(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】2ビット磁気抵抗ランダムアクセスメモリセル
(51)【国際特許分類】
H10B 61/00 20230101AFI20250401BHJP
H10N 50/10 20230101ALI20250401BHJP
G11C 11/16 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
H10B61/00
H10N50/10 Z
G11C11/16 100A
(21)【出願番号】P 2023526627
(86)(22)【出願日】2021-11-10
(86)【国際出願番号】 IB2021060387
(87)【国際公開番号】W WO2022101790
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2024-04-11
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【氏名又は名称】太佐 種一
(74)【代理人】
【識別番号】100120710
【氏名又は名称】片岡 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨゲンドラ、カーティック
(72)【発明者】
【氏名】エバーツ、エリック、レイモンド
【審査官】脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0334080(US,A1)
【文献】特開2013-125565(JP,A)
【文献】特開2015-026379(JP,A)
【文献】国際公開第2011/087038(WO,A1)
【文献】特開2007-258460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10B 61/00
H10N 50/10
G11C 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の重金属層と、
前記第1の重金属層に結合され、第1の面積を有する第1の磁気トンネル接合(MTJ)と、
前記第1のMTJと直列に接続され、前記第1の面積とは異なる第2の面積を有する第2のMTJであって、当該第1のMTJと参照層を共有する第2のMTJと、
前記第2のMTJに結合された第2の重金属層と、
を含
み、
前記第1の重金属層は、第1のトランジスタを介して第1のワード線とビット線とに接続され、
前記第2の重金属層は、第2のトランジスタを介して第2のワード線と前記ビット線とに接続され、
前記第1の重金属層は、第3のトランジスタを介して第3のワード線とソース線とに接続され、
前記第2の重金属層は、前記ソース線に直接接続される、
磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)セル。
【請求項2】
前記第1のMTJは、
前記第1の重金属層と直接接触している第1の自由層と、
前記参照層と、
前記第1の自由層と前記参照層との間に配置された第1のトンネル障壁と、
を含む、請求項1に記載のMRAMセル。
【請求項3】
前記第2のMTJは、
前記第2の重金属層と直接接触している第2の自由層と、
前記参照層と、
前記第2の自由層と前記参照層との間に配置された第2のトンネル障壁と、
を含む、請求項
2に記載のMRAMセル。
【請求項4】
前記第1のトンネル障壁はMgOの層である、請求項
2に記載のMRAMセル。
【請求項5】
前記第1の面積は前記第2の面積よりも小さい、請求項1に記載のMRAMセル。
【請求項6】
共通の前記参照層は前記第2のMTJと同じ面積を有する、請求項5に記載のMRAMセル。
【請求項7】
前記第1の重金属層および前記第2の重金属層は、スピン軌道トルク特性を示す金属の1つ以上の層を含む、請求項1に記載のMRAMセル。
【請求項8】
前記第1の重金属層および前記第2の重金属層は、白金、タングステン、タンタル、およびマンガンからなる群から選択される金属の1つ以上の層を含む、請求項1に記載のMRAMセル。
【請求項9】
前記第1のMTJは、前記第2のMTJの上に積層される、請求項1に記載のMRAMセル。
【請求項10】
前記MRAMセルは、複数の2ビットMRAMセルを含むメモリアレイの一部である、請求項1に記載のMRAMセル。
【請求項11】
前記第1の重金属層と前記第2の重金属層はいずれも、白金、タングステン、タンタル、およびマンガンからなる群から選択される金属の1つ以上の層を含み、共通の前記参照層は強磁性金属を含む、請求項1に記載のMRAMセル。
【請求項12】
第1の重金属層と、前記第1の重金属層に結合され、第1の面積を有する第1の磁気トンネル接合(MTJ)と、前記第1のMTJと直列に接続され、前記第1の面積とは異なる第2の面積を有する第2のMTJであって、当該第1のMTJと参照層を共有する第2のMTJと、前記第2のMTJに結合された第2の重金属層とを含み、前記第1の重金属層は、第1のトランジスタを介して第1のワード線とビット線とに接続され、前記第2の重金属層は、第2のトランジスタを介して第2のワード線と前記ビット線とに接続され、前記第1の重金属層は、第3のトランジスタを介して第3のワード線とソース線とに接続され、前記第2の重金属層は、前記ソース線に直接接続された磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM
)セルをプログラムするための
方法であって、当該
方法は、
前記MRAMセルの第1のビットをプログラムするための書き込みコマンドを受信することと、
前記第1のMTJまたは前記第2のMTJのいずれかである特定のMTJに前記第1のビットを記憶することを決定することと、
前記第1、第2、および第3のトランジスタのうちの1つ以上を選択的に活性化して、前記特定のMTJに関連する重金属層に電流を流すことと、
を含む
方法。
【請求項13】
前記特定のMTJは前記第1のMTJであり、前記第1、第2、および第3のトランジスタのうちの1つ以上を選択的に活性化することは、
前記第1および第3のトランジスタを活性化して、前記第1の重金属層に電流を流すことを含み、
前記第2のトランジスタは活性化されない、
請求項
12に記載の
方法。
【請求項14】
前記特定のMTJは前記第2のMTJであり、前記第1、第2、および第3のトランジスタのうちの1つ以上を選択的に活性化することは、
前記第2のトランジスタを活性化して、前記第2の重金属層に電流を流すことを含み、
前記第1および第3のトランジスタは活性化されないままである、
請求項
12に記載の
方法。
【請求項15】
磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM
)セルをプログラムするためのシステムであって、
前記MRAMセルとプロセッサを含み、
前記MRAMセルは、
第1の重金属層と、
前記第1の重金属層に結合され、第1の面積を有する第1の磁気トンネル接合(MTJ)と、
前記第1のMTJと直列に接続され、前記第1の面積とは異なる第2の面積を有する第2のMTJであって、当該第1のMTJと参照層を共有する第2のMTJと、
前記第2のMTJに結合された第2の重金属層と、
を含み、
前記第1の重金属層は、第1のトランジスタを介して第1のワード線とビット線とに接続され、
前記第2の重金属層は、第2のトランジスタを介して第2のワード線と前記ビット線とに接続され、
前記第1の重金属層は、第3のトランジスタを介して第3のワード線とソース線とに接続され、
前記第2の重金属層は、前記ソース線に直接接続され、
前記プロセッサ
は、
前記MRAMセルの第1のビットをプログラムするための書き込みコマンドを受信することと、
前記第1のMTJまたは前記第2のMTJのいずれかである特定のMTJに前記第1のビットを記憶することを決定することと、
前記第1、第2、および第3のトランジスタのうちの1つ以上を選択的に活性化して、前記特定のMTJに関連する重金属層に電流を流すことと、を含む方法を実行するように構成されている
、
システム。
【請求項16】
前記特定のMTJは前記第1のMTJであり、前記第1、第2、および第3のトランジスタのうちの1つ以上を選択的に活性化することは、
前記第1および第3のトランジスタを活性化して、前記第1の重金属層に電流を流すことを含み、
前記第2のトランジスタは活性化されない、
請求項
15に記載のシステム。
【請求項17】
前記特定のMTJは前記第2のMTJであり、前記第1、第2、および第3のトランジスタのうちの1つ以上を選択的に活性化することは、
前記第2のトランジスタを活性化して、前記第2の重金属層に電流を流すことを含み、
前記第1および第3のトランジスタは活性化されないままである、
請求項
15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気、電子、およびコンピュータ分野に関する。具体的には、本開示は、3つのトランジスタを有する2ビット磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)セル、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MRAMは、コンピュータや他の電子デバイスにおいてデータを記憶するために使用される不揮発性メモリの一種である。(例えば、キャパシタを使用して)データを電荷または電流の流れとして記憶する従来のリードアクセスメモリ(例えば、ダイナミックリードアクセスメモリ(DRAM))とは異なり、MRAMは、磁気記憶素子を使用して磁気ドメインにデータを記憶する。磁気記憶素子は、それぞれが磁化を保持可能であり絶縁層で分離された2枚の強磁性体プレートで形成されている。プレートの磁化を外場の磁化に一致するように変化させ、データを記憶することができる。
