(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-28
(45)【発行日】2025-04-07
(54)【発明の名称】塩化ビニル系樹脂組成物用の加工助剤
(51)【国際特許分類】
C08L 27/06 20060101AFI20250331BHJP
C08F 291/00 20060101ALI20250331BHJP
C08L 51/00 20060101ALI20250331BHJP
C08F 265/06 20060101ALI20250331BHJP
【FI】
C08L27/06
C08F291/00
C08L51/00
C08F265/06
(21)【出願番号】P 2022553457
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2021020304
(87)【国際公開番号】W WO2022070505
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2024-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2020165223
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 将也
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-31826(JP,A)
【文献】国際公開第2016/195013(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/068239(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
C08F2/00-301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一重合体と、第二重合体と
、前記第一重合体および/または前記第二重合体を覆う最外層となる第三重合体とを含む、塩化ビニル系樹脂組成物用の加工助剤であって、
前記第一重合体は、重量平均分子量が600,000~4,000,000であり、当該第一重合体全体を100重量%とし、アルキルメタクリレート60~100重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物0~40重量%からなり、
前記第二重合体は、重量平均分子量が10,000~400,000であり、当該第二重合体全体を100重量%とし、芳香族ビニル系化合物30~90重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~70重量%からなり、
前記第三重合体は、Tgが-40~60℃であり、当該第三重合体全体を100重量%とし、アルキルアクリレート30~90重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~70重量%からなり、
前記加工助剤は、前記第一重合体と前記第二重合体の合計を100重量%とし、当該第一重合体の割合が20~90重量%、当該第二重合体の割合が10~80重量%であり、
前記加工助剤は、前記加工助剤を100重量%とし、芳香族ビニル系化合物の割合が20重量%以上である、塩化ビニル系樹脂組成物用の加工助剤。
【請求項2】
前記第一重合体は、重量平均分子量が1,000,000~2,000,000であり、当該第一重合体全体を100重量%とし、アルキルメタクリレート80~100重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物0~20重量%からなり、
前記第二重合体は、重量平均分子量が15,000~150,000であり、当該第二重合体全体を100重量%とし、シアン化ビニル系化合物5~40重量%と、芳香族ビニル系化合物60~85重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物0~20重量%からなり、
前記加工助剤は、前記第一重合体と前記第二重合体の合計を100重量%とし、当該第一重合体の割合が40~80重量%、当該第二重合体の割合が20~60重量%である、請求項
1に記載の塩化ビニル系樹脂組成物用の加工助剤。
【請求項3】
前記第一重合体は、当該第一重合体全体を100重量%とし、アルキルメタクリレート90~100重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物0~10重量%からなり、
前記第二重合体は、重量平均分子量が20,000~80,000であり、
前記加工助剤は、前記第一重合体と前記第二重合体の合計を100重量%とし、当該第一重合体の割合が50~70重量%、当該第二重合体の割合が30~50重量%である、請求項
2に記載の塩化ビニル系樹脂組成物用の加工助剤。
【請求項4】
塩化ビニル系樹脂100重量部と、請求項1~
3のいずれか1項に記載の前記加工助剤0.1~20重量部とを含む、塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項5】
請求項
4に記載の塩化ビニル系樹脂組成物を成形して得られる、成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル系樹脂組成物用の加工助剤、塩化ビニル系樹脂組成物およびその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂は、その特性を生かして種々の成形品に汎用されているが、加工温度が熱分解温度に近いことや流動性に乏しいことなど、加工に関する種々の問題を有している。それら問題を克服するために、一般的にメタクリル酸メチルを主成分とする共重合体を加工助剤として配合する方法が提案されている。この方法では、塩化ビニル系樹脂が有する特性を低下させることなくゲル化を促進させて成形体の透明性や表面光沢に優れた成形品を得ることができる。しかしカレンダー加工時にカレンダーシートおよびフィルム表面にフローマークやフィッシュアイが発生し、成形品の商品価値を落とすという欠点があった。また、メタクリル酸メチルは一般的に用いられる(メタ)アクリル酸エステルの中では比較的高価であり、安価な原料を用いた加工助剤が求められていた。
