(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】選択的CDK4/6阻害剤のがん治療薬
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20250328BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250328BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20250328BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20250328BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20250328BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20250328BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20250328BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20250328BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20250328BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20250328BHJP
【FI】
C07D471/04 116
C07D471/04 CSP
A61P35/00
A61P35/04
A61P35/02
A61K31/519
A61K9/20
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/12
A61K47/04
(21)【出願番号】P 2022537045
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(86)【国際出願番号】 IB2020061968
(87)【国際公開番号】W WO2021124104
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-12-13
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519333480
【氏名又は名称】ルネラ・バイオテック・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】リサンティ,マイケル・ピイ
(72)【発明者】
【氏名】ソッジャ,フェデリカ
(72)【発明者】
【氏名】カンガスメッツァ,ユッシ
(72)【発明者】
【氏名】マガルヘース,ルマ・ジー
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-519909(JP,A)
【文献】カナダ国特許出願公開第03096790(CA,A1)
【文献】特表2018-537482(JP,A)
【文献】European Journal of Medicinal Chemistry,2016年,122,546-556
【文献】Bioorg. Med. Chem.,2009年,17,5396-5407
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61P
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
【化1】
で表される化合物であって、上式で、
R
1は、水素、アリール、C
1-C
8アルキル、C
1-C
8アルコキシ、C
3-C
7シクロアルキル、またはC
3-C
7ヘテロシクリルであり;
R
2は、独立して、水素、ハロゲン、C
1-C
8アルキル、C
1-C
8アシル、C
3-C
7シクロアルキル、C
1-C
8アルコキシ、C
1-C
8アルコキシアルキル、C
1-C
8ハロアルキル、C
1-C
8ヒドロキシアルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、ニトリル、ニトロ、OR
5、SR
5、NR
5R
6、N(O)R
5R
6、P(O)(OR
5)(OR
6)、(CR
5R
6)
mNR
7R
8、COR
5、(CR
4R
5)
mC(O)R
7、CO
2R
5、CONR
5R
6、C(O)NR
5SO
2R
6、NR
5SO
2R
6、C(O)NR
5OR
6、S(O)
m
R
5、SO
2NR
5R
6、P(O)(OR
5)(OR
6)、(CR
5R
6)
mP(O)(OR
7)(OR
8)、(CR
5R
6)
m-アリール、(CR
5R
6)
m-ヘテロアリール、および-CR
5=CR
6C(O)R
7から選択され;
R
3は、いずれの場合も、独立して、水素、ハロゲン、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ハロアルキル、C
1-C
6ヒドロキシアルキル、またはC
3-C
7シクロアルキルであり;
R
5、R
6、R
7、およびR
8は、独立して、水素、C
1-C
8アルキル、C
2-C
8アルケニル、C
2-C
8アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロアリールアルキルであり;mは0~6であり;ならびに
nは9~20の整数を表す
化合物。
【請求項2】
nは12~20の整数である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
1はシクロペンチルでありであり、かつR
2はアセチルである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物は、一般式
【化2】
で表され、上式で、nは9~20の整数を表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
nは12~20の整数である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
nは12である、請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1~6のうちいずれか一項の記載の化合物、または薬学的に許容されるこれらの塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項8】
前記組成物は、請求項1~6のうちいずれか一項の記載の化合物を18~55重量%と、薬学的に許容される担体とを有するコアを含む錠剤である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記薬学的に許容される担体は、結晶セルロース、クロスポビドンタイプA、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、およびコロイド状無水シリカを含む、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
がんを治療する
ための医薬組成物であって、請求項1~6のうちいずれか一項の記載の化合物
または薬学的に許容されるこれらの塩の薬学的に有効な量
、および薬学的に許容される担体を含む
医薬組成物。
【請求項11】
転移性疾患を治療または予防する
ための医薬組成物であって、請求項1~6のうちいずれか一項の記載の化合物
または薬学的に許容されるこれらの塩の薬学的に有効な量
、および薬学的に許容される担体を含む
医薬組成物。
【請求項12】
腫瘍再発を治療または予防する
ための医薬組成物であって、請求項1~6のうちいずれか一項の記載の化合物
または薬学的に許容されるこれらの塩の薬学的に有効な量
、および薬学的に許容される担体を含む
医薬組成物。
【請求項13】
がん治療耐性を低下させる
ための医薬組成物であって、請求項1~6のうちいずれか一項の記載の化合物
または薬学的に許容されるこれらの塩の薬学的に有効な量
、および薬学的に許容される担体を含む
医薬組成物。
【請求項14】
放射線療法耐性、化学療法耐性、およびホルモン療法耐性のうち少なくとも1つを治療または予防する
ための医薬組成物であって、請求項1~6のうちいずれか一項の記載の化合物
または薬学的に許容されるこれらの塩の薬学的に有効な量
、および薬学的に許容される担体を含む
医薬組成物。
【請求項15】
がん細胞、がん幹細胞、および循環腫瘍細胞のうち少なくとも1つの増殖を防止または低減する
ための医薬組成物であって、請求項1~6のうちいずれか一項の記載の化合物
または薬学的に許容されるこれらの塩の薬学的に有効な量
、および薬学的に許容される担体を含む
医薬組成物。
【請求項16】
がんの治療または予防のための薬剤の製造における、請求項1~6のうちいずれか一項の記載の化合物の使用。
【請求項17】
転移性疾患の治療または予防のための薬剤の製造における、請求項1~6のうちいずれか一項の記載の化合物の使用。
【請求項18】
腫瘍再発の治療または予防のための薬剤の製造における、請求項1~6のうちいずれか一項の記載の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗がん療法のための医薬化合物に関し、より具体的には、がんの治療、予防、および/または寛解に有用な、強力なCDK4/6阻害剤である置換ピロロピリミジン化合物、置換ピリドピリミジン化合物、および置換ベンゾイミダゾール化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
がん幹細胞(CSC)は、化学療法や放射線療法などの従来のがん療法に耐性がある腫瘍始原細胞(TIC)である。そのためCSCは、がん患者を治療失敗や臨床転帰不良に至らせる腫瘍再発と遠隔転移の両方に関与している。したがって、CSCの問題にいかに取り組むかを理解するには、革新的な手法が必要である。機構的に、これは過酷な条件やさまざまな微小環境下でCSCが生き残り、成長する能力に関係している可能性がある。CSCは腫瘍細胞集団のうちの特に小さな亜集団であるため、その代謝および表現型特性は、最近まで大部分が特徴づけられていなかった。
【0003】
さらに、CSCは極めて回復力があり、細胞ストレスに対する耐性が非常に高いことから、特に低接着条件下で足場非依存性増殖が可能である。そのためCSCは、CSCおよび幹細胞の前駆体の特性を保持した3Dスフェロイドを形成する。これに対し、大部分の「バルク」がん細胞は、浮遊状態で増殖させると、アポトーシスの一種であるアノイキスによって死滅する。よって、1個のCSCがクローン増殖すると、3Dスフェロイドは形成されるが、がん細胞の自己凝集は生じない。したがって3Dスフェロイドの形成によって、上皮がん細胞の幹細胞性を機能的に読み取り、幹様表現型を有する類上皮細胞の集団を濃縮することができる。中でもMCF7などの乳がん細胞を用いて調製される場合、こうした3Dスフェロイドはマンモスフェアとも呼ばれる。
【0004】
これまで、3Dスフェロイドは2種類のER(+)細胞株(MCF7、T47D)から作製され、不偏の非標識プロテオミクス解析が行われてきた。この研究により、CSCの表現型挙動が分子レベルで解析されるようになった。3Dスフェロイドをこれらの細胞株の単層と直接比較し、並行して処理した。これにより、単層と比べて、3DスフェロイドのCSC表現型に特有のプロテオミクス的な特徴を同定することができた。この分子解析に基づき、マンモスフェアにはミトコンドリアタンパク質が著しく豊富であることが観察された。これらのミトコンドリア関連タンパク質には、β酸化やケトン代謝・再利用、ミトコンドリア生合成、電子伝達、ADP/ATP交換・輸送、CoQ合成、およびROS生成の他、マイトファジーの抑制に関わる分子が含まれていた。このように、ミトコンドリアタンパク質合成の増加またはマイトファジーの低下によって、CSCにミトコンドリアの質量が蓄積される可能性がある。
