(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 3/04 20060101AFI20250401BHJP
F28D 9/00 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
F28F3/04 A
F28D9/00
(21)【出願番号】P 2022068347
(22)【出願日】2022-04-18
【審査請求日】2024-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【氏名又は名称】津田 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100142918
【氏名又は名称】中島 貴志
(72)【発明者】
【氏名】芳井 晋作
(72)【発明者】
【氏名】袴田 治
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-146028(JP,A)
【文献】特開昭59-009496(JP,A)
【文献】特開平11-031769(JP,A)
【文献】特開2002-235993(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0080796(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第113432206(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0192537(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/00 - 21/00
F28F 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体が流れる第1流路(W21,W22)と第2流体が流れる第2流路(W10)とを仕切る仕切壁(210)を有し、前記仕切壁を介して前記第1流体と前記第2流体との間で熱交換が行われる熱交換器(10)であって、
前記第1流路には、第1方向に前記第1流体が流れるとともに、
前記第2流路には、前記第1方向と対向する第2方向に前記第2流体が流れ、
前記仕切壁において前記第1流路に面する壁面には、前記第1流体が通過する第1領域(A11)と、前記第1領域よりも遅い流速で前記第1流体が通過する第2領域(A12)とが存在し、
前記仕切壁の前記第1領域及び前記第2領域には、前記第1流体に対する伝熱面積を増加させる伝熱部(24)がそれぞれ配置され、
前記第2領域に配置される前記伝熱部(24b)における前記第1流体の熱交換量は、前記第1領域に配置される前記伝熱部(24a)における前記第1流体の熱交換量よりも大き
く、
前記第1流路及び前記第2流路は、所定の曲率を有する形状に形成されている
熱交換器。
【請求項2】
前記仕切壁の前記壁面における前記第1流体の流れ方向の上流側の部分には、前記第1流路に前記第1流体を流す遠心ファン(30)が設けられている
請求項
1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記伝熱部は、前記壁面から突出するように形成される複数の伝熱部材(24)により構成されており、
前記第2領域に配置される前記伝熱部が前記第1流体と接触する面積は、前記第1領域に配置される前記伝熱部が前記第1流体と接触する面積よりも大きい
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記伝熱部は、前記壁面から突出するように形成される複数の伝熱部材(24)により構成されており、
前記第2領域に配置される前記伝熱部の前記第1流体に対する熱伝達率は、前記第1領域に配置される前記伝熱部の前記第
1流体に対する熱伝達率よりも大きい
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記仕切壁において前記第1流路に面する壁面を第1壁面とし、前記仕切壁において前記第2流路に面する壁面を第2壁面とし、前記伝熱部を第1伝熱部とすると、
前記仕切壁の前記第2壁面には、前記第2流体が通過する第3領域(A21)と、前記第2流体が前記第3領域よりも遅い流速で通過する第4領域(A22)とが存在し、
前記仕切壁の前記第2壁面の前記第3領域及び前記第4領域には、前記第2流体の熱を前記仕切壁に伝達する第2伝熱部(40)が形成され、
