(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】光タッチレスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01V 8/12 20060101AFI20250401BHJP
G06F 3/02 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
G01V8/12 J
G06F3/02 D
(21)【出願番号】P 2024167784
(22)【出願日】2024-09-26
【審査請求日】2024-09-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】313002362
【氏名又は名称】▲高▼山 正法
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 正法
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-189582(JP,A)
【文献】国際公開第2011/064860(WO,A1)
【文献】特開2013-058596(JP,A)
【文献】特開2013-195355(JP,A)
【文献】特開平03-073611(JP,A)
【文献】特開2016-191568(JP,A)
【文献】特開2013-210357(JP,A)
【文献】特開2006-047247(JP,A)
【文献】国際公開第2015/045587(WO,A1)
【文献】特開2009-168492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00-15/00;99/00
G06F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光タッチレスセンサであって、
決められた照射方向に光を照射する発光素子と、前記照射方向から到来する光を受光する受光素子と備えるセンサユニットと
前記発光素子の非発光時における前記受光素子での受光レベルである非発光時レベル、及び前記発光素子の発光時における前記受光素子の受光レベルである発光時レベルを測定し、前記非発光時レベルと前記発光時レベルとの差分を表す検出レベルに従って、検知範囲内における操作物体の有無を判定するように構成された制御部と、
を備え、
前記非発光時レベルと前記発光時レベルとの測定タイミングのずれは、
0.1~100μsに設定された
光タッチレスセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載の光タッチレスセンサであって、
前記受光素子の指向性は、前記検知範囲にある前記操作物体によって受光ビームが遮られるように設定され、
前記検知範囲に前記操作物体が存在する状況にて測定される前記発光時レベル及び前記非発光時レベルが、前記発光時レベルの方が前記非発光時レベルより大きくなるように前記発光素子の発光強度が設定された、
光タッチレスセンサ。
【請求項3】
請求項1に記載の光タッチレスセンサであって、
前記発光素子は、発光による熱損失が、該発光素子の許容値以下となるように、照射光のパルス幅、発光間隔、及び発光強度が設定された、
光タッチレスセンサ。
【請求項4】
請求項1に記載の光タッチレスセンサであって、
前記センサユニットは、前記発光素子及び前記受光素子を収納し、前記発光素子及び前記受光素子によって発光及び受光される光を通過させるための開口部を有した筐体を備え、
前記開口部は、前記操作物体によって全体が覆われる大きさに形成された、
光タッチレスセンサ。
【請求項5】
請求項4に記載の光タッチレスセンサであって、
前記センサユニットは、前記発光素子及び前記受光素子によって発光及び受光される光を透過する材料で形成され、前記開口部を覆うように構成された操作パネルを更に備え、
前記検知範囲内に前記操作物体が存在しない状況にて測定される前記非発光時レベル及び前記発光時レベルに基づいて、前記センサユニットの状態を診断するように構成された診断部を更に備える
光タッチレスセンサ。
【請求項6】
請求項1に記載の光タッチレスセンサであって、
前記操作物体は、手の指先である
光タッチレスセンサ。
【請求項7】
請求項1に記載の光タッチレスセンサであって、
個別に操作される複数の前記センサユニットを有するセンサユニット群を備え、
前記制御部は、前記センサユニット群に属する前記センサユニットのうち、前記検出レベルが最大となる前記センサユニットを対象センサユニット、前記検出レベルが2番目に大きい前記センサユニットを比較センサユニットとし、前記対象センサユニットの前記検出レベルが検知閾値以上であり、且つ、前記対象センサユニットの前記検出レベルと前記比較センサユニットの前記検出レベルとの差が有効性判定閾値以上であることを選択条件として、前記選択条件が成立する場合に、前記対象センサユニットに対する操作が行われたと判定する
光タッチレスセンサ。
【請求項8】
請求項7に記載の光タッチレスセンサであって、
前記センサユニット毎に、複数の表示態様で表示を行うように構成されたユニット表示部を更に備え、
前記制御部は、前記対象センサユニットの前記ユニット表示部に、前記対象センサユニットであることを示す第1の態様での表示である仮選択表示を行い、前記選択条件が成立した場合に、前記対象センサユニットの前記ユニット表示部に、前記第1の態様とは異なる第2の態様での表示である選択表示を行うように構成された、
光タッチレスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光タッチレスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、光タッチレスセンサにおいて、発光素子を発光させた第1の検出状態における受光素子での検出信号と、発光素子を非発光とした第2の検出状態における受光素子での検出信号とを用いて、これらの信号を加工することで、外部環境に応じた背景光の影響を除去する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、光タッチレスセンサを操作する人の手等の被検出体の動きの特徴に着目して、数百ms単位で検出タイミングの異なる信号同士を比較するような処理を行っている。このため、例えば、太陽の直射日光下で、街路樹、ビル群の日向と日影のある道路を、時速100Kmで走行するような車内では、光タッチレスセンサを正確に動作させることが困難であるという課題があった。すなわち、上述のような環境下では、背景光が短時間で急激に変化するため、従来技術では、異なる外部環境下で検出された信号同士を比較することになり、背景光成分を除去できず、判定精度が劣化するのである。また、上述の環境下では、太陽光に負けない強度で発光素子を発光させる必要があり、そのような強度で発光し続けると、熱損失により発光素子が故障してしまうという課題もあった。
