(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-27
(45)【発行日】2025-04-04
(54)【発明の名称】類別装置、類別システムおよび類別方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/90 20060101AFI20250328BHJP
【FI】
G01S13/90 164
(21)【出願番号】P 2024571988
(86)(22)【出願日】2023-05-31
(86)【国際出願番号】 JP2023020200
【審査請求日】2024-12-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉原 由美子
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 啓
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-25972(JP,A)
【文献】特開2012-26976(JP,A)
【文献】特開2004-212187(JP,A)
【文献】特開2001-264435(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/96629(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
13/00 - 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ映像から目標を識別する第1の目標識別部と、
前記レーダ映像に含まれる前記目標のアスペクト角情報、前記第1の目標識別部による前記目標の識別結果情報および目標候補ごとの既知の特徴諸元に基づいて、前記目標の特徴部分の範囲である特徴レンジを算出する特徴レンジ算出部と、
前記特徴レンジ算出部が算出した特徴レンジを用いて前記目標の特徴部分の位置である特徴位置を決定し、決定した特徴位置を、前記レーダ映像に重ねて表示するための第1の表示制御情報を生成する第1の表示処理部と、
前記第1の表示制御情報に基づいて表示部に表示した前記レーダ映像における前記目標の特徴位置に対する編集操作を示す編集操作情報を取得すると、前記編集操作情報が示す編集操作が行われた前記目標の特徴位置を用いて前記目標の特徴諸元を算出する特徴位置編集部と、
前記目標候補ごとの既知の特徴諸元から前記特徴位置編集部が算出した前記目標の特徴諸元に対応するものを特定し、特定した特徴諸元に対応する前記目標候補を選択する第2の目標識別部と、
前記第2の目標識別部が選択した前記目標候補を表示するための第2の表示制御情報を生成する第2の表示処理部と、を備えた
ことを特徴とする類別装置。
【請求項2】
前記第1の目標識別部は、前記レーダ映像が入力されると、前記目標の識別結果情報を出力する第1の学習モデルを用いて、前記目標を識別する
ことを特徴とする請求項1に記載の類別装置。
【請求項3】
前記第2の目標識別部は、前記目標候補ごとの既知の特徴諸元から、前記特徴位置編集部が算出した前記目標の特徴諸元に最も相関が高いものを特定し、特定した特徴諸元に対応する前記目標候補を選択する
ことを特徴とする請求項2に記載の類別装置。
【請求項4】
前記第2の目標識別部は、前記レーダ映像、および前記特徴位置編集部が算出した前記目標の特徴諸元が入力されると、前記目標の特徴諸元に対応する前記目標候補を出力する第2の学習モデルを用いて、前記目標候補を選択する
ことを特徴とする請求項3に記載の類別装置。
【請求項5】
前記第2の学習モデルは、前記レーダ映像、および、前記目標のアノテーション情報に基づいて決定された前記目標の特徴位置が入力されると、前記目標候補の名称および種類を前記アノテーション情報として含む前記目標候補の識別情報を出力するものである
ことを特徴とする請求項4に記載の類別装置。
【請求項6】
前記第2の目標識別部による前記目標の識別結果を、前記レーダ映像、および前記特徴位置編集部が算出した前記目標の特徴諸元に紐付けられた前記アノテーション情報を生成するアノテーション処理部と、
前記アノテーション情報、前記レーダ映像、および前記特徴位置編集部が算出した前記目標の特徴諸元を用いて、前記第1の学習モデルまたは前記第2の学習モデルの一方または両方を更新する学習モデル更新部と、を備えた
ことを特徴とする請求項5に記載の類別装置。
【請求項7】
探索した前記目標を含む前記レーダ映像を生成して出力するレーダ装置と、
前記第1の表示制御情報および前記第2の表示制御情報に基づいて、前記レーダ映像を表示する前記表示部と、
前記表示部に表示された前記レーダ映像における前記目標の特徴位置に対する編集操作を受け付ける操作部と、
前記レーダ装置が生成した前記レーダ映像および前記編集操作情報を入力する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の類別装置と、を備えた
ことを特徴とする類別システム。
【請求項8】
類別装置による類別方法であって、
第1の目標識別部が、レーダ映像から目標を識別するステップと、
特徴レンジ算出部が、前記レーダ映像に含まれる前記目標のアスペクト角情報、前記第1の目標識別部による前記目標の識別結果情報および目標候補ごとの既知の特徴諸元に基づいて、前記目標の特徴部分の範囲である特徴レンジを算出するステップと、
第1の表示処理部が、前記特徴レンジ算出部が算出した特徴レンジを用いて前記目標の特徴部分の位置である特徴位置を決定し、決定した特徴位置を、前記レーダ映像に重ねて表示するための第1の表示制御情報を生成するステップと、
特徴位置編集部が、前記第1の表示制御情報に基づいて表示部に表示した前記レーダ映像における前記目標の特徴位置に対する編集操作を示す編集操作情報を取得すると、前記編集操作情報が示す編集操作が行われた前記目標の特徴位置を用いて前記目標の特徴諸元を算出するステップと、
第2の目標識別部が、前記目標候補ごとの既知の特徴諸元から前記特徴位置編集部が算出した前記目標の特徴諸元に対応するものを特定し、特定した特徴諸元に対応する前記目標候補を選択するステップと、
第2の表示処理部が、前記第2の目標識別部が選択した前記目標候補を表示するための第2の表示制御情報を生成するステップと、を備えた
ことを特徴とする類別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、類別装置、類別システムおよび類別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
逆合成開口レーダ(以下、ISARと略して記載する。)により生成されたISARの静止画像または動画像(以下、ISAR映像と記載する。)を用いて、海上および沿岸を監視する監視システムが知られている。例えば特許文献1に記載されるレーダ装置では、表示処理部が、ユーザの指示に応じてISAR画像が表示された表示部に船舶等の目標の全長(LOA;Length OverAll)を測定するための2本の測定ラインを表示する。輝度調整部が、ISAR画像のうち2本の測定ラインの外側の領域を判定して、この領域の輝度を高くする。表示処理部は、ユーザからの指示に応じて2本の測定ラインの位置を更新する。LOA測定部は、2本の測定ライン間の距離を演算し、船舶の全長を測定する。オペレータ(ユーザ)がISAR映像を目視で確認することにより、ISAR映像中の目標のLOAに基づいて目標の種類を特定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、ISAR画像上の目標の特徴に基づいて目標を正確に類別できないことがあるという課題があった。
