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特許7658583グリッププロファイルの検出決定装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】グリッププロファイルの検出決定装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/00 20060101AFI20250401BHJP
   A63B 43/00 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
A63B69/00 505J
A63B43/00 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021569165
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 US2020034206
(87)【国際公開番号】W WO2020242938
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】62/852,726
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509009692
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニヴァシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ティー. フリーヒル
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン マシュー カイン
(72)【発明者】
【氏名】ジェーコブ カシャーノ
(72)【発明者】
【氏名】メーソン ジェイ. フェリック
【審査官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0060735(US,A1)
【文献】国際公開第2018/070214(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/00
A63B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリップ決定装置であって、
球形の外面を有する支持構造体と、
前記支持構造体の周りに配置され、グリップ表面を画定するように構成されたカバーと、
前記支持構造体の外面に沿って配置された複数のセンサ素子とを備え、
前記複数のセンサ素子の各々は、前記複数のセンサ素子のうちの対応するセンサ素子でグリップ表面に加えられた力を表す出力信号を生成するように構成されており、
前記決定装置は、さらに回路を備え、前記回路は、前記支持構造体の内部に配置され、前記複数のセンサ素子に通信可能に接続され、かつ前記出力信号に基づいてグリッププロファイルデータを生成するように構成されたマイクロコントローラを備えており、
前記複数のセンサ素子は、グリップ表面全体に分散されており、それによって複数のセンサ素子からの出力信号が、グリップ表面に沿ったグリッププロファイルを集合的に示すものとなり、グリッププロファイルは、グリップ位置データ、及びグリップ位置データに相関するグリップ強度データを提供するものであり、
前記複数のセンサ素子は、前記カバーと前記支持構造体との間で前記支持構造体の外面を包む柔軟性フィルムを備え、
前記柔軟性フィルムは、複数の花弁を備えることによって、前記支持構造体の外面を普遍的に覆うような形状となり、それによってグリップ表面が野球ボールの表面特性を有するようになり、
前記支持構造体、前記複数のセンサおよび前記回路は、グリップ決定装置が野球ボールの重量を有するように構成されており、
前記回路は、グリップ決定装置が野球ボールとして投げられ得るように、グリッププロファイルデータを無線通信し得るように構成されている、グリップ決定装置。
【請求項2】
前記複数のセンサ素子は、前記支持構造体と前記カバーとの間に配置される、請求項1に記載のグリップ決定装置。
【請求項3】
前記複数のセンサ素子の各センサ素子は、個別のセンサを備える、請求項1に記載のグリップ決定装置。
【請求項4】
前記複数のセンサ素子は、前記柔軟性フィルム上に配置されたセンサ素子のグリッドとして配置される、請求項1に記載のグリップ決定装置。
【請求項5】
前記複数のセンサ素子の各センサ素子は、圧力を測定するように構成される、請求項1に記載のグリップ決定装置。
【請求項6】
前記複数のセンサ素子の各センサ素子は、圧電センサ素子を備える、請求項1に記載のグリップ決定装置。
【請求項7】
前記支持構造体は、コアを備え、
前記カバーは、前記コアおよび前記複数のセンサ素子が埋め込まれたポリマー外殻を備える、請求項1に記載のグリップ決定装置。
【請求項8】
野球ボールのグリッププロファイルを決定する方法であって、
機器装備野球ボールを用いて、前記機器装備野球ボール投球中にセンサデータを取得することを備え、前記センサデータは、グリップ位置データと、グリップ位置データと相関するグリップ強度データとを示すものであり、
前記機器装備野球ボールは、
球形コアと、
前記球形コアの外面に沿って配置されたフィルムと、
前記フィルム上に配置された複数のセンサ素子と、
前記複数のセンサ素子に接続された回路とを備え、
前記回路はマイクロコントローラを備え、かつ前記回路は前記球形コア内に埋め込まれており、
前記方法は、さらに、
前記マイクロコントローラを用いて、前記センサデータに基づいてグリッププロファイルデータを生成することと、
前記グリッププロファイルデータと予め設定されたグリッププロファイルデータとの比較を実行することと、
前記比較に基づいて野球ボールのグリッププロファイルを決定することとを備え、
前記フィルムは、前記球形コアの外面を普遍的に包み込み得る形状であり、それによって前記機器装備野球ボールのグリップ表面が通常の野球ボールの表面特性を有するようになっている、方法。
【請求項9】
前記方法は、投球中に取り込んだ投球データを取得することを備え、前記投球データは、機器装備野球ボールによる投球軌跡を示すものであり、
前記方法は、さらに、
前記投球データと、投球のタイプに対して予め設定された投球軌跡データとの比較を実行することと、
前記比較に関する情報を提供して決定を行うこと、とを備える、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年5月24日に出願された米国仮出願第62/852,726号「グリッププロファイルの検出および評価」の優先権を主張するものであり、その開示内容全体は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[発明の属する技術分野]
本明細書による開示は、全般的に、グリップ力および他の表面力の測定に関する。
【0003】
肘には、肘の内側と外側にある側副靭帯がある。肘の内側の靭帯は内側尺骨側副靭帯である。内側尺骨側副靭帯は、上方の腕の骨(すなわち上腕骨)の内側から、前腕にある2つの骨のうち大きい方(すなわち尺骨)の内側まで走っている。内側尺骨側副靭帯は、投球などのように外反のストレスがかかる動作時に肘を安定させるものである。内側尺骨側副靭帯の損傷は、軽微な損傷および炎症から、靭帯の完全断裂まで様々である。
