(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-28
(45)【発行日】2025-04-07
(54)【発明の名称】乗用車用空気入りラジアルタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20250331BHJP
B60C 3/04 20060101ALI20250331BHJP
【FI】
B60C19/00 B
B60C19/00 J
B60C3/04 B
(21)【出願番号】P 2021191550
(22)【出願日】2021-11-25
【審査請求日】2024-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】桑山 勲
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-063765(JP,A)
【文献】特開2020-079041(JP,A)
【文献】特開2020-055459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
23/00-23/20
G06K 19/00-19/18
H01Q 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置を備えた乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、
前記タイヤの断面幅SWが165(mm)未満であり、前記タイヤの断面幅SWと外径ODとの比SW/ODは、0.26以下であり、
前記タイヤをリムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態におけるタイヤ幅方向断面視において、接地端を通りタイヤ径方向に延びる仮想線と、タイヤ最大幅位置を通りタイヤ幅方向に延びる仮想線と、で挟まれるタイヤ部分に、前記通信装置を設けて
おり、
1層以上のベルト層からなるベルトをさらに備え、
前記通信装置は、前記1層以上のベルト層のうちタイヤ幅方向の幅が最大である最大幅ベルト層の端よりもタイヤ幅方向外側、且つ、前記1層以上のベルト層のうちタイヤ径方向最内側のベルト層よりもタイヤ径方向外側に設けられていることを特徴とする、乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項2】
通信装置を備えた乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、
前記タイヤの断面幅SWが165(mm)未満であり、
前記タイヤの断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)が、関係式、
OD(mm)≧-0.0187×SW(mm)
2+9.15×SW(mm)-380(mm)
を満たし、
前記タイヤをリムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態におけるタイヤ幅方向断面視において、接地端を通りタイヤ径方向に延びる仮想線と、タイヤ最大幅位置を通りタイヤ幅方向に延びる仮想線と、で挟まれるタイヤ部分に、前記通信装置を設けて
おり、
1層以上のベルト層からなるベルトをさらに備え、
前記通信装置は、前記1層以上のベルト層のうちタイヤ幅方向の幅が最大である最大幅ベルト層の端よりもタイヤ幅方向外側、且つ、前記1層以上のベルト層のうちタイヤ径方向最内側のベルト層よりもタイヤ径方向外側に設けられていることを特徴とする、乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項3】
前記通信装置は、RFタグである、請求項1
又は2に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車用空気入りラジアルタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤの空気圧などの空気入りタイヤの内部状態を検出するセンサや、空気入りタイヤの固有識別情報等を記憶可能な記憶部を備えるRF(radio frequency)タグ等の通信装置をタイヤ内面又はタイヤ内部に備えたものが知られている。例えば、通信装置としてのセンサにより、走行中のタイヤの状態を判定したり、通信装置としてのRFタグの記憶部から取得される様々なタイヤ情報を保守サービス等に活用したりすることができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、RFタグがカーカスプライ等の間に挟み込んで配置された空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のタイヤでは、RFタグがカーカスプライに接触しているため、タイヤ転動時におけるカーカスプライの変形がRFタグに影響し、RFタグの耐久性が損なわれるおそれがあった。このようにタイヤ変形等によりRFタグの耐久性が損なわれる場合があった。そして、このような問題は、RFタグのみならずタイヤに備えられる通信装置一般に生じ得るものである。一方で、通信装置を保護部材で強固に覆うことで耐久性を確保することも考えられるが、保護部材の配置により重量増を招く他、保護部材が通信性を低下させる場合もあり、通信装置の耐久性と通信性とを両立させることは一般的に困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、通信装置の耐久性と通信性とを両立させた、乗用車用空気入りラジアルタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)通信装置を備えた乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、
