(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-28
(45)【発行日】2025-04-07
(54)【発明の名称】膜状組成物、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/28 20060101AFI20250331BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20250331BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20250331BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20250331BHJP
C08L 33/00 20060101ALI20250331BHJP
C08L 23/26 20250101ALI20250331BHJP
C08K 3/11 20180101ALI20250331BHJP
【FI】
B01D53/28
B01J20/22 A
B01J20/28 Z
B01J20/30
C08L33/00
C08L23/26
C08K3/11
(21)【出願番号】P 2021048541
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500076974
【氏名又は名称】株式会社テクノフロンティア
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100128901
【氏名又は名称】東 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】服部 沙織
(72)【発明者】
【氏名】若林 努
(72)【発明者】
【氏名】中島 敏充
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-171259(JP,A)
【文献】特開2020-158739(JP,A)
【文献】特開2020-015805(JP,A)
【文献】特開2012-077987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/28
B01J 20/22
B01J 20/28
B01J 20/30
C08L 33/00
C08L 23/26
C08K 3/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿材を含有して成り、基材上に塗布されて成る膜状組成物であって、
クロムを中心金属とする金属有機構造体MIL-101(Cr)を
前記吸湿材として含有し、
接着硬化材として無水マレイン酸変性ポリオレフィンを含有する膜状組成物。
【請求項2】
前記接着硬化材としてアクリル系高分子材料を含有する請求項1記載の膜状組成物。
【請求項3】
前記基材が、不織布、紙、アルミニウム、銅、及びステンレス鋼から選択される何れか一種である請求項1又は2記載の膜状組成物。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項記載の膜状組成物の製造方法であって、
クロムを中心金属とする金属有機構造体MIL-101(Cr)
である前記吸湿材と、前記接着硬化材としての無水マレイン酸変性ポリオレフィンとを、水、アセトン、エタノール、イソプロピルアルコールから選ばれる一つ又は複数を混合した溶媒に分散させて、塗工液を作製し、
前記塗工液を基材上に塗布して乾燥させる膜状組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿材を含有して成り、基材上に塗布されて成る膜状組成物及びその製造方法に関するとともに、当該膜状組成物を製造するために使用する塗工液に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の膜状組成物は、吸湿材を含有することにより吸湿性を発揮する。このような膜状組成物を吸湿部の塗膜として利用するにあたり、塗膜の単位重量あたりの吸湿量が高いほど同組成物を含む製品のサイズをコンパクト化でき、製品の軽量化に寄与することができる。例えばデシカント式除湿装置のデシカント素子の塗膜として利用する場合では、デシカント素子が占める容積が製品サイズの過半を占めることとなり、デシカント素子の塗膜とされた膜状組成物の吸湿量が高まれば、このような製品を大幅にコンパクト化できる。
