(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-28
(45)【発行日】2025-04-07
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20250331BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20250331BHJP
【FI】
G03G15/20 535
G03G15/20 510
G03G21/00 384
(21)【出願番号】P 2023004515
(22)【出願日】2023-01-16
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智則
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-033713(JP,A)
【文献】特開2004-013045(JP,A)
【文献】特開2021-026228(JP,A)
【文献】特開2019-020680(JP,A)
【文献】特開2004-004201(JP,A)
【文献】特開平06-186875(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0259507(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
13/34
15/00
15/20
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材にトナー像を形成する画像形成部と、
前記トナー像を前記記録材に加熱定着する定着部と、
記録材の搬送を制御する制御部と、
を備える画像形成装置において、
前記定着部において複数の記録材に対して連続的に加熱定着処理する連続定着動作であって、搬送方向と直交する幅が第一の幅の第一の記録材を加熱定着処理する前に、前記幅が前記第一の幅よりも狭い第二の幅の第二の記録材を複数連続して加熱定着処理する連続定着動作において、
前記制御部は、
前記第二の記録材が連続する数が第一の閾値未満の場合は、複数の前記第二の記録材を第一の速度で搬送し、続く前記第一の記録材を前記第一の速度で搬送し、
前記第二の記録材が連続する数が前記第一の閾値以上の場合は、複数の前記第二の記録材を前記第一の速度よりも遅い第二の速度で搬送
し、
前記第一の閾値は、複数の前記第二の記録材を前記第一の速度で搬送し、続く前記第一の記録材を前記第一の速度で搬送するとした場合に、前記第一の記録材を定着する前に、所定の冷却期間を設けることが必要となる、前記第二の記録材が連続する数であり、
前記制御部は、
前記第二の記録材が連続する数が前記第一の閾値以上の場合は、前記第二の速度で搬送する複数の前記第二の記録材に続く前記第一の記録材を前記第二の速度で搬送することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
記録材にトナー像を形成する画像形成部と、
前記トナー像を前記記録材に加熱定着する定着部と、
記録材の搬送を制御する制御部と、
を備える画像形成装置において、
前記定着部において複数の記録材に対して連続的に加熱定着処理する連続定着動作であって、搬送方向と直交する幅が第一の幅の第一の記録材を加熱定着処理する前に、前記幅が前記第一の幅よりも狭い第二の幅の第二の記録材を複数連続して加熱定着処理する連続定着動作において、
前記制御部は、
前記第二の記録材が連続する数が第一の閾値未満の場合は、複数の前記第二の記録材を第一の速度で搬送し、続く前記第一の記録材を前記第一の速度で搬送し、
前記第二の記録材が連続する数が前記第一の閾値以上の場合は、複数の前記第二の記録材を前記第一の速度よりも遅い第二の速度で搬送し、
前記第一の閾値は、複数の前記第二の記録材を前記第一の速度で搬送し、続く前記第一の記録材を前記第一の速度で搬送するとした場合に、前記第一の記録材を定着する前に、所定の冷却期間を設けることが必要となる、前記第二の記録材が連続する数であり、
前記制御部は、
前記第二の記録材が連続する数が前記第一の閾値以上であって、続く前記第一の記録材が連続する数が第二の閾値未満の場合は、複数の前記第二の記録材を前記第二の速度で搬送し、複数の前記第一の記録材を前記第二の速度で搬送し、
前記第二の記録材が連続する数が前記第一の閾値以上であって、続く前記第一の記録材が連続する数が前記第二の閾値以上の場合は、複数の前記第二の記録材を前記第二の速度で搬送し、複数の前記第一の記録材を前記第一の速度で搬送することを特徴とす
る画像形成装置。
【請求項3】
前記第二の閾値は、複数の前記第二の記録材を前記第二の速度で搬送し、複数の前記第一の記録材を前記第一の速度で搬送した場合に、前記連続定着動作の完了に要する第一の時間が、複数の前記第二の記録材を前記第二の速度で搬送し、複数の前記第一の記録材を前記第二の速度で搬送した場合に、前記連続定着動作の完了に要する第二の時間よりも短くなる、前記第一の記録材が連続する数であることを特徴とする請求項
2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第一の時間は、記録材の搬送速度を切り替えるのに要する切替時間を含むことを特徴とする請求項
3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
記録材にトナー像を形成する画像形成部と、
前記トナー像を前記記録材に加熱定着する定着部と、
記録材の搬送を制御する制御部と、
