(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-28
(45)【発行日】2025-04-07
(54)【発明の名称】農業機械の走行支援システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20250331BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
(21)【出願番号】P 2023549448
(86)(22)【出願日】2022-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2022033093
(87)【国際公開番号】W WO2023047920
(87)【国際公開日】2023-03-30
【審査請求日】2023-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2021153393
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山口 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】南方 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】上田 修也
(72)【発明者】
【氏名】海堀 空哉
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/047181(WO,A1)
【文献】特開昭58-217011(JP,A)
【文献】特開2020-31568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置を装着可能である農業機械に設けられた走行装置と、
圃場を示すフィールドに作成され、前記農業機械が走行する走行ルートを取得する第1取得部と、
前記第1取得部が取得した前記走行ルートを補正する補正部と、
前記補正部が補正した後の前記走行ルートに基づいて、前記走行装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記走行ルートは、それぞれ接続された複数のラインを含み、
前記補正部は、前記複数のラインのうち一のラインである第1ラインの終端部から、当該第1ラインの終端部に接続された他のラインである第2ラインの始端部へ向かい、且つ当該第2ラインに対して傾斜する補助ラインを作成する作成部を有している農業機械の走行支援システム。
【請求項2】
前記農業機械の位置を検出する位置検出装置を備え、
前記制御装置は、前記補正部が補正した後の前記走行ルートと、前記位置検出装置が検出した前記農業機械の位置に基づいて、前記走行装置の操舵及び車速を制御する自動走行制御部を有している請求項1に記載の農業機械の走行支援システム。
【請求項3】
前記農業機械の位置を検出する位置検出装置を備え、
前記制御装置は、前記補正部が補正した後の前記走行ルートと、前記位置検出装置が検出した前記農業機械の位置に基づいて、前記走行装置の操舵を制御する自動操舵制御部を有している請求項1に記載の農業機械の走行支援システム。
【請求項4】
圃場を示すフィールドに作成され、作業装置を装着可能である農業機械が走行する走行ルートを取得する第1取得部と、
前記第1取得部が取得した前記走行ルートを補正する補正部と、
前記補正部が補正した後の前記走行ルートを表示する表示装置と、
を備え、
前記走行ルートは、それぞれ接続された複数のラインを含み、
前記補正部は、前記複数のラインのうち一のラインである第1ラインの終端部から、当該第1ラインの終端部に接続された他のラインである第2ラインの始端部へ向かい、且つ当該第2ラインに対して傾斜する補助ラインを作成する作成部を有している農業機械の走行支援システム。
【請求項5】
前記作成部は、前記補助ラインと前記第2ラインとが鋭角を形成するように前記補助ラインを作成する請求項1~4のいずれか1項に記載の農業機械の走行支援システム。
【請求項6】
前記作成部は、前記補助ラインの始端部が前記第1ラインの終端部と交差し、当該第1ラインの終端部から直線状に延び、前記補助ラインの終端部が前記第2ラインの始端部に沿って湾曲するように前記補助ラインを作成し、
前記補助ラインの始端部と前記第2ラインとが鋭角を形成し、前記補助ラインが前記第2ラインに対して傾斜する請求項5に記載の農業機械の走行支援システム。
【請求項7】
前記作成部は、前記補助ラインの始端部と前記第2ラインとが形成する角度が、前記第1ラインと前記第2ラインが形成する角度よりも小さくなるように前記補助ラインを作成する請求項1~
4のいずれか1項に記載の農業機械の走行支援システム。
【請求項8】
前記第1ラインと前記第2ラインが鈍角を形成する場合、前記作成部は、前記第1ラインと前記第2ラインが鋭角又は直角を形成する場合に比べて、前記補助ラインの始端部と前記第2ラインとが形成する角度が小さくなるよう傾斜する前記補助ラインを作成する請求項1~
4のいずれか1項に記載の農業機械の走行支援システム。
【請求項9】
前記農業機械及び/又は前記作業装置の仕様情報を取得する第2取得部と、
前記フィールドの情報を取得する第3取得部と、
を備え、
前記補正部は、前記第2取得部が取得した前記仕様情報、及び前記第3取得部が取得した前記フィールドの情報に基づいて、前記フィールドにおいて前記農業機械の侵入が禁止されている禁止エリアに前記農業機械が侵入しないよう、前記複数のラインの終端部を短縮する変更部を有し、
前記作成部は、前記変更部が短縮した前記第1ラインの終端部から前記第2ラインの始端部へ向かい、前記第2ラインに対して傾斜するよう、前記補助ラインを形成する請求項1~
4のいずれか1項に記載の農業機械の走行支援システム。
【請求項10】
前記第2取得部が取得した前記仕様情報に基づいて、前記農業機械の前方に仮想の第1基準位置を定義する定義部を備え、
前記第3取得部は、前記フィールドの情報として、前記禁止エリアの位置情報を取得し、
前記変更部は、前記禁止エリアの位置情報、及び前記第1基準位置に基づいて、前記第1基準位置が前記禁止エリアに侵入しないよう、前記複数のラインの終端部を短縮する請求項9に記載の農業機械の走行支援システム。
【請求項11】
前記第1ラインと前記第2ラインが所定の角度未満の鋭角を形成する場合、
前記定義部は、前記第1基準位置よりも前方に仮想の第2基準位置を定義し、
前記変更部は、前記複数のラインの位置情報、前記禁止エリアの位置情報、及び前記第2基準位置に基づいて、前記複数のラインの終端部を短縮し、
前記変更部が前記第2基準位置に基づいて前記複数のラインを短縮した長さは、前記変更部が前記第1基準位置に基づいて前記複数のラインを短縮した長さよりも長い請求項10に記載の農業機械の走行支援システム。
【請求項12】
前記変更部が短縮した前記複数のラインの長さが予め設定された長さ以上である場合、前記作成部は、前記補助ラインを隣接させて複数作成する請求項
9に記載の農業機械の走行支援システム。
【請求項13】
前記第3取得部は、前記フィールドの情報のうち、前記禁止エリアの位置情報として、前記圃場以外の領域の位置情報、及び/又は前記圃場のうち前記作業装置が作業を完了した領域の位置情報を取得する請求項
9に記載の農業機械の走行支援システム。
【請求項14】
前記作成部は、前記補助ラインの始端部が前記第1ラインの終端部と直交し、中途部が前記第2ラインの始端部に向かって湾曲し、終端部が前記第2ラインに沿って湾曲するようにして、傾斜する前記補助ラインを作成する請求項1~
4のいずれか1項に記載の農業機械の走行支援システム。
【請求項15】
前記作成部は、前記農業機械が前記補助ラインの始端部に位置している場合に、前記作業装置の作業領域と、前記第2ラインで前記作業装置が作業を行う単位作業区画の始端部と、が重複するように前記補助ラインを作成する請求項1~
4のいずれか1項に記載の農業機械の走行支援システム。
【請求項16】
前記フィールドに前記複数のラインを定義し、前記走行ルートを作成するルート作成部を備え、
前記ルート作成部は、前記第1ラインと、前記第2ラインとを、前記第1ラインで前記作業装置が作業を行った単位作業区画の終端部と、前記第2ラインで前記作業装置が作業を行った単位作業区画の始端部と、が一致又は重複するよう作成する請求項1~
4のいずれか1項に記載の農業機械の走行支援システム。
【請求項17】
前記フィールドに前記複数のラインを定義し、前記走行ルートを作成するルート作成部を備え、
前記ルート作成部は、前記農業機械が前記圃場を所定の周回方向に周回する前記走行ルートを作成し、
前記複数のラインの始端部は、隣接し、且つ同一周回における他のラインの終端部と接続され、複数の周回の経路を形成している請求項1~
4のいずれか1項に記載の農業機械の走行支援システム。
【請求項18】
前記ルート作成部は、前記複数の周回のうち、内側の周回から外側の周回の順に前記農業機械が走行するよう前記走行ルートを作成する請求項17に記載の農業機械の走行支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の農業機械の走行支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、作業装置として移植農業機械を装着した農業機械は、圃場にて移植作業を行う際に、圃場の枕地を残してその内側を往復植付走行した後、残った枕地を周回して周回植付走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国公開特許公報「特開2006-204174号公報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、農業機械が圃場の枕地の外側を周回植付走行する場合、畦付近(畦際)及び、既に移植作業が完了した場所(既耕地)等、予め侵入が禁止されているエリア(禁止エリア)があり、農業機械が旋回を行うスペースをない場合がある、一方、農業機械が、旋回するスペースを確保するために、途中で作業を終了すると、移植作業が完了していない領域(未作業領域)が発生してしまう虞がある。
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、未作業領域の発生を抑制し、効率よく作業を行うことができる農業機械の走行支援システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る農業機械の走行支援システムは、作業装置を装着可能である農業機械に設けられた走行装置と、圃場を示すフィールドに作成され、前記農業機械が走行する走行ルートを取得する第1取得部と、前記第1取得部が取得した前記走行ルートを補正する補正部と、前記補正部が補正した後の前記走行ルートに基づいて、前記走行装置を制御する制御装置と、を備え、前記走行ルートは、それぞれ接続された複数のラインを含み、前記補正部は、前記複数のラインのうち一のラインである第1ラインの終端部から、当該第1ラインの終端部に接続された他のラインである第2ラインの始端部へ向かい、且つ当該第2ラインに対して傾斜する補助ラインを作成する作成部を有している。
【0007】
農業機械の走行支援システムは、前記農業機械の位置を検出する位置検出装置を備え、前記制御装置は、前記補正部が補正した後の前記走行ルートと、前記位置検出装置が検出した前記農業機械の位置に基づいて、前記走行装置の操舵及び車速を制御する自動走行制御部を有していてもよい。
【0008】
農業機械の走行支援システムは、前記農業機械の位置を検出する位置検出装置を備え、前記制御装置は、前記補正部が補正した後の前記走行ルートと、前記位置検出装置が検出した前記農業機械の位置に基づいて、前記走行装置の操舵を制御する自動操舵制御部を有していてもよい。
【0009】
本発明の一態様に係る農業機械の走行支援システムは、圃場を示すフィールドに作成され、作業装置を装着可能である農業機械が走行する走行ルートを取得する第1取得部と、前記第1取得部が取得した前記走行ルートを補正する補正部と、前記補正部が補正した後の前記走行ルートを表示する表示装置と、を備え、前記走行ルートは、それぞれ接続された複数のラインを含み、前記補正部は、前記複数のラインのうち一のラインである第1ラインの終端部から、当該第1ラインの終端部に接続された他のラインである第2ラインの始端部へ向かい、且つ当該第2ラインに対して傾斜する補助ラインを作成する作成部を有している。
【0010】
前記作成部は、前記補助ラインと前記第2ラインとが鋭角を形成するように前記補助ラインを作成してもよい。
【0011】
前記作成部は、前記補助ラインの始端部が前記第1ラインの終端部と交差し、当該第1ラインの終端部から直線状に延び、前記補助ラインの終端部が前記第2ラインの始端部に沿って湾曲するように前記補助ラインを作成し、前記補助ラインの始端部と前記第2ラインとが鋭角を形成し、前記補助ラインが前記第2ラインに対して傾斜してもよい。
【0012】
前記作成部は、前記補助ラインの始端部と前記第2ラインとが形成する角度が、前記第1ラインと前記第2ラインが形成する角度よりも小さくなるように前記補助ラインを作成してもよい。
【0013】
前記第1ラインと前記第2ラインが鈍角を形成する場合、前記作成部は、前記第1ラインと前記第2ラインが鋭角又は直角を形成する場合に比べて、前記補助ラインの始端部と前記第2ラインとが形成する角度が小さくなるよう傾斜する前記補助ラインを作成してもよい。
【0014】
農業機械の走行支援システムは、前記農業機械及び/又は前記作業装置の仕様情報を取得する第2取得部と、前記フィールドの情報を取得する第3取得部と、を備え、前記補正部は、前記第2取得部が取得した前記仕様情報、及び前記第3取得部が取得した前記フィールドの情報に基づいて、前記フィールドにおいて前記農業機械の侵入が禁止されている禁止エリアに前記農業機械が侵入しないよう、前記複数のラインの終端部を短縮する変更部を有し、前記作成部は、前記変更部が短縮した前記第1ラインの終端部から前記第2ラインの始端部へ向かい、前記第2ラインに対して傾斜するよう、前記補助ラインを形成してもよい。
【0015】
農業機械の走行支援システムは、前記第2取得部が取得した前記仕様情報に基づいて、前記農業機械の前方に仮想の第1基準位置を定義する定義部を備え、前記第3取得部は、前記フィールドの情報として、前記禁止エリアの位置情報を取得し、前記変更部は、前記禁止エリアの位置情報、及び前記第1基準位置に基づいて、前記第1基準位置が前記禁止エリアに侵入しないよう、前記複数のラインの終端部を短縮してもよい。
【0016】
前記第1ラインと前記第2ラインが所定の角度未満の鋭角を形成する場合、前記定義部は、前記第1基準位置よりも前方に仮想の第2基準位置を定義し、前記変更部は、前記複数のラインの位置情報、前記禁止エリアの位置情報、及び前記第2基準位置に基づいて、前記複数のラインの終端部を短縮し、前記変更部が前記第2基準位置に基づいて前記複数のラインを短縮した長さは、前記変更部が前記第1基準位置に基づいて前記複数のラインを短縮した長さよりも長くてもよい。
【0017】
前記変更部が短縮した前記複数のラインの長さが予め設定された長さ以上である場合、前記作成部は、前記補助ラインを隣接させて複数作成してもよい。
【0018】
前記第3取得部は、前記フィールドの情報のうち、前記禁止エリアの位置情報として、前記圃場以外の領域の位置情報、及び/又は前記圃場のうち前記作業装置が作業を完了した領域の位置情報を取得してもよい。
【0019】
前記作成部は、前記補助ラインの始端部が前記第1ラインの終端部と直交し、中途部が前記第2ラインの始端部に向かって湾曲し、終端部が前記第2ラインに沿って湾曲するようにして、傾斜する前記補助ラインを作成してもよい。
【0020】
前記作成部は、前記農業機械が前記補助ラインの始端部に位置している場合に、前記作業装置の作業領域と、前記第2ラインで前記作業装置が作業を行う単位作業区画の始端部と、が重複するように前記補助ラインを作成してもよい。
【0021】
農業機械の走行支援システムは、前記フィールドに前記複数のラインを定義し、前記走行ルートを作成するルート作成部を備え、前記ルート作成部は、前記第1ラインと、前記第2ラインとを、前記第1ラインで前記作業装置が作業を行った単位作業区画の終端部と、前記第2ラインで前記作業装置が作業を行った単位作業区画の始端部と、が一致又は重複するよう作成してもよい。
【0022】
農業機械の走行支援システムは、前記フィールドに前記複数のラインを定義し、前記走行ルートを作成するルート作成部を備え、前記ルート作成部は、前記農業機械が前記圃場を所定の周回方向に周回する前記走行ルートを作成し、前記複数のラインの始端部は、隣接し、且つ同一周回における他のラインの終端部と接続され、複数の周回の経路を形成していてもよい。
【0023】
前記ルート作成部は、前記複数の周回のうち、内側の周回から外側の周回の順に前記農業機械が走行するよう前記走行ルートを作成してもよい。
【発明の効果】
【0024】
上記農業機械の走行支援システムによれば、未作業領域の発生を抑制し、効率よく作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態における農業機械のブロック図を示す図である。
【
図5C】圃場の端部から圃場の輪郭を求める図である。
【
図6A】走行ライン及び単位作業区画等を説明する図である。
【
図7】
図6Aとは異なる単位作業区画を示す図である。
【
図11A】走行ルートを走行し、禁止エリアに接近する農業機械を示す第1図である。
【
図11C】補助ラインの作成を説明する第1図である。
【
図11D】連結ラインを走行する農業機械を示す図である。
【
図11E】連結ラインを走行して、第2ラインに達する農業機械を示す図である。
【
図11F】補助ライン(補助作業ライン)を後退する農業機械を示す図である。
【
図11G】補助ライン(補助作業ライン)を前進する農業機械を示す図である。
【
図11H】補助作業ラインから遷移ラインを走行する農業機械を示す図である。
【
