートが層状リチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含み、負極シートが人造黒鉛及び天然黒鉛を同時に含み、且つ負極フィルムシートにおける前記負極集電体に背向する表面の平滑度 Lが40≦L≦50を満たし、特に43≦L≦48を満たす場合、負極シートに充放電過程において低いサイクル膨張を有させると同時に、負極シートのリチウムイオン輸送性能を効果的に向上させることができるため、二次電池が高いエネルギー密度を有する前提で、二次電池の低サイクル膨張性能及び低温電力性能を高めることができる。また、電池の高温サイクル過程での容量維持率も明らかに向上させることができる。
【0113】
実施例13~25と比較例7~12の比較結果から分かるように、正極シートがオリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含み、負極シートが人造黒鉛及び天然黒鉛を同時に含み、且つ負極フィルムシートにおける前記負極集電体に背向する表面の平滑度 Lが45≦L≦55を満たし、特に48≦L≦52を満たす場合、負極シートに充放電過程において低いサイクル膨張を有させると同時に、負極シートのリチウムイオン輸送性能を効果的に向上させることができるため、二次電池が高いエネルギー密度を有する前提で、二次電池の低サイクル膨張性能及び低温電力性能を高めることができる。より好ましくは、電池の高温サイクル過程での容量維持率も明らかに向上させることができる。
【0114】
また、実施例6~8及び実施例18~21の結果から分かるように、正極シートが特定の正極活性材料を使用し、負極シートが人造黒鉛及び天然黒鉛を同時に含み、且つ負極活性材料における天然黒鉛の質量占有率が特定の範囲内にある場合、電池に高い低サイクル膨張性能、低温電力性能及び高温サイクル性能を同時に両立させるのにさらに有利である。
【0115】
実施例9~12及び実施例22~25の結果から分かるように、正極シートが特定の正極活性材料を使用し、負極シートが人造黒鉛及び天然黒鉛を同時に含み、且つ負極フィルムシートの圧縮密度及び/又は面密度が特定の範囲内にある場合、電池に高い低サイクル膨張性能、低温電力性能及び高温サイクル性能を同時に両立させるのにさらに有利である。
【0116】
以上の説明は本願の具体的な実施形態のみであるが、本願の保護範囲はこれらに限定されるものではなく、当業者であれば、本願に開示の技術的範囲内において、様々な等価な修正又は差替えが容易に考えられ、これらの修正又は差替えは、本願の範囲内に含まれるべきである。したがって、本願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に準ずるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6