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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】給湯システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/196 20220101AFI20250401BHJP
   F24H 15/246 20220101ALI20250401BHJP
   F24H 15/254 20220101ALI20250401BHJP
   F24H 15/395 20220101ALI20250401BHJP
【FI】
F24H15/196 301N
F24H15/196 301X
F24H15/246
F24H15/254
F24H15/395
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022017436
(22)【出願日】2022-02-07
(65)【公開番号】P2023114871
(43)【公開日】2023-08-18
【審査請求日】2024-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 航太
(72)【発明者】
【氏名】風間 史郎
(72)【発明者】
【氏名】平 翔登
(72)【発明者】
【氏名】黒森 雄斗
(72)【発明者】
【氏名】畠山 真慈
(72)【発明者】
【氏名】北尾 啓祐
(72)【発明者】
【氏名】北村 拓也
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-310462(JP,A)
【文献】特開2019-086178(JP,A)
【文献】特開2020-106266(JP,A)
【文献】特開2017-194212(JP,A)
【文献】特開2020-190394(JP,A)
【文献】特開2005-058299(JP,A)
【文献】特開2018-117847(JP,A)
【文献】特開2003-004295(JP,A)
【文献】特開2000-055457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 15/196
F24H 15/246
F24H 15/254
F24H 15/395
A47K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯機と、
前記給湯機が使用される浴室内の複数の箇所それぞれの温度に応じた検出値を出力するサーモパイルセンサと、
前記検出値を取得可能に構成されると共に、前記給湯機の動作を制御可能に構成された制御装置と、
を備え、
前記サーモパイルセンサは、前記サーモパイルセンサから前記浴室内を投影した平面を格子状に分けた複数の区画それぞれに対応する前記検出値を出力し、
前記制御装置は、
前記検出値に基づいて、前記浴室の壁面温度と浴槽内に張られた浴水の水温とを取得して、前記壁面温度及び前記水温に基づいて、入浴時間の基準となる推奨入浴時間を変更し、
前記複数の区画それぞれに対応する検出値に基づいて、前記複数の区画それぞれの温度を取得し、
前記複数の区画の中の前記浴槽がある部分に対応する区画のうち、第2基準数より多い数の区画の温度が、前記壁面温度に応じた温度から第2基準温度より高い温度に変化したことを検出した場合、入浴者の入浴開始を検出する、
ことを特徴とする給湯システム。
【請求項2】
給湯機と、
前記給湯機が使用される浴室内の複数の箇所それぞれの温度に応じた検出値を出力するサーモパイルセンサと、
前記検出値を取得可能に構成されると共に、前記給湯機の動作を制御可能に構成された制御装置と、
前記浴槽の水位を検出する水位センサと、
を備え、
前記サーモパイルセンサは、前記サーモパイルセンサから前記浴室内を投影した平面を格子状に分けた複数の区画それぞれに対応する前記検出値を出力し、
前記制御装置は、
前記検出値に基づいて、前記浴室の壁面温度と浴槽内に張られた浴水の水温とを取得して、前記壁面温度及び前記水温に基づいて、入浴時間の基準となる推奨入浴時間を変更し、
前記複数の区画それぞれに対応する検出値に基づいて、前記複数の区画それぞれの温度を取得し、
前記複数の区画の中の前記浴槽がある部分に対応する区画のうち、第2基準数より多い数の区画の温度が、前記壁面温度に応じた温度から第2基準温度より高い温度に変化したことを検出し、かつ、前記浴水の水位が上昇したことを検出した場合、入浴者の入浴開始を検出する、
ことを特徴とする給湯システム。
【請求項3】
前記給湯機の運転状態に関する情報を報知可能な報知手段を、備え、
