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特許7658019サブマージドポンプ及びサブマージドポンプの引抜方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-28
(45)【発行日】2025-04-07
(54)【発明の名称】サブマージドポンプ及びサブマージドポンプの引抜方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 13/08 20060101AFI20250331BHJP
   F17C 9/00 20060101ALI20250331BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20250331BHJP
【FI】
F04D13/08 P
F17C9/00 Z
F17C13/00 302E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024139153
(22)【出願日】2024-08-20
【審査請求日】2024-09-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000152170
【氏名又は名称】株式会社酉島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】細貝 和希
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 真次
(72)【発明者】
【氏名】原 貴司
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-147993(JP,A)
【文献】特開2024-065593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 13/08
F17C 9/00
F17C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクの天壁の上側に配置される分岐した排出部を有し、前記天壁に固定されて前記タンク内を上下方向に延び、上端が開口された筒状のバレルと、
前記バレル内に配置され、前記バレル内の液化ガスを前記排出部から排出するポンプ部と、
前記ポンプ部に取り付けられて前記バレル内を上向きに延び、前記バレルの上端から前記ポンプ部を引き抜くための引抜部材と、
前記バレルの上端に液密かつ気密に取り付けられた板状の基板によって構成されたシール部と
を備え、
前記基板には、
前記バレルの軸線に沿って貫通し、少なくとも前記引抜部材を挿通可能な開口部と、
前記開口部内にガス供給源からの不活性ガスを噴出する噴出部と
が設けられている、サブマージドポンプ。
【請求項2】
前記噴出部は、前記不活性ガスを前記バレルの軸線に対して斜め下向きに噴出するように傾斜している、請求項1に記載のサブマージドポンプ。
【請求項3】
前記バレルには、前記シール部よりも下側に位置し、前記バレル内において前記液化ガスが気化した気化ガスと前記不活性ガスを流出させるためのガス流出部が設けられている、請求項2に記載のサブマージドポンプ。
【請求項4】
前記噴出部は、前記バレルの軸線まわりに等間隔で複数設けられている、請求項1から3のいずれか1項に記載のサブマージドポンプ。
【請求項5】
前記引抜部材は、複数の筒体を直管状に連結して構成され、前記バレルの軸線に沿って前記バレル内に差し込まれ、前記ポンプ部に接続するケーブルを保護する保護管からなる、請求項1から3のいずれか1項に記載のサブマージドポンプ。
【請求項6】
前記シール部上に着脱可能に配置される受け座を更に備え、
前記筒体は、前記軸線に対して交差する向きに突出した連結部を有し、
前記受け座は、前記筒体のうち前記連結部以外の部分を挿通可能な挿通孔を有し、前記連結部の保持によって前記保護管を介して前記ポンプ部を支持可能である、請求項に記載のサブマージドポンプ。
【請求項7】
前記受け座は、環状体を周方向に2以上分割した分割体によって構成されている、請求項に記載のサブマージドポンプ。
【請求項8】
前記引抜部材は、巻取機構によって巻取可能なワイヤからなる、請求項1から3のいずれか1項に記載のサブマージドポンプ。
【請求項9】
タンクの天壁に固定されて前記タンク内を上下方向に延びる筒状のバレル内に配置されたポンプ部によって、前記天壁よりも上側に配置された前記バレルの排出部から液化ガスを排出するサブマージドポンプの引抜方法であって、
前記バレルの上端に液密かつ気密に取り付けられたシール部の基板に設けられ、前記バレルの軸線に沿って貫通した開口部内へ、ガス供給源からの不活性ガスを噴出部から噴出しながら、前記ポンプ部に取り付けられて前記バレル内を上向きに延びる引抜部材を介して前記ポンプ部を吊り上げ、前記バレルの上端から前記ポンプ部を引き抜く、サブマージドポンプの引抜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サブマージドポンプ及びサブマージドポンプの引抜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タンク内の液体アンモニアを排出するアンモニアタンク内払出ポンプが開示されている。