(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】台車牽引装置
(51)【国際特許分類】
B62B 5/00 20060101AFI20250401BHJP
【FI】
B62B5/00 C
(21)【出願番号】P 2022020008
(22)【出願日】2022-02-11
【審査請求日】2024-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 泰弘
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0194754(US,A1)
【文献】登録実用新案第3189006(JP,U)
【文献】特開2005-096503(JP,A)
【文献】実開平06-061647(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送台車の牽引に用いる台車牽引装置であって、
横向きの牽引位置と上記牽引位置から起立した待機位置とに切り替え可能となるように上記搬送台車に設けられる牽引部材と、
上記牽引部材の切り替えのための操作部材と、
上記牽引部材と上記操作部材を互いの相対位置が可変となるように連結する連結機構部と、
を備え、
上記操作部材は、上記牽引部材に対する相対位置を変える操作がなされることにより、上記牽引位置にある上記牽引部材よりも高所で操作される操作姿勢を形成可能となるように構成されて
おり、
上記牽引部材が上記牽引位置にあるときに上記操作部材を上記操作姿勢で保持するための第1保持部と、
上記牽引部材が上記待機位置にあるときに上記操作部材を上記操作姿勢で保持するための第2保持部と、
を備え、
上記連結機構部は、上記牽引部材に固定されたブラケットと、上記操作部材に固定された切り替えピンと、を備え、上記ブラケットには、互いに直交するように延びる第1孔部及び第2孔部からなる略L字状のガイド孔が上記切り替えピンをガイド可能に設けられており、
上記牽引部材が上記牽引位置にあるとき、上記切り替えピンが上記ガイド孔の上記第2孔部をスライドするように上記操作部材が動くことで上記第1保持部による上記操作部材の保持状態と保持解除状態が切り替わり、上記牽引部材が上記待機位置にあるとき、上記切り替えピンが上記ガイド孔の上記第1孔部をスライドするように上記操作部材が動くことで上記第2保持部による上記操作部材の保持状態と保持解除状態が切り替わる、台車牽引装置。
【請求項2】
上記牽引部材は、上記牽引位置から上記待機位置までの間で回動可能となるように上記搬送台車に取り付けられ、上記牽引部材と上記操作部材が上記連結機構部によって互いに回動可能に連結されており、
上記連結機構部は、上記操作部材が上記操作姿勢を形成したままの状態で上記牽引部材の上記牽引位置から上記待機位置までの間の回動操作を可能とするように構成されている、請求項1に記載の台車牽引装置。
【請求項3】
上記牽引部材は、上記第2保持部が上記操作部材の保持を解除したときにその重量バランスにしたがって上記牽引位置まで動くように構成されている、請求項
1または2に記載の台車牽引装置。
【請求項4】
上記牽引部材が上記待機位置にあるとき、この牽引部材よりも高所に上記操作部材の把持部が位置するように構成されている、請求項1~
3のいずれか一項に記載の台車牽引装置。
【請求項5】
上記牽引部材が上記牽引位置にあるときに上記操作部材が横向きに配置されたときには、上記牽引部材よりも外側まで上記操作部材の把持部がはみ出すように構成されている、請求項1~
4のいずれか一項に記載の台車牽引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送台車の牽引に用いる台車牽引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、部品搬送台車が開示されている。この部品搬送台車の台車本体には、牽引時に使用される牽引フックと称される牽引部材が設けられている。牽引部材は、手押し時には縦向きの状態で手押しハンドルの内側に収納され、牽引時には手押しハンドルの内側から取り出して横向きの状態に設定されるように構成されている。このため、作業者は、部品搬送台車を手押しするときには、牽引部材を縦向きの状態に設定して手押しハンドルを操作する。これに対して、作業者は、部品搬送台車を走行車両で牽引するときには、牽引部材を縦向きの状態から横向きの状態に切り替えた後、この牽引部材を走行車両に連結する操作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の部品搬送台車を使用する場合、作業者は牽引部材を手指で直に把持して縦向きの状態と横向きの状態とに切り替える操作を要する。