前記タイヤの断面幅SWが165(mm)未満であり、前記タイヤの断面幅SWと外径ODとの比SW/ODは、0.26以下であり、
前記タイヤをリムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態におけるタイヤ幅方向断面視において、接地端を通りタイヤ径方向に延びる仮想線と、タイヤ最大幅位置を通りタイヤ幅方向に延びる仮想線と、で挟まれるタイヤ部分に、前記通信装置を設けていることを特徴とする、乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【0008】
ここで、「接地端」とは、タイヤをリムに装着し、規定内圧を充填し、最大負荷荷重を負荷した際に路面と接地することとなる接地面のタイヤ幅方向両端をいう。また、「タイヤ最大幅位置」とは、上記基準状態において、タイヤのタイヤ幅方向の幅が最大となる位置をいう。
【0009】
上記「リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す(即ち、上記の「ホイール」の「リム部」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含む。「将来的に記載されるサイズ」の例としては、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズを挙げることができる。)が、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。
また、「規定内圧」とは、上記JATMA等に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)を指し、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、「規定内圧」は、タイヤを装着する車両毎に規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。
また、「最大負荷荷重」とは、上記最大負荷能力に対応する荷重をいうものとする。
【0010】
(2)通信装置を備えた乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、
前記タイヤの断面幅SWが165(mm)未満であり、
前記タイヤの断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)が、関係式、
OD(mm)≧-0.0187×SW(mm)2+9.15×SW(mm)-380(mm)
を満たし、
前記タイヤをリムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態におけるタイヤ幅方向断面視において、接地端を通りタイヤ径方向に延びる仮想線と、タイヤ最大幅位置を通りタイヤ幅方向に延びる仮想線と、で挟まれるタイヤ部分に、前記通信装置を設けていることを特徴とする、乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【0011】
(3)1層以上のベルト層からなるベルトをさらに備え、
前記通信装置は、前記1層以上のベルト層のうちタイヤ幅方向の幅が最大である最大幅ベルト層の端よりもタイヤ幅方向外側、且つ、前記1層以上のベルト層のうちタイヤ径方向最内側のベルト層よりもタイヤ径方向外側に設けられている、上記(1)又は(2)に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【0012】
(4)前記タイヤ最大幅位置の近傍に凹部を設け、
前記通信装置は、前記凹部に埋設されている、上記(1)又は(2)に記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【0013】
(5)前記通信装置は、RFタグである、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の乗用車用空気入りラジアルタイヤ。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、通信装置の耐久性と通信性とを両立させた、乗用車用空気入りラジアルタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】タイヤの断面幅SW及び外径ODを示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤのタイヤ幅方向断面図である。
【
