(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-28
(45)【発行日】2025-04-07
(54)【発明の名称】血液を検査するための方法、システム、およびコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20250331BHJP
G16H 10/40 20180101ALI20250331BHJP
【FI】
G01N33/50 Z
G16H10/40
(21)【出願番号】P 2021066152
(22)【出願日】2021-04-08
【審査請求日】2024-03-15
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】ガビ バウアー
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー クラッテ
(72)【発明者】
【氏名】ヨー リンセン
(72)【発明者】
【氏名】キャサリーナ フュアースト
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-069696(JP,A)
【文献】特開2010-107216(JP,A)
【文献】国際公開第2005/008254(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02302378(EP,A1)
【文献】特表2012-509707(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0032634(US,A1)
【文献】Katharina Ruzicka,The New Hematology Analyzer Sysmex XE-2100 Performance Evaluation of a Novel White Blood Cell Differential Technology,Arch Pathol Lab Med,2001年03月,Vol.125,Page.391-396
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/50
G16H 10/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血球計数システムを用いて被験者の血液を検査する方法であって、
前記血液と白血球を分類するための試薬とを混合して測定試料を調製し、前記測定試料をフローサイトメトリー法によって測定することにより、少なくとも好中球に関する第1のパラメータと他の血液細胞に関する第2のパラメータとを含む複数の血液学的パラメータを取得することと、
前記
複数の血液学的パラメータのうちの少なくとも
前記第1パラメータに基づいて信頼性検査を行うことと、
前記信頼性検査
にパスしたことに応じて、前記複数の血液学的パラメータに基づいて前記被験者の感染性反応
の可能性
に関する指数値を算出することと、
を備える方法。
【請求項2】
前記信頼性検査を行う前記ステップは、前記血液学的パラメータのサブセットを検査することを含む、請求項1に記載
の方法。
【請求項3】
前記信頼性検査を行う前記ステップは、白血球分画測定から得られる血液学的パラメータを検査することを含む、請求項1または2に記載
の方法。
【請求項4】
前記信頼性検査を行う前記ステップは、
前記第1パラメータとして
前記好中球の数を検査することを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項5】
前記信頼性検査を行う前記ステップは、血液学的パラメータであって、その値が前記複数の血液学的パラメータのうちの別の血液学的パラメータの信頼性のある値を取得することに関連する前記血液学的パラメータを検査することを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項6】
前記信頼性検査を行う前記ステップは、前記信頼性検査に用いられる前記血液学的パラメータの各々の値を、対応する閾値、または対応する下側閾値および上側閾値と比較することを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項7】
前記信頼性検査がパスしなければ、前記信頼性検査を不合格にする少なくとも1つの血液学的パラメータの測定結果を出力する、請求項1から
6のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項8】
前記信頼性検査がパスしなければ、エラーメッセージまたはエラーコードを出力することをさらに備える、請求項1から
7のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項9】
前記エラーメッセージまたは前記エラーコードは、前記信頼性検査を不合格にする少なくとも1つの血液学的パラメータを示す情報を含む、請求項
8に記載
の方法。
【請求項10】
前記血液を測定する検出装置の一般的な信頼性検査を行うことをさらに備える、請求項1から
9のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項11】
前記信頼性検査を行う前記ステップは、前記血液を測定する検出装置の動作状態を反映する血液学的パラメータまたは前記血液に混合される試薬の品質を反映する血液学的パラメータを検査することを含む、請求項1から
10のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項12】
血液と白血球を分類するための試薬とを混合して測定試料を調製し、前記測定試料をフローサイトメトリー法によって測定することにより、少なくとも好中球に関する第1のパラメータと他の血液細胞に関する第2のパラメータとを含む複数の血液学的パラメータを取得する
血球計数装置と、
前記
複数の血液学的パラメータのうちの少なくとも
前記第1パラメータに基づいて信頼性検査を行
い、
前記信頼性検査
にパスしたことに応じて、前記複数の血液学的パラメータに基づいて被験者の感染性反応
の可能性
に関する指数値を算出する
診断支援装置と、を備える
血球計数装置システム。
【請求項13】
請求項1から
11のいずれかに記載の方法の動作を汎用コンピュータに行わせることが可能な指示を記憶したコンピュータ読み取り可能な媒体を備える、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータにより実施される血液を検査するための方法、血球計数装置システム、およびコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
全身性炎症反応症候群(Systemic Inflammatory Response Syndrome;SIRS)とは、被験者が、感染性または非感染性の外傷のために全身に重篤な炎症反応を呈している状態である。
【0003】
感染性炎症反応を伴うSIRSとしては、敗血症が挙げられる。敗血症は、初期の段階で適切な治療を受けない場合、重篤な敗血症、敗血症性ショック、および多臓器機能障害(MOD)へと症状が進行し、最終的には死に至る可能性がある。したがって、被験者がSIRSであると診断された場合に、その反応が感染性炎症反応であるかまたは非感染性炎症反応であるかを早期に判別すること、特に被験者が細菌性の感染症またはウィルス性の感染症であるかを早期に診断することは、その被験者に行われる治療に大きな影響を与える。さらに、炎症反応が感染性反応であるか非感染性反応であるかを判別することは、SIRSではない被験者に行われる治療に大きな影響を与えることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、被験者の炎症反応が感染性炎症反応か否か、特に細菌またはウィルスによって引き起こされる感染性炎症反応か否かの判別を支援するために、測定されるいくつかの血液学的パラメータに基づいて、例えば、指数(ICIS:Intensive Care Infection Score(集中治療感染スコア))の形式で、診断支援情報を判定する血球計数装置および診断支援方法を述べている。細菌性またはウィルス性の感染は、即刻かつ適切に治療されなければ、敗血症等のような命にかかわる重篤な状態にまで急速に進行することがある。医療の専門家は、炎症が、細菌性またはウィルス性の感染によって引き起こされているかを判別して、敗血症の診断を行うか、その他の場合はSIRSの診断を行うかを試みるであろう。
