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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】モータ駆動装置及び空気調和機
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/08 20060101AFI20250328BHJP
   F24F 11/88 20180101ALI20250328BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20250328BHJP
【FI】
H02P27/08
F24F11/88
H02M7/48 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024528198
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2022025050
(87)【国際公開番号】W WO2023248413
(87)【国際公開日】2023-12-28
【審査請求日】2024-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】飯田 岳秋
(72)【発明者】
【氏名】一木 智
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼原 貴昭
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-068731(JP,A)
【文献】特開2002-051589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/08
F24F 11/88
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から入力される交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、
前記整流回路から出力される出力電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
複数のスイッチング素子を有し、入力される直流電圧を交流電圧に変換してモータの巻線に出力するインバータと、
前記整流回路から出力される出力電流の大きさを検出する電流検出部及び前記複数のスイッチング素子に信号を出力してスイッチング動作を行わせる駆動部を有する制御部とを備え、
前記平滑コンデンサは、フィルムコンデンサであり、
前記モータの回転を停止したまま前記巻線に通電する拘束通電時には、前記出力電流が大きいほど、前記インバータに入力する電流を大きくし、
前記駆動部は、前記拘束通電時には、前記出力電流が大きいほど前記スイッチング動作におけるオンデューティを高くする前記信号を前記スイッチング素子に出力するモータ駆動装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記平滑コンデンサの両端電圧を検出する電圧検出部を備え、
前記制御部は、前記両端電圧の変動が大きいほど、前記インバータから前記モータに出力する電流の変化量を大きくする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のモータ駆動装置を備えた空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータを駆動するモータ駆動装置及びこれを備えた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機においては、高効率に運転するために、インバータを備えることで任意周波数及び電流で圧縮機のモータを駆動する方法が広く使われている。モータを駆動する回路の構成としては、商用系統へのノイズ影響を抑制するフィルタ回路、交流電力を直流電力に変換する整流回路、高調波を抑制するとともに一定の電圧に昇圧する力率改善回路、電圧を一定に平滑する平滑コンデンサ及びインバータ回路を備えた構成が一般的に用いられる。
【0003】
また、空気調和機においては、周囲の温度が低い条件で運転停止していると、冷媒ガスが液化して圧縮機に戻り、冷媒が溶け込むという、いわゆる「寝込み」と呼ばれる現象が生ずる。特許文献1には、寝込みの対策として、圧縮機のモータを回転させず、モータ巻線に通電させ、圧縮機を温める予熱制御をすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-286183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
平滑コンデンサには、電解コンデンサを使用することが一般的であるが、電解コンデンサは、他の電子部品に対して寿命が短く、モータ駆動装置の寿命を決める要因になっている。電解コンデンサの代わりにフィルムコンデンサを使用することで長寿命化が期待できるが、同体積で比べた場合には電解コンデンサよりも静電容量が小さくなる。特に、予熱動作においては、待機電力を削減するなどの目的から、力率改善回路を停止し、インバータのみを動作させるため、力率改善回路による電圧平滑ができない。このため、電解コンデンサと同等の体積のフィルムコンデンサを平滑コンデンサに用いると、静電容量が小さいために電圧を平滑できずに変動が大きくなってしまい、インバータからモータに出力される電流の変動も大きくなってしまう。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、インバータからモータに出力される電流の変動を抑制可能で長寿命化を実現したモータ駆動装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るモータ駆動装置は、交流電源から入力される交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、整流回路から出力される出力電圧を平滑化する平滑コンデンサと、複数のスイッチング素子を有し、入力される直流電圧を交流電圧に変換してモータの巻線に出力するインバータと、整流回路から出力される出力電流の大きさを検出する電流検出部及び複数のスイッチング素子に信号を出力してスイッチング動作を行わせる駆動部を有する制御部とを備える。平滑コンデンサは、フィルムコンデンサである。モータ駆動装置は、モータの回転を停止したまま巻線に通電する拘束通電時には、出力電流が大きいほどインバータに入力する電流を大きくする。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係るモータ駆動装置は、インバータからモータに出力される電流の変動を抑制可能で長寿命化を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る空気調和機の斜視図
