(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B41M 1/30 20060101AFI20250401BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20250401BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20250401BHJP
C08F 2/46 20060101ALI20250401BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20250401BHJP
B41M 1/04 20060101ALI20250401BHJP
B41F 23/04 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
B41M1/30 D
C09D11/101
C09D11/54
C08F2/46
C08F290/06
B41M1/04
B41F23/04 A
(21)【出願番号】P 2022556548
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 JP2022034765
(87)【国際公開番号】W WO2023054026
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2025-01-28
(31)【優先権主張番号】P 2021160478
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】辻 祐一
(72)【発明者】
【氏名】井上 武治郎
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-63124(JP,A)
【文献】特開2009-88071(JP,A)
【文献】特開2015-85686(JP,A)
【文献】国際公開第2010/059562(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/153049(WO,A1)
【文献】特開2016-200671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/00-3/18
C09D 11/101
C09D 11/54
C08F 2/46
C08F 290/06
B41F 21/00-30/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の定義によるインキ(A)であって無色または白色のものを基材に転写するインキ(A)転写工程、前記インキ(A)に含まれる水または溶剤を蒸発させる乾燥工程、下記の定義によるインキ(B)を基材に転写するインキ(B)転写工程、活性エネルギー線を転写されたインキに照射する照射工程をこの順に含む、印刷物の製造方法。
インキ(A):水または溶剤を含んでなる揮発性の活性エネルギー線硬化型インキ
インキ(B):水または溶剤を実質的に含まない不揮発性の活性エネルギー線硬化型
オフセットインキ。
【請求項2】
前記インキ(A)の、25℃、回転数0.5rpmにおける粘度が0.1Pa・s以上5Pa・s以下であり、かつ、前記インキ(B)の、25℃、回転数0.5rpmにおける粘度が20Pa・s以上200Pa・s以下である、請求項1に記載の印刷物の製造方法。
【請求項3】
前記インキ(A)がフレキソインキである、請求項1または2に記載の印刷物の製造方法。
【請求項4】
前記インキ(A)が水または1気圧における沸点が150℃以下の溶剤を含む、請求項1~
3のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【請求項5】
前記インキ(A)中の水および/または溶剤の含有量が水および溶剤の合計で10質量%以上50質量%以下である、請求項1~
4のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【請求項6】
前記インキ(A)および/または前記インキ(B)が、脂環骨格を有する(メタ)アクリレートを含む、請求項1~
5のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【請求項7】
前記脂環骨格が、ノルボルナン骨格、アダマンタン骨格、トリシクロデカン骨格、ジシクロペンタジエン骨格から選ばれるいずれか1つ以上である、請求項
6に記載の印刷物の製造方法。
【請求項8】
前記インキ(A)および/または前記インキ(B)がワックスを含む、請求項1~
7のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【請求項9】
前記基材が非吸収原反である、請求項1~
8のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【請求項10】
前記基材の厚みが5μm以上50μm以下である、請求項1~
9のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【請求項11】
センタードラム型印刷機を用いる、請求項1~
10のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【請求項12】
前記インキ(B)転写工程と前記照射工程との間に、インキ(A)およびインキ(B)が転写された基材に活性エネルギー線硬化型オーバープリントニスを転写するオーバープリントニス転写工程を含む、請求項1~
11のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【請求項13】
前記基材が、ポリエチレンもしくはポリプロピレンの単一種、またはそれらの積層体である、請求項1~
12のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内容物保護の観点や、輸送・保存中の包装の欠損を防ぐため、食品、生活用品主体の包装に用いられる軟包装は、世界的な人口増加に伴い、今後も需要の拡大が見込まれる。一般的に、軟包装では基材であるプラスチックフィルムへ印刷後に、印刷物とシーラントを接着剤で貼り合わせるラミネート処理を行った後に、袋状に加工(製袋)する。
【0003】
なお、一般に、強度や耐熱性など製袋後に要求される機能性に応じて、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等種々のフィルムを組み合わせた積層体が包装材料として用いられている。近年、環境意識の高まりから、包装材料のリサイクル性が求められており、同一種のフィルム材料のみで構成されたモノマテリアルが注目を集めている。
【0004】
製袋後の印刷画像は基材の裏側から見えることになるため、基材フィルムには鏡像の画像が印刷される、裏刷り印刷となる。裏刷り印刷では、必ず印刷後のラミネート加工となるため、ラミネート加工後のエージング工程を欠くことができず、印刷後ただちに加工・充填工程に移ることはできない。
【0005】
一方で、製袋に印刷面が表側になる表刷り印刷物は、印刷面自体に耐久性が要求されるものの、印刷後のラミネート処理が不要のため、短納期・低コストの利点を備えている。
【0006】
現在、軟包装印刷で主流となっているグラビア印刷では、見た目が鮮やかな印刷物が得られるが、溶剤を大量に含むインキを使用していることから、インキ溶剤の乾燥や排気処理に多量のエネルギーが必要となり、環境負荷も大きい。また一般に、裏刷りと表刷りで、それぞれの特性に応じた膜強度やラミネート適性に調整した異なるインキを使用するため、兼用することができない。
【0007】
一方近年、活性エネルギー線、特に電子線(EB)照射によりインキを硬化させる、EBフレキソ印刷やEBオフセット印刷を、軟包装印刷で実施する試みがなされている(特許文献1および2)。一般に、軟包装印刷ではロールトゥロールで印刷するため、インキの速乾性が重要であり、活性エネルギー線硬化型の印刷方式は、溶剤をほとんど含まないことによる環境面での利点に加えて、熱エネルギーを使用せずに乾燥工程を短縮するため、省エネかつ高い生産性を有するものである。また電子線照射による硬化は、透過性に優れ、またインキ中の光重合開始剤が不要となるため、印刷物臭気や内容物への開始剤分解成分の移行のおそれが低減され、軟包装の内容物保護という安全面からも優れている。ただし、電子線照射設備は、紫外線照射設備と比較して高価で、サイズも大きくなるため、紫外線照射設備のよう各印刷胴での設置ではなく、最終印刷胴後に設置して、インキを一括硬化する。そのため、印刷プロセスは、未硬化インキを塗り重ねる、ウエットオンウエットとなる。
【0008】
特許文献3が開示する技術によれば、活性エネルギー線硬化性フレキソインキにウエットオンウエット印刷適性を付与する印刷プロセスが開示されている。これによると、前刷りの活性エネルギー線硬化性フレキソインキをフィルムに印刷した後、乾燥によりゲル状態とし、後刷りの活性エネルギー線硬化性フレキソインキを印刷して、良好なトラッピング性を維持して、色を塗り重ねていき、最後にEB照射により硬化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2004-358788号公報
【文献】国際公開第2019/69736号
【文献】特許第5959855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献3が開示する技術では、ウエットオンウエット印刷適性付与を目的として、留除可能な溶媒をインキに含有させるため、乾燥時以外にも、保存時や印刷機中での溶媒揮発によるインキ物性変動が生じる。このため、特にプロセスカラーでの濃度が変動しやすく、連続印刷時の濃度や、網点形状の安定性に欠け、同一印刷物面内での濃度バラツキも大きいといった、連続印刷安定性に関する課題があった。
【0011】
そこで、本発明では、ウエットオンウエット印刷適性のみならず、連続印刷安定性に優れた表刷り印刷物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明は、下記の定義によるインキ(A)であって無色または白色のものを基材に転写するインキ(A)転写工程、前記インキ(A)に含まれる水または溶剤を蒸発させる乾燥工程、下記の定義によるインキ(B)を基材に転写するインキ(B)転写工程、活性エネルギー線を転写されたインキに照射する照射工程をこの順に含む、印刷物の製造方法である。
インキ(A):水または溶剤を含んでなる揮発性の活性エネルギー線硬化型インキ
インキ(B):水または溶剤を実質的に含まない不揮発性の活性エネルギー線硬化型インキ。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る印刷物の製造方法によれば、ウエットオンウエット印刷適性、濃度安定性に優れた表刷り印刷が可能となる。また得られた印刷物は優れた隠蔽性、耐擦過性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について具体的に説明する。なお、本発明において「以上」とは、そこに示す数値と同じかまたはそれよりも大きいことを意味する。また、「以下」とは、そこに示す数値と同じかまたはそれよりも小さいことを意味する。また、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを含む総称である。