例えば、目標の特徴である全長は、センサの電波照射方向に対する目標のアスペクト角に依存して変化する。このため、特許文献1に記載される従来の技術では、ISAR画像におけるアスペクト角の値によっては目標の真の全長を推定できないので、目標を正確に類別できない可能性がある。
【0005】
本開示は上記課題を解決するものであり、目標の類別精度を高めることができる、類別装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る類別装置は、レーダ映像から目標を識別する第1の目標識別部と、レーダ映像に含まれる目標のアスペクト角情報、第1の目標識別部による目標の識別結果情報および目標候補ごとの既知の特徴諸元に基づいて、目標の特徴部分の範囲である特徴レンジを算出する特徴レンジ算出部と、特徴レンジ算出部が算出した特徴レンジを用いて目標の特徴部分の位置である特徴位置を決定し、決定した特徴位置を、レーダ映像に重ねて表示するための第1の表示制御情報を生成する第1の表示処理部と、第1の表示制御情報に基づいて表示部に表示したレーダ映像における目標の特徴位置に対する編集操作を示す編集操作情報を取得すると、編集操作情報が示す編集操作が行われた目標の特徴位置を用いて目標の特徴諸元を算出する特徴位置編集部と、目標候補ごとの既知の特徴諸元から特徴位置編集部が算出した目標の特徴諸元に対応するものを特定し、特定した特徴諸元に対応する目標候補を選択する第2の目標識別部と、第2の目標識別部が選択した目標候補を表示するための第2の表示制御情報を生成する第2の表示処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、レーダ映像から識別した目標の特徴位置を決定し、表示部に表示したレーダ映像における目標の特徴位置に対する編集操作を示す編集操作情報を取得すると、編集操作が行われた特徴位置を用いて目標の特徴諸元を算出し、目標候補ごとの既知の特徴諸元から、算出した目標の特徴諸元に対応するものを特定し、特定した特徴諸元に対応する目標候補を表示する。レーダ映像から識別した目標の特徴位置とレーダ映像における目標の特徴位置がかけ離れていても、これを編集した目標の特徴位置を用いて目標が再度識別される。これにより、本開示に係る類別装置は、目標の類別精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る類別システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る類別装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】センサ、目標、目標の向き、電波照射方向、およびアスペクト角の関係の概要を示す概要図である。
【
図4】
図4Aおよび
図4Bは、学習モデルおよび学習データベースの例(1)を示す概要図である。
【
図5】特徴諸元データベースの概要を示す概要図である。
【
図6】レーダ映像、特徴諸元、特徴レンジ、および電波照射方向の関係の概要を示す概要図である。
【
図7】レーダ映像に目標の特徴位置を重ねる処理の概要を示す概要図である。
【
図8】レーダ装置の動作を示すフローチャートである。
【
図9】実施の形態1に係る類別方法を示すフローチャートである。
【
図11】
図11Aおよび
図11Bは、実施の形態1に係る類別装置の機能を実現するためのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図12】実施の形態2に係る類別装置の構成例を示すブロック図である。
【
図13】実施の形態2に係る類別方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る類別システム1の構成例を示すブロック図である。
図1において、類別システム1は、外部空間に存在する目標を類別するシステムであって、類別装置100およびレーダ装置200を備える。類別対象の目標は、例えば、船舶または航空機等の移動体である。類別装置100は、レーダ装置200が生成したレーダ映像から目標を類別する。レーダ映像は、例えば、ISAR、または合成開口レーダ(以下、SARと略して記載する。)によるレーダ静止画像または動画像情報である。レーダ装置200は、外部空間へ電波を送信し、外部空間に存在する目標から受信した電波のエコーを用いて目標のレーダ映像を生成する装置である。
【0010】
図2は、実施の形態1に係る類別装置100の構成例を示すブロック図である。
図2において、類別装置100は、特徴諸元データベースが記憶されている記憶部101、表示部102および操作部103を備え、さらに、
図2において図示しない演算部を備える。記憶部101は、類別装置100として機能するコンピュータが備える記憶装置であり、HDD(Hard Disk Drive)、または、SSD(Solid State Drive)等のストレージ、もしくは後述する
図11Bのメモリ1004等を含むものである。なお、記憶部101は、類別装置100からアクセス可能なものであればよく、類別装置100の外部に設けられてもよい。
【0011】
表示部102は、類別装置100として機能するコンピュータが備えている表示装置である。例えば、表示部102は、LCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electroluminescence)表示装置である。
操作部103は、類別装置100として機能するコンピュータが備える表示部102の画面表示に対する操作を受け付ける入力装置である。例えば、類別装置100は、表示部102の表示画面と一体に設けられたタッチパネルである。また、操作部103は、例えばマウスまたはキーボードであってもよい。
【0012】
上記演算部は、類別装置100の全体動作を制御する。演算部は、アスペクト角算出部111、レーダ映像入力部112、第1の目標識別部113、特徴レンジ算出部114、第1の表示処理部115、特徴位置編集部116、第2の目標識別部117および第2の表示処理部118を備える。演算部が類別用アプリケーションを実行することにより、アスペクト角算出部111、レーダ映像入力部112、第1の目標識別部113、特徴レンジ算出部114、第1の表示処理部115、特徴位置編集部116、第2の目標識別部117、および第2の表示処理部118の各種の機能が実現される。
【0013】
レーダ装置200は、送受信部201および追尾処理部202を備えている。送受信部201は、レーダアンテナを介した電波の送受信を行う。追尾処理部202は、外部空間内で移動している目標の追尾処理を行う。