【0005】
ミトコンドリアの質量は、CSCで増加することから、CSCを精製する新たな代謝バイオマーカーとみなされている。この手法全体を用いて、ER(+)(MCF7)とER(-)(MDA-MB-231)の両方の乳がん細胞株の単一マーカーとしてMitoTrackerのみを使用し、CSC活性を大幅に強化できたことが観察されている。注目すべきことに、MitoTrackerの蛍光強度が高い細胞はパクリタキセルに対して化学耐性があり、パクリタキセルによるDNA損傷反応に対して耐性を示すことが判明した。
【0006】
しかしながら、CSCを根絶し、転移および/または再発の可能性を阻止または低減し、化学療法などの抗がん療法に対するがん耐性を低下させる、または排除する、抗がん療法のための新たな医薬化合物が必要とされている。さらに、「最適な」CSCを特異的に標的とし、足場非依存性増殖、腫瘍再発、および遠隔転移などのさらなるがん増殖を排除する治療戦略および抗がん療法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2016/166703号
【文献】国際公開第2016/193860号
【非特許文献】
【0008】
【文献】Comprehensive Organic Synthesis,Trost,Fleming,Pergamon:1991
【文献】Comprehensive organic Functional Group Transformations,Katritky,Meth-Cohn,Rees,Pergamon:1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在世界的に、がん幹細胞(CSC)はがん患者における治療失敗の主因の1つと考えられている。機構的に、これは過酷な条件やさまざまな微小環境下でCSCが生き残り、成長する能力に関係している可能性がある。本発明者らは、CSCが、ミトコンドリアOXPHOS代謝の上昇を利用してATP産生を「高める」ことにより、従来の治療法に対する耐性を獲得するのではないかという理論を提示した。この見解と一致するように、特に、i)FDA承認抗生物質(ドキシサイクリン、チゲサイクリン、アジスロマイシン、パモ酸ピルビニウム、アトバコン、ベダキリン)、ii)天然化合物(アクチノニン、CAPE、ベルベリン、ブルチエリジン、およびメリチジン)、ならびにiii)実験化合物(オリゴマイシンおよびAR-C155858、MCT1/2阻害剤)などのさまざまなミトコンドリア阻害剤が3D腫瘍スフェアの形成をうまく阻止した。
【0010】
サイクリン依存性キナーゼ(CDK)4および6は、正常細胞とがん細胞の両方で細胞の有糸分裂と減数分裂を促進することが知られている酵素である。これらの酵素は、G1期からS期への細胞周期進行に関与する網膜芽細胞腫タンパク質のリン酸化と、それによる不活性化を引き起こす。研究では、がん細胞でCDKの活性が上昇する異常が確認されている。この活性上昇によって、さまざまな腫瘍抑制遺伝子が不活性化され、それにより、急速ながん幹細胞増殖と腫瘍成長が促される。p16やp27などの天然に存在するCDK阻害タンパク質は、肺がん細胞株のin vitroでの増殖を阻害することが示されている。ある種のCDK阻害剤は、正常な非形質転換細胞の細胞周期進行を阻害する能力によって、化学的保護剤として有用であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの酵素の標的阻害は、単独で、または他の治療法と組み合わせて、抗がん治療および治療薬の有望な戦略の1つである。CDK4/6経路を阻害することで、細胞がS期に進行するのを妨げ、これによりアポトーシスによる細胞死をもたらす。本明細書には、がん治療薬として有効性の高い3つのクラスのCDK阻害剤、主にCDK4およびCDK6(「CDK4/6」)阻害剤について記載する。抗がん性CDK4/6阻害剤の第1のクラスは、脂肪酸部分を有する置換ピロロピリミジン化合物である。下記式(nは9~20、より好ましくは12~20の整数である)は、第1のクラスの抗がん性CDK4/6阻害剤におけるいくつかの実施形態の例示である。
【0012】
【0013】
第2のクラスは、脂肪酸部分を有する置換ピリドピリミジンを含む。下記式(nは9~20、より好ましくは12~20の整数である)は、第2のクラスの抗がん性CDK4/6阻害剤における実施形態の例示である。
【0014】
【0015】
第3のクラスは、脂肪酸部分を有する置換ベンゾイミダゾール化合物を含む。下記式(mは0~4、より好ましくは0~2の整数であり、nは9~20、より好ましくは12~20の整数である)は、第3のクラスの抗がん性CDK4/6阻害剤における実施形態の例示である。
【0016】
【0017】
第1のクラス、第2のクラス、または第3のクラスのいずれかの化合物およびこれらの塩は、がん治療のための医薬化合物として使用し得る。当業者には理解されるように、例証的な塩に、特にコハク酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、およびリンゴ酸塩がある。本手法は、第1のクラス、第2のクラス、もしくは第3のクラスのいずれかの化合物、またはいくつかの実施形態では、各クラスの1つもしくは複数の化合物、または1つもしくは複数の治療上許容可能なこれらの塩の治療上有効な量、および薬学的に許容されるこれらの担体、希釈剤、もしくは賦形剤を有する医薬製剤も提供する。これらの形態はすべて、本手法の範囲内である。当然のことながら、当技術分野で知られている薬学的に許容される担体を使用し得る。
【0018】
本明細書に記載する化合物は、ヒトを含む哺乳動物のがんを治療する方法であって、かかる疾患または状態を治療するのに有効な第1のクラス、第2のクラス、もしくは第3のクラスのいずれかの化合物、または薬学的に許容されるこれらの塩の一定量を哺乳動物に投与することを含む方法と組み合わせて使用し得る。例えば本手法は、がんのような異常な細胞増殖を治療するのに有用である。本明細書に記載する化合物は、異常な細胞増殖疾患、ならびに特に乳房、卵巣、子宮頸部、前立腺、精巣、食道、胃、皮膚、肺、骨、結腸、膵臓、甲状腺、胆道、口腔前庭および咽頭、口唇、舌、口腔、咽頭、小腸、結腸直腸、大腸、直腸、脳、および中枢神経系のがん、神経膠芽腫、神経芽腫、角化棘細胞腫、類表皮がん、大細胞がん、腺がん、腺がん、腺腫、腺がん、濾胞がん、未分化がん、乳頭状がん、セミノーマ、メラノーマ、肉腫、膀胱がん、肝がん、腎がん、骨髄性疾患、リンパ性疾患、ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞白血病、ならびに白血病からなる群から選択されるがんを、第1のクラス、第2のクラス、もしくは第3のクラスの化合物、または薬学的に許容されるこれらの塩の治療上有効な量を、かかるがんと診断された被験者に投与することによって治療するために使用し得る。いくつかの実施形態では、本手法は、他の治療法と組み合わせて、および/または他の治療法の有効性を高めるために使用し得る。
【0019】
本手法のいくつかの実施形態は、次の一般式を有する化合物の形態を取り得る。
【0020】
【0021】
上式で、
R1は、水素、アリール、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、C3-C7シクロアルキル、またはC3-C7ヘテロシクリルであり;
R2は、独立して、水素、ハロゲン、C1-C8アルキル、C1-C8アシル、C3-C7シクロアルキル、C1-C8アルコキシ、C1-C8アルコキシアルキル、C1-C8ハロアルキル、C1-C8ヒドロキシアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、ニトリル、ニトロ、OR5、SR5、NR5R6、N(O)R5R6、P(O)(OR5)(OR6)、(CR5R6)mNR7R8、COR5、(CR4R5)mC(O)R7、CO2R5、CONR5R6、C(O)NR5SO2R6、NR5SO2R6、C(O)NR5OR6、S(O)nR5、SO2NR5R6、P(O)(OR5)(OR6)、(CR5R6)mP(O)(OR7)(OR8)、(CR5R6)m-アリール、(CR5R6)m-ヘテロアリール、および-CR5=CR6C(O)R7から選択され;
R3は、いずれの場合も、独立して、水素、ハロゲン、C1-C6アルキル、C1-C6ハロアルキル、C1-C6ヒドロキシアルキル、またはC3-C7シクロアルキルであり;
R5、R6、R7、およびR8は、独立して、水素、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロアリールアルキル(heterarylalkyl)であり;mは0~6であり;ならびに
nは9~20の整数、好ましくは12~20を表す。いくつかの好ましい実施形態では、R1はシクロペンチル、R2はアセチルである。さらに、いくつかの実施形態では、nは好ましくは12である。
【0022】
いくつかの実施形態では、本手法は、活性な治療薬として本明細書に記載する化合物、または薬学的に許容されるこれらの塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物の形態を取り得る。例えば組成物は、いくつかの実施形態では、18~55重量%の活性な治療薬と、薬学的に許容される担体とを含むコアを有する錠剤であり得る。薬学的に許容される担体は、例えば結晶セルロース、クロスポビドンタイプA、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、およびコロイド状無水シリカであり得る。
【0023】
本明細書に記載する化合物および医薬組成物は、がん幹細胞に対する効力および選択性を有するため、さまざまな抗がん治療用途に好適である。例えば本手法は、がん細胞、がん幹細胞、および循環腫瘍細胞のうち少なくとも1つの増殖を防止または低減する方法の形態を取ってよく、この方法では、これを必要とする患者に、本明細書に記載する化合物または医薬組成物の薬学的に有効な量を投与する。
【0024】
本手法は、がんを治療する方法の形態を取ってよく、この方法では、これを必要とする患者に、本明細書に記載する化合物または医薬組成物の薬学的に有効な量を投与する。
【0025】
本手法は、転移性疾患を治療または予防する方法の形態を取ってよく、この方法では、これを必要とする患者に、本明細書に記載する化合物または医薬組成物の薬学的に有効な量を投与する。
【0026】
本手法は、腫瘍再発を治療または予防する方法の形態を取ってよく、この方法では、これを必要とする患者に、本明細書に記載する化合物または医薬組成物の薬学的に有効な量を投与する。
【0027】
本手法は、化学療法耐性などのがん治療耐性を低下させる方法の形態を取ってよく、この方法では、これを必要とする患者に、本明細書に記載する化合物または医薬組成物の薬学的に有効な量を投与する。
【0028】
本手法は、放射線療法耐性、化学療法耐性、およびホルモン療法耐性のうち少なくとも1つを治療または予防する方法の形態を取ってよく、この方法では、これを必要とする患者に、本明細書に記載する化合物または医薬組成物の薬学的に有効な量を投与する。
【0029】
当然のことながら、当業者は、特定の実施形態について、当技術分野で既知の一般的な方法を適用して、投与量、投与形態、および投与スケジュールを決定し得る。