【発明の概要】
【0003】
本開示の実施形態は、磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)セルを含む。MRAMセルは、第1の重金属層と、第1の重金属層に結合された第1の磁気トンネル接合(MTJ)とを含む。第1のMTJは、第1の面積を有する。MRAMセルは、第2のMTJをさらに含む。第2のMTJは、第1のMTJと直列に接続される。第2のMTJは、第1の面積とは異なる第2の面積を有する。第2のMTJは、第1のMTJと参照層を共有する。MRAMセルは、第2のMTJに結合される第2の重金属層をさらに含む。
【0004】
本開示のさらなる実施形態は、2ビットMRAMセルを形成する方法を含む。方法は、第2の重金属層を形成することを含む。方法は、MTJスタックを形成することをさらに含む。MTJスタックは、第1の面積を有する第1のMTJと、第1の面積とは異なる第2の面積を有する第2のMTJとを含む。第2のMTJは、第2の重金属層の上に形成される。第1および第2のMTJは、参照層を共有する。方法は、第1のMTJの上に第1の重金属層を形成することをさらに含む。
【0005】
本開示のさらなる実施形態は、2ビットMRAMセルをプログラムするための方法、システム、およびコンピュータプログラム製品を含む。方法は、2ビットMRAMセルの第1のビットをプログラムするための書き込みコマンドを受信することを含む。MRAMセルは、第1のMTJと第2のMTJとを直列に含む。第1のMTJの面積は、第2のMTJの面積とは異なる。第1のMTJは、第1の重金属層に結合される。第1の重金属層は、第1のトランジスタを用いてビット線に接続される。第1の重金属層は、第2のトランジスタを用いてソース線に接続される。第2のMTJは、第2の重金属層に接続される。第2の重金属層は、第3のトランジスタを用いてビット線に接続される。第2の重金属層は、ソース線に直接接続される。方法は、第1のビットが特定のMTJに記憶されることを決定することをさらに含む。特定のMTJは、第1のMTJまたは第2のMTJのうちのいずれかである。本方法は、第1、第2および第3のトランジスタのうちの1つ以上を選択的に活性化して、特定のMTJに関連する重金属層に電流を流すことをさらに含む。
【0006】
本開示のさらなる実施形態は、2ビットMRAMセルを読み出すための方法、システム、およびコンピュータプログラム製品を含む。方法は、第1のMTJと第2のMTJとを直列に含む2ビットMRAMセルを読み出すための読み出しコマンドを受信することを含む。第1のMTJの面積は、第2のMTJの面積と異なる。方法は、MRAMセルに流れる電流を駆動することをさらに含む。方法は、MRAMセルの抵抗を決定することをさらに含む。方法は、決定した抵抗に基づいて、MRAMセルの2ビット値を決定することをさらに含む。
【0007】
上記の要約は、例示される各実施形態または本開示のすべての実装形態を説明することを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示に含まれる図面は本明細書に組み込まれ、かつその一部を形成する。これらの図面は、本開示の実施形態を図示し、かつ明細書と共に、本開示の原理を説明する。図面は、典型的な実施形態を例示するに過ぎず、本開示を限定するものではない。
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係る2ビット磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)セルの構成例を示すブロック図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る、
図1のMRAMセルの2つの磁気トンネル接合(MTJ)の状態が、MRAMセルのビット値状態にどのように対応するかを示す真理値表の例を示す図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る、2ビットMRAMセルで構成されるMRAMアレイの一部を示す図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る、2ビットMRAMセルの第2の構成例のブロック図である。
【
図5A】本開示の実施形態に係る、製造プロセスの中間段階における2ビットMRAMセルの断面図である。
【
図5B】本開示の実施形態に係る、追加の作製工程後の
図5Aの2ビットMRAMセルの断面図である。
【
図5C】本開示の実施形態に係る、追加の作製工程後の
図5Bの2ビットMRAMセルの断面図である。
【
図5D】本開示の実施形態に係る、追加の作製工程後の
図5Cの2ビットMRAMセルの断面図である。
【
図5E】本開示の実施形態に係る、追加の作製工程後の
図5Dの2ビットMRAMセルの断面図である。
【
図5F】本開示の実施形態に係る、追加の作製工程後の
図5Eの2ビットMRAMセルの断面図である。
【
図5G】本開示の実施形態に係る、追加の作製工程後の
図5Fの2ビットMRAMセルの断面図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る、2ビットMRAMセルの第1のビットをプログラムするための一例としての方法のフローチャートである。
【
図7】本開示の実施形態に係る、2ビットMRAMセルの第2のビットをプログラムするための一例としての方法のフローチャートである。
【
図8】本開示の実施形態に係る、2ビットMRAMセルに記憶されたデータを読み出すための一例としての方法のフローチャートである。
【
図9】本開示の実施形態に係る、本明細書に記載の方法、ツール、モジュール、および関連機能の1つ以上を実装する際に使用可能な一例としてのコンピュータシステムの概略ブロック図である。
【0010】
本明細書に記載する実施形態は様々な変更および代替形態が可能であるが、実施形態の具体的詳細を、図面に例示し、かつ詳細に説明する。ただし、記載される具体的な実施形態は、限定的な意味に解釈すべきではない。むしろ、本発明の主旨および範囲に含まれるすべての変形、均等物、および代替形態を包含することが意図される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の態様は、一般に、電気、電子、およびコンピュータ分野に関し、より具体的には、3つのトランジスタを有する2ビット磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)セルおよびその製造方法に関する。本開示は必ずしもこのような用途に限定されるものではないが、本開示の様々な態様は、この文脈における様々な例の説明を通じて理解することができる。
【0012】
本明細書では、関連図面を参照しながら本開示の様々な実施形態について説明する。本開示の範囲から逸脱することなく、他の実施形態も考案可能である。なお、以下の説明および図面においては要素間の様々な接続関係および位置関係(例えば、上、下、隣接など)が規定されている。これらの接続関係もしくは位置関係またはその両方は、別段の記載がない限り、直接的なものでも間接的なものでもよく、本開示はこの点に関して限定的であることを意図していない。したがって、エンティティの結合は直接的または間接的な結合を指すことができ、エンティティ間の位置関係は直接的または間接的な位置関係とすることができる。間接的な位置関係の一例として、本明細書において層「B」の上(over)に層「A」を形成すると言う場合、層「A」および層「B」の関連特性および機能が中間層によって実質的に変更されない限り、層「A」と層「B」との間に1つ以上の中間層(例えば、層「C」)が存在する状況を含む。
【0013】
特許請求の範囲および本明細書の解釈のために以下の定義および略語を使用するものとする。本明細書で使用する「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」、もしくは「含有する(containing)」という用語またはこれらの任意のその他の変形は、非排他的包含を対象とすることが意図されている。例えば、要素の列挙を含む組成物、混合物、プロセス、方法、物、または装置は、必ずしもそれらの要素のみには限定されず、明示的に記載されていないかまたはそのような組成物、混合物、プロセス、方法、物または装置に固有の他の要素を含むことができる。
【0014】
