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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-28
(45)【発行日】2025-04-07
(54)【発明の名称】室温で安定な凍結乾燥タンパク質
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/19 20060101AFI20250331BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250331BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20250331BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20250331BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20250331BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20250331BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20250331BHJP
【FI】
A61K9/19
A61K39/395 A
A61K39/395 M
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/26
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2019518462
(86)(22)【出願日】2017-10-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 US2017055651
(87)【国際公開番号】W WO2018068012
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-09-30
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】62/405,610
(32)【優先日】2016-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】シャオリン・タン
(72)【発明者】
【氏名】デーヴィッド・ブレット・ラディック
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】齋藤 恵
【審判官】岡山 太一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-510170(JP,A)
【文献】特表2012-530721(JP,A)
【文献】Pharmaceutical Research, 2001, Vol.18, No.9, pp.1345-1353
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAPlus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結乾燥ケーキであって:
(a)凍結乾燥前の製剤中において50mg/mLまたはそれを超える濃度のタンパク質と、
(b)凍結乾燥前の製剤の約4重量%と約7.5重量%の間のスクロースと、スクロース対アルギニンの重量対重量比が3.2:1~3.4:1のアルギニンとを含む安定剤と、
(c)緩衝剤と、
(d)約3重量%と約6重量%の間の水分含量と、
を含み、崩壊しない、上記凍結乾燥ケーキ。
【請求項2】
前記凍結乾燥ケーキが:
(a)黄色、茶色、黒色、および赤色を含まず;
(b)融解せず、および密度変化を含まず;ならびに/または
(c)25℃を超えるガラス転移温度を含む;
請求項1に記載の凍結乾燥ケーキ。
【請求項3】
約3重量%、約3.5重量%、約4重量%、約4.5重量%、約5重量%、約5.5重量%、または約6重量%の水の水分含量を含む、請求項2に記載の凍結乾燥ケーキ。
【請求項4】
(a)室温で約2ヶ月貯蔵された前記凍結乾燥ケーキ中の凝集タンパク質の量の増加が、約0.6%未満である;
(b)室温で約18ヶ月もしくは約24ヶ月貯蔵された前記凍結乾燥ケーキ中の凝集タンパク質の量の増加が、約2%未満である;および/または
(c)前記凝集タンパク質が、サイズ排除クロマトグラフィもしくは電気泳動によって検出される;
請求項1に記載の凍結乾燥ケーキ。
【請求項5】
前記緩衝剤が、約0.34重量%~約2.04重量%のヒスチジンを含む、請求項1に記載の凍結乾燥ケーキ。
【請求項6】
ポリオール、糖、アミノ酸、塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される安定剤をさらに含み、ここで、(i)前記ポリオールが、ソルビトール、グリセロール、マンニトール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され;(ii)前記糖が、トレハロース、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され;(iii)前記アミノ酸が、アラニン、プロリン、グリシン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され;ならびに(iv)前記塩が、塩化ナトリウムである、請求項1に記載の凍結乾燥ケーキ。
【請求項7】
前記安定剤が、約19重量%~約83重量%で存在する、1つ以上のポリオールを含む、請求項1に記載の凍結乾燥ケーキ。
【請求項8】
前記安定剤が、さらにマンニトール、前記マンニトールが、約8重量%~約23重量%で存在する、
を含む、請求項6に記載の凍結乾燥ケーキ。
【請求項9】
前記安定剤が、さらにソルビトール、前記ソルビトールが、約1.3重量%~約23重量%のソルビトールで存在する、
を含む、請求項6に記載の凍結乾燥ケーキ。
【請求項10】
界面活性剤をさらに含み:
(a)前記界面活性剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ポリエチレングリコール(PEG)、PEG3350、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される;ならびに/または
(b)前記界面活性剤が、約0.02重量%~約1重量%で存在する;
請求項1に記載の凍結乾燥ケーキ。
【請求項11】
前記タンパク質が、約6重量%~約64重量%、約6重量%~約19重量%、または約33重量%~約64重量%で存在する、請求項1に記載の凍結乾燥ケーキ。
【請求項12】
前記タンパク質が、抗原結合タンパク質であり、任意に、前記抗原結合タンパク質が、抗体、抗体フラグメント、および受容体-Fc融合タンパク質からなる群から選択される、請求項11に記載の凍結乾燥ケーキ。
【請求項13】
前記凍結乾燥ケーキが、バイアル内に含まれ、前記バイアルが、タイプIホウケイ酸ガラスを含み、ポリテトラフルオロエチレン被覆ブチルゴム栓で閉鎖されている、請求項1に記載の凍結乾燥ケーキ。
【請求項14】
凍結乾燥ケーキであって:
(a)凍結乾燥前の製剤中において50mg/mLまたはそれを超える濃度のタンパク質と、
(b)1重量部のタンパク質に対して約0.2重量部の安定剤(0.2:1)~1重量部のタンパク質に対して約1.5重量部の安定剤(1.5:1)の比の安定剤、ここで、前記安定剤はスクロースを含み、さらにアルギニン、ソルビトール、グリセロール及び/又はアラニンを含む、と、
(c)約3重量%以上および約6重量%以下の濃度の水と、
を含み、変色していない、上記凍結乾燥ケーキ。
【請求項15】
還元糖、糖アルコール、アミノ酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される安定剤をさらに含むここで、前記非還元糖が、トレハロースであり;前記糖アルコールが、マンニトールであり;前記アミノ酸が、プロリン、およびグリシンからなる群から選択される;請求項14に記載の凍結乾燥ケーキ。
【請求項16】
アルギニン、マンニトールまたはソルビトールをさらに含み、任意に:
(a)スクロースのアルギニンに対する重量比が、約3.2:1~約3.4:1である;
(b)スクロースのマンニトールに対する重量比が、約1.8:1~約2:1である;
(c)トレハロースのアルギニンに対する重量比が、約3.2:1~約3.4:1である;または
(d)トレハロースのソルビトールに対する重量比が、約1:1~約2:1である;
請求項15に記載の凍結乾燥ケーキ。
【請求項17】
安定剤のタンパク質に対する重量比が、約0.22:1、0.44:1、0.65:1、0.87:1、1.1:1、1.3:1からなる群から選択される、請求項14に記載の凍結乾燥ケーキ。
【請求項18】
前記タンパク質が、抗体、抗体フラグメント、および受容体-Fc融合タンパク質からなる群から選択される、請求項14に記載の凍結乾燥ケーキ。
【請求項19】
緩衝剤をさらに含み、任意に、前記緩衝剤が、クエン酸塩、リン酸塩、ヒスチジン、コハク酸塩、炭酸塩、酢酸塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載の凍結乾燥ケーキ。
【請求項20】
前記凍結乾燥ケーキが注射器内に含まれる、請求項14に記載の凍結乾燥ケーキ。
【請求項21】
前記変色が、赤色、黄色、茶色、黒色、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載の凍結乾燥ケーキ。
【請求項22】
薬学的に許容される凍結乾燥ケーキの作製方法であって、
(a)約3重量%~約6重量%の水分含量を含む薬学的に許容される凍結乾燥ケーキを得るために、タンパク質、安定剤、および水を含む試料から水を除去する乾燥ステップであって、前記タンパク質は、凍結乾燥前の製剤中において50mg/mLまたはそれを超える濃度を有し、前記安定剤は、スクロースを含み、そして、前記安定剤は、さらに、アルギニン、ソルビトール、グリセロール及び/又はアラニンを含むステップと、
(b)前記凍結乾燥ケーキを、前記薬学的に許容される凍結乾燥ケーキのガラス転移温度未満の温度で加熱するステップと、
を含む、上記方法。
【請求項23】
前記ガラス転移温度未満の前記温度が:
(a)約25℃~約90℃である;
(b)約72時間維持される;および/または
(c)請求項22のステップ(a)の後および請求項22のステップ(b)の前に、前記試料を示差走査熱量測定にかけることによって決定される;
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記タンパク質が、抗体、抗体フラグメント、および受容体-Fc融合タンパク質からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記タンパク質が、約50mg/mL~約200mg/mLの濃度で前記試料中に存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記試料が、緩衝剤をさらに含み、任意に、ヒスチジンを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記安定剤が:
(a)トレハロース、ソルビトール、グリセロール、アルギニン、アラニン、マンニトール、スクロース、プロリン、NaCl、グリシン、およびそれらの組み合わせからなる群から、さらに選択される;
(b)約10%重量/体積(w/v)未満の濃度でスクロースを含む;ならびに/または
(c)トレハロースをさらに含み、任意に、前記トレハロースが、約10%重量/体積(w/v)未満の濃度で前記試料中に存在する;
請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記試料が、約3%±0.1%のアルギニンをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記スクロースが、約5%(w/v)の濃度で前記試料中に存在し、任意に、前記試料は、さらに、(i)約1.3%±0.1%(w/v)のアラニン;(ii)約1.5%±0.1%(w/v)のアルギニン;(iii)約1.34%±0.1%(w/v)のグリセロール;(iv)約2.66%±0.1%(w/v)のマンニトール;または(v)約2.66%±0.1%(w/v)のソルビトール、を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記安定剤が、(i)約7.5%(w/v)のスクロースおよび2.3%±0.1%(w/v)のアルギニン;(ii)約12.5%(w/v)のスクロースおよび3.9%±0.1%(w/v)のアルギニン;または(iii)約15%(w/v)のスクロースおよび4.6%±0.1%(w/v)のアルギニン、を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記トレハロースが:
(a)約9.09%(w/v)のトレハロースの濃度で前記試料中に存在し、前記試料が、さらに、約0.48%(w/v)のソルビトール、約0.24%(w/v)のグリセロール、約0.28%(w/v)のアルギニン、もしくは約0.24%(w/v)のアラニンを含む;
(b)約8.33%(w/v)のトレハロースの濃度で前記試料中に存在し、前記試料が、さらに、約0.89%(w/v)のソルビトール、約0.45%(w/v)のグリセロール、約0.51%(w/v)のアルギニン、もしくは約0.43%(w/v)のアラニンを含む;
(c)約6.66%(w/v)のトレハロースの濃度で前記試料中に存在し、前記試料が、さらに、約1.77%(w/v)のソルビトール、約0.9%(w/v)のグリセロール、約1.03%(w/v)のアルギニン、または約0.87%(w/v)のアラニンをさらに含む;または
(d)約5%(w/v)のトレハロースの濃度で前記試料中に存在し、前記試料が、さらに、約2.66%(w/v)のソルビトール、約1.34%(w/v)のグリセロール、約1.54%%(w/v)のアルギニン、もしくは約1.3%(w/v)のアラニンを含む、
請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記水分含量が、約3重量%、約3.5重量%、約4重量%、約4.5重量%、約5重量%、約5.5重量%、または約6重量%である、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
(a)室温で約2ヶ月貯蔵された前記凍結乾燥ケーキ中の分解タンパク質の量の増加が、約0.6%未満である;
(b)室温で約18ヶ月または約24ヶ月貯蔵された前記凍結乾燥ケーキ中の分解タンパク質の量の増加が、約2%未満である;および、任意に、
(c)前記タンパク質の分解が、サイズ排除クロマトグラフィによる高分子量種のパーセント変化の測定により決定される;
