(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】測光装置
(51)【国際特許分類】
G01J 3/51 20060101AFI20250401BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20250401BHJP
G02B 6/28 20060101ALI20250401BHJP
G02B 6/24 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
G01J3/51
G01J1/02 T
G02B6/28 Z
G02B6/24
(21)【出願番号】P 2022550473
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(86)【国際出願番号】 JP2021032456
(87)【国際公開番号】W WO2022059524
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2020155610
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】▲鶴▼谷 克敏
(72)【発明者】
【氏名】波多野 洋
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特許第5565458(JP,B2)
【文献】国際公開第2020/017118(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108918413(CN,A)
【文献】特開昭61-272707(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0013414(US,A1)
【文献】特開2002-310800(JP,A)
【文献】特開平03-044526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00 - G01J 3/52
G01J 1/02
G01N 21/00 - G01N 21/61
G02B 6/28
G02B 6/24
G01M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面が円形または多角形の導光部材と、
被測定物からの光束を前記導光部材の光入射側端面に集める対物光学系と、
前記導光部材の光出射側端面から出射される光束を複数に分岐して導光するそれぞれ単一の部材からなる複数の分岐部材を備えた分岐部と、
前記分岐部における複数の分岐部材のそれぞれからの出射光を受光するとともに、2種類以上の異なる特性のデータを得るための複数の受光センサと、
を備え
、
前記分岐部は、前記導光部材の光出射側端面の範囲内で光出射側端面の輪郭に沿って互いに密着するように配置され、
前記導光部材の光出射側端面と前記分岐部の端面とが、接着または融着により接合接続され、あるいは一体的に形成されていることを特徴とする測光装置。
【請求項2】
前記対物光学系は、前記被測定物と導光部材の光入射側端面とを共役関係とする請求項1に記載の測光装置。
【請求項3】
前記複数の受光センサには、等色関数XYZに近似した受光データを得るための受光センサが含まれる請求項1または2に記載の測光装置。
【請求項4】
前記複数の受光センサには分光データを得るための受光センサが含まれる請求項1~3のいずれかに記載の測光装置。
【請求項5】
前記複数の受光センサには、前記分岐部材からの光を光コネクタを介して受光する外部測定器の受光センサが含まれるとともに、前記外部測定器は分岐部材に対して着脱可能であり、受光センサの受光特性がそれぞれ異なる複数の外部測定器の中から使用者によって選択された任意の外部測定器が分岐部材に対して接続される請求項1~4のいずれかに記載の測光装置。
【請求項6】
前記複数の分岐部材はそれぞれ光ファイバーにより形成される請求項1~5のいずれかに記載の測光装置。
【請求項7】
前記光ファイバーは樹脂製である請求項6に記載の測光装置。
【請求項8】
前記導光部材は多角柱または多角錐台である請求項1~7のいずれかに記載の測光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定光源の特性を測定する測光装置に関し、特に、被測定光源から出射される光の輝度や色度を測定する色彩輝度計などの測光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
色彩輝度計などの測光装置では、色を測定するために、測定光を3つに分割して各センサで受光する。測定光を3つに分割する手段として、例えば特許文献1では、複数のファイバ素線が束ねられて成り、対物光学系からの出射光が一端側に入射され、他端側で複数のファイバ素線が分割されているバンドルファイバが開示されている。このバンドルファイバにおける分割された各他端側には、それぞれ、バンドルファイバの他端側からの出射光を検出する複数の測色光学系が備えられている。
【0003】
また、出願人は特許文献2で、導光部材とリレー光学系による光路分岐を用いて、測定光を複数に分割して各センサで受光する測光装置を提案した。具体的には、導光部材により被測定物の位置むら、角度むらを均一化された光束を、リレー光学系を用いて複数の受光センサへ照射するものである。
【0004】
ところで、測光装置による色の測定は、測定対象物(被測定光源)の被測定面に測光装置を接触させ、または非接触で近づけ、被測定面の所定の領域から所定の角度範囲で出射された光を測光装置で受光することによって行われる。このとき、被測定面の発光強度(発光輝度)に、発光位置および発光角度によるムラ(位置ムラ、角度ムラ)があると、その影響を測光装置側でも受ける。そして、測光装置側で、上記影響を受けて測定感度の位置ムラおよび角度ムラが大きくなると、測定する位置および測定する角度の違いによって測定値の差(測定誤差)が大きくなる。なお、測定感度の位置ムラとは、被測定光源の被測定面の異なる位置から同じ方向(例えば上記面に垂直な方向)に出射される各光について、測定感度が異なることを指す。また、測定感度の角度ムラとは、被測定光源の被測定面の同じ位置から異なる方向に出射される各光について、測定感度が異なることを指す。
【0005】
したがって、色の測定にあたっては、測定する位置および測定する角度の違いによる測定誤差を小さくするために、被測定光源の発光強度の位置ムラおよび角度ムラの影響を受けにくくして、測定感度の位置ムラおよび角度ムラを低減することが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5565458号公報