以下の説明において、「上側(upper)」、「下側(lower)」、「右(right)」、「左(left)」、「垂直(vertical)」、「水平(horizontal)」、「上部(top)」、「底部(bottom)」という用語およびこれらの派生語は、記載されている構造体および方法について、図面における向きの通りの関係にあるものとする。「重なっている(overlying)」、「~の上に(atop)」、「~の上に(on top)」、「~の上に位置する(positioned on)」または「~の上に位置する(positioned atop)」という用語は、第1の構造体などの第1の要素が、第2の構造体などの第2の要素の上に存在することを意味する。ここで、第1の要素と第2の要素との間には、境界面構造などの介在要素が存在してもよい。「直接接触(direct contact)」という用語は、第1の構造体などの第1の要素と、第2の構造体などの第2の要素とが、それら2つの要素の境界面に中間の導電層、絶縁層または半導体層が存在せずに接続されることを意味する。なお、例えば「第2の要素に対して選択的な第1の要素」などの、「~に対して選択的(selective to)」という用語は、第1の要素をエッチングすることができ、第2の要素がエッチストップとして機能することができることを意味する。
【0015】
簡潔にするために、半導体デバイスおよび集積回路(IC)作製に関する従来の技術については、本明細書で詳細に記載する場合もしない場合もある。また、本明細書に記載の様々なタスクおよびプロセス工程は、本明細書で詳細に記載していない追加の工程または機能を有する、より包括的な手順またはプロセスに組み込むことができる。具体的には、半導体デバイスおよび半導体ベースのICの製造における様々な工程は周知であり、したがって、簡潔にするために、本明細書では、多くの従来の工程については、周知のプロセスの詳細を示さずに簡単に言及するにとどめるかまたは完全に省略する。
【0016】
一般に、ICにパッケージ化されるマイクロチップの形成に使用される種々のプロセスは、4つの大まかなカテゴリ、すなわち、膜堆積、除去/エッチング、半導体ドーピング、およびパターン形成/リソグラフィに分類される。
【0017】
堆積は、ウエハ上に材料を成長、塗布、またはその他の方法で転写する任意のプロセスである。利用可能な技術としては、特に、物理気相堆積(PVD:physical vapor deposition)、化学気相堆積(CVD:chemical vapor deposition)、電気化学堆積(ECD:electrochemical deposition)、分子線エピタキシ(MBE:molecular beam epitaxy)、および最近では原子層堆積(ALD:atomic layer deposition)などがある。別の堆積技術としては、プラズマ化学気相堆積(PECVD:plasma enhanced chemical vapor deposition)がある。PECVDは、プラズマ中のエネルギーを使用してウエハ表面での反応を生じさせるプロセスである。この反応は、従来のCVDではより高い温度が必要となる。PECVD堆積時のエネルギーイオン衝撃は、膜の電気的および力学的特性を向上させることもできる。
【0018】
除去/エッチングは、ウエハから材料を除去する任意のプロセスである。例えば、エッチングプロセス(ウェットまたはドライエッチング)、化学機械平坦化(CMP:chemical-mechanical planarization)などが挙げられる。除去プロセスの一例は、イオンビームエッチング(IBE:ion beam etching)である。一般に、IBE(またはミリング)は、遠隔のブロードビームイオン/プラズマ源を利用して、物理的不活性ガス手段もしくは化学反応ガス手段またはその両方によって基板材料を除去するドライプラズマエッチングを指す。他のドライプラズマエッチング技術と同様に、IBEは、エッチング速度、異方性、選択性、均一性、アスペクト比、および基板損傷の最小化などの利点を有する。ドライ除去プロセスの別の例としては、反応性イオンエッチング(RIE:reactive ion etching)が挙げられる。一般に、RIEは化学反応性プラズマを使用して、ウエハ上に堆積した材料を除去する。RIEでは、プラズマは、電磁場によって低圧(真空)下で生成される。RIEプラズマからの高エネルギーイオンが、ウエハ表面を衝撃し、ウエハ表面と反応して材料を除去する。
【0019】
半導体ドーピングは、例えば、一般には、拡散もしくはイオン注入またはその両方によってトランジスタのソースおよびドレインをドープすることによる電気的特性の改変である。これらのドーピングプロセスに続いて、炉アニールまたは高速熱アニール(RTA:rapid thermal annealing)が行われる。アニールは、注入されたドーパントを活性化する役割を果たす。導体(例えば、ポリシリコン、アルミニウム、銅など)と絶縁体(例えば、様々な形態の二酸化シリコン、シリコン窒化物など)の両方の膜を使用して、トランジスタとそのコンポーネントを接続および分離する。半導体基板の様々な領域の選択的ドーピングによって、電圧の印加により基板の導電率を変化させることができる。これらの様々なコンポーネントの構造を形成することによって、数百万個のトランジスタを作製し、互いに配線して最新のマイクロエレクトロニクスデバイスの複雑な回路を形成することができる。
【0020】
半導体リソグラフィは、後でパターンを基板に転写するための、半導体基板上での3次元レリーフイメージまたはパターンの形成である。半導体リソグラフィでは、フォトレジストと呼ばれる感光性ポリマーによってパターンが形成される。トランジスタを構成する複雑な構造と、回路の数百万個のトランジスタを接続する多くの配線とを作製するために、リソグラフィ工程とエッチパターン転写工程とが複数回繰り返される。ウエハ上にプリントされる各パターンは、その前に形成されたパターンと位置合わせされ、導体、絶縁体および選択的ドープ領域が徐々に構築されて最終的なデバイスを形成する。
【0021】
次に、本開示の態様により具体的に関連する技術の概要を説明する。一般に、2ビットMRAMセルは、磁気記憶素子を使用して2つの値(例えば、情報の2ビット)を記憶できる任意の材料または材料の組み合わせを指す。MRAMセルの値は、バイナリ(「01」もしくは「00」)またはアナログ(例えば、0.65)とすることができる。そして、MRAMセルの値は、抵抗ランダムアクセスメモリ(ReRAMやRRAM)セルもしくはメモリスタまたはその両方に値が記憶される方法と同様に、セルの電気抵抗に応じてメモリセル内に記憶される。言い換えれば、MRAMセル内のプレートの磁化の相対的な向きは、MRAMセルの電気抵抗に影響を与えることができる。この電気抵抗は、MRAMセルに電流を流すことによって測定することができ、測定された電気抵抗は値に変換することができる。
【0022】
従来の2端子MRAMデバイスの欠点の一部として、酸化物の信頼性と高い書き込み電力がある。3端子スピンホール効果(SHE:spin hall effect)またはスピン軌道トルク(SOT:spin orbit torque)MRAMセルは、読み出しおよび書き込み動作用に分離した経路を設けることによって、これらの制限を克服する。しかし、従来のSOT MRAMセルでは、1ビットの情報を記憶するために、磁気トンネル接合(MTJ:magnetic tunnel junction)に結合された2つのトランジスタが必要となる。このため、MRAMデバイスのビット密度が制限される。
【0023】
MRAMデバイスの低ビット密度を高める試みは、(1)異なるMTJピラーで重金属を共有すること、および(2)一方がSHEを利用し、他方がスピン伝達トルク(STT:spin-transfer torque)を利用するスタック型MTJ(stacked MTJs)を使用することのいずれかによって、マルチビットMRAMセルを形成することに焦点を当ててきた。しかし、これらの解決策はどちらも大きな欠点がある。異なるMTJが重金属構造を共有する場合、各MTJは独立してプログラムすることができない。一方のMTJをSHEで、他方のMTJをSTTで動作させるスタック型MTJの場合、トンネル障壁の信頼性や高い書き込みエネルギーなど、STTのすべての制約が依然として存在する。
【0024】
本開示の実施形態は、3つのトランジスタを使用し、各ビットに別々の書き込み経路を設ける2ビットSOT MRAMセルを使用することによって、既存の解決手段におけるこれらおよび他の欠点を克服し得る。本明細書に開示する2ビットSOT MRAMセルは、共有参照層(shared reference layer)を有する直列構成にて2つのMTJを使用する。2つの重金属(Pt、Ta、Wなど)は、2つの自由層(面内または面に垂直な強磁性体とすることができる)と接触している。MTJスタックは、2つの自由層と、共有参照層とを有する。2つの自由層の面積は異なる。この構造では、重金属に電流を流すことにより、SOT効果を利用して2つの自由層を独立してプログラムすることができる。本開示の構造は、STTベースのMRAMセルと比較して、速度向上(等エネルギー(iso-energy)の場合)およびエネルギー向上(等速度(iso-speed)の場合)を実現することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、2ビットSOT MRAMセルは、2つの重金属(Pt、Ta、Wなど)と接触する異なる面積の2つの強磁性自由層(FL1およびFL2)を含む。いくつかの実施形態において、上側自由層は、下側自由層よりも面積が小さい。強磁性体は、面内(in-plane)または面直(perpendicular-to-plane)方向の磁気異方性を有することができる。
【0026】