【0030】
本手法の化合物は、がんの治療または予防、転移性疾患の治療または予防、および腫瘍再発の治療または予防など、数多くの治療用途の薬剤の製造にも使用し得る。
【0031】
当業者は、以下の詳細な説明を検討することで、本手法の実施形態を認識し得る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】MCF7細胞株でのマンモスフェア形成アッセイを用いた、化合物[1C]をその親化合物と比較した用量反応曲線を示す図である。
【
図2】MCF7細胞株でのマンモスフェア形成アッセイを用いた、化合物[2C]をその親化合物と比較した用量反応曲線を示す図である。
【
図3】MCF7細胞株でのマンモスフェア形成アッセイを用いた、化合物[3C]の親化合物の用量反応曲線を示す図である。
【
図4】MCF7細胞株でのヘキスト染色アッセイを用いた、化合物[1C]をその親化合物と比較した用量反応曲線を示す図である。
【
図5】MCF7細胞株でのヘキスト染色アッセイを用いた、化合物[2C]をその親化合物と比較した用量反応曲線を示す図である。
【
図6】MCF7細胞株でのヘキスト染色アッセイを用いた、化合物[3C]の親化合物の用量反応曲線を示す図である。
【
図7】hTERT-BJ1細胞株でのヘキスト染色アッセイを用いた、化合物[1C]をその親化合物と比較した用量反応曲線を示す図である。
【
図8】hTERT-BJ1細胞株でのヘキスト染色アッセイを用いた、化合物[2C]をその親化合物と比較した用量反応曲線を示す図である。
【
図9】hTERT-BJ1細胞株でのヘキスト染色アッセイを用いた、化合物[3C]の親化合物の用量反応曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の説明は、本手法の例示的な実施形態を実施するための現在検討中の態様を含む。以下の説明は、限定的な意味で解釈されるべきではなく、単に本発明の一般原理を説明する目的でなされるものである。
【0034】
本手法では、CDK4/6阻害剤の3つのクラスの化合物を抗がん治療薬として使用し得る。第1のクラスは、脂肪酸部分を有する置換ピロロピリミジン化合物を含む。第2のクラスは、脂肪酸部分を有する置換ピリドピリミジン化合物を含む。第3のクラスは、脂肪酸部分を有する置換ベンゾイミダゾール化合物を含む。本明細書に記載する化合物は、有益な薬剤的性質および薬効成分を有する。これらの化合物の多くは、有意に選択的なCDK4/6阻害活性を示すため、CDK4/6キナーゼが異常に上昇しているような、またはCDK4/6キナーゼが正常な量および活性で活性化もしくは存在しているものの、細胞増殖障害を治療するためにCDKの阻害が望ましい多種多様な臨床状態の治療において有用である。特に、これらの化合物は抗がん治療薬として有望である。各クラスの化合物について、以下に定義を説明するが、これらは本手法の実施形態に適用可能である。
【0035】
本明細書で使用する記号C(O)は、炭素と酸素の二重結合を表す。本明細書で使用する用語「ハロ」は、ハロゲンを意味し、当技術分野で理解されるように結合した、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を含む。
【0036】
本明細書で使用する用語「アルキル」は、直鎖アルキル基(例えばメチル、エチルなど)、分岐鎖アルキル基(イソプロピル、tert-ブチルなど)、シクロアルキル(脂環式)基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル)、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む飽和脂肪族基を指す。用語「アルキル」も、アルケニル基およびアルキニル基を含む。一般式は、用語「Cnアルキル」(nは、例えば1~20の整数である)を使用し、基中の特定範囲または特定数の炭素の特定のアルキル基(直鎖または分岐鎖)を示し得る。例えば、用語C1-C3アルキルは、メチル、エチル、プロピル、およびイソプロピルを含むが、これらに限定されない。同様に、用語C3-6シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルを含むが、これらに限定されない。アルキル基およびシクロアルキル基は、非置換または置換であり得る。したがって、用語「アルキル」は「非置換アルキル」と「置換アルキル」の両方を含み、後者は、炭化水素骨格の1つまたは複数の炭素上の水素を置き換える置換基を有する部分を指す。
【0037】
用語「アルケニル」は、上記のアルキルと長さおよび可能な置換基の点で類似しているが、少なくとも1つの二重結合を含む不飽和脂肪族基を含む。アルケニルは「非置換アルケニル」と「置換アルケニル」も含み、後者は、炭化水素骨格の1つまたは複数の炭素上の水素を置き換える置換基を有する部分を指す。
【0038】
例えば、用語「アルケニル」は、直鎖アルケニル基(例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニルなど)、分岐鎖アルケニル基、シクロアルケニル(脂環式)基(シクロプロペニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル)、アルキルまたはアルケニル置換シクロアルケニル基、およびシクロアルキルまたはシクロアルケニル置換アルケニル基を含む。用語「アルケニル」は、炭化水素骨格の1つまたは複数の炭素を置き換える酸素、窒素、硫黄、またはリン原子を含むアルケニル基をさらに含む。ある実施形態では、直鎖または分岐鎖アルケニル基は、その骨格に6個以下の炭素原子を有する(例えば、直鎖はC2-C6、分岐鎖はC3-C6)。同様にシクロアルケニル基は、その環状構造に3~8個の炭素原を有してよく、より好ましくは、その環状構造に5または6個の炭素原を有する。用語C2-C6は、2~6個の炭素原子を有するアルケニル基を含む。
【0039】
用語「アルキニル」は、上記のアルキルと長さおよび可能な置換基の点で類似しているが、少なくとも1つの三重結合を含む不飽和脂肪族基を含む。さらに、用語「アルキニル」は「非置換アルキニル」と「置換アルキニル」の両方を含み、後者は、炭化水素骨格の1つまたは複数の炭素上の水素を置き換える置換基を有するアルキニル部分を指す。
【0040】
例として、用語「アルキニル」は、直鎖アルキニル基(例えば、エチニル、プロピル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニルなど)、分岐鎖アルキニル基、およびシクロアルキルまたはシクロアルケニル置換アルキニル基を含む。用語「アルキニル」は、炭化水素骨格の1つまたは複数の炭素を置き換える酸素、窒素、硫黄、またはリン原子を含むアルキニル基をさらに含む。ある実施形態では、直鎖または分岐鎖アルキニル基は、その骨格に6個以下の炭素原子を有する(例えば、直鎖はC2-C6、分岐鎖はC3-C6)。用語C2-C6は、2~6個の炭素原子を有するアルキニル基を含む。
【0041】
用語「置換」は、1つまたは複数の原子、例えば分子のC、O、またはN上の水素を置き換える置換基を有する部分を表すことを意図する。そのような置換基は、例えばアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、ハロ、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボン酸塩、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、リン酸塩、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、硫酸塩類、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、モルフォリノ、フェノール、ベンジル、フェニル、ピペラジン(piperizine)、シクロペンタン、シクロヘキサン、ピリジン、5H-テトラゾール、トリアゾール、ピペリジン、または芳香族もしくはヘテロ環式芳香族部分、およびこれらの組み合わせを含むことができるがこれらに限定されない。
【0042】
用語「アミン」または「アミノ」は、当技術分野で一般に理解されるように、いずれも分子、または部分もしくは官能基を指すものとし、第一級、第二級、第三級であり得る。用語「アミン」または「アミノ」は、窒素原子が少なくとも1つの炭素原子、水素原子、またはヘテロ原子に共有結合している化合物を含む。これらの用語は、例えば「アルキルアミノ」、「アリールアミノ」、「ジアリールアミノ」、「アルキルアリールアミノ」、「アルキルアミノアリール」、「アリールアミノアルキル」、「アルカミノアルキル」、「アミド(amide)」、「アミド(amido)」、および「アミノカルボニル」を含むがこれらに限定されない。用語「アルキルアミノ」は、窒素が少なくとも1つの追加のアルキル基と結合している基および化合物を含む。用語「ジアルキルアミノ」は、窒素原子が少なくとも2つの追加のアルキル基と結合している基を含む。用語「アリールアミノ」および「ジアリールアミノ」は、それぞれ窒素が少なくとも1つまたは2つのアリール基と結合している基を含む。用語「アルキルアリールアミノ」、「アルキルアミノアリール」、または「アリールアミノアルキル」は、少なくとも1つのアルキル基および少なくとも1つのアリール基に結合しているアミノ基を指す。用語「アルカミノアルキル」は、アルキル基にも結合している窒素原子に結合しているアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を指す。
【0043】
用語「アミド(amide)」、「アミド(amido)」、または「アミノカルボニル」は、カルボニル基またはチオカルボニル基の炭素と結合している窒素原子を有する化合物または部分を含む。これらの用語は、カルボニル基に結合したアミノ基に結合したアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアルキニル基を含む「アルカミノカルボニル」基または「アルキルアミノカルボニル」基を含む。これは、カルボニル基またはチオカルボニル基の炭素と結合しているアミノ基と結合したアリール部分またはヘテロアリール部分を含むアリールアミノカルボニル基およびアリールカルボニルアミノ基を含む。用語「アミド(amide)」は、用語「アルキルアミノカルボニル」、「アルケニルアミノカルボニル」、「アルキニルアミノカルボニル」、「アリールアミノカルボニル」、「アルキルカルボニルアミノ」、「アルケニルカルボニルアミノ」、「アルキニルカルボニルアミノ」、および「アリールカルボニルアミノ」を含む。アミド(amide)は、尿素基(アミノカルボニルアミノ)およびカルバメート(オキシカルボニルアミノ)も含む。
【0044】
