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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-28
(45)【発行日】2025-04-07
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20250331BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20250331BHJP
【FI】
G03G21/00 314
G03G15/00 303
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020210846
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022097317
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】小林 進介
(72)【発明者】
【氏名】梅田 健介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 彩衣
(72)【発明者】
【氏名】船谷 和弘
(72)【発明者】
【氏名】鉄野 修一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 利彦
(72)【発明者】
【氏名】原 淳
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-258639(JP,A)
【文献】特開2010-224402(JP,A)
【文献】特開2010-032586(JP,A)
【文献】特開2005-308902(JP,A)
【文献】米国特許第05884121(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-0476966(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/34
15/00
15/16
15/36
21/00-21/04
21/10-21/14
21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な感光体と、
前記感光体の表面に接触して帯電部を形成し、前記帯電部で前記感光体の表面を帯電処理する帯電部材と、
前記帯電部材により帯電処理された前記感光体上に静電像を形成する静電像形成部と、
前記静電像に正規極性に帯電したトナーを供給し、前記感光体上にトナー像を形成する現像装置と、
前記感光体の表面に接触して転写部を形成し、前記転写部を通過する記録材に前記感光体上のトナー像を転写させる転写部材と、
前記転写部材に転写電圧を印加する転写電源と、
前記感光体の回転方向に関して前記転写部よりも下流側かつ前記帯電部よりも上流側で前記感光体の表面に接触して接触部を形成するブラシ部材と、
前記ブラシ部材にブラシ電圧を印加するブラシ電源と、
前記転写部材に付着したトナーを前記記録材が前記転写部にない時に前記転写部材から前記感光体の表面に移動させる清掃動作を実行可能な制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記転写部材と前記感光体との間に前記正規極性に帯電したトナーが前記感光体から前記転写部材に向けて移動するような電位差が形成され、前記ブラシ部材と前記感光体との間に前記正規極性に帯電したトナーが前記ブラシ部材から前記感光体に向けて移動するような電位差が形成される画像形成動作を実行した後に実行される前記清掃動作が、前記転写部材と前記感光体との間に前記正規極性に帯電したトナーが前記感光体から前記転写部材に向けて移動するような電位差、ならびに、前記転写部材と前記感光体との間に前記正規極性に帯電したトナーが前記転写部材から前記感光体に向けて移動するような電位差が形成される第1の動作と、前記ブラシ部材と前記感光体との間に前記正規極性とは逆の極性である逆極性に帯電したトナーが前記ブラシ部材から前記感光体に向けて移動するような電位差が形成される第2の動作と、を有するように制御し、
前記第1の動作において、前記転写電源により前記転写部材に前記正規極性を有する第1の転写電圧と、前記第1の転写電圧より絶対値が大きく前記正規極性を有する第2の転写電圧と、を印加し、前記第2の動作において、前記ブラシ電源により前記ブラシ部材に前記正規極性を有する前記ブラシ電圧を印加するように制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1の転写電圧は、前記帯電部材により帯電処理されて前記転写部に到達する前記感光体の表面の電位に対して前記逆極性側に高い前記転写電圧であって、前記転写部材と前記感光体との間で放電が発生しない前記転写電圧であることを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2の動作において、前記転写部を通過して前記接触部に到達する前記感光体の表面の電位に対して前記逆極性側に高い前記ブラシ電圧であって、前記ブラシ部材と前記感光体との間で放電が発生しない前記ブラシ電圧を、前記ブラシ電源により前記ブラシ部材に印加するように制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2の動作が終了した時以降に、前記ブラシ部材と前記感光体との間に前記正規極性に帯電したトナーが前記ブラシ部材から前記感光体に向けて移動するような電位差が形成される吐き出し期間を有するように制御することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記清掃動作において前記転写部を通過する前記感光体の表面の前記回転方向に関する先端が前記接触部に到達する時以前に、前記ブラシ部材と前記感光体との間に前記逆極性に帯電したトナーが前記ブラシ部材から前記感光体に向けて移動するような電位差が形成される回収前吐き出し期間を有するように制御することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記回収前吐き出し期間では、前記帯電部材により帯電処理された後に前記転写部材と前記感光体との間で放電が発生しない状態で前記転写部を通過して前記接触部に到達する前記感光体の表面の電位に対して前記逆極性側に高い前記ブラシ電圧であって、前記ブラシ部材と前記感光体との間で放電が発生しない前記ブラシ電圧を、前記ブラシ電源により前記ブラシ部材に印加するように制御することを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記ブラシ部材は、固定配置された導電性のブラシ部を有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記ブラシ部材は、回転可能な導電性のブラシ部を有し、
前記ブラシ部は、前記感光体の回転に伴って従動回転するか、前記感光体の周速度に対して速度差を有して若しくは有さずに前記接触部で前記感光体と前記ブラシ部とが順方向に移動するように回転駆動されるか、又は前記接触部で前記感光体と前記ブラシ部とが逆方向に移動するように回転駆動されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記転写部で前記感光体から前記記録材にトナー像が転写された後に前記感光体の表面に残留したトナーが前記接触部を通過する時には、前記ブラシ電源により前記ブラシ部材に前記正規極性の前記ブラシ電圧が印加されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記転写部で前記感光体から前記記録材にトナー像が転写された後に前記感光体の表面に残留したトナーは、前記現像装置によって回収されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記トナーは、平均円形度が0.96以上であることを特徴とする請求項1乃至1のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記トナーは一成分現像剤であることを特徴とする請求項1乃至1のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記ブラシ部材は糸を有し、前記糸の密度は150~350kF/inchであることを特徴とする請求項1乃至1のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いたプリンタ、複写機、ファクシミリ装置などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、感光ドラムなどの回転可能な感光体の表面が一様に帯電処理され、帯電処理された感光体の表面が画像情報に応じて露光されることで、感光体上に静電像が形成される。その後、感光体上の静電像は、トナーが供給されることで現像され、感光体上にトナー像が形成される。そして、この感光体上のトナー像が、紙などの記録材上に転写される。感光体上のトナー像は、感光体の表面に接触して転写部を形成する転写部材に電圧が印加されることで、該転写部を通過する記録材上に転写される。また、転写後の感光体上に残留したトナー(転写残トナー)は、感光体上から除去されて回収される。
【0003】
感光体の表面を帯電処理する帯電方式としては、導電性の帯電ローラなどの帯電部材を感光体の表面に接触させて、この帯電部材に電圧を印加することで帯電処理を行う方式がある。この方式は、環境対応性(低オゾン発生)、スペース効率、帯電安定性などの観点から広く用いられている。しかし、この方式では、転写残トナーが感光体上に局所的に多く存在する場合などに、帯電部材に転写残トナーが付着して、感光体の表面の帯電処理が不均一となることがある。そのため、転写残トナーが感光体上に局所的に多く存在しないように、感光体上で転写残トナーを散らす手段が設けられることがある。
【0004】
特許文献1では、感光体の回転方向に関して転写部よりも下流側かつ帯電部よりも上流側で感光体の表面に接触して感光体上の転写残トナーを散らす散らし部材として、ブラシ部材を配置した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-14982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように感光体の回転方向に関して転写部よりも下流側かつ帯電部よりも上流側で感光体の表面に接触するブラシ部材を設けることで、画像形成時に帯電部材に転写残トナーが不均一に付着して感光体の表面の帯電処理が不均一となることを抑制できる。