図11I】第2ラインを後退する農業機械を示す図である。
【
図11J】第2ラインを前進する農業機械を示す図である。
【
図12A】走行ルートを走行し、禁止エリアに接近する農業機械を示す第2図である。
【
図12B】補助ラインの作成を説明する第2図である。
【
図13A】走行ルートを走行し、禁止エリアに接近する農業機械を示す第3図である。
【
図13B】補助ラインの作成を説明する第3図である。
【
図14A】走行ルートを走行し、禁止エリアに接近する農業機械を示す第4図である。
【
図14B】補助ラインの作成を説明する第4図である。
【
図15】複数の補助ラインの作成を説明する図である。
【
図16】作業範囲、第1補助作業区画、及び未作業領域等の位置関係を説明する図である。
【
図17A】変形例における補助ラインの作成を説明する図である。
【
図17B】変形例における補助ラインを走行する農業機械を示す図である。
【
図18】第1実施形態において、補正部が走行ルートを補正する一連の流れを示す図である。
【
図19】第1実施形態における補助ライン走行プロセスの一連の流れを示す図である。
【
図20】第2実施形態における農業機械のブロック図を示す図である。
【
図21】第3実施形態における農業機械のブロック図を示す図である。
【
図24】第3実施形態おいて、補正部が走行ルートを補正する一連の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
[第1実施形態]
図1は、農業機械1の走行支援システムSの一実施形態を示す図である。農業機械1の走行支援システムSは、農業機械1の走行や作業を支援するためのシステムであり、未作業領域Edの発生を抑制し、効率よく作業を行わせることができるシステムである。
【0028】
図25に示すように、本実施形態の場合、農業機械1は作業装置60を装着したトラクタである。なお、農業機械1は、トラクタに限定されず、作業装置60を装着可能な農業機械1であればよく、田植機、コンバイン等であってもよい。以下、説明の都合上、農業機械1がトラクタである場合を例に説明する。また、農業機械1の運転席7に着座した作業者(運転者)の前側(
図25の矢印AR1方向)を前方、作業者の後側(
図25の矢印AR2方向)を後方、作業者の左側を左方(
図25の手前側)、作業者の右側を右方(
図25の奥側)として説明する。また、農業機械1の前後方向に直交する方向である水平方向を幅方向として説明する。
【0029】
図1、
図25に示すように、農業機械1は、車体2と、原動機8と、第1油圧ポンプ9と、変速装置11と、連結装置30と、を備えている。車体2は、走行装置4を有していて走行可能である。走行装置4は、前輪4A及び後輪4Bを有する装置である。前輪4A及び後輪4Bは、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。
【0030】
図1に示すように、前輪4Aは、当該前輪4Aの向きを変えるアーム(ナックルアーム)5により接続されている。車体2は、ナックルアーム5によって前輪4Aの向きを変えることで車体2を直進させる直進走行と、車体2を旋回させる旋回走行と、が可能である。つまり、農業機械1は、複数の旋回走行を組み合わせ、前輪4Aの向きを幅方向の一方側に向けて前進し、前輪4Aの向きを幅方向の他方側に向けて後退すれば、切り返し走行を行うことができる。なお、車体2は、直進走行及び旋回走行が可能であればよく、上記構成に代えて、或いは加えて前輪4A及び後輪4Bの一方側(左側)と他方側(右側)との回転数を変更することで直進走行及び旋回走行を行うような構成であってよい。
【0031】
車体2には、原動機8の動力を外部に出力するPTO軸6と、作業者が着座する運転席7と、が設けられている。
【0032】
原動機8は、ディーゼルエンジン、電動モータ等であって、この実施形態ではディーゼルエンジンで構成されている。変速装置11は、変速によって走行装置4の推進力を切換可能であると共に、走行装置4の前進、後進の切換が可能である。第1油圧ポンプ9は、車体2に設けられ、作動油を吐出する機器である。第1油圧ポンプ9は、例えば原動機8と連結され、当該原動機8が出力した動力によって作動油を吐出する。
【0033】
連結装置30は、車体2に揺動自在に設けられ、作業装置60を車体2に連結する。具体的には、連結装置30は、車体2の後部に設けられている。また、連結装置30は、第1油圧ポンプ9が吐出した作動油によって駆動する油圧機器31により揺動可能である。連結装置30の後部には、作業装置60を着脱可能である。連結装置30は、作業装置60を連結することによって、車体2によって作業装置60を牽引することができる。
【0034】
作業装置60は、車体2に装着可能な装置であって、農業機械1がトラクタである場合、作業装置60は、連結装置30を介して車体2と連結されている。作業装置60は、外部から入力された動力、例えばPTO軸6から入力された動力によって作動してもよく、また、第1油圧ポンプ9が吐出した作動油によって駆動する油圧機器(図示略)を有し、当該油圧機器によって作動してもよい。作業装置60は、耕耘する耕耘装置、畝立てを行う畝成形装置、肥料を散布する肥料散布装置、農薬の散布を行い防除する農薬散布装置、播種作業を行う播種散布装置、作物(苗)の植え付けを行う移植機、作物の収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置等である。即ち、連結装置30は、上述したような様々な種類の作業装置60を選択して、車体2に連結することができる。
【0035】
なお、以下の説明においては、説明の都合上、作業装置60の幅方向の中央部と、農業機械1の幅方向の中央部と、が幅方向において一致している場合を例に説明し、作業装置60の幅方向の中央部と、農業機械1の幅方向の中央部と、が幅方向においてずれている(オフセットしている)場合を除いて説明する。ただし、作業装置60の幅方向の中央部と、農業機械1の幅方向の中央部と、が幅方向においてずれている(オフセットしている)場合も本発明を適用可能であり、後述する制御装置40等の処理において、農業機械1の位置(車体位置VP)を適宜変更する等して適用できる。
【0036】
以下、変速装置11について詳しく説明する。
図1に示すように、変速装置11は、主軸(推進軸)11aと、主変速部11bと、副変速部11cと、シャトル部11dと、PTO動力伝達部11eと、前変速部11fと、を備えている。推進軸11aは、変速装置11のハウジングケース(ミッションケース)に回転自在に支持され、当該推進軸11aには、原動機8のクランク軸からの動力が伝達される。主変速部11bは、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタを有している。主変速部11bは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、推進軸11aから入力された回転を変更して出力する(変速する)。
【0037】
副変速部11cは、主変速部11bと同様に、複数のギア及び当該複数のギアの接続を変更するシフタを有している。副変速部11cは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、主変速部11bから入力された回転を変更して出力する(変速する)。
【0038】
シャトル部11dは、シャトル軸12と、前後進切換部13とを有している。シャトル軸12には、副変速部11cから出力された動力がギア等を介して伝達される。前後進切換部13は、例えば、油圧クラッチ等で構成され、油圧クラッチの入切によってシャトル軸12の回転方向、即ち、農業機械1の前進及び後進を切り換える。シャトル軸12は、後輪デフ装置17Rに接続されている。後輪デフ装置17Rは、後輪4Bが取り付けられた後車軸18Rを回転自在に支持している。
【0039】
PTO動力伝達部11eは、PTO推進軸14と、PTOクラッチ15とを有している。PTO推進軸14は、回転自在に支持され、推進軸11aからの動力が伝達可能である。PTO推進軸14は、ギア等を介してPTO軸6に接続されている。PTOクラッチ15は、例えば、油圧クラッチ等で構成され、油圧クラッチの入切によって、推進軸11aの動力をPTO推進軸14に伝達する状態と、推進軸11aの動力をPTO推進軸14に伝達しない状態とに切り換わる。
【0040】
前変速部11fは、第1クラッチ16Aと、第2クラッチ16Bとを有している。第1クラッチ16A及び第2クラッチ16Bは、推進軸11aからの動力が伝達可能であって、例えば、シャトル軸12の動力が、ギア及び伝動軸を介して伝達される。第1クラッチ16A及び第2クラッチ16Bからの動力は、前伝動軸19を介して前車軸18Fに伝達可能である。具体的には、前伝動軸19は、前輪デフ装置17Fに接続され、前輪デフ装置17Fは、前輪4Aが取り付けられた前車軸18Fを回転自在に支持している。
【0041】
第1クラッチ16A及び第2クラッチ16Bは、油圧クラッチ等で構成されている。第1クラッチ16Aには油路が接続され、当該油路には第1油圧ポンプ9から吐出した作動油が供給される第1作動弁25aに接続されている。第1クラッチ16Aは、第1作動弁25aの開度によって接続状態と切断状態とに切り換わる。第2クラッチ16Bには油路が接続され、当該油路には第2作動弁25bに接続されている。第2クラッチ16Bは、第2作動弁25bの開度によって接続状態と切断状態とに切り換わる。第1作動弁25a及び第2作動弁25bは、例えば、電磁弁付き二位置切換弁であって、電磁弁のソレノイドを励磁又は消磁することにより、接続状態又は切断状態に切り換わる。
【0042】
第1クラッチ16Aが切断状態で且つ第2クラッチ16Bが接続状態である場合、第2クラッチ16Bを通じてシャトル軸12の動力が前輪4Aに伝達される。これにより、前輪4A及び後輪4Bが動力によって駆動する四輪駆動(4WD)で且つ前輪4Aと後輪4Bとの回転速度が略同じとなる(4WD等速状態)。一方、第1クラッチ16Aが接続状態で且つ第2クラッチ16Bが切断状態である場合、四輪駆動になり且つ前輪4Aの回転速度が後輪4Bの回転速度に比べて速くなる(4WD増速状態)。また、第1クラッチ16A及び第2クラッチ16Bが接続状態である場合、シャトル軸12の動力が前輪4Aに伝達されないため、後輪4Bが動力によって駆動する二輪駆動(2WD)となる。
【0043】
図1に示すように、農業機械1は、当該農業機械1を操作する操作装置20を有している。操作装置20は、運転席7の周囲に設けられており、原動機8、変速装置11、及び走行装置4等を操作可能である。操作装置20は、例えば第1操作レバー21、第2操作レバー22、及び操舵装置23を含んでおり、第1操作レバー21及び第2操作レバー22は、作業者が把持して傾動操作可能である。第1操作レバー21は、連結装置30の昇降を操作可能な装置であり、第2操作レバー22は、連結装置30に連結された作業装置60の操作が可能な装置である。
【0044】
操舵装置23は、作業者の操作によって車体2の操舵を行う手動操舵が可能な装置であり、車体2の直進操作及び旋回操作が可能である。
図25に示すように、操舵装置23は、運転席7の前方に設けられている。
図1に示すように、操舵装置23は、ステアリングハンドル(ステアリングホイール)23aと、ステアリングハンドル23aを回転可能に支持するステアリングシャフト(回転軸)23bと、を有している。また、操舵装置23は、補助機構(パワーステアリング装置)35を有している。補助機構35は、油圧等によってステアリングシャフト23b(ステアリングハンドル23a)の回転を補助する。補助機構35は、第2油圧ポンプ36aと、第2油圧ポンプ36aから吐出した作動油が供給される補助制御弁36bと、補助制御弁36bにより作動するステアリングシリンダ36cとを含んでいる。補助制御弁36bは、例えば、スプール等の移動によって切り換え可能な3位置切換弁であり、ステアリングシャフト23bの操舵方向(回転方向)に対応して切り換わる。ステアリングシリンダ36cは、前輪4Aの向きを変えるナックルアーム5に接続されている。
【0045】
したがって、作業者がステアリングハンドル23aを把持して操作すれば、当該ステアリングハンドル23aの回転方向に対応して補助制御弁36bの切換位置及び開度が切り換わり、当該補助制御弁36bの切換位置及び開度に応じてステアリングシリンダ36cが左又は右に伸縮することによって、前輪4Aの操舵方向を変更することができる。つまり、車体2は、ステアリングハンドル23aの手動操舵によって、進行方向を左又は右に変更することができる。
【0046】
図2に示すように、連結装置30は、リフトアーム30a、ロアリンク30b、トップリンク30c、リフトロッド30d、リフトシリンダ31を有している。リフトアーム30aの前端部は、変速装置11を収容するケース(ミッションケース)の後上部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトアーム30aは、リフトシリンダ31の駆動によって揺動(昇降)する。リフトシリンダ31は、油圧シリンダから構成されている油圧機器である。リフトシリンダ31は、制御弁25cを介して第1油圧ポンプ9と接続されている。制御弁25cは、電磁弁等であって、開度を変更することで、作動油の流量を変更してリフトシリンダ31を伸縮させる。
【0047】
ロアリンク30bの前端部は、変速装置11の後下部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。トップリンク30cの前端部は、ロアリンク30bよりも上方において、変速装置11の後部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトロッド30dは、リフトアーム30aとロアリンク30bとを連結している。ロアリンク30bの後部及びトップリンク30cの後部には、作業装置60が連結される。リフトシリンダ31が駆動(伸縮)すると、リフトアーム30aが昇降するとともに、リフトロッド30dを介してリフトアーム30aと連結されたロアリンク30bが昇降する。これにより、連結装置30は、作業装置60がロアリンク30bの前部を支点として上方に移動する非作業状態と、下方に移動する作業状態と、に切り換えることができる。非作業状態は、連結装置30が作業装置60を上昇させた状態であって、作業装置60が作業を行わない場合の状態である。また、作業状態は、連結装置30が作業装置60を下降させた状態であって、作業装置60が作業を行う場合の状態である。
【0048】
図1に示すように、農業機械1の走行支援システムSは、制御装置40と記憶部41とを備えている。制御装置40及び記憶部41は、農業機械1に設けられている。制御装置40は、電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成された装置である。制御装置40は、農業機械1が有する様々な機器を制御する。具体的には、制御装置40は、油圧機器(リフトシリンダ)31の制御、作業装置60、及び第1油圧ポンプ9の出力の変更等の制御が可能である。記憶部41は、不揮発性のメモリ等であり、制御装置40の制御に関する様々な情報等を記憶している。具体的には、例えば、制御装置40は、記憶部41に記憶されているプログラム等によって、制御弁25cの開度を変更して、リフトシリンダ31に供給する作動油の流量を変更することで、リフトシリンダ31を伸縮させる。これにより、制御装置40は、リフトシリンダ(油圧機器)31を伸縮制御することにより、連結装置30を作業状態と非作業状態とに切り換えることができる。
【0049】
図1、
図25に示すように、農業機械1の走行支援システムSは、位置検出装置(測位装置)50を備えている。位置検出装置50は、D-GPS、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、みちびき等の衛星測位システム(測位衛星)により、自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出可能である。即ち、位置検出装置50は、測位衛星から送信された衛星信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、衛星信号に基づいて、農業機械1の位置(例えば、緯度、経度)、即ち、車体位置VPを検出する。なお、本実施形態においては、車体位置VPは、位置検出装置(測位装置)50が検出した自己の位置と一致するよう演算されるが、その位置は、例えば農業機械1の中央部であってもよいし、前端であってもよいし、後端であってもどこでもよい。
【0050】
図1に示すように、位置検出装置50は、受信装置51と、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)52とを有している。受信装置51は、アンテナ等を有していて測位衛星から送信された衛星信号を受信する装置であり、慣性計測装置52とは別に農業機械1に取付けられている。
図25に示すように、この実施形態では、受信装置51は、車体2に設けられたロプス10の上部に取り付けられている。なお、受信装置51の取り付け位置は、上記位置に限定されず、ボンネットの中央部であってもよく、車体2にキャビン等の保護機構が設けられている場合、保護機構の上部であってもよい。
【0051】
慣性計測装置52は、加速度を検出する加速度センサ、角速度を検出するジャイロセンサ等を有している。農業機械1、例えば、運転席7の下方に設けられ、慣性計測装置52によって、農業機械1のロール角、ピッチ角、ヨー角等を検出することができる。
【0052】
なお、上述した実施形態においては、農業機械1が位置検出装置50を備えている場合を例に説明したが、農業機械1の走行支援システムSは、農業機械1の位置(車体位置VP)を検出する位置検出装置50を備えていればよく、位置検出装置50は農業機械1に設けられていなくてもよい。即ち、位置検出装置50は、例えば運転席7に着座した作業者が携帯しているスマートフォン(多機能携帯電話)、タブレット端末等の携帯端末が有する位置検出装置であってもよい。
