(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】難燃性ウレタン樹脂組成物及びポリウレタン発泡体
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20250401BHJP
C08G 18/22 20060101ALI20250401BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20250401BHJP
C08K 3/016 20180101ALI20250401BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20250401BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20250401BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20250401BHJP
C08K 5/5399 20060101ALI20250401BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20250401BHJP
E04B 1/80 20060101ALI20250401BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20250401BHJP
【FI】
C08G18/00 J
C08G18/22
C08G18/48 079
C08K3/016
C08K3/08
C08K3/32
C08K5/521
C08K5/5399
C08L75/04
E04B1/80 A
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2020160068
(22)【出願日】2020-09-24
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】玉井 裕介
【審査官】大塚 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-070410(JP,A)
【文献】特開2020-033502(JP,A)
【文献】特表2018-502960(JP,A)
【文献】特開2020-132835(JP,A)
【文献】特開2015-059321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00
C08G 18/22
C08G 18/48
C08K 3/016
C08K 3/08
C08K 3/32
C08K 5/521
C08K 5/5399
C08L 75/04
E04B 1/80
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、液状難燃剤、触媒、発泡剤、及び添加剤Aを含み、
前記ポリオール化合物として、ポリオール化合物100質量部のうちポリエーテルポリオールを
80質量部以上、芳香環を有する
ポリエーテルポリオールを30質量部以上の割合で含み、
前記触媒がウレタン化触媒を含み、三量化触媒の含有量がポリオール化合物100質量部に対して5質量部以下であり、
前記発泡剤がハイドロフルオロオレフィンを含み、
前記添加剤Aがリン元素を含有する固体難燃剤であり、
前記液状難燃剤の含有量が、前記ポリオール化合物100質量部に対して3~60質量部であり、
前記添加剤Aの含有量が、前記ポリオール化合物100質量部に対して5~80質量部であることを特徴とする、
建築物の表面に吹き付け
ることにより断熱材を形成するための難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記添加剤Aが赤燐、ホスファゼン誘導体、及びリン酸塩から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の
建築物の表面に吹き付け
ることにより断熱材を形成するための難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記触媒がビスマス化合物を含有する、請求項1~2のいずれかに記載の
建築物の表面に吹き付け
ることにより断熱材を形成するための難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記触媒がイミダゾール系化合物を含有する、請求項1~3のいずれかに記載の
建築物の表面に吹き付け
ることにより断熱材を形成するための難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
イソシアネートインデックスが300以下である、請求項1~4のいずれかに記載の
建築物の表面に吹き付け
ることにより断熱材を形成するための難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の
建築物の表面に吹き付け
ることにより断熱材を形成するための難燃性ウレタン樹脂組成物から形成されるポリウレタン発泡体。
【請求項7】
ヌレート化度が1.2以下である、請求項6に記載のポリウレタン発泡体。
なお、ヌレート化度は、ポリウレタン発泡体について赤外線吸収スペクトルを測定した際の、1900~2000cm
-1の平均強度をゼロに合わせた時の1500~1520cm
-1の最大ピーク強度Iaに対する、1390~1430cm