【文献】特願2018-135574号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献1では、多数本のファイバーを束ねた導光体を用いて測定光を導光するようにしているが、光量ムラを減らして測定誤差を小さくするために、各ファイバーをランダムに編み込むことが必要となり、高コストである。また、ファイバーの充填具合、曲げの状態、応力の状態等の制御が難しいため、被測定光源の発光強度の位置ムラおよび角度ムラの影響を受けにくくするような導光体の設計が困難であり、結果として、測定感度の位置ムラおよび角度ムラを低減することが困難となるという課題がある。
【0008】
また、特許文献2で提案された測光装置は、導光部材の出射端から出射した光束をリレー光学系により、照射範囲Rに照射したときに、照射範囲Rに設置された受光センサの照射範囲Rに対する面積比は、受光センサ1個あたり約10%程度である。このため、受光センサを4個とすると、合計は40%となり、照射範囲Rに照射された光束のうち60%程度を無駄にしているため、光効率が良くないという課題がある。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的は、安価な導光部材を用いた構成で測定感度の位置ムラおよび角度ムラを低減することができ、しかも光効率が良い測光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は以下の手段によって達成される。
(1)横断面が円形または多角形の導光部材と、被測定物からの光束を前記導光部材の光入射側端面に集める対物光学系と、前記導光部材の光出射側端面から出射される光束を複数に分岐して導光するそれぞれ単一の部材からなる複数の分岐部材を備えた分岐部と、前記分岐部における複数の分岐部材のそれぞれからの出射光を受光するとともに、2種類以上の異なる特性のデータを得るための複数の受光センサと、を備え、前記分岐部は、前記導光部材の光出射側端面の範囲内で光出射側端面の輪郭に沿って互いに密着するように配置され、前記導光部材の光出射側端面と前記分岐部の端面とが、接着または融着により接合接続され、あるいは一体的に形成されていることを特徴とする測光装置。
(2)前記対物光学系は、前記被測定物と導光部材の光入射側端面とを共役関係とする前項1に記載の測光装置。
(3)前記複数の受光センサには、等色関数XYZに近似した受光データを得るための受光センサが含まれる前項1または2に記載の測光装置。
(4)前記複数の受光センサには分光データを得るための受光センサが含まれる前項1~3のいずれかに記載の測光装置。
(5)前記複数の受光センサには、前記分岐部材からの光を光コネクタを介して受光する外部測定器の受光センサが含まれるとともに、前記外部測定器は分岐部材に対して着脱可能であり、受光センサの受光特性がそれぞれ異なる複数の外部測定器の中から使用者によって選択された任意の外部測定器が分岐部材に対して接続される前項1~4のいずれかに記載の測光装置。
(6)前記複数の分岐部材はそれぞれ光ファイバーにより形成される前項1~5のいずれかに記載の測光装置。
(7)前記光ファイバーは樹脂製である前項6に記載の測光装置。
(8)前記導光部材は多角柱または多角錐台である前項1~7のいずれかに記載の測光装置。
【発明の効果】
【0011】
前項(1)に記載の発明によれば、被測定物からの光束は対物光学系によって導光部材の光入射側端面に集められ、光入射側端面から導光部材に入射される。導光部材は、横断面が円形または多角形であるため、複数本のファイバーをランダムに編み込んで導光する従来の導光体に比べて、構成が簡単であり、安価である。また、導光部材に入射する被測定光源からの光は、導光部材への入射角度に応じた回数だけ導光部材の側面(光入射側端面および光出射側端面以外の面)で全反射されて導光され、導光部材の光出射側端面に至り、光出射側端面から出射されて単一の部材からなる複数の分岐部材に分岐される。そして、複数の分岐部材のそれぞれからの出射光は、2種類以上の異なる特性のデータを得るための複数の受光センサによって受光される。
【0012】
このため、受光部の各センサは、被測定光源の被測定面の様々な位置から出射された光および被測定面から様々な角度で出射された光が混合された光を受光することになる。その結果、被測定光源の被測定面の発光強度(発光輝度)に位置ムラおよび角度ムラがあっても、受光部側でその影響を受けにくくすることができ、これによって、測定感度の位置ムラおよび角度ムラを低減することが可能となる。
【0013】
また、導光部材の光出射側端面から出射される光束は複数の分岐部材により分岐されて各受光センサまで導光されるから、分岐部材から出射される光を各受光センサによって無駄なく利用することができる。このため、導光部材の光出射側端面から出射した光束をリレー光学系により照射して受光センサに受光させる構成のものに較べて、光効率を向上することができる。
【0014】
前項(2)に記載の発明によれば、対物光学系は、被測定物と導光部材の光入射側端面とを共役関係とするから、被測定光源の被測定面の発光強度の位置ムラおよび角度ムラを少なくすることができる。
【0015】
前項(3)に記載の発明によれば、等色関数XYZに近似した受光データを得ることができる測光装置となる。
【0016】
前項(4)に記載の発明によれば、分光データを得ることができる測光装置となる。
【0017】
前項(5)に記載の発明によれば、外部測定器の受光センサに、分岐部材からの光を光コネクタを介して受光させることで、外部測定器を使用することができるとともに、受光センサの受光特性がそれぞれ異なる複数の外部測定器の中から、使用者は任意の測定器を選択して使用することができる。
【0018】
前項(6)に記載の発明によれば、複数の分岐部材をそれぞれ光ファイバーにより容易に形成することができる。
【0019】
前項(7)に記載の発明によれば、光ファイバーは樹脂製であるから、曲げ容易性、安価、種類が豊富等の利点を享受できる。
【0020】
前項(8)に記載の発明によれば、導光部材は多角柱または多角錐台であるから、被測定光源の被測定面の様々な位置から出射された光および被測定面から様々な角度で出射された光を効率よく混合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施の一形態の測光装置の概略の構成を示す説明図である。
【
図2A】上記測光装置の導光部材の一構成例を示す斜視図である。
【
図2B】上記導光部材の他の構成例を示す斜視図である。
【
図2C】上記導光部材のさらに他の構成例を示す斜視図である。
【
図2D】上記導光部材のさらに他の構成例を示す斜視図である。
