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特許7657434メタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収のシステム、方法及び応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-28
(45)【発行日】2025-04-07
(54)【発明の名称】メタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収のシステム、方法及び応用
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/38 20060101AFI20250331BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20250331BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20250331BHJP
   B01J 23/72 20060101ALI20250331BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20250331BHJP
   B63B 25/12 20060101ALI20250331BHJP
【FI】
B63H21/38 B
C01B3/38 ZAB
C01B3/56 Z
B01J23/72 M
C01B32/50
B63B25/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023222573
(22)【出願日】2023-12-28
(65)【公開番号】P2025013119
(43)【公開日】2025-01-24
【審査請求日】2023-12-28
(31)【優先権主張番号】202310845541.3
(32)【優先日】2023-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】524003747
【氏名又は名称】浙江大学嘉▲興▼研究院
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ 成航
(72)【発明者】
【氏名】高 翔
(72)【発明者】
【氏名】周 ▲燦▼
(72)【発明者】
【氏名】周 ▲鎮▼▲港▼
(72)【発明者】
【氏名】林 ▲賽▼▲賽▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲霄▼
(72)【発明者】
【氏名】翁 ▲衛▼国
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ ▲衛▼▲紅▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 涌新
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 洋
(72)【発明者】
【氏名】▲兪▼ 李斌
(72)【発明者】
【氏名】李 文俊
(72)【発明者】
【氏名】周 志▲穎▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 悠
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-273802(JP,A)
【文献】中国実用新案第214057825(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第110775941(CN,A)
【文献】特開2019-99419(JP,A)
【文献】特開2008-247632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 21/38
C01B 3/38
C01B 3/32
C01B 3/34
C01B 3/56
B01J 23/72
C01B 32/50
B63B 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンパクト型改質反応装置と、コンパクト型膜分離装置と、高効率・低エネルギー消費の二酸化炭素圧縮貯留装置と、水素バッファタンクとを備える、船舶用燃焼前炭素回収システムであって、
コンパクト型改質反応装置は、メタノールと水を混合させた後で水蒸気改質反応して水素と二酸化炭素を生産することに用いられ、
コンパクト型膜分離装置は、生成した水素と二酸化炭素を分離することに用いられ、
高効率・低エネルギー消費の二酸化炭素圧縮貯留装置は、分離した二酸化炭素を圧縮及び貯留し、
水素バッファタンクは、分離した水素を貯蔵し、船舶エンジンシステムに輸送することに用いられ
前記コンパクト型改質反応装置は、順次連通されたメタノール水溶液貯蔵タンク、第1予熱器、蒸発器、過熱器、改質反応器及び第1凝縮器を備え、前記第1凝縮器は、第1予熱器、蒸発器、過熱器にもそれぞれ連通され、
前記コンパクト型膜分離装置は、順次連通された第1混合タンク、第1気液分離器、膜分離器、第1圧縮機、第2凝縮器、第2気液分離器及び加熱器を備え、前記加熱器は第1混合タンクに連通され、第2気液分離器は二酸化炭素圧縮貯留装置に連通され、
前記高効率・低エネルギー消費の二酸化炭素圧縮貯留装置は、順次連通された第2圧縮機、第1熱交換器、第3気液分離器、第3圧縮機、第2熱交換器、第4気液分離器及び第3凝縮器を備え、前記第3凝縮器は二酸化炭素貯蔵タンクに連通され、
前記水素バッファタンクの一端は膜分離器に連通され、他の一端は第1分流器に連通され、前記第1分流器はそれぞれガス焚きボイラ、エンジンに連通され、ガス焚きボイラ及びエンジンから発生した高温の排煙は第2混合タンクに入って混合し、第2混合タンクはそれぞれ第1予熱器、蒸発器、過熱器及び改質反応器にも連通される
ことを特徴とする、メタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収システム。
【請求項2】
記改質反応器の内部には、膜及び触媒ユニットを有し、膜は触媒を固定し、反応物質を均一に分散させることに用いられ、触媒ユニットは接触改質領域を含み、接触改質領域の外周が加熱領域であり、加熱領域は高温の排煙を受け取ることにより接触改質領域に必要な熱エネルギーを供給することを特徴とする、請求項に記載のメタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収システム。
【請求項3】
前記高効率・低エネルギー消費の二酸化炭素圧縮貯留装置は、第1熱交換器、第2熱交換器、吸収器、第3熱交換器、溶液ポンプ、リボイラー、発生器、吸収液回収器、第4熱交換器及びスロットル弁をさらに備え、前記第1熱交換器、第2熱交換器は海水スプレーによる冷却に用いられ、吸収器は冷凍サイクルパイプラインから冷媒を吸収することに用いられ、第3熱交換器は装置全体の温度を調整することに用いられ、溶液ポンプは液体を輸送することに用いられ、リボイラーは冷媒を加熱することに用いられ、発生器は必要な冷媒を発生することに用いられ、吸収液回収器は吸収液を収集して回収することに用いられ、第4熱交換器は装置の熱交換を制御することに用いられ、スロットル弁は流動する冷媒を調整及び制御することに用いられる
ことを特徴とする、請求項に記載のメタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収システム。
【請求項4】
メタノール水溶液貯蔵タンク内のメタノールと水の体積比は、6:4であることを特徴とする、請求項に記載のメタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収システム。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載のシステムを用い、以下の工程:
(1)メタノール水蒸気改質反応を利用した水素と二酸化炭素の生成:メタノールと水を混合し、温度180℃~280℃、圧力0.1MPa~3MPaの条件下で、触媒を介して水蒸気改質反応を行うことで水素と二酸化炭素を生産すること、
(2)膜分離技術による生成された水素と二酸化炭素の分離:選択性と透過性を備えた膜材料を通じて、水素と二酸化炭素を分離すること、
(3)分離した二酸化炭素を圧縮と貯留することによる炭素回収の実現:膜分離過程中に発生した純度98%以上の二酸化炭素を圧縮して液体状態の二酸化炭素に変換させ、その後、圧縮後の二酸化炭素を貯蔵タンク内に貯留し、将来二酸化炭素を封じ込めること又はその他の二酸化炭素の用途に使用されることのために備えること、及び
