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  • 特許-静電チャック 図1
  • 特許-静電チャック 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】静電チャック
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20250401BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20250401BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H02N13/00 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024009229
(22)【出願日】2024-01-25
【審査請求日】2024-07-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 賢郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雄基
(72)【発明者】
【氏名】白石 純
(72)【発明者】
【氏名】籾山 大
(72)【発明者】
【氏名】板倉 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 均
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-130678(JP,A)
【文献】特開2016-96336(JP,A)
【文献】特開2023-149659(JP,A)
【文献】特開2020-150071(JP,A)
【文献】特許第6729735(JP,B1)
【文献】特許第6504532(JP,B1)
【文献】特開2023-44704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吸着物が載置される載置面を有する誘電体基板と、
前記誘電体基板に接合されたベースプレートと、を備え、
前記ベースプレートは、
前記誘電体基板側の部分である第1部分と、
前記第1部分に対し前記誘電体基板とは反対側から隣り合う部分であって、前記載置面に対し垂直な方向から見たときの外形が前記第1部分の外形よりも大きな第2部分と、を有し、
前記ベースプレートは、
複数の部材を接合することにより構成されており、最も前記誘電体基板側の接合境界が前記第2部分にあり、
前記ベースプレートを構成する複数の前記部材のうち、
前記接合境界よりも前記誘電体基板側にある部材を第1部材とし、
前記接合境界を挟んで前記第1部材に接合されている部材を第2部材としたときに、
前記第1部材には、前記載置面側にガスを供給するための供給流路が、前記載置面に対して垂直な方向に伸びるように形成されており、
前記供給流路は複数形成されており、
前記ベースプレートには、
複数の前記供給流路にガスを分配するための分配流路が更に形成されており、
前記分配流路は、前記第1部材又は前記第2部材のいずれかにおいて、前記接合境界となる面に形成された溝であることを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
前記供給流路の内部には多孔質部材が配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記分配流路は、前記第1部材において前記接合境界となる面に形成された溝であることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記ベースプレートを構成する複数の前記部材のうち、
前記第2部材に対し、前記第1部材とは反対側から接合されている部材を第3部材とし
たときに、
前記ベースプレートの内部には冷媒を通すための冷媒流路が形成されており、
前記冷媒流路は、前記第2部材において、前記第3部材に接合される面に形成された溝であることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばエッチング装置のような半導体製造装置には、処理の対象となるシリコンウェハ等の基板を吸着し保持するための装置として、静電チャックが設けられる。静電チャックは、吸着電極が設けられた誘電体基板と、誘電体基板を支持するベースプレートと、を備え、これらが互いに接合された構成を有する。吸着電極に電圧が印加されると静電力が生じ、誘電体基板上に載置された基板が吸着され保持される。
【0003】
下記特許文献1に記載されているように、ベースプレートの内部には、冷媒を通すための冷媒流路等が形成される。冷媒流路等の形成を容易なものとするために、ベースプレートは、複数の部材を接合した構成とされるのが一般的である。例えば、一つの部材の表面に溝を形成し、当該表面を覆うように他の部材を接合すれば、溝に沿った流路をベースプレートの内部に容易に形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-35447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ベースプレートには、上記の冷媒流路に加えて、誘電体基板の載置面側へとガスを導くための供給流路も形成される。また、当該供給流路の内部には、放電を防止するための多孔質部材が配置されることもある。このように、ベースプレートのうち誘電体基板の近傍部分における内部構造は、比較的複雑であることが多い。
