(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】建物の面状部材の表面仕上げ構造と、その補修方法及び施工方法
(51)【国際特許分類】
E04F 15/16 20060101AFI20250401BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
E04F15/16 J
E04F13/07 E
(21)【出願番号】P 2021139671
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2024-06-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社フジタが、千葉県野田市横内29-1の施設内にて、添田 智美及び江藤 徳彦が発明した建物の面状部材の表面仕上げ構造と、その補修方法及び施工方法について、試験工事を行った。
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】添田 智美
(72)【発明者】
【氏名】江藤 徳彦
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-221984(JP,A)
【文献】実開昭57-167836(JP,U)
【文献】特開平06-240835(JP,A)
【文献】特開2015-068137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00-15/22
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物における、床もしくは壁の少なくとも一方を含む面状部材の表面仕上げ構造であって、
前記面状部材を形成する下地の表面に、表面仕上げシートが貼り付けられており、
前記下地の表面にあるマーキングを隠すようにして前記下地に貼り付けられ、前記マーキングの前記表面仕上げシートへの滲み出しを防止する、滲み出し防止シートを備えて
おり、
前記滲み出し防止シートが、金属シートと、前記金属シートの
下方である前記下地の表面側に配設され
て、該金属シートを前記下地もしくは前記マーキングから防護する樹脂フィルムシートとの積層シートであることを特徴とする、建物の面状部材の表面仕上げ構造。
【請求項2】
前記金属シートが、アルミニウムシートであることを特徴とする、請求項
1に記載の建物の面状部材の表面仕上げ構造。
【請求項3】
前記表面仕上げシートが、塩化ビニルシートであることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の建物の面状部材の表面仕上げ構造。
【請求項4】
建物における、床もしくは壁の少なくとも一方を含む面状部材の表面仕上げ構造の補修方法であって、
前記面状部材を形成する下地の表面に、表面仕上げシートが貼り付けられ、前記下地の表面にあるマーキングが前記表面仕上げシートに滲み出している箇所の前記表面仕上げシートを剥がす、剥がし工程と、
露出した前記マーキングを隠すようにして、滲み出し防止シートを前記下地に貼り付ける、目隠し工程と、
前記表面仕上げシートが剥がされている箇所に新たな表面仕上げシートを貼り付ける、補修仕上げ工程とを有することを特徴とする、建物の面状部材の表面仕上げ構造の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の面状部材の表面仕上げ構造と、その補修方法及び施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
床や壁等を形成する下地の表面に、ビニル系シート(ビニル系床材、ビニル系壁材)等の表面仕上げシートが貼り付けられている面状部材においては、下地にマーキングした着色スプレーやマーキングペン、朱墨、有色チョークなどの着色物の成分が表面仕上げシートに移行し、面状部材の表面仕上げシートに滲み出すといった汚染が問題となることがある。例えば、建物の施工の際に、コンクリート下地の表面に各種の墨出しを行うことが往々にしてあるが、この墨出し(マーキング)の際のインクが、面状部材の表面にある表面仕上げシートに滲み出す汚染例が一例として挙げられる。
【0003】
建物の施工時(面状部材の施工時)においては、このように表面仕上げシートに滲み出し易いインクを使用しない(非汚染性のマーキングペン等を使用する)ことで上記の汚染の課題を解消することができる。しかしながら、滲み出し易いインクの使用を完全に防止することは困難であることから、仮に汚染原因となるインクを使用してしまい、下地にインクが染み込んでしまった際には、インク成分を除去するべく、下地の一部を斫る(削り取る)等して撤去した後、下地の撤去箇所を補修することにより、面状部材の表面仕上げシートへのインクの滲み出しを解消することになるが、この撤去補修作業には手間がかかる。