(4)分離した水素を船舶燃料システムに輸送し、燃料として使用:輸送管で分離した水素を船舶燃料システムに輸送し、水素をクリーンな燃料として船舶のエンジンシステムで使用し、船舶の低炭素及びゼロエミッション運航を達成すること
を含むことを特徴とする、メタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収方法。
【請求項6】
前記工程(1)における前記触媒は、セリウム及びニオブをドープした銅-亜鉛-アルミニウム系触媒であり、前記触媒は、質量分率30%~45%のCuO、25%~45%のZnO、10%~20%のAl、0.1%~3.5%のCeO及び0.1%~2.5%のNbを混合、乾燥、焙焼することにより調製され
前記工程(2)における前記膜材料は、MOF改質ガス分離膜であり、前記MOF改質ガス分離膜は次の工程を通じて調製され、
(a)活性化されたMOF粉末をアセトンに添加し、水浴超音波によりMOFをアセトン中に分散させてMOFインクを形成し、ここで、アセトンにおけるMOFの濃度は5g/L~30g/Lであり、
(b)ポリフッ化ビニリデンを水に加え、撹拌して濃度6wt%~10wt%の粘稠な膜液を形成し、
(c)膜液をMOFインクに加え、超音波処理を継続し、混合溶液中のアセトンを除去し、粘稠なキャスト液を得、
(d)キャスト液をガラス板上に注ぎ、200μm~300μmの膜を形成してから60℃~80℃のオーブンに入れて予熱し、水分が完全に蒸発した後に膜を取り外し、
(e)前記工程(d)の膜をテフロンプレート上のガラスリング中に入れ、事前に調製された3wt%ポリイミド溶液を加え、次にテフロンプレートを60~90℃のオーブンに入れ、ポリイミドを除去し、MOF改質ガス分離膜を得る
ことを特徴とする、請求項に記載のメタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収方法。
【請求項7】
海水をメタノール水蒸気改質水素製造反応中の水源になるよう、逆浸透設備を介して海水を淡水に変換することに用いられる外部造水システムを装備し、前記外部造水システムにおける各装置の動作温度はいずれも室温に保ち、圧力を1atmに保つことを特徴とする、請求項に記載のメタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収方法。
【請求項8】
請求項1に記載のメタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収システムの応用方法であって、以下の工程
(1)まず、プロセス全体を通じて所要の電力を供給できるようにバッテリーを事前充電すること、
(2)バッテリパックを制御して電源をオンにし、バッテリパックからメタノール改質水素製造モジュールに電力を供給して、メタノール改質水素製造プロセスを開始すること、
(3)メタノール水蒸気改質水素製造モジュールが設定温度に達した後、水素が速やかに放出され、水素バッファタンクに供給され、その後、内燃機関が起動され駆動システムに運動エネルギーを供給すること、
(4)メタノール水蒸気改質水素製造モジュールが正常に水素を送り出し始めた後、内燃機関の排煙余熱を利用して改質反応モジュールに熱を供給することで、バッテリーモジュールの出力を切断できること(このプロセス中、バッテリーモジュールはバックアップ電源とみなされ、随時待機する)、及び
(5)中央表示コンソールは、船舶のリアルタイムの状況に応じて、水素バッファタンクの水素充填及び放出の質量及び内燃機関の出力を自動的に調整し、内燃機関の輸出動力に余力がある場合、システムはバッテリーモジュールへの充電を開始すること
を含み、
上記プロセス全体では、インテリジェントな制御方法によりメタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収システムの多変数制御を行う
ことを特徴とする、メタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収システムの応用方法
【請求項9】
前記インテリジェントな制御方法の構築手順は、次のとおりであり、
S1:水素バッファタンク、コンパクト型改質反応装置、膜分離装置、船舶エンジンを含むシステムの中核装置にオンライン監視設備を設け、さらにシステムの中核装置の設計パラメータと航行ノウハウを組み合わせて、メタノール改質、改質生成物の高効率な膜分離と船舶動力発生プロセスの重要パラメータを含むデータミドルオフィスを構築し、
S2:コンパクト型改質反応装置、コンパクト型膜分離装置、船舶動力発生、高効率・低エネルギー消費の二酸化炭素圧縮貯留装置及び水素バッファタンク間の結合関係を研究し、前記システムの中核装置の低エネルギー消費・安定した動作に影響を及ぼす重要な要因を特定し、知識とデータ融合駆動型のコンパクト型船舶用炭素回収制御の重要パラメータモデルを構築し、
前記知識とデータ融合駆動型のコンパクト型船舶用炭素回収制御の重要パラメータモデルの重要パラメータには、炭素回収効率ηCO2、過熱器の動作温度T、メタノール水蒸気流量Vm、改質反応の運転温度Tm、改質反応器運転圧力P、膜内部のガス流速V、エンジン出力We、船舶の排出ガス温度T、膜分離後のH回収量Lが含まれ、式は次のように表され、
【数1】
S3:運転状態下の効率-エネルギー消費-マテリアル消費の重要指標をさらに研究し、メタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収システムのエネルギーフロー、マテリアルフローのコスト評価モデルを構築し、エネルギーフローのコストE、マテリアルフローのコストC評価モデルの式は次のように表され、
E=E+E+E+E+Eh1+E+E+E+Eh2+E
エネルギー消費:ブースターファンの消費電力E、移送ポンプの消費電力EP、第1予熱器の消費電力E、蒸発器の消費電力E、過熱器の消費電力Eh1、改質反応器の消費電力E、膜分離器の消費電力E、第1圧縮機の消費電力E、加熱器の消費電力Eh2、空気輸送ファンの消費電力Ea、
C=C+C+C+C+C+C
マテリアル消費:メタノールC、水C、触媒C、膜アセンブリC、冷媒C
S4:確立した膜分離と組み合わせたメタノール水蒸気改質のエネルギー消費-マテリアル消費総合コスト評価モデルを利用して、負荷/運転条件の変動下で効率-エネルギー消費-マテリアル消費解析を実施し、コストの最適なパラメータの組み合わせを探すことで、効率-エネルギー消費-マテリアル消費解析の負荷/運転条件の変動下のシステムの大域的最適化パラメータモデルを構築し、システムの大域的最適化パラメータを探すことにより、異なる運転条件下のコンパクト型改質反応装置、コンパクト型膜分離装置、船舶動力発生の全てのフローの動的な運転コストをリアルタイムかつ正確に評価し、各装置の安定性及び経済性の制約条件を包括的に考慮し、粒子群や蟻コロニーを含むインテリジェントな最適化アルゴリズムを通じて求解して、エネルギー消費-マテリアル消費総合コストの最適なパラメータの組み合わせを得、
メタノール水蒸気改質と生成物膜分離との連結システムのコストパフォーマンス最適化問題:
minE=E+E+E+E+Eh1+E+E+E+Eh2+E
minC=C+C+C+C+C+C
【数2】
式中、炭素回収効率n≧97%、改質反応転化率n≧95%、膜分離効率n≧90%、改質反応器運転圧力P0.1MPa~3MPa、触媒運転温度T180℃~280℃が制約となる。
S5:エネルギー消費-マテリアル消費の総合コストの最適なパラメータの組み合わせを得た後、最適化目的関数を構築し、多目的最適化アルゴリズムで最適化問題を求解することで、戦略策定をさらに実現し、該戦略はエネルギー消費-マテリアル消費-炭素排出という多目的制約の下で、改質反応装置、コンパクト型膜分離装置及び船舶動力発生などの複数の装置間で協調最適化を実施し、負荷/運転条件の変動下でのシステムの中核装置の重要パラメータの柔軟な調整に関するリアルタイムガイダンスを提供し、マテリアル消費・エネルギー消費をさらに削減する