【0006】
特許文献1の方法論では、測定された血液学的パラメータに基づいてICIS指数を決定し、そのICIS指数を診断支援情報として出力する。しかし、ICIS指数は、決定されたICIS指数の信頼性を技術的に査定することなく出力されるので、不適切なICIS指数値を出力する可能性があるとともに敗血症等の感染性反応の確度の査定が信頼性のないものになる可能性がある。
【0007】
この背景に対して、本発明の目的はこれらの制約を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題は、特許請求の範囲に定められるような主題によって解決される。
【0009】
本発明による、血球計数システムを用いて被験者の血液を検査する方法は、前記血液と白血球を分類するための試薬とを混合して測定試料を調製し、前記測定試料をフローサイトメトリー法によって測定することにより、少なくとも好中球に関する第1のパラメータと他の血液細胞に関する第2のパラメータとを含む複数の血液学的パラメータを取得することと、前記複数の血液学的パラメータのうちの少なくとも前記第1パラメータに基づいて信頼性検査を行うことと、前記信頼性検査にパスしたことに応じて、前記複数の血液学的パラメータに基づいて前記被験者の感染性反応の可能性に関する指数値を算出することとを備える。
【0010】
本発明による血球計数装置システムは、血液と白血球を分類するための試薬とを混合して測定試料を調製し、前記測定試料をフローサイトメトリー法によって測定することにより、少なくとも好中球に関する第1のパラメータと他の血液細胞に関する第2のパラメータとを含む複数の血液学的パラメータを取得する血球計数装置と、前記複数の血液学的パラメータのうちの少なくとも前記第1パラメータに基づいて信頼性検査を行い、前記信頼性検査にパスしたことに応じて、前記複数の血液学的パラメータに基づいて被験者の感染性反応の可能性に関する指数値を算出する診断支援装置と、を備える。
【0012】
本発明によるコンピュータプログラム製品は、上述の方法の動作を汎用コンピュータに行わせることが可能な指示を記憶したコンピュータ読み取り可能な媒体を備える。
【0013】
第1、第2、第3、および第4の態様による解決手段は、有効で信頼性のある数値パラメータ値のみが、被験者の感染性反応の可能性を判別するために用いられることを保証する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る血球計数装置システムの模式的な構成を示す正面図である。
【
図2】実施形態に係る血球計数装置システムの検出装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る検出装置の検出部の構成を示す模式的な平面図である。
【
図4】実施形態に係る血球計数装置システムの第1の診断支援装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】実施形態に係る血球計数装置システムの第2の診断支援装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】実施形態に係る血球計数装置システムの第2の診断支援装置によって行われる一連の処理を示すフローチャートである。
【
図7】他の実施形態に係る血球計数装置システムの第2の診断支援装置によって行われる一連の処理を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態に係る血球計数装置システムの検出装置によって作成されるRETスキャッタグラムを示す図である。
【
図9】実施形態に係る血球計数装置システムの検出装置によって作成されるDIFFスキャッタグラムを示す図である。
【
図10】実施形態に係る血球計数装置システムの検出装置によって作成されるWBC/BASOスキャッタグラムを示す図である。
【
図11】血液試料の測定結果を示すための出力画面の一例を示す図である。
【
図12】血液試料の測定結果を示すための出力画面の他の例を示す図である。
【
図13】他の実施形態に係る血球計数装置システムの第1の診断支援装置によって行われる一連の処理を示すフローチャートである。
【
図14】他の実施形態に係る血球計数装置システムの第1の診断支援装置によって行われる一連の処理を示すフローチャートである。
【
図15A】信頼性検査を説明するためのDIFFスキャッタグラムの例を示す図である。
【
図15B】信頼性検査を説明するためのDIFFスキャッタグラムの例を示す図である。
【
図16A】信頼性検査を説明するためのRETスキャッタグラムの例を示す図である。
【
図16B】信頼性検査を説明するためのRETスキャッタグラムの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る診断支援装置、診断支援方法、およびコンピュータプログラムを、図面を参照して具体的に説明する。以下の実施形態は、特許請求の範囲によって定められる発明を制限することを意図するものではなく、実施形態で述べる特徴の組み合わせのすべてが、必ずしも解決策に対する必須事項ではないことは言うまでもない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る血球計数装置システムの模式的な構成を示す正面図である。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る血球計数装置システム1は、血液検出装置2、第1の診断支援装置3、および第2の診断支援装置3’を備える。血液検出装置2は、例えば、炎症反応を呈する被験者の血液中の血球を検出する装置である。第1の診断支援装置3および第2の診断支援装置3’は、炎症反応が感染によって引き起こされているか否かの判別を支援する。第1の診断支援装置3は、情報処理装置(IPU)と称されうるコンピュータであってもよく、このコンピュータは血液検出装置2から検出データを受け取り、この検出データを分析する。第2の診断支援装置3’は、作業領域マネージャー(WAM)と称されうるコンピュータであり、このコンピュータは、外部機器(臨床検査情報システム(LIS))から被験者のICIS指数値を算出するための測定指令を受け取り、この測定指令を第1の診断支援装置3に送信する。
【0017】
第1の診断支援装置3は、被験者の測定指令を検出装置2に送り、検出装置2によって行われる検出の結果を含むデータを受け取り、分析処理を行う。血球計数装置システム1は、例えば、病院や血液学研究所等の医療機関に設置される。検出装置2と第1の診断支援装置3とは、互いにデータ通信が可能なように送信ケーブル3aを介して接続可能である。同様に、第1の診断支援装置3と第2の診断支援装置3’とは、互いにデータ通信が可能なように送信ケーブル3a’を介して接続可能である。なお、検出装置2と第1の診断支援装置3との接続および/または第1の診断支援装置3と第2の診断支援装置3’との接続は、それぞれ送信ケーブル3aおよび3a’によって形成される直接有線接続に限定されない。例えば、電話回線を使用した専用回線、LAN、またはインターネットなどの通信ネットワーク等の無線接続によって接続されてもよい。
【0018】
検出装置(または血液分析装置)2の前面の右下には、被験者の血液を収容した採血管をセットすることが可能な採血管セット部2aが設けられている。操作者が、採血管セット部2a近傍に設けられた押ボタンスイッチ2bを押すと、採血管セット部2aは操作者に向けて移動し、それによって操作者は採血管をその上にセットできる。操作者が、採血管をセットした後、再度押ボタンスイッチ2bを押すと、採血管セット部2aは検出装置2に向けて移動し、検出装置2に収納される。しかし、検出装置2は採血管を手動でセットするものに限定されない。代わりに、採血管が試料ラックに集められて、搬送バンドまたは搬送コンベヤによって検出装置2まで動かされて、そこで個々の採血管が検出装置2にセットされてもよい。
【0019】
図2は、本発明の実施形態に係る血球計数装置システム1の検出装置2の構成を示すブロック図である。
