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特許7657638表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物及び表面保護フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-28
(45)【発行日】2025-04-07
(54)【発明の名称】表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物及び表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/06 20060101AFI20250331BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20250331BHJP
   C08F 220/18 20060101ALI20250331BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20250331BHJP
   C09J 133/08 20060101ALI20250331BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20250331BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20250331BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20250331BHJP
【FI】
C08L33/06
C08L75/04
C08F220/18
C08G18/10
C09J133/08
C09J175/04
C09J7/38
B32B27/00 M
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021060208
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156488
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】東 昌嗣
(72)【発明者】
【氏名】武井 麗
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-189656(JP,A)
【文献】特開2009-242725(JP,A)
【文献】特開2001-335767(JP,A)
【文献】特開2006-213603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08F
C08G
C09J
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性官能基含有ポリマー(A)と、架橋剤成分(B)と、を含む、表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物であって、
前記架橋性官能基含有ポリマー(A)のガラス転移温度Tgが-75.0℃以上0.0℃以下であり、
前記架橋剤成分(B)は、重量平均分子量が1400以上200000以下であり、且つ、イソシアネート基平均数が2.0以上6.5以下である脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートを含み、
前記架橋性官能基含有ポリマー(A)100質量部に対して、前記架橋剤成分(B)の含有量が0.5質量部以上15.0質量部以下であり、
前記架橋性官能基含有ポリマー(A)が、
架橋性官能基含有モノマーと、エステル基末端の炭素数が1以上18以下である(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、を共重合してなり、且つ、ガラス転移温度Tgが-75.0℃以上0.0℃以下であるアクリル系ポリマー(A1)、又は、
ガラス転移温度Tgが-75.0℃以上0.0℃以下であるウレタン系ポリマー(A2)であり、
前記架橋性官能基が、水酸基、エポキシ基、及びカルボキシ基からなる群より選ばれる1種以上であり、
前記脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート(b1)と、数平均分子量が1500以上である2官能のポリオール(b2)と、数平均分子量が500以上である3官能以上のポリオール(b3)と、から誘導されるポリイソシアネートである、表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物。
【請求項2】
前記架橋性官能基含有モノマーに由来する構成単位の含有量が、前記架橋性官能基含有ポリマー(A)の総質量に対して、0.01質量%以上25質量%以下である、請求項1に記載の表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物。
【請求項3】
前記架橋性官能基含有ポリマー(A)の重量平均分子量が2.0×10以上2.5×10以下である、請求項1又は2に記載の表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリオール(b2)及び前記ポリオール(b3)の水酸基の合計モル量に対する、前記ジイソシアネート(b1)のイソシアネート基のモル量の比NCO/OHが3以上30以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリオール(b2)に対する前記ポリオール(b3)の質量比(b3)/(b2)が0.1/99.9以上99.9/0.1以下であり、且つ、
前記ジイソシアネート(b1)100質量部に対して、
前記ポリオール(b2)の含有量が0.1質量部以上250質量部以下であり、
前記ポリオール(b3)の含有量が0.1質量部以上190質量部以下である、請求項に表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリオール(b2)及び前記ポリオール(b3)がポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール、ポリオレフィンポリオール、及びポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる1種以上のポリオールである、請求項又はに記載の表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物。
【請求項7】
前記架橋剤成分(B)のイソシアネート基含有率が1質量%以上10質量%以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物。
【請求項8】
前記架橋剤成分(B)を、ガラス上に塗工し、23℃、65%湿度環境下で168時間保管後に形成された膜厚50μmの硬化膜の23℃環境下でのケーニッヒ硬度が60回以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物。
【請求項9】
プラスチックフィルムと、
前記プラスチックフィルムの片面又は両面に粘着層と、を備え、
前記粘着層が、請求項1~のいずれか一項に記載の表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物の硬化物からなる、表面保護フィルム。
【請求項10】
前記粘着層の厚みが1μm以上1000μm以下である、請求項に記載の表面保護フィルム。
【請求項11】
前記表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物を、厚み38μmの剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、135℃で3分間乾燥させて硬化させた後、23℃、50%RH環境下で7日間保管した厚み20μmの粘着層を備える表面保護フィルムから、前記剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離して得られる前記粘着層を、23℃、50%RH環境下で7日間保管後にメッシュ状のシートに包み、酢酸エチル中に23℃で1週間浸漬し、取り出した後、120℃で2時間乾燥することにより算出されるゲル分率が90.0質量%以上100.0質量%以下である、請求項又は10に記載の表面保護フィルム。
【請求項12】
前記表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物を、厚み38μmの剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、135℃で3分間乾燥させて硬化させた後、23℃、50%RH環境下で7日間保管した厚み20μmの粘着層を備える表面保護フィルムから、前記剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した前記粘着層を、厚みが200μmとなるように積層した後、幅10mm、長さ40mmに切断して得られる、積層された前記粘着層を、チャック間距離が10mmになるように引張試験機にセットし、23℃環境下で300mm/分の速度で実施された引張試験におけるヤング率が0.01N/mm以上0.22N/mm以下である、請求項11のいずれか一項に記載の表面保護フィルム。
【請求項13】
前記表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物を、厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、135℃で3分間乾燥させて硬化させた後、23℃、50%RH環境下で7日間保管した厚み20μm、幅25mm及び長さ100mmの粘着層を備える表面保護フィルムを、被着体であるガラスに貼り合わせて、2kgローラーで1往復圧着し23℃で30分間養生後、23℃、300mm/分の速度で測定された180度ピール粘着力が0.02N/25mm以上2.50N/25mm以下である、請求項12のいずれか一項に記載の表面保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物及び表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックフィルムや粘着剤、接着剤は、幅広い機能を有することから様々な分野で用いられている。そのような状況下、平坦な板状のものだけでなく、曲面部や折り曲げの動きがある部位のような、これまで少なかった用途への適用も増えてきている。例えば、フレキシブルディスプレイやフォルダブルディスプレイのようなものが挙げられ、近年急速に需要が拡大してきている。それに伴って、曲面に追従可能な表面保護フィルムの需要も増加することが予想される。