図2】実施の形態1に係るモータ駆動装置の回路図
図3】実施の形態1に係るモータ駆動装置のインバータのスイッチング素子を動作させた場合の波形図
図4】実施の形態1の比較例に係るモータ駆動装置の回路図
図5】実施の形態1の比較例に係るモータ駆動装置のインバータのスイッチング素子を動作させた場合の波形図
図6】実施の形態1に係るモータ駆動装置にスイッチング素子のオンデューティを一定にしてスイッチング動作を行わせた場合の波形図
図7】平滑コンデンサの静電容量に対する、モータに出力可能な最大拘束通電電力の特性を示す図
図8】実施の形態2に係るモータ駆動装置の回路図
図9】実施の形態2に係るモータ駆動装置の動作の流れを示すフローチャート
図10】実施の形態1及び実施の形態2に係るモータ駆動装置の演算部のハードウェア構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態に係るモータ駆動装置及び空気調和機を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る空気調和機の斜視図である。空気調和機100は、室外機5と室内機7とを備えている。室外機5と室内機7とは、配管6によって接続されている。室外機5は、モータ駆動装置1、圧縮機2、送風機3及び熱交換器4を備えている。モータ駆動装置1は、圧縮機2、送風機3及び交流電源8と接続されている。なお、図1では、圧縮機2、送風機3及び交流電源8とモータ駆動装置1とを接続する電気配線は図示を省略している。
【0012】
図2は、実施の形態1に係るモータ駆動装置の回路図である。モータ駆動装置1は、ノイズフィルタ9、整流回路10、直流変換回路11、平滑コンデンサ12、インバータ13、制御部15及び電流センサ17を備える。ノイズフィルタ9の入力側は交流電源8に接続される。また、インバータ13の出力側は、モータ14に接続される。平滑コンデンサ12には、フィルムコンデンサが用いられている。
【0013】
ノイズフィルタ9は、コイルLinとコンデンサCinとを備えたローパスフィルタであり、モータ駆動装置1において発生したノイズが交流電源8に影響を及ぼすことを抑制する。
【0014】
整流回路10は、ノイズフィルタ9と直流変換回路11との間に接続される。整流回路10は、交流電源8から入力される交流電圧を整流し、直流電圧を出力する。整流回路10は、四つのダイオードを用いた全波整流回路として構成してもよいしMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect-Transistor)などのスイッチング素子を用いて同期整流回路として構成してもよい。また、整流回路10は、一つのダイオードのみで半波整流回路として構成してもよい。この場合、交流電源8から入力される電流が通過するダイオードの数を半減できるため、整流回路10で発生する損失を低減することができる。
【0015】
また、四つのダイオードを用いた全波整流回路を並列に接続し、各ダイオードに流れる電流を低減することで、各ダイオード単体で発生する損失を低減することができる。四つのダイオードを用いた全波整流回路を並列に接続した整流回路10は、ダイオードブリッジを放熱するためのヒートシンクが小型であっても、ダイオードの温度上昇を抑制することができる。
【0016】
直流変換回路11は、整流回路10と平滑コンデンサ12との間に接続される。直流変換回路11は、複数のスイッチング素子とリアクトルを用いた昇圧チョッパ回路とで構成することができる。また、直流変換回路11は、二つ以上の昇圧チョッパ回路を並列に接続したインターリーブコンバータとして構成することもできる。二つ以上の昇圧チョッパ回路を並列に接続したインターリーブコンバータは、各スイッチング素子及びリアクトルに流れる電流を低減することができるため、部品のサイズが大型化することを抑制できる。また、二つ以上の昇圧チョッパ回路を並列に接続したインターリーブコンバータは、各スイッチング素子及びダイオードに流れる電流が小さくなるため、発生する損失を低減することができる。二つ以上の昇圧チョッパ回路を並列に接続したインターリーブコンバータは、スイッチング素子を放熱するためのヒートシンクが小型であっても、スイッチング素子の温度上昇を抑制することができる。
【0017】
直流変換回路11は、整流回路10が出力する直流電圧を昇圧して平滑コンデンサ12に出力する力率改善回路の機能をもつ。ただし、実施の形態1に係るモータ駆動装置1では、拘束通電の動作において、直流変換回路11で用いている部品で発生する損失の発生を抑制し、空調停止時における消費電力を低減するため、直流変換回路11のスイッチング動作を停止させる。
【0018】
ここでは昇圧チョッパ回路を用いたインターリーブコンバータの構成の直流変換回路11を説明したが、直流変換回路11の回路構成はこれに限られない。例えば、直流変換回路11は、昇降圧チョッパ回路、フライバック回路、フライフォワード回路、SEPIC(Single Ended Primary Inductor Converter)、Zetaコンバータ又はCukコンバータの構成とすることもできる。
【0019】
平滑コンデンサ12は、直流変換回路11が出力する電圧を平滑化する。直流変換回路11は、整流回路10から出力される電圧を一定の電圧に制御するが、整流回路10から出力される電圧は、交流電源8の2倍の周波数で脈動している。このため、直流変換回路11から出力される電圧も、交流電源8の2倍の周波数で脈動する。平滑コンデンサ12は、交流電源8の2倍の周波数で脈動する電圧を平滑化する。これによって、後段に接続されたインバータ13がモータ14に出力する電流が、交流電源8の2倍の周波数で脈動することを低減することができる。