請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、生物学的分子の医薬製剤の分野に関する。具体的には、本発明は、安定な凍結乾燥された治療用タンパク質製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体および受容体Fc融合タンパク質などの治療用巨大分子は、分子を患者への投与に適したものにするだけではなく、長期貯蔵中にそれらの安定性を維持するように製剤化されなければならない。例えば、溶液中の治療用タンパク質(例えば、抗体)は、溶液が適切に製剤化されていない限り、凝集、化学修飾、または他の形態の分解を起こしやすい。液体製剤中の治療用タンパク質の安定性は、製剤中で使用される賦形剤の種類、ならびにそれらの賦形剤の互いに対する量および割合だけではなく、可溶性タンパク質の濃度および製造方法にも依存する。治療用タンパク質製剤を調製するときには、安定性以外の考慮事項も考慮されなければならない。これらの考慮事項には、溶液の粘度および所与の製剤によって受け入れられ得る抗体の濃度が含まれる。したがって、治療用タンパク質を製剤化するときには、貯蔵温度で経時的に安定なままであり、適切な濃度の抗体または他の治療用タンパク質を含有し、製剤が患者に便利に投与されることを可能にする他の特性を有する製剤に到達するために、細心の注意が払われなければならない。
【0003】
治療用タンパク質の液体製剤は、一般に、冷凍または冷蔵時にタンパク質に長期安定性を提供するように設計されているが、多くの場合、室温で長期安定性を提供することができない。タンパク質の安定性を維持し、かつタンパク質の治療活性を保持するための当該技術分野において既知の1つの解決法は、分子を凍結乾燥することである。凍結乾燥(制御条件下でのフリーズドライ)は、タンパク質の長期貯蔵のために一般的に使用されている。凍結乾燥タンパク質は、フリーズドライ状態にある間に凝集、酸化、および他の変性過程などの分解に対して実質的に耐性がある(例えば、特許文献1を参照されたい)。凍結乾燥は、比較的長期間にわたって室温で比較的安定なままである乾燥「ケーキ」を提供する。室温安定性は、世界中で、特に電気および冷蔵が頼りにならない場所で、治療用タンパク質を貯蔵および分配する際に特に重要である。
【0004】
スクロースおよびトレハロースなどの凍結乾燥保護剤(別名、安定剤)は、フリーズドライプロセス中の変性からタンパク質を保護するために凍結乾燥前製剤中に含まれることが多い。可塑剤もまた、全体的な緩和時間を短縮するために含まれてもよく、場合によっては、タンパク質の天然構造を維持するのを補助し得る。可塑剤には、ソルビトールおよびグリセロールのような糖アルコール、他のポリオール、ならびに少量の水が含まれる。
【0005】
凍結乾燥タンパク質の5℃での貯蔵を最適化するように設計された研究において、Changらは、タンパク質製剤の安定性に対する可塑剤の効果を調査した。1:1のスクロース対タンパク質の重量比(40mg/mLの凍結乾燥前のタンパク質)を含み、追加の可塑剤を含有しない凍結乾燥ケーキにおいて、50℃で1ヶ月間の凝集速度定数は、報告によると2.4%の含水量で1.5%を超え、3.3%の含水量で約2%であった(同文献、1451、図4)。(非特許文献1)。実験は、40℃および25℃でも実行され、データは、3つの応力条件のうち最も過酷な条件についてのみ提示された。Chang et al.は、中間水分含量での最適貯蔵安定性の文書化された事例のまれな例に留意し、残留水分含量が、単に最小化されなければならないものよりもむしろ、製剤の開発中に最適化されるべきであることを示唆した。(同文献、1451。非特許文献2も参照されたい)。高い水分レベルが、Chang et al.によって挙げられた研究の全てにおいて、製剤の化学的安定性を低下させることが示された。非特許文献3。)
【0006】
それらの研究のいずれも、試験した製剤について、25℃はもちろんのこと、5℃を超える温度での長期安定性(1年、2年、または3年以上)を示唆していない。
【0007】
生物治療薬の凍結乾燥製剤は、ある特定の条件下で長期安定性を示した。Kallmeyerらの特許文献2は、他の賦形剤の中でも、糖(再構成後最大200mg/mL[例えば、スクロース、ラクトース、マルトース、ラフィノース、トレハロース])、アミノ酸(凍結乾燥前1~100mg/mL[例えば、アルギニン、リジン、オルニチン])、界面活性剤(再構成後0.05~0.5mg/mL[例えば、ポリソルベートおよびポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンポリマー])、ならびに任意に緩衝剤(再構成後10~20mM[例えば、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩])、および/または等張化剤(例えば、NaCl、再構成後30mM以下)を含有する、低濃度(例えば、最大8mg/mLの凍結乾燥前溶液)の安定な凍結乾燥抗体製剤を記載している。Kallmeyerは、凍結乾燥物が安定した状態のまま最大2年間室温(すなわち、18~23℃)で貯蔵され得ることを開示している。ここで、安定性は、再構成凍結乾燥物中の粒子形成が非常に少ないか、または全くないこと、すなわち、サイズが10ミクロンを超える6000未満の粒子、またはサイズが25ミクロンを超える600未満の粒子によって示される。
【0008】
Dixらの特許文献3は、少なくとも3ヶ月、生物学的活性を維持する安定な凍結乾燥VEGF-Trap(別名、aflibercept)製剤を記載している。その出願は、5~75mg/mLのトラップ分子と、5~50mMのヒスチジン緩衝剤と、0.1~3%のポリエチレングリコール(PEG、安定剤)と、0.25~3%のグリシン(充填剤として)と、0.5~6%スクロース(安定剤として)とを含有する凍結乾燥前溶液を開示している。任意に、凍結乾燥前溶液は、クエン酸緩衝剤(0.05mM)および/または0.003%~0.005%ポリソルベートを含有する。
【0009】
凍結乾燥タンパク質製剤に加えて、噴霧乾燥もまた乾燥タンパク質製剤を作製するために用いられてきた。Chen and Walsh(特許文献4)は、2~30ミクロンの直径の範囲、および約10~12ミクロン、場合によっては約6~約7ミクロンの中位径を有する乾燥微粉化タンパク質粒子を開示している。続いて、これらの粒子は、ポリマーで被覆されて、タンパク質をさらに安定化し、水性環境中での長期間にわたるタンパク質の持続放出を可能にし得る。微粉化粒子が形成された前処理されたタンパク質溶液は、(1)25mg/mLのタンパク質および0.1%ポリソルベート、(2)25mg/mLのタンパク質、または(3)50mg/mLのタンパク質、10mMのリン酸、および2%スクロースのいずれかを含有した。ポリマーコーティングされた微粉化タンパク質粒子内に含有されるタンパク質は、少なくとも14日間安定なままであることが実証された。
【0010】
タンパク質凍結乾燥物の乾燥後アニーリングは、50℃で4%を超える初期抗体凝集をもたらすことが示され、凝集速度定数は、1ヶ月当たり約2%の凝集であった。(非特許文献4を参照されたい。)US FDAは、初期凝集が4%の製剤の販売を許可しているかもしれないが、経時的な凝集速度は、販売されている医薬製剤にとっては許容できないであろう。その貯蔵寿命中に医薬製剤に目に見える変化があってはならない。
【0011】
室温で長期間にわたって安定なままである汎用乾燥タンパク質製剤の必要性が依然としてある。汎用乾燥タンパク質製剤は、とりわけ、液体製剤としての使用のため、ポリマーと組み合わせて持続放出製剤またはデバイスを製造するため、および無数の他の経路を介して移植または送達するための再構成に適している。ここで、出願人らは、改善された安定タンパク質凍結乾燥物およびその作成方法を開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第6,436,897号
【文献】W01998/022136A2
【文献】W02006/104852A2
【文献】W02013/07506A1
【非特許文献】
【0013】
【文献】“Effect of Sorbitol and Residual Moisture on the Stability of Lyophilized Antibodies:Implications for the Mechanism of Protein Stabilization in the Solid State,”J.Pharma.Sci.94(7):1445-1454,(2005)
【文献】Breen et.al.,“Effect of Moisture on the Stability of a Lyophilized Humanized Monoclonal Antibody Formulation,”Pharma.Res.18(9):1345-1353(2001)
【文献】Hsu et al.“Determining the Optimum residual Moisture in Lyophilized Protein Pharmaceuticals,”Develop.Biol.Standard 74:255-271(1991)
【文献】Wang et al.,“The Impact of Thermal Treatment on the Stability of Freeze-Dried Amorphous Pharmaceuticals:II.Aggregation in an IgG1 Fusion Protein,”99(2)J.Pharma.Sci.683-700(2010)
【発明の概要】
【0014】
比較的高い含有量の残留水分は、凍結乾燥された治療用タンパク質(別名、「固体状態」での治療用タンパク質)のための有効な可塑剤として役立ち得、これは、室温で貯蔵されながら少なくとも24ヶ月、タンパク質に驚くべき安定性を与える。一態様では、0.5~10パーセントの水分を有する低移動度固体状態の、室温で安定な凍結乾燥された治療用タンパク質製剤が提供される。別の態様では、その室温で安定な凍結乾燥された治療用タンパク質製剤を作製する方法が提供される。具体的には、凍結乾燥ケーキ中2%超、3%超、4%超、5%超、または6%超であるが、10%未満、8%未満、7%未満、または6%未満の残留水分レベルは、室温における長期間にわたった比較的高温でのアニーリングを可能にする。いかなる作用機序によっても限定されないが、凍結乾燥プロセス中の残留含水量は、比較的高濃度、好ましくは50~200mg/mL、さらにより好ましくは100~150mg/mLの医薬製剤における、初期タンパク質凝集体の形成を防止しながら、アルファ緩和が生じることを可能にするように思われる。
【0015】
第1の態様では、安定なタンパク質、賦形剤、および約0.5%~約10%の水、約3%~約6%の水、約4%~約7%の水、約5重量%~約8重量%の水、約3重量%、約4重量%、約4.5重量%、または約6重量%の水を含む、薬学的に許容される凍結乾燥ケーキが提供される。薬学的に許容される凍結乾燥ケーキのタンパク質は、17~25℃、20~25℃、または約25℃であり得る室温で、少なくとも1ヶ月安定なままである。「安定な」が意味するものは、一般に、タンパク質の5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満が、室温での貯蔵の18ヶ月以内に分解するか、またはほとんどもしくは全く分解されていない。タンパク質に対する一般的な分解経路は、凝集体および他の高分子量(HMW)種の形成である。HMW種は、サイズ排除クロマトグラフィおよび天然または変性電気泳動ゲル移動度などの多くの既知の方法、好ましくはサイズ排除クロマトグラフィによって検出され得る。分解はまた、脱アミド化残基、還元ジスルフィド結合、加水分解、およびペプチド断片化などの化学生成物の形成も含み、それらもまた当該技術分野で既知の方法によって測定され得る。
【0016】
一実施形態では、約2%以下のタンパク質が、約25℃で24ヶ月の貯蔵後に分解されている。分解は、サイズ排除クロマトグラフィによって測定されるような高分子量種のパーセント変化によって決定される。この方法による検出可能な分解の下限は、約0.5%の分解であり、アッセイの変動性として約0.2~0.3%を伴う。
【0017】
薬学的に許容される凍結乾燥ケーキは、タンパク質および水分に加えて1つ以上の賦形剤を含み得る。一実施形態では、賦形剤は、緩衝剤を含む。その緩衝剤は、タンパク質安定性のための最適pHを維持する任意の緩衝剤であり得る。ヒスチジンは、そのような緩衝剤であり、これは約6.0のpKaを有し、pH4.8と7.2の間で効果的に緩衝することが可能である。いくつかの実施形態では、賦形剤は、ヒスチジンである。好ましい実施形態では、ヒスチジンは、約0.34重量%~約2.04重量%で薬学的に許容される凍結乾燥ケーキ中に存在する。
【0018】
一実施形態では、賦形剤は、安定剤を含む。安定剤には、ポリオール、糖、アミノ酸、塩、またはそれらの任意の組み合わせなどの様々な分子が含まれる。有用な安定剤の例には、ソルビトール、グリセロール、マンニトール、トレハロース、スクロース、アルギニン、アラニン、プロリン、グリシン、塩化ナトリウム、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。一実施形態では、安定剤は、薬学的に許容される凍結乾燥ケーキの重量の約19.9%~約82.2%を構成する。
【0019】
「安定剤」という用語は、薬学的に許容される凍結乾燥ケーキ中の緩衝剤またはタンパク質ではない、少なくとも1つの化学物質を意味する。いくつかの実施形態では、安定剤という用語は、タンパク質または他の巨大分子を安定化する働きを一緒にする化学物質の組み合わせ(すなわち、2つ以上の化学物質)を意味する。例えば、安定剤は、スクロースであり得るか、または安定剤は、スクロースおよびアルギニンの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、例えば、スクロースまたはトレハロースなどのより大きい分子量の化学物質は、例えば、アルギニン、プロリン、アラニン、グリシン、マンニトール、ソルビトール、および/またはグリセロールなどのより小さい分子量の化学物質と対にされる。理論によって束縛されることは望まないが、より小さい化学物質は、移動度を高め、タンパク質がより低いエネルギー状態に緩和することを可能にする。
【0020】
一実施形態では、安定剤は、スクロースのみであり、安定剤は、他の安定剤成分の存在、ならびにタンパク質、水、および他の賦形剤の量に応じて、薬学的に許容される凍結乾燥ケーキの重量の約3%~約15%、好ましくは約5~11%、4~7.5%、または5~7.5%を構成する。一実施形態では、タンパク質対安定剤の重量比は、1:1~3:1、好ましくは1.2:1~2:1、より好ましくは約1.5:1である。
【0021】
