(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、医療映像識別装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/906 20190101AFI20250401BHJP
G16H 30/00 20180101ALI20250401BHJP
G16H 50/20 20180101ALI20250401BHJP
【FI】
G06F16/906
G16H30/00
G16H50/20
(21)【出願番号】P 2023526731
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(86)【国際出願番号】 JP2021021954
(87)【国際公開番号】W WO2022259429
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 和浩
(72)【発明者】
【氏名】海老原 章記
(72)【発明者】
【氏名】宮川 大輝
【審査官】甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-170280(JP,A)
【文献】国際公開第2020/194497(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00-16/958
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系列データに含まれる複数の要素を逐次的に取得する取得手段と、
前記複数の要素の各々について、複数のクラスのいずれに属することが妥当であるかを示す指標を、前記複数の要素のうちの2以上の要素に基づいて算出する第1算出手段と、
前記複数の要素の各々の前記指標の重要度を示す重みを算出する第2算出手段と、
前記複数の要素のそれぞれの前記指標を対応する前記重みで重み付けしたうえで統合して、前記系列データが前記複数のクラスのいずれに属することが妥当であるかを示す統合指標を算出する第3算出手段と、
前記統合指標に基づいて、前記系列データをいずれかのクラスに分類する分類手段と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記第2算出手段は、前記複数の要素の各々の前記指標の重要度を示す重みを、前記第1算出手段によって算出された、当該重みに対応する前記指標を含む1以上の前記指標、を用いて算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第2算出手段は、前記複数の要素の各々の前記指標の重要度を示す重みを、前記第1算出手段によって算出された、当該重みに対応する前記指標を含む2以上の前記指標、を用いて算出する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記指標は、前記複数の要素の各々が前記複数のクラスのうちのあるクラスに属することの尤もらしさを示す尤度比を含む、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記統合指標は、前記系列データが前記複数のクラスのうちのあるクラスに属することの尤もらしさを示す統合スコアを含む、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記分類手段は、前記統合スコアが所定の閾値を超えているクラスが存在する場合に、前記系列データを前記統合スコアが前記閾値を超えているクラスに分類する、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記統合スコアが所定の閾値を超えているクラスが存在しない場合に、前記分類手段は、前記系列データをいずれかのクラスにも分類せず、前記取得手段は、更に要素を取得する、
請求項5又は6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記分類手段は、前記統合スコアが所定の閾値を超えているクラスが存在せず、かつ、前記取得手段によって取得された要素の数が所定値よりも多い場合に、前記統合スコアに基づいて前記系列データをいずれかのクラスに分類する、
請求項5乃至7の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記第1算出手段は、
前記取得手段によって過去に取得された前記要素を少なくとも記憶する第1記憶手段と、
前記取得手段によって前記系列データの要素が新たに取得されたときに、前記新たに取得された要素と、前記第1記憶手段に記憶されている過去に取得された前記要素と、に基づいて、前記新たに取得された要素に対する前記指標を算出する指標算出手段と、
を備える、
請求項1乃至8の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記第2算出手段は、
前記第1算出手段によって過去に算出された前記指標を記憶する第2記憶手段と、
前記第1算出手段によって新たに算出された前記指標と、前記第2記憶手段に記憶されている過去に算出された前記指標と、を使用することにより、使用された複数の前記指標の各々に対する前記重みを算出する重み算出手段と、
を備える、
請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記第3算出手段は、
前記第1算出手段によって新たに算出された前記指標と、前記第2記憶手段に記憶されている過去に算出された前記指標と、前記重み算出手段によって算出された、前記新たに算出された指標及び前記過去に算出された指標の各々に対する重みと、に基づいて、前記統合指標を算出する統合指標算出手段と、
を備える、
請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記系列データは、時系列データである、
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項13】
対象者の医療情報を取得する医療情報取得手段と、
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の情報処理装置と、
を備え、
前記情報処理装置は、前記医療情報を前記要素として含む前記系列データをいずれかのクラスに分類する、
医療映像識別装置。
【請求項14】
前記情報処理装置は、前記系列データを前記医療情報の癌化部位の有無を示すいずれかのクラスに分類する、
請求項13に記載の医療映像識別装置。
【請求項15】
コンピュータが、
系列データに含まれる複数の要素を逐次的に取得
し、
前記複数の要素の各々について、複数のクラスのいずれに属することが妥当であるかを示す指標を、前記複数の要素のうちの2以上の要素に基づいて算出
し、
前記複数の要素の各々の前記指標の重要度を示す重みを算出
し、
前記複数の要素のそれぞれの前記指標を対応する前記重みで重み付けしたうえで統合して、前記系列データが前記複数のクラスのいずれに属することが妥当であるかを示す統合指標を算出
し、
前記統合指標に基づいて、前記系列データをいずれかのクラスに分類す
る、
情報処理方法。
【請求項16】
系列データに含まれる複数の要素を逐次的に取得する
