(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】車両用表示装置、表示方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/36 20060101AFI20250401BHJP
【FI】
G01C21/36
(21)【出願番号】P 2021097508
(22)【出願日】2021-06-10
【審査請求日】2023-04-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山藤 沙羅
(72)【発明者】
【氏名】廣田 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】張 玉テイ
【審査官】西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-196295(JP,A)
【文献】特開2019-206262(JP,A)
【文献】特開2021-076415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前景を示す表示領域に所定の画像を表示させる車両用表示装置であって、
前記車両の位置情報と目的地点の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記車両から前記目的地点までの距離が第1閾値以上であるかを判定し、前記車両から前記目的地点までの距離が前記第1閾値以上でないと判定した場合に、前記車両の前景を示す表示領域に、前記目的地点が表示されているかを判定する判定手段と、
前記判定手段により、前記車両の前景を示す表示領域に、
前記目的地点が表示されていると判定されなかった場合に、前記目的地点の方角を示す第1画像を前記表示領域に表示させ、前記車両の前景を示す表示領域に、
前記目的地点が表示されていると判定された場合に、前記目的地点の存在する領域
に重なるように、前記目的地点の存在する領域を示す第2画像を
焦点の合わない態様で表示させ
た後、前記車両から前記目的地点までの距離が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以上である場合に、前記車両が前記目的地点に近づくにつれて前記表示領域上での前記第2画像の大きさが徐々に小さくなるように前記表示領域に表示させ、前記車両から前記目的地点までの距離が前記第2閾値未満である場合に、前記車両が前記目的地点に近づくにつれて前記表示領域上での前記第2画像の大きさが徐々に大きくなるように前記表示領域に表示させる、表示制御部と、
を備える車両用表示装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前景を示す表示領域に、前記目的地点が表示されているかを判定する際に、前記目的地点の位置が、周辺の物体に遮られることにより前記表示領域に表示されない位置であるかを判定し、前記目的地点の位置が、周辺の物体に遮られることにより前記表示領域に表示されない位置であると判定した場合に、前記車両の前景を示す表示領域に、前記目的地点が表示されていると判定しない、
請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記車両から前記目的地点までの距離が前記第2閾値以上である場合に、前記車両が前記目的地点に近づくにつれて、焦点の合わない態様から徐々に焦点が合うように前記第2画像を前記表示領域に表示させる、請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記表示領域は、運転席の車両前方でヘッドアップディスプレイ装置によって投影された投影面とされ、
前記表示制御部は、前記表示領域を通して視認される前記車両の前景において、前記目的地点に対応する位置に、前記第2画像を表示させる、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
車両の前景を示す表示領域に所定の画像を表示させる表示方法であって、
前記車両の位置情報と目的地点の位置情報を取得し、
前記車両から前記目的地点までの距離が第1閾値以上であるかを判定し、前記車両から前記目的地点までの距離が前記第1閾値以上でないと判定した場合に、前記車両の前景を示す表示領域に、前記目的地点が表示されているかを判定し、
前記判定により、前記車両の前景を示す表示領域に、前記目的地点が表示されていると判定されなかった場合に、前記目的地点の方角を示す第1画像を前記表示領域に表示させ、前記車両の前景を示す表示領域に、前記目的地点が表示されていると判定された場合に、前記目的地点の存在する領域に重なるように、前記目的地点の存在する領域を示す第2画像を焦点の合わない態様で表示させた後、前記車両から目的地点までの距離が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以上である場合に、前記車両が前記目的地点に近づくにつれて前記表示領域上での前記第2画像の大きさが徐々に小さくなるように前記表示領域に表示させ、前記車両から前記目的地点までの距離が前記第2閾値未満である場合に、前記車両が前記目的地点に近づくにつれて前記表示領域上での前記第2画像の大きさが徐々に大きくなるように前記表示領域に表示させる、
表示方法。
【請求項6】
車両の前景を示す表示領域に所定の画像を表示させるプログラムであって、
コンピュータに、
前記車両の位置情報と目的地点の位置情報を取得し、
前記車両から前記目的地点までの距離が第1閾値以上であるかを判定し、前記車両から前記目的地点までの距離が前記第1閾値以上でないと判定した場合に、前記車両の前景を示す表示領域に、前記目的地点が表示されているかを判定し、
前記判定により、前記車両の前景を示す表示領域に、前記目的地点が表示されていると判定されなかった場合に、前記目的地点の方角を示す第1画像を前記表示領域に表示させ、前記車両の前景を示す表示領域に、前記目的地点が表示されていると判定された場合に、前記目的地点の存在する領域に重なるように、前記目的地点の存在する領域を示す第2画像を焦点の合わない態様で表示させた後、前記車両から目的地点までの距離が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以上である場合に、前記車両が前記目的地点に近づくにつれて前記表示領域上での前記第2画像の大きさが徐々に小さくなるように前記表示領域に表示させ、前記車両から前記目的地点までの距離が前記第2閾値未満である場合に、前記車両が前記目的地点に近づくにつれて前記表示領域上での前記第2画像の大きさが徐々に大きくなるように前記表示領域に表示させる、