【0003】
例えば、特許文献1には、ヒドロキシ基を有し、酸価0mgKOH/g以上16mgKOH/g未満である(メタ)アクリル系ポリマーと、酸価0.1mgKOH/g以上40mgKOH/g以下であるアルキレンオキシド鎖含有(メタ)アクリル系オリゴマーと、反応性基を有するポリエーテル変性シリコーンと、架橋剤としてポリイソシアネート化合物と、イオン性化合物と、を含む粘着剤組成物が開示されている。当該粘着剤組成物によれば、帯電防止性及び被着体に対する低汚染性を高いレベルで両立できる光学部材表面保護フィルムが得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-128636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1等に記載の技術よりも、剥離しやすく、剥離時に粘着剤による汚染が低減された表面保護フィルムが得られる粘着剤組成物が求められている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、表面保護フィルムとした場合に、貼り付け性及び剥離性が良好であり、剥離時の粘着剤による汚染性が改善された表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) 架橋性官能基含有ポリマー(A)と、架橋剤成分(B)と、を含む、表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物であって、
前記架橋性官能基含有ポリマー(A)のガラス転移温度Tgが-75.0℃以上0.0℃以下であり、
前記架橋剤成分(B)は、重量平均分子量が1400以上200000以下であり、且つ、イソシアネート基平均数が2.0以上6.5以下である脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートを含み、
前記架橋性官能基含有ポリマー(A)100質量部に対して、前記架橋剤成分(B)の含有量が0.5質量部以上15.0質量部以下であり、
前記架橋性官能基含有ポリマー(A)が、
架橋性官能基含有モノマーと、エステル基末端の炭素数が1以上18以下である(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、を共重合してなり、且つ、ガラス転移温度Tgが-75.0℃以上0.0℃以下であるアクリル系ポリマー(A1)、又は、
ガラス転移温度Tgが-75.0℃以上0.0℃以下であるウレタン系ポリマー(A2)であり、
前記架橋性官能基が、水酸基、エポキシ基、及びカルボキシ基からなる群より選ばれる1種以上であり、
前記脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート(b1)と、数平均分子量が1500以上である2官能のポリオール(b2)と、数平均分子量が500以上である3官能以上のポリオール(b3)と、から誘導されるポリイソシアネートである、表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物。
) 前記架橋性官能基含有モノマーに由来する構成単位の含有量が、前記架橋性官能基含有ポリマー(A)の総質量に対して、0.01質量%以上25質量%以下である、()に記載の表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物。
) 前記架橋性官能基含有ポリマー(A)の重量平均分子量が2.0×10以上2.5×10以下である、(1)又は(2)に記載の表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物。
) 前記ポリオール(b2)及び前記ポリオール(b3)の水酸基の合計モル量に対する、前記ジイソシアネート(b1)のイソシアネート基のモル量の比NCO/OHが3以上30以下である、(1)~()のいずれか一つに記載の表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物。
) 前記ポリオール(b2)に対する前記ポリオール(b3)の質量比(b3)/(b2)が0.1/99.9以上99.9/0.1以下であり、且つ、
前記ジイソシアネート(b1)100質量部に対して、
前記ポリオール(b2)の含有量が0.1質量部以上250質量部以下であり、
前記ポリオール(b3)の含有量が0.1質量部以上190質量部以下である、()に表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物。
) 前記ポリオール(b2)及び前記ポリオール(b3)がポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール、ポリオレフィンポリオール、及びポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる1種以上のポリオールである、()又は()に記載の表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物。
) 前記架橋剤成分(B)のイソシアネート基含有率が1質量%以上10質量%以下である、(1)~()のいずれか一つに記載の表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物。
) 前記架橋剤成分(B)を、ガラス上に塗工し、23℃、65%湿度環境下で168時間保管後に形成された膜厚50μmの硬化膜の23℃環境下でのケーニッヒ硬度が60回以下である、(1)~()のいずれか一つに記載の表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物。
) プラスチックフィルムと、
前記プラスチックフィルムの片面又は両面に粘着層と、を備え、
前記粘着層が、(1)~()のいずれか一つに記載の表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物の硬化物からなる、表面保護フィルム。
10) 前記粘着層の厚みが1μm以上1000μm以下である、()に記載の表面保護フィルム。
11) 前記表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物を、厚み38μmの剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、135℃で3分間乾燥させて硬化させた後、23℃、50%RH環境下で7日間保管した厚み20μmの粘着層を備える表面保護フィルムから、前記剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離して得られる前記粘着層を、23℃、50%RH環境下で7日間保管後にメッシュ状のシートに包み、酢酸エチル中に23℃で1週間浸漬し、取り出した後、120℃で2時間乾燥することにより算出されるゲル分率が90質量%以上100質量%以下である、()又は(10)に記載の表面保護フィルム。
12) 前記表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物を、厚み38μmの剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、135℃で3分間乾燥させて硬化させた後、23℃、50%RH環境下で7日間保管した厚み20μmの粘着層を備える表面保護フィルムから、前記剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した前記粘着層を、厚みが200μmとなるように積層した後、幅10mm、長さ40mmに切断して得られる、積層された前記粘着層を、チャック間距離が10mmになるように引張試験機にセットし、23℃環境下で300mm/分の速度で実施された引張試験におけるヤング率が0.01N/mm以上0.22N/mm以下である、()~(11)のいずれか一つに記載の表面保護フィルム。
13) 前記表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物を、厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、135℃で3分間乾燥させて硬化させた後、23℃、50%RH環境下で7日間保管した厚み20μm、幅25mm及び長さ100mmの粘着層を備える表面保護フィルムを、被着体であるガラスに貼り合わせて、2kgローラーで1往復圧着し23℃で30分間養生後、23℃、300mm/分の速度で測定された180度ピール粘着力が0.02N/25mm以上2.50N/25mm以下である、()~(12)のいずれか一つに記載の表面保護フィルム。
【発明の効果】
【0008】
上記態様の表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物によれば、表面保護フィルムとした場合に、貼り付け性及び剥離性が良好であり、剥離時の粘着剤による汚染性が改善された表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物を提供することができる。上記態様の表面保護フィルムは、前記表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物を硬化させてなる粘着層を備え、貼り付け性及び剥離性が良好であり、剥離時の粘着剤による汚染性が改善されている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