【0007】
しかしながら、そのように構成した場合でも、転写部材に付着したトナーを非画像形成時に転写部材から感光体に移動させる転写部材の清掃動作を行った場合に、転写部材から感光体に移動したトナーが帯電部材に不均一に付着することがある。
【0008】
転写部材の清掃動作時に転写部材から感光体に移動したトナーは、主に現像時のトナーの帯電極性である正規極性に帯電している。これは、画像形成時に転写部材にはトナーの正規極性とは逆極性の電圧が印加されるため、感光体上の正規極性に帯電したトナーが転写部材に静電的に引き付けられるためである。画像形成時において、感光体上の非画像領域(非露光領域)にトナーが付着する「カブリ」が発生することがあり、このカブリを起こしたトナーのうちの主に正規極性に帯電したトナーが、紙間や前回転時などに転写部材に付着して蓄積される。
【0009】
また、転写部材には、記録材として主に用いられる紙からの紙粉の繊維や埃など、トナー以外の不純物(異物)も付着する。転写部材に蓄積されたトナーは、紙粉などの不純物と混ざることによって、転写部材の清掃動作時に、凝集した状態で、あるいは凝集しやすい状態で、転写部材から感光体に移動する。そして、トナーと紙粉などの不純物との混合物が、ブラシ部材によって散らされずにブラシ部材を通過してしまうと、帯電部材によって物理的に感光体上から擦り取られることによって、帯電部材に不均一に付着することがある。これにより、感光体の局所的な帯電不良を引き起こして、濃度ムラなどの画像不良が発生することがある。
【0010】
したがって、本発明の目的は、転写部材の清掃動作時に転写部材から感光体に移動したトナーに起因した帯電不良を抑制することのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、回転可能な感光体と、前記感光体の表面に接触して帯電部を形成し、前記帯電部で前記感光体の表面を帯電処理する帯電部材と、前記帯電部材により帯電処理された前記感光体上に静電像を形成する静電像形成部と、前記静電像に正規極性に帯電したトナーを供給し、前記感光体上にトナー像を形成する現像装置と、前記感光体の表面に接触して転写部を形成し、前記転写部を通過する記録材に前記感光体上のトナー像を転写させる転写部材と、前記転写部材に転写電圧を印加する転写電源と、前記感光体の回転方向に関して前記転写部よりも下流側かつ前記帯電部よりも上流側で前記感光体の表面に接触して接触部を形成するブラシ部材と、前記ブラシ部材にブラシ電圧を印加するブラシ電源と、前記転写部材に付着したトナーを前記記録材が前記転写部にない時に前記転写部材から前記感光体の表面に移動させる清掃動作を実行可能な制御部と、を有し、前記制御部は、前記転写部材と前記感光体との間に前記正規極性に帯電したトナーが前記感光体から前記転写部材に向けて移動するような電位差が形成され、前記ブラシ部材と前記感光体との間に前記正規極性に帯電したトナーが前記ブラシ部材から前記感光体に向けて移動するような電位差が形成される画像形成動作を実行した後に実行される前記清掃動作が、前記転写部材と前記感光体との間に前記正規極性に帯電したトナーが前記感光体から前記転写部材に向けて移動するような電位差、ならびに、前記転写部材と前記感光体との間に前記正規極性に帯電したトナーが前記転写部材から前記感光体に向けて移動するような電位差が形成される第1の動作と、前記ブラシ部材と前記感光体との間に前記正規極性とは逆の極性である逆極性に帯電したトナーが前記ブラシ部材から前記感光体に向けて移動するような電位差が形成される第2の動作と、を有するように制御し、前記第1の動作において、前記転写電源により前記転写部材に前記正規極性を有する第1の転写電圧と、前記第1の転写電圧より絶対値が大きく前記正規極性を有する第2の転写電圧と、を印加し、前記第2の動作において、前記ブラシ電源により前記ブラシ部材に前記正規極性を有する前記ブラシ電圧を印加するように制御することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、転写部材の清掃動作時に転写部材から感光体に移動したトナーに起因した帯電不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】画像形成装置の概略断面図である。
図2】ブラシ部材(固定ブラシ)の模式図である。
図3】画像形成装置の制御態様を示す概略ブロック図である。
図4】清掃動作時の感光ドラムの周りの状態を示す模式図である。
図5】清掃動作の一例のタイミングチャート図である。
図6】清掃動作時の感光ドラムの周りの状態を示す模式図である。
図7】清掃動作時の感光ドラムの周り及びブラシ部材の状態を示す模式図である。
図8】清掃動作時の感光ドラムの周り及びブラシ部材の状態を示す模式図である。
図9】清掃動作時の感光ドラムの周りの状態を示す模式図である。
図10】他の例の画像形成装置の概略断面図である。
図11】ブラシ部材(ブラシローラ)の模式的な断面図である。
図12】清掃動作の他の例のタイミングチャート図である。
図13】清掃動作時の感光ドラムの周りの状態を示す模式図である。
図14】清掃動作時の感光ドラムの周りの状態を示す模式図である。
図15】清掃動作時の感光ドラムの周り及びブラシ部材の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0015】
[実施例1]
<画像形成装置>
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、クリーナレス方式及び接触帯電方式を採用したモノクロレーザビームプリンタである。
【0016】
画像形成装置100は、像担持体としての回転可能なドラム型(円筒形)の感光体(電子写真感光体)である感光ドラム1を有する。画像出力動作が開始されると、感光ドラム1は、図示しない駆動手段としての駆動モータ(メインモータ)によって図中矢印R1方向(時計回り方向)に回転駆動される。本実施例では、感光ドラム1の外径は24mmであり、周速度(表面の移動速度)は140mm/secである。
【0017】
回転する感光ドラム1の表面は、帯電手段としての回転可能なローラ型の帯電部材である帯電ローラ2によって、所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電ローラ2は、芯金の周りに導電性の弾性層が設けられた弾性ローラである。帯電ローラ2は、感光ドラム1の表面に接触して、感光ドラム1の表面を帯電させる帯電部(帯電位置)Paを形成する。本実施例では、帯電ローラ2は、感光ドラム1と帯電ローラ2との接触部で感光ドラム1と帯電ローラ2とが順方向に移動するように図中矢印R2方向(反時計回り方向)に回転駆動される。なお、帯電ローラ2を駆動する図示しない駆動手段としての駆動モータは、感光ドラム1の駆動手段と共通のメインモータであってよい。帯電処理時に、帯電ローラ2には、帯電電圧印加手段としての帯電電源E1(図3)により、所定の帯電電圧(帯電バイアス)が印加される。本実施例では、帯電処理時に、帯電ローラ2には、帯電電圧として負極性の直流電圧が印加される。本実施例では、この帯電電圧は、一例として、-1300Vである。これにより、本実施例では、感光ドラム1の表面は、-700Vの暗部電位Vdに一様に帯電処理される。なお、帯電ローラ2は、より詳細には、感光ドラム1の回転方向に関して感光ドラム1との接触部の上流側及び下流側に形成される感光ドラム1との間の微小な空隙の少なくとも一方で発生する放電によって感光ドラム1の表面を帯電させる。ただし、ここでは、感光ドラム1の回転方向に関する、帯電ローラ2と感光ドラム1との接触部が、帯電部Paであると擬制して説明する。
【0018】
帯電処理された感光ドラム1の表面は、露光手段(静電像形成部)としての露光装置(本実施例ではレーザ露光ユニット)4によって走査露光され、感光ドラム1上に静電像(静電潜像)が形成される。露光装置4は、画像データに応じて変調されたレーザビームLによる感光ドラム1の主走査方向(回転軸方向)の露光を、副走査方向(表面の移動方向)に繰り返すことで、感光ドラム1上に静電像を形成する。本実施例では、一様に帯電処理されて形成された感光ドラム1の表面の暗部電位Vdは、露光装置4によって露光されることで絶対値が低下して、-100Vの明部電位Vlとなる。ここでは、感光ドラム1の回転方向に関する、感光ドラム1上の露光装置4によって露光される位置が、露光部(露光位置)Pbであるものとする。
【0019】
感光ドラム1上に形成された静電像は、現像手段としての現像装置3によって、現像剤としてのトナーtが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム1上にトナー像(現像剤像)が形成される。本実施例では、トナーとしては、平均粒径6.4μm、平均円形度0.98の非磁性一成分現像剤である球形の非磁性トナー(球形トナー)を用いている。本実施例で用いるトナーは、平均円形度が高いことが好ましく、具体的には平均円形度が0.96以上であることが好ましい。なお、平均円形度が1.00に近いほど球形に近い。つまり、本実施例で用いるトナーは、好ましくは平均円形度が0.96以上、1.00以下である。平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いられるものである。ここでは、平均円形度は、次のようにして求めた。
【0020】
まず、東亜医用電子社製フロー式粒子像分析装置FPIA-2100を用いて粒子形状の測定を行い、円形度を下記式1により求める。
【0021】
【数1】
【0022】
更に、下記式2で示すように、測定された全粒子の円形度の総和を全粒子数で除した値を平均円形度と定義する。
【0023】
【数2】
【0024】