処理と、
前記複数の要素の各々について、複数のクラスのいずれに属することが妥当であるかを示す指標を、前記複数の要素のうちの2以上の要素に基づいて算出する
処理と、
前記複数の要素の各々の前記指標の重要度を示す重みを算出する
処理と、
前記複数の要素のそれぞれの前記指標を対応する前記重みで重み付けしたうえで統合して、前記系列データが前記複数のクラスのいずれに属することが妥当であるかを示す統合指標を算出する
処理と、
前記統合指標に基づいて、前記系列データをいずれかのクラスに分類する
処理と、
をコンピュータに実行させるためのプログラ
ム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、医療映像識別装置、及び、プログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1乃至4には、逐次確率比検定(Sequential Probability Ratio Test; SPRT)を用いた情報処理技術が開示されている。SPRTは、逐次的に入力される系列データがあらかじめ定められた複数のクラスのうちのいずれに属するかを判定する手法の一種である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-245314号公報
【文献】特開2008-299589号公報
【文献】特表2001-523824号公報
【文献】国際公開第2020/194497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1乃至4に開示されているようなSPRTに用いられる数学公式においては、判別のための重要度が、入力された系列データのすべての要素において等しいものとして扱われていたため、系列データの性質によっては十分な精度が得られない場合があった。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、精度良く系列データの分類を行うことが可能な情報処理装置、情報処理方法、医療映像識別装置、及び、プログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかる情報処理装置は、系列データに含まれる複数の要素を逐次的に取得する取得手段と、前記複数の要素の各々について、複数のクラスのいずれに属することが妥当であるかを示す指標を、前記複数の要素のうちの2以上の要素に基づいて算出する第1算出手段と、前記複数の要素の各々の前記指標の重要度を示す重みを算出する第2算出手段と、前記複数の要素のそれぞれの前記指標を対応する前記重みで重み付けしたうえで統合して、前記系列データが前記複数のクラスのいずれに属することが妥当であるかを示す統合指標を算出する第3算出手段と、前記統合指標に基づいて、前記系列データをいずれかのクラスに分類する分類手段と、を備える。
【0007】
本開示にかかる情報処理方法は、系列データに含まれる複数の要素を逐次的に取得するステップと、前記複数の要素の各々について、複数のクラスのいずれに属することが妥当であるかを示す指標を、前記複数の要素のうちの2以上の要素に基づいて算出するステップと、前記複数の要素の各々の前記指標の重要度を示す重みを算出するステップと、前記複数の要素のそれぞれの前記指標を対応する前記重みで重み付けしたうえで統合して、前記系列データが前記複数のクラスのいずれに属することが妥当であるかを示す統合指標を算出するステップと、前記統合指標に基づいて、前記系列データをいずれかのクラスに分類するステップと、を備える。
【0008】
本開示にかかる非一時的なコンピュータ可読媒体には、コンピュータに、系列データに含まれる複数の要素を逐次的に取得するステップと、前記複数の要素の各々について、複数のクラスのいずれに属することが妥当であるかを示す指標を、前記複数の要素のうちの2以上の要素に基づいて算出するステップと、前記複数の要素の各々の前記指標の重要度を示す重みを算出するステップと、前記複数の要素のそれぞれの前記指標を対応する前記重みで重み付けしたうえで統合して、前記系列データが前記複数のクラスのいずれに属することが妥当であるかを示す統合指標を算出するステップと、前記統合指標に基づいて、前記系列データをいずれかのクラスに分類するステップと、を備える情報処理方法を実行させるためのプログラムが格納されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示により、精度良く系列データの分類を行うことが可能な情報処理装置、情報処理方法、医療映像識別装置、及び、プログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る系列データ分類システムの全体構成を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る系列データ分類システムに設けられた情報処理装置の機能ブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係る情報処理装置により行われる分類処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】第2実施形態に係る情報処理装置の適用例である医療映像識別装置の機能ブロック図である。
【
図5】第3実施形態に係る情報処理装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の例示的な実施形態を説明する。図面において同様の要素又は対応する要素には同一の符号を付し、その説明を省略又は簡略化することがある。
【0012】
<第1実施形態>
本実施形態に係る系列データ分類システムについて説明する。本実施形態の系列データ分類システムは、系列データに含まれる複数の要素を逐次的に取得して解析することにより、系列データをあらかじめ定められた複数のクラスのうちのいずれかに分類するためのシステムである。
【0013】
ここで系列データとは、複数の要素に分解可能なデータ列を意味する。系列データは時系列データであってもよく、非時系列データであってもよい。時系列データの具体例としては、動画データ、音声データ等が挙げられる。非時系列データの具体例としては、複数の箇所からサンプルした植生データ、製品の複数箇所の検査データ、生体認証用の複数の生体データ等が挙げられる。系列データが動画データである場合には、系列データに含まれる複数の要素とは、動画を構成する複数の画像(フレーム)であり得る。系列データが製品の複数箇所の検査データである場合には、系列データに含まれる複数の要素とは、製品の各箇所の検査データであり得る。なお、本実施形態の分類処理が適用可能な系列データ及び要素はこれらに限られるものではない。
【0014】
系列データが製品の複数箇所の検査データである場合、本実施形態の系列データ分類システムによる分類されるクラスとは、例えば、製品が良品であることを示す第1クラス及び製品が不良品であることを示す第2クラスであり得る。系列データが医療データを構成する複数の画像(フレーム)である場合、本実施形態の系列データ分類システムによる分類されるクラスとは、例えば、画像に癌化部位が含まれることを示す第1クラス及び癌化部位が含まれないことを示す第2クラスであり得る。なお、クラスの数は3以上であってもよい。