図2を参照すると、検出装置2は、試料供給部4、検出部5、制御部8、および通信部9を備える。試料供給部4は、チャンバ、複数のソレノイドバルブ、ダイアフラムポンプ等からなる試料調製装置4aを含む流体ユニットである。試料調製装置4aは、被験者の血液を試薬と混合することによって検出試料を調製する。試料供給部4は、試料調製装置4aによって調製された検出試料を検出部5に供給する。制御部8は、検出装置2の各構成要素の動作を制御する。通信部9は、例えば、RS-232Cインターフェース、USBインターフェース、またはEthernet(登録商標)インターフェースであってよく、データを診断支援装置3に送信/診断支援装置3から受信する。
【0020】
図3は、本発明の実施形態に係る血球計数装置システム1の検出部5の構成を模式的に示す概略平面図である。
図3を参照すると、検出部5は光学式のフローサイトメータであり、半導体レーザによるフローサイトメトリー法で、血液中の白血球(WBC)、網赤血球(RET)、成熟赤血球(RBC)、および血小板(PLT)を検出する。「赤血球」という用語は、分類上「網赤血球(RET)」および「成熟赤血球(RBC)」を含むものとしてここでは用いられる。検出部5は、検出試料の液流を形成するためのフローセル51を含む。フローセル51は、石英、ガラス、合成樹脂等の半透明の材料によって管状に形成されている。フローセル51は、検出試料およびシース液が流れる流路を有する。検出部5は、フローセル51へ向けてレーザ光を出力するように配置された半導体レーザ光源52を含む。半導体レーザ光源52とフローセル51との間には、複数のレンズからなる照明レンズ系53が設けられる。照明レンズ系53は、半導体レーザ光源52から出力される平行ビームを集光し、ビームスポットを形成する。光軸は、半導体レーザ光源52からフローセル51を通り直線状に延びる。フォトダイオード54は、照明レンズ系53からフローセル51の反対側に位置するように光軸上に設けられる。ビームストッパ54aは半導体レーザ光源52から直接到来する光を遮光するように設けられる。
【0021】
フローセル51に検出試料が通流すると、レーザ光に基づいて散乱光および蛍光が生じる。散乱光および蛍光のうち、レーザ光の照射(すなわち、前方)方向の光はフォトダイオード54によって光電変換される。半導体レーザ光源52から直線状に延びる光軸に沿って進行する光のうち、半導体レーザ光源52から直接到来する光は、ビームストッパ54aによって遮光される。フォトダイオード54に入射するのは、実質的にこの光軸方向に沿って進行する散乱光(以下、前方散乱光と称する)のみである。フローセル51を流れる検出試料から発せられる前方散乱光は、フォトダイオード54によって電気信号に光電変換される。光電変換された各電気信号(以下、前方散乱光信号と称する)はアンプ54bによって増幅され、制御部8に出力される。前方散乱光信号の強度は、血球の大きさを示す。
【0022】
側方集光レンズ55は、フローセル51の側方に設けられ、半導体レーザ光源52からフォトダイオード54へ直線状に延びる光軸に対して交差する光軸方向に位置する。側方集光レンズ55は、フローセル51を通流する検出試料にレーザ光が放出されるときに発生する側方光(すなわち、半導体レーザ光源52からフォトダイオード54まで直線状に延びる光軸に交差する光軸方向に出力される光)を集光する。側方集光レンズ55より下流側にダイクロイックミラー56が設けられる。側方集光レンズ55で集光した光は、ダイクロイックミラー56によって散乱光成分と蛍光成分とに分けられる。ダイクロイックミラー56で反射する光が進む光軸方向(すなわち、側方集光レンズ55およびダイクロイックミラー56を通る光軸に交差する光軸方向)に、側方散乱光を受光するためのフォトダイオード57が設けられる。側方集光レンズ55およびダイクロイックミラー56を通る光軸上では、蛍光を受光するための光学フィルタ58aおよびフォトダイオード58が設けられる。
【0023】
ダイクロイックミラー56で反射する光は側方散乱光であり、フォトダイオード57によって電気信号に光電変換される。光電変換された各電気信号(以下、側方散乱光信号と称する)は、アンプ57aによって増幅され、制御部8に出力される。各側方散乱光信号は、血球の内部情報(核の大きさ等)を示す。ダイクロイックミラー56を透過した光は蛍光であり、光学フィルタ58aによって波長選択された後、フォトダイオード58によって電気信号に光電変換される。光電変換された各電気信号(以下、蛍光信号と称する)はアンプ58bによって増幅され、制御部8に出力される。各蛍光信号は血球の染色度合いを示す。
【0024】
図4は、本発明の実施形態に係る血球計数装置システム1の第1の診断支援装置3の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、第1の診断支援装置3は、CPU(中央演算装置)等を含むデータ処理部(制御部)31、画像表示部32、および入力部33を少なくとも備える。データ処理部31は、CPU31a、メモリ31b、ハードディスク31c、読出装置31d、入/出力インターフェース31e、画像出力インターフェース31f、通信インターフェース31g、および内部バス31hを備える。データ処理部31では、CPU31aは、メモリ31b、ハードディスク31c、読出装置31d、入/出力インターフェース31e、画像出力インターフェース31f、および通信インターフェース31gのそれぞれと、内部バス31hを介して接続されている。
【0025】
CPU31aは、上述のハードウェア各部の動作を制御し、ハードディスク31cに記憶されたコンピュータプログラム34に従って、検出装置2から受信したデータを処理する。
【0026】
メモリ31bは、SRAM等の揮発性メモリまたはフラッシュメモリとして構成される。メモリ31bには、ロードモジュールがコンピュータプログラム34の実行時にロードされる。メモリ31bは、コンピュータプログラム34の実行時に発生する一時的なデータ等を記憶する。
【0027】
ハードディスク31cは、固定型の記憶装置等として構成され、第1の診断支援装置3に組み込まれる。コンピュータプログラム34は、可搬型ディスクドライブである読出装置31dによって、プログラムおよびデータ等の情報を記憶するDVD、CD-ROM、またはUSBフラッシュドライブ等の可搬型記憶媒体35からダウンロードされる。その後、コンピュータプログラム34は、ハードディスク31cに記憶される。コンピュータプログラム34は、ハードディスク31cからメモリ31bにロードされて実行される。なお、コンピュータプログラム34は、外部のコンピュータから通信インターフェース31gを介してダウンロードされるコンピュータプログラムでもよい。
【0028】
入/出力インターフェース31eは、キーボードまたはタブレット等として構成される入力部33に接続される。画像出力インターフェース31fは、CRTモニタまたはLCD等であってよい画像表示部32に接続される。あるいは、入力部33および画像表示部32は、タッチ式のモニタ等の単一の装置に含まれていてもよい。
【0029】
通信インターフェース31gは、内部バス31hに接続され、インターネット、LAN、およびWAN等の外部ネットワークに接続されることによって第2の診断支援装置3’(後述する)または検出装置2等の外部のコンピュータとデータ送信/受信を行う。例えば、上述のハードディスク31cは、第1の診断支援装置3に組み込まれたものに限らず、通信インターフェース31gを介して第1の診断支援装置3に接続された外部の記憶装置等の外部の記憶媒体であってもよい。
【0030】
図5は、本発明の実施形態に係る血球計数装置システム1の第2の診断支援装置3’の構成を示すブロック図である。第2の診断支援装置3’は、上述の第1の診断支援装置3と同じハードウェア構成を有してもよく、そのため詳細な説明は省略する。
図5に示すように、通信インターフェース31g’は、第1の診断支援装置3とデータの送信/受信を行う。加えて、ハードディスク31c’は、ICIS指数を示すメッセージを記憶してもよい。このメッセージは、さらに、被験者の感染性反応について判定された可能性の指標(ICIS指数)の出力支援を行うための診断支援情報として、被験者には感染性反応があるまたはその可能性が高いことを示す指標、および被験者には非感染性反応があるまたはその可能性が高いことを示すメッセージを含んでいる。ハードディスク31c’は、また、被験者の反応が感染性反応であるか非感染性反応であるかを判定する複数の血液学的パラメータをスコア化するのに用いられる、複数の血液学的パラメータのうちの1以上のためのスコア閾値(後述する)、および信頼性検査(後述する)のための閾値を記憶していてもよい。