【
図3】
図2Aの導光部材の光入射側端面を測定範囲規制絞り側から見たときの状態を模式的に示す平面図である。
【
図4】(A)~(C)は導光部材と分岐部材の構成例を示す説明図である。
【
図5】(A)~(C)は導光部材と分岐部材の他の構成例を示す説明図である。
【
図6】導光部材と分岐部材のさらに他の構成例を示す斜視図である。
【
図7】導光部材と分岐部材のさらに他の構成例を示す斜視図である。
【
図8】導光部材と分岐部材と受光部の概略の構成を示す説明図である。
【
図9】
図8における分岐部材と受光センサの接続部分の拡大図である。
【
図10】分岐部材と受光センサの接続部分の他の構成を示す拡大図である。
【
図14】(A)(B)は導光部材に入射した光が導光部材内で反射されて出射される様子を説明するための説明図である。
【
図15】後側レンズ系がない場合の導光部材への入射光の説明図である。
【
図16】後側レンズ系がある場合の導光部材への入射光の説明図である。
【
図17】導光部材2の内部で導光される光線の光路を模式的に示す説明図である。
【
図18】
図2Dの導光部材の内部で導光される光線の光路を展開して示した説明図である。
【
図19】異なる特性のデータを得るための受光センサの組み合わせの一例を説明するための図である。
【
図20】
図19の分光センサで分光データを得るための構成の説明図である。
【
図21】異なる特性のデータを得るための受光センサの組み合わせの他の例を説明するための図である。
【
図22】異なる特性のデータを得るための受光センサの組み合わせのさらに他の例を説明するための図である。
【
図23】異なる特性のデータを得るための受光センサの組み合わせのさらに他の例を説明するための図である。
【
図24】
図23の例において複数の受光センサがそれぞれ有するバンドパスフィルタの透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0025】
図1は、本実施形態の測光装置1の概略の構成を示す説明図である。測光装置1は、導光部材2と、対物光学系3と、分岐部4と、受光部5とを有して構成されている。上記の測光装置1の構成では、被測定光源LSの被測定面LS0から出射された光を、対物光学系3を介して導光部材2に導き、導光部材2の内部で導光した後、分岐部4を介して受光部5に導く。以下、測光装置1を構成する各部材について説明する。
(導光部材)
図2Aは、導光部材2の一構成例を示す斜視図である。導光部材2は、光入射側端面2aおよび光出射側端面2bを有し、光入射側端面2aから内部に入射した光を導光して光出射側端面2bから出射する光学素子であり、本実施形態では、ガラス製の中実(中身が詰まった)ロッドで構成されているが、中空(中身がない)であっても良い。本実施形態では、導光部材2は、光入射側端面2aから光出射側端面2bに至るまで横断面が同じ大きさの四角形(例えば正方形)である四角柱の形状であるが、この形状に限定されるわけではない。
【0026】
図2Bは、導光部材2の他の構成例を示す斜視図である。また、
図2Cは、導光部材2のさらに他の構成例を示す斜視図である。これらの図に示すように、導光部材2は、光入射側端面2aから光出射側端面2bに至るまで横断面が同じ大きさの三角形(例えば正三角形)である三角柱の形状や、光入射側端面2aから光出射側端面2bに至るまで横断面が同じ大きさの六角形(例えば正六角形)である六角柱の形状などであってもよい。つまり、導光部材2は、光入射側端面2aから光出射側端面2bに至るまで横断面が同じ大きさの多角形である多角柱の形状であってもよい。
【0027】
また、
図2Dは、導光部材2のさらに他の構成例を示す斜視図である。同図に示すように、導光部材2は、光入射側端面2aおよび光出射側端面2bが異なる大きさの四角形で横断面も四角形である四角錐台の形状であってもよい。その他、図示はしないが、光入射側端面2aおよび光出射側端面2bが異なる大きさの三角形で横断面も三角形である三角錐台の形状、光入射側端面2aおよび光出射側端面2bが異なる大きさの六角形で横断面も六角形である六角錐台の形状であってもよい。つまり、導光部材2は、光入射側端面2aおよび光出射側端面2bが異なる大きさの多角形で横断面も多角形である多角錐台の形状であってもよい。
【0028】
あるいはさらに、導光部材2は、光入射側端面2aから光出射側端面2bに至るまで横断面が同じ大きさの円形(楕円形を含む)である円柱の形状であってもよい。あるいは光入射側端面2aおよび光出射側端面2bが異なる大きさの円形(楕円形を含む)で横断面も円形(楕円形を含む)である円錐台の形状であってもよい。
【0029】
このような構成の導光部材2の内部に光入射側端面2aを介して入射した光は、光入射側端面2aに対する入射角度に応じた回数だけ、導光部材2の側面2c(導光部材2における空気との界面)で全反射して導光され、光出射側端面2bから出射される。なお、側面2cは、光入射側端面2aおよび光出射側端面2bを連結する面である。
【0030】
なお、例えば、光入射側端面2aの中心(光入射側端面2aと対物光学系3の光軸との交点)に垂直またはそれに近い角度で入射する光については、導光部材2の内部に光入射側端面2aを介して入射した後、側面2cで全反射されずに導光されて光出射側端面2bから出射される。したがって、上記の「入射角度に応じた回数」には、0回も含まれる。
【0031】
なお、導光部材2は、例えば断面が円形または多角形の中空のパイプ(ライトパイプ)で構成されてもよい。この場合、パイプの内面に金属からなる反射膜を形成することにより、導光部材2に入射した光をその内面(反射膜)で反射させて導光することができる。また、導光部材2を構成する材料は、ガラスであっても良いし、アクリルなどの透明樹脂であってもよい。
(対物光学系)
対物光学系3は、被測定光源LSの像を、導光部材2の光入射側端面2aに縮小形成する光学系である。この対物光学系3は、被測定光源LS側に位置する前側レンズ系31と、導光部材2側に位置する後側レンズ系32と、被測定光源LSの1点から出射される光の広がり角を規制する絞りAP1(測定角規制絞り)と、被測定光源LSの測定範囲を規制する絞りAP2(測定範囲規制絞り、視野絞り)とを有して構成されている。
【0032】
対物レンズ系3の配置により、被測定光源LSの被測定面LS0と導光部材2の光入射側端面2aとは、共役な関係となっている。すなわち、被測定光源LSの被測定面LS0上のある点から出射された光は、導光部材2の光入射側端面2aのある点に集光する。本実施形態では、前側レンズ系31は、2枚のレンズで構成されており、後側レンズ系32は、3枚のレンズで構成されているが、上記の共役な関係を実現できる構成であればよく、前側レンズ系31および後側レンズ系32のレンズの枚数は特に限定されない。
