(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H10D 89/60 20250101AFI20250328BHJP
【FI】
H10D89/60
(21)【出願番号】P 2023516873
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2021016623
(87)【国際公開番号】W WO2022230018
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 友和
【審査官】脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/241046(WO,A1)
【文献】特開2017-107551(JP,A)
【文献】国際公開第2021/095602(WO,A1)
【文献】特開2008-148378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10D 89/60
H10D 89/10
H10D 89/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置であって、
第1の電源電圧を受ける第1の電源端子と、
前記第1の電源電圧よりも高い第2の電源電圧を受ける第2の電源端子と、
前記半導体装置の外部から電気的にコンタクト可能
であり、かつ、前記半導体装置の外部でプルアップまたはプルダウンされる出力端子と、
第1及び第2の出力トランジスタを有する第1の回路とを備え、
前記第1の出力トランジスタは、ゲートに入力された第1の制御電圧に応じた電流を、前記出力端子と接続された出力ノードから前記第1の電源端子へ流すために、前記出力ノードと前記第1の電源端子との間に電気的に接続され、
前記第2の出力トランジスタは、ゲートに入力された第2の制御電圧に応じた電流を前記第2の電源端子から前記出力ノードへ流すために、前記第2の電源端子及び前記出力ノードの間に電気的に接続され、
前記半導体装置は、
前記第1の電源端子に係る前記第1の電源電圧の経路における第1の断線、及び、前記第2の電源端子に係る前記第2の電源電圧の経路における第2の断線の少なくとも一方の断線を検知するための断線検知回路と、
前記第1及び第2の出力トランジスタの少なくとも一方に対応して配置された出力トランジスタ制御回路とを更に備え、
前記第1の出力トランジスタに対応して配置された前記出力トランジスタ制御回路は、前記第1の断線の検知時には、前記第1の制御電圧が前記第1の出力トランジスタのゲートに入力される経路を遮断するとともに、前記第1の出力トランジスタをオフする様に構成され、
前記第2の出力トランジスタに対応して配置された前記出力トランジスタ制御回路は、前記第2の断線の検知時には、前記第2の制御電圧が前記第2の出力トランジスタのゲートに入力される経路を遮断するとともに、前記第2の出力トランジスタをオフする様に構成され、
前記半導体装置は、前記断線検知回路による断線の検知に応答してパワーオフ状態に遷移し、
前記断線検知回路は、前記半導体装置の前記パワーオフ状態において、当該断線検知回路の内部において前記第1の電源端子及び前記第2の電源端子の間を流れる電流を遮断するパワーオフ機構を有する、半導体装置。
【請求項2】
前記半導体装置は、
前記第1の出力トランジスタに対応して配置された前記出力トランジスタ制御回路とともに設けられるプルダウン機構と、前記第2の出力トランジスタに対応して配置された前記出力トランジスタ制御回路とともに設けられるプルアップ機構との少なくとも一方を更に備え、
前記プルダウン機構は、前記断線検知回路が前記第1の断線を検知したときに、当該検知に応じて前記半導体装置が前記パワーオフ状態に遷移したタイミングから遅れて作動して、前記第1の電源端子を、前記半導体装置の外部でプルダウンされた前記出力端子と電気的に接続し、
前記プルアップ機構は、前記断線検知回路が前記第2の断線を検知したときに、当該検知に応じて前記半導体装置が前記パワーオフ状態に遷移したタイミングから遅れて作動して、前記第2の電源端子を、前記半導体装置の外部でプルアップされた前記出力端子と電気的に接続する、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の電源端子の間に接続された第2の回路を更に含み、
前記第2の回路は、前記半導体装置の前記パワーオフ状態において、当該第2の回路の内部において前記第1の電源端子及び前記第2の電源端子の間を流れる電流を遮断するパワーオフ機構を有する、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体装置の前記パワーオフ状態において、前記半導体装置の内部で前記第1の電源端子及び前記第2の電源端子の間を流れる合計電流値は、前記第1及び第2の出力トランジスタの各々に形成されるボディダイオードに順方向電圧を生じさせない電流レベルに対応して設定される限界電流値より小さい、請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1の電源端子及び前記第2の電源端子の間に接続された、前記断線検知回路及び前記第1の回路を含む回路群のうちの少なくとも一部の回路は、前記パワーオフ機構を有し、
前記パワーオフ機構が設けられる前記少なくとも一部の回路は、前記半導体装置の前記パワーオフ状態における合計電流値が前記限界電流値より低くなるように定められる、請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記出力トランジスタ制御回路は、前記第1及び第2の出力トランジスタの各々に対応して配置され、
前記第1の出力トランジスタに対応して配置された前記出力トランジスタ制御回路は、前記第1又は第2の断線の検知時には、前記第1の制御電圧に代えて、前記第1の出力トランジスタをオフする電圧を前記第1の出力トランジスタのゲートに入力する様に構成され、
前記第2の出力トランジスタに対応して配置された前記出力トランジスタ制御回路は、前記第1又は第2の断線の検知時には、前記第2の制御電圧に代えて、前記第2の出力トランジスタをオフする電圧を前記第2の出力トランジスタのゲートに入力する様に構成される、請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体装置の電源投入時において、前記第2の電源端子の電圧が予め定められた電圧レベル以上に立ち上がるまでの間、前記断線検知回路は、前記少なくとも一方の断線の検知動作を待機する、請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記断線検知回路は、第1のバイアス電圧と、前記第1及び第2の電源端子間の電圧差に応じて変化する第2のバイアス電圧との比較に基づいて、前記第1及び第2の断線の少なくとも一方を検知し、
前記第1のバイアス電圧は、前記第1及び第2の電源端子間の前記電圧差の共通の変化量に対して、前記第2のバイアス電圧に生じる電圧変化よりも小さい電圧変化が生じる様に生成される、請求項1~7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1の断線を検知するための前記第1のバイアス電圧は、前記第1及び第2の電源端子間に接続された直列経路に含まれる、前記第1のバイアス電圧が生成されるノードと前記第2の電源端子の間に接続されるダイオードの順方向電圧を用いて生成され、
前記第2の断線を検知するための前記第1のバイアス電圧は、前記第1及び第2の電源端子間に接続された直列経路に含まれる、前記第1のバイアス電圧が生成されるノードと前記第1の電源端子の間に接続されるダイオードの順方向電圧を用いて生成され、
前記第2のバイアス電圧は、前記第1及び第2の電源端子間の前記電圧差の分圧によって生成される、請求項8記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業用機器に搭載される、LSI(Large Scale Integrated Circuit)及びIC(Integrated Circuit)等の半導体装置において、断線発生時のフェールセーフ機能の充実が求められている。
【0003】
例えば、米国特許第5942677号(特許文献1)には、ノックセンサの出力信号をICで処理して後段のマイクロプロセッサへ入力するノックセンサシステムにおける、断線時のフェールセーフのための構成が記載される。具体的には、ノックセンサからICの出力信号線の断線を検知するための検知回路の構成と、当該断線検知時には、ICからマイクロプロセッサへの出力電圧を、正常時(断線非発生時)の電圧範囲(0.5~5[V])から外れた電圧(0[V])に強制的に設定する制御とが記載されている。
【0004】
特許文献1では、ノックセンサの出力信号線の断線時には、後段のICに対して、断線の発生を確実に認識させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、半導体装置では、特許文献1に記載された信号線の断線に加えて、電源配線及び接地配線に断線が発生する可能性がある。特許文献1の検知回路では、このような電源配線及び接地配線の検知を検知することができず、更に、このような断線に対するフェールセーフ機能も考慮されていない。
【0007】
一方、半導体装置の一般的な構成として、半導体装置外部と電気的にコンタクトするための出力端子が、当該出力端子の電圧を駆動するための出力段のトランジスタを介して電源配線及び接地配線と接続されるケースがある。出力段を構成するトランジスタのバックゲート端子(ボディ)は、通常、電源配線又は接地配線と接続される。
【0008】
当該出力端子は、半導体装置の外部では、プルアップ又はプルダウンされる可能性がある。このため、半導体装置の内部で、電源配線及び接地配線の一方の配線が断線した場合に、断線が発生していない他方の配線と、半導体装置の外部のプルアップ先又はプルダウン先との間に、出力段のトランジスタのボディダイオードのオンによって形成された電流経路によって異常電流が生じる虞がある。
【0009】
本開示はこのような問題点を解決するためになされたものであって、本開示の目的は、電源配線又は接地配線の断線発生時に、異常電流の発生を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のある局面は、半導体装置を提供する。半導体装置は、第1の電源電圧(GND)を受ける第1の電源端子と、第1の電源電圧よりも高い第2の電源電圧(VCC)を受ける第2の電源端子と、半導体装置の外部から電気的にコンタクト可能な出力端子と、第1及び第2の出力トランジスタを有する第1の回路と、断線検知回路と、出力トランジスタ制御回路とを備える。第1の出力トランジスタは、ゲートに入力された第1の制御電圧に応じた電流を、出力端子と接続された出力ノードから第1の電源端子へ流すために、出力ノードと第1の電源端子との間に電気的に接続される。第2の出力トランジスタは、ゲートに入力された第2の制御電圧に応じた電流を第2の電源端子から出力ノードへ流すために、第2の電源端子及び出力ノードの間に電気的に接続される。断線検知回路は、第1の電源端子に関する第1の電源電圧の経路における第1の断線、及び、第2の電源端子に関する第2の電源電圧の経路における第2の断線の少なくとも一方を検知する様に構成される。出力トランジスタ制御回路は、第1及び第2の出力トランジスタの少なくとも一方に対応して配置される。第1の出力トランジスタに対応して配置された出力トランジスタ制御回路は、第1の断線の検知時には、第1の制御電圧が第1の出力トランジスタのゲートに入力される経路を遮断するとともに、第1の出力トランジスタをオフする様に構成される。第2の出力トランジスタに対応して配置された出力トランジスタ制御回路は、第2の断線の検知時には、第2の制御電圧が第2の出力トランジスタのゲートに入力される経路を遮断するとともに、第2の出力トランジスタをオフする様に構成される。更に、半導体装置は、断線検知回路による断線の検知に応答してパワーオフ状態に遷移する。断線検知回路は、半導体装置のパワーオフ状態において、当該断線検知回路の内部において第1の電源端子及び第2の電源端子の間を流れる電流を遮断するパワーオフ機構を有する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、半導体装置の外部で出力端子にプルアップ抵抗又はプルダウン抵抗が接続された状態で、第1の電源電圧側の第1の断線又は第2の電源電圧側の第2の断線が発生した場合には、出力トランジスタ制御回路によって第1又は第2の出力トランジスタの強制的にオフするとともに、半導体装置をパワーオフ状態として、第1の電源端子の電圧上昇、又は、第2の電源端子の電圧低下を防止することで、当該プルアップ抵抗及び断線した第1の電源端子の間、又は、当該プルダウン抵抗及び断線した第2の電源端子の間に異常電流が発生することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】出力端子がプルダウンされた比較例に係る半導体装置の構成を説明する概略的な回路図である。
【
図2】
図1に示された半導体装置の接地配線側の断線時の回路図である。
【
図3】実施の形態1に係る半導体装置の構成を説明するブロック図である。
【
図4】
図3に示されたバイアス回路の構成例を説明する回路図である。
【
図5】
図4に示されたバイアス回路の構成の変形例を説明する回路図である。
【
図6】
図3に示されたバイアス回路の動作を説明する概念図である。
【
図7】
図3に示されたコンパレータの構成例を説明する回路図である。
【
図8】
図3に示された遅延回路の構成例を説明する回路図である。
【
図9】実施の形態1に係る半導体装置の動作波形例である。
【
図10】
図3に示された半導体装置の構成の変形例を説明するブロック図である。
【
図11】
図10で追加された回路のパワーオフ機能を説明するブロック図である。
【
図12】
図3に示された半導体装置の構成の他の変形例を説明するブロック図である。
【
図13】ダイオードの電圧電流特性を説明するための概念図である。
【
図14】実施の形態1の変形例に係る半導体装置の構成を説明するブロック図である。
【
図15】
図14中のパワーオンリセット(POR)回路の構成例を説明する回路図である。
【
図16】出力端子がプルアップされた比較例に係る半導体装置の構成を説明する概略的な回路図である。
【
図17】
図16に示された半導体装置の接地配線側の断線時の回路図である。
【
図18】実施の形態2に係る半導体装置の構成を説明するブロック図である。
【
図19】
図18に示されたバイアス回路の構成例を説明する回路図である。
【
図20】
図19に示されたバイアス回路の構成の変形例を説明する回路図である。
【
図21】
図18に示されたバイアス回路の動作を説明する概念図である。
【
図22】
図18に示されたコンパレータの構成例を説明する回路図である。
【
図23】
図18に示された遅延回路の構成例を説明する回路図である。
【
図24】実施の形態2に係る半導体装置の動作波形例である。
【
図25】
図18に示された半導体装置の構成の変形例を説明するブロック図である。
【
図26】
図25で追加された回路のパワーオフ機能を説明するブロック図である。
【
図27】
図18に示された半導体装置の構成の他の変形例を説明するブロック図である。
【
図28】実施の形態2の変形例に係る半導体装置の構成を説明するブロック図である。
【
図29】実施の形態3に係る半導体装置の構成を説明するブロック図である。
【
図30】実施の形態3の変形例に係る半導体装置の構成を説明するブロック図である。
【
図31】本実施の形態に係る半導体装置におけるプルダウン機構の変形例を説明する回路図である。
【
図32】本実施の形態に係る半導体装置におけるプルアップ機構の変形例を説明する回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一又は相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0014】
実施の形態1.