【0031】
以下、本発明の実施形態に係る血球計数装置システム1の動作を説明する。まず、検出装置2の試料供給部4は、採血管セット部2aにセットされた採血管から血液を吸引し、測定指令に従って吸引した血液を一定分量毎に複数に分けて、所定の専用試薬をその一定分量に加えて、例えば、RET検出試料、DIFF検出試料、およびWBC/BASO検出試料を調製する。なお、RET検出試料は、血液を希釈処理して、さらに網赤血球を検出するための専用試薬を用いて染色処理することによって調製される。DIFF検出試料は、血液を希釈処理し、赤血球を溶血するための専用試薬を用いて溶血処理し、さらに白血球を多数の亜群に分類するための専用試薬を用いて染色処理することによって調製される。WBC/BASO検出試料は、血液を希釈処理し、さらに赤血球を溶血するための専用試薬を用いて溶血処理することによって調製される。試料供給部4は、検出部5のフローセル51に調製した検出試料を供給する。
【0032】
図6は、本発明の実施形態に係る血球計数装置システム1の第2の診断支援装置3’のデータ処理部31’のCPU31a’によって行われる一連の処理を示すフローチャートである。
図6に示すように、CPU31a’はまず被験者の血液のための複数の血液学的パラメータ、例えば、NEUT#、NE-SFL、RET#、HFLC#、IG#、EO#、Delta-He、RBC-He、PLTを取得する(S31)。これは以下の通り行われうる。
【0033】
検出試料がフローセル51に供給されると、第1の診断支援装置3のCPU31aは、検出装置2の検出部5によって出力される前方散乱光信号、側方散乱光信号、および蛍光信号のデータを通信インターフェース31gを介して受信し、そのデータをメモリ31bに記憶する。CPU31aは、検出部5によって検出されメモリ31bに記憶された前方散乱光信号、側方散乱光信号、および蛍光信号のデータに基づいて複数のスキャッタグラムを作成する。CPU31aによって作成される複数のスキャッタグラムは、例えば、Y軸に検出部5によって出力された前方散乱光信号の強度を示し、X軸に検出部5によって出力された蛍光信号の強度を示すRETスキャッタグラム(
図8参照)と、Y軸に検出部5によって出力された蛍光信号の強度を示し、X軸に検出部5によって出力された側方散乱光信号の強度を示すDIFFスキャッタグラム(
図9参照)と、Y軸に検出部5によって出力された前方散乱光信号の強度を示し、X軸に検出部5によって出力された側方散乱光信号の強度を示すWBC/BASOスキャッタグラム(
図10参照)を少なくとも含む。あるいは、各スキャッタグラムのX軸およびY軸は逆でもよい。
【0034】
次に、第1の診断支援装置3のCPU31aは、検出結果としてのスキャッタグラムを用いて、被験者の血液のための複数の血液学的パラメータを判定する。このような血液学的パラメータとして、NEUT#、NE-SFL、RET#、HFLC#、IG#、EO#、Delta-He、RBC-He、PLT(詳細は後述する)が例示される。
【0035】
図8は本発明の実施形態に係る血球計数装置システム1によって作成されるRETスキャッタグラムを示す。RETスキャッタグラムに基づいて、第1の診断支援装置3のCPU31aは、網赤血球ヘモグロビン等量(RET-He)、および網赤血球ヘモグロビン等量(RET-He)と成熟赤血球のヘモグロビン等量(RBC-He)との差(Delta-He)を算出する。両者は以下のように取得された血液学的パラメータである。
図8に示すように、第1の診断支援装置3のCPU31aは、RETスキャッタグラムを用いて3つの領域、成熟赤血球(RBC)領域60、血小板(PLT)領域61、および網赤血球(RET)領域62を識別する。RETスキャッタグラムに基づいて、CPU31aは、成熟赤血球領域60(RBC)に含まれるすべての細胞の前方散乱光強度中央値であるRBC-He、および網赤血球領域62(RET)に含まれるすべての細胞の前方散乱光強度中央値であるRET-Heを判定する。第1の診断支援装置3のCPU31aは、網赤血球領域62から、複数の血液学的パラメータの1つとして、網赤血球数(RET#)を算出する。第1の診断支援装置3のCPU31aは、さらに、血小板領域61から、複数の血液学的パラメータの1つとして、血小板数(PLT)を算出する。このような算出の例は特許文献1に示されている。
【0036】
次に、第1の診断支援装置3のCPU31aはDIFFスキャッタグラムおよびWBC/BASOスキャッタグラムを用いて複数の血液学的パラメータの1つとして好中球数(NEUT#)を算出する。なお、「顆粒球」という用語は、分類上「成熟顆粒球」および「幼若顆粒球」の両方を含むものとしてここでは用いられる。「成熟顆粒球」は分類上、好中球(NEUT)、好酸球(EO)、および好塩基球(BASO)を含む。
【0037】
図9は、本発明の実施形態に係る血球計数装置システム1による白血球分画測定で作成されるDIFFスキャッタグラムを示す。
図10は、本発明の実施形態に係る血球計数装置システム1によって作成されるWBC/BASOスキャッタグラムを示す。
図9に示すように、DIFFスキャッタグラムでは、血球を、単球(MONO)領域71、リンパ球(LYMPH)領域72、好中球(NEUT)+好塩基球(BASO)領域73、好酸球(EO)領域74、幼若顆粒球(IG)領域75、および高蛍光性リンパ球細胞(HFLC)領域76の6つの領域に分類する。好中球(NEUT)の数と好塩基球(BASO)の数との和は、DIFFスキャッタグラムに基づいて、好中球(NEUT)+好塩基球(BASO)領域73内の白血球の数を数えることによって算出できる。ここで、第1の診断支援装置3のCPU31aは、さらに好酸球領域74から複数の血液学的パラメータの1つとして好酸球数(EO#)を算出する。
【0038】
複数の血液学的パラメータの1つとして、
図9の領域73に従って好中球(NEUT)の数と好塩基球(BASO)の数との和から好中球数(NEUT#)を算出するために、第1の診断支援装置3のCPU31aは、WBC/BASOスキャッタグラムを用いて好塩基球(BASO)の数を判定する。
図10に示すように、WBC/BASOスキャッタグラムでは、白血球を単球(MONO)+リンパ球(LYMPH)+好中球(NEUT)+好酸球(EO)領域81、および好塩基球(BASO)領域82の2つの領域に分類する。したがって、好塩基球(BASO)領域82内の好塩基球(BASO)の数は、WBC/BASOスキャッタグラムに基づいて、好塩基球(BASO)領域82内の白血球の数を数えることによって算出できる。複数の血液学的パラメータの1つとしての好中球数(NEUT#)は、DIFFスキャッタグラムに基づいて算出される好中球(NEUT)の数と好塩基球(BASO)との数の和から、WBC/BASOスキャッタグラムに基づいて算出される好塩基球(BASO)の数を減算することによって得ることができる。
【0039】
次に、第1の診断支援装置3のCPU31aは、DIFFスキャッタグラムを用いて、複数の血液学的パラメータのうちの1つである、血液中の好中球の蛍光強度(NE-SFL)を示す値を算出する。詳細には、
図9における値(NE-SFL)は、DIFFスキャッタグラムに基づいて、好中球(NEUT)+好塩基球(BASO)領域73(すなわち、好中球(NEUT)および好塩基球(BASO))に含まれるすべての細胞の蛍光強度の中央値を算出することによって得ることができる。得られた値(NE-SFL)は、好塩基球(BASO)の蛍光強度の影響を含むが、好塩基球(BASO)の数は少ないため、その影響は小さい。
【0040】
次に、第1の診断支援装置3のCPU31aは、DIFFスキャッタグラムを用いて、血液中の顆粒球についての複数の血液学的パラメータの1つである幼若顆粒球数(IG#)を算出する。詳細には、幼若顆粒球数(IG#)は、DIFFスキャッタグラムに基づいて、幼若顆粒球(IG)領域75内の細胞の数を数えることによって得ることができる。
【0041】