【0033】
絞りAP1は、前側レンズ系31の後側焦点位置に配置されている。絞りAP1(開口部)の面内の各点は、被測定光源LSの被測定面LS0での光の出射角度に対応している。絞りAP1の配置により、被測定面LS0から出射される光の測定角度(出射角度)を過不足なく適切に規制し、測定したい角度範囲の光だけを測定することが可能となる。なお、本実施形態では、絞りAP1の開口部の形状は円形であるが、矩形であってもよいし、他の形状であってもよい。
【0034】
絞りAP2は、導光部材2の光入射側端面2aの直前に配置されている。絞りAP2(開口部)の面内の各点は、被測定光源LSの被測定面LS0上の各点に対応している。絞りAP2の配置により、被測定光源LSの測定範囲(測定領域)を過不足なく適切に規制し、測定したい範囲の光だけを測定することが可能となる。
【0035】
図3は、
図2Aの導光部材2の光入射側端面2aを絞りAP2側から見たときの状態を模式的に示している。本実施形態では、絞りAP2の開口部AP2aは、円形であり、その直径は、導光部材2の光入射側端面2aの内接円の直径よりも若干小さく設定されている。なお、絞りAP2の開口部AP2aは、矩形であってもよいし、他の形状であってもよい。また、絞りAP2の配置を省略することも可能である。この場合、被測定光源LSの被測定面LS0の測定範囲は、導光部材2の光入射側端面2aの形状と相似になる。
(分岐部)
分岐部4は、導光部材2の光出射側端面2bから出射される光を受光部5に導光する分光光学系であり、複数の分岐部材41によって構成される。各分岐部材41はこの実施形態では、限定はされないが光ファイバーによって構成されている。光ファイバーを構成する材料は、ガラスであっても良いし、アクリルなどの透明樹脂であってもよいが、所望の形状に容易に曲げられる、安価、種類が豊富であるなどの観点から樹脂製の光ファイバーが望ましい。また、分岐部材41の横断面形状は円形(楕円形を含む)であっても良いし、多角形であってもよい。
【0036】
各分岐部材41の導光部材2側の端面は、導光部材2の光出射側端面2bに空気層を介して近接配置されていても良いが、空気層を介することなく接着または融着等の接合方法により接続されていても良い。導光部材2と分岐部材41の間に空気層が存在すると、表面反射により光量ロスが発生する。光量ロスは、導光部材2の光出射側端面2bとこの面に対向する分岐部材41の面でそれぞれ4%程度、合計で8%程度となる。空気層が存在しない場合は光量ロスはほぼゼロとなる。さらに、導光部材2と分岐部材41とが離間していると、使用環境温度や振動などで導光部材2と各分岐部材41に位置ずれが生じ易く、光量変化が発生し易いことからも、導光部材2と分岐部材41は空気層を介することなく接合されるのが望ましい。
【0037】
図4(A)~(C)に、導光部材2と分岐部4の一例を示す。
図4に示す例では、同図(B)のように、導光部材2は横断面正三角形の中実三角柱からなり、導光部材2の光出射側端面2bに3本の光ファイバー製の分岐部材41の端部が接着または融着等により接合接続されている。導光部材2の光入射側端面2aと絞りAP2の関係は、同図(A)に示すように、絞りAP2側から見て絞りAP2の開口部AP2aの大きさが、導光部材2の光入射側端面2aの正三角形状の内接円と同程度かわずかに小さく設定されている。この実施形態では、導光部材2の一辺の長さが2.8mmであり、絞りAP2の開口部AP2aの直径は1.5mmである。
【0038】
図4に示した例において、導光部材2と分岐部材41の接続部での光効率、換言すれば導光部材2と3本の分岐部材41の面積比率について説明する。
【0039】
導光部材2の横断面正三角形の一辺の長さが2.8mmであり、分岐部材41が直径1mmの光ファイバーとすると、
図4(C)に位置関係を示すように、3本の分岐部材41は導光部材2の正三角形の光出射側端面2bの範囲内に収まる形態で配置できる。1本の分岐部材41当たりの光効率(面積率)は、
分岐部材41の面積(0.5
2×π)÷導光部材2の面積(2.8×2.42÷2)=0.23
となる。一方、従来例で説明した特許文献1に記載の3分岐バンドルファイバーの光効率は、
バンドル充填率(バンドル径に対するファイバー素線の有効面積比=70%程度)÷3=0.23
となり、
図4に示した実施形態に係る分岐部4の光効率は、3分岐バンドルファイバータイプのものと同程度であることがわかる。一方、本実施形態の方が3分岐バンドルファイバータイプよりも構成が単純なので、安価でかつ、光学特性が安定している(物によるバラツキが少ない)。
【0040】
図5(A)~(C)に、導光部材2と分岐部4のさらに他の例を示す。
図5に示す例では、同図(B)のように、導光部材2は横断面正方形の中実正四角柱からなり、導光部材2の光出射側端面2bに4本の光ファイバー製の分岐部材41の端部が接着または融着等により接合接続されている。導光部材2の光入射側端面2aと絞りAP2の関係は、同図(A)に示すように、絞りAP2側から見て絞りAP2の開口部AP2aの大きさが、導光部材2の光入射側端面2aの正方形状の内接円と同程度かわずかに小さく設定されている。この実施形態では、導光部材2の一辺の長さが1.5mmであり、絞りAP2の開口部AP2aの直径も1.5mmである。
【0041】
図5に示した例において、導光部材2と分岐部材41の接続部での光効率、換言すれば導光部材2と3本の分岐部材41の面積比率について説明する。
【0042】
導光部材2の横断面正方形の一辺の長さが1.5mmであり、分岐部材41が直径0.75mmの光ファイバーとすると、
図5(C)に位置関係を示すように、4本の分岐部材41は導光部材2の正方形の光出射側端面2bの範囲内に収まる形態で配置できる。1本の分岐部材41当たりの光効率(面積率)は、
分岐部材41の面積(0.375
2×π)÷導光部材2の面積(1.5×1.5)=0.20
となる。一方、従来例で説明した4分岐バンドルファイバーの光効率は、1分岐当たり
バンドル充填率(バンドル径に対するファイバー素線の有効面積比=70%程度)÷4=0.18
となる。また、特許文献2のように、導光部材とリレーレンズで4分岐する場合は、1分岐当たり10%程度であり、本実施形態に係る分岐部4の光効率は、従来の4分岐バンドルファイバータイプのものや、導光部材とリレーレンズタイプのものよりも効率が良い。
【0043】
図6及び
図7は、導光部材2と分岐部4の他の例を示すものである。この例では、導光部材2と各分岐部材41を同一材料にて一体構造に形成したものである。
【0044】
図6及び
