(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/064 20140101AFI20250401BHJP
B23K 26/073 20060101ALI20250401BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
B23K26/064 K
B23K26/073
G02B6/42
(21)【出願番号】P 2024507757
(86)(22)【出願日】2023-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2023008284
(87)【国際公開番号】W WO2023176541
(87)【国際公開日】2023-09-21
【審査請求日】2024-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2022039028
(32)【優先日】2022-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石垣 直也
(72)【発明者】
【氏名】宇野 進吾
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 雅也
(72)【発明者】
【氏名】若林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】東條 公資
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-49030(JP,A)
【文献】国際公開第2016/059893(WO,A1)
【文献】特開2018-200476(JP,A)
【文献】特開2013-178497(JP,A)
【文献】特開昭60-231582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/064
B23K 26/073
G02B 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出力する複数の光源と、
前記複数の光源から出力されるレーザ光を集光する集光光学系と、
前記集光光学系により集光されたレーザ光が入射される光ファイバと、
前記光ファイバから出射した光を対象物に照射する照射機構と、
前記対象物におけるレーザ光の照射領域を移動させる移動機構と、を備え、
前記光ファイバは、前記集光光学系により集光されたレーザ光が入射する入射面を含むコアを有し、
前記入射面の形状は、互いに直交する第1方向および第2方向において、前記第1方向の方が前記第2方向よりも長い第1延伸形状であり、
前記照射領域の形状は、前記第1延伸形状に対応する第2延伸形状であり、
前記移動機構は、前記照射領域を前記第1方向に移動させる、レーザ加工装置。
【請求項2】
前記第1延伸形状は第1矩形であり、
前記第2延伸形状は第2矩形である、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記複数の光源から出力されるレーザ光は、異方性を有し、
前記入射面におけるレーザ光の長軸と、前記第1矩形の対角線とが一致する、請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記第1延伸形状は楕円であり、
前記第2延伸形状は楕円である、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記複数の光源は、前記第1延伸形状に対応した延伸形状に2次元的に配列されている、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記移動機構は、前記照射領域を前記第1方向に移動させるように、前記対象物と、前記照射機構との少なくとも一方を相対的に移動させる、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記移動機構は、前記照射領域を前記第1方向に移動させるように駆動可能なミラーを有する、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-152630号公報(特許文献1)には、レーザ光を出力するレーザ光出力装置が提案されている。このレーザ光出力装置は、アレイ状に配置された複数の光源と、集光部と、光ファイバとを備える。複数の光源は、それぞれ、レーザ光を出力する。集光部は、該複数の光源から出力された該複数のレーザ光を集光する。光ファイバには、該集光されたレーザ光が入射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のレーザ光出力装置では、光源をアレイ化することで高出力化を図ることができる。一般的に、レーザ加工装置では、加工対象物に与えるパワー密度を上昇させることが望まれている。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、加工対象物に与えるパワー密度を上昇させるレーザ加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のレーザ加工装置は、複数の光源と、集光光学系と、光ファイバと、照射機構と、移動機構と、を備える。複数の光源は、レーザ光を出力する。集光光学系は、複数の光源から出力されるレーザ光を集光する。光ファイバは、集光光学系により集光されたレーザ光が入射される。照射機構は、光ファイバから出射した光を対象物に照射する。移動機構は、対象物におけるレーザ光の照射領域を移動させる。光ファイバは、集光光学系により集光されたレーザ光が入射する入射面を含むコアを有する。入射面の形状は、互いに直交する第1方向および第2方向において、第1方向の方が第2方向よりも長い第1延伸形状である。照射領域の形状は、第1延伸形状に対応する第2延伸形状である。移動機構は、照射領域を第1方向に移動させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示のレーザ加工装置においては、加工対象物に与えるパワー密度を上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態のレーザ加工装置の全体構成を説明するための図である。
