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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】走査プローブシステム
(51)【国際特許分類】
   G01Q 60/46 20100101AFI20250401BHJP
【FI】
G01Q60/46
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2022532881
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(86)【国際出願番号】 GB2020053067
(87)【国際公開番号】W WO2021111114
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-11-13
(31)【優先権主張番号】1917596.7
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513193875
【氏名又は名称】インフィニテシマ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンフリス,アンドリュー
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-544019(JP,A)
【文献】特開2008-224412(JP,A)
【文献】特表2014-504737(JP,A)
【文献】特開平08-136552(JP,A)
【文献】特開2010-066140(JP,A)
【文献】米国特許第11959936(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01Q 10/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査プローブシステムで試料を走査する方法であって、前記走査プローブシステムは、基部から自由端に延在するカンチレバーと、前記カンチレバーの前記自由端によって担持されるプローブ先端とを含むプローブを含み、前記方法は、
前記プローブを、前記試料が静電気力を前記プローブにかける測定位置に移動させることと、
前記測定位置において、測定電圧を前記走査プローブシステムに印加し、前記走査プローブシステムに印加される前記測定電圧を変動させ、前記測定位置における前記プローブ上の前記静電気力を低減するか又は無効にする相殺電圧値を測定するために、前記測定電圧の前記変動に対する前記プローブの反応を監視することと、
前記相殺電圧値が測定された後、前記相殺電圧値に基づくバイアス電圧を前記走査プローブシステムに印加する間、前記プローブで前記試料を走査することと、
を含み、
前記試料を前記プローブで走査することは、前記試料のトポグラフィを測定することを含む、方法。
【請求項2】
前記試料が静電気力を前記プローブにかける複数の測定位置に前記プローブを移動させることと、
各測定位置において、測定電圧を前記走査プローブシステムに印加し、前記走査プローブシステムに印加される前記測定電圧を変動させ、前記測定位置における前記プローブ上の前記静電気力を低減するか又は無効にするそれぞれの相殺電圧値を測定するために、前記測定電圧の前記変動に対する前記プローブの反応を監視することと、
前記相殺電圧値の少なくとも2つに基づいて前記バイアス電圧を判断することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料のエリアは、前記プローブで走査され、前記バイアス電圧は、前記試料の前記エリアの場所に基づいて判断される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記バイアス電圧は、前記試料の前記エリアの前記走査中に変動しない、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第1のバイアス電圧は、前記試料の第1のエリアの場所に基づいて判断され、前記第1
のバイアス電圧は、前記試料の前記第1のエリアの走査中に前記走査プローブシステムに印加され、
第2のバイアス電圧は、前記試料の第2のエリアの場所に基づいて判断され、前記第2のバイアス電圧は、前記試料の前記第2のエリアの走査中に前記走査プローブシステムに印加される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記バイアス電圧又は各バイアス電圧は、前記相殺電圧値から補間によって判断される、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記相殺電圧値は、前記プローブ先端が1μmより大きい距離だけ前記試料から離間した状態で、前記測定位置又は各測定位置において判断される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記試料が走査される前に、前記相殺電圧値又は各相殺電圧値を格納することをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記試料のエリアは、前記プローブで走査され、前記走査プローブシステムに印加される前記バイアス電圧は、前記試料の前記エリアの前記走査中に変動しない、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記プローブで前記試料を走査することは、前記試料にわたって一連の走査位置において前記試料の一連の走査測定を行うことを含み、各走査測定は、前記プローブ先端を前記試料に向かって移動させ、前記走査位置のそれぞれにおいて走査測定を行い、その後、前記プローブ先端を前記試料から離れて退避させることによって行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記走査プローブシステムに印加される前記バイアス電圧は、走査位置毎に変動しない、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