【0020】
インバータ13がモータ14に出力する電流が脈動する場合、モータ14が振動し、室外機5に備え付けられた配管6と、モータ駆動装置1を構成する電子部品のリード線及びはんだ付け部とが振動によって劣化し、空気調和機100が短寿命化するため、振動対策部品を追加する必要があり、高コスト化する。また、モータ14に出力する電流が脈動する場合は、振動音が発生するため、空気調和機100の品質が低下する。平滑コンデンサ12を用いて、交流電源8の2倍の周波数で脈動する電圧を平滑化することによって、後段に接続されたインバータ13がモータ14に出力する電流の交流電源8の2倍の周波数での脈動を低減することができる。インバータ13がモータ14に出力する電流の脈動を抑制することにより、モータ14の振動を抑制し、室外機5に備え付けられた配管6と、モータ駆動装置1を構成する電子部品のリード線及びはんだ付け部との振動による劣化を抑制できる。これにより、振動対策部品を削減し、低コスト化を実現できる。また、振動音を抑制できるため、空気調和機100の静粛性を高めることができる。
【0021】
インバータ13は、平滑コンデンサ12とモータ14との間に接続される。インバータ13は、直流変換回路11が出力した直流の電圧を任意の周波数及び電流値の交流に変換し、モータ14に出力する。
【0022】
インバータ13は、複数のスイッチング素子を用いたブリッジ回路で構成することができる。特に、モータ14が3相モータである場合には、インバータ13にフルブリッジ回路を用いることがある。実施の形態1において、インバータ13は、フルブリッジ回路であり、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6から構成される。スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)と逆並列の還流ダイオードとで構成される。スイッチング素子Q1のコレクタ端子は、平滑コンデンサ12の一端に接続され、スイッチング素子Q1のエミッタ端子はスイッチング素子Q2のコレクタ端子及びモータ14に接続されている。スイッチング素子Q2のエミッタ端子は、平滑コンデンサ12の他端に接続される。スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とをレグと呼ぶことがある。スイッチング素子Q3及びスイッチング素子Q4のレグ並びにスイッチング素子Q5及びスイッチング素子Q6のレグは、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2のレグと同様に接続された構成である。
【0023】
複数のスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6は、一般に用いられているケイ素を材料としたIGBT及びMOSFETといった半導体素子のほか、炭化ケイ素を材料とした半導体素子を用いることができる。炭化ケイ素を材料とした半導体素子は、ケイ素を材料とした半導体素子よりも導通損失が小さく、また、高速なスイッチング動作が可能であるため、スイッチング損失を低減でき、空気調和機100の消費電力を低減することができる。また、複数のスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6の発熱も低減できるため、複数のスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6を放熱するためのヒートシンク等の放熱部材を小型化でき、放熱部材を低コスト化できる。また、複数のスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6の近くに配置されている電子部品の温度上昇を抑制でき、信頼性を向上させることができる。
【0024】
また、複数のスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6には、窒化ガリウムを材料とした半導体素子を用いることができる。窒化ガリウムを材料とした半導体素子としては、HEMT(High Electron Mobility Transistor)が例として挙げられる。HEMTは、ケイ素を材料としたMOSFETよりも導通損失が小さく、また、高速なスイッチング動作が可能であるため、スイッチング損失を低減でき、空気調和機100の消費電力を低減することができる。また、複数のスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6の発熱も低減できるため、複数のスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6を放熱するためのヒートシンク等の放熱部材を小型化でき、放熱部材の低コスト化できる。また、複数のスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6の近くに配置されている電子部品の温度上昇を抑制でき、信頼性を向上させることができる。
【0025】
インバータ13は、ハーフブリッジインバータ又は一石電圧共振回路などの回路構成とすることもできる。
【0026】
制御部15は、駆動部15a、演算部15b及び電流検出部15dを備える。
【0027】
電流検出部15dは、整流回路10から出力される電流を検出し、検出結果を演算部15bに送信する。電流センサ17は整流回路10から出力される電流を検出する手段であり、ホール素子を用いた電流センサを用いる他、シャント抵抗を用いることができる。
【0028】
演算部15bは電流検出部15dから送信された検出結果である電流値を用いて、整流回路10から出力される電流の大きさに応じて、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6をオンオフ制御するための信号を駆動部15aに出力する。より具体的には、整流回路10から出力される電流が大きいほどインバータ13に入力する電流を大きくし、反対に、整流回路10から出力される電流が小さいほど、インバータ13に入力する電流を小さくするように変化させる。
【0029】