【0004】
内側尺骨側副靭帯は突然の外傷性事故によって破裂する可能性があるが、より一般的には、内側尺骨側副靭帯は経時的に衰弱し、最終的に破裂に至る可能性がある。このような衰弱は、ピッチングおよび他の投げるスポーツの特定の反復運動に関連する反復応力から生じる。このため、衰弱およびその後の損傷は、野球投手、投げ槍の選手、および他の投げる運動の選手、ならびに肘を横切る反復的な外反運動およびストレスに関与する体操選手の間で一般的である。
【0005】
内側尺骨側副靭帯の断裂および他の損傷は、青年期からプロ選手までの全ての年齢の野球投手に共通するものである。肘の力学に関する知識は、このような損傷をどのように防ぐかについての包括的な理解を提供していない。例えば、屈筋群の筋肉の動的な動きは、内側尺骨側副靭帯の保護に関係することが知られている。しかし、内側尺骨側副靭帯が損傷される屈筋群の条件に関しては疑問が残る。投球、投てき、スウィングのスポーツで生じる屈筋と伸筋の疲労がどの程度なのかについてのさらなる情報は、これらの一般的な病理をさらに理解するために重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の1つの態様によれば、グリップ評価装置は、外面を有する支持構造体と、支持構造体の周りに配置され、グリップ表面を画定するように構成されたカバーと、支持構造体の外面に沿って配置された複数のセンサ素子とを含む。複数のセンサ素子のそれぞれのセンサ素子は、それぞれのセンサ素子でグリップ表面に加えられた力を示す出力信号を生成するように構成される。複数のセンサ素子は、複数のセンサ素子からの出力信号がグリップ表面に沿ったグリッププロファイルを集合的に示すように、グリップ表面全体に分散されており、グリッププロファイルは、グリップ位置データ、及びグリップ位置データと相関するグリップ強度データを提供する。
【0007】
本開示の別の態様によれば、機器装備野球ボールは、外面を有するコアと、コアの外面に巻き付けられ、グリップ表面を画定するように構成された革カバーと、コアの外面に沿って配置された複数のセンサ素子とを含む。複数のセンサ素子のそれぞれのセンサ素子は、それぞれのセンサ素子でグリップ表面に加えられた力を示す出力信号を生成するように構成される。機器装備野球ボールは、さらに、コアの内側に配置され、複数のセンサ素子に通信可能に接続され、出力信号に基づいてグリッププロファイルデータを生成するように構成された回路を含む。
【0008】
本開示のさらに別の態様によれば、野球ボールのグリッププロファイルを評価する方法は、処理部で、投球中に機器装備野球ボールによって取得されたセンサデータを取得することを含む。センサデータは、グリップ位置データ、およびグリップ位置データと相関するグリップ強度データを示す。方法は、さらに、処理部で、センサデータに基づいてグリッププロファイルデータを生成することと、処理部で、グリッププロファイルデータと、予め設定されたグリッププロファイルデータとの比較を行うことと、処理部で比較に基づいて野球ボールのグリッププロファイルの評価を提供することとを含む。
【0009】
本開示のさらに別の態様によれば、グリップ評価システムは、グリップ評価装置を含む。グリップ評価装置は、外面を有する支持構造体と、支持構造体の周りに配置され、グリップ表面を画定するように構成されたカバーと、支持構造体の外面に沿って配置された複数のセンサ素子とを含む。複数のセンサ素子のそれぞれのセンサ素子は、それぞれのセンサ素子でグリップ表面に加えられた力を示す出力信号を生成するように構成されている。グリップ評価装置は、さらに、複数のセンサ素子に通信可能に結合され、出力信号に基づいてグリッププロファイルデータを生成するように構成されている制御回路を含む。グリップ評価システムは、さらに、計算装置を含む。計算装置は、グリップ評価装置からグリッププロファイルデータを受信するために、グリップ評価装置に通信可能に結合される。計算装置は、処理部と、グリッププロファイル比較指示が記憶されたメモリとを含む。グリップロファイル比較指示の実行は、処理部に、グリップロファイルデータと、予め設定されたグリップロファイルデータとの比較を実施させ、比較に基づくグリップロファイル評価を提供する。
【0010】
本開示のさらに別の態様によれば、ボールは、外面を有する支持構造体と、支持構造体の周りに位置決めされ、ボールの外表面を画定するように構成されたカバーと、支持構造体の外面に沿って配置された複数のセンサ素子とを含む。複数のセンサ素子のそれぞれのセンサ素子は、それぞれのセンサ素子で外面に加えられた力を示す出力信号を生成するように構成されている。ボールは、さらに、支持構造体によって支持された動作センサを含む。動作センサは外表面に加えられた力の影響を受けるボールの動作を測定するように構成される。ボールは、さらに、出力信号および測定された動作に基づいたデータを生成するように、複数のセンサ素子および動作センサに通信可能に結合された制御回路を含む。
【0011】
本開示のさらに別の態様によれば、ボールの力学(dynamics)を評価する方法は、ボールに埋め込まれた複数のセンサ素子で、ボールの外表面に加えられた力の空間分布を示すセンサデータを取得するステップと、ボールに埋め込まれた動作センサで、ボールの外表面に加えられた力の影響を受けたボールの動作を示す動作データを取得するステップと、ボールに埋め込まれた制御回路で、センサデータおよび動作データをボールの外部の処理部に提供するステップとを含む。
【0012】
前述の態様のうちの任意の1つに関連して、本明細書で説明される装置、システム、および/または方法は代替的にまたは追加的に、以下の態様または特徴のうちの1つまたは複数の任意の組合せを含むことができる。複数のセンサ素子は、支持構造体とカバーとの間に配置される。複数のセンサ素子の各センサ素子は、個別のセンサを含む。グリップ評価装置は、カバーと支持構造体との間に配置されたセンサフィルムをさらに含む。複数のセンサ素子は、フィルム上に配置されたセンサ素子のグリッドとして配置される。複数のセンサ素子の各センサ素子は、圧力を測定するように構成される。複数のセンサ素子の各々は、圧電センサ素子を含む。
【0013】
グリップ評価装置は、支持構造体の内側に配置され、複数のセンサ素子に通信可能に接続され、出力信号に基づいてグリッププロファイルデータを生成するように構成された回路をさらに含む。回路は、グリッププロファイルデータの無線通信用に構成される。
【0014】
支持構造体はコアを含む。カバーは、コアと複数のセンサ素子が埋め込まれたポリマー外殻、およびポリマー外殻の周りに巻かれたカバー層を含む。コアおよびポリマー外殻は、グリップ評価装置が野球ボールの慣性特性を有するように構成される。支持構造体は、ボール形状である。複数のセンサ素子は、支持構造体の外面に巻き付けられた柔軟性の螺旋状フィルムを含む。複数のセンサ素子は、支持構造体の外面に巻き付けられた柔軟性フィルムを含む。柔軟性フィルムは、複数の花弁を含む。
【0015】
支持構造体はハンドル形状である。支持構造体は回転楕円体形状であり、その外面は複数の平坦化された部分を有し、複数の平坦化された部分の各平坦化された部分は、その上に配置された複数のセンサ素子のそれぞれのセンサ素子を有する。