ことを実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用表示装置、表示方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車室内の乗員とフロントウィンドウの間に配置されたコンバイナに画像を投影し、車両の目的地の方角を表示させる車両用表示装置(ヘッドアップディスプレイ装置)が開示されている。この車両用表示装置では、乗員がフロントウィンドウを介して視認する前景にコンバイナに投影された方向情報表示リングの画像が重なるように構成されている。そして、方向表示リングの上を移動する目的地アイコンの位置によって、車両に対する目的地の方角を表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のように表示領域の中央に目的地の方角を示すアイコンを常時表示させると、車両と目的地との位置関係によっては、乗員が煩わしさを感じる虞がある。例えば、車両が目的地の付近を走行する際など、乗員が表示領域を目視して前景の中から目的地を確認する場合は、目的地の方角を示すアイコンによって前景の視認性が低下し、乗員が煩わしさを感じる場合がある。
【0005】
本開示は、上記の点に鑑みてなされたものであり、車両と目的地点との位置関係を考慮して、目的地点に関する情報を表示させることができる車両用表示装置、表示方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係る車両用表示装置は、車両の前景を示す表示領域に所定の画像を表示させる車両用表示装置であって、車両の位置情報と目的地点の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記車両の前景を示す表示領域に、前記目的地点が表示されているかを判定する判定手段と、前記判定手段により、前記車両の前景を示す表示領域に、前記前記目的地点が表示されていると判定されなかった場合に、前記目的地点の方角を示す第1画像を前記表示領域に表示させ、前記車両の前景を示す表示領域に、前記前記目的地点が表示されていると判定された場合に、前記目的地点の存在する領域を示す第2の画像を表示させる表示制御部と、を備える。
【0007】
第1の態様によれば、車両用表示装置は、車両の前景を示す表示領域に所定の画像を表示させる。車両用表示装置は、車両の位置情報と目的地点の位置情報を取得し、判定手段により、前記車両の前景を示す表示領域に、前記前記目的地点が表示されていると判定されなかった場合に、目的地点の方角を示す第1画像を表示領域に表示させる。これにより、車両と目的地点との位置関係を考慮して、目的地点の方角を乗員に伝えることができる。
【0008】
本開示の第2の態様に係る車両用表示装置は、第1の態様に記載の構成において、前記判定手段は、前景を示す表示領域に、前記目的地点が表示されているかを判定する際に、車両から目的地点までの距離が第1閾値以上であるかを判定し、車両から目的地点までの距離が第1閾値以上であると判定した場合に、前記車両の前景を示す表示領域に、前記目的地点が表示されていると判定しない。
【0009】
第2の態様によれば、判定手段は、前景を示す表示領域に、前記目的地点が表示されているかを判定する際に、車両から目的地点までの距離が第1閾値以上であるかを判定し、車両から目的地点までの距離が第1閾値以上であると判定した場合に、前記車両の前景を示す表示領域に、前記目的地点が表示されていると判定しない。このため車両用表示装置は、目的地点の方角を示す第1画像を表示領域に表示させる。即ち、車両から目的地点までの距離が充分に離れており、表示領域から目的地点を視認することが困難な場合に、目的地点の方角を表示することができる。これにより、車両の前景に含まれる目的地点と第1画像とが表示領域に混在しないため、乗員に煩わしさを与えることなく目的地点に関する情報を表示させることができる。
【0010】
本開示の第3の態様に係る車両用表示装置は、第1の態様に記載の構成において、前記判定手段は、前景を示す表示領域に、前記目的地点が表示されているかを判定する際に、前記目的地点の位置が、周辺の物体に遮られることにより前記表示領域に表示されない位置であるかを判定し、前記目的地点の位置が、周辺の物体に遮られることにより前記表示領域に表示されない位置であると判定した場合に、前記車両の前景を示す表示領域に、前記目的地点が表示されていると判定しない。
【0011】
第3の態様によれば、目的地点の位置が、周辺の物体に遮られることにより表示領域に表示されない位置である場合に、目的地点の方角を示す第1画像を表示領域に表示させる。即ち、周囲の建物に遮られ、表示領域からは目的地点が視認できない場合に、目的地点の方角を表示することができる。これにより、車両の前景に含まれる目的地点と第1画像とが表示領域に混在しないため、乗員に煩わしさを与えることなく目的地点に関する情報を表示させることができる。
【0014】
本開示の第4の態様に係る車両用表示装置は、第1の態様に記載の構成において、前記表示制御部は、前記車両から目的地点までの距離が近づくにつれて、焦点の合わない態様から徐々に焦点が合うように前記第2画像を前記表示領域に表示させる。
【0015】
第4の態様によれば、表示領域に表示された第2画像は、車両から目的地点までの距離が近づくにつれて、焦点の合わない態様から徐々に焦点が合うように表示される。これにより、例えば、車両から目的地点までが離れており、前景の中の目的地点の存在が極めて小さい場合は、第2画像の輪郭を曖昧に表示することにより、乗員に対して目的地点の存在する領域を示す。その後、車両から目的地点までの距離が近づくにつれて、第2画像の表示態様を徐々に焦点が合う態様に変化させることで、第2画像の輪郭が次第に明確になり、目的地点の位置を明確に示す態様に変化させる。このように、目的地点の手前の位置から、目的地点を徐々に明確に認識できる態様で第2画像を表示することにより、乗員は、煩わしさを感じることなく、目的地点までの到達度を認識することができる。