駆動部15aは、演算部15bから送信された信号を、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンオフを制御可能な大きさの電圧に変換し、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6にスイッチング動作を行わせる。演算部15bから送信される信号は、例えば3.3V又は5Vの電圧であり、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6をオンオフ制御可能な電圧は例えば15V又は18Vである。
【0030】
モータ14は、巻線Luと巻線Lwと巻線Lvとを備える。巻線Luと巻線Lwと巻線Lvとはスター結線されている。
【0031】
図3は、実施の形態1に係るモータ駆動装置のインバータのスイッチング素子を動作させた場合の波形図である。図3において、電流I1は、直流変換回路11から平滑コンデンサ12の方に出力される電流であり、電流I2は、平滑コンデンサ12の方からインバータ13に入力される電流であり、電流I3は、平滑コンデンサ12を充放電する電流である。また、電圧Vdcは、平滑コンデンサ12の両端に印加されている電圧である。
【0032】
実施の形態1に係るモータ駆動装置1では、整流回路10から出力される電流の大きさに応じて、モータ14に出力する電流、すなわちインバータ13に入力する電流I2の大きさを変動させる。つまり、直流変換回路11から平滑コンデンサ12に出力される電流I1が大きいほど、インバータ13に入力する電流I2を小さくする。これにより、電流I2の波形は、キャリア周期ごとの平均値I2Ave1が周期的に変動し、かつ振幅が一定の三角波の形状となり、モータ14の巻線Lu,Lv,Lwに出力される。
【0033】
具体的には、演算部15bは、整流回路10から出力される電流が大きいほど、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを高くし、整流回路10から出力される電流が小さいほど、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを低くするように、駆動部15aに信号を送信する。これによって、インバータ13に入力される電流I2のキャリア周期ごとの平均値I2Ave1を変化させ、平滑コンデンサ12を充放電する電流I3を変化させる。
【0034】
上述の動作により、整流回路10から出力される電流が大きい期間においては、インバータ13に入力される電流I2のキャリア周期ごとの平均値I2Ave1がゼロよりも大きくなり、逆に、整流回路10から出力される電流が小さい期間においては、インバータ13に入力される電流I2のキャリア周期ごとの平均値I2Ave1がゼロよりも小さくなる。
【0035】
平滑コンデンサ12は、整流回路10が出力する全波整流波形の電圧によって充放電されるため、整流回路10が出力する電圧が低い期間においては両端電圧が低下してしまう。上述の動作により、整流回路10から出力される電流I1が小さい期間、すなわち、整流回路10が出力する電圧が低い期間においては、インバータ13に入力される電流I2がゼロ未満になるため、インバータ13から平滑コンデンサ12に電流I3が流れて平滑コンデンサ12が充電される。これによって、平滑コンデンサ12の両端電圧が変動することを抑制することができる。
【0036】
次に、モータ14の予熱方法について説明する。第1の予熱方法では、スイッチング素子Q1,Q4をオンし、スイッチング素子Q2,Q3をオフすることで、モータ14の巻線Lu,Lvが短絡され、巻線Luから巻線Lvの方向に流れる電流が増加する。その後、スイッチング素子Q1,Q4をオフし、スイッチング素子Q2,Q3をオンすることで、巻線Lvから巻線Luの方向に流れる電流が増加する。これにより、巻線Lu,Lvに電流が流れ、損失を発生させることで、モータ14を温めることができる。
【0037】
この場合、モータ14の発熱が巻線Lu,Lvに集中してしまい、モータ14を均一に加熱することができない。また、インバータ13で発生する損失がスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4に集中してしまうため、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4での発熱がスイッチング素子Q5,Q6での発熱に比較して大きくなってしまい、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4がスイッチング素子Q5,Q6よりも故障しやすくなってしまう。そのため、三角波状の電流を巻線Lu及び巻線Lvに流すか、巻線Lv及び巻線Lwに流すか、巻線Lw及び巻線Luに流すかを予め定めた時間間隔で変更する。これにより、モータ14の発熱が巻線Lu,Lv,Lwのいずれかの付近に集中してしまうことを抑制でき、より均一に加熱することができる。また、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6の発熱を均一にすることができるため、特定のスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6が故障しやすくなってしまうことを抑制することができる。
【0038】
また、第2の予熱方法では、スイッチング素子Q1,Q4,Q6をオンし、スイッチング素子Q2,Q3,Q5をオフすることで、モータ14の巻線Lu,Lv,Lwが短絡され、巻線Luから巻線Lvの方向に流れる電流及び巻線Luから巻線Lwの方向に流れる電流が増加する。その後、スイッチング素子Q1,Q4,Q6をオフし、スイッチング素子Q2,Q3,Q5をオンすることで、巻線Lvから巻線Luの方向に流れる電流及び巻線Lwから巻線Luの方向に流れる電流が増加する。これによって、巻線Lu,Lv,Lwに三角波状の電流が流れ、損失を発生させることで、モータ14を温めることができる。
【0039】