を備える画像形成装置において、
前記定着部において複数の記録材に対して連続的に加熱定着処理する連続定着動作であって、搬送方向と直交する幅が第一の幅の第一の記録材を加熱定着処理する前に、前記幅が前記第一の幅よりも狭い第二の幅の第二の記録材を複数連続して加熱定着処理する連続定着動作において、
前記制御部は、
前記第二の記録材が連続する数が第一の閾値未満の場合は、複数の前記第二の記録材を第一の速度で搬送し、続く前記第一の記録材を前記第一の速度で搬送し、
前記第二の記録材が連続する数が前記第一の閾値以上の場合は、複数の前記第二の記録材を前記第一の速度よりも遅い第二の速度で搬送し、
前記第一の閾値は、複数の前記第二の記録材を前記第一の速度で搬送し、続く前記第一の記録材を前記第一の速度で搬送するとした場合に、前記第一の記録材を定着する前に、所定の冷却期間を設けることが必要となる、前記第二の記録材が連続する数であり、
複数の前記第二の記録材を連続して加熱定着処理した後に前記第一の記録材を加熱定着処理する連続定着動作を複数連続して実行する場合であって、連続する前記連続定着動作のうち、先の第一の連続定着動作において、前記第一の記録材を前記第二の速度で搬送して前記第一の連続定着動作を完了し、次の第二の連続定着動作における前記第二の記録材が連続する数が前記第一の閾値未満の場合において、
前記制御部は、
前記第二の連続定着動作における前記第二の記録材が連続する数が第三の閾値未満の場
合は、記録材の搬送速度を前記第二の速度のまま、前記第二の連続定着動作を実行し、
前記第二の連続定着動作における前記第二の記録材が連続する数が前記第三の閾値以上の場合は、前記搬送速度を前記第一の速度に切り替えて、前記第二の連続定着動作を実行することを特徴とす
る画像形成装置。
【請求項6】
前記第三の閾値は、前記搬送速度を前記第一の速度に切り替えて前記第二の連続定着動作を実行した場合に、前記第二の連続定着動作の完了に要する第一の時間が、前記搬送速度を前記第二の速度のままで前記第二の連続定着動作を実行した場合に、前記第二の連続定着動作の完了に要する第二の時間よりも短くなる、前記第二の連続定着動作における第二の記録材が連続する数であることを特徴とする請求項
5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第一の時間は、記録材の搬送速度を切り替えるのに要する切替時間を含むことを特徴とする請求項
6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記定着部は、筒状のフィルムと、前記フィルムの内部空間に配置されるヒータと、前記フィルムの外周面に接触し、前記ヒータと協同して前記フィルムを挟み込み前記フィルムとの間にニップを形成するローラと、を有し、前記ニップで記録材を搬送しつつ前記ヒータの熱を利用してトナー像を加熱することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成速度を切り替えることが可能な画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録材にトナー像を転写し加熱定着することで記録材に画像を形成する電子写真方式の画像形成装置は、複数の記録材に対して連続的に画像を形成する場合がある。複数の記録材は、所定の間隔、所定の速度で搬送が制御され、加熱定着処理を受けることになる。ここで、記録材として搬送方向と直交する幅の狭い紙に対して画像形成を行う場合に、非通紙部昇温の観点から、最速プロセス速度(第一速度)よりも遅いプロセス速度(第二速度)で画像形成を行う場合がある。
【0003】
特許文献1には、幅が狭い記録材の連続印刷時において、記録材の枚数が所定枚数以内の場合には第二速度ではなく第一速度で通紙するように制御することで、処理時間の短縮を図る技術が開示される。また、特許文献2には、ある印刷ジョブで第一速度が指定されていたとしても、直前の印刷ジョブで第二速度が指定され、速度切替によるダウンタイムを加味しても処理時間が短縮される場合には、当該印刷ジョブを第二速度で実行する技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-33713号公報
【文献】特開2012-245649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、プリント処理時間の短縮を図ることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明における画像形成装置は、
記録材にトナー像を形成する画像形成部と、
前記トナー像を前記記録材に加熱定着する定着部と、
記録材の搬送を制御する制御部と、
を備える画像形成装置において、
前記定着部において複数の記録材に対して連続的に加熱定着処理する連続定着動作であって、搬送方向と直交する幅が第一の幅の第一の記録材を加熱定着処理する前に、前記幅が前記第一の幅よりも狭い第二の幅の第二の記録材を複数連続して加熱定着処理する連続定着動作において、
前記制御部は、
前記第二の記録材が連続する数が第一の閾値未満の場合は、複数の前記第二の記録材を第一の速度で搬送し、続く前記第一の記録材を前記第一の速度で搬送し、
前記第二の記録材が連続する数が前記第一の閾値以上の場合は、複数の前記第二の記録材を前記第一の速度よりも遅い第二の速度で搬送し、
前記第一の閾値は、複数の前記第二の記録材を前記第一の速度で搬送し、続く前記第一の記録材を前記第一の速度で搬送するとした場合に、前記第一の記録材を定着する前に、所定の冷却期間を設けることが必要となる、前記第二の記録材が連続する数であり、