ことを特徴とする、請求項に記載のメタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収システムの応用方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶からの二酸化炭素排出量削減の技術分野に属し、特に、メタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収のシステム、方法及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化問題というますます深刻化する背景において、船舶から排出される二酸化炭素は環境保全分野で重要な問題となっている。したがって、新規の船舶燃料処理及び炭素回収技術の開発が特に重要である。理想的な代替燃料としての水素は、クリーンエネルギーの利用及び二酸化炭素排出問題に新たな視点をもたらす。しかし水素の貯蔵と輸送の課題は依然として残っており、メタノールを水素燃料キャリアとするのはメリットがあることになっている。このことを基にメタノールは、水蒸気改質反応により水素を生成することができるが、同時に生成される二酸化炭素を効果的に分離及び回収する必要がある。膜分離技術は、高効率と低エネルギー消費により、理想的なガス分離方法と考えられている。現在の船舶燃料処理技術は、主に化石燃料の最適化に注目し、炭素回収と燃料処理の連結問題を考慮することは滅多にない。したがってメタノール水蒸気改質と高効率な膜分離技術を連結した船舶用燃焼前炭素回収システム及び方法の開発は、船舶燃料の処理効率の向上、炭素排出量削減にとって特に重要であり、船舶産業のグリーン、低炭素、持続可能な発展の推進に寄与するが、具体的にどのように操作するかについては、多くの現実的な技術的難題を克服する必要があった。
【0003】
特許文献1では、船舶用メタノール燃料供給システムが開示されている。該システムは、燃料ポンプでメタノール燃料タンク内のメタノール燃料をメタノール反応器に送り、次に処理されたメタノール燃料が燃焼条件を満たした後、船舶のエンジンに輸送することで船舶に動力を供給する。該システムの構造は、柔軟で、実際のニーズに応じて調整され、異なるタイプの船舶のニーズを満たすことができる。しかしながら該技術には、メタノールの発熱量が低く、着火しにくく、燃焼過程で依然として炭素を排出するといういくつかの問題がある。
【0004】
特許文献2では、水素燃料動力船のエネルギー総合利用システムが開示されている。該システムは、圧縮水素をエネルギー源として利用し、水素燃料電池と発電機で発電して船舶を推進する。該システムは、圧縮水素の圧力エネルギーと熱交換プロセスの冷エネルギーを最大限に利用してエネルギーの効率的な利用を実現することで、明らかに普及価値がある。しかしこの技術には、水素燃料の貯蔵と輸送の難易度が大きくコストが高く、貯蔵・輸送途中に漏洩リスクがあり、安全上の懸念を引き起こすという問題もある。
【0005】
なお、従来の船舶用燃焼後炭素回収技術では、通常回収装置、フィルター、貯留施設などを含む完全な設備の使用が必要である。これらの設備は、一般的にサイズが大きいため、船内でかなりのスペースを取る。限られた船舶スペース内では、これらの設備を船舶の他の主要施設(推進システム、船舶管理システムなど)と合理的にレイアウトする必要があり、これは間違いなく設計と組み立ての難易度を高めることになり、船の貨物積載量と旅客輸送量にも影響を与えることであろう。
【0006】
これらの課題を解決し、高額な水素燃料の貯蔵と輸送コストを削減し、取られるスペースを減らすため、コンパクト、安全、省エネかつ低コストの貯蔵と輸送技術を開発することが一番の近道である。しかし、これには多くの技術的な難題を克服し、多数の実験を積み重ね、探求する必要がある。
【0007】
したがって、従来技術の不足に着目し、効率的な炭素回収を実現するため、我々は構造がコンパクトでコスト効率が高く、安定かつ高効率の低炭素代替燃料の応用プロセスを研究開発することが急務となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】中国特許出願公開第115306608号明細書
【文献】中国特許出願公開第113914940号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術の欠点と不足を克服するため、本発明は、メタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収のシステム、方法及び応用を提供する。本発明は、メタノール水蒸気改質技術と膜分離技術を組み合わせたもので、船舶燃料としてメタノールから効率的に水素を発生し、発生した二酸化炭素を回収することで船舶の温室効果ガス排出量を削減することができる。本発明は、メタノール水蒸気改質を通じて水素燃料を製造し、危険な高圧水素の使用を避け、安全なメタノール水溶液を使用することで、従来技術における高圧の水素貯蔵の安全性に対する懸念を解決することができる。同時に改質生成物から分離した二酸化炭素を圧縮・液化貯蔵することで炭素回収を実現する。本発明は、排出された排煙の余熱を利用してメタノール水蒸気改質及び燃料予熱のため熱を供給し、エネルギーの総合利用を実現する。本発明の取る面積は小さく、限られた空間における船舶の効率的な炭素回収に適することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明が採用する技術的手段として、
メタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収システムであって、前記船舶用燃焼前炭素回収システムは、
メタノールと水を混合させた後で改質反応して水素と二酸化炭素を生成することに用いられ、限られた船内スペースを背景にコンパクト設計で取り付けが容易で、船舶排出ガスの余熱利用プロセスを装備し、改質反応のエネルギー利用効率及び余熱利用能力を向上するコンパクト型改質反応装置と、
改質により生成する水素と二酸化炭素を効率的かつ迅速に分離することに用いられ、小型で効率的かつ迅速な分離性能を有し、最先端の分離膜技術を採用することにより、低コストで高効率なH/COガス分離を実現できるコンパクト型膜分離装置と、
分離した二酸化炭素を圧縮と貯留する、高効率・低エネルギー消費の二酸化炭素圧縮貯留装置と、
分離した水素を貯蔵し、船舶燃料システムに輸送し、コンパクト設計で効率が高く、効果的に水素を貯蔵と輸送することができる水素バッファタンクとを備える。
【0011】
好ましくは、前記コンパクト型改質反応装置は、順次連通されたメタノール水溶液貯蔵タンク、第1予熱器、蒸発器、過熱器、改質反応器及び第1凝縮器を備え、前記第1凝縮器は、第1予熱器、蒸発器、過熱器にもそれぞれ連通され、改質生成物の余熱は、余熱のカスケード利用を実現するように、第1予熱器、蒸発器、過熱器に供給されることができ、
前記コンパクト型膜分離装置は、順次連通された第1混合タンク、第1気液分離器、膜分離器、第1圧縮機、第2凝縮器、第2気液分離器及び加熱器を備え、前記加熱器は第1混合タンクに連通され、第2気液分離器は二酸化炭素圧縮貯留装置に連通され、
前記高効率・低エネルギー消費の二酸化炭素圧縮貯留装置は、順次連通された第2圧縮機、第1熱交換器、第3気液分離器、第3圧縮機、第2熱交換器、第4気液分離器及び第3凝縮器を備え、前記第3凝縮器は二酸化炭素貯蔵タンクに連通され、
前記水素バッファタンクの一端は、膜分離器に連通され、他端は第1分流器に連通され、前記第1分流器はそれぞれガス焚きボイラ、内燃機関に連通され、ガス焚きボイラ及び内燃機関から発生した高温の排煙は第2混合タンクに入って混合し、熱を供給して二酸化炭素圧縮貯留装置の運転を駆動し、第2混合タンクはそれぞれ第1予熱器、蒸発器、過熱器及び改質反応器にも連通され、排煙余熱は、余熱のカスケード利用を実現するように、第1予熱器、蒸発器、過熱器及び改質反応器に供給されることができる。
【0012】
本発明は、システムの熱効率を向上させ、メタノール水蒸気改質反応で発生する熱を回収してメタノール水溶液の加熱のため余熱を供給することで、システム全体のエネルギー消費量を削減することができる。
【0013】
好ましくは、前記コンパクト型改質反応器の内部には、膜及び触媒ユニットを有し、膜は触媒を固定し、反応物質を均一に分散させることに用いられ、触媒ユニットは接触改質領域を含み、接触改質領域の外周が加熱領域であり、加熱領域は高温の排煙を受け取ることにより接触改質領域に必要な熱エネルギーを供給する。流路設計により急速な熱伝達を強化し、熱流体流速の正確な設計と制御を通じて触媒が最適な反応温度領域に確実に存在することを確保する。
【0014】
