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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-28
(45)【発行日】2025-04-07
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/22 20060101AFI20250331BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20250331BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20250331BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20250331BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20250331BHJP
【FI】
H02K5/22
F04C29/00 T
F04C29/00 B
F04B39/00 A
F04B39/00 106A
H02K11/33
H02K7/14 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021018908
(22)【出願日】2021-02-09
(65)【公開番号】P2022121919
(43)【公開日】2022-08-22
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】余語 一朗
(72)【発明者】
【氏名】上田 幸甫
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-136604(JP,A)
【文献】特開2007-312570(JP,A)
【文献】特開2017-017772(JP,A)
【文献】特開2007-002691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/22
F04C 29/00
F04B 39/00
H02K 11/33
H02K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のベース部と、
前記ベース部の板面を覆う第1絶縁部と、
前記ベース部の前記板面と交差する方向である所定方向に延在し、前記ベース部及び前記第1絶縁部を貫通する端子と、
前記第1絶縁部から前記所定方向に沿って延び、前記端子の側面を覆う第2絶縁部と、を備え、
前記第1絶縁部と前記第2絶縁部とは一体的に成形されており、
前記ベース部は金属材料で形成されていて、
前記第1絶縁部は、表面から突出するとともに、前記端子と前記ベース部との沿面距離を長くする絶縁用凸部を有する端子ユニットと、
冷媒ガスを圧縮する圧縮機構と、
該圧縮機構を駆動するモータと、
前記圧縮機構及び前記モータを収容する内部空間が内部に形成されるとともに、前記圧縮機構及び前記モータを収容するハウジングと、
直流電力を所要周波数の三相交流電力に変換し、前記端子を介して前記モータに印加することにより、前記モータを駆動するインバータと、
内部に前記インバータを収容する収容空間が形成されるとともに、前記インバータを収容するインバータ収容部と、を備え、
前記端子ユニットは、前記モータと前記インバータとを接続するとともに、前記ハウジングの前記内部空間から前記インバータ収容部の前記収容空間への前記冷媒ガスの漏えいを抑制する電動圧縮機
【請求項2】
前記第1絶縁部は、外縁部の周方向の全域に亘って設けられ、表面から突出するシール用凸部を有し、
前記シール用凸部は、弾性材料で形成されている請求項1に記載の電動圧縮機
【請求項3】
記ベース部は、前記第1絶縁部から露出する露出部を有する請求項1または請求項2に記載の電動圧縮機
【請求項4】
前記第1絶縁部または前記第2絶縁部の少なくとも一方は、弾性材料で形成されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の電動圧縮機