前記制御部は、
前記第二の記録材が連続する数が前記第一の閾値以上の場合は、前記第二の速度で搬送する複数の前記第二の記録材に続く前記第一の記録材を前記第二の速度で搬送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、スループットの更なる向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1における画像形成装置の主要部断面図
【
図5】患者Aの印刷に対して実施例1を適用したチャート
【
図6】患者Bの印刷に対して実施例1を適用したチャート
【
図7】患者Aの印刷に対して比較例1を適用したチャート
【
図8】患者Bの印刷に対して比較例2を適用したチャート
【
図9】患者Cの印刷に対して薬情を第二速度で実施したチャート
【
図10】患者Cの印刷に対して薬情を第一速度で実施したチャート
【
図11】患者Bの印刷に続く患者Aの印刷を第一速度で実施したチャート
【
図12】患者Bの印刷に続く患者Aの印刷を第二速度で実施したチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。なお、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0010】
(実施例1)
本実施例では、記録材の具体例として、薬局において薬袋、領収書、薬剤情報提供書(以下、薬情)を順に印刷する画像形成装置を例にとって説明する。また、本発明が適用可能な電子写真方式を利用して記録材に画像を形成する画像形成装置としては、複写機、プリンタなどが挙げられるが、ここでは、レーザビームプリンタに適用した場合について説明する。
【0011】
<装置の説明>
図1は、画像形成部および定着装置Fを有する画像形成装置を示す断面図である。ここで、感光ドラム100の表面に未定着トナー像が形成される画像形成部について、画像形
成の流れと共に
図1を用いて説明する。本実施例における画像形成装置は、感光ドラム100を備え、感光ドラム100は時計回りに不図示のモータにより回転する。感光ドラム100の表面にクリーニング手段101を当接させ不要なトナーを除去する。
【0012】
そして、帯電手段102により、感光ドラム100の表面を均一な電位にする。スキャナ装置103により感光ドラム100の表面に静電潜像を作成する。そして、現像装置104により静電潜像に対応した未定着トナー像を感光ドラム100の表面に作成する。
【0013】
ここで、幅の広い記録材としての記録材S1は給紙トレイ105から矢印の方向に搬送手段によって搬送される。感光ドラム100に形成されたトナー像は、転写部を構成する転写装置106との間に形成されるニップ部にて記録材S1に転写される。このトナー像は、記録材Sに静電吸着力により付着したまま、定着装置Fに搬送される。そして、定着装置Fにて加圧・溶融されトナー像は定着画像となる。その後、記録材S1は排紙トレイ107に排紙される。
【0014】
ここで、本実施例に係る画像形成装置においてトナー像を記録材に転写するまでの構成が、本発明の画像形成部に対応する。また、記録材に転写された未定着のトナー像を記録材に加熱定着する定着装置Fが、本発明の定着部に対応する。
【0015】
本実施例における画像形成装置は、給紙トレイを3つ有している。すなわち、本実施例における画像形成装置は、給紙トレイ105の他にさらに2つの給紙トレイ108、109を有しており、給紙トレイ108と給紙トレイ109には、幅の狭い記録材としての記録材S2、S3がセットされている。
【0016】
記録材S1はA4サイズ縦送りの普通紙(薬情)であり、記録材S2はA5サイズ縦送りの封筒(薬袋)、記録材S3はA5サイズ縦送りの普通紙(領収書)である。なお、これら記録材の種類はあくまで例示であり、他のサイズ、種類の記録材の組み合わせであってもよい。
【0017】
また、画像形成装置は、制御手段としての制御部110を有し、画像形成速度の制御や定着装置Fの温調制御を行う。制御部110は、ホストコンピュータ(不図示)から印刷ジョブを受信する。印刷ジョブの情報は、例として「1枚目:薬袋でA5幅,2枚目:領収書でA5幅、3枚目:薬情でA4幅」といった情報である。なお、印刷ジョブの情報は順番と幅さえ分かればよく、形式を問わない。
【0018】
幅の狭い記録材である薬袋(記録材S2)や領収書(記録材S3)から始まるケースにおいて、薬袋や領収書の連続枚数(前述の例であれば2枚)に応じた画像形成速度に設定し、制御部110は画像形成装置を動作させる。画像形成速度は、第一速度(早い速度)として240mm/sec、第二速度(遅い速度)として160mm/secで動作する。なお、制御部110は、1枚目が幅の広い記録材である薬情のケースでは、画像形成速度を第一速度(早い速度)に設定する。
【0019】
図2を用いて、定着装置Fについて説明する。定着装置Fは、筒状のフィルム部材である定着スリーブ200と、定着スリーブ200の内側(内部空間)に配置されその内面に接触するヒータ201と、により構成される。ヒータ201と定着スリーブ200の間には金属板を配置してもよい。また、定着スリーブ200を介してヒータ201に対向、圧接されるように定着スリーブ200の外周面に接触し、ヒータ201と協同して定着スリーブ200を挟み込み定着ニップ部Nを形成する加圧ローラ202を有する。
【0020】
ここで、ヒータ201は保持部材203に保持されている。保持部材203は、定着ス