一実施形態では、安定剤は、別の安定剤と組み合わせたスクロースを含む。スクロースと組み合わされるそれらの他の安定剤は、アルギニン、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、およびアラニンのうちの任意の1つ以上を含む。一実施形態では、追加の安定剤は、アルギニンを含み、これは薬学的に許容される凍結乾燥ケーキの重量の約4.83%~約19.3%を構成し得る。いくつかの実施形態では、スクロース対アルギニンの重量対重量比は、約3.2:1~約3.4:1の範囲である。別の実施形態では、追加の安定剤は、ソルビトールを含み、これは薬学的に許容される凍結乾燥ケーキの重量の約8.07%~約22.4%を構成し得る。別の実施形態では、追加の安定剤は、マンニトールを含み、これは薬学的に許容される凍結乾燥ケーキの重量の約8.07%~約22.4%を構成し得る。別の実施形態では、追加の安定剤は、グリセロールを含み、これは薬学的に許容される凍結乾燥ケーキの重量の約4.23%~約12.7%を構成し得る。さらに別の実施形態では、追加の安定剤は、アラニンを含み、これは薬学的に許容される凍結乾燥ケーキの重量の約4.11%~約12.4%を構成し得る。
【0022】
別の実施形態では、安定剤は、トレハロースを含み、これは他の安定剤の存在、ならびにタンパク質、水、および他の賦形剤の量に応じて、薬学的に許容される凍結乾燥ケーキの重量の約15.8%~約70.2%を構成する。
【0023】
一実施形態では、安定剤は、別の安定剤と組み合わせたトレハロースを含む。トレハロースと組み合わされるそれらの他の安定剤は、アルギニン、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、およびアラニンのうちの任意の1つ以上を含む。一実施形態では、追加の安定剤は、アルギニンを含み、これは薬学的に許容される凍結乾燥ケーキの重量の約0.81%~約14.3%を構成し得る。別の実施形態では、追加の安定剤は、ソルビトールを含み、これは薬学的に許容される凍結乾燥ケーキの重量の約1.35%~約22.4%を構成し得る。別の実施形態では、追加の安定剤は、グリセロールを含み、これは薬学的に許容される凍結乾燥ケーキの重量の約0.69%~約12.7%を構成し得る。さらに別の実施形態では、追加の安定剤は、アラニンを含み、これは薬学的に許容される凍結乾燥ケーキの重量の約0.69%~約12.4%を構成し得る。
【0024】
別の実施形態では、賦形剤は、界面活性剤を含む。界面活性剤は、脂肪アシル化ポリエトキシル化ソルビタンなどの非イオン性洗剤を含み得る。一実施形態では、界面活性剤は、一般にポリソルベート、または具体的にはポリソルベート80を含む。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される凍結乾燥ケーキは、約0.21重量%~約0.96重量%のポリソルベート80などの界面活性剤を含む。
【0025】
一実施形態では、タンパク質は、治療用タンパク質である。他の実施形態では、治療用タンパク質は、抗原結合タンパク質である。抗原結合タンパク質は、抗体、抗体フラグメント、受容体、リガンド、相補性決定領域を含む組換え分子、リガンド、および受容体ドメインを含む多様な分子の群を包含する。抗原結合タンパク質は、トラップ分子を含む受容体-Fc融合タンパク質などの様々な他の融合(組換えまたはキメラ)タンパク質を含む。特定の実施形態では、タンパク質は、組換えヒト様またはヒト化モノクローナル抗体などの治療用抗体である。抗体には、ハイブリッド抗体ならびに二重特異性抗体が含まれる。
【0026】
一実施形態では、タンパク質は、薬学的に許容される凍結乾燥ケーキの重量の約6.27%~約63.7%を示す。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される凍結乾燥ケーキは、約6.27重量%~約18.9重量%のタンパク質を含む。他の実施形態では、薬学的に許容される凍結乾燥ケーキは、約33.4重量%~約63.7重量%のタンパク質を含む。
【0027】
安定剤は、タンパク質の安定性を維持するのを助けるために薬学的に許容される凍結乾燥ケーキ中に含まれる。したがって、薬学的に許容される凍結乾燥ケーキは、タンパク質に対する特定の比の安定剤を含む。いくつかの実施形態では、安定剤対タンパク質の比は、重量で約0.22:1~約6.6:1である。様々な実施形態は、全て重量で、0.44:1、0.65:1、0.87:1、1.1:1、および1.3:1から選択される安定剤対タンパク質の比を含む。
【0028】
薬学的に許容される凍結乾燥ケーキが含有される。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される凍結乾燥ケーキは、閉鎖バイアルに含まれる。閉鎖するものは、栓であってもよい。他の実施形態では、薬学的に許容される凍結乾燥ケーキは、注射器バレルに含まれる。さらに他の実施形態では、薬学的に許容される凍結乾燥ケーキは、デュアルチャンバ自動注入器の一方のチャンバに含まれる。
【0029】
一実施形態では、薬学的に許容される凍結乾燥ケーキは、タンパク質、緩衝剤、非イオン性界面活性剤、および1つ以上の安定剤を水中で組み合わせて、凍結乾燥前水溶液を作製することによって製造される。次いで、溶液をフリーズドライして、10%以下および0.5%以上の水分を含有するケーキを作製する。フリーズドライ(凍結乾燥)タンパク質は、「固体状態」にある。特定の実施形態では、タンパク質は、治療用組換えヒト様またはヒト化モノクローナル抗体である。
【0030】
別の態様によると、治療用タンパク質と、10%以下の水および0.5%以上の水とを含む組成物を製造するためのプロセスが提供される。
【0031】
一実施形態では、プロセスは、容器内にタンパク質および賦形剤を含有する水性試料を得るステップを含む。容器は、とりわけ、バイアル、注射器バレル、またはデュアルチャンバ自動注入器のチャンバであり得る。容器は、水蒸気のガス放出を可能にするのに十分に開放している。水性試料を含む容器がチャンバ内に配置され、試料から熱が除去されて第1の温度を達成し、ここで氷結晶が試料中に形成される。チャンバから空気が除去されて、第1の圧力を達成する。次いで、熱エネルギーが試料に加えられて、第2の温度を達成して、昇華による試料からの水の除去を可能にする。昇華後、残留水が試料内に閉じ込められたままになる可能性があり、それにより追加の第2の乾燥ステップが必要となる。その第2の乾燥ステップは、チャンバ内の第1の圧力を維持しながら試料に熱エネルギーを加えることによって達成され、それにより第3の温度を達成する。その温度で、試料から水が脱着して、10%以下および0.5%以上の水分レベルを達成する。
【0032】
一実施形態では、初期の冷蔵および一次乾燥ステップ中に、毎分約0.5℃の速度で水性試料から熱が除去される。一実施形態では、第1の温度は、約-45℃である。別の実施形態では、第1の温度は、約60分間保持される。さらに別の実施形態では、水性試料は、第1の温度に到達する前に約30分間5℃に保持される。
【0033】
一実施形態では、一次乾燥ステップは、約-25℃の第2の温度で行われる。一実施形態では、第2の温度は、棚温度を毎分約0.5℃の速度で上昇させることによって達成される。一実施形態では、第2の温度は、約50時間保持される。一実施形態では、一次乾燥中のチャンバ圧力は、約100mTorrである。
【0034】
一実施形態では、二次乾燥ステップは、約35℃の第3の温度で行われる。一実施形態では、加熱のための昇温速度は、毎分約0.3℃である。一実施形態では、試料は、第3の温度に約6時間保持される。
【0035】
二次乾燥後、一実施形態では、バイアルは、約608,000mTorrのチャンバ圧力で栓をされる。一実施形態では、チャンバは、栓をする前にN2ガスで再充填される。一実施形態では、バイアルは、Flurotec(登録商標)被覆4432/50ブチルゴム凍結乾燥栓で栓をされる。
【0036】
一実施形態では、乾燥試料は、アニーリングされて、タンパク質をより低いエネルギー状態に緩和させ、その全体的な安定性を改善する。試料をアニーリングするために、熱エネルギーが試料に加えられて、第4の温度を達成する。いくつかの実施形態では、試料は、少なくとも約24時間、少なくとも約48時間、または少なくとも約60時間、第4の温度に保持されて、タンパク質の最適な有効緩和(アルファ緩和およびベータ緩和)を達成する。いったんタンパク質がその最適な緩和状態に到達すると、容器は、閉鎖される。
【0037】
一実施形態では、第4の温度、すなわち、アニーリング温度は、水脱着ステップ後の試料のガラス転移温度未満である。特定の実施形態では、アニーリング温度は、約70℃である。別の特定の実施形態では、アニーリング温度は、約45℃である。一実施形態では、試料は、アニーリング温度に約72時間維持される。異なるタンパク質が異なる生物物理学的特徴を有するため、いくつかの実施形態では、第4の温度は、変調示差走査熱量測定(MDSC)を介して決定される。ここで、熱量計は、二次乾燥ステップを経た凍結乾燥タンパク質製剤試料で充填される。次いで、熱流が監視されている間に、試料は、ガラス転移を通した段階加熱に供される。Tgが決定される。次いで、凍結乾燥ケーキ中の分子のエンタルピー緩和を誘導するために、試料は、様々なサブTg温度に様々な時間保持される。次いで、「弛緩した」試料は、DSCまたはMDSCに供され、エンタルピー回復によるピーク面積(温度の関数としての熱容量)が決定される(Luthra et al.,“Effects of annealing on enthalpy relaxation in lyophilized disaccharide formulations:mathematical modeling of DSC curves,”97(8)J Pharm Sci.3084-99, 2008、およびL.Thomas,“Modulated DSC(登録商標) Paper #5: Measurement of Glass Transitions and Enthalpy Recovery,”TA Instruments Publication TP 010,New Castle DE(tainstruments.com(2016年5月13日アクセス)からワールドワイドウェブ上でダウンロード可能)を参照されたい)。最適なエンタルピー緩和を提供するそれらのサブTg温度および時間は、第4の(別名、アニーリング)温度および時間に対して選択される。W.Q.,“Calorimetric analysis of cryopreservation and freeze-drying formulations,”1257 Methods Mol.Biol.163-79(2015)も参照されたい。
【0038】
一実施形態では、凍結乾燥前水溶液(すなわち、水性試料、別名、水溶液)は、1つ以上の安定剤、1つ以上の緩衝剤、および任意に1つ以上の界面活性剤などの複数の賦形剤を含む。
【0039】
一実施形態では、凍結乾燥前水溶液ならびに再構成された凍結乾燥液体製剤は、タンパク質の構造および機能の維持を補助するpHを有する。特定の実施形態では、液体の凍結乾燥前および再構成後の液体製剤は、約6.0±2のpHを有する。pH6付近で緩衝する分子は、この実施形態において有用であると考えられる。したがって、一実施形態では、緩衝剤は、ヒスチジンを含む。特定の実施形態では、水溶液は、約10mMのヒスチジンを含有する。
【0040】
一実施形態では、凍結乾燥前水溶液は、少なくとも1つの安定剤を含有する。いくつかの実施形態では、安定剤または安定剤の組み合わせは、トレハロース、ソルビトール、グリセロール、アルギニン、アラニン、マンニトール、スクロース、プロリン、NaCl、およびグリシンのうちの1つ以上を含む。
【0041】
一実施形態では、安定剤または安定剤の組み合わせは、スクロースを含む。特定の実施形態では、安定剤は、水溶液中に約10%(w/v)の濃度のスクロースを含む。ある場合には、スクロースが唯一の安定剤である。別の場合では、水溶液は、安定剤として10%のスクロース(w/v)に加えて、約3%±0.1%(w/v)のアルギニンを含む。
【0042】
他の実施形態では、安定剤は、スクロースと、少なくとも1つの他の分子実体とを含む。いくつかの実施形態では、水溶液は、約5%のスクロースと、1つの他の安定剤とを含む。1つの特定の実施形態では、水溶液は、5%スクロースと、(a)約1.3%±0.1%(w/v)のアラニン、(b)約1.5%±0.1%(w/v)のアルギニン、(c)約1.34%±0.1%(w/v)のグリセロール、(d)約2.66%±0.1%(w/v)のマンニトール、および(e)約2.66%±0.1%(w/v)のソルビトールのうちのいずれか1つとを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、安定剤は、様々な濃度および割合で、スクロースとアルギニンとを含む。特定の実施形態では、水溶液は、約7.5%のスクロースと、2.3%±0.1%のアルギニンとを含む。別の特定の実施形態では、水溶液は、約12.5%のスクロースと、3.9%±0.1%のアルギニンとを含む。さらに別の特定の実施形態では、水溶液は、約15%のスクロースと、4.6%±0.1%のアルギニンとを含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、安定剤は、唯一の安定剤として、または別の安定剤と組み合わせてのいずれかで、トレハロースを含む。一実施形態では、安定剤は、水溶液中に約10%(w/v)の濃度のトレハロースを含む。別の実施形態では、水溶液は、約9.09%(w/v)のトレハロースと、0.48%(w/v)のソルビトール、0.24%(w/v)のグリセロール、0.28%(w/v)のアルギニン、および0.24%のアラニン%(w/v)のうちのいずれか1つとを含む。別の実施形態では、水溶液は、8.33%(w/v)のトレハロースと、0.89%(w/v)のソルビトール、0.45%(w/v)のグリセロール、0.51%(w/v)のアルギニン、および0.43%(w/v)のアラニンのうちのいずれか1つとを含む。別の実施形態では、水性試料は、6.66%(w/v)のトレハロースと、1.77%(w/v)のソルビトール、0.9%(w/v)のグリセロール、1.03%(w/v)のアルギニン、および0.87%(w/v)のアラニンのうちのいずれか1つとを含む。別の実施形態では、水性試料は、5%(w/v)のトレハロースと、2.66%(w/v)のソルビトール、1.34%(w/v)のグリセロール、1.54%(w/v)のアルギニン、および1.3%(w/v)のアラニンのうちのいずれか1つとを含む。
【0045】
このプロセスの治療用タンパク質は、より小さいペプチドならびにより大きいタンパク質を含む任意の治療用タンパク質であり得る。一実施態様では、本発明の治療用タンパク質は、100キロダルトン超、または約150キロダルトン以上である。本発明に含まれる治療用タンパク質は、単離された内因性タンパク質、異種発現タンパク質、および/またはキメラ融合タンパク質もしくは内因性ポリペプチドの変異体などの組換えタンパク質であり得る。一実施形態では、治療用タンパク質は、抗原結合タンパク質である。抗原結合タンパク質は、別の分子実体に結合する任意のタンパク質を包含する。例えば、抗原結合タンパク質としては、抗体、二重特異性抗体、抗体フラグメント、ScFv融合タンパク質、相補性決定領域(CDR)含有タンパク質、リガンド、受容体、リガンドフラグメント、受容体フラグメント、リガンドおよび/または受容体ドメインを含む融合タンパク質、ならびにトラップ分子を含む受容体-Fc融合タンパク質が挙げられる。