図3】変形例の、タイヤ最大幅位置付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0017】
図1は、タイヤの断面幅SW及び外径ODを示す概略図である。
本発明の一実施形態の乗用車用空気入りラジアルタイヤ(以下、単にタイヤとも称する)は、タイヤの断面幅SWが165(mm)未満であり、タイヤの断面幅SWと外径ODとの比SW/ODは、0.26以下であり、狭幅・大径の形状をなしている。タイヤの断面幅SWをタイヤの外径ODに比して狭くすることにより、空気抵抗を低減することができ、且つ、タイヤの外径ODをタイヤの断面幅SWに比して大きくすることにより、タイヤの接地面付近でのトレッドゴムの変形を抑制して、転がり抵抗を低減することができ、これらにより、タイヤの燃費性を向上させることができる。上記SW/ODは、0.25以下とすることが好ましく、0.24以下とすることがより好ましい。
上記比は、タイヤの内圧が200kPa以上である場合に満たされるものであることが好ましく、220kPa以上である場合に満たされるものであることがより好ましく、280kPa以上である場合に満たされるものであることがさらに好ましい。転がり抵抗を低減することができるからである。一方で、上記比は、タイヤの内圧が350kPa以下である場合に満たされるものであることが好ましい。乗り心地性を向上させることができるからである。
ここで、タイヤの断面幅SWは、105~145mmとすることが好ましく、115~135mmとすることがより好ましい。
また、タイヤの扁平率は、タイヤの断面幅SW及び外径ODが上記比を満たすとき、45~70とすることがより好ましく、45~65とすることがより好ましい。
具体的なタイヤサイズは、特に限定されるものではないが、一例として、105/50R16、115/50R17、125/55R20、125/60R18、125/65R19、135/45R21、135/55R20、135/60R17、135/60R18、135/60R19、135/65R19、145/45R21、145/55R20、145/60R16、145/60R17、145/60R18、145/60R19、145/65R19、155/45R18、155/45R21、155/55R18、155/55R19、155/55R21、155/60R17、155/65R18、155/70R17、155/70R19のいずれかとすることができる。
【0018】
あるいは、タイヤは、タイヤの断面幅SWは、165mm未満であり、且つ、タイヤの断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)は、関係式、
OD(mm)≧-0.0187×SW(mm)2+9.15×SW(mm)-380
を満たしており、狭幅・大径の形状をなしている。
上記の関係式を満たすことにより、空気抵抗を低減することができ、且つ、転がり抵抗を低減することができ、これらにより、タイヤの燃費性を向上させることができる。
なお、第3の態様において、タイヤの断面幅SW及び外径ODは、上記の関係式を満たした上で、比SW/ODが0.26以下であることが好ましく、0.25以下であることがより好ましく、0.24以下であることがさらに好ましい。タイヤの燃費性をさらに向上させることができるからである。
上記関係式及び/又は比は、タイヤの内圧が200kPa以上である場合に満たされるものであることが好ましく、220kPa以上である場合に満たされるものであることがより好ましく、280kPa以上である場合に満たされるものであることがさらに好ましい。転がり抵抗を低減することができるからである。一方で、上記関係式及び/又は比は、タイヤの内圧が350kPa以下である場合に満たされるものであることが好ましい。乗り心地性を向上させることができるからである。
ここで、タイヤの断面幅SWは、105~145mmとすることが好ましく、115~135mmとすることがより好ましい。
また、タイヤの扁平率は、タイヤの断面幅SW及び外径ODが上記関係式を満たすとき、45~70とすることがより好ましく、45~65とすることがより好ましい。
具体的なタイヤサイズは、特に限定されるものではないが、一例として、105/50R16、115/50R17、125/55R20、125/60R18、125/65R19、135/45R21、135/55R20、135/60R17、135/60R18、135/60R19、135/65R19、145/45R21、145/55R20、145/60R16、145/60R17、145/60R18、145/60R19、145/65R19、155/45R18、155/45R21、155/55R18、155/55R19、155/55R21、155/60R17、155/65R18、155/70R17、155/70R19のいずれかとすることができる。
【0019】
本実施形態のタイヤは、乗用車用空気入りラジアルタイヤである。このタイヤは、特に、パーソナルモビリティ用の車両に装着するタイヤとして特に好適に用いられる。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態にかかる乗用車用空気入りラジアルタイヤのタイヤ幅方向断面図である。