なお、本明細書において、「ポリオール」とは、一分子中に2つ以上のヒドロキシ基(-OH)を有する化合物を意味する。
また、本明細書において、「ポリイソシアネート」とは、2つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有する単量体化合物が複数結合した反応物を意味する。
また、本明細書において、特に断りがない限り、「(メタ)アクリル」は、メタクリルとアクリルとを包含し、「(メタ)アクリレート」はメタクリレートとアクリレートとを包含するものとする。
【0010】
≪表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物≫
本実施形態の表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物は、架橋性官能基含有ポリマー(A)と、架橋剤成分(B)と、を含む。
【0011】
前記架橋性官能基含有ポリマー(A)のガラス転移温度Tgが-75.0℃以上0.0℃以下であり、-72.0℃以上0.0℃以下であることが好ましく、-72.0℃以上-25.0℃以下であることがより好ましく、-72.0℃以上-50.0℃以下であることがさらに好ましく、-72.0℃以上-55.0℃以下であることが特に好ましい。架橋性官能基含有ポリマー(A)のガラス転移温度Tgが上記範囲内であることで、気泡が入ることなく貼れ、剥離しやすく、剥離時の粘着剤による汚染性が改善された表面保護フィルムが得られる。
架橋性官能基含有ポリマー(A)のガラス転移温度は、例えば、架橋性官能基含有ポリマー(A)を溶解又は分散した溶液中の有機溶剤及び水分を減圧下で飛ばした後、真空乾燥したものを、示差走査熱量(DSC)測定装置を用いて、昇温速度5℃/分の条件で測定した値をガラス転移温度として用いることができる。
【0012】
前記架橋剤成分(B)は、重量平均分子量が1400以上200000以下であり、且つ、イソシアネート基平均数が2.0以上6.5以下である脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートを含む。
【0013】
架橋性官能基含有ポリマー(A)100質量部に対して、架橋剤成分(B)の含有量は0.01質量部以上15.0質量部以下であり、0.1質量部以上13.0質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上12.0質量部以下であることがより好ましく、0.6質量部以上11.0質量部以下であることがさらに好ましく、0.8質量部以上10.0質量部以下であることが特に好ましい。架橋剤成分(B)の含有量が上記数値範囲内であることで、表面保護フィルムとしたときの硬化性、貼り付け性、及び剥離性により優れ、汚染性がより改善される傾向がある。架橋剤成分(B)の含有量は、例えば、表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物の製造時に使用する架橋剤成分(B)の配合量から計算することができる。
【0014】
本実施形態の表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物は、上記構成を有することで、貼り付け性及び剥離性が良好であり、剥離時の粘着剤による汚染性が改善された表面保護フィルムが得られる。
【0015】
<架橋性官能基含有ポリマー(A)>
架橋性官能基含有ポリマーとしては、上記ポリイソシアネートのイソシアネート基と反応し得る架橋性官能基を含有するポリマーであればよい。架橋性官能基としては、架橋剤成分(B)と架橋構造を形成し得る官能基であって、具体的には、例えば、水酸基、チオール基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシ基等が挙げられるが、中でも、水酸基、エポキシ基、又はカルボキシ基が好ましく、水酸基がより好ましい。
【0016】
架橋性官能基含有ポリマーは、架橋性官能基含有モノマーを重合させてなるものである。
架橋性官能基含有モノマーに由来する構成単位の含有量が、架橋性官能基含有ポリマー(A)の総質量に対して、0.01質量%以上25質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上18質量%以下であることがさらに好ましく、1.0質量%以上17質量%以下であることが特に好ましい。架橋性官能基含有モノマーに由来する構成単位の含有量が上記数値範囲内であることで、貼り付け性及び剥離性が良好であり、剥離時の粘着剤による汚染性が改善された表面保護フィルムが得られる。架橋性官能基含有モノマーに由来する構成単位の含有量は、例えば、架橋性官能基含有ポリマーの製造時に使用する架橋性官能基含有モノマーの配合量から計算することができる。
【0017】
架橋性官能基含有ポリマー(A)としては、架橋性官能基含有モノマーと、エステル基末端の炭素数が1以上18以下である(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、を共重合されてなり、且つ、ガラス転移温度Tgが-75.0℃以上0.0℃以下であるアクリル系ポリマー(A1)、又は、ガラス転移温度Tgが-75.0℃以上0.0℃以下であるウレタン系ポリマー(A2)、であることが好ましい。
【0018】
また、架橋性官能基含有ポリマー(A)としては、架橋性官能基含有モノマーと、エステル基末端の炭素数が1以上18以下である(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、を共重合されてなり、且つ、ガラス転移温度Tgが-75.0℃以上0.0℃以下であるアクリル系ポリマー(A1)がより好ましい。
【0019】
[アクリル系ポリマー(A1)]
アクリル系ポリマー(A1)は、架橋性官能基含有モノマー単位として、架橋性官能基を有する重合性(メタ)アクリル系モノマー単位を1種以上含むものである。架橋性官能基としては、水酸基、カルボキシ基、又はエポキシ基を含むことが好ましく、水酸基を含むことがより好ましい。
【0020】
アクリル系ポリマー(A1)は、架橋性官能基を単独で含んでいてもよく、異なる種類の架橋性官能基を2種以上組み合わせて含んでいてもよい。すなわち、アクリル系ポリマーは、架橋性官能基を有する重合性(メタ)アクリル系モノマーを単独で重合させてなるものであってもよく、異なる種類の架橋性官能基を有する重合性(メタ)アクリル系モノマーを2種類以上組み合わせて共重合させてなるものであってもよい。
【0021】
アクリル系ポリマー(A1)は、架橋性官能基を有する重合性(メタ)アクリル系モノマー単位に加えて、エステル基末端の炭素数が1以上18以下である(メタ)アクリル酸エステルモノマー単位を1種以上含むことが好ましい。
すなわち、アクリル系ポリマー(A1)は、1種以上の架橋性官能基を有する重合性(メタ)アクリル系モノマーと1種以上のエステル基末端の炭素数が1以上18以下である(メタ)アクリル酸エステルモノマーとを共重合させなるものであってもよい。(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、架橋性官能基を有していてもよく、有さなくてもよいが、有さないことが好ましい。
【0022】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーが有するエステル基末端の炭素数としては、1以上18以下であることが好ましい。
【0023】
前記架橋性官能基を有する重合性(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、以下の(i)~(v)に示すものが挙げられる。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(i)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸-2-ヒドロキシブチル、アクリル酸-4-ヒドロキシルブチル、アクリル酸-6-ヒドロキシヘキシル、アクリル酸-8-ヒドロキシルオクチル等の水酸基を持つアクリル酸エステル類。
(ii)メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-2-ヒドロキシブチル、メタクリル酸-4-ヒドロキシルブチル、メタクリル酸-6-ヒドロキシヘキシル、メタクリル酸-8-ヒドロキシルオクチル等の水酸基を持つメタクリル酸エステル類。
(iii)グリセリンのアクリル酸モノエステル又はメタクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンのアクリル酸モノエステル又はメタクリル酸モノエステル等の多価ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル類。
(iv)アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸。
(v)メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル類。
【0024】
エステル基末端の炭素数が1以上18以下である(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-sec-ブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸へキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
アクリル系ポリマー(A1)は、架橋性官能基を有する重合性(メタ)アクリル系モノマー単位に加えて、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー以外のその他のモノマー単位を更に含むことができる。
すなわち、アクリル系ポリマー(A1)は、1種以上の架橋性官能基を有する重合性(メタ)アクリル系モノマーを重合させる、或いは、1種以上の架橋性官能基を有する重合性(メタ)アクリル系モノマーと1種以上のその他のモノマーとを共重合させることで得られる。その他のモノマーは、架橋性官能基を有していてもよく、有さなくてもよいが、有さないことが好ましい。
【0026】