【0006】
上記のように、ベースプレートは、複数の部材を互いに接合した構成とされるのが一般的である。上記のように複雑な内部構造を実現するにあたり、ベースプレートにおいて部材間の接合境界をどのような位置とすべきかについて、従来の静電チャックには更なる改良の余地があった。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ベースプレートの複雑な内部構造を容易に実現することのできる静電チャック、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る静電チャックは、被吸着物が載置される載置面を有する誘電体基板と、誘電体基板に接合されたベースプレートと、を備える。ベースプレートは、誘電体基板側の部分である第1部分と、第1部分に対し誘電体基板とは反対側から隣り合う部分であって、載置面に対し垂直な方向から見たときの外形が第1部分の外形よりも大きな第2部分と、を有する。ベースプレートは、複数の部材を接合することにより構成されており、最も誘電体基板側の接合境界が第2部分にある。
【0009】
上記構成の静電チャックでは、複数の部材を接合することによりベースプレートが構成されており、最も誘電体基板側の接合境界が、第1部分ではなく第2部分にある。接合境界が第1部分にある場合に比べて、最も誘電体基板側にある部材が厚くなるので、例えば、ガスの供給流路に多孔質部材を配置する作業等を容易なものとすることができる。これにより、ベースプレートにおける複雑な内部構造を容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ベースプレートの複雑な内部構造を容易に実現することのできる静電チャック、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る静電チャックの構成を模式的に示す断面図である。
図2】ベースプレートの内部における分配流路等の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0013】
本実施形態に係る静電チャック10は、例えばエッチング装置のような不図示の半導体製造装置の内部において、処理対象となる基板Wを静電力によって吸着し保持するものである。被吸着物である基板Wは、例えばシリコンウェハである。静電チャック10は、半導体製造装置以外の装置に用いられてもよい。
【0014】
図1には、基板Wを吸着保持した状態の静電チャック10の構成が、模式的な断面図として示されている。静電チャック10は、誘電体基板100と、ベースプレート200と、を備える。
【0015】
誘電体基板100は、セラミック焼結体からなる略円盤状の部材である。誘電体基板100は、例えば高純度の酸化アルミニウム(Al)を含むが、他の材料を含んでもよい。誘電体基板100におけるセラミックスの純度や種類、添加物等は、半導体製造装置において誘電体基板100に求められる耐プラズマ性等を考慮して、適宜設定することができる。誘電体基板100の直径は例えば290~300mmである。誘電体基板100の厚さは例えば0.5~3.0mmである。
【0016】
誘電体基板100のうち図1における上方側の面110は、基板Wが載置される「載置面」となっている。また、誘電体基板100のうち図1における下方側の面120は、接合層300を介してベースプレート200に接合される「被接合面」となっている。面110に対し垂直な方向に沿って、面110側から静電チャック10を見た場合の視点のことを、以下では「上面視」のようにも表記する。
【0017】
誘電体基板100の内部には吸着電極130が埋め込まれている。吸着電極130は、例えばタングステン等の金属材料により形成された薄い平板状の層であり、面110に対し平行となるように配置されている。吸着電極130の材料としては、タングステンの他、モリブデン、白金、パラジウム等を用いてもよい。不図示の給電路を介して外部から吸着電極130に電圧が印加されると、面110と基板Wとの間に静電力が生じ、これにより基板Wが吸着保持される。上記給電路の構成としては、公知となっている種々の構成を採用することができる。吸着電極130は、本実施形態のように所謂「単極」の電極として1つだけ設けられていてもよいが、所謂「双極」の電極として2つ設けられていてもよい。吸着電極130が配置されている位置の深さ、すなわち、後述の底面116から吸着電極130までの距離は、例えば0.1~0.5mmである。
【0018】
図1に示されるように、誘電体基板100と基板Wとの間には空間SPが形成されている。半導体製造装置においてエッチング等の処理が行われる際には、空間SPには、後述の供給流路140を介して外部から温度調整用のヘリウムガスが供給される。誘電体基板100と基板Wとの間にヘリウムガスを介在させることで、両者間の熱抵抗が調整され、これにより基板Wの温度が適温に保たれる。尚、空間SPに供給される温度調整用のガスは、ヘリウムとは異なる種類のガスであってもよい。