【0046】
一実施形態では、治療用タンパク質は、抗体である。特定の実施形態では、治療用抗体は、モノクローナル抗体である。より具体的な実施形態では、治療用タンパク質は、異種細胞株で産生される組換えヒト様またはヒト化抗体である。別の実施形態では、治療用タンパク質は、受容体-Fc融合タンパク質である。別のより具体的な実施形態では、治療用タンパク質は、aflibercept分子(VEGFトラップ)またはrilonacept分子(IL-1トラップ)などのトラップ分子である。
【0047】
いくつかの実施形態では、水溶液中の抗体濃度は低く、これはゼロを超え(すなわち、1μg/mLと同じくらい低いか、またはそれよりも低い)、25mg/mL以下の濃度範囲を含む。低濃度の一実施形態では、抗体濃度は、約2mg/mLである。
【0048】
他の実施形態では、水溶液中の抗体濃度は中程度であり、これは25mg/mLを超え、100mg/mL以下の濃度範囲を含む。中程度の濃度における一実施態様では、抗体濃度は、約50mg/mLである。
【0049】
他の実施形態では、水溶液中の抗体濃度は高く、これは100mg/mLを超え、200mg/mL以下の濃度範囲を含む。高濃度の一実施形態では、抗体濃度は、約150mg/mLである。
【0050】
さらに他の実施形態では、水溶液中の抗体濃度は超高濃度であり、これは200mg/mLを超える濃度範囲の抗体を含む。超高濃度の一実施形態では、抗体濃度は、約205mg/mLである。
【0051】
上述のように、しかしいかなる作用機序によっても限定されないが、水は、凍結乾燥生成物のための可塑剤として役立ち得、これは驚くべきことにタンパク質の安定性を改善する。したがって、一実施形態では、製造された組成物(すなわち、安定な凍結乾燥製剤)の水分含量は、2重量%以上および10重量%以下である。別の実施形態では、薬学的に許容される凍結乾燥ケーキの水分含量は、3重量%以上および6重量%以下である。別の実施形態では、薬学的に許容される凍結乾燥ケーキの水分含量は、4重量%以上および6重量%以下である。特定の一実施形態では、薬学的に許容される凍結乾燥ケーキの水分含量は、約6%である。別の特定の実施形態では、薬学的に許容される凍結乾燥ケーキの水分含量は、約4.5%である。さらに別の特定の実施形態では、薬学的に許容される凍結乾燥ケーキの水分含量は、約3%である。
【0052】
一実施形態では、凍結乾燥タンパク質は、室温で少なくとも24ヶ月安定である。特定の実施形態では、約2%以下の薬学的に許容される凍結乾燥ケーキが、25℃で24ヶ月の貯蔵後に分解する。いかなる機序によっても限定されないが、分解は、タンパク質分解、化学修飾、凝集などを伴い得る。凝集は、抗体分解の一般的な形態であり、高分子量(HMW)種の形成によって注目される。分解は、当該技術分野で既知の、またはまだ発明されていない任意のタンパク質分析を使用して決定され得る。特定の実施形態では、抗体の分解は、サイズ排除(SE)クロマトグラフィによって高分子量(HMW)種のパーセントの変化を測定することによって決定される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】経時的なタンパク質安定性に対する温度および水分の効果を示す棒グラフである。X軸は、月単位の時間および温度を表す。Y軸は、タンパク質の高分子量種の量のパーセント変化を表す。各温度について、個々のヒストグラムは、X軸に沿って左から右に増加する含水量パーセント(w/w)、0%の水(白抜きの棒)、0.5%の水(薄い灰色の棒)、1.5%の水(下向きクロスハッチの棒)、3.0%の水(縦線の棒)、4.5%の水(水平線の棒)、6%の水(白抜きのダイヤモンドの棒)、8%の水(チェックの様)、および10%の水(濃い灰色の棒)を表す。
図2】経時的なタンパク質安定性に対する温度および水分の効果を示す棒グラフである。X軸は、月単位の時間および温度を表す。Y軸は、タンパク質の高分子量種の量のパーセント変化を表す。各温度について、個々のヒストグラムは、X軸に沿って左から右に増加する含水量パーセント(w/w)、0%の水(白抜きの棒)、0.5%の水(薄い灰色の棒)、1.5%の水(下向きクロスハッチの棒)、3.0%の水(縦線の棒)、4.5%の水(水平線の棒)、6%の水(白抜きのダイヤモンドの棒)、8%の水(チェックの様)、および10%の水(濃い灰色の棒)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明が説明される前に、説明される特定の方法および実験条件が変動し得るため、本発明が、そのような方法および条件に制限されないことが理解されるべきである。本明細書で使用する用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるので、制限することを企図するものではないことも理解されることになっている。
【0055】
賦形剤、成分、および他の材料の絶対量および相対量は、質量またはモル数によって表され得る。質量単位は、グラム、ミリグラム、マイクログラムなどとして表され得る)。「重量/体積」または「w/v」における「重量」という用語は、「質量」を意味する。相対量は、重量パーセント(すなわち、質量パーセント)として表され得、1パーセントの重量/体積(w/v)は、100ミリリットルの体積当たり1グラムの材料を意味する。また例えば、重量で1部の成分「B」当たり1部の成分「A」は、例えば、1グラムの成分「A」毎に1グラムの成分「B」が存在することを意味する。また、例えば、成分「A」の1重量パーセント(1%)は、例えば、粒子の全質量100グラム毎に1グラムの成分「A」が存在することを意味する。成分の相対量はまた、所与の体積当たりのモル数または分子数、例えば1リットル当たりのミリモル(ミリモル(mM))、または他の成分当たりを単位として表されてもよく、例えば、モルによるY部分成分「B」当たりのX部成分「A」は、「A」のXモル毎に「B」のYモルが存在することを意味する。
【0056】
本明細書に記載されるものと同様または同等の任意の方法および材料が、本発明の実施または試験で使用され得るが、例となる方法および材料がここで説明される。本明細書で言及される全ての出版物は、それらの全体を記載するために参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
賦形剤
賦形剤は、医薬製剤中に活性原薬と一緒に添加される成分である。賦形剤は、原薬を安定化する、および/または製剤に嵩を加えるのを助ける。成分という用語は、賦形剤と互換的に使用される。
【0058】
賦形剤は、原薬の緩衝、増量、可溶化、安定化、可塑化、および保護のような様々な目的のための様々な物質を含む。保護剤は、熱応力および/または撹拌のような物理的応力から保護する。緩衝剤は、当該技術分野において周知である。
【0059】
一般に、凍結乾燥前および再構成後にタンパク質を安定化するために、緩衝剤が凍結乾燥前タンパク質水溶液中に含まれる。緩衝剤は、1mM~100mMの濃度で凍結乾燥前溶液中に含まれてもよい。いくつかの特定の実施形態では、緩衝剤は、約10mMで凍結乾燥前溶液中に含まれる。ある特定の実施形態では、緩衝剤は、5mM±0.75mM~15mM±2.25mM、6mM±0.9mM~14mM±2.1mM、7mM±1.05mM~13mM±1.95mM、8mM±1.2mM~12mM±1.8mM、9mM±1.35mM~11mM±1.65mM、10mM±1.5mM、または約10mMの濃度で、凍結乾燥前溶液中に存在する。ある特定の実施形態では、凍結乾燥前溶液の緩衝剤系は、10mM±1.5mMのヒスチジン、リン酸塩、および/または酢酸塩を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、緩衝剤は、約3~約9のpH範囲内、または約3.7~約8.0のpH範囲内のどこかで緩衝することが可能な化学物質から選択される。例えば、凍結乾燥前溶液は、約3.4、約3.6、約3.8、約4.0、約4.2、約4.6、約4.8、約5.0、約5.2、約5.4、約5.6、約5.8、約6.0、約6.2、約6.4、約6.6、約6.8、約7.0、約7.2、約7.4、約7.6、約7.8、または約8.0のpHを有し得る。
【0061】
緩衝剤は、例えば、ヒスチジンおよび酢酸塩の組み合わせ(ヒス-酢酸塩緩衝剤)などの個々の緩衝剤の組み合わせであってもよい。一実施形態では、緩衝剤は、酢酸塩によって緩衝された範囲など、約3.5~約6、または約3.7~約5.6の緩衝範囲を有する。一実施形態では、緩衝剤は、リン酸によって緩衝された範囲など、約5.5~約8.5、または約5.8~約8.0の緩衝範囲を有する。一実施形態では、緩衝剤は、ヒスチジンによって緩衝された範囲など、約5.0~約8.0、または約5.5~約7.4の緩衝範囲を有する。
【0062】
賦形剤は、安定剤を含む。本明細書で使用される場合、安定剤は、凍結乾燥前溶液に添加されて、凝集または他の分解に対してタンパク質を安定化する。凍結乾燥プロセス中にガラス動力学を制御することによって、または安定剤とタンパク質との特異的相互作用を通してタンパク質の本来の構造を保存するのを助けることによって、安定化が生じ得る。凍結乾燥中の安定剤の生物物理学的考察については、Changら,“Mechanism of protein stabilization by sugars during freeze-drying and storage:native structure preservation,specific interaction,and/or immobilization in a glassy matrix?”94(7)J.Pharm.Sci.1427-44(2005)を参照されたい。
【0063】
凍結乾燥前溶液中に含むための安定剤には、ポリオール、糖、塩(例えば、塩化ナトリウム)、アミノ酸などが含まれる。最適な安定化効果のために、様々な個々の安定剤が単独で、または1つ以上の他の安定剤と組み合わせて使用され得る。例えば、糖とポリオール、アミノ酸と糖、アミノ酸とポリオール、糖と塩、アミノ酸と塩、ポリオールと塩などが組み合わされ得る。
【0064】
ポリオールは、2つ以上のヒドロキシル基(-OH)を有する有機分子である。ポリオールには、ポリマーならびにモノマーが含まれる。糖アルコールは、ポリオールのサブグループである。有用な安定剤として役立ち得る糖アルコールには、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、イソマルト、エリトリトール、マルチトール、およびグリセロールが含まれる。他のモノマーポリオールには、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびペンタエリスリトールが含まれる。ポリマーポリオールは、ポリオールサブユニットのポリエステルまたはポリエーテルであってもよい。有用な例となるポリマーポリオールには、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールが含まれる。
【0065】
糖は、安定剤(ならびに充填剤)として使用される。糖は、還元糖または非還元糖のいずれかに分類され得る。非還元糖には、ジサッカライドスクロースおよびトレハロースが含まれる。還元糖には、グルコース、マルトース、およびラクトースが含まれる。一般に、還元糖は、メイラード反応を介してタンパク質を還元することがあるため、非還元糖がタンパク質の凍結乾燥に好ましい。一般に、Lavakumarら,“Lyophilization/Freeze Drying-A Review,”3(4)Int.J.Novel Trends in Pharm.Sci.2277-2782(2013)を参照されたい。ジサッカライドトレハロースおよびスクロースは、比較的不活性であり、凍結乾燥中に非晶質ガラスを形成する傾向がある。トレハロースまたはスクロースは、単独でまたはアミノ酸もしくはポリオールと組み合わせてのいずれかで、本発明の実施において安定剤として使用される。
【0066】
一実施形態では、トレハロースが唯一の安定剤として使用される。他の実施形態では、トレハロースは、ポリオールと組み合わされる。いくつかの実施形態では、安定剤は、トレハロースおよびソルビトール、またはトレハロースおよびグリセロールの組み合わせである。他の実施形態では、トレハロースは、アミノ酸と組み合わされる。具体的には、トレハロースは、アラニンと組み合わされるか、またはトレハロースは、アルギニンと組み合わされる。
【0067】
他の実施形態では、スクロースが唯一の安定剤として使用される。他の実施形態では、スクロースは、ポリオールと組み合わされる。特定の実施形態では、安定剤は、スクロースおよびマンニトール、スクロースおよびソルビトール、またはスクロースおよびグリセロールの組み合わせである。他の実施形態では、スクロースは、アミノ酸と組み合わされる。具体的には、スクロースは、アルギニンと組み合わされるか、またはスクロースは、アラニンと組み合わされる。
【0068】
アミノ酸が安定剤として使用される。グリシンは、一般的に使用される充填剤および安定剤である。他の有用なアミノ酸には、アルギニン、アラニン、およびプロリンが含まれる。いくつかの実施形態では、アルギニンが安定剤として使用される。いくつかの特定の実施形態では、アルギニンは、スクロースと組み合わされるか、またはアルギニンは、トレハロースと組み合わされる。他の実施形態では、アラニンが安定剤として使用される。いくつかの特定の実施形態では、アラニンは、スクロースと組み合わされるか、またはアラニンは、トレハロースと組み合わされる。
【0069】
場合によっては、1つ以上の界面活性剤が賦形剤として使用され得る。界面活性剤は、タンパク質-タンパク質の疎水性相互作用およびその結果として生じる高分子量種(すなわち、凝集体)の形成を減少させることによって、さらなる安定性を提供すると考えられている。いくつかの実施形態では、1つ以上の界面活性剤(複数可)が、凍結乾燥前タンパク質含有水溶液中に含まれてもよい。他の実施形態では、1つ以上の界面活性剤(複数可)が、再構成希釈剤溶液中に含まれてもよい。界面活性剤は、それが溶解している流体の表面張力を低下させ、かつ/または油と水との間の界面張力を低下させる物質を含む。界面活性剤は、イオン性または非イオン性であってもよい。凍結乾燥前溶液または再構成後溶液中に含まれ得る例示的な非イオン性界面活性剤には、例えば、アルキルポリ(エチレンオキシド)、アルキルポリグルコシド(例えば、オクチルグルコシドおよびデシルマルトシド)、セチルアルコールおよびオレイルアルコールなどの脂肪アルコール、コカミドMEA、コカミドDEA、ならびにコカミドTEAが含まれる。凍結乾燥前水溶液(または再構成後溶液)中にふくまれ得る特定の非イオン性界面活性剤には、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート28、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート81、およびポリソルベート85などのポリオキシエチレンソルビタンエステル(別名、ポリソルベート)、ポロキサマー188、ポロキサマー407などのポロキサマー、ポリエチレン-ポリプロピレングリコール、またはポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。ポリソルベート20は、TWEEN20、ソルビタンモノラウレート、およびポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートとしても知られている。ポリソルベート80は、TWEEN80、ソルビタンモノオレエート、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートとしても知られている。