【0003】
一方、特許文献1には、シアン化ビニル系化合物および芳香族ビニル系化合物を含む第一重合体と、アルキルアクリレートを含みTgが低い第二重合体を含む加工助剤を塩化ビニル系樹脂組成物に添加する方法が提案されている。この方法では、安価な芳香族ビニル系化合物であるスチレンを用いることで低コストを維持しながら、ゲル化時間の短縮が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献1に開示された安価な芳香族ビニル系化合物を含む加工助剤では、当該加工助剤と塩化ビニル系樹脂との相溶性が低いため、混練不良が起こり、これにより成形体の光沢が大幅に低下するおそれがあった。また加工助剤の溶融粘度を上げる、あるいは加工助剤の添加量を増やす等により、混練性を向上させ、光沢を良化させることは可能ではあるが、この場合には表面性(フローマークおよびフィッシュアイ)が悪化するおそれがあった。すなわち成形体の表面性と光沢は、トレードオフの関係となっており、これらを両立させることは容易ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明者が鋭意研究を行った結果、特定の組成および重量平均分子量を有する第一重合体および第二重合体を含む加工助剤により、安価な原料である芳香族ビニル系化合物を多く用いて、良好な透明性及び黄色度を維持しつつ、成形体の表面性と光沢を好適に両立できることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は以下の態様を含む。
【0007】
<1>第一重合体と第二重合体とを含む、塩化ビニル系樹脂組成物用の加工助剤であって、前記第一重合体は、重量平均分子量が600,000~4,000,000であり、当該第一重合体全体を100重量%とし、アルキルメタクリレート60~100重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物0~40重量%からなり、前記第二重合体は、重量平均分子量が10,000~400,000であり、当該第二重合体全体を100重量%とし、芳香族ビニル系化合物30~90重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~70重量%からなり、前記加工助剤は、前記第一重合体と前記第二重合体の合計を100重量%とし、当該第一重合体の割合が20~90重量%、当該第二重合体の割合が10~80重量%であり、前記加工助剤は、前記加工助剤を100重量%とし、芳香族ビニル系化合物の割合が20重量%以上である、塩化ビニル系樹脂組成物用の加工助剤。
【0008】
<2>さらに、前記第一重合体および/または前記第二重合体を覆う最外層となる第三重合体を含み、前記第三重合体は、Tgが-40~60℃であり、当該第三重合体全体を100重量%とし、アルキルアクリレート30~90重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~70重量%からなる<1>に記載の塩化ビニル系樹脂組成物用の加工助剤。
【0009】
<3>前記第一重合体は、重量平均分子量が1,000,000~2,000,000であり、当該第一重合体全体を100重量%とし、アルキルメタクリレート80~100重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物0~20重量%からなり、前記第二重合体は、重量平均分子量が15,000~150,000であり、当該第二重合体全体を100重量%とし、シアン化ビニル系化合物5~40重量%と、芳香族ビニル系化合物60~85重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物0~20重量%からなり、前記加工助剤は、前記第一重合体と前記第二重合体の合計を100重量%とし、当該第一重合体の割合が40~80重量%、当該第二重合体の割合が20~60重量%である、<1>または<2>に記載の塩化ビニル系樹脂組成物用の加工助剤。
【0010】
<4>前記第一重合体は、当該第一重合体全体を100重量%とし、アルキルメタクリレート90~100重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物0~10重量%からなり、前記第二重合体は、重量平均分子量が20,000~80,000であり、前記加工助剤は、前記第一重合体と前記第二重合体の合計を100重量%とし、当該第一重合体の割合が50~70重量%、当該第二重合体の割合が30~50重量%である、<3>に記載の塩化ビニル系樹脂組成物用の加工助剤。
【0011】
<5>塩化ビニル系樹脂100重量部と、<1>~<4>のいずれか1項に記載の前記加工助剤0.1~20重量部を含む、塩化ビニル系樹脂組成物。
【0012】
<6><5>記載の塩化ビニル系樹脂組成物を成形して得られる、成形体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、良好な透明性及び黄色度を維持しつつ、塩化ビニル系樹脂組成物の成形体の表面性(フローマーク、フィッシュアイ)と光沢を両立させる塩化ビニル系樹脂組成物の加工助剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上B以下」を意図する。
【0015】
<加工助剤>
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物用の加工助剤(以下、単に加工助剤ともいう)は、アルキルメタクリレートからなる構成単位を有する第一重合体と、芳香族ビニル系化合物からなる構成単位を有する第二重合体を少なくとも含むものである。本明細書において、「塩化ビニル系樹脂組成物用の加工助剤」とは、塩化ビニル系樹脂が有する特性を実質的に低下させることなく、塩化ビニル系樹脂組成物の成形加工時のゲル化を促進したり、成形体の表面性を改善することができる添加剤を意図する。
【0016】
加工助剤において、第一重合体と第二重合体の合計を100重量%とし、当該第一重合体の割合が20~90重量%、当該第二重合体の割合が10~80重量%である。好ましくは、第一重合体の割合が40~80重量%、第二重合体の割合が20~60重量%であり、より好ましくは、第一重合体の割合が50~70重量%、第二重合体の割合が30~50重量%である。