そして、この操作は作業者が牽引部材の横向き時の高さに合わせて腰を曲げて行う作業であるところ、搬送台車を牽引するときの作業負担が大きいという問題を抱えている。一般的に、牽引部材の横向きでの高さは、走行車両の連結部分の高さに合わせて比較的低所に設定されていることが多いため、搬送台車の牽引技術の設計に際しては、上述の問題の解決が望まれている。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、搬送台車を牽引するときの作業性に優れた台車牽引装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
搬送台車の牽引に用いる台車牽引装置であって、
横向きの牽引位置と上記牽引位置から起立した待機位置とに切り替え可能となるように上記搬送台車に設けられる牽引部材と、
上記牽引部材の切り替えのための操作部材と、
上記牽引部材と上記操作部材を互いの相対位置が可変となるように連結する連結機構部と、
を備え、
上記操作部材は、上記牽引部材に対する相対位置を変える操作がなされることにより、上記牽引位置にある上記牽引部材よりも高所で操作される操作姿勢を形成可能となるように構成されており、
上記牽引部材が上記牽引位置にあるときに上記操作部材を上記操作姿勢で保持するための第1保持部と、
上記牽引部材が上記待機位置にあるときに上記操作部材を上記操作姿勢で保持するための第2保持部と、
を備え、
上記連結機構部は、上記牽引部材に固定されたブラケットと、上記操作部材に固定された切り替えピンと、を備え、上記ブラケットには、互いに直交するように延びる第1孔部及び第2孔部からなる略L字状のガイド孔が上記切り替えピンをガイド可能に設けられており、
上記牽引部材が上記牽引位置にあるとき、上記切り替えピンが上記ガイド孔の上記第2孔部をスライドするように上記操作部材が動くことで上記第1保持部による上記操作部材の保持状態と保持解除状態が切り替わり、上記牽引部材が上記待機位置にあるとき、上記切り替えピンが上記ガイド孔の上記第1孔部をスライドするように上記操作部材が動くことで上記第2保持部による上記操作部材の保持状態と保持解除状態が切り替わる、台車牽引装置、
にある。
【発明の効果】
【0007】
上述の態様の台車牽引装置において、操作部材が操作されることによって、牽引部材が横向きの牽引位置と牽引位置から起立した待機位置とに切り替えられる。このとき、牽引部材と操作部材は、連結機構部で連結されており、この連結機構部によって互いの相対位置が可変となるように構成されている。
【0008】
ここで、操作部材が連結機構部を介して牽引部材に対する相対位置を変えるよう操作されたとき、この操作部材は、牽引位置にある横向きの牽引部材よりも高所で操作される操作姿勢を形成することができる。このため、作業者は、搬送台車を牽引するときの作業において、牽引部材を手指で直に把持することなく、牽引位置にある横向きの牽引部材よりも高所で操作部材を操作して、牽引部材の位置の切り替えを行うことができる。このような操作は、作業者が牽引部材の横向き時の高さに合わせて腰を曲げて行う作業に比べて作業負担が小さい。
【0009】
以上のごとく、上述の態様によれば、搬送台車を牽引するときの作業性に優れた台車牽引装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1にかかる搬送台車を走行車両で牽引するときの様子を示す側面図。
【
図5】実施形態1の台車牽引装置を牽引部材が縦向きの待機位置にあり且つ操作部材が縦向きの操作姿勢にあるときの状態にて示す側面図。
【
図8】
図7の連結機構部をその状態から操作部材が持ち上げられた後の状態にて示す側面図。
【
図9】
図8の連結機構部をその状態から操作部材が持ち上げられた後の状態にて示す側面図。
【
図10】
図9の連結機構部をその状態から牽引部材が牽引位置まで回動した後の状態にて示す側面図。
【
図11】
図10の連結機構部をその状態から操作部材が押し下げられた後の状態にて示す側面図。
【
図12】実施形態1の台車牽引装置を牽引部材が牽引位置にあり且つ操作部材が縦向きの操作姿勢にあるときの状態にて示す側面図。
【
図14】実施形態1の台車牽引装置を牽引部材が牽引位置にあり且つ操作部材が横向きの姿勢にあるときの状態にて示す側面図。
【
図16】実施形態2の台車牽引装置を牽引部材が縦向きの待機位置にあり且つ操作部材が縦向きの操作姿勢にあるときの状態にて示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述の態様の好ましい実施形態について説明する。