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷媒を圧縮する圧縮機構と、圧縮機構へ駆動力を供給する電動モータとの両方がハウジングの内部に収容された圧縮機が知られている。このような圧縮機では、給電部から電動モータに電力を供給するために、給電部と電動モータとが接続部材で接続されている。給電部はハウジングの外部に配置されているので、ハウジングには接続部材が挿通する開口が形成されている。
【0003】
特許文献1には、ステータコイルがハウジング外のモータ駆動回路に接続装置を介して電気的に接続されている圧縮機が開示されている。この圧縮機では、ステータコイルからリードワイヤが延びている。また、リードワイヤが、エンドカバーに形成された貫通孔を挿通し、エンドカバー外に導出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-291926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ハウジングの開口を端子が挿通する圧縮機が存在する。特許文献1に記載の構造は、上述のようにリードワイヤが開口を挿通しており、端子が開口を挿通することについて考慮されていない。
【0006】
ハウジングの開口を端子が挿通する圧縮機では、端子を流れる電流の漏えいを抑制するために、端子を絶縁する必要がある。端子を流れる電流が漏洩した場合には、種々の問題が生じるので、端子の絶縁性を向上させることが望まれている。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、絶縁性を向上させることができる電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の電動圧縮機は以下の手段を採用する。
本開示の一態様に係る電動圧縮機は、板状のベース部と、前記ベース部の板面を覆う第1絶縁部と、前記ベース部の前記板面と交差する方向である所定方向に延在し、前記ベース部及び前記第1絶縁部を貫通する端子と、前記第1絶縁部から前記所定方向に沿って延び、前記端子の側面を覆う第2絶縁部と、を備え、前記第1絶縁部と前記第2絶縁部とは一体的に成形されており、前記ベース部は金属材料で形成されていて、前記第1絶縁部は、表面から突出するとともに、前記端子と前記ベース部との沿面距離を長くする絶縁用凸部を有する端子ユニットと、冷媒ガスを圧縮する圧縮機構と、該圧縮機構を駆動するモータと、前記圧縮機構及び前記モータを収容する内部空間が内部に形成されるとともに、前記圧縮機構及び前記モータを収容するハウジングと、直流電力を所要周波数の三相交流電力に変換し、前記端子を介して前記モータに印加することにより、前記モータを駆動するインバータと、内部に前記インバータを収容する収容空間が形成されるとともに、前記インバータを収容するインバータ収容部と、を備え、前記端子ユニットは、前記モータと前記インバータとを接続するとともに、前記ハウジングの前記内部空間から前記インバータ収容部の前記収容空間への前記冷媒ガスの漏えいを抑制する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、絶縁性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態に係る圧縮機を示す縦断面図である。
図2図1の要部(II部分)拡大図である。
図3図1の圧縮機に設けられた端子ユニットを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る端子ユニット及び圧縮機の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、本実施形態に係る電動圧縮機(圧縮機)1の縦断面図が示されている。
本実施形態に係る電動圧縮機1は、モータ17を駆動するインバータ(図示省略)が一体に組み込まれているインバータ一体型電動圧縮機とされている。
【0012】
電動圧縮機1は、外殻を為すハウジング2と、ハウジング2に収容されるスクロール圧縮機構7と、スクロール圧縮機構7を駆動するモータ17と、を備えている。
【0013】
ハウジング2は、スクロール圧縮機構7やモータ17等を収容する内部空間S1が内部に形成されている。ハウジング2は、例えば、金属材料で形成されている。ハウジング2は、中心軸線に沿って延在する円筒状の第1ハウジング3と、第1ハウジング3の中心軸線方向の一端側(図1では、下端側)を閉鎖する第2ハウジング4を有している。すなわち、第1ハウジング3は、内部空間S1の側方を規定している。また、第2ハウジング4は、内部空間S1の下方を規定している。内部空間S1の上方は、インバータ収容部25によって規定されている。インバータ収容部25の詳細については後述する。