【
図2】光源ユニットの構成を説明するための図である。
【
図3】複数の光源の配列の一例を説明するための図である。
【
図4】光ファイバの第1面の一例を説明するための図である。
【
図5】対象物におけるレーザ光の照射領域を説明するための図である。
【
図6】第1比較例のレーザ加工装置の照射態様を説明するための図である。
【
図7】本実施の形態のレーザ加工装置の照射態様を説明するための図である。
【
図8】着目領域に与えられるパワー密度などを説明するための図である。
【
図9】本実施の形態のレーザ加工装置と、第2比較例のレーザ加工装置との比較を説明するための図である。
【
図10】照射領域が円形形状である場合のエネルギー密度を説明するための図である。
【
図11】照射領域が矩形形状である場合のエネルギー密度を説明するための図である。
【
図12】第3比較例のレーザ加工装置を説明するための図である。
【
図13】第2の実施の形態のレーザ加工装置を説明するための図である。
【
図14】第3の実施の形態の照射領域を説明するための図である。
【
図15】第3の実施の形態のコアの入射面を説明するための図である。
【
図16】第4の実施の形態のレーザ加工装置の構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0010】
<第1の実施の形態>
[レーザ加工装置の全体構成]
図1は、レーザ加工装置500の全体構成を説明するための図である。本実施の形態に係るレーザ加工装置500は、加工対象物(以下、「対象物300」またはワークとも称される。)に対してレーザ光を照射して対象物300を加熱する。これにより、レーザ加工装置500は、該対象物300を構成する材料を融解または蒸発させて加工する。本実施の形態においては、加工は、溶接と切断とを含む。なお、加工は、対象物に凹部を形成する処理としてもよい。
【0011】
レーザ加工装置500は、光源ユニット100と、光ファイバ200と、照射機構301と、移動機構302と、配置台303と、制御装置400とを備える。配置台303には、対象物300が配置される。
【0012】
光源ユニット100の構成については、後述の
図2で説明する。光ファイバ200は、光源ユニット100からのレーザ光が入射され、該レーザ光を伝搬する。
図1では、光ファイバ200の後述の入射面205Aと出射面205Bとが示されている。照射機構301は、図示しない集光レンズを有する。照射機構301は、光ファイバ200から出射したレーザ光を、該集光レンズにより集光し、対象物300に照射する。移動機構302は、レーザ光LB(照射機構301から照射されたレーザ光LB)の対象物300における照射領域を移動させる。本実施の形態においては、移動機構302は、照射機構301を移動させることにより、照射領域を移動させる。
【0013】
制御装置400は、ユーザに入力された命令などに基づいて、光源ユニット100および移動機構302を制御する。具体的には、制御装置400は、光源ユニット100に含まれる光源2(
図2参照)の発光を制御する。また、制御装置400は、移動機構302を制御する。
【0014】
制御装置400は、主たる構成要素として、CPU(Central Processing Unit)401と、メモリ402と、通信I/F(interface)403とを有する。各構成要素はデータバスによって相互に接続されている。メモリ402は、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)などを含む。
【0015】
ROMは、CPU401にて実行されるプログラムを格納する。RAMは、CPU401におけるプログラムの実行により生成されるデータなどを一時的に格納する。RAMは、作業領域として利用される一時的なデータメモリとして機能できる。
【0016】
通信I/F403は、CPU401の制御に基づいて、他の機器に対して制御信号を出力するためのインターフェースである。他の機器は、たとえば、光源ユニット100および移動機構302である。
【0017】
[光源ユニットの構成]
図2は、光源ユニット100の構成を説明するための図である。後述するように、後述の光源から発せられるレーザ光は、Fast軸方向と、Slow軸方向とを有する。
図2は、レーザ光のSlow軸およびZ軸を含む平面内での光源ユニット100の各部の配置構成を示す図である。
【0018】
図2において、左側を「光源ユニット100の光軸方向上流側」、右側を「光源ユニット100の光軸方向下流側」とも称する。また、光源ユニット100の光軸方向上流側については、単に「上流側」、光源ユニット100の光軸方向下流側については、単に「下流側」と称することがある。また、以下では、様々な光学系を説明するが、該光学系は、1つのレンズで構成されてもよく、2つ以上のレンズで構成されてもよく、レンズ以外の構成部品を含んでいてもよい。
【0019】
