(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/15 20060101AFI20250401BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
A61B3/15
A61B3/10
(21)【出願番号】P 2021516303
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2020017833
(87)【国際公開番号】W WO2020218576
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-04-12
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】ワング ゼングォ
(72)【発明者】
【氏名】マオ ツァイシン
(72)【発明者】
【氏名】大森 和宏
(72)【発明者】
【氏名】藤野 誠
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-246071(JP,A)
【文献】特開2012-055337(JP,A)
【文献】特開2016-049255(JP,A)
【文献】特開2000-287928(JP,A)
【文献】特開2005-168941(JP,A)
【文献】特開平04-263833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼と対向するための対物レンズと、
前記対物レンズと前記被検眼とのアライメント測定を行うために前記被検眼にアライメント光を照射するためのアライメント光発光部と、
前記アライメント光が前記被検眼で反射されたアライメント反射光を受光するためのアライメント反射光受光部と、
角膜反射光を受光するための前眼部カメラと、
前記前眼部カメラと前記対物レンズの間に位置し、前記前眼部カメラを保持するホルダと、
前記対物レンズと前記ホルダの間に、回転可能に支持される複数のフィルタを有するフィルタレボルバと、
を備える眼科装置であって、
前記ホルダは、前記前眼部カメラに前記角膜反射光を透過するための撮像用透過部と、前記アライメント光発光部からの前記アライメント光を透過するための第1光透過部と、前記被検眼からの前記アライメント反射光を透過するための第2光透過部と、を備え、
前記アライメント光は、前記第1光透過部を通過し、前記対物レンズを介して前記被検眼の角膜表面に対して斜め方向から入射し、
前記アライメント反射光は、前記対物レンズを介して、前記第2光透過部を透過して前記アライメント反射光受光部にて受光され、
前記撮像用透過部及び前記前眼部カメラは、前記対物レンズの光軸方向に沿って配置されており、
前記角膜反射光は、前記対物レンズに入射し、前記撮像用透過部を透過して前記前眼部カメラにて受光され
、
前記フィルタレボルバは、前記フィルタレボルバが回転することにより、前記複数のフィルタのうちの1つを前記前眼部カメラの光軸に合わせて配置することができ、
前記フィルタレボルバは、複数の切り欠き部を有し、前記フィルタを少なくとも2つの前記切り欠き部の間に有しており、
前記切り欠き部、前記第1光透過部及び前記第2光透過部は重なる位置に配置される、
眼科装置。
【請求項2】
前記ホルダと、前記アライメント光発光部と、前記アライメント反射光受光部と、は一体に構成される請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記ホルダは、レンズにより前記第1光透過部及び/又は前記第2光透過部を構成する請求項1又は2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記ホルダは、開口として形成される前記第1光透過部及び/又は前記第2光透過部を備える請求項1又は2に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記ホルダは、光を選択的に透過させるフィルタ部材を前記第1光透過部及び/又は前記第2光透過部に備える請求項1又は2に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記ホルダと、前記前眼部カメラと、は一体に構成される請求項1から5のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記ホルダは、レンズにより構成される前記撮像用透過部を備える請求項1から6のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項8】
前記ホルダは、開口として形成される前記撮像用透過部を備える請求項1から6のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項9】