共通の強磁性参照層が、2つの自由層の間で共有される。参照層(RL:reference layer)は、トンネル障壁(MgOなど)によって各自由層から分離される。このようにして、MTJスタックは、FL1/MgO/RL/MgO/FL2によって形成される。両端に2つの重金属層が存在するため、一部の実施形態では、スタック全体はHM1/FL1/MgO/RL/MgO/FL2/HM2で構成される。
【0027】
2つの自由層は、2つの重金属にそれぞれ「書き込み」電流を流すことにより、独立してプログラムすることができる。すなわち、トランジスタの1つまたは2つを選択的に活性化することによって、電流を1つの重金属層に流すことができ、それによって、電流に基づいて層の磁気配向を独立に設定することができる。これにより、各ビットを個別にMRAMセルに書き込むことができるようになる。
【0028】
MRMセルの状態は、MTJスタックに「読み出し」電流を流し、MTJスタックの関連する抵抗状態を測定することによって決定される。スタック内の各MTJは面積/サイズが異なるため、MTJスタックの全抵抗への影響は異なる。これにより、MTJスタックは、2つの抵抗状態ではなく、4つの抵抗状態を実効的に有することができる。単純化した例として、第1のMTJは10または20キロオームの抵抗を持つようにプログラムされ、第2のMTJは1または5キロオームの抵抗を持つようにプログラムされてもよい。MTJは直列なので、スタック全体は、2つのMTJスタックの磁気配向に応じて、11、15、21、または25キロオームのいずれかの抵抗を持つことになる。これらの抵抗値のそれぞれは、2ビットMRAMセルの状態に変換することができる。例えば、11キロオームの実効抵抗は、2ビット値の00に対応することができる。同様に、15、21、および25キロオームは、それぞれ、01、10、および11に対応することができる。
【0029】
なお、この単純化した例はプロセスを説明するものであるが、実際には、MTJを正確な抵抗値にプログラムできない場合がある。そのため、各抵抗状態は、対応する抵抗の範囲を有してもよい。上記の例に従い、MTJスタックを意図した値の1.5キロオーム以内にプログラムできると仮定すると、2ビット値の00は、[9.5、12.5]キロオームの範囲の抵抗に関連付けられてもよい。同様に、2ビット値の01、10、および11はそれぞれ、[13.5、16.5]キロオーム、[19.5、22.5]キロオーム、および[23.5、26.5]キロオームの範囲の抵抗に対応してもよい。
【0030】
書き込み経路を分離することにより、MTJは、従来のスタック型MTJのように順次書き込むのではなく、独立して書き込むことができる。この結果、MRAMセルへの書き込み時の時間を大幅に短縮することができる。MRAMセルからの読み出しは、両方のビットを一度に読み出すことを含むため、従来のMRAMセルと比較した読み出し速度の改善は、書き込み速度の改善ほど大きくないが、それでも読み出し速度は、いくつかの実施形態では、従来のMRAMの約2倍または3倍になり得る。さらに、書き込み経路を分離し、異なるサイズのMTJを使用することで、トンネル障壁の形成態様に基づいて抵抗状態をより分離できるようになる。
【0031】
本開示のさらなる実施形態は、2ビットSOT MRAMセルを形成する方法を含む。時間制御されたIBEまたはRIEプロセスにより、ハードマスクを使用してHM1、FL1およびTB1をエッチングする。次に、HM1、FL1、およびTB1を、上部電極材料とともに、誘電体材料で封止する。時間制御された(time controlled)IBEまたはRIEプロセスにより、RL、TB2、およびFL2をエッチングする。エッチングは、底部重金属で停止する。誘電体材料(low-k)を堆積し、CMPで研磨して、HM1の上面が露出するようにする。重金属(HM1)を、FL1表面と接触するように、パターニングしたHM1の上に堆積させる。
【0032】
本明細書において、「重金属層」などにおける「重金属」とは、自由層の磁化にトルクを誘導することによって、自由層の磁気配向を(例えば、平行から反平行(anti-parallel)に)切り替えるための適切な強さのスピン軌道結合特性(spin-orbit coupling property)を有する任意の金属を指す。これらの金属は、スピンホール金属(Spin Hall metals)やスピン軌道トルク金属(spin orbit torque metals)と呼ばれることもある。
【0033】
なお、上述した利点は一例であり、限定的なものとして解釈すべきではない。本開示の実施形態は、本開示の主旨および範囲内において、上述した利点のすべてまたは一部を含んでもよいし、いずれも含まなくてもよい。
【0034】
次に、各図面を参照すると、
図1は、本開示の実施形態に係る2ビット磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)セル100の構成例を示すブロック図である。MRAMセル100は、MTJスタック内に2つのMTJ102、104を含む。第1のMTJ102は、第1の自由層(FL1)116と、第1のトンネル障壁(TB1)118と、参照層(RL)120とを含む。第2のMTJ104は、第2の自由層(FL2)124と、第2のトンネル障壁(TB2)122と、RL120とを含む。
図1に示すように、第1および第2のMTJ102、104は、RL120を共有する。
【0035】
FL1(116)およびFL2(124)は、それぞれTB1(118)およびTB2(122)によって、RL120から分離されている。各トンネル障壁は、自由層と参照層との間の絶縁体として機能する。TB1(118)およびTB2(122)は、任意の適切な材料で形成することができる。例えば、いくつかの実施形態において、TB1(118)およびTB2(122)は、エピタキシャル(結晶性)MgOの層である。他の実施形態において、他の適切な材料(例えば、非晶質酸化アルミニウム)をトンネル障壁の一方または両方として使用することができる。
【0036】
図1に示すように、第1のMTJ102は、第2のMTJ104よりも面積がかなり小さい。MTJの抵抗はその面積に比例するので、一方のMTJが他方のMTJよりも小さいMTJスタックを利用することにより、MTJスタックにおいて4つの固有の抵抗状態が存在するようになる。
【0037】
第1のMTJ102は、FL1(116)を介して第1の重金属層(HM1)112に結合される。同様に、第2のMTJ104は、FL2(124)を介して第2の重金属層(HM2)114に結合される。HM1(112)およびHM2(114)は、スピン軌道トルク相互作用を示す任意の金属または合金の1つ以上の層であってもよい。例えば、HM1(112)およびHM2(114)は、白金、タングステン、タンタル、もしくはマンガンまたはその組み合わせのうちの1つ以上であってもよい。いくつかの実施形態では、HM1(112)およびHM2(114)は同じ材料であり、他の実施形態では、HM1(112)およびHM2(114)は異なる金属である。
【0038】
HM1(112)は、第1のトランジスタT1を介してビット線と第1のワード線(ワード線1)とに接続される。また、HM1(112)は、第3のトランジスタT3を介してソース線と第3のワード線(ワード線3)とに接続される。同様に、HM2(114)は、第2のトランジスタT2を介してビット線と第2のワード線(ワード線2)とに接続される。HM2(114)は、ソース線に直接(すなわち、中間トランジスタを介さずに)接続される。
【0039】
FL1(116)およびFL2(124)は、異なる値を記憶するように独立してプログラムすることができる。FL1(116)およびFL2(124)の各々は、電流がこの2層間で漏れないように(すなわち、電流がMTJスタックを通過しないように)、異なるタイミングでプログラムする必要がある。
【0040】
FL1は、単にHM1(112)に電流を流すことによってプログラムされる(例えば、書き込まれる)。これは、第2のトランジスタT2をオフにしたまま、第1および第3のトランジスタT1、T3をオンにすることによって行われる。このようにトランジスタを活性化することで、スタックを経由することなく、HM1(112)を介してビット線からソース線に電流を流すことができる。HM1(112)を流れる電流は、FL1(116)の磁気配向を設定するので、FL1(116)の抵抗を変更するのに使用することができる。
【0041】
同様に、FL2は、単にHM2(114)に電流を流すことによってプログラムされる(例えば、書き込まれる)。これは、第1のトランジスタT1および第3のトランジスタT3がオフ状態のときに、第2のトランジスタT2をオンにすることによって行われる。このようにトランジスタを活性化することで、スタックを経由することなく、HM2(114)を介してビット線からソース線に電流を流すことができる。HM2(114)を流れる電流は、FL2(124)の磁気配向を設定するので、FL2(124)の抵抗を変更するのに使用することができる。
【0042】
MRAMセル100の状態(すなわち、ビット値)は、MTJスタックに(すなわち、第1のMTJ102および第2のMTJ104の両方に)電流を流すことによって読み出すことができる。これは、第2のトランジスタT2および第3のトランジスタT3がオフ状態のときに、第1のトランジスタT1を活性化することによって行われる。