【0016】
グリップ評価装置は、複数のケーブルをさらに含む。支持構造体は、その外面に複数の開口部を有する。複数のセンサ素子の各センサ素子は、複数のケーブルの各ケーブルを含む。複数のケーブルのそれぞれのケーブルは、複数の開口部のそれぞれの開口部を通る。機器装備野球ボールは、コアおよび複数のセンサ素子が埋め込まれたポリマー外殻をさらに含む。革カバーは、ポリマー外殻の周りに巻かれている。コアは回転楕円体形状であり、その外面は複数の平坦化部分を有し、複数の平坦化部分の各平坦化部分は、その上に配置された複数のセンサ素子のそれぞれのセンサ素子を有する。
【0017】
この方法はさらに、処理部で、投球中に取得された投球データを取得することを含む。投球データは機器装備野球ボールの投球軌道を示すものである。方法は、さらに、投球軌道データと、投球タイプについて予め設定された投球軌道データと比較を実施することと、処理部で、比較に関する情報を提供することを含む評価を提供することとを含む。動作センサは、慣性測定ユニットを含む。制御回路によって生成されるデータは、動作のスピン率を示すスピンデータを含む。制御回路によって生成されるデータは、動作の速度を示す速度データを含む。制御回路によって生成されるデータは、動作の軌道を示す軌道データを含む。動作センサは、慣性測定ユニットを含む。この方法は、さらに、処理部で、動作データに基づいて軌道データを計算することを含む。軌道データは、動作のスピン率、動作のスピン軸、動作の速度、動作の変化(曲がり)を含む。
【0018】
本開示のより完全な理解のために、以下の詳細な説明および添付の図面が参照されるべきである。図面において、同様の要素は、同様の参照番号で識別される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】1つの例に従ったグリップ評価装置の概略図およびブロック図である。
図2】別の例によるグリップ評価システムおよびその装置の概略図およびブロック図である。
図3】1つの例に従ったグリップ評価方法のフロー図である。
図4】一例に係るグリップ評価装置の製造方法のフロー図である。
図5】1つの例に従ったグリップ評価装置のコアの概略的な部分の斜視図である。
図6】別の例によるグリップ評価装置のコアの部分斜視図である。
図7】一例に従ったグリップ評価装置のセンサ素子の平面図である。
図8】本実施の形態におけるグリップ評価装置であって、複数のセンサ素子が配置されたコアの形成途中を示す斜視図である。
図9】本実施の形態におけるグリップ評価装置であって、コアおよび複数のセンサ素子がポリマー外殻内に埋め込まれるように形成される途中を示す斜視図である。
図10】一例による革カバーの包装で製造プロセスが終了した後のグリップ評価装置の斜視図である。
図11】センサ出力信号が印加された負荷の関数としてプロットされるセンサ素子の較正データのプロット図である。
図12】一例による、球形または他の3次元湾曲周辺部を横切って配置するように構成された、螺旋形の平面センサ回路の概略平面図である。
図13】球形外面部を横切って配置した後の、図12の平面センサ回路の概略的な斜視図である。
図14】一例による、球形または他の3次元湾曲外面部を横切って配置するように構成された花弁状の平面センサ回路の概略平面図である。
図15】球形外面部を横切って配置した後の、図12の平面センサ回路のうちの1つの概略的な斜視図である。
図16】一例による、球形または他の3次元湾曲外面部を横切って配置するための、一組の六角形および五角形パネル(すなわち、切頭二十面体またはサッカーボールの形態)にわたって分配された平面センサ回路の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
開示された装置、システム、および方法の実施形態は、様々な形態を想定することができる。具体的な実施形態は図面および以下に記載される内容に示されたものであり、本開示が意図するものは例示的であることを理解されたい。すなわち本開示は、本発明が本明細書に記載され図示された特定の実施形態に限定されることを意図していない。
【0021】
グリッププロファイル(握っている状態)を検出および評価する装置、システム、および方法について記載する。ここに開示する装置は、グリップ面全体に分散して配置された複数のセンサ素子を含むグリップ評価装置を備える。したがって、開示された装置は、グリップ面全体にわたるグリップ強度を測定することができる。複数のセンサ素子は、グリップ面に加えられた各々の力を測定する。複数のセンサ素子によって提供されるデータは、グリッププロファイルを提供するために集められる。それは、ボールに対する全ての力の大きさを含み得る。グリッププロファイルは、グリップ位置データおよびグリップ強度データの両方を含む。
【0022】
いくつかの場合、グリップ評価装置は、機器装備野球ボールまたは他のボールである。機器装備野球ボールは、ボールの表面に加えられる力(例えば、垂直力)を測定することができる。複数のセンサ素子は、ボール上の分散した位置に力をマッピングする出力信号を提供する。したがって、機器装備野球ボールは、ボールに加えられるグリップ力の状態(プロファイル)を決定するために使用されてもよい。したがって、開示された装置、システム、および方法は例えば、野球ボール上で力が加えられる正確な位置(例えば、異なる投球のための様々なグリップに関連して)および/またはボールに加えられる力が発生する場所に関する一般的な知識の欠如に対処することができる。
【0023】
いくつかの場合、機器装備野球ボール(または他のボール)は、本物の野球ボール(または他のボール)の外観および感触を有している。例えば、機器装備野球ボール(または他のボール)は、投球されることができ、(本物の)野球ボール(または他のボール)の表面、慣性、および他の外観の特徴を有している。これらの場合および他の場合において、機器装備野球ボールのセンサ素子および他の能動部品は、部品を野球ボールの内側にフィットさせるという挑戦にもかかわらず、埋め込まれ得る。したがって、ユーザにとって、機器装備ボールは、従来の機器非装備のボールと全ての局面において(例えば、感触、重量、機能性など)。同一であるように見えるであろう。
【0024】
機器装備野球ボールによって提供されるグリップ力プロファイルは、様々な投球(すなわち、投球タイプ)に対して、一人のまたは複数人の投手によって実行される異なったグリップを測定するのに使用され、あるいは特徴付けるために使用され得る。グリップ力プロファイルはまた、様々な投球をうまく実行するために一人のまたは複数人の投手によって必要とされる筋肉の労力を定量化するために使用されてもよい。ボールの表面に加えられる力を測定することによって、機器装備野球ボールは、異なるグリップが異なった投手の投球(速度、回転及び変化)の結果にどのように影響するのかを定量化するために使用され得る。したがって、機器装備野球ボールは、トレーニングまたはコーチングツールとして有用である。例えば、機器装備野球ボールによって提供されるデータは、異なる投球に対して投手が行う異なったグリップを測定するために使用されてもよい。
【0025】
