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特許7657728フレグランスをディスペンスする発散基材及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-28
(45)【発行日】2025-04-07
(54)【発明の名称】フレグランスをディスペンスする発散基材及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/12 20060101AFI20250331BHJP
   B27K 5/00 20060101ALI20250331BHJP
【FI】
A61L9/12
B27K5/00 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021561689
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2020084320
(87)【国際公開番号】W WO2021110770
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-12-01
(31)【優先権主張番号】62/943,325
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジャーメイン ダンバー
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド アリソン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス オレーリー
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-139319(JP,A)
【文献】特開2014-201852(JP,A)
【文献】特開2005-224336(JP,A)
【文献】国際公開第2005/076770(WO,A2)
【文献】特開2005-058550(JP,A)
【文献】特表2013-526906(JP,A)
【文献】特表2001-519678(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0147969(US,A1)
【文献】国際公開第2018/191181(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/12
B27K 5/00
A01M 1/20
A45D 34/02
B65D 83/00、85/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレグランスディスペンス装置であって、
前記フレグランスディスペンス装置が、
a)開口端を有するリザーバー、ここで、前記リザーバーは、液状組成物の量を含有する;及び
b)化学処理されたセルロース系材料を含む発散基材、ここで、前記発散基材は、前記リザーバーの前記開口端に接触する第1の端部、及び前記液状組成物と接触している第2の端部を有する;
を含み、
ここで、前記化学処理が、リグニン及びヘミセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の成分を、前記セルロース系材料から除去する化学処理であり、
前記の化学処理されたセルロース系材料にさらなる処理を機械的なホットプレスにより行って、前記の化学処理されたセルロース系材料の密度を増大させる
フレグランスディスペンス装置。
【請求項2】
前記のリグニン及びヘミセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の成分が、前記発散基材の柔軟性を増大させるのに十分な量で除去される、請求項1に記載のフレグランスディスペンス装置。
【請求項3】
前記のリグニン及びヘミセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の成分が、前記発散基材の多孔度を増大させるのに十分な量で除去される、請求項1に記載のフレグランスディスペンス装置。
【請求項4】
前記の多孔度の増大が、前記液状組成物が前記発散基材の前記の第1の端部中へ吸収される速度を増大させる、請求項3に記載のフレグランスディスペンス装置。
【請求項5】
前記の多孔度の増大が、前記液状組成物の周囲環境中への拡散速度を増大させる、請求項3に記載のフレグランスディスペンス装置。
【請求項6】
前記の多孔度の増加が、前記発散基材の表面積対体積比を増大させる、請求項3に記載のフレグランスディスペンス装置。
【請求項7】
前記発散基材の増大した表面積対体積比が、前記液状組成物が前記発散基材の前記の第1の端部中へ吸収される速度を増大させる、請求項6に記載のフレグランスディスペンス装置。
【請求項8】
前記発散基材の増大した表面積対体積比が、前記液状組成物の周囲環境中への拡散速度を増大させる、請求項6に記載のフレグランスディスペンス装置。
【請求項9】
前記さらなる処理が、前記の化学処理されたセルロース系材料の密度を3倍に増加させる、請求項に記載のフレグランスディスペンス装置。