【0004】
また、建物の施工後に面状部材の表面仕上げシートへのインクの滲み出しが検出された際にも、このインクの滲み出し箇所の表面仕上げシートを剥がし、インクが染み込んでいる下地を撤去し、撤去箇所を補修した後に新規の表面仕上げシートを貼り付ける補修が行われることになるが、上記建物の施工時の場合と同様にこの撤去補修作業にも手間がかかる。
【0005】
以上のことから、建物の施工時に、面状部材の下地に対して汚染原因となるマーキングを施した場合でも、簡易な施工や補修によって、表面仕上げシートへのマーキングの滲み出しを防止することのできる、面状部材の表面仕上げ構造やその補修方法、その施工方法が望まれる。
【0006】
ここで、特許文献1には、亜鉛系もしくはアルミニウム系めっき鋼板のめっき面上に、シリカ/Crの重量比=0.1~20、樹脂固形分/Crの重量比=0.1~20、かつ樹脂固形分/シリカの重量比≦1となるようにシリカおよび有機樹脂を含有するクロメート皮膜を、Cr換算で5~120mg/m2の付着量にて備える、セメント含有材料と密着させる用途に使用される表面処理鋼板が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の表面処理鋼板によれば、クロメート皮膜は樹脂の接着作用によりモルタルやコンクリートとの高い密着性を示し、かつ樹脂とシリカの共存により耐食性にも優れた、フリーアクセスフロアー用の床材を提供できるとしている。しかしながら、この表面処理鋼板を適用した場合でも、上記する課題、すなわち、面状部材の下地に対して汚染原因となるマーキングを施した場合でも、簡易な施工や補修の下で、表面仕上げシートへのマーキングの滲み出しを防止できるか否かは定かでない。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、建物の施工時に、面状部材の下地に対して汚染原因となるマーキングを施した場合でも、簡易な施工や補修によって、表面仕上げシートへのマーキングの滲み出しを防止することのできる、建物の面状部材の表面仕上げ構造と、その補修方法及び施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明による建物の面状部材の表面仕上げ構造の一態様は、
建物における、床もしくは壁の少なくとも一方を含む面状部材の表面仕上げ構造であって、
前記面状部材を形成する下地の表面に、表面仕上げシートが貼り付けられており、
前記下地の表面にあるマーキングを隠すようにして前記下地に貼り付けられ、前記マーキングの前記表面仕上げシートへの滲み出しを防止する、滲み出し防止シートを備えていることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、下地の表面にあるマーキングを隠すようにして下地に付されているマーキングの表面仕上げシートへの滲み出しを防止する、滲み出し防止シートを備えていることにより、下地にあるマーキングを残した状態で当該マーキングの表面仕上げシートへの滲み出しを効果的に防止できる、面状部材の表面仕上げ構造となる。従って、建物の施工時に、面状部材の下地に対して汚染原因となるマーキングを施した場合でも、建物の施工時や施工後において、下地の一部を撤去した後に撤去箇所を補修するといった手間のかかる補修施工を不要にできる。
【0012】
ここで、面状部材には床や壁が含まれ、下地には、コンクリート下地や各種のボード材等が含まれる。また、表面仕上げシートとしては、ビニル系のシートが挙げられる。下地に付されて表面仕上げシートへ滲み出すマーキングには、上記するように、着色スプレーやマーキングペン、朱墨、有色チョークなどの着色物が含まれる。
【0013】
また、本発明による建物の面状部材の表面仕上げ構造の他の態様において、
前記滲み出し防止シートが、金属シートであることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、滲み出し防止シートが金属シートであることにより、下地から表面仕上げシートへ滲み出そうとするマーキングに対する遮蔽性能に優れた金属シートにて、マーキングの表面仕上げシートへの滲み出しを効果的に防止することができる。例えば、マーキングが付された下地の表面に、当該マーキングを隠すようにして接着剤を塗布して金属シートを貼り付けたり、金属シートの表面(下面)に予め設けられている粘着剤を介して金属シートを貼り付け、金属シートの表面(上面)に接着剤を介して表面仕上げシートを貼り付けることにより、金属シートのずれを防止して当該金属シートにてマーキングを隠した状態が維持されている、面状部材の表面仕上げ構造を形成することができる。
【0015】
また、本発明による建物の面状部材の表面仕上げ構造の他の態様において、