前記第2伝熱部の前記第4領域における前記第2流体の熱交換量は、前記第2伝熱部の前記第3領域における前記第2流体の熱交換量よりも大きい
請求項1に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1に記載の熱交換器がある。この熱交換器は、第1方向を流れる第1媒体と、第2方向を流れる第2媒体との間で熱交換が行われる。第1方向と第2方向とは互いに直交している。この熱交換器には、第1媒体が流れる部分に第1フィンが配置されるとともに、第2媒体が流れる部分に第2フィンが配置されている。この熱交換器では、第1媒体及び第2媒体の温度差が小さくなり易い部分、具体的には第1媒体の下流側の部分で各フィンのフィンピッチを小さくすることにより熱交換性能を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2流体で熱交換を行う熱交換器では、特許文献1に記載されるような2流体が直交するように流れる直交流式のものだけでなく、2流体が互いに対向するように流れる対向流式のものがある。このような対向流式の熱交換器では、2流体に温度差が発生し難いため、上記の特許文献1に記載の熱交換器の構成を採用したとしても、熱交換性能を向上させることが困難である。むしろ、各フィンのフィンピッチが小さくなっている部分では、各媒体の通風抵抗が増加する懸念がある。
【0005】
本開示は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、対向流式の構造を採用しつつ、熱交換性能の確保及び通風抵抗の低減の両立を図ることが可能な熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する熱交換器は、第1流体が流れる第1流路(W21,W22)と第2流体が流れる第2流路(W10)とを仕切る仕切壁(210)を有し、仕切壁を介して第1流体と第2流体との間で熱交換が行われる熱交換器(10)である。第1流路には、第1方向に第1流体が流れる。第2流路には、第1方向と対向する第2方向に第2流体が流れる。仕切壁において第1流路に面する壁面には、第1流体が通過する第1領域(A11)と、第1領域よりも遅い流速で第1流体が通過する第2領域(A12)とが存在する。仕切壁の壁面の第1領域には、第1流体に対する伝熱面積を増加させる第1伝熱部(24a)が形成される。仕切壁の壁面の第2領域には、第1流体に対する伝熱面積を増加させる第2伝熱部(24b)と、が形成される。第2伝熱部における第1流体の熱交換量は、第1伝熱部における第1流体の熱交換量よりも大きい。
【0007】
この構成によれば、第1流体及び第2流体が対向するように流れる。また、第1流体が相対的に速い流速で流れる第1領域には、第1流体に対する熱交換量が相対的に小さい第1伝熱部が配置されているため、第1流体の通風抵抗を低減することが可能である。さらに、第1流体が相対的に遅い流速で流れる第2領域には、第1流体に対する熱交換量が相対的に大きい第2伝熱部が配置されているため、第1伝熱部における熱交換量の不足分を第2伝熱部の熱交換量で補うことができる。よって、熱交換性能を確保することができる。
【0008】
なお、上記手段、特許請求の範囲に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の熱交換器によれば、対向流式の構造を採用しつつ、熱交換性能の確保及び通風抵抗の低減の両立を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態の熱交換器の正面構造を示す正面図である。
【
図2】
図2は、実施形態の熱交換器の平面構造を示す平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態のプレート部材の平面構造を示す平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態のプレート部材の断面構造を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図1のV-V線に沿った断面構造を示す断面図である。
【
図6】
図6(A)、(B)は、参考例の流路構造を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7(A)~(C)は、参考例の流路構造の位置と熱伝達率との関係、当該位置とフィンの表面積との関係、及び当該位置と空気の通風抵抗との関係をそれぞれ示すグラフである。
【
図8】