【0017】
加工助剤において、前記加工助剤を100重量%とし、芳香族ビニル系化合物の割合は、原料価格の優位性と成形体の表面性の向上を維持する観点から、20重量%以上である。上述の観点から、芳香族ビニル系化合物の割合は、22~60重量%が好ましく、23~50重量%がより好ましく、24~40重量%がさらに好ましく、25~35重量%が特に好ましい。尚、この段落でいう芳香族ビニル系化合物は、加工助剤に含まれる芳香族ビニル系化合物の全体を指し、第二重合体に含まれる芳香族ビニル系化合物に加えて、第一重合体及び/又は第三重合体が芳香族ビニル系化合物を含む場合、第一重合体及び/又は第三重合体に含まれる芳香族ビニル系化合物をも包含する。
【0018】
本発明者は、塩化ビニル系樹脂組成物に対して、第一重合体と第二重合体のどちらか一方のみからなる加工助剤を用いた場合、得られる成形体の光沢と表面性(フローマーク、フィッシュアイ)を好適に両立させることが困難であることを見出した。そして第一重合体と第二重合体の両方を有し、それらが特定の組成、比率、および重量平均分子量を有する加工助剤であれば、得られる成形体の光沢と表面性を好適に両立することができることを見出した。
【0019】
本明細書において、「フローマーク」とは、塩化ビニル系樹脂組成物を成形する際のロールの間隙に発生した溶融樹脂塊の一部が当該間隙を通過する際に、成形品の表面に筋状あるいは縞状の模様となって残った部分を指す。また、「フィッシュアイ」とは、加工助剤が塩化ビニル系樹脂中で分散せずに凝集した球形状や楕円形状の異物であり、最大長さLが50μm以上であるものとして定義する。
【0020】
加工助剤は、粒状構造であることが好ましく、1粒子中に第一重合体と第二重合体が含まれていることがより好ましく、第一重合体と第二重合体が互いに化学結合されずに、1粒子中で独立に存在することが特に好ましい。すなわち加工助剤は、架橋構造を有していないことが好ましい。また塩化ビニル系樹脂組成物中における加工助剤の構造は、特に限定されず、粒状構造でもよいし、線状構造でもよい。
【0021】
加工助剤が粒状構造である場合、製造時の粒子の安定性および重合速度(生産性)の点から、加工助剤の体積平均粒子径は、0.05μm~0.5μmが好ましく、0.07μm~0.3μmがより好ましく、0.1μm~0.2μmがさらに好ましい。体積平均粒子径は、粉末化した加工助剤を測定しても良いし、後述するようにラテックス中の加工助剤を測定しても良い。
【0022】
加工助剤は、第一重合体と第二重合体のみから構成されてもよいが、加工助剤の造粒性の観点から、第一重合体と第二重合体に加えて第三重合体をさらに含んでいてもよい。その場合、第三重合体は、第一重合体および/または第二重合体を覆う最外層となる。また各重合体は一層構造でもよいし、多層構造でもよい。すなわち第一重合体、第二重合体、第三重合体は、それぞれが一層構造でもよいし、多層構造でもよい。
【0023】
加工助剤において、第三重合体の含有量は、造粒性とコストのバランスの観点から、前記第一重合体と前記第二重合体の合計を100重量部とし、1~50重量部であることが好ましく、5~30重量部がより好ましく、8~15重量部がさらに好ましい。
【0024】
<第一重合体>
第一重合体は、重量平均分子量が600,000~4,000,000である。第一重合体の重量平均分子量は、加工性と、成形体の光沢と表面性を好適に両立させる観点から、700,000~3,500,000であることが好ましく、800,000~2,500,000であることがより好ましく、1,000,000~2,000,000であることがさらに好ましい。
【0025】
第一重合体は、当該第一重合体全体を100重量%とし、アルキルメタクリレート60~100重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物(即ち、アルキルメタクリレートと共重合可能なその他のビニル系化合物)0~40重量%からなる。第一重合体が塩化ビニル系樹脂への相溶性が高いアルキルメタクリレートを含むことによって、加工性と成形体の光沢を向上させることができる。上述の観点から、当該第一重合体全体を100重量%とし、アルキルメタクリレート70~100重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物0~30重量%であることが好ましく、アルキルメタクリレート80~100重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物0~20重量%であることがより好ましく、アルキルメタクリレート90~100重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物0~10重量%であることがさらに好ましい。
【0026】
アルキルメタクリレートとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ウンデシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、テトラデシルメタクリレート、ペンタデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、オクデシルメタクリレート等の炭素数1~20の直鎖アルキルメタクリレート;イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、イソペンチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、イソウンデシルメタクリレート、イソドデシルメタクリレート、イソトリデシルメタクリレート、イソテトラデシルメタクリレート、イソペンタデシルメタクリレート、イソヘキサデシルメタクリレート、イソヘプタデシルメタクリレート、イソオクタデシルメタクリレート等の炭素数3~20の分枝鎖アルキルメタクリレート;シクロプロピルメタクリレート、シクロブチルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロオクチルメタクリレート、シクロデシルメタクリレート等の炭素数3~20の環状アルキルメタクリレート等が挙げられる。これらを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