前記ホルダは、光を選択的に透過させるフィルタ部材を前記撮像用透過部に備える請求項1から6のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項10】
第1の照明光源から照射される照明光を、前記被検眼の角膜に前記対物レンズの光軸中心と重なる光軸で照射するための第1の照明光学系を更に備え、
前記第1の照明光学系は、単一の光源のみを有する請求項1から
9のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項11】
前記単一の光源は、砲弾型LEDである請求項
10に記載の眼科装置。
【請求項12】
被検眼の角膜に照明光を照射するための第1の照明光源と、
前記被検眼と前記対物レンズの相対位置を調整するために前記対物レンズの位置を調整可能なアライメント調整部と、
前記第1の照明光源とは異なる光源からなる固視灯と、
を備える眼科装置であって、
前記固視灯は、前記対物レンズを介して前記被検眼の網膜に合焦する光を照射する請求項1から
11のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項13】
第1の照明光源から照射される照明光を、前記被検眼の角膜に前記対物レンズの光軸中心と重なる光軸で照射するための第1の照明光学系と、
第2の照明光源から照射される照明光を、被検眼の角膜に前記対物レンズの光軸中心と異なる光軸中心で照射するための第2の照明光学系と、
前記第1の照明光源と前記第2の照明光源を制御するための制御部と、
を更に備え、
前記制御部は、前記第1の照明光源と、前記第2の照明光源を切り替えて照明光を照射可能とする請求項1から
12のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項14】
前記第2の照明光源は、前記被検眼の角膜に対して、対物レンズを介さずに照明光を照射する請求項
13に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は眼科装置に係り、詳しくは被検眼の前眼部の状態と涙液層の状態を検査する眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検眼の角膜に照明光を投光し、前眼部の状態と被検眼角膜の涙液層によって形成される干渉像を観察することで、ドライアイ等の診断に使用される眼科装置が知られている。
【0003】
診断を行う際には、眼科装置と被検眼が正確に所定位置関係にないと測定誤差が大きくなる。そのため、一般的に、眼科装置に前記の位置関係が正確になっているか否かを検出するアライメント測定系が設けられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば眼科装置が、前眼部を撮影するための前眼部観察光学系と、涙液層を測定するための角膜測定光学系を備え、前眼部画像と涙液画像を観察撮影可能とする場合に、アライメント測定系と、撮像光学系や角膜測定光学系との配置関係により、眼科装置全体が大きくなる場合がある。
【0006】
本開示はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、アライメントの検出精度を高めながら小型化した眼科装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の眼科装置は、被検眼と対向する対物レンズと、前記対物レンズと前記被検眼とのアライメント測定を行うために前記被検眼にアライメント光を照射するためのアライメント光発光部と、前記アライメント光が前記被検眼で反射されたアライメント反射光を受光するためのアライメント反射光受光部と、角膜反射光を受光するための前眼部カメラと、前記前眼部カメラと前記対物レンズの間に位置し、前記前眼部カメラを保持するホルダと、を備える眼科装置であって、前記ホルダは、撮像用透過部と、前記アライメント光発光部からの前記アライメント光を透過するための第1光透過部と、前記被検眼からの前記アライメント反射光を透過するための第2光透過部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、アライメントの検出精度を高めながら小型化した眼科装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第1の実施形態に係る眼科装置の光学系の概略図である。
【
図2】本開示の第1の実施形態に係る眼科装置の光学系の要部を示す斜視図である。
【
図3】本開示の第1の実施形態のバリエーションに係る眼科装置の光学系の概略図である。
【
図4】本開示の第2の実施形態に係る眼科装置の光学系の要部を示す斜視図である。
【