【0012】
上述の態様の台車牽引装置において、上記牽引部材は、上記牽引位置から上記待機位置までの間で回動可能となるように上記搬送台車に取り付けられ、上記牽引部材と上記操作部材が上記連結機構部によって互いに回動可能に連結されており、
上記連結機構部は、上記操作部材が上記操作姿勢を形成したままの状態で上記牽引部材の上記牽引位置から上記待機位置までの間の回動操作を可能とするように構成されているのが好ましい。
【0013】
この台車牽引装置によれば、牽引部材と操作部材が上記連結機構部によって互いに回動可能に連結されており、操作部材が縦向きの操作姿勢を形成したままの状態で連結機構部を介して牽引部材の回動操作が許容される。これにより、牽引部材と操作部材が連結機構部を介して相対回転する構造を提供することができる。
【0014】
上述の態様の台車牽引装置は、上記牽引部材が上記牽引位置にあるときに上記操作部材を上記操作姿勢で保持するための第1保持部と、上記牽引部材が上記待機位置にあるときに上記操作部材を上記操作姿勢で保持するための第2保持部と、を備えるのが好ましい。
【0015】
この台車牽引装置によれば、牽引部材が牽引位置にあるときには、第1保持部によって操作部材を縦向きの操作姿勢で保持して自立させることができる。また、牽引部材が待機位置にあるときには、第2保持部によって操作部材を縦向きの操作姿勢で保持して自立させることができる。このため、牽引部材が牽引位置と待機位置のいずれの位置にあるときでも、操作部材を操作姿勢で保持するための作業者のサポート操作を要しないという利点がある。
【0016】
上述の態様の台車牽引装置において、上記連結機構部は、上記牽引部材に固定されたブラケットと、上記操作部材に固定された切り替えピンと、を備え、上記ブラケットには、互いに直交するように延びる第1孔部及び第2孔部からなる略L字状のガイド孔が上記切り替えピンをガイド可能に設けられており、上記牽引部材が上記牽引位置にあるとき、上記切り替えピンが上記ガイド孔の上記第2孔部をスライドするように上記操作部材が動くことで上記第1保持部による上記操作部材の保持状態と保持解除状態が切り替わり、上記牽引部材が上記牽引位置にあるとき、上記切り替えピンが上記ガイド孔の上記第1孔部をスライドするように上記操作部材が動くことで上記第2保持部による上記操作部材の保持状態と保持解除状態が切り替わるのが好ましい。
【0017】
この台車牽引装置によれば、牽引部材が牽引位置にあるとき、作業者は切り替えピンが第2孔部をスライドするように操作部材を動かすことによって第1保持部による操作部材の保持状態と保持解除状態を切り替えることができる。また、牽引部材が待機位置にあるとき、作業者は切り替えピンが第1孔部をスライドするように操作部材を動かすことによって第2保持部による操作部材の保持状態と保持解除状態を切り替えることができる。したがって、牽引部材の位置の切り替え時の操作部材の操作に伴って、第1保持部と第2保持部のそれぞれにおける操作部材の保持状態と保持解除状態との切り替えを行うことができる。
【0018】
上述の態様の台車牽引装置において、上記牽引部材は、上記第2保持部が上記操作部材の保持を解除したときにその重量バランスにしたがって上記牽引位置まで動くように構成されているのが好ましい。
【0019】
この台車牽引装置によれば、牽引部材が待機位置にあるときに操作部材の保持が解除された後は、牽引部材の位置をその重量バランスにしたがって自動で牽引位置に切り替えることができる。このため、牽引部材を操作部材とは別に操作することなく、牽引部材を牽引位置まで動かすことができる。
【0020】
上述の態様の台車牽引装置は、上記牽引部材が上記待機位置にあるとき、この牽引部材よりも高所に上記操作部材の把持部が位置するように構成されているのが好ましい。
【0021】
この台車牽引装置によれば、牽引部材よりも操作部材の把持部を優先して把持する操作を作業者に促すのに効果がある。これにより、待機位置にある牽引部材を作業者が直に把持する操作を防ぐことが可能である。
【0022】
上述の態様の台車牽引装置は、上記牽引部材が上記牽引位置にあるときに上記操作部材が横向きに配置されたとき、上記牽引部材よりも外側まで上記操作部材の把持部がはみ出すように構成されているのが好ましい。
【0023】
この台車牽引装置によれば、牽引部材が牽引位置にあるときに操作部材を横向きに配置すれば、この牽引部材を作業者が直に把持する操作を、この牽引部材よりも外側まではみ出している操作部材の把持部によって防ぐことができる。さらに、走行台車に搬送台車を連結できないようにすることができる。
