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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】砥石車修正装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/053 20060101AFI20250401BHJP
   B24B 53/14 20060101ALI20250401BHJP
   B24B 53/00 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
B24B53/053
B24B53/14
B24B53/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021045087
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022144190
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 明
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-243449(JP,A)
【文献】特開2002-361553(JP,A)
【文献】特開昭61-265270(JP,A)
【文献】特開昭64-027858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/00 - 53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動可能に支持され、回転駆動する砥石車の回転軸線方向に相対移動することで、前記砥石車の周面を修正する修正工具と、
前記砥石車の回転周波数を制御するとともに、前記修正工具と前記砥石車の相対移動を制御する制御装置と、
を備える砥石車修正装置であって、
前記制御装置は、前記砥石車の回転周波数を変動させながら前記修正工具と前記砥石車を相対移動させることにより、前記修正工具で前記砥石車の周面の粗修正を行い、前記砥石車の回転周波数を一定に保持しながら前記修正工具と前記砥石車を相対移動させることにより、前記修正工具で前記砥石車の周面の精修正を行う、砥石車修正装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記修正工具の修正工具軸の固有振動数を、前記砥石車でワークを研削加工するときの回転周波数(第一砥石車回転周波数という)で除算したときの商が整数のとき、前記固有振動数を前記商より小さい整数で除算して前記砥石車の回転周波数(第二砥石車回転周波数という)を求め、前記砥石車の回転周波数を前記第一砥石車回転周波数と前記第二砥石車回転周波数との間で変動させながら前記粗修正を行う、請求項1に記載の砥石車修正装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第一砥石車回転周波数を保持しながら前記精修正を行う、請求項2に記載の砥石車修正装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記修正工具で前記砥石車の周面に対し行う前記粗修正の1周期tpと、前記砥石車の回転周波数を変動させるときの1周期tvが異なるように制御して前記粗修正を行い、
前記1周期tpは、前記砥石車及び前記修正工具が修正開始位置に位置決めされてから、前記修正工具で前記砥石車の外周面を修正し、その後に再び前記砥石車及び前記修正工具が前記修正開始位置に位置決めされるまでの時間であり、
前記1周期tvは、前記砥石車が前記第一砥石車回転周波数から前記第二砥石車回転周波数に達し、前記第二砥石車回転周波数から前記第一砥石車回転周波数に戻るまでの時間である、請求項2又は3の何れか一項に記載の砥石車修正装置。
【請求項5】
前記修正工具の修正工具軸は、転がり軸受で回転可能に支持される、請求項1-4の何れか一項に記載の砥石車修正装置。
【請求項6】
回転駆動する修正工具で回転駆動する砥石車の周面を修正する砥石車修正方法であって、
前記砥石車の回転周波数を変動させながら前記修正工具と前記砥石車を相対移動させることにより、前記修正工具で前記砥石車の周面の粗修正を行う粗修正工程と、
