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特許7658107電流検出回路及びそれを備えた負荷駆動制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】電流検出回路及びそれを備えた負荷駆動制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20250401BHJP
   G05F 1/10 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
G01R19/00 B
G01R19/00 L
G01R19/00 N
G05F1/10 301B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021024535
(22)【出願日】2021-02-18
(65)【公開番号】P2022126452
(43)【公開日】2022-08-30
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 忠男
(72)【発明者】
【氏名】曽根原 理仁
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-536032(JP,A)
【文献】特開2014-021090(JP,A)
【文献】特開2017-142163(JP,A)
【文献】特開平10-022800(JP,A)
【文献】特開2013-102283(JP,A)
【文献】特開2022-056872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 19/00-19/32、
G05F 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバ回路から負荷に出力される電流を検出する電流検出回路であって、
前記ドライバ回路の出力と前記負荷との間に設けられた検出抵抗と、
第1電源と仮想接地電位との間で動作し、当該仮想接地電位との間に所定の電圧差を持つ第2電源を生成する電源供給回路と、
前記第2電源と前記仮想接地電位との間で動作し、前記検出抵抗に生じる電圧に対応する検出信号を生成する信号処理回路とを備え、
前記仮想接地電位を供給するためのノードは、前記ドライバ回路の出力と前記検出抵抗との間に接続されている、ことを特徴とする電流検出回路。
【請求項2】
前記電源供給回路は、前記第2電源に加えて、前記第2電源とは分離され、前記仮想接地電位との間に所定の電圧差を持つ第3電源を生成し、
前記信号処理回路は、
前記第2電源と前記仮想接地電位との間で動作するアナログ回路と、
前記第3電源と前記仮想接地電位との間で動作するデジタル回路とを備える、ことを特徴とする請求項1に記載の電流検出回路。
【請求項3】
前記電源供給回路は、前記第2電源に加えて、前記第2電源とは分離され、前記仮想接地電位との間に所定の電圧差を持つ第3電源を生成し、
前記信号処理回路は、前記検出抵抗に生じた電圧を増幅して出力する増幅器と、前記増幅器の増幅出力信号をデジタル信号に変換するADコンバータとを備え、
前記増幅器及び前記ADコンバータに含まれる連続的な値を出力する回路は、前記第2電源と前記仮想接地電位との間で動作し、
前記ADコンバータに含まれる離散的な2値を出力する回路は、前記第3電源と前記仮想接地電位との間で動作する、ことを特徴とする請求項1に記載の電流検出回路。
【請求項4】
電源供給回路は、前記第1電源と前記仮想接地電位との間で動作し、基準となる電圧を生成する基準電圧生成部と、当該基準となる電圧に基づいて前記第2電源及び前記第3電源を生成する電源分離部とを備え、
前記第2電源と前記第3電源とは、前記信号処理回路よりも前記基準電圧生成部に近い位置で分離される、ことを特徴とする請求項2または3に記載の電流検出回路。
【請求項5】
負荷に電流を出力するドライバ回路と、
前記ドライバ回路から負荷に出力される電流を検出する請求項1から4のいずれか1項に記載の電流検出回路と、
前記電流検出回路の検出結果と、所定の目標電流とに基づいて、前記ドライバ回路を駆動するための制御信号を出力するコントローラとを備える、ことを特徴とする負荷駆動制御装置。
【請求項6】
前記検出抵抗の両端に生じた電圧を増幅する増幅器をさらに備え、
前記検出抵抗の抵抗値は、前記増幅器への入力電位として、前記仮想的接地電位に対するマイナス電位の絶対値が所定の電圧以下となるように設定されている、ことを特徴とする請求項1に記載の電流検出回路。