【0053】
図1に示すように、操舵装置23は、自動操舵機構37を有している。自動操舵機構37は、車体2の自動操舵を行う機構である。自動操舵機構37は、ステアリングモータ38とギア機構39とを備えている。ステアリングモータ38は、回転方向、回転速度、回転角度等が制御可能なモータである。ギア機構39は、ステアリングシャフト23bに設けられ且つ当該ステアリングシャフト23bと供回りするギアと、ステアリングモータ38の回転軸に設けられ且つ当該回転軸と供回りするギアとを含んでいる。ステアリングモータ38の回転軸が回転すると、ギア機構39を介して、ステアリングシャフト23bが自動的に回転(回動)し、前輪4Aの操舵方向を変更することができる。
【0054】
図1に示すように、制御装置40は、農業機械1の自動走行を制御する自動走行制御部40aを有している。自動走行制御部40aは、制御装置40に設けられた電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成されている。自動走行制御部40aは、自動走行を開始すると、農業機械1が予め設定された走行ルートLに沿って走行するように自動操舵機構37のステアリングモータ38を制御する。また、自動走行制御部40aは、自動走行を開始すると、変速装置11の変速段、原動機8の回転数等を自動的に変更することによって、農業機械1の車速(走行速度)を制御する。
【0055】
自動走行制御部40aは、自動走行を開始すると、農業機械1が直進走行する場合と旋回走行する場合とでそれぞれ異なる走行速度を制御する。例えば、農業機械1が直進走行する場合、自動走行制御部40aは、走行速度を速度αに設定する。一方、農業機械1が旋回走行する場合、自動走行制御部40aは、走行速度を速度αよりも遅い速度β(β<α)に設定する。なお、自動走行制御部40aは、走行ルートLのうち、直進走行する経路を複数の区間に分けて、当該区間ごとに異なる走行速度に設定してもよく、走行速度の制御は上記構成に限定されない。
【0056】
以下、自動走行制御部40aによる自動操舵機構37の制御について説明する。
図3の上図に示すように、農業機械1の位置(車体位置VP)と走行ルートLとの偏差が所定未満である場合、自動走行制御部40aは、ステアリングモータ38の回転軸の回転角を維持する。車体位置VPと走行ルートLとの偏差が所定以上であって、農業機械1が走行ルートLに対して左側に位置している場合は、自動走行制御部40aは、農業機械1の操舵方向が右方向となるようにステアリングモータ38の回転軸を回転する。車体位置VPと走行ルートLとの偏差が所定以上であって、農業機械1が走行ルートLに対して右側に位置している場合は、自動走行制御部40aは、農業機械1の操舵方向が左方向となるようにステアリングモータ38の回転軸を回転する。
【0057】
なお、上述した実施形態では、農業機械1の位置(車体位置VP)と走行ルートLとの偏差に基づいて操舵装置23の操舵角を変更していたが、
図3の下図に示すように、走行ルートLの方位と農業機械1(車体2)の進行方向(走行方向)の方位(車体2の方位)とが異なる場合、即ち、走行ルートLに対する車体2の方位の角度θgが所定以上である場合、自動走行制御部40aは、角度θgが零(車体2の方位が走行ルートLの方位に一致)となるように操舵角を設定してもよい。
【0058】
また、自動走行制御部40aは、偏差(位置偏差)に基づいて求めた操舵角と、方位(方位偏差)に基づいて求めた操舵角とに基づいて、自動操舵における最終の操舵角を設定してもよい。上述した実施形態における自動操舵における操舵角の設定は一例であり、限定されない。
【0059】
図1に示すように、農業機械1の走行支援システムSは、表示装置55を備えている。表示装置55は、制御装置40と通信可能に接続されており、農業機械1に関する様々な情報を表示して、農業機械1の走行や作業を支援する装置である。本実施形態において、表示装置55は、例えば運転席7の近傍に設けられた走行支援装置である。また、表示装置55は、農業機械1が有する機器と有線又は無線によって通信可能に接続されており、相互に情報を送受信することができる。具体的には、例えば表示装置55の表示制御部57と、農業機械1の制御装置40とが通信可能に接続されている。
【0060】
図1に示すように、表示装置55は、表示部56と、表示制御部57と、表示記憶部58と、を備えている。表示部56は、液晶パネル、タッチパネル、その他のパネルのいずれかで構成されており、圃場Gを示すフィールドF等、農業機械1の走行及び作業を支援するための様々な情報を表示することができる。表示部56は、農業機械1の走行を支援するための情報の他に、農業機械1、作業装置60に関する様々な情報を表示可能である。
【0061】
表示制御部57は、表示装置55に設けられた電気・電子部品、後述する表示記憶部58に格納されたプログラム等から構成されている。表示制御部57は、表示記憶部58に記憶されている情報を可視化した画面を表示部56に表示させる。
【0062】
表示記憶部58は、不揮発性のメモリ等から構成されており、農業機械1、及び作業装置60に関する様々な情報を格納する。
【0063】
なお、上述した実施形態において、表示装置55は、運転席7の近傍に設けられた走行支援装置であるが、表示装置55は、表示部56と、表示制御部57と、表示記憶部58と、を備えていればよく、パーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォン(多機能携帯電話)、タブレット端末等のコンピュータであってもよい。
【0064】
図1に示すように、農業機械1の走行支援システムSは、位置取得部57aと、フィールド登録部57bと、フィールド取得部57cと、を備えている。本実施形態においては、位置取得部57a、フィールド登録部57b、及びフィールド取得部57cは、電気・電子部品、表示装置55に組み込まれたプログラム等から構成されており、位置取得部57a、フィールド登録部57b、及びフィールド取得部57cは、表示装置55の表示制御部57が兼用している。なお、本実施形態において、位置取得部57a、フィールド登録部57b、及びフィールド取得部57cは、表示装置55の表示制御部57が兼用しているが、当該位置取得部57a、フィールド登録部57b、及びフィールド取得部57cは、制御装置40、乃至制御装置40又は表示制御部57と通信可能に接続された外部のサーバ等が有していてもよいし、その構成は上記構成に限定されない。
【0065】
位置取得部57aは、農業機械1が圃場Gを周回したときの複数の測位点を取得する。具体的には、本実施形態において、位置取得部57aは、位置検出装置50が検出した農業機械1の位置(車体位置VP)を複数の測位点として取得する。位置取得部57aは、複数の測位点VPの位置(緯度、経度)で示されたデータ、座標(X軸、Y軸)系で示されたデータを取得する。
【0066】
なお、位置取得部57aは、複数の測位点を取得することができればよく、複数の測位点の位置情報を予め記憶したメモリ等の記憶機器と表示装置55を接続し、当該記憶機器から複数の測位点の位置情報を取得するような構成であってもよく、その取得方法は上述した方法に限定されない。
【0067】
フィールド登録部57bは、表示部56が表示するフィールドFとして所定の圃場Gの輪郭H1、例えば、所定の圃場Gの輪郭H1に対応した位置を登録する。
図4、
図6A、
図6Bに示すように、圃場Gの輪郭H1は、圃場Gと圃場Gよりも外側の領域(例えば圃場Gの外周に形成された畔や柵が設置された領域等)E1とを区切る外側境界線H1である。作業者が表示装置55に対して所定の操作を行うと、表示制御部57は、
図4に示すように、表示部56にフィールド登録画面D1を表示させる。フィールド登録画面D1は、圃場Gを含むフィールドF及び農業機械1の車体位置VPを示すフィールド表示部100と、圃場Gの名称(圃場名)及び圃場管理番号等の圃場識別情報を示す第1情報表示部101と、を表示する。フィールドFには、圃場Gを示す画像データの他に緯度、経度又は座標系(X軸、Y軸)等の位置情報が対応付けられている。
【0068】
表示部56がフィールド登録画面D1を表示すると、作業者は、農業機械1を操作して、圃場G内で農業機械1を周回させる。位置取得部57aは、位置検出装置50により検出された車体位置VPを所定の周期で取得して、当該車体位置VPを表示記憶部58に随時記録するとともに、当該車体位置VPをフィールド表示部100上に随時表示させる(
図4では、便宜上、一部の車体位置VPだけ表示している)。
【0069】
圃場G内での農業機械1の周回が終了して、作業者が登録ボタン102を選択すると、フィールド登録部57bが、記録した複数の車体位置VPに基づいて、農業機械1の走行軌跡T1を演算する。また、
図4に示すように、表示制御部57が、フィールド表示部100のフィールドF上に走行軌跡T1を表示させる。
図4等の例では、複数の車体位置VPを検出順(取得順)に通った後に、最初に検出された位置VPに戻るラインT1を、農業機械1の走行軌跡としている。
【0070】
車体位置VPは、位置検出装置50のGPS位置であり、走行軌跡T1は、GPS位置が移動した軌跡である。このため、フィールド登録部57bは、農業機械1におけるGPS位置から、作業装置60の周回外側端(
図5Aでは、農業機械1が時計回りに圃場Gを周回しているので、作業装置60の左端のこと)までの横幅方向の間隔と同等量、走行軌跡T1を外側にオフセットして、走行軌跡T1とフィールドFの外形ラインとの間にラインH1を形成する。本実施形態では、位置検出装置50のGPS位置は農業機械1の中心にあり、農業機械1の幅方向の中心と作業装置60の幅方向の中心とが一致しているので、上記のオフセット量を、作業装置60の外形幅(幅方向の長さ)の半分の値又は作業装置60の作業幅W(作業装置60が圃場Gに対して何等かの作用を及ぼす作業範囲Nの幅方向の長さ)の半分の値と同値にしている。なお、以下の説明では、説明の簡略化のため、作業装置60の外形幅と作業幅Wが一致しているものとして説明を行う。他の例として、農業機械1のGPS位置から作業装置60の周回外側端までの幅方向の間隔より、所定程度小さい値又は所定程度大きい値を上記のオフセット量として、走行軌跡T1とフィールドFの外形ラインとの間にラインH1を形成してもよい。
【0071】
フィールド登録部57bは、上記のように形成したラインH1を圃場Gの輪郭(外形)とし、当該輪郭H1で表されるフィールドFを表示記憶部58に登録(記憶)する。また、この際、フィールド登録部57bは、圃場Gの名称(圃場名)及び圃場管理番号等の圃場識別情報をフィールドFに対応付けて表示記憶部58に登録する。フィールドF等は、表示記憶部58に複数登録可能であり、フィールド登録部57bがフィールドFを登録すると、表示制御部57が当該フィールドF(圃場Gの輪郭H1)を表示する。
【0072】
上述した圃場G(フィールドF)の登録方法は、一例であり、これに限定されない。他の例として、フィールド登録部57bが、
図5Bに示すように、農業機械1の走行軌跡T1から変曲点を演算して、当該変曲点を通るラインK1を形成するような方法を適用してもよい。そして、前述したオフセット量だけラインK1を外側にオフセットして、走行軌跡T1とフィールドFの外形ラインとの間にラインH2を形成し、当該ラインH2を圃場Gの輪郭K2及びフィールドFとし、当該フィールドFを表示記憶部58に登録してもよい。
【0073】
また、農業機械1が周回する際に、作業者が所定のスイッチ等を操作することで、
図5Cに示すように、圃場Gの端部を指定するような方法を適用してもよい。また、この場合、フィールド登録部57bは、圃場Gの各端部を指定順に通った後に、最初に指定された端部に戻るラインK2を形成する。そして、前述したオフセット量だけラインK2を外側にオフセットして、走行軌跡T1とフィールドFの外形ラインとの間にラインH3を形成し、当該ラインH3を圃場Gの輪郭K4及びフィールドFとし、当該フィールドFを表示記憶部58に登録してもよい。
【0074】
さらに、圃場Gの輪郭H1,H2,H3及びフィールドFは、例えば位置(緯度、経度)で示されたデータ、座標(X軸、Y軸)系で示されたデータ、又はその他の表現で示されたデータであってもよい。
【0075】
上述したように、表示装置55は、フィールド登録部57bによって複数のフィールドFを登録することができる。
【0076】
フィールド取得部57cは、作業等を行うにあたって複数のフィールドFのうち、所定の圃場Gを示すフィールドFを取得する。本実施形態において、フィールド取得部57cは、フィールド登録部57bが登録したフィールドFの輪郭H1の位置情報をフィールドFの情報として取得する。なお、フィールド取得部57cは、フィールドFの情報は、フィールドFの輪郭H1の位置情報に限定されず、他の情報を含んでいてもよい。フィールド取得部57cは、輪郭H1の位置(緯度、経度)で示されたデータ、座標(X軸、Y軸)系で示されたデータを取得する。
【0077】
なお、フィールド取得部57cは、フィールドFを取得することができればよく、フィールドFを予め記憶したメモリ等の記憶機器と表示装置55を接続し、当該記憶機器からフィールドFを取得するような構成であってもよく、その取得方法は上述した方法に限定されない。
【0078】
図1に示すように、農業機械1の走行支援システムSは、設定取得部57dと、ルート作成部57eと、を備えている。本実施形態においては、設定取得部57d及びルート作成部57eは、電気・電子部品、表示装置55に組み込まれたプログラム等から構成されており、表示装置55の表示制御部57が兼用している。なお、本実施形態において、設定取得部57d及びルート作成部57eは、表示装置55の表示制御部57が兼用しているが、設定取得部57d及びルート作成部57eは、制御装置40乃至制御装置40又は表示制御部57と通信可能に接続された外部のサーバが有していてもよいし、その構成は上記構成に限定されない。
【0079】
設定取得部57dは、走行ルートLの作成に関する設定情報を取得する。具体的には、作業者(運転者)が表示装置55に対して所定の操作を行うと、
図8に示すように、表示制御部57は、表示部56に設定画面D2を表示させる。設定画面D2は、枕地数入力部110と、第1幅入力部111と、第2幅入力部112と、第3幅入力部113と、機械入力部114と、ルート表示部115と、を備えている。枕地数入力部110は、枕地数の入力を受け付ける。
図6A、
図8に示す例においては、枕地数は「4」であり、圃場Gの枕地(枕地エリア)A1に対して作業を行う周回ラインLnとして4つの経路が形成される。
【0080】
第1幅入力部111は、作業装置60の作業幅Wの入力を受け付ける。
図9に示すように、作業幅Wは、作業装置60が圃場G等の対地に対して作業を行う幅(作業実行幅)である。
【0081】
第2幅入力部112は、
図7に示すように、周回ラインLnにおいて隣接する外側作業区画A3と重複する幅であるオーバラップ幅(第1オーバラップ幅)W1の入力を受け付ける。
【0082】
第3幅入力部113は、
図7に示すように、内側ラインLUにおいて隣接する内側作業区画A4と重複する幅であるオーバラップ幅(第2オーバラップ幅)W2の入力を受け付ける。
【0083】
機械入力部114は、
図8に示すように、農業機械1に牽引されて圃場Gで作業を行う作業装置60の情報の入力を受け付ける。本実施形態においては、機械入力部114は、作業装置60の型式情報の入力を受け付ける。
【0084】
図8に示すように、ルート表示部115には、フィールド取得部57cが取得したフィールドFが表示される。また、ルート表示部115は、作成された走行ルートLをフィールドFに表示することができる。
【0085】
設定取得部57dは、走行ルートLの作成に関する設定情報として、設定画面D2に入力された情報のうち、第1幅入力部111が入力を受け付けた作業幅Wと、枕地数入力部110が入力を受け付けた枕地数と、第2幅入力部112が入力を受け付けた第1オーバラップ幅W1と、第3幅入力部113が入力を受け付けた第2オーバラップ幅W2と、を取得する。
【0086】
また、設定取得部57dは、作業装置60の仕様情報を取得する。具体的には、設定取得部57bは、機械入力部114が入力を受け付けた作業装置60の型式情報に基づいて、表示記憶部58に予め記憶されている情報から作業装置60の仕様情報を取得する。表示記憶部58には、作業装置60の型式情報と、作業装置60の仕様情報と、が対応付けられたテーブルとして記憶されている。例えば、
図9に示すように、作業装置60の仕様情報として、作業装置60が圃場G等の対地に対して作業を行う範囲(作業範囲N)の前後方向の長さ(作業長さw1)、連結装置30に連結される被連結部60aから作業範囲Nの前端までの長さy1、及び被連結部60aから作業範囲Nの後端までの長さy2が記憶されている。このため、設定取得部57dは、機械入力部114が入力を受け付けた作業装置60の型式情報に基づいて、作業長さw1、被連結部60aから作業範囲Nの前端までの長さy1、及び被連結部60aから作業範囲Nの後端までの長さy2を取得できる。
【0087】
なお、設定画面D2に入力された情報(作業幅W、第1オーバラップ幅W1、第2オーバラップ幅W2、及び作業装置60の型式情報等)は、フィールドFに対応付けて表示記憶部58に記憶される。
【0088】
ルート作成部57eは、車体2が走行する走行ルートLを作成する。具体的には、ルート作成部57eは、フィールド取得部57cが取得したフィールドF上に、走行ルートLを作成する。ルート作成部57eが作成した走行ルートLは、フィールドFに対応付けて表示記憶部58に記憶される。本実施形態において、ルート作成部57eは、設定取得部57dが取得した設定情報に基づいて、農業機械1が圃場Gを周回する走行ルートLをフィールドF上に作成することができる。
【0089】
以下、ルート作成部57eによる走行ルートLの作成、及び走行ルートLについて詳しく説明する。
【0090】