【0024】
以下、上述の態様の台車牽引装置の具体的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
なお、本明細書の説明で使用する図面では、特に断わらない限り、搬送台車の前後方向である第1方向を矢印Xで示し、搬送台車の左右方向である第2方向を矢印Yで示し、搬送台車の上下方向である第3方向を矢印Zで示すものとする。
【0026】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1にかかる搬送台車10は、ワーク(図示省略)を搬送するためのものである。この搬送台車10は、ワークを載せるための台座部11と、台座部11を走行可能に支持する複数の車輪12と、を有する。この搬送台車10は、自走のための駆動機構を有していない。この搬送台車10は、ワークを運搬する「運搬台車10」とも称される。ここでいう「ワーク」には、部品類をはじめ、その他の各種の被搬送物などが包含される。
【0027】
実施形態1の台車牽引装置(以下、単に「牽引装置」ともいう。)101は、台座部11の第1方向Xの一端側に設けられている。この牽引装置101は、搬送台車10の牽引に用いるものであり、牽引部材20と、操作部材30と、連結機構部40と、を備えている。なお、牽引装置101は、搬送台車10とは別要素として構成されてもよいし、或いは搬送台車10の一構成要素として構成されてもよい。
【0028】
牽引部材20は、横向きの牽引位置P1(
図1中の実線で示される位置を参照)と、牽引位置P1から起立した縦向きの待機位置P2(
図1中の二点鎖線で示される位置を参照)と、に切り替え可能となるように搬送台車10の台座部11に設けられている。本形態では、牽引部材20は、牽引位置P1から待機位置P2までの間で回動可能となるように搬送台車10の台座部11に取り付けられている。
【0029】
ここでいう「牽引位置P1」とは、牽引部材20が水平方向に沿って延びるように横向きに配置される位置である。このため、牽引部材20が牽引位置P1にあるとき、この牽引部材20が厳密に水平な方向に延びていてもよいし、或いは厳密に水平な方向に対して斜めに傾斜した方向に延びていてもよい。
【0030】
ここでいう「待機位置P2」とは、牽引部材20が牽引位置P1から起立して鉛直方向に沿って延びるように縦向きに配置される位置である。このため、牽引部材20が待機位置P2にあるとき、この牽引部材20が厳密な鉛直方向に延びていてもよいし、或いは厳密な鉛直方向に対して斜めに傾斜した方向に延びていてもよい。
【0031】
操作部材30は、牽引部材20の位置の切り替えを行うときに操作される部材である。作業者は、この操作部材30を手指で把持して操作することによって、牽引部材20の切り替え操作を行うことができる。連結機構部40は、牽引部材20と操作部材30を互いの相対位置が可変となるように連結する機能を有する。本形態では、牽引部材20と操作部材30が連結機構部40によって互いに回動可能に連結されている。
【0032】
詳細については後述するが、操作部材30は、牽引部材20に対する相対位置を変える操作がなされることにより、牽引位置P1にある牽引部材20よりも高所で操作される操作姿勢で自立可能となるように構成されている。
【0033】
搬送台車10は、走行車両1によって牽引される。走行車両1は、有人車両であってもよいし或いは無人車両であってもよい。この走行車両1は、自走可能に構成されており、その後端部の低所にブラケット2を備えている。このブラケット2には、連結用の治具4の軸部5を挿入可能な挿入孔3が形成されている。
【0034】
搬送台車10を走行車両1に連結するとき、治具4の軸部5を牽引部材20の先端部23の湾曲部分に通したうえでブラケット2の挿入孔3に挿入する。これにより、走行車両1による搬送台車10の牽引準備が完了する。一方で、治具4の軸部5をブラケット2の挿入孔3から抜き出すと、牽引部材20の先端部23から軸部5が外れる。これにより、搬送台車10を走行車両1から切り離すことができる。
【0035】
(牽引部材の構造)
図2及び
図3に示されるように、牽引部材20は、略U字状をなしており、左右の端部21,22と、湾曲形状をなす先端部23と、左右の端部21,22と先端部23とを接続する左右のアーム部24,25と、を有する。左右のアーム部24,25は、いずれも第2方向Yに平行に延びる3つの連結部26,27,28のそれぞれによって連結されている。
【0036】