現像装置3は、現像剤担持体としての現像ローラ31、現像剤供給手段としてのトナー供給ローラ32、トナーtを収容する現像剤収容室33、撹拌手段としての撹拌部材35、現像剤規制手段としての現像ブレード34などを有する。現像剤収容室33に収容されたトナーは、撹拌部材35によって撹拌されると共に、トナー供給ローラ32によって現像ローラ31の表面に供給される。現像ローラ31の表面に供給されたトナーは、現像ブレード34との接触部を通過することで均一に薄層化され、摩擦帯電によって負極性に帯電させられる。現像ローラ31は、感光ドラム1の表面に接触して、感光ドラム1上の静電像にトナーを供給する現像部(現像位置)Pcを形成する。ここでは、感光ドラム1の回転方向に関する、現像ローラ31と感光ドラム1との接触部が、現像部Pcであるものとする。本実施例では、現像ローラ31は、感光ドラム1と現像ローラ31との接触部で感光ドラム1と現像ローラ31とが順方向に移動するように図中矢印R3方向(反時計回り方向)に回転駆動される。なお、現像ローラ31を駆動する図示しない駆動手段としての駆動モータは、感光ドラム1の駆動手段と共通のメインモータであってよい。現像ローラ31上に担持されたトナーは、現像部Pcにおいて、静電像に応じて、現像ローラ31から感光ドラム1に移動する。現像時に、現像ローラ31には、現像電圧印加手段としての現像電源E2(図3)により、所定の現像電圧(現像バイアス)が印加される。本実施例では、現像時に、現像ローラ31には、現像電圧として負極性の直流電圧が印加される。本実施例では、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム1の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーが付着する(反転現像)。本実施例では、現像時のトナーの帯電極性であるトナーの正規の帯電極性(「正規極性」)は負極性である。なお、本実施例では、一成分非磁性接触現像法を採用したが、本発明は斯かる態様に限定されるものではなく、二成分非磁性接触現像法、非接触現像法、磁性現像法などを採用してもよい。二成分非磁性接触現像法は、現像剤として非磁性トナーと磁性キャリアとを備えた二成分現像剤を用い、現像剤担持体上に担持した現像剤(磁気ブラシ)を感光体に接触させて現像を行う方法である。非接触現像法は、感光体に対して非接触で対向配置された現像剤担持体上から感光体上にトナーを飛翔させて現像を行う方法である。また、磁性現像法は、感光体に対して接触又は非接触で対向配置された、磁界発生手段としてのマグネットを内蔵する現像剤担持体上に、磁力によって磁性トナーを担持して現像を行う方法である。
【0025】
感光ドラム1に対向して、転写手段としての回転可能なローラ型の転写部材である転写ローラ5が配置されている。転写ローラ5は、感光ドラム1に接触して、感光ドラム1上から記録材S上にトナー像を転写する転写部(転写位置、転写ニップ)Pdを形成する。ここでは、感光ドラム1の回転方向に関する、転写ローラ5と感光ドラム1との接触部が、転写部Pdであるものとする。本実施例では、転写ローラ5は、芯金の周りに導電性のNBR(ニトリルブタジエンゴム)・ヒドリン系のスポンジゴムで構成された弾性層が形成された、外径12mm、硬度30°(Asker-C,500gf荷重)の弾性ローラである。転写ローラ5は、感光ドラム1に対して所定の圧力で押圧されている。感光ドラム1上のトナー像とタイミングが合わされて、記録材収容部としてのカセット6などから、搬送手段としての搬送ローラ8などによって、紙やプラスチックフィルムなどのシート状の記録材(シート、転写材、記録媒体)Sが転写部Pdに搬送される。そして、感光ドラム1上に形成されたトナー像は、転写部Pdにおいて、転写ローラ5の作用により、感光ドラム1と転写ローラ5とに挟持されて転写部Pdを通過するように搬送される記録材S上に転写される。転写時に、転写ローラ5には、転写電圧印加手段としての転写電源E3(図3)により、所定の転写電圧(転写バイアス)が印加される。本実施例では、転写時に、転写ローラ5には、転写電圧としてトナーの正規極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧が印加される。本実施例では、この転写時の転写電圧(後述する転写HIGH)は、一例として、+1000Vである。そして、転写ローラ5と感光ドラム1との間に形成される電界の作用により、感光ドラム1から記録材Sへとトナー像が静電的に転写される。
【0026】
トナー像が転写された記録材Sは、定着手段としての定着装置9に送られる。定着装置9は、未定着のトナー像を担持した記録材Sに熱及び圧力を加えて、トナー像を記録材Sに定着(溶融、固着)させる。トナー像が定着された記録材Sは、画像形成装置100の外部に排出(出力)される。
【0027】
一方、転写時に記録材Sに転写されずに感光ドラム1上に残留したトナー(転写残トナー)は、後述するようにして現像装置3によって回収される。
【0028】
<ブラシ部材>
次に、本実施例における転写残トナーの回収に用いられるブラシ部材10について説明する。
【0029】
図1に示すように、本実施例では、画像形成装置100は、感光ドラム1の回転方向に関して転写部Pdよりも下流側かつ帯電部Paよりも上流側で感光ドラム1の表面に接触してブラシ接触部(ブラシ接触位置)Peを形成する、ブラシ部材10を有する。ここでは、感光ドラム1の回転方向に関する、ブラシ部材10と感光ドラム1との接触部が、ブラシ接触部(トナー散らし部)Peであるものとする。
【0030】
図2(a)は、単体の状態のブラシ部材10をその長手方向(感光ドラム1の回転軸線方向と略平行)に沿って見た模式図である。また、図2(b)は、感光ドラム1に当接させた状態のブラシ部材10をその長手方向に沿って見た模式図である。
【0031】
本実施例では、ブラシ部材10は、固定配置される導電性の固定ブラシ11でブラシ部が構成されている。ブラシ部材10は、その長手方向が感光ドラム1の回転軸線方向と略平行となるように配置される。本実施例では、固定ブラシ11は、導電剤としてカーボンを含有した合成繊維で形成された基布11bに、導電性物質を配合したナイロンの繊維で形成された導電糸11aが織り込まれて構成されている。なお、導電糸11aの材料としては、ナイロンの他に、レーヨン、アクリル、ポリエステルなどを用いてもよい。
【0032】
図2(a)に示すように、ブラシ部材10が単体の状態、すなわち、導電糸11aを屈曲させようとする力が外部からかかっていない状態で、基布11bから露出している導電糸11aの先端までの距離をL1とする。本実施例では、L1は6.5mmである。ブラシ部材10は、基布11bが、両面テープなどの固定手段によって、画像形成装置100の所定の位置に設置された支持部材(図示せず)に固定され、導電糸11aの先端が感光ドラム1に対して侵入するようにして配置される。本実施例では、上記支持部材と感光ドラム1との間のクリアランスは固定されている。そして、上記支持部材に固定されたブラシ部材10の基布11bから感光ドラム1までの最短距離をL2とする。本実施例では、L2とL1との差分をブラシ部材10の感光ドラム1に対する侵入量と定義する。本実施例では、ブラシ部材10の感光ドラム1に対する侵入量は1mmである。また、本実施例では、図2(a)に示すように、ブラシ部材10が単体の状態で、ブラシ部材10の感光ドラム1の周方向(以下、「短手方向」という。)の長さL3は5mmである。また、本実施例では、ブラシ部材10の長手方向の長さは216mmである。これにより、感光ドラム1の回転軸線方向に関して、感光ドラム1上の画像形成領域(トナー像が形成されうる領域)の全域にブラシ部材10が接触できるようになっている。また、本実施例では、導電糸11aの太さは2デニール、密度は280kF/inchである。
【0033】
なお、ブラシ部材10の短手方向の長さは、長寿命対応の観点から3mm以上であることが好ましい。また、ブラシ部材10の長手方向の長さは、画像形成装置100の最大通紙幅(感光ドラム1の回転軸線方向に関する画像形成領域の最大長さ)に応じて適宜変更することができる。また、導電糸11aの太さ、密度は、紙粉捕集性の観点からそれぞれ1~6デニール、150~350kF/inchであることが好ましい。
【0034】
また、ブラシ部材10には、ブラシ電圧印加手段としてのブラシ電源E4(図3)が接続されている。画像形成時に、ブラシ部材10には、ブラシ電源E4により、所定のブラシ電圧(ブラシバイアス)が印加される。本実施例では、画像形成時に、ブラシ部材10には、ブラシ電圧として負極性の直流電圧が印加される。本実施例では、この画像形成時のブラシ電圧(後述するブラシHIGH_1)は、一例として、-300Vである。
【0035】
<転写残トナーの回収>
次に、本実施例における画像形成時の転写残トナーの回収について説明する。
【0036】
転写残トナーは、多くは正極性の電荷を持っているトナーであるが、負極性の電荷を持っているトナーも混在している。画像形成時には、感光ドラム1の表面は-700Vの暗部電位Vdに帯電処理される。感光ドラム1上の画像領域は、露光装置4によって露光されて-100Vの明部電位Vlとなる。また、感光ドラム1上の非画像領域も、転写部Pdを通過することで、+1000Vの転写電圧が印加されている転写ローラ5と感光ドラム1との間の放電によって約-100Vとなる。したがって、画像形成時にブラシ接触部Peに到達する感光ドラム1の表面電位は、約-100Vとなっている。転写残トナーのうち正極性に帯電したトナーは、ブラシ接触部Peにおいて、ブラシ電圧(-300V)と感光ドラム1の表面電位(約-100V)との間の電位差によって、ブラシ部材10に静電的に引き付けられて、ブラシ部材10に一次回収される。一方、転写残トナーのうち負極性に帯電したトナーは、ブラシ接触部Peにおいて、ブラシ電圧(-300V)と感光ドラム1の表面電位(約-100V)との間の電位差によって、感光ドラム1に静電的に引き付けられつつ、ブラシ接触部Peを通過する。
【0037】
本実施例では、画像形成装置100は、感光ドラム1の回転方向に関してブラシ接触部Peよりも下流側かつ帯電部Paよりも上流側で感光ドラム1を除電処理する、除電手段としての前露光装置7を有する。前露光装置7は、帯電部Paで安定した放電を生じさせるために、帯電部Paに進入する前の感光ドラム1の表面電位を光除電する。なお、除電とは、電荷の少なくとも一部を除去する(減衰させる)ことを含む。ここでは、感光ドラム1の回転方向に関する、前露光装置7によって露光(除電処理)される位置が、除電部Pfであるものとする。ブラシ接触部Peを通過したトナーは、除電部Pfを経由し、帯電部Paにおける均一な放電によって、安定して負極性に帯電させられる。
【0038】
帯電部Paを通過した負極性のトナーは、感光ドラム1の回転に伴い現像部Pcに送られる。現像部Pcに送られてきた負極性のトナーは、非画像領域(非露光領域)では、感光ドラム1の表面の暗部電位(Vd)と現像バイアス(Vdc)との間の電位差によって、現像ローラ31に移動し、現像装置3に回収される。一方、画像領域(露光領域)では、現像部Pcに送られてきた負極性のトナーは、感光ドラム1の表面の明部電位(Vl)と現像バイアス(Vdc)との間の電位差によって、現像ローラ31には移動しない。このトナーは、そのまま画像領域のトナーとして感光ドラム1の回転に伴い転写部Pdに送られ、記録材Sに転写される。なお、現像バイアス(Vdc)は、暗部電位Vdと明部電位Vlとの間の電位に設定される。