各走査測定について、前記走査プローブシステムに印加される前記バイアス電圧は、前記プローブ先端が前記試料に向かって移動するとき、及び前記プローブ先端が前記試料から離れて退避するとき、ほぼ一定のままである、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記測定電圧の前記変動は、前記プローブを偏向させ、前記プローブの前記偏向は、前記相殺電圧を判断するために監視される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記測定電圧の前記変動は、前記プローブの振動パラメータを変化させ、前記振動パラメータは、前記相殺電圧を判断するために監視される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記振動パラメータは、前記プローブの振動の位相、周波数又は振幅である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記測定電圧及び前記バイアス電圧は、前記プローブに印加される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記測定電圧及び前記バイアス電圧は、前記カンチレバーに印加される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記カンチレバーは、電気的絶縁障壁によって前記プローブ先端から分離された導電層
を含み、前記バイアス電圧は、前記導電層に印加される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記測定電圧及び前記バイアス電圧は、前記試料に近接した導体に印加される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記試料を前記プローブで走査することは、複数の画素を有する画像を生成するように前記プローブで前記試料を撮像することを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記走査プローブシステムに印加される前記バイアス電圧は、前記画像の各画素について同じである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
基部から自由端に延在するカンチレバーと、前記カンチレバーの前記自由端によって担持されるプローブ先端とを含むプローブを含む走査プローブシステムであって、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法を行うように配置される走査プローブシステム。
【請求項23】
前記バイアス電圧を前記プローブに印加するように配置される、請求項2に記載の走査プローブシステム。
【請求項24】
前記カンチレバーは、電気的絶縁障壁によって前記プローブ先端から分離された導電層を含み、前記走査プローブシステムは、前記バイアス電圧を前記導電層に印加するように配置される、請求項2に記載の走査プローブシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査プローブシステム及び走査プローブシステムで試料を走査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走査プローブ顕微鏡によって走査されるいくつかの試料は、電荷を生じる。この電荷は、走査プローブ顕微鏡によって行われる測定に深刻な影響を及ぼし得、より軽微な場合、得られる画像は、走査プローブと試料上の電荷との間の相互作用に起因して歪み、不正確になる。より重大な場合、走査プローブは、相互作用に起因して、好適な走査範囲内まで試料に近づくことすらできない。
【0003】
米国特許第8011230号明細書は、試料の帯電分布によって影響を受けない形状測定を行うことができる走査プローブ顕微鏡を開示している。帯電状態は、プローブと試料との間の相対的走査による測定中の走査と同期して、静電荷に起因するカンチレバーの撓み又は振動状態の変化を検出することによって監視される。この顕微鏡は、帯電分布の影響を相殺するように電位調整を行い、したがって放電に起因するプローブ又は試料の損傷を防止し、帯電分布に起因する測定誤差の低減を実現する。
【0004】
米国特許第8011230号明細書の顕微鏡に伴う問題は、この顕微鏡が走査と同期して帯電状態を監視するため、この監視が走査速度を減速させ得ることである。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の態様は、走査プローブシステムで試料を走査する方法を提供する。走査プローブシステムは、基部から自由端に延在するカンチレバーと、カンチレバーの自由端によって担持されるプローブ先端とを含むプローブを含む。本方法は、プローブを、試料が静電気力をプローブにかける測定位置に移動させることと、この測定位置において、測定電圧を走査プローブシステムに印加し、走査プローブシステムに印加される測定電圧を変動させ、測定位置におけるプローブ上の静電気力を低減するか又は無効にする相殺電圧値を測定するために、測定電圧の変動に対するプローブの反応を監視することと、相殺電圧値が測定された後、相殺電圧値に基づくバイアス電圧を走査プローブシステムに印加する間にプローブで試料を走査することとを含む。