実施の形態1では、半導体装置における接地配線に係る断線に対応するための回路構成を説明する。
【0015】
(接地配線に係る断線による異常電流)
まず、
図1及び
図2を用いて、半導体装置の出力端子が、半導体装置の外部においてプルダウンされている構成下で、半導体装置の内部で接地配線に断線が生じた場合における異常電流について説明する。
【0016】
図1は、比較例に係る半導体装置100の構成を説明する概略的な回路図である。
図1に示される半導体装置100は、電源端子101と、接地端子102と、出力端子103と、電源ノードNPと、GNDノードNGと、演算増幅回路150とを備える。
【0017】
電源端子101は、電源電圧VCC(例えば、5[V])を供給する電源10と、電源配線によって電気的に接続される。接地端子102は、接地電圧GND(0[V])を供給する基準電圧ノード11と電気的に接続される。電源ノードNPは、電源端子101と接続されており、半導体装置内で電源電圧VCCを供給する配線(ライン)等を総称するものである。同様に、GNDノードNGは、接地端子102と接続されており、半導体装置内で接地電圧GNDを供給する配線(ライン)等を総称するものである。半導体装置の内部では、断線が発生しない限り、電源端子101及び電源ノードNPは電気的には等価であり、かつ、接地端子102とGNDノードNGについても電気的には等価である。以下では、電源ノードNPの電圧をAVCCと表記し、GNDノードNGの電圧をAGNDと表記する。
【0018】
実施の形態1では、半導体装置の外部で、出力端子103に対して、プルアップ抵抗201又はプルダウン抵抗202が接続されている構成を想定する。上述した様に、実施の形態1では、出力端子103は、半導体装置の外部で、プルダウン抵抗202を介して基準電圧ノード11と電気的に接続されているものとする。
【0019】
演算増幅回路150は、差動増幅部160及び出力段170を含む。演算増幅回路150は、電源ノードNP及びGNDノードNGの間に接続される回路要素の代表例として示されており、後述する異常電流の経路となり得る出力段170を有するものである。
【0020】
差動増幅部160は、反転入力ノードNi1及び非反転入力ノードNi2と、反転出力ノードNo1及び非反転出力ノードNo2とを有する。反転出力ノードNo1及び非反転出力ノードNo2に発生する電圧差は、反転入力ノードNi1及び非反転入力ノードNi2の間の電圧差を増幅したものとなる。例えば、反転入力ノードNi1及び非反転入力ノードNi2には、逆相のアナログ電圧が入力される。差動増幅部160の内部構成には、電界効果トランジスタ(MOSトランジスタ)を用いた、一般的な差動増幅器の回路構成を任意に適用することができる。
【0021】
出力段170は、P型のトランジスタ(出力トランジスタ)MPOUTと、N型のトランジスタ(出力トランジスタ)MNOUTとを有する。出力トランジスタMPOUTは、電源ノードNPと、出力端子103と接続された出力ノードNoとの間に接続される。出力トランジスタMNOUTは、出力ノードNo及びGNDノードNGの間に接続される。出力トランジスタMPOUTのゲートは、差動増幅部160の反転出力ノードNo1(-側)と接続され、出力トランジスタMNOUTのゲートは、差動増幅部160の非反転出力ノードNo2(+側)と接続される。
【0022】
差動増幅部160の出力電圧、即ち、反転出力ノードNo1(-側)及び非反転出力ノードNo2(+側)の電圧に応じて出力トランジスタMPOUT,MNOUTが駆動されることにより、演算増幅回路150の出力電圧VOUTが出力ノードNoに発生される。
【0023】
半導体装置100は、演算増幅回路150への入力信号に応じた演算増幅回路150の出力電圧VOUTを、出力端子103から半導体装置100の外部へ出力する、オペアンプシステムとして動作する。上述の様に、反転入力ノードNi1及び非反転入力ノードNi2に互いに逆相のアナログ電圧が入力された場合には、当該アナログ電圧(-側入力)を接地電圧GND~電源電圧VCCのレンジに増幅した出力電圧VOUTが得られる。
【0024】
以下では、半導体装置に対して、電源電圧VCC及び接地電圧GNDが正常に供給されている状態を「正常時」とも称する。
【0025】
まず、半導体装置100の正常時の動作を説明する。例えば、差動増幅部160の反転入力ノードNi1(-側)及び非反転入力ノードNi2(+側)には、音声信号、画像信号、又は、センサ入力を増幅した信号(例えば、ホール素子の出力を変換及び増幅した信号)等のアナログ電圧が入力される。或いは、差動増幅部160に対しては、演算増幅回路150の前段に配置されたD/A変換器(図示せず)によって、デジタル信号から変換されたアナログ電圧が入力されてもよい。
【0026】
差動増幅部160の反転出力ノードNo1(-側)及び非反転出力ノードNo2(+側)には、反転入力ノードNi1(-側)及び非反転入力ノードNi2(+側)への入力電圧に応じた電圧差を有する電圧がそれぞれ生じる。出力ノードNoには、反転入力ノードNi1(-側)及び非反転入力ノードNi2(+側)の電圧に応じて、出力トランジスタMNOUT及びMPOUTの電流が変化することにより、入力信号に応じた出力電圧VOUTが出力ノードNoに生じて、出力端子103から出力される。
【0027】
出力電圧VOUTは、演算増幅回路150の出力電圧に従うため、GND(0[V])又はVCCのデジタル出力ではなく、アナログ出力となることを想定している。出力端子103からは、入力信号(アナログ電圧、又は、デジタル信号のD/A変換電圧)に基づく、GND(0[V])+20[mV]程度からVCC(例えば、5[V])-20[mv]程度までの範囲の電圧が、直流、又は、交流電圧(サイン波、或いは、パルス波)の態様で出力される。
【0028】
次に、接地電圧GNDが供給されなくなったときの半導体装置100の動作について説明する。
【0029】
図2には、
図1に示された半導体装置100の接地配線側の断線が生じたとき(以下、GND断線時とも称する)の回路図が示される。
【0030】
図2に示される様に、基準電圧ノード11及び接地端子102の間に断線が生じると、接地端子102が開放されて、GNDノードNGは、ハイインピーダンス(Hi-Z)状態となる。これにより、半導体装置100には、電源電圧VCCのみが与えられる状態となるので、GNDノードNGの電圧AGNDは、時間経過とともに徐々に上昇することになり、最終的には、VCC(5[V])に収束することになる。
【0031】
一方で、出力段170を構成する出力トランジスタMPOUT(P型)及びMNOUTには、ボディダイオードDp及びDnがそれぞれ形成される。ボディダイオードDpは、出力ノードNoから電源ノードNPへの方向を順方向とする様に形成される。一方で、ボディダイオードDnは、GNDノードNGから出力ノードNoへの方向を順方向とする様に形成される。正常時には、電源ノードNPが電源電圧VCCに固定され、かつ、GNDノードNGが接地電圧GNDに固定されるので、ボディダイオードDp及びDnの両方は逆バイアスされている。
【0032】
GND断線時には、GNDノードNGの電圧AGNDが上昇することにより、出力トランジスタMNOUTのボディダイオードDnが導通する可能性がある。従って、出力端子103に対して、半導体装置100の外部でプルダウン抵抗202が接続される場合には、当該プルダウン抵抗202を介して、GNDノードNG(電圧上昇)-出力トランジスタMNOUTのボディダイオードDn-出力ノードNo-プルダウン抵抗202-基準電圧ノード11(GND)の経路により、図中に点線で示す異常電流Iabn1が継続的に発生することが懸念される。
【0033】
このような電流が発生すると、ボディダイオードによる電流がラッチアップを誘発することにより、過大電流を消費するだけでなく、チップの破壊を招く虞もある。又、出力端子103の出力電圧VOUTが、不安定化する虞もある。
【0034】
(実施の形態1に係るGND断線時の異常電流の防止)
図3には、実施の形態1に係る半導体装置100Aの構成を説明するブロック図が示される。
【0035】
図3に示される様に、実施の形態1に係る半導体装置100Aは、
図1に示した半導体装置100の構成に加えて、GND断線時の異常電流を防止するための構成として、断線検知回路105Gと、遅延回路130Gと、出力トランジスタ制御回路180P,180Nと、プルダウントランジスタMNOGとを更に備える。
【0036】
出力トランジスタ制御回路180Pは、P型のトランジスタMPC1,MPC2を有する。トランジスタMPC1は、出力トランジスタMPOUTのゲートと電源ノードNPとの間に接続される。トランジスタMPC1がオンすると、出力トランジスタMPOUTのゲート及びソースが同電位となるので、出力トランジスタMPOUTはオフされる。トランジスタMPC2は、出力トランジスタMPOUTのゲートと、反転出力ノードNo1との間に接続される。トランジスタMPC2がオンすると、出力トランジスタMPOUTのゲートには、差動増幅部160からの反転出力ノードNo1(-側)への出力電圧が入力される。
【0037】
出力トランジスタ制御回路180Nは、N型のトランジスタMNC1,MMC2を有する。トランジスタMNC1は、出力トランジスタMNOUTのゲートとGNDノードNGの間に接続される。トランジスタMNC1がオンすると、出力トランジスタMNOUTのゲート及びソースが同電位となるので、出力トランジスタMNOUTはオフされる。トランジスタMNC2は、出力トランジスタMNOUTのゲートと、非反転出力ノードNo2との間に接続される。トランジスタMNC2がオンすると、出力トランジスタMNOUTのゲートには、差動増幅部160からの非反転出力ノードNo2(+側)への出力電圧が入力される。
【0038】
プルダウントランジスタMNOGは、出力端子103と接続された出力ノードNoと、GNDノードNGとの間に接続される。即ち、プルダウントランジスタMNOGは、出力トランジスタMNOUTと並列に、出力ノードNo及びGNDノードNGの間に接続される。
【0039】
尚、本実施の形態において、接地電圧GNDは「第1の電源電圧」の一実施例に対応し、電源電圧VCCは「第2の電源電圧」の一実施例に対応し、接地端子102は「第1の電源端子」の一実施例に対応し、電源端子101は「第2の電源端子」の一実施例に対応する。又、出力トランジスタMPOUT,MNOUTを有する演算増幅回路150は、「第1の回路」の一実施例に対応し、接地端子102側の出力トランジスタMNOUTは「第1の出力トランジスタ」に対応し、電源端子101側の出力トランジスタMPOUTは「第2の出力トランジスタ」に対応する。又、正常時における、差動増幅部160から出力トランジスタMNOUTのゲートへの入力電圧(即ち、非反転出力ノードNo2の電圧)は「第1の制御電圧」の一実施例に対応し、差動増幅部160から出力トランジスタMPOUTのゲートへの入力電圧(即ち、反転出力ノードNo1の電圧)は「第2の制御電圧」の一実施例に対応する。
【0040】
断線検知回路105Gは、電源ノードNPの電圧AVCC及びGNDノードNGの電圧AGNDに基づき、出力トランジスタ制御回路180P,180Nの制御信号である断線検知信号CMPG及びCMPBGを生成する。
【0041】
以下の説明で明らかになる様に、断線検知信号CMPGは、論理ローレベル(以下、単に「Lレベル」)に初期化された後、GND断線が発生していない正常時にはLレベルに維持される。一方で、GND断線が発生すると、断線検知信号CMPGはLレベルからHレベルに変化する。断線検知信号CMPBGは、断線検知信号CMPGの反転信号であり、正常時にはHレベルに維持される一方で、GND断線が発生すると、Lレベルに設定される。
【0042】
断線検知信号CMPGは、出力トランジスタ制御回路180P,180NのトランジスタMPC2,MNC1のゲートに入力される。断線検知信号CMPBGは、出力トランジスタ制御回路180P,180NのトランジスタMPC1,MNC2のゲートに入力される。従って、出力トランジスタ制御回路180P,180Nでは、トランジスタMPC1及びMNC1のペアと、トランジスタMPC2及びMNC2のペアとが、相補的にオンオフされることが理解される。
【0043】
遅延回路130Gは、予め定められた遅延時間Tdに従って断線検知信号CMPG及びCMPBGをそれぞれ遅延させた、遅延信号CMPGD及びCMPBGDを生成する。遅延信号CMPGDは、プルダウントランジスタMNOGのゲートに入力される。
【0044】
次に、
図3に加えて
図4~
図8を用いて、断線検知回路105Gの構成を詳細に説明する。断線検知回路105Gは、バイアス回路110Gと、コンパレータ120Gと、Dフリップフロップ125Gとを含む。バイアス回路110G、コンパレータ120G、及び、Dフリップフロップ125Gの各々には、断線検知信号CMPBGがEN(イネーブル)信号として入力される。バイアス回路110G、コンパレータ120G、及び、Dフリップフロップ125Gの各々は、EN信号がHレベルであるときに以下に説明する各回路動作を実行する。一方で、バイアス回路110G、コンパレータ120G、及び、Dフリップフロップ125Gの各々は、EN信号がLレベルであるときには、パワーオフ状態となって各回路動作を停止する。パワーオフ状態では、オフ状態のトランジスタで生じる微小なリーク電流を除くと消費電流が発生しない。
【0045】
バイアス回路110Gは、電圧AVCC及び電圧AGNDに基づき、バイアス電圧VING,VREFGを生成する。
【0046】
図4及び
図5には、バイアス回路110Gの構成例及びその変形例が示される。
図4の構成例では、バイアス回路110Gは、抵抗素子R0G,R1G,R2G,R3Gと、P型のトランジスタMP1G,MP2Gと、N型のトランジスタMN0Gと、パワーオフのためのP型トランジスタMCPGとを有する。バイアス回路110Gにおいて、トランジスタMCPGは「パワーオフ機構」の一実施例に対応する。
【0047】
トランジスタMCPGは、電源ノードNP及びノードN0Gの間に接続される。トランジスタMCPGのゲートには、EN信号として入力された断線検知信号CMPBGを反転した信号ENIBが入力される。即ち、信号ENIBの論理レベルは、断線検知信号CMPGと同様である。トランジスタMCPGは、回路動作時(EN=Hレベル)にオンする一方で、パワーオフ状態(EN=Lレベル)ではオフする。以下では、ノードN0Gが電源ノードNPと接続される回路動作時のバイアス回路110Gの動作を説明する。
【0048】