前記制御装置は、前記報知手段により、前記推奨入浴時間に応じた退浴時刻、又は、前記推奨入浴時間の変更の情報を報知する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の給湯システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記複数の区画のうち、温度が第1基準温度より高い区画の数が、第1基準数より多い場合、湯はりされた状態にあると判定することを特徴する請求項1からのいずれか1項に記載の給湯システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記入浴開始を検出した時刻から前記推奨入浴時間の経過後の時刻を退浴時刻に設定することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の給湯システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記壁面温度が第3基準温度より低く、かつ、前記水温が第4基準温度より高い場合、前記推奨入浴時間を短くするように変更することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の給湯システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記壁面温度が第3基準温度より高く、かつ、前記水温が第4基準温度より低い場合、前記推奨入浴時間を長くするように変更することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の給湯システム。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記サーモパイルセンサの検出値に基づいて、入浴者の皮膚温度を取得して、
前記皮膚温度が第5基準温度より上昇した場合、前記浴水の温度を低下させるように前記給湯機を動作させる、
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の給湯システム。
【請求項9】
前記給湯機の運転状態に関する情報を報知可能な報知手段を、備え、
前記制御装置は、
前記サーモパイルセンサの検出値に基づいて、入浴者の皮膚温度を取得して、
前記入浴者が入浴を開始してから第1基準時間経過するまでの期間における前記皮膚温度の変化量が第6基準温度より大きい場合、前記報知手段により、前記入浴者に退浴を推奨することを報知する、
ことを特徴とする請求項に記載の給湯システム。
【請求項10】
前記給湯機の運転状態に関する情報を報知可能な報知手段を、備え、
前記制御装置は、前記浴槽への湯はり開始時における前記壁面温度が第7基準温度より低い場合、前記報知手段により、浴室暖房機の運転を推奨することを報知する
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の給湯システム。
【請求項11】
前記浴室の外に設置され、前記制御装置と相互に通信可能に接続された外部報知手段を、更に備え、
前記外部報知手段は、入浴者の入浴開始、前記入浴者の有無、前記入浴者の退浴推奨時刻、前記入浴者の退浴時刻、及び、前記入浴者の退浴有無のうち、少なくとも1つの情報を前記外部報知手段により報知する、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の給湯システム。
【請求項12】
前記制御装置は、前記検出値が第2基準時間の間変化せず、かつ、前記浴槽の水位の変動が検出されなかった場合、前記外部報知手段により異常発生を報知することを特徴とする請求項11に記載の給湯システム。
【請求項13】
前記給湯機の運転状態に関する情報を報知可能な報知手段と、
前記浴室に設置され、前記給湯機の運転に関する指令の入力を受け付ける入力手段と、
前記浴室の外に設置され、前記給湯機の運転状態に関する情報を報知可能な外部報知手段と、
を備え、
前記制御装置は、前記報知手段により前記入浴者に退浴を推奨した後、前記入力手段への入力がない場合、前記外部報知手段により、前記入浴者の異常を報知する、
ことを特徴とする請求項11又は12に記載の給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、風呂システムが開示されている。特許文献1の風呂システムは、皮膚に接触させる体温計又は赤外線式の非接触式体温計によって取得された入浴者の体調情報と、湯温と、浴室温度と、に基づいて、入浴者が退浴するタイミングと睡眠を開始する入眠時刻とを決定する機能を有している。そして、入浴者が入浴を開始すると、退浴タイミング及び入眠時刻が助言される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-120604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の風呂システムでは、皮膚に接触させる体温計又は赤外線式の非接触式体温計を用いて入浴者の情報が取得される。しかしながら体温計を用いた場合に得られる情報は乏しいものであり、限定的な健康訴求機能が提供されるのみである。