好ましくは、前記高効率・低エネルギー消費の二酸化炭素圧縮貯留装置は、吸収器、第3熱交換器、溶液ポンプ、リボイラー、発生器、吸収液回収器、第4熱交換器及びスロットル弁をさらに備え、前記吸収器は、冷凍サイクルパイプラインから冷媒を吸収することに用いられ、第3熱交換器は装置全体の温度を調整することに用いられ、溶液ポンプは液体を輸送することに用いられ、リボイラーは冷媒を加熱することに用いられ、発生器は必要な冷媒を発生することに用いられ、吸収液回収器は吸収液を収集して回収することに用いられ、第4熱交換器は装置の熱交換を制御することに用いられ、スロットル弁は流動する冷媒を調整及び制御することに用いられる。
【0015】
好ましくは、メタノール水溶液貯蔵タンク内のメタノールと水の体積比は、6:4である。メタノール水溶液貯蔵タンク内のメタノール水溶液は、常温常圧下において液体状態で存在するため、高圧漏洩リスクを大幅に軽減し、またメタノールと水の体積比は6/4であるため、メタノール水の質量水素密度は12wt%に達することができ、該貯蔵システムは効率的に水素燃料を貯蔵し供給することができる。
【0016】
本発明は、メタノール水蒸気改質及び膜分離技術に基づく船舶用燃焼前炭素回収方法も提供し、以下工程を含む。
(1)メタノール水蒸気改質反応を利用した水素と二酸化炭素の生成:メタノールと水を混合し、温度180℃~280℃、圧力0.1MPa~3MPaの条件下で、触媒を介して水蒸気改質反応を行うことで水素と二酸化炭素を生産すること、
(2)膜分離技術による生成された水素と二酸化炭素の分離:選択性と透過性を備えた膜材料を通じて、水素と二酸化炭素を分離すること、
(3)分離した二酸化炭素を圧縮と貯留することによる炭素回収の実現:膜分離過程中に発生した純度98%以上の二酸化炭素を圧縮して液体状態の二酸化炭素に変換させ、その後、圧縮後の二酸化炭素を高圧貯蔵タンク内に貯留し、将来二酸化炭素を封じ込めること又はその他の二酸化炭素の用途に使用されることのために備えること、及び
(4)分離した水素を船舶燃料システムに輸送し、燃料として使用:輸送管で分離した水素を船舶燃料システムに輸送し、水素をクリーンな燃料として船舶のエンジンシステムで使用し、船舶の低炭素及びゼロエミッション運航を達成すること。
【0017】
好ましくは、工程(1)における前記触媒は、セリウム及びニオブをドープした銅-亜鉛-アルミニウム系触媒であり、前記触媒は、質量分率30%~45%のCuO、25%~45%のZnO、10%~20%のAl、0.1%~3.5%のCeO及び0.1%~2.5%のNbを混合、乾燥、焙焼することにより調製され、共沈法でセリウムとニオブをドープし、触媒活性と安定性を向上させ、
【0018】
工程(2)における前記膜材料は、MOF改質ガス分離膜であり、前記MOF改質ガス分離膜は次の工程を通じて調製され、
(a)活性化されたMOF粉末をアセトンに添加し、水浴超音波によりMOFをアセトン中に分散させてMOFインクを形成し、ここで、アセトンにおけるMOFの濃度は5g/L~30g/Lであり、
(b)ポリフッ化ビニリデンを水に加え、撹拌して濃度6wt%~10wt%の粘稠な膜液を形成し、
(c)膜液をMOFインクに加え、超音波処理を継続し、混合溶液中のアセトンを揮発の方式で除去し、粘稠なキャスト液を得、
(d)キャスト液をガラス板上に注ぎ、200μm~300μmの膜を形成してから60℃~80℃のオーブンに入れて予熱し、水分が完全に蒸発した後に膜を取り外し、
(e)工程(d)の膜をテフロン(登録商標)プレート上のガラスリング中に入れ、事前に調製された3wt%ポリイミド溶液を加え、次にテフロンプレートを60~90℃のオーブンに入れ、ポリイミドを除去し、MOF改質ガス分離膜(高MOF含有量のガス分離膜)を得る。
【0019】
好ましくは、改質反応温度は、180℃~280℃である。
【0020】
好ましくは、海水をメタノール水蒸気改質水素製造反応中の水源になるよう、逆浸透設備を介して海水を淡水に変換するための外部造水システムを装備し、該外部造水システムにおける各装置の動作温度はいずれも室温に保ち、圧力を1atmに保つ。
【0021】
本発明は、メタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収システムの応用も提供し、すなわち、コンパクト型船舶用燃焼前炭素回収システムの運転は、以下工程:
(1)まず、プロセス全体を通じて所要の電力を供給できるようにバッテリーを事前充電すること、
(2)バッテリパックを制御して電源をオンにし、バッテリパックからメタノール改質水素製造モジュールに電力を供給して、メタノール改質水素製造プロセスを開始すること、
(3)メタノール水蒸気改質水素製造モジュールが設定温度に達した後、水素が速やかに放出されて水素バッファタンクに供給され、水素バッファタンクに圧力検出装置、温度検出装置、密度検出装置を取り付けたことで、運転の安全性及び効率性を確保し、その後、内燃機関が起動され駆動システムに運動エネルギーを供給すること、
(4)メタノール水蒸気改質水素製造モジュールが正常に水素を送り出し始めた後、内燃機関の排煙余熱を利用して改質反応モジュールに熱を供給することで、バッテリーモジュールの出力を切断できること(このプロセス中、バッテリーモジュールはバックアップ電源とみなされ、随時待機する)、及び
(5)中央表示コンソールは、船舶のリアルタイムの状況に応じて、水素バッファタンクの水素充填及び放出の質量及び内燃機関の出力を自動的に調整し、内燃機関の輸出動力に余力がある場合、システムはバッテリーモジュールへの充電を開始すること、
を含み、
上記プロセスでは、インテリジェントな制御方法によりメタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収システムの多変数制御(multivariate control、multiparameter control)を行う。
【0022】
船舶の始動時や複雑な航行環境中に船舶の運航負荷と燃料供給を随時調整する必要があるため、コンパクト型船舶用炭素回収システムの安定性、調整可能性及び経済性に対する要求がさらに高まることについて、インテリジェントな制御方法の構築手順は、次のとおりであり、
S1:水素バッファタンク、メタノール改質装置、膜分離装置、船舶エンジンなどのシステムの中核装置にオンライン監視設備を設け、さらにシステムの中核装置の設計パラメータと航行ノウハウを組み合わせて、メタノール改質、改質生成物の高効率な膜分離と船舶動力発生プロセスの重要パラメータを含むデータミドルオフィス(Data Middle Office)を構築し、データの収集、ガバナンス、分析・マイニング等を実現し、システムにインテリジェントに制御できる力を与え、
S2:コンパクト型改質反応装置、コンパクト型膜分離装置、船舶動力発生、高効率・低エネルギー消費の二酸化炭素圧縮貯留装置及び水素バッファタンク等の間の結合関係を研究し、前記装置の低エネルギー消費・安定した動作に影響を及ぼす重要な要因を特定し、知識とデータ融合駆動型のコンパクト型船舶用炭素回収制御の重要パラメータモデルを構築し、
【0023】
前記知識とデータ融合駆動型のコンパクト型船舶用炭素回収制御の重要パラメータモデルの前記パラメータには、炭素回収効率ηCO2、過熱器の動作温度T、メタノール水蒸気流量V、改質反応の運転温度T、改質反応器運転圧力P、膜内部のガス流速V、エンジン出力W、船舶の排出ガス温度T、膜分離後のH回収量Lが含まれ、式は次のように表される。
【0024】
【数1】
【0025】
S3:運転状態下の効率-エネルギー消費-マテリアル消費の重要指標をさらに研究し、メタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収システムのエネルギーフロー、マテリアルフローのコスト評価モデルを構築し、エネルギーフローのコストE、マテリアルフローのコストC評価モデルの式は次のように表される。
【0026】
E=E+E+E+E+Eh1+E+E+E+Eh2+E
【0027】
エネルギー消費:ブースターファンの消費電力E、移送ポンプの消費電力Ep、第1予熱器の消費電力E、蒸発器の消費電力Ev、過熱器の消費電力Eh1、改質反応器の消費電力E、膜分離器の消費電力E、第1圧縮機の消費電力E、加熱器の消費電力Eh2、空気輸送ファンの消費電力Ea
【0028】
C=C+C+C+C+C+C
【0029】
マテリアル消費:メタノールC、水C、触媒C、膜アセンブリC、冷媒C
【0030】