【0006】
本発明の別の態様は、基部から自由端に延在するカンチレバーと、カンチレバーの自由端によって担持されるプローブ先端とを含むプローブを含む走査プローブシステムを提供し、この走査プローブシステムは、本発明の第1の態様の方法を行うように配置される。
【0007】
バイアス電圧は、試料がプローブで走査されるときの試料とプローブとの間の静電気力を低減し、理想的には静電気力を無効にする(すなわち静電気力をゼロにする)。
【0008】
走査と同期して帯電状態を監視する米国特許第8011230号明細書と異なり、本発明は、相殺電圧値が測定された後に試料を走査する。これは、試料が所定のバイアス電圧(すなわち所定のバイアス電圧の組)に基づいてより迅速に走査され得ることを意味する。通常、バイアス電圧は、試料のエリアの走査中に変動しないが、いくつかの実施形態では変動し得、例えば所定のバイアス電圧の組間で変動する。
【0009】
単一の相殺電圧値のみが測定され得る。代替的に、試料が走査される前に複数の相殺電圧値が測定され得る。
【0010】
任意選択的に、本方法は、試料が静電気力をプローブにかける複数の測定位置にプローブを移動させることと、各測定位置において、測定電圧を走査プローブシステムに印加し、走査プローブシステムに印加される測定電圧を変動させ、測定位置におけるプローブ上の静電気力を低減するか又は無効にするそれぞれの相殺電圧値を測定するために、測定電圧の変動に対するプローブの反応を監視することと、相殺電圧値の少なくとも2つに基づいてバイアス電圧を判断することとを含む。
【0011】
バイアス電圧は、走査される試料のエリアの場所を参照することなく判断され得る(例えば、相殺電圧値の平均として計算され得る)。より一般的には、試料のエリアは、プローブで走査され、バイアス電圧は、試料のエリアの場所(例えば、試料の中心からのその距離又はそのX,Y座標)に基づいて判断される。これは、試料の帯電状態がその表面全体にわたって変動しても、バイアス電圧がプローブ上の静電気力をより精密に相殺することを可能にする。
【0012】
いくつかの実施形態では、第1のバイアス電圧は、試料の第1のエリアの場所に基づいて判断され、第1のバイアス電圧は、試料の第1のエリアの走査中に走査プローブシステムに印加され、第2のバイアス電圧は、試料の第2のエリアの場所に基づいて判断され、第2のバイアス電圧は、試料の第2のエリアの走査中に走査プローブシステムに印加される。通常、第1及び第2のエリアは、互いに隣接しない。
【0013】
任意選択的に、そのバイアス電圧又は各バイアス電圧は、相殺電圧値から補間、例えば線形補間によって判断される。
【0014】
任意選択的に、相殺電圧値は、プローブ先端が1μmより大きい距離だけ試料から離間された状態で、その測定位置又は各測定位置において判断される。
【0015】
任意選択的に、本方法は、試料が走査される前に、その相殺電圧値又は各相殺電圧値を格納することをさらに含む。
【0016】
任意選択的に、試料のエリアは、プローブで走査され、走査プローブシステムに印加されるバイアス電圧は、試料のエリアの走査中に変動しない。代替的に、走査プローブシステムに印加されるバイアス電圧は、試料のエリアの走査中に変動し得る。
【0017】
任意選択的に、プローブで試料を走査することは、試料にわたって一連の走査位置において試料の一連の走査測定を行うことを含み、各走査測定は、プローブ先端を試料に向かって移動させ、走査位置のそれぞれにおいて走査測定を行い、その後、プローブ先端を試料から離れて退避させることによって行われる。各走査測定結果は、例えば、2次元画像の画素として使用され得る。走査プローブシステムに印加されるバイアス電圧は、走査位置毎に変動しなくてもよい。
【0018】
任意選択的に、各走査測定について、走査プローブシステムに印加されるバイアス電圧は、プローブ先端が試料に向かって移動するとき、及びプローブ先端が試料から離れて退避するとき、ほぼ一定のままである。
【0019】
試料をプローブで走査することは、複数の画素を有する画像を生成するように試料をプローブで撮像することを含み得る。通常、走査プローブシステムに印加されるバイアス電圧は、画像の各画素について同じである。
【0020】
試料をプローブで走査することは、試料のトポグラフィ又は試料の他のいくつかの特性
を測定することを含み得る。
【0021】
試料をプローブで走査することは、試料とプローブとの間の横又は水平方向走査運動を生成することを含み得る。走査運動は、プローブを移動させること及び/又は試料を移動させることによって生成され得る。走査運動は、例えば、ラスタパターンに追随し得る。
【0022】
バイアス電圧は、相殺電圧値に基づく大きさ及び符号を有し得る。
【0023】
任意選択的に、測定電圧の変動は、プローブを偏向させ、プローブの偏向は、相殺電圧を判断するために監視される。監視される偏向は、固定軸に対するカンチレバーの角度であり得る。
【0024】
代替的に、測定電圧の変動は、プローブの振動パラメータ(例えば、プローブの振動の位相、周波数又は振幅)を変化させ得、及び振動パラメータは、相殺電圧を判断するために監視される。
【0025】
測定電圧及びバイアス電圧は、プローブに印加され得、最も好適には、それらは、カンチレバーに印加される。