【0016】
本開示の第5の態様に係る車両用表示装置は、第1の態様に記載の構成において、前記表示制御部は、車両から目的地までの距離が第1閾値未満であって、第1閾値よりも小さい第2閾値以上である場合に、前記車両から目的地点までの距離が近づくにつれて前記第2画像の大きさが徐々に小さくなるように前記表示領域に表示する。
【0017】
第5の態様によれば、表示領域に表示された第2画像は、車両から目的地までの距離が第1閾値未満であって、第1閾値より小さい第2閾値以上である場合に、車両から目的地点までの距離が近づくにつれて徐々に小さくなるように表示される。これにより、例えば、車両から目的地点までの距離が比較的離れている場合は、前景の中の目的地点の存在が極めて小さいため、第2画像を敢えて大きく表示することで、乗員が前景を意識した状態のまま、目的地点が存在する領域を認識させることができる。そして、車両が目的地点に近づくにつれて第2画像を徐々に小さくすることで、目的地点の存在する領域を縮小し、乗員の意識が前景の中の目的地点へと自然に移行するように表示態様を変化させる。このようにして、車両が目的地点に近付くに従い、目的地点に対する乗員の認識を第2画像から前景の中の目的地点へと自然に移行させることができる。
【0018】
本開示の第6の態様に係る車両用表示装置は、第5の態様に記載の構成において、前記表示制御部は、車両から目的地までの距離が前記第2閾値未満である場合に、前記車両から目的地点までの距離が近づくにつれて前記第2画像の大きさが徐々に大きくなるように前記表示領域に表示する。
【0019】
第6の態様によれば、表示領域に表示された第2画像は、車両から目的地までの距離が前記第2閾値未満である場合に、車両から目的地点までの距離が近づくにつれて徐々に大きくなるように表示される。これにより、例えば、表示領域から目的地点が視認できる距離では、徐々に接近する目的地点に合わせて第2画像の表示が拡大される。これにより、目的地点と一体となり、第2画像が車両に向かって接近するような視覚効果を乗員に与えることができるため、目的地点までの到達度を直感的に認識させることができる。
【0020】
本開示の第7の態様に係る車両用表示装置は、第1の態様~第6の態様の何れか1態様に記載の構成において、前記表示領域は、運転席の車両前方でヘッドアップディスプレイ装置によって投影された投影面とされ、前記表示制御部は、前記表示領域を通して視認される前記車両の前景において、目的地点に対応する位置に、前記第2画像を表示させる。
【0021】
第7の態様によれば、車両の前景を示す表示領域が、運転席の車両前方でヘッドアップディスプレイ装置によって投影された投影面とされており、車両の目的地点を示す第2画像が、表示領域を通して視認される車両の前景において、目的地点に対応する位置に表示される。このように、車両用表示装置では、運転席からの前景に重ねて第2画像を表示するため、運転席の乗員が視線を大きく動かすことなく目的地点を認識することができる。
【0022】
本開示の第8の態様に係る表示方法は、車両の前景を示す表示領域に所定の画像を表示させる表示方法であって、車両の位置情報と目的地点の位置情報を取得し、前記車両の前景を示す表示領域に、前記目的地点が表示されているかを判定し、前記判定により、前記車両の前景を示す表示領域に、前記前記目的地点が表示されていると判定されなかった場合に、前記目的地点の方角を示す第1画像を前記表示領域に表示させ、前記車両の前景を示す表示領域に、前記前記目的地点が表示されていると判定された場合に、前記目的地点の存在する領域を示す第2の画像を表示させる。
【0023】
第8の態様に係る表示方法によれば、上述したように、車両と目的地点との位置関係を考慮して、目的地点に関する情報を表示させることができる。
【0024】
本開示の第9の態様に係るプログラムは、車両の前景を示す表示領域に所定の画像を表示させるプログラムであって、コンピュータに、車両の位置情報と目的地点の位置情報を取得し、前記車両の前景を示す表示領域に、前記目的地点が表示されているかを判定し、前記判定により、前記車両の前景を示す表示領域に、前記前記目的地点が表示されていると判定されなかった場合に、前記目的地点の方角を示す第1画像を前記表示領域に表示させ、前記車両の前景を示す表示領域に、前記前記目的地点が表示されていると判定された場合に、前記目的地点の存在する領域を示す第2の画像を表示させる。
【0025】
第9の態様に係るプログラムによれば、上述したように、車両と目的地点との位置関係を考慮して、目的地点に関する情報を表示させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本開示によれば、車両と目的地点との位置関係を考慮して、目的地点に関する情報を表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施形態に係る車両用表示装置が適用された車両における車室内の前部を車両後方側から見た概略図である。
【
図2】本実施形態に係る車両用表示装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る車両用表示装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態における表示処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図5】車両と目的地点との位置関係の一例を示す図である。
【
図6】車両から目的地点までの距離が距離L1以上である場合における、第1画像の表示方法の一例を示す図である。
【
図7】車両と目的地点との位置関係の一例を示す図である。
【
図8】車両から目的地点までの距離が距離L1未満であって距離L2以上である場合に、車両から目的地点までの距離が近づくにつれて変化する第2画像の表示方法の一例を示す図である。
【
図9】車両から目的地点までの距離が距離L2未満である場合に、車両と目的地点との間の距離が近づくにつれて変化する第2画像の表示方法の一例を示す図である。
【
図10】本実施形態の変形例に係る車両用表示装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