図2は、タイヤをリムに組み込み、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態でのタイヤの幅方向断面を示している。
図2に示すように、このタイヤ1は、一対のビード部2間でトロイダル状に跨る、ラジアル配列コードのプライからなるカーカス3を備えている。また、このタイヤ1は、カーカス3のタイヤ径方向外側に、図示例で2層のベルト層4a、4bからなるベルト4及びトレッド5を順に備えている。
【0021】
この例では、一対のビード部2には、ビードコア2aがそれぞれ埋設されている。本発明では、ビードコア2aの断面形状や材質は特に限定されず、乗用車用空気入りラジアルタイヤにおいて通常用いられる構成とすることができる。本発明では、ビードコア2aは、複数の小ビードコアに分割されたものとすることもできる。あるいは、本発明では、ビードコア2aを有しない構成とすることもできる。
【0022】
図示例のタイヤ1は、ビードコア2aのタイヤ径方向外側に、断面略三角形状のビードフィラ2bを有している。ビードフィラ2bの断面形状は、この例に限定されるものではなく、材質も特に限定されない。あるいは、ビードフィラ2bを有しない構成としてタイヤを軽量化することもできる。
【0023】
本実施形態では、タイヤ1は、リムガードを有する構造とすることもできる。また、本実施形態では、ビード部2には補強等を目的としてゴム層やコード層等の追加部材をさらに設けることもできる。このような追加部材はカーカス3やビードフィラ2bに対して様々な位置に設けることができる。
【0024】
図2に示す例では、カーカス3は、1枚のカーカスプライからなる。一方で、本発明では、カーカスプライの枚数は特に限定されず、2枚以上とすることもできる。また、
図2に示す例では、カーカス3は、一対のビード部2間をトロイダル状に跨るカーカス本体部3aと、該カーカス本体部3aからビードコア2a周りに折り返されてなる折り返し部3bと、を有している。一方で、本発明では、カーカス折り返し部3bは、ビードコア2aに巻き付けることもでき、あるいは、分割された複数の小ビードコアで挟みこむ構造とすることもできる。図示例では、カーカス折り返し部3bの端3cは、ビードフィラ2bのタイヤ径方向外側端よりタイヤ径方向外側、且つ、タイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向内側に位置している。これにより、サイドウォール部の剛性を確保しつつも、タイヤを軽量化することができる。一方で、本発明においては、カーカス折り返し部3bの端3cは、ビードフィラ2bのタイヤ径方向外側端よりタイヤ径方向内側に位置していても良く、あ
るいは、タイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向外側に位置していても良い。あるいは、カーカス折り返し部3bの端3cは、カーカス本体部2aとベルト4とのタイヤ径方向の間に位置するように、ベルト4の端(例えばベルト層4bの端)よりタイヤ幅方向内側に位置する、エンベロープ構造とすることもできる。さらに、カーカス3が複数枚のカーカスプライで構成される場合には、カーカスプライ間で、カーカス折り返し部3bの端3cの位置(例えばタイヤ径方向位置)を同じとすることも異ならせることもできる。カーカス3のコードの打ち込み数としては、特に限定されるものではないが、例えば、20~60本/50mmの範囲とすることができる。また、カーカスラインには様々な構造を採用することができる。例えば、タイヤ径方向において、カーカス最大幅位置をビード部2側に近づけることも、トレッド5側に近づけることもできる。例えば、カーカス最大幅位置は、ビードベースラインからタイヤ径方向外側に、タイヤ断面高さ対比で50%~90%の範囲に設けることができる。上記「ラジアル配列」は、タイヤ周方向に対して85°以上、好ましくはタイヤ周方向に対して90°である。
【0025】
本実施形態のタイヤは、タイヤ周方向に対して傾斜して延びるコードのゴム引き層からなる1層以上の傾斜ベルト層を有することが好ましく、軽量化と接地面形状の歪みの抑制との兼ね合いから2層とすることが最も好ましい。なお、軽量化の観点からはベルト層を1層とすることもでき、接地面形状の歪みを抑制する観点からは3層以上とすることもできる。
図2に示す例では、2層のベルト層4a、4bのうち、タイヤ径方向外側のベルト層4bのタイヤ幅方向の幅は、タイヤ径方向内側のベルト層4aのタイヤ幅方向の幅より小さい。一方で、タイヤ径方向外側のベルト層4bのタイヤ幅方向の幅は、タイヤ径方向内側のベルト層4aのタイヤ幅方向の幅より大きくすることもでき、同じとすることもできる。タイヤ幅方向の幅が最も大きいベルト層(図示例ではベルト層4a)のタイヤ幅方向の幅は、接地幅の90~115%であることが好ましく、接地幅の100~105%であることが特に好ましい。なお、「接地幅」とは、上記接地端E間のタイヤ幅方向の距離をいう。