-1の最大ピーク強度Ibの比(Ib/Ia)である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性ウレタン樹脂組成物及びポリウレタン発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン発泡体は、その優れた断熱性を利用して、マンション等の集合住宅、戸建住宅、商業ビル等の建築物の天井、屋根、壁面などの各構造物の断熱や結露防止に実用されている。ポリウレタン発泡体は、各構造物の表面に、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物を含む発泡性ウレタン樹脂組成物を吹付け、発泡及び硬化させることにより形成される。
【0003】
ポリウレタン発泡体は、軽量であるものの、有機物であるため燃えやすい。これを改善するため、難燃性の高いポリウレタン発泡体が必要とされている。ポリウレタン発泡体の難燃性を高める観点から、ポリウレタンにイソシアヌレート環を形成させる方法が知られている。
例えば、特許文献1では、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、触媒、及び発泡剤などの種類及び量を特定し、かつイソシアネートインデックスを一定範囲として形成させたポリイソシアヌレート発泡体(ポリウレタン発泡体)についての発明が開示され、難燃性に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポリウレタンにイソシアヌレート環を多く形成させたヌレート化度の高いポリウレタン発泡体は、初期発泡による発泡と、初期発泡の後に一定時間経過した後に生じる2回目の発泡との2段発泡により形成される。このような2段発泡により形成されたポリウレタン発泡体は、発泡形状が歪になったり構造物との接着性が悪くなるなどの問題があった。一方で、ヌレート化度を低くした場合は、上記2段発泡の問題は生じないものの、難燃性が低下してしまう。
そこで、本発明は、2段発泡を抑制し、かつ難燃性にも優れるポリウレタン発泡体を形成できる難燃性ウレタン樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討の結果、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、液状難燃剤、触媒、発泡剤、及び添加剤Aを含み、該添加剤Aがリン元素を含有する固体難燃剤である難燃性ウレタン樹脂組成物により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の[1]~[9]を提供する。
[1]ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、液状難燃剤、触媒、発泡剤、及び添加剤Aを含み、前記添加剤Aがリン元素を含有する固体難燃剤であることを特徴とする難燃性ウレタン樹脂組成物。
[2]前記添加剤Aが赤燐、ホスファゼン誘導体、及びリン酸塩から選択される少なくとも1種である、上記[1]に記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
[3]ポリオール化合物100質量部のうち、芳香環を有するポリオールが30質量部以上である、上記[1]又は[2]に記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
[4]前記触媒がビスマス化合物を含有する、上記[1]~[3]のいずれかに記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
[5]三量化触媒を実質的に含まない、上記[1]~[4]のいずれかに記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
[6]イソシアネートインデックスが300以下である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
[7]吹き付け用である、上記[1]~[6]のいすれかに記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
[8]上記[1]~[7]のいずれかに記載の難燃性ウレタン樹脂組成物から形成されるポリウレタン発泡体。
[9]ヌレート化度が1.0以下である、上記[8]に記載のポリウレタン発泡体。
なお、ヌレート化度は、ポリウレタン発泡体について赤外線吸収スペクトルを測定した際の、1900~2000cm-1の平均強度をゼロに合わせた時の1500~1520cm-1の最大ピーク強度Iaに対する、1390~1430cm-1の最大ピーク強度Ibの比(Ib/Ia)である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、2段発泡を抑制し、かつ難燃性に優れるポリウレタン発泡体を形成できる難燃性ウレタン樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、液状難燃剤、触媒、発泡剤、及び添加剤Aを含み、該添加剤Aがリン元素を含有する固体難燃剤である。
本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物は、難燃性向上のため、液状難燃剤と添加剤Aとを併用している。これらを併用した場合は、ヌレート化度を高くすることなく、ポリウレタン発泡体の難燃性を向上させることができ、そのため2段発泡も抑制できると考えられる。
【0009】
[液状難燃剤]
本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物は、液状難燃剤を含有する。これにより、難燃性ウレタン樹脂組成物により形成されるポリウレタン発泡体の難燃性が向上する。ここで、液状の難燃剤とは、23℃において液状の難燃剤である。