【0015】
図1は、本実施形態に係る系列データ分類システムの全体構成を示す模式図である。
図1は、系列データ分類システムに含まれるハードウェアの構成を示している。系列データ分類システムは、情報処理装置100と、データ取得装置201と、入力装置202と、表示装置203とを備える。
【0016】
情報処理装置100は、携帯電話機、スマートフォン、デスクトップPC(Personal Computer)、ラップトップPC、サーバ等のコンピュータである。情報処理装置100は、プロセッサ101、メモリ102、ストレージ103、入出力I/F(Interface)104及び通信I/F105を備える。情報処理装置100の各部は、バス、配線、駆動装置等を介して相互に接続されており、制御信号及びデータを相互に送受信することができる。
【0017】
プロセッサ101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置である。メモリ102は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の揮発性又は不揮発性の記憶媒体である。ストレージ103は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、メモリカード等の不揮発性の記憶媒体である。
【0018】
メモリ102又はストレージ103は、情報処理装置100の情報処理機能を実現するためのプログラムを記憶している。プロセッサ101は、上述のプログラムを実行する際、プログラムをメモリ102上に読み出してから実行してもよく、メモリ102上に読み出さずに実行してもよい。
【0019】
また、上述のプログラムは、様々な種類の非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、情報処理装置100に供給され得る。非一時的なコンピュータ可読媒体とは、様々な種類の形態の記憶媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体は、例えば、磁気記憶媒体、光磁気記憶媒体、光記憶媒体及び半導体メモリを含む。
【0020】
磁気記憶媒体の例としては、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ等が挙げられる。光磁気記憶媒体の例としては、光磁気ディスクが挙げられる。光記憶媒体の例としては、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD-R(Compact Disc Recordable)、CD-R/W(Compact Disc Rewritable)が挙げられる。 半導体メモリの例としては、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAMが挙げられる。
【0021】
また、プログラムは、様々な種類の一時的なコンピュータ可読媒体によって情報処理装置100に供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体は、例えば、電気信号、光信号及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線、光ファイバ等の有線通信路又は無線通信路を介してプログラムを情報処理装置100に供給され得る。
【0022】
入出力I/F104は、USB(Universal Serial Bus)、DVI(Digital Visual Interface)等の規格に基づく周辺機器との通信を行うための通信インターフェースである。入出力I/F104は、データ取得装置201、入力装置202及び表示装置203に対して有線又は無線により通信接続を行うことができる。これにより、情報処理装置100は、データ取得装置201、入力装置202及び表示装置203に対してデータ及び制御信号の送受信を行うことができる。
【0023】
通信I/F105は、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、4G等の規格に基づく通信インターフェースである。通信I/F105は、外部の装置に対して有線又は無線により通信接続を行うことができる。これにより、情報処理装置100は、外部の装置に対してデータの送受信を行うことができる。
【0024】
データ取得装置201は、系列データを取得するための装置である。例えば、系列データが製品の検査データである場合には、データ取得装置201は、工場等に設けられた検査装置であり得る。例えば、系列データが生体認証用の生体データである場合には、データ取得装置201は、デジタルカメラ、マイクロホン、指紋採取用スキャナ等の生体情報取得用の装置であり得る。例えば、系列データが病変検知用の医療データである場合には、データ取得装置201は、内視鏡システム、MRI(Magnetic Resonance Imaging)システム、CT(Computed Tomography)システム等の医療情報取得用の装置であり得る。データ取得装置201がセンサ等のアナログ信号を取得する装置を含んでいる場合には、データ取得装置201は、アナログ信号をデジタルデータに変換するAD変換(Analog-to-Digital Conversion)装置を含み得る。データ取得装置201による取得された系列データは、情報処理装置100に入力される。
【0025】
入力装置202は、ユーザによる情報処理装置100の操作を受け付けるためのユーザインターフェースである。入力装置202の例としては、キーボード、マウス、トラックボール、タッチセンサ、ペンタブレット、ボタン等が挙げられる。表示装置203は、プロセッサ101により処理された描画データに基づく画面を表示する装置である。表示装置203の例としては、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等が挙げられる。入力装置202及び表示装置203は、タッチパネルとして一体に形成されていてもよい。
【0026】
なお、
図1に示されているハードウェア構成は例示であり、これら以外の装置が追加されていてもよく、一部の装置が設けられていなくてもよい。また、一部の装置が同様の機能を有する別の装置に置換されていてもよい。更に、本実施形態の一部の機能がネットワークを介して他の装置により提供されてもよく、本実施形態の機能が複数の装置に分散されて実現されるものであってもよい。例えば、ストレージ103は、情報処理装置100の外部のクラウドストレージに置換されていてもよい。また、系列データの取得が系列データ分類システムとは別のシステムで行われる場合には、データ取得装置201は省略され得る。あるいは、データ取得装置201、入力装置202又は表示装置203が情報処理装置100内に設けられていてもよい。このように、
図1に示されているハードウェア構成は適宜変更可能である。
【0027】
図2は、本実施形態に係る情報処理装置100の機能ブロック図である。情報処理装置100は、取得部110、第1算出部120、第2算出部130、第3算出部140及び分類部150を備える。第1算出部120は、指標算出部121及び第1記憶部122を備える。第2算出部130は、重み算出部131及び第2記憶部132を備える。第3算出部140は、統合指標算出部141及び第3記憶部142を備える。