牽引部材20は、台座部11に固定された左右の支持部13に取り付けられている。各支持部13には、牽引部材20の端部21または端部22を第3方向Zにガイド可能なガイド溝14が設けられている。すなわち、ガイド溝14は、上側領域から下側領域まで第3方向Zに延びている。
【0037】
牽引部材20の左右の端部21,22がガイド溝14の上側領域まで引き上げられたときに、この牽引部材20は、左右の端部21,22を中心に回動可能な状態になる。これにより、牽引部材20を左右の端部21,22を中心に待機位置P2から牽引位置P1まで横向きになるように前倒ししたり、牽引位置P1から待機位置P2まで縦向きになるように起立させたりすることができる。牽引部材20は、横向きの牽引位置P1に配置されたとき、左右のアーム部24,25がストッパ15によって下方から支持される。これにより、牽引部材20が牽引位置P1に保持される。
【0038】
これに対して、牽引部材20の左右の端部21,22がガイド溝14を下側領域まで押し下げられたときに、左右のアーム部24,25は、その前方側への動きがストッパ15によって規制され、その後方側への動きがストッパ15の後方に立設されている保持プレート16によって規制される。これにより、牽引部材20が待機位置P2に保持される。
【0039】
(操作部材の構造)
図2に示されるように、操作部材30は、直線状に延びる軸部31と、軸部31の一端側に設けられた操作用のグリップである把持部32と、を備えている。操作部材30の軸部31には、牽引部材20の連結部26に引っ掛け可能な係止フック34が設けられている。また、この軸部31は、把持部32とは反対側の端部33において連結機構部40の切り替えピン45と溶接などの接合によって取れないように固定されている(
図3を参照)。把持部32は、作業者が操作部材30を操作するときにて手指で直に把持するのに使用される。
【0040】
(連結機構部の構造)
図2及び
図3に示されるように、連結機構部40は、牽引部材20の左右のアーム部24,25に固定されたベースプレート41と、ベースプレート41から立設した左右一対の2つのブラケット42,43と、円柱形状の切り替えピン45と、2つのブラケット42,43を連結する連結バー46と、を備えている。
【0041】
図2に示されるように、2つのブラケット42,43にはいずれも、切り替えピン45をガイド可能な略L字状のガイド孔44が設けられている。ブラケット42のガイド孔44とブラケット43のガイド孔44は、同一形状であり且つ左右対称となるように配置されている。連結バー46は、操作部材30の軸部31に当接可能に設けられており、この操作部材30が操作姿勢から後倒しされるのを阻止する機能を有する。
【0042】
図4に示されるように、切り替えピン45をガイドするブラケット42のガイド孔44は、互いに直交するように延びる第1孔部44a及び第2孔部44bからなる。特に図示しないものの、ブラケット43のガイド孔44についても同様である。
【0043】
詳細については後述するが、この連結機構部40は、操作部材30が縦向きの操作姿勢を形成したままの状態で牽引部材20の牽引位置P1から待機位置P2までの間の回動操作を可能とするように構成されている。
【0044】
次に、牽引装置101を待機状態と牽引状態とに切り替えるときの動作について、
図5~
図14を参照しつつ説明する。
【0045】
(待機状態)
図5及び
図6に示されるように、搬送台車10を走行車両1(
図1を参照)から切り離した後で、牽引装置101は、牽引部材20が縦向きの待機位置P2で自立し、且つ、操作部材30が縦向きの操作姿勢で自立した待機状態に設定される。
【0046】
牽引装置101の待機状態において、牽引部材20は、その端部21,22がガイド溝14の下側領域まで押し下げられており、前後方向の動きがストッパ15及び保持プレート16によって規制されている。これにより、牽引部材20は待機位置P2で自立することができる。
【0047】
牽引装置101の待機状態において、操作部材30は、その軸部31が牽引部材20の先端部23に対してその後方の近接した位置に配置されている。また、この操作部材30は、その係止フック34が牽引部材20の連結部26に引っ掛けられている。このため、操作部材30は、その前後方向の動きが、牽引部材20の先端部23及び連結部26と係止フック34とによって規制される。このとき、先端部23と連結部26と係止フック34は、牽引部材20が待機位置P2にあるときに操作部材30を操作姿勢で保持する「第2保持部」としての機能を果たす。このように、牽引装置101が第2保持部を備えるため、牽引部材20が待機位置P2にあるときに操作部材30を自立した操作姿勢に維持することができる。
【0048】