リーブ200の回転を案内するガイド機能も有する。加圧ローラ202は、不図示のモータから動力を受けて反時計回りに回転する。そして、加圧ローラ202が回転することによって、定着スリーブ200も従動して矢印方向(時計回り)に回転する。
【0021】
定着スリーブ200の内面には、サーミスタThを設置する。また、定着装置Fは制御部110に接続される。サーミスタThにより検知された温度に応じた電力を制御部110にて算出し、外部電源からヒータ201へ供給することで、定着スリーブ200は設定温度に温調制御される。そして、トナー画像を担持する記録材(例えばS1)は、ニップ部Nにおいて、矢印方向から挟持搬送されつつ定着処理される。
【0022】
本実施形における設定温度は、第一速度(早い速度)の場合は第一温度として180℃、第二速度(遅い速度)の場合は第二温度として168℃である。画像形成速度が遅い第二速度で設定温度が低いのは、定着装置Fを通過する時間が長いために、低い温度でも十分な熱量をトナーに与えることができるからである。
【0023】
図3にヒータ201の長手方向と、記録材の幅と、の関係を示している。ヒータ201はアルミナ基板300を基材としている。アルミナ基板300には、給電接点301と発熱抵抗体302とを直列に形成している。また、給電接点301以外はガラスコート(不図示)を施している。ヒータ201は、記録材の搬送方向と直交する幅が最大のサイズの記録材の幅に対応した長手長さを有する発熱抵抗体302を備えている。すなわち、発熱抵抗体302をA4サイズ縦送りの幅で成形しているため、ヒータ201は、外部電源より供給された電力によってA4幅に発熱する。
【0024】
A5幅である薬袋や領収書がニップ部Nに挟持搬送された場合は、紙により熱を奪われない非通紙部303に熱がこもることにより、いわゆる非通紙部昇温が発生する。非通紙部303が一定の温度に到達しているときにA4幅である薬情がニップ部Nに挟持搬送されると、非通紙部303の位置にあたる薬情の端部にホットオフセットと呼ばれる画像不良が発生する。非通紙部昇温は設定温度の低い第二速度(遅い速度)のほうが有利になる。
【0025】
本実施形における画像形成装置では、第一速度(早い速度)で薬袋や領収書(狭幅サイズ紙)を連続3枚まで印刷した後に、薬情(広幅サイズ紙)を続けて印刷すると、非通紙部昇温に伴うホットオフセットが発生する。連続2枚までであればホットオフセットは発生しない。本実施例におけるホットオフセット発生枚数(閾値枚数)は3枚である。このため、本実施例における画像形成装置は、連続通紙される薬袋や領収書(狭幅サイズ紙)が閾値枚数未満である2枚までは第一速度(早い速度)で、閾値枚数以上である3枚以上の場合は第二速度(遅い速度)で印刷を開始することを特徴とする。
【0026】
なお、第一速度(早い速度)で薬袋や領収書(狭幅サイズ紙)を連続3枚印刷した後に、薬情(広幅サイズ紙)においてホットオフセットの発生を防止するためには、約6秒の冷却時間(ダウンタイム)が必要である。上記の閾値枚数や冷却時間は実験により求めた。これらの値は、画像形成装置の構成や画像形成速度によって変化する。
【0027】
<本実施例の動作>
本実施例に係る画像形成装置では、複数の記録材に対して連続的に画像形成を行う連続画像形成動作において、連続画像形成動作の完了に要する時間がより短くなるように、記録材の搬送速度を制御する。特に、連続画像形成動作の中において、定着部において複数の記録材に対して連続的に加熱定着処理する連続定着動作の完了に要する時間をより短くする制御となる。
【0028】
その制御としては、第一の幅の第一の記録材を加熱定着処理する前に、第一の幅よりも狭い第二の幅の第二の記録材(狭幅記録材)を複数連続して加熱定着処理する連続定着動作において、非通紙部昇温抑制のための冷却期間の発生を回避するように制御する。冷却期間は、第一の速度(早い速度)で搬送される第二の記録材が連続する場合に必要となり、第二の記録材を第一の速度より遅い第二の速度で搬送する場合は不要となる。
【0029】
第一の速度(早い速度)で搬送した場合に非通紙部昇温回避のための冷却期間が必要となる第二の記録材(狭幅記録材)が連続する数として第一の閾値を設定する。印刷ジョブにおいて、第二の記録材が連続する数が第一の閾値未満の場合は、冷却期間が発生しないので、第一の速度(早い速度)で第二の記録材を連続処理することでスループットの向上を図ることができる。一方、第二の記録材が連続する数が第一の閾値以上の場合は、第二の記録材の連続処理を第二の速度(遅い速度)で実行する。複数の印刷ジョブが連続する流れの中において、記録材の搬送速度の切替動作が必要となる場合であっても、切替動作に要する時間が冷却期間より短い場合には、一連の画像形成動作全体として、スループットの向上を図ることができる。
【0030】
なお、第二の記録材が大量に連続するような場合には、冷却期間を設けた方が、全体の処理時間が短縮される場合もあり得る。そのような場合には、第二の記録材を第一の速度で連続処理する制御も取り得る。すなわち、第一の速度での第一の記録材の処理時間(定着完了に要する時間)、第二の速度での第一の記録材の処理時間、第一の記録材の連続数、第一の速度での第二の記録材の処理時間、第二の速度での第二の記録材の処理時間、第二の記録材が連続数、冷却期間の長さ、切替時間の長さ、に基づいて、全体の連続定着動作の完了に要する時間がより短縮されるように、記録材の搬送速度を制御すればよい。
【0031】