次に、第1の診断支援装置3のCPU31aは、DIFFスキャッタグラムを用いて、血液の複数の血液学的パラメータの1つである抗体合成リンパ球についての高蛍光性リンパ球細胞数(HFLC#)を算出する。詳細には、高蛍光性リンパ球細胞数(HFLC#)は、DIFFスキャッタグラムに基づいて、高蛍光性リンパ球細胞(HFLC)領域76内の細胞の数を数えることによって得ることができる。
【0042】
当業者なら、複数の血液学的パラメータを得る上述の例は制限されるもではなく、他のスキャッタグラムおよび他の血液学的パラメータを判定してもよいことが理解できる。
【0043】
図6に戻り、ステップS31において、第2の診断支援装置3’は、(上述のような)判定された血液学的パラメータを通信インターフェース31g’を介して受信することによって、複数の血液学的パラメータ、例えば、NEUT#、NE-SFL、RET#、HFLC#、IG#、EO#、Delta-He、RBC-He、PLTを、第1の診断支援装置3から取得する。
【0044】
そして、
図6のステップS32により、第2の診断支援装置3’のCPU31a’は、ステップ31で取得した血液学的パラメータの少なくとも1つに関して信頼性検査を行う。
【0045】
特に、信頼性検査は、NE-SFLおよびNEUT#等の白血球分画測定から得られる血液学的パラメータに関して行ってもよい。加えて、信頼性検査は、NEUT#等の白血球数および/またはRET#等の赤血球数のための血液学的パラメータに関して行ってもよい。
【0046】
信頼性検査は、血液学的パラメータのうちの少なくとも1つを、閾値、または下側閾値および上側閾値と比較することによって行ってもよい。すなわち、信頼性検査は、信頼性検査のために使用される各血液学的パラメータの値を、対応する閾値、または対応する下側閾値および上側閾値と比較することによって行ってもよい。閾値(複数可)はあらかじめ定められ、血液学的パラメータがICIS指数値に関する品質要件を満たす妥当なまたは信頼性のある値を確実に有するように、設定される。換言すると、閾値(複数可)は、ICIS指数値の誤った判定に導くような信頼性のない値を排除するよう設定される。
【0047】
次に、ステップS33において、第2の診断支援装置3’のCPU31a’は、血液学的パラメータのうちの少なくとも1つに関して信頼性検査にパスしたか否かを判定する。すなわち、取得された少なくとも1つの血液学的パラメータが所定の閾値より大きいか、または下側閾値および上側閾値として定められた特定のパラメータ範囲内にあるか否かを判定する。
【0048】
信頼性検査にパスすると(ステップS33でYes)、第2の診断支援装置3’のCPU31a’は、続くステップS34で感染性反応である可能性を示すICIS指数値、特に細菌性の感染(詳細は後述する)である確度を示すICIS指数値を決定する。一方、信頼性検査にパスしない場合(ステップS33でNo)、CPU31a’は、続くステップS36で、判定された可能性(ICIS指数)の表示は出力されないが対応するエラーコードまたはエラーメッセージ(詳細は後述する)を出力する。加えて、信頼性検査にパスしない場合(ステップS33でNo)、CPU31a’は、信頼性検査を不合格にする少なくとも1つの血液学的パラメータの測定結果を出力してもよい(
図12についての後述を参照)。
【0049】
信頼性検査にパスすると、CPU31a’は、取得した血液学的パラメータに基づいて、感染性反応の可能性と関連がある、特に、細菌性の感染の確度と関連があるICIS指数値を判定して(ステップS34)、ステップS35で出力診断支援情報としてICIS指数値を出力する。
【0050】
特に、ICIS指数値の算出に関して、CPU31a’は、ステップS31で取得した血液学的パラメータ(Delta-He、RBC-He、NEUT#、EO#、PLT、NE-SFL、IG#、HFLC#)に関してICISポイントを設定して、設定したICISポイントを合計することによってICIS指数値を算出してもよい。これは、以下のようにパラメータ特定ICISルールを実施することによって行われうる。
【0051】
a)HFLC#に関するICISルール
ここでは、CPU31a’は、血液学的パラメータHFLC#に関して以下のルールに基づいてICISポイントを決定する。
【0052】
【0053】
第1のICISルールは特定のスコア閾値M1、M2、およびM3を適用する。閾値M1、M2、およびM3の実際の数値は、血液試料と、検出装置2の構成および精度等に依存することは当業者ならわかる。このように、判定された高蛍光性リンパ球数HFLC#に従って、対応する第1のICISポイント0、1、2、または4が設定される。
【0054】
b)IG#およびEO#に関するICISルール
ここでは、CPU31a’は、血液学的パラメータIG#およびEO#に関して以下のルールに基づいてICISポイントを決定する。
【0055】
【0056】
第2のICISルールは特定のスコア閾値M4、M5、M6、およびM7を適用する。閾値M4、M5、M6、およびM7の実際の数値は、血液試料と、検出装置2の構成および精度等に依存することは当業者ならわかる。このように、判定された幼若顆粒球数IG#および判定された好酸球数EO#に従って、対応する第2のICISポイント0、1、2、または4が設定される。
【0057】
c)NE-SFLに関するICISルール
ここでは、CPU31a’は、血液学的パラメータNE-SFLに関して以下のルールに基づいてICISポイントを決定する。
【0058】
【0059】
第3のICISルールは特定のスコア閾値M8、M9、およびM10を適用する。閾値M8、M9、およびM10の実際の数値は、血液試料と、検出装置2の構成および精度等に依存することは当業者ならわかる。このように、判定された中央蛍光値NE-SFLに従って、対応する第3のICISポイント0、1、2、または4が設定される。
【0060】
d)Delta-HeおよびRBC-Heに関するICISルール
ここでは、CPU31a’は、血液学的パラメータDelta-HeおよびRBC-Heに関して以下のルールに基づいてICISポイントを決定する。
【0061】
【0062】
第4のICISルールは特定のスコア閾値M11、M12、M13、およびM14を適用する。閾値M11、M12、M13、およびM14の実際の数値は、血液試料と、検出装置2の構成および精度等に依存することは当業者ならわかる。このように、判定されたDelta-He値およびRBC-He値に従って、対応する第4のICISポイント0、1、2、または4が設定される。
【0063】
e)NEUT#、EO#、およびPLTに関するICISルール
ここでは、CPU31a’は、血液学的パラメータNEUT#、EO#、およびPLTに関して以下のルールに基づいてICISポイントを決定する。ICIS指数に関して、全好中球顆粒球数をIG#値およびNEUT#値の合わせたもの(「幼若および成熟顆粒球」)として理解してもよく、以下ではNEUT#と称する。
【0064】
【0065】
第5のICISルールは特定のスコア閾値M15、M16、M17、M18、M19、およびM20を適用する。閾値M15、M16、M17、M18、M19、およびM20の実際の数値は、血液試料と、検出装置2の構成および精度等に依存することは当業者ならわかる。このように、判定されたNEUT#、EO#、およびPLT値に従って、対応する第5のICISポイント0、1、2、または4が設定される。
【0066】
説明の通り、ステップS34でICIS指数値を算出するために、ステップS31で得た血液学的パラメータを、ハードディスク31c’にあらかじめ記憶した各々のスコア閾値と比較する複数のICISルールを適用することによって、各々のスコア閾値を血液学的パラメータに関して設定する。特許文献1は、さらに、例えば、スコア閾値を決定するためにROC曲線を用いたROC(受診者動作特性)分析に基づいてこのようなスコア閾値をどのように決定できるかに関して詳細を述べているが、当業者なら、上記のスコア閾値の決定のために他の方法も等しく適用できることがわかる。
【0067】
したがって、CPU31a’は、上述のようなICISルールに従って決定されるような各ICISポイントを合計することによってICIS指数値を算出できる。最小スコアは0ポイントであり、炎症反応が感染によって引き起こされた可能性は非常に低いということを示す。最大スコアは20ポイントである。当業者なら、特許文献1で説明されているように、スコアが20ポイントに近いほど、炎症反応が細菌性の感染などの感染によって引き起こされた可能性が高くなることが理解できる。ICIS指数の決定は上述の例に限定されない。特に、当業者なら、より多数のまたはより少数の血液学的パラメータまたは他のICISルールに基づいてICIS指数の決定が行われうることが理解できる。