図7では、導光部材2はいずれも横断面正三角形の中実の正三角柱からなり、導光部材2の光出射側端面2bから、導光部材2と一体に形成された3本の断面円形の分岐部材41が前方に突出している状態を示している。
【0045】
図6では、導光部材2の光出射側端面2bの周縁部と分岐部材41の間に段差が存在する状態に形成されている。一方、
図7では、導光部材2の光出射側端面2bの周縁部と分岐部材41の間に段差は存在せず、導光部材2と分岐部材41が滑らかに連接された状態に形成されている。このように導光部材2と各分岐部材41を同一材料にて一体構造に形成した場合も、導光部材2と各分岐部材41との間に空気層が存在しない場合の利点を教授できる。
(受光部)
受光部5は、
図8に模式的に示すように、被測定光源LSから対物光学系3を介して導光部材2に入射し、導光部材2の光出射側端面2bから出射され、分岐部4の複数の分岐部材41により導光される光を受光するものである。この受光部5は、各分岐部材41の出射端に対向して配置された特性の異なる複数の受光センサ51で構成されている。本実施形態では、受光部5の複数のセンサ51は、それぞれ、等色関数X、Y、Zに対応する測定感度を有している。
【0046】
各受光センサ51は、受光素子52と、受光素子52前方に配置された光学色フィルタ53とで構成されている。受光素子52は、例えばシリコンフォトダイオードで構成されており、光の受光量に応じた電気信号が後段の電気回路(図示せず)に出力される。受光素子52の受光面は、この例では正方形または長方形であるが、受光面は、四角形以外の多角形(例えば三角形)であってもよいし、円形であってもよい。
【0047】
図9に示すように、各分岐部材41から出射された全ての光束が光学色フィルタ53を介して受光素子52で受光されるのが、光効率が100%となる点で望ましい。また、
図10に示すように、分岐部材41の径・NA(開口数:Numerical Aperture)、受光素子52のサイズ、位置関係等に応じて、各分岐部材41から出射された全ての光束が受光素子52で受光されるように、各分岐部材41と各光学色フィルタ53との間に集光レンズ55を介在させてもよい。
【0048】
図11は、受光部5の具体的な構成を示す平面図である。受光部5は、この例では4本の分岐部材41に対応して4つの受光センサ51(51a~51d)を有している。各受光センサ51は前述したように、受光素子52と、光学色フィルタ53とで構成されている。各受光素子52は、例えばシリコンフォトダイオードで構成されており、光の受光量に応じた電気信号が後段の電気回路(図示せず)に出力される。各受光素子52の受光面5aは、この例では正方形または長方形であり、1つの四角形の四隅にそれぞれ位置している。このことから、受光部5の複数の受光センサ51は、1つの四角形の四隅にそれぞれ位置する四角形の受光面5aを有していると言うことができる。なお、各受光面5aは、四角形以外の多角形(例えば三角形)であってもよいし、円形であってもよいことは前述の通りである。また、受光センサ51の数は分岐部材41の数と同数である。
【0049】
各センサ51の光学色フィルタ53は、所定の波長域の光を透過させる光学特性を有しており、受光素子52よりも大きいサイズで形成されて、受光素子52の光入射側に配置されている。本実施形態では、4つのセンサ51のうち、3つのセンサ51(例えばセンサ51a~51c)の光学色フィルタ53は、それぞれ、等色関数X、Y、Zに対応する波長域の光を透過させる光学色フィルタ53X、53Y、53Zで構成されている。これにより、上記3つのセンサ51は、それぞれ、等色関数X、Y、Zに対応する測定感度を有することになる。上記3つのセンサ51の光学色フィルタ53X、53Y、53Zをそれぞれ透過した光は、対応する受光素子52で受光される。各受光素子52から出力される電気信号を電気回路で処理することにより、色や輝度を測定することができる。
【0050】
つまり、受光部5の複数の受光センサ51が、それぞれ、等色関数X、Y、Zに対応する測定感度を有していることにより、各センサ51(各受光素子52)から出力される電気信号(XYZの3刺激値に対応)に基づいて、電気回路にて、輝度(Lv)や色度(x,y)を求めることが可能となる。これにより、色や輝度を求める色彩輝度計(測色計)を実現することが可能となる。
【0051】
また、上記4つのセンサ51のうちで残りのセンサ51(例えばセンサ51d)の光学色フィルタ53は、等色関数Yに対応する波長域の光を透過させる光学色フィルタ53Yで構成されている。上記光学色フィルタ53Yを透過した光を受光する受光素子52は、例えばフリッカ検出用の電気回路と接続されている。これにより、上記受光素子52から出力される電気信号に基づき、フリッカを検出することが可能となる。
【0052】
なお、2つの光学色フィルタ53Yのうちの一方を、例えば赤外線を透過させる光学色フィルタで構成してもよい。この場合、4種類の光学色フィルタ53が配置されるため、4種類の光学特性を同時に測定することが可能となる。
【0053】
本実施形態では、4つの光学色フィルタ53のうち、3つの光学色フィルタ53X、53Y、53Zの光学特性が互いに異なっているが、少なくとも2つの光学色フィルタ53の特性が互いに異なっていればよい(複数の光学色フィルタ53の全てが同じ特性となっていなければよく、複数の受光センサ51から2種類以上の異なる特性のデータが得られれば良い)。受光部5の複数のセンサ51が、それぞれ、受光面5aが正方形または長方形である受光素子52と、受光素子52の光入射側に配置される光学色フィルタ53とを含み、光学色フィルタ53の少なくとも2つの特性が互いに異なっていることで、
図11のように、複数の特性のセンサ51を簡易にまとめて配置することが可能となる。
【0054】
図12は分岐部材41と対向した状態での受光部5の断面図、
図13はその一部を拡大して示す断面図である。
【0055】
各受光センサ51は、受光素子52よりも分岐部材41側に光学色フィルタ53が位置し、かつ、受光素子52および光学色フィルタ53が間隙を介して配置されるように、保持部材54の凹部54aに収容されて保持される。凹部54aは、光学色フィルタ53の配置側から受光素子52の配置側に向かって開口径が段階的に狭くなる階段状の形状であり、これによって、光学色フィルタ53および受光素子52を上記の位置関係となるように凹部54a内に収容することができる。
【0056】
上記の保持部材54は、隣り合って位置する受光センサ51を区切る遮光壁を兼ねている。つまり、隣り合う2つのセンサ51の間に保持部材54が遮光壁として存在するため、隣り合う一方のセンサ51の光学色フィルタ53を通過した光が、隣り合う他方のセンサ51の受光素子52に入射することが防止され、測定誤差を低減することが可能となる。
【0057】