【請求項10】
前記液状組成物が、フレグランス材料組成物、昆虫忌避組成物、脱臭組成物、及びそれらの組合せからなる群から選択される組成物である、請求項1に記載のフレグランスディスペンス装置。
【請求項11】
請求項1に記載のフレグランスディスペンス装置を準備することを含む、液状組成物を周囲環境に送達する方法。
【請求項12】
化学処理され、かつ機械的にホットプレスされたセルロース系材料を含む発散基材であって、前記発散基材が、第1の端部及び液状組成物に接触する第2の端部を有し、ここで、前記化学処理が、リグニン及びヘミセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の成分を、前記セルロース系材料から除去する化学処理である、発散基材。
【請求項13】
請求項12に記載の発散基材と、請求項12に記載の発散基材と直接接触している溶融性燃料とを含む、ろうそく。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、香粧品の分野に関する。特に、本開示は、フレグランスをディスペンスする発散基材及びフレグランスオイル又は液状フレグランス材料を周囲環境中へディスペンスするための関連した方法を提供する。
【0002】
背景
毛管作用に基づく典型的な発散基材、例えば、リードディフューザー等は、フレグランスオイル又は液状フレグランス材料を拡散により周囲環境に送達する。例えば、発散基材の下方部分は、フレグランスオイルのリザーバー中で浸漬されていてよく、かつ該発散基材の上方部分は、該周囲環境に露出されていてよい。該フレグランスオイルは、該発散基材の下方部分中へ吸収されることができ、毛管作用によって該上方部分に移動する。このようにして、該発散基材の長さ全体が、フレグランスオイルで飽和されている。該発散基材が飽和されると、該飽和過程中のある程度まで、該フレグランスオイルが、該発散基材から放出され、該周囲環境中へ拡散することで、その香りが届けられる。
【0003】
該発散基材としては、乾燥させた場合に、フレグランスオイル又は液状フレグランス材料を吸収、吸上、及び拡散させることができる天然材料、例えば、木材、ラタン、ヤナギ、又はこれらに類似する植物などが含まれうる。天然材料の制限は、吸上速度(該フレグランスオイル又は液状フレグランス材料が、該発散基材の下方部分中へ吸収され、かつ毛管作用によって該上方部分に移動する速度)を含む。その他の制限は、該フレグランスオイル又は液状フレグランス材料の該周囲環境中への拡散速度を含む。このパラメーターは、該発散基材の表面積対体積比により制御される。天然材料を含む発散基材は典型的に、低い表面積対体積比を有する。付加的な制限は、該発散基材の柔軟性の欠如を含む。その他の制限は、該発散基材の目詰まりを含む。
【0004】
したがって、該フレグランスオイル又は液状フレグランス材料について改善された吸上速度及び/又は拡散速度を有する天然材料を含む発散基材の必要性が依然として存在する。
【0005】
概要
本明細書において提示される一態様は、フレグランスディスペンス装置を提供し、
ここで、該フレグランスディスペンス装置が、
a)開口端を有するリザーバー、ここで、該リザーバーは、液状組成物の量を含有する;及び
b)化学処理されたセルロース系材料を含む発散基材、ここで、該発散基材は、該リザーバーの該開口端に接触する第1の端部、及び該液状組成物と接触している第2の端部を有する;
を含み、
ここで、該化学処理が、リグニン及びヘミセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の成分を、該セルロース系材料から除去する化学処理である。
【0006】
一態様において、前記のリグニン及びヘミセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の成分が、該発散基材の柔軟性を増大させるのに十分な量で除去される。
【0007】
一態様において、前記のリグニン及びヘミセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の成分が、該発散基材の多孔度を増大させるのに十分な量で除去される。
【0008】
一態様において、前記の多孔度の増大が、該液状組成物が該発散基材の第1の端部中へ吸収される速度を増大させる。
【0009】
一態様において、前記の多孔度の増大が、該液状組成物の該周囲環境中への拡散速度を増大させる。
【0010】
一態様において、前記の多孔度の増大が、該発散基材の表面積対体積比を増大させる。
【0011】
一態様において、該発散基材の増大した表面積対体積比が、該液状組成物が該発散基材の第1の端部中へ吸収される速度を増大させる。
【0012】
一態様において、該発散基材の増大した表面積対体積比が、該フレグランスオイルの該周囲環境中への拡散速度を増大させる。
【0013】
一態様において、前記の化学処理されたセルロース系材料にさらなる処理が行われ、前記の化学処理されたセルロース系材料の密度を増大させる。
【0014】