【0005】
本開示の1つの局面は、短い間隔で急激に背景光が変化する環境であっても、正常に動作する光タッチレスセンサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、光タッチレスセンサであって、センサユニットと、制御部と、を備える。センサユニットは、決められた照射方向に光を照射する発光素子と、照射方向から到来する光を受光する受光素子と備える。制御部は、発光素子の非発光時における受光素子での受光レベルである非発光時レベル、及び発光素子の発光時における受光素子の受光レベルである発光時レベルを測定する。また、制御部は、非発光時レベルと発光時レベルとの差分を表す検出レベルに従って、検知範囲内における操作物体の有無を判定するように構成される。非発光時レベルと発光時レベルとの測定タイミングのずれは、当該光タッチレスセンサを搭載する移動体が設定速度で移動していたとしても、移動体の外部環境における移動体の位置が同一であるとみなせる時間幅に設定される。
【0007】
このような構成によれば、非発光時レベル及び発光時レベルの測定が、外部環境における移動体の位置が同一であると見なせる状況下、すなわち、同一の背景光の下で行われる。従って、検出レベルの算出精度、ひいては、操作物体によるタッチレス操作の有無の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の光タッチレスセンサの機能構成を示すブロック図である。
【
図2】センサユニットの外観、及び一部を拡大した断面を示す説明図である。
【
図3】センサユニットのサイズ、及び使用方法を示す説明図である。
【
図5】光タッチレスセンサの全体動作を示すタイミング図である。
【
図7】出力処理による出力を例示するタイミング図である。
【
図10】計測値と診断結果との対応を示す説明図である。
【
図11】第2実施形態の光タッチレスセンサの機能構成を示すブロック図である。
【
図13】光タッチレスセンサの使用状態を例示する説明図である。
【
図15】センサ群を構成する各センサユニットの検知レベルを例示するグラフである。
【
図16】検知レベルからセンサユニットに対する操作の有無を判定する閾値にヒステリシスを持たせた場合の出力を例示するタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す光タッチレスセンサ1は、操作パネルに指先を接近させることで、操作パネルに触れることなく、指先による操作を検出して、検出信号を制御対象100に提供する。
【0010】
光タッチレスセンサ1は、センサユニット2と、制御部3とを備える。光タッチレスセンサ1は、出力機能設定部4と、外部表示部5と、近接センサ6とを備えていてもよい。
センサユニット2は、素子部21と、ユニット表示部22とを備える。
【0011】
図2に示すように、素子部21は、発光素子211と受光素子212とを備える。発光素子211は、例えば、赤外線発光ダイオード(以下、IRLED)が用いられる。受光素子212は、例えば、発光素子211が照射する光(以下、照射光)の周波数帯を受光範囲に含むフォトダイオードが用いられる。受光素子212は、フォトダイオードに限定されるものではなく、フォトトランジスタ、CdSセル等を用いてもよい。照射光は、例えば、波長800nm~1000nm程度の近赤外線を使用するが、必ずしも赤外線である必要はない。
【0012】
センサユニット2は、筐体23と、操作パネル24とを備える。筐体23は、照射光を透過しない材料で形成される。筐体23は、発光面及び受光面となる筐体23の一つの面(以下、筐体上面)23aに、照射光を通過させるための開口部を有する二つの収納空間を備える。発光素子211及び受光素子212は、二つの収納空間に個別に収納される。つまり、発光素子211は、収納空間の底から開口部に向かう方向を照射方向として光を照射する。受光素子212は、前記照射方向から到来する光を受光する。
【0013】
操作パネル24は、照射光を透過する材料で形成された板状の部材である。操作パネル24は、筐体上面23aを覆い、且つ、筐体23に収納された発光素子211及び受光素子212が、該操作パネル24の中央付近に位置するように取り付けられる。操作パネル24は、センサユニット2に対応づけられた機能等を示す文字、数字、図形などが印刷されていてもよい。印刷には、照射光である赤外線を透過する特性を有するインク又は塗料が用いられてもよい。また、操作パネル24は、黒色等の色付きで且つ照射光である赤外線を透過する特性を有するアクリル板等を加工することで構成されていてもよい。
【0014】
図3に示すように、筐体23に設けられる2つの収納空間は、2つの開口部の端部から端部までの幅Wが、成人の平均的な指の幅より狭くなるように形成される。つまり、2つの収納空間は、指先を、筐体上面23aに接触させたときに、指先によって、2つの開口部の全体を覆うことができ、素子部21への背景光の侵入を阻止するように構成されている。
【0015】
発光素子211の発光強度は、センサユニット2の検知範囲内に指先等の操作物体が存在する状態で、非発光時レベルより発光時レベルの方が大きな値となるように設定される。検知範囲は、センサユニット2に対して非接触によるスイッチ操作がなされたことを検知する範囲である。以下では、検知範囲における最大距離を検知上限距離Lとよぶ。非発光時レベルは、発光素子211が非発光の状態で受光素子212にて検出される受光レベルであり、背景光レベルともいう。発光時レベルは、発光素子211を発光させたときに、受光素子212にて検出される受光レベルである。発光素子211は、制御部3からの駆動信号に従って、駆動信号の振幅に応じた強度の照射光を、駆動信号のパルス幅に応じた期間だけ照射する。
【0016】