抵抗素子R0G及びR1Gは、ノードN0Gと、バイアス電圧VINGが発生されるノードN1Gの間に直列接続される。抵抗素子R2Gは、ノードN1G及びGNDノードNGの間に接続される。従って、バイアス電圧VINGは、電圧AVCC及び電圧AGNDの電圧差を分圧したものとなる。
【0049】
トランジスタMP1G及びMP2Gは、ノードN0Gと、バイアス電圧VREFGが発生されるノードN2Gの間に直列接続されて、トランジスタMN0G及び抵抗素子R3Gとともに電源ノードNP及びGNDノードNGの間に直列経路を形成する。トランジスタMP1G及びMPG2の各々は、ダイオード接続される。トランジスタMN0G及び抵抗素子R3Gは、ノードN2G及びGNDノードNGの間に直列接続される。トランジスタMN0Gは、ゲート・ソース間電圧が0[V]のときにドレイン電流が流れるようなしきい値電圧Vtを有するように構成される。例えば、トランジスタMN0Gは、ネイティブNMOSトランジスタ(又は、デプレッション型NMOSトランジスタ)によって構成することができる。トランジスタMN0Gのゲートは、GNDノードNGと接続される。これにより、オン状態のトランジスタMN0Gと、抵抗素子R3Gとは、ノードN2G及びGNDノードNGの間に接続された定電流源として動作する。
【0050】
図6には、バイアス回路110Gの動作を説明するために、電圧AGNDの変化に対するバイアス電圧VING,VREFGの挙動を概念的に表記したグラフが示される。
【0051】
図6に示される様に、バイアス電圧VINGは、電圧AVCC及び電圧AGNDの電圧差に比例する。従って、GND断線が発生すると、電圧AVCCが一定である一方で電圧AGNDが上昇するのに伴って、バイアス電圧VINGも上昇する。
【0052】
これに対して、ノードN2Gを含む直列経路では、トランジスタMP1G及びMP2Gは、トランジスタMN0G及び抵抗素子R3Gによる定電流が通過するダイオードとして作用するので、バイアス電圧VREFGは、トランジスタMP1G及びMP2Gによるダイオードの順方向電圧を用いて生成される。従って、電圧AVCCが変わらなければ、電圧AGNDの低下がバイアス電圧VREFGに与える影響は小さい。このため、バイアス電圧VREFGは、電圧AGNDの変化に対して略一定レベルとなるので、GND断線の発生時に電圧AGNDが上昇しても、正常時(GND断線非発生時)からあまり変わらない。この様に、バイアス電圧VREFGは、バイアス電圧VINGと比較すると、GNDノードNGの電圧変化(上昇)に対する感度が低い。即ち、バイアス電圧VREFGは「第1のバイアス電圧」の一実施例に対応し、バイアス電圧VINGは「第2のバイアス電圧」の一実施例に対応する。
【0053】
従って、抵抗素子R0G~R2Gによる分圧比を適切に設定することにより、正常時(GND断線非発生時)にはVING<VREFGとなる一方で、GND断線による電圧AGNDの上昇時には、これと反対に、VING>VREFGとなることが理解される。この様に、正常時及びGND断線時の間で、高低関係が逆転するバイアス電圧VING,VREFGを生成する様に、バイアス回路110Gは動作する。
【0054】
図4中のバイアス電圧VREFGを生成するための構成は、
図5に示される構成に変形することも可能である。例えば、
図5(a)に示される様に、ノードN0G及びノードN2Gの間に接続されたP型のトランジスタMP1G(ダイオード接続)と、ノードN2G及びGNDノードNGとの間に接続された抵抗素子R3Gとによって、簡易な構成により同様のバイアス電圧VREFGを生成することも可能である。
【0055】
或いは、
図5(b)に示される様に、ノードN0G及びノードN2Gの間に接続されたN型のトランジスタMN1G(ダイオード接続)と、ノードN2G及びGNDノードNGとの間に接続された抵抗素子R3Gとによって、簡易な構成により同様のバイアス電圧VREFGを生成することも可能である。
【0056】
尚、
図4の構成例によれば、
図5(a),(b)の変形例と比較して、回路素子は増加する一方で、バイアス電圧VREFGの電圧AGNDの変化に対する非依存性(低感度性)が向上する。
【0057】
バイアス回路110Gでは、EN=Lレベルであるパワーオフ状態では、トランジスタMCPGがオフされることにより、ノードN0Gは、電源ノードNPから切り離される。この結果、バイアス回路110Gの内部で、電源ノードNP及びGNDノードNGの間の電流経路が遮断される。これにより、電源ノードNPからGNDノードNGに流れる電流(消費電流)がゼロに固定されるので、バイアス回路110Gのパワーオフ機能が実現される。
【0058】
再び
図3を参照して、バイアス回路110Gが生成するバイアス電圧VING及びVREFGは、コンパレータ120Gの(+)入力端子及び(-)入力端子にそれぞれ入力される。コンパレータ120Gは、(-)入力端子及び(+)入力端子の電圧の比較結果に従った論理レベルを有する出力信号VCMPGを発生する。(+)入力端子の電圧が、(-)入力端子の電圧よりも低い場合、即ち、VING<VREFPの場合には、VCMPG=Lレベルに設定される。従って、GND断線の非発生時(正常時)には、VCMPG=Lレベルに設定される。
【0059】
これに対して、(+)入力端子の電圧が、(-)入力端子の電圧よりも高い場合、即ち、VING>VREFPの場合には、VCMPG=Hレベルに設定される。従って、GND断線時には、VCMPG=Hレベルに設定される。
【0060】
図7には、コンパレータ120Gの構成例を説明する回路図が示される。コンパレータ120Gについても、上述したEN信号に応じたパワーオフ機能を有している。
【0061】
図7に示される様に、コンパレータ120Gは、二段増幅器を構成するための、P型トランジスタMP10~MP13及びN型トランジスタMN10~MN14を有する。更に、コンパレータ120Gは、パワーオフ機能のための、P型トランジスタMCP0~MCP3及びN型トランジスタMCN0~MCN3を更に有する。これらのトランジスタMCP0~MCP3,MCN0~MCN3によって、コンパレータ120Gでは、「パワーオフ機構」の一実施例が構成される。
【0062】
トランジスタMP10及びMN10は、電源ノードNP及びノードN10の間に直列接続される。トランジスタMP11及びMN11は、トランジスタMP10及びMN10と並列に、電源ノードNP及びノードN10の間に直列接続される。トランジスタMN10のゲートは、
図3の(+)入力端子に相当し、バイアス回路110Gからのバイアス電圧VINGを入力される。トランジスタMN11のゲートは、
図3の(-)入力端子に相当し、バイアス回路110Gからのバイアス電圧VREFGを入力される。
【0063】
トランジスタMN12は、ノードN10及びGNDノードNGの間に接続される。トランジスタMN12は、ゲートに一定のバイアス電圧VBNを入力されて、定電流源として動作する。
【0064】
トランジスタMP12及びMN13は、ノードN11を介して、電源ノードNP及びGNDノードNGの間に直列接続される。トランジスタMP13及びMN14は、ノードN12を介して、電源ノードNP及びGNDノードNGの間に直列接続される。トランジスタMP11及びMP12は、ゲートを相互接続されることで、カレントミラーを構成する。同様に、トランジスタMP10及びMP13もカレントミラーを構成する。
【0065】
トランジスタMN13は、ノードN11及びGNDノードNGの間に接続され、トランジスタMN14は、ノードN12及びGNDノードNGの間に接続される。トランジスタMN13及びMN14は、ゲートを相互接続されることで、カレントミラーを構成する。
【0066】
次に、パワーオフ機能関連のトランジスタの配置を説明すると、P型のトランジスタMCP0は、電源ノードNPと、P型のトランジスタMP10及びMP13のゲートとの間に接続される。同様に、P型のトランジスタMCP2は、電源ノードNPと、P型のトランジスタMP11及びMP12のゲートとの間に接続される。トランジスタMCP0及びMCP2のゲートには、EN信号と同じ論理レベルのENIが入力される。
【0067】
N型のトランジスタMCN0は、GNDノードNGと、N型のトランジスタMN12のゲートとの間に接続される。N型のトランジスタMCN2は、GNDノードNGと、N型のトランジスタMN13及びMN14のゲートとの間に接続される。トランジスタMCN0及びMCN2のゲートには、EN信号と反対の論理レベルのENIBが入力される。
【0068】
P型のトランジスタMCP1は、トランジスタMP10及びMN10の接続点と、トランジスタMP10及びMP13のゲートとの間に接続される。同様に、P型のトランジスタMCP3は、トランジスタMP11及びMN11の接続点と、トランジスタMP11及びMP12のゲートとの間に接続される。N型のトランジスタMCN1は、トランジスタMP12及びMN13の接続点と、トランジスタMN13及びMN14のゲートとの間に接続される。トランジスタMCP1及びMCP3のゲートには、ENIBが入力され、トランジスタMCN2のゲートには、ENIBが入力される。
【0069】
従って、EN=Hレベル(ENI=Hレベル、ENIB=Lレベル)である回路動作時には、トランジスタMCP0,MCP2,MCN0,MCN2がオフする一方で、トランジスタMCP1,MCP3,MCN1はオンする。これにより、P型トランジスタMP10~MP13及びN型トランジスタMN10~MN14による二段増幅器が動作する。
【0070】
二段増幅器の動作時には、トランジスタMN10の電流と、トランジスタMN11の電流とは、バイアス電圧VING及びVREFGの高低関係に応じて、トランジスタMN12による定電流を分流したものとなる。このため、トランジスタMN10及びMN11のゲート電圧差に応じて、トランジスタMP10及びMN10の電流と、トランジスタMP11及びMN11の電流との間には、電流差が生じる。
【0071】
トランジスタMP10及びMP13、トランジスタMP11及びMP12、並びに、トランジスタMN13及びMN14のそれぞれがカレントミラーを構成するため、上述した、トランジスタMN10及びMN11のゲート電圧差によって生じた、トランジスタMN10及びMN11の電流差が増幅されて、ノードN11及びN12に電圧差が生じる。これにより、トランジスタMN10のゲート電圧((+)入力端子の電圧)、及び、トランジスタMN11のゲート電圧((-)入力端子の電圧)の差が増幅された電圧差が、ノードN11及びN12の間に生じることになる。
【0072】
ノードN12の電圧は、2段(偶数段)のインバータによって増幅されて、2値の出力信号VCMPGとして、コンパレータ120Gから出力される。この結果、
図7の構成例では、VING<VREFGの場合には、VCMPG=AGND(Lレベル)となる一方で、VING>VREFGの場合には、VCMPG=AVCC(Hレベル)となる。
【0073】
ノードN12及びGNDノードNGの間には、リセット動作のためのN型のトランジスタMCN3が接続される。トランジスタMCN3のゲートには、RST信号が入力される。
図3に示した様に、EN信号として入力される断線検知信号CMPBGと論理レベルが反対の断線検知信号CMPGをリセット信号RSTとして用いることができる。或いは、トランジスタMCN0,MCN2と共通に、EMIBをトランジスタMCN3のゲートに入力してもよい。トランジスタMCN3は、回路動作時(EM=Hレベル)にはオフされるので、ノードN12には、上述した、バイアス電圧VING及びVREFGの電圧差を増幅した電圧が現れる。
【0074】
これに対して、EN=Lレベル(ENI=Lレベル、ENIB=Hレベル)であるパワーオフ時には、トランジスタMCP0,MCP2,MCN0,MCN2がオンする一方で、トランジスタMCP1,MCP3,MCN1はオフする。これにより、P型トランジスタMP10~MP13のゲートには、電圧AVCCが入力されるとともに、N型トランジスタMN12~MN14のゲートには、電圧AGNDが入力される。
【0075】
この結果、P型トランジスタMP10~MP13及びN型トランジスタMN12~MN14がオフされる。これにより、二段増幅器の回路動作が停止されるとともに、コンパレータ120Gの内部において、電源ノードNP及びGNDノードNGの間の電流経路が遮断される。この様に、電源ノードNPからGNDノードNGに流れる電流(消費電流)がゼロに固定されることにより、コンパレータ120Gのパワーオフ機能が実現される。
図7のパワーオフ機構では、電流遮断のために、回路動作時に常時電流が流れるトランジスタが追加されないので、パワーオフ機能のために回路動作時の消費電力が増加することを防止できる。
【0076】
パワーオフ時(ENIB=Hレベル)には、トランジスタMCN3がオンされるため、ノードN12がGNDノードNGと接続される。この結果、出力信号VCMPGは、Lレベルにリセットされる。
【0077】
再び
図3を参照して、コンパレータ120Gの出力信号VCMPGは、Dフリップフロップ125Gに入力される。Dフリップフロップ125Gは、EN信号=Hレベルのときに動作するとともに、EN信号=Lレベルのときには停止してパワーオフ状態となる。Dフリップフロップ125Gの出力信号(OUT)は、断線検知信号CMPGとされる。Dフリップフロップ125Gの反転出力信号(OUTB)は、断線検知信号CMPGと反対の論理レベルを有する断線検知信号CMPBGとされる。
【0078】
Dフリップフロップ125Gは、リセット信号FRSTの入力に応じて、断線検知信号CMPG=Lレベル(CMPBG=Hレベル)に初期化する。例えば、半導体装置100Aの起動時に、リセット信号FRSTを入力することができる。
【0079】
半導体装置100Aの起動時に、GND断線が発生していなければ、バイアス回路110Gにおいて、VING<VREFGのため、コンパレータ120Gの出力信号VCMPG=Lレベルであり、GND断線が発生しない限り、VCMPG=Lレベルが維持される。
【0080】
従って、Dフリップフロップ125Gでは、上記初期化の後、入力信号(IN)がLレベルに維持される間、断線検知信号CMPG=Lレベル(CMPBG=Hレベル)に維持される。
【0081】
これに対して、GND断線が発生して、バイアス回路110GにおいてVING>VREFGに変化すると、コンパレータ120Gの出力信号VCMPG、即ち、Dフリップフロップ125Gの入力信号(IN)が、LレベルからHレベルに変化することに応じて、断線検知信号CMPGがLレベルからHレベルに変化する。反対に、断線検知信号CMPBGは、HレベルからLレベルに変化する。