S4:確立した膜分離と組み合わせたメタノール水蒸気改質のエネルギー消費-マテリアル消費総合コスト評価モデルを利用して、負荷/運転条件の変動下で効率-エネルギー消費-マテリアル消費解析を実施し、コストの最適なパラメータの組み合わせを探すことで、効率-エネルギー消費-マテリアル消費解析の負荷/運転条件の変動下のシステムの大域的最適化パラメータモデルを構築し、システムの大域的最適化パラメータを探すことにより、異なる運転条件下のコンパクト型改質反応装置、コンパクト型膜分離装置、船舶動力発生の全てのフローの動的な運転コストをリアルタイムかつ正確に評価し、各装置の安定性及び経済性の制約条件を包括的に考慮し、粒子群や蟻コロニーを含むインテリジェントな最適化アルゴリズムを通じて求解して、エネルギー消費-マテリアル消費総合コストの最適なパラメータの組み合わせを得、
【0031】
各装置のエネルギー消費とマテリアル消費をコストで定量化して、複雑な物理的問題を経済的問題に変換し、具体的な操作において各装置のエネルギー消費(例えばブースターファンの消費電力、移送ポンプの消費電力等)及びマテリアル消費(例えばメタノール、水、触媒など)を変数とし、全体のコストを最適化目標とし、エネルギー消費とマテリアル消費に基づく全体のコスト関数を構築し、その後、粒子群、蟻コロニーなどのインテリジェントな最適化アルゴリズムで関数を求解し、全体のコストを最小限に抑えるパラメータの組み合わせを見つけ出すことで効率-エネルギー消費-マテリアル消費解析の負荷/運転条件の変動下でのシステムの大域的最適化パラメータモデルを構築し、
【0032】
メタノール水蒸気改質と生成物膜分離との連結システムのコストパフォーマンス最適化問題:
minE=E+E+E+E+Eh1+E+E+E+Eh2+E
minC=C+C+C+C+C+C
【数2】
式中、炭素回収効率n≧97%、改質反応転化率n≧95%、膜分離効率n≧90%、改質反応器運転圧力P0.1MPa~3MPa、触媒運転温度T180℃~280℃が制約となる。
【0033】
S5:エネルギー消費-マテリアル消費の総合コストの最適なパラメータの組み合わせを得た後、最適化目的関数を構築し、多目的最適化アルゴリズムで最適化問題を求解することで、戦略策定をさらに実現し、該戦略はエネルギー消費-マテリアル消費-炭素排出という多目的制約の下で、改質反応装置、コンパクト型膜分離装置及び船舶動力発生などの複数の装置間で協調最適化を実施し、負荷/運転条件の変動下でのシステムの中核装置の重要パラメータの柔軟な調整に関するリアルタイムガイダンスを提供し、マテリアル消費・エネルギー消費をさらに削減し、
【0034】
上記最適化パラメータモデルを基に、エネルギー消費-マテリアル消費-炭素排出という多目的約束の下で改質反応装置、コンパクト型膜分離装置、船舶動力発生という複数の装置間の協調最適化戦略を構築し、この戦略において、エネルギー消費、マテリアル消費及び炭素排出を最適化目標として、多目的最適化モデルを構築し、このモデルは、装置の動作要件及び環境制約条件を満たすことを前提として、この3つの目標の総合的なパフォーマンスを最適化させるパラメータの組み合わせを見つけ出することを要求し、最適なパラメータの組み合わせを見つけ出した後、インテリジェントな最適化アルゴリズムで求解し、実際の運転条件と組み合わせて、負荷変動下でのシステムの中核装置の重要パラメータの柔軟な調整に関するリアルタイムのガイダンスを提供し、負荷/運転条件の変動下でのシステムの中核装置の重要パラメータの柔軟な調整に関するリアルタイムガイダンスを提供し、マテリアル消費とエネルギー消費をさらに削減する。
【0035】
本発明は、メタノール水溶液を原料として、メタノール改質器において改質反応を行って水素を生成し、その後水素内燃機関で水素を動力に変換することで、水素エネルギーの直接利用を実現する。この革新的なメタノール水素製造システムにより、船舶は水素を充填することなく水素エネルギーを直接利用できるようにし、従来の水素燃料電池の発展で直面する水素充填の問題を効果的に解決できる。なお、本発明は、船舶が水素をエネルギーとして駆動されることを可能にし、船舶の炭素排出が環境保全基準を満たさない状況を効果的に避ける。本発明は、一連の最適化手段を通じて、温室効果ガスの排出量の削減、化石燃料への依存の低減、二酸化炭素の回収、船舶のエネルギー利用効率及び航続力の向上などの多方面において顕著なメリットを示す。これは、船舶産業のグリーン、低炭素、持続可能な発展の推進に寄与するだけでなく、気候変動に対する世界的な対応のための実用的な技術的手段も提供する。
【発明の効果】
【0036】
従来技術と比較して、本発明は次の通りの有利な効果を有する。
【0037】
(1)本発明は、コンパクト型改質反応装置、コンパクト型膜分離装置、高効率・低エネルギー消費の二酸化炭素圧縮貯留装置及び水素バッファタンクを用いて、メタノールと水を混合して水蒸気改質反応を行って水素燃料を生産し、高圧水素燃料の直接搭載に比べると、水素を貯蔵するための高圧大容量水素貯蔵タンクが不要となり、船舶の安全性が明らかに向上し、安全なメタノール水を搭載することで同じ質量の場合においてより多くの水素を運ぶことができるため、本発明は長距離航行を行う大型船舶に特に適する。本発明のシステムは、後処理施設のわずか1/4しか占有せず、限られたスペースにおける船舶の効率的な炭素回収に適応でき、マイクロチャネル高効率熱交換と多機能触媒とが連結した一体配置を用いて反応器の超小型化を実現でき、同時に改質生成物分離膜は、多段・マルチチャネル配置形式を用いて膜分離装置のコンパクト化設計を実現する。さらに超小型メタノール水蒸気改質反応器とコンパクト型膜分離装置はフローのコンパクト型連結一体化設計を用いて限られたスペースで船舶動力燃料の簡便な調製を実現し、同時に該システムが用いる燃焼前膜分離炭素回収の処理ガス量は、従来の燃焼後排出ガス炭素回収の処理ガス量の5%のみであり、さらにシステムに取られるスペースを減らし、該システムを設置するための投資コストは従来の燃焼後炭素回収システムの約1/4となる。
【0038】
(2)本発明は、燃焼前に炭素を発生源から回収するという考え方に基づき、膜分離と組み合わせたメタノール水蒸気改質方法を採用し、マイクロチャネル高効率熱交換と多機能触媒を備えた改質反応器を使用することにより、メタノール水蒸気の高効率・低エネルギー消費の変換と排出ガス余熱の効率的な利用を実現し、改質生成ガスの組成はシンプル(COとHを主)であり、MOF改質ガス分離膜アセンブルを使用することで水素燃料の効率的な調製及びCOの低エネルギー消費・効率的な回収を実現でき、さらに、改質生成物は効率的に分離され、低コストで炭素を回収し、炭素回収効率は98%に達する。従来の後処理脱炭素システムと比較して、45%以上の向上が可能であると同時に、改質生成物からは窒素酸化物、硫黄酸化物、粒子状物質などの船舶排出ガス汚染物質が発生せず、船舶の脱硫、脱硝、除塵などの排出ガス浄化システムを設置する必要がなくなり、投資コストと船舶の機関室レイアウトスペースがさらに削減される。
【0039】
(3)本発明は、船舶の動力源としてメタノール水蒸気改質を用いて水素燃料を製造し、メタノールを直接燃焼させる場合に比べて発熱量が12%高く、エンジン排出ガスの余熱の75%を回収してメタノール水蒸気改質装置に利用し、エネルギーの総合利用を実現することで、推進効率を効果的に向上させ、エネルギー消費を節約し、船舶の運航コストを削減できる。エネルギー消費を節約するため、本発明はさらに、マイクロチャネル高効率熱交換と多機能低温触媒(従来の触媒運転温度と比較して、20℃以上低下する)を備えた改質反応器を用い、外部熱源の入力を減らし、改質エネルギー消費を削減し、さらに外部熱供給を必要としないコンパクト型膜分離装置を組み合わせて低エネルギー消費の炭素回収を実現できる。
【0040】
(4)船舶の始動時や複雑な航行環境中に船舶の運航負荷と燃料供給を随時調整する必要があるため、コンパクト型船舶用炭素回収システムの安定性、調整可能性及び経済性に対する要求がさらに高まることについて、本発明は、中核装置の先進制御、重要パラメータの事前の正確な予測、航行の経験と知識を深く融合し、コンパクト型改質反応装置、コンパクト型膜分離装置、高効率・低エネルギー消費の二酸化炭素圧縮貯留装置及び水素バッファタンク間の結合及び炭素排出と経済的制約を包括的に考慮し、知識とデータ融合駆動型のコンパクト型船舶用炭素回収システムの重要パラメータの事前予測及びインテリジェント制御を介して、マテリアル消費やエネルギー消費を削減しながら負荷/運転条件の変動下でのシステムの調整可能性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の生成物COの高効率な膜分離技術と組み合わせたメタノール水蒸気改質のコンパクト型船舶用燃焼前炭素回収システムのプロセスルートの概略図である。