【0015】
本発明は、下記の定義によるインキ(A)であって無色または白色のものを基材に転写するインキ(A)転写工程、前記インキ(A)に含まれる水または溶剤を蒸発させる乾燥工程、下記の定義によるインキ(B)を基材に転写するインキ(B)転写工程、活性エネルギー線を転写されたインキに照射する照射工程をこの順に含むことを特徴とする。
インキ(A):水または溶剤を含んでなる揮発性の活性エネルギー線硬化型インキ
インキ(B):水または溶剤を実質的に含まない不揮発性の活性エネルギー線硬化型インキ。
【0016】
一般に、表刷り印刷において、基材のほぼ全面に印刷され印刷画像の下地色となる白インキまたは無色のアンカーインキは、印刷物外観の隠蔽性(白インキの場合)、および光沢を良好とするために、流動性が重要となる。
【0017】
一方、ウエットオンウエットプロセスによる印刷では、後刷りインキのタック(粘度、凝集力)は前刷りインキのそれよりも低くないと、印刷した前刷りインキが、後刷りで剥ぎとられ、混色が発生する。このため、インキ間のタックバランス調整と白の高流動性はトレードオフの関係にある。
【0018】
特許文献3が開示する技術では、留除可能な溶媒をインキに含有させ、胴間で乾燥を行うことで、後刷りでの剥ぎとられ、混色を防ぎ、ウエットオンウエット印刷適性を実現している。しかしながら、留去可能な溶媒を各インキに含有するため、乾燥時以外にも、保存時や印刷機中での溶媒揮発によるインキ物性変動が生じる。
【0019】
下地色となる白では、一般にベタばかりの画像でかつ、インキ供給量も多く、高濃度が求められるため、インキ物性変動の影響は少ないが、白以外のプロセスカラーや特色といったカラーインキでは、濃度や網点形状など印刷品質に影響するため、連続印刷時に変動が小さいことが望ましい。
【0020】
本発明の印刷物の製造方法においては、下地色となる白または無色のインキは揮発性の水または溶媒を含んで高い流動性としつつ、後刷り印刷の前に乾燥工程を設けることで、後刷りでの剥ぎとられ、混色を抑制する。さらに、後刷りのプロセスカラーや特色といったカラーインキでは、揮発性の成分を実質的に含まないことで、粘度を始めとするインキ物性の変動が小さく、連続印刷時にインキ供給量が変動しにくく、印刷品質の安定性を向上する。
【0021】
(活性エネルギー線硬化型インキ)
インキ(A)およびインキ(B)において共通する、活性エネルギー線硬化型インキの好ましい態様について説明する。
【0022】
本発明における活性エネルギー線硬化型インキは、すなわちインキ(A)および/またはインキ(B)は、脂環骨格を有する(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。脂環骨格を有する(メタ)アクリレートを含むことにより、活性エネルギー線照射による硬化時の体積収縮が小さくなり、インキ硬化膜の基材に対する密着性が向上する。
【0023】
前記脂環骨格を有する(メタ)アクリレートとしては例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルナン-2-メタノール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、3-メチルアダマンタン-2-イル(メタ)アクリレート、3-エチルアダマンタン-2-イル(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]フルオレン、トリシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノメチロール(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエントリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
特に、硬化時の体積収縮が小さく、硬化皮膜の耐傷性などの膜物性が良好となることから、前記脂環骨格としては、ノルボルナン骨格、アダマンタン骨格、トリシクロデカン骨格、ジシクロペンタジエン骨格から選ばれるいずれか1つ以上であることがより好ましい。
【0025】
また脂環骨格を有していない、単官能または多官能の(メタ)アクリレートを用いることもできる。
【0026】
単官能の(メタ)アクリレートの例としては、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N-(2-ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシメチル)メタクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ジメチルアクリルアミド、メトキシメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミドが挙られる。
【0027】
2官能の(メタ)アクリレートの例としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレート、ノニルジ(メタ)アクリレート、デカンジ(メタ)アクリレート、4,4’-イソプロピリデンジフェノールジ(メタ)アクリレート、や、これらのおよびこれらのエチレンオキシド付加体、プロピレンオキシド付加体、テトラエチレンオキシド付加体等が挙げられる。