図7に示されるように、連結機構部40において、ブラケット42,43は、ガイド孔44の第1孔部44aが第3方向Zに延び且つ第2孔部44bが第1方向Xに延びるように配置される。このとき、切り替えピン45は、この切り替えピン45に固定されている操作部材30の自重によって第1孔部44aの係合位置Qaに配置される。このとき、係合位置Qaは、第1孔部44aのうち第2孔部44bとは反対側の端部に相当する位置である。これにより、操作部材30は自立した操作姿勢を維持することができる。
【0049】
この操作部材30は、牽引部材20が待機位置P2にあるとき、この牽引部材20よりも高所に把持部32が位置するように構成されている。本構成によれば、牽引部材20よりも操作部材30の把持部32を優先して把持する操作を作業者に促すのに効果がある。これにより、待機位置P2にある牽引部材20を作業者が直に把持する操作を防ぐことが可能である。
【0050】
(待機状態から牽引状態への切り替え)
牽引装置101を待機状態(
図5及び
図6を参照)から牽引状態に切り替えるとき、作業者は、先ず、操作部材30の把持部32を手指で把持して持ち上げる。このとき、操作部材30が上向きに動くことに伴って、
図8に示されるように、連結機構部40の切り替えピン45は、ガイド孔44の係合位置Qaから係合位置Qbまで上方へスライドする。このとき、係合位置Qbは、第1孔部44aと第2孔部44bとの境界部分に相当する位置である。
【0051】
切り替えピン45が係合位置Qbに達した状態では、操作部材30の係止フック34が牽引部材20の連結部26から外れる。これにより、第2保持部による操作部材30の操作姿勢での保持が解除される。また、操作部材30の把持部32が作業者によってさらに持ち上げられることで、牽引部材20の左右の端部21,22がガイド溝14の上側領域まで引き上げられる。反対に、切り替えピン45が係合位置Qbから係合位置Qaに復帰すると、操作部材30の係止フック34が牽引部材20の連結部26に引っ掛かる。このように、牽引部材20が待機位置P2にあるとき、切り替えピン45がガイド孔44の第1孔部44aをスライドするように操作部材30が動くことで第2保持部による操作部材30の保持状態と保持解除状態が切り替わる。
【0052】
図9に示されるように、牽引部材20は、予め設定されたその重量バランスにしたがって、左右の端部21,22を中心に前方へ回動しようとする。そこで、作業者は、操作部材30の操作姿勢で把持部32を把持したまま、牽引部材20が回動する動きに合わせて把持部32を前方へ動かす。このとき、牽引部材20は、第2保持部が操作部材30の保持を解除したときにその重量バランスにしたがって牽引位置P1まで動くように構成されている。これにより、牽引部材20が待機位置P2にあるときに操作部材30の保持が解除された後は、牽引部材20の位置をその重量バランスにしたがって自動で牽引位置P1に切り替えることができる。このため、牽引部材20を操作部材30とは別に操作することなく、操作部材30の操作姿勢を維持したままの状態で、牽引部材20を牽引位置P1まで動かすことができる。
【0053】
図10に示されるように、牽引部材20が牽引位置P1に配置されたとき、連結機構部40のブラケット42,43は、ガイド孔44の第1孔部44aが第1方向Xに延び且つ第2孔部44bが第3方向Zに延びるように配置される。その後、
図11に示されるように、作業者が操作部材30の把持部32を押し下げることによって、連結機構部40の切り替えピン45は、ガイド孔44の第2孔部44bを係合位置Qbから係合位置Qcまで下方へスライドする。このとき、係合位置Qcは、第2孔部44bのうち第1孔部44aとは反対側の端部に相当する位置である。
【0054】
(牽引状態)
図12及び
図13に示されるように、切り替えピン45が係合位置Qcにあるとき、牽引装置101は、牽引部材20が横向きの牽引位置P1に配置され、且つ、操作部材30が縦向きの操作姿勢で自立した牽引状態に設定される。
【0055】
牽引装置101の牽引状態において、牽引部材20は、左右のアーム部24,25の下向きの動きがストッパ15によって阻止されている。これにより、牽引部材20を牽引位置P1で保持することができる。
【0056】
牽引装置101の牽引状態において、操作部材30の端部33が第1方向Xについて牽引部材20の2つの連結部27,28の間に配置され、操作部材30の軸部31の後方に連結機構部40の連結バー46が配置される。このとき、操作部材30が切り替えピン45を中心に回動する動きが牽引部材20の2つの連結部27,28と連結機構部40の連結バー46とによって規制される。2つの連結部27,28と連結バー46は、牽引部材20が牽引位置P1にあるときに操作部材30を操作姿勢で保持する「第1保持部」としての機能を果たす。このように、牽引装置101が第1保持部を備えるため、牽引部材20が牽引位置P1にあるときに操作部材30を自立した操作姿勢に維持することができる。