【0070】
凍結乾燥前溶液または再構成溶液内に含有される界面活性剤の量は、凍結乾燥製剤に望まれる特定の性質および目的に応じて変化し得る。ある特定の実施形態では、凍結乾燥前溶液または再構成溶液は、約0.001%(w/v)~約0.5%(w/v)の界面活性剤(例えば、ポリソルベート20またはポリソルベート80)を含有し得る。例えば、凍結乾燥前は、約0.001%、約0.0015%、約0.002%、約0.0025%、約0.003%、約0.0035%、約0.004%、約0.0045%、約0.005%、約0.0055%、約0.006%、約0.0065%、約0.007%、約0.0075%、約0.008%、約0.0085%、約0.009%、約0.0095%、約0.01%、約0.015%、約0.016%、約0.017%、約0.018%、約0.019%、約0.02%、約0.021%、約0.022%、約0.023%、約0.024%、約0.025%、約0.026%、約0.027%、約0.028%、約0.029%、約0.03%、約0.031%、約0.032%、約0.033%、約0.034%、約0.035%、約0.036%、約0.037%、約0.038%、約0.039%、約0.04%、約0.041%、約0.042%、約0.043%、約0.044%、約0.045%、約0.046%、約0.047%、約0.048%、約0.049%、約0.05%、約0.051%、約0.052%、約0.053%、約0.054%、約0.055%、約0.056%、約0.057%、約0.058%、約0.059%、約0.06%、約0.061%、約0.062%、約0.063%、約0.064%、約0.065%、約0.066%、約0.067%、約0.068%、約0.069%、約0.07%、約0.071%、約0.072%、約0.073%、約0.074%、約0.075%、約0.076%、約0.077%、約0.078%、約0.079%、約0.08%、約0.081%、約0.082%、約0.083%、約0.084%、約0.085%、約0.086%、約0.087%、約0.088%、約0.089%、約0.09%、約0.091%、約0.092%、約0.093%、約0.094%、約0.095%、約0.096%、約0.097%、約0.098%、約0.099%、約0.10%、約0.15%、約0.20%、約0.25%、約0.30%、約0.35%、約0.40%、約0.45%、または約0.50%の界面活性剤(例えば、ポリソルベート20またはポリソルベート80)を含有し得る。
【0071】
1つ以上の可塑剤が凍結乾燥タンパク質組成物中に含まれる。可塑剤は、系の流動性または柔軟性を高めるために一般に使用される。流動性の増加は、可塑剤が系の自由体積を増加させ、ガラス転移温度を低下させることの結果であると考えられている。可塑剤の添加は、凍結乾燥ケーキ内のアルファ緩和およびベータ緩和の両方を修正する。アルファ緩和は、一次緩和またはガラス緩和としても知られており、全体的な緩和プロセスである。ベータ緩和は、より小さい分子(すなわち、可塑剤)によってより良好に修飾され得るタンパク質ポリマー骨格運動に関連するより局所的なプロセスである。両方の緩和プロセスが、系の全体的なエネルギーを減少させ、特にベータ緩和の場合には、タンパク質安定性に影響を及ぼすと考えられている。可塑剤がベータ緩和時間を短縮し、同時にタンパク質安定性を低下させる可能性があることは、タンパク質生物物理学の分野では一般的に知られている(例えば、Cicerone and Douglas,“β-Relaxation governs protein stability in sugar-glass matrices,”Soft Matter 8:2983-2991,2012を参照されたい)。
【0072】
本発明はまた、一態様において、タンパク質安定性を維持または増強しながら、ケーキに十分な柔軟性およびアルファ緩和をもたらす「安定剤」を作り出すために、特定の比で1つ以上の可塑剤と組み合わせた1つ以上の糖を含有する、凍結乾燥タンパク質製剤の実施形態を提供する。いくつかの実施形態では、安定剤は、約19:1~約1:1の糖対可塑剤の重量対重量(すなわち、質量対質量)比を含む。いくつかの実施形態では、安定剤は、約19:1、約18:1、約17:1、約16:1、約15:1、約14:1、約13:1、約12:1、約11:1、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、または約1:1の糖対可塑剤の重量対重量比を含む。
【0073】
有用な可塑剤には、ソルビトール、グリセロール(グリセリン)、マンニトール、およびキシリトールなどのポリオール、グリシン、アルギニン、プロリン、およびアラニンなどのアミノ酸、ならびにNaClなどの塩が含まれる。興味深いことに、水も可塑剤として機能することができる。しかしながら、水は、移動度の増加およびTgの低下をもたらす化学反応物および可塑剤の両方であるため、一般的には好まれない。移動度の増加は、系内の反応性および加水分解の増加と相関している。反応性および加水分解の増加は、タンパク質の安定性を損なう。Terakitaら,“The Influence of Water on the Stability of Lyophilized Formulations with Inositol and Mannitol as Excipients,”57(5)Chem.Pharm.Bull.459-463(2009)を参照されたい。
【0074】
上記のように、水と組み合わせたマンニトール、グリセロール、ソルビトール、およびグリシンは、いくつかの実施形態では可塑剤として使用される。理論によって束縛されないが、特定の製剤実施形態におけるこれらの分子は、タンパク質安定性も高めながらベータ緩和時間を短縮すると考えられている。
【0075】
いくつかの特定の実施形態では、糖スクロースまたはトレハロースは、約4:1、約3.9:1、約3.8:1、約3.7:1、約3.6:1、約3.5:1、約3.4:1、約3.3:1、約3.2:1、約3.1:1、約3:1、約2.9:1、約2.8:1、約2.7:1、約2.6:1、約2.5:1、約2.4:1、約2.3:1、約2.2:1、約2.1:1、約2:1、約2:1、約1.9:1、約1.8:1、約1.7:1、約1.6:1、約1.5:1、約1.4:1、約1.3:1、約1.2:1、約1.1:1、または約1:1の重量対重量比で、可塑剤ソルビトールと組み合わされる。他の特定の実施形態では、糖スクロースまたはトレハロースは、約33:1、約32:1、約31:1、約30:1、約29:1、約28:1、約27:1、約26:1、約25:1、約24:1、約23:1、約22:1、約21:1、約20:1、約19:1、約18:1、約17:1、約16:1、約15:1、約14:1、約13:1、約12:1、約11:1、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4.5:1、約4:1、約3.5:1、または約3:1の重量対重量比で、可塑剤アルギニンと組み合わされる。
【0076】
本発明はまた、一態様において、水が凍結乾燥組成物中で安定化可塑剤として役立ち、室温で貯蔵された凍結乾燥組成物中のタンパク質凝集速度を低下させるのを助けるということを示す。凍結乾燥ケーキ中のタンパク質を室温で効果的に安定化するのに必要な水分の量は、タンパク質含有量の増加と共に増加し、タンパク質含有量の減少と共に減少する。したがって、50mg/mLのタンパク質を含有する凍結乾燥前溶液から得られた凍結乾燥組成物は、150mg/mLのタンパク質を含有する凍結乾燥前溶液から得られた凍結乾燥組成物よりも低い水分含量を必要とし得る。また、凍結乾燥ケーキ中のタンパク質を効果的に安定化するのに必要とされる水分の最適量は、貯蔵温度と共に変化する。例えば、中間量の水分は、室温でのタンパク質凍結乾燥物の長期貯蔵に有益である。より高い貯蔵温度(例えば、37℃)では、より少ない水分が必要とされる。
【0077】
例えば、図1は、25℃、37℃、または50℃で貯蔵した例示的な抗体凍結乾燥製剤の安定性に対する水分の影響を示す。ここで、凍結乾燥前製剤は、150mg/mLのIgG、5%スクロース、および1.54%アルギニンを含有していた。最終凍結乾燥ケーキは、0%、0.5%、1.5%、3.0%、4.5%、6%、8%、または10%の水分(w/w)を含有していた。図1に示されるように、より高い貯蔵温度は、2~3ヶ月にわたってより低いタンパク質安定性をもたらした。興味深いことに、最大の安定性をもたらす水分の最適量は、37℃または50℃よりも室温の方が高かった。この特定の例では、室温でのタンパク質安定性のための最適水分含量は、約4.5%(w/w)であり、50℃で2ヶ月の貯蔵に対しては約1.5%~約3%であった。より長期の安定性データが図2に示され、図2は、25℃および37℃でそれぞれ12ヶ月および6ヶ月貯蔵した例示的な抗体凍結乾燥製剤を示す。図2に示されるように、3.0%~4.5%(w/w)の水分含量が試験した両方の温度下で最良の安定性をもたらし、4.5%の水分含量は、室温(25℃)条件下で12ヶ月において最大の安定性をもたらした。
【0078】
一実施形態では、本発明は、室温(25℃)で少なくとも12ヶ月安定なままである1.5%~8%の水(w/w)を含む、安定な凍結乾燥タンパク質(例えば、抗体)製剤を提供し、安定性とは、12ヶ月の貯蔵期間にわたる高分子量種の2%未満の増加を指す。別の実施形態では、本発明は、室温(25℃)で少なくとも12ヶ月安定なままである3.0%~4.5%の水(w/w)を含む、安定な凍結乾燥タンパク質(例えば、抗体)製剤を提供し、安定性とは、12ヶ月の貯蔵期間にわたる高分子量種の1.5%未満の増加を指す。
【0079】
いくつかの実施形態では、凍結乾燥組成物は、0.5重量%以上の水、0.6重量%以上の水、0.7重量%以上の水、0.8重量%以上の水、0.9重量%以上の水、1重量%以上の水を、1.5重量%以上の水、2重量%以上の水、2.5重量%以上の水、3重量%以上の水、3.5重量%以上の水、4重量%以上の水、4.5重量%以上の水、5重量%以上の水、5.5重量%以上の水、6重量%以上の水、6.5重量%以上の水、7重量%以上の水、7.5重量%以上の水、8重量%以上の水、8.5重量%以上の水、9重量%以上の水、または9.5重量%以上の水であるが、10重量%以下の水を含有する。しかしながら、最適量を超えた水は、タンパク質の不安定性を増大させる可能性がある。したがって、いくつかの実施形態では、凍結乾燥組成物は、10重量%以下の水、9.5重量%以下の水、9重量%以下の水、8.5重量%以下の水、8重量%以下の水、7.5重量%以下、7重量%以下の水、6.5重量%以下の水、6重量%以下の水、5.5重量%以下の水、5重量%以下の水、4.5重量%以下の水、4重量%以下の水、3.5重量%以下の水、3重量%以下の水、2.5重量%以下の水、2重量%以下の水、1.5重量%以下の水、1重量%以下の水、0.9重量%以下の水、0.8重量%以下の水、0.7重量%以下の水、0.6重量%以下の水であるが、0.5重量%以上の水を含有する。
【0080】
「水分含量」という語句は、「含水量」と互換的に使用され得る。しかしながら、「水分含量」は、凍結乾燥ケーキの含水量を説明するのに使用され、一方、「含水量」は、水溶液、ゲル、他の液体、ガス、氷、または凍結乾燥ケーキ、噴霧乾燥粒子などの固体形態の製剤中の水の量を説明するために使用される。いくつかの実施形態では、凍結乾燥組成物の水分含量は、0.5重量%~10重量%、1重量%~10重量%、2重量%~10重量%、3重量%~10重量%、4重量%~10重量%、5重量%~10重量%、6重量%~10重量%、7重量%~10重量%、8重量%~10重量%、9重量%~10重量%、0.5重量%~9重量%、0.5重量%~8重量%、0.5重量%~7重量%、0.5重量%~6重量%、0.5重量%~5重量%、0.5重量%~4重量%、0.5重量%~3重量%、0.5重量%~2重量%、0.5重量%~1重量%、1重量%~2重量%、1.5重量%~2.5重量%例えば、2重量%~3重量%、2.5重量%~3.5重量%、3重量%~4重量%、3.5重量%~4.5重量%、4重量%~5重量%、4.5重量%~5.5重量%、5重量%~6重量%、5.5重量%~6.5重量%、6重量%~7重量%、6.5重量%~7.5重量%、7重量%~8重量%、7.5重量%~8.5重量%、8重量%~9重量%、8.5重量%~9.5重量%、9重量%~10重量%、9.5重量%~10重量%、または約1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%もしくは8重量%である。いくつかの実施形態では、凍結乾燥組成物の水分含量は、3重量%~6重量%、3.1重量%~5.9重量%、3.2重量%~5.8重量%、3.3重量%~5.7重量%、3.4重量%~5.6重量%、3.5重量%~5.5重量%、3.6重量%~5.4重量%、3.7重量%~5.3重量%、3.8重量%~5.2重量%、3.9重量%~5.1重量%、4重量%~5重量%、4.1重量%~4.9重量%、4.2重量%~4.8重量%、4.3重量%~4.7重量%、4.4重量%~4.6重量%、または約4.5重量%である。いくつかの実施形態では、凍結乾燥組成物の水分含量は、2重量%~4重量%、2.1重量%~3.9重量%、2.2重量%~3.8重量%、2.3重量%~3.7重量%、2.4重量%~3.6重量%、2.5重量%~3.5重量%、2.6重量%~3.4重量%重量%、2.7重量%~3.3重量%、2.8重量%~3.2重量%、2.9重量%~3.1重量%、または約3重量%である。
【0081】
いくつかの実施形態では、凍結乾燥ケーキ中の重量パーセント含水量は、約3%、約3.1%、約3.2%、約3.3%、約3.4%、約3.5%、約3.6%、約3.7%、約3.8%、約3.9%、約4%、約4.1%、約4.2%、約4.3%、約4.4%、約4.5%、約4.6%、約4.7%、約4.8%、約4.9%、約5%、約5.1%、約5.2%、約5.3%、約5.4%、約5.5%、約5.6%、約5.7%、約5.8%、約5.9%、約6%、約6.1%、約6.2%、約6.3%、約6.4%、約6.5%、約6.6%、約6.7%、約6.8%、約6.9%、約7%、約7.1%、約7.2%、約7.3%、約7.4%、約7.5%、約7.6%、約7.7%、約7.8%、約7.9%、または約8%である。いくつかの実施形態では、凍結乾燥ケーキの含水量は、3重量%超および10重量%未満である。
【0082】