用語「アリール」は、0~4個のヘテロ原子、例えばフェニル、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアチアゾール(isothiaozole)、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジンなどを含み得る5および6員単環芳香族基などの基を含む。さらに、用語「アリール」は、三環式、二環式などの多環式アリール基、例えばナフタレン、ベンゾキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、アントリル、フェナントリル、ナフトリジン、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、またはインドリジンを含む。環状構造中にヘテロ原子を有するそれらのアリール基は、「アリールヘテロ環」、「ヘテロ環」、「ヘテロアリール」、または「ヘテロ芳香族化合物」とも称し得る。芳香環は、1つまたは複数の環位で、上述したそのような置換基、例えばアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボン酸塩、アルキルカルボニル、アルキルアミノカルボニル(alkylaminoacarbonyl)、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、リン酸塩、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、硫酸塩類、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ環式芳香族部分と置換できる。アリール基は、多環(例えばテトラリン)を形成するように、芳香族ではない脂環またはヘテロ環と融合または架橋させることもできる。
【0045】
本明細書で使用する用語「ヘテロアリール」は、各環に最大7個の原子を有する安定した単環式環または二環式環を表し、少なくとも1つの環は芳香環であり、O、N、およびSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を含む。本定義の範囲内のヘテロアリール基は、アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、キノキサリニル、ピラゾリル、インドリル、ベンゾトリアゾリル、フラニル、チエニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、インドリル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、テトラヒドロキノリンを含むがこれらに限定されない。以下のヘテロ環の定義にあるように、「ヘテロアリール」は、任意の窒素含有ヘテロアリールのN-オキサイド誘導体を含むとも理解される。ヘテロアリール置換基が二環式で、1つの環が非芳香族である、またはヘテロ原子を含まない場合、付着は、それぞれ芳香環またはヘテロ原子含有環を介すると理解される。
【0046】
本明細書で使用する用語「ヘテロ環」または「ヘテロシクリル」は、O、N、およびSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を含む5~10員芳香族または非芳香族ヘテロ環を意味することを意図し、二環式基を含む。したがって、「ヘテロシクリル」は上述のヘテロアリール、およびそれらのジヒドロおよびテトラヒドロ類似体を含む。「ヘテロシクリル」のその他の例に、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソオキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、1,4-ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジン-2-オニル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニル、およびテトラヒドロチエニル、ならびにこれらのN-オキシドなどがあるがこれらに限定されない。ヘテロシクリル置換基は、炭素原子またはヘテロ原子を介して付着することができる。
【0047】
用語「アシル」は、アシル基(CH3CO-)またはカルボニル基を含む化合物および部分を含む。用語「置換アシル」は、1つまたは複数の水素原子が、例えばアルキル基、アルキニル基、ハロゲン類、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボン酸塩、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、リン酸塩、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、硫酸塩類、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ環式芳香族部分で置き換えられているアシル基を含む。
【0048】
用語「アシルアミノ」は、アシル部分がアミノ基に結合している部分を含む。例えばこの用語は、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基、およびウレイド基を含む。
【0049】
用語「アルコキシ」は、酸素原子に共有結合した置換および非置換アルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基を含む。アルコキシ基の例として、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、およびペントキシ基があり、シクロペントキシなどの環式基があり得る。置換アルコキシ基の例にハロゲン化アルコキシ基がある。アルコキシ基は、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボン酸塩、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、リン酸塩、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、硫酸塩類、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールなどの基、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分で置換できる。ハロゲン置換アルコキシ基の例に、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、トリクロロメトキシなどがあるがこれらに限定されない。
【0050】
用語「カルボニル」または「カルボキシ」は、酸素原子と二重結合した炭素原子およびこれらの互変異性体形態を含む化合物および部分を含む。カルボニルを含む部分の例に、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、アミド類、エステル類、無水物類などがある。用語「カルボキシ部分」または「カルボニル部分」は、アルキル基がカルボニル基と共有結合している「アルキルカルボニル」基、アルケニル基がカルボニル基と共有結合している「アルケニルカルボニル」基、アルキニル基がカルボニル基と共有結合している「アルキニルカルボニル」基、アリール基がカルボニル基と共有結合している「アリールカルボニル」基などの基を指す。さらに、この用語は、1つまたは複数のヘテロ原子がカルボニル部分に共有結合している基も指す。例えばこの用語は、例えばアミノカルボニル部分(カルボニル基の炭素に窒素原子が結合している、例えばアミド(amide))、カルボニル基の炭素に酸素原子と窒素原子が共に結合しているアミノカルボニルオキシ部分(例えば「カルバメート」ともいう)などの部分を含む。さらにアミノカルボニルアミノ基(例えば尿素)は、ヘテロ原子(例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子など)および炭素原子に結合したカルボニル基の他の組み合わせも含む。さらにヘテロ原子は、1つまたは複数のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アシルなどの部分とさらに置換することができる。
【0051】
用語「チオカルボニル」または「チオカルボキシ」は、硫黄原子に二重結合で連結した炭素を含む化合物および部分を含む。用語「チオカルボニル部分」は、カルボニル部分に類似した部分を含む。例えば「チオカルボニル」部分は、アミノチオカルボニルを含み、アミノ基はチオカルボニル基の炭素原子と結合しており、さらに、他のチオカルボニル部分は、オキシチオカルボニル(炭素原子に結合した酸素原子)、アミノチオカルボニルアミノ基などを含む。
【0052】
用語「エーテル」は、2つの異なる炭素原子またはヘテロ原子と結合した酸素原子を含む化合物または部分を含む。例えばこの用語は、別のアルキル基に共有結合している酸素原子に共有結合したアルキル、アルケニル、またはアルキニル基を指す「アルコキシアルキル」を含む。
【0053】
用語「エステル」は、カルボニル基の炭素に結合している酸素原子と結合した炭素原子またはヘテロ原子を含む化合物および部分を含む。用語「エステル」は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニルなどのアルコキシカルボキシ基を含む。アルキル、アルケニル、またはアルキニル基は上記に定義する通りである。
【0054】
用語「チオエーテル」は、2つの異なる炭素原子またはヘテロ原子に結合した硫黄原子を含む化合物および部分を含む。チオエーテルの例に、アルクチオアルキル、アルクチオアルケニル、およびアルクチオアルキニルがあるがこれらに限定されない。用語「アルクチオアルキル」は、アルキル基に結合している硫黄原子に結合したアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を有する化合物を含む。同様に、用語「アルクチオアルケニル」および「アルクチオアルキニル」は、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基が、アルキニル基に共有結合している硫黄原子に結合している化合物または部分を指す。
【0055】
用語「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」は、-OHまたは-O-を有する基を含む。
【0056】
用語「多環式」または「多環基」は、2つ以上の炭素が2つの隣接する環で共通している2つ以上の環(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、および/またはヘテロシクリル)を有する部分を含み、例えば、環は「縮合環」である。非隣接原子を介して連結している環は「橋かけ」環と呼ばれる。多環式化合物の環はそれぞれ、例えばハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボン酸塩、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、リン酸塩、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、硫酸塩類、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ環式芳香族部分などの上記に記載するような置換基で置換できる。
【0057】
用語「ヘテロ原子」は、炭素または水素以外の任意の元素の原子を指す。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄、およびリンである。
【0058】
さらに、句「これらの任意の組み合わせ」は、任意の数の列挙した官能基および分子を組み合わせて大きな分子構造を作り得ることを意味する。例えば、用語「フェニル」、「カルボニル」(または「=O」)、「-O-」、「-OH」、およびC1-6(すなわち、-CH3および-CH2CH2CH2-)は、組み合わせて3-メトキシ-4-プロポキシ安息香酸置換基を形成することができる。官能基と分子を組み合わせて大きな分子構造を作ると、必要に応じて水素を除去または添加し、各原子の原子価を満たすことができることを理解されたい。
【0059】