【0028】
3官能の(メタ)アクリレートの例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートや、これらのエチレンオキシド付加体、プロピレンオキシド付加体前記等が挙げられる。
【0029】
4官能の(メタ)アクリレートの例としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレートや、これらのエチレンオキシド付加体、プロピレンオキシド付加体が挙げられる。
【0030】
5官能以上の(メタ)アクリレートの例としては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、これらのエチレンオキシド付加体、プロピレンオキシド付加体が挙げられる。
【0031】
本発明における活性エネルギー線硬化型インキは、すなわちインキ(A)および/またはインキ(B)は、樹脂を含むことが好ましい。前記樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フタレート樹脂などが挙げられ、市販品を用いてもよいし、合成品であってもよい。
【0032】
アクリル樹脂は、(メタ)アクリレートモノマーを単独、または2種以上を混合し、有機溶媒中、重合開始剤の存在下、重合反応を行うことにより得ることができる。また、スチレンやα-メチル-スチレンなどを共重合して得ることも可能である。
【0033】
アクリル樹脂の市販品の例としては、星光PMC社製の“ハイロスー”(登録商標)シリーズが挙げられる。
【0034】
ウレタン樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートをそれぞれ1種類以上混合し、有機溶媒中、縮合剤の存在下、重縮合反応を行うことにより得ることができる。ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオールなどが挙げられ、ポリイソシアネートとしては、ポリウレタンポリイソシアネートや、イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0035】
フタレート樹脂は、ジアリルオルソフタレートやジアリルイソフタレートを単独で、または2種混合して有機溶媒中、重合開始剤の存在下、重合反応を行うことにより得ることができる。
【0036】
フタレート樹脂の市販品の例としては、大阪ソーダ社製の“ダイソーダップ”(登録商標)シリーズや、“ダイソーイソダップ”(登録商標)が挙げられる。
【0037】
本発明における活性エネルギー線硬化型インキが含む顔料としては例えば、フタロシアニン系顔料、溶性アゾ系顔料、不溶性アゾ系顔料、レーキ顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ベンガラ、カドミウムレッド、黄鉛、亜鉛黄、紺青、群青、酸化物被覆ガラス粉末、酸化物被覆雲母、酸化物被覆金属粒子、アルミニウム粉、金粉、銀粉、銅粉、亜鉛粉、ステンレス粉、ニッケル粉、有機ベントナイト、酸化鉄、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。
【0038】
また、無色の体質顔料である、マイカ(含水ケイ酸アルミニウムカリウム)やタルク(ケイ酸マグネシウム塩)なども用いることができ、本発明における活性エネルギー線硬化型インキを、色顔料を含まないアンカーインキや、オーバープリントニスとすることもできる。
【0039】
本発明における活性エネルギー線硬化型インキは、すなわちインキ(A)および/またはインキ(B)は、ワックスを含むことが好ましい。活性エネルギー線硬化型インキがワックスを含むことにより、硬化膜の耐擦過性、滑り性が向上する。
【0040】
前記ワックスとしては、カルナバワックス、木ロウ、モンタンワックス、ラノリン等の天然ワックス、炭化水素系ワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックス、およびシリコーン化合物等の合成ワックスなどを用いることができる。中でも炭化水素系ワックスが、耐擦過性に優れるため好ましい。
【0041】
炭化水素系ワックスとしては例えば、フィッシャートロプスワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。これらのワックスを1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
インキ(A)中の、またはインキ(B)中の前記ワックスの含有量としては、0.1質量%以上、10質量%以下が好ましい。前記ワックスの含有量が0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であることで、耐スクラッチ性や滑り性が向上する。また、前記ワックスの含有量が10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下であることで、前記ワックスが良好に分散し、流動性が向上する。
【0043】
本発明における活性エネルギー線硬化型インキは、すなわちインキ(A)および/またはインキ(B)は、その他の添加剤、例えば、光重合開始剤や、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤等の添加剤を含有してもよい。