【0014】
スクロール圧縮機構7は、ハウジング2の一端側に組み込まれている。スクロール圧縮機構7は、一対の固定スクロール5および旋回スクロール6を有する。スクロール圧縮機構7は、冷媒ガスを圧縮する。スクロール圧縮機構7により圧縮された高圧の冷媒ガスは、吐出口8を介して吐出チャンバー10内に吐出される。吐出口8は、固定スクロール5の中心に形成されている。吐出チャンバー10内に吐出された冷媒ガスは、ハウジング2に設けられている吐出ポート(図示省略)を経て、電動圧縮機1の外部へと吐出される。
【0015】
固定スクロール5は、ボルト31等の締結具(図示省略)によって、第2ハウジング4に固定されている。旋回スクロール6は、スラスト軸受12に自転阻止機構(図示省略)を介して旋回可能に支持されている。旋回スクロール6は、固定スクロール5に対して旋回する。
【0016】
固定スクロール5と旋回スクロール6とは、噛み合わされるように係合している。固定スクロール5と旋回スクロール6との間には、圧縮室14が形成されている。スクロール圧縮機構7は、外周側から中心側へ向かうにしたがって圧縮室14の容積が減少するように旋回スクロール6が旋回(公転)することで、圧縮室14内の冷媒を圧縮する。
【0017】
モータ17は、円筒状のハウジング2の他端側に組み込まれている。モータ17は、ステータ15と、ロータ16を有している。ロータ16には、駆動軸18が結合されている。駆動軸18は、ハウジング2内の中央部付近に設置された軸受20と、ハウジング2内の他端部付近に設置された軸受(図示省略)により回転自在に支持されている。駆動軸18は、一端にクランクピン19が設けられている。駆動軸18とクランクピン19とは、中心軸線が偏心している。クランクピン19は、旋回スクロール6に連結されている。すなわち、駆動軸18は、モータ17とスクロール圧縮機構7とを接続している。モータ17は、駆動軸18を介して、旋回スクロール6を旋回させる。
また、クランクピン19と旋回スクロール6との間には、従動クランク機構(図示省略)が設けられている。従動クランク機構は、旋回スクロール6の旋回半径を可変とする。従動クランク機構の例として、例えば、スイングリンク方式の従動クランク機構が挙げられる。
また、モータ17とインバータとは端子ユニット30を介して接続されている。端子ユニット30の詳細については後述する。
【0018】
ハウジング2の他端部側には、冷凍サイクルからの低圧冷媒ガスを吸入するための吸入ポート(図示省略)が設けられている。吸入ポートから吸入された冷媒ガスは、第ハウジングとモータ17の一端間の空間部24に流入する。空間部24に流入した低圧冷媒ガスは、ハウジング2内を充満する。具体的には、空間部24に流入した低圧冷媒ガスは、スクロール圧縮機構7側に流通し、スクロール圧縮機構7に吸い込まれて圧縮されるようになっている。冷媒ガスには、潤滑油が含まれている。冷媒ガスに含まれる潤滑油は、冷媒ガスとともにスクロール圧縮機構7や自転阻止機構に供給され、各機構を潤滑している。
【0019】
ハウジング2の中心軸線に沿う方向の他端側(図1では、上端側)には、インバータを収容するインバータ収容部25が設けられている。インバータは、外部のバッテリ等から給電される直流電力を所要周波数の三相交流電力に変換し、端子70を介してモータ17に印加することにより、モータ17を駆動する。
インバータは、例えば、電力用半導体スイッチング素子であるIGBT等の複数個のパワートランジスタで構成されるスイッチング回路が実装されたパワー基板と、外部から入力される制御信号に基づいて、スイッチング回路、その他を制御するCPU等の低電圧で動作する素子で構成される制御通信回路が実装された制御基板と、ノイズ除去用のフィルタ回路を構成する平滑コンデンサおよびコイル等の電装部品と、を有している。
【0020】
インバータ収容部25は、内部にインバータを収容する収容空間S2が形成されている。インバータ収容部25は、例えば、金属材料で形成されている。インバータ収容部25は、収容空間S2の下部を規定する第1インバータハウジング26と、収容空間S2の上部を規定する第2インバータハウジング34と、を有している。
