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▶ ゲバウアー・ウント・グリラー・カーベルベルケ・ゲゼルシャフト・エム.ベー.ハー.の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-28
(45)【発行日】2025-04-07
(54)【発明の名称】ケーブル箔を除去する方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/12 20060101AFI20250331BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20250331BHJP
   B26D 7/10 20060101ALI20250331BHJP
【FI】
H02G1/12 075
H02G1/12 056
B26D3/00 603Z
B26D7/10
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022521442
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2020081210
(87)【国際公開番号】W WO2021089744
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-10-25
(31)【優先権主張番号】19207945.7
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521567778
【氏名又は名称】ゲバウアー・ウント・グリラー・カーベルベルケ・ゲゼルシャフト・エム.ベー.ハー.
【氏名又は名称原語表記】GEBAUER & GRILLER KABELWERKE GESELLSCHAFT M.B.H.
【住所又は居所原語表記】Muthgasse 36,1190 Wien,Austria
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】レベル、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー、ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】マンハルト、ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】ハーバーマン、エーリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ファイト、シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ベーバー、アルトゥール
(72)【発明者】
【氏名】ルノルマン、ティボー
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-068099(JP,A)
【文献】特開平11-332050(JP,A)
【文献】特表2014-507928(JP,A)
【文献】特開2004-014389(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03444911(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/12
B26D 3/00
B26D 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル(1)の端区分(1b)からケーブル箔(6)の除去されるべき区分(6a)を除去する方法であって、
ケーブル軸(2)を有するケーブル(1)の端区分(1b)を提供する工程であって、前記ケーブル(1)がケーブル外被(7)と、少なくとも1つの導電性導体構造(3、4、5)と、前記導体構造(3、4、5)のうちの1つに設けられたプラスチックからなるケーブル箔(6)とを備える、工程と、
前記提供された端区分(1b)に定められた損傷領域(S)を作成する工程であって、少なくとも前記ケーブル箔(6)が設けられた導体構造(3、4、5a、5b)が誘導加熱され、それにより前記加熱された導体構造(3、4、5a、5b)上に設けられた前記ケーブル箔(6)が前記損傷領域(S)において少なくとも部分的に熱損傷を受けることによる、工程と、
前記ケーブル箔(6)を前記導体構造(3、4、5)のうちの1つに相対運動によって、相対して動かす工程であって、前記相対運動によって前記損傷領域(S)に亀裂が形成され、前記亀裂は、前記ケーブル箔(6)の前記除去されるべき区分(6a)を前記ケーブル(1)に残る前記ケーブル箔(6)の区分(6b)から分離する、工程と、
を包含する方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの導体構造(3)が内部導体(4)及び少なくとも1つの外側導体構造(5、5a、5b)から構成され、前記ケーブル箔(6)が前記外側導体構造(5、5a、5b)のうちの1つに設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ケーブル箔(6)が設けられた外側導体構造(5)が金属箔(5b)として形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
金属箔(5b)として形成された前記外側導体構造(5)が、前記誘導加熱によって前記損傷領域(S)において構造的に脆弱化されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記誘導加熱が誘導コイル(12)によって行われ、前記誘導コイル(12)によって交流電磁界が生成され、前記ケーブル(1)の少なくとも前記損傷領域(S)は、前記誘導加熱中に前記誘導コイル(12)内に配置されることを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの導体構造(3、4、5)の前記誘導加熱中に前記ケーブル箔(6)が前記損傷領域(S)において前記ケーブル外被(7)によって覆われることを特徴とする、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記損傷領域(S)より前記端区分(1b)のケーブル端(1a)に近いところに配置された位置で、前記ケーブル外被(7)の少なくとも部分的に周囲に延びる切込み工程 をさらに包含することを特徴とする、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ケーブル外被(7)の前記少なくとも部分的に周囲に延びる切込み工程は、前記定められた損傷領域(S)の作成中又は後に行われることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ケーブル外被(7)の前記少なくとも部分的に周囲に延びる切込み工程が、前記定められた損傷領域(S)の作成前に行われることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記相対運動によって形成される亀裂は、前記ケーブル外被(7)の下の前記ケーブル箔(6)に形成されることを特徴とする、請求項7~請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ケーブル外被(7)は、少なくとも部分的に周囲に延びる切込み(9)によって前記ケーブル外被(7)の除去されるべき区分(7a)と、前記ケーブル外被(7)の残る区分(7b)とに分割されることと、前記ケーブル外被(7)の前記除去されるべき区分(7a)が前記ケーブル軸(2)の方向に動かされ、前記動きによって、少なくとも部分的に前記ケーブル外被(7)に付着する前記ケーブル箔(6)の除去されるべき区分(6a)が引き抜かれることを特徴とする、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも前記ケーブル箔(6)が設けられた導体構造(3、4、5a、5b)を誘導加熱する工程と、
前記ケーブル外被(7)の少なくとも部分的に周囲に延びる切込み工程と、
加工装置(10)の加工空間(11)において前記ケーブル外被(7)の除去されるべき区分(7a)と前記ケーブル箔(6)の前記除去されるべき区分(6a)とを一緒に除去する工程と、
が実行されることを特徴とする、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ケーブル箔(6)が設けられた前記少なくとも1つの導体構造(3、4、5)が、80℃以上の温度に誘導加熱されることを特徴とする、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の方法を実行するための加工装置(10)であって、