【0082】
この様に、断線検知回路105Gは、正常時には、断線検知信号CMPG=Lレベル(CMPBG=Hレベル)に設定する。又、バイアス回路110G、コンパレータ120G、及び、Dフリップフロップ125GのEN信号はHレベル(回路動作状態)に設定される。これに対して、断線検知回路105Gは、GND断線時には、断線検知信号CMPG=Hレベル(CMPBG=Lレベル)に設定する。又、バイアス回路110G、コンパレータ120G、及び、Dフリップフロップ125GのEN信号はLレベル(パワーオフ状態)に設定される。
【0083】
遅延回路130Gは、断線検知回路105Gからの断線検知信号CMPG及びCMPBGをそれぞれ遅延させた、遅延信号CMPGD及びCMPBGDを発生する。
【0084】
図8には、遅延回路130Gの構成例が示される。
図8に示される様に、遅延回路130Gは、直列接続されたN個(N:2以上の偶数)のインバータINV1~INVNによって構成することができる。1段目のインバータINV1には、Dフリップフロップ125Gからの断線検知信号CMPGが入力され、最終段のインバータINVNは、断線検知信号CMPGの遅延信号CMPGDを出力する。
【0085】
遅延回路130Gによって付与される遅延時間Tdは、インバータの段数(N)によって調整することができる。又、最終段の1個前のインバータINV(N-1)から、断線検知信号CMPBGの遅延信号CMPBGDを出力することも可能である。或いは、遅延時間を正確に揃えるためには、遅延信号CMPBGDを生成するためのN段のインバータを、
図8のインバータINV1~INVNとは別に設けても良い。
【0086】
次に、
図9及び
図3を用いて、実施の形態1に係る半導体装置100AのGND断線時の動作を説明する。
【0087】
図9に示される様に、時刻t1でGND断線が発生する前は、AGCC=VCC、AGND=GNDに安定している。この様な正常時には、バイアス回路110GにおいてVI
NG<VREFGであるので、断線検知信号CMPG=Lレベルである。このため、
図3に示される様に、バイアス回路110G、コンパレータ120G、及び、Dフリップフロップ125Gの各々では、EN信号(断線検知信号CMPBG)がHレベルとされて、回路動作が実行される。
【0088】
又、演算増幅回路150では、出力トランジスタ制御回路180P,180Nにおいて、トランジスタMPC1,MNC1がオフされる一方で、トランジスタMPC2,MNC2がオンされる。これにより、演算増幅回路150は、差動増幅部160の反転出力ノードNo1(-側)及び非反転出力ノードNo2(+側)への入力電圧に応じた出力電圧VOUTを出力する、通常の回路動作を実行する。
【0089】
図9に示される様に、時刻t1にGND断線が発生すると、GNDノードNGの電圧AGNDが接地電圧GNDに固定されなくなり、徐々に上昇する。
図9では、表記の都合上、時刻t1から即座にAGNDが上昇する波形を例示しているが、実際には、GND断線の発生直後には、電圧AGNDは接地電圧GNDであるケースもある。
【0090】
電圧AGNDの上昇に応じて、バイアス回路110Gでは、バイアス電圧VREFGが変化しない一方で、バイアス電圧VINGが上昇する。これにより、
図9の動作例では、時刻t2において、バイアス電圧VINGがバイアス電圧VREFGよりも高くなる。これに応じて、断線検知信号CMPGがLレベルからHレベルに変化する。反対に、EN信号に用いられる断線検知信号CMPBGは、HレベルからLレベルに変化する。これに応じて、半導体装置100Aでは、GND断線に対応する制御動作が開始される。
【0091】
再び
図3を参照して、演算増幅回路150の出力トランジスタ制御回路180P,180Nでは、正常時とは反対に、トランジスタMPC2,MN2がオフされる一方で、トランジスタMPC
1,MNC1がオンされる。これにより、出力トランジスタMPOUT及びMNOUTの各々は、ゲート及びソースが同電位となるのでターンオフされる。
【0092】
更に、断線検知信号CMPGがHレベル(CMPBGがLレベル)に変化するのに応じて、半導体装置100Aは、パワーオフ状態に遷移する。パワーオフ状態では、EN=Lレベルに設定されて、
図3中のバイアス回路110G、コンパレータ120G、及び、Dフリップフロップ125Gがパワーオフ状態とされて、電源ノードNP及びGNDノードNGの間に生じる電流が遮断されることになる。
【0093】
図9に示される様に、この電流遮断効果により、時刻t2以降では、GND断線が生じていても、GNDノードNGに流入する電流が遮断されることで、電圧AGNDが低下するとともに、出力電圧VOUTも低下する。電圧AGNDの上昇が回避されることにより、
図2で説明した異常電流Iabn1の発生を防止することができる。
【0094】
時刻t2から遅延回路130Gによる遅延時間Tdが経過した時刻t3において、遅延回路130Gが出力する遅延信号CMPGDはLレベルからHレベルに変化する。
図3に示される様に、時刻t2から遅れた時刻t3では、遅延信号CMPGDがHレベルに設定されるのに応じて、プルダウントランジスタMNOGがオンされる。これにより、GND断線が生じたGNDノードNGを、出力ノードNo及び出力端子103を経由して、半導体装置100Aの外部で、基準電圧ノード11と電気的に接続することができる。即ち、プルダウントランジスタMNOGによって、「プルダウン機構」の一実施例を構成することができる。
【0095】
この結果、時刻t3以降では、GNDノードNG及び出力端子103がプルダウンされるので、出力端子103の電圧を低下させた後に、安定化(VOUT=GND)することが更に可能になる。又、断線が生じたGNDノードNGの電圧AGNDを、接地電圧GNDに固定することにより、時刻t3以降での異常電流Iabn1の発生の防止効果を更に高めることができる。
【0096】
一方で、時刻t3の時点で、出力ノードNo又はGNDノードNGに電流が生じていると、プルダウントランジスタMNOGのオンによって並列接続される出力トランジスタMNOUT及びプルダウントランジスタMNOGを含む短絡ループ経路に、当該電流が導かれてしまうことになる。
【0097】
従って、時刻t2の時点で半導体装置100Aがパワーオフ状態に遷移した後、電流を十分に低下させて略ゼロとしてから、プルダウントランジスタMNOGをオンすることが必要である。言い換えると、時刻t2~t3の間の遅延時間Tdは、パワーオフ状態としてから電流が十分に低下するまでの所要時間に対応して設定される。例えば、実機試験の結果等に基づいて、遅延時間Tdを予め設定することができる。
【0098】
この結果、実施の形態1に係る半導体装置によれば、
図9の時刻t2でのGND断線の検知に応答して、出力トランジスタMNOUTを強制的にターンオフするとともに、半導体装置100Aがパワーオフ状態に遷移して電圧AGNDの上昇を回避することで、GND断線に起因する異常電流Iabn1(
図2)の発生を防止することができる。
【0099】
更に、出力トランジスタMNOUTのターンオフから遅延させて、GNDノードNGに流入する電流が十分低下した後に、プルダウントランジスタMNOGをオンすることにより、出力端子103の電圧を安定化(VOUT=GND)することができる。
【0100】
以下、半導体装置100Aのパワーオフ状態、及び、プルダウントランジスタMNOGのオン時点における電流条件について、説明を進める。
【0101】
図10には、半導体装置100Aの変形例として、
図3の要素の他の回路200が設けられている構成が示される。
【0102】
図10の構成例では、
図3に示された、断線検知回路105G及び演算増幅回路150に加えて、電源ノードNP及びGNDノードNGの間に接続された回路200が更に配置される。回路200には、バイアス回路110G、コンパレータ120G、及び、Dフリップフロップ125Gと共通のEN信号に応じたパワーオフ機能を有する。
【0103】
図11には、回路200のパワーオフ機能を説明するためのブロック図が示される。
図11に示される様に、
図10に示された回路200は、電源ノードNP及びGNDノードNGの間に接続された、遮断トランジスタ205及び回路素子206を有する。遮断トランジスタ205は、例えば、P型のトランジスタで構成されて、ゲートにEN信号の反転信号を入力される。
【0104】
遮断トランジスタ205は、回路素子206と直列接続されており、遮断トランジスタ205のオフによって、回路素子206を経由した、電源ノードNP及びGNDノードNGの間の電流経路が遮断される。
【0105】
断線検知信号CMPGがLレベル(断線検知信号CMPBGがHレベル)に維持される正常時には、遮断トランジスタ205がオンするので、回路素子206に電流を供給することにより、回路200は、所望の回路動作を実行することができる。
【0106】
これに対して、GND断線時には、断線検知信号CMPGがHレベル(断線検知信号CMPBGがLレベル)に変化するのに応じて、遮断トランジスタ205がオフされる。これにより、回路200はパワーオフ状態となって、回路素子206を介して、電源ノードNPからGNDノードNGに流入する電流を遮断することができる。これにより、回路200に起因して、GND断線時に、電圧AGNDが上昇することを防止できる。即ち、回路200において、遮断トランジスタ205は「パワーオフ機構」の一実施例に対応する。
【0107】
或いは、回路200においては、
図7で説明したコンパレータ120Gと同様に、電源ノードNP及びGNDノードNGの間に接続される各トランジスタについて、断線検知信号CMPG,CMPBGに応じて当該トランジスタのゲートを電源ノードNP又はGNDノードNGと接続する機構を設けることで、強制的にオフする構成を追加することで、パワ-オフ機能を実現することも可能である。回路200は、「第2の回路」の一実施例に対応する。
【0108】
又、
図3の構成例では、演算増幅回路150について、出力トランジスタMPOUT,MNOUTに対して、断線検知信号CMPG,CMPBGに応じたオフ機能を持たせる一方で、差動増幅部160のパワーオフ機能については言及していないが、差動増幅部160を構成する図示しない複数のトランジスタを、
図7と同様の機構によって断線検知信号CMPG,CMPBGに応じて強制的にオフすることで「パワーオフ機構」を実現することも可能である。
【0109】
尚、半導体装置100Aのパワーオフ状態は、全回路に上述のパワーオフ機能を具備されることを必須とするものではない。
【0110】
例えば、
図12に示される様に、半導体装置100Aは、
図3に示された回路群200x(105G,130G,150)及び、少なくとも1個のパワーオフ機能を有する回路200(
図11)と、少なくとも1個のパワーオフ機能を有さない回路210とを具備する様に構成することができる。
【0111】
回路210は、EN信号として、断線検知信号CMPG,CMPBGの影響を受けない信号ENCを入力される。或いは、回路210には、EN信号が入力されなくてもよい。従って、回路210では、正常時及びGND断線時を通じて、回路動作に応じた電流が発生するが、その電流は比較的小さい。
【0112】
例えば、上述の様に、演算増幅回路150では、出力トランジスタMNOUT,MPOUTに流れる電流が支配的であるので、差動増幅部160にはパワーオフ機能を配置しないとする選択肢も可能である。
【0113】
この様に、GND断線発生時にパワーオフ状態の回路群と、パワーオフ機能を有することなくGNDノードNGへ流入する電流を発生する回路群(201)とが混在する場合には、GND断線時に、電源ノードNP及びGNDノードNGの間に流れる半導体装置100A、即ち、IC全体でのトータル電流値Ittlが、出力トランジスタMNOUTのボディダイオードDnを経由する電流経路が形成されない電流レベルまで低下することで、異常電流Ibn1(
図2)の発生を防止できる。即ち、半導体装置100Aのパワーオフ状態は、当該パワーオフ状態におけるトータル電流値Ittlが、上記電流レベルに対応して設定された限界電流値Ilmtより低くなる状態であると定義付けることができる。即ち、トータル電流値Ittlが限界電流値Ilmtより低くなる様に、パワーオフ機能を具備する回路を決定することで、半導体装置100Aのパワーオフ状態を定義することができる。
【0114】
当該限界電流値Ilmtは、例えば、
図13に示される、出力トランジスタのボディダイオードの特性に対応させて予め定めることができる。
【0115】
図13には、出力トランジスタMNOUTのボディダイオードの電圧電流特性が示される。ボディダイオードDnの、カソードに対するアノードの電圧Vfと、順方向電流Ifとは、
図13(a)に示される様に定義される。
【0116】
図13(b)に示される、ボディダイオードDnの電圧-電流特性(Vf-If特性)では、If≧Idの領域において、ボディダイオードDnに順方向電圧Vb(Vb>0)が生じること、即ち、ボディダイオードDnが導通することが理解される。従って、GND断線発生時には、半導体装置100A全体でGNDノードNGに流入するトータル電流値Ittlは、ボディダイオードDnに順方向電圧を生じさせない電流レベルとすることが必要である。言い換えると、トータル電流値Ittlは、上記電流値Id、即ち、ボディダイオードDnに順方向電圧を生じさせる下限電流値よりも低いことが必要である。
【0117】
従って、GND断線検知に応じて半導体装置100Aがパワーオフ状態に遷移したときのトータル電流値Ittlが、上記下限電流値Idよりも低く設定された限界電流値Ilmtよりも低くなるのであれば、半導体装置100Aの内部で、電源端子101及び接地端子102の間に接続された回路群のすべてをパワーオフ状態とする必要はない。言い換えると、半導体装置100Aのパワーオフ状態とは、電源ノードNP及びGNDノードNGの間に接続された複数の回路のうちの少なくとも一部に対して、トータル電流値Ittlが上記限界電流値Ilmtよりも低くなる様に、GND断線の検知に応じたパワーオフ機能を具備させることと等価である。例えば、実施試験による電流値測定等により、半導体装置100Aのパワーオフ状態を実現するために、上記回路群のうちのいずれの回路にパワーオフ機能を具備させるべきかを決定することができる。又、遅延回路130Gによる遅延時間Tdについても、
図9の時刻t2においてパワーオフ状態を開始してから、トータル電流値Ittlが本来の限界電流値Ilmtよりも低いレベルに整定するまでの所要時間に対応させて予め設定することができる。
【0118】
実施の形態1の変形例.