前記滲み出し防止シートが、金属シートと、前記金属シートの片面もしくは両面に配設されている樹脂フィルムシートとの積層シートであることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、金属シートの片面もしくは両面に樹脂フィルムシートが配設された積層シートが適用されることにより、金属シートが樹脂フィルムシートにて防護されることで当該金属シートの耐食性が向上し、金属シートによるマーキングに対する遮蔽性能を長期に亘り維持することができる。
【0017】
また、本発明による建物の面状部材の表面仕上げ構造の他の態様において、
前記金属シートが、アルミニウムシートであることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、金属シートがアルミニウムシートであることにより、金属の中でも軽量で変形性と耐食性に優れ、材料コストも比較的安価であることから、マーキングの滲み出し防止性と施工性、及び経済性に優れた面状部材の表面仕上げ構造を形成することができる。
【0019】
また、本発明による建物の面状部材の表面仕上げ構造の他の態様において、
前記表面仕上げシートが、塩化ビニルシートであることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、表面仕上げシートを形成するビニル系シートの中でも、使用頻度の高い塩化ビニルシートが適用されることにより、可及的に安価で、かつ、外観意匠的にバリーションの豊富な面状部材の表面仕上げ構造を形成できる。
【0021】
また、本発明による建物の面状部材の表面仕上げ構造の補修方法の一態様は、
建物における、床もしくは壁の少なくとも一方を含む面状部材の表面仕上げ構造の補修方法であって、
前記面状部材を形成する下地の表面に、表面仕上げシートが貼り付けられ、前記下地の表面にあるマーキングが前記表面仕上げシートに滲み出している箇所の前記表面仕上げシートを剥がす、剥がし工程と、
露出した前記マーキングを隠すようにして、滲み出し防止シートを前記下地に貼り付ける、目隠し工程と、
前記表面仕上げシートが剥がされている箇所に新たな表面仕上げシートを貼り付ける、補修仕上げ工程とを有することを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、建物の施工後に、下地の表面にあるマーキングが表面仕上げシートに滲み出している箇所の表面仕上げシートを剥がす、剥がし工程を実施し、次いで、露出したマーキングを隠すようにして滲み出し防止シートを下地に貼り付ける、目隠し工程を実施し、次いで、表面仕上げシートが剥がされている箇所に新たな表面仕上げシートを貼り付ける、補修仕上げ工程を実施することにより、マーキングが染み込んでいる下地箇所の撤去施工と撤去箇所の補修施工といった手間のかかる施工を不要にできることから、簡易かつ効率的に面状部材の表面仕上げ構造を補修することが可能になる。
【0023】
すなわち、マーキングが染み込んでいる下地箇所を撤去するといった従来の概念ではなく、マーキングが染み込んでいる下地箇所を残した状態で以後のマーキングの表面仕上げシートへの滲み出しを防止する補修を行うといった、新規な着想に基づく補修方法である。
【0024】
また、本発明による建物の面状部材の表面仕上げ構造の施工方法の一態様は、
建物における、床もしくは壁の少なくとも一方を含む面状部材の表面仕上げ構造の施工方法であって、
前記面状部材を形成する下地の表面にあるマーキングを隠すようにして、前記マーキングの表面仕上げシートへの滲み出しを防止する、滲み出し防止シートを前記下地に貼り付ける、目隠し工程と、
前記下地と前記滲み出し防止シートの表面に前記表面仕上げシートを貼り付け、前記表面仕上げ構造を施工する、施工仕上げ工程とを有することを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、建物の施工(新設)の際に、面状部材を形成する下地の表面にあるマーキングを隠すようにしてマーキングの表面仕上げシートへの滲み出しを防止する、滲み出し防止シートを下地に貼り付ける、目隠し工程を実施し、次いで、下地と滲み出し防止シートの表面に表面仕上げシートを貼り付けて表面仕上げ構造を施工する、施工仕上げ工程を実施することにより、マーキングが染み込んでいる下地箇所の撤去施工と撤去箇所の補修施工といった手間のかかる施工を不要にできることから、簡易かつ効率的に面状部材の表面仕上げ構造を施工することが可能になる。この施工方法も、上記する補修方法と同様に、マーキングが染み込んでいる下地箇所を撤去するといった従来の概念ではなく、マーキングが染み込んでいる下地箇所を残した状態で以後のマーキングの表面仕上げシートへの滲み出しを防止する施工を行うといった、新規な着想に基づく施工方法である。
【発明の効果】
【0026】