図1に示すように、このようにトランジスタを活性化すると、読み出し電流(Iread)130が誘導される。読み出し電流130は、ビット線から第1のトランジスタT1を通過し、HM1(112)に流れ、MTJスタックを通過し、HM2(114)に流れ、最終的にソース線に到達する。MRAMセル100の抵抗は、読み出し電流130を使用して決定することができる。そして、決定された抵抗は、(例えば、
図2に示すような真理値表を使用して)2ビット値に変換することができる。
【0043】
ここで
図2に、本開示の実施形態に係る、
図1のMRAMセルの2つのMTJの状態と、MRAMセルのビット値状態との対応を示す一例としての真理値表200を示す。
図2に示すように、各MTJは、平行状態(P)または反平行状態(AP)にプログラムすることができる。各状態は、MTJの面積に応じた対応する抵抗値を有することになる。例えば、第1のMTJ102は、平行状態のときに第1の抵抗値を有し、反平行状態のときに第2の抵抗値を有する。同様に、第2のMTJ104は、平行状態のときに第3の抵抗値を有し、反平行状態のときに第4の抵抗値を有する。
【0044】
各MTJの相対的なサイズを制御することによって、両状態における各MTJの抵抗を十分に異ならせることができ、これにより、スタックの実行抵抗から、各MTJの状態を独立して決定することができる。そして、これをMRAMセルの状態(すなわち、2ビット値)に変換することができる。
図2に示す例では、平行状態は値0に対応し、反平行状態はビット値1に対応する。したがって、両方のMTJが平行状態にある場合は2ビット値00に対応し、両方のMTJが反平行状態にある場合は2ビット値11に対応する。第1のMTJ102が平行状態、第2のMTJ104が反平行状態にある場合、MRAMセルの2ビット値は01である。同様に、第1のMTJ102が反平行状態にあり、第2のMTJ104が平行状態にある場合、MRAMセルの2ビット値は10である。
【0045】
次に、
図3は、本開示の実施形態に係る、複数の2ビットMRAMセルで構成されるMRAMアレイ300の一部を示す図である。
図3に示すMRAMアレイ300の部分は、4つのMRAMセルを含む。4つのMRAMセルは、6つのワード線310~320と、2つのビット線(ビット線1、ビット線2)と、ソース線とに接続される。各MRAMセルは、2つの重金属層と、MTJスタックと、3つのトランジスタとを含む。
【0046】
例えば、第1のMRAMセルは、第1の重金属層302Aと、第2の重金属層304Aと、第1のMTJスタック306Aとを含む。第1の重金属層302Aは、第1のトランジスタT1を介して、第1のビット線と第1のワード線310とに接続される。また、第1の重金属層302Aは、第3のトランジスタを介して、ソース線と第3のワード線314とに接続される。また、第1の重金属層302Aは、第1のMTJスタック306Aを介して、第2の重金属層304Aに接続される。また、第2の重金属層304Aは、第2のトランジスタT2を介して、第1のビット線と第2のワード線312とに接続される。
【0047】
同様に、第2のMRAMセルは、2つの重金属層302B、304Bと、MTJスタック306Bと、3つのトランジスタとを含む。第1のMRAMセルと同様に、第2のMRAMセルは、第1、第2、第3のワード線310~314とソース線とに接続される。しかし、第1のMRAMセルとは異なり、第2のMRAMセルは、第2のビット線(ビット線2)に接続される。これにより、第2のMRAMセルを第1のMRAMセルとは別個に制御することができる。
【0048】
第3のMRAMセルは、2つの重金属層302C、304Cと、MTJスタック306Cと、3つのトランジスタとを含む。第1のMRAMセルと同様に、第3のMRAMセルは、第1のビット線(ビット線1)とソース線とに接続される。しかし、第1のMRAMセルとは異なり、第3のMRAMセルは、第4のワード線316と、第5のワード線318と、第6のワード線320とに接続される。これにより、第3のMRAMセルを第1および第2のMRAMセルとは別個に制御することができる。
【0049】
第4のMRAMセルは、2つの重金属層302D、304Dと、MTJスタック306Dと、3つのトランジスタとを含む。第2のMRAMセルと同様に、第3のMRAMセルは、第2のビット線(ビット線2)とソース線とに接続される。しかし、第2のMRAMセルとは異なり、第3のMRAMセルは、第4のワード線316と、第5のワード線318と、第6のワード線320とに接続される。これにより、第4のMRAMセルを第1、第2、および第3のMRAMセルとは別個に制御することができる。
【0050】
図3では4つのMRAMセルのみを示しているが、任意の数のMRAMセルをMRAMアレイに含めることができる。言い換えれば、図示のMRAMセルのパターンを、任意の数のワード線もしくはビット線またはその両方に対して拡張して、単一のアレイにおいてはるかに多くのMRAMセルを収容することができる。MRAMセルの総数(およびその配置)は、プロセッサがサポートする個別に制御可能な要素の数など、プロセッサの他の側面によって制限される場合がある。
【0051】
次に、
図4は、本開示の実施形態に係る、2ビットMRAMセル400の第2の構成例を示すブロック図である。
図4に示すMRAMセル400は、MTJスタックの形状が異なることを除いて、
図1に示したMRAMセル100と実質的に同様であってもよい。したがって、第1の重金属層412は、
図1に示した第1の重金属層112と実質的に同様、または同じであってもよい。同様に、第2の重金属層414は、
図1に示した第2の重金属層114と実質的に同様、または同じであってもよい。
【0052】
図1に示した第1のMTJ102と同様に、
図4における第1のMTJ402は、第1の自由層416と、第1のトンネル障壁418と、参照層420とを含んでもよい。第1の自由層416、第1のトンネル障壁418、および参照層420は、形状が異なることを除いて、
図1を参照して説明した第1の自由層116、第1のトンネル障壁118、および参照層120と実質的に同様、または同じであってもよい。同様に、第2のMTJ404は、
第2の自由層424と、第2のトンネル障壁422と、参照層420とを含んでもよい。
第2の自由層424および第2のトンネル障壁422は、形状が異なることを除いて、
図1を参照して説明した第2の自由層124および第2のトンネル障壁122と実質的に同様、または同じであってもよい。
【0053】
第1のMTJ402および第2のMTJ404が異なる面積を有するので、MRAMセル400は、MRAMセル100が4つの実効抵抗状態を有するのと同じ理由で、4つの実効抵抗状態を有することになる。さらに、MRAMセル400の動作は、MRAMセル100の動作と同じである。例えば、MRAMセル400の2ビット値の読み出しは、第2のトランジスタT2および第3のトランジスタT3がオフ状態のときに第1のトランジスタT1を活性化することによって行うことができる。このように、
図4に示すMTJスタックの台形/ピラミッド形状を、
図1に示したMTJスタックの形状の代替として使用してもよい。これは、製造の容易性、MTJスタックの総面積、または当業者によって認識される他の考慮事項を理由として採用してもよい。
【0054】
なお、
図1および
図4に示した形状/構成は、2ビットMRAMセルの作成に使用可能な形状の一例に過ぎない。当業者であれば認識できるように、多数の他の適切な形状が存在し、本開示は、これらの例示的な実施形態に限定されるものではない。
【0055】
いくつかの実施形態において、重金属層は、(
図4に示すように)各セルに対してローカルであってもよい。ただし、いくつかの他の実施形態において、重金属層は、同じ行の複数のMRAMセル間で共有されてもよい。これらの実施形態は複雑さが増す可能性があり、追加の書き込みサイクルを必要とする。
【0056】
次に、
図5Aは、本開示の実施形態に係る、製造プロセスの中間段階における2ビットMRAMセル500の断面図である。
図5Aは、最初の材料スタックの形成後であって、最初のエッチング工程の前のMRAMセル500を示している。MRAMセル500は、基板502上に1つ以上の誘電体層504、506、508を含んでいる。これらをまとめて誘電体層550と呼ぶ。
【0057】
誘電体層550の上には、任意の適切な作製プロセスによって形成された重金属層510が設けられている。重金属層510は、誘電体層上に重金属(例えば、Pl)を堆積させるための任意の適切な作製プロセスによって誘電体層550上に形成されてもよい。重金属層510の上に自由層512が形成される。自由層512は、任意の適切な強磁性材料であってもよい。
【0058】
任意の適切な作製プロセスによって、自由層512の上にトンネル障壁514が形成される。トンネル障壁514は、例えば、MgOであってもよい。トンネル障壁514は、自由層512上でのMgOのエピタキシャル成長または材料堆積によって形成されてもよい。
【0059】
任意の適切な作製プロセスによって、トンネル障壁514の上に参照層516が形成される。そして、任意の適切な作製プロセスによって、参照層516の上に第2のトンネル障壁層518が形成されてもよい。第2のトンネル障壁層518は、第1のトンネル障壁層514と実質的に同様、または同じであってもよい。
【0060】
任意の適切な作製プロセスによって、トンネル障壁518の上に自由層520が形成される。自由層520は、任意の適切な強磁性材料であってもよい。いくつかの実施形態では、自由層520は、自由層512と同じ材料である。ただし、他の実施形態では、2つの自由層512、520は異なる材料である。