図2】本発明のコンパクト型改質反応器の動作フローの概略図である。
図3】本発明のコンパクト型ガス膜分離の動作原理の概略図である。
図4】本発明の高効率・低エネルギー消費のCO圧縮液化フローの概略図である。
図5】異なるプロセスの炭素排出量削減効果の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、実施例を通じて本発明の技術的手段をさらに詳細に説明するが、これらの実施例は本発明を説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。本出願中の実施例に基づいて、当業者は創造性の活動をしない前提で得られた全ての他の実施例は、いずれも本出願の保護範囲に属する。
【実施例1】
【0043】
図1を参照すると、コンパクト型改質反応装置と、コンパクト型膜分離装置と、高効率・低エネルギー消費の二酸化炭素圧縮貯留装置と、水素バッファタンクとを備えたメタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収システであって、
コンパクト型改質反応装置は、メタノールと水を混合させた後で水蒸気改質反応して水素と二酸化炭素を生成することに用いられ、
コンパクト型膜分離装置は、生成した水素と二酸化炭素を分離し、
高効率・低エネルギー消費の二酸化炭素圧縮貯留装置は、分離した二酸化炭素を圧縮及び貯留し、
水素バッファタンクは、分離した水素を貯蔵し、船舶燃料システムに輸送することに用いられる。
【0044】
前記コンパクト型改質反応装置は、順次連通されたメタノール水溶液貯蔵タンク1、移送ポンプ2、第1予熱器3、蒸発器4、過熱器5、改質反応器6及び第1凝縮器7を備え、前記第1凝縮器7は第1予熱器3、蒸発器4、過熱器5にもそれぞれ連通し、
前記コンパクト型膜分離装置は、順次連通された第1混合タンク8、第1気液分離器9、膜分離器10、第1圧縮機13、第2凝縮器14、第2気液分離器15及び加熱器16を備え、前記加熱器16は第1混合タンク8に連通され、第2気液分離器15は二酸化炭素圧縮貯留装置に連通され、
前記コンパクト型膜分離器10は、第1分流器12にも連通され、前記コンパクト型膜分離器10と第1分流器12との間に水素バッファタンク11が設けられ、運転の安全性及び効率を確保するため、水素バッファタンク内に圧力検出装置、温度検出装置及び密度検出装置が取り付けられ、前記第1分流器12は、ガス焚きボイラ17、内燃機関18にそれぞれ連通され、空気が第2分流器19を経由してガス焚きボイラ17及び内燃機関18に入り、ガス焚きボイラ17と内燃機関18から発生した高温の排煙は第2混合タンク20に入って混合し、熱を供給して二酸化炭素圧縮貯留装置の運転を駆動し、排煙余熱21は、第1予熱器3、蒸発器4、過熱器5及び改質反応器6に供給され、改質生成物の余熱22は第1予熱器3、蒸発器4、過熱器5に供給されることで、余熱のカスケード利用を実現する。
【0045】
メタノール水溶液貯蔵タンク1内のメタノール水溶液は、移送ポンプ2を介して第1予熱器3に送られ、ここで予備加熱され、加熱後の混合物が蒸発器4に入って蒸発処理され、その後過熱器5を通過して過熱され、過熱後のガスは、改質反応器6に入り、ここで改質反応が起こり、改質反応で生成された生成物は第1凝縮器7に入り凝縮処理され、次いで第1混合タンク8に入る。第1混合タンク8内の混合物は、第1気液分離器9に送り込まれ、ここで気液分離が行われ、分離後のガスは、膜分離器10に入り、さらに分離され、膜分離器10は、COとHを分離する。COは、第1圧縮機13に入り圧縮されてから第2凝縮器14に入り凝縮される。凝縮後のガスは、第2気液分離器15に送り込まれ、ここでさらに分離される。メタノールを豊富に含む液体は、加熱器16に送り込んで加熱された後第1混合タンク8に入り、第2気液分離器15で分離されたガスCOは、二酸化炭素圧縮貯留装置に入る。膜分離生成物内のHは、水素バッファタンク11に貯留され、水素バッファタンク11内のHは第1分流器12を通過して、一部が水素内燃機関18の燃料として使用され、他の一部がガス焚きボイラ17に入り燃焼される。空気は、空気分流器19を介して分流され、一部が水素内燃機関18に入り、他の一部がガス焚きボイラ17に入り、内燃機関とガス焚きボイラから発生した高温の排煙は第2混合タンク20に入って混合し、熱を供給して二酸化炭素圧縮貯留装置の運転を駆動する。排煙余熱21は、第1予熱器3、蒸発器4、過熱器5及び改質反応器6に供給され、改質生成物の余熱22は第1予熱器3、蒸発器4、過熱器5に供給されることで、余熱のカスケード利用を実現する。
【0046】
本発明は、燃料としてメタノールを効率よく利用して水素を製造し、発生した二酸化炭素を回収して船舶からの温室効果ガス排出量を削減するとともに、熱カスケード利用の原理を通じて高温の排煙及び改質生成物余熱の回収利用を実現することができる。
【0047】
本発明は、システムの熱効率を向上させ、メタノール水蒸気改質反応で発生する熱を回収してメタノール水溶液の加熱のため余熱を供給することで、システム全体のエネルギー消費量を削減することができる。
【0048】
図2を参照すると、前記コンパクト型改質反応器の内部には、膜2-5及び触媒ユニット2-6を有し、膜2-5は触媒を固定し、反応物質を均一に分散させることに用いられ、触媒ユニット2-6は接触改質領域2-7を含み、接触改質領域2-7の外周が加熱領域2-8であり、加熱領域2-8は高温の排煙を受け取ることにより接触改質領域2-7に必要な熱エネルギーを供給する。
【0049】
図2は、コンパクト型改質反応器の動作フロー及び設計を示し、該反応器は先端部に原料を投入するための入口パイプを取り付け、後端部に生成物を払い出すための出口パイプを設けた筒状筐体を備える。同時に筐体の内部に熱供給入口パイプ及び熱供給出口パイプに連通された通路が設けられることで、熱の入力と出力を実現する。該反応器において、初期反応物としてメタノール(CHOH)と水(HO)が原料入口2-1から反応器内に導入される。燃焼で発生した高温の排煙は、熱源とし熱源入口2-9から燃焼室に注入される。改質反応物は、反応器蒸発室2-3内で気体状態に蒸発され、その後供給システム2-4を通って反応器内部に均一に輸送される。反応器の内部において、膜2-5と触媒ユニット2-6という2つの重要な部分が関与しており、この2つの部分は共同で改質反応プロセスを完了する。膜2-5の主な役割は、触媒を固定し、反応物を均一に分散させ、反応物がより効果的に触媒ユニット2-6と接触できるようにすることである。触媒ユニット2-6の内部は、接触改質領域2-7を含み、ここでメタノールと水が触媒の作用下で改質反応する。接触改質領域2-7の外周は、加熱領域2-8である。加熱領域は、高温の排煙を受け取ることにより接触改質領域2-7に必要な熱エネルギーを供給する。低温の排煙は、低温排煙出口2-2を通って反応器から排出される。改質反応完了後、改質生成物CO及びHは後の利用又は処理のため、改質生成物出口2-10を通って反応器から排出される。
【0050】
図3を参照すると、図3はコンパクト型ガス膜分離器の動作原理及びプロセスを示す。ガス膜分離プロセスが開始される時、CO及びHの混合ガスがガス膜分離器に導入される。該分離器は、異なるガスを異なる速度で通過させるように設計された特別な膜技術を用いることで、ガス分離を実現する。混合ガスが膜を通過する時、Hの透過率が高く、COの透過率は低い。したがって、Hは主に膜を通過して流出して、H分離ガスを形成し、COは膜の一側に濃縮され、CO濃縮ガスを形成する。このようにガス膜分離器はCOとHの混合ガスを分離して、より高純度(純度98%以上)のHガスと濃縮されたCOガスを得る。
【0051】
図2図3に示す改質反応器の構造設計及び膜分離器の小型化の構造設計では、マイクロチャネル高効率熱交換と多機能触媒とが連結した一体配置を用いて反応器の超小型化を実現でき、同時に改質生成物分離膜は、多段・マルチチャネル配置形式を用いて膜分離装置のコンパクト化設計を実現する。さらに超小型メタノール水蒸気改質反応器とコンパクト型膜分離装置はフローのコンパクト型一体化設計を用いて限られたスペースで船舶動力燃料の簡便な調製を実現する。
【0052】
図4を参照すると、前記高効率・低エネルギー消費の二酸化炭素圧縮貯留装置は、順次連通された第2圧縮機4-1、第1熱交換器4-2、第3気液分離器4-3、第3圧縮機4-4、第2熱交換器4-5、第4気液分離器4-6及び第3凝縮器4-7を備え、前記第3凝縮器4-7は二酸化炭素貯蔵タンク4-8に連通される。前記二酸化炭素圧縮貯留装置は、吸収器4-9、第3熱交換器4-10、溶液ポンプ4-11、リボイラー4-12、発生器4-13、吸収液回収器4-14、第4熱交換器4-15及びスロットル弁4-16をさらに備える。