【0028】
プロセッサ101は、メモリ102又はストレージ103等に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部110、指標算出部121、重み算出部131、統合指標算出部141及び分類部150の機能を実現する。また、プロセッサ101は、当該プログラムに基づいてストレージ103を制御することにより第1記憶部122、第2記憶部132及び第3記憶部142の機能を実現する。これらの各部で行われる具体的な処理については後述する。
【0029】
図3は、本実施形態に係る情報処理装置100により行われる分類処理の一例を示すフローチャートである。
図3に示されている分類処理は、入力された系列データをあらかじめ定められた複数のクラスのうちのいずれかに分類する処理である。
図3の分類処理は、複数の要素を含む系列データから1つずつ要素を取得して統合指標を順次算出するループ処理(ステップS101からステップS107)を含む。このループ処理は、統合指標に基づいて系列データの分類先のクラスが確定するまで繰り返し行われる。
【0030】
図3の処理は、例えば、入力装置202に対して所定のユーザ操作があったときに開始されるものであり得る。しかしながら、処理の開始タイミングはこれに限られるものではない。例えば、
図3の処理は、データ取得装置201から系列データが入力されたときに実行されるものであってもよい。また、データ取得装置201が監視カメラである場合のように系列データが連続的に入力されている場合には、
図3の処理は、所定の時間間隔ごとに繰り返し実行されるものであってもよい。
【0031】
ステップS101において、取得部110は、系列データのうちの1つの要素を取得する。このときの取得処理は、データ取得装置201からデータを直接取得するものであってもよく、あらかじめデータ取得装置201から取得されストレージ103等に記憶されているデータを読み出すものであってもよい。その後、ステップS102に処理を進める。
【0032】
ステップS102において、指標算出部121は、第1記憶部122を参照し、過去データの有無を判断する。過去データとは、過去に取得された要素、及び、当該要素を含む過去に取得された1つ以上の要素に対する指標算出部121による処理結果(指標、例えば尤度比)などである。
【0033】
例えば、ステップS102において、過去データが存在しない場合(ステップS102のNO)には、ステップS103に処理を進める。ステップS103において、指標算出部121は、系列データの最初の要素を考慮して、入力された要素が複数のクラスのいずれに属することが妥当であるかを示す指標を算出する。第1算出部120は、算出した指標を第2算出部130に出力するとともに、必要に応じて処理結果を第1記憶部122に記憶させる。ここで、指標とは、例えば、ある要素が複数のクラスのうちのあるクラスに属することの尤もらしさを示す尤度比であり得る。あるいは、指標は尤度比を変数として含む関数であってもよい。以下の説明では、指標は尤度比であるものとする。なお、ステップS103において算出された尤度比は、統合スコアとして用いられる。その後、ステップS108に処理を進める。ステップS108の処理については後述する。
【0034】
それに対し、ステップS102において、過去データが存在する場合(ステップS102のYES)には、ステップS104に処理を進める。ステップS104において、指標算出部121は、第1記憶部122に記憶されている過去データを読み出す。なお、第1記憶部122は、指標算出部121によって処理が行われるごとに処理結果及び入力された要素を記憶する。この記憶処理は、過去に記憶された情報に新たな情報を上書きするものであってもよく、過去に記憶された情報を残しつつ新たな情報を追加するものであってもよい。その後、ステップS105に処理を進める。
【0035】
ステップS105において、指標算出部121は、系列データに含まれる複数の要素のうちの2以上の要素を考慮して、入力された要素が複数のクラスのいずれに属することが妥当であるかを示す指標(尤度比)を算出する。2以上の要素とは、新たに取得された要素と、過去データに含まれている過去に処理された要素とを含む。第1算出部120は、算出した指標を第2算出部130に出力するとともに、必要に応じて処理結果を第1記憶部122に記憶させる。
【0036】
なお、指標算出部121は、系列データから入力された要素から特徴を抽出する。このとき、指標算出部121は、過去データが存在しない場合は入力された要素を考慮して特徴抽出を行い、過去データが存在する場合は入力された要素と過去データとの関連性を考慮して特徴抽出を行う。特徴抽出の具体的な手法としては、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network; CNN)を用いることができるがこれに限られるものでない。また、過去データを記憶し、現在の入力データとの関係性を算出する具体的な手法としては、例えば、LSTM(Long Short Term Memory)を用いることができるがこれに限られるものでない。
【0037】
尤度比の具体例を説明する。系列データを構成するN(Nは1以上の整数)個の要素を、x1,・・・,xNとし、複数のクラスをC1,C2とする。すなわち、本例では、簡略化のため、クラスの数が2である2クラス分類であるものとする。
【0038】
ここで、過去データが存在しない場合(ステップS102のNO)等では、要素xi(ここでは、iは1~Nの任意の整数)がクラスC1に属する確率をp(xi|C1)と表記し、また、要素xiがクラスC2に属する確率をp(xi|C2)と表記する。このとき、これらの尤度比は、以下の式(1)で表される。
【0039】
【0040】
式(1)の尤度比は、要素xiがクラスC1に属する確率と要素xiがクラスC2に属する確率との尤もらしさの比を示している。例えば、尤度比が1を超えている場合には、p(xi|C1)>p(xi|C2)であるため、要素xiはクラスC2よりもクラスC1に分類する方が妥当である。このように、式(1)の尤度比は、入力された要素がクラスC1とクラスC2のいずれに属することが妥当であるかを示す指標として機能する。
【0041】
また、指標算出部121は、過去データが存在する場合(ステップS102のYES)等では、上述のように複数の要素、すなわち、入力された要素と過去データとの関連性を考慮して算出することができる。このとき、例えば、2つの要素xi,xj(i,jは1~Nの任意の整数、但しi≦j)を考慮して算出された尤度比は、以下の式(2)のように表記されるものとする。
【0042】
【0043】
ステップS105の処理の後、ステップS106に処理を進める。ステップS106において、重み算出部131は、第1記憶部122から過去に算出された尤度比を読み出す。重み算出部131は、指標算出部121によって今回計算された尤度比と、過去に算出された尤度比と、を使用して、今回計算された尤度比と、過去に算出された尤度比の各々に対応する重みを算出する。第2記憶部132は、重み算出部131によって算出された重みを記憶する。ここでの「重み」は今回計算された尤度比と、過去に算出された尤度比とが、新たに算出される統合指標に与える影響度を調整するための値であり、新たに取得された要素の信頼度に応じて算出される。「信頼度」は、尤度比の算出に係る信頼性の度合いであり、例えば適切な尤度比が算出される要素の信頼度は高くなり、適切でない尤度比が算出される要素の信頼度は低くなる。