受光素子212は、筐体上面23aから検知上限距離Lに指先が位置しているときに、受光ビームの有効面の全体が指によって遮られるように、つまり、受光素子212に到達する背景光が抑制されるように、指向性が設定される。受光ビームの有効面とは、例えば、最も受光感度の良い方向から受光感度が3dB低くなるまでの範囲をいう。受光素子212は、発光素子211からの照射光に基づく反射光、及び環境に応じた背景光を受光する。受光素子212からの受光信号は、レベル調整された後、AD変換されて制御部3に取り込まれる。なお、受光信号のレベル調整は、増幅でも減衰でもよい。また、受光信号は、必ずしもレベル調整される必要はなく、そのままAD変換されてもよい。
【0017】
ここで、筐体上面23aから検知上限距離Lに指先が位置する状態で検出される非発光時レベルを基準背景レベルとする。また、検知上限距離Lに指先が位置する状態で検出される発光時レベルを基準反射光レベルとする。発光素子211は、基準反射光レベルが基準背景光レベル以上となる強度で発光可能な特性を有する素子が用いられる。
【0018】
背景光は、晴天時における室内では500Lx程度、晴天時の日影は10000Lx程度、晴天の日向(すなわち、直射日光)は100000Lxにも達する場合がある。つまり、背景光は、天気、時間、場所等によって大きく変動し、特に、車両にて移動中に使用する場合、背景光は短時間での大きな変動が繰り返されることになる。但し、上述のように、検知範囲内に指先が位置する場合、指先と素子部21との相対的な位置によって、素子部21に直射日光が正面から入射されることがない。例えば、正面から入射する直射日光の最大値が120000Lxとして、指先によって正面から最大30°の範囲が遮られるとしても、直射日光は約100000Lxで入射されることになる。このような背景光が入射する環境であっても、光タッチレスセンサ1は、正常に動作することが要求される。
【0019】
図2に戻り、ユニット表示部22は、操作パネル24に対して可視光を照射するように配置された発光素子を備える。発光素子は、特に限定されるものではなく、例えば、発光ダイオード、EL素子等を用いることができる。ユニット表示部22から操作パネル24に入射された可視光は、操作パネル24内で散乱されて、操作パネル24の全体又は一部が可視光にて発光する。ユニット表示部22は、制御部3からの指示に従って、複数の表示色での表示や複数パターンでの点滅等、複数の表示態様での表示が可能なように構成されてもよい。
【0020】
図1に戻り、出力機能設定部4は、センサユニット2での検出結果を、どのような形式(以下、スイッチタイプ)によって出力するかを制御部3に指示する。出力機能設定部4は、物理的なスイッチであってもよいし、画面上の操作等によって出力機能の設定を行う機能を有する端末装置であってもよい。スイッチタイプには、例えば、モーメンタリ、オルタネート等が含まれてもよい。
【0021】
外部表示部5は、センサユニット2とは別体に設けられる表示装置であり、ディスプレイ及びランプ等を備える。外部表示部5は、制御対象100となる装置に設けられた表示装置、又は、光タッチレスセンサ1が接続される端末装置に設けられた表示装置等であってもよい。
【0022】
近接センサ6は、センサユニット2から所定範囲(例えば、半径1m)内に、人等の物体が侵入していることを検知している間、制御部3に対して起動信号を出力する。但し、近接センサ6は、省略されてもよい。
【0023】
制御部3は、CPU35、ROM36及びRAM37等を備えたマイクロコンピュータを中心に構成された電子制御装置である。マイクロコンピュータの各種機能は、CPU35が非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、ROM36が、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。なお、CPU35が実行する機能の一部又は全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、制御部3を構成するマイクロコンピュータの数は1つでも複数でもよい。ROM36には、EPROM等の記憶内容を書き換え可能な不揮発性メモリが含まれていてもよい。EEPROMには、出力機能設定部4による設定内容が書き込まれるようにしてもよい。この場合、制御部3は、処理の実行時に、EEPROMに書き込まれた設定内容を参照して、設定内容に従った動作をするようにしてもよい。
【0024】
制御部3は、機能別に示すと、測定部31と、操作出力部32と、診断部33とを備える。
測定部31は、素子部21を用いた非発光時レベル及び発光時レベルの測定を行い、測定結果からセンサユニット2の操作パネル24に対する操作の有無を検出する。
【0025】
操作出力部32は、出力機能設定部4にて設定されるスイッチタイプに従って、スイッチタイプに応じたパターンのスイッチ出力SWを生成して、制御対象100に出力する。操作出力部32は、測定部31及び当該操作出力部32にて扱われる信号に基づいて、光タッチレスセンサ1の動作状態や設定状態を、ユニット表示部22又は外部表示部5に表示する機能を有していてもよい。
【0026】
診断部33は、素子部21の異常を検出する機能を有する。
[1-2.処理]
[1-2-1.測定処理]
測定部31としての機能を実現するために、制御部3が実行する測定処理について、
図4のフローチャートを用いて説明する。
【0027】
測定処理は、制御部3が起動している間、繰り返し実行される。なお、光タッチレスセンサ1が、近接センサ6を備えている場合、測定処理は、近接センサ6から起動信号が入力されている間だけ、すなわち、センサユニット2から所定範囲内に侵入した物体を検知している間だけ繰り返し実行されてもよい。
【0028】
S110では、測定部31は、発光素子211を消灯する指示を出力すると共に、操作パネルに対する操作の状態を表すステータスSTを初期値0にリセットする。
S120では、測定部31は、測定タイミングであるか否かを判定し、測定タイミングであれば処理をS130に移行し、測定タイミングでなければ、同ステップを繰り返すことで待機する。測定タイミングは、一定周期のタイミングでもよいし、外部から何らかの手法で測定指示が入力されたタイミングであってもよい。
【0029】
S130では、測定部31は、非発光時レベルを測定する。すなわち、測定部31は、発光素子211を非発光状態に保持したまま受光素子212の受光レベルを測定する。