【0068】
さらなる実施形態によれば、第2の診断支援装置3’のCPU31a’は、ステップS34で算出された指数(ICIS)に基づいて、被験者の炎症反応が感染性反応であるか非感染性反応であるかなどの感染性反応の種類、例えば、感染性炎症反応であるか非感染性炎症反応であるか、または細菌性の感染性反応であるか非細菌性の感染性反応であるかを判別してもよい。そして、出力診断支援情報がICIS指数および感染性反応の種類の両方を含んでもよい。
【0069】
さらなる実施形態において、CPU31a’は、指数(ICIS)に基づいて、被験者の反応が感染性反応であるか非感染性炎症反応であるかを判別してもよい。特に、CPU31a’は、指数(ICIS)が、ハードディスク31cに記憶された判定閾値以上であるならば、被験者の反応が感染性反応であるまたはその可能性が高いと判別し、指数(ICIS)が判定閾値未満ならば被験者の反応は非感染性反応であるまたはその可能性が高いと判定してもよい。
【0070】
ここで、第2の診断支援装置3’のCPU31a’が行う診断支援情報の出力処理に説明を戻す(
図6参照)。ステップS33の信頼性検査にパスすると、CPU31a’は診断支援情報を、画像出力インターフェース31f’を介して画像表示部32’に出力し、通信インターフェース31g’を介して他のコンピュータまたはプリンタ等に出力する(ステップS35)。詳細には、診断支援情報は、ステップS34で算出した特定のICIS指数値を含んでおり、さらに判定された感染性反応の種類を含んでいてもよい。
【0071】
さらに、信頼性検査にパスしない場合、 第2の診断支援装置3’のCPU31a’はハードディスク31c’からエラーコードまたはエラーメッセージを読み出し、そのエラーコードまたはエラーメッセージを画像出力インターフェース31f’を介して画像表示部32’に出力し、通信インターフェース31g’介して他のコンピュータまたはプリンタ等に出力する(ステップS36)。
【0072】
上記実施形態は、血液学的パラメータ、NEUT#、NE-SFL、RET#、HFLC#、IG#、EO#、Delta-He、RBC-He、PLTの例について説明したが、ICIS指数値は、より多数のまたはより少数の血液学的パラメータに基づいて決定されてもよいこと、特に、上述の血液学的パラメータのすべてをICIS指数値のために使用する必要はないことを当業者なら理解できる。例えば、上記の実施形態において、RET#は信頼性検査のために用いられる一方、ICIS指数値を決定するためには要求されなくてもよい。
【0073】
図7は本発明の他の実施形態に係る血球計数装置システム1の第2の診断支援装置3’のデータ処理部31’のCPU31a’によって行われる一連の処理を示すフローチャートである。ここでは、
図6の処理の流れとは異なり、信頼性検査は、ステップS31で得た血液学的パラメータのサブセットに関してのみ、ステップS32aにおいて行われる。例えば、
図6に関して上述したように、NEUT#、NE-SFL、RET#、HFLC#、IG#、EO#、Delta-He、RBC-He、PLTの9つの血液学的パラメータからなるセットがステップS31で取得されても、信頼性検査S32aは、血液学的パラメータセット内のすべてに対して行われる必要はないが、限られたサブセットでのみ、例えば、NEUT#、NE-SFL、RET#の3つのパラメータに関して行うことができる。信頼性検査が取得されたすべての血液学的パラメータに関して要求されないので、これにより、血液試料のICIS指数のための信頼性検査を行う効率が高められることを当業者なら理解できる。
【0074】
さらに詳細には、
図7のステップS32aによれば、第2の診断支援装置3’のデータ処理部31’のCPU31a’は、血液学的パラメータのサブセットを取得し、そのサブセットに関して信頼性検査を行う。上述のように、NEUT#、NE-SFL、RET#、HFLC#、IG#、EO#、Delta-He、RBC-He、PLTなど複数の血液学的パラメータを取得する場合、血液学的パラメータのサブセットとは限られた数の血液学的パラメータを意味する。非限定的な本例において、このサブセットはNEUT#、NE-SFL、RET#の3つのパラメータに対応してもよい。
【0075】
ここで、信頼性は、診断支援情報(ICIS指数)を出力するためには、好ましくは、血液学的パラメータのサブセット全体に関してパスする必要がある。換言すると、信頼性検査が、例えば、血液学的パラメータのサブセット全体のうちの1つまたは2つの血液学的パラメータでのみの成功(パス)し、サブセット全体の少なくとも他の1つの血液学的パラメータに関して不合格ならば、ステップ33aの信頼性検査は不合格である(パスしない)。
【0076】
取得した血液学的パラメータの限定的なサブセットに関してのみ信頼性検査を行うことができる根本的な理由は、信頼性を判定する際に血液学的パラメータ間に関係性があると本発明者が観測したこと基づいている。特に、作成されたスキャッタグラムを考察すると、NEUT#について信頼性のある値が、例えば、他の血液学的パラメータが信頼性を持つとの判定に至らせることにも関係していることおよびその逆もあることがわかった。
【0077】
図15Aおよび
図15Bはこの関係の例を示している。特に、
図15Aのスキャッタグラムによれば、NE-SFL(
図9についての上述を参照)の中央値を判別することは容易である。というのは、この判別を可能にする明確に定められた集団があるからである。しかし、
図15Bは、非常に少数の場合を示しており、好中球集団の中央は実際の中央ではないと思われ、スキャッタグラムのドット間の変動の係数が大きいため、NEUT#が非常に小さい場合、NE-SFLは信頼性がない。
【0078】
当業者なら、NE-SFLに関する信頼性検査の不合格が、スキャッタグラムから導出される他の血液学的パラメータに関して影響を与えることを理解できる。例えば、IG#分類またはHFLC#の信頼性(
図9と比較)は、一般に、感度パラメータであり蛍光測定値を反映するNE-SFLを通して検査されるであろう。
【0079】
Delta-HeまたはRBC-Heの信頼性は、RET#を通して検査されるであろう。というのは、これらのパラメータは同じRETスキャッタグラムから得られ、RET#はDelta-HeおよびRBC-Heの算出に影響を与えるためである。RET細胞の数が閾値より小さい場合、十分な細胞があるとはいえないとともに、Y軸上のRET集団の信頼性がある中央を判別することができず、その結果、信頼性のないRET-Heとともに信頼性のないDelta-Heが得られる。ここで、
図16Aおよび
図16Bは、RETスキャッタグラムについてこの関係の例を示す。ここでは、
図16Aは明確なRET集団がある例を示す。一方、
図16Bは、(ほとんど)RET#がないため、RET-Heは信頼性がなくなる例を示す。この非信頼性はまた、血液学的パラメータDelta-He(RET-He-RBC-He)にも関係する。すなわち、RET-Heに信頼性がない場合、Delta-Heも信頼性がないと考えられ、そのため、ICIS指数算出について考慮されない。
【0080】
図7のステップS32aでは、サブセットの各パラメータは、対応する閾値、または下側閾値および上側閾値と比較されてもよい。上述の制限されない例において、CPU31a’は、RET#値が、例えば最小RET集団を反映する値の閾値より大きいかを調べて、RET集団の信頼性のある中心とともにRET-He値を得るように構成される(詳細には、プログラムされる)。閾値は0.004×10
6/μL、0.005×10
6/μL、または0.006×10
6/μL等でありうる。当業者なら、このような閾値は、試料の大きさの違いまたは分析装置の設定の違いで異なるであろうことを理解する。
【0081】
RET#値がこの閾値より大きい場合、RET#に関して信頼性検査にパスする(すなわち、RET#は信頼のある値を有する)。そうでなく、RET#値がこの閾値以下である場合、CPU31a’は、パラメータに特有のメッセージ(「ICIS_RET_UNRELIABLE」)を、RETについて信頼性検査が不合格であり、ICISスコアの算出ができないことを示すコードまたはフラグとして作成する。