【0057】
切り替えピン45が係合位置Qcに達した状態では、第1保持部によって操作部材30が操作姿勢で保持される。反対に、切り替えピン45が係合位置Qcから係合位置Qbに復帰すると、第1保持部による操作部材30の操作姿勢での保持が解除される。このように、牽引部材20が牽引位置P1にあるとき、切り替えピン45がガイド孔44の第2孔部45bをスライドするように操作部材30が動くことで第1保持部による操作部材30の保持状態と保持解除状態が切り替わる。
【0058】
(牽引状態から待機状態への切り替え)
牽引装置101を牽引状態(
図4を参照)から待機状態(
図8を参照)に切り替えるとき、作業者は、上述の「待機状態から牽引状態への切り替え」のときとは逆の手順で操作部材30を動かせばよい。
【0059】
上述のことから、作業者は、操作部材30の把持部32を把持したままのワンタッチの操作で、牽引部材20の位置に切り替えを行うことが可能である。
【0060】
図14に示されるように、操作部材30は、牽引部材20が牽引位置P1にあるときに横向きに配置されたときには、この牽引部材20の先端部23よりも外側(
図14中の左側)まで把持部32がはみ出すように構成されている。これにより、牽引部材20が牽引位置P1にあるときに操作部材30を横向きに配置すれば、この牽引部材20を作業者が直に把持する操作を、この牽引部材20よりも外側まではみ出している操作部材30の把持部32によって防ぐことができる。さらに、走行台車1に搬送台車10を連結できないようにすることができる。
【0061】
上述の実施形態1によれば、以下のような作用効果を奏する。
【0062】
実施形態1の牽引装置101において、操作部材30が操作されることによって、牽引部材20が横向きの牽引位置P1と牽引位置P1から起立した待機位置P2とに切り替えられる。このとき、牽引部材20と操作部材30は、連結機構部40で連結されており、この連結機構部40によって互いの相対位置が可変となるように構成されている。
【0063】
ここで、操作部材30が連結機構部40を介して牽引部材20に対する相対位置を変えるよう操作されたとき、この操作部材30は、牽引位置P1にある横向きの牽引部材20よりも高所で操作される操作姿勢を形成することができる。このため、作業者は、搬送台車10を牽引するときの作業において、牽引部材20を手指で直に把持することなく、牽引位置P1にある横向きの牽引部材20よりも高所で操作部材30を操作して、牽引部材20の位置の切り替えを行うことができる。このような操作は、作業者が牽引部材20の横向き時の高さに合わせて腰を曲げて行う作業に比べて作業負担が小さい。
【0064】
したがって、実施形態1によれば、搬送台車10を牽引するときの作業性に優れた牽引装置101を提供することができる。
【0065】
実施形態1の牽引装置101によれば、牽引部材20と操作部材30が連結機構部40によって互いに回動可能に連結されており、操作部材30が縦向きの操作姿勢を形成したままの状態で連結機構部40を介して牽引部材20の回動操作が許容される。これにより、牽引部材20と操作部材30が連結機構部40を介して相対回転する構造を提供することができる。
【0066】
実施形態1の牽引装置101によれば、牽引部材20が牽引位置P1にあるときには、第1保持部によって操作部材30を縦向きの操作姿勢で保持して自立させることができる。また、牽引部材20が待機位置P2にあるときには、第2保持部によって操作部材30を縦向きの操作姿勢で保持して自立させることができる。このため、牽引部材20が牽引位置P1と待機位置P2のいずれの位置にあるときでも、操作部材30を操作姿勢で保持するための作業者のサポートを要しないという利点がある。
【0067】
実施形態1の牽引装置101によれば、牽引部材20が牽引位置P1にあるとき、作業者は切り替えピン45がガイド孔44の第2孔部44bをスライドするように操作部材30を動かすことによって第1保持部による操作部材30の保持状態と保持解除状態を切り替えることができる。また、牽引部材20が待機位置P2にあるとき、作業者は切り替えピン45がガイド孔44の第1孔部44aをスライドするように操作部材30を動かすことによって第2保持部による操作部材30の保持状態と保持解除状態を切り替えることができる。したがって、牽引部材20の位置の切り替え時の操作部材30の操作に伴って、第1保持部と第2保持部のそれぞれにおける操作部材の保持状態と保持解除状態との切り替えを行うことができる。