【0039】
<画像出力動作>
画像形成装置100は、本実施例ではパーソナルコンピュータなどの外部機器(図示せず)からの1つの開始指示により単一又は複数の記録材Sに画像を形成する一連の動作である、画像出力動作(ジョブ)を実行する。ジョブは、一般に、画像形成工程(印字工程)、前回転工程、複数の記録材Sに画像を形成する場合の紙間工程、及び後回転工程を有する。画像形成工程は、実際に感光ドラム1への静電像の形成、静電像の現像(トナー像の形成)、トナー像の転写、トナー像の定着などを行う期間であり、画像形成時とはこの期間のことをいう。より詳細には、これら静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の転写、トナー像の定着などを行う位置で、画像形成時のタイミングは異なる。前回転工程は、画像形成工程の前の準備動作を行う期間である。紙間工程は、複数の記録材Sに対して画像形成工程を連続して行う際(連続画像形成時)の記録材Sと記録材Sとの間に対応する期間である。後回転工程は、画像形成工程の後の整理動作(準備動作)を行う期間である。非画像形成時とは、画像形成時以外の期間であって、上記前回転工程、紙間工程、後回転工程、更には画像形成装置100の電源投入時又はスリープ状態からの復帰時の準備動作である前多回転工程などが含まれる。本実施例では、非画像形成時の所定のタイミングで、転写ローラ5に付着したトナーなどを転写ローラ5から感光ドラム1に移動させて転写ローラ5を清掃するための、後述する転写ローラ5の清掃動作が実行される。
【0040】
<制御態様>
図3は、本実施例の画像形成装置100の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。画像形成装置100には、制御部150が設けられている。制御部150は、演算処理を行う中心的素子である演算制御手段としてのCPU151、記憶手段としてのROMやRAMなどのメモリ(記憶素子)152、制御部150に接続された各種要素との間の信号の授受を制御する入出力部(図示せず)などを有する。RAMには、センサの検知結果、演算結果などが格納され、ROMには制御プログラム、予め求められたデータテーブルなどが格納されている。
【0041】
制御部150は、画像形成装置100の動作を統括的に制御する制御手段である。制御部150は、各種の電気的情報信号の授受や、駆動のタイミングなどを制御して、所定の画像形成シーケンスを実行する。制御部150には、画像形成装置100の各部が接続されている。例えば、本実施例との関係では、制御部150には、帯電電源E1、現像電源E2、転写電源E3、ブラシ電源E4などが接続されている。制御部150は、これら各種電源E1、E2、E3、E4のON/OFFや出力値などを制御して、後述する転写ローラ5の清掃動作を実行する。
【0042】
<転写ローラの清掃動作>
次に、本実施例における転写ローラ5の清掃動作(清掃モード)について説明する。
【0043】
画像形成装置100では、感光ドラム1上の非画像領域(非露光領域)にトナーが付着する「カブリ」が発生する。そして、このカブリを起こしたトナーが、例えば紙間工程時や前回転工程時に転写ローラ5に付着する。紙間工程時や前回転工程時には、転写ローラ5に、画像形成時と同じ、トナーの正規極性とは逆極性である正極性の転写電圧が印加されている。そのため、転写ローラ5には、主に、カブリを起こしたトナーのうち正規極性である負極性に帯電したトナーが付着して蓄積される。一方、カブリを起こしたトナーのうち正規極性とは逆極性である正極性に帯電したトナーは、転写ローラ5に付着せずに感光ドラム1上に残り、転写残トナーと同様にブラシ部材10に一次回収される。
【0044】
図4は、複数の記録材Sに連続して画像を形成する連続画像形成のジョブを実行した際の紙間工程における感光ドラム1の周りの状態を示す模式図である。図4に示すように、転写ローラ5には、負極性のトナーtと紙粉などの不純物Dが付着しており、ブラシ部材10には正極性のトナーが付着している。転写ローラ5にトナーが付着して蓄積されると、記録材Sの裏汚れなどの原因となる。そのため、本実施例では、画像形成装置100は、非画像形成時としての後回転工程において、転写ローラ5に付着したトナーを転写ローラ5から感光ドラム1に移動させる転写ローラ5の清掃動作を実行する。
【0045】
ここで、前述のように、転写ローラ5には、記録材Sとして主に用いられる紙からの紙粉の繊維や埃など、トナー以外の不純物(異物)Dも付着する。転写ローラ5に蓄積されたトナーは、紙粉などの不純物Dと混ざることによって、転写ローラ5の清掃動作時に、凝集した状態で、あるいは凝集しやすい状態で、転写ローラ5から感光ドラム1に移動する。そして、トナーと紙粉などの不純物Dとの混合物が、ブラシ部材10によって散らされずにブラシ部材10を通過してしまうと、帯電ローラ2によって物理的に感光ドラム1上から擦り取られることによって、帯電ローラ2に不均一に付着することがある。これにより、感光ドラム1の局所的な帯電不良を引き起こして、濃度ムラなどの画像不良が発生することがある。
【0046】
そこで、本実施例では、転写ローラ5の清掃動作時に、転写ローラ5から感光ドラム1に移動させた負極性のトナーと紙粉などの不純物Dとの混合物をブラシ部材10に一次回収し、該負極性のトナーと紙粉などの不純物Dとを分離させる期間を設ける。そして、その後、該負極性のトナーを、紙粉などの不純物Dから分離されて十分に散らされた状態で、ブラシ部材10から感光ドラム1に吐き出し、帯電部Paを通過させて、現像装置3によって回収する。以下、更に詳しく説明する。
【0047】
図5は、本実施例における後回転工程で実行する転写ローラ5の清掃動作のタイミングチャート図である。本実施例では、この転写ローラ5の清掃動作は、制御部150が図5のタイミングチャートに従って画像形成装置100の各部の動作を制御することで実行される。なお、便宜上、転写時以外に転写電源E3が転写ローラ5に印加する電圧も「転写電圧」ということがある。
【0048】
・タイミングT1:
タイミングT1は、画像形成工程が終了し、後回転工程が開始するタイミングである。タイミングT1で、転写電圧が画像形成時の転写HIGH(+1000V)から転写LOW(-1000V)に切り替えられる。ここで、本実施例では、タイミングT1で転写電圧を転写LOW(-1000V)に切り替えたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。この転写電圧の電圧値は、負極性のトナーが感光ドラム1に静電的に引き付けられるような電界を形成する電圧値であればよい。より詳細には、この転写電圧の電圧値は、感光ドラム1の表面電位(本実施例では暗部電位Vd(-700V))に対して負極性側に高く、かつ、転写ローラ5と感光ドラム1との間で放電が発生しない電圧値であればよい。本実施例では、この転写電圧の電圧値は、感光ドラム1の表面電位(本実施例では暗部電位Vd(-700V))と同極性で、該感光ドラム1の表面電位よりも絶対値が大きい電圧値である。なお、負極性のトナーが感光ドラム1に十分に引き付けられるようにするためには、この転写電圧と感光ドラム1の表面電位との間の電位差は、200V以上であることが好ましい。また、本実施例では、転写ローラ5と感光ドラム1との間の放電開始電圧(放電閾値)は約600Vである。このタイミングでの転写部Pdにおける感光ドラム1の表面電位は、暗部電位Vd(-700V)である。したがって、タイミングT1以降は、転写LOW(-1000V)と感光ドラム1の表面電位(-700V)との間の電位差によって、転写ローラ5に蓄積されていた負極性のトナーは、紙粉などの不純物Dと共に感光ドラム1に移動する。
【0049】
一方、ブラシ電圧は、画像形成時と変わらず、ブラシHIGH_1(-300V)である。また、このタイミングでのブラシ接触部Peにおける感光ドラム1の表面電位は、転写部Pdで画像形成時の転写HIGH(+1000V)を受けた領域であり、約-100Vである。したがって、画像形成時にブラシ部材10に一次回収された正極性のトナーはブラシ部材10から感光ドラム1に吐き出されることはなく、ブラシ部材10に留まっている。
【0050】
図6は、タイミングT1以降の感光ドラム1の周りの状態を示す模式図である。図6において、感光ドラム1の領域Aは、転写電圧が転写HIGH(+1000V)から転写LOW(-1000V)に切り替えられた時以降に転写部Pdで転写電圧を受けた感光ドラム1の領域を示している。つまり、図6は、転写部Pdで転写LOW(-1000V)を受けた感光ドラム1の領域Aがブラシ接触部Peに到達する前の感光ドラム1の周りの状態を示している。図6に示すように、転写ローラ5に蓄積されていた負極性のトナーt及び紙粉などの不純物Dは、感光ドラム1に移動する。一方、ブラシ部材10には、正極性のトナーtが滞留している。
【0051】
・タイミングT2:
タイミングT2は、転写部Pdで転写LOW(-1000V)を受けた感光ドラム1の領域Aがブラシ接触部Peに到達したタイミングである。タイミングT2で、ブラシ電圧がブラシHIGH_1(-300V)からブラシHIGH_2(-200V)に切り替えられる。このタイミングでのブラシ接触部Peにおける感光ドラム1の表面電位は、暗部電位Vd(-700V)である。したがって、転写ローラ5から感光ドラム1に移動した負極性のトナーと紙粉などの不純物Dとは、共にブラシ部材10に一次回収される。また、ブラシ部材10に滞留していた正極性のトナーがブラシ部材10から感光ドラム1に吐き出される。ここで、本実施例では、タイミングT2でブラシ電圧をブラシHIGH_2(-200V)に切り替えたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。このブラシ電圧の電圧値は、負極性のトナーがブラシ部材10に静電的に引き付けられ、正極性のトナーが感光ドラム1に静電的に引き付けられるような電界を形成する電圧値であればよい。より詳細には、このブラシ電圧の電圧値は、感光ドラム1の表面電位(本実施例では暗部電位Vd(-700V))に対して正極性側に高く、かつ、ブラシ部材10と感光ドラム1との間で放電が発生しない電圧値であればよい。したがって、上記を満足することができれば、タイミングT2でブラシ電圧を変更しなくてもよい。本実施例では、負極性のトナーと紙粉などの不純物Dとの分離性などを考慮して、ブラシ電圧を変更して電位差を大きくしている。本実施例では、このブラシ電圧の電圧値は、感光ドラム1の表面電位(本実施例では暗部電位Vd(-700V))と同極性で、該感光ドラム1の表面電位よりも絶対値が小さい電圧値である。なお、負極性のトナーがブラシ部材10に十分に引き付けられ、正極性のトナーが感光ドラム1に十分に引き付けられるようにするためには、このブラシ電圧と感光ドラム1の表面電位との間の電位差は、200V以上であることが好ましい。また、本実施例では、ブラシ部材10と感光ドラム1との間の放電開始電圧(放電閾値)は約600Vである。