以上の説明から理解できるように、本発明の建物の面状部材の表面仕上げ構造と、その補修方法及び施工方法によれば、建物の施工時に、面状部材の下地に対して汚染原因となるマーキングを施した場合でも、簡易な施工や補修によって、表面仕上げシートへのマーキングの滲み出しを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施形態に係る建物の面状部材の表面仕上げ構造の一例の縦断面図である。
【
図2】実施形態に係る建物の面状部材の表面仕上げ構造の他の例の縦断面図である。
【
図3】実施形態に係る建物の面状部材の表面仕上げ構造の補修方法の一例の工程図である。
【
図4】
図3に続いて、実施形態に係る建物の面状部材の表面仕上げ構造の補修方法の一例の工程図である。
【
図5】
図4に続いて、実施形態に係る建物の面状部材の表面仕上げ構造の補修方法の一例の工程図である。
【
図6】
図5に続いて、実施形態に係る建物の面状部材の表面仕上げ構造の補修方法の一例の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施形態に係る建物の面状部材の表面仕上げ構造とその補修方法の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0029】
[実施形態に係る建物の面状部材の表面仕上げ構造]
はじめに、
図1及び
図2を参照して、実施形態に係る建物の面状部材の表面仕上げ構造の一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係る建物の面状部材の表面仕上げ構造の一例の縦断面図であり、
図2は、実施形態に係る建物の面状部材の表面仕上げ構造の他の例の縦断面図である。
【0030】
図1に示す面状部材60の表面仕上げ構造50は、コンクリート下地10(下地の一例)の表面11にあるマーキングMを隠す滲み出し防止シート30と、滲み出し防止シート30の表面にある表面仕上げシート40の積層構造である。ここで、マーキングMが施される下地としては、面状部材を形成する各種のボード材等であってもよい。
【0031】
面状部材60は、建物を構成する床や壁である。例えば、床の施工において、コンクリート下地10の表面11に墨出し等のマーキングMを行うに当たり、着色スプレーやマーキングペン、朱墨、有色チョークなどの着色物であって、表面仕上げシート40Aに滲み出し易いインクによりマーキングMが形成されている場合に、面状部材60の表面の一部(マーキングMが滲み出し得る箇所を含む領域)に対して、表面仕上げ構造50が形成される。
【0032】
コンクリート下地10の表面11に付されたマーキングMは、コンクリート下地10の内部に染み込んで染み込み領域Oを形成する。このマーキングMを含んで若干広めの領域に接着剤20が塗布され、滲み出し防止シート30がマーキングMを隠すようにしてコンクリート下地10に貼り付けられている。
【0033】
ここで、滲み出し防止シート30としては、コンクリート下地10から表面仕上げシート40Aへ滲み出そうとするマーキングMに対する遮蔽性能に優れた、金属シートの適用が好ましい。
【0034】
金属シート30には、ステンレスシートや亜鉛シート等、様々な金属素材のシートが適用できるが、アルミニウムシートを適用することにより、アルミニウムは金属の中でも軽量で変形性や耐食性に優れ、材料コストも比較的安価であることから、マーキングの滲み出し防止性と施工性、及び経済性に優れた表面仕上げ構造50を形成することができる。
【0035】
図示例では、マーキングMを含むコンクリート下地10の表面11に接着剤20が塗布され、滲み出し防止シート30が貼り付けられているが、下面に粘着剤が予め設けられている金属シートを適用してもよく、この場合は接着剤20の塗布は不要になる。
【0036】
滲み出し防止シート30の上面に別途の接着剤20が塗布され、表面仕上げシート40が貼り付けられることにより、表面仕上げ構造50が形成される。
【0037】
ここで、表面仕上げシート40としては、ビニル系シートが適用でき、ビニル系シートの中でも使用頻度の高い塩化ビニルシートが適用されることにより、可及的に安価で、かつ、外観意匠的にバリーションの豊富な面状部材の表面仕上げ構造50を形成できる。
【0038】
面状部材60において、マーキングMによる表面仕上げシート40への滲み出しの懸念がない一般領域では、コンクリート下地10の表面11に接着剤20Aが塗布され、その上に表面仕上げシート40Aが貼り付けられる。
【0039】
図示する面状部材の表面仕上げ構造50によれば、コンクリート下地10の表面11にあるマーキングMを隠すようにしてコンクリート下地10に付されているマーキングMの表面仕上げシート40への滲み出しを防止する、滲み出し防止シート30を備えていることにより、コンクリート下地10にあるマーキングMを残した状態でマーキングMの表面仕上げシート40への滲み出しを効果的に防止できる、面状部材の表面仕上げ構造50となる。そのため、建物の施工時に、面状部材60のコンクリート下地10に対してマーキングMを施した場合でも、建物の施工時や施工後において、コンクリート下地10の一部を撤去した後に撤去箇所を補修するといった手間のかかる補修施工を不要にできる。