【0019】
載置面である面110上にはシールリング111やドット112が設けられており、上記の空間SPはこれらの周囲に形成されている。
【0020】
シールリング111は、最外周となる位置において空間SPを区画する壁である。シールリング111は、面110側に形成された環状の突起である。シールリング111の先端(図1における上端)は面110の一部となっており、基板Wに当接する。シールリング111の先端は、載置面である面110のうち最も外周側の部分、ということができる。
【0021】
尚、空間SPを分割するように複数のシールリング111が設けられていてもよい。このような構成とすることで、それぞれの空間SPにおけるヘリウムガスの圧力を個別に調整し、処理中における基板Wの表面温度分布を均一に近づけることが可能となる。
【0022】
図1において符号「116」が付されている部分は、空間SPの底面である。以下では、当該部分のことを「底面116」とも称する。シールリング111は、次に述べるドット112と共に、面110の一部を底面116の位置まで掘り下げた結果として形成されている。
【0023】
ドット112は、底面116から突出する円形の突起である。ドット112は複数設けられており、誘電体基板100の載置面において略均等に分散配置されている。それぞれのドット112の先端は、面110の一部となっており、基板Wに当接する。このようなドット112を複数設けておくことで、基板Wの撓みが抑制される。
【0024】
誘電体基板100には供給流路140が形成されている。供給流路140は、載置面である面110に対し垂直な方向に伸びるように形成された貫通穴である。供給流路140のうち面110側の端部は、空間SPに繋がっている。供給流路140は、空間SPに向けてヘリウムガスを供給するための流路の一部である。誘電体基板100において、供給流路140は複数形成されているのであるが、図1においてはそのうちの1つのみが図示されている。
【0025】
図1に示されるように、供給流路140のうち面120側の部分は、面110側の部分に比べて拡径されており、その内側には多孔質部材160が配置されている。多孔質部材160は、例えばアルミナにより形成された多孔質体であり、全体が通気性を有している。このような多孔質部材160を供給流路140の内側に配置することで、多孔質部材160におけるヘリウムガスの流れを確保しながらも、供給流路140を通じた経路での絶縁破壊の発生を抑制することができる。
【0026】
ベースプレート200は、誘電体基板100を支持する略円盤状の部材である。ベースプレート200は、例えばアルミニウムのような金属材料により形成されている。ベースプレート200は、誘電体基板100の面120に対して、接合層300を介して接合されている。ベースプレート200のうち、図1における上方側の面210は、誘電体基板100に接合される「被接合面」となっている。
【0027】
接合層300は、誘電体基板100とベースプレート200との間に設けられた層であって、両者を接合している。接合層300は、絶縁性の材料からなる接着材を硬化させたものである。本実施形態では、上記接着剤としてシリコーン接着剤を用いている。ただし、接合層300は、他の種類の接着剤を硬化させたものであってもよい。いずれの場合であっても、誘電体基板100とベースプレート200との間の熱抵抗が小さくなるように、接合層300の材料としては、可能な限り熱伝導率が高い材料を用いるのが好ましい。
【0028】
ベースプレート200の表面には絶縁膜が形成されていてもよい。絶縁膜としては、例えば、溶射により形成されたアルミナの膜を用いることができる。ベースプレート200の表面を絶縁膜で覆っておくことにより、ベースプレート200の絶縁耐圧を高めることができる。
【0029】
ベースプレート200は、第1部分201と第2部分202とを有している。第1部分201は、ベースプレート200のうち誘電体基板100側(図1における上方側)の部分であって、誘電体基板100を下方から直接支持している略円柱形状の部分である。第1部分201の直径、すなわち面210の直径は、誘電体基板100の直径と同一であってもよいが、誘電体基板100の直径より僅かに小さくてもよい。第1部分201の直径は例えば290~300mmである。また、第1部分201の厚さ、すなわち、図1の上方側に向けた第1部分201の突出量(第2部分202からの突出量)は、例えば3~15mmである。
【0030】
第2部分202は、ベースプレート200のうち、第1部分201に対し誘電体基板100とは反対側(図1における下方側)から隣り合う部分である。本実施形態では、ベースプレート200のうち第1部分201を除く部分の全体が第2部分202となっている。第2部分202の形状は略円柱形状であり、その中心軸は第1部分201の中心軸と一致している。第2部分202の厚さは例えば25~40mmである。第2部分202の直径は第1部分201の直径よりも大きい。第1部分201の外側面からの第2部分202の突出量(つまり径方向に向けた突出量)は、例えば20~30mmである。従って、上面視における第1部分201の外形は、上面視における第2部分202の外形よりも大きい。