加工されるべきケーブル(1)の端区分(1b)を収容するための加工空間(11)であって、前記ケーブル(1)がケーブル外被(7)と少なくとも1つの導電性導体構造(3、4、5)と、前記導体構造(3、4、5)のうちの1つに設けられたプラスチックからなるケーブル箔(6)と、を含む加工空間と、
前記加工空間(11)に配置される誘導コイル(12)であって、前記誘導コイル(12)は、少なくとも、加工過程中に前記誘導コイル(12)に入っている前記ケーブル(1)の区分の導体構造(3、4、5a、5b)であって、前記ケーブル箔(6)が設けられている導体構造(3、4、5a、5b)を誘導加熱するように設計され、それにより前記加熱された導体構造(3、4、5a、5b)に設けられた前記ケーブル箔(6)が、定められた損傷領域(S)において少なくとも部分的に熱損傷を受け、続いて引き抜かれる場合に前記ケーブル箔(6)に亀裂が形成される前記ケーブル(1)の位置が決定される、誘導コイルと、
前記ケーブル箔(6)の前記損傷領域(S)によって定められた除去されるべき区分(6a)を引き抜くための手段(13)と、
を備える加工装置(10)。
【請求項15】
加工過程中に前記ケーブル(1)の前記端区分(1b)を固定するための少なくとも1つの締付けユニット(15)が前記加工空間(11)に配置されていることを特徴とする、請求項14に記載の加工装置(10)。
【請求項16】
前記加工装置(10)が、前記ケーブル(1)の前記ケーブル外被(7)の少なくとも部分的に周囲に延びる切込みのための切断ユニット(14)をさらに備えることを特徴とする、請求項14又は請求項15に記載の加工装置(10)。
【請求項17】
前記切断ユニット(14)は、前記加工空間(11)に配置されていることを特徴とする、請求項16に記載の加工装置(10)。
【請求項18】
前記加工空間(11)は、前記ケーブル(1)の前記端区分(1b)を前記加工空間(11)に挿入するための貫通開口(16)を有し、前記誘導コイル(12)は、切断ユニット(14)と貫通開口(16)との間に配置されていることを特徴とする、請求項17に記載の加工装置(10)。
【請求項19】
前記切断ユニット(14)は、前記誘導コイル(12)によって作成可能な前記損傷領域(S)より前記端区分(1b)のケーブル端(1a)に近いところに配置された位置で、前記ケーブル(1)の前記ケーブル外被(7)の前記少なくとも部分的に周囲に延びる切込みを作成可能であるように、前記誘導コイル(12)に相対して前記加工空間(11)に配置されていることを特徴とする、請求項17に記載の加工装置(10)。
【請求項20】
切込み(9)によって定められた前記ケーブル外被(7)の除去されるべき区分(7a)に接触し、続いて前記ケーブル外被(7)の前記除去されるべき区分(7a)を前記ケーブル箔(6)の除去されるべき区分(6a)と一緒に引抜き運動によって除去するために、前記ケーブル箔(6)の前記除去されるべき区分(6a)を引き抜くための手段(13)が形成されていることを特徴とする、請求項14~請求項19のいずれか1項に記載の加工装置(10)。
【請求項21】
前記ケーブル箔(6)の前記除去されるべき区分(6a)を引き抜くための手段(13)は、前記加工空間(11)に配置されていることを特徴とする、請求項14~請求項20のいずれか1項に記載の加工装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルの端区分からケーブル箔の区分を除去する方法であって、ケーブルが、ケーブル外被と、少なくとも1つの導電性導体構造と、導体構造のうちの1つに設けられたプラスチックからなるケーブル箔とを備える方法、並びに方法を実行するための加工装置に関する。
【0002】
その場合、導電性導体構造若しくは導体構造という用語は、本出願に照らして、電流を伝導するのに適し、電磁界によって循環電流若しくは渦電流を誘導することができる殊に金属の構造と解される。それに対応して、導体構造という用語は、例えば単線導体又は撚線導体などの内部導体のみならず、例えば導体編組又は導電性箔、殊に金属箔などの外側導体構造も含む。
【背景技術】
【0003】
通常、ケーブルは、特にそれらが内側導体構造としての内部導体と1つ又は複数の外側導体構造を備える場合、1つ又は複数のさらなる絶縁層を備え、外側絶縁層がケーブル外被と呼ばれる。導体構造のうちの1つとその上に位置する絶縁層との間には、機械的保護、電磁遮蔽、又は湿気防止のために用いられるプラスチックからなるケーブル箔を配置することができる。特に、内部導体と外側導体構造としての編組シールドとを備えるケーブルでは、ケーブル箔なしでは、ケーブル外被がその下に位置する編組シールドにひっかかる可能性があることから、ケーブル外被の引抜きを可能にするために、編組シールドとケーブル外被との間にケーブル箔を配置することができる。
【0004】
ケーブル箔の下に位置する導体構造を露出させて、導体構造に例えば接触できるようにするために、ケーブル箔の厚さがケーブル外被、内部導体、又はさらなる絶縁層に比べて小さいことから、単なる切込みが、その下に位置する導体構造、特に編組シールド、及び/又は特に導体構造の下に位置する絶縁層を傷付ける可能性があるため特別な措置が必要である。
【0005】
これに関連して、ケーブルの端区分という用語は、ケーブルの一端からケーブル軸に沿って、少なくとも接触のために導体構造が露出された、又は露出させられる領域にわたって延在するケーブルの領域と解される。ケーブルの接触区分、又は絶縁剥離された、若しくは絶縁剥離されるべき区分とも言われる。通常、端区分は、ケーブルの絶縁剥離された区分に隣接する区分もさらに含み、殊に長さが1cm~25cm、特に好ましくは5cm~15cmのこの区分において、ケーブル外被が無傷である。その場合、ケーブル箔の除去されるべき区分は、殊に端区分のケーブル端で始まって、通例、ケーブルの端区分の一部にわたって延在する。
【0006】
欧州特許出願公開第3444911号明細書は、先ず、ケーブル箔の加工されるべき区分が露出され、次に、この露出された区分の予定された亀裂位置の領域が熱的、削除的、又は化学的に処理されるケーブル箔を除去する方法を開示する。熱処理については、ケーブル箔を一部溶融又は完全に溶融することができる加熱される金型又は熱線に言及される。
【0007】
従来技術の不利な点は、ケーブル箔の除去されるべき区分を除去するために、ケーブル外被を部分的に除去せざるを得ないということである。その一方で、提案される方法は、均一な加熱のためのケーブルの回転、又は処理されるべきケーブルに特別に適合させた加熱可能な金型を必要とする複雑な装置を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許出願公開第3444911号明細書
【発明の概要】
【0009】
したがって、本発明の課題は、従来技術の不利な点を克服すること、並びに異なる直径を有するケーブルの端区分の、ケーブル箔の除去されるべき区分の簡単、安全、かつ迅速な除去を可能にする方法及び加工装置を提案することである。別の課題は、処理の前にケーブル箔を露出させる必要なしに、ケーブル箔の部分的な除去を可能にすることである。
【0010】
上記課題は、
-ケーブルの端区分を提供する工程であって、ケーブルがケーブル外被と、少なくとも1つの導電性導体構造と、導体構造のうちの1つに設けられたプラスチックからなるケーブル箔とを備える、工程と、
-定められた損傷領域を作成する工程であって、少なくともケーブル箔が設けられた導体構造が誘導加熱され、それにより加熱された導体構造上に設けられたケーブル箔が損傷領域において少なくとも部分的に熱損傷を受けることによる、工程と、
-ケーブル箔を導体構造のうちの1つ、殊に内部導体に相対して動かす工程であって、相対運動によって損傷領域に亀裂が形成され、亀裂は、ケーブル箔の除去されるべき区分をケーブルに残るケーブル箔の区分から分離する、工程と、を包含する、ケーブル軸を有するケーブルの端区分からケーブル箔の除去されるべき区分を除去する本発明による方法で達成される。
【0011】
ケーブル箔の除去されるべき区分のケーブルからの除去は、例えば相対運動がすでに引抜き運動である場合、相対運動によって直接行われるか、又は相対運動の後に、殊に引抜きによって行われる。
【0012】