【0026】
代替的に、測定電圧及びバイアス電圧は、試料に近接した導体に印加され得る。例えば、試料に近接する導体は、導電板であり得る。導電板は、試料上に設けられ得る。導電板は、プローブに対して試料の反対側に設けられ得る。導体は、試料を担持するステージであり得る。
【0027】
バイアス電圧を走査プローブシステムに印加することは、バイアス電圧を試料に直接印加することを追加的又は代替的に含み得る。
【0028】
任意選択的に、カンチレバーは、電気的絶縁障壁によってプローブ先端から分離された導電層を含み、バイアス電圧は、導電層に印加される。プローブは、導電層からプローブ先端への導電性経路がないように配置又は構築され得る。電気的絶縁障壁は、カンチレバーの本体であり得る。
【0029】
試料がプローブで走査されると、導電層は、周期的屈曲運動をプローブに与えるために照射され得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
ここで、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0031】
図1】本発明の一実施形態による走査プローブシステムのいくつかの要素を示す。
図2図1の実施形態による走査プローブシステムの事前走査操作を示す。
図3】本発明の別の実施形態による走査プローブシステムの経時的な振動振幅の変化を示す。
図4】プローブを詳細に示す。
図5図1のシステムの走査及び撮像要素を示す。
図6】本発明の別の実施形態による走査プローブシステムのいくつかの要素を示す。
図7】2つの測定位置を有するウェハを示す。
図8図7の測定位置の相殺電圧値を示す。
図9】4つの測定位置を有するウェハを示す。
図10図9の測定位置の相殺電圧値を示す。
図11】測定位置の粗正方形グリッドを有するウェハを示す。
図12図11の測定位置のいくつかの位置の相殺電圧値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の第1の実施形態による走査プローブシステム50(例えば、走査プローブ顕微鏡)が図1に示される。走査プローブシステム50のいくつかの走査及び撮像要素は、明暸性のために図1では省略されるが、図5に示される。同様に、走査プローブシステム50のいくつかの要素は、明暸性のために図5では省略されるが、図1に示される。
【0033】
走査プローブシステム50は、ドライバ4と、カンチレバー2及びプローブ先端3を含むプローブとを含む。ドライバ4の最下部は、プローブの支持体を提供し、カンチレバー2は、基部2aからドライバ4から自由端2bに延在する。プローブ先端3は、カンチレバー2の自由端2bによって担持される。
【0034】
プローブ先端3は、3次元、多くの場合に円錐状又はピラミッド構造を含む。プローブ先端は、調査下の表面との相互作用のその最近接点である点に向かって先細りである。カンチレバー2は、プローブ先端3を除いて梁自体であり、プローブ先端3をその自由端2bにおいて支持し、及びその基部2aは、ドライバ4によって保持される。
【0035】
カンチレバー2及びプローブ先端3は、図1又は他の図面のいずれでも原寸に比例して示されていないことに留意されたい。
【0036】
プローブは、通常、シリコン、酸化シリコン又は窒化シリコンなどの絶縁体で作製される。通常、カンチレバー2は、約50~200μm長、20~50μm幅及び約0.2~2μm厚さであるが、このサイズは、当然のことながら、用途に従って変更され得る。形状も変更され得、通常、矩形又は三角形であり、後者の場合、その頂点の近傍の先端は、三角形である。プローブ先端3は、通常、カーボンで作られ、通常、その基部において5μmであり、3~10μmの高さ及び2~20nmの先端曲率を有する。使用中、プローブ先端の末端における細い先は、サンプル7に向かって配向される。代替的に、プローブは、約5~20μm長及び約3~10μm幅を有し、それに応じてより小さい先端を有するカンチレバーを有し得る。
【0037】
ドライバ4は、駆動信号に従ってZ方向に上下に伸縮する圧電アクチュエータであり得る。通常、ドライバ4は、撓み(図示せず)によって機械的に誘導される。
【0038】
プローブの角度及びしたがってその偏向を光学的レバーによって検出する検出器20が設けられる。検出器20は、感知ビーム21をカンチレバー2上に向けるレーザを含み、反射ビーム22は、多く(通常、4つ)のセグメントに分割されるセグメント化フォトダイオード23に落ちる。カンチレバー2の角度が変化する場合、フォトダイオード23上の反射ビーム22の位置も変化する。したがって、セグメント化フォトダイオード23のセグメントの相対的出力は、感知ビーム21に対するカンチレバー2の角度の指標を与える。これは、出力線24上に角度信号として出力される。検出器20は、プローブ先端3の高さを判断するために干渉計を均等に使用し得る。
【0039】
角度信号は、偏向プロセッサ26において受信され、偏向プロセッサ26は、フォトダイオード23から出力される角度信号を解析し、走査プローブシステムに印加される相殺電圧値(すなわちプローブ上の静電気力を無効にする電位差)をカンチレバー2の偏角に基づいて判断する。印加される相殺電圧値を指示する信号は、出力線28に沿って送信され、電圧発生器30によって受信される。相殺電圧値を指示する信号に基づいて、電圧発生器30は、バイアス電圧を判断し、このバイアス電圧を走査プローブシステムに印加す
る。図示の実施形態では、バイアス電圧は、サンプル7を担持するステージ32に印加される。
【0040】