図8は、実施形態の第1変形例の熱交換器の正面構造を示す正面図である。
【
図9】
図9は、実施形態の第1変形例の熱交換器の断面構造を示す断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態の第2変形例の熱交換器の断面構造を示す断面図である。
【
図11】
図11は、他の実施形態のフィンの構造を模式的に示す図である。
【
図12】
図12は、他の実施形態のフィンの構造を模式的に示す図である。
【
図13】
図13は、他の実施形態のフィンの構造を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、熱交換器の一実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
<実施形態>
図1及び
図2に示される熱交換器10は、例えば空気と冷媒との間で熱交換を行うための機器である。本実施形態では、空気が第1流体に相当し、冷媒が第2流体に相当する。なお、第2流体に関しては、冷媒に限らず、LLC(Long Life Coolant)等の任意の流体を用いることができる。第1流体に関しても同様に任意の流体を用いることができる。
【0012】
熱交換器10は、熱交換コア部20と、遠心ファン30とを備えている。
図1及び
図2に示されるように、熱交換コア部20は、複数のプレート部材21~23と、複数のアウターフィン24,25とを備えている。
【0013】
各プレート部材21~23は同一の形状を有している。以下では、プレート部材21の形状について代表して説明する。
図3に示されるように、プレート部材21は、軸線m10を中心にリング状に形成されている。プレート部材21には切り欠き21aが形成されている。
図3には、切り欠き21aを挟んで配置されるプレート部材21の周方向の一端部に符号215が付され、その他端部に符号216が付されている。
【0014】
図4に示されるように、プレート部材21の内部には、冷媒が流れる冷媒流路W10が形成されている。
図3に示されるように、冷媒流路W10はプレート部材21の一端部215から他端部216まで延びるように形成されている。
図4に示されるように、プレート部材21の冷媒流路W10には複数のインナーフィン40が配置されている。複数のインナーフィン40は、軸線m10を中心として放射状に延びるように配置されている。
【0015】
軸線m10を中心とする径方向外側に配置されるプレート部材21の壁部213を「外壁部213」とするとき、複数のインナーフィン40の径方向外側の端部と外壁部213との間には隙間T11が形成されている。また、軸線m10を中心とする径方向内側に配置されるプレート部材21の壁部214を「内壁部214」とするとき、複数のインナーフィン40の径方向内側の端部と内壁部214との間には隙間T12が形成されている。以下では、前者の隙間T11を「分配タンク空間T11」と称し、後者の隙間T12を「集合タンク空間T12」と称する。また、軸線m10を中心とする径方向内側を「径方向内側」と略記し、軸線m10を中心とする径方向外側を「径方向外側」と略記する。
【0016】
図1及び
図2に示されるように、複数のプレート部材21~23のそれぞれの一端部215には、それらを軸線m10に平行な方向に貫通するように流入パイプ60が設けられている。流入パイプ60は、各プレート部材21~23の分配タンク空間T11に連通されている。複数のプレート部材21のそれぞれの他端部216には、それらを軸線m10に平行な方向に貫通するように流出パイプ70が設けられている。流入パイプ60の一端部には冷媒用の流入配管が接続される。流出パイプ70の一端部には冷媒用の流出配管が接続される。
【0017】
流入パイプ60には流入配管を通じて冷媒が流入する。流入パイプ60に流入した冷媒は、流入パイプ60から各プレート部材21~23の分配タンク空間T11に流入する。分配タンク空間T11に流入した冷媒は、
図4に矢印D11で示されるように複数のインナーフィン40の間の隙間を集合タンク空間T12に向かって、すなわち径方向外側から径方向内側に向かう方向に流れる。集合タンク空間T12では、複数のインナーフィン40の間の隙間を流れた冷媒が集められる。各プレート部材21~23の集合タンク空間T12に集められた冷媒は流出パイプ70を通じて流出配管へと流れる。
【0018】
図1に示されるように、プレート部材21,22の間に形成される隙間、及びプレート部材21,23の間に形成される隙間は、空気が流通する空気流路W21,W22をそれぞれ形成している。アウターフィン24,25は空気流路W21,W22にそれぞれ配置されている。