実施形態に係る車両用表示装置10が適用された車両12について、図面を参照して説明する。なお、本実施形態の車両12は一例として、自動運転と手動運転とを切替可能に構成されている。なお、自動運転とは、アクセル、ブレーキ、方向指示器、ステアリング等の操作の一部又は全てが自動的に行われる車両の走行態様である。また、手動運転とは、運転者がすべての運転操作(アクセル、ブレーキ、方向指示器、ステアリング等の操作)を実行する車両の走行態様である。
図1に示されるように、車両12における車室内の前部には、インストルメントパネル14が設けられている。
【0029】
インストルメントパネル14は、車両幅方向に延在されており、このインストルメントパネル14の車両右側にはステアリングホイール16が設けられている。すなわち、本実施形態では一例として、右側にステアリングホイール16が設けられた右ハンドル車とされており、運転席が車両右側に設定されている。
【0030】
インストルメントパネル14の前端部にはウインドシールドガラス18が設けられている。ウインドシールドガラス18は、運転席の車両前方側に配置され、車両上下方向及び車両幅方向に延在されて車室内部と車室外部とを区画している。
【0031】
ウインドシールドガラス18の車両右側端部は、車両右側のフロントピラー20に固定されている。フロントピラー20は、車両上下方向に延在されており、このフロントピラー20の車両幅方向内側端部にはウインドシールドガラス18が固定されている。また、フロントピラー20の車両幅方向外側端部にはフロントサイドガラス22の前端部が固定されている。なお、ウインドシールドガラス18の車両左側端部は、図示しない車両左側のフロントピラーに固定されている。
【0032】
ここで、インストルメントパネル14には、所定の画像の表示領域を有する第一表示部24が設けられている。第一表示部24は、インストルメントパネル14の車両幅方向右側部において、運転席の車両前方に設けられたメータディスプレイで構成されている。メータディスプレイは、車両12に搭載された各種メータ機器と接続された図示しないメータディスプレイ装置の一部を構成している。第一表示部24は、運転者が車両前方へ視線を向けた状態で視界に入る位置に設けられている。
【0033】
インストルメントパネル14には、所定の画像の表示領域を有する第二表示部25が設けられている。第二表示部25は、インストルメントパネル14の車両幅方向の中央部において運転席の車両前方側に設けられたディスプレイで構成されている。
【0034】
ウインドシールドガラス18には、所定の画像の表示領域を有する第三表示部26が設けられている。第三表示部26は、第一表示部24の車両上方側に設定されており、ヘッドアップディスプレイ装置44(
図2参照)によって投影された投影面によって構成されている。具体的には、インストルメントパネル14よりも車両前方側にヘッドアップディスプレイ装置44が設けられており、このヘッドアップディスプレイ装置44からウインドシールドガラス18の第三表示部26へ映像が投影されるように構成されている。即ち、第三表示部26は、ヘッドアップディスプレイ装置44の投影面とされたウインドシールドガラス18で構成されている。
【0035】
(車両用表示装置10のハードウェア構成)
車両12には、制御部としてのECU(Electronic Control Unit)28が設けられている。
図2は、車両用表示装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。この
図2に示されるように、車両用表示装置10のECU28は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)30、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)34、ストレージ36、通信インタフェース38及び入出力インタフェース40を含んで構成されている。各構成は、バス42を介して相互に通信可能に接続されている。
【0036】
CPU30は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU30は、ROM32又はストレージ36からプログラムを読み出し、RAM34を作業領域としてプログラムを実行する。CPU30は、ROM32又はストレージ36に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0037】
ROM32は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM34は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ36は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。本実施形態では、ROM32又はストレージ36には、表示処理を行うためのプログラム、及び各種データなどが格納されている。
【0038】
通信インタフェース38は、車両用表示装置10が図示しないサーバ及び他の機器と通信するためのインタフェースであり、たとえば、イーサネット(登録商標)、LTE、FDDI、Wi-Fi(登録商標)などの規格が用いられる。
【0039】
入出力インタフェース40には、第一表示部24、第二表示部25、第三表示部26に所定の画像を投影させるヘッドアップディスプレイ装置44、及びアクチュエータ46が接続されている。アクチュエータ46は、ステアリングアクチュエータ、アクセルアクチュエータ及びブレーキアクチュエータを含んで構成されており、ステアリングアクチュエータは、車両12の操舵を行うものである。アクセルアクチュエータは、車両12の加速を行うものである。また、ブレーキアクチュエータは、ブレーキを制御することで、車両12の減速を行うものである。なお、入出力インタフェース40には、車両12の周辺を撮影する図示しないカメラ、車両12を自動走行させるためのセンサ類及びGPS装置などが接続されている。
【0040】
(車両用表示装置10の機能構成)
車両用表示装置10は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。車両用表示装置10が実現する機能構成について
図3を参照して説明する。
【0041】