機器装備野球ボールによって提供されるグリッププロファイル情報は、投手および/または特定の投球の生体力学的特性を分析するためのツールとしても有用である。例えば野球ボール上の力をマッピングすることによって、開示された装置、システム、および方法は、例えば屈筋群によって加えられる作用を決定するために使用され得る。様々な投球を実行することに関与する筋肉の成果を定量化する際に、開示された装置、システム、および方法を使用して、どの投球が屈筋群(前腕筋系)に対して最も疲労させるのかを決定または相関させることができる。他の生体力学的特徴は例えば、疲労分析、損傷予防、および他の損傷同定を含む、種々の分析のために決定され得る。
【0026】
機器装備野球ボールに関連して本明細書に記載されているが、グリップ評価装置の性質、構造、構成、特徴、および他の態様はそのグリップ面によって変わり得る。例えば、グリップ評価装置は、ソフトボール及びフットボールのような他のタイプのボールに適用されてもよい。ボール以外の物体は、グリップ評価装置と共に、またはグリップ評価装置として構成されてもよい。例えば、他のスポーツ関連の状況では、グリップ評価装置がクラブ(例えば、ゴルフクラブ)、ラケット(例えば、テニスラケット)、またはバット(例えば、野球バット)であり得る。開示される装置、システム、および方法はまた、スポーツ関連分野に限定されない。グリップ評価装置は、グリッププロファイルデータが有用となるグリップ面を有する任意の物体(例えば、物体のグリップのプロファイルが成果を決定付ける物体)を含んでもよい。そのような非スポーツ関連機器または機器装備の例として、ステアリングホイール、自転車ハンドル、様々な消耗品、作業場および他の場所で使用するのに手で保持する制御部、ならびに他の物体が含まれる。したがって、開示される装置、システム、および方法は、グリップ面を有する任意の物体に適用され得る。
【0027】
グリップされる物体の性質にかかわらず、開示される装置は、物体の動作特性が開示される装置の部品の一体化によって悪影響を受けないように、または影響されないように構成されてもよい。例えば、ボールまたは他の物体は、実際の、機器装備されていないボールまたは他の物体と同一であるように見えるであろう。これらの目的のために、ボールまたは他の物体の回路は、バッテリ電力および/または無線通信を使用し得る。それによって、ボールまたは他の物体の動作特性に影響を及ぼすことなく、グリップ位置データ、グリップ強度データ、および他のデータを取得し、送信することができる。
【0028】
損傷防止に関連して記載しているが、開示された装置、システム、および方法は、スポーツおよび他のパフォーマンストレーニングに関連しても有用である。例えば、指と掌の位置、およびそれぞれの圧力分布を知ることは、スポーツに特有の投げる技術を磨くための有用なツールである。いくつかの場合において、開示された装置、システム、および方法は、例えば、即時フィードバックを介して、現場での技術の変化をサポートすることができる。
【0029】
開示される装置、システム、および方法は、ボールに対するグリップ力の測定結果を含む用途に限定されない。例えば、開示される装置、システム、および方法は、表面力が加えられる任意のボールの動力学を評価することに向けられてもよい。表面力を示すデータは、表面力の影響を受けたボールの動作を示す動作データと共に取得される。表面力の性質は変化し得る。いくつかの場合、表面力が、人間の動作(例えば、サッカーボールを打つ足、またはバレーボールを打つ手)または器具(例えば、ゴルフボールを打つゴルフクラブ、または野球ボールを打つ野球バット)によって加えられる。ボールの特性は、それに応じて変化し得る。
【0030】
したがって、開示された装置、システム、および方法は、複数のタイプの物体に関連して有用である。場合によっては、開示される装置がグリップ面を有する任意のタイプの物体として構成されてもよい。そのような場合、開示された装置はボールであってもなくてもよく、グリップ力の影響を受けた動作を示す動作データは取得されてもされなくてもよい。開示された装置がボールとして構成される場合、表面力はグリップ力であってもなくてもよく、動作データは取得されてもされなくてもよい。対応するシステムおよび方法は、それに応じて変更することができる。したがって、開示された装置、システム、および方法に関連する、グリップ評価、グリップ力、および他のグリップ関連態様への本明細書の言及は、本明細書に記載された埋め込まれたセンサ機能を有するボールの文脈において、他の表面力を含むと理解されるべきである。
【0031】
図1は、一実施形態に従ったグリップ評価装置100を示す。この場合、グリップ評価装置100は、適用されたグリップ力の大きさおよび位置を測定することができる野球ボール102であるか、またはそれを含む。他の場合では、グリップ評価装置100がフットボール、または他のグリップされた物体などの別のタイプのボールであるか、またはそれを含む。さらに他の場合には、装置100が本明細書に記載されるように、表面および動作データを取得するための埋め込まれたセンサ機能性を有する任意のタイプのボール(グリップ表面を有する、または有しない)であってもよい。装置100は、説明を容易にするために図1に概略的に示されている。他の図面に関連して例示的なグリップ評価装置が非概略的に記載される。
【0032】
装置100は、コア104と、コア104の周りに配置されたカバー106とを含む。コア104は外面を有する。外面部は以下に記載されるように、グリップ評価機能を支持するように成形されてもよく、または他の方法で構成されてもよい。場合によっては、コア104の外面および/または他の態様が3次元印刷または他のラピッドプロトタイピングによってカスタマイズされてもよい。カバー106は、グリップ又は他の外表面、例えばコア104の外表面を規定するように構成される。この場合、コア104はボール形状であり、カバー106は革カバーであるか、または革カバーを含む。
【0033】
コア104およびカバー106の形状、組成物、組成、および他の特徴は図1の野球ボール102とは異なっていてもよい。例えば、コア104は円筒形状であってもよい。コア104は、任意のタイプの内部構造、支持体、または支持構造であってもよく、またはそれらを含んでもよい。コア104は例えば、フットボール、バスケットボール、または他の膨張したボールなどの空気入り物体であり得るか、それらを含み得る。
【0034】
コア104、カバー106、およびそれらの態様の例は、他の図面に関連してさらに示され、説明される。カバー106は例えば、内側シェル(内殻)及び外側層を含む多数の層を含むことができる。
【0035】
装置100は、コア104の外面に沿って配置された複数のセンサ素子108をさらに含む。センサ素子108は、コア又は支持構造104によって支持される。それぞれのセンサ素子108は、それぞれのセンサ素子108でグリップ表面に加えられた力を示す出力信号を生成するように構成されている。センサ素子108は、センサ素子108からの出力信号がグリップ表面に沿ったグリッププロファイルを集合的に示すように、グリップ表面全体に分配される。以下に説明するように、グリッププロファイルは、グリップ位置データ、およびグリップ位置データと相関するグリップ力大きさデータを提供する。装置100は、本明細書で説明するように、動作データを取得するために、例えば、慣性測定ユニットなどの動作センサを含む、1つまたは複数の追加のセンサを含むことができる。