図5】本開示の第2の実施形態に係るフィルタレボルバを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本開示の第1の実施形態に係る眼科装置1の光学系の概略図である。眼科装置1の光学系は、前眼部観察光学系1aと、角膜測定光学系1bと、第1の照明光学系1cと、第2の照明光学系1dと、を備える。
【0011】
前眼部観察光学系1aは、本開示の第1レンズ群18を備える。また、前眼部観察光学系1aは、第1レンズ群18の光軸方向に沿って配置された第3ハーフミラー17、撮像用レンズ19a、及び前眼部カメラ20を備える。
【0012】
第1レンズ群18は、所謂対物レンズである。なお、本実施形態では、対物レンズ(第1レンズ群18)が複数のレンズ(18a、18b)で構成されているが、対物レンズが1つのレンズのみで構成されていてもよい。なお、この第1レンズ群18は、後述する第1の照明光学系1cから出射された照明光L1を、第3ハーフミラー17を介して被検眼Eの角膜Eaの角膜表面に照射する。また、第1レンズ群18には、角膜表面で反射された照明光の角膜反射光R1が入射される。この角膜反射光R1は、第1レンズ群18から第3ハーフミラー17に入射する。
【0013】
第3ハーフミラー17は、第1の照明光学系1cから入射した照明光L1の一部を第1レンズ群18に向けて反射する。また、第3ハーフミラー17は、第1レンズ群18から入射した角膜反射光R1の一部(R3)を透過して撮像用レンズ19aに向けて出射する且つ、角膜反射光R1のうち、一部の光(R2)を後述の第2レンズ群16に向けて反射する。
【0014】
撮像用レンズ19aは、第3ハーフミラー17から入射した角膜反射光R3を透過して前眼部カメラ20に向けて出射する。前眼部カメラ20は、後述するホルダ25に相対的に保持固定される。前眼部カメラ20は、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)型又はCCD(Charge Coupled Device)型の撮像素子を有しており、撮像用レンズ19aから入射した角膜反射光R3を撮像して被検眼Eの前眼部の観察像(以下、前眼部観察像という)の撮像信号を、制御部10へ出力する。
【0015】
第1の照明光学系1cは、第1の照明光源11を備える。また、第1の照明光学系1cは、第1の照明光源11から出射される照明光L1の光路上に沿って配置されたレンズ12、フィルタ13、第1ハーフミラー14、第2ハーフミラー15、及び第2レンズ群16を備える。また、第1の照明光学系1cは、第3ハーフミラー17及び第1レンズ群18を前眼部観察光学系1aと共有する。このように、第1の照明光学系1cは、第3ハーフミラー17で前眼部観察光学系1aから分岐した光路を形成する。
【0016】
第1の照明光源11は、光を出射する光源である。第1の照明光源11は、例えば、白色光を出射するLED(light emitting diode)光源及びハロゲンランプ等が用いられ、レンズ12に向けて照明光L1として白色光を出射する。あるいは、他波長のLEDやレーザー光源およびその組み合わせであってもよい。レンズ12は、第1の照明光源11から入射した照明光L1をフィルタ13に向けて出射する。フィルタ13は、レンズ12から入射した照明光L1の光量あるいは波長分布またはその両方を調整し、調整後の照明光L1を第1ハーフミラー14に向けて出射する。なおLEDは、砲弾型LEDを用いることができる。またLEDに変えて単一のハロゲンランプ等を用いてもかまわない。
【0017】
第1ハーフミラー14は、フィルタ13から入射した照明光L1の一部を透過して第2ハーフミラー15に向けて出射する。また、後述の第2レンズ群16から第2ハーフミラー15を介して入射する角膜反射光R3の一部を後述の角膜測定光学系1bに向けて反射する。
【0018】
第2ハーフミラー15及び第2レンズ群16は、第1ハーフミラー14から入射した照明光L1を既述の第3ハーフミラー17に向けて出射する。また、第3ハーフミラー17から入射した角膜反射光R3を第1ハーフミラー14に向けて出射する。
【0019】
このように、第1の照明光源11から出射された照明光L1は、レンズ12から第3ハーフミラー17を経た後、第1レンズ群18を通して角膜Eaの角膜表面に照射される。これにより、角膜表面で反射された照明光L1の角膜反射光R1が第1レンズ群18に入射する。
【0020】
角膜測定光学系1bは、第1ハーフミラー14を介して第1の照明光学系1cから分岐した光路を形成する。角膜測定光学系1bは、第1レンズ群18から第1ハーフミラー14までを第1の照明光学系1cと共有すると共に、絞り21、レンズ22、及び干渉像撮像用カメラ23を備える。
【0021】
絞り21及びレンズ22は、第1ハーフミラー14から入射した角膜反射光R3を干渉像撮像用カメラ23に向けて出射する。
【0022】