【0003】
近年、金属有機構造体MOF(Metal Organic Framework)が高い吸着容量を持つ材料として注目を集めている。中でも、クロムを中心金属とする金属有機構造体(以下:MIL-101(Cr)とも記載する。)と呼ばれる金属有機構造体材料は、従来吸湿材として採用されてきた材料(シリカゲル、ゼオライト、塩化カルシウム、高分子収着材等)と比較して、2倍以上の高い吸湿量と、高い水劣化耐性を有する材料として知られている。
そして、本発明者らは、吸湿材としてクロムを中心金属とする金属有機構造体MIL-101(Cr)を水などの溶媒に分散させてなる塗工液をポリエチレンテレフタレート(PET)などの基材へ塗布して膜状組成物を製造するにあたり、アクリル系高分子材料を接着硬化材(バインダー)として使用しつつ、塗工液の塗工性を確保するために増粘材としてウレタン系高分子材料を添加することにより、ひび割れ、剥がれ等が抑制された良好な膜強度を有する塗膜を得ながら、良好な吸湿性能を実現することを提案している(例えば特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、吸湿材としてクロムを中心金属とする金属有機構造体MIL-101(Cr)を含む膜状組成物において、増粘材としてのウレタン系高分子材料の添加は吸湿性能の低下の要因となることから、このようなウレタン系高分子材料の添加はできるだけ回避することが望まれる。しかしながら、ウレタン系高分子材料を添加しない場合には、塗工液の基材に対する密着性が低下して塗工性が悪化するという問題が生じる。
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、吸湿材としてクロムを中心金属とする金属有機構造体MIL-101(Cr)を含有する膜状組成物を製造するにあたり、膜強度及び吸湿性能を良好なものに維持しながら、塗工性に優れた膜状組成物を得るための技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、吸湿材を含有して成り、基材上に塗布されて成る膜状組成物であって、
前記吸湿材としてクロムを中心金属とする金属有機構造体MIL-101(Cr)を含有し、
接着硬化材として無水マレイン酸変性ポリオレフィンを含有する点にある。
尚、本発明において、膜状組成物とは、吸湿材を含有して、基材上に塗布された状態にある膜状の組成物を示し、吸湿材が有する吸湿性により膜状組成物自体が吸湿性を有するものである。
【0007】
即ち、本発明者らは、鋭意研究の結果、吸湿材としてクロムを中心金属とする金属有機構造体MIL-101(Cr)を含有する塗工液を基材へ塗布して膜状組成物を製造するにあたり、接着硬化材として無水マレイン酸変性ポリオレフィンを使用すれば、ひび割れ、剥がれ等が抑制された良好な膜強度と良好な吸湿性能とを維持しながら、増粘材としてウレタン系高分子材料を添加しなくても、塗工性に優れた膜状組成物を得ることができることを見出した。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記接着硬化材としてアクリル系高分子材料を含有する点にある。
【0009】
本構成によれば、接着硬化材として、無水マレイン酸変性ポリオレフィンに加えて、アクリル系高分子材料を含有することで、膜強度や吸湿性能の低下を抑制しつつ、無水マレイン酸変性ポリオレフィンの低下量を制限し、吸湿性能の向上を図ることができる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記基材が、不織布、紙、アルミニウム、銅、及びステンレス鋼から選択される何れか一種である点にある。
【0011】
本構成によれば、塗布対象の基材を、不織布、紙、アルミニウム、銅、及びステンレス鋼から選択される何れか一種とすることにより、ひび割れや剥がれ等がない良好な塗膜な膜強度を有する膜状組成物を得ることができる。
更に、基材を、不織布、紙、銅から選択される何れか一種とすれば、基材に対する塗工液の密着性を良好なものとすることができる。