【0061】
任意の適切な作製プロセスによって、自由層520の上に重金属層522が形成される。重金属層522は、任意の適切な重金属(例えば、スピン軌道トルク特性を示す任意の金属)であってもよい。重金属層522は、重金属層510と実質的に同様、または同じであってもよい。
【0062】
任意の適切な作製プロセスによって、重金属層522の上に上部電極524が形成される。上部電極524は、Cuなどの任意の適切な電極材料で形成されてもよい。上部電極524の上に誘電体ハードマスク526が形成される。誘電体ハードマスク526は、当業者にとって既知であるように、任意の適切な材料で形成されてもよい。誘電体ハードマスク526の上に光学平坦化層(OPL)528が形成される。
【0063】
OPL528の上にシリコン反射防止コーティング(SiARC)530が形成される。最後に、SiARC530の上にレジスト532が形成される。
【0064】
次に、
図5Bを参照すると、ハードマスクエッチングプロセスが実行されて、誘電体ハードマスク526および上部電極524の一部が除去される。ハードマスクエッチングプロセスでは、重金属層522の上部までエッチングする。誘電体ハードマスク526および上部電極524の残りの部分の面積は、作製プロセスの終了時におけるMRAMセル500の第1のMTJの面積に基づく。
【0065】
次に、
図5Cを参照すると、重金属層522、自由層520、およびトンネル障壁518の時間制御されたエッチングが実行される。いくつかの実施形態では、時間制御されたエッチングは、イオンビームエッチングプロセスを利用する。他の実施形態では、RIEによって、重金属層522、自由層520、およびトンネル障壁518がエッチングされる。
【0066】
次に、
図5Dを参照すると、エッチングされた重金属層522、自由層520、およびトンネル障壁518の誘電体封止(dielectric encapsulation)が実行される。誘電体封止は、エッチングされた重金属層522、自由層520、およびトンネル障壁518の側辺に沿って誘電体(例えば、low-k)材料534を形成することを含む。
【0067】
次に、
図5Eを参照すると、参照層516、トンネル障壁514、および自由層512がエッチングされる。時間制御されたイオンビームエッチングまたはRIEによって、参照層516、トンネル障壁514、および自由層512をエッチングしてもよい。封止された上部層は、これらのエッチングされた層の側辺が誘電体封止層534と実質的に同一平面上となるように、エッチングのハードマスクとして機能することができる。エッチングは、重金属層510の上面まで行われてもよい。
【0068】
次に、
図5Fを参照すると、誘電体堆積と、重金属層522の上部を露出させるための残りの上部電極材料のCMPとが実行される。誘電体堆積は、重金属層510の露出した部分の上に低誘電体材料536を堆積させることを含む。いくつかの実施形態では、この工程の前に、スタック全体に対する第2の誘電体封止を行うことができる。
【0069】
次に、
図5Gを参照すると、重金属層538が、パターニングされた重金属層522、誘電体封止層534、および堆積した低誘電体層536に接触するように、構造物の上に堆積される。得られたMRAMセル500におけるHM1(522)およびHM2(510)は、配線工程(BEOL:back end of line)において2つの金属層に位置することができ、互いに直交して延びることになる。ただし、この図では説明のために、これらを平行として示している。
【0070】
次に、
図6は、本開示の実施形態に係る、2ビットMRAMセルの第1のビットをプログラムするための一例としての方法600のフローチャートである。方法600は、プロセッサ上で実行されるハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組み合わせによって実行されてもよい。例えば、方法600は、(例えば、プロセッサ内の)メモリコントローラによって実行されてもよい。
図1、
図2、および
図6を参照すると、方法600はまず動作602にて、メモリコントローラが、2ビットMRAMセル100の第1のビットをプログラムするための書き込みコマンドを受信する。
【0071】
図6で説明する例では、第1のビットは、第1のMTJ102に記憶される。書き込みコマンドはまた、第1のビットの値(たとえば、0または1)を示す。書き込みコマンドを受信したことに応じて、メモリコントローラは、当該値を第1のMTJ102にプログラムするのに必要な関連する電流を決定する。関連する電流は、第1のMTJ102が平行状態(例えば、
図2に示す例では0に関連付けられる)または反平行状態(例えば、
図2に示す例では1に関連付けられる)のどちらに設定されるかに依存する。適切な状態を第1のMTJ102にプログラムするのに必要な電流に基づき、電圧がビット線に駆動される。電圧は、高電圧であってもよいし、低電圧であってもよい。
【0072】
ビット線を適切な電圧に充電した後、動作604にて、第1のトランジスタT1および第3のトランジスタT3が活性化される。これは、第1のワード線と第3のワード線の電圧を高くすることによって行われる。第2のトランジスタT2はオフに維持される。これにより、第1の重金属層112に電流が流れ、それにより、第1のMTJ102が書き込みコマンドに含まれる値を記憶するようにプログラムされる。書き込みコマンドに基づいてMRAMセル100の第1のMTJ102をプログラミングした後、方法600は終了する。
【0073】
次に、
図7は、本開示の実施形態に係る、2ビットMRAMセルの第2のビットをプログラムするための一例としての方法700のフローチャートである。方法700は、プロセッサ上で実行されるハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組み合わせによって実行されてもよい。例えば、方法700は、(例えば、プロセッサ内の)メモリコントローラによって実行されてもよい。
図1、
図2、および
図7を参照すると、方法700はまず動作702にて、メモリコントローラが、2ビットMRAMセル100の第2のビットをプログラムするための書き込みコマンドを受信する。
【0074】
図7で説明する例では、第2のビットは、第2のMTJ104に記憶される。書き込みコマンドはまた、第2のビットの値(たとえば、0または1)を示す。書き込みコマンドを受信したことに応じて、メモリコントローラは、当該値を第2のMTJ104にプログラムするのに必要な関連する電流を決定する。関連する電流は、第2のMTJ104が平行状態(例えば、
図2に示す例では0に関連付けられる)または反平行状態(例えば、
図2に示す例では1に関連付けられる)のどちらに設定されるかに依存する。適切な状態を第2のMTJ104にプログラムするのに必要な電流に基づき、電圧がビット線に駆動される。電圧は、高電圧であってもよいし、低電圧であってもよい。
【0075】
ビット線を適切な電圧に充電した後、動作704にて、第2のトランジスタT2が活性化される。これは、第2のワード線の電圧を高くすることによって行われる。第1のトランジスタT1および第3のトランジスタT3はオフに維持される。これにより、第2の重金属層114に電流が流れ、それにより、第2のMTJ104が書き込みコマンドに含まれる値を記憶するようプログラムされる。書き込みコマンドに基づいてMRAMセル100の第2のMTJ104をプログラミングした後、方法700は終了する。
【0076】
次に、
図8は、本開示の実施形態に係る、2ビットMRAMセルに記憶されたデータを読み出すための一例としての方法800のフローチャートである。方法800は、プロセッサ上で実行されるハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組み合わせによって実行されてもよい。例えば、方法800は、(例えば、プロセッサ内の)メモリコントローラによって実行されてもよい。
図1、
図2、および
図8を参照すると、方法800はまず動作802にて、メモリコントローラが、2ビットMRAMセル100を読み出すための読み出しコマンドを受信する。
【0077】
動作804にて、第1のトランジスタT1が活性化される。これは、第1のワード線の電圧を高くすることによって行われてもよい。一方、第2のトランジスタT2および第3のトランジスタT3は、読み出しプロセス中はオフに維持される。第1のトランジスタT1の活性化(他の2つのトランジスタはオフ状態)によって、読み出し電流がトランジスタT1、第1の重金属層112、MTJ102、104、および第2の重金属層114を流れる。
【0078】
動作806にて、MTJスタックの抵抗が決定される。抵抗は、読み出し電流を測定し、測定した電流にオームの法則を適用し、ビット線の既知のプリチャージ電圧を使用することによって、決定してもよい。
【0079】
動作808にて、算出したMTJスタックの抵抗に基づいて、MRAMセルのビット値が決定される。第1のMTJおよび第2のMTJは異なる面積を有し、各MTJは、平行配向であるか反平行配向であるかに基づいて2つの抵抗状態を有するので、MRAMセルは全体として、実効的に4つの抵抗状態を有する。4つの抵抗状態の各々は、(例えば、