このポンプは、タンク内に挿入されたバレルと、バレルの下端に設けられたフート弁と、バレル内に吊り下げられた払出ポンプとを備える。メンテナンス時、払出ポンプの吊り上げによってフート弁を閉じた後、バレル内にパージガスを供給しつつバレル内からガスを吸引することによって、バレル内を浄化する。その後、バレルの上端を閉止するヘッドプレートを取り外し、バレルの上端から払出ポンプを抜き出すことによって、バレル外(大気)へのアンモニアガスの拡散抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-90418号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パージガスの供給によってバレル内を完全に浄化することは困難である。一方で、特許文献1のポンプでは、ヘッドプレートを取り外した状態で、払出ポンプをバレル内の下部から吊り上げて上端から抜き出すため、大きく開放されたバレルの上端から外部(大気)へ気化ガスが拡散し得る。言い換えれば、特許文献1のポンプには、バレル内からの気化ガスの拡散対策について、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、メンテナンス時に気化ガスが大気に拡散することを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、タンクの天壁の上側に配置される分岐した排出部を有し、前記天壁に固定されて前記タンク内を上下方向に延び、上端が開口された筒状のバレルと、前記バレル内に配置され、前記バレル内の液化ガスを前記排出部から排出するポンプ部と、前記ポンプ部に取り付けられて前記バレル内を上向きに延び、前記バレルの上端から前記ポンプ部を引き抜くための引抜部材と、前記バレルの上端に液密かつ気密に取り付けられた板状の基板によって構成されたシール部とを備え、前記基板には、前記バレルの軸線に沿って貫通し、少なくとも前記引抜部材を挿通可能な開口部と、前記開口部内にガス供給源からの不活性ガスを噴出する噴出部とが設けられている、サブマージドポンプを提供する。
【0007】
本発明の他の態様は、タンクの天壁に固定されて前記タンク内を上下方向に延びる筒状のバレル内に配置されたポンプ部によって、前記天壁よりも上側に配置された前記バレルの排出部から液化ガスを排出するサブマージドポンプの引抜方法であって、前記バレルの上端に液密かつ気密に取り付けられたシール部の基板に設けられ、前記バレルの軸線に沿って貫通した開口部内へ、ガス供給源からの不活性ガスを噴出部から噴出しながら、前記ポンプ部に取り付けられて前記バレル内を上向きに延びる引抜部材を介して前記ポンプ部を吊り上げ、前記バレルの上端から前記ポンプ部を引き抜く、サブマージドポンプの引抜方法を提供する。
【0008】
ポンプ部は、バレルの上端から引き抜くための引抜部材の下端に取り付けられている。そのため、メンテナンス時、引抜部材を介してポンプ部をバレルの上部に吊り上げ、バレルの上端からポンプ部を引き抜くことができる。この引抜作業は、シール部の噴出部から開口部内に不活性ガスを噴出しながら行われる。よって、開口部内に噴出した不活性ガスにより、気化ガスがバレルの上端から大気に漏出して拡散することを抑制できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、メンテナンス時に気化ガスが大気に拡散することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係るサブマージドポンプをタンクに取り付けた状態の断面図。
図2図1のII部分の拡大断面図。
図3】バレル上端の上部カバー、シール部、及び受け座の分解斜視図。
図4】シール部の平面図。
図5】メンテナンス時の遮断工程を示す断面図。
図6】メンテナンス時の吊上工程の連結ステップを示す断面図。
図7】メンテナンス時の吊上工程の吊上ステップを示す断面図。
図8】メンテナンス時の吊上工程の支持ステップを示す断面図。
図9】メンテナンス時の吊上工程の分離ステップを示す断面図。
図10】メンテナンス時の引抜工程の連結ステップを示す断面図。
図11】メンテナンス時の引抜工程の引抜ステップを示す断面図。
図12】本発明の第2実施形態に係るサブマージドポンプをタンクに取り付けた状態の断面図。
図13図12のXIII部分の拡大断面図。
図14】メンテナンス時の引抜工程の吊上ステップ1を示す断面図。
図15】メンテナンス時の引抜工程の吊上ステップ2を示す断面図。
図16】メンテナンス時の引抜工程の吊上ステップ3を示す断面図。
図17】メンテナンス時の引抜工程の引抜ステップを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1を参照すると、本発明の第1実施形態に係るサブマージドポンプ10は、タンク1の天壁2に設置され、アンモニアのような液化ガス(液体)をタンク1の内部から外部の定められた設備に排出する。
【0013】
サブマージドポンプ10は、バレル15、ポンプ部36、及び保護管(引抜部材)40を備える。ポンプ部36は、保護管40の下端に取り付けられている。ポンプ部36と保護管40は、バレル15に対して上方から一体に差し込まれている。また、サブマージドポンプ10は、バレル15に対してポンプ部36を引き抜くときと差し込むときに用いられる受け座45を備える。
【0014】
以下、バレル15、ポンプ部36、保護管40、及び受け座45の構成を具体的に説明する。