図2において、後述のコリメート光学系3によりコリメートされたレーザ光(以下、「平行光」とも称する)のSlow軸方向が縦軸方向である。また、
図2において、コリメートされたレーザ光のFast軸方向が奥行方向であり、コリメートされたレーザ光の光軸方向がZ軸方向である。また、
図2においては、Slow軸方向は、Y1軸方向とも称され、Fast軸方向は、X1軸方向とも称され、Z軸方向は、Z1軸方向とも称される。
【0020】
図2に示すように、光源ユニット100は、S(Sは2以上の整数)個の光源2と、S個のコリメート光学系3と、集光光学系41とを備えている。S個の光源2は、「光源群2A」とも称される。また、S個のコリメート光学系3は、「コリメート光学系群3A」とも称される。
【0021】
S個の光源2は、S個のレーザ光をそれぞれ出力する。S個のコリメート光学系3は、S個の光源2からのレーザ光の光路中、すなわち、該S個のレーザの光軸上のそれぞれに対応づけて配置されている。換言すれば、1個の光源2と、1個のコリメート光学系3とは1対1で配置されている。
【0022】
また、各コリメート光学系3は、光源2からの光軸が当該コリメート光学系3の中心(コリメート光学系3を構成するコリメートレンズの中心)を通る位置に配置されている。以下では、光源2とコリメート光学系3との間の光路を「光路LD」とも称する。
図2の例では、S個の光路LDが存在する。
【0023】
各コリメート光学系3は、レーザ光LBが入射する入射面311と、レーザ光LBが出射する出射面312とを有する。入射面311は、平面で構成されている。出射面312は、湾曲した凸面で構成されている。
【0024】
コリメート光学系3は、対応する光源2からのレーザ光LBをコリメートする。具体的には、コリメート光学系3は、対応する光源2からのレーザ光LBを、Slow軸方向、Fast軸方向のいずれの方向にも平行光とする。なお、コリメート光学系3は、組み合わせレンズで構成されていてもよい。
【0025】
レーザ光LBの光路上であって、コリメート光学系3に対して下流側には、集光光学系41が配置されている。集光光学系41に対して下流側には、光ファイバ200が配置されている。
【0026】
集光光学系41は、各レーザ光LBを光ファイバ200に向けて集光するレンズである。集光光学系41は、レーザ光LBが入射する入射面411と、レーザ光LBが出射する出射面412とを有する。入射面411は、湾曲した凸面で構成されている。出射面412は、平面で構成されている。
【0027】
光ファイバ200は、長尺状をなす。光ファイバ200は、第1面201と、第2面202とを有する。第1面201は、光ファイバ200の上流側の端面である。第2面202は、光ファイバ200の下流側の端面である。第1面201には、集光光学系41によって集光された複数のレーザ光LBが一括して入射される。このレーザ光LBは、光ファイバ200内を通過して第2面202まで導かれ、当該第2面202から出射される。該出射されたレーザ光LBは、照射機構301に入力される。
【0028】
図3は、S個の光源2の配列の一例を示す図である。
図3に示すように、S個の光源2は、矩形(長方形)の形状となるように、アレイ状にかつX1Y1平面において2次元的に配列されている。
図3の例では、N行M列の光源2が配列されている。Nは1以上の整数であり、より具体的には、Nは2以上の整数である。また、Mは1以上の整数であり、より具体的には、Mは2以上の整数である。また、S=M×Nである。このように、S個の光源2が矩形(長方形)の形状となるように配置されている理由については後述する。
【0029】
図4は、光ファイバ200の第1面201の一例を示す図である。光ファイバ200は、コア205とクラッド206とを有する。コア205は、入射面205Aを有する。入射面205Aに集光光学系41により集光されたレーザ光が入射する。また、入射面205Aは、互いに直交するX1軸方向およびY1軸方向において、X1軸方向の方がY1軸方向よりも長い形状を有する。本実施の形態においては、入射面205Aの形状は、「第1延伸形状」とも称される。
図4の例では、入射面205Aの形状は、矩形形状(長方形形状)である。また、入射面205Aの長辺を長辺L3とし、短辺を短辺L4とする。また、コア205は、長尺の直方体形状を有する。つまり、コア205の出射面の形状は、入射面205Aの形状(矩形形状)と同一である。
【0030】
また、
図4に示すように、集光光学系41により集光されたレーザ光のビーム径は、楕円形状となる。本実施の形態においては、光源2は、端面発光型のレーザダイオードである。よって、Fast軸方向のビーム径が、Slow軸方向のビーム径がよりも大きくなることから、ビーム径は、楕円形状となる。本開示では、Fast軸方向のビーム径とSlow軸方向のビーム径とが異なることを「異方性を有する」とも表現される。
【0031】
図5は、照射機構301からのレーザ光LBが対象物300に照射される領域(以下、「照射領域R」とも称される。)を示す図である。以下では、照射領域Rの形状は、「第2延伸形状」とも称される。
図5の例では、該レーザ光の照射方向がZ2軸方向とされる。また、Z2軸方向に直交する方向がX2軸方向とされ、該Z2軸方向および該X2軸方向に直交する方向が「Y2軸方向」とされる。なお、
図4のX1軸方向、Y1軸方向、およびZ1軸方向は、X2軸方向、Y2軸方向、およびZ2軸方向と、一致していてもよく、異なっていてもよい。
【0032】
照射領域Rは、X2軸方向の方がY2軸方向よりも長い形状となっている。X2軸方向が、本開示の「第1方向」に対応し、Y2軸方向が、本開示の「第2方向」に対応する。