S140では、測定部31は、発光時レベルを測定する。すなわち、測定部31は、発光素子211を発光状態にして受光素子212の受光レベルを測定する。
【0030】
なお、非発光時レベルの測定期間、及び発光時レベルの測定期間は、いずれも同じ長さTwに設定され、例えば、Tw=0.1~100μs程度に設定される。また、発光時レベルの測定において、発光素子211は、測定期間Twの開始から発光時間Tpの間、発光を継続する。つまり、発光素子211は、パルス幅がTpに設定されたパルス状の光を照射する。
【0031】
発光時間Tpは、具体的には、基準反射レベルが得られるパルス強度にて発光素子211を発光させたときに、発光素子211での発光間隔(すなわち、発光時レベルの測定周期)も考慮して、照射光による発光素子211での熱損失が、発光素子211の許容値以下となるように設定される。発光時間Tpは、例えば50μs程度に設定される。
【0032】
非発光時レベルの測定に続けて発光時レベルの測定を行うことにより、
図5の下方に示すように、非発光時レベルと発光時レベルの測定タイミングのずれは、測定期間Twと同じ長さとなる。
【0033】
また、測定期間(すなわち測定タイミングのずれ)Twは、光タッチレスセンサ1が車両等の移動体に搭載されている場合を仮定して、測定期間Twの間で移動体が移動したとしても、外部環境における移動体の位置に変化がないと見なせる時間以下に設定される。なお、指の移動より移動体の移動の方が速いため、測定期間Twを上述のように設定することで、操作パネル24に対して操作する指先の位置も変化がないと見なすことができる。
【0034】
ここでは、測定期間Twの間での移動体の移動距離が、例えば、指の幅の1/2以下、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.1mm以下であれば、相対位置に変化がないとみなすものとする。車両の設定速度を100km/hとした場合、100km/hを換算すると27.8μm/μsとなる。この場合、測定期間Twを36μs以下にすれば、その間の移動体の移動距離は1mm以下となる。このことから、Tw<100μSであれば、外部環境における移動体の位置に変化がないと見なすことができる。つまり、外部環境に対する光タッチレスセンサ1の位置、及びセンサユニット2に対する操作する指先の位置が同一と見なせる条件で、非発光時レベル及び発光時レベルの測定を行うことが可能となる。
【0035】
S150では、測定部31は、S130にて測定された非発光時レベルが、許容範囲内であるか否かを判定し、許容範囲内であれば処理をS170に移行し、許容範囲外であれば処理をS160に移行する。受光素子212からの受光信号は、増幅後、AD変換されて制御部3に取り込まれる。従って、測定部31は、増幅後の信号が、飽和している場合、又は、下限レベル以下である場合を、許容範囲外であると判定する。
【0036】
S160では、測定部31は、増幅後の受光レベルが許容範囲内となるように、増幅回路の感度調整を行って、処理をS120に戻す。
S170では、測定部31は、S130にて測定された非発光時レベルと、S140にて測定された発光時レベルとに基づき、検出レベルLVを算出する。検出レベルLVは、例えば、発光時レベルから非発光時レベルを減算することで算出する。
【0037】
S180では、測定部31は、S170にて算出された検出レベルLVが、仮選択閾値THaより大きいか否かを判定し、LV>THaであれば処理をS190に移行し、LV≦THaであれば処理をS200に移行する。仮選択閾値THaは、例えば、受光素子212からの出力に含まれるノイズレベルに従って、検出レベルLVがノイズレベルより大きい有意なレベルを有しているか否かを判定できる大きさに設定される。
【0038】
S190では、測定部31は、ユニット表示部22による仮選択表示を行って、処理をS200に進める。仮選択表示は、検出レベルLVが、操作パネル24に対する操作ありと判定するレベルには満たないが、もう少し指などを近づけて検出レベルLVが上昇すれば、操作ありと判定することを操作者に知らせるための表示である。
【0039】
S200では、測定部31は、検出レベルLVが選択閾値THbより大きいか否かを判定し、LV>THbであれば処理をS210に移行し、LV≦THbであれば処理をS230に移行する。選択閾値THbは、仮選択閾値THaより大きな値(すなわち、THb>THa)に設定される。
【0040】
S210では、測定部31は、ステータスSTを、操作パネル24に対する操作が行われたことを示す1に設定する。
S220では、測定部31は、ユニット表示部22による仮選択表示を選択表示に切り替えて、処理をS120に戻す。選択表示では、仮選択表示とは、表示色を異ならせる等、ユニット表示部22での表示態様を異ならせるようにしてもよい。
【0041】
S230では、測定部31は、ステータスSTを、操作パネルに対する操作が行われていないことを示す0に設定し、処理をS120に戻す。
ここで、測定処理に従った各部の動作を、
図5のタイミング図を用いて説明する。
【0042】
図5に示すように、発光素子211を駆動して、パルス状の光を照射する。
図5では、周期的に発光する場合を示しているが、必ずしも周期的に発光する必要はない。
光タッチレスセンサ1が車両に搭載され、車両の移動中に使用する場合、背景光は、車両が走行する外部環境の変化に応じて短時間の間に増減を繰り返す。直射日光が当たる日向の走行中には、背景光のレベルが大きくなる。
図5に示す反射光は、検知範囲内にある指先からの反射光を、背景光を除外して示したものである。
【0043】
つまり、非発光時レベルの測定時には、背景光の値がサンプリングされ、発光時レベルの測定時には、背景光と反射光とを加算した値がサンプリングされる。
非発光時レベルと発光時レベルは、測定期間Twだけずれたタイミングでサンプリングされる。しかも、測定期間Twは、背景光の状況(すなわち、外部環境に対するセンサユニット2の位置)も、反射光の状況(センサユニット2に対する操作する指先の位置)も変化していないと見なせるように設定されている。
【0044】
従って、背景光レベルと反射光レベルの差分である検出レベルLVは、背景光の影響を除去した反射光のみのレベルを表したものとなる。この検出レベルLVが閾値THb以上となる場合に、センサユニット2の操作パネル24に対する操作ありとの判定結果が得られ、その判定結果に従ってステータスSTが設定される。
【0045】
[1-2-2.出力処理]