【0031】
半導体製造装置において基板Wの処理が行われる際には、第2部分202の上面203には不図示のフォーカスリングが設置される。フォーカスリングは、例えば石英のような絶縁性の材料により形成された円環状且つ板状の部材であって、処理中におけるプラズマの分布を調整することを目的として設置されるものである。誘電体基板100及び第1部分201の略全体は、フォーカスリングによって外周側から囲まれた状態となる。
【0032】
ベースプレート200の内部には、冷媒を通すための冷媒流路270が形成されている。半導体製造装置においてエッチング等の処理が行われる際には、外部から冷媒が冷媒流路270に供給され、これによりベースプレート200が冷却される。処理中において基板Wで生じた熱は、空間SPのヘリウムガス、誘電体基板100、及びベースプレート200を介して冷媒へと伝えられ、冷媒と共に外部へと排出される。
【0033】
図1に示されるように、冷媒流路270は、ベースプレート200のうち基板Wの直下となる部分のみならず、基板Wの直下よりも外側の部分においても引き回されている。外側の部分を通る冷媒により、上面203の直上にある不図示のフォーカスリング等が冷却され、これらを介して基板Wの外周側部分も冷却される。
【0034】
本実施形態では、第2部分202の直径が比較的大きくなっている。第2部分202を大きくし、その略全体に亘るよう冷媒流路270を形成した上で冷媒を循環させることにより、基板Wの外周側部分の温度上昇を抑制することが可能となっている。
【0035】
ベースプレート200には供給流路240が形成されている。供給流路240は、載置面である面110に対し垂直な方向に伸びるように形成された穴であって、面210から、後述の分配流路250まで伸びている。供給流路240は、上面視において供給流路140と重なる位置、のそれぞれに形成されており、接合層300に設けられた貫通穴310を介して供給流路140に連通されている。供給流路240は、誘電体基板100の供給流路140と共に、載置面側の空間SPに向けてヘリウムガスを供給するための流路の一部となっている。
【0036】
図1に示されるように、供給流路240のうち面210側の部分は、分配流路250側の部分に比べて拡径されており、その内側には多孔質部材260が配置されている。多孔質部材260は、例えばアルミナにより形成された多孔質体であり、全体が通気性を有している。このような多孔質部材260を供給流路240の内側に配置することで、供給流路240におけるヘリウムガスの流れを確保しながらも、供給流路240を通じた経路での絶縁破壊の発生を抑制することができる。
【0037】
ベースプレート200の内部には分配流路250が形成されている。分配流路250は、それぞれの供給流路240に対しヘリウムガスを分配するための流路である。分配流路250は、面210に対し並行に引き回されており、それぞれの供給流路240の下端に繋がっている。
【0038】
図2には、ベースプレート200の内部における分配流路250、及びこれに繋がる供給流路240等の構成が、模式的に描かれている。図2における矢印はヘリウムガスの流れを表している。図2において符号「251」が付されている部分は、外部から供給されるヘリウムガスを分配流路250へと導くよう、ベースプレート200に形成されたヘリウムガスの流路を表している。当該流路のことを、以下では「流路251」とも称する。流路251の一端は分配流路250に繋がっている。流路251の他端は、ベースプレート200のうち、面210とは反対側の面220において開口している。
【0039】
図2に示されるように、複数の供給流路240は、本実施形態では上面視において円形に並ぶように配置されている。分配流路250は、上面視においてそれぞれの供給流路240の直下を通るよう円形に引き回されている。それぞれの供給流路240は、その下端が分配流路250に繋がっている。このため、外部から供給されたヘリウムガスは、流路251を通って分配流路250に供給され、分配流路250からそれぞれの供給流路240へと分配される。その後、それぞれの供給流路240から、その直上にある供給流路140を通って空間SPへと供給される。ベースプレート200の内部に分配流路250を形成しておくことで、外部からヘリウムガスの供給を受ける部分(つまり流路251)の数を少なくすることができる。
【0040】
このように、ベースプレート200は、その内部に冷媒流路270、分配流路250、及び供給流路240等が形成されており、比較的複雑な内部構造を有している。更に、それぞれの供給流路240には多孔質部材260が配置してあるので、ベースプレート200のうち誘電体基板100側の内部構造は更に複雑なものとなっている。
【0041】
冷媒流路270等の形成を容易なものとするために、本実施形態のベースプレート200は、複数の部材を接合することによって形成されている。具体的には、ベースプレート200は、第1部材C1と、第2部材C2と、第3部材C3と、からなる3つの部材を互いに接合し一体とすることにより形成されている。各部材は溶接により接合されているが、例えばろう接や締結固定等の方法で接合されていてもよい。ベースプレート200を構成する部材の数は、4つ以上であってもよく、2つであってもよい。