【0036】
図1の例では、各センサ素子108が個別センサである。各センサ素子108は、他のセンサ素子108とは独立してその出力信号を生成するように構成される。他の場合には、センサ素子108が例えば、グリッド又は他のフレームワークに一体化されてもよい。統合の程度または性質は変化し得る。
【0037】
センサ素子108の数およびレイアウトは変化してもよい。1つの野球ボールの例では、センサ素子108の数が約30から約40(例えば、32個のセンサ素子)の範囲内に入るが、数は他のセンサレイアウトによって変化してもよい。レイアウトは図1に示される直線的な配置とは異なる場合があり、例えば、センサ素子108は、各センサ素子108の形状によく適合するダイヤモンド配置または他の配置にされてもよい。
【0038】
センサ素子108の大きさ、数、形状、および配置は、グリップ表面がセンサ素子108によって覆われる範囲を最大化または増加させるように選択されてもよい。被覆領域を増加させることは、より正確で有用なグリップロファイルを提供する。球面または回転楕円面を完全に覆うことは挑戦的である。この目的のために、野球ボール102の表面の周りに多くの小さなセンサを配置することが有用であり得る。センサ素子108は、表面の普遍的な、または実質的な被覆を可能にするように成形された柔軟な回路または他のフィルム上に担持されてもよい。このようなフィルムの例は、図12~16に関連して以下に記載される。
【0039】
各センサ素子108は、1つ以上の力-感応抵抗器であってもよく、またはそれを含んでいてもよい。いくつかの場合において、各センサ素子108は、圧電センサ素子であるか、またはそれを含む。各センサ素子108は、圧力を測定するように構成されてもよい。例えば、各センサ素子108は、カバー106の1つまたは複数の層の圧縮または他の物理的変形を介して、圧力を測定することができる。例えば、容量センサを含む、他のタイプの圧力センサまたは力センサが使用されてもよい。
【0040】
センサ素子108は、野球ボール102のカバー層または他の構成要素に埋め込まれてもよい。例えば、センサ素子108はコア104に固定され、取り付けられ、又は他の方法で配置された後に、柔軟性ポリマー外殻(又は他のカバー層)内に入れることができる。いくつかの場合において、ポリマー外殻または層は、ポリウレタンであるか、またはポリウレタンを含み、ポリウレタンは型を介して適用され得る。ポリマー層は、カバー106の複数の層のうちの1つと考えることができる。次に、カバー106の革または他のカバー層をポリマー層の周りに巻き付けることができる。
【0041】
グリップ評価装置100は、センサ素子108に通信可能に結合され、出力信号に基づいたグリッププロファイルデータを生成するように構成された制御回路110を含む。制御回路110は、センサ素子108から直接又は間接的に出力信号を受け取ることができる。図1の例では、制御回路110を分かり易く描写するために、野球ボール102の外側に示されている。他の場合には、制御回路110の1つ以上の構成要素がコア104または野球ボール102の内側に埋め込まれるか、または他の方法で配置される。制御回路110は、1つまたは複数の有線接続を介してセンサ素子108に結合することができる。
【0042】
図1の例では、制御回路110がマイクロコントローラ112と、入力回路114と、信号処理回路116とを含む。制御回路110のこれらの構成要素は、任意の所望の程度まで集積化され得る。例えば、部品は、システムオンチップ(SoC)または他の集積アーキテクチャを介して提供され得る。制御回路110の構成要素を実現するために、任意の数の集積回路(IC)または他の構成要素を使用することができる。追加の構成要素、より少ない構成要素または代替の構成要素が提供されてもよい。例えば、制御回路110は、マイクロコントローラ112からのデジタル出力信号、すなわちグリッププロファイルデータを提供することに向けられた別個の回路を含んでもよい。制御回路110は追加の、より少ない、または代替の構成要素を含んでもよい。例えば、制御回路110は、バッテリおよび/または他の電源を含んでもよい。バッテリは埋め込み式であってもよいし、さもなければ、内部に配置されてもよい。
【0043】
出力信号は、入力回路114を介して受信される。入力回路114は、各センサ素子108に加えられる力のアナログ表示を展開するように構成することができる。例えば、入力回路114は、センサ素子108を通過する電流に従った電圧が展開される抵抗器または抵抗素子を含んでもよい。一例では、各出力信号が150Ωの抵抗器を横切って測定される。各センサ素子108に対して、それぞれの抵抗器または抵抗素子を設けてもよい。あるいは、入力回路114がマルチプレクサまたは他の構成であってもよく、またはそれを含んでもよい。場合によっては、入力回路114がセンサ素子108を駆動(例えば、バイアス)するか、または駆動をサポートするように構成することもできる。
【0044】
信号処理回路116は、入力回路114を介して供給されるアナログ信号を処理するように構成することができる。ある場合には、信号処理回路116がアナログ-デジタル変換器であるか、またはそれを含む。代替的または追加的な処理が提供されてもよい。例えば、信号処理回路116は、入力回路114またはセンサ素子108によって提供されるアナログまたは他の信号のフィルタリングまたは他の調整に向けられてもよい。
【0045】
マイクロコントローラ112は、制御回路110の他の構成要素からデジタルまたは他の信号を受信する。マイクロコントローラ112は、各センサ素子108に加えられた力の大きさを示すデータを、その位置、すなわち対応する力センサ108の位置を示すデータと共に生成または記録するように構成されてもよい。マイクロコントローラ112によって生成される力の大きさおよび位置データは異なるグリップを理解し、異なるグリッププロファイルを定量化するために使用されてもよい。
【0046】
マイクロコントローラ112は処理部(プロセッサ)であってもよいし、それを含んでいてもよく、ICチップ上で実現されてもよい。処理部は、1つ以上のメモリユニットに記憶された指示を介してプログラムされてもよい。1つ以上のメモリユニットは、例えばICチップに搭載された処理部と一体化されていてもよいし、一体化されていなくてもよい。一例では、マイクロコントローラ112がアルデュイーノ・ウノ(Arduino Uno)プロセッサ(プロトタイピング用マイコンボードプロセッサ)であるか、またはそれを含む。他のマイクロコントローラまたは処理部が使用されてもよい。場合によっては、制御回路110がマイクロコントローラ112によって提供されるアナログ入力ポート(例えば、ピン)の数を効果的に増加させるために、1つまたは複数のマルチプレクサを含んでもよい。
【0047】
アルデュイーノ・ウノ(プロトタイピング用マイコンボード)または他のマイクロコントローラ112は、グリッププロファイルデータを区分し、表示するように構成されてもよい。例えば、マイクロコントローラ112は、グリッププロファイルデータが表示されるシリアルモニタを含んでもよく、またはシリアルモニタに結合されてもよい。マイクロコントローラ112は、代替または追加の手順を実施するように構成されてもよい。例えば、読み出し時間中に存在するドリフトは、マイクロコントローラ112によって実行される手順によって、例えば、1つまたは複数のメモリユニットに格納された指示を介して、適応されるか、補償されるか、または他の方法で対処されてもよい。