本発明による解決策は、定められた損傷領域におけるケーブル箔の的確な損傷付与が、直接熱を加えることによって行われるということではなく、ケーブル軸に対してケーブル箔の下に位置する導体構造が誘導的に、したがって非接触で加熱されることを特徴とする。誘導的な熱入力により、ケーブル箔を事前に損傷させるために必要とされる領域に直接熱を発生させることが可能である。その場合、ケーブルの他の領域、特にケーブル外被は、加熱されないか、又は少なくとも著しく加熱されない。さらに、熱入力は、完全に非接触で行われ、それにより熱処理の前に損傷領域においてケーブル外被を除去する必要はない。同様に、非接触加熱は、ケーブル箔を除去する場合に下に位置する1つの層若しくは複数の層の機械的損傷を引き起こさないことにつながる。しかし、言うまでもなく、すでに露出されたケーブル箔にも誘導加熱を適用することができる。
【0013】
本発明による方法の別の利点は、誘導加熱によって、簡単にケーブル箔を正確に定められた損傷領域において加熱することができ、ケーブル箔の損傷領域が、ケーブルをさらに操作する必要なしに、ケーブルの断面で、殊に全周にわたって延在することである。言い換えれば、導体構造を定められた領域において実質的に均一に加熱することができる誘導加熱によって、ケーブル箔の完全な熱損傷が可能である。
【0014】
その場合、導体構造の比電気抵抗に応じて、侵入深さと温度を設定するために、熱出力及び保持時間などの誘導パラメータを相応に選択できることに言及しておきたい。誘導パラメータに影響を与えるために使用できる他のパラメータは、インダクタを流れる交流電流の周波数と振幅、及びインダクタの幾何学的形態である。その場合、最高温度に達する領域を設定することによって、損傷領域を特に正確に定義することができる。
【0015】
損傷領域におけるケーブル箔への的確な熱損傷によって、ケーブル箔及び/又は場合によってはその下に位置する導体構造を、これらも同様に除去すべき場合に、引き抜くときに裂けるケーブルの位置が決定される。ケーブル箔を引き抜くことによって、導体構造のうちの1つに相対する、殊に露出させるべき導体構造に相対するケーブル箔の相対運動を行うことができる。引き抜く場合、ケーブル箔がケーブル軸の方向に、つまりケーブル端とも呼ばれる端区分の端面の方向に、直接又は他の層の介在下で動かされる。しかし、相対運動が、亀裂が形成されるねじり運動又は屈曲運動であることも考えられる。別の工程において、亀裂によって定義される除去されるべき区分を、殊に引抜きによってケーブルから除去することができる。その場合、誘導加熱と相対運動の工程は異なる加工空間、例えば誘導加熱を誘導ユニットの加工空間で、相対運動を被覆剥がし装置の別の加工空間で空間的に別々に行うこともできるので、これらの工程を同じ空間で直接前後して行うことは必ずしも必要でない。
【0016】
「熱損傷を受ける」という用語は、ケーブル箔の一部溶融、溶融、又は可塑化とケーブル箔の焼失、燃焼、脆化、又は劣化の両方と解され、熱損傷の種類は、ケーブル箔の材料と、熱導入の継続時間及びレベルに実質的に依存する。損傷領域においてケーブル箔が、誘導熱処理後に溶けたり、部分的に溶けたり、脆化又は再び固化したりすると、ケーブル箔において相対運動又は引抜き時に亀裂が形成される。ケーブル箔が加熱によって燃焼若しくは焼失した場合、すでに引抜きの前に亀裂が存在し、引き抜くことによって単に拡大される。
【0017】
例えば、ケーブル箔を内部導体から除去できるようにするため、内部導体に設けられたケーブル箔を損傷領域において少なくとも部分的に溶かすために、内部導体として形成された導体構造が誘導加熱によって加熱されることが考えられる。
【0018】
同様に、言うまでもなく、ケーブル箔が設けられた導体構造の誘導加熱は、ケーブルが2つ以上の導体構造を備える場合も行うことができる。その場合、ケーブル箔が設けられていない導体構造も誘導加熱することができる。しかしケーブル箔の厚さが小さいことにより、ケーブル箔の領域に定められた損傷がもたらされるが、他の層は、通常、大きな影響を受けない。さらに、誘導パラメータの適切な選択により、ケーブル箔が設けられていない導体構造の加熱を低減することができ、特に高周波での表皮効果を利用することができる。
【0019】
ケーブルは、ケーブルの断面に関して対称軸であるケーブル軸を有する。その場合、言うまでもなく、ケーブル軸が、それぞれ、ケーブルの対応する断面上で法線方向に立ち、それに対応して、ケーブルが曲がった場合に曲線状に延び得る。通常、ケーブルの端区分は曲げられず、それによりケーブル軸は、端区分では直線状に延びる。
【0020】
本発明の別の実施形態では、少なくとも1つの導体構造が、内部導体及び少なくとも1つの外側導体構造から構成され、ケーブル箔が外側導体構造のうちの1つに設けられていることが企図されている。複数の外側導体構造が設けられる場合、ケーブル箔は、ケーブル軸に対して最外側導体構造上に設けられていることが好ましい。しかしながら、ケーブル箔がそれより内側に位置する外側導体構造又は内部導体上に設けられることも考えられる。ケーブル箔が導体構造のうちのいくつかの上に設けられることも考えられる。上記のすべての場合において、加工が外側から内側へ行われることが有利であり、異なった加工区分が、通常、段階的にずらされる。その場合、言うまでもなく、1つの外側導体構造しかない場合にケーブル箔がこの外側導体構造上に設けられる。
【0021】
この場合、ケーブル箔が設けられない導体構造も誘導加熱によって加熱することができることを企図することができ、それによって2つの外側導体構造を直接上下に配置した場合でも、場合によっては累積効果も達成できる可能性もある。例えば、少なくとも1つの外側導体構造は、例えば編組シールドなどの金属編組、及び/又は金属箔を含むことができ、特に編組シールド及び/又は金属箔からなり得る。例えば、ケーブル箔が金属編組、特に編組シールド上に設けられるか、若しくは編組シールドを包み、編組シールドによって誘導的に加熱され、それによりケーブル箔が少なくとも部分的に熱損傷を受けることが考えられる。
【0022】
本発明による方法の好ましい実施形態は、ケーブル箔が設けられた外側導体構造が金属箔として形成されていることを企図する。金属箔の厚さが比較的小さいことによって、誘導加熱の侵入深さを相応に設定することによりこれを特に効率的に加熱することができる。殊に、金属箔はアルミニウムを含有する箔若しくはアルミニウム箔である。金属箔の厚さが小さく、したがって通常は引張抵抗若しくはせん断抵抗が小さいこと、及びケーブル箔が損傷領域において熱損傷を受け、それによりケーブル箔も損傷領域において、引張抵抗及びせん断抵抗に対して増大させる影響をさほど有さないことによって、相対運動時のケーブル箔における亀裂が損傷領域において金属箔の亀裂形成若しくは損傷ももたらす。
【0023】
金属箔とケーブル箔の組合せは、多くの場合、外側導体構造として、電磁遮蔽のための編組シールドも有する同軸ケーブルにおいて使用される。したがって、特に好ましい実施形態では、少なくとも1つの外側導体構造が、編組シールド及び金属箔を含み、金属箔は編組シールド上に直接配置されていることが企図され得る。ケーブル箔もまた金属箔上に直接設けられている。この適用事例では、誘導加熱によって編組シールドと金属箔の累積加熱効果をもたらすことができるが、外側導体構造の達成可能な加熱は、通常、可能な侵入深さと関係するため、金属箔は、厚さが小さいことにより編組シールドより強く加熱される。
【0024】
特に、金属箔とケーブル箔が複合箔として形成されている場合、特に同軸ケーブルに使用するために好ましい。
【0025】
本発明の別の実施形態では、金属箔として形成された外側導体構造が誘導加熱によって損傷領域において構造的に脆弱化されることが企図されている。ケーブル箔が設けられた外側導体構造が金属箔として形成されている場合、金属箔がケーブル箔と一緒に引き抜かれる場合が有利である。それに対応して、金属箔の構造的脆弱化によるケーブル箔から金属箔への損傷領域の拡張によって、引抜き時に損傷領域において金属箔にも定められた亀裂が形成され、それにより下に位置する層に接触を妨げるかもしれない残留物が残ることなしに金属箔とケーブル箔とを一緒に引き抜くことができる。
【0026】
誘導加熱が誘導コイルによって行われる場合、少なくとも対応する導体構造を、特に簡単に誘導加熱することができ、この誘導コイルによって交流電磁界が生成され、誘導加熱中、少なくともケーブルの損傷領域は誘導コイル内に配置される。殊に水冷誘導コイルに交流電磁界を生成することによって、誘導コイルを流れる交流電流の周波数及び振幅を誘導加熱に関連するパラメータとみなすことができる。誘導コイルを使用することによって、加熱中にケーブルの端区分の少なくとも1つの領域が誘導コイルに配置され、相応の導体構造が相応に周囲全体にわたって均一に加熱されるので、ケーブル箔の完全な損傷も特に簡単に確保することができる。
【0027】