【0044】
ここで、重みとは、例えば、系列データを構成する要素のうち、要素xiから要素xjまでの要素を考慮して計算した、入力データが各クラスに属する確率を要素とするベクトルVijと、系列データを構成する要素のうち、要素xiから要素xNまでの要素を考慮して計算した、入力データが各クラスに属する確率を要素とするベクトルViNとの内積Vij・ViNであり得る。なお、i,jは何れも1~Nの任意の整数である。但し、i≦jである。以下の説明では、重みは、前記内積によって求められるものとする。
【0045】
なお、前記重みの算出は前記内積によって求められる場合に限られない。例えば、第3記憶部142から過去に算出された統合指標を読み出し、前記重みの算出に使用してもよい。その後、ステップS107に処理を進める。
【0046】
ステップS107において、統合指標算出部141は、指標算出部121によって今回計算された尤度比と、過去に算出された尤度比と、重み算出部131によって今回計算された重みとを統合して新たな統合指標を算出する。
【0047】
統合指標とは、系列データの全体が複数のクラスのいずれに属することが妥当であるかを示すものである。過去の統合指標とは、本処理が系列データのj番目の要素に対する処理である場合には、j番目よりも前の要素に対して統合指標算出部141で算出された統合指標を意味する。過去の尤度比とは、本処理が系列データのj番目の要素に対する処理である場合には、j番目よりも前の要素に対して指標算出部121で算出された尤度比を意味する。なお、第3記憶部142は、統合指標算出部141によって処理が行われるごとに統合指標を記憶する。この記憶処理は、過去に記憶された統合指標に新たな統合指標を上書きすることにより統合指標の値を更新するものであってもよく、過去に記憶された統合指標を残したまま新たな統合指標を追加するものであってもよい。
【0048】
統合指標は、例えば、過去の尤度比を含む算出されたすべての尤度比に、各々の尤度比に対応する重みを乗じた値の和であり得る。以下の説明では、前記の各々の尤度比に対応する重みを乗じた値の和を統合スコアと呼ぶ。あるいは、統合指標は統合スコアを変数として含む関数であってもよい。以下の説明では、統合指標は統合スコアであるものとする。
【0049】
クラスの数が2である場合について、統合スコアの具体例を説明する。統合スコアの算出時点において、N個の要素が入力されている場合、このN個の要素は、x1,・・・,xNと表される。ここで、系列データのi番目の要素から、N番目の要素までの要素を含むデータ全体がクラスC1に属する確率をp(xi,・・・,xN|C1)と表記する。また、系列データのi番目の要素から、N番目の要素までの要素を含むデータ全体がクラスC2に属する確率をp(xi,・・・,xN|C2)と表記する。なお、1≦i≦Nであり、i=Nのとき、N番目の要素のみが含まれるデータがクラスC1に属する確率はp(xN|C1)およびN番目の要素のみが含まれるデータがクラスC2に属する確率はp(xN|C2)である。このとき、これらの尤度比は以下の式(3)で表される。
【0050】
【0051】
従来のSPRTのように、系列データの1番目の要素から、N番目の要素までを含む尤度比のみを統合スコアとして使用する場合には、統合スコアは、以下の式(4)で表される。
【0052】
【0053】
しかしながら、上述したように本実施形態では、過去の尤度比を含む算出されたすべての尤度比を各々の重要度を考慮して統合スコアを計算する。したがって、式(4)のように一つの尤度比のみを統合スコアとすること代わりに、過去の尤度比を含む算出されたすべての尤度比の数に応じて異なる計算式により統合スコアの計算が行われる。
【0054】
例えば、系列データのN番目の要素まで入力された場合、以下の式(5)を用いて統合スコアを算出することができる。なお、iは1以上N以下の整数であり、jはi以上N以下の整数である。また、i=jのとき、i番目の要素のみが含まれるデータがクラスC1に属する確率はp(xi|C1)およびi番目の要素のみが含まれるデータがクラスC2に属する確率はp(xi|C2)である。また、wijは重み算出部131によって算出される、各尤度比の重要度を示す重みである。
【0055】
【0056】
重みの具体例を説明する。系列データを構成する要素のうち、1番目からN番目の要素x1,・・・,xNまで入力されたとし、複数のクラスをC1,C2とする。すなわち、本例では、簡略化のため、クラスの数が2である2クラス分類であるものとする。ここで、要素xiから要素xjまでの要素が含まれる系列データがクラスC1に属する確率をp(xi, ... ,xj|C1)と表記する。また、要素xiから要素xjまでの要素が含まれる系列データがクラスC2に属する確率をp(xi, ... ,xj|C2)と表記する。なお、iは1以上N以下の整数であり、jはi以上N以下の整数である。また、i=jのとき、i番目の要素のみが含まれるデータがクラスC1に属する確率はp(xi|C1)およびi番目の要素のみが含まれるデータがクラスC2に属する確率はp(xi|C2)であるものとする。p(xi, ... ,xj|C1)およびp(xi, ... ,xj|C2)を要素とするベクトルをVijとしたとき、前記式(5)における重みwijはVijとViNの内積Vij・ViNとなる。これにより、前記系列データのi番目の要素からj番目の要素を考慮した場合の尤度比に対応する重みは、前記系列データのi番目の要素から最新の要素であるN番目要素までを考慮した場合と、前記系列データのi番目の要素からj番目の要素を考慮した場合の分類結果が類似しているほど大きくなる。これにより、過去に取得した系列データに、異なるクラスのデータなどの判別に不適切なデータが混入していた場合でも、判別に不適切なデータを考慮して計算された尤度比が前記統合スコアに与える影響を小さくすることができ、判別精度を向上させることができる。
【0057】
なお、重みの算出方法は上述のものに限られない。例えば、系列データの最新の要素xNのみを考慮した確率p(xN|C1)およびp(xN|C2)を要素とするベクトルをVNとし、p(xi, ... ,xj|C1)およびp(xi, ... ,xj|C2)を要素とするベクトルVijと前記VNとの内積を前記式(5)における重みwijとして使用することもできる。この場合、系列データの最新の要素xNが最も重要視された重み付けとなる。また、別の例としては、前記ベクトルVijと、p(xi, ... ,xj-1|C1)およびp(xi, ... ,xj-1|C2)を要素とするベクトルVij-1との差Vij -Vij-1を計算し、Vij -Vij-1の絶対値を前記式(5)における重みwijとして使用することもできる。この場合、新たに入力された系列データが、1時刻前の系列データと比較して大きく変化した場合のデータを重要視する重み付けとなる。なお、重みの算出方法はこれらに限られるものではない。