【0005】
また、従来の給湯システムには、人感検知により入浴者を見守る機能を有するものがあるが、人感検知に際しては、通常、焦電センサによる局所的、瞬間的な温度変化を検知して、浴室内の人の有無を判断する手法が用いられている。しかしながら、この手法は、浴室内の急激な温度変化あるいは日射影響によって誤判定を出しやすい。
【0006】
本開示は、上記の課題に鑑みて、浴室温度、及び、浴水の水温に応じて、より適した入浴方法を推奨できるよう改良された給湯システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る給湯システムは、給湯機と、給湯機が使用される浴室内の複数の箇所それぞれの温度に応じた検出値を出力するサーモパイルセンサと、検出値を取得可能に構成されると共に、給湯機の動作を制御可能に構成された制御装置と、を備え、サーモパイルセンサは、サーモパイルセンサから浴室内を投影した平面を格子状に分けた複数の区画それぞれに対応する検出値を出力し、制御装置は、検出値に基づいて、浴室の壁面温度と浴槽内に張られた浴水の水温とを取得して、壁面温度及び水温に基づいて、入浴時間の基準となる推奨入浴時間を変更し、複数の区画それぞれに対応する検出値に基づいて、複数の区画それぞれの温度を取得し、複数の区画の中の浴槽がある部分に対応する区画のうち、第2基準数より多い数の区画の温度が、壁面温度に応じた温度から第2基準温度より高い温度に変化したことを検出した場合、入浴者の入浴開始を検出する。
あるいは、本開示に係る給湯システムは、給湯機と、給湯機が使用される浴室内の複数の箇所それぞれの温度に応じた検出値を出力するサーモパイルセンサと、検出値を取得可能に構成されると共に、給湯機の動作を制御可能に構成された制御装置と、浴槽の水位を検出する水位センサと、を備え、サーモパイルセンサは、サーモパイルセンサから浴室内を投影した平面を格子状に分けた複数の区画それぞれに対応する検出値を出力し、制御装置は、検出値に基づいて、浴室の壁面温度と浴槽内に張られた浴水の水温とを取得して、壁面温度及び水温に基づいて、入浴時間の基準となる推奨入浴時間を変更し、複数の区画それぞれに対応する検出値に基づいて、複数の区画それぞれの温度を取得し、複数の区画の中の浴槽がある部分に対応する区画のうち、第2基準数より多い数の区画の温度が、壁面温度に応じた温度から第2基準温度より高い温度に変化したことを検出し、かつ、浴水の水位が上昇したことを検出した場合、入浴者の入浴開始を検出する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、サーモパイルセンサによって壁面温度及び浴水の水温を取得することができ、これにより、入浴時間が浴室環境に応じた時間となるように推奨入浴時間を変更することができる。従って、入浴によるのぼせ、ヒートショック、及び、浴室内熱中症等の入浴者の不調発生を抑制することができ、より快適な入浴環境を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る給湯システムの構成を模式的に示す図である。
図2】実施の形態1に係る給湯システムで用いられるサーモパイルセンサから浴室内を覗いた状態を例示する投影図である。
図3】実施の形態1に係る給湯システムで用いられるサーモパイルセンサによって出力された温度画像データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。なお本開示では、「水」、「湯」、及び、「湯水」等の表現を用いるが、これらは水の温度を厳密に限定するものではなく、特に温度の限定がない場合、低温の水から、高温の湯まで、あらゆる温度の液体の水が含まれうるものとする。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る給湯システムの構成を模式的に示す図である。本実施の形態に係る給湯システム100は、給湯機1を備える。給湯機1は、例えば、貯湯タンクを有する貯湯式給湯機でもよいし、燃料の燃焼によって湯を生成する瞬間式給湯機でもよい。給湯機1には、制御装置2が備えられている。制御装置2は、メモリ及びプロセッサを有するマイクロコンピュータ等を備えている。制御装置2は、給湯機1の動作を制御して、入浴環境を、設定された条件である入浴環境設定に整える機能を有している。具体的には、例えば、制御装置2は、給湯機1から供給される湯水の温度を設定温度に調整して、浴槽4、又は、カラン及びシャワー等の給湯先に供給する。