凍結乾燥ケーキの含水量は、当該技術分野において既知の任意の1つ以上の方法によって決定され得る。それらの方法には、熱重量分析、ガスクロマトグラフィ、近赤外分光法、クーロメトリ、およびカールフィッシャー法または相対湿度センサ法を含む重量法が含まれる。これらの方法のいくつかは、J.K.Townes,“Moisture content in proteins:its effects and measurement,”705J.Chromatography A 115-127,1995、およびMalikら,“Analytical Options for the Measurement of Residual Moisture Content in Lyophilized Biological Materials,”Am.Pharma.Rev.August 01,2010、ならびにそこに引用されている参考文献で概説されている。例えば、凍結乾燥ケーキが秤量され、追加の加熱に供されて、全ての水および他の揮発物を完全に除去し、次いで再び秤量される、乾燥減量(LOD)法(重量)が使用され得る。質量損失は、出発原料内に含有される水(および他の揮発物)に起因する。含水量を決定するための別の方法は、IによるSOの酸化を測定することによってHOの量を決定するカールフィッシャー法(体積または電量)であり、1モルのIは、1モルのHO当たりの消費である。近赤外分光法は、タンパク質を含むガラスバイアル(ガラス表面)を通して1100nm~2500nmの反射率を測定して、試料を破壊することなく水分含量を決定する。United States Pharmacopeia,XXIII Revision,USP Convention,Rockville,MD 1995,pp.1801-1802、およびSavageら,“Determination of Adequate Moisture Content for Efficient Dry-Heat Viral Inactivation in Lyophilized Factor VIII by Loss on Drying and by Near Infrared Spectroscopy,”26 Biologicals 119-124,1998を参照されたい。
【0083】
凍結乾燥ケーキ
タンパク質と安定剤とを含有する凍結乾燥組成物は、「ケーキ」または「凍結乾燥ケーキ」としても知られている固体マトリックスを形成する。「薬学的に許容されるケーキ」(「薬学的に許容される凍結乾燥ケーキ」と互換的に使用される)は、非晶質(ガラス質、結晶質ではない)であり、審美的に優雅な外観を有する。薬学的に許容されるケーキは、収縮、クラッキング、部分的または全体的崩壊、メルトバック、または変色を示すべきではない。赤色、黒色、茶色、黄色、または他の薄く色のついたケーキは、変色して、許容されない。理想的なケーキは、機械的に強く、取扱い中の破壊に抵抗性があり、多孔質かつスポンジ状であり、均一な手触りがあり、かつ単一の実体を形成し、均一に白色である。ケーキは、バイアルの壁に均一に付着しているべきであり、剥離または他の収縮の兆候を示してはいけない。Carpenterら,“Rational design of stable lyophilized protein formulations:Some practical advice,”Pharmaceutical Research,14(8):969-975,1997を参照されたい。
【0084】
ケーキは、煙突状の構造、上面領域上の乾燥発泡体、ケーキ表面上のクラスティングまたはグレージング、および水平方向の層化または環形成を含む、凍結問題による視覚的欠陥がないべきである。ケーキは、ケーキ体積が凍結マトリクスよりも小さく、壁剥離の兆候が明らかである収縮、ケーキが乾燥マトリクスの亀裂を示し、ケーキが単一の実体を形成しないクラッキング、ケーキの全体的または部分的な崩壊などの異なる程度のケーキ構造の損失、ケーキが下部領域に溶解した材料の環を含有するメルトバック、ケーキの基部の小さい領域のみが溶解した材料を含有する部分的メルトバック、およびメイラード反応を受けた還元糖を含むことによるケーキの黄色または茶色の変色である茶色化を含む、乾燥問題による視覚的欠陥がないべきである。メルトバックは、遅い溶解時間、タンパク質凝集、分解、および効力の低下を招く可能性があるため、特に問題である。FDA,“Guide to Inspections of Lyophilization of Parenterals(7/93).Finished product inspection.Last update 2009,”2009(http://www.fda.gov/ICECI/Inspec-tions/InspectionGuides/ucm074909.htmから最終アクセス2016年7月8日)を参照されたい。
【0085】
タンパク質原薬
「タンパク質」という用語は、アミド結合を介して共有結合している約50を超えるアミノ酸を有する任意のアミノ酸ポリマーを意味する。タンパク質は、当該技術分野において「ポリペプチド」として一般に知られている1つ以上のアミノ酸ポリマー鎖を含有する。タンパク質は、単一の機能性生体分子を形成するために1つ以上のポリペプチドを含有し得る。「ポリペプチド」は一般に、50を超えるアミノ酸を含有し、一方で、「ペプチド」は一般に、50以下のアミノ酸を含有する。タンパク質は、1つ以上の共有結合および非共有結合修飾を含み得る。ジスルフィド架橋(すなわち、システイン残基間でシスチンを形成する)が、いくつかのタンパク質中に存在し得る。これらの共有結合は、単一のポリペプチド鎖内にあってもよく、または2つの個々のポリペプチド鎖間にあってもよい。例えば、ジスルフィド架橋は、インスリン、免疫グロブリン、プロタミンなどの適切な構造および機能にとって不可欠である。ジスルフィド結合形成の最近の概説については、Oka and Bulleid,“Forming disulfides in the endoplasmic reticulum,”1833(11)Biochim Biophys Acta 2425-9(2013)を参照されたい。
【0086】
ジスルフィド結合形成に加えて、タンパク質は、他の翻訳後修飾に供され得る。それらの修飾には、脂質化(例えば、ミリストイル化、パルミトイル化、ファルネシル化(farnesoylation)、ゲラニルゲラニル化、およびグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー形成)、アルキル化(例えば、メチル化)、アシル化、アミド化、グリコシル化(例えば、アルギニン、アスパラギン、システイン、ヒドロキシリジン、セリン、トレオニン、チロシン、および/またはトリプトファンへのグリコシル基の付加)、ならびにリン酸化(すなわち、セリン、トレオニン、チロシン、および/またはヒスチジンへのリン酸基の付加)が含まれる。真核生物において産生されたタンパク質の翻訳後修飾に関する最近の概説については、Mowen and David,“Unconventional post-translational modifications in immunological signaling,”15(6)Nat Immunol 512-20(2014)、およびBlixt and Westerlind,“Arraying the post-translational glycoproteome(PTG),”18 Curr Opin Chem Biol.62-9(2014)を参照されたい。
【0087】
免疫グロブリン(別名、「抗体」)は、複数のポリペプチド鎖および広範な翻訳後修飾を有するタンパク質の例である。標準免疫グロブリンタンパク質(例えば、IgG)は、4つのポリペプチド鎖、2つの軽鎖および2つの重鎖を含む。各軽鎖は、シスチンジスルフィド結合を介して1つの重鎖に結合し、2つの重鎖は、2つのシスチンジスルフィド結合を介して互いに結合している。哺乳動物系において産生された免疫グロブリンはまた、様々なポリサッカライドで様々な残基(例えば、アスパラギン残基)においてグリコシル化され、種によって異なり得、これは治療用抗体の抗原性に影響を与える可能性がある(Butler and Spearman,“The choice of mammalian cell host and possibilities for glycosylation engineering”,30 Curr Opin Biotech 107-112(2014)を参照されたい。
【0088】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」は、治療用タンパク質、研究または治療で使用される組換えタンパク質、トラップタンパク質および他の受容体Fc融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、二重特異性抗体、抗体フラグメント、ナノボディ、組換え抗体キメラ、サイトカイン、ケモカイン、ペプチドホルモンなどを含む。タンパク質は、昆虫バキュロウイルス系、酵母系(例えば、Pichia種)、哺乳動物系(例えば、CHO細胞およびCHO-K1細胞のようなCHO誘導体)などの組換え細胞ベースの産生系を使用して産生され得る。治療用タンパク質およびそれらの産生を考察する最近の概説については、Ghaderi et al.,“Production platforms for biotherapeutic glycoproteins.Occurrence,impact,and challenges of non-human sialylation,”28 Biotechnol Genet Eng Rev.147-75(2012)を参照されたい。
【0089】
いくつかの組換えFc含有タンパク質は、生物学的系において同族の結合パートナーを有する受容体または受容体フラグメント、リガンドまたはリガンドフラグメントを含有する。「受容体Fc融合タンパク質」は、免疫グロブリンFcドメインに融合した可溶性受容体を含有する組換え分子を指す。いくつかの受容体Fc融合タンパク質は、複数の異なる受容体のリガンド結合ドメインを含有し得る。これらの受容体Fc融合タンパク質は、「トラップ」または「トラップ分子」として知られている。rilonoceptおよびafliberceptはそれぞれ、IL1R(米国特許第7,927,583号を参照されたい)およびVEGF(米国特許第7,087,411号を参照されたい)に拮抗する市販のトラップの例である。他の組換えFc含有タンパク質は、Fcドメインに融合したペプチドを含有する組換えタンパク質、例えば、CentocorのMIMETIBODY(商標)技術を含む。組換えFc含有タンパク質は、C.Huang,“Receptor-Fc fusion therapeutics,traps,and MIMETIBODY technology,”20(6)Curr.Opin.Biotechnol.692-9(2009)に記載されている。
【0090】
「Fc融合タンパク質」は、2つ以上のタンパク質の一部または全部を含み(そのうちの1つは、免疫グロブリン分子のFc部分である)、それらの天然の状態で融合していない。例えば、Fc融合タンパク質は、例えば、IL-1トラップ(例えば、hIgGlのFcに融合したIL-1R1細胞外領域に融合したIL-1RAcPリガンド結合領域を含有するRilonacept。米国特許第6,927,004号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)、またはVEGFトラップ(例えば、hIgGlのFcに融合したVEGF受容体FlklのIgドメイン3に融合したVEGF受容体Flt1のIgドメイン2、例えば、配列番号1を含有するAflibercept。米国特許第7,087,411号および同第7,279,159号(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)などのトラップである。
【0091】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、40mg/mLを超える濃度で凍結乾燥前水溶液中に含まれる。いくつかの実施形態では、凍結乾燥前水溶液は、約50mg/mL~約250mg/mL、約100mg/mL~約200mg/mL、約125mg/mL~約175mg/mLの濃度のタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、凍結乾燥前水溶液は、約45mg/mL、約50mg/mL、約55mg/mL、約60mg/mL、約65mg/mL、約70mg/mL、約75mg/mL、約80mg/mL、約85mg/mL、約90mg/mL、約95mg/mL、約100mg/mL、約105mg/mL、約110mg/mL、約115mg/mL、約120mg/mL、約125mg/mL、約130mg/mL、約135mg/mL、約140mg/mL、約145mg/mL、約150mg/mL、約155mg/mL、約160mg/mL、約165mg/mL、約170mg/mL、約175mg/mL、約180mg/mL、約185mg/mL、約190mg/mL、約195mg/mL、または約200mg/mLの濃度のタンパク質を含む。
【0092】
容器
いくつかの実施形態では、治療用タンパク質を含有する凍結乾燥前水溶液は、容器に含まれる。フリーズドライプロセスは、半密閉式容器内の溶液に適用され、続いてこれは、閉鎖されてフリーズドライ組成物を含む。容器という用語は、本明細書では非常に広く適用される。容器は、例えば、2mL~最大4リットル以上を含むことが可能なボトル、ジャー、またはキャニスタなどのバルク容器、アンプル、バイアル(ガラスもしくはプラスチック)、注射器(ガラスもしくはプラスチック)、カートリッジ、または自動注入器であってもよい。バイアルは、0.2mL以下ほど小さくても、または100mLほど大きくてもよい。例示的なバイアルは、透明ガラスまたはアンバーガラス、タイプIホウケイ酸ガラス、タイプIIケイ酸ソーダガラス、またはタイプIIIケイ酸ソーダガラスで作られてもよい。バイアルは、栓、キャップ、フリップキャップ、またはスクリューキャップで閉鎖され得る。SCHOTT(登録商標)スタイルの管状ガラスは、凍結乾燥用途において特に有用である。
【0093】
生物学的薬剤の出現および注入可能な薬剤の患者の自己投与により、自動注入器は、薬物製品のためのより重要な容器となってきた。凍結乾燥薬物製品の自己投与は、患者が凍結乾燥ケーキを注入用滅菌水または他の滅菌溶媒で再構成することを必要とする。滅菌再構成、体積制御、取扱いの容易さ、および全体的な単純化を確実にするのを助けるために、デュアルまたはマルチチャンバ充填済み注射器が使用され得る。デュアルチャンバ自動注入器または他の充填済み注射器は、一方のチャンバに凍結乾燥薬物製品を含み、もう一方のチャンバに予め測定した量の希釈剤または液体医薬組成物を含む。例となるデュアルチャンバ注入器は、2006年11月21日に登録された米国第6,149,626A号、および2011年6月14日に登録された米国第7,959,600B2号に記載されている。
【0094】
タンパク質安定性