本明細書に記載する化合物は、当業者であれば理解できるように、各原子の原子価を満たすために、必要に応じて、隣接する原子および/または水素間の結合を含む。結合および/または水素原子は、必要に応じて、以下の種類の原子のそれぞれに以下の総結合数をもたらすように追加される:炭素:4個の結合;窒素:3個の結合;酸素:2個の結合;および硫黄:2~6個の結合。
【0060】
化合物の「塩」という用語は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、および硫酸などの無機酸、ならびに酒石酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、およびコハク酸などの有機酸、ならびにメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、および2-ヒドロキシエタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸、ならびにベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、およびナフタレン-1,5-ジスルホン酸などのアリールスルホン酸からなる群から選択される酸を用いて調製される対応する塩に関する。
【0061】
本明細書で使用する句「薬学的に有効な量」は、プロテインキナーゼ活性の調節、調整、もしくは阻害などの治療結果、例えばプロテインキナーゼの活性阻害、またはがんの治療を達成するために、宿主、または宿主の細胞、組織、もしく器官に投与するのに必要な量を示す。当技術分野における通常の技術を有する医師または獣医師は、必要な医薬組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師または獣医師は、所望の治療効果を達成するために必要とされるよりも少ない量で、医薬組成物に用いられる本発明の化合物の用量を開始し、所望の効果が得られるまで用量を徐々に増加させることができよう。例えば、当該技術分野における一般的かつ既知の方法を用いて、化合物の最大耐用量と、これを必要とする人に検出可能な治療効果をもたらす有効量の両方を確立し得る。同様に、当該技術分野における一般的かつ既知の方法を用いて、検出可能な治療効果をもたらすのに十分な治療薬を投与するための投与量および投与スケジュールを決定し得る。本明細書に開示する例証的な投与例は、決して、本手法の下でもたらされ得る潜在的な投与量および投与スケジュールを制限するものではない。
【0062】
用語「約」は、当業者が考慮する際に、平均値の許容される標準誤差内に収まる値を有することを意味する。予想されるように、「約」の意味は、それが使用される文脈に依存する。多くの場合、用語「約」は、それが参照する値または範囲の±5%、好ましくは±2.5%、より好ましくは±1%を指し得る。例えば重量分率の文脈では、句「約20%」は、20±5%、好ましくは20±2.5%、およびより好ましくは20±1%を意味し得る。
【0063】
用語「治療する」、「治療された」、「治療している」、および「治療」は、治療される状態、障害、または疾患、特にがんに関連する、またはこれによって引き起こされる少なくとも1つの症状の軽減または緩和を含む。特定の実施形態では、治療は、本発明の化合物によって治療されるがんに関連する、またはこれによって引き起こされる少なくとも1つの症状を軽減および/または緩和することを含む。例えば、治療はがんの1つもしくは複数の症状の軽減、またはがんの根治である可能性がある。
【0064】
本明細書に記載する化合物は、本開示が脂肪酸部分と呼ぶものを含む。本明細書で使用する「脂肪酸」は、脂肪族鎖を有するカルボン酸であり、脂肪族鎖は飽和または不飽和であり得るが、飽和鎖が好ましい。飽和脂肪酸の例に、ラウリン酸(CH3(CH2)10COOH)、パルミチン酸(CH3(CH2)14COOH)、ステアリン酸(CH3(CH2)16COOH)、およびミリスチン酸(CH3(CH2)12COOH)がある。オレイン酸(CH3(CH2)7CH=CH(CH2)7COOH)は、天然の不飽和脂肪酸の一例である。脂肪酸の塩またはエステル、およびその脂肪アミド部分に言及することもあるが、簡略化のため、これらは本明細書で使用する脂肪酸部分の意味に含まれるものとする。例えば、ミリスチン酸はミリスチン酸塩と称されることがあり、オレイン酸はオレイン酸塩と称されることがある。脂肪酸部分は、脂肪酸のカルボアシル、すなわち、カルボン酸の水酸基が失われることによって形成される基でもあり得る。いくつかの実施形態では、脂肪酸部分はアミド結合を介して治療薬に結合し得る。一例として、ミリスチン酸結合体は脂肪酸部分CH3(CH2)12CO-NH-を有してよく、第三級窒素は以下の治療薬に結合している。
【0065】
【0066】
上式で、nは1~20の整数であり、好ましくは10~20である。これは、ミリスチン酸塩部分がミリストイル化によって共役し、テトラデカンアミド(またはミリスタミド)基となる場合に生じ得る。
【0067】
置換ピロロピリミジン化合物
本手法のいくつかの実施形態では、第1のクラスの抗がん性CDK4/6阻害剤は、置換ピロロピリミジン化合物、および薬学的に許容されるこれらの塩である。第1のクラスのいくつかの化合物は、リボシクリブとしても知られる、親化合物7-シクロペンチル-N,N-ジメチル-2-[(5-ピペラジン-1-イルピリジン-2-イル)アミノ]ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-カルボキサミドの誘導体であると認識する必要がある。第1のクラスのいくつかの実施形態は、以下の一般式[1A]に示す、脂肪酸部分がピペラジンに結合されている化学構造を有する。
【0068】
【0069】
一般式[1A]において:
R4は、水素、C1-C8アルキル、置換C1-C8アルキル、C3-C8シクロアルキル、置換C3-C8シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、および置換ヘテロアリールからなる群から選択され;
ZはCRzであり、Rzは、ハロ、水素、C1-C3アルキル、C1-C3アルコキシ、CN、C=NOH、C=NOCH3、C(O)H、C(O)C1-C3アルキル、C3-C8シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、置換C1-C3アルキル、置換C3-C8シクロアルキル、置換ヘテロシクリル、置換アリール、置換ヘテロアリール、-B-NRaRb、-B-ORa、-B-C(O)Ra、-B-C(O)ORa、-B-C(O)NRaRaからなる群から選択され;Bは結合、C1-C3アルキル、または分岐C1-C3アルキルであり;RaおよびRbはそれぞれ独立して、水素、C1-C3アルキル、C3-C8シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、置換アルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクリル、置換アリール、および置換ヘテロアリールからなる群から選択され;ならびに
脂肪酸部分において、nは9~20の整数を表し、好ましくは12~20である。
【0070】
当然のことながら、薬学的に許容される塩も使用し得る。上記で言及したように、塩は、例えば無機酸、有機酸、アルキルスルホン酸、エタンスルホン酸、およびアリールスルホン酸から選択される酸を使用して調製し得る。本手法のいくつかの好ましい実施形態では、第1のクラスの抗がん性CDK4/6阻害剤は、以下に示す一般式[1B]を有する化合物である。そのような実施形態では、R4はC5シクロアルキルであり、Zはジメチルカルボキサミドまたはアセチルであり、nは9~20、より好ましくは12~20の整数を表す。この一般式の親化合物は、HR陽性、HER2陰性の進行性または転移性乳がんの治療に(アロマターゼ阻害剤と併用で)使用されるFDA承認薬、リボシクリブである。しかしながら、式[1A]による本手法の実施形態では、末端のピペラジンにC11-C22脂肪酸部分が結合している。好ましくは、脂肪酸部分は直鎖状で飽和している。いくつかの好ましい実施形態では、脂肪酸部分はラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、およびステアリン酸のうちの1つである。脂肪酸部分によって、化合物の細胞取り込みが有意に向上し、化合物によるがん幹細胞増殖の阻害、および腫瘍細胞の選択性が大幅に向上する。
【0071】
【0072】
例証的な実施形態を化合物[1C]として以下に示す。この式で、R
4は非置換C
5シクロアルキルであり、Zはジメチルカルボキサミドであり、nは12である。これにより、本実施形態は14炭素脂肪酸(すなわちミリスチン酸塩)部分を有する。化合物[1C]として示す化合物を合成し、マンモスフェアアッセイにおいて、1~100μMの濃度で既知の抗がん治療薬リボシクリブと比較すると、MCF7細胞の阻害が大幅に改善し、化合物に対する脂肪酸部分の信じられないような影響が示された。実験室での予備的評価において本実施形態は、1μMという低い濃度で、細胞増殖の100%を効果的に抑制し、極めて優れた抗がん効果を発揮した。例えば
図1は、化合物[1C]およびその親化合物の用量反応曲線を示し、脂肪酸部分の追加によるCSC阻害の改善を明らかにしている。当然のことながら、炭素が11個と少ない、および炭素が22個と多い他の脂肪酸部分でも同様の結果が予想される。
【0073】
【0074】
本手法のいくつかの実施形態では、第1のクラスの抗がん性CDK4/6阻害剤は、一般式[1D]に示す置換ピロロピリミジン化合物である。一般式[1A]と比較すると、一般式[1D]を有する化合物はZに脂肪酸部分を含む。当然のことながら、薬学的に許容される塩も使用し得る。
【0075】
【0076】
一般式[1D]において:
R4は、水素、C1-C8アルキル、置換C1-C8アルキル、C3-C8シクロアルキル、置換C3-C8シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、および置換ヘテロアリールからなる群から選択され;
R3は、水素、OH、C1-C8アルキル、置換C1-C8アルキル、C3-C8シクロアルキル、C(O)C1-C8アルキル、C1-C8ハロアルキル、C1-C8シアノアルキル、C1-C8アルキル-OH、SO2-C1-C8アルキル、C1-C8アルキル、C3-C8シクロアルキル、およびC1-C8アルコキシからなる群から選択され、R3が水素でない場合、置換または非置換であってよく;ならびに
脂肪酸部分において、nは9~20の整数を表し、好ましくは12~20である。
【0077】
本手法の好ましい実施形態では、第1のクラスの抗がん性CDK4/6阻害剤は、以下に示す一般式[1E]を有する化合物である。そのような実施形態では、R4はC5シクロアルキルであり、R3は水素であり、nは9~20、より好ましくは10~20、より好ましくは10~16の整数を表す。一般式[1E]を有する化合物はリボシクリブの誘導体であり、カルボキシル基においてジメチルアミノ基が脂肪酸部分に置き換わっている。
【0078】
【0079】
例証的な実施形態である化合物[1F]を以下に示す。この式で、R4は非置換C5シクロアルキルであり、R3は水素であり、nは12である。これにより、本実施形態は14炭素脂肪酸(すなわちミリスチン酸塩)部分を有する。化合物[1F]は、マンモスフェアアッセイで阻害の改善を示すことが予想される。
【0080】
【0081】