相殺電圧値が上述のように判断された後、試料は、バイアス電圧を走査プローブシステムに同時に印加する間にプローブで走査される。図5は、試料を走査し、画像を取得するために必要とされる走査プローブシステム50の様々な要素を示す。走査プローブシステム50の走査及び撮像要素の詳細な説明は、参照によりその内容が本明細書に援用される国際公開第2012/104625号パンフレットに見出すことができる。
【0041】
走査過程中、カンチレバー2は、活性化ビームによってカンチレバーを照射するレーザ照射器45によって駆動され、活性化ビームは、プローブ先端3がカンチレバーの基部2aに対して下方に移動するように、カンチレバー2を加熱して、その長さに沿って下方に曲げさせる。この場合、好適には、カンチレバー2は、図4に示すようにその上面に金メッキ202を有する窒化シリコン梁204である。この金メッキは、活性化ビームによって加熱されると、窒化シリコン材料を上回って熱的に膨張する。したがって、活性化ビームの強度のいかなる修正もカンチレバー2を加熱又は冷却させ、これによりカンチレバー2をドライバ4に対して下方に曲げるか又は上方に伸ばす。
【0042】
カンチレバー2は、活性化ビームがオンにされると、試料に向かって下方に曲がり、活性化ビームがオフにされると、試料から離れて上方に伸び、及びカンチレバーは、より弛緩した状態を取る。しかし、反対の配置が配備され得、すなわち、カンチレバーは、活性化ビームがオンにされると、試料から離れて上方に曲がり、活性化ビームがオフにされると、試料に向かって下方に伸びることが理解される。これは、カンチレバーの上面よりむしろ下面上に金メッキ202を置くことによって実現され得る。
【0043】
照射器45は、第2のドライバ入力における第2の駆動信号に従ってカンチレバー2を移動させるように配置される。第2の駆動信号は、波形発生器54によって生成される。
【0044】
試料とプローブとの間の走査運動は、ステージ32を移動させる圧電XYアクチュエータ44によって生成され得る。したがって、XY面内のプローブと試料との間の相対的な横又は水平方向走査運動は、プローブの運動よりむしろサンプル7の運動によって生成される。別の実施形態では、XY面内の相対的走査運動は、代わりに、プローブの運動によって生成され得る(試料は、静止したままである)。
【0045】
試料の走査中のプローブ周期的屈曲運動は、照射器45を制御する波形発生器54によって生成される。プローブ周期的運動は、カンチレバーの共振周波数より低い周波数に設定される。プローブ運動は、それがプローブ先端を試料表面に向かって次に試料表面から離れて反復的に運ぶことを条件として、定期的又は非定期的であり得る。換言すれば、プローブ先端の往復運動のサイクルは、例えば、画素の規則的に離間されたグリッドをサンプリングするのではなく、試料の表面全体にわたって不規則間隔で離間された様々な点をサンプリングするために、一定の期間だけ時間的に離間されるか、又は一定でない期間だけ離間され得る。
【0046】
測定の過程中、プローブは、照射器45によって循環され、表面が検出されるまで試料表面に向かって移動され、表面が検出された時点において、プローブが退避され、及びその高さが表面検出の時点で記録される。次に、表面高さの画像は、x,yドライバ44の制御下でプローブを移動させながらこの過程を繰り返すことにより、通常、任意のx,yシーケンスが追随される可能性があるが、ラスタパターンに続いて生成される。
【0047】
ドライバ4は、表面の上のプローブの基部の高さを制御し、プローブ周期的振幅を設定
基準レベルに維持するように操作され、ここで、「プローブ周期的振幅」は、完全退避位置と表面検出の時点との間のサイクル毎の高さの差である。さらに、ドライバ4は、プローブ周期運動を十分に超える範囲を有し、したがって試料傾斜及び特徴全体が調整されることを可能にする。
【0048】
プローブの高さは、干渉法高さ検出器52によって測定される。干渉法高さ検出器52から取得される信号は、2つの解析計算に付される。フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)は、必要な処理能力を提供するために構成される。当技術分野で知れられているように、ディジタル信号処理(DSP)又は専用アナログ若しくはディジタル電子的方法などの代替信号処理技術が使用され得る。
【0049】
プローブ周期運動は、通常、数十~数百kHzの周波数範囲を有し、及びデータ記録のためのサンプリング周波数は、100MHzの領域内である。その結果、プローブ運動の各サイクルは、必要とされる情報を取得するために高さ検知器信号を解析するのに十分過ぎる1000~10,000回の範囲内でサンプリングされる。2つの解析計算は、単一のFPGA内で行われ得るが、明瞭性のために、別個の処理ユニットによって行われるものとして図5に示される。
【0050】
プローブ周期的振幅処理ユニット56は、顕微鏡のz位置調整システムおける使用のためのデータを抽出するために使用される。高さ信号内のプローブ周期の振幅は、抽出され、z調整を判断するためのパラメータとして使用され得る。ドライバ4の調整を指示する、プローブ周期的振幅処理ユニット56からの出力は、フィードバックコントローラ58に入力され、フィードバックコントローラは、プローブ周期の振幅をその設定点に戻すためにプローブの基部を移動させる。
【0051】
表面検出ユニット60は、第2の解析計算を行い、第2の解析計算は、プローブ先端が試料表面と相互作用する周期内の点の指標を提供する。プローブ速度又は均等に高さ信号の変化率は、プローブ先端が表面に衝突して表面と相互作用し始めると低下する。したがって、表面位置の指標は、その変化率が設定期間にわたって閾値レベルを下回る各周期内の点から抽出される。