【0082】
さらに、CPU31a’は、NE-SFLが下側閾値と上側閾値との間の蛍光強度を有するか否かを検査するよう構成される(詳細にはプログラムされる)。蛍光強度が、下側閾値と上側閾値との間に定められる範囲内にあれば、NE-SFLに関する信頼性検査にパスする(すなわち、NE-SFLは信頼のある値を有する)。そうでなく、NE-SFL値がこの下側閾値以下であるかこの上側閾値以上であれば、CPU31a’は、パラメータに特有のメッセージ(「ICIS_NE_SFL_UNRELIABLE」)を、NE-SFLについて信頼性検査が不合格であり、ICISスコアの算出ができないことを示すコードまたはフラグとして作成する。
【0083】
さらに、CPU31a’は、NEUT#値が閾値より大きいか否かを調べるよう構成される(詳細にはプログラムされる)。このような閾値は、信頼性のあるNE-SFL(対応するスキャッタグラム内のNEUT領域の蛍光強度)を得るのに必要とされる最小のNEUT集団を反映する。NEUT#値がこの閾値より大きい場合、NEUT#に関する信頼性検査にパスする(すなわち、NEUT#は信頼のある値を有する)。そうでなく、NEUT#値がこの閾値以下であれば、CPU31a’は、パラメータに特有のメッセージ(「ICIS_NEUT_UNRELIABLE」)を、NEUT#についての信頼性検査が不合格であり、ICISスコアの算出ができないこと示すコードまたはフラグとして作成する。閾値は、0.4×103/μL、0.5×103/μL、または0.6×103/μL等でありうる。当業者なら、このような閾値は、試料の大きさの違いまたは分析装置の設定の違いで異なるであろうことを理解する。
【0084】
この信頼性検査に基づいて、CPU31a’は、ステップS33aにおいて、信頼性検査がサブセットのすべてのパラメータに関してパスしたか、すなわち、上述の例のNEUT#、NE-SFL、RET#の3つの血液学的パラメータのすべてに関してパスしたかを判定する。
【0085】
信頼性検査が、サブセットのすべてのパラメータに関してパスしたら(ステップS33aでYes)、CPU31a’は、(
図6での説明のような)ステップS34のICIS指数算出および
図6で上述した残りのステップを続ける。
【0086】
そうでなく、信頼性検査が、サブセットの1つまたは複数のパラメータでパスしない場合(ステップS33aでNo)、CPU31a’は、続くステップS36で、サブセットのどのパラメータが
図7で述べたような信頼性検査に不合格であったかを特定する、例えば、ICIS_NEUT_UNRELIABLE、ICIS_NE_SFL_UNRELIABLE、ICIS_RET_UNRELIABLEなどのエラーコード(フラグ)または出力メッセージを出力する。
【0087】
図11は、ICIS指数値を算出するための測定指令に従った血液試料の測定の結果を示すための出力画面100の例を示し、この出力画面100には、判定された血液学的パラメータが示されている。ここで、具体的な試料ID、優先度、採血日等が示された血液試料の血液学的パラメータの詳細な判定値が、例えば、NEUT#、LYMPH#、MONO#等に関して、出力画面100に示されている。加えて、ICIS指数値は、強調表示されたボックス101によって示され、本血液試料では16という数値を示している。この値から、当業者なら、被験者の炎症反応は感染性反応である可能性が高いと理解できる。ICIS指数値が、信頼性検査にパスしたという事実の結果として出力されるので、技術的に信頼性のあるICIS指数値を提供できる。
【0088】
図12は、ICIS指数値を算出するための測定指令に従った血液試料の測定の結果を示すための出力画面110の他の例を示し、この出力画面110には、判定された血液学的パラメータが、例えば、NEUT#=0.31×10
3/μLと示されている。NEUT#についてのパラメータは、0.31×10
3/μLとして取得されており、この値は、(上述のような)対応する閾値よりも小さいため、信頼性検査に不合格であり、ICIS指数値は決定されず(
図12の強調表示されたボックス111内に「not measurable」として示されており)、パラメータNEUT#はICIS指数について信頼性がない(「ICIS_NEUT_UNRELIABLE」)ということが示されている。すなわち、特定の数値がこの血液学的パラメータについて判定されたが、それでも、信頼性検査では、測定結果をICISの算出の目的のためには信頼性がないと識別し、そのため、ICIS指数値を出力しない。このように、エラーメッセージまたはエラーコードは、信頼性検査を不合格にする少なくとも1つの血液学的パラメータ(ここでは、NEUT集団に関する血液学的パラメータ)を示す情報を含む。なお、出力画面110では、ICIS指数値が表示されなくても、信頼性検査を不合格にする血液学的パラメータNEUT#の測定結果が表示される。これは、このようなNEUT#は正しく信頼性があると考えられるからである。すなわち、NEUT#は、信頼性検査で定められた閾値よりも小さいためICISの算出には信頼性がないものの、このようなNEUT#は正しいため、NEUT#が表示される。同様のことがRET測定にも当てはまる。RET#が存在しない場合、RET-HeおよびDelta-HeはICISの算出には信頼性がないことになる。しかし、このようなRET#は正しいため、RET#も出力画面に表示される。
【0089】
エラーメッセージまたはエラーコードは、信頼性検査を不合格にする特定の血液学的パラメータを示してもよい。これにより、操作者はICISの算出の不履行の原因を把握できる。例えば、エラーメッセージまたはエラーコードが、信頼性検査を不合格にするパラメータとしてNE-SFLを示すと、操作者は、蛍光検出器の感度が悪いか、染色試薬が劣化している可能性があると結論づけることができ、これによって適切なアクションをとることができる。
【0090】
他の実施形態では、
図6のステップS33または
図7のステップS33aの信頼性検査は他の条件に関しても行われてよい。
【0091】
例えば、信頼性検査は、血液を測定する検出装置2の動作状況を反映する血液学的パラメータを検査することを含んでいてもよい。特に、血液学的パラメータNE-SFLは、細胞からの蛍光を検出する感度を反映する。このように、この血液学的パラメータは、細胞を蛍光色素で染色するための検出装置2における試料調製装置または蛍光検出器の動作状態を示してもよい。
【0092】
あるいはまたは加えて、信頼性検査は血液に混合される試薬の品質を反映するパラメータを検査することを含んでいてもよい。例えば、(
図9の領域73における蛍光作用を検出する感度パラメータである)血液学的パラメータNE-SFLは細胞の染色度合いも反映してよい。このパラメータも染色試薬が劣化しているか否かを示してもよい。
【0093】
あるいはまたは加えて、信頼性検査は、特定の血液学的パラメータを検査することを含んでもよく、この特定の血液学的パラメータとは、複数の血液学的パラメータのうちでこれとは別の血液学的パラメータの信頼性のある値を取得することに関係する値を有するものである。例えば、本発明者は、血液試料の最小NEUT集団が、信頼性のあるNE-SFLを取得するのに必要であろうことを認識した。同様に、本発明者は、最小RET集団が、信頼性のあるRET-HeおよびDelta-Heパラメータを取得するのに必要であろうことも認識した。これは、RET細胞の数が閾値より小さいと、十分なRET細胞が存在せず、それとともに、Y軸上のRET集団の信頼性のある中央が判定できず、その結果、信頼性のないRET-Heとともに信頼性のないDelta-Heが得られるからである。血液学的パラメータ間のこのような本質的な依存性または関係によって、上述のサブセット等のように血液学的パラメータの縮小されたセットに関して信頼性試験を行うことが可能であり、これは信頼性試験の時間効率をさらに高める。
【0094】
さらに、信頼性試験は、被験者の血液についての実際に取得された(測定された)血液学的パラメータに関して行われるだけでなく、使用される試薬および血球計数装置システム1の一般的な条件に関しても行われうる。そのため、使用される装置に関しての追加の一般的な信頼性試験を含んでいてもよい。このような一般的な信頼性試験の例として、(血液分析装置(検出装置2)からのメッセージのフォーマットが無効であることを示す)メッセージフォーマットエラー、吸引エラー、エラーフラグ、機能エラー、疑いのある試料、欠落している試験、および/または(血液分析装置(検出装置2)からの結果が、ICISスコアの算出について支援されていない血液検査用ユニットを含むことを示す)非支援のパラメータユニットのうちの1つ以上が挙げられる。