本実施形態において、ベルト層4a、4bのベルトコードとしては、金属コード、特にスチールコードを用いるのが最も好ましいが、非金属、例えば有機繊維コード(例えば、環境及びコストの観点からケブラー(登録商標)とすることができる)を用いることもできる。スチールコードはスチールを主成分とし、炭素、マンガン、ケイ素、リン、硫黄、銅、クロムなど種々の微量含有物を含むことができる。本実施形態において、ベルト層4a、4bのベルトコードはモノフィラメントコードや、複数のフィラメントを引き揃えたコード、複数のフィラメントを撚り合せたコードを用いることができる。撚り構造も種々のものを採用することができ、断面構造、撚りピッチ、撚り方向、隣接するフィラメント同士の距離も様々なものとすることができる。さらには異なる材質のフィラメントを撚り合せたコードを用いることもでき、断面構造としても特に限定されず、単撚り、層撚り、複撚りなど様々な撚り構造を取ることができる。
本実施形態では、ベルト層4a、4bのベルトコードの傾斜角度は、タイヤ周方向に対して10°以上とすることが好ましい。本実施形態では、ベルト層4a、4bのベルトコードの傾斜角度を高角度、具体的にはタイヤ周方向に対して20°以上、好ましくは35°以上、特にタイヤ周方向に対して55°~85°の範囲とすることが好ましい。傾斜角度を20°以上(好ましくは35°以上)とすることにより、タイヤ幅方向に対する剛性を高め、特にコーナリング時の操縦安定性能を向上させることができるからである。また、層間ゴムのせん断変形を減少させて、転がり抵抗を低減することができるからである。
【0026】
図示例では、トレッド5を構成するトレッドゴムは、1層からなる。一方で、本実施形態では、トレッド5を構成するトレッドゴムは、異なる複数のゴム層がタイヤ径方向に積層されて形成されていても良い。上記の複数のゴム層としては正接損失、モジュラス、硬度、ガラス転移温度、材質等が異なっているものを用いることができる。また、複数のゴム層のタイヤ径方向の厚さの比率は、タイヤ幅方向に変化していてもよく、また周方向主
溝底のみ等をその周辺と異なるゴム層とすることもできる。また、トレッド5を構成するトレッドゴムは、タイヤ幅方向に異なる複数のゴム層で形成されていても良い。上記の複数のゴム層としては正接損失、モジュラス、硬度、ガラス転移温度、材質等が異なっているものを使用することができる。また、複数のゴム層のタイヤ幅方向の幅の比率は、タイヤ径方向に変化していてもよく、また周方向主溝近傍のみ、接地端近傍のみ、ショルダー陸部のみ、センター陸部のみといった限定された一部の領域のみをその周囲とは異なるゴム層とすることもできる。
【0027】
図示例では、このタイヤ1は、タイヤ周方向に延びる周方向主溝6を3本有している。具体的には、タイヤ赤道面CL上に1本の周方向主溝6を有し、そのタイヤ幅方向両側のショルダー領域に1本ずつの周方向主溝6を有している。周方向主溝6の溝幅(開口幅)は、特に限定しないが、例えば2mm~5mmとすることができる。本発明においては、周方向主溝6の本数や配置は、特に上記の例には限定されない。また、タイヤ幅方向に延びる幅方向溝や、接地時に閉塞するサイプ等も適宜設けることができる。
【0028】
本実施形態のタイヤ1は、タイヤの内面7(単に、タイヤ内面7ともいう)にインナーライナー8を有している。インナーライナー8の厚さは、1.5mm~2.8mm程度とすることが好ましい。80~100Hzの車内騒音を効果的に低減することができるからである。インナーライナー8を構成するゴム組成物の空気透過係数は、1.0×10-14cc・cm/(cm2・s・cmHg)以上、6.5×10-10cc・cm/(cm2・s・cmHg)以下とすることが好ましい。
【0029】
ここで、
図2に示すように、このタイヤは、通信装置9を備えている。通信装置9は、タイヤ1の外部の所定の装置と無線通信可能な構成であればよく、通信装置9の構成は特に限定されるものではない。本実施形態では、通信装置9は、RFタグである。RFタグは、RFID(Radio Frequency Identification)タグともいう。通信装置9は、例えば、制御部及び記憶部を構成するICチップと、ICチップに接続される1つ以上のアンテナと、を備える構成としてもよい。例えば、通信装置9は、直線状、波状、又は螺旋状に延びる2つのアンテナがICチップから互いに反対方向に延びるように設けられた、全体として長手状の形状を有していてもよい。また、ICチップは、1つ以上のアンテナで受信する電磁波により発生する誘電起電力により動作してもよい。すなわち、通信装置9は、パッシブ型の通信装置であってもよい。あるいは、通信装置9は、電池を更に備え、自らの電力により電磁波を発生して通信可能であってもよい。すなわち、通信装置9は、アクティブ型の通信装置であってもよい。なお、通信装置9は、被覆ゴムによって被覆されていてもよい。通信装置9は、RFタグ以外にも、センサ(例えばタイヤの温度を検知可能なセンサ)等とすることもできる。
【0030】
ここで、
図2に示すように、上記基準状態におけるタイヤ幅方向断面視において、接地端Eを通りタイヤ径方向に延びる仮想線(図示上下方向に延びる破線)と、タイヤ最大幅位置Pを通りタイヤ幅方向に延びる仮想線(図示左右方向に延びる二点鎖線)と、で挟まれるタイヤ部分に、通信装置9が設けられている。本実施形態では、通信装置9は、タイヤの内部に設けられている(内蔵されている)が、タイヤの内面(インナーライナーを有する場合はその内面)に(例えば接着剤等を用いて)接着することもできる。
以下、本実施形態の乗用車用空気入りラジアルタイヤの作用効果について説明する。
【0031】