一態様において、前記さらなる処理は、機械的なホットプレスを含む。
【0015】
一態様において、前記さらなる処理は、前記の化学処理されたセルロース系材料の密度を3倍に増加させる。
【0016】
一態様において、該液状組成物は、次のものからなる群から選択される組成物である:フレグランス材料組成物、昆虫忌避組成物、脱臭組成物、及びそれらの組合せ。
【0017】
本明細書において提示される一態様は、本明細書において提示される態様によるフレグランスディスペンス装置を準備することを含む、液状組成物を周囲環境に送達する方法を提供する。
【0018】
本明細書において提示される一態様は、化学処理されたセルロース系材料を含む発散基材を提供し、該発散基材は、第1の端部及び液状組成物に接触する第2の端部を有し;
ここで、該化学処理が、リグニン及びヘミセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の成分を、該セルロース系材料から除去する化学処理である。
【0019】
本明細書において提示される一態様は、本明細書において提示されるいくつかの態様による発散基材、及び該発散基材と直接接触している溶融性燃料を含むろうそくを提供する。
【0020】
本明細書は、特に本発明を指摘し、かつ明確に特許の保護を請求する請求の範囲で締めくくられるが、本発明は、添付の図面の以下の説明からよりいっそう理解されるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】木材セルロース系材料(左)及び化学処理され、かつ機械的にホットプレスされた木材セルロース系材料(右)の走査型電子顕微鏡写真を示す。
図2】木材セルロース系材料(一番左)、化学処理された木材セルロース系材料(左から二番目)、機械的にホットプレスされた木材セルロース系材料(右から二番目)、及び化学処理され、かつ機械的にホットプレスされた木材セルロース系材料(一番右)の軸圧縮強さを示す。
図3】(左)は、木材を含む発散基材を有するフレグランス送達装置からの液状フレグランス組成物の質量損失(四角)及び化学処理され、かつ機械的にホットプレスされた木材セルロース系材料を含む発散基材を有するフレグランス送達装置からの液状フレグランス組成物の質量損失(三角)を示す。(右)は、木材を含む発散基材を有するフレグランス送達装置からの液状フレグランス組成物の蒸発速度(左の棒)及び化学処理され、かつ機械的にホットプレスされた木材セルロース系材料を含む発散基材を有するフレグランス送達装置からの液状フレグランス組成物の蒸発速度(右の棒)を示す。
図4】木材を含む発散基材を有するフレグランス送達装置中に3日後に残っている液状フレグランス組成物の量(左)及び化学処理され、かつ機械的にホットプレスされた木材セルロース系材料を含む発散基材を有するフレグランス送達装置中に残っている液状フレグランス組成物の量(右)を示す。
【0022】
詳細な説明
以下の説明において、実例として示される、実施されることができる特別な実施態様が参照される。これらの実施態様は、詳細に記載されて、当業者が本明細書に記載される発明を実施するのを可能にし、かつ他の実施態様が、利用されることができ、かつ論理的な変更が、本明細書において提示される態様の範囲から逸脱することなく、なされうることが理解されるべきである。したがって、以下の実施態様の例の説明は、限定された意味で取られるべきではなく、かつ本明細書において提示される多様な態様の範囲は、添付の特許請求の範囲により定義される。
【0023】
要約書は、37 C.F.R. §1.72(b)に従い、読者が技術的開示の性質及び要旨を素早く確かめることができるように提供される。要約書は、請求の範囲の範囲又は意味を解釈又は限定するのに使用されないという条件で提出される。
【0024】
本明細書に開示される方法により処理されているセルロース系材料は、発散基材として使用される場合に、従来の未処理のセルロース系材料に比べて、改善された吸上速度及び/又は拡散速度を提供し、かつ改善された構造特性を有することができ、目詰まりが生じにくくなる。何ら特別な理論に限定されることを意図するものではないが、本明細書に開示される方法によるセルロース系材料の処理は、該発散基材を通る該液状組成物の流れを増大させて、該吸上速度及び/又は該拡散速度の改善を生じ、それにより周囲環境への該液状組成物の送達を増大させる。一部の態様において、本明細書に開示される方法によるセルロース系材料の処理は、該発散基材の剛性を低下させる。
【0025】
本明細書において用いられる場合には、用語“発散基材”は、フレグランスオイル又は液状フレグランス材料を拡散により周囲環境に送達するように構成された多孔質の基材をいう。
【0026】
図1~4を参照して、一部の態様において、該発散基材は、化学処理されて、リグニン及びヘミセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の成分が該セルロース系材料から除去されたセルロース系材料を含む。何ら特別な理論に限定されることを意図するものではないが、前記のリグニン及びヘミセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の成分の除去は、該セルロース系材料のセルロースナノファイバー間のナノ孔を生み出し、それによりルーメン構造を生み出し、該吸上速度及び/又は該拡散速度の改善を生じ、それにより周囲環境への該液状組成物の送達を増大させる。