【0014】
図3は、センサ13、目標Ta、目標Taの向きD1、電波照射方向D2、およびアスペクト角θの関係の概要を示す概要図である。
図3において、センサ13は、外部空間へ電波を放射し、外部空間から目標Taのエコーを受信するレーダアンテナである。レーダアンテナであるセンサ13は、送受信部201に含まれる。目標Taは、例えば、
図3において破線で示す船舶である。目標Taの船首が通る矢印は目標Taの向きD1である。電波照射方向D2は、センサ13から照射される電波の向きである。アスペクト角θは、電波照射方向D2(センサ13の方向)に対して目標Taの向きD1がなす角度である。
【0015】
送受信部201は、センサ13により受信された目標の電波のエコーに基づいて、目標のレーダ映像を生成する信号処理を行う。以下の説明では、レーダ映像がISAR映像であるものとする。また、レーダ装置200は、
図3に示した電波照射方向D2を制御するために、電波照射方向D2のリアルタイムな情報を常に取得している。
【0016】
アスペクト角算出部111は、追尾処理部202から目標Taの向きD1を示す情報を取得し、送受信部201から取得した電波照射方向D2を示す情報を取得して、目標Taの向きD1および電波照射方向D2を用いて、アスペクト角θを算出する。例えば、目標Taが
図3に示す配置である場合、アスペクト角算出部111は、下記式(1)に従ってアスペクト角θを算出する。下記式(1)において、角度の単位は「度」である。
アスペクト角θ=180-電波照射方向D2+目標Taの向きD1 (1)
【0017】
レーダ映像入力部112は、レーダ装置200が備える送受信部201からレーダ映像を取得する。レーダ映像入力部112により取得されたレーダ映像は、第1の目標識別部113に出力される。
【0018】
第1の目標識別部113は、レーダ映像から目標Taを識別する。例えば、レーダ映像では、反射波として受信された電波の強度に応じて画像上の輝度値が決定される。第1の目標識別部113は、レーダ映像の画像を二値化して、二値化画像のパターン認識を行うことにより目標を識別する。
なお、アスペクト角算出部111の機能は、特徴レンジ算出部114が備えてもよく、レーダ映像入力部112の機能は、第1の目標識別部113が備えてもよい。この場合、類別装置100は、アスペクト角算出部111およびレーダ映像入力部112を備えていなくてもよい。
【0019】
また、第1の目標識別部113は、レーダ映像が入力されると、目標の識別結果情報を出力する第1の学習モデルを用いて、目標を識別してもよい。
図4Aは、第1の学習モデル15を生成するための学習データベース14の概要を示す図である。
図4Bは、第1の学習モデル15の概要を示す図である。学習データベース14に登録された学習データには、
図4Aに示すように、レーダ映像Eと、このレーダ映像Eに対応するアノテーション情報Fが含まれ、例えば、記憶部101に記憶される。
アノテーション情報Fは、レーダ映像X1に含まれる目標Xの候補が含まれる。第1の学習モデル15は、学習データベース14に登録された学習データを用いた学習により生成される。
なお、学習データに含まれるレーダ映像Eおよびこれに対応するアノテーション情報Fは、送受信部201により生成されたものに限定されない。
【0020】
第1の目標識別部113が、
図4Bに示すように、レーダ映像Eを、第1の学習モデル15に入力する。これにより、第1の学習モデル15は、レーダ映像Eにおける目標Taの名称または種類などを推論して、推論した目標Taの名称または種類を識別結果情報として出力する。第1の目標識別部113が第1の学習モデル15を用いることによって、類別装置100は、レーダ映像Eを用いた目標Taの類別を精度よく行うことができる。
【0021】
特徴レンジ算出部114は、レーダ映像Eに含まれる目標Taのアスペクト角情報、第1の目標識別部113による目標Taの識別結果情報および目標候補ごとの既知の特徴諸元に基づいて、目標Taの特徴部分の範囲である特徴レンジを算出する。
例えば、特徴レンジ算出部114は、アスペクト角θ、および目標Taの識別結果情報を入力し、入力した情報を用いて特徴レンジを算出する。
【0022】
図5は、特徴諸元データベースの概要を示す概要図であり、記憶部101に記憶された特徴諸元データベースの内容を示している。特徴諸元データベースには、様々な目標候補の名称または種類を示すアノテーション情報Gに対応付けて既知の特徴諸元Hが登録されている。特徴諸元は目標の特徴的な部分を表すパラメータである。
【0023】
例えば、目標が船舶である場合、特徴諸元は、船舶の種類ごとに決まる船舶の全長(LOA)、船首とマストとの間の長さ、および、船首とコンテナとの間の長さ等がある。一つの目標候補(例えば、目標X)には、複数の種類の特徴諸元(例えば、特徴諸元X2、特徴諸元X3、・・・)が対応付けられてもよい。
【0024】
特徴レンジ算出部114は、特徴諸元データベースを参照し、第1の目標識別部113による識別結果情報が示す目標情報に対応する特徴諸元を読み取る。例えば、識別結果情報が示す目標情報が目標Xであった場合、特徴レンジ算出部114は、特徴諸元データベースから、目標Xに対応する複数の種類の特徴諸元X2、特徴諸元X3、・・・からなる特徴諸元を読み取る。
【0025】
特徴レンジ算出部114は、特徴諸元データベースから読み取った特徴諸元を特徴レンジに変換する。特徴レンジは、目標の特徴的な部分の範囲を示す情報であり、例えば、目標が船舶である場合、レーダ映像における目標のスラントレンジ長さである。
【0026】
図6は、レーダ映像E、特徴諸元H、特徴レンジI、および電波照射方向D2の関係の概要を示す概要図である。例えば、レーダ映像Eに写る目標Taが船舶であり、特徴諸元データベースから読み取られた特徴諸元が、船首とマストとの間の長さである場合、船首とマストとの間の長さは、レーダ映像Eにおけるスラントレンジ長さである特徴レンジIとして表現される。
【0027】
スラントレンジ軸は、電波照射方向D2に平行であるので、
図6に示すように、船首とマストとの間の長さである特徴諸元Hと特徴レンジIとの間には、アスペクト角θに依存した比例関係がある。アスペクト角θが
図3に示す関係で定義される場合、特徴レンジ算出部114は、下記式(2)を用いて、特徴レンジIを算出することができる。特徴レンジ算出部114は、レーダ映像Eと、算出した特徴レンジIとを、第1の表示処理部115に出力する。
特徴レンジI(m)=特徴諸元H(m)×cos(アスペクト角θ) (2)
【0028】
第1の表示処理部115は、特徴レンジ算出部114が算出した特徴レンジIを用いて目標Taの特徴位置PAを決定し、決定した特徴位置PAを、レーダ映像Eに重ねて表示するための第1の表示制御情報を生成する。
【0029】
例えば、
図6に示すように、第1の表示処理部115は、レーダ映像Eを、このレーダ映像Eにおける座標軸の一つを電波照射方向D2に平行なスラントレンジ軸とした画像に変換する。第1の表示処理部115は、特徴レンジIを用いて、目標Taの特徴位置PAをレーダ映像Eに重ねて表示するための第1の表示制御情報を生成する。特徴位置とは、目標Taの特徴部分の位置である。