【0040】
一方、
図2に示す面状部材の表面仕上げ構造50Aは、金属シート30のみからなる滲み出し防止シートに代わり、金属シート30とその片面に樹脂フィルムシート31が配設された積層シート32が適用される点において、
図1に示す表面仕上げ構造50と相違する。
【0041】
ここで、樹脂フィルムシート31としては、ポリエチレン(PE)フィルムやポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリスチレン(PS)フィルム等が適用できる。
【0042】
滲み出し防止シートとして積層シート32を適用し、例えば図示例のように樹脂フィルムシート31にてマーキングMを直接隠すことにより、金属シート30が樹脂フィルムシート31にて汚染物質であるマーキングMから防護されることで、金属シート30の耐食性が向上し、金属シート30によるマーキングMに対する遮蔽性能を長期に亘り維持することができる。
【0043】
ここで、図示例のように金属シート30の片面に樹脂フィルムシート31が配設される形態の他に、金属シート30の両面に樹脂フィルムシート31が配設され、金属シート30が二枚の樹脂フィルムシート31にて完全に防護されている形態の積層シートが適用されてもよい。
【0044】
[実施形態に係る建物の面状部材の表面仕上げ構造の補修方法]
次に、
図3乃至
図6を参照して、実施形態に係る建物の面状部材の表面仕上げ構造の補修方法の一例について説明する。ここで、
図3乃至
図6は順に、実施形態に係る建物の面状部材の表面仕上げ構造の補修方法の一例の工程図である。
【0045】
図3に示すように、建物の施工後に、面状部材60の一例である床の表面の一部において、建物の施工の際にコンクリート下地10の表面に付されたマーキングMが滲み出している、滲み出しマーキングM'が検出される。
【0046】
この滲み出しマーキングM'を含む表面仕上げシート40Aの一部を補修するべく、
図4に示すように、滲み出しマーキングM'の汚染源となるマーキングMを含む若干広めの領域の表面仕上げシート40Aを切断して、切断された表面仕上げシート40Aを剥がす(剥がし工程)。
【0047】
次に、
図5に示すように、露出したマーキングMを隠すようにして、滲み出し防止シート30をコンクリート下地10の表面11に貼り付ける(目隠し工程)。
【0048】
次に、
図6に示すように、表面仕上げシート40Aが剥がされている箇所に対して、新たな表面仕上げシート40を貼り付けることにより、コンクリート下地10の表面11にあるマーキングMを隠すようにしてコンクリート下地10に貼り付けられた滲み出し防止シート30と、滲み出し防止シート30の表面に貼り付けられた表面仕上げシート40とを備えた表面仕上げ構造50を形成する(補修仕上げ工程)。
【0049】
図示例の表面仕上げ構造の補修方法によれば、マーキングMが染み込んでいるコンクリート下地10の撤去施工と撤去箇所の補修施工といった手間のかかる施工を不要にできることから、簡易かつ効率的に面状部材の表面仕上げ構造50を補修することが可能になる。
【0050】
また、図示を省略するが、建物の新設施工の際に、表面仕上げシート40Aに滲み出し得るマーキングMを滲み出さないようにして、建物の面状部材の表面仕上げ構造を施工する施工方法は、以下の各工程を実行することにより行う。
【0051】
まず、面状部材60を形成するコンクリート下地10の表面にあるマーキングMを隠すようにして、マーキングMの表面仕上げシート40Aへの滲み出しを防止する、滲み出し防止シート30、32を下地に貼り付ける(目隠し工程)。
【0052】
次に、コンクリート下地10と滲み出し防止シート30,32の表面に表面仕上げシート40を貼り付け、表面仕上げ構造50を施工する(施工仕上げ工程)。
【0053】
この表面仕上げ構造の施工方法によっても、マーキングMが染み込んでいるコンクリート下地10の撤去施工と撤去箇所の補修施工といった手間のかかる施工を不要にできることから、簡易かつ効率的に面状部材の表面仕上げ構造50を施工することが可能になる。
【0054】
上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0055】
10:下地(コンクリート下地)
11:表面
20,20A:接着剤
30:滲み出し防止シート(金属シート)
31:樹脂フィルムシート
32:滲み出し防止シート(積層シート)
40,40A:表面仕上げシート(塩化ビニルシート)
50,50A:面状部材の表面仕上げ構造(表面仕上げ構造)
60:面状部材
M:マーキング
M':滲み出しマーキング
O:染み込み領域