前記アルキルメタクリレートのアルキル基の炭素数は、好ましくは1~14、より好ましくは1~12、さらに好ましくは1~10、さらにより好ましくは1~8、特に好ましくは1~6である。上述のうち、直鎖アルキルメタクリレートがより好ましく、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートがさらに好ましい。
【0028】
アルキルメタクリレートと共重合可能なその他のビニル系化合物としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ウンデシルアクリレート、ドデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、テトラデシルアクリレート、ペンタデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート等の炭素数1~20の直鎖アルキルアクリレート;イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、s-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソペンチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソウンデシルアクリレート、イソドデシルアクリレート、イソトリデシルアクリレート、イソテトラデシルアクリレート、イソペンタデシルアクリレート、イソヘキサデシルアクリレート、イソヘプタデシルアクリレート、イソオクタデシルアクリレート等の炭素数3~20の分枝鎖アルキルアクリレート;シクロプロピルアクリレート、シクロブチルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロオクチルアクリレート、シクロデシルアクリレート等の炭素数3~20の環状アルキルアクリレート;フェニルメタクリレート、メチルフェニルメタクリレート等のアリールメタクリレート;ベンジルメタクリレート等のアラルキルメタクリレート;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和酸無水物;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和酸;マレイミド、N-メチルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-(p-メチルフェニル)マレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のα,β-不飽和ジカルボン酸のイミド化合物;グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有不飽和化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド;アクリルアミン、メタクリル酸アミノメチル、メタクリル酸アミノエーテル、メタクリル酸アミノプロピル、アミノスチレン等のアミノ基含有不飽和化合物;3-ヒドロキシ-1-プロペン、4-ヒドロキシ-1-ブテン、シス-4-ヒドロキシ-2-ブテン、トランス-4-ヒドロキシ-2-ブテン、3-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロペン、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシスチレン等の水酸基含有不飽和化合物;ビニルオキサゾリン等のオキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
前記アルキルアクリレートのアルキル基の炭素数は、好ましくは1~14、より好ましくは1~12、さらに好ましくは1~10、さらにより好ましくは1~8、特に好ましくは1~6である。上述のうち、直鎖アルキルアクリレートがより好ましく、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートがさらに好ましく、ブチルアクリレートが特に好ましい。
【0030】
<第二重合体>
第二重合体は、重量平均分子量が10,000~400,000である。高分子量体である第一重合体だけを、一般的なシート用途の塩化ビニル系樹脂組成物に添加した場合は、溶融粘度が高くなりすぎてフローマークおよびフィッシュアイが悪化する傾向がある。しかし、比較的低分子量の第二重合体を第一重合体と共に用いることにより、フローマークおよびフィッシュアイを改善することができる。この観点から、第二重合体の重量平均分子量は、15,000~150,000が好ましく、15,000~120,000がより好ましく、15,000~100,000がさらに好ましく、20,000~80,000が特に好ましい。
【0031】
第二重合体は、当該第二重合体全体を100重量%とし、芳香族ビニル系化合物30~90重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物(即ち、芳香族ビニル系化合物と共重合可能なその他のビニル系化合物)10~70重量%からなる。第二重合体は、芳香族ビニル系化合物を含むことにより、例えばメチルメタクリレートを多く含む加工助剤と比較して、溶融粘度を低下させることができ、フローマークおよびフィッシュアイを低減できる。上述の観点から、当該第二重合体全体を100重量%とし、芳香族ビニル系化合物50~90重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物10~50重量%であることが好ましい。
【0032】
芳香族ビニル系化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロルスチレン等が挙げられる。原料価格の観点から、スチレンが好ましい。これらを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