【0030】
図7は、レーダ映像Eに目標Taの特徴位置PAを重ねる処理の概要を示す概要図である。
図7において、目標Taは、船舶である。レーダ映像Eにおける、目標Taの特徴位置PAが、船首に関する特徴位置J1、船尾に関する特徴位置J2およびマストに関する特徴位置J3である。第1の表示処理部115は、レーダ映像Eの画素値情報または複素信号情報を用いて、レーダ映像Eの重心位置G1を算出する。
【0031】
目標Taの特徴位置PAのうち、船首に関する特徴位置J1は、特徴レンジ算出部114が目標TaのLOAに基づいて算出した特徴レンジI1において、重心位置G1から特徴レンジI1の半分の値だけスラントレンジ軸の負方向にシフトした位置である。また、船尾に関する特徴位置J2は、特徴レンジI1において、重心位置G1から特徴レンジI1の半分の値だけスラントレンジ軸の正の方向にシフトさせた位置である。
上記式(2)に従って算出された特徴レンジIが負の値である場合、スラントレンジ軸の正負の方向は逆になる。
【0032】
続いて、第1の表示処理部115は、特徴レンジ算出部114が船首とマストとの間の長さに基づいて算出した特徴レンジI2において、特徴レンジI2の長さの分だけ、特徴位置J1からスラントレンジ軸の正の方向にシフトさせた位置を、マストに関する特徴位置J3として算出する。なお、上記式(2)に従って算出された特徴レンジI2が負の値である場合、特徴位置J3は、特徴位置J1から特徴レンジI2の長さの分だけスラントレンジ軸の負の方向にシフトさせた位置となる。
【0033】
第1の表示処理部115は、船首とコンテナとの間の長さ等の特徴諸元を特徴レンジIに変換して、特徴レンジIにおいて船首からシフトさせた位置を、特徴位置PAとする。
例えば、
図7に示すように、第1の表示処理部115は、特徴位置J1、特徴位置J2および特徴位置J3を含む複数の特徴位置を、目標Taの特徴位置PAとして算出する。
第1の表示処理部115は、目標Taの特徴位置PAをレーダ映像Eに重ねて表示するための第1の表示制御情報を生成し、第1の表示制御情報を表示部102に出力する。
表示部102は、第1の表示制御情報に基づいて、
図7に示すような画面を表示する。
【0034】
類別装置100のオペレータは、表示部102に表示されたレーダ映像Eを目視で確認し、レーダ映像Eに重ねて表示した目標Taの特徴位置PAと、レーダ映像Eに写る実際の目標Taの特徴位置PBとを比較する。ここで、特徴位置PAと特徴位置PBとが一致しなければ、オペレータは、操作部103を用いて、特徴位置PAを特徴位置PBに一致させた特徴位置PA1に変換するための編集操作を行い、この編集操作を示す編集操作情報を、特徴位置編集部116に出力する。特徴位置編集部116は、目標Taの特徴位置PAに対して、編集操作情報が示す編集操作を行った特徴位置PA1を生成する。
【0035】
次に、特徴位置編集部116は、編集された目標Taの特徴位置PA1を用いて、特徴レンジRを算出する。目標Taが船舶であり、特徴位置PA1に、船首に関する特徴位置J1、船尾に関する特徴位置J2、および、マストに関する特徴位置J3が含まれる場合を例に挙げる。この場合、特徴レンジRは、例えば、船首に関する特徴位置J1から、別の特徴位置である、船尾に関する特徴位置J2またはマストに関する特徴位置J3までの長さである。
【0036】
続いて、特徴位置編集部116は、特徴レンジRを、特徴諸元CPに変換する。特徴諸元CPは、特徴レンジRを用いて推定可能な実際の目標Taが有する長さの諸元である。例えば、アスペクト角θが
図3に示す関係で定義される場合、特徴位置編集部116は、下記式(3)を用いて特徴諸元CPを算出する。下記式(3)において|cos(X)|は、cos(X)の絶対値である。
特徴諸元CP(m)=特徴レンジR(m)÷|cos(アスペクト角θ)| (3)
【0037】
第2の目標識別部117は、特徴諸元データベースに記憶される目標候補ごとの既知の特徴諸元から、特徴位置編集部116が算出した目標Taの特徴諸元CPに対応するものを特定し、特定した特徴諸元に対応する目標候補を選択するものである。
例えば、第2の目標識別部117は、特徴諸元データベースに記憶される目標候補ごとの既知の特徴諸元から、特徴位置編集部116が算出した目標Taの特徴諸元CPに最も相関が高いものを特定し、特定した特徴諸元に対応する目標候補を選択する。
【0038】
具体的には、第2の目標識別部117が、既知の特徴諸元と特徴諸元CPとの間に成立する相関関数を演算することにより両者の間に存在する関係を示す相関係数を求め、既知の特徴諸元のうち、特徴諸元CPとの相関係数の値が最も大きいものを、最も相関が高いものとして選択する。これにより、類別装置100は、特徴位置を編集して得られた目標Taの特徴諸元CPに近い特徴諸元を、既知の特徴諸元から選択することが可能である。
第2の目標識別部117により選択された目標候補は、目標Taの再識別結果として、第2の目標識別部117から第2の表示処理部118に出力される。
【0039】
第2の表示処理部118は、第2の目標識別部117が選択した目標候補を表示するための第2の表示制御情報を生成し、第2の表示制御情報を表示部102に出力する。
例えば、第2の表示処理部118は、第2の目標識別部117が選択した目標候補を、レーダ映像Eとともに表示させるための第2の表示制御情報を生成する。
表示部102は、第2の表示制御情報に基づいて目標Taの再識別結果である目標候補を表示する。オペレータは、表示部102に表示された識別結果を参照することにより、レーダ映像Eからの目標Taの再識別結果を確認することができる。
【0040】
なお、第1の表示制御情報に基づいて表示部102に表示されたレーダ映像Eを目視で確認したオペレータが、特徴位置PAと特徴位置PBとの差分が許容範囲内であると判断した場合、例えば、操作部103を用いて再識別不要を示す操作を行う。この操作を示す操作情報は、操作部103から特徴位置編集部116に出力される。特徴位置編集部116は、この操作情報に基づいて、目標Taの再識別が不要であることを第2の目標識別部117に通知する。
【0041】
第2の表示処理部118は、再識別不要であることを示す通知を受信すると、目標Taの特徴位置PAをそのままレーダ映像Eに表示するための第2の表示制御情報を生成し、第2の表示制御情報を表示部102に出力する。表示部102は、第2の表示制御情報に基づいて、識別結果である目標Taを、レーダ映像Eとともに表示する。オペレータは、表示部102に表示された識別結果を参照することにより、レーダ映像Eからの目標Taの識別結果を確認することができる。
【0042】
また、これまで、第1の表示制御情報に基づいて表示部102に表示されたレーダ映像Eを目視で確認したオペレータが、操作部103を用いて特徴位置の編集操作を行う場合を示したが、特徴位置の編集操作は、自動で行われてもよい。
例えば、特徴位置編集部116は、特徴位置PAと特徴位置PBとの差分を許容閾値と比較し、差分が許容閾値を超える場合、特徴位置PAが特徴位置PBからかけ離れていると判定し、特徴位置PAを特徴位置PA1に自動で変換(編集)してもよい。
【0043】