以下の表1は、化合物[1C]とその親化合物(リボシクリブ)を比較したさまざまなアッセイの結果をまとめたものであり、両方の化合物のin vitroの生物学的データを含む。化合物[1C]は、3Dマンモスフェアアッセイでは、親化合物と比較して効力が7倍の改善を示し(IC50が約0.2μMと約1.5μM)、2D細胞生存率アッセイでは同様の活性を保持した(IC50が両方の化合物で約2μM)。これは、脂肪酸部分との共役によって大幅に改善するのが、3Dマンモスフェアアッセイにおける効力だけでないことを示している。マンモスフェアと単層の選択指数(「SI」)を比較すると、共役によってマンモスフェアに対する選択性も改善することがわかる(SIが10と1.3)。いずれの化合物も、非腫瘍性細胞株hTERT-BJ1において90μMの濃度までは非毒性であり、腫瘍細胞株に対して高い選択性を示した。このように、本手法による化合物は、腫瘍細胞に対して効力および選択性が有意に改善している。
【0082】
【0083】
表で使用する「IC50(MCF7マンモスフェア)」は、ER+乳がん細胞株であるMCF7を用いた3Dマンモスフェアアッセイにおける半最大阻害濃度を指す。用語「IC50(MCF7単層)」は、ER+乳がん細胞株であるMCF7を用いた2D細胞生存率アッセイにおける半最大阻害濃度を指す。用語「IC50(BJ1単層)」は、不死化非腫瘍性線維芽細胞株であるhTERT-BJ1を用いた2D細胞生存率アッセイにおける半最大阻害濃度を指す。用語「SI(マンモスフェア/単層MCF7)」は、MCF7に対する3Dおよび2Dアッセイにおける生物活性を比較するIC50値間の比であるマンモスフェア選択指数を指す。用語「SI(BJ1/MCF7単層)」は、MCF7およびhTERT-BJ1に対する細胞生存率アッセイにおける生物活性を比較するIC50値間の比であるがん選択指数を指す。
【0084】
置換ピリドピリミジン化合物
以下の一般式[2A]に示すように、第2のクラスは、脂肪酸部分を有する置換ピリドピリミジンを含む。第2のクラスのいくつかの実施形態は、パルボシクリブとしても知られる、6-アセチル-8-シクロペンチル-5-メチル-2-(5-ピペラジン-1-イル-ピリジン-2-イルアミノ)-8H-ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-オンの誘導体を含むと認識する必要がある。また当然のことながら、当業者であれば理解できるように、上記で定義したものなどの薬学的に許容される塩も使用し得る。その他の塩の例として、リンゴ酸塩、酒石酸塩、臭化物、臭化水素二水和物、塩化水素、硫酸二水和物、カムシレート、ナプシレート、ナプシレート二水和物、トシレート、クエン酸一水和物、マレイン酸塩、およびシュウ酸塩がある。
【0085】
【0086】
一般式[2A]において:
R1は、水素、アリール、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、C3-C7シクロアルキル、またはC3-C7ヘテロシクリルであり;
R2は、独立して、水素、ハロゲン、C1-C8アルキル、C1-C8アシル、C3-C7シクロアルキル、C1-C8アルコキシ、C1-C8アルコキシアルキル、C1-C8ハロアルキル、C1-C8ヒドロキシアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、ニトリル、ニトロ、OR5、SR5、NR5R6、N(O)R5R6、P(O)(OR5)(OR6)、(CR5R6)mNR7R8、COR5、(CR4R5)mC(O)R7、CO2R5、CONR5R6、C(O)NR5SO2R6、NR5SO2R6、C(O)NR5OR6、S(O)nR5、SO2NR5R6、P(O)(OR5)(OR6)、(CR5R6)mP(O)(OR7)(OR8)、(CR5R6)m-アリール、(CR5R6)m-ヘテロアリール、および-CR5=CR6C(O)R7から選択され;
R3は、いずれの場合も、独立して、水素、ハロゲン、C1-C6アルキル、C1-C6ハロアルキル、C1-C6ヒドロキシアルキル、またはC3-C7シクロアルキルであり;
R5、R6、R7、およびR8は、独立して、水素、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロアリールアルキルであり;mは0~6であり;ならびに
脂肪酸部分において、nは9~20の整数を表し、好ましくは12~20である。
【0087】
以下に示す一般式[2B]は、本手法による第2のクラスの好ましい実施形態の一般式である。一般式[2B]において、R1は非置換C5シクロアルキルであり、R2はC1アシル(アセチル)であり、R3はメチルであり、nは9~20、好ましくは12~20の整数を表す。
【0088】
【0089】
第2のクラスの例証的な実施形態である化合物[2C]を以下に示す。この式で、R
1は非置換C
6シクロアルキルであり、R
2はC
1アシル(アセチル)であり、R
3はメチルであり、nは12である。これにより、本実施形態は14炭素脂肪酸(すなわちミリスチン酸塩)部分を有する。化合物[2C]を合成し、マンモスフェアアッセイにおいて、1~100μMの濃度で既知の抗がん治療薬パルボシクリブと比較すると、MCF7細胞の阻害が大幅に向上した。これらの結果は、本手法による第2のクラスの化合物が、化合物の抗がん効果に有意に有益な影響を与えることも示している。例えば
図2は、化合物[2C]およびその親化合物の用量反応曲線を示し、脂肪酸部分の追加によるCSC阻害の改善を明らかにしている。当然のことながら、炭素が11個と少ない、および炭素が22個と多い他の脂肪酸部分でも同様の結果が予想される。
【0090】
【0091】
以下の一般式[2D]に示すように、第2のクラスも、脂肪酸部分を有する置換ピリドピリミジンを含む。見てわかるように、式[2D]の脂肪酸部分は、式[2A]のピペラジンとは異なり、ピリド[2,3-d]ピリミジンで結合している。
【0092】
【0093】
一般式[2D]において:
R1は、水素、アリール、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、C3-C7シクロアルキル、またはC3-C7ヘテロシクリルであり;
R2は、水素、ハロゲン、C1-C8アルキル、C1-C8アシル、C3-C7シクロアルキル、C1-C8アルコキシ、C1-C8アルコキシアルキル、C1-C8ハロアルキル、C1-C8ヒドロキシアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、ニトリル、ニトロ、OR5、SR5、NR5R6、N(O)R5R6、P(O)(OR5)(OR6)、(CR5R6)mNR7R8、COR5、(CR4R5)mC(O)R7、CO2R5、CONR5R6、C(O)NR5SO2R6、NR5SO2R6、C(O)NR5OR6、S(O)nR5、SO2NR5R6、P(O)(OR5)(OR6)、(CR5R6)mP(O)(OR7)(OR8)、(CR5R6)m-アリール、(CR5R6)m-ヘテロアリール、および-CR5=CR6C(O)R7から選択され;
R3は、いずれの場合も、独立して、水素、ハロゲン、C1-C6アルキル、C1-C6ハロアルキル、C1-C6ヒドロキシアルキル、またはC3-C7シクロアルキルであり;
R5、R6、R7、およびR8は、独立して、水素、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロアリールアルキルから選択され;mは0~6であり;ならびに
脂肪酸部分において、nは9~20の整数を表し、好ましくは12~20である。
【0094】
以下に示す一般式[2E]は、本手法による第2のクラスの別の好ましい実施形態の例である。一般式[2E]において、R1は非置換C5シクロアルキルであり、R2はHであり、R3はメチルであり、nは9~20、好ましくは12~20の整数を表す。
【0095】
【0096】
第2のクラスの例証的な実施形態である化合物[2F]を以下に示す。この式で、R1は非置換C5シクロアルキル(例えばシクロペンチル)であり、R2はHであり、R3はメチルであり、nは12である。これにより、本実施形態は14炭素脂肪酸(すなわちミリスチン酸塩)部分を有する。
【0097】
【0098】
以下の表2は、化合物[2C]とその親化合物(パルボシクリブ)を比較したさまざまなアッセイの結果をまとめたものであり、両方の化合物のin vitroの生物学的データを含む。結果から、化合物[2C]は、親化合物パルボシクリブと比較して、3Dマンモスフェアアッセイで効力が低下していたことがわかる(IC50が約5.1μMと約0.2μM)。しかしながら、化合物[2C]は2D細胞生存率アッセイで30μMの濃度まで非毒性であったのに対し、パルボシクリブはIC50が約0.1μMであった。さらにパルボシクリブは、2Dおよび3DのMCF7アッセイと比較して非選択性であった。これらの結果は、化合物[2C]が、正常細胞とは対照的に、3Dマンモスフェアに対して化合物選択性が改善していることを実証している。したがって本手法の化合物は、がん細胞、特にCSCを選択的に標的にするのに使用し得ることが認識されるべきである。いずれの化合物も、非腫瘍性細胞株hTERT-BJ1に対して90μMの濃度までは非毒性であり、腫瘍細胞株に対して高い選択性を示した。したがって、本手法の第2のクラスの化合物は、がん幹細胞を標的とすることに関して選択性が改善している。
【0099】
【0100】
置換ベンゾイミダゾール化合物
第3のクラスは、以下に示す一般式[3A]を有する置換ベンゾイミダゾール化合物を含む。また当然のことながら、当業者であれば理解できるように、上記で定義したものなどの薬学的に許容される塩も使用し得る。第3のクラスのいくつかの実施形態は、アベマシクリブとしても知られる、N-[5-[(4-エチルピペラジン-1-イル)メチル]ピリジン-2-イル]-5-フルオロ-4-(7-フルオロ-2-メチル-3-プロパン-2-イルベンズイミダゾール-5-イル)ピリミジン-2-アミン)の誘導体を含むと認識する必要がある。最初の2つのクラスの化合物と同様に、第3のクラスの化合物も強力なCDK4/6阻害剤である。
【0101】
【0102】
一般式[3A]において:
R1は脂肪酸部分
【0103】
【0104】
であり、上式で、mは0~4、より好ましくは0~2の整数であり、mが0のとき、ピペラジンには窒素との直接結合が存在し、nは9~20、より好ましくは12~20の整数であり;
R2は、HまたはC1-C3アルキルであり;
R3およびR4は、Hまたはフッ素であり、R3およびR4のうち少なくとも1つはフッ素であり;
R5は、C3-C5アルキル、C3-C5シクロアルキル、またはシクロプロピル-メチルであり;
R6は、HまたはC1-C3アルキルであり;ならびに
Xは、結合、C1-C3アルキル、O、またはSである。
【0105】
以下に示す一般式[3B]は、本手法による第3のクラスの好ましい実施形態の一般式である。一般式[3B]において、R1は脂肪酸部分
【0106】
【0107】
であり、上式で、mは0~4、より好ましくは0~2の整数であり、mが0のとき、ピペラジンには窒素との直接結合が存在し、nは9~20、より好ましくは12~20の整数であり、R2はHであり、R3およびR4はフッ素であり、R5はC3アルキル(イソブチル)であり、R6はメチルである。
【0108】
【0109】
以下に示す化合物[3C]は、本手法による第3のクラスの例証的な好ましい実施形態の式である。一般的な化合物[3C]において、R1は脂肪酸部分
【0110】
【0111】