【0044】
ただし、本発明における活性エネルギー線硬化型インキは、光重合開始剤を含む紫外線硬化型インキであってもよいが、環境負担の軽減上は、光重合開始剤を含まない放射線硬化型のインキがより好ましい。
【0045】
本発明における活性エネルギー線硬化型インキとしては、フレキソインキ、オフセットインキのいずれも用いることができる。オフセットインキとして、水なし平版印刷用のインキを用いてもよい。
【0046】
本発明における活性エネルギー線硬化型インキを合成する場合は、単官能および多官能(メタ)アクリレートに樹脂を溶解した樹脂ワニスに、顔料、助剤を加えて、オフセットインキであれば三本ロールミルを用いて、フレキソインキであればアトライター、ボールミル、サンドミル等を用いて、分散、混合することで合成することができる。
【0047】
(インキ(A))
インキ(A)は、水または溶剤を含んでなる揮発性の活性エネルギー線硬化型インキである。
【0048】
インキ(A)における溶剤としては例えば、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。溶剤を1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、水および溶剤を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
インキ(A)は、水または1気圧における沸点が150℃以下の溶剤を含むことが好ましい。水または溶剤の沸点が150℃以下、より好ましくは120℃以下であることで、適度な速乾性が付与される。そして、後の乾燥工程において瞬時に乾燥されることで、後刷りのインキ(B)による剥ぎとられ、混色を抑制することができる。
【0050】
インキ(A)における水および/または溶剤の含有量としては、水および溶剤の合計で10質量%以上、50質量%以下が好ましい。含有量が10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であることで、乾燥工程後の後刷りのインキ(A)による剥ぎとられ、混色を抑制する。また含有量が50質量%以下、より好ましくは40質量%以下であることで、乾燥工程による速乾性が付与される。
【0051】
インキ(A)は、JIS Z8803:2011の「共軸二重円筒形回転粘度計による粘度測定方法」による、25℃、回転数0.5rpmにおける粘度ηAが0.1Pa・s以上5Pa・s以下であることが好ましい。ηAが0.1Pa・s以上5Pa・s以下、より好ましくは0.5Pa・s以上2Pa・s以下であることによって、無色または白色の下地色となるインキの流動性が良好となる。
【0052】
前述のとおり本発明における活性エネルギー線硬化型インキとしては、フレキソインキ、オフセットインキのいずれも用いることができるが、インキ(A)としては特に、粘度が低く、水や溶剤を含んでも良いフレキソインキを用いることが好ましい。
【0053】
市販の揮発性の電子線硬化型フレキソインキとしては例えば、Sun Chemical製 “Wetflex”や、Sakata-Inx製 “Gelflex”などを挙げることができる。
【0054】
(インキ(B))
インキ(B)は、水または溶剤を実質的に含まない不揮発性の活性エネルギー線硬化型インキである。水または溶剤を実質的に含まないとは、インキ中の水分および溶剤の合計含有量が0.5質量%以下であることを言う。
【0055】
インキ(B)は、JIS Z8803:2011の「共軸二重円筒形回転粘度計による粘度測定方法」による、25℃、回転数0.5rpmにおける粘度ηBが20Pa・s以上200Pa・s以下であることが好ましい。ηBが20Pa・s以上200Pa・s以下、より好ましくは、40Pa・s以上100Pa・s以下であることによって、プロセスカラーや特色といったカラーインキの、印刷中の物性変動を小さく抑えることができる。
【0056】
また、ηAおよびηBがそれぞれの好ましい範囲内であることにより、インキ間でのタックのバランスをつけられて、連続印刷安定性が高くなるため好ましい。
【0057】
前述のとおり本発明における活性エネルギー線硬化型インキとしては、フレキソインキ、オフセットインキのいずれも用いることができるが、インキ(B)としては特に、粘度が高く、揮発成分を含まないオフセットインキを用いることが好ましい。
【0058】
市販の不揮発性の電子線硬化型オフセットインキとしては例えば、Sun Chemical製 “Sun Beam”や、Flint製 “XCURA EVO”などを挙げることができる。
【0059】
(印刷機)
本発明の印刷物の製造方法において、センタードラム型印刷機を用いることが好ましい。センタードラム型とは、インキを転写するための胴および押圧胴に対向して、前記被印刷物を挟む圧胴が単一であることを指す。センタードラム型の印刷機であれば、胴間のフィルム搬送にガイドロールが不要となるため、ウエットオンウエット印刷プロセスに適している。
【0060】
センタードラム型印刷機の具体例としては、フレキソ印刷機として市販されているものではWindmoeller & Hoelscher社製“MIRAFLEX”やUTECO社製“ONYX XS”が挙げられ、オフセット印刷機として市販されているものではCOMEXI社製“CI-8”が挙げられる。
【0061】
(基材)
本発明の印刷物の製造方法において、基材としては、金属、フィルムなどの非吸収原反を用いることが好ましい。
【0062】