【0019】
各アウターフィン24,25は、軸線m10に平行な方向に延びるように形成されるピン状のフィンである。各アウターフィン24の下端部はプレート部材21の上壁部210の外面210aに接合されて固定されている。各アウターフィン24の上端部はプレート部材22の下壁部220の外面220aに接合されて固定されている。各アウターフィン25の上端部はプレート部材21の下壁部211の外面211aに接合されて固定されている。各アウターフィン25の下端部はプレート部材23の上壁部230の外面230aに接合されて固定されている。
【0020】
以下では、プレート部材21,23の上壁部210,230のそれぞれの外面210a,230aを「上面210a,230a」と称し、プレート部材21,22の下壁部211,220の外面211a,220aを「下面211a,220a」と称する。
各アウターフィン24,25は同一の形状を有しているため、以下ではアウターフィン24の形状について代表して説明する。
【0021】
図5は、
図1のV-V線に沿った断面構造を示したものである。
図5に示されるように、軸線m10に直交する各アウターフィン24の断面形状は流線形に形成されている。
図5では、アウターフィン24の流線形の前縁部に符号240が付され、アウターフィン24の流線形の後縁部に符号241が付されている。各アウターフィン24は、その前縁部240が軸線m10に向くように配置されている。
【0022】
図5に示されるように、プレート部材21の上面210aにおける径方向内側の第1領域A11には複数のアウターフィン24が粗に配置されている。プレート部材21の上面210aにおける径方向外側の第2領域A12には複数のアウターフィン24が密に配置されている。例えば、軸線m10を中心とする周方向において、隣り合うアウターフィン24,24が配置される間隔をフィンピッチとするとき、プレート部材21の径方向内側の第1領域A11に配置されるアウターフィン24のフィンピッチP11よりも、プレート部材21の径方向外側の第2領域A12に配置されるアウターフィン24のフィンピッチP12の方が狭くなっている。以下では、第1領域A11に配置される複数のアウターフィン24を「内側アウターフィン24a」と称し、第2領域A12に配置される複数のアウターフィン24を「外側アウターフィン24b」と称する。本実施形態では、複数の内側アウターフィン24aが、第1領域A11に配置される第1伝熱部及び伝熱部材に相当する。また、複数の外側アウターフィン24bが、第2領域A12に配置される第1伝熱部及び伝熱部材に相当する。
【0023】
図2に示されるように、遠心ファン30は、プレート部材21~23の中央に配置されている。遠心ファン30は、電力の供給に基づいて駆動することにより、各プレート部材21~23の間に形成される空気流路W21,W22に空気を流通させる。空気は、
図5に示される矢印D12で示される方向に、すなわち径方向内側から径方向外側に向かう方向に向かって流れる。
【0024】
次に、本実施形態の熱交換器10の動作例について説明する。
本実施形態の熱交換器10では、各プレート部材21~23の冷媒流路W10を流れる冷媒と、各プレート部材21~23の間に形成される空気流路W21,W22を流れる空気との間で熱交換が行われる。例えば一方の空気流路W21を流れる空気と、プレート部材21の冷媒流路W10を流れる冷媒とが、プレート部材21の上壁部210を介して熱交換を行う。また、他方の空気流路W22を流れる空気と、プレート部材21の冷媒流路W10を流れる冷媒とが、プレート部材21の下壁部211を介して熱交換を行う。その際、空気流路W21,W22では径方向内側から径方向外側に向かう方向に空気が流れる。これに対して、プレート部材22の冷媒流路W10では径方向外側から径方向内側に向かう方向に冷媒が流れる。したがって、本実施形態の熱交換器10は、熱交換を行う2流体が互いに対向するように流れる、いわゆる対向流式の構造を有している。
【0025】
本実施形態では、径方向外側から径方向内側に向かう方向が第1方向に相当し、径方向内側から径方向外側に向かう方向が第2方向に相当する。また、空気流路W21,W22が第1流路に相当し、各プレート部材21~23の冷媒流路W10が第2流路に相当する。さらに、プレート部材21の上壁部210が、一方の空気流路W21とプレート部材21の冷媒流路W10とを仕切る仕切壁に相当する。また、プレート部材21の下壁部211が、他方の空気流路W22とプレート部材21の冷媒流路W10とを仕切る仕切壁に相当する。プレート部材22の下壁部220及びプレート部材23の上壁部230も同様に仕切壁に相当する。