この場合、第1の表示処理部115は、特徴位置編集部116が自動で行う特徴位置の編集操作を、表示部102に表示させるための表示制御情報を生成し、生成した表示制御情報を表示部102に出力してもよい。この場合、表示部102は、この表示制御情報に基づいて、特徴位置PAが特徴位置PA1に編集される過程を表示する。オペレータは、表示部102に表示された編集操作を参照することで、特徴位置PAを特徴位置PA1に自動で編集する処理の過程を目視で確認することができる。
【0044】
次に、レーダ装置200の動作について説明する。
図8は、レーダ装置200の動作を示すフローチャートである。
追尾処理部202は、外部空間に存在する目標Taを追尾することで、目標Taの進行方向等に基づいて目標Taの向きD1を算出し、算出した向きD1をアスペクト角算出部111に出力する(ステップST1-1)。
【0045】
送受信部201は、外部空間に送信したレーダ信号のビーム指向を示すビーム指向情報を生成し、ビーム指向情報をアスペクト角算出部111に出力する(ステップST1-2)。ビーム指向情報は、送信時のビーム指向に関する情報であり、送信電波の電波照射方向D2を示している。
【0046】
さらに、送受信部201は、外部空間から受信したレーダ信号を信号処理することで、レーダ映像Eを生成して、レーダ映像Eをレーダ映像入力部112に出力する(ステップST1-3)。
なお、ステップST1-1、ステップST1-2およびステップST1-3を処理する順序は問わず、同時に行われてもよい。
【0047】
図9は、実施の形態1に係る類別方法を示すフローチャートである。
アスペクト角算出部111が、レーダ装置200から取得した目標Taの向きD1を示す情報に基づいて、アスペクト角θを算出する(ステップST1A-1)。例えば、アスペクト角算出部111は、上記式(1)に従ってアスペクト角θを算出する。
レーダ映像入力部112は、レーダ装置200からレーダ映像Eを入力する(ステップST1A-2)。なお、ステップST1A-1およびステップST1A-2の各処理は、順序は問わず、同時に行われてもよい。また、これらの処理は、実施の形態1に係る類別方法の前処理であり、実施の形態1に係る類別方法では、これらの処理が既に実行されているものとする。
【0048】
第1の目標識別部113が、レーダ映像Eから目標Taを識別する(ステップST2A)。続いて、特徴レンジ算出部114が、レーダ映像Eに含まれる目標Taのアスペクト角情報、第1の目標識別部113による目標Taの識別結果情報および目標候補ごとの既知の特徴諸元に基づいて、目標Taの特徴部分の範囲である特徴レンジIを算出する(ステップST3A)。第1の表示処理部115が、特徴レンジ算出部114が算出した特徴レンジIを用いて目標Taの特徴位置PAを決定し、決定した特徴位置PAをレーダ映像Eに重ねて表示するための第1の表示制御情報を生成する(ステップST4A)。
表示部102は、第1の表示制御情報に基づいて、目標Taの特徴位置PAとともに、レーダ映像Eを表示する。
【0049】
特徴位置編集部116が、第1の表示制御情報に基づいて表示部102に表示したレーダ映像Eにおける目標の特徴位置PAに対する編集操作を示す編集操作情報を取得すると、編集操作情報が示す編集操作が行われた目標の特徴位置PA1を用いて、目標Taの特徴諸元CPを算出する(ステップST5A)。
第2の目標識別部117が、目標候補ごとの既知の特徴諸元から特徴位置編集部116が算出した目標の特徴諸元CPに対応するものを特定し、特定した特徴諸元に対応する目標候補を選択する(ステップST6A)。
第2の表示処理部118が、第2の目標識別部117が選択した目標候補を表示するための第2の表示制御情報を生成する(ステップST7A)。
表示部102は、第2の表示制御情報に基づいて、再識別された目標候補とともにレーダ映像Eを表示する。
【0050】
ステップST4Aにおいて、オペレータが、特徴位置PAとレーダ映像Eにおける特徴位置PBとを比較する。オペレータは、特徴位置PAと特徴位置PBとの対応が妥当であると判断すれば、ステップST3Aで得られた識別結果が間違っていないと納得することができる。その一方で、特徴位置PAと特徴位置PBとがかけ離れていれば、オペレータは、ステップST3Aで得られた識別結果が間違っている可能性があると判断することができる。この場合、特徴位置PAを編集し、その編集した特徴位置PA1を用いて目標を再識別することにより、オペレータは、再識別結果に納得感を得ることができる。
なお、納得感だけでなく、オペレータによる入力情報で識別情報が増えることにより、実際に類別装置100の類別精度も向上する。
【0051】
また、第2の目標識別部117は、レーダ映像E、および特徴位置編集部116が算出した目標Taの特徴諸元CPが入力されると、目標Taの特徴諸元CPに対応する目標候補を出力する第2の学習モデルを用いて、既知の特徴諸元に対応する目標候補から、目標候補を選択してもよい。
【0052】
図10Aは、第2の学習モデル15Aを生成するための学習データの概要を示す図である。
図10Bは、第2の学習モデル15Aの概要を示す図である。
図10Aにおいて、学習データには、レーダ映像Eと、このレーダ映像Eに対応するアノテーション情報Fと、アノテーション情報Fに対応する特徴諸元Hとが含まれる。
アノテーション情報Fは、レーダ映像X1に含まれる目標Xの候補が含まれる。
第2の学習モデル15Aは、学習データベース14Aに登録された学習データを用いた学習により生成される。
なお、学習データに含まれる、レーダ映像E、これに対応するアノテーション情報Fおよびアノテーション情報Fに対応する特徴諸元Hは、送受信部201により生成されたものに限定されない。
【0053】
第2の目標識別部117が、
図10Bに示すように、レーダ映像Eおよび特徴諸元H1~H4を第2の学習モデル15Aに入力する。これにより、第2の学習モデル15Aは、レーダ映像Eおよび特徴諸元H1~H4に対応する目標候補を推論し、推論した目標候補を識別結果情報として出力する。このように第2の目標識別部117が第2の学習モデル15Aを用いることにより、類別装置100は、レーダ映像Eおよび特徴諸元に対応する目標候補を精度よく選択ことができる。
【0054】
また、第2の学習モデル15Aは、レーダ映像E、および、目標Taのアノテーション情報Fに基づいて決定された目標Taの特徴位置が入力されると、目標候補の名称および種類をアノテーション情報として含む目標候補の識別情報を出力する、機械学習モデルであってもよい。第2の目標識別部117がこの第2の学習モデル15Aを用いることで、類別装置100は、目標候補の名称および種類をアノテーション情報として含む目標候補を精度よく選択ことができる。
【0055】
次に、類別装置100の機能を実現するハードウェア構成について説明する。
類別装置100が備える、アスペクト角算出部111、レーダ映像入力部112、第1の目標識別部113、特徴レンジ算出部114、第1の表示処理部115、特徴位置編集部116、第2の目標識別部117および第2の表示処理部118の各機能は処理回路により実現される。すなわち、類別装置100は、