【0027】
前記のリグニン及びヘミセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の成分は、該セルロース系材料を、沸騰しているアルカリ溶液中にリグニン及びヘミセルロースからなる群から選択される前記の少なくとも1種の成分を除去するのに十分な時間にわたって浸漬し、引き続き、該アルカリ溶液を除去する少なくとも1つの洗浄工程により、該セルロース系材料から除去することができる。
【0028】
一部の態様において、該アルカリ溶液は、2.5M NaOH及び0.4M NaSOを含む。別の態様において、該アルカリ溶液はアンモニアである。
【0029】
一部の態様において、前記の十分な時間は7時間であり、別の態様においては6時間であり、別の態様においては5時間であり、別の態様においては4時間であり、別の態様においては3時間であり、別の態様においては2時間であり、別の態様においては1時間である。
【0030】
一部の態様において、前記の十分な時間は、前記のリグニン及びヘミセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の成分100%を除去する。別の態様においては90%、別の態様においては80%、別の態様においては70%、別の態様においては60%、別の態様においては50%、別の態様においては40%、別の態様においては30%、別の態様においては20%、または、別の態様においては10%を除去する。
【0031】
一部の態様において、前記のリグニン及びヘミセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の成分は、該発散基材の柔軟性を増大させるのに十分な量で除去される。
【0032】
一部の態様において、前記のリグニン及びヘミセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の成分は、該セルロース系材料の色を変化させるのに十分な量で除去される。
【0033】
一部の態様において、前記のリグニン及びヘミセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の成分は、該発散基材の多孔度を増大させるのに十分な量で除去される。
【0034】
一部の態様において、前記の多孔度の増大が、該液状組成物が該発散基材の第1の端部中へ吸収される速度を増大させる。
【0035】
一部の態様において、前記の多孔度の増大が、該液状組成物の該周囲環境中への拡散速度を増大させる。
【0036】
一部の態様において、前記の多孔度の増大が、該発散基材の表面積対体積比を増大させる。
【0037】
一部の態様において、該発散基材の増大した表面積対体積比が、該液状組成物が該発散基材の第1の端部中へ吸収される速度を増大させる。
【0038】
一部の態様において、該発散基材の増大した表面積対体積比が、該液状組成物の該周囲環境中への拡散速度を増大させる。
【0039】
前記のリグニン及びヘミセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の成分を該セルロース系材料から除去するのに適した方法の例は、Song et al., Nature 554, pg 224-228 (2018)に開示された方法を含む。
【0040】
前記のリグニン及びヘミセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の成分を該セルロース系材料から除去するのに適した方法の付加的な例は、Paril et al., European Journal of Wood and Wood Products, 72, pg 583-591 (2014)に開示された方法を含む。
【0041】
一部の態様において、前記の化学処理されたセルロース系材料にさらなる処理が行われ、前記の化学処理されたセルロース系材料の密度を増大させる。
【0042】
一部の態様において、前記のさらなる処理は、機械的なホットプレスを含む。
【0043】
一部の態様において、前記のさらなる処理は、前記の化学処理されたセルロース系材料の密度を3倍に増加させる。
【0044】
前記の化学処理されたセルロース系材料を機械的にホットプレスするのに適した方法の例は、Song et al., Nature 554, pg 224-228 (2018)に開示された方法を含む。
【0045】
前記の化学処理されたセルロース系材料を機械的にホットプレスするのに適した方法の付加的な例は、Sandberg et al., Wood Material Science and Engineering 8, pg 64-88 (2013)に開示された方法を含む。
【0046】