【0053】
図4は、分離した二酸化炭素を圧縮と貯留し、気体状の二酸化炭素を液体の二酸化炭素に変換する高効率・低エネルギー消費のCO二酸化炭素圧縮貯留装置を示す。以下に図の構成要素とプロセスを詳細に説明する。該装置中の気体状の二酸化炭素が第2圧縮機4-1に導入され、次に圧縮後のガスは第1熱交換器4-2に入って海水スプレーで冷却されてから第3気液分離器4-3に入って初期気液分離され、その後、気体状の二酸化炭素は第3圧縮機4-4に入って二次圧縮され、次に第2熱交換器4-5を通過して海水スプレーで冷却され、再び第4気液分離器4-6に入ってさらに気液分離が行われ、このとき、二酸化炭素の一部は液体に変換される。気液混合状態の二酸化炭素は第3凝縮器4-7に入り、ここで二酸化炭素は室温まで冷却され完全に液化される。このプロセスで得られた液体の二酸化炭素は二酸化炭素貯蔵タンク4-8に貯留することも、使用のため他の場所に輸送することもできる。吸収器4-9は、冷凍サイクルパイプラインから冷媒を吸収し、第3熱交換器4-10はシステム全体の温度調整に用いられ、溶液ポンプ4-11は液体の移送に用いられる。リボイラー4-12は、冷媒を加熱することに用いられる。高温の蒸気4-17及び低温の水4-18は設備の駆動及び冷却に用いられると共にシステム全体の運転の維持に役立つ。発生器4-13は、所要の冷媒を発生し、吸収液回収器4-14は吸収液を収集して再利用し、第4熱交換器4-15は、システムの熱交換を制御することに用いられ、スロットル弁4-16は流動する冷媒を調整及び制御することに用いられる。本発明が用いる二酸化炭素圧縮貯留装置は、気体状の二酸化炭素を効果的に液体状態に変換することができるため、貯留及び輸送を容易にする。
【0054】
本発明の多段圧縮方法は、圧縮プロセス中のエネルギー消費を効果的に削減し、二酸化炭素の圧縮効率を向上させることができる。なお、システムの熱効率をさらに向上させるため、メタノール水蒸気改質反応で発生する熱を回収し、余熱としてメタノール水溶液の加熱に利用することで、システム全体のエネルギー消費を削減する。メタノール水溶液貯蔵タンク内のメタノールと水の体積比は、6:4である。メタノール水溶液貯蔵タンク内のメタノール水溶液は、常温常圧下において液体状態で存在するため、高圧漏洩リスクを大幅に軽減し、メタノール水溶液貯蔵タンク内のメタノール水は、メタノール改質水素製造装置を通過して水素リッチガスを生成する。この水素を豊富に含むガスは内燃機関に導入され、船舶の運航を駆動するための運動エネルギーを提供する。重要なのは、メタノールと水の体積比は6/4であるため、メタノール水の質量水素密度は12wt%に達することができ、該貯蔵システムは効率的に水素燃料を貯蔵し供給することができる。
【0055】
上記システムを用いた船舶用燃焼前炭素回収方法は、以下工程を含み
(1)メタノール水蒸気改質反応を利用した水素と二酸化炭素の生成:メタノールと水を体積比6:4で混合し、混合蒸気は、セリウムとニオブをドープした銅-亜鉛-アルミニウム系触媒を介して、反応温度180~280℃、反応圧力0.1~3MPaで水蒸気改質反応を行い、水素と二酸化炭素を生産する工程(前記触媒は、前記触媒は、質量分率40%のCuO、40%のZnO、15%のAl、3%のCeO及び2%のNbを混合、乾燥、焙焼することにより調製される)、
(2)膜分離技術による生成された水素と二酸化炭素の分離:選択性と透過性を備えた膜材料を通じて、水素と二酸化炭素を分離する工程、
前記膜材料は、MOF改質ガス分離膜であり、前記MOF改質ガス分離膜は次の工程を通じて調製され、
(a)活性化されたMOF粉末をアセトンに添加し、水浴超音波によりMOFをアセトン中に分散させてMOFインクを形成し、ここで、アセトンにおけるMOFの濃度は5g/L~30g/Lであり、
(b)ポリフッ化ビニリデンを水に加え、撹拌して濃度6wt%~10wt%の粘稠な膜液を形成し、
(c)膜液をMOFインクに加え、超音波処理を継続し、混合溶液中のアセトンを揮発の方式で除去し、粘稠なキャスト液を得、
(d)キャスト液をガラス板上に注ぎ、200μm~300μmの膜を形成してから60℃~80℃のオーブンに入れて予熱し、水分が完全に蒸発した後に膜を取り外し、
(e)工程(d)の膜をテフロンプレート上のガラスリング中に入れ、事前に調製された3wt%ポリイミド溶液を加え、次にテフロンプレートを60~90℃のオーブンに入れ、ポリイミドを除去し、MOF改質ガス分離膜を得、
(3)分離した二酸化炭素を圧縮と貯留することによる炭素回収実現:膜分離過程中に発生した高純度の二酸化炭素(純度98%以上)を圧縮して液体状態の二酸化炭素に変換させ、その後、圧縮後の二酸化炭素を高圧貯蔵タンク内に貯留し、将来二酸化炭素を封じ込めること又はその他の二酸化炭素の用途に使用されることのために備える工程、及び
(4)分離した水素を船舶燃料システムに輸送し、燃料として使用:輸送管で分離した水素を船舶燃料システムに輸送し、水素をクリーンな燃料として船舶の内燃機関システムで使用し、船舶の低炭素及びゼロエミッション運航を達成する工程。
【0056】
本発明は、海水をメタノール改質水素製造反応中の水源になるよう、逆浸透設備を介して海水を淡水に変換するための外部造水システムを装備し、該外部造水システムにおける各装置の動作温度はいずれも室温に保ち、圧力を1atmに保つ。
【0057】
本発明は、メタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収システム又は方法に基づいて、以下手順を含む安全な水素を使用するメタノール改質水素製造内燃機関船舶の駆動方法を提供し、以下の工程を含む。
工程1、まず、プロセス全体を通じて所要の電力を供給できるようにバッテリーを事前充電する、
工程2、バッテリパックを制御して電源をオンにし、バッテリパックからメタノール改質水素製造モジュールに電力を供給して、メタノール改質水素製造プロセスを開始する、
工程3、メタノール水蒸気改質水素製造モジュールが設定温度に達した後、水素が速やかに放出されて水素バッファタンクに供給され、水素バッファタンクに圧力検出装置、温度検出装置、密度検出装置を取り付けたことで、運転の安全性及び効率性を確保し、その後、内燃機関が起動され駆動システムに運動エネルギーを供給する、
工程4、メタノール水蒸気改質水素製造モジュールが正常に水素を送り出し始めた後、内燃機関の排煙余熱を利用して改質反応モジュールに熱を供給することで、バッテリーモジュールの出力を切断できる(このプロセス中、バッテリーモジュールはバックアップ電源とみなされ、随時待機する)、及び
工程5、中央表示コンソールは、船舶のリアルタイムの状況に応じて、水素バッファタンクの水素充填及び放出の質量及び内燃機関の出力を自動的に調整し、内燃機関の輸出動力に余力がある場合、システムはバッテリーモジュールへの充電を開始する。
【0058】
上記プロセスでは、インテリジェントな制御方法によりメタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収システムの多変数制御を行う。インテリジェントな制御方法の構築手順は、次のとおりであり、
S1:水素バッファタンク、メタノール改質装置、膜分離装置、船舶エンジンなどのシステムの中核装置にオンライン監視設備を設け、さらにシステムの中核装置の設計パラメータと航行ノウハウを組み合わせて、メタノール改質、改質生成物の高効率な膜分離と船舶動力発生などのプロセスの重要パラメータを含むデータミドルオフィスを構築し、データの収集、ガバナンス、分析・マイニング等を実現し、システムにインテリジェントに制御できる力を与え、
S2:コンパクト型改質反応装置、コンパクト型膜分離装置、船舶動力発生、高効率・低エネルギー消費の二酸化炭素圧縮貯留装置及び水素バッファタンク等の間の結合関係を研究し、前記装置の低エネルギー消費・安定した動作に影響を及ぼす重要な要因を特定し、知識とデータ融合駆動型のコンパクト型船舶用炭素回収制御の重要パラメータモデルを構築し、
前記知識とデータ融合駆動型のコンパクト型船舶用炭素回収制御の重要パラメータモデルの前記パラメータには、炭素回収効率ηCO2、過熱器の動作温度T、メタノール水蒸気流量V、改質反応の運転温度T、改質反応器運転圧力P、膜内部のガス流速Vs、エンジン出力We、船舶の排出ガス温度T、膜分離後のH回収量Lが含まれ、式は次のように表される。
【0059】
【数3】