図5の例では、照射領域Rは、矩形形状(長方形形状)となっている。また、照射領域Rは、長手方向(X2軸方向、第1方向)と、短手方向(Y2軸方向、第2方向)とを有する。また、照射領域Rは、長辺L1と短辺L2とを有する。移動機構302は、矢印Pに示すように、照射領域RをX2軸方向(第1方向、長手方向)に移動させる。
【0033】
本実施形態では、第2延伸形状(照射領域Rの形状)は、第1延伸形状(コア205の入射面205Aの形状)に対応する形状である。換言すれば、第1延伸形状と、第2延伸形状とは、形状の種別が同一である。たとえば、第1延伸形状が矩形形状である場合には、第2延伸形状も矩形形状であってよい。また、第1延伸形状と第2延伸形状とでは、長辺と短辺との比が同一であってもよい。この場合、以下の式(1)が成立する。
【0034】
L1:L2=L3:L4 (1)
また、光源2のアレイ配列は、第1延伸形状に対応する形状となり、矩形形状となる。また、アレイ配列と、第1延伸形状とにおいて、長辺と短辺との比が略同一であってもよい。この場合、以下の式(2)が成立する。
【0035】
L1:L2=M列に応じた長さ:N行に応じた長さ (2)
[照射領域のレーザ光のパワー密度]
次に、照射領域Rのレーザ光のパワー密度の増加の手法を説明する。一般的に、パワー密度を増加させるためにはレーザ出力値(≒ファイバ結合数(光源2の数))を増加させるか、照射領域Rの面積(≒ファイバコア面積)を小さくする必要がある(後述の式(7)参照)。しかしながら、後述するようにこのレーザ出力値を増加させること、および照射領域Rの面積を小さくすることを両立することは困難である。
【0036】
そこで、本実施の形態においては、第1延伸形状の面積を大きくするために第1延伸形状を矩形形状(長方形形状)としている。これにより、レーザ出力値を増加しつつ、後述するように、照射領域のパワー密度を仮想的に増加させることができる。
【0037】
まず、「出力ワット数(レーザ出力値)」を説明する。出力ワット数を増加させるためには、光ファイバ200の入射面205Aで結合させるビームの数(つまり、光源2の数)を多くさせればよい。結合させるビームの最大数Cは、以下の式(3)により示される。
【0038】
結合ビームの最大数C=D/E (3)
ここで、式(3)のDは、光ファイバ200に結合できるビーム品質を示す。また、式(3)のEは、光源2からのレーザ光のFast軸方向のビーム品質を示す。また、ビーム品質Dは、以下の式(4)により示される。
【0039】
D=(π・Lx・NA)/2λ (4)
ここで、式(4)のLxは、入射面205AのFast軸方向に一致する辺の長さ(たとえば、
図4の例では、長辺L3の長さ)である。また、NAは、光ファイバ200の開口を示す。また、λは、光源2からのレーザ光の波長を示す。
【0040】
つまり、式(3)および式(4)をまとめると以下の式(5)が成立する。
C=(π・Lx・NA)/2λ・E (5)
たとえば、NA=0.2、λ=450nm、レーザ光のFast軸方向のビーム品質E=1.3、Lx=100μmである場合には、結合ビームの最大数Cは、53個となる。また、NA=0.2、λ=450nm、レーザ光のFast軸方向のビーム品質E=1.3、Lx=200μmである場合には、結合ビームの最大数Cは、107個となる。
【0041】
また、式(5)の右辺において、Lxを変数とし、該Lx以外の値を定数とした場合には、光ファイバ200からの出力ワット数Gは、以下の式(6)により表される。
【0042】
光ファイバ200からの出力ワット数G=a・Lx (6)
ここで、式(6)のaは定数である。つまり、式(6)のように、光ファイバ200からの出力ワット数Gは、辺Lxに比例する。
【0043】
次に、パワー密度Fを説明する。パワー密度Fは、以下の式(7)により表される。
パワー密度F=出力ワット数G/照射領域Rの面積 (7)
上述のように、レーザ加工装置500が、レーザ光を用いた対象物300の溶接加工または切断加工をする場合、光ファイバ200の出力を集光光学系41などによって集光して対象物300に照射する。対象物300における照射領域R(集光スポット)の面積は、光ファイバ200のコア205の入射面205Aの面積に比例する。
【0044】
レーザ加工装置500において、照射領域Rを小さくすることでより微細な加工が可能である。また、照射領域Rを小さくすることにより、パワー密度は高くなり、溶接加工の溶け込み深さまたは切断加工による切断可能な厚さを大きくすることができる。また、照射領域を低速で移動させれば、単位面積当たりの対象物300への入熱量を大きくすることができる。しかしながら、切断加工または溶接加工のスピードが低下する。一方、レーザ加工装置500は、単位時間、または単位面積当たりの対象物300への入熱量が大きくなることで切断加工または溶接加工のスピードを向上させることができる。したがって、光ファイバ200の高出力化のみに注目して光ファイバ200のコア205の入射面205Aの面積を大きくすることは加工用途としては必ずしも実用的とはいえず高出力化とパワー密度Fを両立したレーザ加工装置500が好ましい。
【0045】
式(6)に示すように、出力ワット数Gを増加させようとすると、Lxを増加させかつ光源数を多くする必要がある。しかしながら、出力ワット数Gを増加させるためにLxを増加させると、入射面205Aの面積が大きくなり、その結果、式(7)の右辺の分母の「照射領域Rの面積」が大きくなってしまう。
【0046】
つまり、レーザ出力値(出力ワット数G)と、照射領域Rの面積とはトレードオフの関係にある。よって、上述のように、レーザ出力値を増加させること、および照射領域Rの面積を小さくすることを両立することは困難である。したがって、従来では、照射領域Rのレーザ光のパワー密度を増加させることは困難であった。