であり、上式で、mは0であり、nは12であり、R2はHであり、R3およびR4はフッ素であり、R5はC3アルキル(イソブチル)であり、R6はメチルである。nが9~20である実施形態を検討し、評価の計画を立てる。化合物[3C]として示す実施形態は、進行性および転移性乳がんの治療用としてFDAに承認されたCDK4/6阻害剤、アベマシクリブの誘導体である。化合物[3C]、および式[3A]を有するその他の化合物は、本明細書に記載するように、CDK4/6を効果的に阻害し、そのため抗がん治療薬としての使用に特に好適であり、がん細胞およびCSCを選択的に標的、阻害すると予想される。
【0112】
【0113】
第3のクラスの化合物の第2の例証的な実施形態を、以下に式[3D]として示す。この例では、R1は脂肪酸部分
【0114】
【0115】
であり、上式で、mは2であり、nは12であり、R2はHであり、R3およびR4はフッ素であり、R5はC3アルキル(イソブチル)であり、R6はメチルである。化合物[3C]と同様に、本実施形態は、CDK4/6阻害および選択性に関して、アベマシクリブよりも効力が高いと予想され、本明細書に記載する抗がん治療薬としての使用に特に好適である。
【0116】
【0117】
以下の表3は、アベマシクリブのin vitro生物学的データを示す。見てわかるように、化合物は、3Dマンモスフェアアッセイ(IC50が<0.04μM)において共役前にすでに高い効力がある。さまざまな脂肪酸部分を含む式[3A]を有する化合物が評価されている。アベマシクリブはCSCに対して特異性も効力も高いことが、表3から認識されるべきである。したがってアベマシクリブは、CSCを特異的に標的とする治療薬として使用し得る。アベマシクリブはその選択性ゆえに、腫瘍の再発および/または転移を治療および/または予防し、循環腫瘍細胞を標的とするのに使用し得る。
【0118】
【0119】
図1~3は、マンモスフェアアッセイを用いた、本明細書に記載するさまざまな化合物の用量反応曲線である。アッセイはMCF7細胞株を用いて実施した。曲線は2回の独立した実験の平均値としてプロットし、各ポイントの標準偏差は縦棒で表している。阻害率は濃度(μM)の対数の関数として示す。
図1は、MCF7細胞株でのマンモスフェア形成アッセイを用いた、化合物[1C]をその親化合物であるリボシクリブと比較した用量反応曲線を示す。
図4は、MCF7細胞株でのヘキスト染色アッセイを用いた、化合物[1C]をその親化合物と比較した用量反応曲線を示す。見てわかるように、化合物[1C]は各濃度で、MCF7細胞に対して効力がより高い。これは、一般式[1A]、および特に一般式[1B]を有する化合物が、効力のある抗がん治療薬として有効であることを実証している。
図7は、hTERT-BJ1細胞株でのヘキスト染色アッセイを用いた、化合物[1C]をその親化合物と比較した用量反応曲線を示す。試験した大部分の濃度で親化合物は効力がより高く、一般式[1A]、および特に一般式[1B]を有する化合物が、CSCに対して選択性がより高いことを実証している。一般式[1D]を有する化合物についても、同様の効果が予想される。
【0120】
さらに、本明細書に開示するデータはMCF7およびhTERT-BJ1細胞株に関するが、本手法の化合物は、他の種類のがんにも有効である。本発明者らは以前の研究で、ミトコンドリア生合成阻害剤が、何種類かの腫瘍の多様な細胞株で腫瘍スフェア形成をうまく阻害することを実証した。以下の表4は、ミトコンドリア生合成阻害剤の影響を受けやすいことが示されているがん細胞株の一覧である。これらの結果を踏まえると、本手法は数多くのがん種に有効である。
【0121】
【0122】
本手法は、第1のクラスもしくは第2のクラスの化合物、または薬学的に許容されるこれらの塩の治療上有効な量、およびこれらの薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む医薬組成物を説明する。本手法による化合物は抗がん治療薬として使用し得る。当技術分野で既知の手段に従って、薬学的に許容可能な担体における化合物の薬学的に有効な量を被験者に投与し得る。いくつかの実施形態では、本手法の化合物は、例えば化学療法剤、ミトコンドリア生合成阻害剤(例えば、ミトリボシン(mitoriboscin)、ミトケトシン(mitoketoscin)、アンチミトシン(antimitoscin)などのレプロポシン(repurposcin))、放射線療法、光線療法、およびカロリー制限などがあるがこれらに限定されない他のがん療法と組み合わせて使用し得る。
【0123】
当然のことながら、当業者は、当技術分野で一般的な既知の方法を使用して、特定の実施形態の製剤を開発できる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、錠剤、カプセル、または丸剤であり得る。医薬組成物は、20~500mgの用量の治療用組成物を有し得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、200mgの治療用化合物、例えば化合物[1C]などの上述の化合物を有する錠剤を含み得る。錠剤は、核錠の治療用化合物(遊離塩基として)の重量百分比(w/w)で測定して、少なくとも約35%、40%、45%、50%、または55%の治療用化合物を含有し得る。
【0124】
錠剤は、結晶セルロース、クロスポビドンタイプA、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、コロイド状無水シリカで形成されたコアを有し得る。第1の例証的な実施形態では、200mgの治療用化合物(例えば、化合物[1C])を有する錠剤は、結晶セルロース(67.44mg)、ヒドロキシプロピルセルロース(48.12mg)、クロスポビドン(29.20mg)、コロイド状二酸化ケイ素(無水)(2.12mg)、およびステアリン酸マグネシウム(6.36mg)を有する内側コア、ならびにクロスポビドン(12.84mg)、コロイド状二酸化ケイ素(無水)(1.06mg)、およびステアリン酸マグネシウム(8.46mg)を有する外側コアを含み得る。第2の例証的な実施形態では、錠剤は、約10~約45%(w/w)の治療用化合物(例えば、化合物[2C])、および好ましくは約18~約28%の治療用化合物;約4~約18%の水溶性酸;約20~約75%の希釈剤;約5~約18%の崩壊剤;約0.2~約10%の潤滑剤;ならびに、任意で約0~約5%の流動促進剤、および約0~約15%の結合剤を有し得る。当然のことながら、本手法の医薬組成物は、親化合物を含む医薬組成物に酷似している可能性がある。例えば、2016年4月14日に出願された特許文献1は、リボシクリブの錠剤の例について記載しており、参照によりその全体が本明細書に援用される。別の例として、2016年5月24日に出願された特許文献2は、パルボシクリブの固形製剤について記載しており、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0125】
錠剤はフィルムコーティングを有し得る。フィルムコーティングは、四三酸化鉄、ベンガラ、大豆レシチン、ポリビニルアルコール(部分的に加水分解)、タルク、二酸化チタン、およびキサンタンガムを含み得る。錠剤は、最終錠剤の所望の外観に応じて、市販のコーティングプレミックスを用いて被覆し得る。例えば、Opadry(登録商標)(Colorcon、ペンシルバニア州ハーレーズビル)はHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)コーティング材料であり、組成物としてHPMC(Pharmacoat603)71.4%、ポリエチレングリコール7.15%、タルク7.15%、および酸化鉄14.3%を有する。
【0126】
CDK4/6の選択的阻害は、本明細書に記載する化合物が、がんにおける薬剤耐性および/または治療耐性を低下させる、または排除するのに使用し得ることも示している。本手法の化合物は、CDKなどのキナーゼに対する阻害活性があるため、そのようなキナーゼの作用機序を研究するためのツールとしても有用であり、in vitroとin vivoの両方で使用し得る。
【0127】
本明細書に記載する治療方法は、好ましくは、第1のクラスまたは第2のクラスの化合物の治療上有効な量を、治療を必要とする被験者に投与することによって実施する。化合物は、以下に説明する反応ステップを用いて容易に合成できるが、代替的な反応ステップを使用してもよい。代替的な反応ステップは、当業者であれば、本開示の検討後に容易に認識でき、また非特許文献1および2に記載の反応ステップを含む。本化合物は、経口および非経口などの多様な経路で投与でき、毒性がほとんど、またはまったくない。
【0128】
以下に説明する合成方法の例で、以下の略語を使用する場合がある:N-メチルモルホリン(NMM)、ジクロロメタン(DCM)、ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸エチル(EtOAc)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、メタノール(MeOH)。以下の説明で、[M+H]+はプロトン化分子を指し、同定された値はプロトン化分子の質量である。RTは溶質の保持時間を意味する。
【0129】
分析LC-MS:Waters Sunfire C18 30x4.6mmカラム、グラジエント溶離液(0.05%のギ酸を含む3~97%のアセトニトリル/水)を使用。時間:0~6分間。分取HPLC:LCカラム:Phenomenex Kinetex 5μm EVO C18 100 250x21.2mm。グラジエント溶離液:0.1%のギ酸を含む40~95%のアセトニトリル/水。
【0130】
第1の合成実施例では、6-アセチル-8-シクロペンチル-5-メチル-2-[[5-(4-テトラデカノイルピペラジン-1-イル)-2-ピリジル]アミノ]ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-オンとしても知られる上記の化合物[2C]を、パルボシクリブ(LC laboratories(米国マサチューセッツ州ウーバン)より入手)を用いて合成した。テトラデカン酸(0.104g、0.46mmol)は室温で塩化チオニルに溶解した。溶液は60分間還流し、減圧下で濃縮した後、残渣を室温で乾燥DCM(2mL)に溶解し、酸塩化物の0.227Mストック溶液を得た。酸塩化物ストック溶液(0.25mL、0.057mmol)を、DCM(1mL)およびDMF(0.5mL)中の6-アセチル-8-シクロペンチル-5-メチル-2-[[5-(1-ピペラジニル)-2-ピリジニル]アミノ]-ピリド[2,3-d]ピリミジン-7(8H)-オン(0.024g、0.05mmol)およびNMM(18μL、0.16mmol)の撹拌混合物に添加した。混合物は室温で90分間撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣をEtOAc(30mL)に溶解し、飽和NaHCO3(15mL)とブライン(15mL)で洗浄した後、Na2SO4で乾燥した。乾燥剤はろ過により分離し、ろ液を減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物はジエチルエーテルで粉末化し、得られた淡褐色の固形物をろ過して回収し、ジエチルエーテルで洗浄した後、真空下で乾燥して、6-アセチル-8-シクロペンチル-5-メチル-2-[[5-(4-テトラデカノイルピペラジン-1-イル)-2-ピリジル]アミノ]ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-オン(0.0145g)を得た。LC-MS:658.2[M+H]+、RT:4.12分。
【0131】