液状難燃剤として、例えば、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等のリン酸エステル系難燃剤が挙げられる。
モノリン酸エステルとしては、特に限定されないが、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートなどが挙げられる。
縮合リン酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、レゾルシノールポリフェニルホスフェート(商品名CR-733S)、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート(商品名CR-741)、芳香族縮合リン酸エステル(商品名CR747)などが挙げられる。
液状難燃剤の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、好ましくは3~60質量部であり、より好ましくは5~40質量部であり、さらに好ましくは10~30質量部である。液状難燃剤の含有量がこれら下限値以上であると、ポリウレタン発泡体の難燃性が向上しやすくなる。液状難燃剤の含有量がこれら上限値以下であると、発泡が阻害されないなどにより、ポリウレタン発泡体が製造しやすくなる。
【0010】
[添加剤A]
本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物は、添加剤Aを含有し、該添加剤Aがリン元素を含有する固体難燃剤である。該添加剤Aと、上記液状難燃剤を併用することにより、形成されるポリウレタン発泡体の難燃性が効果的に高まる。また、該添加剤Aと、液状難燃剤との併用によりポリウレタン発泡体の難燃性を向上させているため、ヌレート化度の低いポリウレタン発泡体が得られる。そのため、発泡時の2段発泡も抑制されて、構造物上に形成されたポリウレタン発泡体は、構造物との接着性が良好である。
【0011】
添加剤Aとしては、リン元素を含有する固体難燃剤である。ここで固体難燃剤とは23℃において固体状の難燃剤である。該リン元素を含有する固体難燃剤としては、赤燐、ホスファゼン誘導体、及びリン酸塩から選択される少なくとも1種が好ましい。中でも、難燃性を向上させる効果の観点から、赤燐が好ましい。
【0012】
(赤燐)
赤燐としては、赤燐単体からなるものであってもよいし、赤燐に、樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などを混合したり、被覆したりしたものであってもよい。
【0013】
(リン酸塩)
リン酸塩は、リン酸と、周期律表IA族~IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミンから選ばれる少なくとも一種の金属または化合物との塩からなるリン酸塩である。
リン酸は特に限定はないが、モノリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸等の各種リン酸が挙
げられる。
前記周期律表IA族~IVB族の金属として、リチウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、鉄(II)、鉄(III)、アルミニウム等が挙げられる。前記脂肪族アミンとして、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等が挙げられる。また前記芳香族アミンとして、ピリジン、トリアジン、メラミン等が挙げられる。
リン酸塩の具体例としては、例えば、第三リン酸アルミニウム等のモノリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。ここで、ポリリン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。中でも、ポリリン酸アンモニウムが好ましい。
上記のリン酸塩は、シランカップリング剤処理、メラミン樹脂で被覆する等の公知の耐水性向上処理を加えてもよい。
【0014】
(ホスファゼン誘導体)
ホスファゼン誘導体は、分子中に-P=N-結合を有する有機化合物であり、鎖状であってもよいし、環状であってもよい。
ホスファゼン誘導体としては、比較的高い分解温度を有することより、好ましくは、下記一般式(1)で表されるものが好ましい。
【化1】
上記式(1)中、R
1~R
6はそれぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子のいずれかを示す。
このようなホスファゼン系化合物の例としては、大塚化学社から市販されている「SPB-100」等が挙げられる。
【0015】
本発明における添加剤Aの含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、好ましくは5~80質量部であり、より好ましくは8~60質量部であり、さらに好ましくは10~40質量部であり、さらに好ましくは20~40質量部である。添加剤Aの含有量がこれら下限値以上であると、ポリウレタン発泡体の難燃性が向上しやすくなる。添加剤Aの含有量がこれら上限値以下であると、発泡が阻害されないなどにより、ポリウレタン発泡体が製造しやすくなる。
【0016】
また、添加剤Aとしては、ポリウレタン発泡体の難燃性向上の観点から、分解温度が好ましくは270℃以上、より好ましくは300℃以上のものが好ましい。なお、分解温度は、TG/DTA(示差熱量同時測定装置)により、空気雰囲気下にて測定した場合の、温度-重量変化曲線における重量変化し始める温度を意味する。
【0017】
また、上記した液状難燃剤に対する添加剤Aの質量比(添加剤A/液状難燃剤)は、好ましくは0.1~10であり、より好ましくは0.5~5であり、さらに好ましくは0.8~3である。