さらには、加工されるべきケーブルが少なくとも部分的に挿入される誘導コイルを使用することにより、例えば空隙として形成することができるか、又は非導電材料によって埋めることができる必要な距離が誘導コイルの内径と収容されるケーブル区分の外径との間に保たれる限りで、様々に異なるケーブル直径若しくはケーブルの種類に対して誘導加熱を使用することができる。このために必要なのは、通常、殊に励起電流の振幅と周波数を調整することにより生成される交流電磁界のパラメータ、あるいは侵入深さ、保持時間、及び/又は熱出力を適合させることのみである。
【0028】
言うまでもなく、すでに露出しているケーブル箔にも誘導加熱を適用することができるが、そのためにケーブル外被を損傷領域において除去することを必要とせずに熱処理を行うことができる場合が有利である。それに対応して、本発明の別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの導体構造の誘導加熱中にケーブル箔が損傷領域においてケーブル外被によって覆われることが企図されている。言い換えれば、損傷領域若しくは誘導コイルに挿入されたケーブルの区分においてケーブル外被は傷付けられずにケーブル箔がケーブル内部で加熱される。これはひとえに、ケーブル箔の下に位置する導体構造の誘導加熱によるものであり、誘導加熱では必要な加熱が外部からではなく、熱が必要とされる場所で直接行われるためである。言い換えると、ケーブル箔が設けられた導体構造は、損傷領域を作成するために、ケーブル外被を通り抜けて誘導加熱される。
【0029】
ケーブル外被の加工を可能にし、それにより本発明の範囲内でケーブル端区分の絶縁剥離されるべき区分からケーブル外被を除去できるようにするために、別の実施形態は、方法が、
-損傷領域よりケーブルの端区分のケーブル端、つまり端区分の端面に近いところに配置された位置で、ケーブル外被の少なくとも部分的に周囲に延びる切込み工程をさらに包含する。ケーブル端、つまりケーブルの端区分の端面と損傷領域との間の位置でケーブルに切り込むことによって、ケーブル箔若しくは場合によってはケーブル箔と金属箔が引抜き時に裂ける箇所がケーブル外被の下に位置することが達成される。切断位置にもとづいて、残留物はケーブル外被の残る区分によって覆われるので、ケーブル外被の除去されるべき区分を除去した後に露出した導体構造上に、裂けたときにケーブル箔の残留物が場合によって残ることを防ぐことができる。
【0030】
ケーブルが3つの導体構造、つまり内部導体、編組シールド、及び金属箔を備え、編組シールド、金属箔、及びケーブル箔がこの順序で直接上下に配置され、すなわちそれが同軸ケーブルである場合に、上記の切込みの位置決めは特に有利である。これは、場合によっては編組シールド上に残る金属箔及び/又はケーブル箔の残留物が編組シールドの接触を妨げ得るからである。切込み位置の選択により、編組シールド上のケーブル箔及び/又は金属箔のそのような残留物はケーブル外被によって覆われ、それにより実際に露出した編組シールドの区分には残留物がない。
【0031】
その場合、切込みが損傷領域の誘導加熱処理中、又は後に行われることが考えられるのと全く同様に、損傷領域を誘導加熱する前にすでに、場合によっては端区分を加工装置の加工空間に挿入する前にすでに切込みが行われることも考えられる。例えば、切込みを切断装置の別の加工空間で行うことができる。しまいには、ケーブル外被の除去は、熱処理を実行するために必要な工程ではない。
【0032】
上記のように、切込みの位置とケーブル端との間の距離が、損傷領域とケーブル端との間の距離より小さいことが有利ではあるが、当然、損傷領域が、切込みよりケーブル端に近いか、又は同じくらい近いところに配置され、それにより場合によっては、ケーブル外被の引抜き後にケーブル箔の一区分が露出されることも考えられる。
【0033】
ケーブル箔は、通常、ケーブル外被における付着力が高いので、ケーブル箔をすぐ上に位置するケーブル外被と一緒にケーブルの端区分から引き抜くことによって特に簡単に除去できる。すなわちケーブル外被が、好ましくは上述のように切り込まれる場合、ケーブル外被を相応の手段で導体構造のうちの1つに相対して、特に内部導体に相対して動かすことができ、その下に位置するケーブル箔、又はその下に位置するケーブル箔及び/若しくはケーブル箔の下に位置する金属箔が損傷領域において裂け、ケーブル外被と一緒に引き抜くことができる。相対運動は、この場合も屈曲運動、回転運動、及び/又は引抜き運動、すなわちケーブル軸の方向で端区分のケーブル端への運動であり得る。ケーブル外被の除去されるべき区分とケーブル箔の除去されるべき区分とを一緒に除去することは、ケーブル外被の除去されるべき区分を引き抜くことによって行われる。したがって、本発明の別の実施形態は、ケーブル外被が、少なくとも部分的に周囲に延びる、殊に完全に周囲に延びる切込みによってケーブル外被の除去されるべき区分とケーブル外被の残る区分とに分割されること、及びケーブル外被の除去されるべき区分がケーブル軸の方向に動かされ、この動きによって、ケーブル箔の、少なくとも部分的にケーブル外被に付着する除去されるべき区分が引き抜かれることを企図する。
【0034】
基本的に、上記の方法工程は、異なる加工空間で順次連続的に行われることが考えられるが、相応の工程が、以下で詳細に説明される共通の加工装置の加工空間において実行される場合が特に有利である。したがって、本発明の別の実施形態では、
-少なくともケーブル箔が設けられた導体構造を誘導加熱する工程と、
-ケーブル外被の少なくとも部分的に周囲に延びる切込み工程と、
-加工装置の加工空間において、ケーブル外被の除去されるべき区分とケーブル箔の除去されるべき区分とを、殊に引き抜くことによって、殊に指定される順序で一緒に除去する工程と、が実行される。
【0035】
ケーブル箔が好ましい温度範囲の温度に加熱され、その温度を、その下に位置する誘導加熱される導体構造の温度によって調整できることが特に有利であることが明らかになった。したがって、別の実施形態では、少なくとも1つの導体構造が、80℃以上、好ましくは100℃以上、特に好ましくは200℃以上、特に300℃以上の温度に誘導加熱されることが企図される。温度の測定は、例えば高温計によって行うことができる。誘導加熱される導体構造の温度、及び誘導加熱の例えば30秒未満、特に20秒未満、好ましくは10秒未満の継続時間を、熱損傷を達成するためにケーブル箔の材料特性、例えば厚さ及び/又はプラスチックの種類に応じて調整することができる。
【0036】
冒頭で述べた課題は、
-加工されるべきケーブルの端区分を収容するための加工空間であって、ケーブルがケーブル外被と少なくとも1つの導電性導体構造と、導体構造のうちの1つに設けられたプラスチックからなるケーブル箔と、を含む、加工空間と、
-加工空間に配置される誘導コイルであって、誘導コイルは、少なくとも、加工過程中に誘導コイルに入っているケーブルの区分の導体構造であって、ケーブル箔が設けられている導体構造を誘導加熱するように設計され、それにより加熱された導体構造に設けられたケーブル箔が、損傷領域において少なくとも部分的に熱損傷を受ける、誘導コイルと、
-ケーブル箔の損傷領域によって定められた除去されるべき区分を引き抜くための手段と、を備える、本発明による方法を実行するための加工装置によっても解決される。
【0037】
ケーブル箔、若しくは場合によってはケーブル箔とその下に位置する金属箔に損傷領域を作成するために少なくとも1つの導体構造を誘導加熱することの冒頭で述べた利点の他に、加工装置におけるケーブルの誘導熱処理と引抜きの組合せにより、必要な操作過程の数の減少とケーブル箔の効率的な除去が可能になる。その場合、加工過程のために必要なのは、ケーブルの加工されるべき区分を誘導コイルに挿入することだけである。しかし、ケーブル箔の除去されるべき区分が、設けられた手段によって完全にではなく部分的にのみ引き抜かれることが考えられる。
【0038】
ケーブル箔の除去されるべき区分を引き抜くための手段は、例えば、ケーブル箔を直接掴み、ケーブル箔の下に位置する層に相対して、例えば内部導体又は編組シールドに相対して摺動及び/又は回動させることができる、例えば並進運動可能な把持要素及び/又は運動要素であり得る。その場合、引き抜くための手段によって、ケーブル箔の損傷領域に亀裂を作成するための複数の運動、例えば回動運動又は屈曲運動、及びそれに続く、ケーブル箔の除去されるべき区分を、場合によってはケーブル外被の除去されるべき区分と一緒に除去するための直線的引抜き運動を次々に実行できることが考えられる。同様に、引き抜くための手段が、相応に形成されたケーブル箔除去装置として形成されていることが考えられる。
【0039】
ただし、以下で詳しく説明するように、ケーブル箔を引き抜くための手段がケーブル箔に直接接触することは必ずしも必要でない。ケーブル箔を引き抜くための手段は、例えばケーブル外被に切込みを作成し、切込みの後に、ケーブル軸の方向に相対運動を実行できる切断ユニットによって形成することができる。