干渉像撮像用カメラ23は、CMOS型又はCCD型の撮像素子を有しており、レンズ22から入射した角膜反射光R3を撮像して、角膜反射像の撮像信号を制御部10に出力する。
【0023】
固視灯24は、被験者の視線を誘導することで被検眼Eの位置を固定し、被検眼Eの状態を正確に観察撮影するための光源である。固視灯24は、LED(light emitting diode)光源又はハロゲンランプ等を用いることができる。固視灯24から出射された光L2は、第2ハーフミラー15、第2レンズ群16を透過し、第3ハーフミラー17で反射され、第1レンズ群18を介して被検眼Eに入射する。すなわち、後述するアライメント調整系に含まれる第1レンズ群18を介して固視灯24からの光L2を照射することができる。
【0024】
アライメント調整系は、第1レンズ群18を移動可能とするサーボモータ等のアライメント調整部40を含む機構部である。制御部10に電気的に接続されるサーボモータを駆動し第1レンズ群18を移動することで、被検眼Eと第1レンズ群18の光軸方向の相対位置の調整を行い、光学系のアライメント調整を行うことができる。すなわち、第1レンズ群18を介して照射される固視灯24の光L2も同時にアライメント調整を行うことができる。それにより、被検眼Eの眼底(網膜)に固視灯24からの光L2を合焦することができる。そのため、前眼部の焦点状態を維持しつつ眼球の動きによる前眼部カメラ20や、干渉像撮像用カメラ23で得られる像のボケを軽減することができる。
【0025】
アライメント測定系は、光てこ方式を用いて被検眼Eと第1レンズ群18の光軸方向のアライメント測定を行う。アライメント調整系は、アライメント測定の結果を用いて第1レンズ群18を移動することにより、被検眼Eと光学系の相対位置の調整(アライメント調整)を行う。アライメント測定系は、撮像用レンズ19aと一体に構成されるホルダ25と前眼部カメラ20の近傍に配置されるアライメント光源4a(アライメント光発光部)とアライメント反射光受光部4bとを備え、アライメント測定を行うことができる。アライメント光源4a、アライメント反射光受光部4bはホルダ25と一体又は相対位置が固定されるように形成されている。そのため、アライメントの検出精度を高めることができる。
【0026】
ゴースト除去光源4は、例えばLED(light emitting diode)光源やハロゲンランプ等が用いられ、被検眼Eの角膜Eaの角膜表面に向けて照明光L3を出射することができる。ゴースト除去光源4は、後述する第1レンズ群18の光軸に対してずれた光軸を有する(第2の照明光学系1d)。
【0027】
図2は、本開示の実施形態に係る眼科装置の光学系の要部を示す斜視図である。
図2は、本開示の実施形態に係る眼科装置の前眼部観察光学系1aのうち、被検眼Eと、アライメント光源4a、アライメント反射光受光部4b、対物レンズ18a、前眼部カメラ20及びホルダ25を示す図である。なお
図2は、ホルダ25と、アライメント光源4a、アライメント反射光受光部4b、前眼部カメラ20の位置関係を理解しやすくするために離れた状態で示している。ホルダ25は、撮像用透過部19と、アライメント光源4a用の第1光透過部26、第2光透過部27が設けられている。
図2では、撮像用透過部19は、角膜反射光R3を透過する撮像用レンズ19aを備える。第1光透過部26は、アライメント光源4aから出射されるアライメント光A1を透過するためのホルダ25に形成される開口である。また、第2光透過部27は、アライメント反射光A2を透過するためのホルダ25に形成される開口である。このように、アライメント光源4aから出射されるアライメント光A1は第1光透過部26を透過し、被検眼Eの角膜Eaで反射されたアライメント反射光A2が第2光透過部27を透過し、アライメント反射光受光部4bで受光することができる。このようにホルダ25に、第1光透過部26、第2光透過部27、撮像用透過部19が形成され、さらにアライメント光源4a、アライメント反射光受光部4bをホルダ25に固定することで、ホルダ25とアライメント光源4a、アライメント反射光受光部4bを一体のモジュールとして取り扱うことができる。ここで、アライメント反射光受光部4bは、CCD、CMOS、PSD(Position Sensitive Detector)などのリニアセンサーあるいはエリアセンサーであってもよい。あるいは、受光領域を複数個持ったものでもよい。
【0028】
以下に、より具体的に説明する。アライメント光源4aは、アライメント光A1を照射する。照射されたアライメント光A1は第1光透過部26を通過し、第1レンズ群18を介して、角膜Eaの角膜表面に対して斜め方向から入射する。被検眼Eに対して第1レンズ群18が適正にアライメントされている場合に、アライメント反射光受光部4bは、角膜Ea表面で反射されたアライメント反射光A2を、第2光透過部27を透過してアライメント反射光受光部4bの所定の位置で受光する。すなわち、角膜Eaの表面で反射されたアライメント反射光A2は、第1レンズ群18を介してアライメント反射光受光部4bで受光可能となる。アライメント反射光受光部4bは、アライメント反射光A2の受光信号を制御部10へ出力する。これにより、制御部10は、アライメント反射光受光部4bがアライメント反射光A2を適切な位置で受光しているか否かに基づき、被検眼Eと第1レンズ群18が適正にアライメントされているか否かを判定することができる。