前記の化学処理されたセルロース系材料を機械的にホットプレスするのに適した方法の付加的な例は、Fang et al., European Journal of Wood and Wood Products, 70, pg 155-163 (2012)に開示された方法を含む。
【0047】
前記の化学処理されたセルロース系材料を機械的にホットプレスするのに適した方法の付加的な例は、Paril et al., European Journal of Wood and Wood Products, 72, pg 583-591 (2014)に開示された方法を含む。
【0048】
前記の化学処理されたセルロース系材料を機械的にホットプレスするのに適した方法の付加的な例は、Navi et al., MRS Bulletin, 29, pg 332-336 (2004)に開示された方法を含む。
【0049】
前記の化学処理されたセルロース系材料を機械的にホットプレスするのに適した方法の付加的な例は、Kutnar et al., Wood Science and Technology 46, pg 73-88 (2012)に開示された方法を含む。
【0050】
図4を参照して、本明細書において提示されるものは、化学処理されたセルロース系材料を含む発散基材を提供し、該発散基材が、第1の端部及び液状組成物に接触する第2の端部を有し;
ここで、該化学処理が、リグニン及びヘミセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の成分を、該セルロース系材料から除去する化学処理である。
【0051】
図4を参照して、本明細書において提示される一態様は、フレグランスディスペンス装置を提供し、
ここで、該フレグランスディスペンス装置が、
a)開口端を有するリザーバー、ここで、該リザーバーは、液状組成物の量を有する;及び
b)化学処理されたセルロース系材料を含む発散基材、ここで、該発散基材は、該リザーバーの該開口端に接触する第1の端部、及び該液状組成物と接触している第2の端部を有する;
を含み、
ここで、該化学処理が、リグニン及びヘミセルロースからなる群から選択される少なくとも1種の成分を、該セルロース系材料から除去する化学処理である。
【0052】
一部の態様において、本開示は、化学処理されたセルロース系材料を含む発散基材、及び化学処理されたセルロース系材料を含む発散基材と直接接触している溶融性燃料を含むろうそくを提供する。一態様において、該溶融性燃料はろうを含む。
【0053】
本明細書において用いられる場合には、用語“液状組成物”は、少なくとも部分的に揮発性である、すなわち蒸発することができ、かつ利益を該周囲環境に付与することができる液状組成物をいう。これは、実質的に、付臭剤材料を含む非水の液体であってよく、又はある一定の量の水を含有してもよい。これは、溶融されたろうであってよい。
【0054】
一部の態様において、該液状組成物は、少なくとも1種の活性成分を含有する。該成分は、利益を周囲環境に付与することができ、また、前記の活性な揮発性材料に有益でありうる任意の成分を伴ってもよい。言い換えれば、該液状組成物は活性な揮発性材料を含有し、該活性な揮発性材料は、少なくとも1種の成分、及び任意に溶剤、増粘剤、酸化防止剤、色素、苦味剤及びUV抑制剤からなる群から選択される1種以上の成分を含む。
【0055】
前記の活性な揮発性材料として、例えば、香料を使用することができる。その他の適した活性な揮発性材料は、脱臭剤又は空間殺菌剤又は昆虫忌避剤、又は知覚可能で所望する利益を、それが拡散される空気の品質に付与することができる任意のその他の活性材料であってよい。
【0056】
一態様において、前記の活性な揮発性材料は、香料である。香料として、香粧品において現在使用される任意の成分又は成分の混合物、すなわち 周囲の空気の臭気を変更又は付与することを意味する、付香作用を及ぼすことが可能な任意の成分又は成分の混合物を使用することができる。これは、多種多様な悪臭、例えば体臭、タバコ臭、台所又は浴室の悪臭等を低下又は抑制することができる悪臭中和組成物も、“香料”、“フレグランス”又は“付香組成物”の定義に含まれるものとして本明細書では理解されることを意味する。しばしば、そのような付香組成物は、天然又は合成の由来の成分の多少複雑な混合物である。該成分の性質及び種類は、ここではより詳細な説明を保証しないが、いずれにせよ網羅できるものではなく、当業者は、その一般的知識に基づき、使用意図、用途、所望の感覚刺激効果、脱臭、付香、空間殺菌又はその他に従ってそれらを選択することができる。一般的に言えば、これらの付香成分は、アルコール、アルデヒド、ケテン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペン炭化水素、含窒素又は含硫黄の複素環式化合物、及び天然由来又は合成由来の精油、のような多種多様な化学物質区分に属する。これらの成分の多くは、いずれにせよ、参考書、例えばS. Arcadeによる著書, Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, N.J., USA、又はそのより新しい版、又は類似の種類の他の著作物、並びに香粧品及び悪臭中和の分野における豊富な特許文献に列挙されている。多くは、悪臭中和及び/又は抗菌活性を有することが公知であるので、周囲の空気に付香する、ひいては心地よい香りを付与することができることに加えて、それらは、あらゆる悪臭(すなわち不快臭)を浄化して空間殺菌すること、及び/又は除去することにも役立つ。