前記砥石車の回転周波数を一定に保持しながら前記修正工具と前記砥石車を相対移動させることにより、前記修正工具で前記砥石車の周面の精修正を行う精修正工程と、
を備える、砥石車修正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石車修正装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研削加工装置の砥石車は、砥石車修正装置で修正、すなわちツルーイング及びドレッシングが行われる。砥石車修正装置には、砥石車の砥石軸の回転軸線に対して直交するように配置した回転軸線を有するカップ状の修正工具を備える縦型砥石車修正装置がある。また、砥石車の砥石軸の回転軸線に対して平行となるように配置した回転軸線を有する円盤状の修正工具を備える横型砥石車修正装置がある。修正工具は、周面にダイヤモンドが電着されており、回転する修正工具の周面で回転する砥石車の周面を修正する。
【0003】
このような砥石車修正装置では、砥石車の修正後に砥石車の周面にビビリ形状が発生することがある。このビビリ形状が発生した砥石車で研削加工を行うと、工作物の真円度や真直度の不良が発生するおそれがある。従来は、修正工具や修正工具軸を交換することで対応しているが、コスト高であった。また、修正条件を変更(切込み量低減や修正回数低減等)することで対応しているが、修正条件を見出すことが困難で手間が掛かっていた。
【0004】
これに対し、特許文献1,2には、修正工具と砥石車の相対回転速度が等速となる回転速度を中心に、相対回転速度を変動させて砥石車の修正を行うことで、砥石車の周面のビビリ形状の発生を抑制できる砥石車修正装置が記載されている。この砥石車修正装置によれば、従来のように修正工具や修正工具軸を交換する必要がないので、コストを低減でき、また、修正条件を変更(切込み量低減や修正回数低減等)する必要がないので、修正条件を見出すための手間を省くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭64-64777号公報
【文献】特開2008-149440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本願発明者が修正工具と砥石車の相対回転速度を変動させて砥石車の修正を行ったところ、依然として砥石車の周面のビビリ形状が発生する場合があった。この要因としては、縦型砥石車修正装置の場合、修正工具の回転軸線方向の固有振動数が砥石車の回転周波数(回転速度)の整数倍になると共振が起こるため、この整数の山が砥石車の周面に発生してビビリ形状となることが判明した。また、横型砥石車の砥石車修正装置の場合、修正工具の回転軸線と直角な方向の固有振動数が砥石車の回転周波数(回転速度)の整数倍になると共振が起こるため、この整数の山が砥石車の周面に発生してビビリ形状となることが判明した。
【0007】
この砥石車の周面のビビリ形状の発生を抑制するには、修正工具の固有振動数が砥石車の回転周波数の整数倍にならないように砥石車の回転周波数を設定すればよい。しかし、修正工具の回転軸は転がり軸受で支持されており、転動体、内輪、外輪等の摩耗や潤滑油の劣化等により修正工具の固有振動数は変化する。この変化が生じると、設定した砥石車の回転周波数では、砥石車の周面のビビリ形状の発生を抑制できなくなるおそれがある。
【0008】
本発明は、砥石車の周面のビビリ形状の発生を抑制できる砥石車修正装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る砥石車修正装置は、回転駆動可能に支持され、回転駆動する砥石車の回転軸線方向に相対移動することで、前記砥石車の周面を修正する修正工具と、前記砥石車の回転周波数を制御するとともに、前記修正工具と前記砥石車の相対移動を制御する制御装置と、を備える砥石車修正装置であって、前記制御装置は、前記砥石車の回転周波数を変動させながら前記修正工具と前記砥石車を相対移動させることにより、前記修正工具で前記砥石車の周面の粗修正を行い、前記砥石車の回転周波数を一定に保持しながら前記修正工具と前記砥石車を相対移動させることにより、前記修正工具で前記砥石車の周面の精修正を行う。