図9に示したステップST1A-1からステップST7Aまでの各処理を実行するための処理回路を備える。処理回路は、専用のハードウェアであってもよいが、メモリに記憶されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)であってもよい。
【0056】
図11Aは、類別装置100の機能を実現するハードウェア構成を示すブロック図である。また、
図11Bは、類別装置100の機能を実現するソフトウェアを実行するハードウェア構成を示すブロック図である。
図11Aおよび
図11Bにおいて、入力インタフェース1000は、例えば、レーダ装置200から類別装置100へ出力されるアスペクト角情報とレーダ映像E、および操作部103から類別装置100へ出力される編集操作情報を中継するインタフェースである。出力インタフェース1001は、例えば、類別装置100から表示部102へ出力される識別結果情報を中継するインタフェースである。
【0057】
処理回路が、
図11Aに示す専用のハードウェアの処理回路1002である場合、処理回路1002は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)または、これらを組み合わせたものが該当する。
類別装置100が備えるアスペクト角算出部111、レーダ映像入力部112、第1の目標識別部113、特徴レンジ算出部114、第1の表示処理部115、特徴位置編集部116、第2の目標識別部117および第2の表示処理部118の各機能を、別々の処理回路が実現してもよく、これらの機能をまとめて一つの処理回路が実現してもよい。
【0058】
処理回路が、
図11Bに示すプロセッサ1003である場合、類別装置100が備えるアスペクト角算出部111、レーダ映像入力部112、第1の目標識別部113、特徴レンジ算出部114、第1の表示処理部115、特徴位置編集部116、第2の目標識別部117および第2の表示処理部118の各機能は、ソフトウェア、ファームウェアまたはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。なお、ソフトウェアまたはファームウェアは、プログラムとして記述されてメモリ1004に記憶される。メモリ1004は、例えば、
図2に示した記憶部101である。
【0059】
プロセッサ1003は、メモリ1004に記憶される類別用アプリケーションのプログラムを読み出して実行することにより、類別装置100が備える、アスペクト角算出部111、レーダ映像入力部112、第1の目標識別部113、特徴レンジ算出部114、第1の表示処理部115、特徴位置編集部116、第2の目標識別部117および第2の表示処理部118の各機能を実現する。例えば、類別装置100は、プロセッサ1003により実行されるときに、
図9に示したステップST1A-1からステップST7Aの処理が結果的に実行される上記プログラムを記憶するためのメモリ1004を備える。このプログラムは、アスペクト角算出部111、レーダ映像入力部112、第1の目標識別部113、特徴レンジ算出部114、第1の表示処理部115、特徴位置編集部116、第2の目標識別部117および第2の表示処理部118が行う処理の手順または方法を、コンピュータに実行させる。メモリ1004は、コンピュータを、アスペクト角算出部111、レーダ映像入力部112、第1の目標識別部113、特徴レンジ算出部114、第1の表示処理部115、特徴位置編集部116、第2の目標識別部117および第2の表示処理部118として機能させるためのプログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体であってもよい。
【0060】
メモリ1004は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically-EPROM)などの不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVDなどが該当する。
【0061】
類別装置100が備える、アスペクト角算出部111、レーダ映像入力部112、第1の目標識別部113、特徴レンジ算出部114、第1の表示処理部115、特徴位置編集部116、第2の目標識別部117および第2の表示処理部118の各機能の一部が専用のハードウェアで実現され、残りの一部がソフトウェアまたはファームウェアで実現されてもよい。例えば、アスペクト角算出部111およびレーダ映像入力部112は、専用のハードウェアである処理回路1002によってその機能が実現され、第1の目標識別部113、特徴レンジ算出部114、第1の表示処理部115、特徴位置編集部116、第2の目標識別部117および第2の表示処理部118は、プロセッサ1003がメモリ1004に記憶されたプログラムを読み出して実行することによりその機能が実現される。
このように、処理回路はハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組み合わせによって上記機能を実現することができる。
【0062】
以上のように、実施の形態1に係る類別装置100は、レーダ映像Eから目標Taを識別する第1の目標識別部113と、レーダ映像Eに含まれる目標Taのアスペクト角情報、第1の目標識別部113による目標Taの識別結果情報および目標候補ごとの既知の特徴諸元に基づいて目標Taの特徴レンジIを算出する特徴レンジ算出部114と、特徴レンジIを用いて目標の特徴位置PAを決定し、特徴位置PAをレーダ映像Eに重ねて表示するための第1の表示制御情報を生成する第1の表示処理部115と、第1の表示制御情報に基づいて表示部102に表示したレーダ映像Eにおける目標Taの特徴位置PAに対する編集操作を示す編集操作情報を取得すると、編集操作が行われた目標Taの特徴位置PA1を用いて目標Taの特徴諸元CPを算出する特徴位置編集部116と、目標候補ごとの既知の特徴諸元から特徴諸元CPに対応するものを特定し、特定した特徴諸元に対応する目標候補を選択する第2の目標識別部117と、第2の目標識別部117が選択した目標候補を表示するための第2の表示制御情報を生成する第2の表示処理部118と、を備える。レーダ映像Eから識別した目標Taの特徴位置PAと目標Taの特徴位置PBとがかけ離れていても、これを編集した目標Taの特徴位置PA1を用いて目標Taが再度識別されるので、類別装置100は、目標Taの類別精度を高めることができる。
【0063】
実施の形態1に係る類別装置100において、第1の目標識別部113は、レーダ映像がE入力されると、目標Taの識別結果情報を出力する第1の学習モデル15を用いて、目標Taを識別する。第1の目標識別部113が第1の学習モデル15を用いることで、類別装置100は、レーダ映像Eを用いた目標Taの類別を精度よく行うことができる。
【0064】
実施の形態1に係る類別装置100において、第2の目標識別部117は、目標候補ごとの既知の特徴諸元から、特徴位置編集部116が算出した目標Taの特徴諸元CPに最も相関が高いものを特定して、特定した特徴諸元に対応する目標候補を選択する。これにより、類別装置100は、編集された特徴位置PA1に基づいて算出された特徴諸元CPに近い特徴諸元を、既知の特徴諸元から選択することが可能である。