【0040】
言い換えれば、ケーブル箔を引き抜くための手段は、少なくともケーブル箔の除去されるべき区分を、殊にケーブル外被の除去されるべき区分と一緒に導体構造に相対して、殊に金属編組又は内部導体に相対して動かすことができ、それにより少なくとも損傷領域においてケーブル箔に亀裂が形成されるように形成されている装置であり得る。
【0041】
その場合、ケーブル箔の区分を引き抜くための手段は、特に加工装置が複数の部分装置を有する設備として形成されている場合に、誘導コイルも配置されている加工空間に必ずしも配置される必要はない。ケーブル箔の区分を引き抜く手段は、例えば加工装置、殊に設備の被覆剥がし装置の別の加工空間に配置されていることも考えられる。
【0042】
基本的に、切断ユニットが設けられているか、又は加工装置への挿入前にケーブル外被にすでに切込みが入れられる限り、ケーブル外被を除去することによってケーブル箔をすでに露出させたケーブルの端区分のみならず、無傷のケーブル外被を有するケーブルの端区分もこのような装置で処理することができる。
【0043】
導体構造を誘導加熱するように設定され、それにより加熱された導体構造上に設けられたケーブル箔が損傷領域において少なくとも部分的に熱損傷を受ける誘導コイルは、通常、加熱される導体構造上に設けられたプラスチックからなるのではない非金属の中間層を加熱して熱損傷させるのにも適していることにも言及しておきたい。例えば、そのような非金属の中間層は、殊に樹脂で含侵した、例えば綿などの布又は紙からなる織物構造であり得る。このような非金属の中間層は、通常、その下に位置する金属箔として形成された外側導体構造が裂けることを防ぐように設計されている。同様に、相応に形成された誘導コイルは、加熱される導体構造上に設けられた接着層を熱損傷させるのにも適し得る。
【0044】
本発明の別の実施形態では、加工過程中にケーブルの端区分を固定するための少なくとも1つの締付けユニットが加工空間に配置されていることが企図されている。少なくとも1つの締付けユニットは、誘導コイルの近接領域に位置決めできるようにするために、殊にプラスチックから作製される殊に少なくとも1つの締付け要素を備える。ケーブルが加工空間に相対して動くことなしに、誘導熱処理のみならず導体構造に相対する、殊に内部導体に相対するケーブル箔の相対運動も可能にするために、締付けユニットによってケーブルの端区分を効率的に固定することができる。
【0045】
本発明の別の実施形態では、加工装置が、ケーブル外被の少なくとも部分的に周囲に延びる切込みのための切断ユニットをさらに備えることが企図されている。少なくとも1つの導体構造の誘導加熱を実行するためにケーブル外被を損傷領域において露出させる必要がないので、特に引き抜くための手段が切断ユニットを備える場合に、切込みと、場合によっては後続のケーブル外被の除去を加工装置において直接行うことができる。しかし、加工装置は、特に加工装置が複数の部分装置を有する設備として形成されている場合に、別の加工空間を有する切断装置を備えることも考えられ、切断装置の別の加工空間に切断ユニットが配置される。
【0046】
切断ユニットは、例えば少なくとも1つの切断要素、殊に少なくとも2つの、正確に2つ又は2つより多い切断要素を有することができ、これらは切断運動中に、ケーブル外被に半径方向に入り込み、少なくとも部分的に、殊に完全に周囲に延びる切込みを作成する。
【0047】
本発明による加工装置の好ましい一実施形態は、切断ユニットが加工空間に配置され、加工空間は、ケーブルのための貫通開口を有し、切断ユニットと貫通開口との間に誘導コイルが配置されていることを企図する。殊に、切断ユニットは、引き抜くための手段と誘導コイルとの間に配置されている。誘導コイルも配置されている加工空間に切断ユニットを相応に配置することによって、ケーブル外被において、相応の導体構造の誘導加熱によって作成された損傷領域よりケーブルのケーブル端に近いところに配置されている位置で、部分的に周囲に延びる切込みが生じることが達成される。ケーブルの端区分は、通常、ケーブルの全長の小部分にすぎないため、通例、加工空間にケーブルのための貫通開口が設けられ、ケーブルの加工されるべき区分をこの貫通開口を通して加工空間に挿入することができ、若しくはケーブルの加工されない区分を貫通開口を通して加工空間から引き出すことができる。すなわち加工装置におけるケーブルの加工されるべき端区分の、引き抜いた場合にケーブル箔、若しくはケーブル箔と金属箔が裂ける損傷領域に相対するケーブル外被における切込みの位置を定めるために、損傷領域を作成する誘導コイルが切断ユニットと貫通開口との間に配置される。
【0048】
導体構造の誘導加熱の前にケーブル外被を損傷領域において除去しなければならないことを必要とせず、その一方で特に簡単な操作を可能にする、ケーブル箔の除去されるべき区分の簡単な除去を可能にするために、本発明の別の実施形態では、切込みによって定められるケーブル外被の除去されるべき区分に接触し、続いてケーブル外被の除去されるべき区分を殊にケーブル外被に付着するケーブル箔の除去されるべき区分と一緒に引抜き運動によって除去するために、ケーブル箔の除去されるべき区分を引き抜くための手段が形成されていることが企図される。その場合、ケーブル外被に、上述した切断ユニットを用いて切込みを行うことができ、又は切込みが、挿入されたケーブルの端区分にすでに設けられていることが可能である。
【0049】
ケーブル箔の端区分を除去するための手段もまた、把持要素又は摺動要素として形成することができるが、これらは薄いケーブル箔にではなく、より厚いケーブル外被に接触して掴む必要がある。導体構造のうちの1つに相対する、殊に内部導体に相対するケーブル外被の除去されるべき区分の把持及び相対運動、例えば摺動、引張、回動又は屈曲によって、その下に位置する、かつ少なくとも部分的にケーブル外被に付着するケーブル箔も緊張され、それによりケーブル箔が損傷領域において裂け、続いて引き抜くことができる。ケーブル外被の除去されるべき区分のケーブル端の方向への動きを含む引抜き運動は、亀裂も同時に作成するために使用することができるか、又はその前に行われた相対運動によって亀裂が作成されて始めて行うことができる。誘導加熱される導体が金属箔である場合、亀裂を金属箔にも形成することができ、それにより金属箔とケーブル箔をケーブル外被の除去されるべき区分と一緒に、その下に位置するケーブルの層、特に編組シールドから引き抜くことができ、それにより層、特に編組シールドが露出する。
【0050】
本発明の別の実施形態では、ケーブル箔の除去されるべき区分を引き抜くための手段及び/又は切断ユニットが加工空間に配置されていることが企図されている。誘導コイルが配置されている加工空間に加工装置の複数のコンポーネントを配置することによって、1つの加工空間で複数の方法工程の実行を可能にする特にコンパクトな形式が可能になる。したがって、誘導コイルのみならず切断ユニットとケーブル箔を引き抜くための手段も共通の加工空間に配置されていることが特に好ましい。
【0051】
次に、本発明を実施例をもとにして詳しく説明する。図面は例示であり、本発明の思想を表すが、本発明の思想を限定するもの、又は完結的に表すものでは決してない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1a図1aは、ケーブルの第1の実施例の端区分をもとにした本発明による方法の手順の模式図である。
図1b図1bは、ケーブルの第1の実施例の端区分をもとにした本発明による方法の手順の模式図である。
図1c図1cは、ケーブルの第1の実施例の端区分をもとにした本発明による方法の手順の模式図である。
図2a図2aは、ケーブルの第2の実施例の端区分をもとにした本発明による方法の手順の模式図である。
図2b図2bは、ケーブルの第2の実施例の端区分をもとにした本発明による方法の手順の模式図である。
図2c図2cは、ケーブルの第2の実施例の端区分をもとにした本発明による方法の手順の模式図である。
図3a図3aは、ケーブルの第3の実施例の端区分をもとにした本発明による方法の手順の模式図である。
図3b図3bは、ケーブルの第3の実施例の端区分をもとにした本発明による方法の手順の模式図である。
図3c図3cは、ケーブルの第3の実施例の端区分をもとにした本発明による方法の手順の模式図である。
図4図4は、加工装置におけるケーブルの端区分の図である。
図5図5は、誘導加熱後の加工装置におけるケーブルの端区分の図である。
図6図6は、切り込んだ後のケーブルの端区分の図である。