【0058】
計算可能な重みすべてを計算したのち、重みを正規化する処理をいれてもよい。正規化の手法として、例えば、Softmax関数を使用する方法がある。
【0059】
なお、式(5)に示されている尤度比には、ステップS103においてあらかじめ指標算出部121により算出された尤度比を用いることができる。
【0060】
式(5)では、クラスC1とクラスC2との尤度比を算出する2クラス分類の場合の例を示しているが、クラスの数は3以上であってもよい。例えば、クラスの数がM個である場合には、M個のクラスのうちのa番目のクラスとa番目以外のすべてのクラスとの間の統合スコアを算出できるように式(5)を拡張したものを用いることができる。そのような拡張の例としては、以下の式(6)のようにa番目以外のすべてのクラスのうちの最大尤度を用いるものが挙げられる。なお、式(6)において、m番目(mは1~Mの任意の整数)のクラスをCmとし、aは1~Mの任意の整数、bは1~Mのa以外の整数すべてを取りうる。
【0061】
【0062】
また、別の例としては、以下の式(7)のように、a番目以外のすべてのクラスの尤度の和を用いるものが挙げられる。なお、式(7)において、m番目(mは1~Mの任意の整数)のクラスをC
mとし、aは1~Mの任意の整数、bは1~Mのa以外の整数すべてを取りうる。なお、クラスの数が3以上である場合における統合スコアの算出方法はこれらに限られるものではない。
【数7】
【0063】
式(5)から式(7)では入力された系列データの1番目の要素からN番目の要素まですべてを使用する場合について例示しているが、考慮する要素数は任意でよい。例えば、使用する最大要素数Pをあらかじめ設定しておき、入力された系列データの要素数がPを超えた場合には系列データの後半P個のみを考慮するようにしてもよい。これにより、計算負荷が大きくなりすぎることを防ぐことができる。
【0064】
なお、統合指標の算出方法は上述のものに限られない。例えば、LSTM又は深層ニューラルネットワークを用いた方法により統合指標を算出してもよい。
【0065】
ステップS107の処理の後、ステップS108に処理を進める。ステップS108において、分類部150は、第3算出部140で算出された統合指標に基づいて系列データをいずれかのクラスに分類可能か否かを判定する。統合指標が統合スコアである場合には、分類部150は、例えば、統合スコアが所定の閾値を超えているクラスが存在するか否かに基づいてクラスの分類可否を判定する。分類可能でない場合(ステップS108のNO)には、処理はステップS101に移行し、取得部110は次の要素を取得する。分類可能である場合(ステップS108のYES)には、処理はステップS109に移行する。
【0066】
ステップS109において、分類部150は、統合指標に基づいて系列データをいずれかのクラスに分類する。例えば、統合指標が統合スコアである場合には、系列データは、統合スコアが所定の閾値を超えているクラスに属するものとして分類される。
【0067】
ステップS108とステップS109の処理について具体例を挙げてより詳細に説明する。本例の分類処理は、クラスC1又はクラスC2への2クラス分類であるものとし、クラスC1とクラスC2の判定に用いる閾値をそれぞれT1、T2とする。また、統合スコアをL、とする。
【0068】
この場合、L>T1である場合には、分類部150は、系列データをクラスC1に分類し、本処理は終了する。L>T2である場合には、分類部150は、系列データをクラスC2に分類し、本処理は終了する。L≦T1かつL≦T2である場合には、分類部150は、分類可能でないと判定し、取得部110は次の要素を取得する。
【0069】
なお、クラスの数が3以上のM個である場合には、上述と同様にM個の閾値を準備しておき、M個の統合スコアのそれぞれに対して対応する閾値との大小関係を判定することにより同様の分類処理が行われ得る。このとき、分類部150は、統合スコアが最初に閾値を超えたクラスに系列データを分類する。統合スコアがいずれの閾値も超えない場合には、分類部150は、分類可能でないと判定し、取得部110は次の要素を取得する。
【0070】
上述の分類手法は例示であり、これに限られない。例えば、ステップS107、S108において入力された要素数が所定値(最大要素数)よりも多い場合には、統合スコアが閾値を超えているクラスが存在しなくても系列データを強制的にいずれかのクラスに分類して処理を終了するように手順を変形してもよい。これにより、計算時間が長くなりすぎることを防ぐことができる。この例では、いずれかのクラスに確実に分類されるように判定基準を相互排他的なものとすることが望ましい。
【0071】
相互排他的な判定基準の具体例を説明する。2クラス分類の場合には、要素数が最大要素数を超えた場合には、統合スコアLの値が0以上であるか否かにより系列データを2つのクラスのいずれかに分類するという手法を用いることができる。また、Mクラス分類の場合には、各クラスに対応する総合尤度比のうち、値が最大であるクラスに系列データを分類するという手法を用いることができる。
【0072】
以上のように、本実施形態によれば、系列データの複数の要素と、各要素の重要度が考慮された統合指標を用いて系列データの分類が行われる。これにより、系列データの性質が考慮された系列データの相関長に応じた分類が行われ得るため、精度良く系列データの分類を行うことができる情報処理装置100が提供される。
【0073】
<第2実施形態>
本実施形態では、第1実施形態の情報処理装置100の適用例の1つとして、医療映像識別装置300を説明する。以下では主として第1実施形態との相違点について説明するものとし、共通部分については説明を省略又は簡略化する。
【0074】
図4は、第2実施形態に係る医療映像識別装置300の機能ブロック図である。医療映像識別装置300は、分類装置301、医療情報取得部302及び医療情報記憶部303を備える。医療映像識別装置300は、
図1に示した情報処理装置100と同様にコンピュータを含んで構成され得る。そのため、医療映像識別装置300のハードウェア構成の説明は省略する。
【0075】
医療映像識別装置300は、例えば、内視鏡画像、CT画像、MRI画像等の医療情報から癌を検知する装置である。医療映像識別装置300は、医療情報を取得するための装置(内視鏡システム等)を備え、スタンドアローンで動作するものであってもよく、癌検知システム内の他の装置から医療情報を取得して癌検知を行うものであってもよい。また、医療映像識別装置300は互いに通信接続された複数の装置により構成されていてもよい。
【0076】
医療映像識別装置300は、例えば、癌検査用の検査装置であり得る。あるいは、医療映像識別装置300は、動脈瘤検査用の検査装置であり得る。
【0077】
医療情報取得部302は、医療情報を取得する装置であり、例えば動画を撮影可能な内視鏡システムであり得る。なお、医療情報の識別において、医療情報取得部302で取得された画像等から照合用の特徴量を抽出する場合がある。この特徴量抽出処理は、分類装置301内で行われてもよく、医療情報取得部302内で医療情報取得時に行われてもよく、その他の装置により行われてもよい。本明細書において、医療情報取得部302で取得された画像等そのものと、これから抽出された特徴量とをまとめて医療情報と表記することがある。