【0012】
給湯システム100は、居室リモコン5及び浴室リモコン8を備えている。浴室リモコン8は、浴槽4が設置された浴室3内に設置され、浴槽4から操作することができる。居室リモコン5は、浴室3外の、例えば、浴室3が設置された宅内の台所、又は、リビング等に設置される。居室リモコン5は、複数設置されていてもよい。なお、以下の説明において、居室リモコン5と浴室リモコン8とを特に区別する必要がない場合には、単に「リモコン」と称することとする。制御装置2と各リモコンとは、有線又は無線により双方向に通信可能に接続されている。制御装置2と各リモコンとは、ネットワークを介して通信可能でもよい。
【0013】
リモコンは、ユーザーインターフェースの例である。居室リモコン5は、情報を画面表示する表示部7と、音声により情報を報知するための音声部6とを有する。表示部7及び音声部6は、外部報知手段として機能する。また浴室リモコン8は、情報を表示する表示部11と、音声により情報を報知するための音声部9とを有する。表示部11及び音声部9は、報知手段として機能する。また、各リモコンは、ユーザーが操作可能な操作部を有する。リモコンの操作部は、給湯機1の運転動作及び設定値に関する指令の操作入力を受け付ける入力手段としての機能を有する。ユーザーは、操作部を操作することで、給湯機1を遠隔操作したり、各種の設定などを行ったりすることができる。各リモコンは、表示部及び操作部の両方の機能を有するタッチスクリーンを備えてもよい。
【0014】
また、居室リモコン5に替えて、あるいは居室リモコン5とは別に、例えば、スマートフォンのような外部通信機器を、給湯機1のユーザーインターフェースとして機能するように構成してもよい。この場合、外部通信機器は、例えば、ホームネットワークを介して制御装置2と通信可能に接続される。これにより、ユーザーは、外部通信機器から指令を入力して給湯機1の運転を操作することができる。
【0015】
浴室リモコン8には、サーモパイルセンサ10が取り付けられている。サーモパイルセンサ10は、赤外線センサをアレイ状に配置させたアレイセンサであり、視野範囲内の表面温度をマトリクス状に検出することができる。
【0016】
図2は、サーモパイルセンサ10から浴室3内を覗いた状態を模式的に示す投影図である。図2に示されるように、サーモパイルセンサ10は、その視野範囲に、浴槽4及び浴室壁面14が含まれるように設置されている。また、図2では、浴槽4には浴水12が張られ、入浴者13が入浴中である例が示されている。図2に示されるように、サーモパイルセンサ10は、浴室3内の視野範囲を投影した平面を格子状にとらえる。
【0017】
図3は、サーモパイルセンサ10の出力に基づき取得された浴室3内の視野範囲の温度画像データを模式的に示す図である。サーモパイルセンサ10は、浴室3内の複数の箇所それぞれの温度に応じた検出値を出力する。より具体的には、サーモパイルセンサ10は、視野範囲の物体又は人からの赤外線を吸収した受光部の温度に基づく信号を、図3に示されるように、複数の区画それぞれに対応する検出値として出力する。即ち、サーモパイルセンサ10の検出値は、各区画の温度を示す値又は温度と相関を有する値である。
【0018】
制御装置2は、サーモパイルセンサ10の検出値を取得可能に構成され、検出値に基づいて視野範囲の各区画の温度に応じた温度パラメータ及び視野範囲の温度パラメータの分布を取得することができる。具体的に、制御装置2は、図3の例に示されるように、浴室3の壁面温度、浴水の水温(以下「湯温」とも称する)、及び、入浴者の皮膚温度に応じた温度パラメータを取得することができる。また、制御装置2は、取得した温度パラメータ及びその変化に基づいて、各種の検出及び判定を行うことができる。以下、制御装置2により検出又は判定される事項について具体的に説明する。
【0019】
制御装置2は、温度パラメータに基づいて、浴槽4への湯はりの有無を判定する。具体的に、浴槽4に湯はりが行われた場合、図3に示されるように、浴槽4が設置された場所に対応する区画15の温度パラメータが、浴水12の湯温に対応する値に上昇する。従って、例えば、制御装置2は、視野範囲の全区画のうち、その温度パラメータが第1基準温度より高い区画の数が、第1基準数を越えた場合に、湯はりされた状態にあると判定することができる。ここで、第1基準温度は、浴水の有無を検出可能な閾値である。従って、第1基準温度は、例えば、湯はり設定温度で湯はりされた浴水の湯温を、制御装置2が取得した場合の温度パラメータの値に基づいて予め設定することができる。また第1基準数は、視野範囲の浴槽4の設置個所に対応する区画数に基づいて予め設定された値である。
【0020】