【0065】
実施の形態1に係る類別装置100において、第2の目標識別部117は、レーダ映像E、および特徴位置編集部116が算出した目標Taの特徴諸元CPが入力されると、目標Taの特徴諸元CPに対応する目標候補を出力する第2の学習モデル15Aを用いて、目標候補を選択する。第2の目標識別部117が第2の学習モデル15Aを用いることにより、類別装置100は、既知の特徴諸元に対応する目標候補から、特徴諸元CPに対応する目標候補を精度よく選択することができる。
【0066】
実施の形態1に係る類別装置100において、第2の学習モデル15Aは、レーダ映像、Eおよび、目標Taのアノテーション情報Fに基づいて決定された目標Taの特徴位置が入力されると、目標候補の名称および種類をアノテーション情報として含む目標候補の識別情報を出力するものである。第2の目標識別部117がこの第2の学習モデル15Aを用いることで、類別装置100は、目標候補の名称および種類をアノテーション情報として含む目標候補を精度よく選択ことができる。
【0067】
実施の形態1に係る類別システム1は、探索した目標Taを含むレーダ映像Eを生成して出力するレーダ装置200と、第1の表示制御情報および第2の表示制御情報に基づいてレーダ映像Eを表示する表示部102と、表示部102に表示されたレーダ映像Eにおける目標Taの特徴位置PAに対する編集操作を受け付ける操作部103と、レーダ装置200が生成したレーダ映像Eおよび編集操作情報を入力する類別装置100を備える。これにより、目標の類別精度を高めた類別システム1を提供することができる。
【0068】
実施の形態1に係る類別方法は、第1の目標識別部113がレーダ映像Eから目標Taを識別するステップST2Aと、特徴レンジ算出部114がレーダ映像Eに含まれる目標Taのアスペクト角情報、第1の目標識別部113による目標Taの識別結果情報および目標候補ごとの既知の特徴諸元に基づいて目標Taの特徴レンジIを算出するステップST3Aと、第1の表示処理部115が、特徴レンジIを用いて目標Taの特徴位置PAを決定し、決定した特徴位置PAを、レーダ映像Eに重ねて表示するための第1の表示制御情報を生成するステップST4Aと、特徴位置編集部116が、第1の表示制御情報に基づいて表示部102に表示したレーダ映像Eにおける目標の特徴位置PAに対する編集操作を示す編集操作情報を取得すると、編集操作情報が示す編集操作が行われた目標Taの特徴位置PA1を用いて目標Taの特徴諸元CPを算出するステップST5Aと、第2の目標識別部117が、目標候補ごとの既知の特徴諸元から、特徴位置編集部116が算出した目標Taの特徴諸元CPに対応するものを特定し、特徴諸元CPに対応する目標候補を選択するステップST6Aと、第2の表示処理部118が、第2の目標識別部117が選択した目標候補を表示するための第2の表示制御情報を生成するステップST7Aとを備える。類別装置100がこの方法を実行することにより、目標の類別精度を高めることができる。
【0069】
実施の形態2.
図12は、実施の形態2に係る類別装置100Aの構成例を示すブロック図である。
図12において、
図2と同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。類別装置100Aは、
図1に示した類別システム1が備える類別装置100の代わりに設けられる。類別対象の目標は、類別装置100と同様に、例えば、船舶または航空機等の移動体である。類別装置100Aは、レーダ装置200が生成したレーダ映像から目標を類別する。レーダ映像は、例えばISARまたはSARによるレーダ静止画像または動画像情報である。
【0070】
類別装置100Aは、特徴諸元データベースが記憶されている記憶部101、表示部102および操作部103を備え、さらに
図12において図示しない演算部を備えている。記憶部101は、類別装置100Aとして機能するコンピュータが備える記憶装置であり、HDD、または、SSD等のストレージ、もしくは、
図11Bに示したメモリ1004等を含むものである。なお、記憶部101は、類別装置100Aからアクセス可能なものであればよく、類別装置100Aの外部に設けられてもよい。
【0071】
上記演算部は、類別装置100Aの全体動作を制御する。演算部は、アスペクト角算出部111、レーダ映像入力部112、第1の目標識別部113、特徴レンジ算出部114、第1の表示処理部115、特徴位置編集部116、第2の目標識別部117A、第2の表示処理部118、アノテーション処理部119および学習モデル更新部120を備える。
演算部が類別用アプリケーションを実行することで、アスペクト角算出部111、レーダ映像入力部112、第1の目標識別部113、特徴レンジ算出部114、第1の表示処理部115、特徴位置編集部116、第2の目標識別部117A、第2の表示処理部118、アノテーション処理部119および学習モデル更新部120の各機能が実現される。
【0072】
なお、アスペクト角算出部111の機能は、特徴レンジ算出部114が備えてもよく、レーダ映像入力部112の機能は、第1の目標識別部113が備えてもよい。この場合、類別装置100Aは、アスペクト角算出部111およびレーダ映像入力部112を備えていなくてもよい。
【0073】
第1の目標識別部113は、レーダ映像Eが入力されると、目標Taの識別結果情報を出力する第1の学習モデル15を用いて、目標Taを識別するものである。なお、第1の学習モデル15は、学習モデル更新部120によって更新される。
【0074】
第2の目標識別部117Aは、レーダ映像E、および特徴位置編集部116が算出した目標Taの特徴諸元CPが入力されると、目標Taの特徴諸元CPに対応する目標候補を出力する第2の学習モデル15Aを用いて、既知の特徴諸元に対応する目標候補から目標候補を選択するものである。なお、第2の学習モデル15Aは、学習モデル更新部120によって更新される。
【0075】
アノテーション処理部119は、第2の目標識別部117Aによる目標Taの識別結果を、レーダ映像E、および、特徴位置編集部116が算出した目標Taの特徴諸元CPに紐付けられたアノテーション情報Fを生成する。例えば、目標Taが船舶である場合に、特徴諸元CPは、船舶のLOA、船首とマストとの間の長さ、または、船首とコンテナとの間の長さ等である。
【0076】
学習モデル更新部120は、アノテーション情報F、レーダ映像E、および特徴位置編集部116が算出した目標Taの特徴諸元CPを用いて、第1の学習モデル15、または第2の学習モデル15Aの一方または両方を更新する。
例えば、第1の学習モデル15を更新する場合、アノテーション処理部119は、
図4Aに示した学習データベース14に対して、レーダ映像Eと、これに対応するアノテーション情報Fを追加する。そして、学習モデル更新部120は、追加された学習データを含む学習データを再学習することにより第1の学習モデル15を更新する。これにより、第1の学習モデル15を更新することで、類別装置100Aは、推論精度を高めた第1の学習モデル15を用いて、目標を識別することができる。
【0077】
また、第2の学習モデル15Aを更新する場合、アノテーション処理部119は、