【0026】
空気流路W21,W22に配置される複数のアウターフィン24,25は、空気に対する伝熱面積を増加させる機能を有している。また、冷媒流路W10に配置されるインナーフィン40は、冷媒に対する伝熱面積を増加させる機能を有している。したがって、これらのフィン24,25,40は熱交換器10の熱交換性能の向上に寄与している。
【0027】
各プレート部材21~23はリング状に形成されているため、径方向内側から径方向外側に向かうほど、すなわち
図5に示される第1領域A11から第2領域A12に向かうほど、空気の流れ方向に直交する空気流路W21の流路断面積は大きくなる。結果として径方向内側から径方向外側に向かうほど空気の流速は遅くなる。以下では、第1領域A11を「高流速領域A11」と称し、第2領域A12を「低流速領域A12」と称する。
【0028】
本実施形態のように、高流速領域A11において複数の内側アウターフィン24aを粗に配置し、且つ低流速領域A12において複数の外側アウターフィン24bを密に配置することにより、熱交換性能を確保しつつ、通風抵抗を低減させることが可能である。その理由は以下の通りである。
【0029】
発明者らは、
図6(A)に示される流路構造100Aにおける熱伝達率及び通風抵抗と、
図6(B)に示される流路構造100Bにおける熱伝達率及び通風抵抗とを実験的に計測して比較した。流路構造100A,100Bは共に、空気が流入する流入口101から、空気が流出する流出口102に向かって流路断面積が徐々に大きくなるように形成されている。したがって、各流路構造100A,100Bの流入口101付近には、空気の流速が相対的に速い高流速領域103が形成されている。また、各流路構造100A,100Bの流出口102付近には、空気の流速が相対的に遅い低流速領域104が形成されている。
【0030】
流路構造100A,100Bにはフィン105がそれぞれ配置されている。流路構造100Aでは、高流速領域103及び低流速領域104を含め、全領域でフィン105が均一の間隔で配置されている。これに対して、流路構造100Bでは、高流速領域103においてフィン105が粗に配置され、低流速領域104においてフィン105が密に配置されている。
【0031】
図7(A)~(C)は、流路構造100A,100Bの位置とフィン105の熱伝達率との関係、当該位置とフィン105の表面積との関係、及び当該位置と空気の通風抵抗との関係をそれぞれ示したものである。なお、
図7の横軸の「位置d」は、
図6(A),(B)に示されるように流入口101の位置を基準位置(d=0)として、当該基準位置から空気流れ方向の位置を示すものである。また、フィン105の表面積は、その位置に存在するフィン105の面積の合計を示す。さらに、
図7(A)~(C)では、流路構造100Aの熱伝達率、表面積、及び通風抵抗が一点鎖線で示され、流路構造100Bの熱伝達率、表面積、及び通風抵抗が実線で示されている。
【0032】
流路構造100Aでは、フィン105が均一の間隔で配置されているため、
図7(A)に一点鎖線で示されるように、流入口101から流出口102に向かうほど、すなわち高流速領域103から低流速領域104に向かうほど、熱伝達率が低下する。また、
図7(B)に一点鎖線で示されるように、流路構造100Aではフィン105の表面積が一定である。さらに、
図7(C)に一点鎖線で示されるように、流路構造100Aでは、流入口101から流出口102に向かって通風抵抗が漸増する。
【0033】
これに対して、流路構造100Bでは高流速領域103においてフィン105が粗に配置されている。そのため、
図7(B)に実線で示されるように、流路構造100Bの高流速領域103では、フィン105の表面積が流路構造100Aよりも小さい。また、流路構造100Bでは低流速領域104においてフィン105が密に配置されている。そのため、
図7(B)に実線で示されるように、流路構造100Bでは、低流速領域104においてフィン105の表面積が急上昇する。
【0034】
一方、流路構造100Bでは高流速領域103においてフィン105が粗に配置されているため、
図7(A),(C)に実線で示されるように、その領域103では流路構造100Aと比較すると熱交換効率及び通風抵抗が低くなる。これに対して、流路構造100Bでは低流速領域104においてフィン105が密に配置されている。そのため、