操作出力部32としての機能を実現するために、制御部3が実行する出力処理について、
図6のフローチャートを用いて説明する。
【0046】
出力処理は、測定処理のS190又はS200にてステータスSTが設定される毎に実行される。
S310では、操作出力部32は、出力機能設定部4によるスイッチタイプの指定がモーメンタリであるか否かを判定する。操作出力部32は、スイッチタイプの指定がモーメンタリであると判定した場合、処理をS320に移行し、モーメンタリではない(すなわち、オルタネートである)と判定した場合、処理をS350に移行する。
【0047】
S320では、操作出力部32は、ステータスSTの値が1であるか否かを判定し、ST=1であれば処理をS330に移行し、ST=0であれば処理をS340に移行する。
S330では、操作出力部32は、スイッチ出力SWを、オンを表す値に設定して、処理を終了する。
【0048】
S340では、操作出力部32は、スイッチ出力SWを、オフを表す値に設定して処理を終了する。
S350では、操作出力部32は、ステータスSTの値が0から1に変化したか否かを判定し、0から1に変化した場合は処理をS360に移行し、それ以外の場合、すなわち、ステータスSTの値が変化していないか、1から0に変化した場合は処理を終了する。
【0049】
S360では、操作出力部32は、スイッチ出力SWのオンオフを反転させて、処理を終了する。
図7に示すように、モーメンタリの場合は、ステータスSTをそのままスイッチ出力SWとして出力する。オルタネートの場合は、ステータスSTが0から1に変化する毎に、スイッチ出力SWのオンオフを反転させる。
【0050】
ここでは、操作出力部32が実現するスイッチタイプとして、モーメンタリ及びオルタネートについてのみ説明したが、これに限定されるものではなく、「N/O」「N/C」「多極」「多投」等、任意のスイッチタイプを実現するようにできるように構成してもよい。「N/O」「N/C」は、モーメンタリの場合のオンオフ時の出力のされた方の違いであり、「N/O」は、スイッチ操作が行われていない(すなわち、ST=0)のときに、スイッチ出力SWがオフとなるタイプを表す。「N/C」は、スイッチ操作が行われていない(ST=0)のときにスイッチ出力SWがオンとなるタイプを表す。「多極」は、同時に複数の回路を制御するスイッチであることを表し、「多投」は、複数の接続経路を制御するスイッチであることを表す。
【0051】
[1-2-3.診断処理]
素子部21の状態を診断する診断処理について説明する。
診断処理では、検知範囲内に指先等の操作物体が存在しない状態で、非発光時レベルと、発光時レベルとを測定する。
【0052】
図8に示すように、発光素子211から照射された光の一部は、操作パネル24の境界面で反射を繰り返し、操作パネル24内を伝搬して、受光素子212にて受光される。つまり、発光測定で得られる受光レベルは、反射物が存在しない状態であっても、非発光測定で得られる受光レベルよりも、少しだけ大きな値となる。診断用処理では、あらかじめ診断用データとして、ROM36などに記憶されている、非発光時レベル(以下、非発光診断レベル)、及び発光時レベル(以下、発光診断レベル)を利用することで、素子部21の状態を診断する。
【0053】
診断部33としての機能を実現するために、制御部3が実行する診断処理について、
図9のフローチャートを用いて説明する。
診断処理は、制御部3が起動した直後の初期化処理の一つとして実行されてもよいし、外部からの指示に従って実行されてもよい。
【0054】
S510では、診断部33は、発光素子211を消灯する指示を出力する。
S520では、診断部33は、非発光時レベルを測定する。
S530では、診断部33は、発光時レベルを測定する。
【0055】
S540では、診断部33は、非発光時レベル及び発光時レベルを、診断用データに示された非発光診断レベル及び発光診断レベルと比較することで、異常の有無、及び異常の原因を判定する。
【0056】
具体的には、
図10のパターン1に示すように、非発光時レベル及び発光時レベルがいずれも有意な値で検出されなかった場合は、受光素子212の断線、又はAD変換回路の故障等による異常であると判定する。
【0057】
パターン2に示すように、非発光時レベルは非発光診断レベルと同程度で検出され、発光時レベルが有意な値で検出されなかった場合、発光素子211の断線、又は発光素子211への指示系統の異常であると判定する。
【0058】
パターン3に示すように、非発光時レベルは非発光診断レベルと同程度で検出され、発光時レベルが発光診断レベルより低い状態で検出された場合、発光素子211の劣化による異常であると判定する。
【0059】
パターン4に示すように、非発光時レベル及び発光時レベルの比率が、非発光基準レベル及び発光基準レベルの比率と同程度であるが、全体的にレベルが低下している場合、受光素子212の劣化による異常であると判定する。
【0060】
図9に戻り、S550では、診断部33は、所定の宛先に診断結果を通知して、処理を終了する。診断結果は、外部表示部5に表示させるようにしてもよい。
[1-3.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0061】
(1a)光タッチレスセンサ1では、非発光時レベル及び発光時レベルを、同一の外部環境下での測定と見なせる短い間隔で測定し、測定結果から検知範囲内に指先等の操作物体の有無、ひいては操作パネル24に対する操作の有無を判定している。従って、光タッチレスセンサ1によれば、背景光の強度が高速で大きく変化する環境下であっても、背景光の影響が抑制された測定を行うことができ、タッチレスによるスイッチ操作を精度よく検出することができる。
【0062】
(1b)光タッチレスセンサ1では、操作物体である指先が検知範囲内にある場合、素子部21に背景光が正面から入射されることが阻止されるように、受光素子212の指向性が設定されている。更に、この場合の発光時レベル(すなわち、発光基準レベル)が非発光時レベル(すなわち、非発光基準レベル)より大きくなるように、発光素子211が照射する照射光のレベルが設定されている。従って、光タッチレスセンサ1によれば、太陽の直射日光下のような環境であっても、タッチレスによるスイッチ操作を検出することができる。
【0063】