また、上記した光学色フィルタ53としては、ガラス基板に干渉膜を形成した干渉膜フィルタを用いることが可能である。干渉膜フィルタを用いた場合、干渉膜に対する光線の入射角によって透過特性が変化するが、本実施形態では、導光部材2の光出射側端面2bで、被測定光源LSの特徴(位置むら、角度むら)はミキシングされているため、導光部材2からの出射光は被測定光源LSの特徴に依存しない。このため、干渉膜フィルタへの入射角度(コーンアングル)に対応した膜設計を行えば良い。
【0058】
干渉膜フィルタは偏光依存がある(偏光条件により透過率が異なる)が、導光部材2内を通過することで、偏光がミキシングされている(無偏光になっている)ので、被測定光源LSの特徴(液晶モニターは偏光光を出射している)に依存しない。
【0059】
また、光学色フィルタ53として、特定の波長域の光を吸収する色ガラスフィルタ、広い波長域の光を減光させるND(Neutral Density)フィルタ、直線偏光板、波長板等を用いることも可能である。また、1つの受光素子52の光入射側に、複数の光学色フィルタ53を配置してもよい。
【0060】
なお、光学色フィルタ53は、全て同じフィルタで構成されてもよい。ただし、この場合、複数のセンサ51で特性を異ならせるために、受光素子52として異なるセンサを用いる必要がある。例えば、可視光用のシリコンフォトダイオードと、赤外光用のInGaAsフォトダイオードとを組み合わせて用いたり、高感度測定が可能な受光素子と、高速測定が可能な受光素子とを組み合わせて用いることにより、同じ光学色フィルタ53を用いながら多様な光学特性を同時に測定することが可能となる。
【0061】
なお、受光部5を構成するセンサ51の数は、本実施形態の4個には限定されない。分岐部材41の数に応じて、例えば、受光センサ51を9個用いて3行3列で配置したり、16個用いて4行4列で配置するなど、より多くのセンサ51を用いて適切に配置することにより、より多くの光学特性を同時に測定することも可能である。
【0062】
各受光センサ31から出力された電気信号に変換された等色関数XYZに対応する受光データから、演算部(図示せず)は輝度Lvや色度x、yを演算する。演算結果は表示部で表示され、あるいは外部のパーソナルコンピュータに送出される。
(導光部材による測定感度の位置ムラおよび角度ムラの低減効果について)
次に、本実施形態の導光部材2を用いることにより、測定感度の位置ムラおよび角度ムラを低減できる効果について説明する。
【0063】
本実施形態のように、多角柱または多角錐台の形状の導光部材2を用いた構成では、上述したように、被測定光源LSから出射されて導光部材2の内部に入射した光は、光入射側端面2aでの入射角度に応じた回数だけ、導光部材2の側面2cで全反射を繰り返し、光出射側端面2bから出射される。この構成では、光出射側端面2bのある1点を考えると、上記1点が、導光部材2の光入射側端面2aの様々な点からの光で照明されていることになる。また、被測定光源LSの被測定面LS0と導光部材2の光入射側端面2aとが対物光学系3によって共役であるから、被測定光源LSの様々な点からの光が、導光部材2及び分岐部材41を介して受光部5の各センサ51を照明することになる。
【0064】
すなわち、
図14(A)に示すように、導光部材2の光入射側端面2aの中央部の位置S1から導光部材2に入射した光線も、
図14(B)に示すように、導光部材2の光入射側端面2aの端部の位置S2から導光部材2に入射した光線も、導光部材2の光出射側端面2bで概ね均一な強度で出射され、被測定光源LSの被測定面LS0の発光強度(輝度)に位置ムラがあっても、各センサ51は、被測定面LS0の様々な位置の光が導光部材2によって混合された光を受光することで、被測定面LS0における位置ムラの影響を受けにくくなる。これにより、各センサ51において、測定感度の位置ムラを低減することができ、安定した測定が可能となる。
【0065】
また、多角柱または多角錐台の形状の導光部材2を用いた構成では、被測定光源LSから出射される光の出射角度に応じて、導光部材2の光入射側端面2aに入射する角度が変わる。光入射側端面2aを介して導光部材2の内部に入射した光は、その角度に応じた回数だけ、導光部材2の側面2cで全反射を繰り返し、光出射側端面2bの様々な位置(導光部材2への入射角度に応じた位置)に到達することになる。したがって、上記と同様に光出射側端面2bのある1点を考えると、上記1点は様々な角度の光で照明されていることになる。被測定光源LSからの光の出射角度は、導光部材2の光入射側端面2aにおける光の入射角度と対応しているから、結局、被測定光源LSから様々な角度で出射された光が、導光部材2及び分岐部材41を介して受光部5の各センサ51を照明することになる。
【0066】
すなわち、
図14(A)(B)に示す0°の入射角度で光入射側端面2aに入射した光線(実線で示す)L1は、光入射側端面2aにおける入射位置が中央部の位置S1であっても端部の位置S2であっても直進するため、光出射側端面2bから均一に出射する。一方、0°でない入射角度で光入射側端面2aに入射した光線は反射するため、光出射側端面2bからの出射位置に偏りを生じる。例えば、
図14(A)のように光入射側端面2aの中央部の位置S1に角度を持って入射した光線(波線で示す)L2は、光出射側端面2bの中央部に集まり、
図14(B)のように光入射側端面2aの端部の位置S2に同じ角度で入射した光線L2は、光出射側端面2bの端部に集まっている。この現象は、導光部材2での反射回数が少ないほど偏りの程度が大きく、反射回数が多いほど偏りが緩和され均一に近づく。
【0067】
このように、被測定光源LSの被測定面LS0の発光強度(輝度)に角度ムラがあっても、各センサ51は、被測定面LS0から出射された様々な角度の光が導光部材2によって混合された光を分岐部材41を介して受光することで、被測定面LS0における角度ムラの影響を受けにくくなる。これにより、各センサ51において、測定感度の角度ムラを低減することができ、安定した測定が可能となる。
【0068】
しかも、導光部材2は、単純な多角柱または多角錐台の形状であるため(
図2A~
図2D参照)、複数本のファイバーをランダムに編み込んで導光する従来の導光体に比べて、構成が簡単であり、安価である。したがって、安価な導光部材2を用いた簡単な構成で、測定感度の位置ムラおよび角度ムラを低減する効果を得ることができる。特に、本実施形態では、上述したように、特性の異なる複数のセンサ51を受光部5が有していることにより、色や輝度を測定することができるため、そのような色や輝度の測定を行う色彩輝度計において上述の効果を得ることができる。
【0069】
次に、後側レンズ系32の有無に応じた導光部材2への入射条件によるミキシング効果の違いについて説明する。