【0018】
[ポリオール化合物]
本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物に含まれるポリオール化合物は、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなどが好ましく用いられる。中でも、発泡体形成の観点、特に後述するように三量化触媒を用いずに所望の発泡体を形成させる観点からは、ポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。
このような観点から、ポリオール化合物100質量部のうち、ポリエーテルポリオールを20質量部以上とすることが好ましく、50質量部以上とすることがより好ましく、80質量部以上とすることがさらに好ましく、100質量部とすることが特に好ましい。
なお、2種類以上のポリオール化合物を用いる場合は、ポリオール化合物の水酸基価として、当該2種類以上のポリオール化合物の配合比率に従った平均水酸基価を用いることがある。
例えば、ポリオール化合物として、2種類のポリオール(d1)、ポリオール(d2)を用いる場合、ポリオール(d1)の水酸基価をX1、配合比率をm1、ポリオール(d2)の水酸基価をX2、配合比率をm2とすると、該平均水酸基価は、以下の式で表される。なお、配合比率は、質量基準である。
平均水酸基価(mgKOH/g)=X1×(m1/(m1+m2))+X2×(m2/(m1+m2))
本発明で用いるポリオール化合物の平均水酸基価は、ポリウレタン発泡体の難燃性を向上させる観点から、200~800mgKOH/gが好ましく、250~600mgKOH/gがより好ましく、300~500mgKOH/gがさらに好ましい。
【0019】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールは、2個以上の活性水素原子を有する開始剤に、アルキレンオキサイドを開環付加重合させて得られたポリオキシアルキレンポリオールである。開始剤としては、具体的には例えば、脂肪族多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどのグリコール類、トリメチロールプロパン、グリセリンなどのトリオール類、ペンタエリスリトールなどの4官能アルコール類、シュクロース類、ソルビトール類などの高官能類)、脂肪族アミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンチルジアミンなどのアルキレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミン)、芳香族アミン(例えば、アニリン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、マンニッヒ縮合物など)などが挙げられる。
これらのうち、芳香環を有する開始剤を用いて製造したポリエーテルポリオールが、芳香環を有するポリエーテルポリオールであり、例えば芳香族アミンを開始剤として用いて製造したポリエーテルポリオールは、芳香環を有するポリエーテルポリオールである。芳香環を有するポリエーテルポリオールの中でも、トリレンジアミン系ポリエーテルポリオール、マンニッヒ系ポリエーテルポリオールなどを好適に使用することができる。
【0020】
トリレンジアミン系ポリエーテルポリオールとは、開始剤としてトリレンジアミンを用いて製造したトリレンジアミン系ポリエーテルポリオールである。
上記マンニッヒ系ポリエーテルポリオールとは、マンニッヒ反応を利用して得られるものであって、分子内に2個以上の水酸基を有するマンニッヒ縮合物、又はそのようなマンニッヒ縮合物に、アルキレンオキサイドを付加させたポリエーテルポリオールである。より具体的には、フェノール及びそのアルキル置換誘導体の少なくともいずれか、ホルムアルデヒド及びアルカノールアミンのマンニッヒ反応により得られたマンニッヒ縮合物、又はこの化合物にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオールである。
【0021】
ポリエーテルポリオールの水酸基価は、200~2000mgKOH/gであることが好ましく、300~1000mgKOH/gであることがより好ましい。水酸基価は、JIS K1557-1:2007に準拠して測定される値である。
【0022】
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールは、芳香環を有するポリエステルポリオールである芳香族ポリエステルポリオール、脂肪族ポリエステルポリオールなどが挙げられるが、得られるポリウレタン発泡体の難燃性を考慮した場合、芳香族ポリエステルポリオールを使用することが好ましい。芳香族ポリエステルポリオールは、o-フタル酸(フタル酸)、m-フタル酸(イソフタル酸)、p-フタル酸(テレフタル酸)、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸とグリコールの縮合物であることが好ましい。中でも、ポリウレタン発泡体の難燃性を高める観点から、ポリエステルポリオールは、フタル酸とグリコールとの縮合物である、フタル酸系ポリエステルポリオールであることが好ましく、p-フタル酸とグリコールの縮合物である、p-フタル酸系ポリエステルポリオールを含むことがより好ましい。
グリコールとしては、特に限定されるものではないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のポリエステルポリオールの構成成分として公知の低分子量脂肪族グリコールを使用することが好ましい。