また、第一の記録材は、定着部を通過可能な最大の幅の広幅記録材が典型的であるが、最大幅の記録材でなくてもよい。すなわち、非通紙部昇温の影響が第二の記録材よりも少ない、第二記録材の幅よりも幅が広い記録材を第一の記録材として、本発明の制御を適用してもよい。
【0032】
図4(a)に示したのは患者A,Bの印刷内容である。薬袋、領収書、薬情を順に印刷したときの動作を例に説明する。なお、
図4(b)は印刷ジョブの情報であり、1枚目から順に紙サイズが並べられている。1枚目から何枚連続して幅の狭い紙(実施例ではA5縦)が印刷されるかを参照し、閾値枚数未満か否かを制御部110は判断する。
【0033】
患者Aの場合、1枚目から続く幅の狭い紙はA5サイズである薬袋と領収書との合計2枚であり、閾値枚数未満である。このため、患者Aの印刷ジョブに対しては、第一速度(早い速度)で画像形成を開始する。
【0034】
図5に、患者Aの印刷ジョブにおける、横軸に時間、縦軸に印刷枚数をとったタイムチャートを示す。チャートの太線で表示しているのが、紙を第一速度(早い速度)で定着処理している時間帯を示している。本実施例の画像形成装置が第一速度(早い速度)で動作した場合に定着処理までに必要な準備時間は、4秒である。処理時間501は、薬袋(狭幅サイズ紙)の定着処理時間帯を示している。処理時間502は、領収書(狭幅サイズ紙)の定着処理時間帯を示している。処理時間503は、薬情(広幅サイズ紙)の定着処理時間帯を示している。薬情(広幅サイズ紙)の定着処理完了から排紙完了までの時間(排紙時間)は0.6秒であり、印刷完了の時間504は7.9秒である。
【0035】
患者Bの場合、1枚目から続く幅の狭い紙はA5サイズである薬袋と領収書との合計3枚であり、閾値枚数以上である。このため、患者Bの印刷ジョブに対しては、第二速度(遅い速度)で画像形成を開始し、第二速度(遅い速度)のまま薬情(広幅サイズ紙)まで
印刷する。
【0036】
図6に、患者Bの印刷ジョブにおける、横軸に時間、縦軸に印刷枚数をとったタイムチャートを示す。チャートの白抜き太線で表示しているのが、紙を第二速度(遅い速度)で定着処理している時間帯を示している。本実施例の画像形成装置が第二速度(遅い速度)で動作した場合に定着処理までに必要な準備時間は、5秒である。処理時間601、602は、薬袋(狭幅サイズ紙)の定着処理時間帯を示している。処理時間603は、領収書(狭幅サイズ紙)の定着処理時間帯を示している。処理時間604は、薬情(広幅サイズ紙)の定着処理時間帯を示している。薬情(広幅サイズ紙)の定着処理完了からの排紙時間は、第一速度の場合よりも遅く0.9秒であり、印刷完了の時間605は12.3秒である。
【0037】
<本実施例の効果>
本実施例の効果を、患者Aの印刷ジョブを第二速度(遅い速度)で行った場合の比較例1と、患者Bの印刷ジョブを第一速度(早い速度)で行った場合の比較例2と、を用いて説明する。
【0038】
図7に、患者Aの印刷ジョブを第二速度(遅い速度)で行った場合(比較例1)のタイムチャートを示す。処理時間701は、薬袋(狭幅サイズ紙)の定着処理時間帯を示している。処理時間702は、領収書(狭幅サイズ紙)の定着処理時間帯を示している。処理時間703は、薬情(広幅サイズ紙)の定着処理時間帯を示している。本実施例の動作と比べて画像形成速度が遅い分、印刷完了の時間704は10.8秒と、印刷完了の時間504は7.9秒に比べて処理時間が長くなる。
【0039】
図8に、患者Bの印刷ジョブを第一速度(早い速度)で行った場合のタイムチャートを示す。処理時間801、802は、薬袋(狭幅サイズ紙)の定着処理時間帯を示している。処理時間803は、領収書(狭幅サイズ紙)の定着処理時間帯を示している。処理時間804は、薬情(広幅サイズ紙)の定着処理時間帯を示している。また、第一速度(早い速度)で連続3枚のA5サイズ(狭幅サイズ紙)の印刷を行ったため、5秒間の冷却動作(冷却時間)を処理時間803の前に実施している。第一速度(早い速度)で印刷を行った場合、印刷に必要な時間そのものは短いものの、冷却動作というダウンタイムが生じるため、印刷完了の時間805は13.8秒と、印刷完了の時間605は12.3秒と処理時間が長くなる。
【0040】
これまで述べてきた通り、幅の狭い紙から始まり幅の広い紙が続く場合において、幅の狭い紙が閾値枚数未満か否かに応じて画像形成速度を決定することで、スループットの向上が達成できる。
【0041】
<変形例1>
本実施例において患者1人分の印刷について例をとって説明した。しかしながら、本発明の動作は複数の患者の印刷が連続したときにも適応可能である。具体的には、例えば、先の患者の薬情の印刷に続いて、後の患者の薬袋や領収書(新たな幅の狭い記録材)が連続した後に後の患者の薬情(新たな幅の広い記録材)がさらに続くケースが考えられる。このような場合において、後の患者の薬情と領収書の連続枚数が閾値枚数未満か否かに応じて画像形成速度を決定し実施することでも同様の効果が得られる。
【0042】
例えば、患者Aと患者Bの印刷が連続したケースにおいて、患者Aの印刷を第一速度で行った後、患者Bの印刷を第二速度に切り替えて画像形成を実施する。この場合は、患者Aの印刷に続く患者Bの印刷においても本実施例で説明したのと同様のスループット向上効果を得ることができる。
【0043】
<変形例2>
本実施例における印刷ジョブの情報には、順番と、その順番ごとの記録材の紙サイズが含まれ、画像形成開始時に制御部110で印刷完了までの情報を元に画像形成速度を決定していた。しかしながら、印刷終了までのすべての情報がそろっていなくても、情報の形式が異なっていても構わない。例えば、印刷動作開始時に得られる範囲の情報から画像形成速度を決定してもよい。また、印刷ジョブの情報も「最初:記録材S1が3枚、次:記録材S1が2枚、次:記録材S1が2枚」などといった記録材ごとの枚数が順に整理された形式でもよい。本発明の効果は、本実施例の印刷ジョブの情報に限定されない。