【0057】
天然油、例えばラベンダー、セダー、レモン及びその他の精油及び抽出物が、本明細書に開示される装置において使用されてもよい。
【0058】
本発明の装置により発揮することができる付香効果についての特定の言及は、上述したが、同じ原理は、脱臭又は空間殺菌する蒸気の拡散用の類似の装置にも当てはまり、該香料が、脱臭組成物、抗菌剤、殺虫剤、昆虫忌避剤又は昆虫誘引剤により置き換えられることによって、同じ原理がいわゆる虫除け装置にも当てはまる。用語“空間殺菌する蒸気”は、ここでは、観測者を取り囲む空気の受容度を高めることができる物質の蒸気だけではなく、ある一定の種の昆虫に対して、例えばイエバエ又は蚊に対して誘引剤又は忌避剤効果を発揮しうる物質や、殺菌作用又は静菌活性を有しうる物質のことも指す用語である。そのような薬剤の混合物も使用できることは言うまでもない。
【0059】
該活性組成物中の活性な揮発性材料の全量は、該活性組成物の重量の20%~100%で含まれていてよく、又は選択的に、30%~70%で含まれていてよい。
【0060】
上記で前もって論じたように、該活性組成物は、例えば、溶剤、増粘剤、酸化防止剤、色素、苦味剤及びUV抑制剤として作用する、一部の任意の成分を含有していてもよい。
【0061】
有用なUV抑制剤成分の限定されない例として、ベンゾフェノン類、ジフェニルアクリレート類又はシンナメート類、例えば商品名UVINUL(登録商標)(出所:BASF AG)で入手可能なものを挙げることができる。
【0062】
該活性組成物中に存在するUV抑制剤の全量は、0.0%~0.5%の範囲にわたっていてよく、又は選択的に、0.01%~0.4%の範囲にわたっていてよく、ここで、該パーセンテージは、該活性組成物の全重量を基準としている。
【0063】
1種以上の溶剤の存在は、単一相の液体を有する及び/又は該活性材料の該周囲環境中への蒸発のスピードを調整するのに有用でありうる。該溶剤は、イソパラフィン、パラフィン、炭化水素、すなわちグリコール、グリコールエーテル、グリコールエーテルエステル、エステル又はケトンのファミリーに属しうる。
【0064】
適した商業的に入手可能な溶剤の例は、商品名ISOPAR(登録商標) H、J、K、L、M、P又はV(イソパラフィン;出所:Exxon Chemical)、NORPAR(登録商標) 12又は15(パラフィン;出所:Exxon Chemical)、EXXSOL(登録商標) D 155/170、D 40、D 180/200、D 60、D 70、D 80、D 100、D 110又はD 120(脱芳香族化炭化水素;出所:Exxon Chemical)、DOWANOL(登録商標) PM、DPM、TPM、PnB、DPnB、TPnB、PnP又はDPnP(グリコールエーテル;出所:Dow Chemical Company)、EASTMAN(登録商標) EP、EB、EEH、DM、DE、DP又はDB(グリコールエーテル;出所:Eastman Chemical Company)、DOWANOL(登録商標) PMA又はPGDA(グリコールエーテルエステル;出所:Dow Chemical Company)又はEASTMAN(登録商標) EB アセテート、EASTMAN(登録商標) DE アセテート、EASTMAN(登録商標) DB アセテート、EASTMAN(登録商標) EEP(全てグリコールエーテルエステル;全て出所:Eastman Chemical Company)、又はさらに、溶剤MMBとしても公知であり、かつ多様な供給者から入手可能である3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、で公知である。
【0065】
本発明に有用な溶剤のその他の例は、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、イソプロピルミリステート、ジエチルフタレート、2-エチルヘキシルアセテート、メチルn-アミルケトン又はジイソブチルケトンである。
【0066】
該活性組成物中に存在するそのような溶剤の全量は、0.0%~80%の範囲にわたっていてよく、又は選択的に、30%~70%の範囲にわたっていてよく、ここで、該パーセンテージは、該活性組成物の重量を基準としている。一部の態様において、付香組成物は、少なくとも30重量%の香料及びそのような任意の溶剤70重量%以下を含む。
【0067】
一部の態様において、該活性組成物の全重量の少なくとも60%は、4Pa~270Paに含まれる蒸気圧を有する成分でできており、該蒸気圧は、20℃、及び760mmHgの圧力で測定される。該活性組成物の配合物において記載される要件は、比較的一定の組成が、装置の寿命にわたって維持されること及び該活性組成物が、製品の寿命中に比較的定常的な速度で蒸発することを保証する。