【0010】
この砥石車修正装置では、先ず、砥石車の回転周波数を変動させながら粗修正を行うので、ビビリ形状となる山の数が一定に形成されず、山がずれながら形成される。次に、砥石車の回転周波数を一定に保持しながら精修正を行うので、粗修正で残る山をほぼ除去できる。よって、砥石車の周面のビビリ形状の発生を抑制できる。
【0011】
本発明に係る砥石車修正方法は、回転駆動する修正工具で回転駆動する砥石車の周面を修正する砥石車修正方法であって、前記砥石車の回転周波数を変動させながら前記修正工具と前記砥石車を相対移動させることにより、前記修正工具で前記砥石車の周面の粗修正を行う粗修正工程と、前記砥石車の回転周波数を一定に保持しながら前記修正工具と前記砥石車を相対移動させることにより、前記修正工具で前記砥石車の周面の精修正を行う精修正工程と、を備える。これにより、砥石車修正装置と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】砥石車修正装置が適用される研削加工装置を示す平面図である。
図2】砥石車修正装置、砥石台及び制御装置を示す一部断面図である。
図3】砥石車修正動作時の砥石車回転周波数と経過時間の関係を示す図である。
図4A】砥石車修正動作の1パスにおける修正工具及び砥石車を修正開始位置に位置決めした状態を示す図である。
図4B】砥石車修正動作の1パスにおける修正工具で砥石車を修正完了した状態を示す図である。
図4C】砥石車修正動作の1パスにおける砥石車を修正工具に対しX軸線方向に移動させた状態を示す図である。
図4D】砥石車修正動作の1パスにおける修正工具を砥石車に対しZ軸線方向に移動させた状態を示す図である。
図5A】研削加工装置における砥石車修正装置の前半の制御処理を示すフローチャートである。
図5B】研削加工装置における砥石車修正装置の後半の制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1.研削加工装置1の構成)
本実施形態の砥石車修正装置は、例えば円筒研削行う研削加工装置に備えられる。図1に示すように、研削加工装置1は、基台部分を構成するベッド2と、ベッド2上に載置され砥石車Gを回転駆動可能に支持する砥石台3と、砥石台3をX軸方向に移動させるX軸駆動装置4と、ベッド2上の砥石台3とは異なる位置に載置されるワークテーブル5を備える。
【0014】
さらに、ワークテーブル5上に載置されワークWを支持すると共にワークWを回転駆動する主軸6を有する主軸台7及び心押台8と、ワークテーブル5をZ軸方向に移動させるZ軸駆動装置9と、主軸台7に備えられ砥石車Gを修正する修正工具Tを回転駆動可能に支持する砥石車修正装置10と、制御装置CRを備える。なお、X軸駆動装置4及びZ軸駆動装置9は、夫々サーボモータや送りネジ等を用いて構成される公知の駆動装置である。
【0015】
砥石台3は、砥石車Gが装着される砥石軸GAと、砥石軸GAを回転駆動させるためのモータ等からなる砥石軸駆動装置GMとを備える。砥石車Gは、CBN砥石等の適宜の砥石材料を用いて、外周面及び外周面近傍の端面が研削面となるように円盤形状に形成され、砥石軸GAと共に砥石軸駆動装置GMにより回転駆動される。主軸台7は、主軸6を回転駆動させるためのモータ等からなる主軸駆動装置16を備える。
【0016】
砥石車修正装置10は、詳細は後述するが、修正工具Tが装着される修正工具軸TAと、修正工具軸TAを回転駆動させるためのビルトインモータ等からなる修正工具軸駆動装置TMとを備える。修正工具Tは、外周面にダイヤモンドが電着されたカップ状に形成され、修正工具軸TAと共に修正工具軸駆動装置TMにより回転駆動される。
【0017】
制御装置CRは、X軸駆動装置4を駆動制御して砥石台3をX軸方向に移動させ、Z軸駆動装置9を駆動制御してワークテーブル5をZ軸方向に移動させる。また、主軸駆動装置16を駆動制御してワークWを回転させ、砥石軸駆動装置GMを駆動制御して砥石車Gを回転させ、修正工具軸駆動装置TMを駆動制御して修正工具Tを回転させる。
【0018】
(2.砥石車修正装置10の詳細構成)