その他モノマーとしては、例えば、以下の(i)~(ii)に示すもの等が挙げられる。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(i)(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等の不飽和アミド。
(ii)スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル。
【0027】
さらに、前記架橋性官能基を有する重合性(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能な他のモノマーとして、特開平1-261409号公報(参考文献1)、及び、特開平3-006273号公報(参考文献2)等で開示されている重合性紫外線安定性単量体を用いてもよい。
【0028】
前記重合性紫外線安定性単量体として具体的には、例えば、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0029】
例えば、上記のモノマー成分を、公知の過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合し、必要に応じて有機溶剤等で希釈することによって、アクリル系ポリマーを得ることができる。
【0030】
水系ベースのアクリル系ポリマーを得る場合には、オレフィン性不飽和化合物を溶液重合し、水層に転換する方法や乳化重合等の公知の方法で製造することができる。その場合、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸含有モノマーやスルホン酸含有モノマー等の酸性部分をアミンやアンモニアで中和することによって水溶性又は水分散性を付与することができる。
【0031】
架橋性官能基含有ポリマー(A)の重量平均分子量Mw(A)は、2.0×10以上2.5×10以下であることが好ましく、3.0×10以上2.0×10以下であることがより好ましく、3.5×10以上1.8×10であることがさらに好ましく、4.0×10以上1.5×10以下であることが特に好ましい。架橋性官能基含有ポリマー(A)の重量平均分子量が上記範囲内であることで、剥離しやすく、剥離時の粘着剤による汚染性が改善された表面保護フィルムが得られる。架橋性官能基含有ポリマー(A)の重量平均分子量Mwは、例えば、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0032】
<架橋剤成分(B)>
架橋剤成分(B)は、重量平均分子量が1400以上200000以下であり、且つ、イソシアネート基平均数が2.0以上6.5以下である脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート(b)を含む。
【0033】
脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートの重量平均分子量Mw(b)は、1400以上200000以下であり、1500以上100000以下であることが好ましく、2000以上90000以下であることがより好ましく、3000以上80000以下であることがさらに好ましく、3200以上70000以下であることが特に好ましい。脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートの重量平均分子量Mw(b)が上記数値範囲内であることで、貼り付け性により優れ、よりはがしやすく、汚染性がより改善された粘着層を備える表面保護フィルム得ることができる。
脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートのMw(b)は、GPC測定によるポリスチレン基準の重量平均分子量である。
【0034】
脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートのイソシアネート基平均数は、2.0以上6.5以下であり、2.2以上6.3以下がより好ましく、2.4以上6.0以下がさらに好ましく、2.5以上5.9以下が特に好ましい。脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートのイソシアネート基平均数が上記数値範囲内であることで、貼り付け性により優れ、よりはがしやすく、汚染性がより改善された粘着層を備える表面保護フィルム得ることができる。
【0035】
脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートのイソシアネート基平均数(fn)は、以下の式を用いて算出することができる。以下の式において、「Mn」は脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートの数平均分子量を示し、「NCO%」は脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートのイソシアネート基含有率を示す。脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートの数平均分子量Mnは、GPC測定によるポリスチレン基準の重量平均分子量である。NCO%の測定方法については後述する。
【0036】
[fn] = [Mn]×[NCO%]/4200
【0037】
脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート(b)は、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート(b1)と、数平均分子量が1500以上である2官能のポリオール(b2)と、数平均分子量が500以上である3官能以上のポリオール(b3)と、から誘導されるポリイソシアネートであることが好ましい。
【0038】
前記ポリオール(b2)及び前記ポリオール(b3)の水酸基の合計モル量に対する、前記ジイソシアネート(b1)のイソシアネート基のモル量の比NCO/OHが3以上30以下であることが好ましく、4以上28以下であることがより好ましく、5以上27以下がであることがさらに好ましく、6以上25以下であることが特に好ましい。上記NCO/OHが上記数値範囲内であることで、貼り付け性により優れ、よりはがしやすく、汚染性がより改善された粘着層を備える表面保護フィルム得ることができる。
【0039】
脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート(b)としては、一分子中にジイソシアネート、ポリオール(b2)及びポリオール(b3)に由来する構成単位を全て有するポリイソシアネートであってもよく、一分子中にジイソシアネート、ポリオール(b2)及びポリオール(b3)からなる群より選ばれる少なくとも1種以上に由来する構成単位を有するポリイソシアネートの混合物であってもよい。
【0040】
脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート(b)は、アロファネート構造、ウレトジオン構造、イミノオキサジアジンジオン構造、イソシアヌレート構造、ウレア構造、ウレタン構造、及びビウレット構造からなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の構造を有することができる。中でも、ウレタン構造、アロファネート構造、ビウレット構造、ウレア構造、及びイソシアヌレート基からなる群より選ばれる少なくとも1つの構造を有することが好ましく、ウレタン構造を含むことがより好ましい。
【0041】
[ジイソシアネート(b1)]
ジイソシアネート(b1)は、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0042】
脂肪族ジイソシアネートとしては、以下のものに限定されないが、例えば、1,4-ジイソシアナトブタン、1,5-ジイソシアナトペンタン、エチル(2,6-ジイソシアナト)ヘキサノエート、1,6-ジイソシアナトヘキサン(以下、「HDI」と略記する場合がある)、1,9-ジイソシアナトノナン、1,12-ジイソシアナトドデカン、2,2,4-又は2,4,4-トリメチル-1、6-ジイソシアナトヘキサン等が挙げられる。これら脂肪族ジイソシアネートを1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0043】
脂環族ジイソシアネートとしては、以下のものに限定されないが、例えば、1,3-又は1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、「水添XDI」と略記する場合がある)、1,3-又は1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、3,5,5-トリメチル1-イソシアナト-3-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、「IPDI」と略記する場合がある)、4-4’-ジイソシアナト-ジシクロヘキシルメタン(以下、「水添MDI」と略記する場合がある)、2,5-又は2,6-ジイソシアナトメチルノルボルナン等が挙げられる。これら脂環族ジイソシアネートを1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0044】
これら脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートは、いずれを単独で使用してもよく、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートを2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、柔軟性の観点から、脂肪族ジイソシアネートに対する脂環族ポリイソシアネートの質量比は、0/100以上30/70以下であることが好ましい。
【0045】
中でも、ジイソシアネートとしては、HDI、IPDI、水添XDI、又は水添MDIが好ましく、HDI又はIPDIがより好ましく、HDIがさらに好ましい。
【0046】
ポリイソシアネートの製造には、上述したジイソシアネートに加えて、以下に示すようなイソシアネートモノマーを更に用いてもよい。