半導体装置では、電源投入時に電源10と接続されることで、電源ノードNPの電圧AVCCが立ち上がる。従って、電源投入時に、電圧AVCCが立ち上がるまでの期間において、
図6で説明した様な、バイアス電圧VING及びVREFGの逆転が発生することで、GND断線を誤検出することが懸念される。実施の形態1の変形例では、電源投入時、即ち、半導体装置100Aの起動時に、断線の誤検出を抑制するための構成について説明する。
【0119】
図14は、実施の形態1の変形例に係る半導体装置100Bの構成を説明するブロック図である。
【0120】
図14に示される様に、実施の形態1
の変形例に係る半導体装置100Bは、実施の形態1で説明した半導体装置100Aの構成に加えて、POR(パワーオンリセット)回路140を更に備える点で異なる。
【0121】
POR回路140は、電源ノードNPの電圧VACCに応じたPOROUT信号を生成する。POROUT信号は、電源投入時の初期値がLレベルであり、電圧AVCCが予め定められた電圧以上に上昇すると、LレベルからHレベルに変化する。
【0122】
図15には、
図14中POR回路140の構成例が示される。
図15に示される様に、POR回路140は、抵抗素子R10~R12と、N型のトランジスタMNPORとを有する。抵抗素子R10及びR11は、電源ノードNP及びGNDノードNGの間に、ノードNpiを介して直列接続される。従って、ノードNpiには、電源ノードNPの電圧AVCCと、GNDノードNGの電圧AGNDの電圧差を分圧した電圧が生じる。
【0123】
抵抗素子R12は、電源ノードNP及びノードNpoの間に接続され、N型のトランジスタMNPORは、ノードNpo及びGNDノードNGの間に接続される。トランジスタMNPORのゲートは、ノードNpiと接続される。
【0124】
半導体装置100Aの起動直後では、AVCC及びAGNDは同レベルであり、その後、電圧AVCCが電源10の電源電圧VCCへ立ち上がるのに応じて、ノードNpiの電圧も上昇する。このため、電圧AVCCの立ち上がり前、即ち、ノードNpiの電圧がトランジスタMNPORのしきい値電圧よりも低い期間では、トランジスタMNPORがオフされるので、ノードNpoには電源ノードNPの電圧が伝達される。
【0125】
これに対して、電圧AVCCが立ち上がって、ノードNpiの電圧が、トランジスタMNPORのしきい値電圧よりも高くなると、トランジスタMNPORがオンされることにより、ノードNpoには、GNDノードNGの電圧が伝達される。
【0126】
ノードNpoの電圧が入力されたインバータの出力が、POROUT信号として、POR回路140から出力される。抵抗素子R10及びR11の分圧比を適切化することで、POROUT信号は、電圧AVCCが立ち上がるまではLレベルに設定される一方で、電圧AVCCの立ち上がり後には、Hレベルに維持される。
【0127】
尚、POR回路140では、抵抗素子R10及びR11の電気抵抗値の和を大きくすることで、電源ノードNP及びGNDノードNGの間に流れる電流は十分に抑制される。従って、POR回路140には、実施の形態1で説明したパワーオフ機能を設けない構成とすることが可能である。
【0128】
再び
図14を参照して、半導体装置100Bでは、バイアス回路110G、コンパレータ120G、及び、Dフリップフロップ125Gに入力されるEN信号は、実施の形態1と同様の断線検知信号CMPBGと、POROUT信号とのAND(論理積)によって生成される。半導体装置100Bにおいても、
図10及び
図11で説明した、EN信号が入力される回路200(パワーオフ機能有り)が更に配置されてもよい。
【0129】
従って、実施の形態1の変形例では、POROUT=Lレベルの期間、即ち、電源投入時に電圧AVCCが立ち上がるまでは、EN信号=Lレベルに維持される。この結果、バイアス回路110G、コンパレータ120G、及び、Dフリップフロップ125Gは動作を開始しない。又、Dフリップフロップ125Gのリセット信号RSTに、POROUT信号を適用することができる。
【0130】
この結果、POTOUT=Lレベルの期間、即ち、電源投入時に電圧AVCCが立ち上がるまでの期間では、等価的に断線検知回路105Gの動作を待機させることで、断線検知信号CMPG及びCMPGBが、それぞれの初期値であるLレベル及びHレベルから変化することを防止できる。
【0131】
電圧AVCCの立ち上がり後には、POROUT信号がHレベルに維持されるので、EN信号は、実施の形態1と同様に、GND断線時にHレベルからLレベルに変化する断線検知信号CMPBGと同じ論理レベルを有する。従って、半導体装置100Bは、実施の形態1に係る100Aと同様に動作することができる。
【0132】
この様に、実施の形態1の変形例に係る半導体装置によれば、実施の形態1での効果に加えて、電源投入時におけるGND断線の誤検出を防止することができるので、起動時における動作を安定化することができる。
【0133】
実施の形態2.
実施の形態2では、半導体装置における電源配線に係る断線に対応するための回路構成を説明する。
【0134】
(電源配線に係る断線による異常電流)
まず、
図16及び
図17を用いて、半導体装置の出力端子が、半導体装置の外部においてプル
アップされている構成下で、半導体装置の内部で
電源配線に断線が生じた場合における異常電流について説明する。
【0135】
図16には、
図1と同様の比較例に係る半導体装置100の構成を説明する概略的な回路図が示される。
【0136】
半導体装置100は、
図1で説明したのと同様に、電源端子101と、接地端子102と、出力端子103と、電源ノードNPと、GNDノードNGと、演算増幅回路150とを備える。
図16では、出力端子103は、半導体装置の外部で、プルアップ抵抗201を介して
電源10と電気的に接続されている点が、
図1と異なる。
【0137】
図17には、
図16に示された半導体装置100の電源配線側の断線が生じたとき(以下、VCC断線時とも称する)の回路図が示される。
図17を用いて、電源電圧VCCが供給されなくなったときの半導体装置100の動作について説明する。
【0138】
図17に示される様に、電源10及び電源端子101の間に断線が生じると、電源端子101が開放されて、電源ノードNPは、ハイインピーダンス(Hi-Z)状態となる。これにより、半導体装置100には、接地電圧GNDのみが与えられる状態となるので、電源ノードNPの電圧AVCCは、時間経過とともに徐々に低下することになり、最終的には、GND(0[V])に収束することになる。
【0139】
実施の形態1で説明した様に、出力段170を構成する出力トランジスタMPOUT(P型)及びMNOUTにそれぞれ形成されるボディダイオードDp及びDnは、正常時には、それぞれ逆バイアスされている。
【0140】
しかしながら、VCC断線時には、電源ノードNPの電圧AVCCが低下することにより、出力トランジスタMPOUTのボディダイオードDpが導通する可能性がある。従って、出力端子103に対して、半導体装置100の外部でプルアップ抵抗201が接続される場合には、当該プルアップ抵抗201を介して、電源10(VCC)-プルアップ抵抗201-出力端子103-出力ノードNo-出力トランジスタMPOUTのボディダイオードDp-電源ノードNP(電圧低下)の経路により、図中に点線で示す異常電流Iabn2が継続的に発生することが懸念される。
【0141】
(実施の形態2に係るVCC断線時の異常電流の防止)
図18には、実施の形態2に係る半導体装置100Cの構成を説明するブロック図が示される。
【0142】
図18に示される様に、実施の形態2に係る半導体装置100Cは、
図16に示した半導体装置100の構成に加えて、VCC断線時の異常電流を防止するための構成として、断線検知回路105Vと、遅延回路130Vと、出力トランジスタ制御回路180P,180Nと、プルアップトランジスタMPOVとを更に備える。
【0143】
出力トランジスタ制御回路180P及び180Nは、
図3(半導体装置100A)と同じ態様で出力トランジスタMPOUT,MNOUTに対して接続される、P型のトランジスタMPC1,MPC2及びN型のトランジスタMNC1,MMC2をそれぞれ有する。
【0144】
プルアップトランジスタMPOVは、出力端子103と接続された出力ノードNoと、電源ノードNPとの間に接続される。即ち、プルアップトランジスタMPOVは、出力トランジスタMPOUTと並列に、出力ノードNo及び電源ノードNPの間に接続される。
【0145】
断線検知回路105Vは、電源ノードNPの電圧AVCC及びGNDノードNGの電圧AGNDに基づき、断線検知信号CMPV及びCMPBVを生成する。以下の説明で明らかになる様に、断線検知信号CMPVは、Lレベルに初期化された後、VCC断線が発生していない正常時にはLレベルに維持される。一方で、VCC断線が発生すると、断線検知信号CMPVはLレベルからHレベルに変化する。断線検知信号CMPBVは、断線検知信号CMPVの反転信号であり、正常時にはHレベルに維持される一方で、VCC断線が発生すると、Lレベルに設定される。
【0146】
断線検知信号CMPVは、出力トランジスタ制御回路180P,180NのトランジスタMPC2,MNC1のゲートに入力される。断線検知信号CMPBVは、出力トランジスタ制御回路180P,180NのトランジスタMPC1,MNC2のゲートに入力される。実施の形態1と同様に、出力トランジスタ制御回路180P,180Nでは、トランジスタMPC1及びMNC1のペアと、トランジスタMPC2及びMNC2のペアとが、相補的にオンオフされる。
【0147】
遅延回路130Vは、予め定められた遅延時間Tdに従って断線検知信号CMPV及びCMPBVをそれぞれ遅延させた、遅延信号CMPVD及びCMPBVDを生成する。遅延信号CMPBVDは、プルアップトランジスタMPOVのゲートに入力される。
【0148】
次に、
図18に加えて、
図19~
図23を用いて、断線検知回路105Vの構成を詳細に説明する。断線検知回路105Vは、バイアス回路110Vと、コンパレータ120Vと、Dフリップフロップ125Vとを含む。バイアス回路110V、コンパレータ120V、及び、Dフリップフロップ125Vの各々には、断線検知信号CMPBVが、EN信号として入力される。即ち、バイアス回路110V、コンパレータ120V、及び、Dフリップフロップ125Vの各々は、EN信号がLレベルであるときには、パワーオフ状態となって各回路動作を停止する。
【0149】
バイアス回路110Vは、電圧AVCC及び電圧AGNDに基づき、バイアス電圧VINV,VREFVを生成する。
【0150】
図19及び
図20には、バイアス回路110Vの構成例及びその変形例が示される。
図19の構成例では、バイアス回路110Vは、抵抗素子R0V,R1V,R2V,R3Vと、P型のトランジスタMP0Vと、N型のトランジスタMN1V,MN2Vと、パワーオフのためのP型トランジスタMCPVとを有する。バイアス回路110Vにおいて、トランジスタMCPVは「パワーオフ機構」の一実施例に対応する。
【0151】
トランジスタMCPVは、電源ノードNP及びノードN0Vの間に接続される。トランジスタMCPVのゲートには、EN信号として入力された断線検知信号CMPBVを反転した信号ENIBが入力される。即ち、信号ENIBの論理レベルは、断線検知信号CMPVと同様である。トランジスタMCPVは、回路動作時(EN=Hレベル)にオンする一方で、パワーオフ状態(EN=Lレベル)ではオフする。以下では、ノードN0Vが電源ノードNPと接続される回路動作時のバイアス回路110Vの動作を説明する。
【0152】
抵抗素子R0V及びR1Vは、ノードN0Vと、バイアス電圧VINVが発生されるノードN1Vの間に直列接続される。抵抗素子R2Vは、ノードN1V及びGNDノードNGの間に接続される。従って、バイアス電圧VINVは、電圧AVCC及び電圧AGNDの電圧差を分圧したものとなる。
【0153】
トランジスタMP0V及び抵抗素子R3Vは、ノードN0Vと、バイアス電圧VREFVが発生されるノードN2Vとの間に直列接続される。トランジスタMP0Vは、ゲート・ソース間電圧が0[V]のときにドレイン電流が流れるようなしきい値電圧Vtを有するように構成される。例えば、トランジスタMP0Vは、ネイティブPMOSトランジスタ(又は、デプレッション型PMOSトランジスタ)によって構成することができる。トランジスタMP0Vのゲートは、ノードN0Vと接続される。これにより、オン状態のトランジスタMP0Vと、抵抗素子R3Vは、ノードN0V及びノードN2Vの間に接続された定電流源として動作する。トランジスタMN1V及びMN2Vは、ノードN2V及びGNDノードNGの間に直列接続されて、トランジスタMP0V及び抵抗素子R3Vとともに電源ノードNP及びGNDノードNGの間に直列経路を形成する。トランジスタMN1V及びMN2Vの各々は、ダイオード接続される。
【0154】
図21には、バイアス回路110Vの動作を説明するために、電圧AVCCの変化に対するバイアス電圧VINV,VREFVの挙動を概念的に表記したグラフが示される。
【0155】
図21に示される様に、バイアス電圧VINVは、電圧AVCC及び電圧AGNDの電圧差に比例する。従って、VCC断線が発生すると、電圧AGNDが一定である一方で電圧AVCCが低下するのに伴って、バイアス電圧VINVも低下する。
【0156】
これに対して、ノードN2Vを含む直列経路では、トランジスタMN1V及びMN2Vは、トランジスタMP0V及び抵抗素子R3Vによる定電流が通過するダイオードとして作用するので、バイアス電圧VREFVは、トランジスタMN1V及びMN2Vによるダイオードの順方向電圧を用いて生成される。従って、電圧AGNDが変わらなければ、電圧AVCCの低下が、バイアス電圧VREFVに与える影響は小さい。このため、バイアス電圧VREFVは、電圧AVCCの変化に対して略一定レベルとなるので、VCC断線の発生時に電圧AVCCが低下しても、正常時(VCC断線非発生時)からあまり変わらない。この様に、バイアス電圧VREFVは、バイアス電圧VINVと比較すると、電源ノードNPの電圧変化(低下)に対する感度が低い。即ち、バイアス電圧VREFVは「第1のバイアス電圧」の一実施例に対応し、バイアス電圧VINVは「第2のバイアス電圧」の一実施例に対応する。