【0044】
<変形例3>
本実施例では、A5サイズの薬袋、A5サイズの領収書、A4サイズ薬情を印刷する薬局に設置された画像形成装置を例にして述べた。しかしながら、本発明の適用範囲は、本実施例で示した紙サイズや記録材の種類に限られない。すべてが普通紙の紙サイズ違いのオフィス印刷であっても、サイズの組み合わせが実施例と異なっても同様に効果を得ることができる。
【0045】
<変形例4>
本実施例では、A4縦送り幅の発熱抵抗体を有する定着装置と、A4縦送りサイズの幅の広い記録材を例にして述べた。しかしながら、本発明の効果は本実施例の発熱体の長さと、幅の広い記録材との関係に限らない。例えば、LTRサイズ縦送り幅の発熱抵抗体に対してA4サイズ縦送り幅の記録材を幅の広い記録材としても同様に効果が得られる。なお、長手複数の発熱領域を切り替えられる画像形成装置に対しては、発熱領域ごとに幅の広い記録材と幅の狭い記録材を個別に定義したほうがより効果的である。
【0046】
<その他>
また、本発明が適用可能な像加熱装置は、上述した画像形成装置に搭載する定着器の他、記録材に定着されたトナー画像を再度加熱することによりトナー画像の光沢度を向上させる光沢付与装置等も挙げられる。このような光沢付与装置等への本発明の適用においては、加熱部において複数の記録材に対して連続的に加熱処理する連続加熱動作の処理時間の短縮を図ることができる。
【0047】
(実施例2)
本実施例では、第二速度(遅い速度)で薬袋と領収書(狭幅サイズ紙)を印刷した後に、薬情(広幅サイズ紙)の画像形成速度を薬情(広幅サイズ紙)の印刷枚数(連続通紙枚数)によって判断する画像形成装置について説明する。
【0048】
<装置の説明>
本実施例における画像形成装置の構成は、実施例1と同様である。実施例2において実施例1と共通する事項については説明を省略する。
【0049】
速度切り替えのよるダウンタイムを削減するため、実施例1では、薬情(広幅サイズ紙)は、印刷開始時の画像形成速度のまま、すなわち、第二速度(遅い速度)のまま印刷を行っていた。しかしながら、第二速度(遅い速度)で画像形成を開始したケースに限り、薬情(広幅サイズ紙)の枚数が多い場合は切替え時間を加味しても第一速度(早い速度)で印刷した方がスループットの向上が見込める。
【0050】
すなわち、第二の速度で搬送される第二記録材が複数連続した後に、第一の記録材が続く場合においては、第一の記録材の連続数に応じて、第一の記録材の搬送速度を制御する。例えば、第一の記録材の連続数が少ないような場合には、切替動作の時間を設けること
で結果的に一連の画像形成動作全体として処理時間が長くなってしまうことがある。そのような場合、遅い第二の速度のまま第一の記録材の処理を続けた方が、結果として処理時間の短縮が見込める。一方、第一の記録材の連続数がある程度の数になる場合、切替動作の時間をかけたとしても、遅い第二の速度のまま継続するよりも全体として処理時間が短縮される場合がある。したがって、搬送速度の切り替えの要否を判断するための、第二の速度の第二の記録材に後続する第一の記録材の連続数として第二の閾値を設定する。第一の記録材が連続する数が第二の閾値未満の場合は、切替動作を行わずに第二の記録材に続けて第一の記録材を第二の速度で搬送する。第一の記録材が連続する数が第二の閾値以上の場合は、搬送速度を切り替えた方が、全体の処理時間が短縮されるので、搬送速度を第一の速度に切り替えて第一の記録材を搬送し加熱定着処理を実行する。
【0051】
本実施例における画像形成装置は、薬情(広幅サイズ紙)を第一速度(早い速度)で印刷した場合と第二速度(遅い速度)で印刷した場合とを比較し、早く薬情の印刷が完了する画像形成速度を選択することを特徴とする。なお、第二速度(遅い速度)から第一速度(早い速度)へ切り替えるために必要な切替え時間は2.0秒である。
【0052】
<本実施例の動作>
図4に示した患者Cに対して薬袋(狭幅サイズ紙)、領収書(狭幅サイズ紙)、薬情(広幅サイズ紙)を順に印刷したときの動作を例に説明する。
【0053】
患者Cの場合は、1枚目から続く薬袋と領収書(狭幅サイズ紙)の枚数が3枚と閾値枚数以上であるため、第二速度(遅い速度)で画像形成を開始する。このとき、続く薬情(広幅サイズ紙)を第二速度(遅い速度)のまま印刷したチャートを
図9に、第一速度(早い速度)に切り替えたチャートを
図10に示す。
【0054】
図9は、処理時間901、902にて薬袋を、処理時間903にて領収書、処理時間904から906にて薬情を第二速度で定着処理するチャートであり、印刷終了の時間907は16.4秒である。一方、
図10は、領収書の処理時間903の後に第一速度への切替え時間2秒を経て処理時間1001から1003で薬情を定着処理するチャートであり、印刷終了の時間1004は16.0秒である。このように、第一速度へ切替えた時間1004の方が早く印刷を完了するため、本実施例においては患者Cの印刷ジョブにおいて薬情(広幅サイズ紙)の印刷は第一速度(早い速度)で実施する。
【0055】
<本実施例の効果>
本実施例において、薬情(広幅サイズ紙)を第二速度(遅い速度)で印刷し続けるよりも、第一速度(早い速度)へ切替えて印刷した方が0.4秒早く印刷を完了することができる。
【0056】