図7(A),(C)に実線で示されるように、その領域104では熱交換効率及び通風抵抗が急上昇する。
【0035】
ところで、空気の場合、一般的には空気の流速は抵抗に対して2乗前後で寄与し、熱伝達率に対して1乗前後で寄与することが知られている。これを考慮すると、流路構造100Bでは、高流速領域103においてフィン105が粗に配置されているため、熱伝達率が低下するものの、通風抵抗の低減効果を効果的に得ることが可能である。また、流路構造100Bでは、低流速領域104においてフィン105が密に配置されているため、高流速領域103における熱伝達率の低下分を、低流速領域104における熱伝達率の上昇分で補うことが可能である。結果として、通風抵抗を低減しつつ、熱交換性能を確保することが可能である。
【0036】
上述の通り、
図1~
図5に示される本実施形態の熱交換器10では、プレート部材21の径方向内側の高流速領域A11において内側アウターフィン24aが粗に配置され、プレート部材21の径方向外側の低流速領域A12において外側アウターフィン24bが密に配置されている。したがって、本実施形態の熱交換器10は、
図6(B)に示される流路構造100Bと類似の構造を有している。したがって、本実施形態の熱交換器10でも、流路構造100Bと同様に、通風抵抗を低減しつつ、熱交換性能を確保することが可能である。
【0037】
以上説明した本実施形態の熱交換器10によれば、以下の(1)~(4)に示される作用及び効果を得ることができる。
(1)各プレート部材21~23の冷媒流路W10には、径方向外側から径方向内側に向かう方向に冷媒が流れる。空気流路W21,W22には、径方向内側から径方向外側に向かう方向、すなわち冷媒が流れる方向と対向する方向に空気が流れる。プレート部材21の上面210aの高流速領域A11には内側アウターフィン24aが配置されている。プレート部材21の上面210aの低流速領域A12には外側アウターフィン24bが配置されている。外側アウターフィン24bは内側アウターフィン24aと比較すると密に配置されている。したがって、外側アウターフィン24bにおける空気の熱交換量は、内側アウターフィン24aにおける空気の熱交換量よりも大きい。この構成によれば、空気及び冷媒が対向するように流れる。また、高流速領域A11には、外側アウターフィン24bよりも粗に配置された内側アウターフィン24aが設けられているため、空気の通風抵抗を低減することが可能である。さらに、内側アウターフィン24aにおける熱交換量の不足分は外側アウターフィン24bの熱交換量で補うことが可能であるため、熱交換性能を確保することができる。
【0038】
(2)冷媒流路W10及び空気流路W21,W22は、円弧状に、すなわち所定の曲率を有する形状に形成されている。この構成によれば、冷媒流路W10において冷媒の流速差を容易に形成することができるとともに、空気流路W21,W22においても空気の流速差を容易に形成することができる。
【0039】
(3)プレート部材21の上面210aにおける空気の流れ方向の上流側の部分には、空気流路W21,W22に空気を流す遠心ファン30が設けられている。この構成によれば、空気流路W21,W22に空気を容易に流すことが可能となる。
(4)内側アウターフィン24a及び外側アウターフィン24bは、プレート部材21の上面210aから突出するように形成されている。複数の外側アウターフィン24bが空気と接触する面積は、複数の内側アウターフィン24aが空気と接触する面積よりも大きい。この構成によれば、外側アウターフィン24bにおける空気との熱交換量を、内側アウターフィン24aにおける空気との熱交換量よりも大きくする構造を容易に実現することができる。
【0040】
(第1変形例)
次に、実施形態の熱交換器10の第1変形例について説明する。以下、上記実施形態の熱交換器10との相違点を中心に説明する。
図8に示されるように、本変形例の熱交換器10は、空気が流れる空気流路W30と、冷媒が流れる冷媒流路W40とを矢印Zで示される方向に交互に有している。空気流路W30と冷媒流路W40との間には、それらを仕切る仕切壁50,51が設けられている。この熱交換器10では、空気流路W30を流れる空気と、冷媒流路W40を流れる冷媒との間で仕切壁50,51を介して熱交換が行われる。
【0041】