【請求項7】
前記検出抵抗の両端に生じた電圧を増幅する増幅器をさらに備え、
前記増幅器は、完全差動方式の増幅器である、ことを特徴とする請求項1に記載の電流検出回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、電流検出回路及びそれを備えた負荷駆動制御装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された負荷(例えば、ソレノイドバルブ)に駆動電流を出力するドライバIC(負荷駆動制御装置)において、駆動電流を高精度に一定にコントロールすることが求められる。駆動電流の制御方法としては、検出抵抗を用いて駆動電流を検出し、その検出電流に基づいたフィードバック制御をする技術が知られている。このフィードバック制御において、駆動電流を高精度に検出することが極めて重要である。
【0003】
特許文献1には、ソレノイドバルブとソレノイドドライバとの間に設けられた検出抵抗に流れる電流の値に基づいて、自動車のクラッチの開閉を制御するソレノイドバルブに対する電流供給を制御する電子制御ユニットが示されている。
【0004】
また、特許文献2では、その実施例9(図16参照)において、相電流経路に電流検出手段を挿入し、電流検出手段の下流側の電位を電流検出のための増幅手段(増幅器)及びアナログ/デジタル変換手段(ADコンバータ)のアナログ系仮想的接地電位とした例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-129528号公報
【文献】特許第5188465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、例えば、特許文献1の図3の構成において、センス抵抗の差電圧は大きく変動しないが、センス抵抗に生じる電圧の絶対値で見ると電圧変動が大きい。そうすると、出力のコモンモード電圧(N2とN4の平均電圧)に対し、入力のコモンモード電圧(N1とN3の平均電圧)が大きく変動する。ここで、増幅器におけるCMRR(Common-Mode Rejection Ratio)は有限であるため、上記のコモンモードの変動に起因して増幅誤差が発生し、その増幅誤差が電流検知の誤差となってあらわれるという問題がある。
【0007】
特許文献2において、増幅手段(増幅器)とアナログ/デジタル変換手段(ADコンバータ)は、SOI(Silicon on Insulator)基板に形成された絶縁体層で囲まれた領域に設けられている。しかしながら、SOIプロセスは、特殊な工程が必要なため、製造コストが高いという問題がある。
【0008】
また、特許文献2の図16の構成において、電源供給回路で生成されたアナログ電源とアナログ系仮想接地電位との間で動作する回路(例えば、特許文献2の増幅手段12及びアナログ/デジタル変換手段13)に流れる電流は、電流検出手段を介さずに負荷に流れる。この電流検出手段を介さずに負荷に流れる電流は、電流検出手段では検出されないので、その分の検出誤差が生じるという問題がある。
【0009】
ここに開示された技術は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、SOIプロセスを使用することなく、電流検出回路の電流検知誤差をできる限り解消することを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術では、ドライバ回路から負荷に出力される電流を検出する電流検出回路を対象として、前記ドライバ回路の出力と前記負荷との間に設けられた検出抵抗と、第1電源と仮想接地電位との間で動作し、当該仮想接地電位との間に所定の電圧差を持つ第2電源を生成する電源供給回路と、前記第2電源と前記仮想接地電位との間で動作し、前記検出抵抗に生じる電圧に対応する検出信号を生成する信号処理回路とを備え、前記仮想接地電位を供給するための仮想接地線は、前記ドライバ回路の出力と前記検出抵抗との間に接続されていることを特徴とする。
【0011】
この態様によると、第1電源と仮想接地電位との間で動作する電源供給回路で第2電源を生成し、この第2電源と仮想接地電位との間で信号処理回路を動作させるので、コモンモードの変動による増幅誤差が発生しにくくなる。さらに、仮想接地線をドライバ回路の出力と検出抵抗との間に接続しているので、検出抵抗には、ドライバ回路の出力電流に加えて信号処理回路の消費電流が流れる。これにより、特許文献2の技術と比較して、電流検知誤差を小さくすることができる。
【0012】