【0052】
図7(a)は、タイミングT2以降の感光ドラム1の周りの状態を示す模式図である。ブラシ部材10から感光ドラム1に吐き出された正極性のトナーtは、除電部Pfにおいて感光ドラム1の表面電位が光除電された後、帯電部Paにおける均一な放電によって負極性に帯電され、現像ローラ31によって回収される。一方、ブラシ部材10に一次回収された負極性のトナーtと紙粉などの不純物Dとは、ブラシHIGH_2(-200V)と感光ドラム1の表面電位(-700V)との間の電位差によってブラシ部材10に静電的に引き付けられつつ、感光ドラム1と摺擦される。
【0053】
図7(b)は、このときのブラシ部材10内の状態を示す模式図である。ブラシ部材10内には、転写ローラ5から感光ドラム1に移動した負極性のトナーt及び紙粉などの不純物Dと、それまでブラシ部材10内に滞留していた正極性のトナーtと、が混在している。ここで、紙の繊維や埃などである不純物Dは、トナーよりも、ブラシ部材10の導電糸11aによって物理的に絡めとられやすい傾向がある。特に、本実施例では、トナーとして球形トナーが用いられている。紙の繊維や埃などである不純物Dは、形状が球形ではないため、導電糸11aによって物理的に絡めとられやすい。一方、球形トナーは、形状が球形であるため、導電糸11aによって物理的に絡めとられにくく、導電糸11aの隙間で動きやすい。また、ブラシHIGH_2(-200V)と感光ドラム1の表面電位(-700V)との間で形成される電界と、感光ドラム1の回転に伴う摺擦と、によって、ブラシ部材10内でトナーと紙粉などの不純物Dとが分離される。このとき、充分な電荷を持たないトナーも感光ドラム1との摺擦によって負極性の電荷を持つことができる。さらに、ブラシ部材10内に滞留していた正極性のトナーが感光ドラム1に吐き出された後も、負極性のトナーは、上記電界及び摺擦によって、ブラシ部材10内において凝集しにくく動きやすい状態を維持することができる。
【0054】
このように、転写ローラ5から感光ドラム1に移動したトナーと紙粉などの不純物Dとを共にブラシ部材10に一次回収し、ブラシ部材10と感光ドラム1との間での電界及び摺擦によって、トナーと紙粉などの不純物Dとを分離させることができる。
【0055】
・タイミングT3:
タイミングT3は、転写部Pdで転写LOW(-1000V)を受けた感光ドラム1の領域Aがブラシ接触部Peに到達したタイミングT2から所定時間が経過したタイミングである。タイミングT3で、転写電圧が転写LOW(-1000V)から転写HIGH(+1000V)に切り替えられる。本実施例では、タイミングT3は、次のように設定することができる。まず、画像形成時に転写ローラ5に蓄積されていた負極性のトナーが、感光ドラム1に十分に移動する時間を確保することが望まれる。また、ブラシ部材10に滞留していた正極性のトナーが、感光ドラム1に十分に吐き出される時間を確保することが望まれる。また、転写部Pdで転写HIGH(+1000V)を受けた感光ドラム1の領域がブラシ接触部Peに到達する時には、ブラシ部材10内の負極性のトナーが、ブラシ接触部Peにおける電界及び摺擦によって不純物Dから十分に分離されていることが望まれる。本実施例では、ブラシ部材10に滞留していた正極性のトナーを吐き出す時間と、ブラシ部材10内の負極性のトナーと紙粉などの不純物Dとを分離させる時間と、を考慮して、タイミングT3は、タイミングT2から約1.0s経過した後としている。転写部Pdで転写HIGH(+1000V)を受けた感光ドラム1の表面電位は、約-100Vとなる。ここで、本実施例では、タイミングT3で転写電圧を画像形成時と同じ転写HIGH(+1000V)に切り替えたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。この転写電圧の電圧値は、感光ドラム1の表面電位をブラシ電圧に対して正極性側に高くできればよい。より詳細には、この転写電圧の電圧値は、感光ドラム1の表面電位(本実施例では暗部電位Vd(-700V))に対して正極性側に高く、かつ、転写ローラ5と感光ドラム1との間で放電が発生する電圧値であればよい。例えば、転写HIGH_2(+1500V)のような画像形成時とは異なる電圧値に切り替えてもよい。本実施例では、この転写電圧の電圧値は、感光ドラム1の表面電位(本実施例では暗部電位Vd(-700V))とは逆極性で、該感光ドラム1の表面電位よりも絶対値が大きい電圧値である。
【0056】
図8(a)は、タイミングT3以降の感光ドラム1の周りの状態を示す模式図である。図8(a)において、感光ドラム1の領域Bは、転写電圧が転写LOW_2(-1000V)から転写HIGH(+1000V)に切り替えられた時以降に転写部Pdで転写電圧を受けた感光ドラム1の領域を示している。つまり、図8(a)は、転写部Pdで転写HIGH(+1000V)を受けた感光ドラム1の領域Bがブラシ接触部Peに到達する前の感光ドラム1の周りの状態を示している。図8(a)に示すように、転写ローラ5に蓄積されていた負極性のトナー及び紙粉などの不純物Dは、感光ドラム1に移動し終えている。また、ブラシ部材10に滞留していた正極性のトナーは、感光ドラム1に吐き出されている。
【0057】
図8(b)は、このときのブラシ部材10内の状態を示す模式図である。ブラシ部材10内には、転写ローラ5から感光ドラム1に移動した負極性のトナーtが一次回収されている。このとき、負極性のトナーは、前述の電界及び摺擦によって、ブラシ部材10内において凝集しにくく動きやすい状態を維持している。
【0058】
・タイミングT4:
タイミングT4は、転写部Pdで転写HIGH(+1000V)を受けた感光ドラム1の領域Bがブラシ接触部Peに到達したタイミングである。タイミングT4で、ブラシ電圧がブラシHIGH_2(-200V)からブラシHIGH_1(-300V)に切り替えられる。このタイミングでのブラシ接触部Peにおける感光ドラム1の表面電位は約-100Vである。したがって、ブラシ部材10に一次回収されていた負極性のトナーが、ブラシ部材10から感光ドラム1に吐き出される。一方、ブラシ部材10によって物理的に絡めとられた紙粉などの不純物Dは、ブラシ部材10に留まる。ここで、本実施例では、タイミングT4でブラシ電圧をブラシHIGH_1(-300V)に切り替えたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。このブラシ電圧の電圧値は、ブラシ部材10に一次回収された負極性のトナーが感光ドラム1に静電的に引き付けられるような電界を形成する電圧値であればよい。より詳細には、このブラシ電圧の電圧値は、感光ドラム1の表面電位(本実施例では約-100V)に対して負極性側に高い(典型的には、ブラシ部材10と感光ドラム1との間で放電が発生しない)電圧値であればよい。本実施例では、このブラシ電圧の電圧値は、感光ドラム1の表面電位(本実施例では約-100V)と同極性で、該感光ドラム1の表面電位よりも絶対値が大きい電圧値である。なお、負極性のトナーが感光ドラム1に十分に引き付けられるようにするためには、このブラシ電圧と感光ドラム1の表面電位との間の電位差は、200V以上であることが好ましい。
【0059】
図9は、タイミングT4以降の感光ドラム1の周りの状態を示す模式図である。図9に示すように、ブラシ部材10から感光ドラム1に吐き出された負極性のトナーtは、トナー同士が凝集しておらず、紙粉などの不純物Dから分離された状態で、帯電部Paを通過し、現像ローラ31によって回収される。
【0060】
・タイミングT5:
タイミングT5は、転写部Pdで転写HIGH(+1000V)を受けた感光ドラム1の領域Bがブラシ接触部Peに到達したタイミングT4から所定時間が経過したタイミングである。タイミングT5は、ブラシ部材10から感光ドラム1に吐き出された負極性のトナーの実質的に全てが現像ローラ31によって回収された時以降のタイミングとなるように設定される。タイミングT5で、各種電源E1~E4、及びメインモータ(感光ドラムの駆動モータ)やスキャナモータ(露光装置4の回転ミラーの駆動モータ)などの駆動源(図示せず)がOFFされ、後回転工程が終了する。
【0061】
なお、本実施例では、メインモータ、転写電圧、ブラシ電圧などを同じタイミングでOFFしているが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、モータのイナーシャや各種電圧の立ち下げ時間などに応じて、適宜タイミングをずらしてもよい。
【0062】
<作用効果>
以上説明したように、本実施例では、画像形成装置100は、回転可能な感光体1と、感光体1の表面に接触して帯電部Paを形成し、帯電部Paで感光体1の表面を帯電処理する帯電部材2と、帯電部材2により帯電処理された感光体上に静電像を形成する静電像形成部4と、静電像に正規極性に帯電したトナーを供給し、感光体1上にトナー像を形成する現像装置3と、感光体1の表面に接触して転写部Pdを形成し、転写部Pdを通過する記録材Sに感光体1上のトナー像を転写させる転写部材5と、転写部材5に電圧を印加する転写電源E3と、感光体1の回転方向に関して転写部Pdよりも下流側かつ帯電部Paよりも上流側で感光体1の表面に接触して接触部Peを形成するブラシ部材10と、ブラシ部材10に電圧を印加するブラシ電源E4と、転写部材5に付着したトナーを記録材Sが転写部Pdにない時に転写部材5から感光体1の表面に移動させる清掃動作を実行可能な制御部150と、を有する。そして、本実施例では、制御部150は、清掃動作が、転写部材5と感光体1との間に正規極性に帯電したトナーが転写部材5から感光体1に向けて移動するような電位差が形成される第1の動作(清掃動作)(T1~T3)と、ブラシ部材10と感光体1との間に正規極性に帯電したトナーが感光体1からブラシ部材10に向けて移動するような電位差が形成される第2の動作(回収動作)(T2~T4)と、を有するように制御する。本実施例では、制御部150は、清掃動作において、転写電源E3により転写部材5に印加する電圧を制御する。また、本実施例では、制御部150は、清掃動作において、ブラシ電源E4によりブラシ部材10に印加する電圧を制御する。
【0063】