図6Aに示すように、ルート作成部57eは、周回する走行ルートLとして圃場Gの枕地(枕地エリア)A1に対して作業を行う周回ラインLn(n:枕地数[周回数] 、n=1,2,3・・・n)を作成する。ルート作成部57eは、少なくとも農業機械1が圃場Gを周回する際の走行ルートLを作成すればよく、本実施形態において、ルート作成部57eは、圃場Gの周回の走行ルートLである周回ラインLnに加えて、枕地エリアA1の内側(内側エリアA2)で作業装置60が作業を行う際の走行ルートLである内側ラインLUと、を作成可能である。
【0091】
図6Aに示すように、周回ラインLnは、枕地エリアA1において農業機械1が周回する走行ルートLである。農業機械1は、周回ラインLnを所定の周回方向に周回し、
図6A等に示す例においては、反時計回りに周回する。ただし、農業機械1の周回方向は、反時計回りに限定されず、時計回りであってもよいし、周回ごとに異なる方向に周回するような構成であってもよい。
【0092】
農業機械1は、複数の周回のうち、内側の周回から外側の周回の順に走行する。周回ラインLnの経路の数、即ち周回の数は、圃場Gに形成する枕地A1の数(枕地数)に対応している。つまり、枕地数が4つである場合、周回ラインLnの経路は、
図6Aに示すように、フィールドFの中央部から外側に向けて隣接する4つの経路である。枕地数が5つである場合、周回ラインLnの経路は、フィールドFの中央部から外側に向けて隣接する5つの経路である。
【0093】
なお、以下の説明において、周回ラインLnについて、最も外側に位置している周回ラインLnから内側の周回ラインLnに向かって順に第1周回ラインL1、第2周回ラインL2、第3周回ラインL3・・・第n周回ラインLn(n=1,2,3・・・n)として説明する。なお、
図6Aにおいては、第4周回ラインL4のうち、内側ラインLUと重複する部分を省略して記載している。
【0094】
図6A、
図6Bに示すように、内側ラインLUは、例えば、内側エリアA2の長手方向の両端部を結ぶ直線部LU1と、隣接する直線部LU1を結ぶ曲線部LU2と、を含んでいる。直線部LU1は、農業機械1が走行して、作業装置60が作業を行う経路であり、曲線部LU2は、農業機械1が直進部LU1から別の直進部LU1に移動する経路である。即ち内側ラインLUを走行する農業機械1は、内側エリアA2の一端側と他端側とを往復し、曲線部LU2において旋回を行い一の直線部LU1から隣接する他の直線部LU1へ移動する。
【0095】
図1に示すように、ルート作成部57eは、第1生成部57e1と、第2生成部57e2と、第3生成部57e3と、第4生成部57e4と、第5生成部57e5と、第6生成部57e6と、を有している。第1生成部57e1は、表示装置55が表示するフィールドFの輪郭H1、枕地数、及び第1間隔に基づいて、隣接する枕地数(n=1,2,3・・・n)ごとの周回ラインLnを作成する。ここで、周回ラインLnの作成における第1間隔とは作業幅W又は作業幅Wから第1オーバラップ幅W1の2倍の長さを減算した長さである。本実施形態においては、
図6Aに示すように、第1間隔が作業幅Wと同値である場合について説明する。なお、
図7に示すように、第1間隔は、作業幅Wから第1オーバラップ幅W1の2倍の長さを減算した長さであってもよい。
【0096】
第1生成部57e1は、例えば、フィールド取得部57cが取得したフィールドFの情報に基づいて、輪郭H1上の特徴点Pを取得し、当該特徴点Pに基づいて周回ラインLnを作成する。本実施形態において、輪郭H1上の特徴点Pは、輪郭H1上の変曲点である。第1生成部57e1は、輪郭H1上の変曲点(特徴点P)を演算すると、第1間隔及び枕地数に基づいて特徴点PをフィールドFの内側へシフトさせ、最も外側に位置している第1周回ラインL1から内側の周回ラインLnに向かって順に、シフトした特徴点P´を通る周回ラインLnを作成する。
【0097】
図6Aに示すように、周回ラインLn(走行ルートL)は、それぞれ接続された複数のラインRを含んでおり、複数のラインRは、隣接し、且つ同一周回における他のラインと接続されることで周回の経路(周回ラインLn)を形成している。言い換えると、走行ルートLは、複数のラインRを含んでいる。複数のラインRは、一の特徴点P´と他の特徴点P´とを接続する略直線の経路である。例えば、農業機械1は、複数のラインRに位置している場合、直進走行を行う。一方、農業機械1は、一のライン(第1ライン)R1から当該一のラインR1に接続された他のライン(第2ライン)R2へ移動する場合、一のラインR1と他のラインR2との間の特徴点P´において旋回走行又は切り返し走行等を行う。なお、以下の説明において、複数のラインRのうち、所定の一のラインを第1ラインR1として説明し、農業機械1が第1ラインR1の次に移動するライン(他のライン)を第2ラインR2として説明することがある。
【0098】
また、
図6A、
図6Bに示すように、第2生成部57e2は、周回ラインLnに対応し、且つ第1間隔と同一の幅の外側作業区画A3を枕地エリアA1内に複数作成する。第2生成部57e2は、ラインRの交差方向の一方側と他方側に離間し、且つ当該ラインRと並行である一対の境界MをフィールドF上に作成する。
【0099】
図6Aに示すように、第3生成部57e3は、最も内側の周回ラインLnに基づいて、枕地エリアA1と内側エリアA2とを設定する。具体的には、例えば第3生成部57e3は、最も内側の周回ラインLnを第1間隔の1/2だけ内側にシフトさせて、枕地エリアA1と内側エリアA2との境界Mである内側境界線H1´を作成する。第3生成部57e3は、内側境界線H1´に囲まれた領域を内側エリアA2として設定し、外側境界線H1と内側境界線H1´に囲まれた領域を枕地エリアA1として設定する。
【0100】
一対の境界Mと周回ラインLnとの間の長さは第1間隔の1/2の長さであり、一対の境界Mの間の長さは、第1間隔と同一の長さである。つまり、
図6Bに示すように、外側作業区画A3は、無端状の帯形状の領域であり、幅方向の中央部に周回ラインLnが通っている。また、外側作業区画A3は、それぞれの枕地数ごとに隣接して配置される。これによって、第2生成部57e2は、一対の境界Mに囲まれた複数の外側作業区画A3を作成する。ここで、本実施形態において、農業機械1は、複数の周回のうち、内側の周回から外側の周回の順に走行し、作業装置60は、外側作業区画A3のうち、内側の外側作業区画A3から外側の外側作業区画A3の順に作業を行う。
【0101】
図10に示すように、第4生成部57e4は、農業機械1が周回ラインLnにおいて旋回又は切り返しを行う旋回部CR(n:枕地数[周回数] 、n=1,2,3・・・n)を周回ラインLnに生成する。第4生成部57e4は、周回ラインLnの複数の特徴点P´に旋回部CRを生成し、周回ラインLnを補正する。つまり、複数のラインRは、それぞれの端部(終端部r1及び始端部r2)は、他のラインRの端部(終端部r1及び始端部r2)と、旋回部CRによって連結される。なお、以下の説明において、終端部r1及び始端部r2のように「端部」として説明している記載については、端の部分を含む範囲のことを意味し、終端や始端のように「端」として説明している記載については、端そのものを意味する。
【0102】
また、第4生成部57e4は、周回ラインLn上の全ての特徴点P´に旋回部CRを生成しなくてよく、所定の条件を満たす特徴点P´に旋回部CRを生成するような構成であってもよい。例えば、第4生成部57e4は、周回ラインLnの一のライン(第1ライン)R1と、当該一のラインR1に接続された他のライン(第2ライン)R2と、が形成する角度θaが所定以上である場合に、一のラインR1と他のラインR2との間の特徴点P´に旋回部CRを生成するような構成であってもよい。ここで、第1ラインR1と第2ラインR2とが形成する角度θaは、第1ラインR1と第2ラインR2とが形成する角度のうち、小さいほうの角度をいう。
【0103】
図10に示すように、旋回部CRは、第1ラインR1における作業装置60の作業終了点p1と、第2ラインR2における作業開始点p2を連結する経路である。作業終了点p1は、農業機械1が移動を停止して、作業装置60が作業を終了する点であり、作業開始点p2は、農業機械1が移動を開始して、作業装置60が作業を開始する点である。旋回部CRは、農業機械1が旋回する部分C1と、農業機械1が後退する部分C2と、を含む経路である。
【0104】
なお、本実施形態において、作業終了点p1は、作業装置60が作業を終了させる際に、作業装置60の作業範囲Nの前端が一致する点である。また、作業開始点p2は、作業装置60が作業を開始させる際に、作業装置60の作業範囲Nの後端が一致する点である。
【0105】
ここで、
図10に示すように、周回ラインLnのうち一のライン(第1ラインR1)を抽出して説明すると、作業終了点p1は、第1ラインR1上であって、且つ第1ラインR1に対応する一対の境界Mのうち、第1ラインR1の終端部(第2ラインR2側の端部)r1aにおいて短いほうの境界M(第1境界M1)を基準に設定される。具体的には、作業終了点p1は、第1境界M1の終端と作業装置60の作業範囲Nの前端が第1ラインR1の伸長方向において一致するように設定される。このため、作業終了点p1は、第1ラインR1上における第1境界M1の終端に対応する位置に設定される。なお、以下の説明において、周回ラインLnのうち一のラインに対応する境界Mにおいて、短いほうの境界Mを第1境界M1として説明し、長いほうの境界Mを第2境界M2として説明する。
【0106】
また、作業開始点p2は、第2ラインR2の延長線上であって、第1ラインR1に対応する一対の境界Mのうち、第1ラインR1の終端部(第2ラインR2側の端部)r1aにおいて長いほうの境界M(第2境界M2)を基準に設定される。具体的には、作業開始点p2は、第2境界M2と作業装置60の作業範囲Nの後端が一致するように設定される。本実施形態においては、作業開始点p2は、作業装置60が作業を開始させる際に、作業装置60の作業範囲Nの後端が一致する点であるため、作業開始点p2は、第2ラインR2の延長線上と、第2境界M2と、の交点に設定される。
【0107】
このため、
図10に示すように、第1ラインR1で作業装置60が作業を行う区画(第1単位作業区画e1)の終端部は、第1ラインR1の終端部r1aと一致し、第2ラインR2で作業装置60が作業を行う区画(第2単位作業区画e2)の始端部は、第2ラインR2の始端部r2bと一致し、第1ラインR1の終端部r1aは、第2ラインR2の第1境界M1と一致している。
【0108】
これにより、第1単位作業区画e1の終端部及び第2単位作業区画e2の始端部が一致するよう走行ルートLを作成することができる。即ち、農業機械1は、ルート作成部57eが作成した走行ルートLを走行することで、未作業領域Edの発生を抑制しつつ作業を行うことができる。
【0109】
なお、ルート作成部57eは、第1単位作業区画e1の終端部と、第2単位作業区画e2の始端部と、が一致又は重複するよう走行ルートLを作成できればよく、その作成方法は、上述した方法に限定されない。また、
図10以外の図面においては、図面の表記を簡略化する都合上、旋回部CRの経路を省略して記載している。
【0110】
また、本実施形態においては、表示制御部57は、設定取得部57dが取得した車体位置VPと作業範囲Nとの位置関係と、境界Mの位置情報とに基づいて、旋回部CRの設定を行うが、その設定方法は、上述した方法に限定されず、その位置及び経路も上述した位置に限定されない。以下、説明の簡略化のため、周回ラインLnを構成する複数のラインRの始端は、作業開始点p2として説明し、複数のラインRの終端は、作業終了点p1として説明する。
【0111】
図6A、
図6Bに示すように、第5生成部57e5は、内側ラインLUを作成する。具体的には、
図6A、
図6Bに示すように、第5生成部57e5は、長手方向の両端部を結ぶ直線部LU1を内側ラインLUとして設定する。第5生成部57e5は、所定の第2間隔に基づいて、直線部LU1を離間させて作成する。ここで、直線部LU1の作成における第2間隔とは作業幅W又は作業幅Wから第2オーバラップ幅W2の2倍の長さを減算した長さである。本実施形態においては、
図6Aに示すように、第2間隔が作業幅Wと同値である場合について説明する。なお、
図7に示すように、第2間隔は、作業幅Wから第2オーバラップ幅W2の2倍の長さを減算した長さであってもよい。
【0112】
また、第5生成部57e5は、隣接する直線部LU1を結ぶことにより、曲線部LU2を内側ラインLUとして作成する。農業機械1が直線部LU1を移動して曲線部LU2に達した場合、制御装置40は、連結装置30を制御して作業装置60を上昇させて非作業姿勢に移行する。また、農業機械1が曲線部LU2を移動して直線部LU1に達した場合、制御装置40は、連結装置30を制御して作業装置60を下降させ作業姿勢に移行する。
【0113】
また、
図6A、
図6Bに示すように、第6生成部57e6は、直線部LU1に対応し、且つ第2間隔と同一の幅の内側作業区画A4を内側エリアA2内に複数作成する。第6生成部57e6は、直線部LU1を基準として、それぞれ当該直線部LU1の交差方向の一方側と他方側に離間し、且つ当該直線部LU1と並行である一対の境界mを作成する。具体的には、一対の境界mと直線部LU1との間の長さは第2間隔の1/2の長さであり、一対の境界mの間の長さは、第2間隔と同一の長さである。つまり、
図6Bに示すように、内側作業区画A4は、圃場Gの一端側から他端側に延びる帯形状の領域であり、幅方向の中央部に直線部LU1が通っている。これによって、第6生成部57e6は、一対の境界mと内側境界線H1´とに囲まれた複数の内側作業区画A4を作成する。
【0114】
農業機械1の走行支援システムSは、農業機械1及び/又は作業装置60の仕様情報と、フィールドFの情報と、走行ルートLを補正することで、農業機械1が侵入を禁止されているエリア(禁止エリアE)を走行することを回避させつつ、未作業領域Edの発生を抑制し、効率よく作業を行わせることができる。本実施形態においては、農業機械1の走行支援システムSは、農業機械1が走行ルートLを走行している間に、当該走行ルートLの補正を行う。また、禁止エリアEは、例えば圃場G以外の領域E1を含み、圃場G以外の領域E1は、圃場Gの外周に形成された畔や柵が設置された領域(外部領域)である。また、禁止エリアEは、圃場Gのうち作業装置60が作業を完了した領域を含み、作業が完了した領域は、農業機械1が位置している周回よりも前の周回であって、且つ既に作業装置60が作業を行った既作業領域E2である。
【0115】
図1に示すように、農業機械1の走行支援システムSは、第1取得部71と、第2取得部72と、第3取得部73と、定義部74と、補正部75と、を備えている。本実施形態においては、第1取得部71、第2取得部72、第3取得部73、定義部74、及び補正部75は、電気・電子部品、制御装置40に組み込まれたプログラム等から構成されており、第1取得部71、第2取得部72、第3取得部73、定義部74、及び補正部75は、制御装置40が兼用している。なお、本実施形態において、第1取得部71、第2取得部72、第3取得部73、定義部74、及び補正部75は、制御装置40が兼用しているが、当該第1取得部71、第2取得部72、第3取得部73、定義部74、及び補正部75は、表示制御部57乃至、制御装置40又は表示制御部57と通信可能に接続された外部のサーバ等が有していてもよいし、その構成は上記構成に限定されない。
【0116】
第1取得部71は、走行ルートLを取得する。本実施形態において、第1取得部71は、ルート作成部57eが作成し、表示記憶部58に記憶されている走行ルートLを取得する。このため、第1取得部71は、フィールドFに作成され且つ農業機械1が走行する走行ルートLを取得することができる。
【0117】
第2取得部72は、農業機械1及び/又は作業装置60の仕様情報を取得する。本実施形態においては、記憶部41は、予め農業機械1の仕様情報を記憶しており、第2取得部72は、記憶部41から農業機械1の仕様情報を取得する。
【0118】
例えば、記憶部41は、農業機械1の仕様情報として、
図9に示すように、車体位置VPから農業機械1の前端(ボンネットの先端)までの長さY1、及び車体位置VPから農業機械1の後端(連結装置30の後端)までの長さY2が記憶されている。このため、第2取得部72は、機械入力部114が入力を受け付けた農業機械1の型式情報に基づいて、車体位置VPから農業機械1の前端までの長さY1、及び車体位置VPから農業機械1の後端までの長さY2を取得できる。
【0119】
また、第2取得部72は、表示装置55が表示した設定画面D2に入力され、記憶部41に記憶されフィールドFと対応付けられた作業装置60の仕様情報を取得する。第2取得部72は、作業装置60の仕様情報として、作業幅Wと、作業装置60が圃場G等の対地に対して作業を行う範囲(作業範囲N)の前後方向の長さ(作業長さw1)、連結装置30に連結される被連結部60aから作業範囲Nの前端までの長さy1、及び被連結部60aから作業範囲Nの後端までの長さy2を取得する。
【0120】
本実施形態においては、第2取得部72は、設定取得部57dが取得し且つ表示記憶部58がフィールドFと対応付けて記憶した作業幅W、作業長さw1、連結装置30に連結される被連結部60aから作業範囲Nの前端までの長さy1、及び被連結部60aから作業範囲Nの後端までの長さy2を表示記憶部58から取得する。このため、第2取得部72は、作業幅W、被連結部60aから作業範囲Nの前端までの長さy1、及び被連結部60aから作業範囲Nの後端までの長さy2に基づいて、車体位置VPと、作業装置60の作業範囲Nの端部(前側の左端、前側の右端、後側の左端、後側の右端)の相対位置を取得することができる。
【0121】
なお、本実施形態において第2取得部72は、記憶部41に記憶された情報や、表示記憶部58に予め記憶されている情報を取得するが、設定画面D2が農業機械1及び/又は作業装置60の仕様情報の入力を受け付け、第2取得部72が当該入力された仕様情報を取得してもよいし、その取得元は上記構成に限定されない。
【0122】