図3に示されるように、車両用表示装置10は、機能構成として、通信部50、取得部51、運行計画設定部52、自動運転制御部54、位置情報取得部56、判定部58、画像生成部60、及び表示部62を含んで構成されている。なお、各機能構成は、CPU30がROM32又はストレージ36に記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0042】
通信部50は、通信インタフェース38を介して外部のサーバ及び他の機器とデータの送受信を行う。例えば、サーバに格納されている地図データ及び交通状況などのデータの送受信を行う。また、通信部50は、周囲の車両との間で車車間通信を行う構成としてもよい。
【0043】
取得部51は、入出力インタフェース40を介して、図示しない外部センサから、車両12の走行環境を周辺情報として取得する。外部センサは、車両12の周辺の所定範囲を撮像するカメラ、所定範囲に探査波を送信するミリ波レーダ、所定範囲をスキャンするライダ(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)のうち、少なくとも一つを含んで構成されている。また、「周辺情報」は、一例として、車両12の走行する車線の形状、路幅、車両12の付近を走行する他車両、及び障害物等に関する情報、車両周辺の天候や暗さ等の環境情報が含まれる。
【0044】
運行計画設定部52は、車両12の運行計画を設定する。具体的には、乗員によって目的地点が入力されることで、現在地から目的地点までの運行計画を設定する。
【0045】
自動運転制御部54は、車両12の手動運転と自動運転の切り替えを制御する。また、自動運転制御部54は、車両12の運転モードが自動運転に切り替えられた場合に、位置情報及び車両12の周囲の環境情報を考慮しつつ、設定された運行計画に沿って車両12を自動運転させる。具体的には、アクチュエータ46を制御することで車両12を自動走行させる。
【0046】
位置情報取得部56は、車両12の位置情報、及び運行計画に設定された目的地点の位置情報を取得する。具体的には、例えば、GPS装置を用いて車両12の位置情報を取得する。また、地図データを参照して、車両12の目的地点の位置情報及び目的地点の周辺の地図情報を取得する。
【0047】
判定手段としての判定部58は、位置情報取得部56で取得した位置情報に基づいて、車両の位置と目的地点の位置との関係が、目視に関する所定の条件を満たすか否かを判定する機能を有する。所定の条件とは、例えば、車両12から目的地点までの距離又は目的地点の周辺環境を考慮して、乗員が、第三表示部26(ウインドシールドガラス18)を通して目的地点を視認することが困難であると判断される条件である。
【0048】
本実施形態では、判定部58は、車両12から目的地点までの距離Lが距離L1(例えば、L1=200m)以上であるか否かについて判定する。即ち、車両から目的地点までの距離が距離L1以上離れている場合は、乗員が、第三表示部26を通して目的地点を視認することが困難であると判断し、条件を満たしていると判定する。
図5には一例として、車両12から距離L1以上離れた目的地点が符号「G1」で示されている。
【0049】
また、本実施形態では、判定部58は、目的地点の周辺環境を考慮して、目的地点の位置が、第三表示部26を通して視認可能な位置にあるか否かについて判定する。即ち、車両12から目的地点までの距離LがL1未満であっても、周辺の建物等に遮られて車両12から目的地点が見えない場合は、乗員が、第三表示部26を通して目的地点を視認することが困難であると判断し、条件を満たしていると判定する。
図5には一例として、周辺の建物B1~B3に遮られて車両12から見えない目的地点が符号「G2」で示されている。
【0050】
画像生成部60は、ヘッドアップディスプレイ装置44の投影面である第三表示部26に表示するための画像を生成する。画像生成部60によって生成される画像には、例えば、車両12の走行速度を示す図示しないメータ表示や、手動運転及び自動運転の支援を目的とする各種画像が含まれる。
【0051】
本実施形態では特に、画像生成部60は、判定部58で条件を満たすと判定された場合に、車両12を基準とする目的地点の方角を示す第1画像70を生成する。また、画像生成部60は、判定部58で条件を満たさないと判定された場合に、目的地点を示す第2画像80を生成する。
【0052】
表示制御部としての表示部62は、画像生成部60で生成された画像を第三表示部26の表示領域に表示させる。表示部62は、判定部58で条件を満たすと判定された場合に、第三表示部26に第1画像70を表示する。表示部62は、判定部58で条件を満たさないと判定された場合に、第三表示部26から第1画像70を削除して、第2画像80を表示する。更に、表示部62は、車両12が目的地点に到着した場合に、第三表示部26から第2画像80を削除する。
【0053】
本実施形態の表示部62は、第三表示部26(ウインドシールドガラス18)を通して視認される車両12の前景に融合させるように、第1画像70及び第2画像80を第三表示部26の表示領域に表示させる。
【0054】
図6に示されるように、第1画像70は一例として、運転席の乗員の前方側の視認性に配慮して、第三表示部26の表示領域の端に表示される。第1画像70は、目的地点を示す旗印の目的地アイコン70Aと、目的地アイコン70Aを指す矢印型の方角アイコン70Bを含んでいる。
図6を見ると、方角アイコン70Bが、左斜め前方に配置された目的地アイコン70Aの方角を指しているので、車両12に対して左斜め前方の方角に目的地点が存在することが分かる。
【0055】
図8及び
図9に示されるように、第2画像80は一例として、運転席の乗員が第三表示部26を通して視認する前景の中の目的地点に対応する位置に表示される。従って、運転席の乗員からは、ウインドシールドガラス18越しに見える目的地点と重なるようにして第2画像80が表示されているように見える。第2画像80は一例として、旗印の画像で構成されている。第2画像80は、車両12から目的地点までの距離Lに応じて画像の焦点や大きさが異なる態様で表示される。第2画像80の詳細な表示方法は後述する。
【0056】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0057】
(表示処理)