第2の合成実施例では、7-シクロペンチル-N,N-ジメチル-2-[[5-(4-テトラデカノイルピペラジン-1-イル)-2-ピリジル]アミノ]ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-カルボキサミドとしても知られる上記の化合物[1C]を、パルボシクリブの代わりにリボシクリブ(LC laboratories(米国マサチューセッツ州ウーバン)より入手)(0.022g、0.05mmol)を酸塩化物ストック溶液と反応させた以外は、第1の合成実施例と同じ用法を用いて合成した。粗生成物をシリカゲル(2~4%MeOH/DCM)で精製し、7-シクロペンチル-N,N-ジメチル-2-[[5-(4-テトラデカノイルピペラジン-1-イル)-2-ピリジル]アミノ]ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-カルボキサミド(0.0166g)を淡褐色の固形物として得た。LC-MS:645.2[M+H]+、RT:2.72分。
【0132】
第3の合成実施例では、1-[4-[[6-[[5-フルオロ-4-(7-フルオロ-3-イソプロピル-2-メチル-ベンズイミダゾール-5-イル)ピリミジン-2-イル]アミノ]-3-ピリジル]メチル]ピペラジン-1-イル]テトラデカン-1-オンとしても知られる上記の化合物[3C]を、以下のように一連の中間化合物から合成した。第1に、以下に示す、tert-ブチル-4-テトラデカノイルピペラジン-1-カルボン酸塩として知られる中間化合物[4A]を以下のように合成した。乾燥DCM(20mL)中のテトラデカン酸(1.26g、5.5mmol)とNMM(0.73mL、5.5mmol)の撹拌溶液に、室温、窒素雰囲気下でクロロギ酸イソブチル(0.65mL、5.0mmol)を添加した。4時間後、乾燥DCM(5mL)中の1-Boc-ピペラジン(0.93g、5.0mmol)溶液を混合物に添加した。混合物は16時間撹拌した。減圧下で溶媒を除去し、粗生成物を得た。粗生成物をEtOAc(75mL)に溶解し、2MのHCl(50mL)、飽和NaHCO3(40mL)、およびブライン(30mL)で洗浄した後、MgSO4で乾燥した。ろ過後に溶媒を減圧下で蒸発させ、tert-ブチル-4-テトラデカノイルピペラジン-1-カルボン酸塩(1.76g)を白色固形物として得た。LC-MS:397.2[M+H]+、RT:4.02分。
【0133】
【0134】
第2に、以下に示す、1-ピペラジン-1-イルテトラデカン-1-オンとして知られる中間化合物[4B]を以下のように合成した。乾燥DCM(10mL)とトリフルオロ酢酸(TFA)(10mL)の1:1混合液中のtert-ブチル-4-テトラデカノイルピペラジン-1-カルボン酸塩(0.51g、1.26mmol)溶液を、室温、窒素雰囲気下で90分間撹拌し、溶媒を減圧下で除去して粗生成物を得た。粗生成物をEtOAc(30mL)に溶解し、飽和NaHCO3(15mL)およびブライン(15mL)で洗浄した後、MgSO4で乾燥した。ろ過後に溶媒を減圧下で蒸発させ、1-ピペラジン-1-イルテトラデカン-1-オン(0.33g)を白色ワックス状固形物として得た。LC-MS:297.3[M+H]+、RT:1.81分。
【0135】
【0136】
第3に、以下に示す、6-[[5-フルオロ-4-(7-フルオロ-3-イソプロピル-2-メチル-ベンズイミダゾール-5-イル)ピリミジン-2-イル]アミノ]ピリジン-3-カルバルデヒドとして知られる中間化合物[4C]を以下のように調製した。2-メチル-2-ブタノール(4mL)中の6-アミノピリジン-3-カルバルデヒド(0.076g、0.625mmol)、6-(2-クロロ-5-フルオロ-ピリミジン-4-イル)-4-フルオロ-1-イソプロピル-2-メチル-ベンゾイミダゾール(0.161g、0.500mmol)、キサントホス(0.0276g、0.0476mmol)、塩化パラジウム(0.0056g、0.0315mmol)、およびK2CO3(0.069g、0.500mmol)の懸濁液を封管中で+100℃で18時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、EtOAc(30mL)と水(30mL)で希釈した。水相を有する沈殿物を分離し、ろ過により回収した。淡褐色の固形物を水(30mL)とアセトン(20mL)で洗浄し、真空下で乾燥して、6-[[5-フルオロ-4-(7-フルオロ-3-イソプロピル-2-メチル-ベンズイミダゾール-5-イル)ピリミジン-2-イル]アミノ]ピリジン-3-カルバルデヒド(0.125g)を淡褐色の固形物として得た。LC-MS:409.0[M+H]+、RT:2.07分。
【0137】
【0138】
第4に、以下に示す、1-[4-[[6-[[5-フルオロ-4-(7-フルオロ-3-イソプロピル-2-メチル-ベンズイミダゾール-5-イル)ピリミジン-2-イル]アミノ]-3-ピリジル]-メチル]ピペラジン-1-イル]テトラデカン-1-オンとして知られ、化合物[3C]としても上述した、中間化合物[4D]を以下のように合成した。DCE(20mL)中の6-[[5-フルオロ-4-(7-フルオロ-3-イソプロピル-2-メチル-ベンズイミダゾール-5-イル)ピリミジン-2-イル]アミノ]ピリジン-3-カルバルデヒド(0.050g、0.122mmol)、1-ピペラジン-1-イルテトラデカン-1-オン(0.030g、0.100mmol)、およびトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(0.212g、1.00mmol)の懸濁液を封管中で+60℃で90分間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、DCM(30mL)で希釈し、水(10mL)とブライン(10mL)で洗浄した後、MgSO4で乾燥した。ろ過後に溶媒を減圧下で蒸発させ、得られた粗生成物(0.1564g)を分取HPLCで精製し、1-[4-[[6-[[5-フルオロ-4-(7-フルオロ-3-イソプロピル-2-メチル-ベンズイミダゾール-5-イル)ピリミジン-2-イル]アミノ]-3-ピリジル]メチル]ピペラジン-1-イル]テトラデカン-1-オン(0.012mg)を得た。LC-MS:689.2[M+H]+、RT:2.44分。
【0139】
【0140】
以下の段落では、本明細書に記載するデータおよび実施形態に関連して使用される材料および方法について説明する。当然のことながら、当業者は、本手法から逸脱することなく、当技術分野において一般に受け入れられている代替の材料および方法を使用し得る。
【0141】
細胞培養と試薬に関して、ヒト乳腺がん細胞株(MCF-7)はAmerican Type Culture Collection(ATCC)から、hTERT-BJ1細胞はClontech,Inc.から入手した。MCF-7およびhTERT-BJ1細胞は、10%ウシ胎児血清、GlutaMAX、および1%ペニシリン-ストレプトマイシンを添加したDMEM中で増殖させ、37℃、5%CO2の加湿インキュベーターで培養した。培地は週に2、3回交換した。
【0142】
マンモスフェア形成アッセイ:単細胞懸濁液を酵素分解(1xトリプシン-EDTA、Sigma Aldrich、カタログ番号:T3924)および手動分解(25ゲージ針)を用いて調製した。5000個の細胞を、マンモスフェア培地(DMEM-F12/B27/20ng/mL EGF/PenStrep)、非接着条件下で、2-メタクリル酸ヒドロキシエチル(poly-HEMA、Sigma、カタログ番号P3932)でコートした6ウェルプレートに播種した。細胞は5日間増殖させ、37℃、大気圧、5%(v/v)二酸化炭素/空気の加湿インキュベーターで保持した。5日後、目盛付接眼レンズを装着した顕微鏡を用いて、直径が50μmより大きな3次元スフェロイドを計数し、スフェロイドを形成した細胞の割合を算出し、1に正規化した(1=100%MFE;マンモスフィア形成効率)。マンモスフィアアッセイは3連で実施し、独立して3回くり返した。
【0143】
ヘキストをベースとする生存率アッセイを用いて、がん細胞の選択的標的化について、本手法による化合物の選択性を特徴づけた。簡単に説明すると、MCF7細胞の単層は、1~100μMの濃度で、1日にわたって処理した。生細胞のDNAを染色する核酸色素ヘキスト33342を用いて細胞生存率を評価した。本明細書に記載する化合物で処理した正常ヒト線維芽細胞(hTERT-BJ1)の生存率も同時に評価した。定量化はプレートリーダーを用いて行った。
【0144】
本手法の実施形態の説明で使用する用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものではない。説明および添付の特許請求の範囲で使用する単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに他を意味しない限り、複数形も含むことが意図されている。本手法は、以下の詳細な説明を考慮すれば明らかとなるように、多数の代替案、修正案、および等価物を包含する。
【0145】
本明細書では、用語「第1」、「第2」、「第3」、「a)」、「b)」、および「c)」などを使用して本手法のさまざまな要素を説明し得るが、特許請求の範囲はこれらの用語によって制限されるべきでないことが理解されよう。これらの用語は、本手法の1つの要素を別の要素と区別するためにのみ使用される。したがって、本手法の教示から逸脱することなく、後述する第1の要素は、要素の一態様と称することも、同様に、第3の要素と称することもできよう。したがって、「第1」、「第2」、「第3」、「a)」、「b)」、および「c)」などの用語は、関連する要素に必ずしも順序などの階層を与えることを意図しておらず、識別の目的のみに使用される。作業(またはステップ)の順序は、特許請求の範囲に示される順番に限定されるものではない。
【0146】
特に定義しない限り、本明細書で使用するすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。さらに当然のことながら、一般的に使用される辞書で定義されているような用語は、本願および関連技術の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義しない限り、理想化された、または過度に形式的な意味で解釈されるべきでない。本明細書に記載したすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりその全体が本明細書に援用される。用語に矛盾がある場合、本明細書が優先する。
【0147】
また、本明細書で使用する「および/または」は、関連する列挙された項目の1つまたは複数のあらゆる可能な組み合わせ、ならびに選択的に解釈される場合の組み合わせの欠如(「または」)を指し、これらを包含する。
【0148】
文脈上他を意味しない限り、本明細書に記載する本手法のさまざまな特徴は、任意の組み合わせで使用できることが特に意図される。さらに本手法は、いくつかの実施形態において、実証的な実施形態に関して説明する任意の特徴または特徴の組み合わせを除外または省略できることも企図する。
【0149】
本明細書で使用する移行句「から基本的になる」(およびその文法的な変形)は、引用された材料またはステップ「および請求項の基本的かつ新規な1つまたは複数の特性に実質的に影響しないもの」を包含すると解釈されるものとする。したがって、本明細書で使用する用語「から基本的になる」は、「を含む」と等価であると解釈すべきでない。
【0150】
このように、本手法の特定の実施形態を説明してきたが、添付の特許請求の範囲は、以下にクレームするその精神または範囲から逸脱することなく、その多くの明白な変形が可能であることから、上記の説明で示した特定の詳細に限定されないことを理解すべきである。