図2に示すように)2ビット値に対応する。従って、算出したMRAMセルの抵抗を4つの抵抗状態と比較して、MRAMセルの2ビット値を決定することができる。MRAMセルの2ビット値を決定した後、メモリコントローラは、当該2ビット値を読み出し要求の発信者に返すことができる。そして、方法800は終了してもよい。
【0080】
次に、
図9は、本開示の実施形態に係る、本明細書に記載の方法、ツール、モジュール、およびいずれかの関連する機能のうちの1つ以上を(例えば、コンピュータの1つ以上のプロセッサ回路またはコンピュータプロセッサを用いて)実装する際に使用可能な一例としてのコンピュータシステム901の概略ブロック図である。いくつかの実施形態において、コンピュータシステム901の主要なコンポーネントは、1つ以上のCPU902、メモリサブシステム904、端末インタフェース912、ストレージインタフェース916、I/O(入力/出力)デバイスインタフェース914、およびネットワークインタフェース918を含むことができる。これらはすべて、メモリバス903、I/Oバス908、およびI/Oバスインタフェースユニット910を介したコンポーネント間の通信を行うために直接または間接的に通信可能に結合することができる。
【0081】
コンピュータシステム901は、1つ以上の汎用プログラマブル中央処理装置(CPU)902A、902B、902C、および902D(ここではCPU902と総称する)を含むことができる。いくつかの実施形態において、コンピュータシステム901は、比較的大型のシステムでよく見られるように複数のプロセッサを含んでもよいが、他の実施形態ではそれに代えて、コンピュータシステム901は単一のCPUを用いたシステムであってもよい。各CPU902は、メモリサブシステム904に記憶された命令を実行することができる。また、各CPU902は、1つ以上のレベルのオンボードキャッシュを含むことができる。
【0082】
システムメモリ904は、ランダムアクセスメモリ(RAM)922やキャッシュメモリ924などの揮発性メモリとしてのコンピュータシステム読取可能媒体を含むことができる。コンピュータシステム901は、他の取り外し可能/取り外し不可能な揮発性/不揮発性のコンピュータシステム記憶媒体をさらに含むことができる。あくまでも例示として、ストレージシステム926は、「ハードドライブ」などの取り外し不可能な不揮発性の磁気媒体への読み書きのために設けることができる。図示は省略するが、取り外し可能な不揮発性磁気ディスク(例えば、フロッピーディスク)への読み書きのための磁気ディスクドライブ、および取り外し可能な不揮発性光学ディスク(CD-ROM、DVD-ROMや他の光学媒体など)への読み書きのための光学ディスクドライブを設けることができる。さらに、メモリ904は、フラッシュメモリ(例えば、フラッシュメモリスティックドライブまたはフラッシュドライブ)を含むことができる。メモリデバイスは、1つ以上のデータ媒体インタフェースによってメモリバス903に接続することができる。メモリ904は、各種の実施形態の機能を実行するように構成されたプログラムモジュールのセット(例えば、少なくとも1つ)を有する少なくとも1つのプログラム製品を含むことができる。
【0083】
各々が少なくとも1セットのプログラムモジュール930を有する1つ以上のプログラム/ユーティリティ928は、メモリ904に記憶することができる。プログラム/ユーティリティ928は、ハイパーバイザー(仮想マシンモニタとも呼ばれる)、1つ以上のオペレーティングシステム、1つ以上のアプリケーションプログラム、他のプログラムモジュール、およびプログラムデータを含むことができる。オペレーティングシステム、1つ以上のアプリケーションプログラム、他のプログラムモジュール、およびプログラムデータの各々、またはこれらの何らかの組み合わせは、ネットワーク環境の実装形態を含むことができる。プログラムモジュール930は一般に、各種の実施形態の機能または方法を実行する。
【0084】
メモリバス903は、
図9では、CPU902、メモリサブシステム904、およびI/Oバスインタフェース910間の直接的な通信経路を提供する単一のバス構造として図示されているが、メモリバス903は、いくつかの実施形態において、複数の異なるバスまたは通信経路を含むことができる。これらのバスまたは通信経路は、階層的なスター型もしくはウェブ型構成のポイントツーポイントリンク、複数の階層的バス、並列および冗長経路、またはいずれかの他の適切な種類の構成など、各種形態のうちのいずれかで配置することができる。さらに、I/Oバスインタフェース910およびI/Oバス908は、それぞれ単一のユニットとして図示されているが、コンピュータシステム901は、いくつかの実施形態において、複数のI/Oバスインタフェースユニット910、複数のI/Oバス908、またはその両方を含むことができる。さらに、複数のI/Oインタフェースユニットが図示されており、これらが、各種のI/Oデバイスにつながる各種の通信経路からI/Oバス908を分離しているが、他の実施形態において、I/Oデバイスの一部または全部が、1つ以上のシステムI/Oバスに直接接続されてもよい。
【0085】
いくつかの実施形態において、コンピュータシステム901は、マルチユーザメインフレームコンピュータシステム、シングルユーザシステム、または、直接のユーザインタフェースをほとんどもしくは全く有さないが、他のコンピュータシステム(クライアント)から要求を受け取るサーバコンピュータもしくは類似の装置とすることができる。さらに、いくつかの実施形態において、コンピュータシステム901は、デスクトップコンピュータ、ポータブルコンピュータ、ラップトップもしくはノートブックコンピュータ、タブレットコンピュータ、ポケットコンピュータ、電話、スマートフォン、ネットワークスイッチもしくはルータ、または任意の他の適切な種類の電子デバイスとして実現することができる。
【0086】
なお、
図9は、一例としてのコンピュータシステム901における代表的な主要コンポーネントを図示することを意図している。いくつかの実施形態において、個々のコンポーネントは、
図9に示したものよりも複雑であってもよいし、単純であってもよい。また、
図9に示したもの以外のコンポーネントが存在してもよいし、
図9に示したものに加えて他のコンポーネントが存在してもよい。そのようなコンポーネントの数、種類、および構成は異なってもよい。さらに、モジュールは、一実施形態に従って例示的に列挙および記載されたものであり、特定のモジュールが必要であることや、他の可能性のあるモジュール(または特定のモジュールに適用される機能/目的)を排除することを示すものではない。
【0087】
本発明は、任意の可能な技術詳細レベルで統合されたシステム、方法もしくはコンピュータプログラム製品またはそれらの組み合わせとすることができる。コンピュータプログラム製品は、プロセッサに本発明の態様を実行させるためのコンピュータ可読プログラム命令を記憶したコンピュータ可読記憶媒体を含んでもよい。
【0088】
コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行デバイスによって使用される命令を保持し、記憶することができる有形のデバイスとすることができる。コンピュータ可読記憶媒体は、一例として、電子ストレージデバイス、磁気ストレージデバイス、光ストレージデバイス、電磁ストレージデバイス、半導体ストレージデバイスまたはこれらの適切な組み合わせであってもよい。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な一例としては、ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、RAM、ROM、EPROM(またはフラッシュメモリ)、SRAM、CD-ROM、DVD、メモリスティック、フロッピーディスク、パンチカードまたは溝内の隆起構造などに命令を記録した機械的に符号化されたデバイス、およびこれらの適切な組み合せが挙げられる。本明細書で使用されるコンピュータ可読記憶媒体は、電波もしくは他の自由に伝播する電磁波、導波管もしくは他の伝送媒体を介して伝播する電磁波(例えば、光ファイバケーブルを通過する光パルス)、またはワイヤを介して送信される電気信号のような、一過性の信号それ自体として解釈されるべきではない。
【0089】
本明細書に記載のコンピュータ可読プログラム命令は、コンピュータ可読記憶媒体からそれぞれのコンピューティングデバイス/処理デバイスへダウンロード可能である。あるいは、ネットワーク(例えばインターネット、LAN、WANもしくはワイヤレスネットワークまたはこれらの組み合わせ)を介して、外部コンピュータまたは外部ストレージデバイスへダウンロード可能である。ネットワークは、銅製伝送ケーブル、光伝送ファイバ、ワイヤレス伝送、ルータ、ファイアウォール、スイッチ、ゲートウェイコンピュータもしくはエッジサーバまたはこれらの組み合わせを備えることができる。各コンピューティングデバイス/処理デバイス内のネットワークアダプタカードまたはネットワークインタフェースは、ネットワークからコンピュータ可読プログラム命令を受信し、当該コンピュータ可読プログラム命令を、各々のコンピューティングデバイス/処理デバイスにおけるコンピュータ可読記憶媒体に記憶するために転送する。
【0090】