【0068】
以下、実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0069】
(実施形態2)
図15乃至
図17に示されるように、実施形態2の牽引装置102は、牽引部材20が待機位置P2(
図16及び
図17を参照)にあるときに操作部材30を操作姿勢で保持する第2保持部の構造についてのみ、実施形態1の牽引装置101のものと相違している。
【0070】
牽引装置102の第2保持部では、実施形態1の係止フック34に代えて、マグネット35を採用している。マグネット35は、操作部材30の軸部31に接合された永久磁石である。牽引部材20の連結部26は、マグネット35が吸着可能な材料からなる。
【0071】
図16及び
図17に示されるように、搬送台車10を走行車両1(
図1を参照)から切り離した後で、牽引装置102は、牽引部材20が縦向きの待機位置P2で自立し、且つ、操作部材30が縦向きの操作姿勢で自立した待機状態に設定される。
【0072】
牽引装置102の待機状態において、操作部材30は、その軸部31が牽引部材20の先端部23に対してその後方の近接した位置に配置されている。また、この操作部材30は、軸部31に接合されているマグネット35が牽引部材20の連結部26を吸着保持している。このため、操作部材30は、その前後方向の動きが、牽引部材20の先端部23及び連結部26とマグネット35とによって規制される。
【0073】
また、特に図示しないものの、牽引装置102を待機状態(
図16及び
図17を参照)から牽引状態に切り替えるときに、作業者が操作部材30の把持部32を手指で把持して持ち上げると、マグネット35が牽引部材20の連結部26よりも上方に移動する。これにより、マグネット35が連結部26から離間し連結部26の吸着保持を解除する。したがって、実施形態1の牽引装置101の場合と同様に、牽引部材20が牽引位置P1に向けて回動する動作が許容される。
【0074】
実施形態2の牽引装置102によれば、操作部材30を縦向きの操作姿勢で保持するのにマグネット35を利用した構造を提供することができる。
【0075】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0076】
本発明は、上述の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変更が考えられる。例えば、上述の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0077】
上述の実施形態では、牽引部材20が牽引位置P1と待機位置P2のいずれの位置にあるときでも、第1保持部及び第2保持部を使用して操作部材30を操作姿勢で保持する場合について例示したが、これに代えて、第1保持部と第2保持部の少なくとも一方を省略した構造を採用することもできる。
【0078】
上述の実施形態では、牽引部材20が待機位置P2にあるとき、この牽引部材20よりも高所に操作部材30の把持部32が位置する場合について例示したが、これに代えて、操作部材30の把持部32が牽引部材20と同一の高さ或いは牽引部材20よりも低所に位置する構造を採用することもできる。
【0079】
上述の実施形態では、牽引部材20が牽引位置P1にあるときに操作部材30が横向きに配置されたときに、牽引部材20よりも外側まで操作部材30の把持部32がはみ出す場合について例示したが、これに代えて、操作部材30の把持部32が牽引部材20から外側にはみ出さない構造を採用することもできる。
【0080】
上述の実施形態では、搬送台車10を走行車両1に連結する場合について例示したが、搬送台車10の連結対象は走行車両1のみに限定されるものではない。例えば、搬送台車10を、走行車両1に代えて、この搬送台車10と同一の構造を有する別の搬送台車10に連結するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0081】
10 搬送台車
20 牽引部材
23 先端部(第2保持部)
26 連結部(第2保持部)
27 連結部(第1保持部)
28 連結部(第1保持部)
46 連結バー(第1保持部)
30 操作部材
32 把持部
34 係止フック(第2保持部)
35 マグネット(第2保持部)
40 連結機構部
42,43 ブラケット
44 ガイド孔
44a 第1孔部
44b 第2孔部
45 切り替えピン
101,102 台車牽引装置(牽引装置)
P1 牽引位置
P2 待機位置