特に、本実施例では、制御部150は、第1の動作において、帯電部材2により帯電処理されて転写部Pdに到達する感光体1の表面の電位に対してトナーの正規極性側に高い電圧であって、転写部材5と感光体1との間で放電が発生しない電圧(転写LOW)を、転写電源E3により転写部材5に印加するように制御する。また、本実施例では、制御部150は、第2の動作において、転写部Pdを通過して接触部Peに到達する感光体1の表面の電位に対してトナーの正規極性とは逆極性側に高い電圧であって、ブラシ部材10と感光体1との間で放電が発生しない電圧(ブラシHIGH_2)を、ブラシ電源E4によりブラシ部材10に印加するように制御する。また、本実施例では、制御部150は、第2の動作が、少なくとも、第1の動作において転写部Pdを通過する感光体1の表面の上記回転方向に関する先端が接触部Pdに到達する時から所定時間にわたり継続するように制御する。ここで、ブラシ部材10内の正規極性のトナーと紙粉などの不純物Dとを分離させる時間は500ms以上であることが好ましいことなどから、該所定時間は、500ms以上であることが好ましく、典型的には1.0s程度である。なお、該所定時間は、3.0s以下で十分であることが多く、典型的には1.5s以下である。別の言い方をすれば、該所定時間は、感光体1が1~3周、典型的には2周するのにかかる時間程度とすることができる。また、本実施例では、制御部150は、第2の動作が終了した時以降に、ブラシ部材10と感光体1との間に正規極性に帯電したトナーがブラシ部材10から感光体1に向けて移動するような電位差が形成される第3の動作(吐き出し動作、吐き出し期間)(T4~T5)を有するように制御する。本実施例では、制御部150は、第3の動作において、第1の動作が終了した時以降に転写部Pdを通過して接触部Peに到達する感光体1の表面の電位に対してトナーの正規極性側に高い電圧(ブラシHIGH_1)を、ブラシ電源E4によりブラシ部材10に印加するように制御する。この電圧(ブラシHIGH_1)は、典型的には、ブラシ部材10と感光体1との間で放電が発生しない電圧である。また、本実施例では、制御部150は、第1の動作が終了した時以降に、帯電部材2により帯電処理されて転写部Pdに到達する感光体1の表面の電位に対してトナーの正規極性とは逆極性側に高い電圧であって、転写部材5と感光体1との間で放電が発生する電圧(転写HIGH)を、転写電源E3により転写部材5に印加するように制御する。
【0064】
また、本実施例では、ブラシ部材10は、固定配置された導電性のブラシ部11を有する。また、本実施例では、転写部Pdで感光体1から記録材Sにトナー像が転写された後に感光体1の表面に残留したトナーが接触部Peを通過する時には、ブラシ電源E4によりブラシ部材10にトナーの正規極性と同極性の電圧(ブラシHIGH_1)が印加される。この電圧(ブラシHIGH_1)は、典型的には、ブラシ部材10と感光体1との間で放電が発生しない電圧である。また、本実施例では、転写部Pdで感光体1から記録材Sにトナー像が転写された後に感光体1の表面に残留したトナーは、現像装置3によって回収される。また、本実施例では、トナーは、平均円形度が0.96以上である。
【0065】
このように、本実施例では、転写ローラ5の清掃動作時に、転写ローラ5から感光ドラム1に移動させた負極性のトナーをブラシ部材10に一次回収する。そして、この負極性のトナーを、ブラシ接触部Peにおけるブラシ部材10と感光ドラム1との間での電界及び摺擦によって紙粉などの不純物Dから分離させた状態で、ブラシ部材10から感光ドラム1に吐き出す。これにより、トナー同士が凝集して帯電ローラ2に不均一に付着することを抑制し、局所的な帯電不良による濃度ムラなどの画像不良の発生を抑制することができる。
【0066】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0067】
図10は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。また、図11は、本実施例におけるブラシ部材10の単体の状態を示す模式的な断面図である。本実施例では、ブラシ部材10は、回転可能な回転体である導電性のブラシローラ12でブラシ部が構成されている。本実施例では、ブラシローラ12は、導電糸12aが織り込まれた基布12bを芯金12cに巻き付けることによって構成されている。基布12bは、固定手段としての導電性の接着剤によって芯金12cに接着されている。また、芯金12cは導電軸受(図示せず)によって支持されており、この導電軸受を介してブラシローラ12にブラシ電源E4からブラシ電圧が印加される。基布12bは、導電剤としてカーボンを含有した合成繊維で形成されており、導電糸12aは、導電性物質を配合したナイロンの繊維で形成されている。
【0068】
図11に示すように、ブラシローラ12が単体の状態で、基布12bから露出している導電糸12aの先端までの距離をL4とする。本実施例では、L4は3mmである。また、実施例1の固定ブラシ11の導電糸11aと同様に、本実施例のブラシローラ12の導電糸12aの太さは2デニール、密度は280kF/inchである。また、本実施例のブラシローラ12の感光ドラム1の周方向(「短手方向」)の長さ(外径)は約11mmであり、芯金12cの直径は5mmである。なお、導電糸12aの材料としては、ナイロンの他に、レーヨン、アクリル、ポリエステルなどを用いてもよい。本実施例では、芯金12cと感光ドラム1との間のクリアランスは固定されている。そして、芯金12cに固定された基布12bから感光ドラム1までの最短距離と上記L4との差分を導電糸12aの感光ドラム1に対する侵入量と定義する。本実施例では、導電糸12aは感光ドラム1に対する侵入量は1mmである。また、本実施例では、ブラシローラ12は、感光ドラム1の回転に伴って従動回転する。
【0069】
本実施例における転写ローラ5の清掃動作は、実施例1と同様であり、図5のタイミングチャートに従って実行される。
【0070】
本実施例では、実施例1と同様に、転写ローラ5の清掃動作時に、転写ローラ5から感光ドラム1に移動させた負極性のトナーを、ブラシ部材10を構成するブラシローラ12に一次回収する。そして、この負極性のトナーを、ブラシ接触部Peにおけるブラシローラ12と感光ドラム1との間での電界及び摺擦によって紙粉などの不純物Dから分離させた状態で、ブラシローラ12から感光ドラム1に吐き出す。これにより、トナー同士が凝集して帯電ローラ2に不均一に付着することを抑制し、局所的な帯電不良による濃度ムラなどの画像不良の発生を抑制することができる。
【0071】
また、本実施例では、ブラシ部材10が回転可能なブラシローラ12で構成されているので、導電糸12aの感光ドラム1との当接位置が変化する。そのため、転写残トナーがブラシ接触部Peを通過する際に散らされやすくなる。一方、転写ローラ5から感光ドラム1に移動したトナーは、ブラシ電圧と感光ドラム1の表面電位との間の電位差を形成することによって、ブラシローラ12に一次回収することができる。
【0072】
なお、本実施例では、ブラシ部材10は感光ドラム1の回転に伴って従動回転するが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、感光ドラム1上の紙粉などの不純物Dの掻き取り性を上げるために、ブラシ部材10を回転駆動して感光ドラム1に対して周速差を設けてもよいし、感光ドラム1に対してカウンター方向に回転駆動してもよい。また、感光ドラム1に対して周速度を設けずにブラシ部材10を回転駆動してもよい。つまり、ブラシ部材10は、回転可能な導電性のブラシ部12を有していてよい。そして、該ブラシ部12は、感光体1の回転に伴って従動回転するか、感光体1の周速度に対して速度差を有して若しくは有さずにブラシ接触部Peで感光体1とブラシ部12とが順方向に移動するように回転駆動されるか、又はブラシ接触部Peで感光体1とブラシ部12とが逆方向に移動するように回転駆動される構成とすることができる。
【0073】
[実施例3]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0074】
本実施例では、転写ローラ5の清掃動作時に、転写ローラ5から感光ドラム1に移動した負極性のトナーがブラシ接触部Peに到達する前に、ブラシ部材10に滞留している正極性のトナーをブラシ部材10から感光ドラム1に吐き出す期間を設ける。以下、更に詳しく説明する。
【0075】
<転写ローラの清掃動作>
図12は、本実施例における後回転工程で実行する転写ローラ5の清掃動作のタイミングチャート図である。本実施例では、この転写ローラ5の清掃動作は、制御部150が図12のタイミングチャートに従って画像形成装置100の各部の動作を制御することで実行される。なお、便宜上、転写時以外に転写電源E3が転写ローラ5に印加する電圧も「転写電圧」ということがある。
【0076】
・タイミングT1:
タイミングT1は、画像形成工程が終了し、後回転工程が開始するタイミングである。タイミングT1で、転写電圧が画像形成時の転写HIGH(+1000V)から転写LOW_1(-200V)に切り替えられる。ここで、本実施例では、タイミングT1で転写電圧を転写LOW_1(-200V)に切り替えたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。この転写電圧の電圧値は、負極性のトナーが転写ローラ5に静電的に引き付けられるような電界を形成する電圧値であればよい。より詳細には、この転写電圧の電圧値は、感光ドラム1の表面電位(本実施例では暗部電位Vd(-700V))に対して正極性側に高く、かつ、転写ローラ5と感光ドラム1との間で放電が発生しない電圧値であればよい。本実施例では、この転写電圧の電圧値は、感光ドラム1の表面電位(本実施例では暗部電位Vd(-700V))と同極性で、該感光ドラム1の表面電位よりも絶対値が小さい電圧値である。なお、負極性のトナーが転写ローラ5に十分に引き付けられるようにするためには、この転写電圧と感光ドラム1の表面電位との間の電位差は、200V以上であることが好ましい。また、本実施例では、転写ローラ5と感光ドラム1との間の放電開始電圧(放電閾値)は約600Vである。このタイミングでの転写部Pdにおける感光ドラム1の表面電位は、暗部電位Vd(-700V)である。したがって、転写LOW_1(-200V)と感光ドラム1の表面電位(-700V)との間の電位差によって、転写ローラ5に蓄積されている負極性のトナーは、紙粉などの不純物Dと共に転写ローラ5に静電的に引き付けられた状態を維持する。
【0077】
一方、ブラシ電圧は、画像形成時と変わらず、ブラシHIGH_1(-300V)である。また、このタイミングでのブラシ接触部Peにおける感光ドラム1の表面電位は、転写部Pdで画像形成時の転写HIGH(+1000V)を受けた領域であり、約-100Vである。したがって、画像形成時にブラシ部材10に一次回収された正極性のトナーはブラシ部材10から感光ドラム1に吐き出されることはなく、ブラシ部材10に留まっている。