【0157】
従って、抵抗素子R0V~R2Vによる分圧比を適切に設定することにより、正常時(VCC断線非発生時)にはVINV>VREFVとなる一方で、VCC断線による電圧AVCCの低下時には、これと反対に、VINV<VREFVとなることが理解される。この様に、正常時及びVCC断線時の間で、高低関係が逆転するバイアス電圧VINV,VREFVを生成する様に、バイアス回路110Vは動作する。
【0158】
図19中のバイアス電圧VREVを生成するための構成は、
図20に示される構成に変形することも可能である。例えば、
図20(a)に示される様に、ノードN0V及びノードN2Vの間に接続された抵抗素子R3Vと、P型のトランジスタMP1V(ダイオード接続)とによって、簡易な構成により同様のバイアス電圧VREFVを生成することも可能である。
【0159】
或いは、
図20(b)に示される様に、ノードN0V及びノードN2Vの間に接続された抵抗素子R3Vと、ノードN2V及びGNDノードNGとの間に接続されたN型のトランジスタMN1V(ダイオード接続)と、によって、簡易な構成により同様のバイアス電圧VREFVを生成することも可能である。
【0160】
尚、
図19の構成例によれば、
図20(a),(b)の変形例と比較して、回路素子は増加する一方で、バイアス電圧VREFVの電圧AVCCの変化に対する非依存性(低感度性)が向上する。
【0161】
バイアス回路110Vにおいて、EN=Lレベルであるパワーオフ状態では、トランジスタMCPVがオフされることによって、ノードN0Vは、電源ノードNPから切り離される。この結果、バイアス回路110Vの内部で、電源ノードNP及びGNDノードNGの間の電流経路が遮断されることにより、バイアス回路110Vのパワーオフ機能が実現される。
【0162】
再び
図18を参照して、バイアス回路110Vが生成するバイアス電圧VINV及びVREFVは、コンパレータ120Vの(-)入力端子及び(+)入力端子にそれぞれ入力される。コンパレータ120Vは、実施の形態1で説明したコンパレータ120Gと同様の機能を有しており、(-)入力端子及び(+)入力端子の電圧の比較結果に従った出力信号VCMPVを発生する。従って、VINV>VREFVとなるVCC断線の非発生時(正常時)には、VCMPV=Lレベルに設定される。これに対して、VINV<VREFVとなるVCC断線時には、VCMPV=Hレベルに設定される。
【0163】
図22には、コンパレータ120Vの構成例を説明する回路図が示される。
図22に示される様に、コンパレータ120Vは、
図7に示されたコンパレータ120Gと同様の構成を有する。即ち、コンパレータ120Vは、二段増幅器を構成するための、P型トランジスタMP10~MP13及びN型トランジスタMN10~MN14と、パワーオフ機能のための、P型トランジスタMCP0~MCP3及びN型トランジスタMCN0~MCN3とを有する。
【0164】
これらのトランジスタMP10~MP13,MN10~MN14、及び、トランジスタMCP0~MCP3,MCN0~MCN3の配置及び接続態様は
図7と同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。又、コンパレータ120G(
図7)と同様に、ノードN12の電圧は、2段(偶数段)のインバータによって増幅されて、2値の出力信号VCMPVとして、コンパレータ120Vから出力される。
【0165】
コンパレータ120Vでは、
図18の(+)入力端子に相当するトランジスタMN10のゲートには、バイアス回路110Vからのバイアス電圧VREFVが入力される。これに対して、
図18の(-)入力端子に相当するトランジスタMN11のゲートには、バイアス回路110Vからのバイアス電圧VINVが入力される。
【0166】
コンパレータ120Vにおいても、EN=Hレベル(ENI=Hレベル、ENIB=Lレベル)である回路動作時には、トランジスタMN10のゲート電圧((+)入力端子の電圧)、及び、トランジスタMN11のゲート電圧((-)入力端子の電圧)の差が増幅された電圧差が、ノードN11及びN12の間に生じることになる。従って、VINV>VREFVの場合には、VCMPV=AGND(Lレベル)となる一方で、VINV<VREFVの場合には、VCMPV=AVCC(Hレベル)となる。
【0167】
これに対して、EN=Lレベル(ENI=Lレベル、ENIB=Hレベル)であるパワーオフ時には、P型トランジスタMP10~MP13及びN型トランジスタMN12~MN14がオフされことにより、二段増幅器の回路動作が停止されるとともに、コンパレータ120Vの内部において、電源ノードNP及びGNDノードNGの間の電流経路が遮断される。これにより、コンパレータ120Vのパワーオフ機能が実現される。又、コンパレータ120Vにおいても、パワーオフ時(ENIB=Hレベル)には、トランジスタMCN3のオンにより、出力信号VCMPVは、Lレベルにリセットされる。
【0168】
再び
図18を参照して、コンパレータ120Vの出力信号VCMPVは、Dフリップフロップ125Vに入力される。Dフリップフロップ125Vは、Dフリップフロップ125Gと同様に、EN信号=Hレベルのときに動作するとともに、EN信号=Lレベルのときには停止してパワーオフ状態となる。実施の形態2では、Dフリップフロップ125Vの出力信号(OUT)は、断線検知信号CMPVとされる。Dフリップフロップ125Vの反転出力信号(OUTB)は、断線検知信号CMPVと反対の論理レベルを有する断線検知信号CMPBVとされる。
【0169】
Dフリップフロップ125Vは、実施の形態1と同様のリセット信号FRSTの入力に応じて、断線検知信号CMPV=Lレベル(CMPBV=Hレベル)に初期化する。
【0170】
半導体装置100Cの起動時に、VCC断線が発生していなければ、バイアス回路110Vにおいて、VINV>VREFVのため、コンパレータ120Vの出力信号VCMPV=Lレベルであり、VCC断線が発生しない限り、VCMPV=Lレベルが維持される。
【0171】
従って、Dフリップフロップ125Vでは、上記初期化の後、入力信号(IN)がLレベルに維持される間、断線検知信号CMPV=Lレベル(CMPBV=Hレベル)に維持される。
【0172】
これに対して、VCC断線が発生して、バイアス回路110VにおいてVINV<VREFVに変化すると、コンパレータ120Vの出力信号VCMPV、即ち、Dフリップフロップ125Vの入力信号(IN)が、LレベルからHレベルに変化することに応じて、断線検知信号CMPVがLレベルからHレベルに変化する。反対に、断線検知信号CMPBVは、HレベルからLレベルに変化する。
【0173】
この様に、断線検知回路105Vは、正常時には、断線検知信号CMPV=Lレベル(CMPBV=Hレベル)に設定する。又、バイアス回路110V、コンパレータ120V、及び、Dフリップフロップ125VのEN信号はHレベル(回路動作状態)に設定される。これに対して、断線検知回路105Vは、VCC断線時には、断線検知信号CMPV=Hレベル(CMPBV=Lレベル)に設定する。又、バイアス回路110V、コンパレータ120V、及び、Dフリップフロップ125VのEN信号はLレベル(パワーオフ状態)に設定される。
【0174】
遅延回路130Vは、断線検知回路105Vからの断線検知信号CMPV及びCMPBVをそれぞれ遅延させた、遅延信号CMPVD及びCMPBVDを発生する。
【0175】
図23には、遅延回路130Vの構成例が示される。
図23に示される様に、遅延回路130Vは、遅延回路130G(
図8)と同様に、直列接続されたN個(N:2以上の偶数)のインバータINV1~INVNによって構成することができる。遅延回路130Vでは、1段目のインバータINV1には、Dフリップフロップ125Vからの断線検知信号CMPVが入力され、最終段のインバータINVNは、断線検知信号CMPVの遅延信号CMPVDを出力する。
【0176】
遅延回路130Vによる遅延時間Tdは、遅延回路130Gと同様に、インバータの段数(N)によって調整することができる。又、最終段の1個前のインバータINV(N-1)から、断線検知信号CMPBVの遅延信号CMPBVDを出力することも可能である。或いは、遅延信号CMPBVDを生成するためのN段のインバータを、
図23のインバータINV1~INVNとは別に設けても良い。
【0177】
次に、
図24及び
図18を用いて、実施の形態2に係る半導体装置100CのVCC断線時の動作を説明する。
【0178】
図24に示される様に、時刻t1でVCC断線が発生する前は、AVCC=VCC、AGND=GNDに安定している。この様な正常時には、バイアス回路110VにおいてVIV>VREFVであるので、断線検知信号CMPV=Lレベルである。このため、
図3に示される様に、バイアス回路110V、コンパレータ120V、及び、Dフリップフロップ125Vの各々では、EN信号(断線検知信号CMPBV)がHレベルとされて、回路動作が実行される。
【0179】
又、演算増幅回路150では、出力トランジスタ制御回路180P,180Nにおいて、トランジスタMPC1,MNC1がオフされる一方で、トランジスタMPC2,MNC2がオンされるので、通常の回路動作が実行される。
【0180】
図24に示される様に、時刻t1にVCC断線が発生すると、電源ノードNPの電圧AVCCが電源電圧VCCに固定されなくなり、徐々に低下する。
図24では、表記の都合上、時刻t1から即座にAVCCが低下する波形を例示しているが、実際には、
VCC断線の発生直後には、電圧AVCCは電源電圧VCCであるケースもある。
【0181】
電圧AVCCの低下に応じて、バイアス回路110Vでは、バイアス電圧VREFVが変化しない一方で、バイアス電圧VINVが低下する。これにより、
図24の動作例では、時刻t2において、バイアス電圧VINVがバイアス電圧VREFVよりも低くなる。これに応じて、断線検知信号CMPVがLレベルからHレベルに変化する。反対に、EN信号に用いられる断線検知信号CMPBVは、HレベルからLレベルに変化する。これに応じて、半導体装置100Cでは、VCC断線に対応する制御動作が開始される。
【0182】
再び
図18を参照して、演算増幅回路150の出力トランジスタ制御回路180P,180Nでは、正常時とは反対に、トランジスタMPC2,MN2がオフされる一方で、トランジスタMPC
1,MNC1がオンされる。これにより、出力トランジスタMPOUT及びMNOUTの各々は、ゲート及びソースが同電位となるのでターンオフされる。
【0183】
更に、断線検知信号CMPVがHレベル(CMPBVがLレベル)に変化するのに応じて、半導体装置100Cは、パワーオフ状態に遷移する。パワーオフ状態では、EN=Lレベルに設定されて、
図18中のバイアス回路110V、コンパレータ120V、及び、Dフリップフロップ125Vがパワーオフ状態とされて、電源ノードNP及びGNDノードNGの間に生じる電流が遮断されることになる。
【0184】
図23に示される様に、この電流遮断効果により、時刻t2以降では、VCC断線が生じていても、電源ノードNPから流出する電流が遮断されることで、電圧AVCCが上昇するとともに、出力電圧VOUTも上昇する。電圧AVCCの低下が回避されることにより、
図17で説明した異常電流Iabn2の発生を防止することができる。
【0185】
時刻t2から遅延回路130Vによる遅延時間Tdが経過した時刻t3において、遅延回路130Vが出力する遅延信号CMPBVDはHレベルからLレベルに変化する。
図18に示される様に、時刻t2から遅れた時刻t3では、遅延信号CMPBVDがLレベルに設定されるのに応じて、プルアップトランジスタMPOVがオンされる。これにより、VCC断線が生じた電源ノードNPを、出力ノードNo及び出力端子103を経由して、半導体装置100Cの外部で、電源10と電気的に接続することができる。即ち、プルアップトランジスタMPOVによって、「プルアップ機構」の一実施例を構成することができる。
【0186】
この結果、時刻t3以降では、電源ノードNP及び出力端子103がプルアップされるので、出力端子103の電圧を上昇させた後に、安定化(VOUT=VCC)することが更に可能になる。又、断線が生じた電源ノードNPの電圧AVCCを、電源電圧VCCに固定することにより、時刻t3以降での異常電流Iabn2の発生の防止効果を更に高めることができる。
【0187】
一方で、時刻t3の時点で、出力ノードNo又は電源ノードNPに電流が生じていると、プルアップトランジスタMPOVのオンによって並列接続される出力トランジスタMPOUT及びプルアップトランジスタMPOVを含む短絡ループ経路に、当該電流が導かれてしまうことになる。
【0188】
従って、時刻t2の時点で半導体装置100Cがパワーオフ状態に遷移した後、電流を十分に低下して略ゼロとしてから、プルアップトランジスタMPOVをオンすることが必要である。実施の形態1と同様に、遅延時間Tdは、半導体装置100Cがパワーオフ状態に遷移してからトータル電流値Ittlが限界電流値Ilmt以下に低下するまでの所要時間に対応させて、実機試験の結果等に基づいて予め設定することができる。
【0189】
この結果、実施の形態2に係る半導体装置によれば、
図24の時刻t2でのVCC断線の検知に応答して、出力トランジスタMPOUTを強制的にターンオフするとともに、半導体装置100Cがパワーオフ状態に遷移して、電圧AVCCの低下を回避することで、VCC断線に起因する異常電流Iabn2(
図17)の発生を防止することができる。
【0190】
更に、出力トランジスタMPOUTのターンオフから遅延させて、電源ノードNPに流れる電流が十分低下した後に、プルアップトランジスタMPOVをオンすることにより、出力端子103の電圧を安定化(VOUT=VCC)することができる。