【0048】
図1の例は、センサ素子108と制御回路110との間の有線接続118を示す。グリッププロファイルデータは、追加の有線接続を介して制御回路110から得ることができる。例えば、マイクロコントローラ112および/またはより一般的には制御回路110は、ケーブルを接続することができる1つまたは複数の出力ポートを有することができる。
【0049】
他の場合には、グリッププロファイルデータが制御回路110から得られ、それによって無線で提供されてもよい。このような場合、制御回路110は、野球ボール102の内部に埋め込まれるか、さもなければ配置されてもよい。例えば、制御回路110は、コア104の内部空間内に配置されてもよい。したがって、グリップ評価装置100は、完全に無線であり投球可能な機器装備野球ボールであってもよい。その結果、グリップ評価装置100は、規定野球ボールと同一の慣性特性を有するように構成されてもよい。このようにして、グリップ評価装置100は、異なるグリップと投球性能との関係を理解する能力を提供する。
【0050】
図2は、一例によるグリップ評価システム200を示す。グリップ評価システム200は、グリップ評価装置202と、グリップ評価装置202と通信可能に結合された計算装置204とを含む。グリップ評価装置202は、例えば図1の装置100を含む、本明細書に記載される他の装置と共通の1つ以上の特徴を有してもよく、計算装置204は本明細書に記載される装置のいずれかと併せて使用されてもよい。
【0051】
場合によっては、グリップ評価装置202が野球ボール、フットボール、サッカーボール、バレーボール、ゴルフボールなどのいかなるタイプのボールであっても、含まれる。ボールは、グリップ面を有していても有していなくてもよい。グリップ面を伴わない場合には、システム200は、例えばボール力学評価システムのように、ボールの外表面に加えられる力の空間分布を評価することに向けられるものであってもよい。さらに他の場合では、装置202がラケット、ハンドル、または手で握る制御部などの任意のタイプのグリップ物体であってもよい。
【0052】
グリップ評価装置202は、球形、回転楕円体、円筒形、または他の形状のグリップまたは他の外面を有する可能性がある。グリップ面の曲率は、それに応じて変化してもよい。グリップ評価装置202は、本明細書で説明される他のグリップ評価装置と共通の1つまたは複数の特徴または態様を有することができる。例えば、グリップ評価装置202は、外周面部を有するコア206(又は支持構造)、コア206のまわりに配置され、グリップ面210を規定するように構成されたカバー208、及びコア206の外周面部に沿ってコア206とカバー208との間に配置された複数のセンサ素子を含んでもよい。この例では、カバー208が単一層、例えば、革カバーを含むが、例えば、ポリマー内殻を含む、任意の数またはタイプのカバー層が使用されてもよいが、代替または追加のカバー層が含まれてもよい。
【0053】
グリップ評価装置202はコア206内に、例えばコア206の内部空間内に配置された制御部212を含む。制御部212が埋め込まれることにより、グリップ評価装置202は自然にグリップされ、使用されることを可能にする。制御部212は、上述した制御回路と同様に構成することができる。例えば、制御部212はセンサ素子からの出力信号に基づいてグリッププロファイルデータを生成するように構成された回路であってもよいし、またはそれを含んでいてもよい。この場合、制御部212は、センサデータ(例えば、グリッププロファイルデータ)をグリップ評価装置202から計算装置204に転送するために、計算装置204との、例えば、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))または別の無線通信規格を介した無線通信接続を使用する。
【0054】
グリップ評価装置202は、上述の例のように、グリップ面210全体に分散された複数のセンサ素子を含む。図2の例は、センサ素子がセンサグリッド214内に配置されるという点で、上述の例とは異なる。したがって、センサグリッド214のセンサ素子は、個別のセンサではない。その代わりに、センサ素子は、センサグリッド214の行列に配置され、相互接続される。センサグリッド214は、センサ素子に結合され、センサ素子の出力信号を駆動装置および/または読み取るように構成された行列読取/駆動装置回路216、218を含む。
【0055】
センサグリッド214は、柔軟性シートまたはフィルムとして構成することができ、コア206の周囲に巻き付けることができる。各センサ素子はフィルム上に形成されてもよいし、さもなければ配置されてもよい。例えば、フィルムは、センサグリッド214のトランジスタ、抵抗性、容量性、及び/又は他の回路要素のための基板として作用することができる。
【0056】
センサグリッド214は、グリップ評価装置202がゴルフクラブなどの円筒形または他のハンドル形状である場合に好適に用いることができる。他の場合には、フィルムが他の装置形状(例えば、ボール形状または他の回転楕円体装置)に適応するように、伸縮可能および/または成形されてもよい。
【0057】
図2の例では、グリップ評価装置202がグリップ評価装置202の動作を取得または測定するように構成された、1つまたは複数の動作センサ219を含む。動作は、グリップまたは装置202の外面に加えられる他の力に影響される。グリップ評価装置202がボールであるかボールを含む場合、センサ219は動作の軌道(例えば、投球軌道)を示すデータを取得するように構成されてもよい。例えば、動作センサ219は慣性測定ユニット(IMU)であってもよいし、さもなければ含んでもよい。動作センサ219は、加速度計、ジャイロスコープ、および/または他の動作センサを含むことができる。動作センサ219が統合される程度は、必要に応じて変化してもよい。
【0058】
計算装置204は、グリップ評価装置202に通信可能に結合されて、グリップ評価装置202からグリッププロファイルデータを受信する。計算装置204は、スマートフォンのようなポータブル計算装置、またはラップトップやデスクトップのようなパーソナル計算装置であってもよい。計算装置204は、グリッププロファイルデータを処理する処理部220と、グリッププロファイルデータを受信する無線通信インタフェース222と、未処理または処理されたグリッププロファイルデータをユーザに提供するディスプレイ224とを含む。
計算装置204は、処理部220への指示が記憶されたメモリ226をさらに含む。この例ではグリッププロファイル生成指示228、グリッププロファイル比較指示230、および動作(例えば、投球軌道または他の軌道)計算指示231は、メモリ226に記憶される。指示228、230、231は、任意の所望の範囲に統合することができる。追加の指示、より少ない指示、または代替の指示を記憶することができる。例えば、グリッププロファイル(またはグリッププロファイルデータ)の生成は、制御部212によって完全に処理されてもよい。メモリ226は、1つ以上のメモリまたはメモリユニットを含むことができる。