上記電流検出回路において、前記電源供給回路は、前記第2電源に加えて、前記第2電源と互いに分離され、前記仮想接地電位との間に所定の電圧差を持つ第3電源を生成し、前記信号処理回路は、前記第2電源と前記仮想接地電位との間で動作するアナログ回路と、前記第3電源と前記仮想接地電位との間で動作するデジタル回路とを備える、としてもよい。
【0013】
上記電流検出回路において、前記電源供給回路は、前記第2電源に加えて、前記第2電源と互いに分離され、前記仮想接地電位との間に所定の電圧差を持つ第3電源を生成し、前記信号処理回路は、前記検出抵抗に生じた電圧を増幅して出力する増幅器と、前記増幅器の増幅出力信号をデジタル信号に変換するADコンバータとを備え、前記増幅器及び前記ADコンバータに含まれる連続的な値を出力する回路は、前記第2電源と前記仮想接地電位との間で動作し、前記ADコンバータに含まれる離散的な2値を出力する回路は、前記第3電源と前記仮想接地電位との間で動作する、としてもよい。
【0014】
アナログ回路用の第2電源と、デジタル回路用の第3電源とに分離して供給することで、各電源の供給対象回路の規模を小さくすることができる。同様に、連続的な値を出力する回路用の第2電源と、離散的な2値を出力する回路用の第3電源とに分離して供給することで、それぞれの電源から電源供給する回路の規模を小さくすることができる。これにより、付加される固定電源間の容量が少なくなり、追従性を改善することができる。すなわち、SOIプロセスを使用することなく、回路構成の工夫により電流検出回路の電流検知誤差を解消することができる。
【0015】
上記電流検出回路において、電源供給回路は、前記第1電源と前記仮想接地電位との間で動作し、基準となる電圧を生成する基準電圧生成部と、当該基準となる電圧に基づいて前記第2電源及び前記第3電源を生成する電源分離部とを備え、前記第2電源と前記第3電源とは、前記信号処理回路よりも前記基準電圧生成部に近い位置で分離されるとしてもよい。
【0016】
これにより、第2電源及び第3電源において、他電源の電源線から受ける影響(例えば、抵抗成分の影響)をできる限りなくすことができる。
【0017】
ここに開示された技術の他の態様は、負荷駆動制御装置を対象として、負荷に電流を出力するドライバ回路と、前記ドライバ回路から負荷に出力される電流を検出する前述のいずれかの態様に記載の電流検出回路と、前記電流検出回路の検出結果と、所定の目標電流とに基づいて、前記ドライバ回路を駆動するための制御信号を出力するコントローラとを備えることを特徴とする。
【0018】
この態様によると、上記の電流検出回路と同様に、コモンモードの変動による増幅誤差が発生しにくくなるとともに、特許文献2の技術と比較して電流検出回路の電流検知誤差を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、電流検知誤差をできる限り解消した電流検出回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る負荷駆動制御装置(ドライバIC)の概略構成を示す図
図2】電流検出回路の構成を模式的に示すブロック図
図3A】電流検出回路のブロック構成例及び電源供給回路の一例を示す図
図3B】電流検出回路のブロック構成例及び電源供給回路の他の例を示す図
図3C】電流検出回路のブロック構成例及び電源供給回路の他の例を示す図
図3D】電流検出回路のブロック構成例及び電源供給回路の他の例を示す図
図4】シングル方式の増幅器と完全差動方式の増幅器の違いを説明するための図
図5】電流検出回路のブロック構成例及び電源供給回路の他の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る負荷駆動制御装置としてのドライバIC(Integrated Circuit)1の構成を概略的に示す。このドライバIC1は、例えば、車両に搭載され、車両に搭載されたアクチュエータ等の負荷(以下、単に負荷という)を駆動制御するために用いられる。
【0023】
ドライバIC1は、複数のドライバチャネルCH1~CHn(nは2以上の整数)と、複数のドライバチャネルCH1~CHnの全体を統括して制御する主制御部11とを備える。以下の説明では、複数のドライバチャネルCH1~CHnを区別しない場合、ドライバチャネルCHとして説明する。
【0024】
図1では、ドライバチャネルCH1の出力端子PLに、車両に搭載された変速機の油圧調整用のソレノイドバルブ100が接続された例を示す。この場合、ソレノイドバルブ100が制御対象の負荷に相当する。以下、ソレノイドバルブ100が負荷であるとして説明する。なお、負荷は、車両のソレノイドバルブ100に限定されない。例えば、本開示の技術は、民生機器や産業機器におけるアクチュエータ制御、高圧のDC/DCコンバータ等に適用可能である。