【0070】
図15に示すように、絞りAP1の位置に導光部材2の光入射側端面2aを配置した場合、つまり後側レンズ系32が存在しない場合は、光入射側端面2aの位置は、被測定面LS0の角度分布(指向性)と相関を持つ。光入射側端面2aにおける入射位置S3には、被測定光源LSから上方角度に発する光線(破線で示す)だけが集まっている。
【0071】
導光部材2の光入射側端面2aへの入射角度は、被測定面LS0の空間分布(測定位置)と相関を持つ。被測定面LS0上の点P1からの光線は、すべて斜め下方向で導光部材2へ入射する。
【0072】
つまり、被測定面LS0の空間分布(位置むら)は、導光部材2による反射回数に依存し反射回数が多いほどミキシング性が高く、被測定面LS0の角度分布(指向性むら)は、反射回数に関わらず、ミキシング性は良い。
【0073】
一方、
図16に示すように、後側レンズ系32を用いて、被測定面LS0と導光部材2の光入射側端面2aを共役にした場合、導光部材2の光入射側端面2aの位置は、被測定面LS0の空間分布(測定位置)と相関を持つ。被測定面LS0上の点P2からの光線は、光入射側端面2aの入射位置S4に集まっている。
【0074】
導光部材2の光入射側端面2aへの入射角度は、被測定面LS0の角度分布(指向性)と相関を持つ。被測定面LS0から上方角度に発する光線(破線)は、すべて斜め下方向で導光部材2へ入射する。
【0075】
つまり、被測定面LS0の空間分布(位置むら)は、導光部材2による反射回数に関わらず、ミキシング性は良く、被測定面LS0の角度分布(指向性むら)は、反射回数に依存し反射回数が多いほどミキシング性が高くなる。
【0076】
上記のように、導光部材2での反射回数が多いほど、ミキシング性能が向上することから、後側レンズ系32の付加的な効果として、視野絞りサイズよりも小さく集光し、小さな導光部材2を使えるので反射回数が増えるとか、導光部材2への入射角が大きくなるので反射回数が増えるという効果がある。
【0077】
ちなみに、液晶や有機ELモニターは、RGB表示素子のバラツキにより、モニター画面内で発光むらがある。測定範囲が狭い場合は、RGB発光素子が離散的に配列されている影響も出ることから、測定値は、空間分布(測定位置むら)の影響を受けやすい。また、近年のパソコン用モニターや、家庭用テレビ、スマートホンでは、広い指向性(配光特性)のものが多いことも相俟って、色彩計としては、空間分布(測定位置むら)のミキシングの方がより優先度が高いと言える。
【0078】
図17は、導光部材2の内部で導光される光線の光路を模式的に示す説明図である。対物光学系3(
図1参照)によって、被測定光源LSの被測定面LS0の像を、導光部材2の光入射側端面2aに縮小結像させることにより、細い導光部材2(光入射側端面2aの内接円の直径D1および光出射側端面2bの内接円の直径D2が小さい導光部材)を用いることが可能となり、かつ、被測定光源LSから出射される光の出射角度よりも、導光部材2の光入射側端面2aにおける光の入射角度θが大きくなる(したがって、導光部材2の内部での屈折角θPも大きくなる)。
図17より、光入射側端面2aにおける光の入射角度θが大きいほど(屈折角θPが大きいほど)、または、直径D1およびD2が小さいほど、導光部材2の内部に入射した光の側面2cでの反射回数は増加することがわかる。
【0079】
本実施形態では、D1=D2であり、被測定光源LSから出射されて導光部材2の光入射側端面2aに入射する光線のうち、光軸AXとのなす角度θが最大となる光線LTが、導光部材2の側面2cで反射する、おおよその回数は、
(LtanθP)/D1、または(LtanθP)/D2
で表される。ただし、nPを導光部材2の屈折率としたとき、屈折角θPは、nPsinθP=sinθを満足する角度である。また、上記の光軸AXは、導光部材2の光入射側端面2aの内接円の中心と、光出射側端面2bの内接円の中心とを結ぶ軸であって、対物光学系3の光軸と同軸とする。
【0080】
前述のように、本実施形態の構成では、導光部材2の光出射側端面2bのある1点を考えたときに、上記1点は、被測定光源LSから出射された様々な角度の光で照明されていることになり、被測定光源LSの角度ムラの影響を低減することができる。導光部材2の内部で光線が反射されると、光線の角度が反転するため、光線の反射回数が増えると、より様々な角度の光で上記の1点が照明されることになる。このため、より効果的に、被測定光源LSの角度ムラの影響を低減して、測定感度の角度ムラを低減することができ、より安定した測定が可能となる。
【0081】
また、導光部材2での反射回数を一定としたとき、屈折角θPが大きく、D1またはD2が小さいほど、導光部材2の光軸AX方向の長さLを小さくすることができる。この場合、測光装置1の小型化が可能となる。
(多角錐台の導光部材を用いたときの反射回数について)
図18は、導光部材2として、
図2Dで示した多角錐台形状の導光部材2を用いたときの、導光部材2の内部で導光される光線の光路を展開して示した説明図である。上記の導光部材2では、光入射側端面2aおよび光出射側端面2bの形状は正方形であるが、光出射側端面2bの面積が光入射側端面2aの面積よりも大きい。
【0082】
ここで、多角錐台の形状の導光部材2を用いたときに内部で導光される光の反射回数については、以下のように考えることができる。すなわち、多角錐台形状の導光部材2を用いた場合、被測定光源LSから出射されて導光部材2の光入射側端面2aに入射する光線のうち、光軸AXとのなす角度θが最大となる光線LTが、導光部材2の側面2cで反射する、おおよその回数は、α/βで表される。ただし、
図18において、αは、点Aと点Oとを結ぶ直線と、光軸AXとのなす角度(°)であり、βは、光軸AXを含む断面における導光部材2の側面2cと光軸AXとのなす角度の2倍の角度(°)である。ここで、点Oは、光軸AXを含む断面において、導光部材2の側面2cを延長したときに光軸AXと交わる点を指し、点Aは、光線LTが導光部材2の光入射側端面2aで屈折した後の光線(光軸AXとなす角はθP)を延長した直線(破線LP)と、中心が点Oで半径L0の円とが交わる点である。具体的には、αおよびβは、以下の関係式を満足する角度となる。すなわち、
L0sinα={L-L0(1-cosα)}tanθP
tan(β/2)=(D2-D1)/2L
L0=D2L/(D2-D1)
nPsinθP=sinθ
であり、
L :導光部材2の光軸AX方向の長さ(mm)
θ :導光部材2の光入射側端面2aの中心に入射する光線と光入射側端面2aの法線とのなす角度の最大値(°)
D1:導光部材2の光入射側端面2aの内接円の直径(mm)
D2:導光部材2の光出射側端面2bの内接円の直径(mm)