【0012】
本発明の第4特徴構成は、上述の第1乃至第3特徴構成を有する膜状組成物の製造方法であって、
前記吸湿材としてのクロムを中心金属とする金属有機構造体MIL-101(Cr)と、前記接着硬化材としての無水マレイン酸変性ポリオレフィンとを、水、アセトン、エタノール、イソプロピルアルコールから選ばれる一つ又は複数を混合した溶媒に分散させて、塗工液を作製し、
前記塗工液を基材上に塗布して乾燥させる点にある。
【0013】
本構成によれば、金属有機構造体MIL-101(Cr)と無水マレイン酸変性ポリオレフィンとを分散させて塗工液を作製するための溶媒として、使用勝手が良い水、アセトン、エタノール、イソプロピルアルコールを使用することができる。そして、このように作成した塗工液を基材上に塗布して乾燥させることで、容易に本発明に係る膜状組成物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態の膜状組成物及びその製造方法を説明する図
【
図10】実施例8の膜状組成物の表面状態を示す写真
【
図11】実施例9の膜状組成物の表面状態を示す写真
【
図12】実施例10の膜状組成物の表面状態を示す写真
【
図13】実施例11の膜状組成物の表面状態を示す写真
【
図14】実施例1~6及び比較例1の膜状組成物の吸湿性能の評価結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の膜状組成物Eは、吸湿材Aを含有して成り、基材X上に塗布されて成る膜状組成物であり、例えばデシカント式除湿装置のデシカント素子の塗膜として利用される。
膜状組成物Eは、吸湿材Aとして、クロムを中心金属とする金属有機構造体MIL-101(Cr)を含有し、接着硬化材Bとして無水マレイン酸変性ポリオレフィンを含有する。
このような膜状組成物Eの製造方法では、吸湿材Aとしてのクロムを中心金属とする金属有機構造体MIL-101(Cr)と、接着硬化材Bとしての無水マレイン酸変性ポリオレフィンとを、水、アセトン、エタノール、イソプロピルアルコールから選ばれる一つ又は複数を混合した溶媒Cに分散させて、塗工液Dを製作する。そして、その塗工液Dを、例えば平板状に形成された基材X上にコーター(塗工機)などを利用して塗布して所定温度、所定時間乾燥させることで、膜状組成物Eが製造される。
そして、このように製造された膜状組成物Eは、ひび割れ、剥がれ等が抑制された良好な膜強度と良好な吸湿性能とを維持しながら、増粘材としてウレタン系高分子材料を添加しなくても、塗工性に優れたものとなる。
【0016】
吸湿材Aと接着硬化材Bとを溶媒Cに分散させて塗工液Dを製作するにあたり、使用するコーター(塗工機)の種類によって粘度を調整する必要があるため、それに応じて希釈度は適宜設定される。
吸湿材Aとしての金属有機構造体MIL-101(Cr)に対する接着硬化材Bとしての無水マレイン酸変性ポリオレフィンの割合は、1重量%~40重量%の範囲内であれば特に制限はないが、5重量%~35重量%の範囲内であれば好ましく、10重量%~20重量%であるとさらに好ましい。
【0017】
接着硬化材Bとしては、無水マレイン酸変性ポリオレフィンに加えて、アクリル系高分子材料を含有させることで、膜強度や吸湿性能の低下を抑制しつつ、無水マレイン酸変性ポリオレフィンの低下量を制限し、吸湿性能の向上を図ることができる。
吸湿材Aとしての金属有機構造体MIL-101(Cr)に対する接着硬化材Bとしてのアクリル系高分子材料の割合は、5重量%~40重量%の範囲内であれば特に制限はないが、15重量%~30重量%の範囲内であれば好ましく、20重量%~30重量%であるとさらに好ましい。
【0018】
基材Xとしては、あらゆる材料を採用することができるが、不織布、紙、アルミニウム、銅、及びステンレス鋼から選択される何れか一種とすることで、ひび割れや剥がれ等がない良好な塗膜な膜強度を有する膜状組成物Eが得られる。
【0019】
[性能評価試験]
以下、膜状組成物の性能評価試験の結果について説明する。
先ず、本評価試験で用いた比較例1及び実施例1~11の膜状組成物のサンプルの構成について説明する。