【0015】
バレル15は、上端と下端が開口された筒状で、天壁2を貫通してタンク1内を上下方向に延びている。バレル15は、天壁2に固定するためのベースプレート15aを備え、バレル15の上側の一部が、天壁2よりも上側に突出して大気に露出している。バレル15の全長は、タンク1の全高に応じて形成されており、例えば50mである。図1に記載のバレル15は、連続した1本の直管として図示しているが、実際には複数の直管を液密に連結して構成されている。但し、バレル15は、タンク1の全高によっては1本の直管によって構成されてもよい。
【0016】
バレル15のうち天壁2よりも上側に位置する部分には、それぞれ筒状の液体排出部15b、ガス流入部15c、及びガス流出部15dが分岐接続されている。液体排出部15bは、下流側の設備に接続された送出管4に接続されている。送出管4には仕切弁5が介設されている。ガス流入部15cは、バレル15内に不活性ガス(例えばNガス)を供給するためのガス供給源7に接続されている。ガス流出部15dは、バレル15内の不活性ガスと気化ガスを処理する設備(図示せず)に接続されている。
【0017】
バレル15の下端には、フート弁16が取り付けられている。バレル15の上端には、上部カバー21を介して第1シール部22と第2シール部28が取り付けられている。
【0018】
フート弁16は、弁座17と弁体18を備える。弁座17は、筒状であり、ボルト止めによってバレル15の下端に液密に取り付けられている。弁体18は、弁座17の下端のフランジ部と同一直径の円板状であり、弁座17に対して上下方向に移動可能に取り付けられている。弁体18は、弁座17を閉鎖して閉弁可能であれば、弁座17のフランジ部の外径とは異なる直径であってもよいし、円板以外の形状であってもよい。
【0019】
弁体18には、それぞれ複数の軸部18aと突出部18bが周方向に間隔をあけて設けられている。軸部18aは、弁座17のフランジ部を貫通して上側へ突出している。軸部18aの上端にはストッパ19が取り付けられている。ストッパ19とフランジ部の間には、軸部18aを取り囲むように、弁体18を上向きに付勢するコイルスプリング20が配置されている。突出部18bは上向きに突出し、突出部18bの一部が弁座17内に位置している。突出部18bへのポンプ部36の載置によって、コイルスプリング20の付勢力に抗して弁体18が弁座17から離間して開弁する(図5参照)。突出部18bからのポンプ部36の離間により、コイルスプリング20の付勢力によって弁座17に弁体18が圧接されて閉弁する(図7参照)。
【0020】
図2及び図3を参照すると、上部カバー21は、円環状の金属板によって構成され、ボルト止めによってバレル15の上端のフランジ15eに液密かつ気密に取り付けられている。上部カバー21の開口部21aの中心は軸線A上に位置している。開口部21aの直径は、ポンプ部36の外形よりも小さく、保護管40の外形よりも大きく、後に詳述する保護管40の連結部41aを挿通可能な大きさである。
【0021】
上部カバー21の外周部には、バレル15にボルト止めするための複数のボルト孔21bが設けられている。上部カバー21の内周部には、第1シール部22と第2シール部28をボルト止めするための複数のボルト穴21cが設けられている。ボルト孔21bとボルト穴21cの間には、吊り上げ用のワイヤ48に取り付けられたアイボルト49(図10参照)を螺合する一対のボルト穴21dが設けられている。ボルト穴21c,21dは、それぞれ上端が開口して下端が塞がれた非貫通の有底筒状である。
【0022】
図2から図4を参照すると、第1シール部22は、ガスカーテンによってバレル15内から外部への気化ガスの拡散を抑制するための構成である。第1シール部22は、円環状の金属板によって構成され、上部カバー21上に液密かつ気密に取り付けられる基板23を備える。
【0023】
基板23の外径は、上部カバー21の外形よりも小さく、ボルト穴21cを形成する位置に対応する仮想直径よりも大きい。より具体的には、基板23の外径は、上部カバー21の一対のボルト穴21d間の寸法、つまり上部カバー21においてボルト穴21dを形成する位置である仮想直径よりも小さい。これにより、第1シール部22を上部カバー21上に配置した状態で、ボルト穴21dが露出するように設定されている。基板23には、開口部23a、ボルト貫通孔23c、ガス供給部24、及びガイド凸部27が設けられている。
【0024】
開口部23aの中心は軸線A上に位置している。開口部23aの直径は、上部カバー21の開口部21aと同一直径である。つまり、開口部23aの直径は、ポンプ部36の外形よりも小さく、保護管40の外形よりも大きく、後に詳述する保護管40の連結部41aを挿通可能な大きさである。開口部23aの直径は、上部カバー21の開口部21aの直径と異なっていてもよい。開口部23aの下部は、下側に向かうに従って径方向外側へ広がった円錐筒状の傾斜部23bによって構成されている。
【0025】
ボルト貫通孔23cは、第1シール部22を上部カバー21に取り付けるための構成である。ボルト貫通孔23cは、上部カバー21のボルト穴21cに対応するように、第1シール部22の外周部に等間隔で複数設けられ、上下方向に貫通している。
【0026】
ガス供給部24は、開口部23a内に不活性ガス(例えばNガス)を供給するための構成である。ガス供給部24は、複数(本実施形態では4つ)の通路25と、個々の通路25に取り付けられたノズル(噴出部)26とを備える。