【0068】
一部の態様において、該活性組成物の全重量の少なくとも80%が、4Pa~270Paに含まれる蒸気圧を有する成分でできている。
【0069】
有用な酸化防止剤成分の限定されない例として、立体障害アミン、すなわち2,2,6,6-テトラメチルピペリジンの誘導体、例えば商品名UVINUL(登録商標)(出所:BASF AG)又はTINUVIN(登録商標)(出所:Ciba Specialty Chemicals)で公知のもの、並びにアルキル化ヒドロキシアレーン誘導体、例えばブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を挙げることができる。
【0070】
該活性組成物中に存在する酸化防止剤の全量は、0.0%~10%の範囲にわたっていてよく、又は選択的に、1%~4%の範囲にわたっていてよく、ここで、該パーセンテージは、該活性組成物の重量を基準としている。
【0071】
色素は、該活性組成物のその他の任意の成分である。適した色素は、油溶性であり、かつThe Society of Dyers and Colouristにより発行されるColour Index Internationalに見出すことができる。適した色素の限定されない例は、アントラキノン、メチン、アゾ、トリアリールメタン、トリフェニルメタン、アジン、アミノケトン、スピロオキサジン、チオキサンテン、フタロシアニン、ペリレン、ベンゾピラン又はペリノンファミリーの誘導体である。
【0072】
商業的に入手可能であるそのような色素の例は、商品名SANDOPLAST(登録商標) Violet RSB、Violet FBL、Green GSB、Blue 2B又はSAVINYL(登録商標) Blue RS(全てアントラキノン誘導体;出所:Clariant Huningue S.A.)、OILSOL(登録商標) Blue DB(アントラキノン;出所:Morton International Ltd.)、SANDOPLAST(登録商標) Yellow 3G(メチン;出所:Clariant Huningue S.A.)、SAVINYL(登録商標) Scarlet RLS(アゾ金属錯体;出所:Clariant Huningue S.A.)、OILSOL(登録商標) Yellow SEG(モノアゾ;出所:Morton International Ltd.)、FAT ORANGE(登録商標) R(モノアゾ;出所:Hoechst AG)、FAT RED(登録商標) 5B(ジアゾ;出所:Hoechst AG)、NEOZAPON(登録商標) Blue 807(フタロシアニン;出所:BASF AG)、FLUOROL(登録商標) Green Golden(ペリレン;出所:BASF AG)で公知である。
【0073】
該活性組成物中に存在する色素の全量は、0.0%~0.5%の範囲にわたっていてよく、又は選択的に、0.005%~0.05%の範囲にわたっていてよく、ここで、該パーセンテージは、該活性組成物の重量を基準としている。
【0074】
苦味剤の存在は、その製品をまずくして、殊に小さい子供により、該活性組成物がより摂取されなさそうにするために望ましいことがある。限定されない例として、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、メチルn-ブチルケトン又はさらにデナトニウム塩、例えば商標BITREX(商標)(出所:Mac Farlan Smith Ltd.)でも公知の安息香酸デナトニウムを挙げることができる。
【0075】
該苦味剤は、該活性組成物中に、全量で0.0%~5%で含まれて、配合されてよく、ここで、該パーセンテージは、該活性組成物の全重量を基準としている。BITREX(商標)の場合に該量は、該活性組成物の全重量の0.0%~0.1%、好ましくは10~500ppmで含まれていてよいのに対し、上記のその他の苦味剤は、存在する場合には、典型的に0.5~5重量%の量で使用される。
【0076】
一部の態様において、該液状組成物は、次のものからなる群から選択される組成物である:フレグランス材料組成物、昆虫忌避組成物、脱臭組成物、及びそれらの組合せ。
【0077】
本明細書において提示される一態様は、本明細書において提示される態様によるフレグランスディスペンス装置を準備することを含む、液状組成物を周囲環境に送達する方法を提供する。
【0078】
本発明は、以下の例に最良に説明されるが、これらに限定されない。
【実施例
【0079】
例1:本明細書において提示される態様によるフレグランスディスペンス装置
第1工程において、界面活性剤-水ベースを、以下の第1表に記載された配合物に基づいて準備した。該成分の全てを、ビーカー中で一緒に混合し、室温で静かに撹拌した。それらが完全に溶解した後に、澄明なミセル溶液が形成された。
【0080】
第1表 - 本発明による界面活性剤-水ベース予備配合物
【表1】
1) ジオクチルスルホスクシネートナトリウム塩;出所:Cytec Industries, Inc.