第3取得部73は、自動走行制御部40aが走行ルートLに基づいて走行装置4を制御し、農業機械1が移動するフィールドFの情報を取得する。また、第3取得部73は、禁止エリアEの位置情報を取得する。本実施形態において、第3取得部73は、フィールドFの情報として、フィールド登録部57bが登録したフィールドFの輪郭H1の位置情報、第2生成部57e2が生成した境界Mの位置情報と、第3生成部57e3が作成した外側作業区画A3の位置情報と、をフィールドFの情報として取得する。第3取得部73は、輪郭H1、境界M、及び外側作業区画A3の位置(緯度、経度)で示されたデータ、座標(X軸、Y軸)系で示されたデータを取得する。
【0123】
第3取得部73は、フィールドFの輪郭H1の位置情報に基づいて、圃場Gの外周に形成された畔や柵が設置された領域(外部領域E1)を取得する。第3取得部73は、取得したフィールドFの位置情報と、輪郭H1の位置情報と、に基づいて、輪郭H1の範囲内の領域と、輪郭H1の範囲外を区別することで外部領域E1の位置情報を取得する。
【0124】
さらに、第3取得部73は、フィールドFの情報として、フィールドFの輪郭H1の位置情報、第2生成部57e2が生成した境界Mと、第3生成部57e3が作成した外側作業区画A3と、位置取得部57aが取得した車体位置VPと、に基づいて、既作業領域E2を取得する。第3取得部73は、位置取得部57aが取得した車体位置VPに基づいて、農業機械1が位置している外側作業区画A3がどの外側作業区画A3であるかを区別する。ここで、作業装置60は、外側作業区画A3のうち、内側の外側作業区画A3から外側の外側作業区画A3の順に作業を行うため、第3取得部73は、農業機械1が位置している外側作業区画A3よりも内側の外側作業区画A3が既作業領域E2であると区別する。また、第3取得部73は、農業機械1が位置している外側作業区画A3よりも外側の外側作業区画A3が、作業を行う予定である作業予定領域Esであると区別できる。これにより、第3取得部73は、既作業領域E2と、第3取得部73が取得したフィールドFの情報のうち境界Mの位置情報に基づいて、既作業領域E2の位置情報を取得することができる。
【0125】
なお、第3取得部73が取得する禁止エリアEは、フィールドFにおいて農業機械1の侵入が禁止されている点や領域であってもよく、外部領域E1や既作業領域E2に限定されず、例えばフィールドF上の障害物や建築物等の領域であってもよい。
【0126】
定義部74は、補正部75が走行ルートLの補正で使用する情報の定義を行う。定義部74は、第2取得部72が取得した仕様情報に基づいて、補正部75がフィールドF上の外側境界線H1、内側境界線H1´、境界M、及び領域(禁止エリアE等)を検知、処理に用いる点(基準位置)や、領域(検知領域)を定義する。定義部74は、農業機械1及び作業装置60の外形、並びに周囲等に仮想の基準位置を定義する。本実施形態においては、定義部74は、基準位置として、任意の点である第1基準位置x1、第2基準位置x2、第3基準位置x3、第4基準位置x4、第5基準位置x5、第6基準位置x6、第7基準位置x7、及び第8基準位置x8を定義する。
【0127】
また、定義部74は、第1基準位置x1、第2基準位置x2、第3基準位置x3、第4基準位置x4、第5基準位置x5、第6基準位置x6、第7基準位置x7、及び第8基準位置x8の位置情報を緯度及び経度で示されたデータ、又は座標(X軸、Y軸)系で示されたデータで定義する。このため、定義部74は、第1基準位置x1、第2基準位置x2、第3基準位置x3、第4基準位置x4、第5基準位置x5、第6基準位置x6、第7基準位置x7、及び第8基準位置x8の位置情報を定義することで、車体位置VPと、第1基準位置x1、第2基準位置x2、第3基準位置x3、第4基準位置x4、第5基準位置x5、第6基準位置x6、第7基準位置x7、及び第8基準位置x8と、の相対距離を定義できる。
【0128】
図9に示すように、第1基準位置x1は、農業機械1の前方にて定義された仮想の基準位置である。本実施形態においては、定義部74は、農業機械1の前方であって、且つ当該農業機械1の旋回軌跡の外周CTよりも内方の位置に第1基準位置x1を定義する。即ち、農業機械1の前部から第1基準位置x1までの長さY3は、農業機械1の旋回軌跡の外周CTよりも短い(Y3<CT)。また、定義部74は、当該第1基準位置x1を、農業機械1の幅方向の中央部において前後方向に延びる仮想線上に定義する。即ち、第1基準位置x1は、位置検出装置50が検出した車体位置VPからみて前方に配置され、幅方向において一致している。
【0129】
図9に示すように、第2基準位置x2は、農業機械1の前方に定義された仮想の基準位置である。定義部74は、第1基準位置x1よりも前方に第2基準位置x2を定義する。本実施形態においては、定義部74は、農業機械1の前方であって、且つ当該農業機械1の旋回軌跡の外周CTよりも外方の位置に第2基準位置x2を定義する。即ち、農業機械1の前部から第2基準位置x2までの長さY4は、農業機械1の旋回軌跡の外周CTよりも長い(Y4>CT)。また、定義部74は、仮想線上に第2基準位置x2を定義する。即ち、第2基準位置x2は、位置検出装置50が検出した車体位置VPからみて、前方に配置され、幅方向において一致し、且つ第1基準位置x1より遠い位置に定義されている(Y4>Y3)。
【0130】
図9に示すように、第3基準位置x3、第4基準位置x4、第5基準位置x5、第6基準位置x6、第7基準位置x7、及び第8基準位置x8は、作業装置60に定義された仮想の基準位置である。本実施形態においては、第3基準位置x3、第4基準位置x4、第5基準位置x5、第6基準位置x6、第7基準位置x7、及び第8基準位置x8は、作業装置60の作業範囲Nの端(前側の左端、前側の右端、後側の左端、後側の右端)、及び作業範囲Nの前側及び後側の中央に対応する位置に配置されている。詳しくは、定義部74は、作業範囲Nの前側の左端に対応する位置に第3基準位置x3を定義する。定義部74は、作業範囲Nの前側の右端に対応する位置に第4基準位置x4を定義する。定義部74は、作業範囲Nの後側の左端に対応する位置に第5基準位置x5を定義する。定義部74は、作業範囲Nの後側の右端に対応する位置に第6基準位置x6を定義する。定義部74は、作業範囲Nの前側の中央部に位置に第7基準位置x7を定義する。定義部74は、作業範囲Nの後側の中央部に第8基準位置x8を定義する。
【0131】
なお、第1基準位置x1、第2基準位置x2、第3基準位置x3、第4基準位置x4、第5基準位置x5、第6基準位置x6、第7基準位置x7、及び第8基準位置x8は、任意の点であるが、定義部74は、任意の点に限定されず、外側境界線H1、内側境界線H1´、境界M、及び領域等と、当該農業機械1及び作業装置60との距離を判断する基準であればよく、任意の形状の領域(検知領域)であってもよい。例えば、定義部74は、農業機械1及び作業装置60等の外形に基づく検知領域を定義することができる。また、定義部74は、第3基準位置x3、第4基準位置x4、第5基準位置x5、第6基準位置x6、第7基準位置x7、及び第8基準位置x8に代えて、第3基準位置x3、第4基準位置x4、第5基準位置x5、第6基準位置x6、第7基準位置x7、及び第8基準位置x8を結ぶ略長方形状の領域、即ち作業範囲Nに対応する領域を検知領域として定義してもよい。
【0132】
図1に示すように、補正部75は、第1取得部71が取得した走行ルートLを補正する。具体的には、補正部75は、変更部75aと、作成部75bと、を有しており、変更部75aによる補正(第1補正)と、作成部75bによる補正(第2補正)によって、第1取得部71が取得した走行ルートLを補正する。
【0133】
変更部75aは、フィールドFにおいて農業機械1の侵入が禁止されている禁止エリアEに農業機械1が侵入しないよう、第1補正として、農業機械1及び作業装置60の仕様情報、並びにフィールドFの情報に基づいて、複数のラインRの終端部r1を短縮する補正を行う。以下、農業機械1が複数のラインRのうち、一のライン(第1ラインR1)から当該一のラインに接続された他のライン(第2ラインR2)へ向かう場合を例に変更部75aによる第1補正を説明する。
【0134】
変更部75aは、
図11Aに示すように、農業機械1が第1ラインR1を移動している場合、当該第1ラインR1の終端部r1aを短縮する。本実施形態において、複数のラインRの終端は、作業終了点p1であるため、
図11B、
図12A、
図13A、及び
図14Aに示すように、変更部75aは、作業終了点p1を当該ラインの始端部r2側(作業開始点p2側)へ移動(シフト)させて、第1ラインR1の終端部r1aを短縮する。詳しくは、変更部75aは、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaに応じて、第1ラインR1の終端部r1aを短縮する。
【0135】
なお、以下の説明において、変更部75aが作業終了点p1を当該ラインの始端部r2b側(作業開始点p2側)へ移動させた量、即ち第1ラインR1の終端部r1aを短縮した量(長さ)を短縮量Qという。
【0136】
具体的には、
図11B、
図12A、及び
図14Aに示すように、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが所定の角度(閾値)以上である場合、変更部75aは、禁止エリアEの位置情報、第1基準位置x1に基づいて複数のラインRの終端部r1を短縮する。本実施形態においては、変更部75aは、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが70°以上である場合、禁止エリアEの位置情報、第1基準位置x1に基づいて複数のラインRの終端部r1を短縮する。
【0137】
農業機械1が第1ラインR1を走行している場合において、第1基準位置x1が禁止エリアEの境界M又は禁止エリアEに位置すると、変更部75aは、当該位置における第7基準位置x7に作業終了点p1を、第1ラインR1の始端部(図示略)側(作業開始点p2側)へ移動させる。これにより、変更部75aによる補正後の作業終了点p1に対応する車体位置VPは、補正前の作業終了点p1に対応する車体位置VPから短縮量Qと同じだけ、第1ラインR1の始端部側(作業開始点p2側)へ移動する。
【0138】
一方、
図13Aに示すように、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが所定の角度(閾値)未満である場合、変更部75aは、禁止エリアEの位置情報、第2基準位置x2に基づいて複数のラインRの終端部r1を短縮する。詳しくは、農業機械1が第1ラインR1を走行している場合において、第2基準位置x2が禁止エリアEの境界M又は禁止エリアEに位置すると、変更部75aは、当該位置における第7基準位置x7に作業終了点p1を移動させ、第1ラインR1の始端部側(作業開始点p2側)へ移動させる。これにより、変更部75aによる補正後の作業終了点p1に対応する車体位置VPは、補正前の作業終了点p1に対応する車体位置VPから短縮量Qと同じだけ、第1ラインR1の始端部側(作業開始点p2側)へ移動する。なお、第2基準位置x2のほうが第1基準位置x1よりも作業範囲Nの前端(第3基準位置x3、第5基準位置x5、及び第7基準位置x7を通る直線)までの長さが長いため、変更部75aが第2基準位置x2に基づいて複数のラインRを短縮した短縮量Qは、変更部75aが第1基準位置x1に基づいて複数のラインRを短縮した短縮量Qよりも長くなる。
【0139】
以上より、変更部75aは、ルート作成部57eが作成し、第1取得部71が取得した走行ルートLのうち、複数のラインRの終端部r1を始端部r2側(作業開始点p2側)へ移動させる。このため、変更部75aが作業終了点p1をラインRの始端部r2側へ移動させることにより、当該補正後のラインRに基づいて、農業機械1は、補正前に比べて手前側で走行を終了し、作業を終了することになる。これにより、変更部75aによる補正後の第1ラインR1に対応する第1単位作業区画e1と、第2ラインR2に対応する第2単位作業区画e2と、の間には作業終了点p1の移動量(短縮量Q)と同値だけ間隔が形成され、未作業領域Edが発生する。未作業領域Edの大きさは、短縮量Qによって変動する。
【0140】
なお、上記閾値は、記憶部41に予め記憶されており、変更部75aは、記憶部41から閾値を取得する。また、上記閾値は、70°に限定されず、60°であってもよいし、表示装置55を操作して任意に変更できるような構成であってもよい。当該閾値は、第1ラインR1の終端部r1a及び第2ラインR2の始端部r2bの近傍の領域で農業機械1が旋回する領域を確保できるか否かに基づいて設定される。
【0141】
また、変更部75aは、仕様情報、及びフィールドFの情報に基づいて、フィールドFにおいて農業機械1の侵入が禁止されている禁止エリアEに農業機械1が侵入しないよう、複数のラインRの終端部r1を短縮すればよく、複数のラインRの終端部r1を短縮する補正の方法は、上述した方法に限定されない。
【0142】
ここで、作成部75bは、変更部75aが短縮した複数のラインRのうち一のラインである第1ラインR1の終端部r1aから、当該第1ラインR1の終端部r1aに接続された他のラインである第2ラインR2の始端部r2bへ向かい、且つ当該第2ラインR2に対して傾斜する補助ラインHaを作成する補正を行う(第2補正)。作成部75bは、当該補正を行うことによって、農業機械1が補助ラインHaを走行し、作業(補助作業)を行うことで、変更部75aによる補正によって生じた未作業領域Edを解消させることができる。詳しくは、
図11H~
図11Jに示すように、作成部75bは、補助ラインHaを含む経路であって、始端が第1ラインR1の終端と接続され、終端が第2ラインR2の始端と接続された補正経路Hを作成する。
【0143】
作成部75bは、補助ラインHaと第2ラインR2とが鋭角を形成するように補助ラインHaを作成する。作成部75bは、補助ラインHaの始端部Hbと第2ラインR2とが形成する角度(傾斜角度)θbが、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaよりも小さくなるように補助ラインHaを作成する。
【0144】
図11C、
図12B、及び
図13Bに示すように、作成部75bは、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが鋭角又は直角(θa≦90°)である場合と、
図14Bに示すように、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが鈍角(θa>90°)である場合とで、それぞれ傾斜角度θbを異ならせて補助ラインHaを作成する。本実施形態において、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが鋭角又は直角(θa≦90°)である場合、作成部75bは、傾斜角度θbが30°になるように補助ラインHaを作成する。一方、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが鈍角(θa>90°)である場合、作成部75bは、傾斜角度θbが15°になるように補助ラインHaを作成する。
【0145】
また、作成部75bは、補助ラインHaの始端部Hbと第2ラインR2とが形成する角度(傾斜角度)θbが、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaよりも小さくなるように補助ラインHaを作成する。なお、第1ラインR1と第2ラインR2が鈍角を形成する場合(θa>90°)、作成部75bは、第1ラインR1と第2ラインR2が鋭角又は直角(θa≦90°)を形成する場合に比べて、補助ラインHaの始端部Hbと第2ラインR2とが形成する角度θbが小さくなるよう傾斜する補助ラインHaを作成すればよく、傾斜角度θbは、30°と15°に限定されず、例えば、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが鋭角又は直角(θa≦90°)である場合、作成部75bは、傾斜角度θbが25°になるように補助ラインHaを作成したり、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが鈍角(θa>90°)である場合に、作成部75bは、傾斜角度θbが10°になるように補助ラインHaを作成したりするような構成でもよい。
【0146】
図11H、
図11I、
図11Jに示すように、補助ラインHaは、始端部Hbを構成する補助作業ラインと、終端部Hcを構成する遷移ラインと、を含んでいる。言い換えると、補助作業ラインHbは、補助ラインHaの始端部を構成し、遷移ラインHcは、補助ラインHaの終端部を構成する。
【0147】
補助作業ラインHbは、第2ラインR2とともに鋭角θbを形成し、第1ラインR1と交差している経路である。また、補助作業ラインHbは、主に農業機械1が当該補助作業ラインHbを走行して作業装置60が未作業領域Edの作業を行う経路である。
図11C、
図12B、
図13B、及び
図14Bに示すように、作成部75bは、作業装置60が補助作業ラインHbの始端h2に位置している場合の作業範囲N、及び作業装置60が補助作業ラインHbの終端h1に位置している場合の作業範囲Nが未作業領域Edと重複するように、補助作業ラインHbの始端h2及び終端h1とを定義する。
【0148】
本実施形態において、
図11C、
図12B、
図13B、及び
図14Bに示すように、作成部75bは、定義部74が定義した第3基準位置x3、第4基準位置x4、第5基準位置x5、及び第6基準位置x6、境界M、並びに傾斜角度θbに基づいて補助作業ラインHbの始端h2及び終端h1を定義する。具体的には、作成部75bは、第2境界M2のうち第1境界M1の終端に対向する位置を基準として、当該位置と、第3基準位置x3又は第5基準位置x5と、が一致し、第7基準位置x7と第8基準位置x8を通る直線が、第2ラインR2に対して傾斜角度θbだけ傾斜している場合に、当該第8基準位置x8に対応する位置を補助作業ラインHbの始端h2として定義する。