【0023】
ポリエステルポリオールの水酸基価は、100~500mgKOH/gであることが好ましく、150~450mgKOH/gであることがより好ましい。
【0024】
また、ポリウレタン発泡体の難燃性を向上させる観点から、ポリオール化合物は、芳香環を有するポリオールであることが好ましく、中でも発泡体を形成させ易くする観点から、芳香環を有するポリエーテルポリオールであることが好ましい。
芳香環を有するポリオールの含有量は、得られるポリウレタン発泡体の難燃性向上の観点から、ポリオール化合物100質量部のうち30質量部以上であることが好ましく、50質量部以上であることがより好ましい。
また、芳香環を有するポリオールの含有量は、得られるポリウレタン発泡体の柔軟性の観点から、ポリオール化合物100質量部のうち、95質量部以下であることが好ましく、90質量部以下であることがより好ましく、85質量部以下であることがさらに好ましい。
【0025】
[ポリイソシアネート化合物]
ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を2個以上有する芳香族系、脂環族系、脂肪族系などの各種ポリイソシアネート化合物を用いることができる。好ましくは、取扱の容易さ、反応の速さ、得られるポリウレタン発泡体の物理特性が優れていること、および低コストであることなどから、液状ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いることが好ましい。液状MDIとしては、クルードMDI(ポリメリックMDIともいう)が挙げられる。液状MDIの具体的な市販品としては、「44V-10」,「44V-20」(住化コベストロウレタン株式会社製)、「ミリオネートMR-200」(日本ポリウレタン工業)などが挙げられる。また、ウレトンイミン含有MDI(例えば、市販品として「ミリオネートMTL」:日本ポリウレタン工業製)などでもよい。また、イソポリシアネート化合物内のイソシアネート活性基の一部を水酸基含有化合物と反応させ、予めポリオールとの親和性を高めた処置を施したものを使用してもよい。液状MDIに加えて、他のポリイソシアネート化合物を併用してもよく、併用するポリイソシアネート化合物としては、ポリウレタンの技術分野において公知のポリイソシアネート化合物は限定なく使用可能である。
【0026】
難燃性ウレタン樹脂組成物のイソシアネートインデックスは、好ましくは300以下であり、より好ましくは240以下であり、さらに好ましくは180以下である。イソシアネートインデックスがこれら上限値以下であると、発泡体形成時の2段発泡などが抑制されやすくなる。
また、難燃性ウレタン樹脂組成物のイソシアネートインデックスは、ポリウレタン発泡体を適切に形成させる観点から、80以上であることが好ましく、90以上であることがより好ましく、100以上であることがさらに好ましい。
イソシアネートインデックス(INDEX)は、以下の方法にて算出される。
【0027】
INDEX=イソシアネートの当量数÷(ポリオールの当量数+水の当量数)×100
ここで、
イソシアネートの当量数=ポリイソシアネートの使用部数×NCO含有率(%)×100/NCO分子量
ポリオールの当量数=OHV×ポリオールの使用部数÷KOHの分子量、OHVはポリオールの水酸基価(mgKOH/g)、
水の当量数=水の使用部数×水のOH基の数/水の分子量
である。なお上記式において、使用部数の単位は重量(g)であり、NCO基の分子量は42、NCO含有率はポリイソシアネート化合物中のNCO基の割合を質量%で表したものであり、上記式の単位換算の都合上KOHの分子量は56100とし、水の分子量は18、水のOH基の数は2とする。
【0028】
[触媒]
難燃性ウレタン樹脂組成物は、触媒を含有する。触媒は、例えばウレタン化触媒、三量化触媒が挙げられる。三量化触媒は、イソシアヌレート結合を形成する三量化を促進する触媒である。そのため、本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物は、2段発泡を抑制する観点から、三量化触媒を実質的に含まないことが好ましい。ここで、三量化触媒を実質的に含まないとは、ポリオール化合物100質量部に対して、三量化触媒の含有量が5質量部以下であることを意味する。ポリオール化合物100質量部に対する、三量化触媒の含有量は2質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましく、0質量部であることがさらに好ましい。このような観点から、本発明における触媒は、ウレタン化触媒(樹脂化・泡化を含む)のみにより構成されることが好ましい。
【0029】
ウレタン化触媒は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応を促進させる触媒である。具体的には、アミノ化合物、錫化合物、ビスマス化合物、アセチルアセトン金属塩が挙げられる。
前記アミノ化合物としては、例えば1-メチルイミダゾール、1、2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2メチルイミダゾール、イミダゾール環中の第2級アミン官能基をシアノエチル基で置換したイミダゾール化合物などのイミダゾール系化合物、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチルアミン、N-メチルモルホリンビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’-トリメチルアミノエチル-エタノールアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N-メチル-N’,N’-ジメチルアミノエチルピペラジン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、トリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリメチルアミノエチルピペラジン、トリプロピルアミン、およびそれらの酸ブロック体等が挙げられる。