図10Aに示した学習データベース14Aに対して、レーダ映像Eと、このレーダ映像Eに対応するアノテーション情報Fと、アノテーション情報Fに対応する特徴諸元Hとを追加する。そして、学習モデル更新部120は、追加された学習データを含む学習データを再学習することにより第2の学習モデル15Aを更新する。
これにより、第2の学習モデル15Aを更新することで、類別装置100Aは、推論精度を高めた第2の学習モデル15Aを用いて、目標を識別することができる。
【0078】
図13は、実施の形態2に係る類別方法を示すフローチャートであり、第2の学習モデル15Aを更新する場合について示している。
アスペクト角算出部111が、レーダ装置200から取得した目標Taの向きD1を示す情報に基づいて、アスペクト角θを算出する(ステップST1B-1)。例えば、アスペクト角算出部111は、上記式(1)に従ってアスペクト角θを算出する。
レーダ映像入力部112は、レーダ装置200からレーダ映像Eを入力する(ステップST1B-2)。なお、ステップST1B-1およびステップST1B-2の各処理は、順序は問わず、同時に行われてもよい。また、これらの処理は、実施の形態2に係る類別方法の前処理であり、実施の形態2に係る類別方法では、これらの処理が既に実行されているものとする。
【0079】
第1の目標識別部113が、レーダ映像Eから目標Taを識別する(ステップST2B)。続いて、特徴レンジ算出部114が、レーダ映像Eに含まれる目標Taのアスペクト角情報、第1の目標識別部113による目標Taの識別結果情報および目標候補ごとの既知の特徴諸元に基づいて、目標Taの特徴部分の範囲である特徴レンジIを算出する(ステップST3B)。第1の表示処理部115が、特徴レンジ算出部114が算出した特徴レンジIを用いて目標Taの特徴位置PAを決定し、決定した特徴位置PAをレーダ映像Eに重ねて表示するための第1の表示制御情報を生成する(ステップST4B)。
表示部102は、第1の表示制御情報に基づいて、目標Taの特徴位置PAとともに、レーダ映像Eを表示する。
【0080】
特徴位置編集部116が、第1の表示制御情報に基づいて表示部102に表示したレーダ映像Eにおける目標の特徴位置PAに対する編集操作を示す編集操作情報を取得すると、編集操作情報が示す編集操作が行われた目標の特徴位置PA1を用いて、目標Taの特徴諸元CPを算出する(ステップST5B)。
第2の目標識別部117Aが、目標候補ごとの既知の特徴諸元から特徴位置編集部116が算出した目標の特徴諸元CPに対応するものを特定し、特定した特徴諸元に対応する目標候補を選択する(ステップST6B)。さらに、第2の目標識別部117Aは、目標識別結果、レーダ映像Eおよび特徴諸元CPをアノテーション処理部119に出力する。
第2の表示処理部118が、第2の目標識別部117Aが選択した目標候補を表示するための第2の表示制御情報を生成する(ステップST7B)。
表示部102は、第2の表示制御情報に基づいて、再識別された目標候補とともにレーダ映像Eを表示する。
【0081】
アノテーション処理部119は、第2の目標識別部117Aから取得した目標識別結果、レーダ映像Eおよび特徴諸元CPからなる学習データを生成して、生成した学習データを学習データベース14Aに追加する(ステップST8B)。
学習モデル更新部120は、学習データベース14Aから、アノテーション処理部119により追加された学習データを含む学習データを再学習することで、第2の学習モデル15Aを更新する(ステップST9B)。この後、第2の目標識別部117Aは、更新された第2の学習モデル15Aを用いて、ステップST6Bの処理を実行する。
【0082】
ステップST4Bにおいて、オペレータが、特徴位置PAとレーダ映像Eにおける特徴位置PBとを比較する。オペレータは、特徴位置PAと特徴位置PBとの対応が妥当であると判断すれば、ステップST3Bで得られた識別結果が間違っていないと納得することができる。その一方で、特徴位置PAと特徴位置PBとがかけ離れていれば、オペレータは、ステップST3Bで得られた識別結果が間違っている可能性があると判断することができる。この場合、特徴位置PAを編集し、その編集した特徴位置PA1を用いて目標を再識別することにより、オペレータは、再識別結果に納得感を得ることができる。
なお、納得感だけでなく、オペレータによる入力情報で識別情報が増えることにより、実際に類別装置100Aの類別精度も向上する。
【0083】
以上のように、実施の形態2に係る類別装置100Aは、第2の目標識別部117Aによる目標の識別結果を、レーダ映像、および特徴位置編集部116が算出した目標の特徴諸元に紐付けられたアノテーション情報を生成するアノテーション処理部119と、アノテーション情報、レーダ映像、および特徴位置編集部116が算出した目標の特徴諸元を用いて、第1の学習モデルまたは第2の学習モデルの一方または両方を更新する学習モデル更新部120を備える。これにより、第1の学習モデル15または第2の学習モデル15Aの一方または両方を更新することで、類別装置100Aは、推論精度を高めた第1の学習モデル15または第2の学習モデル15Aの一方または両方を用いて目標を識別することができる。
【0084】
なお、各実施の形態の組み合わせまたは実施の形態のそれぞれの任意の構成要素の変形もしくは実施の形態のそれぞれにおいて任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本開示に係る類別装置は、例えば、船舶または航空機の類別に利用可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 類別システム、13 センサ、14,14A 学習データベース、15 第1の学習モデル、15A 第2の学習モデル、100,100A 類別装置、101 記憶部、102 表示部、103 操作部、111 アスペクト角算出部、112 レーダ映像入力部、113 第1の目標識別部、114 特徴レンジ算出部、115 第1の表示処理部、116 特徴位置編集部、117,117A 第2の目標識別部、118 第2の表示処理部、119 アノテーション処理部、120 学習モデル更新部、200 レーダ装置、201 送受信部、202 追尾処理部、1000 入力インタフェース、1001 出力インタフェース、1002 処理回路、1003 プロセッサ、1004 メモリ。
【要約】
類別装置(100)は、目標を識別する第1の目標識別部(113)と、目標の特徴位置を決定する特徴位置決定部(114)と、目標の特徴位置をレーダ映像に重ねて表示するための第1の表示制御情報を生成する第1の表示処理部(115)と、レーダ映像に重ねて表示した目標の特徴位置に対する編集操作が行われると、編集操作された特徴位置を用いて、目標の特徴諸元を算出する特徴位置編集部(116)と、目標候補ごとの既知の特徴諸元から、特徴位置編集部(116)が算出した目標の特徴諸元に対応するものを特定し、特定した特徴諸元に対応する目標候補を選択する第2の目標識別部(117)と、選択した目標候補を表示するための第2の表示制御情報を生成する第2の表示処理部(118)と、を備える。