また、制御装置2は、各区画の温度パラメータに基づいて、入浴者13の浴槽4内への入浴の有無を検出する。具体的に、図3に示されるように、入浴者13が存在する区画16に対応する温度パラメータは、入浴者13の皮膚温度に対応した温度となる。従って、制御装置2は、その温度パラメータが浴室壁面温度を示していた区画のうち、浴槽4に対応する区画の中で、温度パラメータが第2基準温度より高い温度に上昇した区画の数が、第2基準数より多くなったことを検出した場合に、入浴者13の入浴開始を検出する。ここで、第2基準温度は、第1基準温度より低い温度であり、人の皮膚温度か否かを判定するための閾値である。従って、例えば、第2基準温度は人の皮膚温度を制御装置2が取得した場合の温度パラメータの値に基づいて予め設定することができる。また、第2基準数は、例えば、入浴者13が入浴した場合に、浴槽4に対応する区画と入浴者13が浴水12からはみ出す部分の大きさに応じた区画とに基づいて予め設定された値である。また、制御装置2は、浴槽4に対応する区画の中で、その温度パラメータが第2基準温度より高い区画の数が第2基準数より多い状態が続く間、入浴者13が入浴中であると判定する。
【0021】
あるいは、制御装置2は、全区画のうち所定数より多くの区画の温度パラメータが、例えば第2基準温度等の所定温度より高くなった場合に、入浴開始を検出する構成であってもよい。あるいは制御装置2は、浴室3の壁面温度を検知していた区画17のうち所定数以上の区画で、特定の時間内に温度パラメータが大きく上昇したことを検出した場合に、入浴開始を検出する構成としてもよい。
【0022】
なお、給湯機1は、入浴開始を検出するための手段として、サーモパイルセンサ10とは別のセンサを備えていてもよい。例えば、給湯機1又は浴槽4は、浴槽4の水位を検出する水位センサを備えてもよい。この場合、制御装置2は、水位センサにより検出される水位が一定量上昇したことに基づいて、入浴者13の入浴開始を検出することができる。また、その温度パラメータが壁面温度を示していた区画のうち、浴槽4に対応する区画の中で、温度パラメータが第2基準温度より高い温度に上昇した区画の数が、第2基準数より多くなったことを検出し、かつ、水位センサにより検出される水位が一定量上昇したことを検出した場合に、入浴者13の入浴開始を検出する構成としてもよい。また、浴室3内には、入浴者を検出する人感センサ等が設けられていてもよい。これらのセンサによる検知を組み合わせることで、より正確に入浴開始又は退浴を判定することができる。
【0023】
制御装置2は、温度パラメータが示す温度分布に基づいて、浴槽4内の入浴者13の位置を判定する。図3に示されるように、浴室3内の温度分布は、壁面温度に相当する比較的低温の部分と、浴水の温度に相当する第1基準温度近傍の比較的高温の部分と、入浴者13の皮膚温度に対応する第2基準温度程度の中間温度の部分に分けられる。従って、温度パラメータが中間温度を示している区画を特定することで、制御装置2は、入浴者13の入浴位置を検出することができる。
【0024】
本実施の形態において、制御装置2は、更に、以上の検出又は判定に基づいて、給湯機1の動作又はリモコンによる報知を制御する。以下、これについて説明する。
【0025】
制御装置2は、温度パラメータに基づいて算出された、壁面温度、湯温、及び、皮膚温度に基づいて、入浴時間の基準となる推奨入浴時間を算出する。推奨入浴時間の算出方法について限定はない。
【0026】
制御装置2は、取得した浴室3の壁面温度が第3基準温度より低く、湯温が第4基準温度より高い場合、推奨入浴時間を短くするように調整する。壁面温度が低く湯温が高い場合、入浴及び退浴時の大きな温度差によって血圧が急激に上下し、ヒートショックを起こす虞がある。また、長時間の入浴は血圧の低下だけでなく、発汗に伴う血液濃度の上昇により、脳梗塞や心筋梗塞の原因にもなり得る。従って、壁面温度が低く湯温が高いような環境の場合には、推奨入浴時間を短くするように調整される。
【0027】
制御装置2は、更に、壁面温度が第3基準温度より高く、湯温が第4基準温度より低い場合、推奨入浴時間を長くなるように調整する。壁面温度と浴水の水温との差が小さい状態であれば、入浴により副交感神経が刺激され疲労回復やリラックス効果が得られるためである。
【0028】
なお、推奨入浴時間を短くする方法又は長くする方法に限定はない。例えば、一定時間を一律に短く又は長くする、あるいは温度差に応じた時間分を短く又は長くするといった方法であってもよいし、推奨入浴時間に対して一定の係数又は、温度差等に応じて設定される係数を乗じてもよい。上記の制御により、推奨入浴時間が変更された場合、制御装置2は、リモコンの音声部6、9又は表示部7、11により、推奨入浴時間が短く又は長くされたことを報知する。
【0029】