(1)ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香族ジイソシアネート。
(2)4-イソシアネートメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート(以下、「NTI」と称する場合がある)、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート(以下、「HTI」と称する場合がある)、ビス(2-イソシアナトエチル)2-イソシアナトグルタレート(以下、「GTI」と称する場合がある)、リジントリイソシアネート(以下、「LTI」と称する場合がある)等のトリイソシアネート。
【0047】
[ポリオール(b2)及びポリオール(b3)]
ポリオール(b2)は、数平均分子量が1500以上であり、且つ、2官能のポリオール(ジオール)である。
ポリオール(b3)は、数平均分子量が500以上であり、且つ、3官能以上のポリオールである。
【0048】
ポリオール(b2)の数平均分子量は1500以上であり、1700以上が好ましい。ポリオール(b2)の数平均分子量が上記下限値以上であることで、ポリイソシアネート単独を硬化させてなる硬化膜の硬度が低く、柔軟性が良好なものとなる。
一方で、ポリオール(b2)の数平均分子量の上限値について、特に限定されないが、例えば、7000とすることができ、6500とすることがさらに好ましい。
ポリオール(b2)の数平均分子量Mnは、例えば、GPC測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。また、ポリオール(b2)を2種以上混合して用いる場合には、その混合物の数平均分子量を算出する。
【0049】
ポリオール(b3)の数平均分子量は500以上であり、800以上であることが好ましい。ポリオール(b3)の数平均分子量が上記下限値以上であることで、ポリイソシアネート単独を硬化してなる硬化膜の硬度が低く、柔軟性が良好なものとなる。
一方で、ポリオール(b3)の数平均分子量の上限値について、特に限定されないが、例えば、4000とすることができ、3000とすることが好ましく、2500とすることがより好ましい。
ポリオール(b3)の数平均分子量Mnは、例えば、GPC測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。また、ポリオール(b3)を2種以上混合して用いる場合には、その混合物の数平均分子量を算出する。
【0050】
ポリオール(b2)としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール、ポリオレフィンポリオール、及びポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の2官能のポリオール(ジオール)であることが好ましく、2官能のポリエステルポリオールであることがより好ましい。
【0051】
2官能のポリエステルポリオールとしては、例えば、以下の(1)又は(2)のいずれかのポリエステルポリオール等が挙げられる。
(1)二塩基酸の単独又は2種類以上の混合物と、2価のアルコールの単独又は2種類以上の混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール。
(2)ε-カプロラクトンを2価のアルコールで開環重合して得られるポリカプロラクトンポリオール。
前記二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等が挙げられる。
前記2価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール等が挙げられる。
【0052】
中でも、2官能のポリエステルポリオールとしては、2官能のポリカプロラクトンポリオールが好ましい。
【0053】
市販されている2官能のポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、ダイセル社製の商品名「プラクセル210」(数平均分子量1000)、「プラクセル220」(数平均分子量2000)、「プラクセル230」(数平均分子量3000)、「プラクセル240(数平均分子量4000)等が挙げられる。
【0054】
ポリオール(b3)としては、3官能以上のポリオールであればよく、3官能以上10官能以下のポリオールが好ましく、3官能以上7官能以下のポリオールがより好ましく、3官能以上5官能以下のポリオールがさらに好ましく、3官能以上4官能以下のポリオールが特に好ましく、3官能のポリオール(トリオール)が最も好ましい。
3官能のポリオール(トリオール)としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール、ポリオレフィンポリオール、及びポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の3官能のポリオール(トリオール)であることが好ましく、3官能のポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールであることがより好ましく、3官能のポリエステルポリオールであることがさらに好ましい。
【0055】
3官能のポリエステルポリオールとしては、例えば、以下の(1)又は(2)のいずれかのポリエステルポリオール等が挙げられる。
(1)二塩基酸の単独又は2種類以上の混合物と、3価のアルコールの単独又は2種類以上の混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール。
(2)ε-カプロラクトンを3価のアルコールで開環重合して得られるポリカプロラクトンポリオール。
前記二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等が挙げられる。
前記3価のアルコールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2-メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0056】
中でも、3官能のポリエステルポリオールとしては、3官能のポリカプロラクトンポリオールが好ましい。
【0057】
市販されている3官能のポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、ダイセル社製の商品名「プラクセル305」(数平均分子量550)、「プラクセル308」(数平均分子量850)、「プラクセル309」(数平均分子量900)、「プラクセル312」(数平均分子量1250)、「プラクセル320」(数平均分子量2000)等が挙げられる。
【0058】
脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート(b)において、ポリオール(b3)に対するポリオール(b2)の質量比((b2)/(b3)の質量比)が0.1/99.9以上99.9/0.1が好ましく、1/99以上99/1以下がより好ましく、3/97以上90/10以下がさらに好ましく、5/95以上85/15以下が特に好ましく、7/93以上80/20以下が最も好ましい。
(b2)/(b3)の質量比が上記下限値以上であることで、ポリイソシアネート単独を硬化してなる硬化膜の硬度が低く、柔軟性がより良好なものとなる。また、粘着性及び柔軟性により優れる表面保護フィルムが得られる。一方で、(b2)/(b3)の質量比が上記上限値以下であることで、粘着性、柔軟性及び凝集力により優れる表面保護フィルムがより良好なものとなる。
(b2)/(b3)の質量比は、例えば、ポリイソシアネートの製造時の各ポリオールの配合量から算出することができる。
【0059】
脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート(b)において、ジイソシアネート100質量部に対して、ポリオール(b2)の含有量(仕込み量)は、0.1質量部以上250質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上240質量部以下であることがより好ましく、1.0質量部以上230質量部以下であることがさらに好ましく、3.0質量部以上220質量部以下であることが特に好ましい。
ポリオール(b2)の含有量が上記下限値以上であることで、ポリイソシアネート単独を硬化してなる硬化膜の硬度が低く、柔軟性がより良好なものとなる。また、粘着性及び硬化性により優れる表面保護フィルムが得られる。一方で、ポリオール(b2)の含有量が上記上限値以下であることで、ポリイソシアネートの製造時にゲル化することなく液体状態を維持でき、且つ、表面保護フィルムとしたときの柔軟性がより良好なものとなる。
ポリオール(b2)の含有量は、例えば、ポリイソシアネートの製造時のジイソシアネート及びポリオール(b2)の配合量から算出することができる。
【0060】
脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート(b)において、ジイソシアネート100質量部に対して、ポリオール(b3)の含有量(仕込み量)は、0.1質量部以上190質量部以下であることが好ましく、10質量部以上180質量部以下であることがより好ましく、20質量部以上190質量部以下であることがさらに好ましく、25質量部以上180質量部以下であることが特に好ましい。
ポリオール(b3)の含有量が上記上限値以下であることで、ポリイソシアネートの製造時にゲル化することなく液体状態を維持でき、且つ、表面保護フィルムとしたときの硬化性及び柔軟性がより良好なものとなる。一方で、ポリオール(b3)の含有量が上記下限値以上であることで、ポリイソシアネート単独を硬化してなる硬化膜の硬度が低く、柔軟性がより良好なものとなる。また、粘着性及び硬化性により優れる表面保護フィルムが得られる。
ポリオール(b3)の含有量は、例えば、ポリイソシアネートの製造時のジイソシアネート及びポリオール(b3)の配合量から算出することができる。
【0061】
[架橋剤成分(B)の製造方法]