アミノ化合物としては、イミダゾール系化合物が好ましいが、イミダゾール系化合物とイミダゾール系化合物以外の3級アミン化合物を併用することも好ましい。3級アミン化合物としては、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミンなどが好ましい。
【0030】
また、錫化合物としては、例えば、オクチル酸第一錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート等が挙げられる。ビスマス化合物としては、ネオデカン酸ビスマス、オクチル酸ビスマスなどが挙げられる。
アセチルアセトン金属塩としては、例えば、アセチルアセトンアルミニウム、アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン銅、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンベリリウム、アセチルアセトンクロム、アセチルアセトンインジウム、アセチルアセトンマンガン、アセチルアセトンモリブデン、アセチルアセトンチタン、アセチルアセトンコバルト、アセチルアセトンバナジウム、アセチルアセトンジルコニウム等が挙げられる。
【0031】
本発明における触媒は、難燃性ウレタン樹脂組成物を吹付けることによりポリウレタン発泡体を形成する際の発泡性を良好にする観点から、上記したビスマス化合物を含有することが好ましく、ビスマス化合物とアミノ化合物の併用が好ましく、ビスマス化合物とイミダゾール化合物の併用がより好ましい。
ビスマス化合物とアミノ化合物を併用する場合は、ビスマス化合物に対するアミノ化合物の質量比(アミノ化合物の質量/ビスマス化合物の質量)は、好ましくは0.1~100であり、より好ましくは0.3~50であり、さらに好ましくは0.5~30である。
【0032】
三量化触媒としては、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン等の芳香族化合物、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、2-エチルヘキサン酸ナトリウム、オクチル酸カリウム、オクチル酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)-ヘキサヒドロ-S-トリアジン等のトリアジン類、2-エチルアジリジン等のアジリジン類、ナフテン酸鉛、オクチル酸鉛等の鉛化合物、ナトリウムメトキシド等のアルコラート化合物、カリウムフェノキシド等のフェノラート化合物、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の3級アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム、テトラフェニルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0033】
また、触媒の量は、ポリオール化合物100質量部に対して、0.5~20質量部が好ましく、1~15質量部がより好ましく、2~10質量部がさらに好ましい。
【0034】
[発泡剤]
発泡剤の具体例としては、例えば、水、低沸点の炭化水素、塩素化脂肪族炭化水素化合物、フッ素化合物、ハイドロクロロフルオロカーボン化合物、ハイドロフルオロカーボン、エーテル化合物、ハイドロフルオロオレフィンなどが挙げられる。さらに、発泡剤としては、これらの化合物の混合物等の有機系物理発泡剤、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等の無機系物理発泡剤等が挙げられる。
上記低沸点の炭化水素としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等が挙げられる。
上記塩素化脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等が挙げられる。
上記フッ素化合物としては、例えば、CHF3、CH2F2、CH3F等が挙げられる。
上記ハイドロクロロフルオロカーボン化合物としては、例えば、トリクロルモノフルオロメタン、トリクロルトリフルオロエタン、ジクロロモノフルオロエタン(例えば、HCFC141b(1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン)、HCFC22 (クロロジフルオロメタン)、HCFC142b(1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン))等が挙げられる。
上記ハイドロフルオロカーボンとしては、HFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン)、HFC-365mfc(1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン)等が挙げられる。
上記エーテル化合物としては、例えば、ジイソプロピルエーテル等が挙げられる。