【0025】
主制御部11は、車両に搭載されたECU(Electronic Control Unit、図示省略)から各ドライバチャネルCHに接続された負荷の制御情報を受信する。主制御部11は、ECUから受信した制御情報と電流検出回路2で検出された電流に基づいて、各ドライバチャネルCHに対して、それぞれに接続された負荷を電気的に制御するための制御情報を提供する。また、主制御部11は、各ドライバチャネルから異常を示す信号を受信した場合には、ECUにその異常を通知する機能を有する。
【0026】
各ドライバチャネルCHは、チャネル制御部12と、プリドライバ13と、出力端子PLに接続されたソレノイドバルブ100を駆動するためのドライバ回路14と、ドライバ回路14からソレノイドバルブ100に出力される電流を検出するための電流検出回路2とを備える。チャネル制御部12は、主制御部11からの制御情報とチャネルの内部状態とに基づいてドライバ回路14を制御するための制御信号をプリドライバ13に出力する。プリドライバ13は、チャネル制御部12から受信した制御信号に基づいてドライバ回路14を駆動する。チャネル制御部12は、ドライバ回路14を駆動するための制御信号を出力するコントローラの一例である。
【0027】
ドライバ回路14は、電源端子VSHとグランド端子VSLとの間に、N型のハイサイドトランジスタQ1とN型のローサイドトランジスタQ2とが直列接続されたハーフブリッジ回路を備える。電源端子VSHには、例えば、車両のバッテリ(図示省略)に接続され、バッテリからの電源VBが供給される。グランド端子VSLは、例えば、車両のグランドに接地される。
【0028】
ハイサイドトランジスタQ1とローサイドトランジスタQ2とを接続する接続線N1は、検出抵抗Rsの一端に接続される。検出抵抗Rsの他端は、接続線N2を介して出力端子PLに接続される。
【0029】
ハイサイドトランジスタQ1及びローサイドトランジスタQ2は、プリドライバ13からの駆動信号がゲートに与えられ、互いのオン期間が重複しないようにオン/オフ駆動される。これにより、ドライバ回路14から検出抵抗Rsを介してソレノイドバルブ100に駆動電流が供給され、ソレノイドバルブ100が作動制御される。なお、ドライバ回路14の構成は、図1の構成に限定されず、他の構成であってもよい。
【0030】
<電流検出回路>
図2に示すように、電流検出回路2は、ドライバ回路14とソレノイドバルブ100との間に設けられた検出抵抗Rsと、電源端子VCPに供給される電源VCC1と仮想接地電位VIGとの間で動作する電源供給回路4と、検出抵抗Rsに生じる電圧に対応する検出信号DOUTを生成する信号処理回路20とを備える。ドライバ回路14の出力と検出抵抗Rsとを接続する接続線N1には、仮想接地電位VIGを供給するための仮想接地線NIGが接続される。
【0031】
検出抵抗Rsは、ソレノイドバルブ100の駆動状態を検出して、フィードバック制御を行うためのものである。
【0032】
検出抵抗Rsの抵抗値は、任意に設定することができ、特に限定されない。例えば、検出抵抗Rsを0.1[Ω]とし、ドライバ回路14から1[A]の電流が出力されると、検出抵抗の両端には、0.1[V]の差電圧が生じる。
【0033】
電源端子VCPには、電源VCC1として、例えば、チャージポンプ(図示省略)から電源端子VSHより高電圧の電源が供給される。電源VCC1は第1電源の一例である。
【0034】
-信号処理回路-
信号処理回路20は、連続的な値を出力する回路及び/またはアナログ回路に属する第1回路群31と、HIGH/LOWのように離散的な2値を出力する回路及び/またはデジタル回路に属する第2回路群32とを備える。
【0035】
第1回路群31には、例えば、後述する増幅器21、スイッチドキャパシタ222、積分器アンプ223及び電流分配回路27が属する。第1回路群31の各電源ノードは第1電源線LP21に接続され、各グランドノードは仮想接地線NIGに接続される。換言すると、第1回路群31は、第1電源線LP21に供給される後述する系統電源VA2と仮仮想接地電位VIGとの間で動作する。
【0036】
第2回路群32には、例えば、後述する制御信号生成部221、コンパレータ224及びレベルシフタ25が属する。第2回路群32の各電源ノードは第2電源線LP22に接続され、第2回路群32の各グランドノードは仮想接地線NIGに接続される。換言すると、第2回路群32は、後述する系統電源VA3と仮仮想接地電位VIGとの間で動作する。