【0059】
グリッププロファイル比較指示230の実行は、処理部220に、グリッププロファイルデータとプリセットグリッププロファイルデータとの比較を実施させ、比較に基づくグリッププロファイル評価を提供させる。プリセットされたグリッププロファイルデータは、計算装置204のデータ記憶部232に格納されてもよい。場合によっては、データ記憶部232がサーバまたは他の遠隔計算装置上に配置されてもよい。
【0060】
グリップロファイル評価は、グリップロファイルが例えばトレーニングツールとして、所与の投球または他の活動にどの程度適切であるかを評価することに向けられてもよい。グリッププロファイル評価は代替的にまたは追加的に、損傷予防、損傷検出、リハビリテーション、および/または他の使用に向けられてもよい。
【0061】
動作計算指示231の実行は、処理部220に、動作センサ219によって測定または取得された動作データに基づくデータの生成を行わせる。例えば、データは、動作の回転速度及び/又は動作の回転軸を示す回転データを含むことができる。代替的に又は追加的に、データは、回転速度を示す速度データ、及び/又は回転の変化又は他の軌道を示す軌道データを含むことができる。動作計算指示231の実行を介して計算されたデータは、投球または他の物体軌道がビデオカメラおよび関連するビデオ分析システムなどのさらなる機器に依存することなく、グリップまたは他の表面力の空間分布と関連して分析されることを可能にし得る。
【0062】
計算装置204は、本明細書で説明する他のグリップ評価装置のいずれかと併せて使用することができる。
【0063】
図3は一例による、グリッププロファイル、例えば、野球グリッププロファイル、または表面力の他の空間分布を評価する方法300を示す。方法300の1つまたは複数の動作は、本明細書で説明される制御部、制御回路、または処理部、および/または別の制御部、制御回路、または処理部のうちの任意の1つまたは複数によって実行され得る。例えば、方法300の一部または全部は、処理部220(図2)によるグリッププロファイル比較指示230(図2)の実行結果として実施されてもよい。代替的にまたは追加的に、方法300の1つ以上の動作は、本明細書に記載されるグリップ評価装置のうちの1つのマイクロコントローラまたは他の制御部によって実施されてもよい。例えば、グリッププロファイルデータは、グリップ評価装置によって生成されてもよい。
【0064】
また、方法300は、ボール動作の力学(dynamics)を評価することに向けられてもよい。例えば、ボール動作の力学(dynamics)は、処理部220(図2)による動作計算指示231(図2)の実行を介して計算することができる。
【0065】
方法300は、グリッププロファイルまたは外面に加えられる力の他の空間分布を示すセンサデータを取得することを対象とする1つまたは複数の動作から開始することができる。本明細書に記載されるように、センサデータは、ボールまたは他の物体に埋め込まれた複数のセンサ素子によって取得される。開示されたグリップ評価装置のいずれか1つを使用して、センサデータを取得することができる。図3の例では、方法300は、センサデータが取得される行為302を含む。例えば、センサデータは、有線または無線通信を介してグリップ評価装置から取得されてもよい。野球の例では、センサデータは機器装備野球ボールの投球中に取得されることとしてもよい。センサデータは、グリップ位置データ及びグリップ振幅データとグリップ位置データとの相関関係、又は外面に加えられる力の他の空間分布を示すことができる。
【0066】
行為304において、グリッププロファイルデータ(または他の表面力プロファイルデータ)が、センサデータに基づいて生成される。グリッププロファイルデータは、センサデータのフィルタリング、調整、または他のデータ処理を介して生成されてもよい。
【0067】
図3の例では、行為306において、投球または他の動作データも取得および/または取得される。動作データはボールまたは他の物体に埋め込まれた、または他の方法で配置された1つまたは複数の動作センサ(例えば、慣性測定ユニット)を用いて取得される。動作は、外表面に加えられた力の影響を受ける。投球データは、センサデータがグリッププロファイルについて取得している間に、グリップ評価装置によって取得された軌道、すなわち投球軌道または軌道を示すことができる。代替的に又は付加的に、投球データは、センサデータがグリッププロファイルのために取得されている間に実行される投球速度を示す。投球の追加、減少、または代替の特性が、投球データを介して提供され得る。投球データは、別個の装置、例えばレーダーガンまたは他の投球追跡装置によって取得することができる。投球データは、グリップ評価装置を伴って、または伴わずに取得されてもよい。
【0068】
次いで、グリッププロファイルデータおよび動作データは、行為308において外部処理部に提供され得る。外部処理部は、表面力が加えられるボールまたは他の物体の外部にある。データは無線で提供されてもよい。データが送信される方法は変わり得る。行為308は、送信前のデータのコンパイル、関連付け、他の処理の相関を含むことができる。場合によっては、方法300の残りの部分がそれに応じて、外部処理部によって実装されてもよい。行為308までの、およびそれを含む行為は、制御回路、制御部、または表面力が加えられるボールまたは他の物体内に埋め込まれた他の処理部によって実現されてもよい。
【0069】
行為310において、動作データを処理して、1つまたは複数の動作特性を計算することができる。例えば、投球または他の軌道データを計算することができる。軌道データの性質は変化し得る。軌道データは例えば、動作の回転速度、動作の回転軸、動作速度、および動作の変化を含んでもよい。
【0070】
図3の例では、行為312において、軌道データが、グリッププロファイルまたは他の表面力データと相関され、かつ/または他の方法で処理される。例えば、軌道データおよび表面力データの処理は、1つまたは複数のパラメータの計算を含むか、または含むことができる。
【0071】
行為314では、計算されたパラメータ、軌道データ、および/または表面力データ(例えば、グリッププロファイルデータ)とプリセットデータとの比較が実施される。比較は、計算された及び/又は測定されたデータと、対応する既存のデータとの任意の数の比較又は他の分析を含むことができる。野球の例では、プリセット投球軌道データ、すなわち、比較は特定の投球タイプに特有であり得る。例えば、投球タイプは、比較に使用されるプリセットデータを決定することができる。
【0072】
次に、行為316において、比較に基づいて、グリッププロファイルまたは他の表面力分布の評価が提供される。評価は、動作データ、表面力データ、及び/又はそれらから計算されたパラメータ又は特性を含む比較に関する情報を含むことができる。評価は、計算装置204(図2)の画面224(図2)などの表示部を介して提供することができる。
【0073】
方法300は、付加的な方法、より少ない方法、または代替の方法を含むことができる。例えば、方法300は、投球データに関連する行為を含まなくてもよい。
【0074】
方法300の行為は、図3に示される順序とは異なる順序で実施されてもよく、例えば、行為306は行為302と同時に、またはそれ以前に実施されてもよい。