(1c)光タッチレスセンサ1では、照射光による発光素子211の熱損失が、発光素子211の許容値を超えないように、照射光のパルス幅(すなわち、発光素子211の発光時間Tp)及び照射間隔が設定されている。従って、光タッチレスセンサ1を、比較的、低価格で低消費電力の発光素子211を用いて構成することができる。換言すれば、発光素子211の発光時間Tpを50μs程度と短くすることで、発光素子211の温度が上昇する前に発光を停止しているため、通常許容される輝度の10~100倍で、発光素子211を発光させることができる。このため、光タッチレスセンサ1は、直射日光下で走行する車両のように、背景光が100~100000Lxの広いレンジで且つ急激に変化する環境下でも、正常に動作することができる。
【0064】
そもそも、特許文献1にも記載されているように、被検出体からの反射光は、発光素子からの放射光の数%程度しかない。このため、太陽光の直射光のように非常に明るい背景光が受光素子に入り込むような状況下では、被検出体からの反射光に基づく検出信号は、背景光に基づく背景信号に埋もれてしまい、被検出体の検出が困難になる。これに対して、光タッチレスセンサ1では、フラッシュ状の発光を採用することで、通常許容される輝度の10~100倍での発光を可能としている。つまり、特許文献1に記載のように受光信号に対して複雑な処理を施すことなく、背景信号に埋もれない検出信号を得る技術、ひいては、指などの被検出体の検出精度を向上させる技術を実現することができる。
【0065】
(1d)光タッチレスセンサ1では、センサユニット2の筐体上面23aに形成された素子部21を収納する開口部の大きさが、操作物体である指先の幅より狭くなるように形成されている。従って、仮に、背景光の影響でタッチレスによるスイッチ操作がうまく作動しない状況が生じた場合でも、操作パネル24に指先を接触させれば、素子部21への背景光の入射を阻止することができる。そして、赤外線である照射光は、指の内部に侵入して拡散して伝搬する性質があり、指を経由して受光素子212にて受光されるため、背景光の入射を遮断した状態で、光タッチレスセンサ1のスイッチ操作を作動させることができる。つまり、背景光の影響で、光タッチレスセンサ1が操作不能となることを抑制できる。換言すれば、このような不測の事態に陥った場合のために、別途、タッチスイッチを用意する必要がなく、装置構成を簡略化できる。
【0066】
(1e)光タッチレスセンサ1では、検出レベルLVが仮選択閾値THaより大きい場合に、ユニット表示部22を用いた仮選択表示を行い、検出レベルLVが選択閾値THbを超えると、操作パネル24に対する操作ありと判定すると共に、仮選択表示を選択表示に切り替える。従って、操作者は、仮選択表示により操作の意図がないにも関わらず、操作ありと誤判定されたり、操作の意図があっても、指等の被検出物の接近不足で、操作ありとの判定がされなかったりする事態が発生ことを抑制できる。
【0067】
(1f)光タッチレスセンサ1では、検知範囲内に操作物体がない状態で測定される非発光時レベル及び発光時レベルと、非発光診断レベル及び発光診断レベルとを比較することで、素子部21の状態を診断する。診断には操作パネル24を伝搬して受光素子212に受光される光を利用するため、診断のために特別な装備を設ける必要がなく、簡易な診断を実現できる。
【0068】
(1g)光タッチレスセンサ1では、出力機能設定部4を介して、スイッチタイプを選択することができ、制御対象100に応じた適切なスイッチ出力SWを提供することができる。また、出力機能設定部4を使用して、記憶内容を書き換え可能な不揮発性メモリにスイッチタイプが書き込まれるように構成されていてもよい。この場合、光タッチレスセンサ1の製造時又は設置時等の任意のタイミングで、スイッチタイプを設定、変更することができ、その設定、変更された内容を保持することができるため、光タッチレスセンサ1の使い勝手を向上させることができる。
【0069】
(1h)光タッチレスセンサ1では、近接センサ6を用いる場合は、センサユニット2の周辺にて物体を検出した場合にだけ、作動するように構成することができ、低消費電力化を実現することができる。
【0070】
[2.第2実施形態]
[2-1.第1実施形態との相違点]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0071】
上述した第1実施形態では、センサユニット2を一つだけ備えている。これに対し、第2実施形態では、センサユニット2を複数備える点、及び複数のセンサユニット2のいずれが操作されたかを判定する処理を行う点で、第1実施形態と相違する。
【0072】
[2-2.構成]
図11に示すように、第2実施形態の光タッチレスセンサ1aは、単一のセンサユニット2の代わりに、複数のセンサユニット2を含むセンサユニット群7を備える。
【0073】
制御部3aは、測定部31の代わりに測定部31aを備え、更に、操作対象判定部34を備える。測定部31aは、センサユニット群7に属する全てのセンサユニット2について、個別に測定処理を実施する。操作対象判定部34は、測定部31aからの出力に基づいて、操作対象判定処理を実行する。操作対象判定部34は、操作対象判定処理により操作対象とされたセンサユニット2の測定結果を、操作出力部32に出力する。
【0074】
図12に示すように、センサユニット群7に属する複数のセンサユニット2は、近接して配置され、例えば、エレベータの操作において階を指定するスイッチとして使用される。
図13に示すように、センサユニット群7に属するいずれか一つのセンサユニット2に、指を接近させることで、センサユニット2を個別に操作することができる。ただし、エレベータが混雑してセンサユニット群7に近接した位置に人がいると、身体の各部に反応して、複数のセンサユニット2が操作されたと誤認する可能性がある。このような事態を避けるために、操作対象判定処理が実行される。
【0075】
[2-3.処理]
制御部3aが、操作対象判定部34としての機能を実現するために実行する操作対象判定処理について、
図14のフローチャートを用いて説明する。操作対象判定処理は、定期的に実行される。
【0076】
S610では、操作対象判定部34は、センサユニット群7に属するすべてのセンサユニット2から最新の検出レベルLVを取得する。
S620では、操作対象判定部34は、S610で取得した検出レベルLVのなかで、最も大きい最大レベルLV1と、2番目に大きい第2レベルLV2とを抽出する。以下では、最大レベルLV1となるセンサユニット2を対象センサユニット、第2レベルLV2となるセンサユニット2を比較センサユニットという。