【0078】
・タイミングT2:
タイミングT2は、転写部Pdで転写LOW_1(-200V)を受けた感光ドラム1の領域(暗部電位Vd(-700V)の領域)がブラシ接触部Peに到達したタイミングである。このタイミングで、ブラシ電圧は画像形成時と変わらずブラシHIGH_1(-300V)である。したがって、タイミングT2以降、ブラシHIGH_1(-300V)と感光ドラム1の表面電位(-700V)との間の電位差によって、ブラシ部材10に滞留していた正極性のトナーが感光ドラム1に吐き出される。ここで、本実施例では、タイミングT2でブラシ電圧をブラシHIGH_1(-300V)に維持したが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。このブラシ電圧の電圧値は、正極性のトナーが感光ドラム1に静電的に引き付けられるような電界を形成する電圧値であればよい。より詳細には、このブラシ電圧の電圧値は、感光ドラム1の表面電位(本実施例では暗部電位Vd(-700V))に対して正極性側に高く、かつ、ブラシ部材10と感光ドラム1との間で放電が発生しない電圧値であればよい。したがって、上記を満足することができれば、タイミングT2でブラシ電圧を変更してもよい。本実施例では、このブラシ電圧の電圧値は、感光ドラム1の表面電位(本実施例では暗部電位Vd(-700V))と同極性で、該感光ドラム1の表面電位よりも絶対値が小さい電圧値である。なお、正極性のトナーが感光ドラム1に十分に引き付けられるようにするためには、このブラシ電圧と感光ドラム1の表面電位との間の電位差は、200V以上であることが好ましい。また、本実施例では、ブラシ部材10と感光ドラム1との間の放電開始電圧(放電閾値)は約600Vである。
【0079】
図13は、タイミングT2以降に正極性のトナーtがブラシ部材10から感光ドラム1に吐き出されている際の感光ドラム1の周りの状態を示す模式図である。図13に示すように、ブラシ部材10に滞留していた正極性のトナーは、感光ドラム1に吐き出される。ブラシ部材10から吐き出された正極性のトナーは、除電部Pfにおいて感光ドラム1の表面電位が光除電された後、帯電部Paにおける均一な放電によって負極性に帯電され、現像ローラ31に回収される。一方、転写ローラ5には、負極性のトナーt及び紙粉などの不純物Dが蓄積された状態で維持されている。
【0080】
・タイミングT3:
タイミングT3は、転写部Pdで転写LOW_1(-200V)を受けた感光ドラム1の領域(暗部電位Vd(-700V)の領域)がブラシ接触部Peに到達したタイミングT2から所定時間が経過したタイミングである。タイミングT3で、転写電圧が転写LOW_1(-200V)から転写LOW_2(-1000V)に切り替えられる。タイミングT3は、次のように設定することができる。つまり、ブラシ部材10に滞留していた正極性のトナーが、感光ドラム1に十分に吐き出される時間を確保することが望まれる。本実施例では、タイミングT3は、タイミングT2から感光ドラム1の半周分(約300ms)経過した後としている。ここで、本実施例では、タイミングT3で転写電圧を転写LOW_2(-1000V)に切り替えたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。この転写電圧の電圧値は、負極性のトナーが感光ドラム1に静電的に引き付けられるような電界を形成する電圧値であればよい。より詳細には、この転写電圧値は、感光ドラム1の表面電位(本実施例では暗部電位(-700V))に対して負極性側に高く、かつ、転写ローラ5と感光ドラム1との間で放電が発生しない電圧値であればよい。本実施例では、この転写電圧の電圧値は、感光ドラム1の表面電位(本実施例では暗部電位Vd(-700V))と同極性で、該感光ドラム1の表面電位よりも絶対値が大きい電圧値である。なお、負極性のトナーが感光ドラム1に十分に引き付けられるようにするためには、この転写電圧と感光ドラム1の表面電位との間の電位差は、200V以上であることが好ましい。このタイミングでの転写部Pdにおける感光ドラム1の表面電位は、暗部電位Vd(-700V)である。したがって、タイミングT3以降は、転写LOW_2(-1000V)と感光ドラム1の表面電位(-700V)との間の電位差によって、転写ローラ5に蓄積されていた負極性のトナーは、紙粉などの不純物Dと共に感光ドラム1に移動する。
【0081】
図14は、タイミングT3以降に転写ローラ5から負極性のトナーtと紙粉などの不純物Dとが移動している際の感光ドラム1の周りの状態を示す模式図である。図14に示すように、転写ローラ5に蓄積されていた負極性のトナーt及び紙粉などの不純物Dは、感光ドラム1に移動する。また、ブラシ部材10に滞留していた正極性のトナーtは、感光ドラム1に吐き出され終えている。
【0082】
・タイミングT4:
タイミングT4は、転写部Pdで転写LOW_2(-1000V)を受けた感光ドラム1の領域がブラシ接触部Peに到達したタイミングである。タイミングT4で、ブラシ電圧がブラシHIGH_1(-300V)からブラシHIGH_2(-200V)に切り替えられる。このタイミングでのブラシ接触部Peにおける感光ドラム1の表面電位は、暗部電位Vd(-700V)である。したがって、転写ローラ5から感光ドラム1に移動した負極性のトナーと紙粉などの不純物Dとは、共にブラシ部材10に一次回収される。本実施例では、このタイミングで、ブラシ部材10内には正極性のトナーが実質的に存在しないため、ブラシ部材10内で負極性のトナーと正極性のトナーとが混在することはない。これにより、正極性のトナーと負極性のトナーとによる電荷の奪い合いや凝集、またそれに伴うブラシ部材10でのトナーの滞留を抑制することができる。ここで、本実施例では、タイミングT4でブラシ電圧をブラシHIGH_2(-200V)に切り替えたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。このブラシ電圧の電圧値は、負極性のトナーがブラシ部材10に引き付けられるような電界を形成する電圧値であればよい。より詳細には、このブラシ電圧の電圧値は、感光ドラム1の表面電位(本実施例では暗部電位Vd(-700V))に対して正極性側に高く、かつ、ブラシ部材10と感光ドラム1との間で放電が発生しない電圧値であればよい。したがって、上記を満足することができれば、タイミングT4でブラシ電圧を変更しなくてもよい。本実施例では、負極性のトナーと紙粉などの不純物Dとの分離性などを考慮して、ブラシ電圧を変更して電位差を大きくしている。本実施例では、このブラシ電圧の電圧値は、感光ドラム1の表面電位(本実施例では暗部電位Vd(-700V))と同極性で、該感光ドラム1の表面電位よりも絶対値が小さい電圧値である。なお、負極性のトナーがブラシ部材10に十分に引き付けられるようにするためには、このブラシ電圧と感光ドラム1の表面電位との間の電位差は、200V以上であることが好ましい。
【0083】
図15(a)は、タイミングT4以降の感光ドラム1の周りの状態を示す模式図である。ブラシ部材10に一次回収された負極性のトナーtと紙粉などの不純物Dとは、ブラシHIGH_2(-200V)と感光ドラム1の表面電位(-700V)との間の電位差によってブラシ部材10に静電的に引き付けられつつ、感光ドラム1と摺擦される。
【0084】
図15(b)は、このときのブラシ部材10内の状態を示す模式図である。ブラシ部材10内には、実質的に転写ローラ5から感光ドラム1に移動した負極性のトナーt及び紙粉などの不純物Dだけが存在し、ブラシ部材10内に滞留していた正極性のトナーは存在しない。そして、ブラシ接触部Peにおける電界及び摺擦によって、ブラシ部材10内でトナーと紙粉などの不純物Dとが分離される。このとき、充分な電荷を持たないトナーも感光ドラム1との摺擦によって負極性の電荷を持つことができる。さらに、負極性のトナーは、上記電界及び摺擦によって、ブラシ部材10内において凝集しにくく動きやすい状態を維持することができる。
【0085】
・タイミングT5:
タイミングT5は、転写部Pdで転写LOW_2(-1000V)を受けた感光ドラム1の領域がブラシ接触部Peに到達したタイミングT4から所定時間が経過したタイミングである。タイミングT5で、転写電圧が転写LOW_2(-1000V)から転写HIGH(+1000V)に切り替えられる。本実施例では、タイミングT3の時点で、ブラシ部材10に滞留していた正極性のトナーは感光ドラム1に吐き出されている。そのため、本実施例では、タイミングT5は、次のように設定することができる。まず、転写ローラ5に蓄積されていた負極性のトナーが、感光ドラム1に十分に移動する時間を確保することが望まれる。また、転写部Pdで転写HIGH(+1000V)を受けた感光ドラム1の領域がブラシ接触部Peに到達する時には、ブラシ部材10内の負極性のトナーが、ブラシ接触部Peにおける電界及び摺擦によって不純物Dから十分に分離されていることが望まれる。本実施例では、ブラシ部材10内における負極性のトナーと紙粉などの不純物Dとを分離させる時間を考慮して、タイミングT5は、タイミングT3から約700ms経過した後としている。なお、ブラシ部材10内の負極性のトナーと紙粉などの不純物Dとを分離させる時間は、500ms以上であることが好ましい。本実施例では、転写電圧の切り替え時間などを考慮して、タイミングT5は、タイミングT3から約700ms経過した後とした。転写部Pdで転写HIGH(+1000V)を受けた感光ドラム1の表面電位は、約-100Vとなる。ここで、本実施例では、タイミングT5で転写電圧を画像形成時と同じ転写HIGH(+1000V)に切り替えたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。この転写電圧の電圧値は、感光ドラム1の表面電位をブラシ電圧に対して正極性側に高くできればよい。より詳細には、この転写電圧の電圧値は、感光ドラム1の表面電位(本実施例では暗部電位Vd(-700V))に対して正極性側に高く、かつ、転写ローラ5と感光ドラム1との間で放電が発生する電圧値であればよい。例えば、転写HIGH_2(+1500V)のような画像形成時とは異なる電圧値に切り替えてもよい。本実施例では、この転写電圧の電圧値は、感光ドラム1の表面電位(本実施例では暗部電位Vd(-700V))とは逆極性で、該感光ドラム1の表面電位よりも絶対値が大きい電圧値である。
【0086】