【0027】
通路25は、基板23の径方向に延びる流入部25aと、流入部25aに連通した流出部25bとを備える。流入部25aは、基板23の外周面で開口して径方向内側へ延びている。流入部25aの外端には、ガス供給源7に接続された配管8が接続されている。流出部25bは、流入部25aよりも小さい孔径で、開口部23a内を臨むように傾斜部23bで開口している。流出部25bは、基板23の径方向の外側から内側に向けて下側へ傾斜している。
【0028】
ノズル26は、流出部25bのうち開口部23a側の端部に取り付けられている。ノズル26は、通路25を介してガス供給源7から供給された不活性ガスを所定圧力で開口部23a内へ噴出する。より具体的には、ノズル26は、バレル15の径方向の外側から内側に向けて下側へ傾斜するように、軸線Aに対して不活性ガスを斜め下向きに噴出する。複数のノズル26は、通路25への取り付けによって軸線Aまわりの周方向に等間隔で配置されている。個々のノズル26による不活性ガスの噴射角は、隣り合うノズル26が噴射した不活性ガスが重なり合う範囲であることが好ましい。バレル15内の気化ガスが外部へ漏出して拡散することを抑制できる範囲であれば、通路25を含むノズル26の数及び角度は必要に応じて変更可能である。
【0029】
ガイド凸部27は、受け座45を構成する一対の分割体46を誘導するための構成である。ガイド凸部27は、スタットボルトによって構成され、基板23に設けられたボルト穴23dに着脱可能に螺合される。図1及び図2に示す通常時、ガイド凸部27は、基板23から取り外されている。図3及び図6から図11に示すように、バレル15に対してポンプ部36を引き抜くときと差し込むとき、ガイド凸部27は、基板23に取り付けられる。基板23への取付状態では、ガイド凸部27は、軸線Aに沿って基板23から上側へ突出する。ガイド凸部27は、個々の分割体46に対して2本、合計で4本用いられている。一対の分割体46を誘導できる範囲であれば、ガイド凸部27の数は必要に応じて変更可能である。
【0030】
図2を参照すると、第2シール部28は、通常時に保護管40との間からバレル15内の気化ガスが外部に漏出して拡散することを抑制するための構成である。第2シール部28は、第1シール部22上に液密かつ気密に取り付けられるボビン状の基体29を備える。
【0031】
基体29の下側フランジ部29aには、第1シール部22のボルト貫通孔23c(図3参照)に対応するボルト貫通孔が設けられている。下側フランジ部29aと第1シール部22を貫通させたボルトを上部カバー21のボルト穴21cに螺合させることによって、第2シール部28と第1シール部22が上部カバー21に連結されている。
【0032】
基体29の上側フランジ部には、端子台32をボルト止めするためのボルト貫通孔が設けられている。下側フランジ部29aと上側フランジ部の間の内周部には、保護管40との間をシールするグランドパッキン(図示せず)が取り付けられている。
【0033】
図1を参照すると、第2シール部28の上側には、端子台32がボルト止めによって取り付けられている。端子台32には、ポンプ部36に電力を供給するための電源接続部と、ポンプ部36を制御するためのコントロール機盤とが接続されている。
【0034】
ポンプ部36は浸漬式であり、バレル15内の下端部に配置され、バレル15内に浸入した液化ガスをバレル15と保護管40の間を通して液体排出部15bから排出する。ポンプ部36は、バレル15内への配置によって、弁体18を下向きに押圧してフート弁16を開弁させ、弁体15上に載置される。ポンプ部36は、ケーシング内にそれぞれ図示しないモータとインペラを備える。モータは、保護管40内に配索されたケーブル37によって端子台32に接続されている。ケーブル37は、複数の電線をコネクタ38によって接続した構成である。ケーブル37は、コネクタ38によって繋ぎ合わせることなく、1本の電線によって構成されてもよい。
【0035】
図1を参照すると、引抜部材の一例である保護管40は、全体として円筒状で、ケーブル37を保護するための構成である。保護管40は、金属製で複数の筒体41を直管状に連結することによって構成され、バレル15の軸線Aに沿って差し込まれている。個々の筒体41の外径は、全て同じであり、バレル15の内径は勿論、上部カバー21の開口部21aの内径、及び第1シール部22の開口部23aの内径よりも小さい。個々の筒体41の全長は、図示しないクレーン(吊上機構)によって吊り上げ可能な長さ(例えば5m)である。筒体41の上下端に、前述したケーブル37のコネクタ38が取り付けられている。
【0036】
複数の筒体41のうち下端の筒体41Aと上端の筒体41B以外の上下端部には、径方向外側へ突出した連結部41aがそれぞれ設けられている。筒体41Aには、上端のみに連結部41aが設けられ、筒体41Aの下端にはポンプ部36が連結されている。筒体41Bには、下端のみに連結部41aが設けられている。上下に隣接する筒体41の連結部41aを重ね合わせ、ボルト止めすることによって複数の筒体41が直管状に連結されている。
【0037】