図7図7は、引抜き中の加工装置におけるケーブルの端区分の図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1a~図1cは、ケーブル1の第1の実施例を例に挙げて本発明による方法の工程を時系列で示す。第1の実施例では、ケーブル1は、内部導体4として形成された導体構造3と外側ケーブル外被7を備え、内部導体4とケーブル外被7との間にプラスチックからなるケーブル箔6が配置されている。ケーブル箔6は、内部導体4として形成された導体構造3上に設けられている。ケーブル1は、ケーブル構成の対称軸であるケーブル軸2をさらに有する。
【0054】
この場合、内部導体4の区分を露出させるために、ケーブル箔6の除去されるべき区分6aが内部導体4から除去されることになるケーブル1の端区分1bが示される。ケーブル1の端区分1bは、以下に説明される誘導熱処理を実行できるようにするために部分的に誘導コイル12内に配置されている。
【0055】
この実施例では、端区分1bにおいて、ケーブル外被7は、図1aに示されるように、すでに方法の開始時に、ケーブル外被7を除去されるべき区分7a(図1bを参照)と残る区分7bとに分割する切込み9を有している。
【0056】
図1bは、誘導コイル12による誘導熱処理中若しくは直後の端区分1bを示す。内部導体4、すなわちケーブル箔6が設けられた導体構造3が誘導コイル12によって誘導加熱される。定められた領域において内部導体4を加熱することによって、ケーブル箔6が相応に定められた損傷領域Sにおいて熱損傷を受ける。
【0057】
熱損傷とは、特に熱可塑性プラスチックの場合、例えば損傷領域Sにおけるケーブル箔6のプラスチックの局所的な一部溶融、溶融、又は完全な溶融であり得る。特に熱可塑性プラスチックでない場合、損傷領域Sにおけるケーブル箔6のプラスチックが熱損傷によって焼失、劣化、又は脆化することも考えられる。
【0058】
損傷領域Sにおけるケーブル箔6の熱損傷によって、内部導体4に相対してケーブル箔6を動かした場合に、ケーブル箔6を除去されるべき区分6aと残る区分6bとに分ける亀裂が形成される領域が定められる。損傷領域Sによって定められた亀裂により、ケーブル箔6の除去されるべき区分6aをその下に位置する導体構造3、すなわち内部導体4から、内部導体4の露出されるべき領域にケーブル箔6の残留物が可能な限り残されることなしに除去することができる。
【0059】
端区分1bは、一端でケーブル端1a、つまりケーブル1の端面によって画定される。ケーブル端とは反対側に位置する端区分1bの端は、切込み9及び/又は損傷領域Sと一致し得るか、あるいはケーブル外被7の残る区分7aが配置されるケーブル1の区分をさらに含み得る。
【0060】
この実施例では、ケーブル外被7における切込み9が損傷領域Sよりケーブル端1aに近いところに配置され、それにより誘導熱処理中に誘導コイル12の内部に入っているケーブル1の区分においてケーブル外被7は無傷である。熱処理が誘導によって行われるので、ケーブル外被7が加工されるべき領域において事前に除去される必要なしに損傷領域Sを作成することができる。切込み9と損傷領域Sのずれによって、除去時に場合によっては内部導体に残されるケーブル箔6の残留物がケーブル外被7によって覆い隠されることをさらに達成でき、それにより内部導体4の絶縁剥離された領域には、いずれにしても接触を妨げるプラスチック残留物はない。
【0061】
図1cにおいて、ケーブル箔6の引抜き運動中のケーブル1が示され、損傷領域Sにすでに亀裂が形成され、引抜き、つまりケーブル箔6のケーブル端1aの方向への動きによって亀裂が拡張若しくは拡大されている。本実施例では、ケーブル箔6が、通常はケーブル外被7に付着すること、若しくはケーブル外被7とケーブル箔6との間の付着力がケーブル箔6とその下に位置する導体構造3との間、ここでは内部導体4への付着力より大きいことが利用される。それに対応して、ケーブル外被7の除去されるべき区分7a及びケーブル箔6の除去されるべき区分6aは、共通の相対運動によって一緒に除去される。このことは、相応の引抜き工具によってケーブル外被7を把持して動かすことができるため、ケーブル箔6の比較的簡単な把持も可能にする。
【0062】
その場合、亀裂の形成につながる相対運動は、必ずしも並進運動(だけ)である必要はなく、回転運動又は屈曲も考えられるということに言及しておきたい。ケーブル箔6及びケーブル外被7の除去されるべき区分6a、7aの亀裂形成後の除去は、殊にケーブル端1aの方向への並進的な引抜き運動によって行われる。
【0063】
ケーブル箔6及びケーブル外被7の除去されるべき区分6a、7aの除去の後、ケーブル1が残り、その端領域1bにおいて内部導体4が接触のために露出されている。
【0064】
図2a~図2cにおいて、第1の実施例との関連ですでに述べた本発明による方法の工程が示され、そのため、第1の実施例と比較して第2の実施例の相違点のみを詳述する。
【0065】
第1の実施例では、ケーブル1が単一の導体構造3、すなわち内部導体4のみを備えるが、第2の実施例では、ケーブル1が内部導体4と、外側導体構造5、すなわち編組シールドとして形成された金属編組5aとを有する。その場合、ケーブル箔6は、内部導体4上に直接ではなく、外側導体構造5、つまり金属編組5a上に設けられる。金属編組5aと内部導体4との接触を防ぐために、内部導体4と金属編組5aとの間に内側絶縁層8が配置されている。
【0066】
さらに、特に図2bにおいて、この実施例ではケーブル外被7の除去されるべき区分7aが、端区分1bを誘導コイル12に挿入する前にすでに除去されたことが見て取れる。これは前述したように必ずしも必要ではないが、加熱されるべき導体構造3、5、5aと誘導コイル12との間で誘導コイル12内にケーブル外被7の区分がない場合でも外側導体構造5の誘導加熱は当然機能する。誘導コイル12を用いることで、この実施例では、誘導電流の振幅及び周波数などの誘導パラメータを相応に選択することにより、特に金属編組5aが損傷領域Sにおいて加熱され、それにより金属編組5a上に位置するケーブル箔6が損傷領域Sにおいて熱損傷を受けるように侵入深さを選択することができる。その場合、損傷領域Sにおいて絶縁層8も著しく熱損傷を受けるのを防ぐために、絶縁層8がケーブル箔6より高い熱抵抗を有する場合が特に有利である。
【0067】
図2cにおいて、金属編組5aに対するケーブル箔6の相対運動によってケーブル箔6の除去されるべき区分6aが端区分1bから除去されることが示されている。
【0068】
図3a~図3cは、本発明による方法の上記の工程を特に好ましい第3の変形形態との関連で示す。この場合も、以下に、上記の各実施形態との相違点のみを説明する。
【0069】
この実施例では、ケーブル1が3つの導体構造3、すなわち内部導体4と2つの外側導体構造5を有する。第1の外側導体構造5aは、第2の実施例でのように、絶縁層8上に設けられている編組シールドとして形成された金属網組5aである。金属網組5a上に金属箔5bの形態の第2の外側導体構造が配置されている。ケーブル箔6は、この実施例では、金属箔5b上に設けられ、金属箔5bとケーブル箔6が複合箔として形成されていることも考えられる。このケーブル構成は、金属編組5aが編組シールドとして機能する典型的な同軸ケーブルのケーブル構成である。
【0070】
図3aにおいて、端区分1bが誘導コイル12に挿入された場合にケーブル外被7は全く無傷であり、すなわち切込み9も設けられていないことが認識できる。
【0071】
図3bは、誘導コイル12による金属箔5bの誘導加熱の前、後、又は最中に、同じ加工装置10で切込み9を作成できることを示している(図4図6を参照)。この実施例では、誘導コイル12を用いることで、誘導電流の振幅及び周波数などの誘導パラメータを相応に選択することにより、特に金属箔5bが損傷領域Sにおいて加熱され、それにより金属箔5b上に位置するケーブル箔6が損傷領域Sにおいて熱損傷を受けるように侵入深さを選択することができる。
【0072】
次に、図3cに見て取れるように、ケーブル箔6及びケーブル外被7の除去されるべき区分6a、7aを除去することによって金属編組5aが露出される。その場合、ケーブル外被7及びケーブル箔6が内部導体4若しくは金属編組5aに相対して相対運動した場合に、損傷領域Sにおいて金属箔5bにも亀裂が形成され、それにより金属箔5bもケーブル外被7及びケーブル箔6と一緒にケーブル1の端区分1bの露出されるべき区分から引き抜くことができる。複合箔の場合、特に簡単に一緒に除去できるが、ケーブル箔6と金属箔5bとの間の付着力が高いことにもとづいて、相対運動した場合に金属箔5bに亀裂が形成されるように、ケーブル箔6の熱損傷によって金属箔5bの引張抵抗を低下させることも考えられる。
【0073】