【0047】
そこで、本実施の形態においては、
図5に示すように、照射領域Rを上述の第2延伸形状とした。これにより、後述するように、レーザ加工装置500は、対象物300の照射領域Rのレーザ光のパワー密度を増加させることができる。
【0048】
図6は、第1比較例のレーザ加工装置の対象物300における照射態様を示す図である。
図7は、本実施の形態のレーザ加工装置500の対象物300における照射態様を示す図である。
図6および
図7の照射領域は、太線でかこまれた領域である。第1比較例のレーザ加工装置の照射領域R1は、正方形であり、本実施の形態のレーザ加工装置500の照射領域Rは、上述のように矩形である。
【0049】
また、照射領域Rおよび照射領域R1の単位時間における移動距離は、距離Hである。
図6に示すように、正方形である照射領域R1の一辺の長さL6は、距離Hの2倍である。また、長さL6は、L1の半分であり、L2の2倍でもある。
図7に示すように、本実施の形態の照射領域Rの長辺L1は、距離Hの4倍であり、短辺L2は、距離Hと同一である。
【0050】
図6および
図7においては、単位時刻ごとの照射領域の推移が示されている。単位時間経過毎の各時刻をt1~t5とする。
図6(A)~
図6(E)は、それぞれ、時刻t1~t5での照射領域R1の位置を示す。
図7(A)~
図7(E)は、それぞれ、時刻t1~t5での照射領域Rの位置を示す。
【0051】
また、距離Hを50μmとする。したがって、照射領域R1は、一辺が100μmの正方形の領域となり、照射領域R1の面積は、100μm×100μmとなる。また、照射領域Rの長辺L1は、200μmとなり、照射領域Rの短辺L2は50μmとなり、照射領域Rの面積は、50μm×200μmとなる。よって、照射領域R1の面積と、照射領域Rの面積とは同一となる。
【0052】
第1比較例のレーザ加工装置および本実施の形態のレーザ加工装置500において、光源2の数は同一であるとし、光ファイバ200からの出力ワット数Gは、共に100Wであるとする。
【0053】
次に、
図6および
図7に示す着目領域(ハッチングの領域)に与えられるパワー密度を説明する。
図8は、該着目領域に与えられるパワー密度などを示す図である。
図8の例では、「各時刻t(t1~t5)において、着目領域に与えられるエネルギー密度」と、「時刻t1~時刻t5の期間において着目領域に与えられるパワー密度」とが示されている。
図8の例において、1の単位時間の間で、着目領域に与えられるエネルギー密度は、「A」であるとする。なお、着目領域に与えられるエネルギー(J)は、以下の式(8)により表される。
【0054】
エネルギー(J)=パワー(W)×時間(s) (8)
また、エネルギー密度は、以下の式(9)により表される。
【0055】
エネルギー密度=エネルギー(J)/着目領域の面積(cm
2) (9)
図6の例では、照射領域R1が正方形である第1比較例のレーザ加工装置では、時刻t1、t2、t5においては、着目領域は、照射領域R1には含まれていない。したがって、
図8に示すように、時刻t1、t2、t5においては、着目領域に与えられるエネルギー密度は、0である。また、
図6の例では、時刻t3、t4においては、着目領域は、照射領域R1に含まれている。したがって、時刻t3、t4においては、着目領域に与えられるエネルギー密度は、Aである。よって、時刻t1~時刻t5の間において、着目領域に与えられるエネルギーの積算値は、2A・Sである。ここで、Sは、照射領域Rの面積値である。
【0056】
図7の例では、照射領域Rが矩形である本実施の形態のレーザ加工装置では、時刻t1~t4において、着目領域は、照射領域Rには含まれている。したがって、時刻t1~t4において、着目領域に与えられるエネルギー密度は、Aである。また、時刻t5においては、着目領域は、照射領域に含まれていない。したがって、時刻t5においては、着目領域に与えられるエネルギー密度は、0である。よって、時刻t1~時刻t5の間において、着目領域に与えられるエネルギーの積算値は、4A・Sである。
【0057】
ここで照射時間5tが十分小さく、対象物300内における熱エネルギーの拡散などの影響を無視できるとき、たとえば、仮想的なパワー密度は、以下の式(10)により表される。
【0058】
仮想パワー密度(W/cm
2)
=照射時間内(=5t)のエネルギーの積算値/(照射時間・照射領域の面積) (10)
したがって、式(10)に基づくと、
図8の「t1~t5におけるパワー密度」の欄に示すように、照射時間内(5t)における比較例のパワー密度は、2A/5t(W/cm
2)となる。また、照射時間内(5t)における本実施形態のパワー密度は、4A/5t(W/cm
2)となる。したがって、本実施の形態のレーザ加工装置では、比較例のレーザ加工装置の2倍のパワー密度を対象物300に与えることができる。
【0059】
以上、
図8に示すように、本実施の形態のレーザ加工装置500による対象物300の照射領域のレーザ光のエネルギー密度の積算値は、第1比較例のレーザ加工装置による対象物の照射領域のレーザ光のエネルギー密度の積算値よりも大きくすることができる。換言すれば、
図8の「t1~t5におけるパワー密度」の欄に示すように、本実施形態のレーザ加工装置500は、照射領域のパワー密度を仮想的に増加させることができる。したがって、レーザ加工装置500は、レーザ光の対象物300に対する深みまたは厚みを増加させることができる。また、同じパワー密度が要求される加工であれば、本実施の形態のレーザ加工装置500は、第1比較例のレーザ加工装置(照射領域が正方向であるレーザ加工装置)よりも速い速度で照射領域を移動させることができる。