【0191】
図25に示される様に、実施の形態2に係る半導体装置100Cにおいても、
図11と同様の回路200が更に配置されてもよい。
図11で説明した様に、回路200は、電源ノードNP及びGNDノードNGの間に接続されるとともに、バイアス回路110V、コンパレータ120V、及び、Dフリップフロップ125Vと共通のEN信号に応じたパワーオフ機能を有する。
【0192】
図26に示される様に、
図25に示された回路200は、電源ノードNP及びGNDノードNGの間に接続された、遮断トランジスタ205及び回路素子206を有する。遮断トランジスタ205は、例えば、P型のトランジスタで構成されて、ゲートにEN信号の反転信号を入力される。実施の形態2では、断線検知信号CMPBVがEN信号として入力される点が、実施の形態1(
図12)と異なる。
【0193】
実施の形態2に係る半導体装置100Cにおいても、遮断トランジスタ205のオフによって、回路素子206を経由した、電源ノードNP及びGNDノードNGの間の電流経路を遮断することができる。即ち、遮断トランジスタ205によって、「パワーオフ機構」の一実施例を構成することができる。
【0194】
断線検知信号CMPVがLレベル(断線検知信号CMPBVがHレベル)に維持される正常時には、遮断トランジスタ205がオンするので、回路素子206に電流を供給することにより、回路200は、所望の回路動作を実行することができる。
【0195】
これに対して、VCC断線時には、断線検知信号CMPVがHレベル(断線検知信号CMPBVがLレベル)に変化するのに応じて、遮断トランジスタ205がオフされる。これにより、回路200はパワーオフ状態となって、回路素子206を介して、電源ノードNP及びGNDノードNGの間に流れる電流をオフすることができる。これにより、回路200に起因して、VCC断線時に電圧AVCCが低下することを防止できる。
【0196】
或いは、実施の形態2においても、回路200において、
図7で説明したコンパレータ120Gと同様に、電源ノードNP及びGNDノードNGの間に接続される各トランジスタについて、断線検知信号CMPV,CMPBVに応じて当該トランジスタのゲートを電源ノードNP又はGNDノードNGと接続することで強制的にオフする機構を追加することによって、パワ-オフ機能を実現することも可能である。
【0197】
又、半導体装置100Cにおいても、実施の形態1で説明したのと同様に、演算増幅回路150の差動増幅部160に対して、
図7と同様の機構によって断線検知信号CMPV,CMPBVに応じた「パワーオフ機構」を構成することも可能である。
【0198】
半導体装置100Cにおいても、パワーオフ状態は、全回路に上述のパワーオフ機能を具備されることを必須とするものではない。
【0199】
例えば、
図27に示される様に、半導体装置100Cは、
図18に示された回路群200y(105V,130V,150)及び、少なくとも1個のパワーオフ機能を有する回路200(
図26)と、少なくとも1個のパワーオフ機能を有さない回路210とを具備する様に構成することができる。回路210では、
図12と同様に、正常時及びVCC断線時を通じて、回路動作に応じて比較的小さい電流が発生する。
【0200】
この様に、VCC断線発生時にパワーオフ状態の回路と、パワーオフ機能を有することなく電源ノードNPを流れる電流を発生する回路(210)とが混在する場合には、VCC断線時に、電源ノードNP及びGNDノードNGの間に流れる半導体装置100Cのトータル電流値Ittlが限界電流値Ilmtよりも低くなる様に、パワーオフ状態を具備する回路を決定することで、半導体装置100Cのパワーオフ状態を定義することができる。
【0201】
即ち、実施の形態2(VCC断線時)においても、実施の形態1(GND断線時)と同様に、VCC断線時に半導体装置100C全体で電源ノードNPに流れるトータル電流値Ittlは、実施の形態1(
図13)で説明した電流値Id、即ち、出力トランジスタMPOUTのボディダイオードDpに順方向電圧が生じる下限電流値よりも低いことが必要である。
【0202】
VCC断線検知に応じてパワーオフ状態としたときのトータル電流値Ittlが、上記下限電流値Idよりも低く設定された限界電流値Ilmtよりも低くなるのであれば、半導体装置100Cの内部で、電源端子101及び接地端子102の間に接続される回路群の全てをVCC断線時にパワーオフ状態とする必要はない。言い換えると、半導体装置100Cのパワーオフ状態とは、電源ノードNP及びGNDノードNGの間に接続された回路群のうちの少なくとも一部に対して、トータル電流値Ittlが限界電流値Ilmtよりも低くなる様に、VCC断線の検知に応じたパワーオフ機能を具備させることと等価である。実施の形態2においても、実施試験による電流値測定等により、半導体装置100Cのパワーオフ状態を実現するために、上記回路群のうちのいずれの回路にパワーオフ機能を具備させるべきかを決定することができる。
【0203】
実施の形態2の変形例.
実施の形態2の変形例では、電源投入時、即ち、半導体装置100Cの起動時に、断線の誤検出を抑制するための構成について説明する。
【0204】
図28は、実施の形態2の変形例に係る半導体装置100Dの構成を説明するブロック図である。
【0205】
図28に示される様に、実施の形態2
の変形例に係る半導体装置100Dは、実施の形態2で説明した半導体装置100Cの構成に加えて、POR回路140を更に備える点で異なる。
【0206】
POR回路140は、
図14及び
図15に示されたのと同様に構成されて、電源ノードNPの電圧VACCに応じたPOROUT信号を生成する。即ち、POROUT信号は、電源投入時の初期値がLレベルであり、電圧AVCCが予め定められた電圧以上に上昇すると、LレベルからHレベルに変化する。
【0207】
半導体装置100Dでは、バイアス回路110V、コンパレータ120V、及び、Dフリップフロップ125Vに入力されるEN信号は、実施の形態2と同様の断線検知信号CMPBVと、POROUT信号とのAND(論理積)によって生成される。半導体装置100Dにおいても、
図25及び
図26で説明した、EN信号が入力される回路200(パワーオフ機能有り)が更に配置されてもよい。
【0208】
従って、実施の形態2の変形例では、POROUT=Lレベルの期間、即ち、電源投入時に電圧AVCCが立ち上がるまでは、EN信号=Lレベルに維持される。この結果、バイアス回路110V、コンパレータ120V、及び、Dフリップフロップ125Vは動作を開始しない。又、Dフリップフロップ125Vのリセット信号RSTに、POROUT信号を適用することができる。
【0209】
この結果、POTOUT=Lレベルの期間、即ち、電源投入時に電圧AVCCが立ち上がるまでの期間では、等価的に断線検知回路105Vの動作を待機させることで、断線検知信号CMPV及びCMPBVが、それぞれの初期値であるLレベル及びHレベルから変化することを防止できる。
【0210】
電圧AVCCの立ち上がり後には、POROUT信号がHレベルに維持されるので、EN信号は、実施の形態2と同様に、VCC断線時にHレベルからLレベルに変化する断線検知信号CMPBVと同じ論理レベルを有する。従って、半導体装置100Dは、実施の形態2に係る100Cと同様に動作することができる。
【0211】
この様に、実施の形態2の変形例に係る半導体装置によれば、実施の形態2での効果に加えて、電源投入時におけるVCC断線の誤検出を防止することができるので、起動時における動作を安定化することができる。
【0212】
実施の形態3.
実施の形態3では、GND断線及びVCC断線の両方に対処するための半導体装置の構成を説明する。
【0213】
図29は、実施の形態3に係る半導体装置100Eの構成を説明するブロック図である。
【0214】
図29に示される様に、実施の形態3に係る半導体装置100Eは、
図1の半導体装置100の構成に加えて、半導体装置100A(
図3)と同様の断線検知回路105G及び遅延回路130Gと、半導体装置100C(
図18)と同様の断線検知回路105V及び遅延回路130Vと、出力トランジスタ制御回路180P,180Nと、プルダウントランジスタMNOG及びプルアップトランジスタMPOVの両方とを備える。
【0215】
断線検知回路105Gは、GND断線を検知するための実施の形態1と同様の断線検知信号CMPG,CMPBGを生成する。遅延回路130Gは、断線検知信号CMPG,CMPBGに対して遅延時間を付与した、遅延信号CMPGD,CMPBGDを生成する。同様に、断線検知回路105Vは、VCC断線を検知するための実施の形態2と同様の断線検知信号CMPV,CMPBVを生成する。遅延回路130Vは、断線検知信号CMPV,CMPBVに対して遅延時間Tdを付与した遅延信号CMPPVD,CMPBVDを生成する。
【0216】
実施の形態3では、断線検知信号CMPV及びCMPGのOR(論理和)演算結果による断線検知信号CMPが更に生成される。断線検知信号CMPは、初期値がLレベルであり、VCC断線及びGND断線の両方とも発生しない間は、Lレベルに維持される。一方で、断線検知信号CMPは、VCC断線及びGND断線の少なくとも一方が発生すると、LレベルからHレベルに変化する。断線検知信号CMPBは、断線検知信号CMPの反転信号である。即ち、断線検知信号CMPBは、正常時にはHレベルに設定される一方で、VCC断線及びGND断線の少なくとも一方が発生すると、HレベルからLレベルに変化する。半導体装置100Eでは、断線検知信号CMPBが、断線検知回路105G,105V等に対して、EN信号として入力される。
【0217】
出力トランジスタ制御回路180P及び180Nは、
図3(半導体装置100A)と同じ態様で出力トランジスタMPOUT,MNOUTに対して接続される、P型のトランジスタMPC1,MPC2及びN型のトランジスタMNC1,MNC2をそれぞれ有する。トランジスタMPC2,MNC1のゲートには、断線検知信号CMPが入力される。トランジスタMPC1,MNC2のゲートには、断線検知信号CMPBが入力される。
【0218】
プルダウントランジスタMNOGは、
図3と同様に、出力ノードNo及びGNDノードNGの間に接続されて、遅延信号CMPGDをゲートに受ける。即ち、プルダウントランジスタMNOGは、GND断線時に、実施の形態1と同様に動作する。
【0219】
プルアップトランジスタMPOVは、
図18と同様に、出力ノードNo及び電源ノードNPの間に接続されて、遅延信号CMPBVDをゲートに受ける。即ち、プルアップトランジスタMPOVは、VCC断線時に、実施の形態2と同様に動作する。
【0220】
又、半導体装置100Eにおいても、
図11,
図12及び
図25,
図26で説明した、EN信号に応じた断線検知時のパワーオフ機能を有する回路200、及び/又は、
図13,
図27で説明した断線検知時のパワーオフ機能を有さない回路210を、電源ノードNP及びGNDノードNGの間に配置することも可能である。
【0221】
半導体装置100Eでは、VCC断線及びGND断線のいずれも発生していない正常時(CMP=L,CMBP=H)には、出力トランジスタ制御回路180P,180Nにおいて、トランジスタMPC1,MNC1がオフされる一方で、トランジスタMPC2,MN2がオンされる。これにより、演算増幅回路150は、実施の形態1及び2での正常時の動作を実行する。又、EN=Hレベルに設定されるので、断線検知回路105G,105V及び回路200は、通常の回路動作を実行する。
【0222】
半導体装置100Eにおいて、GND断線時には、断線検知信号CMPがHレベルに設定されることにより、出力トランジスタ制御回路180P,180Nでは、正常時とは反対に、トランジスタMPC2,MN2がオフされる一方で、トランジスタMPC1,MNC1がオンされる。これにより、出力トランジスタMPOUT及びMNOUTの各々がターンオフされる。
【0223】
更に、断線検知信号CMPBに追随して、各回路のEN信号がLレベルに設定されることにより、半導体装置100Eがパワーオフ状態に遷移する。その後、プルダウントランジスタMNOGが、遅延信号CMPGDに応じて実施の形態1と同様に動作することで、出力端子103及びGNDノードNGがプルダウンされる。この様に、実施の形態1で説明したGND断線時の制御動作が、実施の形態3に係る半導体装置100Eでも実行される。
【0224】
半導体装置100Eにおいて、VCC断線時には、断線検知信号CMPがHレベルに設定されることにより、出力トランジスタ制御回路180P,180Nでは、GND断線時と同様に、トランジスタMPC2,MN2がオフされる一方で、トランジスタMPC1,MNC1がオンされる。これにより、出力トランジスタMPOUT及びMNOUTの各々がターンオフされるとともに、各回路のEN信号がLレベルに設定されることにより、半導体装置100Eがパワーオフ状態に遷移する。その後、プルアップトランジスタMPOVが、遅延信号CMPBVDに応じて実施の形態2と同様に動作することで、出力端子103及び電源ノードNPがプルアップされる。この様に、実施の形態2で説明したVCC断線時の制御動作が、実施の形態3に係る半導体装置100Eでも実行される。
【0225】
尚、半導体装置100Eにおけるパワーオフ状態についても、実施の形態1又は2での半導体装置100C,100Eと同様に、EN信号がLレベルに設定されたときの半導体装置100Eのトータル電流値Ittl(
図12)と、出力トランジスタMPOUT,MNOUTのボディダイオードDp,Dnの特性との関係を用いて定義することができる。
【0226】
この結果、実施の形態3に係る半導体装置100Eによれば、出力端子103に対してプルアップ抵抗201又はプルダウン抵抗202のどちらが接続された場合にも、GND断線時における実施の形態1の制御動作、又は、VCC断線時における実施の形態2の制御動作によって、異常電流の発生を防止することができる。
【0227】
実施の形態3の変形例.