【0077】
S630では、操作対象判定部34は、最大レベルLV1と第2レベルLV2の比LV1/LV2を算出し、LV1/LV2が有効性判定閾値E(例えば、E=2)以上であるか否かを判定する。操作対象判定部34は、LV1/LV2≧Eであると判定した場合、処理をS640に移行し、LV1/LV2<Eであると判定した場合、処理をS700に移行する。
【0078】
S640では、操作対象判定部34は、仮選択されているスイッチ(以下、仮選択スイッチ)が設定されているか否かを判定し、仮選択スイッチが設定されていなければ処理をS650に移行し、仮選択スイッチが設定されていれば、処理をS670に移行する。
【0079】
S650では、操作対象判定部34は、最大レベルLV1が第1検知閾値TH1以上であるか否かを判定し、LV1≧TH1であれば処理をS660に移行し、LV1<TH1であれば、処理を終了する。
【0080】
S660では、操作対象判定部34は、最大レベルLV1に対応づけられる対象センサユニットを仮選択スイッチに設定し、仮選択ユニットのユニット表示部22を用いて、仮選択されていることを示す仮選択表示を行って処理を終了する。
【0081】
S670では、操作対象判定部34は、仮選択スイッチが最大レベルLV1であるか否かを判定し、仮選択スイッチが最大レベルLV1であれば、処理をS680に移行し、仮選択スイッチが最大レベルLV1でなければ、処理をS700に移行する。
【0082】
S680では、操作対象判定部34は、最大レベルLV1が、第1検知閾値TH1より大きな値に設定された第2検知閾値TH2以上であるか否かを判定し、LV1≧TH2であれば、処理をS690に移行し、LV1<TH2であれば処理を終了する。
【0083】
S690では、操作対象判定部34は、仮選択スイッチに設定されているセンサユニット2を選択スイッチに設定する。更に、操作対象判定部34は、選択スイッチのユニット表示部22を用いて、仮選択を示す表示から選択されていることを示す選択表示に切り替えると共に、選択スイッチが設定されたことを、操作出力部32に通知して処理を終了する。なお、仮選択表示と選択表示とは、例えば、表示色を異ならせる等、表示態様を異ならせるようにしてもよい。
【0084】
S700では、操作対象判定部34は、仮選択スイッチ、及び選択スイッチの設定をリセットして、処理を終了する。
[2-3.動作例]
図15は、センサユニット群7に属する各センサユニット2から得られる検出レベルLVを例示したグラフである。複数のセンサユニット2は、スイッチ番号1~8によって識別される。
【0085】
図15の上段では、スイッチ番号3が最大レベルLV1(すなわち、対象センサユニット)であり、スイッチ番号1が第2レベルLV2(すなわち、比較センサユニット)である。しかもLV1/LV2≧Eであるため、LV1≧TH1であれば、スイッチ番号3が仮選択スイッチとして設定される。
【0086】
図15の下段では、スイッチ番号3が最大レベルLV1、スイッチ番号2が第2レベルLV2となる。しかし、LV1/LV2<Eであるため、スイッチ番号3が仮選択スイッチとして設定されることはない。
【0087】
前回の処理サイクルで、スイッチ番号3が仮選択スイッチとして設定されている場合、スイッチ番号3が最大レベルLV1であり、且つLV1/LV2≧Eの状態(但し、スイッチ番号1がLV2である必要はない)が継続していれば、LV1のレベルによって、以下の判定が行われる。すなわち、LV1≧TH2であれば、選択条件が成立したとして、スイッチ番号3は選択スイッチに設定され、LV1<TH2であれば、仮選択スイッチとしての設定が継続される。また、スイッチ番号3が最大レベルLV1ではない場合、又はLV1/LV2<Eである場合は、仮選択スイッチとしての設定が解除される。
【0088】
[2-4.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果(1a)~(1d),(1f)~(1h)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0089】
(2a)光タッチレスセンサ1aでは、センサユニット群7に属する各センサユニット2の出力に基づいて、最大レベルLV1と第2レベルLV2との差が十分に大きく、且つ、最大レベルLV1が十分な大きさを有している場合に、有効な操作として認識する。従って、センサユニット群7への操作意図のない接近により、複数のセンサユニット2が同時に反応するような状況での誤検出を抑制することができる。
【0090】
(2b)光タッチレスセンサ1aでは、有効な操作が認識されたセンサユニット2を仮選択スイッチに設定して、仮選択されたことを表示し、有効な操作と認識される状態が継続した場合に、選択スイッチに設定して、選択スイッチが操作されたことを表示する。従って、操作者に正しい操作が行われているか否かを認識させることができ、操作者に安心感を与えることができる。
【0091】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0092】
(3a)上記実施形態では、照射光の発光強度(すなわち、パルス強度)や発光時間(すなわち、パルス幅)について一例を示したが、発光強度及び発光時間は、測定場所の明るさや、制御対象100の種類等によって、適宜最適化すればよい。
【0093】
(3b)上記実施形態では、スイッチ操作を実施する操作物体として指先を用いているが、掌等、指より大きい身体の部位を用いてもよい。また、身体の部位によらず、赤外線を反射する物体を操作物体として用いてもよい。
【0094】
(3c)上記実施形態では、照射光として、波長800nm~1000nm程度の近赤外線を使用している。照射光は、近赤外線に限定されるものではなく、人体への影響がない範囲で様々な波長の光を用いることができる。
【0095】
(3d)上記実施形態では、検出レベルLVを一つの閾値THによって操作の有無を判定している。例えば、閾値にヒステリシスをもたせてもよい。
図16に示すように、検出レベルLVが10段階で表現される場合、オフからオンへ切り替える閾値を、例えばレベル6.5に設定し、オンからオフへ切り替える閾値を、例えば3.5に設定する。この場合、検出レベルが不安定な場合でも、安定したスイッチ出力SWを生成することができる。
【0096】