【0149】
一方、
図11C、
図12B、
図13B、及び
図14Bに示すように、第4基準位置x4又は第6基準位置x6が第1境界M1上に位置し、且つ始端h2を通り、第2ラインR2に対して傾斜角度θbだけ傾斜した直線上に第7基準位置x7が位置する場合に、当該第7基準位置x7に対応する位置を補助作業ラインHbの終端h1を定義する。
【0150】
これにより、作業装置60が補助作業ラインHbの始端h2に位置している場合の作業範囲N、及び作業装置60が補助作業ラインHbの終端h1に位置している場合の作業範囲Nは、未作業領域Edよりも外側に位置するよう配置される。このため、
図16に示すように、補助作業ラインHbに対応する単位作業区画(第1補助作業区画E3)が未作業領域Edと重複する。つまり、作成部75bは、農業機械1が補助ラインHaの始端部(補助作業ライン)Hbに位置している場合に、作業装置60の作業範囲Nと、第2ラインR2で作業装置60が作業を行う単位作業区画(第2単位作業区画)e2の始端部と、が重複するように補助ラインHaを作成する。
【0151】
図11H、
図11I、
図11Jに示すように、遷移ラインHcは、補助作業ラインHbの終端h1から延び、第2ラインR2の始端部r2bと接続される経路である。つまり、遷移ラインHcは、農業機械1が補助作業ラインHbを走行して、作業装置60が未作業領域Edの作業を行ったあと、当該補助作業ラインHbから第2ラインR2へ遷移する経路である。具体的には、作成部75bは、遷移ラインHcの始端h4と補助作業ラインHbの終端h1とを接続し、遷移ラインHcの終端h3が第2ラインR2に合流するように、当該遷移ラインHcを作成する。つまり、遷移ラインHcは、第2ラインR2の始端部r2に沿って湾曲している経路である。
【0152】
このため、
図11C、
図12B、
図13B、及び
図14Bに示すように、作成部75bは、補助ラインHaの始端部(補助作業ライン)Hbが第1ラインR1の終端部r1aと交差し、当該第1ラインR1の終端部r1から直線状に延び、補助ラインHaの終端部(遷移ライン)Hcが第2ラインR2の始端部r2bに沿って湾曲するように補助ラインHaを作成する。
【0153】
なお、農業機械1が遷移ラインHcを走行し、作業装置60が遷移ラインHcの終端h3に達すると、自動走行制御部40aは、農業機械1を停車させ、連結装置30を作業姿勢から非作業姿勢へ移行させる。言い換えると、連結装置は、農業機械1が遷移ラインHcを走行している間、作業姿勢であるため、圃場Gには、遷移ラインHcに対応する単位作業区画(第2補助作業区画)E4が形成される。
【0154】
また、
図11Dに示すように、本実施形態において、作成部75bは、補助ラインHaに加え、補正経路Hの一部として、第1ラインR1の終端部r1(作業終了点p1)と補助ラインHaの始端部(補助作業ライン)Hbを接続する連結ラインHdを作成する。連結ラインHdは、農業機械1が方向転換を行い、第1ラインR1から第2ラインR2へ移動し、作業装置60が補助作業ラインHbの始端h2に達する経路である。本実施形態において、連結ラインHdの始端側において、農業機械1は旋回を行う。詳しくは、連結ラインHdの始端側において、農業機械1は、切り返し走行を行い、補助作業ラインHbの始端h2へ移動する。
【0155】
なお、上述した実施形態において、作成部75bが補正経路Hとして、補助ラインHaと連結ラインHdを作成し、補助ラインHaとして補助作業ラインHbと遷移ラインHcを作成する場合について説明したが、作成部75bは、上述した実施形態における補助ラインHaのうち、補助作業ラインHbに相当する区間を作成すればよく、作成部75bが予め遷移ラインHc及び連結ラインHdを作成せず、自動走行制御部40aが走行装置4を制御して、第1ラインR1の終端部r1aから補助作業ラインHbの始端h2へ自律して走行し、補助作業ラインHbの終端h1から第2ラインR2へ自律して走行するような構成であってもよい。
【0156】
図15に示すように、変更部75aが短縮した短縮量Qが予め設定された値以上である場合、作成部75bは、補助ラインHaを隣接させて複数作成する。
図16に示すように、本実施形態においては、変更部75aが作業終了点p1を当該ラインの始端部r2(作業開始点p2)側へ移動させた量(短縮量Q)、即ち変更部75aによる補正によって生じた未作業領域Edの第1ラインR1の伸長方向の長さが、補助ラインHaの始端部r2(補助作業ラインHb)と、第1ラインR1と、が形成する角度θcの正接と、作業幅Wと、の積によって算出される固有長さZよりも長い場合(Q>Z=W×tanθc)、作成部75bは、複数の補助ラインHaの固有長さZの和が短縮量Qを超えるように、補助ラインHaを隣接させて複数作成する。
【0157】
作成部75bは、第1ラインR1の終端部r1側(作業終了点p1側)の補助ラインHaから始端部r2側(作業開始点p2側)の補助ラインHaを順に作成する。以下、作成部75bが補助ラインHaを2つ作成する場合を例に説明し、説明の都合上、第1ラインR1の終端部r1側の補助ラインHaを第1補助ラインHa1とし、始端側の補助ラインHaを第2補助ラインHa2として説明する。また、第1補助ラインHa1の補助作業ラインHbを第1補助作業ラインHb1として説明し、第2補助ラインHa2の補助作業ラインHbを第2補助作業ラインHb2として説明する。なお、作成部75bは、上述した方法と同一の方法で第1補助作業ラインHb1及び第2補助作業ラインHb2のそれぞれに対応する遷移ラインHcを作成するため、遷移ラインHcの作成については説明を省略する。
【0158】
まず、作成部75bは、第2境界M2のうち第1境界M1の終端に対向する位置と、第3基準位置x3又は第5基準位置x5と、が一致し、第7基準位置x7と第8基準位置x8を通る直線が、第2ラインR2に対して傾斜角度θbだけ傾斜している場合に、当該第8基準位置x8に対応する位置を第1補助作業ラインHb1の始端h2として定義する。
【0159】
また、
図15に示すように、第4基準位置x4又は第6基準位置x6が第1境界M1上に位置し、且つ第1補助作業ラインHb1の始端h2を通り、第2ラインR2に対して傾斜角度θbだけ傾斜した直線上に第7基準位置x7が位置する場合に、当該第7基準位置x7に対応する位置を第1補助作業ラインHb1の終端h1を定義する。
【0160】
つぎに、第1補助作業ラインHb1の始端h2における作業範囲Nの後端(第4基準位置x4、第6基準位置x6、及び第8基準位置x8を通る直線)と、第2境界M2と、の交点を基準として、当該交点と、第3基準位置x3又は第5基準位置x5と、が一致し、第7基準位置x7と第8基準位置x8を通る直線が、第2ラインR2に対して傾斜角度θbだけ傾斜している場合に、当該第8基準位置x8に対応する位置を第2補助作業ラインHb2の始端h2として定義する。
【0161】
また、
図15に示すように、第4基準位置x4又は第6基準位置x6が第1境界M1上に位置し、且つ第2補助作業ラインHb2の始端h2を通り、第2ラインR2に対して傾斜角度θbだけ傾斜した直線上に第7基準位置x7が位置する場合に、当該第7基準位置x7に対応する位置を第2補助作業ラインHb2の終端h1を定義する。
【0162】
なお、上述した実施形態においては、補助ラインHaが補助作業ラインHbと遷移ラインHcとを含む場合を例に説明したが、作成部75bが作成する補助ラインHaは、変更部75aが短縮した複数のラインRのうち一のラインである第1ラインR1の終端部r1aから、第2ラインR2の始端部r2bへ向かう経路であればよく、例えば、上述した実施形態における補助作業ラインHbのみを作成するような構成であってもよい。また、
図17Aに示すように、作成部75bは、補助ラインHaの始端部が第1ラインR1の終端部r1と直交し、中途部が第2ラインR2の始端部r2に向かって湾曲し、終端部が第2ラインR2に沿って湾曲するように補助ラインHaを作成してもよい。
【0163】
具体的には、
図17Aに示す変形例においては、補助ラインHaは、始端部を構成する補助作業ラインHbと、中途部及び終端部を構成する遷移ラインHcと、を含んでいる。変形例において、補助作業ラインHbは、第1ラインR1と直交している経路である。
【0164】
図17Bに示すように、作成部75bは、第2境界M2のうち、第1境界M1の終端に対応する位置と第4基準位置x4又は第6基準位置x6と、が一致し、作業範囲Nの後端(第4基準位置x4、第6基準位置x6、第8基準位置x8を通る直線)が第2境界M2上に位置する場合、第8基準位置x8に対応する位置に補助作業ラインHbの始端h2を定義する。
【0165】
一方、作成部75bは、第1境界M1の終端に対応する位置と第3基準位置x3又は第5基準位置x5と、が一致し、作業範囲Nの前端(第3基準位置x3、第5基準位置x5、第7基準位置x7を通る直線)が第1境界M1と一致する場合、第7基準位置x7に対応する位置に補助作業ラインHbの始端h2を定義する。これにより、農業機械1が補助作業ラインHbの始端h2に位置している場合の作業領域、及び農業機械1が補助作業ラインHbの終端h1に位置している場合の作業領域は、未作業領域Edよりも外側に位置するよう配置される。このため、補助作業ラインHbに対応する単位作業区画(第1補助作業区画E3)が未作業領域Edと重複する。
【0166】
また、作成部75bは、遷移ラインHcの始端h4と補助作業ラインHbの終端h1とを接続し、遷移ラインHcの終端h3が第2ラインR2に合流するように、当該遷移ラインHcを作成する。
図17Bに示すように、遷移ラインHcは、補助作業ラインHbの終端h1から第2ラインR2に平行に延設され、中途部から第2ラインR2側へ向かって湾曲し、第2ラインR2に沿って湾曲している経路である。
【0167】
以下、
図18を主に用いて、農業機械1が走行ルートLを走行している場合に、農業機械1の走行支援システムSが走行ルートLを補正し、農業機械1が当該補正後の走行ルートLに基づいて走行する一連の流れについて説明する。なお、以下の説明においては、説明の都合上、農業機械1が第1ラインR1を走行して、第2ラインR2へ移動する場合を例に説明する。
【0168】
まず、
図11Aに示すように、自動走行制御部40aは、ルート作成部57eが作成した走行ルートLに基づいて、農業機械1を走行させる(S1)。自動走行制御部40aが農業機械1を制御して、農業機械1が第1ラインR1の走行を開始すると(S1)、変更部75aは、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが閾値(70°)未満であるか否かを確認する(S2)。詳しくは、変更部75aは、第1取得部71が取得した走行ルートLと、位置取得部57aが取得した車体位置VPに基づいて、複数のラインRのうち、農業機械1が位置している第1ラインR1と、第1ラインR1の次のラインである第2ラインR2を検出する。変更部75aは、複数のラインRから第1ラインR1と第2ラインR2を検出すると、当該第1ラインR1及び第2ラインR2とが形成する角度を演算し、表示記憶部58から取得した閾値に基づいて、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが閾値(70°)未満であるか否かを確認する。
【0169】
変更部75aは、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが閾値(70°)未満ではないと確認した場合(S2,No)、第1基準位置x1が禁止エリアEの境界M又は禁止エリアEに位置しているか確認する(S3)。具体的には、変更部75aは、位置取得部57aが取得した車体位置VPと、定義部74が定義した車体位置VPと第1基準位置x1との相対距離と、第3取得部73が取得した禁止エリアEの位置情報に基づいて、第1基準位置x1が禁止エリアEの境界M又は禁止エリアEに位置しているか確認する。
【0170】
変更部75aは、第1基準位置x1が禁止エリアEの境界M又は禁止エリアEに位置していると確認した場合(S3,Yes)、第1ラインR1の終端部r1aを短縮する補正を行う(S4)。具体的には、変更部75aは、第1基準位置x1が禁止エリアEの境界M又は禁止エリアEに位置していると確認した位置における、第7基準位置x7に第1ラインR1の作業終了点p1を当該第1ラインR1の始端部側(作業開始点p2側)へ移動させる。これにより、変更部75aによる補正後の作業終了点p1に対応する車体位置VPは、補正前の作業終了点p1に対応する車体位置VPから作業終了点p1の移動量と同じだけ、第1ラインR1の始端部側(作業開始点p2側)へ移動される。
【0171】
変更部75aが第1ラインR1の終端部r1aを短縮する補正を行うと(S4)、作成部75bは、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが鋭角又は直角(≦90°)であるか確認する(S5)。本実施形態においては、作成部75bは、変更部75aが演算した1ラインと第2ラインR2との角度に基づいて、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが鋭角又は直角(≦90°)であるか確認する。
【0172】
作成部75bは、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが鋭角又は直角(≦90°)であると確認すると(S5,Yes)、補助ラインHaの始端部(補助作業ライン)Hbと第2ラインR2とが形成する角度(傾斜角度)θbが30°になるように補助ラインHaを作成する(S6)。具体的には、作成部75bは、定義部74が定義した第3基準位置x3、第4基準位置x4、第5基準位置x5、及び第6基準位置x6、境界M、並びに傾斜角度θbに基づいて補助作業ラインHbの始端部r2と、終端部r1を定義して、補助作業ラインHbを作成する。また、作成部75bは、遷移ラインHcの始端部r2と補助作業ラインHbの終端部r1とを接続し、遷移ラインHcの終端部r1が第2ラインR2に合流するように、当該遷移ラインHcを作成する。さらに、作成部75bは、補助ラインHaに加え、補正経路Hの一部として、第1ラインR1の終端部r1(作業終了点p1)と補助ラインHaの始端部r2を接続する連結ラインHdを作成する。
【0173】
一方、作成部75bは、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが鈍角(>90°)であると確認すると(S5,No)、補助ラインHaの始端部(補助作業ライン)Hbと第2ラインR2とが形成する角度(傾斜角度)θbが15°になるように補助ラインHaを作成する(S7)。また、作成部75bは、遷移ラインHcの始端h4と補助作業ラインHbの終端h1とを接続し、遷移ラインHcの終端h3が第2ラインR2に合流するように、当該遷移ラインHcを作成する。さらに、作成部75bは、補助ラインHaに加え、補正経路Hの一部として、第1ラインR1の終端部r1aと補助作業ラインHbの始端h2を接続する連結ラインHdを作成する。
【0174】
また、S2において、変更部75aは、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが閾値(70°)未満であると確認した場合(S2,Yes)、第2基準位置x2が禁止エリアEの境界M又は禁止エリアEに位置しているか確認する(S8)。具体的には、変更部75aは、位置取得部57aが取得した車体位置VPと、定義部74が定義した車体位置VPと第2基準位置x2との相対距離と、第3取得部73が取得した禁止エリアEの位置情報に基づいて、第1基準位置x1が禁止エリアEの境界M又は禁止エリアEに位置しているか確認する。
【0175】
変更部75aは、第2基準位置x2が禁止エリアEの境界M又は禁止エリアEに位置していると確認した場合(S8,Yes)、第1ラインR1の終端部r1aを短縮する補正を行う(S9)。具体的には、変更部75aは、第2基準位置x2が禁止エリアEの境界M又は禁止エリアEに位置していると確認した位置における、第7基準位置x7に第1ラインR1の作業終了点p1を当該第1ラインR1の始端部側(作業開始点p2側)へ移動させる。
【0176】
変更部75aが第1ラインR1の終端部r1aを短縮する補正を行うと(S9)、作成部75bは、補助ラインHaの始端部(補助作業ライン)Hbと第2ラインR2とが形成する角度(傾斜角度)θbが30°になるように補助ラインHaを作成する(S10)。また、作成部75bは、遷移ラインHcの始端h4と補助作業ラインHbの終端h1とを接続し、遷移ラインHcの終端h3が第2ラインR2に合流するように、当該遷移ラインHcを作成する。さらに、作成部75bは、補助ラインHaに加え、補正経路Hの一部として、第1ラインR1の終端部r1と補助作業ラインHbの始端h2を接続する連結ラインHdを作成する。
【0177】
S6、S7、S10において、作成部75bが補助ラインHaを作成すると、農業機械1の走行支援システムSは、補助ライン走行プロセスに遷移する(S11)。
【0178】
一方、S3において、変更部75aは、第1基準位置x1が禁止エリアEの境界M又は禁止エリアEに位置していないと確認した場合(S3,No)、又は第2基準位置x2が禁止エリアEの境界M又は禁止エリアEに位置していないと確認した場合(S8,No)、走行ルートLの変更を行わず、補助ライン走行プロセスに移行しない。
【0179】
以下、
図11A~
図11J、及び
図19を主に用いて、補助ライン走行プロセスについて説明する。農業機械1の走行支援システムSが補助ライン走行プロセスへ遷移すると、自動走行制御部40aは、補正部75が補正した後の走行ルートLに基づいて走行装置4の制御を行う。つまり、制御装置40は、補正部75が補正した後の走行ルートLに基づいて、走行装置4を制御する。本実施形態において、自動走行制御部40aは、補正部75が補正した後の走行ルートLと、位置検出装置50が検出した農業機械1の位置に基づいて、走行装置4の操舵及び車速を制御する。具体的には、