【0052】
表面検出ユニット60の出力は、プローブ周期の各周期内で表面と相互作用するプローブの高さである。すなわち、これは、画像を構築するために使用され得るプローブのx,y位置における表面高さの測度を提供する。測定された表面高さを表す各データ点は、走査コントローラ/画像プロセッサ46に出力される。この測定結果は、画像プロセッサ46内の走査x,y位置にマッピングされるため、画像上の点又は画素を形成する。
【0053】
表面検出の点が判断されると、表面検出ユニット60は、トリガ信号を波形発生器54に送信する。それに応答して、波形発生器54は、プローブ先端を試料から離れて退避させるために、照射器45に送信される信号を修正する。
【0054】
ここで、本発明の一実施形態による相殺電圧値を判断する方法が図2A~2Cを参照して説明される。図2Aは、プローブがサンプル7から比較的遠い距離において始まるが、ドライバ4によってサンプル7に向かって移動される第1の時間を示す。比較的遠い距離では、カンチレバー2は、第1の角度又は偏向値αを有する。
【0055】
サンプル7の上面は、電荷を担持する。この実施形態では、電荷は、正電荷である。ステージ32は、導電材料(アルミニウムなど)で作られ、電圧がワイヤ34によってステージ32に印加され得るようにワイヤ34によって電圧発生器30に接続される。この第1の時間では、電圧は、ステージ32に印加されない。
【0056】
図2Bは、プローブが、サンプル7のより近くに、試料が静電気力をプローブにかける測定位置へと移動されたその後の時間を示す。具体的には、正に帯電された試料がプローブ先端上に負のミラー電荷を誘起し、及びプローブ先端と試料との間の電位差が誘引静電気力を引き起こす。この誘引静電気力は、カンチレバー2を第2の角度又は偏向値βまで下方に曲げさせる。
【0057】
静電相互作用は、比較的大きい長さスケールで発生する。試料がプローブ上に静電気力をかける図2Bの測定位置では、プローブ及びサンプル7は、1~10μm程度の距離だけ離される。
【0058】
図2Bの測定位置におけるプローブにより、測定電圧が電圧発生器30によってステージ32に印加される。この測定電圧は、最初に低く、次に例えば+1Vまで上昇する。測定電圧が上昇すると、偏向プロセッサ26は、測定電圧の増加に対するプローブの反応を監視する。試料は、正に帯電され、及び測定電圧も正(+1V)であるため、プローブ先端と試料との間の電位差の増加は、プローブをさらに下方に曲げさせる。換言すれば、正の測定電圧は、プローブ上の静電気力を低下させるよりむしろ増加させる。
【0059】
これが当てはまると判断されると、測定電圧は、ゼロに戻され、次に例えば-1Vまで低下される。このような負の印加電圧は、測定位置におけるプローブ上の静電気力を低減するため、プローブは、再び上方に曲がり始める。測定電圧が低下し続けると、偏向プロセッサ26は、プローブがその第1の角度又は偏向値αまで再び上方に曲がるまでプローブの反応を監視する。この時点において、測定電圧は、試料によってプローブにかけられる静電気力を完全に相殺するか又は無効にしている。この時点の測定電圧は、相殺電圧値としてメモリ内に記録される。この相殺電圧値は、大きさ(例えば、30V)だけでなく、符号(この場合には負)も有することに留意されたい。
【0060】
この過程は、第1の角度又は偏向値αに基づいて設定点に戻るように測定電圧を変動させるフィードバックループによって行われ得る。
【0061】
測定電圧が最初に(上昇されるのではなく)低下される場合、この例では、測定過程中にその符号を変更することが必要でなくなる。換言すれば、試料上の電荷の極性は、知られていないため、最初に測定電圧を正しい方向に上昇させる50%の機会がある。
【0062】
この場合、負電圧がステージ32に印加されるが、負電荷が試料上に存在する場合、正電圧がステージ32に印加されるであろう。
【0063】
次に、試料は、バイアス電圧を走査プローブシステムに同時に印加する間にプローブで走査される。ステージ32に印加される電圧は、試料がプローブで走査されている間、維持される。プローブでサンプル7を走査するために、プローブは、サンプル7の極近傍に運ばれなければならない。これは、試料の、μmではなくnm範囲内にプローブを移動させることを伴い得る。これらの短距離では、バイアス電圧は、試料に由来する静電気力を完全に無効にしなくてもよいが、依然として少なくとも部分的にそれに対抗する。
【0064】
一実施形態では、単一の電圧測定のみが行われ、バイアス電圧の大きさ及び符号は、試料走査の全期間中に一定である。試料が、複数の画素を有する画像を生成するために撮像される場合、印加バイアス電圧は、各画素について同じであり得る。
【0065】
別の実施形態では、複数の電圧測定が行われ得、各測定は、試料上の異なる点で行われ得る。例えば、1つの相殺電圧値測定は、試料の中央で行われ、別の測定は、試料の端の
近くで行われ得る。次に、試料の走査中の印加バイアス電圧は、それに応じて選択され得る。例えば、相殺電圧値が試料の中央において高く、試料の端の近くで低く測定される場合、印加バイアス電圧は、走査されている試料のエリアに依存して、それに応じて変動し得る。
【0066】
図3は、相殺電圧値を測定するためにプローブを使用する代替方法を示す。図1及び2の実施形態では、プローブは、振動しておらず、プローブ偏角が測定される。この実施形態では、プローブは、振動しており、プローブの振動の振幅が測定される。図3は、どのようにプローブの振動の振幅が経時的に変化するかを示す。