架橋剤成分(B)が脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート(b)である場合には、上記ジイソシアネート(b1)と、ポリオール(b2)と、ポリオール(b3)とを反応させて得られる。以下、ポリオール(b2)及びポリオール(b3)を併せて、単にポリオールと称する場合がある。
【0062】
ポリオール(b2)及びポリオール(b3)は、それぞれ単独又は混合物として用いることができる。混合物として用いる場合には、ジイソシアネートと反応させる前に混合してもよいし、それぞれのポリオールを単独でジイソシアネートと反応させてポリイソシアネートとした後で混合することもできる。
すなわち、ポリイソシアネートの製造方法としては、例えば、ジイソシアネートと、ポリオール(b2)と、ポリオール(b3)とを同時に反応させてポリイソシアネートを得る方法;ジイソシアネートと、ポリオール(b2)と反応させたものと、ジイソシアネートと、ポリオール(b3)とを反応させたものとを混合して、ポリイソシアネートを得る方法;ジイソシアネートと、ポリオール(b2)又はポリオール(b3)とを反応させた後、残りのポリオールをさらに反応させてポリイソシアネートを得る方法等が挙げられる。
【0063】
ポリオール(b2)及びポリオール(b3)の配合量は、ポリオール(b3)に対するポリオール(b2)の質量比が上記範囲内となるように配合することが好ましい。
【0064】
反応に際して、ポリオール(b2)及びポリオール(b3)の水酸基に対するジイソシアネートのイソシアネート基のモル比(イソシアネート基/水酸基のモル比)が3以上30以下であることが好ましく、4以上25以下であることがより好ましく、5以上23以下であることがさらに好ましく、6以上22以下であることが特に好ましい。上記NCO/OHが上記数値範囲内であることで、貼り付け性により優れ、よりはがしやすく、汚染性がより改善された粘着層を備える表面保護フィルム得ることができる。
【0065】
ポリオールとジイソシアネートとの反応は下記のように行われる。反応温度は、通常、室温(23℃程度)以上200℃以下であり、60℃以上130℃以下が好ましい。反応温度が上記下限値以上であれば、反応時間がより短くなり、一方、上記上限値以下であれば、望ましくない副反応によるポリイソシアネートの粘度上昇をより回避でき、生成するポリイソシアネートの着色もより回避できる。
【0066】
反応は、無溶媒で行なってもよく、イソシアネート基に不活性な任意の溶媒を用いて行なってもよい。また、必要であれば、イソシアネート基と水酸基の反応を促進するため、公知の触媒を用いてもよい。
【0067】
[架橋剤成分(B)の物性]
架橋剤成分(B)のイソシアネート基含有率(NCO基含有率)は、実質的に溶剤やジイソシアネートを含んでいない状態で、架橋剤成分(B)の総質量に対して1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上9.5質量%以下であることがより好ましく、2.2質量%以上9.0質量%以下であることがさらに好ましく、2.5質量%以上8.5質量%以下であることが特に好ましい。
NCO基含有率は、例えば、架橋剤成分(B)中のイソシアネート基を過剰のアミン(ジブチルアミン等)と反応させ、残ったアミンを塩酸等の酸で逆滴定することによって求めることができる。
【0068】
上述した架橋剤成分(B)のみを、ガラス上に塗工し、23℃、65%湿度環境下で168時間保管後に、空気中の水分と前記ポリイソシアネート組成物との反応により形成された膜厚50μmの硬化膜の23℃環境下でのケーニッヒ硬度が60回以下であり、57回以下であることが好ましく、55回以下であることがより好ましく、54回以下であることがさらに好ましい。ケーニッヒ硬度が上記上限値以下であることで、硬度が低く、柔軟性により優れる。
【0069】
[イソシアネート基/架橋性官能基]
本実施形態の表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物に含まれる架橋性官能基含有ポリマー(A)の架橋性官能基(特に、水酸基)に対する架橋剤成分(B)のイソシアネート基のモル比(イソシアネート基/架橋性官能基のモル比)は、必要とする表面保護フィルムの物性により決定されるが、通常、0.005以上50以下である。
【0070】
<その他成分>
本実施形態の表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物は、その他添加剤を更に含んでもよい。
その他添加剤としては、例えば、架橋性官能基含有ポリマー(A)と反応しうる架橋剤成分(B)以外の硬化剤、硬化触媒、溶剤、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、粘着付与樹脂、光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等が挙げられる。
【0071】
前記硬化剤としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ基含有化合物又は樹脂、カルボキシ基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂、ヒドラジド化合物等が挙げられる。
【0072】
前記硬化触媒としては、塩基性化合物であってもよく、ルイス酸性化合物であってもよい。
前記塩基性化合物としては、例えば、金属ヒドロキシド、金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセチネート、オニウム塩の水酸化物、オニウムカルボキシレート、オニウム塩のハロゲン化物、活性メチレン系化合物の金属塩、活性メチレン系化合物のオニウム塩、アミノシラン類、アミン類、ホスフィン類等が挙げられる。前記オニウム塩としては、アンモニウム塩、ホスホニウム塩又はスルホニウム塩が好適である。
前記ルイス酸性化合物としては、例えば、有機スズ化合物、有機亜鉛化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物等が挙げられる。
【0073】
前記溶剤としては、例えば、1-メチルピロリドン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM)、プロピレングリコールジメチルエーテル、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エタノール、メタノール、iso-プロパノール、1-プロパノール、iso-ブタノール、1-ブタノール、tert-ブタノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ペンタン、iso-ペンタン、ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、ソルベントナフサ、ミネラルスピリット等が挙げられる。これら溶剤を、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0074】
また、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤及び造膜助剤としては、公知のものを適宜選択して用いることができる。
【0075】
<表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物の製造方法>
表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物は、従来公知の方法により製造できる。例えば、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解又は分散混合後、コーター等により基材フィルムに塗工した後、溶剤を加熱除去する方法等が用いられる。
【0076】
本実施形態の表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物は、軽量化、柔軟化、密着性の向上効果を図るため、発泡させてもよい。発泡方法としては、化学的方法、物理的方法、熱膨張型のマイクロバルーンの利用等がある。各々、無機系発泡剤若しくは有機系発泡剤等の化学的発泡剤又は物理的発泡剤等の添加、或いは熱膨張型のマイクロバルーンの添加等により材料内部に気泡を分布させることができる。
【0077】
また、中空フィラー(既膨張バルーン)を添加することにより、軽量化、柔軟化、密着性の向上を図ってもよい。
【0078】
本実施形態の表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物は、粘着力、凝集力調整のため粘着付与樹脂を添加してもよい。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、石油系粘着付与樹脂、スチレン系粘着付与樹脂等が挙げられる。これら粘着付与樹脂を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、粘着付与樹脂の軟化点は90℃以上160℃以下であることが好ましい。
【0079】
≪表面保護フィルム≫
本実施形態の表面保護フィルムは、プラスチックフィルムと、前記プラスチックフィルムの片面又は両面に粘着層と、を備える、
粘着層が、上述した表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物の硬化物からなる。
【0080】
本実施形態の表面保護フィルムにおいて、粘着層は、剥離しやすく、剥離時の粘着剤による汚染性が改善されている。
【0081】
本実施形態の表面保護フィルムにおいて、粘着層の厚みとしては、使用される用途に応じて適宜決定することができるが、1μm以上1000μm以下であることが好ましく、2μm以上900μm以下であることがより好ましく、3μm以上800μm以下であることがさらに好ましく、4μm以上700μm以下であることが特に好ましい。
【0082】
本実施形態の表面保護フィルムは、例えば、表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物を基材上に塗工し、必要に応じて乾燥し、その後硬化させることによって製造することができる。