芳香族ビニル系化合物と共重合可能なその他のビニル系化合物としては、上述の第一重合体において例示した化合物、およびシアン化ビニル系化合物が挙げられる。シアン化ビニル系化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。これらは、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0034】
第二重合体は、加工性と成形体の透明性や黄色度の観点から、当該第二重合体全体を100重量%とし、シアン化ビニル系化合物5~40重量%と、芳香族ビニル系化合物60~85重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物(即ち、シアン化ビニル系化合物及び芳香族ビニル系化合物と共重合可能なその他のビニル系化合物)0~20重量%からなることが好ましい。前記シアン化ビニル系化合物の割合は、10~28重量%がより好ましく、15~25重量%がさらに好ましい。前記芳香族ビニル系化合物の割合は、65~85重量%がより好ましく、70~85重量%がさらに好ましい。
【0035】
<第三重合体>
第三重合体のTgは、加工助剤の造粒性を向上させる観点から、-40℃~60℃の範囲が好ましく、-30℃~40℃がより好ましく、-25℃~20℃がさらに好ましい。
第三重合体は、加工助剤のTgを低下させ、造粒性を向上させる観点から、第三重合体全体を100重量%として、アルキルアクリレート30~90重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物(即ち、アルキルアクリレートと共重合可能なその他のビニル系化合物)10~70重量%からなることが好ましく、アルキルアクリレート50~80重量%と、共重合可能なその他のビニル系化合物20~50重量%からなることがより好ましい。アルキルアクリレートとしては、上述の第一重合体および第二重合体において例示した化合物を同様に用いることができる。アルキルアクリレートと共重合可能なその他のビニル系化合物としては、上述の第二重合体において例示した化合物、および芳香族ビニル系化合物を同様に用いることができる。
【0036】
<加工助剤の製造方法>
加工助剤は、例えば、回収の容易性、重合物の低臭気性、ハンドリング性、耐ブロッキング性および経済性等の観点から、乳化重合法、懸濁重合法等の水を媒体とした重合法によって得ることができる。このうち、塩化ビニル系樹脂への分散性の観点から乳化重合法がより好ましい。さらに、粒子構造体を得ることができる乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、滴下懸濁重合法は、二以上の重合体構造を得るのに特に好ましい重合法である。
【0037】
一実施形態によると、まず、第一重合体を構成するモノマーや乳化剤、ラジカル重合剤などを水に添加して重合を行い、粒子状の第一重合体を形成する。次に、この粒子状の第一重合体を含む系に、第二重合体を構成するモノマーや乳化剤、ラジカル重合剤、連鎖移動剤などを追加して更に重合を行い、第二重合体を形成する。更に、第三重合体を構成するモノマーや乳化剤、ラジカル重合剤などを追加して更に重合を行い、最外層として第三重合体を形成する。以上により、加工助剤を製造することができる。但し、第一重合体と第二重合体の形成順序はこれに限定されず、第二重合体を形成した後に、第一重合体を形成してもよい。
【0038】
乳化重合法に用いる乳化剤としては、従来公知のものを使用でき、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、スルホコハク酸ジエステル塩などのアニオン性乳化剤;アルキルアミン塩等のカチオン性乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のノニオン性乳化剤等が挙げられる。なかでも、重合安定性の点で、アニオン性乳化剤が好ましく、脂肪酸塩、スルホコハク酸ジエステル塩がより好ましく、半硬化牛脂脂肪酸カリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムがさらに好ましい。これらを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、重合の助触媒としてエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、硫酸第一鉄等、ラテックスの粘度調整剤として硫酸ナトリウム等、pH調整剤として水酸化ナトリウム等を用いてもよい。
【0039】
第一重合体および第二重合体の重量平均分子量は、これらに含まれるモノマー比を変更することにより、調節することが可能である。また、これらの重量平均分子量は、ラジカル重合剤および必要に応じて使用される連鎖移動剤の使用量、重合温度、重合時間等を変更することにより、調節することも可能である。
【0040】
乳化重合法に用いるラジカル重合剤としては、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシラウレイト等の有機ハイドロパーオキサイド類;前記有機ハイドロパーオキサイド類からなる酸化剤と、亜硫酸塩、亜硫酸水素、チオ硫酸塩、第一金属塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート等の還元剤との組み合わせによるレドックス系の開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、2-カルバモイルアザイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物等を使用することができる。なかでも、ラジカル重合剤は、過硫酸カリウムであることが好ましい。
【0041】
ラジカル重合剤の使用量は、使用されるモノマー100重量部に対して、例えば0.0001~1.0重量部であり、好ましくは0.0005~0.5重量部であり、より好ましくは0.001~0.1重量部である。ラジカル重合剤量が多いと、重量平均分子量が低下する傾向があり、ラジカル重合剤量が少ないと、重量平均分子量が上昇する傾向がある。
【0042】
<連鎖移動剤>