図2に示すように、砥石車修正装置10は、修正工具T、修正工具軸TA、修正工具軸駆動装置TM、ハウジングTH、軸受TB1,TB2等を備える。この砥石車修正装置10は、砥石車Gの砥石軸GAの回転軸線GLに対して直交するように配置した回転軸線TLを有するカップ状の修正工具Tを備える縦型砥石車修正装置である。修正工具Tは、外周面にダイヤモンドDが電着されており、一端面側には同軸で略円筒状の修正工具軸TAが取り付けられる。修正工具軸駆動装置TMは、修正工具軸TAと共に修正工具Tを回転させ、修正工具Tの外周面で砥石車Gの外周面の表面状態を修正、すなわちツルーイングとドレッシングの少なくとも一方を行う。
【0019】
ここで、ツルーイングは、形直し作業であり、研削によって砥石車Gが摩耗した場合に工作物Wの形状に合わせて砥石車Gを成形する作業や、偏摩耗によって砥石車Gの振れを取り除く作業等である。ドレッシングは、目直し(目立て)作業であり、砥粒の突き出し量を調整したり、砥粒の切れ刃を創成したりする作業である。ドレッシングは、目つぶれ、目詰まり、目こぼれ等を修正する作業であって、通常ツルーイング後に行われる。また、ツルーイングとドレッシングは、特段区別することなく実施される場合もある。
【0020】
ハウジングTHは、円盤状のハウジングキャップ11、円筒状の第1ハウジング12及び円筒状の第2ハウジング13を備える。ハウジングキャップ11は、第1ハウジング12の前側端に取り付けられる。第2ハウジング13は、第1ハウジング12の後側端に取り付けられる。そして、ハウジングキャップ11及び各ハウジング12,13は、例えばボルト等によって一体に連結固定される。
【0021】
修正工具軸TAは、ハウジングTH内においてハウジングTHに対して回転軸線TL周りに回転可能となるよう配置される。修正工具軸TAにおけるハウジングキャップ11側には、軸受TB1が配置される。軸受TB1の内輪の内周面は、修正工具軸TAの外周面に支持され、軸受TB1の外輪の外周面は、第1ハウジング12の内周面に支持される。これにより、修正工具軸TAにおけるハウジングキャップ11側は、軸受TB1を介してハウジングTHに回転自在に支持される。軸受TB1は、転がり軸受であり、公知の並列組合わせ型のアンギュラ玉軸受である。軸受TB1には、ハウジングTHに設けられる図略の油路を通して潤滑油が供給される。ただし、軸受TB1は、使用条件に応じて、他の形式の軸受としてもよい。
【0022】
修正工具軸TAにおける第2ハウジング13側には、軸受TB2が配置される。軸受TB2の内輪の内周面は、修正工具軸TAの外周面に支持され、軸受TB2の外輪の外周面は、第2ハウジング13の内周面に支持される。これにより、修正工具軸TAにおける第2ハウジング13側は、軸受TB2を介してハウジングTHに回転自在に支持される。軸受TB2は、転がり軸受であり、一個の公知の円筒ころ軸受である。軸受TB2には、ハウジングTHに設けられる図略の油路を通して潤滑油が供給される。ただし、軸受TB2は、使用条件に応じて、他の形式の軸受としてもよい。
【0023】
修正工具軸TAにおける軸受TB1と軸受TB2の間には、修正工具軸駆動装置TMを構成するロータ14の内周面が固定される。修正工具軸駆動装置TMを構成するステータ15は、ロータ14の外周面側に配置される。詳細には、ステータ15の内周面がロータ14の外周面と所定の隙間を有するよう、ステータ15の外周面が第2ハウジング13の内周面に固定される。これにより、修正工具軸TAは、制御装置CRで制御される修正工具軸駆動装置TMの駆動により修正工具Tと共に回転駆動される。
【0024】
(3.砥石修正動作)
次に、砥石修正動作について説明する。発明の解決課題でも述べたように、本願発明者が修正工具Tと砥石車Gの相対回転速度を変動させて砥石車Gの修正を行ったところ、依然として砥石車Gの外周面のビビリ形状が発生する場合があった。この要因としては、修正工具Tの回転軸線TL方向の固有振動数が砥石車Gの回転周波数(回転速度)の整数倍になると共振が起こるため、この整数の山が砥石車Gの外周面に発生してビビリ形状となることが判明した。
【0025】
この砥石車Gの外周面のビビリ形状の発生を抑制するには、修正工具Tの固有振動数が砥石車Gの回転周波数の整数倍にならないように砥石車Gの回転周波数を設定すればよい。しかし、修正工具Tの修正工具軸TAは軸受TB1で支持されており、転動体、内輪、外輪等の摩耗や潤滑油の劣化等により修正工具Tの固有振動数は変化する。この変化が生じると、設定した砥石車Gの回転周波数では、砥石車Gの外周面のビビリ形状の発生を抑制できなくなるおそれがある。