【0037】
以下において、図2及び図3を参照しつつ、電流検出回路2の具体的な構成例について、より具体的に説明する。
【0038】
図3図3A図3D)には、電流検出回路2のブロック構成例を示し、電源供給回路4については具体的な回路構成例を示している。なお、以下の説明では、図3A図3Dを区別せずに説明する場合、例えば、共通の回路について説明する場合に、単に図3と呼ぶ場合がある。
【0039】
図3A図3Cでは、信号処理回路20は、検出抵抗Rsの両端に生じた電圧を増幅する増幅器21と、増幅器21の出力をデジタル信号に変換するADコンバータ22と、レベルシフタ25と、電流分配回路27とを備える。
【0040】
-増幅器-
増幅器21は、例えば、完全差動方式の増幅器であり、後述する系統電源VA2と仮想接地電位VIGとの間で動作し、検出抵抗Rsの両端に生じた差電圧を増幅して出力する。すなわち、増幅器21の入力には、検出抵抗Rsの上流側ノードに接続された接続線N1と、検出抵抗Rsの下流側ノードに接続された接続線N2が接続される。なお、図3Dに示すように、信号処理回路20において、増幅器21を省略することができ、その場合、接続線N1,N2は、ADコンバータ22に直接接続される。
【0041】
図4は、シングル方式の増幅器と完全差動方式の増幅器の入力電圧に対する出力電圧の違いを説明するための図である。図4において、上段はシングル方式の増幅器の入出力特性を示し、下段は完全差動方式の増幅器の入出力特性を示す。図4上段及び下段において、破線の直線で示すように、入力電圧が0[V]のときに出力電圧が0[V]となる理想的な状態では、シングル方式及び完全差動方式ともに、入力電圧が0[V]以上の領域で、入力電圧に対して出力電圧が線形的に変化している。
【0042】
ここで、本実施形態では、接続線N1を仮想接地電位VIGとしているため、増幅器21への入力電位が仮想接地電位に対してマイナスの電位となる。マイナス電位の絶対値が大きくなると耐圧の問題が発生する場合がある。そこで、例えば、検出抵抗Rsの抵抗値を調整して、マイナス電位の絶対値が、例えば最大300[mV]以下と小さくなるようにするのが好ましい。その際、シングルエンドアンプを用いると、図4上段の破線丸で囲んだ領域のように、入力電位が小さい場合に不感帯が発生する場合がある。これに対し、完全差動方式とすると、0[V]付近の小さな入力電位にも対応が可能となる(図4下段参照)。これにより、増幅器の入力が0[V]付近と小さい場合でも、後段のADコンバータ22に、検出抵抗Rsの両端電圧に応じて精度よく増幅された増幅信号(アナログ検出信号)が入力される。
【0043】
-ADコンバータ-
図3では、ADコンバータ22として、スイッチトキャパシタ型のΔΣ変調器(DSM:Delta-Sigma Modulator)を用いた例を示している。ΔΣ変調器は、例えば、完全差動方式の変調器を使用する。
【0044】
具体的に、ADコンバータ22において、増幅器21から出力されたアナログ検出信号をスイッチドキャパシタ222でサンプリングする。スイッチドキャパシタ222で標本化された電圧は、積分器アンプ223で積分され、コンパレータ224において基準電圧との大小が比較されることでパルス列に変換される。そして、コンパレータ224の出力は、レベルシフタ25において、後段の主制御部11に対応させた信号レベルにレベル変換され、検出信号DOUTとして出力される。制御信号生成部221は、ADコンバータ22の制御のための制御信号を生成するブロックである。また、電流分配回路27は、レベルシフタ25用の電流を生成する回路である。
【0045】
-電源供給回路-
図3A図3Dに共通した構成として、電源供給回路4は、電源VCC1と仮想接地電位VIGとの間で動作し、基準となる電圧(以下、基準電圧VA1という)を生成する基準電圧生成部41と、基準電圧VA1に基づいて互いに分離された系統電源VA2及び系統電源VA3を生成する電源分離部42とを備える。系統電源VA2は、第2電源の一例であり、系統電源VA3は、第3電源の一例である。なお、ドライバ回路14がソレノイドバルブ100に流れる電流を制御する時、仮想接地電位VIGが変動する。これにより、仮想接地電位VIGから所定の電圧差を持つ基準電圧VA1が変動するため、基準電圧VA1から生成される電源についても、基準電圧VA1の変動に応じて変動する。
【0046】