言うまでもなく、上記の各実施例を、特にケーブル構成と切込み9の位置とに関して問題なく互いに組み合わせることができる。追加の層、絶縁層8のみならず導体構造も設けることができ、内部導体4及び/又は金属編組5aの前述の露出を前述の工程で段階的に繰り返すことができる。
【0074】
発明の機能
図4図7に示される加工装置10をもとにして本発明による方法の機能を明確にする。その場合、加工装置10は、加工空間11を画定し、この加工空間11に加工されるべきケーブル1の端区分1bが収容され、端区分1bを挿入するための少なくとも1つの貫通開口16がある。その場合、ケーブル1の構成は、図3a~図3cとの関連で説明された構成に相当し、それによりケーブル1は、次に指定される順序で、内部導体4、絶縁層8、編組シールドとして形成された金属網組5a及び金属箔5b、金属箔5b上に設けられたプラスチック箔6、並びにケーブル外被7を備える。
【0075】
誘導コイル12は加工空間11に配置され、端区分1bが誘導コイル12に挿通され、それにより少なくとも損傷領域Sが作成されることになるケーブル1の領域が誘導コイル12内に配置される。さらに、ケーブル1の端区分1bを固定するために、加工中に端区分1bを締め付けることができる少なくとも1つの締付けユニット15が加工空間11に設けられている。締付けユニット15は、殊にプラスチックからなる1つ又は複数の締付け要素を備え、これらを誘導コイル12の近接領域に位置決めすることができる。
【0076】
さらに、加工装置10は、ケーブル外被7に切込み9を作成するための少なくとも1つの切断要素14aを有する切断ユニット14と、ケーブル6の除去されるべき区分6aを引き抜くための手段13とを備えている。その場合、引き抜くための手段13は、この実施例では、ケーブル外被7又はケーブル箔6を把持するために形成されている把持要素13aと、把持要素13aがケーブル外被7又はケーブル箔6を把持すると直ちに把持要素13aをケーブル1に相対して動かし、殊に摺動又は回動させることができる運動装置13bとを備えている。
【0077】
図4から、方法の第1工程、すなわち少なくとも1つの導体構造3を有し、プラスチックからなるケーブル箔6が導体構造3の1つに設けられたケーブル1の端区分1bを提供することが見て取れる。加工装置10の示される状態では、締付けユニット15は、すでにケーブル外被7の残る区分7bを締め付ける状態にあり、把持要素13aは、ケーブル外被7の除去されるべき区分7aと係合している。ケーブル1の加工されるべき区分を固定するために、誘導コイル12は、ケーブル軸2に対して、ケーブル箔6を引き抜くための手段13と締付けユニット15との間に配置されている。
【0078】
図5は、次に、ケーブル箔6と接触する導体構造3、ここでは金属箔5bが誘導コイル12によって誘導加熱され、それによりケーブル箔6が損傷領域Sにおいてが熱損傷を受けることにより、定められた損傷領域Sを作成する工程を示す。そのような定められた損傷を達成するために、殊に水冷される誘導コイル12のジオメトリと、振幅及び周波数並びに加熱継続時間などの誘導パラメータが、誘導コイル12に交流電磁界が生成され、交流磁界によって表すことができる侵入深さにより金属箔5bの最大限の加熱が達成されるように選択される。金属箔5bは、その上に設けられたプラスチックからなるケーブル箔6よりはるかに高い熱負荷に耐える材料特性を有しているので、ケーブル箔6は、損傷領域Sにおいて金属箔5bの誘導加熱によって熱損傷を受け、例えば溶けるか、又は脆化若しくは劣化する。そのような熱損傷を達成するために、ケーブル箔6は、損傷領域Sにおいて、誘導加熱される金属箔5bによって120℃~200℃の温度にされる。誘導加熱の継続時間は、有利には20秒未満、殊に10秒未満である。
【0079】
代替の実施例では、誘導加熱によって構造的に脆弱化され、それにより損傷領域Sにおいて金属箔5bの定められた亀裂形成が達成されるように金属箔5bを設計することも考えられる。
【0080】
誘導加熱によって、交流電磁界がケーブル外被7を貫通することができ、これが加熱につながることもケーブル外被7によって妨げられることもないので、ケーブル外被7は加熱中に完全に無傷であり得る。交流電磁界のパラメータを相応に調整しさえすればよいので、異なる直径及びケーブル構成を有するケーブル1の端区分1bも誘導コイル12によって加工することができる。
【0081】
図6において、切断ユニット14によってケーブル外被7に切込み9を作成した後の端区分1bが示されている。その場合、切断要素14aは、ケーブル外被7に半径方向に入り込み、切断要素14aは、少なくとも部分的、殊に完全に周囲に延びる切込み9を作成するように形成されている。切断ユニット14が、図示されるように、加工装置10に摺動可能に保持されている場合、切込み9を軸方向に拡大するために、切断ユニット14によってケーブル外被7の除去されるべき区分7aをケーブル端1aの方向に動かすことができる。
【0082】
その場合、切断ユニット14は、ケーブル箔6を引き抜くための手段13、特に把持要素13aと誘導コイル12との間に配置され、それにより切込み9とケーブル端1aとの間の区分はケーブル端1aと誘導コイル12との間の距離より小さい。貫通開口16から見て、誘導コイル12は、貫通開口16と切断ユニット14との間に位置決めされている。切断ユニット14の相応の位置決めは、次に相対運動及び引抜きが行われたときに、場合によっては残るケーブル箔6の残留物が損傷領域Sにおいてケーブル外被7の残る区分7bによって覆い隠され、それにより金属編組5aの接触に悪影響を及ぼさないことを確保する。
【0083】
切断ユニット14の上述の位置決めは、切込み9が誘導加熱の前に行われる、方法の代替の実施形態では、誘導コイル12によって損傷領域Sが作製されるケーブル1の領域においてケーブル外被7が無傷であることを確保する。
【0084】
図1a~図3cに示される実施例との関連ですでに述べたように、端区分1bを加工空間11に挿入する前にすでに切込み9を作成できるか、又は挿入する前にすでにケーブル外被7を加工されるべき区分において除去できるので、切断ユニット14は、加工装置10の必ずしも必要な部分ではない。
【0085】
図7において、ケーブル箔6をケーブル1に残る導体構造3に相対して、すなわち内部導体4及び金属網組5aに相対して動かす工程が示されている。並進運動、回動運動、又は屈曲運動であり得る相対運動によって、損傷領域Sにおいてケーブル箔6に亀裂が形成され、この亀裂がケーブル箔6の除去されるべき区分6aと残る区分6bとを互いに分離する。さらに、損傷領域Sにおいて、金属箔5bにも亀裂が形成され、それにより次に接触のために金属編組5aを露出させるために、ケーブル箔6及びケーブル外被7の除去されるべき区分6a、7aと一緒に金属箔5bも除去することができる。
【0086】
この実施例では、ケーブル外被7の除去されるべき区分7aを締め付ける把持要素13aを動かすことによって、ケーブル外被7に付着するケーブル箔6の除去されるべき区分6a、及びケーブル箔6に付着する金属箔5bも、特にケーブル箔6と金属箔5bが複合箔として形成されている場合に、亀裂を形成するために金属編組5aに相対して動かされる。亀裂は、通常、ケーブル箔6の熱損傷に由来して形成される。
【0087】
損傷領域Sにおいて金属箔5b及びケーブル箔6に亀裂が形成されると直ちに、ケーブル箔6及びケーブル外被7、並びに金属箔5bの除去されるべき区分6a、7aを、殊に引き抜くための手段13によって簡単にケーブル1から完全に引き抜くことができ、編組シールドとして形成された金属編組5aが露出される。
【0088】
上記に詳しく説明した実施例に示されるケーブル構成を有するケーブルのみならず、1つ又は複数の中間層を有するケーブル構成を備えるケーブルも上記の加工装置10によって相応に加工できるということに言及しておきたい。
【0089】
図4図7において、理解しやすくするために加工装置10のすべての関連する要素が共通の加工空間11に配置して示され、このことが、付加的に、ケーブル箔6の除去されるべき区分6aを除去するための全継続時間を特に短くするとしても、本発明の代替の実施形態では、特に加工装置10が複数の部分装置を有する設備として形成されている場合に、切断ユニット14及び/又はケーブル箔6を引き抜くための手段13がそれぞれ別々の他の加工空間に配置されていることが企図され得る。したがって、切断ユニット14を、加工装置10の切断装置の別の加工空間に配置することができ、及び/又はケーブル箔6を引き抜くための手段13を加工装置10の被覆剥がし装置の別の加工空間に配置することができるのに対して、誘導コイル12と殊に締付けユニット15は、加工空間11内に配置されている。
【符号の説明】
【0090】
1 ケーブル
1a ケーブル端
1b 端区分