【0067】
第1の期間102中、プローブは、第1の振幅で振動する。図2の実施形態と同様に、プローブは、最初に、電荷を担持する試料から相対的に遠い距離に位置する。
【0068】
103によって指示される時点において、プローブは、試料に向かって測定位置に移動され、及び振動のその振幅は、プローブと、帯電された試料との間の静電相互作用に起因して低下する。プローブは、このより低い振幅で期間104全体にわたって振動する。
【0069】
この実施形態では、プローブの振動は、干渉計又はセグメント化フォトダイオードによって検出され、干渉計又はセグメント化フォトダイオードは、この振動信号を振幅プロセッサに出力し、振幅プロセッサは、振動信号を解析し、振動の振幅だけでなく、経時的な振動の振幅の変化も判断する。補正を必要とする振動振幅の変化(すなわちプローブ上に静電気力をかける試料上の電荷に起因する)を指示する信号を受信した後、振幅プロセッサは、走査プローブシステムに印加されるバイアス電圧を増加するための信号を電圧発生器30に送信する。期間106から分かるように、走査プローブシステムに印加されるバイアス電圧は、振動の振幅がその初期値に戻されるまで増加される。振幅プロセッサは、フィードバックループ内の電圧発生器と協働し、いずれの時点で振幅がその初期値に戻ったかを判断するためにプローブの振動の振幅を監視する。
【0070】
プローブは、バイアス電圧が走査プローブシステムに同時に印加される間に試料を走査し、バイアス電圧の大きさ及び符号は、振幅をその初期値に戻らせた測定された相殺電圧値に基づく。
【0071】
この場合、振動の振幅は、相殺電圧値を判断するために監視されるが、他の例では、プローブの振動の周波数又は位相が代わりに監視され得る。
【0072】
上記で説明された実施形態では、バイアス電圧は、試料を担持する走査プローブシステムのステージ32に印加されるが、バイアス電圧は、代替的に又は追加的に、走査プローブシステムの任意の他の部分に印加され得る。図4に示すように、プローブは、カンチレバー梁204の上面を被覆する金層202を含む。したがって、走査プローブシステムに印加されるバイアス電圧は、代わりに、この金層202に印加され得る。この場合、プローブに印加されるバイアス電圧は、試料の電圧と同じ極性になる(すなわち、試料が正電圧を有する場合、プローブも正電圧まで上昇され、逆も同様である)。これは、ステージ32が試料と反対極性の電圧で印加される前述の実施形態と対照的である。
【0073】
図6は、図1に示す走査プローブシステム50と同様の走査プローブシステム50aを示す。同じ特徴は、同じ参照番号を有し、再び説明されない。この場合、電圧発生器30は、電圧をステージ32よりむしろカンチレバー梁2に印加する。
【0074】
バイアス電圧が電圧発生器30によって印加される金層202をプローブが含む場合、金層202は、電気的絶縁障壁によってプローブ先端3から分離されるべきである。これ
は、電荷がプローブ先端3上に蓄積する場合、プローブ先端と試料との間に流れる電流に起因してプローブ先端又は試料の損傷が引き起こされる可能性があるためである。電気的絶縁障壁としての使用に好適な典型的絶縁体は、シリコン、酸化シリコン又は窒化シリコンであり、したがって、先に述べたように、カンチレバー梁204は、既に前記絶縁材料から作られ得るため、カンチレバー梁204の上側に直接金層202を単純に塗布することが構築の観点から有利であり得る。それにもかかわらず、上述の理由のため、金層202とプローブ先端3との間に導電路が存在しないことが重要である。
【0075】
ステージ32に印加されるバイアス電圧は、プローブが測定位置(例えば、試料から5μm)にある場合、試料に由来する静電気力を完全に無効にし得るが、プローブ先端が試料のより近くに移動するにつれてそれほど効果的でなくなる。この理由のため、図6に示すように、バイアス電圧をプローブに印加することは、それが広範囲の距離にわたって効果的なままであるべきであるため、好ましいことがある。
【0076】
他方で、図1の配置は、電圧をプローブに印加することが困難である場合、他の事例において好ましいことがある。
【0077】
図7図12は、上述の走査プローブシステムでサンプル150を走査する様々な異なる方法を示す。試料は、径300mの円形ウェハである。
【0078】
最も単純な例では、単一の相殺電圧値のみが例えばウェハの中央の測定位置151又は端の測定位置152で測定される。この場合、ウェハの走査中に走査プローブシステムに印加されるバイアス電圧は、この単一の相殺電圧値のみに基づく。例えば、ウェハの走査中に走査プローブシステムに印加されるバイアス電圧は、この単一の相殺電圧値と同じ大きさ及び符号を有し得る。
【0079】
図7及び8の例では、以下の2つの相殺電圧値が測定される。一方は、ウェハの中央の測定位置151における相殺電圧値(V)であり、他方は、端の測定位置152における相殺電圧値(V)である。図8は、これらの相殺電圧値を示す。電圧は、端より中央においてより低いことに留意されたい。
【0080】
図8の2つの相殺電圧値が測定された後、試料の第1及び第2の非隣接撮像エリア153、154が走査される。
【0081】
第1の撮像エリア153が走査される前に、第1のバイアス電圧Vは、図8に示すように、2つの相殺電圧値V、Vと、ウェハの中央からの第1の撮像エリア153の距離Rとに基づいて線形補間によって判断される。この第1のバイアス電圧Vは、第1の撮像エリア153の走査全体にわたって走査プローブシステムに印加される。