図9に示されるように、空気流路W30は、矢印Xで示される方向に延びるように形成されている。矢印Xで示される方向における熱交換器10の一端部には、空気流路W30に空気を流入させる流入口61が形成されている。矢印Xで示される方向における熱交換器10の他端部には、空気流路W30を流れた空気が流出する流出口62が形成されている。矢印Xで示される方向における空気流路W30の中央部には、矢印Yで示される方向に流路断面積が部分的に狭くなる絞り部64が形成されている。したがって、空気流路W30では、絞り部64の付近で空気の流速が速くなり、流入口61及び流出口62の付近で空気の流速が遅くなる。これにより、例えば仕切壁50の上面500には、空気が高速で通過する高流速領域A11と、高流速領域A11よりも遅い流速で空気が通過する低流速領域A12とが存在する。
【0042】
図8に示されるように、熱交換器10の一端部には冷媒流路W40の流出口72が更に形成されている。熱交換器10の他端部には冷媒流路W40の流入口71が更に形成されている。したがって、空気流路W30における空気の流れ方向と、冷媒流路W40における冷媒の流れ方向とは互いに対向している。
【0043】
図9に示されるように、熱交換器10は、空気流路W30に配置されるフィン81を更に備えている。
フィン81は、矢印Zで示される方向に延びるように形成されている。フィン81の一端部は、
図8に示される仕切壁50の上面500に接合されている。フィン81の他端部は、
図8に示される仕切壁51の下面510に接合されている。
図9に示されるように、フィン81は、上記実施形態のアウターフィン24,25と同様に流線形に形成されている。仕切壁50の上面500の高流速領域A11には複数のフィン81が粗に配置されている。仕切壁50の上面500の低流速領域A12には複数のフィン81が密に配置されている。本変形例では、高流速領域A11に配置されるフィン81が、第1領域に配置される第1伝熱部及び伝熱部材に相当する。また、低流速領域A12に配置されるフィン81が、第2領域に配置される第1伝熱部及び伝熱部材に相当する。
【0044】
このような構造を有する熱交換器10であっても、上記実施形態の熱交換器10と同一又は類似の作用及び効果を得ることが可能である。
(第2変形例)
次に、実施形態の熱交換器10の第2変形例について説明する。以下、第1変形例の熱交換器10との相違点を中心に説明する。
【0045】
図10に示されるように、本変形例の熱交換器10では、空気流路W30における流入口61から中央部63までの区間では、流入口61から中央部63に向かうほど流路断面積が大きくなっている。空気流路W30における中央部63から流出口62までの区間では流路断面積が一定となっている。これにより、仕切壁50の上面500には、空気が高速で通過する高流速領域A11と、高流速領域A11よりも遅い流速で空気が通過する低流速領域A12とが存在する。高流速領域A11には複数のフィン81が粗に配置されている。低流速領域A12には複数のフィン81が密に配置されている。また、空気流路W30における中央部63から流出口62までの区間は、空気の流速が一定であるため、その区間におけるフィン81の粗密は変化していない。本変形例では、高流速領域A11に配置されるフィン81が、第1領域に配置される第1伝熱部及び伝熱部材に相当する。また、低流速領域A12に配置されるフィン81が、第2領域に配置される第1伝熱部及び伝熱部材に相当する。
【0046】
このような構造を有する熱交換器10であっても、上記実施形態の熱交換器10と同一又は類似の作用及び効果を得ることが可能である。
<他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
【0047】
・第1変形例及び第2変形例の熱交換器10では、空気の流れ方向に直交する空気流路W20の断面積を変化させるために、矢印Yで示される方向において流路断面積を変化させる構造を採用したが、これに代えて、矢印Zで示される方向において流路断面積を変化させる構造を採用してもよい。
【0048】
・上記実施形態、第1変形例、及び第2変形例の熱交換器10では、高流速領域A11に配置されるフィンの熱交換量と、低流速領域A12に配置されるフィンの熱交換量とに差異を生じさせるために、各領域A11,A12のフィンの形状を変化させずに、フィンの粗密を変化させる構成、換言すればフィンの表面積を変化させる構成を採用した。これに代えて、例えば