【0042】
第1部材C1、第2部材C2、及び第3部材C3は、載置面である面110に対し垂直な方向に沿って、この順に並んでいる。第1部材C1は、ベースプレート200を構成する部材のうち最も誘電体基板100側にある部分である。先に述べた面210は第1部材C1の一部である。第3部材C3は、ベースプレート200を構成する部材のうち誘電体基板100とは反対側にある部分である。先に述べた面220は第3部材C3の一部である。第2部材C2は、第1部材C1と第3部材C3との間にある部材である。
【0043】
第1部材C1と第2部材C2との間の接合境界B1は、面110や面210に対し平行である。第2部材C2と第3部材C3との間の接合境界B2も、面110や面210に対し平行である。
【0044】
接合境界B1は、複数ある接合境界のうち、最も誘電体基板100側にある接合境界である。第1部材C1は、接合境界B1よりも誘電体基板100側にある部材である。第2部材C2は、接合境界B1を挟んで第1部材C1に接合されている部材である。
【0045】
図1に示されるように、本実施形態における分配流路250及び供給流路240は、いずれも、その全体が第1部材C1に形成されている。分配流路250は、各部材を接合する前において、第1部材C1のうち接合境界B1となる表面に沿って予め形成されていた円環状の溝である。このように、第1部材C1の表面に予め溝を形成し、当該表面を覆うように第2部材C2を接合することで、溝に沿った分配流路250をベースプレート200の内部に容易に形成することができる。尚、分配流路250となる溝は、第1部材C1の表面ではなく、第2部材C2のうち接合境界B1となる表面の方に形成されていてもよい。
【0046】
図1に示されるように、本実施形態における冷媒流路270は、その全体が第2部材C2に形成されている。冷媒流路270は、各部材を接合する前において、第2部材C2のうち接合境界B2となる表面に沿って予め形成されていた溝である。このように、第2部材C2の表面に予め溝を形成し、当該表面を覆うように第3部材C3を接合することで、溝に沿った冷媒流路270をベースプレート200の内部に容易に形成することができる。尚、冷媒流路270となる溝は、第2部材C2のうち接合境界B1となる表面の方に形成されてもよい。
【0047】
ところで、仮に、最も誘電体基板100側の接合境界B1が第1部分201にある場合には、本実施形態に比べて第1部材C1が薄くなる。その結果、それぞれの多孔質部材260を、第1部分201と第2部分202の両方に跨るように配置する必要が生じてしまう。例えば、第2部材C2の凹部のそれぞれに多孔質部材260を挿入し、第2部材C2の表面からそれぞれの多孔質部材260を突出させた状態で、第2部材C2の当該表面を覆うように第1部材C1を接合することとなる。その際には、第2部材C2の表面から突出しているそれぞれの多孔質部材260が、第1部分201の凹部に収まるように位置合わせを行いながら接合しなければならない。しかしながら、多孔質部材260は非常に小さく且つ脆い部材であって、その数も多い。従って、多孔質部材260を傷つけることなく、上記のような位置合わせ等の作業を行うことは非常に困難である。
【0048】
そこで、本実施形態のベースプレート200は、最も誘電体基板100側の接合境界B1が、第1部分201ではなく第2部分202にあるような構成を採用している。つまり、第1部分201と、第2部分202の一部とが、接合境界を介すことなく一体の部材(第1部材C1)となっている構成を採用している。このような構成においては、接合境界B1が第1部分201にある場合に比べて、最も誘電体基板100側にある第1部材C1が厚くなるので、本実施形態のように、多孔質部材260の全体を第1部分201の内部に配置することが可能となる。第1部材C1と第2部材C2とを接合する際に、多孔質部材260を傷つけてしまう可能性が無くなるので、上記のような位置合わせや接合等の作業を容易なものとすることができる。これにより、ベースプレート200の複雑な内部構造を容易に実現することが可能となっている。
【0049】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0050】
10:静電チャック
100:誘電体基板
110:面
200:ベースプレート
201:第1部分
202:第2部分
C1:第1部材
C2:第2部材
B1:接合境界
240:供給流路
250:分配流路
260:多孔質部材
【要約】
【課題】ベースプレートの複雑な内部構造を容易に実現することのできる静電チャック、を提供する。
【解決手段】静電チャック10は、誘電体基板100と、誘電体基板100に接合されたベースプレート200と、を備える。ベースプレート200は、誘電体基板100側の部分である第1部分201と、第1部分201に対し誘電体基板100とは反対側から隣り合う部分であって、上面視における外形が第1部分201の外形よりも大きな第2部分202と、を有する。ベースプレート200は、複数の部材を接合することにより構成されており、最も誘電体基板100側の接合境界B1が第2部分202にある。
【選択図】図1
図1
図2