【0021】
第1インバータハウジング26は、収容空間S2の側方を規定する側壁部27と、収容空間S2の下方を規定する底面部28と、底面部28の下面から下方に突出する突出部29と、を一体的に有している。側壁部27は、底面部28の外縁部に立設している。
【0022】
底面部28は、第1ハウジング3の他端(上端)側を閉鎖している。すなわち、底面部28の下面は、内部空間S1の上方を規定している。底面部28は、開口28aが形成されている。開口28aは、内部空間S1と収容空間S2とを接続している。この開口28aには、端子ユニット30が設けられている。また、底面部28は、上方に隆起する隆起部28bを有している。開口28aは、隆起部28bの中央に形成されている。隆起部28bには、ボルト31が挿通する第1ボルト挿通孔(図示省略)が複数形成されている。
【0023】
突出部29は、円筒状の部材である。突出部29は、外周面が第1ハウジング3の上端に形成された開口の内周面と接触している。突出部29は、第1ハウジング3の上端に形成された開口に嵌合している。
【0024】
第2インバータハウジング34は、収容空間S2を上方から覆っている。第2インバータハウジング34の下端は、側壁部27の上端に接続されている。
【0025】
次に、端子ユニット30の詳細について説明する。なお、以下の説明及び図面では、上下方向をZ軸方向とし、Z軸方向と直交する方向のうち3つの端子70が並ぶ方向をX軸方向として説明する。
端子ユニット30は、モータ17とインバータを接続するとともに、第2インバータハウジング34の底面部28に形成された開口28aを塞いでいる。
【0026】
端子ユニット30は、図2に示すように、開口28aを下方から覆う板状のベース部40と、ベース部40の上面に設けられる上絶縁部材50と、ベース部40の下面に設けられる下絶縁部材60と、を備えている。また、端子ユニット30は、ベース部40、上絶縁部材50及び下絶縁部材60を貫通する3本の端子70を備えている。また、端子ユニット30は、複数のボルト31によってインバータ収容部25に固定されている。複数のボルト31は、開口28aを囲うように配置されている。各ボルト31は、第1ボルト挿通孔及び第2ボルト挿通孔を挿通している。
【0027】
ベース部40は、金属材料で形成されている。ベース部40は、図2及び図3に示すように、平板状の部材である。ベース部40の外縁部には、固定部41(露出部)が設けられている。固定部41は、上面が平坦に形成されている。固定部41は、上絶縁部材50によって覆われていない。すなわち、固定部41は、上絶縁部材50から露出している。固定部41の上面は、第1インバータハウジング26の隆起部28bの下面と面接触している。固定部41には、板厚方向に貫通する第2ボルト挿通孔(図示省略)が形成されている。第2ボルト挿通孔には、ボルト31が挿通している。
【0028】
また、ベース部40の上面の中央部には、下方に凹む複数(本実施形態では、一例として4つ)の凹部42が形成されている。複数の凹部42は、X軸方向に沿って等間隔に並んで配置されている。凹部42には、後述する上絶縁部材50の嵌合絶縁部52が嵌っている。X軸方向の両端に配置される凹部42の一部は、平面視した際に、隆起部28bと重複している。
【0029】
ベース部40は、隣接する凹部42同士の間に、板厚方向に貫通する端子貫通孔が形成されている。すなわち、本実施形態では、端子貫通孔が3つ形成されている。3つの端子貫通孔は、X軸方向に沿って所定の間隔で並んで配置されている。各端子貫通孔には、ガラス材料で形成された円筒部材44(図3参照)が嵌合している。端子貫通孔の内周面と円筒部材44の外周面とは接触している。円筒部材44の下端部には、半径方向外側に延びるフランジ部45が設けられている。円筒部材44の内部を端子70が挿通している。円筒部材44の内周面と端子70の外周面とは接触している。端子貫通孔には、円筒部材44を介して端子70が挿通している。なお、円筒部材44の形状は、本実施形態の形状に限定されない。例えば、フランジ部45を省略してもよい。
【0030】
ベース部40の上面は、上絶縁部材50によって覆われている。詳細には、ベース部40の固定部41以外の部分は、上面が上絶縁部材50によって覆われている。