車両12の位置と目的地点の位置に基づいて、第1画像70又は第2画像80を表示させる表示処理の一例について
図4に示されるフローチャートを用いて説明する。この表示処理は、CPU30がROM32又はストレージ36から表示プログラムを読み出して、RAM34に展開して実行することによって実行される。
【0058】
図4に示されるように、CPU30は、ステップS100で目的地が設定されているか否かについて判定する。目的地は、乗員によって車両12に直接入力されてもよく、携帯端末などを介して間接的に入力されてもよい。
【0059】
CPU30は、ステップS100で目的地が設定されていると判定した場合、ステップS101の処理へ移行する。また、CPU30は、ステップS100で目的地が設定されていないと判定した場合、ステップS100の処理を繰り返す。
【0060】
CPU30は、ステップS101で、車両12の運行計画を設定する。具体的には、CPU30は、運行計画設定部52の機能により、現在地から目的地までの運行計画を設定する。運行計画の設定時には、交通状況及び事故に関する情報などを取得して反映してもよい。また、予め入力された乗員の要望に応じて、自動運転が多くなるように運行計画を設定してもよい。
【0061】
CPU30は、ステップS102で、判定部58の機能に基づいて、車両12から目的地点までの距離Lが距離L1以上であるか否かについて判定する。ここでは一例として、距離L1は200mに設定されているため、CPU30は、ステップS102で車両12から目的地点までの距離Lが200m以上あるか否かについて判定する。そして、CPU30は、目的地点までの距離Lが200m以上ある場合には、ステップS103の処理へ移行し、目的地点までの距離Lが200m未満である場合には、ステップS104の処理へ移行する。なお、距離L1は、本発明における「第1閾値」に相当する。
【0062】
CPU30は、ステップS103で、目的地点の方角を示す第1画像70を第三表示部26に表示させる。例えば、
図5の目的地点G1を車両12の目的地点に設定すると、目的地点G1は、車両12から200m以上離れているため、CPU30は、目的地点G1の方角を示す第1画像70を生成し、表示する。第1画像70は、
図6に示されるように、旗印の目的地アイコン70Aと目的地アイコン70Aを指す矢印型の方角アイコン70Bで構成され、第三表示部26の端に表示される。
図6では、左斜め前方を指す方角アイコン70Bによって、車両12の左斜め前方の方角に目的地点G1が存在することが分かる。CPU30は、ステップS103で第1画像70を表示したあと、ステップS102に戻って処理を繰り返す。
【0063】
CPU30は、ステップS104で、判定部58の機能に基づいて第三表示部26の表示領域に目的地点が示されているか否かについて判定する。具体的に、乗員は第三表示部26(ウインドシールドガラス18)を通して車両12の前景を視認するので、CPU30は、目的地点の地図データを参照し、ウインドシールドガラス18を通して目的地点が視認できるか否かについて判定する。そして、CPU30は、目的地点が視認できないと判定した場合には、ステップS105の処理へ移行し、目的地点が視認できると判定した場合は、ステップS106の処理へ移行する。
【0064】
CPU30は、ステップS105で、目的地点の方角を示す第1画像70を第三表示部26に表示させる。例えば、
図5の目的地点G2を車両12の目的地点に設定すると、目的地点G2は、周辺の建物B1~B3に遮られて、車両12から視認することができない。従って、CPU30は、目的地点G2の方角を示す第1画像70を生成し、表示する。目的地点G2は車両12の左斜め前方の方角に位置するので、
図6に示す第1画像70と同様に、方角アイコン70Bが、左斜め前方を指すように表示される。
【0065】
CPU30は、ステップS106で、第三表示部26を通して視認される目的地点に対応する位置に第2画像80を表示する。即ち、CPU30は、車両12から目的地点までの距離Lが200m未満であり、第三表示部26を介して視認できる目的地点の位置を、第2画像80で示す。
【0066】
図8及び
図9に示されるように、第2画像80は、乗員が第三表示部26(ウインドシールドガラス18)を通して前景を視認した場合に、乗員が視認している実像の目的地点に重なるように第2画像80を表示する。
図8に示されるように、第2画像80は、車両12から目的地点までの距離Lが距離L2(=100m)以上である場合は、焦点が合わない態様の矩形型の平面図形の態様で表示される。なお、焦点が合わない態様とは、画像の輪郭がぼやけて曖昧に示された状態であり、第三表示部26に焦点の合わない画像を投影することに限定されず、図形の輪郭を曖昧に表現した画像を生成して表示するものも含まれる。
図8(A)に示されるように、第三表示部26には、車両12の前方に存在する目的地点G3に重ねて輪郭が曖昧な状態の第2画像80が表示されている。この状態では、第2画像80は、乗員に対して、目的地点G3の存在する領域を示す表示となっている。
【0067】
CPU30は、ステップS107で、車両12及び目的地点の位置情報に基づいて、目的地点までの距離Lが距離L2未満であるか否かについて判定する。ここでは一例として、距離L2は100mに設定されている。CPU30は、ステップS107で車両12から目的地点までの距離Lが100m未満であるか否かについて判定する。そして、CPU30は、目的地点までの距離Lが100m以上ある場合には、ステップS108の処理へ移行し、目的地点までの距離Lが100m未満である場合には、ステップS109の処理へ移行する。なお、距離L2は、本発明における「第2閾値」に相当する。
【0068】
CPU30は、ステップS108で、車両12から目的地点までの距離Lが近づくにつれて第2画像80の大きさが徐々に小さくなるように表示する。これは、一例として、車両12から目的地点までの距離Lが近づくにつれて、第2画像80の焦点を徐々に合わせるように画像を変化させることで実現することができる。
【0069】
即ち、輪郭が殆ど分からない状態まで第2画像80の焦点をずらすと、表示領域に占める第2画像80の面積が大きくなり、同時に透過性が増す。この状態では、第2画像は、乗員が視認する前景の中である程度の大きさを有する領域に重なるようにして表示されるが、透過性の高い画像であることから、前景に対する乗員の視認性を低下させない。そして、第2画像80の焦点を徐々に合わせると、第2画像80の輪郭が明確になるに従い、表示領域に占める第2画像80の面積が小さくなる。この際、第2画像80の透過性も徐々に低下するため、前景の中の特定のポイントを示す画像として、存在感を確保することができる。