【0075】
図4は、一例によるグリップ評価装置を製造する方法400を示す。方法400は、本明細書に記載されるグリップ評価装置のいずれか、または別のグリップ評価装置を製造するために使用されてもよい。方法400は追加の、より少ない、または代替の動作を含むことができる。例えば方法400は、グリップ評価装置の制御部を、例えば装置内部に配置または統合するための1つ以上の動作を含んでもよい。
【0076】
方法400は、コアが形成される動作402から開始することができる。場合によってはコアは三次元印刷によって形成される。代替または追加のプロセスを使用することができる。コアは一緒にスナップ留めされるか、または他の方法で接合される複数の部品(例えば、2つの半体)から形成されてもよい。2つの半体は、方法400の1つ以上の動作の実施後に接合されてもよい。
【0077】
行為404では、複数のセンサ素子がコアに取り付けられるか、さもなければコアに取り付けられる。場合によっては、各センサ素子がコアに個別に取り付けられてもよく、又は適用されてもよい。各センサ素子の取付は、コア上にセンシング部またはセンサ部を取り付けることと、コア内の他の穴のスロットを通して柔軟性ケーブルまたは他のコネクタを供給することとを含むことができる。センサ領域は、エポキシまたは他の接着材料でコアに取り付けることができる。他の場合には、センサ素子が例えば、シート又はフィルムとして集合的に適用される。
【0078】
次に、行為406において、1つ以上のカバー層が形成される。カバー層は上述したように、ポリマー内殻もしくは層および革カバーを含んでもよい。ポリマー外殻または層は、鋳造プロセスを介して形成される。そのプロセスでは、行為408において鋳型(例えば、2つの部分からなる鋳型)が適用され、行為410において、例えばポリウレタンが充填される。一例では使用される鋳造材料がVytaFlex 50ポリウレタンであるが、他のポリマー材料を使用してもよい。型は、センサ素子を封入または埋め込み、所望の形状(例えば、球形)を達成するために使用されてもよい。次に、行為412において、革カバーをポリマー層の上に巻き付け、締めることができる。
【0079】
革カバーは、レースがセンサ素子の位置と整列するように、またはセンサ要素の位置に従って配置されるように、位置決めされてもよい。
【0080】
次いで、行為414では、センサ素子の較正を実施することができる。例示的な較正手順に関するさらなる詳細は、図11に関連して、以下に提供される。
【0081】
図5および図6は、機器装備野球ボールのコア部分の例を示す。いずれの場合も、コアは回転楕円体形状である。コアの周囲は、複数の平坦部分を有する。各平坦化された部分は、その上に配置される複数のセンサ素子のそれぞれのセンサ素子のために構成される。また、コアの周囲は、各センサ素子のための柔軟性ケーブル又は他の配線のための複数のスロット又は穴を有する。これらの場合、各スロットは、平坦化されたセクションのそれぞれ1つに隣接する。各ケーブルは図8に示すように、複数の開口部のうちの対応する開口部を通過する。
【0082】
図6の例ではコアは外部制御回路に接続するための配線のための円形の穴を含む。図9および図10は、機器装備野球ボールのコアおよびカバーの両方にある穴を出る配線を有する例を示す。円形孔は、内部または集積制御回路が使用される場合には、含まれなくてもよい。
【0083】
図7は、グリップ評価装置のコア上に配置するためのセンサ素子の一例を示す図である。この例におけるセンサは、薄い圧電センサであるか、または圧電センサを含む。圧電センサは、センサ領域内に配置される。センサ素子は、尾部としてセンサ領域から延びるケーブルをさらに含む。ケーブルは、導電性線を担持する柔軟性基板を含んでもよい。この場合、各線は、対応するリードで終端する。センサ素子は、形状、構造、組成物、および他の特性が、図示された例とはかなり異なっていてもよい。
【0084】
図8図10は、様々な製造段階における野球ボールの一例を示す。
図8では、センサ素子はコアに固定されており、センサ素子のケーブルはコアのスロットを通して供給されている。図9では、ポリマー外殻がコアに適用されている。コア及びセンサ素子は、ポリマー外殻に埋め込まれている。
図10は、グリップ面を画定するために革カバーがコアおよびシェルの周囲に巻き付けられた後の、埋め込まれたコアを示す。
【0085】
図11は、開示されたグリップ評価装置およびシステムのコントローラまたは制御回路を構成するための較正データのプロットの一例を示す図である。この例では、較正データが加えられた力の関数としてプロットされた力感応抵抗器の出力を含む。較正データは、周知の重量がセンサ素子に印加されるプロセスを介して、取得されてもよい。プロットは、また、較正データに適合した曲線も表示する。曲線は、所与のセンサ出力レベルに基づいてグリップ力の大きさを生成するために使用されてもよい。この例では、2次指数曲線が使用されるが、他の場合には他の曲線が使用されてもよい。曲線は、それぞれの出力レベルを、例えばポンド単位の値にマッピングするために使用され得る。代替的に又は追加的に、曲線に基づくルックアップテーブルを使用して、力データを生成することができる。
【0086】
較正データは指をシミュレートするように、既知の重みを集中的に適用するように構成された試験構造を介して取得されてもよい。試験構造体は、各センサ素子に個別に一定範囲の荷重を加えるように構成される。
【0087】
図12~16は、センサ素子のグリッドまたは他の配列が配置され得る柔軟性フィルムの例を示す。柔軟性フィルムは、本明細書に記載されるボールまたは他の物体もしくは装置のいずれかの支持構造の周りに巻き付けられ得るか、その外面に配置され得る。柔軟性フィルムは、その上にセンサ素子を配置することができる任意のタイプの柔軟性基板とすることができ、またはそのような柔軟性基板を含むことができる。例えば、柔軟性フィルムは熱可塑性ポリウレタン(TPU)などのポリマー材料から構成されてもよく、あるいはポリマー材料を含んでもよいが、他の材料が使用されてもよい。
【0088】
図12~16の例の各々において、柔軟性フィルムは、球面の普遍的または実質的な被覆を達成するように成形される。柔軟性フィルムは、図12および図13に示されるようなオイラー螺旋(Euler Spiral)のような螺旋形状であってもよい。図12はまた、センサグリッドの一部のワイヤトレースを概略的に示す。また、花弁状のフィルムを用いてもよい。花弁の数は図14に示すように変化させることができ、図15は、6つの花弁を有する例示的なフィルムの適用を示す。さらに他の場合には、柔軟性フィルムが例えば、図16に示されるように、切頭二十面体またはサッカーボール構成におけるように、一組の六角形および五角形パネルを含む。
【0089】
本開示は例示のみを目的とし、本開示を限定することを目的としない特定の実施例を参照して説明されてきた。本開示の精神および範囲から逸脱することなく、実施例に変更、追加および/または削除を加えることができる。
【0090】
以上の記述は理解を明確にするためにのみなされたものであり、その記述から不必要な限定をすべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16