ベース部40の下面には、上方に凹む段部が形成されている。段部は、円筒部材44のフランジ部45と嵌合する。ベース部40の下面の中央部は、下絶縁部材60によって覆われている。なお、円筒部材44にフランジ部45が存在しない場合には、段部を形成しなくてもよい。
【0031】
上絶縁部材50は、絶縁性のゴム材料(例えば、水素化ニトリルゴム(HNBR))で形成されている。すなわち、上絶縁部材50は、金属よりも弾性係数が高い弾性材料で形成されている。なお、上絶縁部材50の材料は、HNBRに限定されない。上絶縁部材50は、ベース部40の上面を覆う板状絶縁部(第1絶縁部)51と、板状絶縁部51の下面から下方へ突出する嵌合絶縁部(第1絶縁部)52と、板状絶縁部51から上方へ延びる3つの上円筒絶縁部(第2絶縁部)53と、を備えている。板状絶縁部51と上円筒絶縁部53と嵌合絶縁部52とは、一体的に成形されている。詳細には、板状絶縁部51と上円筒絶縁部53と嵌合絶縁部52とは、別々に製造した部材同士を固定したものではなく、例えば、射出成形等によって一体物として成形されている。
【0032】
板状絶縁部51は、ベース部40の上面に載置されている。すなわち、板状絶縁部51の下面は、ベース部40の上面と面接触している。板状絶縁部51には、板厚方向に貫通する3つの上貫通孔が形成されている。3つの上貫通孔は、X軸方向に沿って所定の間隔で並んで配置されている。上貫通孔の上端は、上円筒絶縁部53の内部に形成された空間と接続している。また、上貫通孔の下端は、円筒部材44の内部に形成された空間と接続している。上貫通孔には、端子70が挿通している。
【0033】
また、板状絶縁部51は、上面から上方へ突出する複数の絶縁用凸部55を有している。各絶縁用凸部55は、上円筒絶縁部53を囲うように立設している。絶縁用凸部55は、上円筒絶縁部53の半径方向の外側に配置され、上円筒絶縁部53の周方向の全域に亘って設けられている。絶縁用凸部55の上端は、隆起部28bの上端よりも下方に位置している。また、板状絶縁部51は、隣接する絶縁用凸部55同士の間に形成される絶縁用凹部56を有している。絶縁用凹部56は板状絶縁部51の上面から下方へ凹んでいる。
【0034】
3つの上円筒絶縁部53は、X軸方向に沿って所定の間隔で並んで配置されている。各上円筒絶縁部は、端子70の側面を覆っている。詳細には、端子70の側面のうち上下方向の一部の領域を覆っている。上円筒絶縁部53の上端は、隆起部28bの上端よりも上方に位置している。
【0035】
嵌合絶縁部52は、複数設けられている。各嵌合絶縁部52は、凹部42に嵌合している。換言すれば、各嵌合絶縁部52は、凹部42の上面及び内周面を覆っている。X軸方向の両端に配置される凹部42に嵌合する嵌合絶縁部52は、上面から上方に突出するシール用凸部57(図3参照)を一体的に有している。シール用凸部57は、外縁部の周方向の全域に亘って設けられている。シール用凸部57は、嵌合絶縁部52の上面のうち、隆起部28bの下面と対向する位置に設けられている。図2に示すように、シール用凸部57は、端子ユニット30がインバータ収容部25に取り付けられた状態において、隆起部28bの下面に押し付けられることで潰れるように変形している。
凹部42の高さと、嵌合絶縁部52の高さは略同一とされている。すなわち、嵌合絶縁部52は、凹部42から上方に突出しないように形成されている。換言すれば、嵌合絶縁部52の上面とベース部40の固定部41の上面とは面一となっている。
【0036】
下絶縁部材60は、絶縁性のゴム材料(例えば、水素化ニトリルゴム(HNBR))で形成されている。すなわち、下絶縁部材60は、金属よりも弾性係数が高い弾性材料で形成されている。なお、下絶縁部材60の材料は、HNBRに限定されない。下絶縁部材60は、ベース部40の下面を覆う平板絶縁部61と、平板絶縁部61の下面から下方へ延びる3つの下円筒絶縁部62と、を有している。平板絶縁部61と下円筒絶縁部62とは、一体的に成形されている。詳細には、平板絶縁部61と下円筒絶縁部62とは、別々に製造した部材同士を固定したものではなく、例えば、射出成形等によって一体物として成形されている。
【0037】
平板絶縁部61は、面がベース部40の面と面接触している。平板絶縁部61は、ベース部40の下面の中央部のみを覆っている。すなわち、平板絶縁部61は、ベース部40の下面の外縁部は覆っていない。ベース部40の下面の外縁部には、ボルト31と螺合するナット32が設けられている。