このような制御を行うことにより、第1の予熱方法と比較して、より均一にモータ14を加熱することができる。ただし、第2の方法においても、巻線Luの発熱が、巻線Lv,Lwの発熱よりも大きくなってしまう。また、インバータ13で発生する損失についても、スイッチング素子Q1,Q2での損失が、スイッチング素子Q3,Q4,Q5,Q6での損失よりも大きくなってしまうため、スイッチング素子Q1,Q2での発熱がスイッチング素子Q3,Q4,Q5,Q6での発熱に比較して大きくなってしまい、スイッチング素子Q1,Q2がスイッチング素子Q3,Q4,Q5,Q6よりも故障しやすくなってしまう。そのため、三角波状の電流を流す方向を巻線Luから巻線Lv,Lwとするか、巻線Lvから巻線Lw,Luとするか、巻線Lwから巻線Lu,Lvとするかを、あらかじめ定めた時間間隔で変更する。この場合、モータ14の発熱が巻線Lu,Lv,Lwのいずれかの付近に集中してしまうことを抑制でき、より均一に加熱することができる。また、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6の発熱を均一にすることができるため、特定のスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6が故障しやすくなってしまうことを抑制することができる。
【0040】
第1の予熱方法及び第2の予熱方法では、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6をスイッチングさせることによってモータ14の巻線Lu,Lv,Lwに流す電流を三角波状にすることで、モータ14に流す電流の大きさを制限することができる。このため、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6の定格電流を低減することができるため、複数のスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6が大型化することを抑制でき、複数のスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6を低コスト化できる。
【0041】
また、第1の予熱方法及び第2の予熱方法では、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6をスイッチングさせてモータ14の巻線Lu,Lv,Lwに流す電流を三角波状にすることで、モータ14に交流の電流を流す。このため、第1の予熱方法及び第2の予熱方法では、モータ14を構成している不図示の磁性体コアにおいて鉄損を発生させることができる。したがって、第1の予熱方法及び第2の予熱方法では、巻線Lu,Lv,Lwのみで損失を発生させるよりも、モータ14をより均一に加熱することができ、局所的に高温になってしまうことを抑制できる。このため、例えば、巻線Lu,Lv,Lwに使用する絶縁体の耐熱性を下げることができ、絶縁体の低コスト化を実現できる。または、巻線Lu,Lv,Lwに使用する絶縁体の厚さを薄くすることができるため、モータ14を小型化することができる。
【0042】
図4は、実施の形態1の比較例に係るモータ駆動装置の回路図である。比較例に係るモータ駆動装置は、電流検出部15d及び電流センサ17を備えていない。また、比較例に係るモータ駆動装置1は、平滑コンデンサ12に電解コンデンサを用いている。この他は実施の形態1に係るモータ駆動装置と同様である。
【0043】
図5は、実施の形態1の比較例に係るモータ駆動装置のインバータのスイッチング素子を動作させた場合の波形図である。図5において、電流I1は、直流変換回路11から平滑コンデンサ12の方に出力される電流であり、電流I2は、平滑コンデンサ12の方からインバータ13に入力される電流であり、電流I3は、平滑コンデンサ12を充放電する電流である。また、電圧Vdcは、平滑コンデンサ12の両端に印加されている電圧である。
【0044】
比較例に係るモータ駆動装置1においては、演算部15bは、予め定められた周期でスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6をオフからオンへ、又はオンからオフへ変化させる信号を送信する。これは、例えば矩形波のオンオフ信号を用いる他、オンオフ期間をカウントするためのランプ波形を用いることができる。なお、比較例に係るモータ駆動装置1においては、スイッチング動作におけるスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティは一定である。スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6は、予め設定された周期でオンオフ動作を繰り返す。これにより、電流I2の波形は振幅が一定の三角波の形状となり、モータ14の巻線Lu,Lv,Lwに出力される。
【0045】
直流変換回路11は、整流回路10から出力される電流を昇圧するため、直流変換回路11から平滑コンデンサ12に出力される電流I1の波形は、整流回路10から出力される波形と同じ形状である。また、電流I2の波形の振幅が一定であるため、電流I2の変動量Δipk2は、電流I2の振幅と同じである。また、電流I2の平均値I2Ave2は一定の値である。
【0046】
モータ14の予熱方法は、実施の形態1に係るモータ駆動装置1と同様であり、スイッチング素子Q1,Q4をオンし、スイッチング素子Q2,Q3をオフする第1の予熱方法又はスイッチング素子Q1,Q4,Q6をオンし、スイッチング素子Q2,Q3,Q5をオフした後に、スイッチング素子Q1,Q4,Q6をオフし、スイッチング素子Q2,Q3,Q5をオンする第2の予熱方法を適用できる。
【0047】
比較例に係るモータ駆動装置1において平滑コンデンサ12に用いられている電解コンデンサは、同等の体積のフィルムコンデンサと比較すると静電容量を大きくすることが可能であるため、拘束通電よりモータ14で損失を発生させている期間においても、平滑コンデンサ12の両端電圧の変動を抑制することができる。
【0048】
一方、実施の形態1に係るモータ駆動装置1は、平滑コンデンサ12にフィルムコンデンサを用いている。フィルムコンデンサは電解コンデンサと比較して長寿命であるため、平滑コンデンサ12にフィルムコンデンサを用いることでモータ駆動装置1を長寿命化することができる。しかしながら、平滑コンデンサ12にフィルムコンデンサを用いると、同等の体積の電解コンデンサを用いた場合と比較すると静電容量は小さくなる。このため、実施の形態1に係るモータ駆動装置1に、スイッチング素子のオンデューティを一定にしてスイッチング動作を行わせると、下記のような問題が生じてしまう。
【0049】