第二重合体を乳化重合する時には連鎖移動剤を使用することが好ましい。該連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ヘキシルメルカプタン、n-ヘキサデシルメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン、t-テトラデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、テトラエチルチウラムスルフィド、四塩化炭素、臭化エチレン、ペンタンフェニルエタンなどの炭化水素塩類、テルペン類、またはアクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2-エチルヘキシルチオグリコール、α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。なかでも、連鎖移動剤は、メルカプタン類であることが好ましく、t-ドデシルメルカプタンであることがより好ましい。これら連鎖移動剤は、単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0043】
連鎖移動剤の使用量は、単量体成分100重量部に対し、通常0~1重量部用いる。連鎖移動剤を使用する場合、連鎖移動剤の使用量は、フローマークおよびフィッシュアイと、光沢のバランスから、例えば0.001~3重量部であり、好ましくは0.01~1重量部であり、より好ましくは0.05~0.5重量部である。
【0044】
<重合時間>
重合時間は、使用するモノマー、乳化剤、ラジカル重合剤、必要に応じて使用される連鎖移動剤やそれらの量に応じて変更され得るが、例えば1時間~50時間又は5時間~24時間である。
重合温度は、使用するモノマー、乳化剤、ラジカル重合剤、必要に応じて使用される連鎖移動剤やそれらの量に応じて調節され得るが、例えば10℃~90℃であり、好ましくは30℃~80℃である。
【0045】
<粒子径>
ラテックス中の加工助剤の体積平均粒子径は、例えば0.100μm以上0.500μm以下である。体積平均粒子径は、粒度分析計(日機装株式会社製、Nanotracwave)により算出することができる。
【0046】
<処理>
次に得られた加工助剤を含むラテックスを例えば凝固法により粉末化すればよい。加工助剤を粉体化する場合、上述の乳化重合で得られたラテックスに塩凝固や酸凝固等の凝固法(無機塩類(好ましくは2価の無機塩類、より好ましくは塩化カルシウム)、酸類などの凝固剤に接触させる)で処理する方法や、ラテックスを噴霧乾燥によって粉体を得る方法等を用いればよい。凝固した後に、更に熱処理、脱水、洗浄、乾燥工程等を行って、加工助剤を調製してもよい。
【0047】
<樹脂組成物>
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂100重量部と、前記加工助剤0.1~20重量部を含む。加工助剤の添加によって良好な効果を得る観点から、加工助剤の量は0.1重量部以上が好ましく、加工助剤の塩化ビニル系樹脂への分散性を良好にする観点から、20重量部以下が好ましい。前記加工助剤の量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、好ましくは0.2~18重量部、より好ましくは0.3~15重量部、さらに好ましくは0.5~12重量部である。
【0048】
塩化ビニル系樹脂組成物には、必要により、耐衝撃改良剤、安定剤、滑剤、可塑剤、着色剤、充填剤、発泡剤等を加えてもよい。
【0049】
塩化ビニル系樹脂組成物は、各種成分を混合し、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混練機等を用い、例えば100~200℃で混練することにより得ることができる。
【0050】
<成形体>
本発明の成形体は、上述の塩化ビニル系樹脂組成物を成形して得られる。例えば、混練した塩化ビニル系樹脂組成物を、押出成形、ブロー成形、射出成形、カレンダー成形、真空成形、インフレーション成形等により成形することによって塩化ビニル系樹脂組成物の成形体を得ることができる。成形体は、例えば、厚さ0.2~1.0mmのシート又は0.01~0.2mmのフィルムである。上述の塩化ビニル系樹脂組成物をカレンダー成形に適用した場合、フローマークやフィッシュアイの発生を抑制することが可能であるとともに、優れた光沢、透明性、黄色度を持つシート又はフィルムが得られる。また上述の塩化ビニル系樹脂組成物は、その他の公知の塩化ビニル系樹脂組成物の成形品の製造に用いることができる。例えば、壁材、床材、窓枠、壁材、波板等の建材;自動車用内外装材;パッキン、ガスケット、ホース、パイプ、継ぎ手、電線、ケーブル等に好適に使用することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
<略称>
AN:アクリロニトリル
St:スチレン
BA:ブチルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
t-DM:t-ドデシルメルカプタン
【0053】
<第一重合体または第二重合体の重量平均分子量>
第一重合体または第二重合体をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、その可溶分に対して、ポリスチレンを基準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製、HLC-8220GPC)を使用することにより、重量平均分子量を求めた(試料溶液:試料20mg/THF10mL、測定温度:25℃、検出器:示差屈折系およびUV検出器、注入量:1mL)。
【0054】
<第三重合体のTg>
「ポリマーハンドブック 第4版(Polymer Handbook Fourth Edition)」 ジェー・ブランド(J.Brand)著、ワイリー(Wiley)社1998年発行に記載のホモポリマーのTgから各モノマーのTgを算出し、これに基づき第三重合体のTgを算出した。
【0055】
<シートの光沢>