【0060】
S3:運転状態下の効率-エネルギー消費-マテリアル消費の重要指標をさらに研究し、メタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収システムのエネルギーフロー、マテリアルフローのコスト評価モデルを構築し、エネルギーフローのコストE、マテリアルフローのコストC評価モデルの式は次のように表される。
【0061】
E=E+E+E+E+Eh1+E+E+E+Eh2+E
【0062】
エネルギー消費:ブースターファンの消費電力E、移送ポンプの消費電力E、第1予熱器の消費電力E、蒸発器の消費電力Ev、過熱器の消費電力Eh1、改質反応器の消費電力E、膜分離器の消費電力E、第1圧縮機の消費電力E、加熱器の消費電力Eh2、空気輸送ファンの消費電力Ea、
【0063】
C=C+C+C+C+C+C
【0064】
マテリアル消費:メタノールC、水C、触媒C、膜アセンブリC、冷媒C
【0065】
S4:確立した膜分離と組み合わせたメタノール水蒸気改質のエネルギー消費-マテリアル消費総合コスト評価モデルを利用して、負荷/運転条件の変動下で効率-エネルギー消費-マテリアル消費解析を実施し、コストの最適なパラメータの組み合わせを探すことで、効率-エネルギー消費-マテリアル消費解析の負荷/運転条件の変動下のシステムの大域的最適化パラメータモデルを構築し、システムの大域的最適化パラメータを探すことにより、異なる運転条件下のコンパクト型改質反応装置、コンパクト型膜分離装置、船舶動力発生の全てのフローの動的な運転コストをリアルタイムかつ正確に評価し、各装置の安定性及び経済性の制約条件を包括的に考慮し、粒子群や蟻コロニーを含むインテリジェントな最適化アルゴリズムを通じて求解して、エネルギー消費-マテリアル消費総合コストの最適なパラメータの組み合わせを得、
【0066】
各装置のエネルギー消費とマテリアル消費をコストで定量化して、複雑な物理的問題を経済的問題に変換し、具体的な操作において各装置のエネルギー消費(例えばブースターファンの消費電力、移送ポンプの消費電力等)及びマテリアル消費(例えばメタノール、水、触媒など)を変数とし、全体のコストを最適化目標とし、エネルギー消費とマテリアル消費に基づく全体のコスト関数を構築し、その後、粒子群、蟻コロニーなどのインテリジェントな最適化アルゴリズムで関数を求解し、全体のコストを最小限に抑えるパラメータの組み合わせを見つけ出すことで効率-エネルギー消費-マテリアル消費解析の負荷/運転条件の変動下でのシステムの大域的最適化パラメータモデルを構築し、
【0067】
メタノール水蒸気改質と生成物膜分離との連結システムのコストパフォーマンス最適化問題:
minE=E+E+E+E+Eh1+E+E+E+Eh2+E
minC=C+C+C+C+C+C
【数4】
式中、炭素回収効率n≧97%、改質反応転化率n≧95%、膜分離効率n≧90%、改質反応器運転圧力P0.1MPa~3MPa、触媒運転温度T180℃~280℃が制約となる。
【0068】
S5:エネルギー消費-マテリアル消費の総合コストの最適なパラメータの組み合わせを得た後、最適化目的関数を構築し、多目的最適化アルゴリズムで最適化問題を求解することで、戦略策定をさらに実現し、該戦略はエネルギー消費-マテリアル消費-炭素排出という多目的制約の下で、改質反応装置、コンパクト型膜分離装置及び船舶動力発生などの複数の装置間で協調最適化を実施し、負荷/運転条件の変動下でのシステムの中核装置の重要パラメータの柔軟な調整に関するリアルタイムガイダンスを提供し、マテリアル消費・エネルギー消費をさらに削減し、
上記最適化パラメータモデルを基に、エネルギー消費-マテリアル消費-炭素排出という多目的約束の下で改質反応装置、コンパクト型膜分離装置、船舶動力発生という複数の装置間の協調最適化戦略を構築し、この戦略において、エネルギー消費、マテリアル消費及び炭素排出を最適化目標として、多目的最適化モデルを構築し、このモデルは、装置の動作要件及び環境制約条件を満たすことを前提として、この3つの目標の総合的なパフォーマンスを最適化させるパラメータの組み合わせを見つけ出することを要求し、最適なパラメータの組み合わせを見つけ出した後、インテリジェントな最適化アルゴリズムで求解し、実際の運転条件と組み合わせて、負荷変動下でのシステムの中核装置の重要パラメータの柔軟な調整に関するリアルタイムのガイダンスを提供し、負荷/運転条件の変動下でのシステムの中核装置の重要パラメータの柔軟な調整に関するリアルタイムガイダンスを提供し、マテリアル消費とエネルギー消費をさらに削減する。
【0069】
本発明は、メタノール改質と高効率な膜分離との連結に基づくコンパクト型船舶用炭素回収システムを提案し、該システムの内部には、メタノール水蒸気反応を通じて水素を豊富に含む改質ガスを生成できる改質水素製造反応器を備える。また、システムには、内燃機関から排出される高温の排ガスを受け取る熱供給ガス通路を設け、排ガス分配器により受け取った高温の排ガスを化学反応環境のニーズに応じて改質水素製造反応器及びメタノール水溶液貯蔵タンクに分配する。
【0070】
本発明は、効果的かつ革新的な船舶用燃焼前炭素回収プロセスを提供し、船舶燃料の安全な貯蔵、輸送及び推進システムの燃焼前の炭素回収を実現する。本発明は、メタノール水溶液を原料として、メタノール改質器において改質反応を行って水素を生成し、その後水素内燃機関で水素を動力に変換することで、水素エネルギーの直接利用を実現する。この革新的なメタノール水素製造システムにより、船舶は水素を充填することなく水素エネルギーを直接利用できるようにし、従来の水素燃料電池の発展で直面する水素充填の問題を効果的に解決できる。なお、本発明は、船舶が水素をエネルギーとして駆動されることを可能にし、船舶の炭素排出が環境保全基準を満たさない状況を効果的に避ける。本発明は、一連の最適化手段を通じて、温室効果ガスの排出量の削減、化石燃料への依存の低減、二酸化炭素の回収、船舶のエネルギー利用効率及び航続力の向上などの多方面において顕著なメリットを示す。これは、船舶産業のグリーン、低炭素、持続可能な発展の推進に寄与するだけでなく、気候変動に対する世界的な対応のための実用的な技術的手段も提供する。
【実施例2】
【0071】
重油とメタノールという2つの主要な工業用燃料を考察した。具体的なプロセスパラメータは次のとおりである。メタノール水蒸気改質反応において、セリウムとニオブをドープした銅-亜鉛-アルミニウム系触媒を使用し、この触媒は温度180℃~280℃、圧力0.1MPa~3MPaで優れた性能を発揮できる。同時に二酸化炭素の分離効率を向上させるため、膜分離には高選択性と高透過率を備えたMOF改質ガス分離膜を使用して膜分離した。燃焼及び改質後の炭素排出量削減と温室効果ガス排出率に対する異なる燃料の影響を比較することにより、最適な選択が得られた。
【0072】
図5は、炭素排出量削減効果と温室効果ガス排出量に対する異なる燃料及び炭素回収技術の影響を示す。横軸は炭素排出量の削減方法、縦軸は温室効果ガス排出量の割合を表す。計算結果によると、重油燃料の温室効果ガス排出量をベースラインの100%に設定した。メタノールを燃料として使用した時、温室効果ガス排出量を75%まで削減でき、つまり重油と比較して25%の温室効果ガス排出量を効果的に削減できた。重油燃焼後に炭素回収技術を採用した場合、温室効果ガス排出量をさらに60%まで削減できた。同様にメタノール燃料をベースとした燃焼後炭素回収技術を使用した場合、温室効果ガス排出量を50%まで削減できた。最後に、メタノール改質を燃焼前炭素回収技術(本発明)と組み合わせて使用した場合、温室効果ガス排出量を2%まで削減でき、すなわち炭素排出量削減効果は98%以上に達する。これは、メタノール改質と燃焼前炭素回収技術の組み合わせが温室効果ガス排出量の削減方面において顕著なメリットがあることを示している。したがって産業の応用において、メタノール改質+燃焼前炭素回収プロセスの使用を検討することで、環境保全上、安全上、経済上の懸著な効果が得られる。
【0073】
上述の各実施例は、あくまでも本出願の技術的手段を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、前述の実施例を参照して本出願を詳細に説明してきたが、前述の各実施例に記載された技術的手段を修正又は技術的特徴の一部或いは全部に対して均等な置換を行うことができ、かかる修正又は置換は対応する技術的手段の本質を本出願の各実施例の技術的手段の範囲から逸脱させるものではないことは、当業者によって理解されるだろう。
図1
図2
図3
図4
図5