図2に示すように、電源分離部42で生成された一方の系統電源VA2は、第1電源線LP21を介して第1回路群31に供給され、他方の系統電源VA3は、第2電源線LP22を介して第2回路群32に供給される。なお、図3では、信号処理回路20のうち、第1回路群31に属する回路を白抜きで示し、第2回路群32に属する回路にはハッチングを付している。
【0047】
このように、電源供給回路4において、第1回路群31に供給する系統電源VA2と、第2回路群32に供給する系統電源VA3とを分離することにより、電源と固定電圧(基板)間の寄生容量Cf(図面内では破線で示す)の影響を低減させることができる。特に、第1回路群31に供給される電源について、電源変動に対する追従性を高めることが重要である。
【0048】
より詳しくは、信号処理回路にアナログ回路とデジタル回路とが含まれる場合に、そのアナログ回路及びデジタル回路を電源供給回路から出力される単一の電源で動作させると、回路規模や構成によっては電源に付加される固定電源間との容量が大きくなる場合がある。SOIプロセスを用いると上記容量が大きくなる懸念は解消されるが、前述のとおり、SOIプロセスは、特殊な工程が必要なため、製造コストが高いという問題がある。そこで第1回路群31用の電源と、第2回路群32用の電源とに分離して供給することで、各電源の供給対象回路の規模を小さくすることができる。これにより、付加される固定電源間の容量が少なくなり、追従性を改善することができる。
【0049】
以下では、図3A図3Dを参照しつつ、より具体的な構成について説明する。
【0050】
図3Aの構成について)
基準電圧生成部41は、電源端子VCPと仮想接地線NIGとの間に、電流源411と抵抗413とが直列接続された構成となっている。そして、電流源411と抵抗413との間のノードから基準電圧VA1が出力される。
【0051】
電源分離部42は、一方の入力が、電流源411と抵抗413との間のノードに接続され、基準電圧VA1から系統電源VA2を生成するボルテージフォロワ回路421を備える。ボルテージフォロワ回路421の出力は、系統電源VA2を供給するための第1電源線LP21と、ボルテージフォロワ回路421の他方の入力に接続される。
【0052】
第1電源線LP21は、第1回路群31に属する、増幅器21、スイッチドキャパシタ222、積分器アンプ223及び電流分配回路27の電源ノードに接続される。
【0053】
さらに、電源分離部42は、第1電源線LP21から分岐された第2電源線LP22に設けられた分離抵抗422を備える。分離抵抗422は、第1電源線LP21から第2電源線LP22を抵抗分離する。これにより、電源分離部42では、系統電源VA2とは分離され、かつ、仮想接地電位VIGとの間に所定の電圧差を持つ系統電源VA3が生成される。
【0054】
第2電源線LP22は、第1電源線LP21の電源供給回路4に近い根本の位置で分岐されている。また、分離抵抗422は、第2電源線LP22のうちの第1電源線LP21との分岐点の近い位置に設けられている。換言すると、第1電源線LP21と第2電源線LP22との分岐点は、信号処理回路20よりも電源供給回路4側に近い位置で分岐され、分離抵抗421は、信号処理回路20よりも分岐点側に近い位置に設けられている。これにより、第1電源線LP21と第2電源線LP22の共通抵抗成分を減らすことができる。
【0055】
電源供給回路4は、連続的な値を出力する回路のように、相対的に高い精度を要する、いわゆる重要度の高い第1回路群31には、第1電源線LP21を介してボルテージフォロワ回路412の出力電源をそのまま供給する。このようにすることで、第1回路群31への第2回路群32からの影響を抑え、追従性のよい、より安定な電源を重要度の高い第1回路群31へ供給できる。
【0056】
一方で、HIGH/LOWのように離散的な値を出力する回路のように、相対的にそれほど高い精度を要しない、いわゆる重要度の低い第2回路群32には、第1電源線LP21から分岐されて抵抗分離された第2電源線LP22を介して、系統電源VA3を供給するようにしている。
【0057】
図3Bの構成について)
基準電圧生成部41は、図3Aと同じ構成であり、ここでは説明を省略する。
【0058】
電源分離部42は、一方の入力が電流源411と抵抗413との間のノードに接続され、基準電圧VA1から系統電源VA2を生成するボルテージフォロワ回路421と、一方の入力が電流源411と抵抗413との間のノードに接続され、基準電圧VA1から系統電源VA3を生成するボルテージフォロワ回路423とを備える。
【0059】
ボルテージフォロワ回路421の出力は、系統電源VA2を供給するための第1電源線LP21と、ボルテージフォロワ回路421の他方の入力に接続される。