前記フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリαメチルスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。なかでもリサイクル性の観点から、ポリエチレンもしくはポリプロピレンの単一種、またはそれらの積層体を用いることが好ましい。
【0063】
前記フィルムには、バーニング処理や、易接着コーティング、化学蒸着など表面処理が施されていてもよい。
【0064】
基材の厚みは、5μm以上50μm以下が好ましい。基材の厚みを5μm以上、好ましくは10μm以上とすることで、印刷に必要な基材の機械的強度を効果的に得ることができる。また、50μm以下、好ましくは30μm以下とすることで、基材のコストを安価に抑えることができる。
【0065】
基材がアート紙、コート紙、キャスト紙などの塗工紙や、上質紙、新聞用紙、和紙などの非塗工紙や、合成紙、アルミ蒸着紙、など紙類の場合、インキ(A)として白インキのかわりに透明インキを用いてもよい。
【0066】
本発明の印刷物の製造方法において用いられる基材の形態としては、枚葉状、ロール状のいずれでもよい。軟包装用の薄膜フィルムに印刷する場合は、ロールフィルムを用い、ロールトゥロールで印刷することが好ましい。
【0067】
(転写工程)
各転写工程において、インキを基材の被転写面に転写する。
【0068】
一般に、カラー印刷物は印刷する色の数だけインキを転写するための印刷ユニットが必要になる。各色の印刷ユニットで、画線部のインキがアニロックスロールやインキロールから印刷版、方式によってはブランケットを介して、被印刷物の被転写面に転写される。
【0069】
転写工程において、インキを被印刷面に転写する方法としては、低粘度の揮発性インキについては、フレキソ印刷、高粘度の不揮発性インキについては、オフセット印刷を用いることが好ましい。
【0070】
本発明の印刷方法は、転写工程のうちではインキ(A)であって無色または白色のものを基材に転写するインキ(A)転写工程、インキ(B)を基材に転写するインキ(B)転写工程をこの順に含む。
【0071】
例えばインキ(A)であって白色のものを先に基材に転写することで、表刷りとすることができる。表刷りとすることで、食品や生活用品を包装対象とする軟包装においても硬化したインキの層と包装対象とを基材自体が隔離できるため、シーラントを貼り合わせることを不要とすることができる。
【0072】
(乾燥工程)
本発明の印刷物の製造方法において、基材に転写された、揮発性インキ中に含まれる水または溶剤は、フレキソ印刷機で一般的に使用されている熱風乾燥機等のエアーブローにより除去することができる。揮発成分が水などヒドロキシ基を含む化合物であれば、IR乾燥機を用いることもできる。乾燥工程により揮発成分が除去されることで、基材に転写された揮発性インキは半乾燥状態となり、粘度も大きく上昇する。これにより後刷り胴でのインキよりも高い粘度、凝集力となることで、剥ぎとられおよび混色を抑制する。
【0073】
一般に、揮発性インキの粘度が前述のηAの範囲内であり不揮発性インキの粘度が前述のηBの範囲内にある場合だと、通常のウエットオンウエット印刷では、前刷りの揮発性インキが、後刷りで圧倒的に粘度が高い不揮発性インキに剥ぎとられて混色し、正常な印刷が出来なくなる。しかしながら、本発明の揮発性インキの乾燥工程を経て、後刷りの不揮発性インキを連続印刷することで、後刷りでのインキによる剥ぎとられおよび混色を抑制し、安定した品質での連続印刷が可能となる。
【0074】
(オーバープリントニス転写工程)
本発明の印刷物の製造方法において、インキ(B)転写工程と照射工程との間に、インキ(A)およびインキ(B)が転写された基材に活性エネルギー線硬化型オーバープリントニスを転写する工程(オーバープリントニス転写工程)を含むことが好ましい。
【0075】
前記活性エネルギー線硬化型オーバープリントニスは、印刷されたインキ硬化物を保護する役割となり、表刷り印刷物の耐擦過性を向上する。またニスの性状に応じて、印刷物の意匠性に光沢性またはマット性を付与することも可能となる。
【0076】
(照射工程)
照射工程において、転写されたインキに活性エネルギー線を照射する。
【0077】
本発明の印刷物の製造方法において、活性エネルギー線源としては、紫外線(特にLED-UV)、電子線、ガンマ線などが挙げられる。電子線やガンマ線などの放射線は、照射物質中で高エネルギーの二次電子を発生させ、周囲の分子を励起し、ラジカルに代表される反応活性種を生成する。被照射物質が、活性エネルギー線硬化型インキであると、インキ中でラジカルが生成され、ラジカル重合が進み、硬化・インキ皮膜となる。特に、低加速電圧による電子線は、10μm以下であるインキ膜の厚さに対して、十分な透過性を有し、硬化に必要なエネルギーを与えられ、利用時の特別な資格が不要で取り扱いが容易なことから好ましく用いられる。
【0078】
電子線は加速電圧により透過深度が決まるため、電子線の加速電圧としては、インキ膜を十分な線量が透過する、50kV以上が好ましく、90kV以上がより好ましく、110kV以上がさらに好ましい。また、透過深度が大きくなると、フィルムの内部に与える線量も増えるため、300kV以下が好ましく、200kV以下がより好ましく、150kV以下がさらに好ましい。
【0079】
また電子線の照射線量が高いほど、対象物質中でラジカル種の発生量が増える一方で、フィルムのダメージも大きくなるため、照射線量は10kGy以上100kGy以下が好ましく、20kGy以上50kGy以下がより好ましい。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0081】