【0060】
なお、この仮想的なパワー密度の増加の効果が得られる条件または該増加量の大きさは、対象物300の所定のパラメータにより異なる。該パラメータは、たとえば、対象物300の熱伝導率、対象物300の熱拡散率、光源2の波長に対する対象物300の光吸収率、および対象物300の保持方法などのうち少なくとも1つを含む。
【0061】
図9は、本実施の形態のレーザ加工装置500と、第2比較例のレーザ加工装置との比較を示す図である。
図9(A)に示すように、本実施の形態のレーザ加工装置500の照射領域は矩形である。
図9(A)は、時刻t1~時刻t2までの照射領域Rの推移を示す図である。また、
図9(A)においては、時刻t1~時刻t2までにおけるオーバーラップ領域Raが示されている。オーバーラップ領域Raは、時刻t1における照射領域Rと、時刻t2における照射領域Rとが重畳する領域である。
【0062】
図9(B)に示すように、第2比較例のレーザ加工装置500の照射領域は円形である。
図9(B)は、時刻t1~時刻t2までの照射領域R2の推移を示す図である。また、
図9(B)においては、時刻t1~時刻t2までにおけるオーバーラップ領域R2aが示されている。
【0063】
図9(B)に示すように、オーバーラップ領域R2aは、円弧で囲まれた領域である。したがって、オーバーラップ領域R2aの面積は、
図9(A)に示すオーバーラップ領域Raの面積よりも小さい。したがって、本実施の形態のレーザ加工装置500による対象物300の照射領域のレーザ光のパワー密度の積算値は、第2比較例のレーザ加工装置による対象物の照射領域のレーザ光のパワー密度の積算値よりも大きくすることができる。
【0064】
図10は、照射領域が円形形状である場合のエネルギー密度を示す図である。
図11は、照射領域が矩形形状である場合のエネルギー密度を示す図である。
図10(A)および
図11(A)は、X2Y2平面におけるエネルギー密度を示す図であり、
図10(B)および
図10(B)は、X2Z2平面におけるエネルギー密度を示す図である。
【0065】
図10に示すように、照射領域が円形形状である場合には、該照射領域のエネルギー密度の分布は、いわゆるガウシアン形状となる。ガウシアン形状は、中心部Q1のエネルギー密度の方が、周縁部Q2のエネルギー密度よりも高い形状である。
図11に示すように、照射領域が矩形形状である場合には、エネルギー密度は照射領域において均一形状となる。
【0066】
図10に示すように、照射領域が円形形状である場合には、対象物300上の照射領域の中心部において、過度なエネルギーが与えられてしまうことになる。よって、レーザ加工装置500のユーザなどが想定していた加工とは異なる加工が行われる場合がある。
【0067】
一方、本実施の形態のレーザ加工装置500においては照射領域は、矩形形状であることから、エネルギー密度は照射領域において均一となり、レーザ加工装置500は、ユーザなどが想定していた加工を行うことができる。
【0068】
このように、本実施の形態のレーザ加工装置500は、照射領域Rを矩形形状にしており、照射領域Rを、照射領域Rの長手方向に移動させている。よって、時刻t1~時刻t5においてオーバーラップされる領域(以下、「オーバーラップ領域」とも称される)の面積を第1比較例よりも大きくできる。したがって、
図7および
図8に示すように、着出力ワット数およびパワー密度はともに同一であっても、本実施の形態のレーザ加工装置500による対象物300の照射領域のレーザ光のパワー密度の積算値は、第1比較例のレーザ加工装置による対象物の照射領域のレーザ光のパワー密度の積算値よりも大きくすることができる。よって、本実施の形態のレーザ加工装置500は、第1比較例のレーザ加工装置と比較して、対象物の照射領域のレーザ光のパワー密度を増加させることができる。また、同様に、本実施の形態のレーザ加工装置500は、第2比較例のレーザ加工装置と比較して、対象物の照射領域のレーザ光のパワー密度を増加させることができる。
【0069】
また、本実施の形態の照射領域Rは、矩形形状である。したがって、
図11で説明したように、エネルギー密度は照射領域において均一となり、レーザ加工装置500は、ユーザなどが想定していた加工を行うことができる。
【0070】
また、照射領域Rの形状は、コア205の入射面205Aの形状に対応する。たとえば、コア205の入射面205Aの形状が円形である場合には、照射領域Rの形状も円形になる。また、コア205の入射面205Aの形状が正方形である場合には、照射領域Rの形状も正方形になる。また、コア205の入射面205Aの形状が矩形である場合には、照射領域Rの形状も矩形になる。
【0071】
本実施の形態のレーザ加工装置500においては、コア205の入射面205Aの形状を矩形としている(
図4参照)。したがって、本実施の形態のレーザ加工装置500においては、コア205の出射面205B(
図1参照)と対象物300との間に調整光学系を有していなくても、照射領域Rを矩形形状にすることができるので、部品点数を増やさず、レーザ光の損失を抑えることができる。
【0072】
また、
図3に示すように、S個の光源2は、第1延伸形状(入射面205A)に対応した延伸形状に2次元的に配列されている。このような構成によれば、レーザ加工装置500は、特殊な光学系を用いなくても、第1延伸形状の入射面205AにS個の光源2からのレーザ光を入射させることができる。
【0073】
また、
図1および