【0060】
ボルテージフォロワ回路423の出力は、系統電源VA3を供給するための第2電源線LP22と、ボルテージフォロワ回路423の他方の入力に接続される。
【0061】
これにより、図3Bにおいても、電源分離部42において、基準電圧に基づいて互いに分離され、かつ、仮想接地電位VIGとの間に所定の電圧差を持つ系統電源VA2と系統電源VA3が生成される。
【0062】
図3Cの構成について)
基準電圧生成部41は、図3Aと同じ構成であり、ここでは説明を省略する。
【0063】
電源分離部42は、一方の入力が電流源411と抵抗413との間のノードに接続されボルテージフォロワ回路424と、電源端子VCPと第1電源線LP21との間に設けられたN型のトランジスタ425と、電源端子VCPと第2電源線LP22との間に設けられたN型のトランジスタ426とを備える。トランジスタ425及びトランジスタ426のゲートには、ボルテージフォロワ回路424の出力が接続される。また、第1電源線LP21(トランジスタ425のソース)がボルテージフォロワ回路424の他方の入力に接続される。
【0064】
これにより、図3Cにおいても、電源分離部42において、基準電圧に基づいて互いに分離され、かつ、仮想接地電位との間に所定の電圧差を持つ系統電源VA2及び系統電源VA3が生成される。
【0065】
図3Dの構成について)
基準電圧生成部41は、電源端子VCPと仮想接地線NIGとの間に、抵抗415とツェナーダイオード416とが直列接続された構成となっている。そして、抵抗415とツェナーダイオード416との間のノードから基準電圧VA1が出力される。
【0066】
電源分離部42は、電源端子VCPと第1電源線LP21との間に設けられたN型のトランジスタ427と、第1電源線LP21から分岐された第2電源線LP22に設けられ、第1電源線LP21から第2電源線LP22を抵抗分離する分離抵抗428とを備える。
【0067】
これにより、図3Dにおいても、電源分離部42において、基準電圧に基づいて互いに分離され、かつ、仮想接地電位との間に所定の電圧差を持つ系統電源VA2及び系統電源VA3が生成される。
【0068】
なお、図3Aと同様に、第1電源線LP21と第2電源線LP22との分岐点は、信号処理回路20よりも電源供給回路4側に近い位置で分岐され、分離抵抗421は、信号処理回路20よりも分岐点側に近い位置に設けられている。これにより、第1電源線LP21と第2電源線LP22の共通抵抗成分を減らすことができる。
【0069】
なお、電源供給回路4の構成は、特に限定さるものではなく、図3A図3D以外の構成であってもよい。図示しないが、例えば、電源分離部42において、3つ以上に分離された系統電源を生成して、それぞれの系統電源を互いに異なる回路に供給してもよい。
【0070】
以上のように、図3の電流検出回路2では、ドライバ回路14の出力と検出抵抗Rsとを接続する接続線N1を仮想接地線NIGに接続し、系統電源VA2と仮想接地電位VIGとの間で第1回路群31を動作させ、系統電源VA3と仮想接地電位VIGとの間で第2回路群32を動作させている。これにより、引用文献1のような従来構成と比較して、増幅器21の入力段と出力段での平均電圧の差を小さくすることができるので、コモンモードの電圧変動に起因する電流検出誤差を小さくすることができる。
【0071】
また、検出抵抗Rsには、ドライバ回路14の出力電流に加えて、増幅器21及びADコンバータ22での消費電流も流れるようになっている。これにより、従来技術(例えば、特許文献2)と比較して、より正確な電流検出を実現することができる。
【0072】
さらに、本実施形態では、電源供給回路4において、内部アナログ電源VAを2系統に分離させて、回路種別に応じて振り分けて供給するようにしている。これにより、各電源に付加される固定電圧との容量を小さくすることができ、SOI(Silicon on Insulator)基板での回路分離のように、高価なプロセスを用いることなく電流検出回路2の検知誤差をできる限り小さくすることができる。
【0073】
なお、電源の寄生容量が小さいと電源変動に対する追従性を高めることができる。本実施形態では、ドライバ回路14がソレノイドバルブ100に流れる電流を制御するとき、仮想接地電位VIGが変動することにより、内部アナログ電源VAが変動するので、電源変動に対する追従性が高いことは、電流検出誤差を解消する上できわめて重要である。
【0074】
(変形例)