【0095】
上述の一般的な各信頼性検査に対して、対応する個々のエラーコードが設けられてもよい。例えば、「ICIS_Error_Result」は、血液分析装置(検出装置2)の測定エラーを示し、ICISスコアの算出を不可とする結果エラーフラグを含む。
【0096】
同様に、血液分析装置(検出装置2)からのエラーコード「ICIS_ACTION_MESSAGE」は、ICISスコアの算出を不可とする、「疑いのある試料」または「試料をチェックしてください」などの、アクションメッセージを含んでいてもよい。
【0097】
血球計数装置システム1が、検出装置2、第1の診断支援装置3、および第2の診断支援装置3’を有する実施形態を上述した。このような構成において、第1の診断支援装置は、前方散乱光信号、側方散乱光信号、および蛍光信号のデータを評価して対応するスキャッタグラムを作成し、被験者の血液試料についての血液学的パラメータのセットを判定できる。次いで、第2の診断支援装置3’は、複数の血液学的パラメータを取得し、上述のような信頼性検査を行う。
【0098】
別の実施形態によれば、血球計数装置システム1は、検出装置2および単一の診断支援装置3を備えてもよい。このような構成において、診断支援装置3は、前方散乱光信号、側方散乱光信号、および蛍光信号のデータを評価して対応するスキャッタグラムを作成し、被験者の血液試料についての血液学的パラメータのセットを判定して複数の血液学的パラメータを取得し上述のような信頼性検査を行ってもよい。
【0099】
図13のフローチャートによる方法を実施するこのような別の実施形態を用いてもよい。特に、
図13のステップS51によれば、診断支援装置3のCPU31aは、検出装置2の検出部5によって出力された前方散乱光信号、側方散乱光信号、および蛍光信号のデータを通信インターフェース31gを介して受信して、そのデータをメモリ31bに記憶してもよい。その後、ステップS52において、CPU31aは対応するスキャッタグラム、例えば、Y軸に検出部5によって出力される前方散乱光信号の強度を示し、X軸に検出部5によって出力される蛍光信号の強度を示すRETスキャッタグラム、Y軸に検出部5によって出力される蛍光信号の強度を示し、X軸に検出部5によって出力される側方散乱光信号の強度を示すDIFFスキャッタグラム、およびY軸に検出部5によって出力される前方散乱光信号の強度を示し、X軸に検出部5によって出力される側方散乱光信号の強度を示すWBC/BASOスキャッタグラムを少なくとも作成する。
【0100】
次に、診断支援装置3のCPU31aは、検出結果としてのスキャッタグラムを用いて、被験者の血液についての複数の血液学的パラメータを取得する。このような血液学的パラメータとして、(上述のような)NEUT#、NE-SFL、RET#、HFLC#、IG#、EO#、Delta-He、RBC-He、PLTが例示される。
【0101】
次に、診断支援装置3のCPU31aが、ステップS54およびS55の信頼性検査を行うステップ、ICIS指数値を算出するステップ(ステップS56)、および診断支援情報を出力するステップ(ステップS57)またはエラーコードもしくはエラーメッセージを出力するステップ(ステップS58)も行う。ステップS54~S58は、
図6のステップS32~S36に対応する。当業者なら、血液学的パラメータのセットの判定および信頼性検査の作業負荷を2つの診断支援装置間で分担する
図6に関して述べた実施形態とは異なり、
図13のすべてのステップを単一の診断支援装置3が行うということがわかる。
【0102】
図14のフローチャートによる方法を実施する別の実施形態を用いてもよい。ここでは、
図13と比較すると、ステップS54aおよびS55aの信頼性検査を血液学的パラメータのサブセットに関して行う。すなわち、ステップS53のスキャッタグラムから得るような血液学的パラメータのセット内のすべてに関しては行われない。上述のように、ステップS53で単一の診断支援装置によって得られるような血液学的パラメータの全セットは以下の通り、NEUT#、NE-SFL、RET#、HFLC#、IG#、EO#、Delta-He、RBC-He、PLTであってよい。この例において、信頼性検査のために用いられる血液学的パラメータのサブセットは、3つのパラメータ、NEUT#、NE-SFL、RET#に対応してもよい。単一の診断支援装置を適用するこの別の実施形態においても、信頼性検査のために血液学的パラメータのサブセットだけを用いることで、より効率的な信頼性検査の実施を可能にする。
【0103】
血球計数装置システム1が検出装置2を備え、この検出装置2が、フローセルを通過した後に細胞からの前方散乱光、側方散乱光、および蛍光などの血液試料の複数種類の特徴情報を検出するように構成された検出部5を備える実施形態を上述した。検出装置2は、追加的にまたは代わりに、細胞照合ゾーンを個別に通過する血液試料の細胞の直流(DC)インピーダンスを測定するよう構成された別の検出部を含んでいてもよい。検出装置2は、さらにまたは代わりに、細胞照合ゾーンを個別に通過する血液試料の細胞の高周波(RF)伝導性を測定するよう構成されたさらに別の検出部を含んでいてもよい。
【0104】
好塩基球(BASO)を特定するためのWBC/BASO検出試料が、血液を希釈処理し、赤血球を溶血するための専用試薬を用いて溶血処理をさらに行うことによって調製される実施形態を上述した。あるいは、好塩基球(BASO)を特定するための検出試料は、血液を希釈処理し、溶血処理し、血球を染色するための専用試薬を用いて染色処理をさらに行うことによって調製されてもよい。この場合、Y軸に前方散乱光信号の強度を示し、X軸に蛍光信号の強度を示すスキャッタグラムが細胞を分類するために用意されてもよい。
【0105】
白血球を単球(MONO)、リンパ球(LYMPH)、好中球(NEUT)、好塩基球(BASO)、および好酸球(EO)の5つのグループに分類するために、DIFFスキャッタグラムおよびWBC/BASOスキャッタグラムの両方を分析する実施形態が上述された。代わりに、DIFFスキャッタグラムのみが、白血球を5つのグループに分類するために分析されてもよい。
【0106】
信頼性検査をパスするとICIS指数値が出力画面に出力される一方、信頼性検査が不合格であるとICIS指数値が出力画面に出力されない実施形態が上述された。代わりに、信頼性検査が不合格であると、ICIS指数値が、ICIS指数値に信頼性がないことを示すフラグとともに出力画面に出力されてもよい。
【0107】
ICIS指数値が、被験者の感染性反応の可能性の指標として出力される実施形態が上述された。代わりに、被験者の感染性反応の可能性を示すフラグまたはメッセージがこの指標として出力されてもよい。
【0108】
NE-SFLは染色試薬による細胞の染色度合いを反映しているので、血液学的パラメータNE-SFLを、血液と混合される試薬の品質を反映するパラメータとして用いる実施形態が上述された。代わりにまたは加えて、溶解試薬の品質を反映する血液学的パラメータを用いてもよい。例えば、異常に多数の単球または好中球が過剰な砕片残骸の存在下で現れるとこれは溶解不全であることを示すため、単球数または好中球数などの白血球数は、溶解試薬の品質を反映するパラメータとして用いられてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 血球計数装置システム
2a 採血管セット部
2b 押ボタンスイッチ
3a、3a’ 送信ケーブル
2 検出装置
3 第1の診断支援装置
3’ 第2の診断支援装置
4 試料供給部
4a 試料調製装置
5 検出部
8 制御部
9 通信部
31、31’ データ処理部
31a、31a’ CPU
31b、31b’ メモリ
31c、31c’ ハードディスク
31d、31d’ 読出装置
31e、31e’ 入/出力インターフェース
31f、31f’ 画像出力インターフェース
31g、31g’ 通信インターフェース
32、32’ 画像表示部
33、33’ 入力部
34、34’ コンピュータプログラム
54b アンプ
57a アンプ
58b アンプ