図5に示すように、レーザ加工装置500は、照射領域Rを矢印Pの方向(つまり、X2軸方向および第1方向)に移動させるように、照射機構301を移動させる。したがって、レーザ加工装置500は、照射領域Rの長手方向(第1方向)に沿って移動させることができることから、照射領域Rのオーバーラップ領域Raのエネルギーの積算値を増加させることができる。
【0074】
図5の例では、X2軸方向と矢印Pの方向とが一致している例、つまり、照射領域Rを、X2軸方向に沿って移動させる例が示されている。レーザ加工装置500は、照射領域Rの移動方向を変更する場合には、該移動方向が、照射領域Rの長手方向と一致するように、照射領域Rの移動方向を変更する。たとえば、レーザ加工装置500が、照射領域Rの移動方向をX2軸方向からY2軸方向に変更する場合には、制御装置400は、照射領域Rの長手方向がY2軸方向に一致するように、移動機構302に照射機構301を駆動させる。
【0075】
<第2の実施の形態>
図12は、第2実施の形態における比較例(以下、「第3比較例」とも称される。)のレーザ加工装置を説明するための図である。
図12の例では、第3比較例のコア205の入射面205Aと、該入射面205Aに入射されるレーザ光BMとを示す図である。
【0076】
図12に示すように、楕円であるレーザ光BMの長径BMcが、入射面205Aの長辺L3よりも長い場合がある。この場合には、全てのレーザ光が入射面に入射されない(非入射レーザBM1が存在する)。したがって、光ファイバ200の出力値が低下する。また、入射面205Aの全領域のうち、レーザ光が入射される非入射領域205Mが存在する。
図12では、非入射領域205Mは、ハッチングが付されている。したがって、入射面205Aの面積は、必要以上に大きいということであり、対象物300におけるレーザ光のパワー密度が低下する。このように、第3比較例のレーザ加工装置においては、光ファイバ200の出力値またはレーザ光のパワー密度が低下するという問題が生じ得る。
【0077】
図13は、第2の実施の形態のレーザ加工装置500を説明するための図である。
図13に示すように、入射面205Aにおけるレーザ光BMの長軸BMdと、入射面205Aの対角線Dとが一致する。具体的には、集光光学系41の形状を、レーザ光BMの長軸BMdと、入射面205Aの対角線Dとが一致するような形状とする。また、「一致」については、「略一致」も含む。「略一致」とは、レーザ光の照射領域において該レーザ光により与えられるパワー密度を増加させるという効果を達成するのであれば、長軸BMdと、対角線Dとが少しずれていてもよいということである。このような構成によれば、楕円であるレーザ光BMの長径BMcが、入射面205Aの長辺L3よりも長い場合であっても、レーザ光を適切に入射面205Aに入射させることができる。したがって、第3比較例のレーザ加工装置において生じ得る問題を抑制できる。
【0078】
<第3の実施の形態>
第1または第2の実施の形態では、
図5で説明したように、照射領域の形状は、矩形形状である構成を説明した。しかしながら、照射領域の形状は、他の形状であってもよい。
【0079】
図14は、第3の実施の形態の照射領域R3を示す図である。
図14の例では、照射領域R3は、楕円形状である。この楕円形状は、
図5と同様に、X2軸方向の方がY2軸方向よりも長い形状となっている。
【0080】
図15は、第3の実施の形態の光ファイバ200のコア205の入射面205Cを示す図である。
図15の例では、入射面205Cは、照射領域R3に対応した形状となっている。第3の実施の形態では、入射面205Cの形状は楕円形状となっている。
【0081】
図9(C)は、時刻t1~時刻t2までの照射領域R3の推移を示す図である。また、
図9(C)においては、時刻t1~時刻t2までにおけるオーバーラップ領域R3aが示されている。
【0082】
図9(C)に示すように、第3の実施の形態のレーザ加工装置においては、オーバーラップ領域R3aの面積を第1比較例(
図6参照)よりも大きくできる。よって、第3の実施の形態のレーザ加工装置であっても、対象物300における照射領域R3のレーザ光のパワー密度の積算値を大きくすることができる。したがって、本実施の形態のレーザ加工装置は、第1比較例のレーザ加工装置と比較して、対象物300の照射領域のレーザ光のパワー密度を増加させることができる。
【0083】
次に、第1の実施の形態のレーザ加工装置の照射領域Rと、第3の実施のレーザ加工装置の照射領域R3とを比較する。上述のように、
図9(A)は、第1の実施の形態のレーザ加工装置の照射領域Rの時間的推移を示す。また、
図9(C)は、第3の実施のレーザ加工装置の照射領域R3の時間的推移を示す。
【0084】
図9(C)に示すように、オーバーラップ領域Ra3は、楕円の曲線で囲まれた領域である。したがって、オーバーラップ領域Ra3の面積は、
図9(A)に示すオーバーラップ領域Raの面積よりも小さい。照射領域は、対象物300の加工内容などによって、矩形形状および楕円形状のいずれかに適宜設計される。
【0085】
また、照射領域は、矩形形状および楕円形状ではなくても、X2軸方向(第1方向)の方がY2軸方向(第2方向)よりも長い延伸形状であれば如何なる形状であってもよい。照射領域は、たとえば、平行四辺形、ひし形、長円など如何なる形状であってもよい。
【0086】
<第4の実施の形態>
第1の実施の形態においては、
図1に示すように、移動機構302が、照射機構301を移動させることにより、照射領域Rを移動させる構成を説明した。しかしながら、他の手法により、レーザ加工装置は、照射領域Rを移動させるようにしてもよい。
【0087】