なお、タイミングT5以降の感光ドラム1の周りの状態、及びブラシ部材10内の状態は、実施例1で説明した図8(a)、(b)に示した状態と同様である。ただし、本実施例では、図8(a)中のブラシ接触部Peから現像部Pcまでの間のトナー(特に正極性のトナー)は実質的に存在しない。本実施例においても、ブラシ部材10内の負極性のトナーtは、前述の電界及び摺擦によって、ブラシ部材10内において凝集しにくく動きやすい状態を維持している。
【0087】
・タイミングT6:
タイミングT6は、転写部Pdで転写HIGH(+1000V)を受けた感光ドラム1の領域がブラシ接触部Peに到達したタイミングである。タイミングT6で、ブラシ電圧がブラシHIGH_2(-200V)からブラシHIGH_1(-300V)に切り替えられる。このタイミングでのブラシ接触部Peにおける感光ドラム1の表面電位は約-100Vである。したがって、ブラシ部材10に一次回収されていた負極性のトナーが、ブラシ部材10から感光ドラム1に吐き出される。一方、ブラシ部材10によって物理的に絡めとられた紙粉などの不純物Dは、ブラシ部材10に留まる。ここで、本実施例では、タイミングT6でブラシ電圧をブラシHIGH_1(-300V)に切り替えたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。このブラシ電圧の電圧値は、ブラシ部材10に一次回収された負極性のトナーが感光ドラム1に静電的に引き付けられるような電界を形成する電圧値であればよい。より詳細には、このブラシ電圧の電圧値は、感光ドラム1の表面電位(本実施例では約-100V)に対して負極性側に高い(典型的には、ブラシ部材10と感光ドラム1との間で放電が発生しない)電圧値であればよい。本実施例では、このブラシ電圧の電圧値は、感光ドラム1の表面電位(本実施例では約-100V)と同極性で、該感光ドラム1の表面電位よりも絶対値が大きい電圧値である。なお、負極性のトナーが感光ドラム1に十分に引き付けられるようにするためには、このブラシ電圧と感光ドラム1の表面電位との間の電位差は、200V以上であることが好ましい。
【0088】
なお、タイミングT6以降の感光ドラム1の周りの状態、及びブラシ部材10内の状態は、実施例1で説明した図9(a)、(b)に示した状態と同様である。本実施例においても、ブラシ部材10から感光ドラム1に吐き出された負極性のトナーtは、トナー同士が凝集しておらず、紙粉などの不純物Dから分離された状態で、帯電部Paを通過し、現像ローラ31によって回収される。
【0089】
・タイミングT7:
タイミングT7は、転写部Pdで転写HIGH(+1000V)を受けた感光ドラム1の領域がブラシ接触部Peに到達したタイミングT6から所定時間が経過したタイミングである。タイミングT7は、ブラシ部材10から感光ドラム1に吐き出された負極性のトナーの実質的に全てが現像ローラ31によって回収された時以降のタイミングとなるように設定される。タイミングT7で、各種電源E1~E4、及びメインモータ(感光ドラムの駆動モータ)やスキャナモータ(露光装置4の回転ミラーの駆動モータ)などの駆動源(図示せず)がOFFされ、後回転工程が終了する。
【0090】
なお、本実施例では、メインモータ、転写電圧、ブラシ電圧などを同じタイミングでOFFしているが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、モータのイナーシャや各種電圧の立ち下げ時間などに応じて、適宜タイミングをずらしてもよい。
【0091】
<作用効果>
以上説明したように、本実施例では、制御部150は、清掃動作において転写部Pdを通過する感光体1の表面の、感光体1の回転方向に関する先端が接触部Peに到達する時以前に、ブラシ部材10と感光体1との間に正規極性とは逆極性に帯電したトナーがブラシ部材10から感光体1に向けて移動するような電位差が形成される第4の動作(回収前吐き出し動作、回収前吐き出し期間)(T2~T4)を有するように制御する。本実施例では、制御部150は、第4の動作において、帯電部材2により帯電処理された後に転写部材5と感光体1との間で放電が発生しない状態で転写部Pdを通過して接触部Peに到達する感光体1の表面の電位に対してトナーの正規極性とは逆極性側に高い電圧であって、ブラシ部材10と感光体1との間で放電が発生しない電圧(ブラシHIGH_1)を、ブラシ電源E4によりブラシ部材10に印加するように制御する。
【0092】
このように、本実施例では、実施例1と同様に、転写ローラ5の清掃動作時に、転写ローラ5から感光ドラム1に移動させた負極性のトナーをブラシ部材10に一次回収する。そして、この負極性のトナーを、ブラシ接触部Peにおけるブラシ部材10と感光ドラム1との間での電界及び摺擦によって紙粉などの不純物Dから分離させた状態で、ブラシ部材10から感光ドラム1に吐き出す。これにより、トナー同士が凝集して帯電ローラ2に不均一に付着することを抑制し、局所的な帯電不良による濃度ムラなどの画像不良の発生を抑制することができる。
【0093】
また、本実施例では、転写ローラ5から感光ドラム1に移動した負極性のトナーがブラシ接触部Peに到達する前に、ブラシ部材10に滞留している正極性のトナーを感光ドラム1に吐き出す。これにより、正極性のトナーと負極性のトナーとによる電荷の奪い合いや凝集、またそれに伴うブラシ部材10でのトナー滞留を抑制することができる。
【0094】
なお、実施例2と同様に、本実施例においてブラシローラ12で構成されたブラシ部材10を用いてもよい。
【0095】
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0096】
上述の実施例では、転写電圧やブラシ電圧を変更して感光ドラムの表面電位を制御しているが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、感光ドラムを電気的に接地して表面電位をグランド(0V)にした状態で、転写電圧やブラシ電圧を変更してもよい。また、感光ドラムに直接電圧を印加することによって、転写ローラと感光ドラムとの間、あるいはブラシ部材と感光ドラムとの間の電位関係を制御してもよい。
【0097】
また、上述の実施例では、本発明をDC帯電方式の画像形成装置に適用した場合を例に説明したが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。本発明は、帯電電圧として直流電圧(直流成分)と交流電圧(交流成分)とを重畳した振動電圧を用いるAC帯電方式の画像形成装置にも適用できる。
【0098】
また、上述の実施例では、現像電圧については直流成分についてのみ説明したが、現像電圧は直流電圧(直流成分)と交流電圧(交流成分)とが重畳された振動電圧であってもよい。
【0099】
また、上述の実施例では、ブラシ電圧については直流成分についてのみ説明したが、ブラシ電圧は直流電圧(直流成分)と交流電圧(交流成分)とが重畳された振動電圧であってもよい。
【0100】
また、上述の実施例では、除電手段としての前露光装置により除電部で感光ドラムに除電光を照射する構成としたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、ファーブラシなどの導電性の繊維からなるブラシ部材の毛先を感光ドラムに当接させて、感光ドラムを除電する構成としてもよい。また、除電手段は、除電により帯電ムラを均すことを目的として設けているため、例えば帯電ムラが十分に少ない帯電手段を用いる場合などには、除電手段を設けなくてもよい。
【0101】
また、上述の実施例では、転写ローラの清掃動作は、非画像形成時としての後回転工程において実行されるものとして説明したが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。転写ローラの清掃動作は、非画像形成時であれば任意のタイミングで実行することができる。例えば、上述の実施例では、あるジョブにおいて画像出力枚数が所定の閾値以上となった場合に、そのジョブの全ての画像形成が終了した後の後回転工程で転写ローラの清掃動作を実行した。これに対し、ジョブ中に画像出力枚数が所定の閾値以上になった場合に、紙間を延長するなどして転写ローラの清掃動作を実行することもできる。
【0102】
また、上述の実施例では、現像剤としての非磁性一成分現像剤であるトナーを用いたが、現像剤は例えば磁性一成分現像剤であってもよい。
【0103】
また、上述の実施例では、本発明を、感光ドラムのクリーニング専用のクリーニング手段を持たない「クリーナレス方式」の構成に適用したが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、感光ドラムの回転方向に関してブラシ接触部よりも下流側、かつ、帯電部よりも上流側で感光ドラムに当接するクリーニングブレードをクリーニング手段として用いた「ブレードクリーニング方式」の構成にも本発明は適用できる。ブレードクリーニング方式の構成においても、清掃動作時に転写部材から感光体に移動したトナーが紙粉などの不純物と共に凝集した状態でクリーニング部に到達することを抑制することが望まれる。このようなトナーと不純物との混合物がクリーニング部に到達すると、これがクリーニング部に噛み込まれるなどして、トナーのすり抜けが発生し、帯電部材にトナーが不均一に付着して感光体の局所的な帯電ムラが発生する可能性がある。そのため、ブレードクリーニング方式の構成に関しても本発明を適用することが有効である。ただし、本発明は、ブラシ接触部から帯電部にトナーが直接的に送られるクリーナレス方式の構成において、特に顕著な効果が得られるものと言える。
【0104】
また、上述の実施例では、感光体は、回転可能なドラム型であったが、回転可能な無端状のベルトなどの回転可能な回転体であればよい。また、上述の実施例では、転写部材は、回転可能なローラ型の部材であったが、これに限定されるものではない。例えば、パッド状の部材、シート状の部材、ブラシ状の部材(固定ブラシや回転可能なブラシローラなど)、回転可能な無端状のベルト(ベルトを介して感光体に当接する押圧部材が設けられていてよい)などであってもよい。典型的には、転写部材は、回転可能な回転体である。また、上述の実施例では、帯電部材は、回転可能なローラ型の部材であったが、ブラシ状の部材(回転可能なブラシローラなど)、回転可能な無端状のベルトなどであってもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 感光ドラム
2 帯電ローラ
3 現像装置
4 露光装置
5 転写ローラ
7 前露光装置
10 ブラシ部材
11 固定ブラシ
12 ブラシローラ
図1
図2
図3
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