【0029】
アライメント調整の精度を高めるために、アライメント光源4aとアライメント反射光受光部4bの相対位置を精度よく配置することは重要である。ホルダ25とアライメント光源4a、アライメント反射光受光部4bを一体のモジュールとして取り扱うことができるため、アライメント光源4aとアライメント反射光受光部4bの相対位置の精度を高めることができる。また、一体のモジュールとして構成するため、ホルダ25とアライメント光源4a、アライメント反射光受光部4bを別々に配置する場合に比較して、小型化を図ることができる。
【0030】
また、ホルダ25と前眼部カメラ20を、一体のモジュールとして構成してもよい。ホルダ25を介して、前眼部カメラ20とアライメント光源4a、アライメント反射光受光部4bが一体のモジュールとなるため、前眼部カメラ20に対するアライメント精度をより高めることができる。さらに、眼科装置1の製造時において、前眼部カメラ20とアライメント光源4a、アライメント反射光受光部4bの組付け精度(相対位置)を高める工程負荷を低減することができる。
【0031】
なお、アライメント調整系を、第1レンズ群18を移動させる構成として説明したが、眼科装置1の全体を移動させることにより、被検眼E(人)と眼科装置1の相対位置を移動させても構わない。当該移動の制御は、制御部10が行う。
【0032】
制御部10は、入力された角膜反射光R2の画像データ(角膜反射像)に基づき、角膜反射像の各位置の干渉像の波長特性を検出することで、角膜表面の各位置における涙液層の厚みを検出することができる。ここで涙液層とは、油層(脂質層)、水層、または、ムチン質、それぞれの層、あるいはそれら複数の層を組み合わせた層のことを示す。
【0033】
以上説明したように、ホルダ25は、アライメント光源用の第1光透過部26、第2光透過部27が設けられているため、ホルダ25と、アライメント光源4a、アライメント反射光受光部4bは一体に構成されるモジュールとして取り扱うことができ、アライメントの検出精度を高めながら小型化を図ることができる。アライメントの検出精度を高めることにより、前眼部カメラ20が角膜反射光R3を撮像して被検眼Eの前眼部の適正な観察像を得ることができる。また、干渉像撮像用カメラ23が撮像する角膜反射光R2を適正なものとし、涙液層によって形成される干渉縞を正確に観察することができる。
【0034】
なお、撮像用透過部19は、ホルダ25に開口として形成されてもよいし、角膜反射光R3を選択的に透過するフィルタ部材を備えていても構わない。また、第1光透過部26と、第2光透過部27は、レンズを備えてもよいし、光を選択的に透過するフィルタ部材を備えても構わない。
【0035】
ここで、本開示に係る第1の照明光源11は、単一のLEDからなる光源である。そのため、第1の照明光源11が出射した照明光L1は第1レンズ群18を通って角膜Eaに到達した場合でも、単一の光源の形状が投影される。
【0036】
これに対し、比較例として例えば第1の照明光源11として、3×3の9個のLEDがマトリックス配置されてなる複数の光源を用いた場合について説明する。比較例に係る第1の照明光源11が出射した照明光は第1レンズ群18を通って角膜Eaに到達した場合、複数のLED点光源からの光が第1レンズ群18で集光されることで複数のLEDに隣接する場所に発生する暗い部分、すなわち縞状の照度差が、角膜Ea上にぼんやり見える縞状として投影されることになる。そのため、角膜からの角膜反射光R1にも、この縞状の照度差が生じることとなる。その結果、被検眼の角膜の照明に濃淡が生じ、角膜表面の涙液の膜厚を正確に測定することができなくなるおそれがある。
【0037】
これに対し、本開示によれば、単一の光源による照明により角膜の測定を行うことで、角膜に縞状の照度差を生じることがなく、角膜表面の涙液の膜厚を正確に測定することができる。
【0038】
また、アライメント調整系の光学系である第1レンズ群を介して固視灯24からの光L2を重畳して照射することにより、焦点状態を維持することで眼球の動きによるボケを軽減させ、被検眼Eの角膜Eaの涙液層によって形成される干渉縞を正確に観察することを可能とする。
【0039】
また、制御部10は、第1の照明光源11と、ゴースト除去光源4(第2の照明光源)と、を切り替えて照明光を照射することができる。そのため、検査に応じて、ゴーストを低減するモードと、被検眼Eの中心に対して光を照射するモードを切り替えることができる。