平板絶縁部61には、板厚方向に貫通する3つの下貫通孔が形成されている。3つの下貫通孔は、X軸方向に沿って所定の間隔で並んで配置されている。下貫通孔の下端は、下円筒絶縁部62の内部に形成された空間と接続している。また、下貫通孔の上端は、円筒部材44の内部に形成された空間と接続している。下貫通孔には、端子70が挿通している。
【0038】
下円筒絶縁部62は、X軸方向に沿って所定の間隔で並んで配置されている。各筒絶縁部は、端子70の側面を覆っている。詳細には、端子70の側面のうち、ステータ端子カバー33と平板絶縁部61との間の全領域を覆っている。下円筒絶縁部62の下端は、ステータ端子カバー33の上面と接触している。下円筒絶縁部62は、端子70とステータ端子(図示省略)との間をシールしている。また、下円筒絶縁部62は、端子70を絶縁している。
【0039】
3本の端子70は、X軸方向に沿って、所定の間隔で並んで配置されている。各端子70は、上下方向(Z軸方向)に延在している。各端子70は、上円筒絶縁部53、上貫通孔、端子貫通孔(円筒部材44)、下貫通孔及び下円筒絶縁部62を挿通している。端子70の上部は、インバータ収容部25の内部に形成された収容空間S2に位置している。端子70の下部は、ハウジング2の内部空間S1に位置している。端子70の下端部は、ステータ15の上方に配置されたステータ端子カバー33の内部に配置されている。
端子70の上端部は、インバータに接続されている。また、端子70の下端部は、ステータ15に接続されている。端子70とインバータ及びステータ15とは、直接接続されていてもよく、リードワイヤ等を介して間接的に接続されていてもよい。
【0040】
本実施形態では、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、ベース部40の板面を覆う板状絶縁部51及び嵌合絶縁部52を備えている。これにより、端子70の露出部分とベース部40との沿面距離は、板状絶縁部51及び嵌合絶縁部52を迂回した距離となる。したがって、板状絶縁部51及び嵌合絶縁部52を設けない場合と比較して、端子70の露出部分とベース部40との沿面距離を長くすることができる。よって、絶縁性を向上させることができる。
【0041】
また、本実施形態では、平板絶縁部61と下円筒絶縁部62とが一体的に成形されている。すなわち、下絶縁部材60の全てが一体的に成形されている。これにより、平板絶縁部61と下円筒絶縁部62とを別々に製造する場合と比較して、部品点数を低減することができる。したがって、製造作業を容易化することができる。また、製造コストを低減することができる。
【0042】
また、本実施形態では、板状絶縁部51と上円筒絶縁部53と嵌合絶縁部52とが一体的に成形されている。すなわち、上絶縁部材50の全てが一体的に成形されている。これにより、板状絶縁部51と上円筒絶縁部53と嵌合絶縁部52とを別々に製造する場合と比較して、部品点数を低減することができる。したがって、製造作業を容易化することができる。また、製造コストを低減することができる。
【0043】
また、ハウジング2の内部の内部空間S1には冷媒ガスが充満している。このため、内部空間S1から収容空間S2への冷媒ガスの漏えいを抑制するために、インバータ収容部25に形成された開口28aをシールする必要がある。
本実施形態では、嵌合絶縁部52がシール用凸部57を有している。これにより、ハウジング(固定対象物)2に対して端子ユニット30を固定する際に、シール用凸部57がハウジング2に押し付けられて、潰れるように変形する。すなわち、シール用凸部57がハウジング2に密着するように変形する。したがって、ハウジング2(詳細には隆起部28b)と端子ユニット30(詳細には、嵌合絶縁部52)との間のシール性を向上させることができる。
【0044】
このように、本実施形態では、上絶縁部材50及び下絶縁部材60において、シールに資する部分と、絶縁に資する部分とを一体的に成形している。これにより、シールに資する部材と絶縁に資する部材とを別体として製作する場合と比較して、部品点数を低減することができる。したがって、製造作業を容易化することができるとともに、製造コストを低減することができる。