図6は、実施の形態1に係るモータ駆動装置にスイッチング素子のオンデューティを一定にしてスイッチング動作を行わせた場合の波形図である。すなわち、図6は、平滑コンデンサ12にフィルムコンデンサを用いたモータ駆動装置1に、比較例に係るモータ駆動装置1と同様のスイッチング動作を行わせた場合の波形図である。図6において、電流I1は、直流変換回路11から平滑コンデンサ12の方に出力される電流であり、電流I2は、平滑コンデンサ12の方からインバータ13に入力される電流であり、電流I3は、平滑コンデンサ12を充放電する電流である。また、電圧Vdcは、平滑コンデンサ12の両端に印加されている電圧である。
【0050】
実施の形態1に係るモータ駆動装置1は、平滑コンデンサ12に静電容量が小さいフィルムコンデンサを用いているため、比較例に係るモータ駆動装置1と同様にスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを一定にしてスイッチング動作を行わせると、直流変換回路11から平滑コンデンサ12の方へ出力される電流I1は、正弦波の半波が連続する形状の波形となる。また、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを一定にしてスイッチング動作を行わせると、整流回路10が出力する電圧の大小に関わらず、平滑コンデンサ12には一定の大きさの電流I3が流れる。
【0051】
実施の形態1に係るモータ駆動装置1では、拘束通電によりモータ14で損失を発生させている期間において、平滑コンデンサ12の両端電圧の変動が、電解コンデンサを用いた比較例に係るモータ駆動装置1よりも増加する。これに伴ってインバータ13に入力される電圧の変動がより大きくなることから、実施の形態1に係るモータ駆動装置1に、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを一定にしてスイッチング動作を行わせると、電流I2の波形は、振幅が周期的に増減する三角波状となる。したがって、電流I2の平均値I2Ave3は、電流I1と同様に正弦波の半波が連続する形状の波形となり、周期的に増減を繰り返す。電流I2の三角波の振幅が周期的に増減することにより、電流I2の変動量Δipk3は、比較例に係るモータ駆動装置1での電流I2の変動量Δipk2よりも大きくなる。したがって、実施の形態1に係るモータ駆動装置1に、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを一定にしてスイッチング動作を行わせると、インバータ13に流れる最大電流が大きくなり、モータ駆動装置1から発生するノイズが増加してしまう。ノイズフィルタ9に使用するコイルLinのインダクタンスを大きくしたり、コンデンサCinの容量を大きくしたりすることにより、ノイズの増加を抑制することができるが、部品のコストが増加してしまったり、部品が大きくなってモータ駆動装置1が大型化してしまう。
【0052】
このように、実施の形態1に係るモータ駆動装置1は、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを一定にしてスイッチング動作を行わせると、モータ駆動装置1から発生するノイズが増加してしまう。このため、実施の形態1に係るモータ駆動装置1は、平滑コンデンサ12の両端電圧の変動を抑制することにより、インバータ13に流れる電流I2が大きくなることを抑制する。すなわち、インバータ13に流れる電流I2の変動量Δipk1は、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを一定としてスイッチング動作を行った場合の電流I2の変動量Δipk3と比較して小さくなる。したがって、実施の形態1に係るモータ駆動装置1は、整流回路10から出力される電流が大きいほど、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを高くし、整流回路10から出力される電流が小さいほど、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを低くする制御を行うことにより、モータ駆動装置1から発生するノイズの増加を抑制することができる。これにより、実施の形態1に係るモータ駆動装置1は、ノイズフィルタ9のコスト増加及び部品の大型化を抑制できる。
【0053】
また、モータ14に出力する電力を大きくするためには、モータ14に出力する電流を大きくする必要がある。モータ14に出力する電流を大きくすることは、インバータ13に入力する電圧を高くすること、又はスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを高くすることで実現できる。
【0054】
平滑コンデンサ12にフィルムコンデンサを使用すると、静電容量が小さいため、整流回路10が出力する全波整流波形に近くなり、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを一定にしてスイッチング動作を行った場合にインバータ13に入力する平均電圧Vpn3は、静電容量が大きい電解コンデンサを使用した比較例に係るモータ駆動装置1におけるインバータ13に入力する平均電圧Vpn2に比べて低くなる。
【0055】
このため、平滑コンデンサ12にフィルムコンデンサを使用する場合、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを一定にしてスイッチング動作を行うと、拘束通電時にモータ14に出力できる電力が低くなってしまう。
【0056】
一方、図3に示す、整流回路10から出力される電流が大きいほど、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを高くし、整流回路10から出力される電流が小さいほど、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを低くする制御を行う場合にインバータ13に入力する平均電圧Vpn1は、図6に示すスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを一定にしてスイッチング動作を行う場合にインバータ13に入力する平均電圧Vpn3よりも大きい。したがって、実施の形態1に係るモータ駆動装置1は、整流回路10から出力される電流が大きいほど、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを高くし、整流回路10から出力される電流が小さいほど、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを低くする制御を行うことにより、拘束通電時にモータ14に出力できる電力が低くなることを抑制できる。