図11Bに示すように、自動走行制御部40aは、第1ラインR1の終端部r1で走行装置4を停止し、農業機械1を停車させる(S21)。
【0180】
自動走行制御部40aは、農業機械1を停車させると(S21)、リフトシリンダ31を制御して、連結装置30を作業姿勢から非作業姿勢へ移行させる(S22)。自動走行制御部40aは、連結装置30を非作業姿勢へ移行させると(S22)、
図11Dに示すように、走行装置4を制御して、第1ラインR1の終端部r1aから連結ラインHdへ移動させる(S23)。つまり、自動走行制御部40aは、農業機械1が切り返し走行を行い、第1ラインR1の終端部r1aから第2ラインR2の始端部r2bへ移動する。
【0181】
自動走行制御部40aは、農業機械1を第1ラインR1の終端部r1aから第2ラインR2の始端部r2bへ移動させると(S23)、
図11Eに示すように、走行装置4を制御して、第2ラインR2の始端部r2bから補助ラインHaの終端部(遷移ライン)Hcへ移動させる(S24)。具体的には、自動走行制御部40aは、農業機械1を遷移ラインHcの終端h3、即ち、遷移ラインHcと第2ラインR2との交点へ移動させる。
【0182】
自動走行制御部40aは、農業機械1を遷移ラインHcの終端h3へ移動させると(S25、Yes)、
図11Fに示すように、走行装置4を制御して補助ラインHaに沿って農業機械1を後退させる(S26)。自動走行制御部40aは、補助ラインHaの始端部(補助作業ラインHb)へと農業機械を移動させる。つまり、自動走行制御部40aは、遷移ラインHcの終端h3から補助作業ラインHbの始端h2へと農業機械1を移動させる。
【0183】
自動走行制御部40aは、農業機械1を補助作業ラインHbの始端h2へ移動させると(S27,Yes)、リフトシリンダ31を制御して、連結装置30を非作業姿勢から作業姿勢へ移行させる(S28)。自動走行制御部40aは、連結装置30を作業姿勢へ移行させると(S28)、
図11Gに示すように、走行装置4を制御して、農業機械1を補助ラインHaに沿って前進させる(S29)。これにより、作業装置60は、補助ラインHaのうち補助作業ラインHbに沿って移動することで、未作業領域Edの作業を行う。
【0184】
自動走行制御部40aは、補助ラインHaを前進させ、作業装置60が未作業領域Edの作業を行うと(S29)、
図11Hに示すように、農業機械1が補助ラインHaの終端部(遷移ライン)Hcに位置しているか確認する(S30)。本実施形態においては、遷移ラインHcの終端h3は、第2ラインR2と合流しているため、自動走行制御部40aは、農業機械1が第2ラインR2上に位置しているか確認する。
【0185】
自動走行制御部40aは、農業機械1が補助ラインHaの終端部(遷移ライン)Hc、即ち第2ラインR2上に位置していると判断した場合(S30,Yes)、走行装置4を停止し、リフトシリンダ31を制御して、連結装置30を作業姿勢から非作業姿勢へ移行させる(S31)。自動走行制御部40aは、連結装置30を非作業姿勢へ移行させると(S31)、
図11Iに示すように、走行装置4を制御して、補助ラインHaの終端部(遷移ライン)Hc、詳しくは遷移ラインHcの終端h3から第2ラインR2の始端部r2bへ後退させる(S32)。
【0186】
自動走行制御部40aは、補助ラインHaの終端部(遷移ライン)Hcから第2ラインR2の始端部r2bへ後退させると(S32)、農業機械1が第2ラインR2の始端部r2bに位置しているか確認する(S33)。本実施形態においては、自動走行制御部40aは、作業装置60の作業領域の後端(第4基準位置x4、第6基準位置x6、及び第8基準位置x8を通る直線)が第2ラインR2の始端部r2bにおける境界Mに位置しているか確認する。
【0187】
自動走行制御部40aは、農業機械1が第2ラインR2の始端部r2bに位置していると確認すると(S33,Yes)、リフトシリンダ31を制御して、連結装置30を非作業姿勢から作業姿勢へ移行させる(S34)。自動走行制御部40aは、連結装置30を作業姿勢へ移行させると(S34)、
図11Jに示すように、走行装置4を制御して、第2ラインR2を前進させる(S35)。
【0188】
なお、上述した実施形態においては、農業機械1の走行支援システムSが走行ルートLを補正し、農業機械1が当該補正後の走行ルートLに基づいて走行する一連の流れについて説明したが、走行ルートLを補正するプロセスと、農業機械1が補正後の走行ルートLに基づいて走行するプロセスとを並行して行うような構成であってもよい。
【0189】
[第2実施形態]
また、上述した第1実施形態においては、農業機械1が走行ルートLを走行している場合に、農業機械1の走行支援システムSの補正部75が走行ルートLを補正し、自動走行制御部40aが当該補正後の走行ルートLに基づいて農業機械1を自動走行させる構成について説明したが、農業機械1の走行支援システムSは、走行ルートLを補正し、農業機械1が補正後の走行ルートLを走行すればよく、制御装置40は、農業機械1の車速も制御せず、自動操舵機構37の制御を行うような構成であってもよい。
【0190】
以下、第2実施形態の農業機械1の走行支援システムSについて、上述した実施形態(第1実施形態)と異なる構成を中心に説明し、第1実施形態と共通する構成については同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0191】
図20に示すように、第1の変形例において、制御装置40は、自動走行制御部40aに代えて自動操舵制御部40bを有している。自動操舵制御部40bは、制御装置40に設けられた電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成されている。自動操舵制御部40bは、制御装置40から出力された制御信号に基づいて車体2が走行ルートLに沿って走行するように自動操舵機構37のステアリングモータ38を制御する。なお、自動操舵制御部40bは、上述した自動走行制御部40aと同様の方法によって、農業機械1が走行ルートLに沿って走行するように自動操舵機構37のステアリングモータ38を制御する。これにより、自動操舵制御部40bは、補正部75が補正した後の走行ルートLと、位置検出装置50が検出した農業機械1の位置に基づいて、走行装置4の操舵を制御する。
【0192】
なお、第2実施形態の農業機械1の走行支援システムSが走行ルートLを補正し、農業機械1が当該補正後の走行ルートLに基づいて走行する一連の流れは、運転席に着座した作業者が車速等を操作し、自動操舵制御部40bが走行装置4の制御を行う点が第1実施形態と異なるのみであるため、詳細の説明については省略する。
【0193】
[第3実施形態]
また、上述した実施形態において、農業機械1が走行ルートLを走行している場合に、農業機械1の走行支援システムSの補正部75が走行ルートLを補正し、自動走行制御部40aが当該補正後の走行ルートLに基づいて農業機械1を自動走行させる構成、及び自動操舵制御部40bが当該補正後の走行ルートLに基づいて自動操舵させる構成について説明したが、農業機械1の走行支援システムSは、第3取得部73が取得したフィールドFの情報に基づいて第1取得部71が取得した走行ルートLを補正することで、農業機械1が侵入を禁止されているエリア(禁止エリアE)を走行することを回避させつつ、未作業領域Edの発生を抑制し、効率よく作業を行わせることができればよく、表示装置55が補正後の走行ルートLを表示し、作業者が当該補正後の走行ルートLに沿って農業機械1を走行させるような構成であってもよい。つまり、補正部75が走行ルートLを補正するタイミングは、農業機械1が走行ルートLを走行している間に限定されず、農業機械1が走行ルートLを走行する前であってもよい。斯かる場合において、補正部75は、ルート作成部57eが作成した走行ルートLに、第2取得部72が取得した農業機械1の仕様情報に基づく仮想の農業機械1を走行させ、走行ルートLの補正を行う。なお、補正部75が補正した走行ルートLは、表示装置55の表示部56が結果画面D3を表示することで表示される。
【0194】
以下、第3実施形態における農業機械1の走行支援システムSについて詳しく説明する。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同一の構成については、説明を省略する。
【0195】
図21に示すように、第3実施形態においては、第1取得部71、第2取得部72、第3取得部73、定義部74、及び補正部75は、電気・電子部品、表示制御部57に組み込まれたプログラム等から構成されており、第1取得部71、第2取得部72、第3取得部73、定義部74、及び補正部75は、表示制御部57が兼用している。
【0196】
本実施形態においては、第2取得部72は、表示装置55が表示した設定画面D2に入力され、表示記憶部58に記憶されフィールドFと対応付けられた農業機械1及び/又は作業装置60の仕様情報を取得する。斯かる場合において、設定画面D2が表示する機械入力部114は、作業装置60の型式情報に加え、農業機械1の型式情報の入力を受け付ける。
【0197】
なお、第2取得部72は、第1実施形態と異なり、機械入力部114が入力を受け付けた農業機械1の型式情報に基づいて、表示記憶部58に予め記憶されている情報から農業機械1の仕様情報を取得する。表示記憶部58には、第1実施形態における記憶部41同様に、農業機械1の型式情報と、農業機械1の仕様情報と、が対応付けられたテーブルとして記憶されている。例えば、農業機械1の仕様情報として、車体位置VPから農業機械1の前端(ボンネットの先端)までの長さY1、及び車体位置VPから農業機械1の後端(連結装置30の後端)までの長さY2が記憶されている。
【0198】
また、
図21に示すように、補正部75は、変更部75a及び作成部75bに加え、仮想演算部75cを有している。仮想演算部75cは、第2取得部72が取得した農業機械1及び/又は作業装置60の仕様情報に基づいて、作業装置60を連結した農業機械1の仮想のモデル(仮想機械)を走行ルートLに沿って走行させるシミュレーションを行い、補正部75は、当該シミュレーションに基づいて走行ルートLの補正を行う。具体的には、仮想演算部75cは、車体位置VPに対応する仮想車体位置を設定する。仮想演算部75cは、第3取得部73が取得した走行ルートL上に仮想車体位置を移動させて、シミュレーションを行う。つまり、仮想演算部75cは、仮想機械の位置情報を演算できる。
【0199】
第3実施形態において、定義部74は、第1基準位置x1、第2基準位置x2、第3基準位置x3、第4基準位置x4、第5基準位置x5、第6基準位置x6、第7基準位置x7、及び第8基準位置x8の位置情報を定義することで、第1実施形態と異なり、実際の車体位置VPではなく仮想車体位置と、第1基準位置x1、第2基準位置x2、第3基準位置x3、第4基準位置x4、第5基準位置x5、第6基準位置x6、第7基準位置x7、及び第8基準位置x8と、の相対距離を定義する。
【0200】
また、第3実施形態において、閾値は、表示記憶部58に予め記憶されており、表示装置55を操作して任意に変更可能であり、変更部75aは、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが所定の角度(閾値)以上である場合、変更部75aは、禁止エリアEの位置情報、第1基準位置x1に基づいて複数のラインRの終端部r1を短縮する。
【0201】
図22に示すように、第3実施形態においては、ルート作成部57eが走行ルートLを作成し、設定画面D2のルート表示部115が作成された走行ルートLをフィールドFに表示している場合、設定画面D2には、補正ボタン116が表示される。オペレータが表示装置55を操作して、補正ボタン116を選択操作すると、補正部75がシミュレーションを行い、走行ルートLの補正を開始する。補正部75が走行ルートLの補正を完了すると、表示記憶部58は、補正前の走行ルートLのデータに、補正後の走行ルートLを上書きして記憶する。
図23に示すように、表示制御部57は、表示記憶部58が記憶している補正後の走行ルートLを表示する結果画面D3を表示する。結果画面D3は、補正後の走行ルートLを表示する結果表示部120を表示する。結果表示部120は、フィールドF上に補正後の走行ルートLを表示し、位置取得部57aが取得した車体位置VPに基づいて、現在の農業機械1が位置している場所にアイコン121を表示する。本実施形態においては、結果表示部120は、補正後の走行ルートLのうち、車体位置VPが位置している場所に応じて、補正後の走行ルートLの一部を拡大表示する。また、結果表示部120は、吹き出し部122を表示して、走行ルートLの各地点における注意を表示する。
【0202】
以下、
図24を用いて、農業機械1が走行ルートLを走行する前に、農業機械1の走行支援システムSが走行ルートLを補正する一連の流れについて説明する。なお、以下の説明においては、説明の都合上、所定の周回における第1ラインR1を仮想の農業機械1が走行して、第2ラインR2へ移行する場合を例に説明する。
【0203】
まず、仮想演算部75cは、ルート作成部57eが作成した走行ルートLに基づいて、仮想機械を移動させる(S41)。仮想演算部75cが仮想機械を第1ラインR1に沿って移動を開始させると(S41)、変更部75aは、仮想機械が位置している第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが閾値(70°)未満であるか否かを確認する(S42)。詳しくは、変更部75aは、第1取得部71が取得した走行ルートLと、仮想演算部75cが演算した仮想機械の位置情報に基づいて、複数のラインRのうち、仮想機械が位置している第1ラインR1と、第1ラインR1の次のラインである第2ラインR2を検出する。変更部75aは、複数のラインRから第1ラインR1と第2ラインR2を検出すると、当該第1ラインR1及び第2ラインR2とが形成する角度を演算し、表示記憶部58から取得した閾値に基づいて、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが閾値(70°)未満であるか否かを確認する。
【0204】
変更部75aは、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが閾値(70°)未満ではないと確認した場合(S42,No)、第1基準位置x1が禁止エリアEの境界M又は禁止エリアEに位置しているか確認する(S43)。具体的には、変更部75aは、仮想演算部75cが演算した仮想機械の位置情報と、定義部74が定義した仮想車体位置と第1基準位置x1との相対距離と、第3取得部73が取得した禁止エリアEの位置情報に基づいて、第1基準位置x1が禁止エリアEの境界M又は禁止エリアEに位置しているか確認する。
【0205】
変更部75aは、第1基準位置x1が禁止エリアEの境界M又は禁止エリアEに位置していると確認した場合(S43,Yes)、第1ラインR1の終端部r1aを短縮する補正を行う(S44)。具体的には、変更部75aは、第1基準位置x1が禁止エリアEの境界M又は禁止エリアEに位置していると確認した位置における、第7基準位置x7に第1ラインR1の作業終了点p1を当該第1ラインR1の始端部側(作業開始点側)へ移動させる。
【0206】
変更部75aが第1ラインR1の終端部r1aを短縮する補正を行うと(S44)、作成部75bは、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが鋭角又は直角(≦90°)であるか確認する(S45)。本実施形態においては、作成部75bは、変更部75aが演算した1ラインと第2ラインR2との角度に基づいて、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが鋭角又は直角(≦90°)であるか確認する。
【0207】
作成部75bは、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが鋭角又は直角(≦90°)であると確認すると(S45,Yes)、補助ラインHaの始端部(補助作業ライン)Hbと第2ラインR2とが形成する角度(傾斜角度)θbが30°になるように補助ラインHaを作成する(S46)。具体的には、作成部75bは、定義部74が定義した第3基準位置x3、第4基準位置x4、第5基準位置x5、及び第6基準位置x6、境界M、並びに傾斜角度θbに基づいて補助作業ラインHbの始端h2と、終端h1を定義して、補助作業ラインHbを作成する。また、作成部75bは、遷移ラインHcの始端h4と補助作業ラインHbの終端h1とを接続し、遷移ラインHcの終端h3が第2ラインR2に合流するように、当該遷移ラインHcを作成する。さらに、作成部75bは、補助ラインHaに加え、補正経路Hの一部として、第1ラインR1の終端部r1aと補助ラインHaの始端部(補助作業ライン)Hbを接続する連結ラインHdを作成する。
【0208】
一方、作成部75bは、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが鈍角(>90°)であると確認すると(S45,No)、補助ラインHaの始端部(補助作業ライン)Hbと第2ラインR2とが形成する角度(傾斜角度)θbが15°になるように補助ラインHaを作成する(S47)。また、作成部75bは、遷移ラインHcの始端h4と補助作業ラインHbの終端h1とを接続し、遷移ラインHcの終端h3が第2ラインR2に合流するように、当該遷移ラインHcを作成する。さらに、作成部75bは、補助ラインHaに加え、補正経路Hの一部として、第1ラインR1の終端部r1aと補助ラインHaの始端部(補助作業ライン)Hbを接続する連結ラインHdを作成する。
【0209】
また、S42において、変更部75aは、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが閾値(70°)未満であると確認した場合(S42,Yes)、第2基準位置x2が禁止エリアEの境界M又は禁止エリアEに位置しているか確認する(S48)。具体的には、変更部75aは、位置取得部57aが取得した車体位置VPと、定義部74が定義した車体位置VPと第2基準位置x2との相対距離と、第3取得部73が取得した禁止エリアEの位置情報に基づいて、第1基準位置x1が禁止エリアEの境界M又は禁止エリアEに位置しているか確認する。