【0078】
医療情報記憶部303は、医療情報等の分類装置301での処理に必要な情報を記憶する。分類装置301には、第1実施形態の情報処理装置100が用いられる。分類装置301は、医療情報を要素とする系列データを第1実施形態で述べた系列データとして取得する。分類装置301は、医療情報記憶部303に記憶された情報を参照しつつ、この系列データをあらかじめ定められた複数のクラスのうちのいずれかに分類する。ここで、複数のクラスとは、例えば、癌の有無を示すクラスであり得る。言い換えると、複数のクラスは、例えば、入力された系列データに癌化部位が存在することを示すクラス及び入力された系列データに癌化部位が存在しないことを示すクラスを含み得る。
【0079】
本実施形態の医療映像識別装置300は、精度良く系列データの分類を行うことができる分類装置301を備える。これにより、より適切に癌検知を行い得る医療映像識別装置300が提供される。
【0080】
本実施形態の医療映像識別装置300において、系列データの分類精度が高いという第1実施形態の情報処理装置100の特徴がより活かされる例の1つとして、癌検知の例を説明する。内視鏡映像等の医療映像から癌を検知する手法として、映像に含まれる画像(フレーム)ごとに癌が含まれる確信度を機械学習で計算し、入力された1つの画像に対応する確信度、または、事前に決定された固定長の枚数に対応する確信度の重み付き和を分類用のスコアとし、分類用スコアが事前に設定した閾値を超えた場合に前記画像に癌化部位が含まれていると判定する手法がある。本実施形態の分類装置301において、系列データとして医療映像から一部を抽出した時系列画像を入力し、画像の輝度値を特徴量として、系列データの癌化部位の有無を示すクラス分類を行うことにより癌検知が可能である。
【0081】
本実施形態の分類装置301において実際に内視鏡映像から癌検知を行う具体例を以下に示す。本具体例では、内視鏡映像のある時点でのデータを系列データの1番目の要素とし、そこから最大Nフレーム先までの要素を1つの系列データとみなし、本系列データが癌化部位か非癌化部位かを分類するものとする。なお、Nは1以上の整数である。
【0082】
まず、ステップS101において医療情報取得部302または医療情報記憶部303から内視鏡映像に含まれる1フレームを読み出す。
【0083】
次にステップS102において、系列データの過去の要素が存在するか確認を行う。
【0084】
過去の要素が存在しない場合、ステップS103へと進み、入力された系列データの要素のみを考慮して尤度比を計算し統合スコアとする。
【0085】
過去の要素が存在した場合、ステップS104へと進み、過去の要素を読み出し、ステップS104からステップS107の手順で過去データを考慮した尤度比と尤度比に対応した重みを計算し、統合スコアを算出する。
【0086】
ステップS108において、前記統合スコアをクラス判別のための閾値と比較し、前記統合スコアが癌化部位と判別するための閾値を超えていた場合は、ステップS109において系列データを癌化部位の映像と分類する。また、前記統合スコアが非癌化部位と判別するための閾値を超えていた場合は、ステップS109において系列データを非癌化部位の映像と分類する。上述の統合スコアがいずれのクラスの閾値も超えていなかった場合はステップS101に処理を戻し、医療情報取得部302または医療情報記憶部303から新たに内視鏡映像に含まれる1フレームを取得する。
【0087】
この手法では、入力される系列データには、判別が容易な癌化部位、判別が困難な癌化部位、癌化していない部位が含まれ、また、癌の大きさが医療映像ごとに異なる場合が多い。判別が容易な癌化部位とは、例えば、瘤状に隆起した癌化部位である。判別が困難な癌化部位とは、例えば、隆起、陥没が見られない平坦な癌化部位である。判別が困難な癌化部位に対しては、複数枚の画像を使用して検知を行うことが効果的である。また、系列データを長くとると、系列データに癌化部位と非癌化部位が混在する場合がある。系列データ内に異なるクラスに分類されるべきデータが混在することで検知精度が悪化することを防ぐため、系列データの要素のうち、現在取得した要素とは異なるクラスに分類されるべき要素が含まれる系列データから算出された尤度比の重要度が小さくなるように重みを設定し、前記尤度比が分類のための統合スコアに与える影響を小さくすることが効果的である。そのため、癌検知の分類を行う場合においては、1以上の系列データの要素を、要素ごとの重要度を考慮しながら使用する第1実施形態の情報処理装置100の分類処理を用いることが効果的である。
【0088】
上述の実施形態において説明した装置又はシステムは以下の第3実施形態のようにも構成することができる。
【0089】
<第3実施形態>
図5は、第3実施形態に係る情報処理装置400の機能ブロック図である。情報処理装置400は、取得部410、第1算出部420、第2算出部430、第3算出部440、及び分類部450を備える。取得部410は、系列データに含まれる複数の要素を逐次的に取得する。第1算出部420は、複数の要素の各々について、複数のクラスのいずれに属することが妥当であるかを示す指標を、複数の要素のうちの2以上の要素を考慮して算出する。第2算出部430は、複数の要素の各々の指標の重要度を示す重みを算出する。第3算出部440は、複数の要素のそれぞれの指標を対応する前記重みで重み付けしたうえで統合して、系列データが複数のクラスのいずれに属することが妥当であるかを示す統合指標を算出する。分類部450は、統合指標に基づいて、系列データをいずれかのクラスに分類する。
【0090】
本実施形態によれば、精度良く系列データの分類を行うことができる情報処理装置400が提供される。
【0091】
<その他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例や、他の実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態である。
【0092】
上述の実施形態の機能を実現するように該実施形態の構成を動作させるプログラムを記憶媒体に記録させ、記憶媒体に記録されたプログラムをコードとして読み出し、コンピュータにおいて実行する処理方法も各実施形態の範疇に含まれる。すなわち、コンピュータ読取可能な記憶媒体も各実施形態の範囲に含まれる。また、上述のプログラムが記録された記憶媒体だけでなく、そのプログラム自体も各実施形態に含まれる。また、上述の実施形態に含まれる1又は2以上の構成要素は、各構成要素の機能を実現するように構成されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の回路であってもよい。
【0093】
該記憶媒体としては例えばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD(Compact Disk)-ROM、磁気テープ、不揮発性メモリカード、ROMを用いることができる。また該記憶媒体に記録されたプログラム単体で処理を実行しているものに限らず、他のソフトウェア、拡張ボードの機能と共同して、OS(Operating System)上で動作して処理を実行するものも各実施形態の範疇に含まれる。
【0094】