nP:導光部材2の屈折率
である。
【0083】
α/β>1であれば、つまり、光線LTの導光部材2の側面2cでの反射回数が少なくとも1回あれば、光線LTを側面2cで反射させることで、被測定面LS0の様々な位置から出射される光、および被測定面LS0から様々な角度で出射される光を導光部材2で混合することができる。したがって、被測定光源LSの位置ムラおよび角度ムラの影響を低減して、測定感度の位置ムラおよび角度ムラを低減することができる。特に、α/β>2であることが、光線LTを側面2cで複数回反射させて、被測定光源LSの位置ムラおよび角度ムラの影響を確実に低減し、測定感度の位置ムラおよび角度ムラを確実に低減できるため、望ましい。
【0084】
なお、α≪1、β≪1の場合、
α≒(L/L0)tanθP={(D2-D1)/D2}/tanθP
β≒(D2-D1)/L
となり、
α/β≒(LtanθP)/D2
となる。つまり、この場合、α/βは、上述したD1=D2の場合の、おおよその反射回数と一致する。
(受光部5での受光センサの組み合わせ)
上述したように、受光部5は2種類以上の異なる特性のデータを得るための複数の受光センサ51を有している。受光センサ41が4個の場合、3個の受光センサ51(例えば受光センサ51a~51c)が等色関数X、Y、Zに対応する測定感度を有し、輝度(Lv)や色度(x,y)を求める受光センサであり、残りのセンサ51(例えばセンサ51d)が例えばフリッカを検出する受光センサである場合については、既に説明した。
【0085】
以下では、異なる特性のデータを得るための受光センサ51の組み合わせの他の例を示す。
【0086】
図19に示した実施形態では、導光部材2は一辺の長さ1.5mmの断面正方形の正四角柱であり、分岐部4は直径0.75mmの光ファイバー製の4本の分岐部材41を備え、受光部5は4個の受光センサ51を備えている。4個の受光センサ51のうち、3個は、光学色フィルタ53と、受光素子52で構成された受光センサ51a~51cであり、等色関数XYZの受光感度で、色度、輝度の演算用に用いられる。他の1個は、回折格子やプリズム、バンドパスフィルタなどを用いて分光データを取得し、分光放射輝度、色度、輝度の演算用に用いられる受光センサ51eである。なお、
図19では、3個の受光センサ51a~51cを代表して1個の受光センサのみを図示している。
【0087】
分光データを得る受光センサ51eは、
図20(A)(B)に示すように、例えば、直径0.75mmの光ファイバ製の分岐部材41の出射端を、筐体6に設けた開口サイズ0.4×0.75mmの入射スリット61に配置し、入射スリット61からの光束をレンズ62で概ね平行光とし、600本/mmの回折格子63へ照射する。そして、回折格子63で波長分散された光線を、レンズ62でラインセンサからなる受光センサ51eへ集光し受光する。受光センサ51eを構成するラインセンサは、1素子が0.2×1mmのセルを100個備え、波長範囲380~780nm、波長分解能4nmピッチ、波長半値幅8nmの分光データを取得する。
【0088】
入射スリット61での光量効率(面積比)は、スリット面積(0.4×0.6)÷光ファイバー面積(0.3752×π)=0.54となる。
【0089】
図21は、複数の受光センサ51のさらに他の組み合わせを例示するものである。この例では、導光部材2は一辺の長さ1.5mmの断面正方形の正四角柱であり、分岐部4は直径0.75mmの光ファイバー製の4本の分岐部材41を備え、受光部5は4個の受光センサ51を備えている。4個の受光センサ51はいずれも分光センサ51f~51iで構成され、各分光センサ51f~51iは、それぞれ波長帯の異なる分光データを得るようになっている。なお、
図21では、4個の受光センサ51f~51iのうち、2個は紙面奥行き方向に重なっているため、2個の受光センサのみを図示している。
【0090】
図22は、複数の受光センサ51のさらに他の組み合わせを例示するものである。この例では、導光部材2は一辺の長さ1.5mmの断面正方形の正四角柱であり、分岐部4は直径0.75mmの光ファイバー製の4本の分岐部材41を備え、受光部5は4個の受光センサ51を備えている。4個の受光センサ51のうち、3個は、光学色フィルタ53と、受光素子52で構成された受光センサ51a~51cで、他の1個は、外部測定器593に備えられた受光センサ51jである。
【0091】
外部測定器593の受光センサ51jは、光コネクタ(出口側と入口側)591、592を介して分岐部材41と接続され、分岐部材41から出謝された光を光コネクタ591、592を介して受光する。この実施形態では、それぞれに内蔵される各受光センサの受光特性がそれぞれ異なる複数の外部測定器593が、光コネクタ591、592を介して分岐部材41に対し着脱自在に接続できるようになっている。使用者は複数の外部測定器593の中から任意の外部測定器593を選択し接続して使用し、あるいは交換する。外部測定器593としては、例えば、フリッカー測定器やポリクロを備える分光測定器を例示できる。
【0092】
図23は、複数の受光センサ51のさらに他の組み合わせを例示するものである。この例において、導光部材2の形状や分岐部材41の本数(分岐数)は任意である。
【0093】
例えば、
図23に示すように、断面形状が正六角形である正六角柱の導光部材2に、光ファイバー製の分岐部材41を19本接続し、各分岐部材41に対応する19個の受光センサ51(図示せず)を配置する。19個の受光センサ51は、それぞれ任意の受光感度を有している。例えば、
図24のバンドパスフィルタの透過率のグラフに示すように、中心波長が400nm、420nm、・・・500nm、・・・760nmと20nmずつずれた、いずれも半値幅30nmの19種類のバンドパスフィルタを備えることで、400~760nmの分光データを得ることができる構成とすることができる。
【0094】
本願は、2020年9月16日付で出願された日本国特許出願の特願2020-155610号の優先権主張を伴うものであり、その開示内容は、そのまま本願の一部を構成するものである。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、被測定光源から出射される光の輝度や色度を測定する色彩輝度計などに利用可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 測光装置
2 導光部材
2a 光入射側端面
2b 光出射側端面
2c 側面
3 対物光学系
4 分岐部
41 分岐部材
5 受光部
5a 受光面
31 前側レンズ系
32 後側レンズ系
51 センサ
52 受光素子
53 光学色フィルタ
AP1、AP2 絞り
LS 被測定光源