シート物性の指標として、塩化ビニル系樹脂組成物のシート光沢を評価した。塩化ビニル系樹脂(株式会社カネカ製 商品名:カネビニールS-1008 平均重合度800)100重量部に、各実施例又は比較例の加工助剤1重量部、耐衝撃改良剤(株式会社カネカ製、商品名カネエースB-625)6.0重量部、ブチル錫メルカプト系安定剤(日東化成株式会社製:TVS#1360)1.0重量部、内部滑剤(Emery OleoChemicals社製 商品名:GH4)0.5重量部及び外部滑剤(Emery OleoChemicals社製 商品名:G70S)0.4重量部を粉体状態で混合した。得られた混合物を、8インチテストロール(関西ロール株式会社製、テストロール)を用い、回転数17rpm、198℃で2分間混練りして、厚さ0.4mmの試験片を作製した。得られた試験片に対してBYK Gardner社製の光沢計を使用し、試験片中央の5か所で60°光線の反射率を測定し、その平均値を算出した。
【0056】
<フローマーク(シートHaze)>
表面性の指標として、塩化ビニル系樹脂組成物のフローマークを評価するために、ロール成形したシートの両端のHAZE値を測定した。シート両端のHAZE値はフローマーク発生有無の指標であり、シート両端のHAZE値が低いほどフローマークの発生が抑制されていることを示す。塩化ビニル系樹脂(株式会社カネカ製 商品名:カネビニールS-1008 平均重合度800)100重量部に、各実施例又は比較例の加工助剤1.6重量部、耐衝撃改良剤(株式会社カネカ製、商品名カネエースB-625)6.0重量部、ブチル錫メルカプト系安定剤(日東化成株式会社製:TVS#1360)1.0重量部、内部滑剤(Emery OleoChemicals社製 商品名:GH4)0.5重量部及び外部滑剤(Emery OleoChemicals社製 商品名:G70S)0.4重量部を粉体状態で混合した。得られた混合物を、8インチテストロール(関西ロール株式会社製、テストロール)を用い、回転数17rpm、207℃で2分間混練りして、厚さ0.5mmの試験片(シート)を作製した。JIS-K7136に準拠して、ヘイズメータ(日本電色工業株式会社製 商品名:NDH4000)を用いて、シート両端の計18か所でHAZE値を測定し、その平均値を算出した。
【0057】
<フィッシュアイの個数>
表面性の指標として、塩化ビニル系樹脂組成物の成形体のフィッシュアイの個数を測定した。塩化ビニル系樹脂(株式会社カネカ製 商品名:カネビニールS-1008 平均重合度800)100重量部に、各実施例又は比較例の加工助剤10重量部、可塑剤(株式会社ジェイ・プラス製:DOP)50重量部、Ba/Zn系安定剤(株式会社ADEKA製:AC-186)3.0重量部、滑剤(堺化学株式会社製:H-St)0.5重量部、酸化チタン(堺化学工業株式会社製:R-62N)0.4重量部及びカーボンブラック(東海カーボン株式会社製:シースト3H)0.02重量部を粉体状態で混合した。得られた混合物を、8インチテストロール(関西ロール株式会社製、テストロール)を用い、回転数18rpm、170℃で1分間混練りし、厚さ0.4mmの試験片を作製した。該試験片3cm×3cmの面積中のフィッシュアイの個数を目視で数えた。
【0058】
<全光線透過率>
透明性に係る指標として、塩化ビニル系樹脂組成物の全光線透過率を測定した。塩化ビニル系樹脂(株式会社カネカ製 商品名:カネビニールS-1008 平均重合度800)100重量部に、各実施例又は比較例の加工助剤3重量部、ブチル錫メルカプト系安定剤(日東化成株式会社製:TVS#1380)1.0重量部、内部滑剤(Emery OleoChemicals社製 商品名:GH4)0.5重量部及び外部滑剤(Emery OleoChemicals社製 商品名:G70S)0.4重量部を粉体状態で混合した。得られた混合物を、8インチテストロール(関西ロール株式会社製、テストロール)を用い、回転数17rpm、165℃で5分間混練りした後、180℃のプレスで15分間加圧、成形して、厚さ1.0mmのプレス板を作製した。このプレス板より厚さ5.0mm、長さ30mm、幅40mmの透明性試験用テストピースを作製した。得られたテストピースを用いてJIS K 7375規格「プラスチック-全光線透過率及び全光線反射率の求め方」に従い、23℃で透明性の指標として全光線透過率を測定した。
【0059】
<黄色度(Yellow Index、YI)>
塩化ビニル系樹脂組成物の黄色度(反射YI)を測定した。塩化ビニル系樹脂(株式会社カネカ製 商品名:カネビニールS-1008 平均重合度800)100重量部に、各実施例又は比較例の加工助剤3重量部、ブチル錫メルカプト系安定剤(日東化成株式会社製:TVS#1380)1.0重量部、内部滑剤(Emery OleoChemicals社製 商品名:GH4)0.5重量部及び外部滑剤(Emery OleoChemicals社製 商品名:G70S)0.4重量部を粉体状態で混合した。得られた混合物を、8インチテストロール(関西ロール株式会社製、テストロール)を用い、回転数17rpm、165℃で5分間混練りした後、180℃のプレスで15分間加圧、成形して厚さ1.0mmのプレス板を作製した。このプレス板より厚さ5.0mm、長さ30mm、幅40mmの黄色度試験用テストピースを作製した。得られたテストピースを用いてJIS K 7373規格「プラスチック-黄色度及び黄変度の求め方」に従い、23℃で黄色度を測定した。
【0060】
<第一重合体の重量平均分子量の比較>
(実施例1)
あらかじめ水に溶解したジオクチルコハク酸ナトリウム1.2部(重量部、以下同様)及び硫酸ナトリウム0.05部を攪拌機付き反応器に入れ、さらに水を加えて水の全量を200部とした。反応器内をチッ素置換して空間部および水中の酸素を除去したのち、撹拌しつつ内容物を75℃まで昇温した。
【0061】
そこに、過硫酸カリウム0.01部を添加したのち、メチルメタクリレート47.5部、ブチルアクリレート2.5部を2時間かけて連続追加し、第一重合体の重合を行った。
【0062】
第一重合体の重合終了後、ジオクチルコハク酸ナトリウム0.1部、過硫酸カリウム0.02部を添加したのち、そこにさらにブチルアクリレート2.6部、スチレン28.9部、アクリロニトリル8.5部、t-ドデシルメルカプタン0.4部を2時間かけて連続追加して第二重合体の重合を行った。
【0063】
第二重合体の重合終了後、ジオクチルコハク酸ナトリウム0.1部、過硫酸カリウム0.02部を添加したのち、そこにさらにブチルアクリレート7部、メチルメタクリレート3部を30分かけて連続追加して第三重合体の重合を行った。追加終了時に、過硫酸カリウム0.02部を添加し、内容物を75℃に保ったまま攪拌を1時間以上続けて重合を完結させたのちに冷却し、加工助剤のラテックスを得た。
【0064】