【0026】
そこで、先ず、砥石車Gの回転周波数を変動させながら修正工具Tを砥石車Gの回転軸線方向に移動させることにより、修正工具Tで砥石車Gの外周面の粗修正を行う。このときの砥石車Gの回転周波数は、ビビリ形状となる山の数が一定にはならず、例えば1山分ずれるように変動させる。そして、砥石車Gの回転周波数を変動させるときの1周期が、修正工具Tで砥石車Gの外周面に対し行う粗修正の1周期と異なるようにする。
【0027】
具体的には、砥石車Gの回転周波数Vは、修正工具Tの固有振動数をビビリ形状となる山の数で除算した商で表される。そこで、図3に示すように、山の数がn(整数)となる砥石車Gの回転周波数(第一砥石車回転周波数)V1(本例では砥石車GでワークWを研削加工するときの回転周波数である)と、山の数がn(整数)-1となる砥石車Gの回転周波数(第二砥石車回転周波数)V2とをそれぞれ求める。
【0028】
そして、砥石車Gの第一砥石車回転周波数V1と第二砥石車回転周波数V2の間で砥石車Gの回転周波数Vを変動させる。図3では、第一砥石車回転周波数V1から第二砥石車回転周波数V2まで直線状に変動させ、第二砥石車回転周波数V2から第一砥石車回転周波数V1まで直線状に変動させている。これにより、ビビリ形状となる山の数が一定に形成されず、山がずれながら形成される。特に、変動回数多いほど効果的である。
【0029】
また、図4A図4Dに示すように、修正工具Tで砥石車Gの周面に対し行う粗修正の1周期(1パス)とは、砥石車G及び修正工具Tが修正開始位置に位置決めされてから(図4Aの状態)、修正工具Tで砥石車Gの外周面を修正し(図4Bの状態)、その後に再び砥石車G及び修正工具Tが修正開始位置に位置決めされる(図4C図4Dの状態)までの時間(図3のtp)をいう。また、砥石車Gの回転周波数を変動させるときの1周期とは、砥石車Gが第一砥石車回転周波数V1から第二砥石車回転周波数V2に達し、第二砥石車回転周波数V2から第一砥石車回転周波数V1に戻るまでの時間(図3のtv)をいう。
【0030】
砥石車Gの回転周波数を変動させるときの1周期(tv)が、修正工具Tで砥石車Gの周面に対し行う粗修正の1周期(1パスtp)と同期した場合、ビビリ形状が発生し易くなるが、上記1周期(tv,tp)を異なるようにした場合、ビビリ形状の発生をさらに抑制できる。なお、粗修正の繰り返し周期は、本例では14パスである。
【0031】
次に、砥石車Gの回転周波数を一定に保持しながら修正工具Tを砥石車Gの回転軸線方向に移動させることにより、修正工具Tで砥石車Gの周面の精修正を行う。この精修正を行う理由は以下の通りである。粗修正において砥石車Gの回転周波数を変動させているが、このとき砥石車Gのアンバランスにより砥石車Gの回転中心が変化して砥石車Gの外周面にビビリ形状が発生する場合がある。そこで、砥石車GでワークWを実際に研削加工するときの回転周波数で精修正を行って上記ビビリ形状を取り除く。
【0032】
具体的には、図3に示すように、精修正における砥石車Gの回転周波数Vは、砥石車GでワークWを研削加工するときの回転周波数、本例では第一砥石車回転周波数V1の一定速度に保持する。これにより、粗修正で残る山をほぼ除去できるので、ビビリ形状の発生を抑制できる。ただし、第一砥石車回転周波数V1ではビビリ形状となる山の数がn(整数)となるため、精修正を長時間行うと砥石車Gの周面にビビリ形状が発生する。そこで、精修正の繰り返し周期(本例では2パス)は、予め求めた砥石車GでワークWを研削加工するときに必要な砥石車Gの外周面の状態となるまで行う。
【0033】
(4.研削加工装置1における砥石車修正装置10の制御処理)
次に、研削加工装置1における砥石車修正装置10の制御処理(砥石車修正方法)について図5A,5Bのフローチャートを参照して説明する。砥石車修正装置10の制御装置CRは、砥石車Gの第一砥石車回転周波数V1及び第二砥石車回転周波数V2を設定する(図5AのステップS1)。
【0034】