【0040】
ゴースト除去光源4から照明光L3を照射することにより、照明光L3が前眼部で反射して生じるゴーストの位置を、前眼部カメラ20の光軸からずらすことができる。よって、ゴーストが前眼部カメラ20の視野内に入ることを抑制することができる。そのため、被検眼Eの中心付近の角膜や涙液層の正確な検査や、より正確な角膜像の取得が可能となる。
【0041】
なお、
図3に示すように、ゴースト除去光源4(第2の照明光源)から照射される照明光L3を、被検眼Eの角膜Eaに対して、下方から照射する光軸を有しても構わない。また、ゴースト除去光源4を、第1レンズ群18の中心光軸に対し、水平方向から照射する光軸を有するように構成しても構わない。
【0042】
(第2の実施形態)
図4は、本開示の第2の実施形態に係る眼科装置1の光学系の要部を示す斜視図である。第1の実施形態との違いは、ホルダ25と対物レンズ18aの間にフィルタレボルバ31が配置されている点である。
【0043】
図5は、フィルタレボルバ31を正面から見た概略図である。フィルタレボルバ31は、略円形状から周囲4カ所を切り欠いた(切り欠き部34)略十字形状である。フィルタレボルバ31は、4種類の撮像系フィルタ32が取り付けられており、回転中心33を中心として回転することができる。4種類の撮像系フィルタ32のうち1つは、撮像用レンズ19aの光軸上となるように配置される。4種類のフィルタは、透過する光の波長が異なるフィルタで構成されており、フィルタレボルバ31を回転させることで、撮像用レンズ19aを介して前眼部カメラ20へ透過する角膜反射光R3の波長を選択することができる。レボルバ透過部35は、フィルタレボルバ31の切り欠き部34によって構成される領域である。隣接する2つのレボルバ透過部35の間には撮像系フィルタ32が配置される。すなわち、フィルタレボルバ31は、複数の切り欠き部34を有し、撮像系フィルタ32は、少なくとも2つの切り欠き部34の間に構成される。なお、フィルタレボルバの形状は略十字形状に限られることはなく、略Y字形状であってもよいし、他の形状でも構わない。また、フィルタの種類は4種類に限られないし、フィルタの数は4つに限られない。
【0044】
図4において、フィルタレボルバ31を正面から見た場合に、ホルダ25の第1光透過部26、第2光透過部27とレボルバ透過部35は、重なる位置に配置される。そのため、アライメント光源4aから照射されるアライメント光は、ホルダ25に形成される第1光透過部26及びレボルバ透過部35を透過し、第1レンズ群18(対物レンズ18a)を介して、角膜Eaの角膜表面に対して斜め方向からアライメント光A1として入射する。アライメント反射光受光部4bは、被検眼Eに対して第1レンズ群18がアライメントされている場合に、角膜Ea表面で反射されたアライメント光のアライメント反射光A2を、レボルバ透過部35及び第2光透過部27を透過してアライメント反射光A2として受光する。すなわち、角膜Ea表面で反射されたアライメント反射光A2は、第1レンズ群18を介してアライメント反射光受光部4bが受光可能となる。これにより、アライメント反射光受光部4bがアライメント反射光A2を受光しているか否かに基づき、被検眼Eと第1レンズ群18がアライメントされているか否かを判定することができる。
【0045】
以上の説明したように、撮像系フィルタ32を備えるフィルタレボルバ31は、アライメント光A1、アライメント反射光A2を透過させる切り欠き部34で形成されるレボルバ透過部35が構成される。そのため、撮像系フィルタ32を、撮像用レンズ19a及び前眼部カメラ20の光軸に配置した場合、フィルタレボルバ31によってアライメント光A1、アライメント反射光A2を遮ることがない。そのため、フィルタレボルバ31と、前眼部カメラ20とアライメント光源4a、アライメント反射光受光部4bを近接させることができ、眼科装置全体を小型化することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 :眼科装置
1a :前眼部観察光学系
1b :角膜測定光学系
1c :第1の照明光学系
1d :第2の照明光学系
4 :ゴースト除去光源
4a :アライメント光源
4b :アライメント反射光受光部
10 :制御部
11 :照明光源
12 :レンズ
13 :フィルタ
14 :第1ハーフミラー
15 :第2ハーフミラー
16 :第2レンズ群
17 :第3ハーフミラー
18 :第1レンズ群
18a :対物レンズ
19 :撮像用透過部
19a :撮像用レンズ
20 :前眼部カメラ
21 :絞り
22 :レンズ
23 :干渉像撮像用カメラ
24 :固視灯
25 :ホルダ
26 :第1光透過部
27 :第2光透過部
31 :フィルタレボルバ
32 :撮像系フィルタ
33 :回転中心
34 :切り欠き部
35 :レボルバ透過部
40 :アライメント調整部