<測定・評価方法>
(1)インキの粘度(ηA、ηB)
JIS Z8803:2011の「共軸二重円筒形回転粘度計による粘度測定方法」により測定した。B型粘度計(ブルックフィールド(BROOKFIELD)社製DV-II)にシリンダースピンドルNo4を装着し、25℃、回転数0.5rpmの測定条件にて測定した。
【0082】
(2)タック値
インキ1.3mlをインコメーター(テスター産業社製“INKOGRAPH” TYPE-V)のローラーに塗布し、ローラー温度38℃、回転速度400rpmにて運転し、1分後のタック値を測定した。
【0083】
(3)印刷適性
印刷物を観察し、下記の基準により評価を行った。
A:インキの剥ぎとられおよび混色のいずれも見られないカラー印刷である。
B:白インキの後刷りのカラーインキによる僅かな剥ぎとられか、またはカラーインキが僅かに白っぽくなる混色が見られる。
C:白インキの後刷りのカラーインキによる剥ぎとられか、または混色が見られる。
【0084】
(4)隠蔽性
印刷物の白ベタのみの箇所を対象として、反射濃度計(xRite社製、eXact advance)を用いて隠蔽性(opacity)を測定した。隠蔽性の値は、55%以上が良好であり、60%以上は極めて良好である。
【0085】
(5)濃度安定性
印刷長4000mの連続印刷において、印刷開始時点から1000mごとに5点サンプルを採取し、各サンプルのプロセスカラー(CMYK)の濃度を測定した。各色の5点サンプル中の濃度最大値と濃度最小値の差分を計算し、4色の差分のうち最も大きい値を、最大濃度差と呼び、その値を記録した。そして、下記の基準により評価を行った。
A:最大濃度差が0.1以下である。
B:最大濃度差が0.1よりも大きく0.2以下である。
C:最大濃度差が0.2よりも大きい。
【0086】
(6)印刷物の剥離性
印刷物の白ベタ部分を対象として、無作為に抽出した30mm×18mmの範囲に、ニチバン株式会社製“セロテープ”(登録商標)No.405(幅18mm)を貼った後、手で剥離し、下記の基準にて評価した。
A:インキ膜が剥がれなかった。
B:インキ膜に一部剥がれが見られた。
【0087】
(7)印刷物の耐擦過性
印刷物の白ベタ部分を対象として、無作為に抽出した3cm×3cmの範囲を、人の爪で20往復擦り、下記の基準により評価した。
A:爪による傷が見られなかった。
B:爪の痕に沿って、部分的にインキの剥がれが見られた。
【0088】
<印刷ユニット>
後述する印刷機の1胴~5胴目に対応する印刷ユニットとして、下記のいずれかを用いた。
【0089】
(1)フレキソ印刷ユニット
印刷版には旭化成製、AWP DEWを用い、対応する色の画像を露光、現像して製版した。アニロックスローラーは、Praxair Surface Technologies社製Nova Goldを用いた。
【0090】
(2)オフセット印刷ユニット
印刷版には水なし平版印刷原版(東レ(株)製、TAC-VT4)を用い、対応する色の画像を露光、現像して製版した。ゴムローラーはBoetcher製、726-40、ブランケットは金陽社製、T414Wを用いた。
【0091】
<印刷方法>
先ず、下記印刷方法1~5に共通する構成について説明する。
【0092】
印刷基材の走行方向の上流側から順に1胴目に白インキ、2胴目にブラックインキ、3胴目にシアンインキ、4胴目にマゼンタインキ、5胴目にイエローインキをセットした。
【0093】
印刷方法1~4について同一の画像を用い、プロセスカラーのベタ部を所定の印刷濃度(ブラック1.7、シアン1.4、マゼンタ1.3、イエロー1.1)に設定した後、印刷速度200m/分で4000m連続して、基材に表刷りのカラー印刷を実施した。
【0094】
照射工程においては、加速電圧110kV、照射線量30kGyの電子線を照射してインキを硬化させ、印刷物を得た。
【0095】
[印刷方法1]
印刷方法1において、印刷機(COMEXI社製CI-8)の1胴目にフレキソ印刷ユニットを設置し、2胴~5胴目をオフセット印刷ユニットとした。また、1胴目と2胴目との間でのみ熱風乾燥を行った。
【0096】
[印刷方法2]
印刷方法2において、印刷機(UTECO社製ONYX XS)の1胴~5胴目の全てをフレキソ印刷ユニットとし、各胴間で熱風乾燥を行った。
【0097】
[印刷方法3]
印刷方法3において、印刷機(UTECO社製ONYX XS)の1胴~5胴目の全てをフレキソ印刷ユニットとし、胴間での乾燥は行わなかった。
【0098】
[印刷方法4]
印刷方法4において、印刷機(COMEXI社製CI-8)の1胴~5胴目の全てをオフセット印刷ユニットとし、胴間での乾燥は行わなかった。
【0099】
[印刷方法5]
印刷方法5において、印刷機(COMEXI社製CI-8)の1胴目、および8胴目にフレキソ印刷ユニットを設置し、2胴~5胴目をオフセット印刷ユニットとした。また、1胴目と2胴目との間でのみ熱風乾燥を行った。8胴目には活性エネルギー線硬化型オーバープリントニスをセットした。
【0100】
<インキ原料>
(顔料、顔料分散剤)
白顔料:タイペークCR57(石原産業(株)製)
墨顔料:MA-11(三菱ケミカル(株)製)
藍顔料:リオノールブルーFG7330(東洋カラー(株)製)
紅顔料:リオノールレッドTT5701G(東洋カラー(株)製)
黄顔料:リオノールイエローTT1405G(東洋カラー(株)製)
体質顔料:A-11(ヤマグチマイカ(株)製)
顔料分散剤:“Disperbyk”(登録商標)111(ビックケミー社製)。