図16は、第4の実施の形態のレーザ加工装置500Aの構成例を示す図である。
図16に示すように、レーザ加工装置500Aは、移動機構302を備えておらず、代わりに、ガルバノミラー310を備えている。照射機構301から照射されたレーザ光LBは、ガルバノミラー310で反射して、該反射されたレーザ光LBが対象物300に照射される。また、制御装置400は、ガルバノミラー310を駆動可能である。制御装置400は、照射領域Rが第1方向に移動するように(
図5参照)、ガルバノミラー310を回転駆動する。このような第4の実施の形態であっても、照射領域Rを第1方向へ移動させることができる。
【0088】
<変形例>
上記の実施の形態においては、移動機構302は、照射機構301を移動させることにより、照射領域を移動させる構成を説明した。しかしながら、移動機構302は、照射機構301ではなく、照射領域Rを第1方向に移動させるように配置台303を移動させるようにしてもよい。このような構成であっても、対象物300の照射領域のレーザ光のパワー密度を増加させることができる。また、移動機構302は、照射機構301および配置台303の双方を移動させるようにしてもよい。つまり、移動機構302は、照射領域を第1方向に移動させるように、配置台303と、照射機構301との少なくとも一方を相対的に移動させるようにしてもよい。このような構成であっても、対象物の照射領域のレーザ光のパワー密度を増加させることができる。
【0089】
[態様]
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0090】
(第1項) 一態様に係るレーザ加工装置は、本開示のレーザ加工装置は、複数の光源と、集光光学系と、光ファイバと、照射機構と、移動機構と、を備える。複数の光源は、レーザ光を出力する。集光光学系は、複数の光源から出力されるレーザ光を集光する。光ファイバは、集光光学系により集光されたレーザ光が入射される。照射機構は、光ファイバから出射した光を対象物に照射する。移動機構は、対象物におけるレーザ光の照射領域を移動させる。光ファイバは、集光光学系により集光されたレーザ光が入射する入射面を含むコアを有する。入射面の形状は、互いに直交する第1方向および第2方向において、第1方向の方が第2方向よりも長い第1延伸形状である。照射領域の形状は、第1延伸形状に対応する第2延伸形状である。移動機構は、照射領域を第1方向に移動させる。
【0091】
このような構成によれば、第1方向の方が第2方向よりも長い第2延伸形状である照射領域を該第1方向に移動させることから、該移動により照射領域の重畳領域を大きくすることができる。よって、該重畳領域でのレーザ光のパワー密度を増加させることができることから、結果的に、照射領域でのレーザ光のパワー密度を増加させることができる。また、入射面の形状は、第1方向の方が第2方向よりも長い第1延伸形状であることから、特殊な光学系を用いなくても、照射領域を第2延伸形状にすることができる。
【0092】
(第2項) 第1項に記載のレーザ加工装置において、前記第1延伸形状は第1矩形であり、前記第2延伸形状は第2矩形である。
【0093】
このような構成によれば、特殊な光学系を用いなくても、照射領域を矩形状にすることができる。
【0094】
(第3項) 第2項に記載のレーザ加工装置において、複数の光源から出力されるレーザ光は、異方性を有し、入射面におけるレーザ光の長軸と、第1矩形の対角線とが一致する。
【0095】
このような構成によれば、レーザ光が異方性を有することにより、ビーム断面が楕円形状となる場合がある。このような場合であっても、集光光学系で集光されたレーザ光を矩形状の入射面に入射させることができる。
【0096】
(第4項) 第2項に記載のレーザ加工装置において、第1延伸形状は楕円であり、第2延伸形状は楕円である。
【0097】
このような構成によれば、特殊な光学系を用いなくても、照射領域を楕円形状にすることができる。
【0098】
(第5項) 第1項~第4項のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、複数の光源は、第1延伸形状に対応した延伸形状に2次元的に配列されている。
【0099】
このような構成によれば、特殊な光学系を用いなくても、第1延伸形状の入射面に複数の光源からのレーザ光を入射させることができる。
【0100】
(第6項) 第1項~第5項のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、移動機構は、照射領域を第1方向に移動させるように、対象物と、照射機構との少なくとも一方を相対的に移動させる。
【0101】
このような構成によれば、照射領域を第1方向に沿って移動させることができる。
(第7項) 第1項~第6項のいずれか1項に記載のレーザ加工装置において、移動機構は、照射領域を第1方向に移動させるように駆動可能なミラーを有する。
【0102】
このような構成によれば、照射領域を第1方向に沿って移動させることができる。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0103】
2 光源、2A 光源群、3 コリメート光学系、3A コリメート光学系群、41 集光光学系、100 光源ユニット、200 光ファイバ、201 第1面、202 第2面、205 コア、205A,205B,311,411 入射面、205M 非入射領域、206 クラッド、300 対象物、301 照射機構、302 移動機構、303 配置台、310 ガルバノミラー、400 制御装置、402 メモリ、500,500A レーザ加工装置。