【0070】
一例として、
図8(A)~
図8(C)には、目的地点G3までの距離Lが200m未満の位置から100mの位置まで車両12が徐々に近づいた場合の第2画像80の変化が示されている。
図8(A)に示されるように、車両12から目的地点G3までの距離Lが200近く離れている位置では、前景の中の目的地点G3の存在が極めて小さく、かろうじて視認できる程度である。しかし、第三表示部26には、目的地点G3に重ねて第2画像が表示されるため、乗員は、走行車線の左前方の領域に目的地点G3が存在することが分かる。そして、
図8(B)及び
図8(C)に示されるように、車両12が目的地点G3に近づくに従い、おぼろげに表示された第2画像80の輪郭や色彩が次第に明確になり、目的地点G3の位置を明確に示す態様に変化する。
【0071】
CPU30は、ステップS108の処理が終了した後、ステップS107の処理を繰り返す。
【0072】
続いて、CPU30は、ステップS109で、車両12から目的地点までの距離Lが近づくにつれて第2画像80の大きさが徐々に大きくなるように表示する。このとき、第2画像80は、旗印を模した明確な画像として表示される。
【0073】
即ち、
図9に示されるように、車両12から目的地点G3までの距離Lが100m未満であれば、第三表示部26を介して、目的地点G3の付近を明確に視認することができる。従って、第三表示部26の表示領域内で徐々に接近する目的地点G3に合わせて第2画像80を拡大していくことで、乗員に対して、目的地点G3と一体となり、第2画像80が車両12に向かって接近するような視覚効果を与えることができる。
【0074】
CPU30は、ステップS109の処理が終了した後、ステップS110の処理に移行する。CPU30は、ステップS110で、車両12が目的地点に到着したか否かについて判定する。CPU30は、車両の位置情報に基づいて目的地点に到着したと判定した場合には、第三表示部26の表示領域から第2画像を削除して表示処理を終了する。一方、CPU30は、目的地点に到着していないと判定した場合には、ステップS109の処理を繰り返す。
【0075】
以上、説明したように、本実施形態に係る車両用表示装置10では、車両12の前景を示す第三表示部26の表示領域に所定の画像を表示させる。車両用表示装置10は、車両12の位置情報と目的地点の位置情報を取得し、車両12の位置と目的地点の位置との関係が目視に関する所定の条件を満たすか否かを判定する。そして、所定の条件を満たすと判定された場合に、目的地点の方角を示す第1画像70を表示領域に表示させる。これにより、車両12の位置と目的地点の位置との関係を考慮して、目的地点の方角を乗員に伝えることができる。
【0076】
具体的には、車両12から目的地点までの距離Lが距離L1(=200m)以上である場合に、目的地点の方角を示す第1画像70を表示領域に表示させる。これにより、例えば、車両から目的地点までの距離が充分に離れており、第三表示部26で目的地点を視認することが困難な場合に、第三表示部26に目的地点の方角が表示される。
【0077】
また、本実施形態では、目的地点の位置が、表示領域内の前景に示されない位置である場合に、目的地点の方角を示す第1画像70を表示領域に表示させる。これにより、例えば、周囲の建物に遮られ、表示領域からは目的地点が視認できない場合に、第三表示部26に目的地点の方角が表示される。
【0078】
このように、本実施形態に係る車両用表示装置10では、第三表示部26の表示領域から目的地点を視認することが困難であることが想定される場合に、第1画像70を表示するため、車両12の前景に含まれる目的地点と第1画像70とが表示領域に混在しない。従って、乗員に煩わしさを与えることなく目的地点に関する情報を表示させることができる。
【0079】
一方、本実施形態では、車両12と目的地点との位置関係が所定の条件を満たさない場合には、車両12の前景の目的地点に対応する位置に、当該目的地点を示す第2画像80を表示する。これにより、車両と目的地点の位置関係を考慮して、目的地点の位置を乗員に伝えることができる。
【0080】
具体的に、車両12と目的地点までの距離Lが距離L1(=200m)未満であって、第三表示部26を介して目的地点が視認できる場合に、第2画像80を表示する。
【0081】
この際、
図8に示されるように、第2画像80は、車両12から目的地点までの距離Lが距離L2(=100m)以上離れている場合は、画像の焦点が合わない態様で表示される。即ち、前景の中の目的地点の存在が極めて小さい位置では、第2画像80の輪郭を曖昧に表示することにより、乗員に対して目的地点の存在する領域を示す。その結果、乗員は、車両の前景の中に目的地点の存在する領域を早期に認識することができるので、目的地点への到着に備えることができる。
【0082】
また、第2画像80は、車両12から目的地点までの距離Lが近づくにつれて、焦点が合わない態様から徐々に焦点が合うように変化する。これにより、車両が目的地点に近づくにつれて、第2画像80の輪郭が次第に明確になり、目的地点の位置を明確に示す態様に変化する。このように、目的地点の手前の位置から、目的地点を徐々に明確に認識できる態様で第2画像を表示することにより、乗員は、煩わしさを感じることなく、目的地点までの到達度を認識することができる。
【0083】
更に、第2画像80の焦点が徐々に合うように変化するのと同時に、第2画像80は、車両12から目的地点までの距離Lが近づくにつれて徐々に小さくなるように表示される。即ち、車両12から目的地点までの距離Lが、比較的に離れている場合は、前景の中の目的地点の存在が極めて小さいため、第2画像80を敢えて大きく表示することで、乗員が前景を意識した状態のまま、目的地点が存在する領域を認識させることができる。そして、車両12が目的地点に近づくにつれて第2画像80を徐々に小さくすることで、目的地点の存在する領域を縮小し、乗員の意識が前景の中の目的地点へと自然に移行するように表示態様を変化させる。このようにして、車両12が目的地点に近付くに従い、目的地点に対する乗員の認識を第2画像から前景の中の目的地点へと自然に移行させることができる。