【0057】
実施の形態1に係るモータ駆動装置は、整流回路10が出力する電圧が低い期間において、インバータ13から平滑コンデンサ12を充電し、電圧が変動することを抑制することで、拘束通電時により大きな電力をモータ14に出力し、圧縮機2が冷え込むことを抑制することができる。
【0058】
図7は、平滑コンデンサの静電容量に対する、モータに出力可能な最大拘束通電電力の特性を示す図である。図7における実線は、実施の形態1に係るモータ駆動装置1に、整流回路10から出力される電流が大きいほど、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを高くし、整流回路10から出力される電流が小さいほど、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを低くする制御を行わせた場合の最大拘束通電電力の特性を示している。また、図7における破線は、実施の形態1に係るモータ駆動装置1に、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを一定にする制御を行わせた場合の最大拘束通電電力の特性を示している。平滑コンデンサ12の静電容量が大きい領域においては、平滑コンデンサ12の電圧変動が小さいため、静電容量の変化に対して、モータ14に出力可能な電力の変動が大きい。一方で、平滑コンデンサ12の静電容量が小さい領域においては、平滑コンデンサ12の電圧変動が大きいため、静電容量の変化に対して、モータ14に出力可能な電力の変動が大きくなり、平滑コンデンサ12の容量が小さくなるほど、モータ14に出力可能な電力が大きく減少してしまう。すなわち、実施の形態1に係るモータ駆動装置1に、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを一定にする制御を行わせる場合には、平滑コンデンサ12の静電容量が小さい領域において最大拘束通電電力が小さくなってしまう。しかしながら、実施の形態1に係るモータ駆動装置1による制御を実施した場合には、静電容量が変化しても、平滑コンデンサ12の平均電圧が低下することを抑制できるため、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを一定にしてスイッチング動作を行う場合と比較して、大きな電力をモータ14に出力することができる。すなわち、実施の形態1に係るモータ駆動装置1に、整流回路10から出力される電流が大きいほど、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを高くし、整流回路10から出力される電流が小さいほど、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを低くする制御を行わせる場合には、平滑コンデンサ12の静電容量が小さい領域における最大拘束通電電力の低下を抑制することができる。
【0059】
以上のように、実施の形態1に係るモータ駆動装置1では、インバータ13は、整流回路10が出力する電流の大きさに合わせてモータ14に出力する電流の大きさを変更するため、静電容量が小さいフィルムコンデンサを平滑コンデンサ12に使用しても、平滑コンデンサ12の両端電圧の変動を抑制することができる。このため、整流回路10が出力する電流の大きさに合わせてモータ14に出力する電流の大きさを変更する制御を行わない場合と比較すると、インバータ13に流れる電流I2の変動を抑制することができるため、ノイズフィルタ9の部品サイズの大型化と高コスト化とを抑制する効果を奏する。また、同様に、平滑コンデンサ12の両端電圧の変動を抑制することで、平均電圧が低下することを抑制できるため、静電容量が小さいフィルムコンデンサを平滑コンデンサ12に使用しても、モータ14に出力可能な電力が低下することを抑制する効果を奏する。
【0060】
実施の形態2.
図8は、実施の形態2に係るモータ駆動装置の回路図である。実施の形態2に係るモータ駆動装置1は、平滑コンデンサ12の両端電圧を検出する電圧検出部15cを有する点で、実施の形態1に係るモータ駆動装置1と相違する。この他の構成は、実施の形態1に係るモータ駆動装置1と同様である。実施の形態2に係るモータ駆動装置1は、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを、平滑コンデンサ12の電圧の変動の大きさに応じて変化させる。
【0061】
上記の通り、平滑コンデンサ12の静電容量が小さいほど、静電容量の変化に対する平均電圧の変化が大きく、モータ14に出力可能な電力の変動も大きくなる。したがって、平滑コンデンサ12にフィルムコンデンサを用いた場合には、経年劣化及び環境温度の影響により平滑コンデンサ12の静電容量が低下してしまうと、モータ14に出力可能な電力が低下してしまう。実施の形態2に係るモータ駆動装置1は、これに鑑みたものであり、フィルムコンデンサの静電容量が変化することによってモータ14に出力可能な電力が低下してしまうことを抑制する。
【0062】
平滑コンデンサ12の静電容量が減少すると、平滑コンデンサ12の電圧は整流回路10が出力する全波整流波形に近くなるため、電圧の変動が大きくなる。演算部15bは、電圧検出部15cで検出した電圧から電圧変動の大きさを演算して保持する。実施の形態1において説明した、整流回路10から出力される電流の大きさに応じて変更するインバータ13に入力される電流I2の変更量を、以降「補正量」と呼ぶ。演算部15bは、平滑コンデンサ12の電圧変動の大きさに応じて補正量を変更する。具体的には、演算部15bは、電圧変動が大きいほど補正量を大きくする。
【0063】