具体的には、制御装置CRは、修正工具Tの修正工具軸TAの固有振動数を、砥石車GでワークWを研削加工するときの回転周波数で除算したときの商が整数のとき、当該砥石車GでワークWを研削加工するときの回転周波数を第一砥石車回転周波数V1として設定する。そして、修正工具Tの修正工具軸TAの固有振動数を、上記商より小さい整数で除算してたときの砥石車Gの回転周波数を求め、求めた砥石車Gの回転周波数を第二砥石車回転周波数V2として設定する。
【0035】
制御装置CRは、砥石軸駆動装置GM及び修正工具軸駆動装置TMを駆動して砥石車G及び修正工具Tを回転開始する(図5AのステップS2)。そして、砥石車Gを第一砥石車回転周波数V1と第二砥石車回転周波数V2の間で周期変動させる(図5AのステップS3)。
【0036】
具体的には、制御装置CRは、修正工具Tで砥石車Gの外周面に対し行う粗修正の1周期と同期しないように、砥石車Gの回転周波数を変動させるときの1周期を時定数で設定する。つまり、粗修正の1パスの時間が、第一砥石車回転周波数V1から第二砥石車回転周波数V2に直線状に至り、第二砥石車回転周波数V2から第一砥石車回転周波数V1に直線状に戻るまでの時間と異なるように設定する。そして、設定した時定数で砥石車Gの回転周波数を周期変動させる。
【0037】
制御装置CRは、X軸駆動装置4を駆動して砥石台3をX軸方向に移動させ、Z軸駆動装置9を駆動してワークテーブル5と共に砥石車修正装置10をZ軸方向に移動させ、砥石車G及び修正工具Tを修正開始位置に位置決めする(図5AのステップS4、粗修正工程)。そして、例えば砥石車Gの回転周波数が第一砥石車回転周波数V1になったと同時に粗修正を開始する(図5AのステップS5、粗修正工程)。そして、粗修正が予め設定された所定パス数完了するまで粗修正を繰り返し(図5AのステップS6、粗修正工程)、粗修正が所定パス数完了したら、砥石車Gの回転周波数を第一砥石車回転周波数V1に戻すとともに、砥石車G及び修正工具Tを修正開始位置へ移動する(図5AのステップS7、精修正工程)。
【0038】
制御装置CRは、砥石車Gの回転周波数を第一砥石車回転周波数V1に保持するように設定する(図5BのステップS8、精修正工程)。そして、砥石車G及び修正工具Tを修正開始位置に位置決めしたと同時に精修正を開始し(図5BのステップS9、精修正工程)、精修正が予め設定された所定パス数完了するまで精修正を繰り返す(図5BのステップS10、精修正工程)。そして、精修正が所定パス数完了したら砥石車Gを退避位置に移動し(図5BのステップS11)、砥石車G及び修正工具Tを回転停止し(図5BのステップS12)、全ての処理を終了する。
【0039】
(5.その他)
上述の実施形態では、粗修正において砥石車Gの回転周波数は、ビビリ形状の山の数を1山分ずれるように変動させる場合を説明した。しかし、これに限定されるものではなく、任意の数の山分ずれるように変動させてもよい。また、粗修正の1パスは、第一砥石車回転周波数V1から第二砥石車回転周波数V2に直線状変動し、第二砥石車回転周波数V2から第一砥石車回転周波数V1に直線状に変動する場合を説明した。しかし、これに限定されるものではなく、例えばジグザグに変動させ、もしくは曲線状に変動させるようにしてもよい。
【0040】
また、粗修正において複数回のパスを行う場合を説明したが、1回のパスで粗修正を完了するようにしてもよい。また、砥石車Gの回転周波数を変動させるときの1周期が、修正工具Tで砥石車Gの周面に対し行う粗修正の1周期と同期しない場合を説明したが、精修正においてビビリ形状の除去が可能であれば同期させるようにしてもよい。
【0041】
また、砥石車修正装置10として縦型砥石車修正装置を例に説明したが、横型砥石車修正装置も同様に適用できる。また、砥石車修正装置10を適用する研削加工装置1として円筒研削加工装置を例に説明したが、内面研削加工装置、センターレス研削加工装置、平面研削加工装置も同様に適用できる。
【符号の説明】
【0042】
1;研削加工装置、 3;砥石台、 10;砥石車修正装置、 G;砥石車、 GA;砥石軸、 GM;砥石軸駆動装置、 T;修正工具、 TA;修正工具軸、 TM;修正工具軸駆動装置、 CR;制御装置、 TB1,TB2;軸受
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B