表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物を基材上に塗工する方法としては、例えば、アプリケーター、ロールコーター、ナイフコーター、グラビアコーター等を使用して塗布する方法が挙げられる。前記塗工後に乾燥を行う場合は、例えば、得られた積層体を乾燥機等に入れ、例えば、50℃以上150℃以下の温度で、1分間以上30分間以下乾燥させる加熱乾燥方法が挙げられる。或いは、その他の乾燥方法としては、例えば自然乾燥、熱風乾燥、赤外線乾燥等が挙げられる。
【0083】
硬化時の加熱温度としては、70℃以上160℃以下とすることができ、75℃以上155℃以下とすることができ、80℃以上150℃以下とすることができる。
【0084】
本実施形態の表面保護フィルムにおいて、上記表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物を、厚み38μmの剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、135℃で3分間乾燥させて硬化させた後、23℃、50%RH環境下で7日間保管した厚み20μmの粘着層を備える表面保護フィルムから、前記剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離して得られる前記粘着層を、23℃、50%RH環境下で7日間保管後にメッシュ状のシートに包み、酢酸エチル中に23℃で1週間浸漬し、取り出した後、120℃で2時間乾燥することにより算出されるゲル分率が90.0質量%以上100.0質量%以下であることが好ましい。ゲル分率が上記下限値以上であることで、硬化性により優れる。
なお、ここでいうゲル分率は、酢酸エチルに浸漬前の上記粘着層の質量に対する、酢酸エチルに浸漬後に乾燥した上記粘着層の質量の百分率である。
【0085】
本実施形態の表面保護フィルムにおいて、上記表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物を、厚み38μmの剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、135℃で3分間乾燥させて硬化させた後、23℃、50%RH環境下で7日間保管した厚み20μmの粘着層を備える表面保護フィルムから、前記剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した前記粘着層を、厚みが200μmとなるように積層した後、幅10mm、長さ40mmに切断して得られる、積層された前記粘着層を、チャック間距離が10mmになるように引張試験機にセットし、23℃環境下で300mm/分の速度で実施された引張試験におけるヤング率が0.22N/mm以下であることが好ましく、0.20N/mm以下であることがより好ましく、0.15N/mm以下であることがさらに好ましい。ヤング率が上記上限値以下であることで、弾性率がより低いものとなり、被着体への貼り付け性、及び追従性により優れる。
また、ヤング率の下限値は小さければ小さいほど好ましいが、例えば、0.01N/mmとすることができる。
【0086】
本実施形態の表面保護フィルムは、上記表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物を、厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、135℃で3分間乾燥させて硬化させた後、23℃、50%RH環境下で7日間保管した厚み20μm、幅25mm及び長さ100mmの粘着層を備える表面保護フィルムを、被着体であるガラスに貼り合わせて、2kgローラーで1往復圧着し23℃で30分間養生後、23℃、300mm/分の速度で測定された180度ピール粘着力が0.02N/25mm以上2.50N/25mm以下であることが好ましく、0.03N/25mm以上2.40N/25mm以下であることがより好ましく、0.04N/25mm以上2.30N/25mm以下であることがさらに好ましい。180度ピール粘着力が上記数値範囲内であることで、剥離性をより良好なものとすることができる。
【0087】
本実施形態の表面保護フィルムは、上述のとおり、剥離しやすく、剥離時の粘着剤による汚染性が改善されていることから、例えば、光学部材の表面保護フィルムとして好適に用いられる。
【実施例
【0088】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0089】
[物性1]
(ガラス転移温度Tg)
アクリル系ポリマー(A)のガラス転移温度は、アクリル系ポリマー(A)の溶液中の有機溶剤及び水分を減圧下で飛ばした後、真空乾燥したものを、示差走査熱量(DSC)測定装置を用いて、昇温速度5℃/分の条件で測定した値をガラス転移温度として用いた。
【0090】
[物性2]
(数平均分子量及び重量平均分子量)
数平均分子量及び重量平均分子量は下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量及び重量平均分子量である。
【0091】
(測定条件)
装置:東ソー(株)製、HLC-802A
カラム:東ソー(株)製、G1000HXL×1本
G2000HXL×1本
G3000HXL×1本
キャリアー:テトラヒドロフラン
検出方法:示差屈折計
【0092】
[物性3]
(イソシアネート基含有率)
まず、フラスコに測定試料2g以上3g以下を精秤した(Wg)。次いで、トルエン20mLを添加し、測定試料を溶解した。次いで、2規定のジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液20mLを添加し、混合後、15分間室温放置した。次いで、イソプロピルアルコール70mLを加え、混合した。次いで、この液を1規定塩酸溶液(ファクターF)で、指示薬に滴定した。得られた滴定値をV2mLとした。次いで、試料無しで、得られた滴定値をV1mlとした。次いで、下記式から架橋剤成分(B)のイソシアネート基含有率(NCO%)(質量%)を算出した。
【0093】
「イソシアネート基含有率(質量%)」 = (V1-V2)×F×42/(W×1000)×100
【0094】
[物性4]
(平均イソシアネート官能基数)
架橋剤成分(B)の平均イソシアネート官能基数(平均NCO数)は、下記式により求めた。なお、式中、「Mn」は、数平均分子量を意味し、上記「物性2」において測定された値を用いた。「NCO%」は、上記「物性3」において算出された値を用いた。
【0095】
「平均イソシアネート官能基数」 = (Mn×NCO%×0.01)/42
【0096】
[架橋剤成分(B)の硬化膜の作製]
各架橋剤成分(B)について、アプリケーターを用いてガラス上に塗工し、23℃、65%湿度環境下で168時間保管後、さらに50℃で24時間加熱した後に、膜厚50μmの硬化膜を得た。
【0097】
[物性5]
(ケーニッヒ硬度)
各硬化膜について、ケーニッヒ硬度計(BYK Gardner社のPendulum hardness tester)により23℃環境下でのケーニッヒ硬度(回)を測定した。
【0098】
<評価方法>
[表面保護フィルム1の作製]
各表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物をアプリケーターにより乾燥後の厚みが20μmになるように、厚み38μmの剥離処理をされたPETフィルム上に塗工し、135℃で3分間乾燥した。その後、23℃、50%RH環境下で7日間保管し、ゲル分率測定用、及び引張試験用として、表面保護フィルム1を得た。剥離処理をされたPETフィルムを剥離して各評価に供した。
【0099】
[表面保護フィルム2の作製]
各表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物をアプリケーターにより乾燥後の厚みが20μmになるように、厚み25μmポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗工し、135℃で3分間乾燥した。その後、23℃、50%RH環境下で7日間保管し、180度ピール粘着力測定用として、表面保護フィルム2を得た。
【0100】
[評価1]
(ゲル分率)
上記「表面保護フィルム1の作製」で得られた表面保護フィルム1から剥離処理をされたPETフィルムを剥離した粘着層を0.1g以上0.2g以下程度採取し、メッシュ状のシートにつつみ、酢酸エチルに1週間浸漬させた後、120℃で2時間乾燥した。次いで、酢酸エチルに浸漬前の上記粘着層の質量に対する、酢酸エチルに浸漬後に乾燥した上記粘着層の質量の百分率を、ゲル分率(質量%)として算出した。
ゲル分率が90質量%以上であるものについて硬化性が良好であると評価した。
【0101】
[評価2]
(引張試験:ヤング率)
上記「表面保護フィルム1の作製」で得られた表面保護フィルム1から剥離処理をされたPETフィルムを剥離した粘着層を、厚みが200μmとなるように積層し、幅10mm、長さ40mmに切断した。その後、積層された粘着層をチャック間距離が10mmになるように引張試験機にセットし、23℃環境下で引張試験機を用いて300mm/分の速度でヤング率を測定した。
ヤング率が0.22N/mm以下であるものについて貼り付け性及び被着体への追従性が良好であると評価した。
【0102】
[評価3]
(180度ピール粘着力及び耐汚染性)
上記「表面保護フィルム2の作製」で得られた表面保護フィルム2を、幅25mm及び長さ100mmに切断し、試験片を得た。次いで、当該試験片を、被着体であるガラスに貼り付けて、2kgローラーを1往復させて試験片をガラスに圧着させ、23℃で30分間養生後、引張試験機を用いて速度300mm/分で180度ピール粘着力を測定した。
0.02N/25mm以上2.50N/25mmであるものを剥離性が良好であると評価した。
【0103】
次いで、180度ピール粘着力の測定後の被着体であるガラスの表面を目視で観察して、以下の評価基準に従って耐汚染性を評価した。
【0104】
(評価基準)
○:汚染がない(ガラス表面に目視で確認できる程度に粘着剤が残っていない)
×:汚染がある(ガラス表面に目視で確認できる程度に粘着剤が残っている)
【0105】
<架橋性官能基含有ポリマー(A)の合成>