これまで述べてきた通り、第二速度(遅い速度)で画像形成を開始したケースにおいて、幅の広い紙を第一速度(早い速度)で印刷した場合と第二速度(遅い速度)で印刷した場合とを比較し、早く薬情の印刷が完了する画像形成速度を選択することでさらなる処理時間の短縮を達成することができる。
【0057】
(実施例3)
本実施例では、第二速度(遅い速度)で薬情(広幅サイズ紙)の印刷を実施した後に、さらに別の患者の印刷が続く場合において、薬袋(狭幅サイズ紙)の画像形成速度を続く印刷内容によって判断する画像形成装置について説明する。
【0058】
<装置の説明>
本実施例における画像形成装置の構成は、実施例2と同様である。実施例3において実
施例2と共通する事項については説明を省略する。
【0059】
これまでの実施例において、薬袋と領収書(狭幅サイズ紙)から薬情(広幅サイズ紙)が続く印刷において、薬袋と領収証(狭幅サイズ紙)の連続枚数が閾値枚数未満か否かで薬袋(狭幅サイズ紙)の画像形成速度を設定していた。これにより、連続する患者の各印刷に関しては最適なスループットで実施することができる。しかしながら、第二速度(遅い速度)で薬情(広幅サイズ紙)を印刷した後に、閾値枚数未満の薬袋と領収書(新たな幅の狭い記録材)と薬情(新たな幅の広い記録材)とが続くケースに限り、第一速度(早い速度)に切り替えずそのまま第二速度(遅い速度)で印刷した方が、続く枚数が少ない場合は全体の処理時間の短縮が見込める。
【0060】
すなわち、本実施例は、複数の第二の記録材を連続して加熱定着処理した後に第一の記録材を加熱定着処理する連続定着動作を一つの印刷ジョブとして、この印刷ジョブを複数連続して実行する場合において、処理時間短縮のための搬送速度制御を実行する。連続する印刷ジョブのうち先の第一の印刷ジョブで第一の記録材を第二の速度で搬送して第一の印刷ジョブを完了し、次の第二の印刷ジョブでの第二の記録材の連続数が第一の閾値未満の場合において、第二の印刷ジョブでの第二の記録材の搬送速度を選択する。具体的には、搬送速度を第一の速度に切り替えて第二の印刷ジョブを実行する場合の処理時間(第一の時間)と、第二の速度で継続して第二の印刷ジョブを実行する場合の処理時間(第二の時間)と、を比較し、処理時間が短縮される速度を選択する。搬送速度の切り替えの要否を判断するための、第二の印刷ジョブでの第二の記録材の連続数として第三の閾値を設定する。第二の印刷ジョブでの第二の記録材が連続する数が第三の閾値未満の場合は、切替動作を行わずに第一の印刷ジョブに続けて第二の印刷ジョブにおいて第二の記録材を第二の速度で搬送する。第二の記録材が連続する数が第三の閾値以上の場合は、搬送速度を切り替えた方が、全体の処理時間が短縮されるので、第一の印刷ジョブから搬送速度を第一の速度に切り替えて第二の印刷ジョブを実行する。
【0061】
本実施例における画像形成装置は、先の患者の薬情(広幅サイズ紙)が第二速度(遅い速度)で実施され、続く患者の印刷が閾値枚数未満であるケースにおいて、第二速度(遅い速度)のまま画像形成を実施する場合と、第一速度(早い速度)へ切り替える場合とを比較して、早く印刷が完了する速度を選択することを特徴とする。
【0062】
<本実施例の動作>
図4の患者Bに続いて患者Aが印刷を行うケースにおいて、薬袋(狭幅サイズ紙)、領収書(狭幅サイズ紙)、薬情(広幅サイズ紙)を順に印刷したときの動作を例に説明する。
【0063】
患者Bの印刷は、薬袋と領収書(狭幅サイズ紙)が閾値枚数以上であるため、第二速度(早い速度)で画像形成を開始する。続く患者Aの印刷は、薬袋と領収書(狭幅サイズ紙)が閾値枚数未満であるため、第二速度(遅い速度)のままか、速度を切り替えるかを判断する。
【0064】
図11、
図12に患者Bの薬情印刷完了の時間を0秒としたチャートを示す。
図11は、第一速度(早い速度)に切り替えた場合のチャートである。処理時間1101は、薬袋(狭幅サイズ紙)の定着処理時間帯を示している。処理時間1102は、領収書(狭幅サイズ紙)の定着処理時間帯を示している。処理時間1103は、薬情(広幅サイズ紙)の第一速度での定着処理時間帯を示している。このときの印刷完了時間1104は6.0秒である。
【0065】
図12は、第二速度(遅い速度)のままのチャートであり、処理時間1201は、薬袋
(狭幅サイズ紙)の定着処理時間帯を示している。処理時間1202は、領収書(狭幅サイズ紙)の定着処理時間帯を示している。処理時間1203は、薬情(広幅サイズ紙)の第一速度での定着処理時間帯を示している。このときの印刷完了時間1204は5.8秒であり、速度を切り替えた場合に比べて早く印刷が完了する。よって、本実施例においては患者Aの印刷は第二速度(遅い速度)で実施する。
【0066】
<本実施例の効果>
本実施例において、第一速度(早い速度)へ切替えて印刷するよりも、第二速度(遅い速度)のままとした方が0.2秒早く印刷を完了することができる。
【0067】
これまで述べてきた通り、先の患者の薬情(広幅サイズ紙)が第二速度(遅い速度)で実施され、続く患者の印刷が閾値枚数未満であるケースにおいて、第二速度(遅い速度)のまま画像形成を実施する場合と、第一速度(早い速度)へ切り替える場合とを比較して早く印刷が完了する速度を選択することで、全体での処理時間の短縮が達成できる。
【0068】
本発明の実施の形態の開示は、以下の構成を含む。
(構成1)
記録材にトナー像を形成する画像形成部と、
前記トナー像を前記記録材に加熱定着する定着部と、
記録材の搬送を制御する制御部と、
を備える画像形成装置において、