まず、本実施形態の乗用車用空気入りラジアルタイヤは、タイヤの断面幅SWが165(mm)未満であり、タイヤの断面幅SWと外径ODとの比SW/ODは、0.26以下である(あるいは、関係式、OD(mm)≧-0.0187×SW(mm)2+9.15×SW(mm)-380(mm)、を満たす)。これにより、上述のように、タイヤの燃費性を向上させることができる。ところで、上記SW及びODが、上記のような関係であ
る、狭幅・大径タイヤでは、タイヤのリング剛性が高く、接地端Eを通りタイヤ径方向に延びる仮想線とタイヤ最大幅位置Pを通りタイヤ幅方向に延びる仮想線とで挟まれる領域の変形が、広幅、扁平タイヤと比較して小さくなる。このため、当該領域に通信装置9を設けても大きな変形がかかりにくく、通信装置9の耐久性を向上させることができる。また、上記領域に通信装置9が位置していることにより、タイヤ側面からの通信性が特に良好なものとなる。
このように、本実施形態の乗用車用空気入りラジアルタイヤによれば、通信装置の耐久性と通信性とを両立させることができる。
【0032】
ここで、通信装置9は、1層以上のベルト層のうちタイヤ幅方向の幅が最大である最大幅ベルト層(図示例では、ベルト層4a)の端よりもタイヤ幅方向外側、且つ、1層以上のベルト層のうちタイヤ径方向最内側のベルト層(図示例では、ベルト層4a)よりもタイヤ径方向外側に設けられていることが好ましい。上記の位置(いわゆるバットレス部)は、通信性やリトレッド時にメンテナンスが容易となる観点からは通信装置9の配置位置として好ましいが、通常は、タイヤの変形の大きい箇所であり、耐久性の課題がある。本例では、上記断面幅SWと上記外径ODとが上記の関係を満たすため、タイヤのリング剛性が高く、上記の位置(いわゆるバットレス部)に通信装置9を設けても通信装置9の耐久性を向上させることができる。特に、タイヤ側方からの通信性と路面からの通信性との両方に優れている。
【0033】
図3は、タイヤ最大幅位置付近の拡大図である。タイヤ最大幅位置Pの近傍(例えば、タイヤ最大幅位置からタイヤ外表面のペリフェリに沿ってタイヤ径方向外側に0~5mmの範囲)に凹部10を設け、通信装置9は、凹部10に埋設することも好ましい。この構成によれば、(凹部を設けずに)タイヤ内部に埋設する場合よりも通信性を向上させることができる。なお、凹部10は、他にも例えば、1層以上のベルト層のうちタイヤ幅方向の幅が最大である最大幅ベルト層(図示例では、ベルト層4a)の端よりもタイヤ幅方向外側、且つ、1層以上のベルト層のうちタイヤ径方向最内側のベルト層(図示例では、ベルト層4a)よりもタイヤ径方向外側に設けることもできる。
【0034】
<タイヤ・リム組立体>
ここでのタイヤ・リム組立体は、上記の乗用車用空気入りラジアルタイヤをリムに組み込んでなるものである。当該タイヤ・リム組立体によれば、上記乗用車用空気入りラジアルタイヤについて説明したのと同様の作用効果を得ることができる。このとき、タイヤ・リム組立体の内圧は、200kPa以上であることが好ましく、220kPa以上であることがより好ましく、280kPa以上であることがさらに好ましい。高内圧とすることで転がり抵抗をより低減することができるからである。一方で、タイヤ・リム組立体の内圧は、350kPa以下であることが好ましい。乗り心地性を向上させることができるからである。
【0035】
<乗用車用空気入りラジアルタイヤの使用方法>
ここでの乗用車用空気入りラジアルタイヤの使用方法は、上記乗用車用空気入りラジアルタイヤを使用する。当該乗用車用空気入りラジアルタイヤの使用方法によれば、上記乗用車用空気入りラジアルタイヤについて説明したのと同様の作用効果を得ることができる。このとき、内圧を200kPa以上として使用することが好ましく、220kPa以上として使用することがより好ましく、280kPa以上として使用することがさらに好ましい。高内圧とすることで転がり抵抗をより低減することができるからである。一方で、内圧を350kPa以下として使用することが好ましい。乗り心地性を向上させることができるからである。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定され
るものではない。例えば、通信装置9は、接地端を通りタイヤ径方向に延びる仮想線とタイヤ最大幅位置を通りタイヤ幅方向に延びる仮想線とで挟まれるタイヤ部分のうち、1層以上のベルト層うちタイヤ径方向最内側のベルト層よりもタイヤ幅方向内側の領域に設けることもできる。この場合、特にタイヤ側方からの通信性が高い。また、タイヤ変形が特に小さく通信装置9の耐久性をより一層向上させることができる。また、図示例では、タイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向両側の半部に1つずつの通信装置を設けているが、一方の半部のみに設けても良く、あるいは、通信装置9の個数を複数としても良い。
【符号の説明】
【0037】
1:乗用車用空気入りラジアルタイヤ(タイヤ)、
2:ビード部、 2a:ビードコア、 2b:ビードフィラ、 3:カーカス、
4:ベルト、 4a、4b:ベルト層、 5:トレッド、
6:周方向主溝、 7:タイヤ内面、 8:インナーライナー、
9:通信装置、 10:凹部、
CL:タイヤ赤道面、 E:接地端