[合成例1-1]
(アクリル系ポリマーA-1の合成)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた四つ口フラスコに、2-エチルへキシルアクリレート(2EHA)96質量部と、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)4質量部とを投入し、溶媒として酢酸エチルを240質量部投入した。次いで、窒素ガス雰囲気下で撹拌を行いながら、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.15質量部を投入し、65℃で8時間反応を行った。反応後冷却し、固形分濃度30.0質量%のアクリル系ポリマーA-1を得た。
【0106】
[合成例1-2~1-8]
(アクリル系ポリマーA-1~A-8の合成)
各モノマーの配合比率を表1に記載のとおりとした以外は、合成例1-1と同様の方法を用いて、各アクリル系ポリマーを合成した。
【0107】
合成した各アクリル系ポリマーの組成及び物性を以下の表1に示す。なお、表1において、モノマーの略称は以下の化合物を示す。
【0108】
(架橋性官能基含有モノマー(a1))
4HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
【0109】
((メタ)アクリル酸エステルモノマー(a2))
2EHA:2-エチルへキシルアクリレート
iOA:イソオクチルアクリレート
iNA:イソノニルアクリレート
MA:メチルアクリレート
BA:ブチルアクリレート
【0110】
【表1】
【0111】
<架橋剤成分(B)の合成>
[合成例2-1]
(ポリイソシアネート成分B-1の合成)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、HDI:100質量部を仕込み、2官能のポリカプロラクトンポリオール(ダイセル社製、商品名「プラクセル220」、数平均分子量2000)(以下、「ポリオールb2-1」又は単に「b2-1」と称する場合がある):4.7質量部、及び、3官能のポリカプロラクトンポリオール(ダイセル社製、商品名「プラクセル308」、数平均分子量850)(以下、「ポリオールb3-1」又は単に「b3-1」と称する場合がある):33質量部(ポリオールb2-1及びポリオールb3-1の水酸基に対するHDIのイソシアネート基のモル比が10.0となる量)を撹拌しながら、反応器内温度を90℃に保持し110分間保持した。収率が40質量%になった時点で反応を停止した。反応液をろ過した後、未反応のHDIを薄膜蒸留装置により除去して、ポリイソシアネート成分B-1を得た。
【0112】
[合成例2-2~2-4、及び合成例2-8]
(ポリイソシアネート成分B-2~B-4、及びB-8の合成)
原料の種類及び配合比率を表2に記載のとおりとした以外は、合成例2-1と同様の方法を用いて、各ポリイソシアネート成分を合成した。
【0113】
[合成例2-5]
(ポリイソシアネート成分B-5の合成)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、HDI:100質量部、及び、トリメチロールプロパン(以下、「ポリオールb3-3」又は単に「b3-3」と称する場合がある):8.9質量部を仕込み、撹拌下反応器内温度を75℃に5時間保持しウレタン化反応を行った。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去して、イソシアヌレート型ポリイソシアネート(以下、「ポリイソシアネート成分B-5」と称する場合がある)を得た。
【0114】
[合成例2-6]
(ポリイソシアネート成分B-6の合成)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、HDI:100質量部を仕込み、撹拌下反応器内温度を62℃に保持し、トリメチルベンジルアンモニウム・ハイドロオキサイド:0.095質量部を加え、4時間反応させた。その後、転化率が38質量%になった時点で燐酸:0.02質量部を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去して、イソシアヌレート型ポリイソシアネート(以下、「ポリイソシアネート成分B-6」と称する場合がある)を得た。
【0115】
[合成例2-7]
(ポリイソシアネート成分B-7の合成)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、HDI:100質量部を仕込み、ポリオールb3-1:30質量部(ポリオールb3-1の水酸基に対するHDIのイソシアネート基のモル比が11.4となる量)を撹拌しながら、反応器内温度を95℃に保持し80分間保持した。収率が39質量%になった時点で反応を停止した。反応液をろ過した後、未反応のHDIを薄膜蒸留装置により除去して、ポリイソシアネート成分B-7を得た。
【0116】
合成した各ポリイソシアネート成分の組成及び物性を以下の表2に示す。なお、表2において、ポリオールは以下の化合物である。
【0117】
(ポリオール(b2))
b2-1:2官能のポリカプロラクトンポリオール、ダイセル社製、商品名「プラクセル220」、数平均分子量2000
b2-2:ポリテトラメチレンエーテルグリコール、旭硝子(株)製、商品名「Excenol2020」、数平均分子量2000
【0118】
(ポリオール(b3))
b3-1:3官能のポリカプロラクトンポリオール、ダイセル社製、商品名「プラクセル308」、数平均分子量850
b3-2:3官能のポリカプロラクトンポリオール、ダイセル社製、商品名「プラクセル312」、数平均分子量1250
【0119】
(ポリオール(b3’))
b3’-1:トリメチロールプロパン(TMP)
【0120】
【表2】
【0121】
<表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物の製造>
[実施例1]
(表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物S-a1の製造)
アクリル系ポリマーA-1:100質量部に対して、ポリイソシアネート成分B-3:3.0質量部、架橋促進剤としてジオクチルスズジラウレート(DOT、日東化成株式会社製、商品名「ネオスタン U-810」):0.1質量部、及び酢酸エチルを添加して、固形分30質量%の表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物S-a1を得た。
【0122】
[実施例2~8及び比較例1~4]
(表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物S-a2~S8及びS-b1~S-b4の製造)
架橋性官能基含有ポリマー(A)及び架橋剤成分(B)の種類及び配合比率を表3~表4に記載のとおりとした以外は、実施例1と同様の方法を用いて各表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物を製造した。
【0123】
各表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物の組成及び評価結果を表3~表4に示す。
【0124】
【表3】
【0125】
【表4】
【0126】
表3及び表4から、ガラス転移温度Tgが-68.7℃以上-57.3℃以下である架橋性官能基含有ポリマー(A)と、架橋剤成分(B)として、重量平均分子量が4180以上21500以下であり、且つ、イソシアネート基平均数が3.8以上4.6以下である脂肪族ポリイソシアネートと、を含む、表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物S-a1~S-a8(実施例1~8)を用いた表面保護フィルムでは、硬化性、貼り付け性、剥離性、及び耐汚染性のいずれも良好であった。
また、架橋性官能基含有ポリマー(A)の種類が異なる表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物S-a2、S-a5、及びS-a6(実施例2、5及び6)を用いた表面保護フィルムの比較において、ガラス転移温度が低くなるほど、或いは、重量平均分子量が小さくなるほど、ヤング率がより小さくなり、弾性率がより低くなり、また、貼り付け性及び被着体への追従性がより良好になる傾向がある。
【0127】
一方、架橋性官能基含有ポリマー(A)100質量部に対して、重量平均分子量が1400未満であるポリイソシアネート成分B-5~B-6を架橋剤成分(B)としてそれぞれ3.0質量部含む表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物S-b1及びS-b3(比較例1及び3)を用いた表面保護フィルムでは、硬化性、剥離性及び耐汚染性は良好であったが、貼り付け性が不良であった。
また、架橋性官能基含有ポリマー(A)100質量部に対して、重量平均分子量が1400未満であるポリイソシアネート成分B-7を架橋剤成分(B)として3.5質量部含む表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物S-b4(比較例4)を用いた表面保護フィルムでは、硬化性、剥離性及び耐汚染性は良好であったが、貼り付け性及び被着体への追従性が不良であった。
また、架橋性官能基含有ポリマー(A)100質量部に対して、重量平均分子量が1400未満であるポリイソシアネート成分B-5を架橋剤成分(B)として0.05質量部含む表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物S-b2(比較例2)を用いた表面保護フィルムでは、貼り付け性が良好であったが、硬化性、剥離性、及び耐汚染性が不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本実施形態の表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物によれば、表面保護フィルムとした場合に、貼り付け性及び剥離性が良好であり、剥離時の粘着剤による汚染性が改善された表面保護フィルム用粘着性樹脂組成物を提供することができる。