また、制御装置2が、推奨入浴時間を延長又は短縮する判断の基準は、壁面温度と第3基準温度との比較結果、及び、湯温と第4基準温度との比較結果に限られない。例えば、制御装置2は、湯温から壁面温度と引いた差が所定の第1の閾値より大きい場合に、推奨入浴時間を短縮化し、湯温から壁面温度を引いた差が所定の第2の閾値より小さい場合に、推奨入浴時間を延長するように構成されていてもよい。
【0030】
制御装置2は、入浴者13の入浴開始を検出した時刻から推奨入浴時間(調整された場合には、調整後の推奨入浴時間)経過後の時刻を退浴タイミングとして決定する。決定された退浴タイミングは、浴室リモコン8の音声部9あるいは表示部11から退浴時刻を報知する。これにより、入浴者13は疲労回復やリラックスに適した入浴時間を知ることができ、入浴中にのぼせを起こすことなく適切なタイミングで退浴することができる。
【0031】
制御装置2は、入浴者13の入浴中、温度パラメータに基づいて、入浴者13の皮膚温度をモニターする。入浴中に入浴者13の皮膚温度が、第5基準温度より上昇した場合、給湯機1の動作を制御して、湯温を低下させる。入浴中の体温上昇は、発汗により脳内の血流が減少し、意識障害を起こす浴室内熱中症を発症させる虞がある。従って、入浴者13の皮膚温度が高い場合に、湯温を低下させることで、入浴者の体温上昇を抑制し、浴室内熱中症の発症を抑制する。制御装置2は、湯温を低下させた場合、浴室リモコン8の音声部9又は表示部11から、入浴者13の皮膚温度を通知すると共に、湯温を低下させた旨を報知する。なお、湯温を下げる方法に限定はないが、例えば、熱交換又はさし水等が挙げられる。
【0032】
制御装置2は、入浴開始を検知した時点から第1基準時間経過するまでの期間における、入浴者13の皮膚温度に応じた温度パラメータの変化量が、第6基準温度より大きい場合、浴室リモコン8の音声部9又は表示部11により退浴を推奨することを報知するように構成されたものであってもよい。この報知により入浴者13は浴室熱中症回避のため退浴するか、湯温を下げるかを選択し対処することができる。
【0033】
制御装置2は、湯はり開始時の壁面温度が第7基準温度より低い場合、浴室リモコン8、居室リモコン5、又は、外部通信機器を介して、図示しない浴室暖房機(あるいはバス乾燥機)の運転を推奨することを報知する構成であってもよい。ヒートショック発生の一因は、寒い浴室で血管が収縮し血圧が上昇した状態から、入浴で血管が拡張し血圧が急激に低下することにある。従って、浴室暖房機等の運転によって壁面温度と湯温の差を小さくすれば、入浴者13のヒートショック発生を抑制できるためである。
【0034】
本実施の形態において、制御装置2は、居室リモコン5又は外部通信機器が有する外部報知手段によって、入浴者13の入浴開始、入浴者13の有無、入浴者13の退浴推奨時刻、入浴者13の退浴時刻、及び、入浴者13の退浴有無等の情報を報知する。また、制御装置2は、入浴者の入浴開始を検出した後、第2基準時間の間退浴が検知されなかった場合、異常発生と判定する。ここで、退浴が検知されなかった場合とは、例えば、入浴開始を検出した後、第2基準時間の間、温度パラメータが有効な変化を示さず、水位センサが変動を検知しなかった場合、あるいは、入浴者13に退浴を推奨してから所定時間浴室リモコン8への応答がない場合が挙げられる。制御装置2は異常発生と判定した場合、居室リモコン5及び外部通信機器の少なくとも一方により異常発生の旨の報知を行う。異常を外部に報知することで、ヒートショック発生時にも早期発見が可能とすることができる。
【0035】
以上説明した通り、本実施の形態の給湯システム100によれば、サーモパイルセンサ10により、入浴者13の皮膚温度、壁面温度、及び、湯温の変化を取得することができ、これにより、入浴環境及び入浴者の状態に応じた入浴方法を推奨することができる。
【0036】
なお、本実施の形態では、サーモパイルセンサ10の出力に基づき算出された壁面温度、皮膚温度、及び、湯温と、温度分布の変化とに基づいて、種々の制御を実行する場合について説明した。しかし、本開示に係る給湯システムは、上述した全ての制御を実行する機能を有するものに限られず、いずれか1以上の制御を実行する構成であってもよい。
【0037】
なお、以上の実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この発明が限定されるものではない。また、この実施の形態において説明する構造やステップ等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
【符号の説明】
【0038】
1 給湯機、 2 制御装置、 3 浴室、 4 浴槽、 5 居室リモコン、 6 音声部、 7 表示部、 8 浴室リモコン、 9 音声部、 10 サーモパイルセンサ、 11 表示部、 12 浴水、 13 入浴者、 14 浴室壁面、 15、16、17 区画、 100 給湯システム
図1
図2
図3