本発明の動作を実施するためのコンピュータ可読プログラム命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、機械命令、機械依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、集積回路用構成データ、または、スモールトークやC++などのオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語や類似のプログラミング言語などの手続き型プログラミング言語を含む、1つ以上のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードもしくはオブジェクトコードのいずれかとすることができる。コンピュータ可読プログラム命令は、スタンドアロン型ソフトウェアパッケージとして完全にユーザのコンピュータ上で、または部分的にユーザのコンピュータ上で実行可能である。あるいは、部分的にユーザのコンピュータ上でかつ部分的にリモートコンピュータ上で、または、完全にリモートコンピュータもしくはサーバ上で実行可能である。後者の場合、リモートコンピュータは、LANやWANを含む任意の種類のネットワークを介してユーザのコンピュータに接続してもよいし、外部コンピュータに(例えば、インターネットサービスプロバイダを使用してインターネットを介して)接続してもよい。いくつかの実施形態において、例えばプログラマブル論理回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブル論理アレイ(PLA)を含む電子回路は、本発明の態様を実行する目的で当該電子回路をカスタマイズするために、コンピュータ可読プログラム命令の状態情報を利用することによって、コンピュータ可読プログラム命令を実行することができる。
【0091】
本発明の態様は、本明細書において、本発明の実施形態に係る方法、装置(システム)、およびコンピュータプログラム製品のフローチャートもしくはブロック図またはその両方を参照して説明されている。フローチャートもしくはブロック図またはその両方における各ブロック、および、フローチャートもしくはブロック図またはその両方における複数のブロックの組み合わせは、コンピュータ可読プログラム命令によって実行可能である。
【0092】
これらのコンピュータ可読プログラム命令は、機械を生産するために、コンピュータまたは他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサに提供することができる。これにより、このようなコンピュータまたは他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサを介して実行されるこれらの命令が、フローチャートもしくはブロック図またはその両方における1つ以上のブロックにて特定される機能/動作を実行するための手段を創出する。これらのコンピュータ可読プログラム命令はさらに、コンピュータ、プログラマブルデータ処理装置もしくは他のデバイスまたはこれらの組み合わせに対して特定の態様で機能するよう命令可能なコンピュータ可読記憶媒体に記憶することができる。これにより、命令が記憶された当該コンピュータ可読記憶媒体は、フローチャートもしくはブロック図またはその両方における1つ以上のブロックにて特定される機能/動作の態様を実行するための命令を含む製品を構成する。
【0093】
また、コンピュータ可読プログラム命令を、コンピュータ、他のプログラマブル装置、または他のデバイスにロードし、一連の動作ステップを当該コンピュータ、他のプログラマブル装置、または他のデバイス上で実行させることにより、コンピュータ実行プロセスを生成してもよい。これにより、当該コンピュータ、他のプログラマブル装置、または他のデバイス上で実行される命令が、フローチャートもしくはブロック図またはその両方における1つ以上のブロックにて特定される機能/動作を実行する。
【0094】
図面におけるフローチャートおよびブロック図は、本発明の種々の実施形態に係るシステム、方法およびコンピュータプログラム製品の可能な実装形態のアーキテクチャ、機能性、および動作を示している。この点に関して、フローチャートまたはブロック図における各ブロックは、特定の論理機能を実行するための1つ以上の実行可能な命令を含む、命令のモジュール、セグメント、または部分を表すことができる。他の一部の実装形態において、ブロック内に示した機能は、各図に示す順序とは異なる順序で実行されてもよい。例えば、関係する機能に応じて、連続して示される2つのブロックが、実際には、1つの工程として達成されてもよいし、同時もしくは略同時に実行されてもよいし、部分的もしくは全体的に時間的に重複した態様で実行されてもよいし、ブロックが場合により逆順で実行されてもよい。なお、ブロック図もしくはフローチャートまたはその両方における各ブロック、および、ブロック図もしくはフローチャートまたはその両方における複数のブロックの組み合わせは、特定の機能もしくは動作を行う、または専用ハードウェアとコンピュータ命令との組み合わせを実行する、専用ハードウェアベースのシステムによって実行可能である。
【0095】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、種々の実施形態を限定することを意図するものではない。本明細書において、単数形「ある(a)」、「ある(an)」および「その(the)」は、文脈上そうではないことが明らかでない限り、複数形も含むことを意図している。さらに、本明細書において、「含む(includes)」もしくは「含んでいる(including)」またはその両方の用語は、記載された特徴、整数、ステップ、操作、要素、もしくは構成要素またはその組み合わせが存在することを規定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素、もしくはそれらのグループまたはその組み合わせが存在すること、または追加されることを排除しない。各種の実施形態の例示的な実施形態についての上述の詳細な説明において、添付図面(同様の符号は同様の要素を表す)を参照した。添付図面は本明細書の一部を構成するものであり、各種の実施形態を実施可能な特定の実施形態例を例示している。これらの実施形態は、当業者が実施形態を実施できるように十分詳細に説明されたが、他の実施形態を用いてもよく、各種の実施形態の範囲から逸脱することなく、論理的、機械的、電気的、および他の形式の変更が行われてもよい。上述の説明において、各種の実施形態の完全な理解に供するために、多数の具体的な詳細を示した。ただし、各種の実施形態は、これらの具体的な詳細を有さずに実施してもよい。他の例では、本実施形態が不明瞭になることを避けるために、周知の回路、構造、および技術については詳細な説明を省略している。
【0096】
本明細書において、項目に関して「ある数の(a number of)」という場合、1つ以上の項目を意味する。例えば、「ある数の異なる種類のネットワーク」は、1つ以上の異なる種類のネットワークである。
【0097】
異なる参照番号が、共通の番号とそれに続く異なる文字(例えば、100a、100b、100c)、または共通の番号とそれに続く句読点とそれに続く異なる番号(例えば、100-1、100-2、もしくは100.1、100.2)で構成される場合、これらの文字または後続番号を含まずに参照符号のみ(例えば、100)を用いた場合、要素グループ全体、当該グループ内のいずれかのサブセット、または当該グループ内の例示的な標本を指す場合がある。
【0098】
さらに、項目のリストと共に「少なくとも1つの(at least one of)」という表現が使用される場合、リストされた1つ以上の項目の異なる組み合わせが使用可能であることを意味し、リスト内の各項目が1つのみ必要であってもよい。言い換えれば、「少なくとも1つの」は、リスト内の項目を任意の組み合わせおよび任意の数で使用可能であり、リスト内のすべての項目が必要なわけではないことを意味する。項目は、特定の対象、物、またはカテゴリとすることができる。
【0099】
例えば、「項目A、項目B、または項目Cのうちの少なくとも1つ」は、限定するものではないが、「項目A」、「項目Aと項目B」、または、「項目B」を含むことができる。この例ではさらに、「項目Aと項目Bと項目C」、または、「項目Bと項目C」を含むことができる。もちろん、これらの項目のあらゆる組み合わせが存在する。いくつか例示すると、「少なくとも1つの」は、例えば、限定するものではないが、「2個の項目Aと1個の項目Bと10個の項目C」、「4個の項目Bと7個の項目C」、または、他の適切な組み合わせとすることができる。
【0100】
上述の説明において、各種の実施形態を参照した。ただし、本開示は、具体的に説明された実施形態に限定されない。異なる実施形態に関連しているか否かにかかわらず、記載された特徴および要素の任意の組み合わせが、本開示を実装および実施する上で考えられる。記載した実施形態の範囲および主旨から逸脱しない範囲で、多くの修正、変更、および変形が当業者にとって明らかな場合がある。さらに、本開示の実施形態は、他の可能な解決手段または先行技術に対して利点を達成することができるが、特定の利点が所与の実施形態によって達成されるか否かは、本開示を限定するものではない。したがって、記載した態様、特徴、実施形態、および利点はあくまでも例示であり、特許請求の範囲に明示的に記載されている場合を除き、添付の特許請求の範囲の要素または限定事項とは見なされない。さらに、以下の特許請求の範囲は、本発明の真の主旨および範囲に属するすべてのかかる変更および変形を包含するものと解釈されることが意図される。