凍結乾燥形態のタンパク質は、いくつかの利点を提供し、そのうちの1つは、長期間、特に室温で少なくとも18ヶ月、タンパク質の安定性を維持することである。「室温」は、通常の作業環境の温度を指す。室温には、10~40℃、17~27℃、20~24℃、25℃±3℃、25℃±2℃、25℃±1℃の範囲内、または約25℃の温度が含まれる。「室温」という語句は、「周囲温度」という語句と互換的に使用され得る。室温は、「制御された室温」を包含し、これは薬局、病院、および倉庫で経験され得る15°~30°の過渡偏差(逸脱)を伴う20℃~25℃の通常の作業環境の温度を示す。「制御された室温」は、25℃以下の計算された平均動態温度を含む(The Pharmacopeia of the United States of America,Thirty-Third Revision and the National Formulary,Twenty-Eighth Edition,USP 33-NF 28 Reissue,General Notices and Requirements,“Applying to Standards,Tests,Assays,and Other Specifications of the United States Pharmacopeia”,§10.30 Storage Temperature and Humidity(2010年5月1日)、http://www.usp.org/sites/default/files/usp_pdf/EN/USPNF/USP33-NF28-ReissueGeneralNotices.pdfで入手可能(最終アクセス2016年7月8日)を参照されたい)。
【0095】
「安定性」という用語は、関連する環境中またはある特定の条件下での貯蔵後のタンパク質の許容可能な程度の物理構造(熱力学的およびコロイド安定性)、化学構造(速度論的安定性)、または生物学的機能(機能安定性)の保持を指す。タンパク質は、たとえそれが一定期間の貯蔵後にその物理構造、化学構造、または生物学的機能の100%を維持しなくても安定であり得る。ここで、例えば、凍結乾燥タンパク質は、室温で最大24ヶ月の貯蔵後にタンパク質集団の2%以下が高分子量形態で存在するときに、安定と見なされる。いくつかの実施形態では、タンパク質の約3%、約2.9%、約2.8%、約2.7%、約2.6%、約2.5%、約2.4%、約2.3%、約2.2%、約2.1%、約2%、約1.9%、約1.8%、約1.7%、約1.6%、約1.5%、約1.4%、約1.3%、約1.2%、約1.1%、約1.0%、約0.9%、約0.8%、約0.7%、約0.6%、約0.5%、約0.4%、約0.3%、約0.2%、または約0.1%以下が、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約7ヶ月、約8ヶ月、約9ヶ月、約10ヶ月、約11ヶ月、約12ヶ月、約13ヶ月、約14ヶ月、約15ヶ月、約16ヶ月、約17ヶ月、約18ヶ月、約19ヶ月、約20ヶ月、約21ヶ月、約22ヶ月、約23ヶ月、約24ヶ月、約36ヶ月、または18ヶ月以上の室温での貯蔵後に高分子量形態である場合に、凍結乾燥または他の固体形態のタンパク質は、安定と見なされる。
【0096】
ここで、高分子量種のパーセント変化が、室温での貯蔵の最初の月の間に約0.5%超、約0.6%超、約0.7%超、約0.8%超、または約0.9%超である場合に、凍結乾燥または他の固体形態のタンパク質は、室温で「不安定」と見なされる。したがって、室温での貯蔵の最初の月の間に0.5%以下の高分子量種のパーセント増加を有する凍結乾燥または他の固体形態のタンパク質は、安定と見なされ得る。
【0097】
安定性は、とりわけ、規定の温度で規定の時間貯蔵した後、または患者に送達した後に製剤中に残存する天然分子の割合を決定することによって測定され得る。その天然型を保持するタンパク質の割合(例えば、高分子量種および低分子量種を含む、全タンパク質に対する天然種の割合)は、とりわけ、サイズ排除クロマトグラフィ(例えば、サイズ排除高速液体クロマトグラフィ[SE-HPLC])によって決定され得る。凍結乾燥タンパク質の場合、ケーキが最初に可溶化され、次いでタンパク質が試験に供される。天然タンパク質には、凝集していないか、または別様に分解されていないタンパク質が含まれる。ある特定の実施形態では、天然型のタンパク質の少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%が、規定の温度で規定の期間貯蔵した後に凍結乾燥ケーキ中で検出され得る。凍結乾燥ケーキ中のタンパク質の80%超、好ましくは90%超がその天然型であるべきである。安定性が測定される既定の期間は、少なくとも14日、少なくとも28日、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも13ヶ月、少なくとも14ヶ月、少なくとも15ヶ月、少なくとも16ヶ月月、少なくとも17ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも19ヶ月、少なくとも20ヶ月、少なくとも21ヶ月、少なくとも22ヶ月、少なくとも23ヶ月、少なくとも24ヶ月、またはそれ以上であり得る。安定性を評価するときに試料が保持され得る温度は、約-80℃~約50℃、例えば、約-80℃、約-30℃、約-20℃、約0℃、約4°~8℃、約5℃、約25℃、または他の室温、約35℃、約37℃、または他の生理学的温度、約45℃、または約50℃の任意の温度であり得る。
【0098】
安定性は、とりわけ、規定の温度で規定の期間後に凍結乾燥ケーキ内で凝集体(すなわち、高分子量種、別名、HMW種)を形成するタンパク質の割合を決定することによって測定され得、安定性は、形成される高分子量(HMW)種のパーセントに反比例する。タンパク質のHMW種の割合は、上記のように、とりわけ、可溶化後のサイズ排除クロマトグラフィによって決定され得る。凍結乾燥タンパク質組成物はまた、室温で3ヶ月後にタンパク質の約1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、または0.1%未満がHMW形態で検出される場合に安定とみなされ得る。
【0099】
安定性は、規定の温度で規定の期間後に凍結乾燥ケーキ内で分解されるか、または別様に低分子量(LMW)種として発見されるタンパク質の割合を決定することによって測定され得、安定性は、可溶化された凍結乾燥ケーキで検出されるLMW種のパーセントに反比例する。タンパク質のLMW種の割合は、上記のように、サイズ排除クロマトグラフィによって決定され得る。タンパク質の凍結乾燥ケーキはまた、室温で3ヶ月後に第1の分子の約25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、または0.1%未満がLMW形態で検出される場合に安定とみなされ得る。
【0100】
例えば、熱安定性を決定するための示差走査熱量測定(DSC)、機械的安定性を決定するための制御された撹拌、および溶液濁度を決定するための約350nmまたは約405nmにおける吸光度などの他の方法が、凍結乾燥タンパク質の安定性を評価するために使用され得る。例えば、本発明の製剤は、約5℃~約25℃で6ヶ月以上貯蔵した後、製剤のOD405の変化が、時間0における製剤のOD405から約0.05未満(例えば、0.04、0.03、0.02、0.01、またはそれ以下)である場合に安定と見なされ得る。
【0101】
安定性はまた、抗体または他のタンパク質のその標的に対する生物学的活性、生理学的活性、または結合親和性を測定することによって評価され得る。例えば、凍結乾燥抗体は、既定の期間(例えば、最大1ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月など)、例えば、5℃、25℃、37℃、45℃、50℃などで貯蔵した後に、凍結乾燥製剤内に含まれる抗体が、前述の凍結乾燥および貯蔵前の抗体の結合親和性の少なくとも50%、95%、またはそれ以上である親和性で、その同族エピトープ含有抗原に結合する場合に、安定と見なされ得る。結合親和性は、例えば、ELISAまたはプラズモン共鳴によって決定され得る。生物学的活性は、抗体、可溶性受容体、またはリガンド活性アッセイ、例えば、同族結合パートナーを発現する細胞を抗体、可溶性受容体、またはリガンドを含む再構成製剤と接触させることによって決定され得る。そのような細胞への抗体、可溶性受容体、またはリガンドの結合は、例えば、FACS分析などを介して直接測定され得る。タンパク質は、タンパク質の生物学的または生理学的な比活性度(すなわち、効力)が、室温で少なくとも18ヶ月貯蔵した後のその初期(T)効力の少なくとも50%である場合に「安定」と見なされ得る。安定なタンパク質は、室温で最大12ヶ月、最大13ヶ月、最大14ヶ月、最大15ヶ月、最大16ヶ月、最大17ヶ月、最大18ヶ月、最大19ヶ月、最大20ヶ月、最大21ヶ月、最大22ヶ月、最大23ヶ月、または最大24ヶ月貯蔵した後に、少なくとも51%の効力、少なくとも52%の効力、少なくとも53%の効力、少なくとも54%の効力、少なくとも55%の効力、少なくとも56%の効力、少なくとも57%の効力、少なくとも58%の効力、少なくとも59%の効力、少なくとも60%の効力、少なくとも61%の効力、少なくとも62%の効力、少なくとも63%の効力、少なくとも64%の効力、少なくとも65%の効力、少なくとも66%の効力、少なくとも67%の効力、少なくとも68%の効力、少なくとも69%の効力、少なくとも70%の効力、少なくとも71%の効力、少なくとも72%の効力、少なくとも73%の効力、少なくとも74%の効力、少なくとも75%の効力、少なくとも76%の効力、少なくとも77%の効力、少なくとも78%の効力、少なくとも79%の効力、少なくとも80%の効力、少なくとも81%の効力、少なくとも82%の効力、少なくとも83%の効力効力、少なくとも84%の効力、少なくとも85%の効力、少なくとも86%の効力、少なくとも87%の効力、少なくとも88%の効力、少なくとも89%の効力、少なくとも90%の効力、少なくとも91%の効力、少なくとも92%の効力、少なくとも93%の効力、少なくとも94%の効力、少なくとも95%の効力、少なくとも96%の効力、少なくとも97%の効力、少なくとも98%の効力、または少なくとも99%の効力を保持する。
【0102】
「安定な」タンパク質は、最大18ヶ月などの長期間にわたる室温での貯蔵後に構造または比活性度の変化をほとんどまたは全く受けない。構造の変化には、凝集体または他の高分子量形態のタンパク質の形成、ペプチド結合の加水分解などのタンパク質の分解、および脱アミド、アシアリル化などの化学分解が含まれる。例えば、抗体分解の一般的な形態は、可逆的二量体および三量体、ならびにより安定で、かつあまり可逆性ではない四量体および高次多量体を含む凝集体の形成である。「不可逆的凝集体」は、凍結乾燥ケーキの再構成時に容易に可溶化または解離しない凝集体のサブセットである。「安定な」タンパク質は、室温で最大7ヶ月、最大8ヶ月、最大9ヶ月、最大10ヶ月、最大11ヶ月、最大12ヶ月、最大13ヶ月、最大14ヶ月、最大15ヶ月、最大16ヶ月、最大17ヶ月、最大18ヶ月、最大19ヶ月、最大20ヶ月、最大21ヶ月、最大22ヶ月、最大23ヶ月、または最大24ヶ月貯蔵した後に、15%未満、14%未満、13%未満、12%未満、11%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、または0.5%未満である、高分子量種の形成の増加を受ける。高分子量種を検出する方法は、0.2~0.3%の検出変動性を有し得る。
【0103】
タンパク質凝集または他の高分子量種の形成の温度依存性の速度は、アレニウスまたは修正アレニウス速度論(わずかに湾曲したアレニウスプロット)に従う(例えば、Chakroun et al.,“Mapping the Aggregation Kinetics of a Therapeutic Antibody Fragment,”Mol.Pharmaceut.13:307-319(2016)を参照されたい)。したがって、所与の製剤についての所与の温度での経時的な凝集速度および高分子量種のパーセント変化は、時間平方根関係およびアレニウスまたは修正アレニウス速度論に基づき予測され得る。例えば、凍結乾燥試料は、密封ガラスバイアル中で所与の温度(例えば、5℃、25℃、37℃、50℃)においてインキュベートされる。アリコートは、一定間隔で採取され、不溶性凝集体が除去され、次いでSE-HPLCに供される。観察された凝集速度は、時間依存性のメインピーク対HMWピーク面積データの線形適合から直接決定される。高分子量種のパーセント変化の予測は、時間平方根速度則およびアレニウス速度論をデータに適用することによって行われる。例えば、様々な温度で観測された速度定数は、アレニウスの式、ln k=ln A-(E/RT)に当てはめられ、式中、Eは、活性化エネルギー(cal/mol)であり、Rは、一般ガス定数(1.987cal/mol/K)であり、Tは、絶対温度(ケルビン単位)であり、ln Aは、衝突頻度などの因子を含む温度定数である。kの値は、アレニウスフィットから外挿されて、所与の温度(例えば、25℃)における高分子量種の経時的な変化(例えば、24ヶ月)を予測する。
【0104】
凍結乾燥
一般的にタンパク質を凍結乾燥する方法、および特に治療用抗体または他の抗原結合タンパク質を凍結乾燥する方法は、当該技術分野において周知である。簡潔に、一実施形態では、凍結乾燥は、上記のように、原薬と賦形剤とを含有する凍結乾燥前水溶液から始まる。凍結乾燥前水溶液は、開放容器(例えば、バイアル)内に配置され、開放容器は、棚上の凍結乾燥チャンバ内に配置される。凍結乾燥プロセスは、3つの基本的なステップ:(1)任意のアニーリングサイクルを伴う凍結、(2)一次乾燥、および(3)任意の乾燥後アニーリングステップを伴う二次乾燥を含む。第1のステップは、凍結である。ここで、棚温度は低下させられて、バイアル内の製剤を冷却する。氷晶が製剤内に形成され、製剤の残部は、より濃縮され粘性になる。濃縮された残部は凝固して、非晶質、結晶質、または結晶質/非晶質の組み合わされた状態を形成する。一実施形態では、残部は、非晶質ガラス状態で凝固する。
【0105】
いくつかの凍結乾燥プロトコルでは、凍結組成物は、結晶化を促進するためにアニーリングに供される。固体残部は、マンニトールおよびグリシンのような増量剤などのいくつかの成分を結晶化するためにある期間にわたって最終凍結温度より高い温度に保持される。
【0106】
次いで、氷は、昇華によって除去される。凍結乾燥チャンバの圧力(例えば、40~400トル)および棚温度(-30℃~+10℃)は、水の三重点未満に調整される。温度は、非晶質残部がケーキ構造の崩壊を防止するために、ガラス転移温度(T)未満に維持される。
【0107】