【0210】
変更部75aは、第2基準位置x2が禁止エリアEの境界M又は禁止エリアEに位置していると確認した場合(S48,Yes)、第1ラインR1の終端部r1aを短縮する補正を行う(S49)。具体的には、変更部75aは、第2基準位置x2が禁止エリアEの境界M又は禁止エリアEに位置していると確認した位置における、第7基準位置x7に第1ラインR1の作業終了点p1を当該第1ラインR1の始端部側(作業開始点p2側)へ移動させる。
【0211】
変更部75aが第1ラインR1の終端部r1aを短縮する補正を行うと(S49)、作成部75bは、補助ラインHaの始端部(補助作業ライン)Hbと第2ラインR2とが形成する角度(傾斜角度)θbが30°になるように補助ラインHaを作成する(S50)。また、作成部75bは、遷移ラインHcの始端h4と補助作業ラインHbの終端h1とを接続し、遷移ラインHcの終端h3が第2ラインR2に合流するように、当該遷移ラインHcを作成する。さらに、作成部75bは、補助ラインHaに加え、補正経路Hの一部として、第1ラインR1の終端部r1aと補助ラインHaの始端部(補助作業ライン)Hbを接続する連結ラインHdを作成する。
【0212】
S46、S47、S50において、作成部75bが補助ラインHaを作成すると、補正部75は、現在の周回において、シミュレーションを行っていないラインがあるか確認する(S51)。具体的には、補正部75は、仮想機械が位置している周回ラインLnにおいて、仮想機械が移動していないラインがあるか否かを確認する。
【0213】
補正部75は、現在の周回において、シミュレーションを行っていないラインがあると確認すると(S51,Yes)、仮想機械を第1ラインR1から第2ラインR2へ移動させ、当該第2ラインR2を第1ラインR1として(S52)、S41へ戻る。
【0214】
一方、補正部75は、現在の周回において、シミュレーションを行っていないラインがないと確認すると(S51,No)、第1取得部71が取得した走行ルートLのうち、現在の周回ラインLnのほかにシミュレーションを行っていない周回ラインLnがあるか確認する(S53)。具体的には、補正部75は、仮想機械が位置している周回ラインLnよりも外側に周回ラインLnがあるか確認する。
【0215】
補正部75は、現在の周回において、シミュレーションを行っていない周回ラインLnがあると確認すると(S53,Yes)、仮想機械を現在の周回ラインLnから外側の周回ラインLnへ移動させ(S54)、S41へ戻る。
【0216】
一方、補正部75は、現在の周回において、シミュレーションを行っていない周回ラインLnがないと確認すると(S53,No)、補正部75は、走行ルートLの補正を終了し、表示記憶部58が補正後の走行ルートLを記憶する(S55)。
【0217】
上述した農業機械1の走行支援システムSは、作業装置60を装着可能である農業機械1に設けられた走行装置4と、圃場Gを示すフィールドFに作成され、農業機械1が走行する走行ルートLを取得する第1取得部71と、第1取得部71が取得した走行ルートLを補正する補正部75と、補正部75が補正した後の走行ルートLに基づいて、走行装置4を制御する制御装置40と、を備え、走行ルートLは、それぞれ接続された複数のラインRを含み、補正部75は、複数のラインRのうち一のラインである第1ラインR1の終端部r1aから、当該第1ラインR1の終端部r1aに接続された他のラインである第2ラインR2の始端部r2bへ向かい、且つ当該第2ラインR2に対して傾斜する補助ラインHaを作成する作成部75bを有している。上記構成によれば、農業機械1が一のラインR(第1ラインR1)から他のラインR(第2ラインR2)に移動する際に、当該農業機械1が旋回するスペースがなく、作業装置60が作業を行うことができなかった未作業領域Edが発生する場合があるが、農業機械1が補助ラインHaを走行することで、作業装置60は、未作業領域Edでの作業を行うことができる。このため、農業機械1の走行支援システムSでは、農業機械1が補正後の走行ルートLを走行することで、未作業領域Edが生じることも回避できる。
【0218】
また、農業機械1の走行支援システムSは、農業機械1の位置を検出する位置検出装置50を備え、制御装置40は、補正部75が補正した後の走行ルートLと、位置検出装置50が検出した農業機械1の位置に基づいて、走行装置4の操舵及び車速を制御する自動走行制御部40aを有している。上記構成によれば、農業機械1は、未作業領域Edが生じることも回避しつつ、自動走行を行うことができる。このため、作業者は、操作装置20を用いて、走行装置4の操舵及び車速の操作を行わずとも、農業機械1は自律して作業を行うことができ、農業機械1による作業の効率を向上させ、より精度が高い作業を実現することができる。
【0219】
また、農業機械1の走行支援システムSは、農業機械1の位置を検出する位置検出装置50を備え、制御装置40は、補正部75が補正した後の走行ルートLと、位置検出装置50が検出した農業機械1の位置に基づいて、走行装置4の操舵を制御する自動操舵制御部40bを有している。上記構成によれば、農業機械1は、未作業領域Edが生じることも回避しつつ、自動操舵を行うことができる。このため、作業者は、走行装置4の操舵の操作を行わずとも、農業機械1による作業を行うことができ、農業機械1による作業の効率を向上させ、より精度が高い作業を実現することができる。
【0220】
また、農業機械1の走行支援システムSは、圃場Gを示すフィールドFに作成され、作業装置60を装着可能である農業機械1が走行する走行ルートLを取得する第1取得部71と、第1取得部71が取得した走行ルートLを補正する補正部75と、補正部75が補正した後の走行ルートLを表示する表示装置55と、を備え、走行ルートLは、それぞれ接続された複数のラインRを含み、補正部75は、複数のラインRのうち一のラインである第1ラインR1の終端部r1aから、当該第1ラインR1の終端部r1aに接続された他のラインである第2ラインR2の始端部r2bへ向かい、且つ当該第2ラインR2に対して傾斜する補助ラインHaを作成する作成部75bを有している。上記構成によれば、農業機械1が一のラインR(第1ラインR1)から他のラインR(第2ラインR2)に移動する際に、当該農業機械1が旋回するスペースがなく、作業装置60が作業を行うことができなかった未作業領域Edが発生する場合があるが、農業機械1が補助ラインHaを走行することで、作業装置60は、未作業領域Edでの作業を行うことができる。このため、作業者は、補正後の走行ルートLを簡単に把握することができ、農業機械1が補正後の走行ルートLを走行することで、未作業領域Edが生じることも回避できる。
【0221】
また、作成部75bは、補助ラインHaと第2ラインR2とが鋭角を形成するように補助ラインHaを作成する。上記構成によれば、農業機械1は、第2ラインR2から補助ラインHaへ移動する場合、及び補助ラインHaから第2ラインR2へ移動する場合において、急な旋回することなく移動することができる。このため、農業機械1が第2ラインR2と補助ラインHaとを移動するに際して圃場Gを荒らしたりすることを回避することができる。
【0222】
また、作成部75bは、補助ラインHaの始端部(補助作業ライン)Hbが第1ラインR1の終端部r1aと交差し、当該第1ラインR1の終端部r1aから直線状に延び、補助ラインHaの終端部(遷移ライン)Hcが第2ラインR2の始端部r2bに沿って湾曲するように補助ラインHaを作成し、補助ラインHaの始端部(補助作業ライン)Hbと第2ラインR2とが鋭角を形成し、補助ラインHaが第2ラインR2に対して傾斜する。上記構成によれば、作業装置60は、少なくとも第1ラインR1と補助ラインHaの始端部(補助作業ライン)Hbとの交点から直線的に作業を行うことができ、確実に未作業領域Edにおいて作業を行うことができる。このため、より確実に、農業機械1が補助ラインHaを走行することで、作業装置60は、未作業領域Edの発生を抑制させることができる。
【0223】
また、作成部75bは、補助ラインHaの始端部と第2ラインR2とが形成する角度θbが、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaよりも小さくなるように補助ラインHaを作成する。上記構成によれば、補助ラインHaが、第1ラインR1のうち、より終端部r1a側に近い部分と交差する。このため、補助ラインHaは比較的コンパクトに形成され、農業機械1が補助ラインHaを走行する距離を比較的短くすることができる。
【0224】
また、第1ラインR1と第2ラインR2が鈍角を形成する場合、作成部75bは、第1ラインR1と第2ラインR2が鋭角又は直角を形成する場合に比べて、補助ラインHaの始端部(補助作業ライン)Hbと第2ラインR2とが形成する角度θaが小さくなるよう傾斜する補助ラインHaを作成する。上記構成によれば、第1ラインR1と補助ラインHaとが形成する角度が零よりも大きくなるよう確保でき、補助ラインHaが第1ラインR1と重複することを回避することができる。このため、農業機械1が補助ラインHaを走行することで、未作業領域Edが生じることをより確実に回避できる。
【0225】
また、農業機械1の走行支援システムSは、農業機械1及び/又は作業装置60の仕様情報を取得する第2取得部72と、フィールドFの情報を取得する第3取得部73と、を備え、補正部75は、第2取得部72が取得した仕様情報、及び第3取得部73が取得したフィールドFの情報に基づいて、フィールドFにおいて農業機械1の侵入が禁止されている禁止エリアEに農業機械1が侵入しないよう、複数のラインRの終端部r1を短縮する変更部75aを有し、作成部75bは、変更部75aが短縮した第1ラインR1の終端部r1aから第2ラインR2の始端部r2bへ向かい、第2ラインR2に対して傾斜するよう、補助ラインHaを形成する。上記構成によれば、農業機械1が禁止エリアEに侵入しないように、走行ルートLを補正しつつ、農業機械1が補助ラインHaを走行することで、作業装置60は、走行ルートLを補正によって生じた未作業領域Edでの作業を行うことができる。このため、農業機械1の走行支援システムSでは、農業機械1が補正後の走行ルートLを走行することで、禁止エリアEに侵入することを抑制しつつ、未作業領域Edが生じることも回避できる。
【0226】
また、農業機械1の走行支援システムSは、第2取得部72が取得した仕様情報に基づいて、農業機械1の前方に仮想の第1基準位置x1を定義する定義部74を備え、第3取得部73は、フィールドFの情報として、禁止エリアEの位置情報を取得し、変更部75aは、禁止エリアEの位置情報、及び第1基準位置x1に基づいて、第1基準位置x1が禁止エリアEに侵入しないよう、複数のラインRの終端部r1を短縮する。上記構成によれば、農業機械1の前方のセンシング領域として、第1基準位置x1を定義することで、走行ルートLを移動する農業機械1が禁止エリアEに侵入することをより確実に回避できる。
【0227】
また、第1ラインR1と第2ラインR2が所定の角度未満の鋭角を形成する場合、定義部74は、第1基準位置x1よりも前方に仮想の第2基準位置x2を定義し、変更部75aは、複数のラインRの位置情報、禁止エリアEの位置情報、及び第2基準位置x2に基づいて、複数のラインRの終端部r1を短縮し、変更部75aが第2基準位置x2に基づいて複数のラインRを短縮した長さは、変更部75aが第1基準位置x1に基づいて複数のラインRを短縮した長さよりも長い。上記構成によれば、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが所定未満の鋭角となる場合、第1ラインR1の終端部r1a及び第2ラインR2の始端部r2bの近傍の領域で農業機械1が旋回する領域を確保できないことがあるが、第1基準位置x1よりも農業機械1から離れている第2基準位置x2をセンシング領域として複数のラインRを短縮することで、当該複数のラインRを走行する農業機械1は、短縮前の複数のラインRを走行するよりも手前側で旋回することができる。このため、第1ラインR1と第2ラインR2が形成する角度θaが所定未満の鋭角であって、農業機械1が旋回する領域を確保できない場合でも、走行ルートLを走行する農業機械1は、確実に旋回することができる。
【0228】
また、変更部75aが短縮した複数のラインRの長さが予め設定された長さ以上である場合、作成部75bは、補助ラインHaを隣接させて複数作成する。上記構成によれば、作業装置60は、複数回に分けて未作業領域Edの作業を行うため、未作業領域Edが比較的大きい場合であっても、作業装置60は、未作業領域Edを漏れなく作業を行うことができる。
【0229】
また、第3取得部73は、フィールドFの情報のうち、禁止エリアEの位置情報として、圃場G以外の領域E1の位置情報、及び/又は圃場Gのうち作業装置60が作業を完了した領域の位置情報を取得する。上記構成によれば、農業機械1は、補正部75が補正した走行ルートLを移動することで、圃場G以外の領域E1、即ち圃場Gの外側の領域である畔や、圃場Gの外周に配置された柵等が設定された領域に侵入することを回避することができる。このため、農業機械1が旋回する際に、当該農業機械1や作業装置60が畔や柵等と接触することを回避できる。
【0230】
また、作成部75bは、補助ラインHaの始端部(補助作業ライン)Hbが第1ラインR1の終端部r1aと直交し、中途部が第2ラインR2の始端部r2bに向かって湾曲し、終端部(遷移ライン)Hcが第2ラインR2に沿って湾曲するようにして、傾斜する補助ラインHaを作成する。上記構成によれば、補助ラインHaの始端部(補助作業ライン)Hbが第1ラインR1の終端部r1aと直交するため、農業機械1が補助ラインHaの始端部(補助作業ライン)Hbを走行した際に作業装置60が作業した領域と、農業機械1が第1ラインR1の終端部r1aを走行した際に作業装置60が作業した領域と、の境界が第1ラインR1に対して直交するため、作業後の領域の美観を確保することができる。また、農業機械1は、補助ラインHaを移動する際に、比較的なめらかに走行するため、作業後の領域を荒らすことを抑制しつつ第2ラインR2へ移動することができる。さらに、作業装置60の作業幅Wが農業機械1の幅方向に延びている場合には、第1ラインR1の終端部r1aを短縮した長さが比較的長い場合であっても、作業漏れが生じることを抑制しつつ、効率よく未作業領域Edで作業を行うことができる。
【0231】
また、作成部75bは、農業機械1が補助ラインHaの始端部(補助作業ライン)Hbに位置している場合に、作業装置60の作業領域と、第2ラインR2で作業装置60が作業を行う単位作業区画の始端部と、が重複するように補助ラインHaを作成する。上記構成によれば、作業装置60が未作業領域Edの外方から当該未作業領域Edを通って移動することとなり、作業装置60は、未作業領域Edを漏れなく、より確実に作業を行うことができる。
【0232】
また、農業機械1の走行支援システムSは、フィールドFに複数のラインRを定義し、走行ルートLを作成するルート作成部57eを備え、ルート作成部57eは、第1ラインR1と、第2ラインR2とを、第1ラインR1で作業装置60が作業を行った単位作業区画(第1単位作業区画)e1の終端部と、第2ラインR2で作業装置60が作業を行った単位作業区画(第2単位作業区画)e2の始端部と、が一致又は重複するよう作成する。上記構成によれば、農業機械1は、走行ルートLを走行することで第1ラインR1と第2ラインR2との間で未作業領域Edを生じさせることなく、効率よく作業を行うことができる。このため、農業機械1は、補助ラインHaを作成した箇所と、補助ラインHaを作成しなかった箇所の両方においても未作業領域Edの発生を抑制することができる。
【0233】
また、農業機械1の走行支援システムSは、フィールドFに複数のラインRを定義し、走行ルートLを作成するルート作成部57eを備え、ルート作成部57eは、農業機械1が圃場Gを所定の周回方向に周回する走行ルートLを作成し、複数のラインRの始端部r2は、隣接し、且つ同一周回における他のラインの終端部r1と接続され、複数の周回の経路を形成している。上記構成によれば、農業機械1が所定の周回を走行する場合に、隣接する他の周回が既に作業を行った領域(既に耕耘作業を行った既耕地等の既作業領域E2)となる場合があるが、農業機械1は、補正後の走行ルートLを走行することで、当該既作業領域E2に侵入して既作業領域E2を荒らすことを抑制しつつ、補助ラインHaを走行することで未作業領域Edの発生を抑制することができる。
【0234】
また、ルート作成部57eは、複数の周回のうち、内側の周回から外側の周回の順に農業機械1が走行するよう走行ルートLを作成する。上記構成によれば、農業機械1が所定の周回を走行する場合に、隣接する内側の周回が既に作業を行った領域となるが、農業機械1は、補正後の走行ルートLを走行することで、当該既作業領域E2に侵入して既作業領域E2を荒らすことを抑制しつつ、補助ラインHaを走行することで未作業領域Edの発生を抑制することができる。
【0235】
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0236】
1 農業機械
4 走行装置
40 制御装置
40a 自動走行制御部
40b 自動操舵制御部
50 位置検出装置
55 表示装置
57e ルート作成部
60 作業装置
71 第1取得部
72 第2取得部
73 第3取得部
74 定義部
75 補正部
75a 変更部
75b 作成部
E 禁止エリア
F フィールド
G 圃場
Ha 補助ライン
L 走行ルート
R ライン
R1 第1ライン
R2 第2ライン
S 走行支援システム
r1 終端部
r1a 終端部
r2 始端部
r2b 始端部
x1 第1基準位置
x2 第2基準位置
θa 角度
θb 傾斜角度