また、本実施形態では、上絶縁部材50及び下絶縁部材60の全てを比較的安価なゴム材料で形成している。これにより、端子70の絶縁や開口28aのシールのために高価な材料(例えば、セラミック)を使用する場合と比較して、コストを低減することができる。
【0045】
また、本実施形態では、ベース部40が上絶縁部材50から露出する固定部41を有している。また、ベース部40は金属材料で形成されている。また、固定部41をハウジング2に面接触させるとともに、固定部41とハウジング2とをボルト31で固定している。このように、本実施形態では、金属材料よりも弾性係数が高い材料(例えば、ゴム材料等)を介することなく、固定部41とハウジング2とが接触している。これにより、固定部41とハウジング2とを締結するボルト31の軸力を低下し難くすることができる。したがって、ベース部40とハウジング2とを強固に固定することができる。よって、ベース部40とハウジング2との間のシール性の低下を抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態では、上絶縁部材50及び下絶縁部材60が、ゴム材料で形成されている。これにより、例えば、ハウジング2に対して端子ユニット30を固定する際に、上絶縁部材50及び下絶縁部材60をハウジング2に押し付けることで、押し付けられた上絶縁部材50及び下絶縁部材60がハウジング2に密着するように変形する。したがって、ハウジング2と端子ユニット30との間のシール性を向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態では、板状絶縁部51が絶縁用凸部55を有している。これにより、端子70とベース部40との沿面距離は、図3の矢印A1で示すように、絶縁用凸部55を迂回した距離となる。したがって、絶縁用凸部55を設けない場合と比較して、端子70とベース部40との沿面距離を長くすることができる。よって、絶縁性を向上させることができる。
【0048】
なお、本開示は、上記各実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、上絶縁部材50及び下絶縁部材60がHNBRで形成される例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、電動圧縮機1の運転時に冷媒と接触する下絶縁部材60をHNBRで形成し、運転時に冷媒と接触する可能性の低い上絶縁部材50をシリコーンゴムで形成してもよい。
また、上記実施形態では、端子ユニット30が、第1インバータハウジング26の底面部28の下面と接触するように固定される例について説明した。すなわち、端子ユニット30のベース部40が冷媒側(換言すれば、ハウジング2の内部空間S1)に位置するように、端子ユニット30が第1インバータハウジング26に固定される例について説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されない。例えば、端子ユニット30は、第1インバータハウジング26の底面部28の上面と接触するように固定されてもよい。すなわち、端子ユニット30のベース部40が大気側(換言すれば、インバータ収容部25の収容空間S2)に位置するように、端子ユニット30が第1インバータハウジング26に固定されてもよい。
【0049】
以上説明した実施形態に記載の端子ユニット及び圧縮機は、例えば以下のように把握される。
本開示の一態様に係る端子ユニットは、板状のベース部(40)と、前記ベース部の板面を覆う第1絶縁部(51,52)と、前記ベース部の前記板面と交差する方向である所定方向(Z軸方向)に延在し、前記ベース部及び前記第1絶縁部を貫通する端子(70)と、前記第1絶縁部から前記所定方向に沿って延び、前記端子の側面を覆う第2絶縁部(53)と、を備え、前記第1絶縁部と前記第2絶縁部とは一体的に成形されている。
【0050】
上記構成では、ベース部の板面を覆う第1絶縁部を備えている。これにより、端子の一部が第2絶縁部から露出している場合であっても、端子の露出部分とベース部との沿面距離は、第1絶縁部を迂回した距離となる。したがって、第1絶縁部を設けない場合と比較して、端子の露出部分とベース部との沿面距離を長くすることができる。よって、絶縁性を向上させることができる。