連結部41aは、筒体41に対して円環状をなすように突出したフランジによって構成されている。連結部41aの外径は、上部カバー21の開口部21a及び第1シール部22の開口部23aの直径よりも小さい。これにより、連結部41aは、上部カバー21の開口部21a内及び第1シール部22の開口部23a内を通り、バレル15の上端から外部へ引抜可能になっている。連結部41aは、筒体41に対して径方向外側へ突出する構成であれば、断続的な円環状であってもよいし、円環以外の形状であってもよい。
【0038】
上端の筒体41Bの上部は、上部カバー21、第1シール部22、及び第2シール部28を貫通して上側へ突出している。図6を参照すると、メンテナンス時、筒体41Bの上端には、ワイヤ48を連結するための連結部材42が取り付けられる。連結部材42は、上部カバー21の開口部21a及び第1シール部22の開口部23aの直径よりも大きい外径を有する円環状である。連結部材42には、ワイヤ48のアイボルト49を螺合するボルト孔が設けられている。
【0039】
図6から図8を参照すると、受け座45は、バレル15に対してポンプ部36を引き抜くときと差し込むときに用いられ、第1シール部22上に着脱可能に配置される。受け座45は、金属製であり、筒体41のうち上端の連結部41aの保持によって、保護管40を介してポンプ部36を吊り下げた姿勢で支持する。
【0040】
図2及び図3を参照すると、受け座45は、全体としてボビン状の環状体を周方向に2分割した一対の分割体46によって構成されている。個々の分割体46は、基部46a、基部46aの下端に設けられた下支持部46b、及び基部46aの上端に設けられた上支持部46cを備え、直線状の分割縁が接するように対向配置した使用状態で環状になる。受け座45は、3以上の分割体46によって構成されてもよい。
【0041】
基部46aは、筒体41の本体部分の外径よりも大きく、連結部41aの外径よりも小さい内径の半円筒状で、一対の分割体46を対向させて近接配置することによって円筒状になる。基部46aの内部空間は、筒体41のうち連結部41a以外の部分を挿通可能な挿通孔46dを構成する。基部46aの内周部には、保護管40に向けて径方向内側へ突出するシール部46eが接合によって設けられている。シール部46eは半円環状で、一対の分割体46を対向させて近接配置することによって円環状になる。シール部46eの内径は、連結部41aを除く筒体41の本体部分の外径よりも大きいが、筒体41を挿通できる範囲で可能な限り小さく設定されている。
【0042】
下支持部46bは、基部46aの下端に接合されている。下支持部46bは半円環状で、一対の分割体46を対向させて近接配置することによって円環状になる。下支持部46bの外径は、第1シール部22の開口部23aの直径よりも大きく、第1シール部22の外径よりも小さい。下支持部46bには、外周部から分割縁に向けて延びる一対のガイド溝46fが設けられている。一対のガイド溝46fは、分割縁に対して直交する方向へ平行に延びている。これらのガイド溝46fに第1シール部22のガイド凸部27を挿入することにより、一対の分割体46を互いに近づく向き(径方向内側)と離れる向き(径方向外側)である接離方向に誘導できる。一対の分割体46を離間した状態では、保護管40の連結部41aが挿通孔46d内を挿通可能である。一対の分割体46を近接した状態では、保護管40の連結部41aは挿通孔46d内を挿通不可能である。
【0043】
上支持部46cは、基部46aの上端に接合されている。上支持部46cは半円環状で、一対の分割体46を対向させて近接配置することによって円環状になる。上支持部46cの外径は、筒体41の連結部41aの外径よりも大きく、下支持部46bの外径よりも小さい。上支持部46cの外径は、ガイド溝46fを露出可能な大きさである。上支持部46cと下支持部46bの間には、補強用のリブ46gが周方向に間隔をあけて複数設けられている。リブ46gは、基部46a、下支持部46b、及び上支持部46cにそれぞれ接合されている。
【0044】
次に、メンテナンス時にサブマージドポンプ10のポンプ部36をバレル15から引き抜く方法について説明する。
【0045】
本実施形態のサブマージドポンプ10の引抜方法は、図5に示す遮断工程、図6から図9に示す吊上工程、図10及び図11に示す引抜工程を備える。
【0046】
遮断工程では、図1に示す仕切弁5を開弁状態から閉弁状態に切り換える。また、図5に示すように、第2シール部28から端子台32を取り外し、ケーブル37の接続を解除する。
【0047】
続いて、吊上工程では、ガス供給源7を作動させ、ガス流入部15c及び第1シール部22への不活性ガスの供給を開始する。これにより、バレル15内が浄化されるとともに(パージステップ)、上部カバー21の開口部21aから外部への気化ガスの拡散が抑制される(拡散抑制ステップ)。また、吊上工程では、パージステップ及び拡散抑制ステップと並行して、図6に示す連結ステップ、図7に示す吊上ステップ、図8に示す支持ステップ、及び図9に示す分離ステップを、下端の筒体41Aの連結部41aが露出するまで、繰り返し行う。
【0048】
具体的には、上端(上から一番目)の筒体41Bを吊り上げるとき、図6に示す連結ステップでは、まず、第2シール部28の下側フランジ部29aのボルトを取り外し、上部カバー21に対する第1シール部22と第2シール部28の連結を解除する。続いて、筒体41Bから第2シール部28を取り外す。その後、ガイド凸部27(図3参照)を配置した第1シール部22上に一対の分割体46を配置する。また、筒体41Bの上端に連結部材42を取り付け、ワイヤ48の先端に取り付けられたアイボルト49を連結部材42に螺合する。