2 ケーブル軸
3 導体構造
4 内部導体
5 外側導体構造
5a 金属編組
5b 金属箔
6 ケーブル箔
6a ケーブル箔6の除去されるべき区分
6b ケーブル箔6の残る区分
7 ケーブル外被
7a ケーブル外被7の除去されるべき区分
7b ケーブル外被7の残る区分
8 絶縁層
9 切込み
10 加工装置
11 加工空間
12 誘導コイル
13 ケーブル箔を引き抜くための手段
13a 把持要素
13b 運動装置
14 切断ユニット
14a 切断要素
15 締付けユニット
16 貫通開口
S 損傷領域
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] ケーブル(1)の端区分(1b)からケーブル箔(6)の除去されるべき区分(6a)を除去する方法であって、
ケーブル軸(2)を有するケーブル(1)の端区分(1b)を提供する工程であって、前記ケーブル(1)がケーブル外被(7)と、少なくとも1つの導電性導体構造(3、4、5)と、前記導体構造(3、4、5)のうちの1つに設けられたプラスチックからなるケーブル箔(6)とを備える、工程と、
前記提供された端区分(1b)に定められた損傷領域(S)を作成する工程であって、少なくとも前記ケーブル箔(6)が設けられた導体構造(3、4、5a、5b)が誘導加熱され、それにより前記加熱された導体構造(3、4、5a、5b)上に設けられた前記ケーブル箔(6)が前記損傷領域(S)において少なくとも部分的に熱損傷を受けることによる、工程と、
前記ケーブル箔(6)を前記導体構造(3、4、5)のうちの1つに相対して動かす工程であって、前記相対運動によって前記損傷領域(S)に亀裂が形成され、前記亀裂は、前記ケーブル箔(6)の前記除去されるべき区分(6a)を前記ケーブル(1)に残る前記ケーブル箔(6)の区分(6b)から分離する、工程と、
を包含する方法。
[2] 前記少なくとも1つの導体構造(3)が内部導体(4)及び少なくとも1つの外側導体構造(5、5a、5b)から構成され、前記ケーブル箔(6)が前記外側導体構造(5、5a、5b)のうちの1つに設けられていることを特徴とする、[1]に記載の方法。
[3] 前記ケーブル箔(6)が設けられた外側導体構造(5)が金属箔(5b)として形成されていることを特徴とする、[2]に記載の方法。
[4] 金属箔(5b)として形成された前記外側導体構造(5)が、前記誘導加熱によって前記損傷領域(S)において構造的に脆弱化されることを特徴とする、[3]に記載の方法。
[5] 前記誘導加熱が誘導コイル(12)によって行われ、前記誘導コイル(12)によって交流電磁界が生成され、前記ケーブル(1)の少なくとも前記損傷領域(S)は、前記誘導加熱中に前記誘導コイル(12)内に配置されることを特徴とする、[1]~[4]のいずれか1項に記載の方法。
[6] 前記少なくとも1つの導体構造(3、4、5)の前記誘導加熱中に前記ケーブル箔(6)が前記損傷領域(S)において前記ケーブル外被(7)によって覆われることを特徴とする、[1]~[5]のいずれか1項に記載の方法。
[7] 前記損傷領域(S)より前記端区分(1b)のケーブル端(1a)に近いところに配置された位置で、前記ケーブル外被(7)の少なくとも部分的に周囲に延びる切込み工程 をさらに包含することを特徴とする、[1]~[6]のいずれか1項に記載の方法。
[8] 前記ケーブル外被(7)の前記少なくとも部分的に周囲に延びる切込み工程は、前記定められた損傷領域(S)の作成中又は後に行われることを特徴とする、[7]に記載の方法。
[9] 前記ケーブル外被(7)の前記少なくとも部分的に周囲に延びる切込み工程が、前記定められた損傷領域(S)の作成前に行われることを特徴とする、[7]に記載の方法。
[10] 前記相対運動によって形成される亀裂は、前記ケーブル外被(7)の下の前記ケーブル箔(6)に形成されることを特徴とする、[7]~[9]のいずれか1項に記載の方法。
[11] 前記ケーブル外被(7)は、少なくとも部分的に周囲に延びる切込み(9)によって前記ケーブル外被(7)の除去されるべき区分(7a)と、前記ケーブル外被(7)の残る区分(7b)とに分割されることと、前記ケーブル外被(7)の前記除去されるべき区分(7a)が前記ケーブル軸(2)の方向に動かされ、前記動きによって、少なくとも部分的に前記ケーブル外被(7)に付着する前記ケーブル箔(6)の除去されるべき区分(6a)が引き抜かれることを特徴とする、[1]~[10]のいずれか1項に記載の方法。
[12] 少なくとも前記ケーブル箔(6)が設けられた導体構造(3、4、5a、5b)を誘導加熱する工程と、
前記ケーブル外被(7)の少なくとも部分的に周囲に延びる切込み工程と、
加工装置(10)の加工空間(11)において前記ケーブル外被(7)の除去されるべき区分(7a)と前記ケーブル箔(6)の前記除去されるべき区分(6a)とを、殊に指定される順序で一緒に除去する工程と、
が実行されることを特徴とする、[1]~[11]のいずれか1項に記載の方法。
[13] 前記ケーブル箔(6)が設けられた前記少なくとも1つの導体構造(3、4、5)が、80℃以上、好ましくは100℃以上、特に好ましくは200℃以上、特に300℃以上の温度に誘導加熱されることを特徴とする、[1]~[12]のいずれか1項に記載の方法。
[14] [1]~[13]のいずれか1項に記載の方法を実行するための加工装置(10)であって、
加工されるべきケーブル(1)の端区分(1b)を収容するための加工空間(11)であって、前記ケーブル(1)がケーブル外被(7)と少なくとも1つの導電性導体構造(3、4、5)と、前記導体構造(3、4、5)のうちの1つに設けられたプラスチックからなるケーブル箔(6)と、を含む加工空間と、
前記加工空間(11)に配置される誘導コイル(12)であって、前記誘導コイル(12)は、少なくとも、加工過程中に前記誘導コイル(12)に入っている前記ケーブル(1)の区分の導体構造(3、4、5a、5b)であって、前記ケーブル箔(6)が設けられている導体構造(3、4、5a、5b)を誘導加熱するように設計され、それにより前記加熱された導体構造(3、4、5a、5b)に設けられた前記ケーブル箔(6)が、定められた損傷領域(S)において少なくとも部分的に熱損傷を受け、続いて引き抜かれる場合に前記ケーブル箔(6)に亀裂が形成される前記ケーブル(1)の位置が決定される、誘導コイルと、
前記ケーブル箔(6)の前記損傷領域(S)によって定められた除去されるべき区分(6a)を引き抜くための手段(13)と、
を備える加工装置(10)。
[15] 加工過程中に前記ケーブル(1)の前記端区分(1b)を固定するための少なくとも1つの締付けユニット(15)が前記加工空間(11)に配置されていることを特徴とする、[14]に記載の加工装置(10)。
[16] 前記加工装置(10)が、前記ケーブル(1)の前記ケーブル外被(7)の少なくとも部分的に周囲に延びる切込みのための切断ユニット(14)をさらに備えることを特徴とする、[14]又は[15]に記載の加工装置(10)。
[17] 前記切断ユニット(14)は、前記加工空間(11)に配置されていることを特徴とする、[16]に記載の加工装置(10)。
[18] 前記加工空間(11)は、前記ケーブル(1)の前記端区分(1b)を前記加工空間(11)に挿入するための貫通開口(16)を有し、前記誘導コイル(12)は、切断ユニット(14)と貫通開口(16)との間に配置されていることを特徴とする、[17]に記載の加工装置(10)。
[19] 前記切断ユニット(14)は、前記誘導コイル(12)によって作成可能な前記損傷領域(S)より前記端区分(1b)のケーブル端(1a)に近いところに配置された位置で、前記ケーブル(1)の前記ケーブル外被(7)の前記少なくとも部分的に周囲に延びる切込みを作成可能であるように、前記誘導コイル(12)に相対して前記加工空間(11)に配置されていることを特徴とする、[17]に記載の加工装置(10)。
[20] 切込み(9)によって定められた前記ケーブル外被(7)の除去されるべき区分(7a)に接触し、続いて前記ケーブル外被(7)の前記除去されるべき区分(7a)を前記ケーブル箔(6)の除去されるべき区分(6a)と一緒に引抜き運動によって除去するために、前記ケーブル箔(6)の前記除去されるべき区分(6a)を引き抜くための手段(13)が形成されていることを特徴とする、[14]~[19]のいずれか1項に記載の加工装置(10)。
[21] 前記ケーブル箔(6)の前記除去されるべき区分(6a)を引き抜くための手段(13)は、前記加工空間(11)に配置されていることを特徴とする、[14]~[20]のいずれか1項に記載の加工装置(10)。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6
図7