70℃の温度条件で、濃度1重量%に希釈した塩化カルシウム水溶液4部に、得られた加工助剤のラテックスを加えて凝固を行った。次いで熱処理、脱水、洗浄および乾燥を行ない、加工助剤の粉末を得た。得られた加工助剤の粉末を用いて、上述の塩化ビニル系樹脂組成物の成形体としての評価を行った。
【0065】
(実施例2~3および比較例1)
表1に示した組成にしたがって第一重合体の重量平均分子量を変更したこと以外は、実施例1と同様に、実施例2~3および比較例1の加工助剤の粉末を得た。得られた加工助剤の粉末を用いて、上述の塩化ビニル系樹脂組成物の成形体としての評価を行った。尚、第一重合体の重量平均分子量は、第一重合体製造時に添加する過硫酸カリウムの量を変更することによって調節した。
【0066】
【0067】
表1の結果より、第一重合体の重量平均分子量が高くなるほど、シートの光沢は良くなった。また第一重合体の重量平均分子量が低くなるほど、シートのフローマーク(シートHAZE)は良くなった。具体的には実施例1~3と比較例1を比較すると、実施例1~3で得られた加工助剤を用いると、良好な透明性及び黄色度を維持しつつ、光沢、フローマークのバランスが良好で、フィッシュアイ特性に優れたシートが得られた。特に実施例1で、光沢、フローマークのバランスがより良好なシートが得られた。しかし第一重合体の重量平均分子量を本発明の範囲を超えて高くした比較例1で得られた加工助剤を用いた場合には、光沢とフローマークのバランスが悪くなり、光沢は良好となるが、フローマークが悪化した。
【0068】
<第一重合体の比率と組成の比較>
(実施例4~7)
表2に示した組成にしたがって第一重合体の比率及び/又は組成を変更したこと以外は、実施例1と同様に、実施例4~7の加工助剤の粉末を得た。得られた加工助剤の粉末を用いて、上述の塩化ビニル系樹脂組成物の成形体としての評価を行った。
【0069】
【0070】
表2の結果より、第一重合体中のメチルメタクリレートの重量比を増やすほど、光沢が良くなった。具体的には実施例1、4、5を比較すると、実施例1、4で得られた加工助剤を用いると、良好な透明性及び黄色度を維持しつつ、光沢、フローマークのバランスが良好で、フィッシュアイ特性に優れたシートが得られた。また、第一重合体の比率を増やすほど、光沢が向上した。具体的には実施例1、6、7を比較すると、実施例1、6で得られた加工助剤を用いると、良好な透明性及び黄色度を維持しつつ、光沢、フローマークのバランスが良好で、フィッシュアイ特性に優れたシートが得られた。
【0071】
<第二重合体の組成と重量平均分子量の比較と、特許文献1相当品との比較>
(実施例8~12、比較例2~3)
表3に示した組成にしたがって第二重合体の組成及び/又は重量平均分子量を変更したこと以外は、実施例1と同様に、実施例8~12の加工助剤の粉末を得た。得られた加工助剤の粉末を用いて、上述の塩化ビニル系樹脂組成物の成形体としての評価を行った。尚、第二重合体の重量平均分子量は、第二重合体製造時に添加するt-ドデシルメルカプタンの量を変更することによって調節した。
【0072】
(比較例4)
特許文献1に相当する加工助剤を下記のとおり作製した。あらかじめ水に溶解したジオクチルコハク酸ナトリウム0.5部(重量部、以下同様)及び硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.0008部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0032部及びホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.06部を攪拌機付き反応器に入れ、さらに水を加えて水の全量を200部とした。
【0073】
反応器内をチッ素置換して空間部および水中の酸素を除去したのち、撹拌しつつ内容物を60℃まで昇温しつつ、メチルメタクリレート18部、ブチルアクリレート6部、スチレン43.4部、アクリロニトリル12.6部、及びt-ブチルハイドロパーオキサイド0.05部の混合物を170分かけて連続追加しながら重合を行った。その際、連続追加の60分目と120分目にそれぞれドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2部を追加した。
【0074】
そこに更に、メチルメタクリレート14部、ブチルアクリレート6部、及びt-ブチルハイドロパーオキサイド0.05部の混合物を50分かけて連続追加して重合を行い、共重合成分の追加終了後もそのまま内容物を60℃に保ったまま攪拌を1時間以上続けて重合を完結させたのちに冷却し、加工助剤のラテックスを得た。
【0075】
得られた加工助剤に70℃の温度条件で1%に希釈した塩化カルシウム4部を加えて凝固を行い、熱処理、脱水、洗浄及び乾燥を行ない、加工助剤の粉末を得た。得られた加工助剤を用いて、上述の塩化ビニル系樹脂組成物としての評価を行った。
【0076】
【0077】
表3の結果より、第二重合体中のアクリロニトリルの重量比を減らし、スチレン重量比を増やすほど、フローマークが向上した。具体的には実施例1、8、9を比較すると、実施例1、9で得られた加工助剤を用いると、良好な透明性及び黄色度を維持しつつ、光沢、フローマークのバランスが良好で、フィッシュアイ特性に優れたシートが得られた。
【0078】
また、第二重合体の重量平均分子量が低いほど、フローマーク、フィッシュアイ特性が良好であった。具体的には実施例1、10、11を比較すると、実施例1、10で得られた加工助剤を用いると、良好な透明性及び黄色度を維持しつつ、光沢、フローマークのバランスがより良好で、フィッシュアイ特性に優れたシートが得られた。しかし第二重合体の重量平均分子量を本発明の範囲を超えて高くした比較例2、3で得られた加工助剤を用いた場合には、フィッシュアイ特性が大きく悪化した。
【0079】
さらに、加工助剤中のスチレン量の割合が本発明の範囲内であっても、第一重合体、第二重合体が本発明の範囲外である比較例4で得られた加工助剤を用いると、光沢、フィッシュアイ特性が悪化した。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の一態様は、良好な透明性及び黄色度を維持しつつ、表面性と光沢に優れた塩化ビニル系樹脂組成物およびその成形体の製造に好適に利用することができる。