(3e)上記実施形態では、素子部21は、一つの発光素子211と一つの受光素子212とを備えているが、
図17に示すように、中心に配置された一つの発光素子211と、発光素子211の周囲に配置された複数の受光素子212とを備えていてもよい。例えば、受光素子212は、発光素子211の上下左右の4箇所に配置してもよいし、上下左右に加えて、右上、右下、左下、左上の合計8箇所に配置してもよい。この場合、各受光素子212にて指先が検知されるタイミングから指先の動きを判定することができる。また、受光素子212だけを複数設ける代わりに、発光素子211及び受光素子212の組合せを複数個所に配置してもよい。この場合、中央部分の組は省略されてもよい。
【0097】
(3f)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0098】
(3g)本開示は、上述した光タッチレスセンサ1,1aの他、当該光タッチレスセンサ1,1aを構成要素とするシステム、当該光タッチレスセンサ1,1aの制御部3,3aとしてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実体的記録媒体など、種々の形態で実現することが可能である。
【0099】
[4.本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
光タッチレスセンサであって、
決められた照射方向に光を照射する発光素子と、前記照射方向から到来する光を受光する受光素子と備えるセンサユニットと
前記発光素子の非発光時における前記受光素子での受光レベルである非発光時レベル、及び前記発光素子の発光時における前記受光素子の受光レベルである発光時レベルを測定し、前記非発光時レベルと前記発光時レベルとの差分を表す検出レベルに従って、検知範囲内における操作物体の有無を判定するように構成された制御部と、
を備え、
前記非発光時レベルと前記発光時レベルとの測定タイミングのずれは、当該光タッチレスセンサを搭載する移動体が設定速度で移動していたとしても、前記移動体の外部環境における前記移動体の位置が同一であるとみなせる時間幅に設定された
光タッチレスセンサ。
【0100】
[項目2]
項目1に記載の光タッチレスセンサであって、
前記受光素子の指向性は、前記検知範囲にある前記操作物体によって受光ビームが遮られるように設定され、
前記検知範囲に前記操作物体が存在する状況にて測定される前記発光時レベル及び前記非発光時レベルが、前記発光時レベルの方が前記非発光時レベルより大きくなるように前記発光素子の発光強度が設定された、
光タッチレスセンサ。
【0101】
[項目3]
項目1又は項目2に記載の光タッチレスセンサであって、
前記発光素子は、発光による熱損失が、該発光素子の許容値以下となるように、照射光のパルス幅、発光間隔、及び発光強度が設定された、
光タッチレスセンサ。
【0102】
[項目4]
項目1から項目3までのいずれか1項に記載の光タッチレスセンサであって、
前記センサユニットは、前記発光素子及び前記受光素子を収納し、前記発光素子及び前記受光素子によって発光及び受光される光を通過させるための開口部を有した筐体を備え、
前記開口部は、前記操作物体によって全体が覆われる大きさに形成された、
光タッチレスセンサ。
【0103】
[項目5]
項目4に記載の光タッチレスセンサであって、
前記センサユニットは、前記発光素子及び前記受光素子によって発光及び受光される光を透過する材料で形成され、前記開口部を覆うように構成された操作パネルを更に備え、
前記検知範囲内に前記操作物体が存在しない状況にて測定される前記非発光時レベル及び前記発光時レベルに基づいて、前記センサユニットの状態を診断するように構成された診断部を更に備える
光タッチレスセンサ。
【0104】
[項目6]
項目1から項目5までのいずれか1項に記載の光タッチレスセンサであって、
前記操作物体は、手の指先である
光タッチレスセンサ。
【0105】
[項目7]
項目1から項目6までのいずれか1項に記載の光タッチレスセンサであって、
個別に操作される複数の前記センサユニットを有するセンサユニット群を備え、
前記制御部は、前記センサユニット群に属する前記センサユニットのうち、前記検出レベルが最大となる前記センサユニットを対象センサユニット、前記検出レベルが2番目に大きい前記センサユニットを比較センサユニットとし、前記対象センサユニットの前記検出レベルが検知閾値以上であり、且つ、前記対象センサユニットの前記検出レベルと前記比較センサユニットの前記検出レベルとの差が有効性判定閾値以上であることを選択条件として、前記選択条件が成立する場合に、前記対象センサユニットに対する操作が行われたと判定する
光タッチレスセンサ。
【0106】
[項目8]
項目7に記載の光タッチレスセンサであって、
前記センサユニット毎に、複数の表示態様で表示を行うように構成されたユニット表示部を更に備え、
前記制御部は、前記対象センサユニットの前記ユニット表示部に、前記対象センサユニットであることを示す第1の態様での表示である仮選択表示を行い、前記選択条件が成立した場合に、前記対象センサユニットの前記ユニット表示部に、前記第1の態様とは異なる第2の態様での表示である選択表示を行うように構成された、
光タッチレスセンサ。
【符号の説明】
【0107】
1,1a…光タッチレスセンサ、2…センサユニット、3,3a…制御部、4…出力機能設定部、5…外部表示部、6…近接センサ、7…センサユニット群、21…素子部、22…ユニット表示部、23…筐体、23a…筐体上面、24…操作パネル、31,31a…測定部、32…操作出力部、33…診断部、34…操作対象判定部、35…CPU、36…ROM、37…RAM、100…制御対象、211…発光素子、212…受光素子。
【要約】
【課題】短い間隔で急激に背景光が変化する環境であっても、正常に動作する光タッチレスセンサを提供する。
【解決手段】制御部は、発光素子の非発光時における受光素子での受光レベルである非発光時レベル、及び発光素子の発光時における受光素子の受光レベルである発光時レベルを測定する。制御部は、非発光時レベルと発光時レベルとの差分を表す検出レベルに従って、検知範囲内における操作物体の有無を判定する。非発光時レベルと発光時レベルとの測定タイミングのずれは、当該光タッチレスセンサを搭載する移動体が設定速度で移動していたとしても、移動体の外部環境における移動体の位置が同一であるとみなせる時間幅に設定される。
【選択図】
図5