図3の例では、電源分離部42において、基準となる電圧に基づいて互いに分離された系統電源VA2及び系統電源VA3を生成するものとしたが、これに限定されない。例えば、図5に示すように、電源分離部42で生成された系統電源VA2を信号処理回路20第1回路群31と第2回路群32の両方に供給する構成としてもよい。
【0075】
より詳しくは、図5の電源供給回路4は、基準電圧生成部41と、電源分離部42とを備える。基準電圧生成部41は、図3Aと同じ構成であり、ここでは説明を省略する。
【0076】
電源分離部42は、一方の入力が電流源411と抵抗413との間のノードに接続されボルテージフォロワ回路429を備える。ボルテージフォロワ回路429の出力は、内部アナログ電源VAを供給するための電源線LP2と、ボルテージフォロワ回路421の他方の入力に接続される。そして、この内部アナログ電源VAが、信号処理回路20の第1回路群31及び第2回路群32に供給される。すなわち、電源供給回路4は、信号処理回路20、すなわち、増幅器21、ADコンバータ22、レベルシフタ25及び電流分配回路27に内部アナログ電源VAを供給する。
【0077】
図5の電流検出回路2においても、図3と同様に、ドライバ回路14の出力と検出抵抗Rsとを接続する接続線N1を仮想接地線NIGに接続し、信号処理回路20を内部アナログ電源VAと仮想接地電位VIGとの間で動作させている。これにより、引用文献1のような従来構成と比較して、増幅器21の入力段と出力段での平均電圧の差を小さくすることができるので、コモンモードの電圧変動に起因する電流検出誤差を小さくすることができる。
【0078】
また、検出抵抗Rsには、ドライバ回路14の出力電流に加えて、増幅器21及びADコンバータ22での消費電流も流れるようになっている。これにより、従来技術(例えば、特許文献2)と比較して、より正確な電流検出を実現することができる。
【0079】
以上をまとめると、本開示のドライバICは、ソレノイドバルブ100に電流を出力するドライバ回路14と、ドライバ回路14からソレノイドバルブ100に出力される電流を検出する電流検出回路2と、電流検出回路2の検出結果と、所定の目標電流とに基づいて、ドライバ回路14を駆動するための制御信号を出力するチャネル制御部12とを備える。
【0080】
電流検出回路2は、ドライバ回路14の出力とソレノイドバルブ100との間に設けられた検出抵抗Rsと、電源VCC1と仮想接地電位VIGとの間で動作し、仮想接地電位VIGとの間に所定の電圧差を持つ第2電源(系統電源VA2,VA3または内部アナログ電源VA)を生成する電源供給回路と、第2電源と仮想接地電位VIGとの間で動作し、検出抵抗Rsに生じる電圧に対応する検出信号を生成する信号処理回路20とを備える。そして、仮想接地電位VIGを供給するための仮想接地線NIGは、ドライバ回路14の出力と検出抵抗Rsとの間に接続されている。
【0081】
これにより、引用文献1のような従来構成と比較して、増幅器21の入力段と出力段での平均電圧の差を小さくすることができるので、コモンモードの電圧変動に起因する電流検出誤差を小さくすることができる。
【0082】
また、検出抵抗Rsには、ドライバ回路14の出力電流に加えて、増幅器21及びADコンバータ22での消費電流も流れるようになっている。これにより、従来技術(例えば、特許文献2)と比較して、より正確な電流検出を実現することができる。
【0083】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する種々の変更、置き換え、付加、省略などは、全て本開示の範囲内のものである。例えば、上記実施形態において異なる図面で示した回路や構成を適宜組み合わせて、別の実施形態としてもよく、同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
ここに開示された技術は、電流検出回路及びそれを備えた負荷駆動制御装置において、SOIプロセスを使用することなく、電流検知誤差を解消することができるので極めて有用である。
【符号の説明】
【0085】
1 ドライバIC(負荷駆動制御装置)
2 電流検出回路
4 電源供給回路
12 チャネル制御部(コントローラ)
14 ドライバ回路
21 増幅器
22 ADコンバータ
41 基準電圧生成部
42 電源分離部
100 ソレノイドバルブ(負荷)
LP21 第1電源線
LP22 第2電源線
NIG 仮想接地線
Rs 検出抵抗
VA2 系統電源(第2電源)
VA3 系統電源(第3電源)
VCC1 電源(第1電源)
VIG 仮想接地電位
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5