【0101】
(モノマー)
モノマー1:ペンタエリスリトールトリアクリレート(MIWON社製“Miramer”(登録商標)M340)
モノマー2:トリメチロールプロパントリアクリレートエチレンオキシド付加物(MIWON社製“Miramer”(登録商標)M3190)
モノマー3:脂環骨格を有する(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(MIWON社製“Miramer”(登録商標)M262)
モノマー4:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(新中村化学(株)製“NKエステル”(登録商標)A-HD-N)。
【0102】
(オリゴマー)
オリゴマー:ウレタンアクリレート(共栄社化学(株)製UF-8001G)。
【0103】
(アクリル樹脂)
アクリル樹脂:25質量%のメタクリル酸メチル、25質量%のスチレン、50質量%のメタクリル酸からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.6当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させたもの(重量平均分子量34,000、酸価102mgKOH/g)。
【0104】
(重合禁止剤)
重合禁止剤:p-メトキシフェノール(和光純薬工業(株)製)。
【0105】
(水、溶媒)
水:純水(和光純薬工業(株)社製)
溶媒1:2-プロパノール(和光純薬工業(株)社製)、沸点83℃
溶媒2:プロピレングリコール(和光純薬工業(株)社製)、沸点188℃。
【0106】
(ワックス)
ワックス:“KTL”(登録商標)4N(喜多村(株)製)。
【0107】
<インキの作製>
表1に示す配合で白インキ、および、表2に示す配合でブラック、シアン、マゼンタ、イエローのカラーインキを、下記に記載のインキ原料を秤量し、フレキソインキについてはビーズミルを用いて、オフセットインキについては三本ロールミルを用いて、混合することでインキを作製した。
【0108】
<活性エネルギー線硬化型オーバープリントニス>
EBニス:Sun Chemical社製OPV EB UMatt UQ1601。
【0109】
<印刷基材>
基材1:PETフィルム(polyplex社製S-46、厚み12μm)
基材2:PEフィルム(フタムラ化学社製PE3K-H、厚み25μm)
基材3:二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(Jindal Film社製“AlOx-Lyte”、厚み20μm)。
【0110】
【0111】
【0112】
[実施例1~5および比較例1]
表3に示す印刷方法、白インキおよびカラーインキセット、ならびに基材として基材1(PETフィルム)を用いて、表刷り印刷をそれぞれ実施した。
【0113】
実施例1では、白色のインキ(A)の胴間乾燥を行うことで、後刷りの高粘度のオフセットインキにおいても、剥ぎとられが発生せず、良好な印刷適性を示した。さらに連続印刷時もカラーインキの濃度が安定していた。
【0114】
実施例1と比べ、インキ(A)中の溶剤量が少ない実施例2や、インキ(A)中の溶剤の沸点が高い実施例3では、乾燥後の白インキ増粘が小さく、印刷適性はBであった。
【0115】
実施例1に対してインキ(A)中の溶剤の代わりに水を用いた実施例4においても、良好な印刷適性、連続印刷安定性を示した。
【0116】
脂環式骨格を含有するモノマーを用いた実施例5においては、良好な印刷適性、連続印刷安定性に加えて、印刷物の密着性、耐摩耗性も向上が見られた。
【0117】
カラーインキにもインキ(A)を用いた比較例1では、各色での胴間乾燥を行うことで、全色において良好な印刷適性を示したものの、連続印刷時の濃度変動が大きく、印刷安定性は不十分であった。
【0118】
印刷条件および評価結果を表3に示す。
【0119】
[比較例2~4]
完全ウエットオンウエットのプロセスの印刷方法2、表3に示す白インキおよびカラーインキセット、ならびに基材として基材1(PETフィルム)を用いて、表刷り印刷を実施した。
【0120】
比較例2では、白インキ含めフレキソタイプのインキ(B)のみを用いた。比較例2では、白インキや、前刷りのカラーインキが後胴で取られ、混色が発生し、カラーインキがのらず、正常な印刷が出来なかった。
【0121】
比較例3および4では、白インキ含めオフセットタイプのインキ(B)のみを用いた。比較例3では、白インキが後胴で取られ、混色が発生した。加えて、カラーインキがのらず、正常な印刷が出来なかった。また比較例4では、ウエットオンウエット印刷適性や濃度安定性はAであったが、白インキのレベリング性が悪く、隠蔽性が不十分であった。
【0122】
印刷条件および評価結果を表3に示す。
【0123】
【0124】
[実施例7]
基材として基材2(PEフィルム)に変更した以外は実施例5と同様にして、表刷り印刷を実施した。基材が変わっても、印刷適性、隠蔽性、濃度安定性は良好であった。また剥離や擦過による剥がれもなく良好であった。結果を表4に示す。
【0125】
[実施例8]
印刷方法5、オーバープリントニスとしてEBニス、白インキ1、カラーインキセット1、および基材として基材3(OPPフィルム)を用い、表刷り印刷を実施した。印刷方法1を用いた実施例1同様に、印刷適性、隠蔽性は良好で、カラーインキの濃度は安定していた。またオーバープリントニスの塗工により、剥離や擦過による剥がれもなく良好であった。結果を表4に示す。
【0126】