尚、本評価試験において、金属有機構造体MIL-101(Cr)については、非特許文献(G.Ferey et al.,SCIENCE,vol309,(2005)2040-2042.)を参照して合成したものを使用した。無水マレイン酸性ポリオレフィンについては、東洋紡株式会社製の「ハードレン(登録商標)NZ1015」を使用した。アクリル系高分子材料については、三井化学株式会社製の「ボンロン(登録商標)PS-002」を使用した。尚、本実施形態の膜状組成物において、無水マレイン酸性ポリオレフィンやアクリル系高分子材料は、これら例示のものとは別のものを利用しても構わない。
【0020】
(比較例1)
比較例1の膜状組成物は、吸湿材としての金属有機構造体MIL-101(Cr)に対し、接着硬化材として、アクリル系高分子材料のみを所定の配合部数(下記表1参照)で調合して得た前駆体を、溶媒としてのイソプロピルアルコールに分散させて塗工液を製作し、当該塗工液を基材としての不織布に塗布して90℃以上で10分間以上乾燥させたものである。
【0021】
(実施例1~5)
実施例1~5の膜状組成物は、吸湿材としての金属有機構造体MIL-101(Cr)に対し、接着硬化材として無水マレイン酸変性ポリオレフィン及びアクリル系高分子材料の夫々を所定の配合部数(下記表1参照)で調合して得た前駆体を、溶媒としてのイソプロピルアルコールに分散させて塗工液を製作し、当該塗工液を基材としての不織布に塗布して90℃以上で10分間以上乾燥させたものである。
【0022】
(実施例6)
実施例6の膜状組成物は、吸湿材としての金属有機構造体MIL-101(Cr)に対し、接着硬化材として、無水マレイン酸変性ポリオレフィンのみを所定の配合部数(下記表1参照)で調合して得た前駆体を、溶媒としてのイソプロピルアルコールに分散させて塗工液を製作し、当該塗工液を基材としての不織布に塗布して90℃以上で10分間以上乾燥させたものである。
【0023】
(実施例7~11)
実施例7~11の膜状組成物は、吸湿材としての金属有機構造体MIL-101(Cr)に対し、接着硬化材として無水マレイン酸変性ポリオレフィン及びアクリル系高分子材料の夫々を上記実施例4と同じ所定の配合部数(下記表2参照)で調合して得た前駆体を、溶媒としてのイソプロピルアルコールに分散させて塗工液を製作し、当該塗工液を夫々異なる基材(下記表2参照)に塗布して90℃以上で10分間以上乾燥させたものである。
【0024】
次に、本評価で実施した外観評価、密着性評価、吸湿性能評価の方法について、説明する。
【0025】
(外観評価)
比較例1及び実施例1~11の膜状組成物のサンプルについて、外観評価を行った。この外観評価では、膜状組成物の表面(
図2~
図13参照)を目視により観察し、ひび割れの有無及び剥離の有無を判定した。その結果を、下記の表1及び表2に示す。
尚、下記の表1及び表2の「ひび割れ」欄においては、ひび割れが有るものは「×」、ひび割れが無いものは「○」を付している。また、下記表1及び表2の「剥離」欄においては、剥離が有るものは「×」、軽度な剥離があるものは「△」、剥離が無いものは「○」を付している。
【0026】
(密着性評価)
比較例1及び実施例1~11の膜状組成物のサンプルについて、密着性評価を行った。この密着性評価では、膜状組成物の表面にセロハンテープを貼り付け、その貼り付けたセロハンテープを引き剥がした後の膜状組成物の表面を目視により観察し、セロハンテープの引き剥がしに伴う膜状組成物の剥がれの有無を判定した。その結果を、下記の表1及び表2に示す。
尚、下記の表1及び表2の「密着性」欄においては、セロハンテープの引き剥がしに伴って膜状組成物全体が剥がれたものは「×」、セロハンテープの引き剥がしに伴って膜状組成物の一部が剥がれたものは「△」、セロハンテープの引き剥がしに伴って膜状組成物がほとんど剥がれない又は剥がれが僅かなものは「○」を付している。
【0027】
(吸湿性評価)
10cm×10cm角の不織布に塗布して形成された比較例1及び実施例1~6の膜状組成物のサンプルについて、吸湿性評価を行った。この吸湿性評価では、基材に塗布して成る膜状組成物のサンプルを、温度30℃、相対湿度60%の恒温恒湿槽のなかに所定時間保持し、所定時間経過時における夫々のサンプルのうち膜状組成物の初期重量に対する重量増加幅の割合を吸湿性能(g/g)として測定した。その結果を、