【0049】
続いて、図7に示す吊上ステップでは、クレーンによってワイヤ48を引き上げることによって、保護管40を介してポンプ部36を吊り上げる。これにより、ポンプ部36が弁体18から離間し、フート弁16が閉弁する。一番目の筒体41Bに連結した二番目の筒体41の上端の連結部41aが第1シール部22よりも上側、より具体的には受け座45の上側に露出すると、クレーンによるワイヤ48の引き上げを止める。
【0050】
続いて、図8に示す支持ステップでは、一対の分割体46をガイド溝46f(図3参照)に沿って近接方向に移動させ、受け座45によって第1シール部22の開口部23aを覆う。その後、クレーンによってワイヤ48を引き下げることによって、受け座45上に二番目の筒体41の連結部41aを載置する。これにより、受け座45によって保護管40を介してポンプ部36を吊り下げた状態に支持する。
【0051】
続いて、図9に示す分離ステップでは、筒体41B,41の連結部41aを連結したボルトを取り外す。その後、クレーンによってワイヤ48を再び引き上げ、コネクタ38によるケーブル37の接続を解除する。これにより、受け座45よりも上側の筒体41Bを分離する。
【0052】
次に、図6に示す連結ステップに戻り、下端の筒体41Aの連結部41aが露出するまで、上から二番目以下の筒体41の連結、吊り上げ、支持、及び分離を繰り返し行う。二番目以下の筒体41を吊り上げるときには、連結部材42の代わりに、受け座45上に位置する筒体41の連結部41aにアイボルト49を螺合する点で相違し、その他の点は同様である。この間、パージステップ及び拡散抑制ステップは継続して行われる。これにより、上部カバー21の開口部21a、第1シール部22の開口部23a、及び受け座45の挿通孔46dを通って、バレル15内の気化ガスが外部へ漏出して拡散することを効果的に抑制できる。
【0053】
図10に示すように、ポンプ部36に連結した下端の筒体41Aの連結部41aを受け座45によって支持し、受け座45上の筒体41を分離すると、引抜工程を行う。引抜工程のうち図10に示す連結ステップでは、上部カバー21のボルト穴21dにアイボルト49を螺合させる。また、バレル15のフランジ15eと上部カバー21を連結したボルトを取り外す。また、ガス供給源7を停止し、ガス流入部15c及び第1シール部22への不活性ガスの供給を停止し、図1に示すガス供給源7と配管8の接続を解除する。
【0054】
続いて、図11に示す引抜ステップでは、クレーンによってワイヤ48を引き上げる。これにより、バレル15の上端からポンプ部36が引き抜かれ、ポンプ部36と一体に上部カバー21、第1シール部22、及び下端の筒体41Aが取り外される。
【0055】
一方で、メンテナンス後にポンプ部36をバレル15内に配置するときには、ポンプ部36をバレル15から引き抜くときとは逆順で作業を行う。つまり、受け座45によって支持した筒体41A,41に別の筒体41,41Bをボルト止めによって連結し、クレーンによって引き下げるステップを繰り返し行う。これにより、図1に示すように、タンク1に設置したバレル15内にポンプ部36を配置できる。
【0056】
このように構成されたサブマージドポンプ10は、以下の特徴を有する。
【0057】
ポンプ部36は、複数の筒体41を直管状に連結した保護管40の下端に取り付けられ、保護管40と一体にバレル15内に配置されている。そのため、保護管40とポンプ部36を一体に吊り上げる吊上ステップ、筒体41のうち第1シール部22から露出した上端を保持し、保護管40を介してポンプ部36を支持する支持ステップ、及び第1シール部22よりも上側の筒体41を分離する分離ステップを繰り返し行うことで、ポンプ部36をバレル15の上部に移動できる。
【0058】
吊上ステップ、支持ステップ、及び分離ステップは、第1シール部22のノズル26から開口部23a内に不活性ガスを噴出しながら繰り返し行われる。そのため、開口部内23aに噴出した不活性ガスによって、バレル15内を浄化しながら、気化ガスが大気に漏出して拡散することを抑制できる。その後、第1シール部22からの不活性ガスの噴出を停止し、バレル15の上端から第1シール部22と一緒にポンプ部36を引き抜く引抜工程を行うことで、ポンプ部36をバレル15から引き抜くことができるため、メンテナンス性を向上できる。
【0059】
ノズル26が複数設けられている。しかも、複数のノズル26は、軸線まわりに等間隔で設けられている。これにより、噴出させた不活性ガスによってガスカーテンを形成できるため、第1シール部22の開口部23aからの気化ガスの漏出を効果的に抑制できる。
【0060】
第1シール部22上に着脱可能に配置され、筒体41の連結部41aの保持によって保護管40を介してポンプ部36を支持する受け座45を備える。これにより、バレル15の上端から突出した筒体41の上端の連結部41aを確実に保持し、保護管40を介してポンプ部36を安定状態で吊り下げることができる。また、受け座45よりも上側の筒体41を分離する作業を容易かつ安定して行うことができる。
【0061】
受け座45は、環状体を2以上に分割した分割体46によって構成されている。そのため、第1シール部22よりも上側に吊り上げられた保護管40の筒体41の外周を取り囲むように、受け座45を容易かつ確実に配置できる。
【0062】