図11に示されるように、高流速領域A11及び低流速領域A12にそれぞれ配置されるフィン91,92の形状を変化させてもよい。具体的には、高流速領域A11に配置される第1フィン91は、低流速領域A12に配置される第2フィン92よりも扁平状に形成されている。これにより、第1フィン91では、その前縁部910において空気の衝突回数を減らすことができるため、空気の通風抵抗を低減することが可能である。また、第2フィン92では、第1フィン91と比較すると前縁効果が大きくなるため、熱伝達率が向上する。このように、第1フィン91の熱伝達率と第2フィン92の熱伝達率とに差異を生じさせる構造を用いれば、高流速領域A11に配置されるフィンの熱交換量と、低流速領域A12に配置されるフィンの熱交換量とに差異を生じさせることが可能である。
【0049】
・空気と熱交換を行う伝熱部材としては、ピン形状のフィンに限らず、任意の部材を用いることができる。例えば伝熱部材としては、
図12に示されるようなルーバ201、202を用いることが可能である。この場合、
図12に示されるように、高流速領域A11には、所定のピッチP11で複数の第1ルーバ201を配置する。また、
図12に示されるように、低流速領域A12には、ピッチP11よりも短いピッチP12で複数の第2ルーバ202を配置する。
【0050】
・実施形態の熱交換器10では、空気流路W21,W22との類似の構造を冷媒流路W10に採用してもよい。具体的には、
図4に示されるように、冷媒流路W10では、集合タンク空間T12の付近に、冷媒の流速が相対的に速くなる高流速領域A21が形成される。また、分配タンク空間T11の付近に、冷媒の流速が相対的に遅くなる低流速領域A22が形成される。したがって、プレート部材21の下壁部211の内面211bには高流速領域A21と低流速領域A22とが存在している。この場合、プレート部材21の内面211bが第2壁面に相当し、高流速領域A21が第3領域に相当し、低流速領域A22が第4領域に相当する。このような構造では、インナーフィン40の低流速領域A22における冷媒の熱交換量を、インナーフィン40の高流速領域A21における冷媒の熱交換量よりも大きくすることが有効である。例えば、インナーフィン40として、
図13に示されるようなオフセットフィンを用いた上で、低流速領域A22に、オフセットピッチOPが相対的に短いインナーフィン40を配置するとともに、高流速領域A21に、オフセットピッチOPが相対的に長いインナーフィン40を配置する。この場合、高流速領域A21に配置されるインナーフィン40が第2伝熱部に相当する。
【0051】
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0052】
<付記>
次に、上記実施形態及びその変形例から把握可能な本発明の特徴を以下の通り示す。
前記伝熱部は、前記壁面から突出するように形成される複数の伝熱部材(24)により構成されており、前記第2領域に配置される前記伝熱部が前記第1流体と接触する面積は、前記第1領域に配置される前記伝熱部が前記第1流体と接触する面積よりも大きい、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱交換器。
【0053】
前記伝熱部は、前記壁面から突出するように形成される複数の伝熱部材(24)により構成されており、前記第2領域に配置される前記伝熱部の前記第1流体に対する熱伝達率は、前記第1領域に配置される前記伝熱部の前記第2流体に対する熱伝達率よりも大きい、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱交換器。
【0054】
前記仕切壁において前記第1流路に面する壁面を第1壁面とし、前記仕切壁において前記第2流路に面する壁面を第2壁面とし、前記伝熱部を第1伝熱部とすると、前記仕切壁の前記第2壁面には、前記第2流体が通過する第3領域(A21)と、前記第2流体が前記第3領域よりも遅い流速で通過する第4領域(A22)とが存在し、前記仕切壁の前記第2壁面の前記第3領域及び前記第4領域には、前記第2流体の熱を前記仕切壁に伝達する第2伝熱部(40)が形成され、前記第2伝熱部の前記第4領域における前記第2流体の熱交換量は、前記第2伝熱部の前記第3領域における前記第2流体の熱交換量よりも大きい、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱交換器。
【符号の説明】
【0055】
A11:高流速領域(第1領域)
A12:低流速領域(第2領域)
A21:高流速領域(第3領域)
A22:低流速領域(第4領域)
W10:冷媒流路(第2流路)
W21,W22:空気流路(第1流路)
10:熱交換器
24a:内側アウターフィン(第1伝熱部,伝熱部材)
24b:外側アウターフィン(第1伝熱部,伝熱部材)
30:遠心ファン
40:インナーフィン(第2伝熱部)
210:上壁部(仕切壁)