また、上記構成では、第1絶縁部と第2絶縁部とは一体的に成形されている。これにより、第1絶縁部と第2絶縁部とを別々に製造する場合と比較して、部品点数を低減することができる。したがって、製造作業を容易化することができる。また、製造コストを低減することができる。
【0051】
また、本開示の一態様に係る端子ユニットは、前記第1絶縁部は、外縁部の周方向の全域に亘って設けられ、表面から突出するシール用凸部(57)を有し、前記シール用凸部は、弾性材料で形成されている。
【0052】
上記構成では、第1絶縁部が弾性材料で形成されたシール用凸部を有している。これにより、例えば、固定対象物に対して端子ユニットを固定する際に、シール用凸部を固定対象物に対して押し付けることで、シール用凸部が潰れるように変形する。すなわち、シール用凸部が固定対象物に密着するように変形する。したがって、固定対象物と端子ユニットとの間のシール性を向上させることができる。
【0053】
また、本開示の一態様に係る端子ユニットは、前記ベース部は金属材料で形成されていて、前記ベース部は、前記第1絶縁部から露出する露出部(41)を有する。
【0054】
上記構成では、ベース部が第1絶縁部から露出する露出部を有している。また、ベース部は金属材料で形成されている。
例えば、固定対象物に対して端子ユニットを固定する際に、露出部を固定対象物に接触させるとともに、露出部と固定対象物とを締結具で固定する場合がある。この場合には、上記構成では、金属材料よりも弾性係数が高い材料(例えば、ゴム材料等)を介することなく、露出部と固定対象物とが接触することとなる。これにより、露出部と固定対象物とを締結する締結具の軸力を低下し難くすることができる。したがって、ベース部と固定対象物とを強固に固定することができる。よって、ベース部と固定対象物との間のシール性の低下を抑制することができる。
【0055】
また、本開示の一態様に係る端子ユニットは、前記第1絶縁部または前記第2絶縁部の少なくとも一方は、弾性材料で形成されている。
【0056】
上記構成では、第1絶縁部または第2絶縁部の少なくとも一方は、弾性材料で形成されている。これにより、例えば、固定対象物に対して端子ユニットを固定する際に、弾性材料で形成された第1絶縁部または第2絶縁部を固定対象物に対して押し付けることで、押し付けられた第1絶縁部または第2絶縁部が固定対象物に密着するように変形する。したがって、固定対象物と端子ユニットとの間のシール性を向上させることができる。
なお、弾性材料の例として、金属よりも弾性係数が高い材料(例えば、ゴム材料や樹脂材料等)が挙げられる。
【0057】
また、本開示の一態様に係る端子ユニットは、第1絶縁部は表面から突出する絶縁用凸部(55)を有する。
【0058】
上記構成では、第1絶縁部が絶縁用凸部を有している。これにより、端子の露出部分とベース部との沿面距離は、絶縁用凸部を迂回した距離となる。したがって、絶縁用凸部を設けない場合と比較して、端子の露出部分とベース部との沿面距離を長くすることができる。よって、絶縁性を向上させることができる。
【0059】
本開示の一態様に係る圧縮機は、上記いずれかに記載の端子ユニットを備える。
【符号の説明】
【0060】
1 :電動圧縮機(圧縮機)
2 :ハウジング
3 :第1ハウジング
4 :第2ハウジング
5 :固定スクロール
6 :旋回スクロール
7 :スクロール圧縮機構
8 :吐出口
10 :吐出チャンバー
12 :スラスト軸受
14 :圧縮室
15 :ステータ
16 :ロータ
17 :モータ
18 :駆動軸
19 :クランクピン
20 :軸受
24 :空間部
25 :インバータ収容部
26 :第1インバータハウジング
27 :側壁部
28 :底面部
28a :開口
28b :隆起部
29 :突出部
30 :端子ユニット
31 :ボルト
32 :ナット
33 :ステータ端子カバー
34 :第2インバータハウジング
40 :ベース部
41 :固定部
42 :凹部
44 :円筒部材
45 :フランジ部
50 :上絶縁部材
51 :板状絶縁部(第1絶縁部)
52 :嵌合絶縁部(第1絶縁部)
53 :上円筒絶縁部(第2絶縁部)
55 :絶縁用凸部
56 :絶縁用凹部
57 :シール用凸部
60 :下絶縁部材
61 :平板絶縁部
62 :下円筒絶縁部
70 :端子
S1 :内部空間
S2 :収容空間
図1
図2
図3