以下、本発明の他の実施形態並びに種々の変形例を説明するが、これらの説明において、特に言及しない点は第1実施形態と同様である。以下で言及する図面において、第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付している。
【0063】
(第2実施形態)
図12を参照すると、第2実施形態のサブマージドポンプ10は、引抜部材として図1に示す保護管40の代わりにワイヤ60,61が用いられている点で、第1実施形態と相違している。第2実施形態では、図1に示す第1実施形態の受け座45を用いることなく、ウインチ(巻取機構)62によってワイヤ60,61を巻き取ることによって、バレル15の上端からポンプ部36を引抜可能としている(図17参照)。
【0064】
具体的には、第2実施形態のサブマージドポンプ10は、第1実施形態と同様に、バレル15及びポンプ部36を備える。そのうち、バレル15は、図1に示すガス流入部15cを設けていない点でのみ、第1実施形態のサブマージドポンプ10と相違している。
【0065】
バレル15の下端には、第1実施形態と同様のフート弁16が取り付けられている。バレル15の上端には、シール部(第1シール部)22と閉鎖カバー55が取り付けられている。第2実施形態のバレル15の上端には、図1に示す第1実施形態の上部カバー21と第2シール部28は取り付けられていない。
【0066】
図13を参照すると、シール部22は、第1実施形態と同様に、ガスカーテンによってバレル15内から外部への気化ガスの拡散を抑制するための構成である。シール部22の基板23の外径は、バレル15の上端のフランジ15eの外径と同じである。
【0067】
基板23の中央には、開口部23aが設けられている。開口部23aの直径は、バレル15の内径と同じであり、ポンプ部36を挿通可能な大きさである。開口部23aの直径は、ポンプ部36の外形よりも大きければ、バレル15の内径と異なっていてもよい。
【0068】
基板23には、図3に示す上部カバー21のボルト孔21bと同様に、バレル15の上端のフランジ15eにボルト止めするためのボルト孔(図示せず)が設けられている。第2実施形態の基板23には、図3に示す第1実施形態のボルト貫通孔23c及びガイド凸部27を含むボルト穴23dは設けられていない。
【0069】
基板23には、開口部23a内に不活性ガス(例えばNガス)を供給するためのガス供給部24が設けられている。ガス供給部24は、複数(本実施形態では4つ)の通路25と、個々の通路25に取り付けられたノズル26とを備える。通路25は、基板23の径方向に延びる1つの貫通孔によって構成されている。ノズル26は、通路25の径方向の内側端部に取り付けられ、軸線Aに対して不活性ガスを直交方向(径方向内側)に噴出する。
【0070】
閉鎖カバー55は、バレル15の上端のフランジ15eの外径と同じ外径の金属板によって構成され、シール部22を介してバレル15の上端を塞いでいる。閉鎖カバー55の外周部には、バレル15の上端のフランジ15eにボルト止めするためのボルト孔(図示せず)が設けられている。バレル15の上端に配置したシール部22上に閉鎖カバー55を配置して、これらにボルトを貫通させてナットを螺合する。これにより、バレル15に対して閉鎖カバー55とシール部22を一体に取り付けることができる。
【0071】
閉鎖カバー55には、アイボルト49(図15参照)を螺合するためのボルト穴55aが設けられている。また、閉鎖カバー55の中央には、第1ワイヤ60を挿通させる挿通孔55bが設けられている。挿通孔55b内には、通常時に第1ワイヤ60との間を気密にシールするパッキン(図示せず)が配置されている。
【0072】
閉鎖カバー55には、更に導出部56、引掛部57、及びドラム58が設けられている。導出部56は、ケーブル37を外部に導出するための構成であり、閉鎖カバー55から上側に突出している。導出部56から導出したケーブル37は、図1に示す端子台32に接続される。引掛部57は、第1ワイヤ60を引っ掛けて保持するための構成であり、閉鎖カバー55から上側に突出している。ドラム58は、第2ワイヤ61を巻き付けて保持するための構成であり、バレル15内に位置するように閉鎖カバー55の下側に設けられている。
【0073】
第2実施形態の引抜部材であるワイヤは、第1ワイヤ60と第2ワイヤ61を含む。これらのワイヤ60,61の下端は、いずれもポンプ部36の上端中央付近に取り付けられている。ワイヤ60,61は、いずれもポンプ部36からバレル15内を上向きに延びている。第1ワイヤ60の上端は、閉鎖カバー55の挿通孔55bを通して外部に導出され、引掛部57に引っ掛けられている。第2ワイヤ61は、第1ワイヤ60よりも長尺である。第2ワイヤ61の上端側はドラム58に巻き付けられている。
【0074】
次に、メンテナンス時にサブマージドポンプ10のポンプ部36をバレル15から引き抜く方法について説明する。
【0075】
第2実施形態のサブマージドポンプ10の引抜方法は、図14から図17に示すステップを含む引抜工程を備える。
【0076】
図14に示す吊上ステップ1では、ガス供給源7を作動させ、シール部22への不活性ガスの供給を開始する。これにより、閉鎖カバー55の挿通孔55b及び導出部56から外部への気化ガスの拡散が抑制され(拡散抑制ステップ)、更にバレル15内が浄化される。また、第1ワイヤ60をウインチ62に連結して巻き取ることによって、ポンプ部36を吊り上げる。これにより、ポンプ部36が弁体18から離間し、フート弁16が閉弁する。