平滑コンデンサ12の静電容量が減少すると、平滑コンデンサ12の電圧変動が大きくなり、平均電圧が低下する。したがって、平滑コンデンサ12の静電容量の低下に合わせて補正量を大きくすることで、インバータ13から平滑コンデンサ12を充電する電流I3を大きくし、平滑コンデンサ12の電圧変動と、平均電圧の低下とを抑制できる。これにより、平滑コンデンサ12に用いたフィルムコンデンサの静電容量が変化することによって出力可能な電力が低下してしまうことを抑制することができる。
【0064】
平滑コンデンサ12の電力変動の大きさに応じて変更する補正量の変更の大きさは、電圧変動の大きさに応じた変更量のテーブルとして演算部15bに予め記憶させておくことで、決めることができる。また、電圧変動の大きさに目標値を設け、変更後の補正量と目標値との偏差が小さくなるように、フィードバックして変更量の大きさを決めることもできる。
【0065】
図9は、実施の形態2に係るモータ駆動装置の動作の流れを示すフローチャートである。インバータ13が動作を開始すると、ステップS1において、電流検出部15dは、整流回路10から出力される出力電流の大きさを検出する。ステップS2において、演算部15bは、電流検出部15dが検出した出力電流の大きさと補正量とに基づいて、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを決定する。ステップS2でオンデューティを決定した後、ステップS3において、駆動部15aは、予め定められた周期で、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6をオンオフさせる。ここでのスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティは、ステップS2で決定したオンデューティである。
【0066】
また、インバータ13が動作を開始すると、ステップS1からステップS3の処理とは別に、ステップS4において、電圧検出部15cは、平滑コンデンサ12の両端電圧を検出する。ステップS5において、演算部15bは、ステップS4で検出した平滑コンデンサ12の両端電圧に基づいて電圧変動の大きさを演算し、これを保持する。そして、ステップS6において、演算部15bは、電圧変動の大きさに応じた補正量の変更量を算出する。ステップS7において、演算部15bは、ステップS6で算出した変更量によって補正量を変更する。ステップS7で変更した補正量は、ステップS2でのオンデューティを決定する処理に用いられる。
【0067】
なお、上記実施の形態1及び実施の形態2においては、モータ駆動装置1の構成として、直流変換回路11を備える構成を示したが、これに限定するものではない。交流電源8として、3相交流電源を用いる場合などでは、直流変換回路11を備えず、整流回路10の出力に平滑コンデンサ12を接続する構成にすることもできる。直流変換回路11を備えない構成においても、静電容量が小さいフィルムコンデンサを平滑コンデンサ12に用いることにより、平滑コンデンサ12の両端電圧の変動の抑制及びインバータ13に流れる電流の変動の抑制することができる。
【0068】
次に、上記の実施の形態1及び実施の形態2に係るモータ駆動装置1が備える制御部15の演算部15bのハードウェア構成について説明する。図10は、実施の形態1及び実施の形態2に係るモータ駆動装置の演算部のハードウェア構成例を示す図である。図10には、プログラムを実行するハードウェアを用いることによって演算部15bの機能が実現される場合におけるハードウェア構成を示している。
【0069】
演算部15bは、各種処理を実行するプロセッサ91と、メインメモリであるメモリ92と、情報を記憶する記憶装置93とを有する。プロセッサ91は、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、CPU(Central Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)といった演算手段であってもよい。また、メモリ92には、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)といった不揮発性又は揮発性の半導体メモリを用いることができる。記憶装置93には、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6のオンデューティを、平滑コンデンサ12の電圧の変動の大きさに応じて変化させる処理及び平滑コンデンサ12の電圧変動の大きさに応じて補正量を変更する処理を実行するためのプログラムが格納されている。プロセッサ91は、記憶装置93に格納されているプログラムをメモリ92に読み出して実行する。プロセッサ91が記憶装置93に格納されているプログラムをメモリ92に読み出して実行することにより、演算部15bの機能が実現される。
【0070】
なお、演算部15bは、電流検出部15dから出力された電圧をアナログデジタル変換する機能を備える構成とし、マイクロコントローラを用いてデジタル制御することも可能である。演算部15bをマイクロコントローラで構成する場合は、基準電圧回路が不要になることに加え、アナログ回路を集積化し、制御部15を小型化することも可能である。また、演算部15bをマイクロコントローラで構成する場合は、演算結果及びテーブルデータを保持するメモリなどの周辺回路を集積化し、制御部15を小型化することも可能である。
【0071】
以上の実施の形態に示した構成は、内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 モータ駆動装置、2 圧縮機、3 送風機、4 熱交換器、5 室外機、6 配管、7 室内機、8 交流電源、9 ノイズフィルタ、10 整流回路、11 直流変換回路、12 平滑コンデンサ、13 インバータ、14 モータ、15 制御部、15a 駆動部、15b 演算部、15c 電圧検出部、15d 電流検出部、17 電流センサ、91 プロセッサ、92 メモリ、93 記憶装置、100 空気調和機、Cin コンデンサ、Lin コイル、Lu,Lv,Lw 巻線、Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6 スイッチング素子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10