2) 20EOでエトキシル化されたソルビトールのモノオレエート;出所:Lonza Inc.
3) 20EOでエトキシル化されたソルビトールのモノラウレート;出所:Lonza Inc.
4) PPG-26ブテス-26&PEG-40水素化ひまし油&水;出所:LWR Inc.
【0081】
第2工程において、エアフレッシュナー組成物が、第2表に示された処方に従って得られた。上記の界面活性剤-水ベース、香料ベース及び可溶化助剤成分を、ビーカー中で一緒に混合した。この混合物を、マグネチックバースターラーによって周囲温度で数分間静かに撹拌した。半透明の液晶相が形成した。次の工程において、水希釈により、澄明な生成物が直ちに形成された。
【0082】
第2表 - 本発明による液状配合物
【表2】
1) PURE CITRUS 163641;出所:Firmenich SA。
2) ピロリドンカルボン酸ナトリウム50%水溶液;出所:Ajinimoto Inc.
【0083】
この手順に従って、0.84の界面活性剤/香料比を有する香料配合物が得られた。
【0084】
ラタンウィック;又は化学処理して、リグニン及びヘミセルロースからなる群から選択される前記の少なくとも1種の成分を除去し、引き続きSong et al., Nature 554, pg 224-228 (2018)に記載された方法による機械的なホットプレスにより処理して、前記の化学処理されたセルロース系材料の密度を増大させたラタンウィック;のいずれかを有するフレグランスディスペンス装置に、上記の香料配合物を添加した。
【0085】
図3(左)は、ラタンを含むウィックを有するフレグランス送達装置からの該液状フレグランス組成物の質量損失(四角)及び化学処理され、かつ機械的にホットプレスされたラタンを含むウィックを有するフレグランス送達装置からの液状フレグランス組成物の質量損失(三角)を示す。
【0086】
図3(右)は、ラタンを含むウィックを有するフレグランス送達装置からの液状フレグランス組成物の蒸発速度(左の棒)及び化学処理され、かつ機械的にホットプレスされたラタンを含むウィックを有するフレグランス送達装置からの液状フレグランス組成物の蒸発速度(右の棒)を示す。
【0087】
図4は、木材を含むウィックを有するフレグランス送達装置中に3日後に残っている液状フレグランス組成物の量(左)及び化学処理され、かつ機械的にホットプレスされた木材セルロース系材料を含むウィックを有するフレグランス送達装置中に残っている液状フレグランス組成物の量(右)を示す。
【0088】
ひとまとめに考えると、これらのデータは、本明細書に開示される方法によるセルロース系材料の処理が、該ウィックを通る該液状組成物の流れを増大させ、吸上速度及び/又は拡散速度の改善を生じ、それにより周囲環境への該液状組成物の送達を増大させることを示唆する。
【0089】
本文献を通じて引用される刊行物は、本明細書に参照により全体として援用される。本発明の多様な態様が、実施例及び好ましい実施態様への参照により上記で説明されているけれども、本発明の範囲が、前記の説明によってではなく、特許法の原則の下で適宜解釈される以下の請求の範囲によって定義されることが理解される。
図1
図2
図3
図4