図14のグラフに示すと共に、3分経過後の吸湿性能及び30分経過後の吸湿性能を下記表1に示す。
【0028】
【0029】
【0030】
(評価結果1)
表1及び
図14のグラフを参照して、不織布を基材とした比較例1及び実施例1~6の膜状組成物を評価する。
実施例1,2,3,4の膜状組成物については、立ち上がりから吸湿性能が高い様子が見て取れる。これは接着硬化材としての無水マレイン酸変性ポリオレフィンおよびアクリル系高分子材料の配合比を調整することにより、吸湿材である金属有機構造体MIL-101(Cr)が不織布である基材上に塗工されやすくなったためだと理解できる。
【0031】
実施例1,2,4,5では吸湿材である金属有機構造体MIL-101(Cr)に対し、接着硬化材としての無水マレイン酸変性ポリオレフィン及びアクリル系高分子材料の配合部数を徐々に増やしたもので、膜状組成物の吸湿性評価を行っているが、特に保持時間30分での吸湿性能においては、実施例4を境に吸湿性能が低下する傾向にある。これは無水マレイン酸変性ポリオレフィンやアクリル系高分子材料の増加により、単位重量当たりの吸湿材としての金属有機構造体MIL-101(Cr)の配合割合が減少したことや、吸湿材としての金属有機構造体MIL-101(Cr)における水の吸着サイトの閉塞が大きくなった可能性も推察され、結果的に性能低下につながったものと考えられる。
【0032】
実施例6について、吸湿材である金属有機構造体MIL-101(Cr)に対する接着硬化材としての無水マレイン酸変性ポリオレフィンとアクリル系高分子材料との合計の配合部数を実施例2、4の中間値としたときに吸湿性能が芳しくなかったことを踏まえると、アクリル系高分子材料単体のみの使用では良好な吸湿性能には至らないと捉えられる。
尚、吸着材としての金属有機構造体MIL-101(Cr)に接着硬化剤として無水マレイン酸変性ポリオレフィン及びアクリル系高分子材料を加えてなる実施例1~6の膜状組成物は、金属有機構造体MIL-101(Cr)にアクリル系高分子材料のみを加えてなる比較例1の膜状組成物と比べると吸着性能が劣るが、先述した外観評価および密着性評価の結果を踏まえると、比較例1は実用にたえうるものではないと言える。また、金属有機構造体MIL-101(Cr)にアクリル系高分子材料と増粘材としてのウレタン系高分子材料を加えてなるものや、高分子収着材(ポリアクリル酸ナトリウムなど)を用いたものなどのような従来の膜状組成物と比べると、3分経過後の吸湿性能及び30分経過後の吸湿性能の何れにおいても優れたものとなる。
【0033】
また、外観評価及び密着性評価に関しては、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを含まない比較例1の膜状組成物では、ひび割れ、剥離、密着性の何れの評価でも「×」であるのに対し、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを含む実施例1~6の膜状組成物は、高い評価を実現していた。特に、無水マレイン酸変性ポリオレフィンの金属有機構造体MIL-101(Cr)に対する配合割合が5/100以上である実施例2~6の膜状組成物については、ひび割れ、剥離、密着性の評価において何れも「○」であった。これは、無水マレイン酸変性ポリオレフィンの含有により、ひび割れ、剥がれ等が抑制された良好な膜強度と良好な塗工性を実現していると言える。
【0034】
(評価結果2)
表2を参照して、不織布を基材とした実施例4の膜状組成物と、その実施例4と同じ割合で無水マレイン酸変性ポリオレフィン及びアクリル系高分子材料を含有して、基材を不織布とは異なる紙(厚紙)、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、基材をPETフィルムとした実施例7~11の膜状組成物を評価する。
PETフィルムを基材とした実施例11の膜状組成物については、乾燥に伴い、端の部分から剥離する様子が見受けられた。一方、不織布、紙、銅、ステンレス鋼、アルミニウムを基材とする実施例4,7,8,9,10の膜状組成物については、ひび割れや剥離はなく良好な膜強度を実現している。
【符号の説明】
【0035】
A 吸湿材
B 接着硬化材
C 溶媒
D 塗工液
E 膜状組成物
X 基材