【0077】
続いて、図15に示す吊上ステップ2では、第1ワイヤ60を引掛部57に引っ掛けてポンプ部36を吊り下げた状態に保持するとともに、バレル15、シール部22、及び閉鎖カバー55を連結したボルトを取り外す。また、ワイヤ48の先端に取り付けられたアイボルト49を閉鎖カバー55に螺合するとともに、ワイヤ48を連結したウインチ62によって閉鎖カバー55を引き上げる。その後、露出した第2ワイヤ61をウインチ62の巻取ドラム63に連結する。
【0078】
続いて、図16に示す吊上ステップ3では、ウインチ62による第2ワイヤ61の巻き取りによってポンプ部36をバレル15の上部に吊り上げる。この際、ワイヤ48を含むアイボルト49が連結された閉鎖カバー55は、バレル15から取り外され、ウインチ62との連結も解除される。また、ケーブル37と第1ワイヤ60は、閉鎖カバー55から引き抜かれ、ポンプ部36の吊り上げによってバレル15の上端から出てくる部分を絡み合わないように巻き取る。
【0079】
続いて、図17に示す引抜ステップでは、ウインチ62による第2ワイヤ61の巻き取りの継続によって、バレル15の上端からポンプ部36が引き抜かれる。
【0080】
メンテナンス後にポンプ部36をバレル15内に配置するときには、バレル15からポンプ部36を引き抜くときとは逆順で作業を行う。
【0081】
このように構成した第2実施形態のサブマージドポンプ10では、ポンプ部36が、バレル15の上端から引き抜くためのワイヤ60,61の下端に取り付けられている。そのため、第1実施形態と同様に、メンテナンス時、ワイヤ60,61を介してポンプ部36をバレル15の上部に吊り上げ、バレル15の上端からポンプ部36を引き抜くことができる。しかも、この引抜作業は、シール部22のノズル26から開口部23a内に不活性ガスを噴出しながら行われる。よって、開口部23a内に噴出した不活性ガスにより、気化ガスがバレル15の上端から大気に漏出して拡散することを抑制できる。
【0082】
なお、本発明は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0083】
例えば、受け座45は、1つの部材によって構成されてもよい。具体的には、受け座45は、円筒状の基部46aとそれぞれ円環状の支持部46b,46cとを備える環状体に対し、上方から見てC字状をなすように、筒体41の連結部41a以外の部分を挿通可能な溝を設けた構成であってもよい。
【0084】
第1実施形態においても、上部カバー21を用いることなく、第1シール部22をバレル15のフランジ15eに直接連結してもよい。
【0085】
第1実施形態では、バレル15の流入部15cには、不活性ガスの代わりに水(水分)を処理剤として噴射してもよい。第1実施形態においても第2実施形態と同様に、バレル15は流入部15cを設けずに構成し、拡散抑制ステップがパージステップを兼ねる構成としてもよい。第2実施形態においても第1実施形態と同様に、バレル15に流入部15cを設けてもよい。
【0086】
サブマージドポンプ10によって排出する液体は、アンモニアのような液化ガスに限られず、必要に応じて変更が可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 タンク
2 天壁
4 送出管
5 仕切弁
7 ガス供給源
8 配管
10 サブマージドポンプ
15 バレル
15a ベースプレート
15b 液体排出部
15c ガス流入部
15d ガス流出部
15e フランジ
16 フート弁
17 弁座
18 弁体
18a 軸部
18b 突出部
19 ストッパ
20 コイルスプリング
21 上部カバー
21a 開口部
21b ボルト孔
21c ボルト穴
21d ボルト穴
22 第1シール部
23 基板
23a 開口部
23b 傾斜部
23c ボルト貫通孔
23d ボルト穴
24 ガス供給部
25 通路
25a 流入部
25b 流出部
26 ノズル(噴出部)
27 ガイド凸部
28 第2シール部
29 基体
29a 下側フランジ部
32 端子台
36 ポンプ部
37 ケーブル
38 コネクタ
40 保護管(引抜部材)
41 筒体
41A 下端の筒体
41B 上端の筒体
41a 連結部
42 連結部材
45 受け座
46 分割体
46a 基部
46b 下支持部
46c 上支持部
46d 挿通孔
46e シール部
46f ガイド溝
46g リブ
48 ワイヤ
49 アイボルト
55 閉鎖カバー
55a ボルト穴
55b 挿通孔
56 導出部
57 引掛部
58 ドラム
60 第1ワイヤ
61 第2ワイヤ(引抜部材)
62 ウインチ(巻取機構)
63 巻取ドラム
【要約】
【課題】メンテナンス時に気化ガスが大気に拡散することを抑制する。
【解決手段】サブマージドポンプ10は、上端が開口された筒状のバレル15と、バレル15内の液化ガスを排出するポンプ部36と、バレル15の上端からポンプ部36を引き抜くための引抜部材40と、バレル15の上端に取り付けられた板状のシール部22とを備える。シール部22には、引抜部材40を挿通可能な開口部23aと、ガス供給源7からの不活性ガスを開口部23a内に噴出するための噴出部26とが設けられている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17