一次乾燥ステップ後、一部の水は、マトリクス内に閉じ込められたままである場合がある。残りの水は、二次乾燥ステップ中の脱着プロセスを通して除去される。ここで、棚温度は、脱着を促進し、かつ凍結乾燥生成物中の最適な水分含量を達成するために高められる。一実施形態では、最終水分含量は、約0.5%以上および約10%以下である。別の実施形態では、最終水分含量は、約3%以上および約6%以下である。特定の実施形態では、水分含量は、3%超であるが4%未満である。別の特定の実施形態では、水分含量は、約3%である。別の特定の実施形態では、水分含量は、約3.5%である。別の特定の実施形態では、水分含量は、約4%である。別の特定の実施形態では、水分含量は、約4.5%である。さらに別の特定の実施形態では、水分含量は、約6%である。
【0108】
一実施形態では、凍結乾燥生成物(「凍結乾燥ケーキ」)は、二次乾燥ステップ後にアニーリングステップに供される。乾燥後アニーリングはまた、物理エージングまたは構造緩和とも称される。この乾燥後アニーリングステップは、非晶質マトリクスの平衡ガラス状態への緩和(アルファ緩和)を促進し、貯蔵温度での構造緩和時間を増加させ、ガラス状態での移動度を減少させ、かつタンパク質をより安定なエネルギー状態に低下させ、それによりタンパク質安定性を最適化する可能性が高い。ここで、アニーリングステップは、分子移動度を短時間促進して、ガラス状態のエントロピーおよびタンパク質の回転形態の全体的な低減を可能にする。
【0109】
アニーリングステップ後、ガラスのランダムな熱力学的分子状態の数は、最小化され、ガラス平衡は、最大化される。いくつかの実施形態では、アニーリング温度は、生成物のTg未満である。いくつかの実施形態では、アニーリング温度は、25℃~約90℃、25℃~約80℃、25℃~約75℃、約約25℃~約70℃、35℃~約70℃、40℃~約70℃、30℃~約55℃、50℃~約60℃、55℃~約65℃、60℃~約70℃、65℃~約75℃、70℃~約80℃、または75℃~約85℃である。いくつかの実施形態では、アニーリング温度は、約90℃、約80℃、約79℃、約78℃、約77℃、約76℃、約75℃、約74℃、約73℃、約72℃、約71℃、約70℃、約69℃、約68℃、約67℃、約66℃、約65℃、約64℃、約63℃、約62℃、約61℃、約60℃、約59℃、約58℃、約57℃、約56℃、約57℃、約56℃、約55℃、約54℃、約53℃、約52℃、約51℃、約50℃、約49℃、約48℃、約47℃、約46℃、約45℃、約44℃、約43℃、約42℃、約41℃、約40℃、約39℃、約38℃、約37℃、約36℃、約35℃、約34℃、約33℃、約32℃、約31℃、約30℃、約29℃、約28℃、約27℃、約26℃、または25℃である。特定の実施形態では、アニーリング温度は、25℃を超える。別の特定の実施形態では、アニーリング温度は、50℃を超える。
【0110】
凍結乾燥ケーキは、DSCからのエントロピー回復または等温熱量測定によって定義されるケーキ構造の緩和を可能にするのに十分な期間、アニーリング温度に保持される。いくつかの実施形態では、アニーリング温度は、約12時間~約2週間、約12時間~1週間、約12時間~約数日間、約18時間~約72時間、約24時間~約36時間、約30時間~約42時間、約36時間~約48時間、約42時間~約54時間、約48時間~約60時間、約54時間~約66時間、約60時間~約72時間、約66時間~約78時間、または約72時間~約84時間保持される。いくつかの実施形態では、アニーリング温度は、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、約30時間、約31時間、約32時間、約33時間、約34時間、約35時間、約36時間、約37時間、約38時間、約39時間、約40時間、約41時間、約42時間、約43時間、約44時間、約45時間、約46時間、約47時間、約48時間、約49時間、約50時間、約51時間、約52時間、約53時間、約54時間、約55時間、約56時間、約57時間、約58時間、約59時間、約60時間、約61時間、約62時間、約63時間、約64時間、約65時間、約66時間、約67時間、約68時間、約69時間、約70時間、約71時間、約72時間、約73時間、約74時間、約75時間、約76時間、約77時間、約78時間、約79時間、約80時間、約81時間、約82時間、約83時間、または約84時間保持される。
【0111】
特定の実施形態では、アニーリング温度は、50℃を超え、これは約72時間保持される。別の特定の実施形態では、アニーリング温度は、約25℃であり、これは約72時間保持される。
【0112】
一実施形態では、アニーリング条件は、示差走査熱量計で乾燥後アニーリングステップを実施することによって実験的に決定される。温度曲線の吸熱領域は、一般に、アニーリング効果の直後に発生し、実践者がアニーリング温度を選択することを可能にする。Sartorら,“Calorimetric Studies of the Kinetic Unfreezing of Molecular Motions in Hydrated Lysozyme,Hemoglobin,and Myoglobin,”66 BiophysicalJ.249-258(1994)を参照されたい。
【実施例
【0113】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物をどのように作製および使用するかに関する説明を当業者に提供するために提示され、本発明の範囲を制限するよう意図されていない。使用される数(例えば、量、サイズなど)に関する精度を確実にするための努力が払われてきたが、いくつかの実験上の誤差および偏差が説明されるべきである。
【0114】
実施例1:凍結乾燥手順
(本明細書に記載される)抗体と賦形剤とを含有する凍結乾燥前水溶液をタイプIホウケイ酸ガラスバイアルに装填した。充填バイアルをLYOSTAR3凍結乾燥機(SP Scientific,Warminster,PA)内に配置した。チャンバを閉鎖し、棚温度を5℃に低下させた。試料を凍結前に30分間5℃に保持した。凍結のための昇温速度は、0.5℃/分であった。棚温度を60分間-45℃に保持した。
【0115】
一次乾燥を、約100mTorrの真空設定点および約-25℃の棚温度で実施し、これを約50時間、約0.5℃/分の加熱のための昇温速度で達成した。
【0116】
二次乾燥を35℃で実施し、これを約0.3℃/分の加熱のための昇温速度で達成した。二次乾燥は、約6時間継続した。
【0117】
二次乾燥後、チャンバを窒素ガスで約0.8気圧(約608,000mTorr)の圧力に再充填し、バイアルにFlurotec(登録商標)被覆4432/50ブチルゴム凍結乾燥栓で栓をした。
【0118】
実施例2:水分含量対タンパク質安定性
水分子は、凍結乾燥生成物中で可塑剤および安定剤として役に立ち得る。水は、その小さいサイズ、ならびに他の水分子および他の分子(タンパク質分子など)と水素結合を形成する能力により、可塑剤として役立つ。安定剤/可塑剤として水を使用することの利点は、再構成製剤の張度に影響を与えることなく、安定剤(水)対タンパク質の比が増加し得ることである。水分含量は、凍結乾燥プロセスの設計を通して調整され得る。凍結乾燥ケーキの水分含量を、Computrac(登録商標)Vapor Pro(登録商標)水分計(Arizona Instrument LLC,Chandler,AZ)によって決定した。
【0119】
組換えモノクローナル抗体(mAb1、mAb2、mAb3)をEESYR(登録商標)細胞中で産生し(2010年8月10日に発行された米国特許第7,771,997B2号を参照されたい)、10mMヒスチジン、pH6.0、0.1%ポリソルベート80、5%スクロース、および1.54%アルギニン(凍結乾燥前液体製剤中、全て%w/v)中150mg/mLの濃度で製剤化した。液体製剤を特定のレベルの水分含量(%w/w)まで上記のように凍結乾燥し、50℃、37℃、または25℃で特定の時間貯蔵した。貯蔵後、凍結乾燥製剤を水で再構成し、サイズ排除高速液体クロマトグラフィ(SE-HPLC)に供した。高分子量(HMW)種を検出し、統合し、T=0の対照と比較した。全タンパク質の一部分としてのHMW種のパーセント変化を計算し、表1に報告した。凍結乾燥された150mg/mLのmAb1は、25℃で貯蔵されたときに約4.5%の水分含量を有し、最も安定であった。
【0120】
3~10%の水分含量を有するmAb1の凍結乾燥製剤は、24ヶ月の25℃での貯蔵後に約2.0%以下分解すると予測された。アレニウス速度論アルゴリズムを測定された分解速度に適用し、時間平方根速度則に基づく予測を少なくとも24ヶ月まで行った。各水分含量点についてのHMW種のパーセント変化は、表2に報告される。凍結乾燥前水性製剤は、150mg/mLのmAb1、10mMヒスチジン、pH6.0、0.1%ポリソルベート80、5%スクロース、1.54%アルギニンであった。
【0121】
実施例3:乾燥後アニーリングの効果
凍結乾燥薬物製品をアニーリングすることによって、タンパク質安定性が改善された。凍結乾燥製剤をガラス転移温度未満でアニーリングすることは、非晶質分子をより低いエネルギー状態に緩和し、より安定な生成物をもたらすと仮定される。凍結乾燥製剤を70℃で72時間アニーリングすると、10%スクロースおよび3.08%アルギニンで凍結乾燥された150mg/mLのmAb1について、%HMWの観察された増加が低くなった(凍結乾燥前製剤:150mg/mLのmAb1、10mMヒスチジン、pH6.0、0.1%ポリソルベート80、10%スクロース、3.08%アルギニン)。抗体のHMW種のパーセント変化は、25℃、37℃、および50℃で6ヶ月貯蔵したアニーリング製剤および非アニーリング製剤について表3に報告される。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
アレニウス速度論アルゴリズムを測定された分解速度に適用し、アニーリングされた試料対37℃で貯蔵されたアニーリングされていない試料について、時間平方根速度則に基づく予測を少なくとも24ヶ月まで行った。アニーリングは、24ヶ月においてアニーリングされていない試料よりも約20%少ないHMW種をもたらすと予測された(すなわち、5.76%対6.05%の△%HMW)。
【0125】
【表3】
【0126】
実施例4:安定性に対する個々の賦形剤の効果
糖、ポリオール、塩、およびアミノ酸を含む特定の安定剤を、凍結乾燥抗体を安定化するそれらの個々の能力について評価した。凍結乾燥された150mg/mLのmAb1は、スクロースと製剤化された場合に最も安定であった(表4を参照されたい)。スクロース製剤のTは、室温での貯蔵に対して十分高く(約110℃)、必要な場合、可塑剤を添加するのに十分な許容度を提供する。
【0127】
実施例5:安定性に対するトレハロースの組み合わせ効果
トレハロースまたはスクロースをソルビトールまたはマンニトールなどの可塑剤と組み合わせると、驚くべきことに、より安定な室温製剤をもたらした。ソルビトールおよびトレハロースの組み合わせは、トレハロース単独よりも凍結乾燥された150mg/mLのmAb1を安定化した。ベースの凍結乾燥前製剤は、凍結乾燥前にトレハロースおよびソルビトールの様々な組み合わせを添加した150mg/mLのmAb1、10mMヒスチジン、pH6.0、0.1%ポリソルベート80であった。トレハロースおよび/またはソルビトールと組み合わせた凍結乾燥タンパク質の安定性を表5にΔ%HMWとして示した。
【0128】
【表4】
【0129】
【表5】
【0130】
実施例6:安定性に対するスクロースの組み合わせ効果
マンニトールおよびスクロースの組み合わせは、スクロース単独よりも凍結乾燥された150mg/mLのmAb1を安定化した。ベースの凍結乾燥前製剤は、凍結乾燥前にスクロースおよびマンニトールの様々な組み合わせを添加した150mg/mLのmAb1、10mMヒスチジン、pH6.0、0.1%ポリソルベート80であった。スクロースおよび/またはマンニトールと組み合わせた凍結乾燥タンパク質の安定性を表6にΔ%HMWとして示した。マンニトールおよびスクロースの組み合わせは、スクロース単独よりも凍結乾燥された150mg/mLのmAb1を安定化した。
【0131】
【表6】
【0132】
凍結乾燥抗体を安定化する能力を評価するために、スクロースをポリオールおよびアミノ酸と組み合わせた。150mg/mLのmAb1を、スクロース(Suc)、ならびにソルビトール(Sor)、グリセロール(Gly)、アルギニン(Arg)、およびアラニン(Ala)のうちのいずれか1つと異なる割合で組み合わせた。HMW種の変化を、様々な貯蔵時間で25℃および5℃において評価した。結果(Δ%HMW)は、表7に示される。25℃で貯蔵した場合、試験した賦形剤の組み合わせのいずれも、スクロース単独よりも凍結乾燥された150mg/mLのmAb1を安定化しなかった。驚くべきことに、ソルビトールおよびスクロースの組み合わせは、5℃で120ヶ月貯蔵した場合にスクロース単独よりも安定性を改善すると予測され、スクロース単独よりも安定である。
【0133】
実施例7:原薬の安定性に対するスクロースおよびアルギニンの組み合わせ効果
凍結乾燥された150mg/mLのmAb1および凍結乾燥された150mg/mLのmAb2は、10%スクロースおよび3.08%アルギニンを用いて製剤化した場合に同等の安定性を有する。HMW種の%変化を、25℃、37℃、および50℃における1ヶ月の貯蔵で計算した。凍結乾燥された150mg/mLのmAb1および凍結乾燥された150mg/mLのmAb2は、10%スクロースおよび3.08%アルギニンを用いて製剤化した場合に、25℃で24ヶ月以上まで同等の安定性を有すると予測された。Δ%HMW分析の結果は、表8に示される。
【0134】
【表7】
【0135】
【表8】
【0136】
実施例8:薬物製品安定性に対する安定剤対薬物製品の比の効果
スクロースおよびアルギニンの組み合わせを抗体と様々な重量比で製剤化し、Δ%HMWを50℃および25℃において様々な時点で決定した。安定剤対タンパク質が0.87:1以上である凍結乾燥された150mg/mLの抗体製剤は、24ヶ月、25℃での貯蔵後に1%以下分解すると予測される(時間平方根速度則およびアレニウス速度論に基づく)。結果は、表9に列挙される。
【0137】
【表9】
【0138】
【表10】
【0139】
実施例9:凍結乾燥前液体製剤中の低タンパク質濃度での凍結乾燥タンパク質に対する賦形剤の安定化効果
糖、ポリオール、塩、およびアミノ酸を含む特定の安定剤を、凍結乾燥抗体を安定化するそれらの個々の能力について評価した。凍結乾燥された2mg/mLのmAb3は、スクロース、トレハロースまたはアルギニンが安定剤として含まれた場合に、目立った分解を示さなかった。結果は、表10に示される。グリセロールも試験したが、凍結乾燥後に著しい分解が観察された。
【0140】
凍結乾燥抗体を安定化する能力を評価するために、トレハロースをポリオールおよびアミノ酸と組み合わせた。2mg/mLのmAb3を、トレハロース(Tre)、ならびにソルビトール(Sor)、グリセロール(Gly)、アルギニン(Arg)、およびアラニン(Ala)のうちのいずれか1つと異なる割合で組み合わせた。HMW種の変化を、様々な貯蔵時間で25℃において評価した。結果(Δ%HMW)は、表11に示される。3ヶ月、25℃での貯蔵後に試験した2mg/mLのmAb3凍結乾燥製剤のいずれにおいても、目立った分解は観察されなかった。
【表11】
図1
図2