【0084】
また、本実施形態において、第2画像80は、車両12から目的地までの距離が距離L2(=100m)未満である場合に、車両から目的地点までの距離が近づくにつれて徐々に大きくなるように表示される。即ち、第三表示部26から目的地点が視認できる距離では、徐々に接近する目的地点に合わせて第2画像80の表示が拡大される。これにより、目的地点と一体となり、第2画像80が車両12に向かって接近するような視覚効果を乗員に与えることができるため、目的地点までの到達度を直感的に認識させることができる。
【0085】
また、本実施形態では、第三表示部26の表示領域が、運転席の車両前方でヘッドアップディスプレイ装置44によって投影された投影面とされている。また、車両の目的地点を示す第2画像80が、表示領域を通して視認される車両の前景において、目的地点に対応する位置に表示される構成となっている。このように、車両用表示装置10では、運転席からの前景に重ねて第2画像80を表示するため、運転席の乗員が視線を大きく動かすことなく目的地点を認識することができる。
【0086】
[補足説明]
上記実施形態では、車両の前景を示す表示領域がヘッドアップディスプレイ装置44の投影面で構成される場合について説明したが、本発明はこれに限らない。
図10に示す変形例に係る車両用表示装置100のように、インストルメントパネル14に設けられたディスプレイである第二表示部25の表示領域に第1画像70又は第2画像80を表示してもよい。
図10に示す第二表示部25には、表示領域の下部に車両12の現在位置を示す地図画像Nが表示されており、表示領域の上部に、車両の前景を示す前景画像Fが示されている。前景画像Fは、例えば、車両12の前方を撮影する図示しないカメラから取得される画像、又はアニメーションによる前景画像で構成される。上記構成によれば、車室内の乗員の着座位置に関わらず、第二表示部25を視認した乗員は、車両12の目的地点に関する情報を認識することができる。
【0087】
同様に、インストルメントパネル14において、運転席の車両前方に設けられたメータディスプレイである第一表示部24の表示領域に第1画像70又は第2画像80を表示してもよい。第一表示部24は運転席の車両前方に設けられているため、運転席の乗員は、車両の前景からほとんど視線を動かすことなく第一表示部24を視認することができ、車両12の目的地点に関する情報を認識することができる。
【0088】
また、上記実施形態で説明した第1画像70及び第2画像80の表示態様は一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【0089】
また、上記実施形態の表示処理は、車両が自動運手で走行する際に第三表示部26の表示領域に第1画像70及び第2画像80が表示される構成としたが、これに限らない。例えば、設定した目的地点まで手動運転で走行する場合に、第三表示部26の表示領域に第1画像70及び第2画像80が表示する構成としてもよい。
【0090】
また、上記実施形において、表示領域に第1画像を表示させるか否かを判断するための「目視に関する所定の条件」は、車両付近の環境に関する周辺情報に基づいて、乗員が表示領域から目的地点を視認することができないと判断される場合としてもよい。即ち、車両の現在位置の周辺環境が、濃霧や防風雨などの悪天候である場合や、街灯の少ない夜道である場合に、乗員が表示領域から目的地を視認することができないと判断して、表示領域に第1画像70を表示させる。
【0091】
なお上記実施形態において、発明が解決しようとする課題を「乗員が、煩わしさを感じることなく目的地点の存在を早期に認識することができる車両用表示装置、表示方法及びプログラムを提供すること」として捉えると、「車両の前景を示す表示領域に所定の画像を表示させる車両用表示装置であって、車両の位置情報と目的地点の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記表示領域に示される車両の前景において、目的地点に対応する位置に、当該目的地点を示す画像(第2画像)を表示させる表示部と、を備え、前記表示部は、車両から目的地点までの距離が所定の閾値(距離L2)以上である場合に、前記画像を焦点が合わない態様にして前記表示部に表示させる。」という構成で課題を解決することができる。
【0092】
即ち、車両から目的地点までの距離が所定の閾値以上離れており、車両の前景の中で目的地点の存在が極めて小さい場合は、車両から目的地点までの距離に関する情報を文字等で表示しても直感的に認識することが困難である。しかしながら、上記構成によれば、車両から目的地点までの距離が所定の閾値以上である場合に、第2画像を焦点が合わない態様で表示させる。これにより、表示領域には、目的地点に対応する位置に輪郭が曖昧な態様となった第2画像が重ねられることで、目的地点の存在する領域が示される。これにより、乗員は、車両前方側の景色に意識を集中させたまま、目的地点の存在する領域を認識することができるため、煩わしさを感じることなく目的地点の存在を早期に認識することができる。
【0093】
なお、上記実施形態の表示処理において、上記構成の発明のみを実施する処理を行う場合は、
図4に記載の表示処理のフローチャートから、S102~S105のステップを削除して実施すればよい。
【0094】
なお、上記実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した表示処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、表示処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
また、上記各実施形態では、表示処理及び車線変更表示処理のプログラムがROMまたはストレージに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0095】
10 車両用表示装置
12 車両
24 第一表示部(表示領域)
25 第二表示部(表示領域)
26 第三表示部(表示領域、投影面)
44 ヘッドアップディスプレイ装置
56 位置情報取得部
58 判定部
62 表示部
70 第1画像
80 第2画像
L1 距離(第1閾値)
L2 距離(第2閾値)