前記定着部において複数の記録材に対して連続的に加熱定着処理する連続定着動作であって、搬送方向と直交する幅が第一の幅の第一の記録材を加熱定着処理する前に、前記幅が前記第一の幅よりも狭い第二の幅の第二の記録材を複数連続して加熱定着処理する連続定着動作において、
前記制御部は、
前記第二の記録材が連続する数が第一の閾値未満の場合は、複数の前記第二の記録材を第一の速度で搬送し、続く前記第一の記録材を前記第一の速度で搬送し、
前記第二の記録材が連続する数が前記第一の閾値以上の場合は、複数の前記第二の記録材を前記第一の速度よりも遅い第二の速度で搬送することを特徴とする画像形成装置。
(構成2)
前記第一の閾値は、複数の前記第二の記録材を前記第一の速度で搬送し、続く前記第一の記録材を前記第一の速度で搬送するとした場合に、前記第一の記録材を定着する前に、所定の冷却期間を設けることが必要となる、前記第二の記録材が連続する数であることを特徴とする構成1に記載の画像形成装置。
(構成3)
前記制御部は、
前記第二の記録材が連続する数が前記第一の閾値以上の場合は、前記第二の速度で搬送する複数の前記第二の記録材に続く前記第一の記録材を前記第二の速度で搬送することを特徴とする構成1又は2に記載の画像形成装置。
(構成4)
前記制御部は、
前記第二の記録材が連続する数が前記第一の閾値以上であって、続く前記第一の記録材が連続する数が第二の閾値未満の場合は、複数の前記第二の記録材を前記第二の速度で搬送し、複数の前記第一の記録材を前記第二の速度で搬送し、
前記第二の記録材が連続する数が前記第一の閾値以上であって、続く前記第一の記録材が連続する数が前記第二の閾値以上の場合は、複数の前記第二の記録材を前記第二の速度で搬送し、複数の前記第一の記録材を前記第一の速度で搬送することを特徴とする構成1~3のいずれか一の構成に記載の画像形成装置。
(構成5)
前記第二の閾値は、複数の前記第二の記録材を前記第二の速度で搬送し、複数の前記第一の記録材を前記第一の速度で搬送した場合に、前記連続定着動作の完了に要する第一の時間が、複数の前記第二の記録材を前記第二の速度で搬送し、複数の前記第一の記録材を前記第二の速度で搬送した場合に、前記連続定着動作の完了に要する第二の時間よりも短くなる、前記第一の記録材が連続する数であることを特徴とする構成4に記載の画像形成装置。
(構成6)
前記第一の時間は、記録材の搬送速度を切り替えるのに要する切替時間を含むことを特徴とする構成5に記載の画像形成装置。
(構成7)
複数の前記第二の記録材を連続して加熱定着処理した後に前記第一の記録材を加熱定着処理する連続定着動作を複数連続して実行する場合であって、連続する前記連続定着動作のうち、先の第一の連続定着動作において、前記第一の記録材を前記第二の速度で搬送して前記第一の連続定着動作を完了し、次の第二の連続定着動作における前記第二の記録材が連続する数が前記第一の閾値未満の場合において、
前記制御部は、
前記第二の連続定着動作における前記第二の記録材が連続する数が第三の閾値未満の場合は、記録材の搬送速度を前記第二の速度のまま、前記第二の連続定着動作を実行し、
前記第二の連続定着動作における前記第二の記録材が連続する数が前記第三の閾値以上の場合は、前記搬送速度を前記第一の速度に切り替えて、前記第二の連続定着動作を実行することを特徴とする構成1~6のいずれか一の構成に記載の画像形成装置。
(構成8)
前記第三の閾値は、前記搬送速度を前記第一の速度に切り替えて前記第二の連続定着動作を実行した場合に、前記第二の連続定着動作の完了に要する第一の時間が、前記搬送速度を前記第二の速度のままで前記第二の連続定着動作を実行した場合に、前記第二の連続定着動作の完了に要する第二の時間よりも短くなる、前記第二の連続定着動作における第二の記録材が連続する数であることを特徴とする構成7に記載の画像形成装置。
(構成9)
前記第一の時間は、記録材の搬送速度を切り替えるのに要する切替時間を含むことを特徴とする構成8に記載の画像形成装置。
(構成10)
記録材にトナー像を形成する画像形成部と、
前記トナー像を前記記録材に加熱定着する定着部と、
記録材の搬送を制御する制御部と、
を備え、
前記定着部において、複数の記録材に対して連続的に加熱定着処理する連続定着動作において、
複数の記録材を第一の速度で搬送して連続的に加熱定着処理する際において、記録材の搬送方向と直交する幅が前記定着部を通過可能な最大の幅よりも狭い狭幅記録材が所定の数連続する場合は、所定の冷却期間を設けてから、その後の加熱定着処理を継続する必要があり、
複数の記録材の搬送速度を、前記第一の速度と、前記第一の速度より遅い第二の速度と、の間で切り替える場合は、所定の切替時間が必要となる
ように構成された画像形成装置において、
前記制御部は、
前記連続定着動作において、前記冷却期間を設けることがなく、かつ、前記連続定着動作の完了に要する時間がより短くなるように、前記複数の記録材の搬送速度を制御することを特徴とする画像形成装置。
(構成11)
前記狭幅記録材が前記第二の速度で連続する場合は、前記冷却期間を設けなくてよいこ
とを特徴とする構成10に記載の画像形成装置。
(構成12)
前記定着部は、筒状のフィルムと、前記フィルムの内部空間に配置されるヒータと、前記フィルムの外周面に接触し、前記ヒータと協同して前記フィルムを挟み込み前記フィルムとの間にニップを形成するローラと、を有し、前記ニップで記録材を搬送しつつ前記ヒータの熱を利用してトナー像を加熱することを特徴とする構成1~11のいずれか一の構成に記載の画像形成装置。
【符号の説明】
【0069】
501…薬袋の第一速度での定着処理時間帯、502…領収書の第一速度での定着処理時間帯、503…薬情の第一速度での定着処理時間帯、504…印刷終了の時間