上述の各実施形態の機能により実現されるサービスは、SaaS(Software as a Service)の形態でユーザに対して提供することもできる。
【0095】
なお、上述の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0096】
また、上述の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0097】
(付記1)
系列データに含まれる複数の要素を逐次的に取得する取得手段と、
前記複数の要素の各々について、複数のクラスのいずれに属することが妥当であるかを示す指標を、前記複数の要素のうちの2以上の要素に基づいて算出する第1算出手段と、
前記複数の要素の各々の前記指標の重要度を示す重みを算出する第2算出手段と、
前記複数の要素のそれぞれの前記指標を対応する前記重みで重み付けしたうえで統合して、前記系列データが前記複数のクラスのいずれに属することが妥当であるかを示す統合指標を算出する第3算出手段と、
前記統合指標に基づいて、前記系列データをいずれかのクラスに分類する分類手段と、
を備える情報処理装置。
【0098】
(付記2)
前記第2算出手段は、前記複数の要素の各々の前記指標の重要度を示す重みを、前記第1算出手段によって算出された、当該重みに対応する前記指標を含む1以上の前記指標、を用いて算出する、
付記1に記載の情報処理装置。
【0099】
(付記3)
前記第2算出手段は、前記複数の要素の各々の前記指標の重要度を示す重みを、前記第1算出手段によって算出された、当該重みに対応する前記指標を含む2以上の前記指標、を用いて算出する、
付記1又は2に記載の情報処理装置。
【0100】
(付記4)
前記指標は、前記複数の要素の各々が前記複数のクラスのうちのあるクラスに属することの尤もらしさを示す尤度比を含む、
付記1乃至3の何れか一項に記載の情報処理装置。
【0101】
(付記5)
前記統合指標は、前記系列データが前記複数のクラスのうちのあるクラスに属することの尤もらしさを示す統合スコアを含む、
付記1乃至4の何れか一項に記載の情報処理装置。
【0102】
(付記6)
前記分類手段は、前記統合スコアが所定の閾値を超えているクラスが存在する場合に、前記系列データを前記統合スコアが前記閾値を超えているクラスに分類する、
付記5に記載の情報処理装置。
【0103】
(付記7)
前記統合スコアが所定の閾値を超えているクラスが存在しない場合に、前記分類手段は、前記系列データをいずれかのクラスにも分類せず、前記取得手段は、更に要素を取得する、
付記5又は6に記載の情報処理装置。
【0104】
(付記8)
前記分類手段は、前記統合スコアが所定の閾値を超えているクラスが存在せず、かつ、前記取得手段によって取得された要素の数が所定値よりも多い場合に、前記統合スコアに基づいて前記系列データをいずれかのクラスに分類する、
付記5乃至7の何れか一項に記載の情報処理装置。
【0105】
(付記9)
前記第1算出手段は、
前記取得手段によって過去に取得された前記要素を少なくとも記憶する第1記憶手段と、
前記取得手段によって前記系列データの要素が新たに取得されたときに、前記新たに取得された要素と、前記第1記憶手段に記憶されている過去に取得された前記要素と、に基づいて、前記新たに取得された要素に対する前記指標を算出する指標算出手段と、
を備える、
付記1乃至8の何れか一項に記載の情報処理装置。
【0106】
(付記10)
前記第2算出手段は、
前記第1算出手段によって過去に算出された前記指標を記憶する第2記憶手段と、
前記第1算出手段によって新たに算出された前記指標と、前記第2記憶手段に記憶されている過去に算出された前記指標と、を使用することにより、使用された複数の前記指標の各々に対する前記重みを算出する重み算出手段と、
を備える、
付記9に記載の情報処理装置。
【0107】
(付記11)
前記第3算出手段は、
前記第1算出手段によって新たに算出された前記指標と、前記第2記憶手段に記憶されている過去に算出された前記指標と、前記重み算出手段によって算出された、前記新たに算出された指標及び前記過去に算出された指標の各々に対する重みと、に基づいて、前記統合指標を算出する統合指標算出手段と、
を備える、
付記10に記載の情報処理装置。
【0108】
(付記12)
前記系列データは、時系列データである、
付記1乃至11のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0109】
(付記13)
対象者の医療情報を取得する医療情報取得手段と、
付記1乃至12のいずれか1項に記載の情報処理装置と、
を備え、
前記情報処理装置は、前記医療情報を前記要素として含む前記系列データをいずれかのクラスに分類する、
医療映像識別装置。
【0110】
(付記14)
前記情報処理装置は、前記系列データを前記医療情報の癌化部位の有無を示すいずれかのクラスに分類する、
付記13に記載の医療映像識別装置。
【0111】
(付記15)
系列データに含まれる複数の要素を逐次的に取得するステップと、
前記複数の要素の各々について、複数のクラスのいずれに属することが妥当であるかを示す指標を、前記複数の要素のうちの2以上の要素に基づいて算出するステップと、
前記複数の要素の各々の前記指標の重要度を示す重みを算出するステップと、
前記複数の要素のそれぞれの前記指標を対応する前記重みで重み付けしたうえで統合して、前記系列データが前記複数のクラスのいずれに属することが妥当であるかを示す統合指標を算出するステップと、
前記統合指標に基づいて、前記系列データをいずれかのクラスに分類するステップと、
を備える情報処理方法。
【0112】
(付記16)
コンピュータに、
系列データに含まれる複数の要素を逐次的に取得するステップと、
前記複数の要素の各々について、複数のクラスのいずれに属することが妥当であるかを示す指標を、前記複数の要素のうちの2以上の要素に基づいて算出するステップと、
前記複数の要素の各々の前記指標の重要度を示す重みを算出するステップと、
前記複数の要素のそれぞれの前記指標を対応する前記重みで重み付けしたうえで統合して、前記系列データが前記複数のクラスのいずれに属することが妥当であるかを示す統合指標を算出するステップと、
前記統合指標に基づいて、前記系列データをいずれかのクラスに分類するステップと、
を備える情報処理方法を実行させるためのプログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体。
【0113】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0114】
100、400 情報処理装置
101 プロセッサ
102 メモリ
103 ストレージ
104 入出力I/F
105 通信I/F
110、410 取得部
120、420 第1算出部
121 指標算出部
122 第1記憶部
130、430 第2算出部
131 重み算出部
132 第2記憶部
140、440 第3算出部
141 統合指標算出部
142 第3記憶部
150、450 分類部
201 データ取得装置
202 入力装置
203 表示装置
300 医療映像識別装置
301 分類装置
302 医療情報取得部
303 医療情報記憶部