図30は、実施の形態3の変形例に係る半導体装置の構成を説明するブロック図である。
【0228】
図30は、実施の形態3の変形例に係る半導体装置100Fの構成を説明するブロック図である。
【0229】
図30に示される様に、実施の形態
3の変形例に係る半導体装置100Fは、実施の形態3で説明した半導体装置100Eの構成に加えて、POR回路140を更に備える点で異なる。
【0230】
POR回路140は、実施の形態1及び2の変形例と同様に構成されて、電源ノードNPの電圧VACCに応じたPOROUT信号を生成する。即ち、POROUT信号は、電源投入時の初期値がLレベルであり、電圧AVCCが予め定められた電圧以上に上昇すると、LレベルからHレベルに変化する。
【0231】
半導体装置100Fでは、断線検知回路105G,105V等に入力されるEN信号は、実施の形態3と同様の断線検知信号CMPBと、POROUT信号とのAND(論理積)によって生成される。半導体装置100Fにおいても、EN信号が入力される回路200(パワーオフ機能有り)が更に配置されてもよい。
【0232】
従って、実施の形態3の変形例では、POROUT=Lレベルの期間、即ち、電源投入時に電圧AVCCが立ち上がるまでは、EN信号=Lレベルに維持される。この結果、断線検知回路105G,105Vは動作を開始しないので、電源投入時に電圧AVCCが立ち上がるまでの期間では、断線検知信号CMPG,CMPV,CMP及び断線検知信号CMPBG,CMPBV,CMPBが、それぞれの初期値から変化することを防止できる。
【0233】
電圧AVCCの立ち上がり後には、POROUT信号がHレベルに維持されるので、EN信号は、実施の形態1又は2と同様に、GND断線又はVCC断線の発生時にHレベルからLレベルに変化する。従って、半導体装置100Fは、実施の形態3に係る100Eと同様に動作することができる。
【0234】
この様に、実施の形態3の変形例に係る半導体装置によれば、実施の形態3での効果に加えて、電源投入時における断線の誤検出を防止することができるので、起動時における動作を安定化することができる。
【0235】
この様に、実施の形態3及びその変形例によれば、半導体装置の外部で出力端子103に対してプルアップ抵抗201及びプルダウン抵抗202のどちらが接続されるかが分からない場合であっても、
図2で説明したプルダウン下のGND断線時の異常電流、及び、
図17で説明したプルアップ下でのVCC断線時の異常電流の両方に対処できるように、半導体装置を構成することで汎用性を高めることができる。
【0236】
これに対して、出力端子103に対して、プルアップ抵抗201が接続される(プルダウン抵抗202は接続されない)ことを前提とした回路設計が許容される場合には、実施の形態1又はその変形例に係る半導体装置100A,100Bを適用することにより、回路素子の削減を図ることができる。同様に、出力端子103に対して、プルダウン抵抗202が接続される(プルアップ抵抗201は接続されない)ことを前提とした路設計が許容される場合には、実施の形態2はその変形例に係る半導体装置100C,100Dを適用することにより、回路素子の削減を図ることができる。
【0237】
尚、本実施の形態では、GND断線に対処するための半導体装置100A,100B、及び、VCC断線に対処するための半導体装置100C,100Dにおいても、出力トランジスタMPOUTの出力トランジスタ制御回路180Pと、出力トランジスタMNOUTの出力トランジスタ制御回路180Nとの両方を配置する構成例を説明した。これにより、断線時及びGND断線のいずれにおいても、出力トランジスタMPOUT及びMNOUTの両方を強制的にターンオフすることで異常電流の防止効果が高められる。
【0238】
しかしながら、原理的には、GND断線に対しては、出力トランジスタMNOUTのターンオフが必須である一方で、出力トランジスタMPOUTについてはターンオフしなくても異常電流Iabn1(
図2)を防止できる可能性がある。即ち、実施の形態1及びその変形例に係る半導体装置100A,100Bでは、出力トランジスタ制御回路180Pの配置を省略することも、原理上は可能である。
【0239】
反対に、VCC断線に対しては、出力トランジスタMPOUTのターンオフが必須である一方で、出力トランジスタMNOUTについてはターンオフしなくても異常電流Iabn2(
図17)を防止できる可能性がある。即ち、実施の形態2及びその変形例に係る半導体装置100C,100Dでは、出力トランジスタ制御回路180Nの配置を省略することも、原理上は可能である。
【0240】
更に、実施の形態1~3及びそれらの変形例では、プルダウントランジスタMNOG及びプルアップトランジスタMPOVによって、「プルダウン機構」及び「プルアップ機構」がそれぞれ構成される例を説明したが、プルダウントランジスタMNOG及びプルアップトランジスタMPOVを配置せずに、「プルダウン機構」及び「プルアップ機構」を構成することも可能である。
【0241】
図31には、
図3に示された半導体装置100Aにおける「プルダウン機構」の変形例が示される。
【0242】
図31の変形例は、
図3に示された構成と比較して、出力トランジスタ制御回路180N(
図3)に代えて、出力トランジスタ制御回路181Nが配置される点と、プルダウントランジスタMNOG(
図3)の配置が省略される点で異なる。
【0243】
出力トランジスタ制御回路181Nは、N型のトランジスタMNC1,MNC2に加えて、P型のトランジスタMPC3を更に有する点と、トランジスタMNC1のゲートに、断線検知信号CMPG(
図3)に代えて、制御信号CMPGGが入力される点とで、出力トランジスタ制御回路180Nと異なる。
【0244】
トランジスタMPC3は、電源ノードNPと出力トランジスタMNOUTのゲートとの間に接続されるとともに、ゲートには、遅延信号CMPBGDを入力される。遅延信号CMPBGDは、遅延信号CMPGDの反転信号であるので、
図9において、時刻t3まではHレベルである一方で、時刻t3以後ではLレベルに設定される。
【0245】
トランジスタMNC1のゲートに入力される制御信号CMPGGは、断線検知信号CMPG及び遅延信号CMPBGDのAND(論理積)によって生成される。従って、制御信号CMPGGは、
図9の時刻t2~t3間でHレベルに設定される一方で、その他の期間ではLレベルに維持される。
【0246】
このため、出力トランジスタ制御回路181Nは、
図9の時刻t2でのGND断線の検知に応じて、時刻t2~t3において、トランジスタMNC1のオンにより、出力トランジスタMNOUTをオフする。又、新たに設けられたトランジスタMPC3は、遅延信号CMPBGD(Hレベル)により、時刻t3まではオフ状態を維持される。従って、時刻t3までの期間では、出力トランジスタ制御回路181Nの動作は、出力トランジスタ制御回路180Nと同じである。
【0247】
時刻t3以降では、出力トランジスタ制御回路181Nにおいて、トランジスタMPC3がオンすることで、出力トランジスタMNOUTのゲートには、電源ノードNPの電圧AVCCが入力される。一方で、トランジスタMNC1がオフされるので、出力トランジスタMNOUTは、電圧AVCCによって生じたゲート・ソース間電圧によってオンされる。これにより、出力トランジスタMNOUTにより、GND断線が生じたGNDノードNGを、出力ノードNo及び出力端子103を経由して、半導体装置の外部で、基準電圧ノード11と電気的に接続することができる。即ち、出力トランジスタ制御回路181Nによって制御される出力トランジスタMNOUTを用いて、プルダウントランジスタMNOGを追加配置することなく、「プルダウン機構」の一実施例を構成することができる。
【0248】
図32には、
図18に示された半導体装置100Cにおける「プルアップ機構」の変形例が示される。
【0249】
図32の変形例は、
図18に示された構成と比較して、出力トランジスタ制御回路180P(
図18)に代えて、出力トランジスタ制御回路181Pが配置される点と、プルアップトランジスタMPOV(
図18)の配置が省略される点で異なる。
【0250】
出力トランジスタ制御回路181Pは、P型のトランジスタMPC1,MPC2に加えて、N型のトランジスタMNC3を更に有する点と、トランジスタMPC1のゲートに、断線検知信号CMPBV(
図18)に代えて、制御信号CMPVVが入力される点とで、出力トランジスタ制御回路180Pと異なる。
【0251】
トランジスタMNC3は、GNDノードNGと出力トランジスタMPOUTのゲートとの間に接続されるとともに、ゲートには、遅延信号CMPVDを入力される。遅延信号CMPVDは、遅延信号CMPBVDの反転信号であるので、
図24において、時刻t3まではLレベルである一方で、時刻t3以後ではHレベルに設定される。
【0252】
トランジスタMPC1のゲートに入力される制御信号CMPVVは、断線検知信号CMPBV及び遅延信号CMPVDのOR(論理和)によって生成される。従って、制御信号CMPVVは、
図24の時刻t2~t3間でLレベルに設定される一方で、その他の期間ではHレベルに維持される。
【0253】
このため、出力トランジスタ制御回路181Pは、
図24の時刻t2でのVCC断線の検知に応じて、時刻t2~t3において、トランジスタMPC1のオンにより、出力トランジスタMPOUTをオフする。又、新たに設けられたトランジスタMNC3は、遅延信号CMPBVD(Lレベル)により、時刻t3まではオフ状態を維持される。従って、時刻t3までの期間では、出力トランジスタ制御回路181Pの動作は、出力トランジスタ制御回路180Pと同じである。
【0254】
時刻t3以降では、出力トランジスタ制御回路181Pにおいて、トランジスタMNC3がオンすることで、出力トランジスタMPOUTのゲートには、GNDノードNGの電圧AGNDが入力される。一方で、トランジスタMPC1がオフされるので、出力トランジスタMPOUTは、電圧AGNDによって生じたゲート・ソース間電圧によってオンされる。これにより、出力トランジスタMPOUTにより、VCC断線が生じた電源ノードNPを、出力ノードNo及び出力端子103を経由して、半導体装置の外部で、電源10と電気的に接続することができる。即ち、出力トランジスタ制御回路181Pによって制御される出力トランジスタMPOUTを用いて、プルアップトランジスタMPOVを追加配置することなく、「プルアップ機構」の一実施例を構成することができる。
【0255】
【0256】
尚、本実施の形態では、演算増幅回路150の出力段170(出力トランジスタMPOUT,MNOUT)での異常電流への対処を例示したが、本実施の形態は、差動増幅部160に限定されない任意の回路ブロックからの出力電圧が出力段170に入力される構成に対して適用することが可能である。言い換えると、出力トランジスタMPOUT,MNOUTにゲートに入力される「第1の制御電圧」及び「第2の制御電圧」を発生する、出力段170の前段に配置される回路ブロックを特に限定することなく、本実施の形態によるGND断線又はVCC断線に対応するための構成を適用することができる。
【0257】
特に、以上で説明した半導体装置100A~100Fでは、差動増幅部160の出力電圧が出力段170に入力されるアナログ出力の構成を例示したが、デジタル出力の半導体装置においても、本実施の形態1~3及びその変形例で説明した構成の適用により、断線発生時における異常電流を防止することが可能である。即ち、出力段170の前段には、出力トランジスタMPOUT及びMNOUTの各々をオン(電流>0)又はオフ(電流=0)するような「第1の制御電圧」及び「第2の制御電圧」を出力する回路ブロックが配置されてもよい。
【0258】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示による技術的範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0259】
10 電源、11 基準電圧ノード、100,100A~100F 半導体装置、101 電源端子、102 接地端子、103 出力端子、105G,105V 断線検知回路、110G,110V バイアス回路、120G,120V コンパレータ、125G,125V フリップフロップ、130G,130V 遅延回路、150 演算増幅回路、160 差動増幅部、170 出力段、180N,180P 出力トランジスタ制御回路、200x,200y 回路群、201 プルアップ抵抗、202 プルダウン抵抗、205 遮断トランジスタ、206 回路素子、CMP,CMPB,CMPBG,CMPBV,CMPG,CMPV 断線検知信号、CMPBGD,CMPBVD,CMPGD,CMPVD 遅延信号、Dn,Dp ボディダイオード、GND 接地電圧、Iabn1,Iabn2 異常電流、Ittl トータル電流値(IC全体)、MNOG プルダウントランジスタ、MNOUT,MPOUT 出力トランジスタ、MPOV プルアップトランジスタ、NG GNDノード、NP 電源ノード、No 出力ノード、No1 反転出力ノード、No2 非反転出力ノード、Td 遅延時間、VING,VINV,VREFV,VREV バイアス電圧、VOUT 出力電圧。