【0082】
同様に、第2の撮像エリア154が走査される前に、第2のバイアス電圧Vは、図8に示すように、2つの相殺電圧値V、Vと、ウェハの中央からの第2の撮像エリア154の距離Rとに基づいて線形補間によって判断される。この第2のバイアス電圧Vは、第2の撮像エリア154の走査全体にわたって走査プローブシステムに印加される。
【0083】
各撮像エリア153、154は、通常、1~10μm程度の辺を有する正方形であり、したがって、図7は、原寸に比例してない。撮像エリア153、154のサイズは、非常に小さいため、試料の電圧が撮像エリア全体にわたって著しく変動しないと仮定される。したがって、バイアス電圧は、撮像エリア153、154のいずれのエリアの走査中にも変動しない。
【0084】
各撮像エリア153、154は、エリア153、154全体にわたって一連の走査位置において試料の一連の走査測定を行うことによって走査され、各走査測定は、それぞれの画素に対応する。各走査測定は、プローブ先端を試料に向かって移動させることにより、走査位置のそれぞれの1つにおける干渉法高さ検出器52から走査測定を行うことにより、次にプローブ先端を試料から退避させることにより行われる。各撮像エリア153、154に関して、走査プローブシステムに印加されるバイアス電圧は、走査位置毎に変動しない。バイアス電圧はまた、プローブ先端が走査測定前に試料に向かって移動するとき、及びプローブ先端が走査測定後に試料から離れて退避するとき、ほぼ一定のままである。
【0085】
図9の例では、以下の4つの相殺電圧値が測定される。1つは、ウェハの中央の測定位置151におけるものであり、及び他方は、端の測定位置152におけるものであり、並びにその中間位置における2つのものである。図10は、これらの相殺電圧値を示す。この場合、電圧は、端より中央においてより低い。
【0086】
第1の撮像エリア153が走査される前に、第1のバイアス電圧Vは、図9に示すように、2つの中間相殺電圧値と、ウェハの中央からの第1の撮像エリア153の距離Rとに基づいて線形補間によって判断される。次に、この第1のバイアス電圧Vは、第1の撮像エリア153の走査全体にわたって走査プローブシステムに印加される。
【0087】
同様に、第2の撮像エリア154が走査される前に、第2のバイアス電圧Vは、図10に示すように、2つの最も高い相殺電圧値と、ウェハの中央からの第2の撮像エリア154の距離Rとに基づいて線形補間によって判断される。この第2のバイアス電圧Vは、第2の撮像エリア154の走査全体にわたって走査プローブシステムに印加される。
【0088】
図9及び10の方法は、電圧が半径方向に対称的な方法でサンプル150全体にわたって変動すると仮定する。図11及び12は、電圧がサンプル150全体にわたってより非一様的に変動する代替方法を示す。
【0089】
図11の例では、相殺電圧値は、粗い正方形グリッド(ほぼ50mm正方形)上のサンプル150全体にわたって測定される。図12は、ウェハの中央全体にわたって測定された半径方向に対称的でない7つの相殺電圧値を示す。
【0090】
座標X,Yを有する撮像エリア155が走査される前に、バイアス電圧は、撮像エリア155のX,Y座標に基づいて、撮像エリア155に最も近いグリッド内の4つの測定位置156において測定された相殺電圧値に基づいて線形補間によって判断される。このバイアス電圧は、撮像エリア155の走査全体にわたって走査プローブシステムに印加される。
【0091】
上記の例では、バイアス電圧値は、線形補間によって計算されるが、複数の測定された相殺電圧値からバイアス電圧を判断する他の方法が使用され得る。例えば、非線形補間、多項式曲線を相殺電圧値にフィッティングすること又は相殺電圧値のすべての値の平均を取ることである。
【0092】
上記の実施形態では、試料をプローブで走査することが言及された。「走査すること」により、プローブと試料との間に相対的水平運動があることを意味する。これは、プローブが試料の表面を横断する間、試料が静止状態に維持されることを意味し得るか、又は試料が横方向に移動される間、プローブが静止状態に保持されることを均等に意味し得る。
【0093】
加えて、前述の実施形態では、相殺電圧値は、プローブが試料との走査近接状態(すなわち試料のnm範囲内)に移動される前に判断されるが、相殺電圧値は、プローブが試料
との走査近接状態(すなわち試料のnm範囲内)にあるときにのみ均等に測定及び印加され得る。
【0094】
図面に示され、本文において説明された電子要素(例えば、偏向プロセッサ26;電圧発生器30;振幅プロセッサなど)のそれぞれは、例えば、ハードウェア及びソフトウェアの任意の組み合わせを含むハードウェア、ソフトウェア又は他のいずれかのものとして実現され得る。一例として、単一フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)若しくはデジタルシグナルプロセッサ(DSP)又は複数のFPGA若しくはDSPは、電子要素のすべてを実現する可能性があるか、又は各電子要素は、専用FPGA若しくはDSP又はFPGA若しくはDSPの任意の組み合わせによって実現される可能性がある。
【0095】
本発明は、1つ又は複数の好ましい実施形態を参照して上記で説明されたが、添付の特許請求の範囲において定義されるように、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更形態又は修正形態がなされ得ることが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12