上記ハイドロフルオロオレフィンとしては、例えば、HFO-1233zd(E)(トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)、HFO-1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン)、HFO-1336mzz(Z)(シス―1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エン)、HFO-1224yd(Z)等が挙げられる。
【0035】
上記した中でも、発泡剤としては、ハイドロフルオロオレフィン、水などが好ましく、ハイドロフルオロオレフィン及び水を併用することがより好ましい。
発泡剤の含有量は、発泡体の密度を所望の範囲に調整する観点から、ポリオール化合物100質量部に対して、好ましくは5~70質量部であり、より好ましくは10~60質量部であり、さらに好ましくは20~50質量部である。
【0036】
発泡剤として使用するハイドロフルオロオレフィンの量は、ポリウレタン発泡体の密度を所望の範囲とする観点から、ポリオール化合物100質量部に対して、好ましくは5~70質量部であり、より好ましくは8~58質量部であり、さらに好ましくは18~48質量部である。
発泡剤として使用する水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水などを適宜用いることができる。ポリオール化合物100質量部に対する水の量は、ポリウレタン発泡体の密度を所望の範囲に調整する観点から、好ましくは0.5~15質量部であり、より好ましくは1~12質量部であり、さらに好ましくは2~10質量部である。
【0037】
[整泡剤]
難燃性ウレタン樹脂組成物は、整泡剤を含有してもよい。整泡剤としては、分子内に極性部分と非極性部分を有し界面活性効果を備える化合物を好適に使用することができる。整泡剤としては、例えば、オルガノポリシロキサン等のシリコーン整泡剤が挙げられる。また、シリコーン整泡剤としては、ポリジメチルシロキサンとポリエチレングリコールのグラフト共重合体を含むものでもよい。
整泡剤の含有量は、ポリオール化合物100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~8質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが更に好ましい。整泡剤は一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することができる。
【0038】
難燃性ウレタン樹脂組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、上記した各成分以外にも、その他添加剤として、例えば、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、染料、粘着付与樹脂等を含むことができる。
【0039】
本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物は、1液型でもよいが、本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とが反応して硬化するため、その粘度は時間と共に変化する。そこで該組成物を使用する前は、該組成物を二以上に分割して、該組成物が反応して硬化することを防止しておく。そして該組成物を使用する際に、二以上に分割しておいた該組成物を混合することが好ましい。
なお難燃性ウレタン樹脂組成物を二以上に分割するときは、二以上に分割された難燃性ウレタン樹脂組成物のそれぞれの成分単独では硬化が始まらず、難燃性ウレタン樹脂組成物のそれぞれの成分を混合した後に硬化反応が始まるように成分を分割すればよい。通常、難燃性ウレタン樹脂組成物を、ポリオール化合物を含有するポリオール組成物と、ポリイソシアネート化合物を含有するポリイソシアネート組成物とに分割する。
【0040】
上記した発泡剤、触媒、液状難燃剤、添加剤A、及び必要に応じて配合される整泡剤は、ポリオール組成物に含有されていてもよいし、ポリイソシアネート組成物に含有されていてもよいし、ポリオール組成物及びポリイソシアネート組成物とは別に提供されてもよいが、ポリオール組成物に含有されることが好ましい。
【0041】
[ポリウレタン発泡体]
本発明のポリウレタン発泡体は、上記した難燃性ウレタン樹脂組成物から形成されてなるものであり、具体的には、難燃性ウレタン樹脂組成物を発泡及び硬化させて得られるものである。
【0042】
(ヌレート化度)
本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物は、発泡時にイソシアヌレート環が形成されにくく、2段発泡を抑制し易くなる。そのため、本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物から形成されるポリウレタン発泡体は、ヌレート化度の低いものとなる。
ポリウレタン発泡体のヌレート化度は、好ましくは1.2以下であり、より好ましくは0.9以下である。
【0043】
ヌレート化度は、ポリウレタン発泡体について赤外線吸収スペクトルを測定し、1900~2000cm-1の平均強度をゼロに合わせた時の1500~1520cm-1の最大ピーク強度Iaに対する、1900~2000cm-1の平均強度をゼロに合わせた時の1390~1430cm-1の最大ピーク強度Ibの比(Ib/Ia)である。赤外線吸収スペクトルの測定は、ポリウレタン発泡体の表層から5mm~10mmの深さ部分を対象にATR法(全反射測定法)により行う。
ここで、赤外吸収スペクトルにおける強度とは、赤外線吸収強度を意味する。また、赤外線吸収スペクトルにおいて、1400cm-1の吸収はイソシアヌレート結合に由来する吸収であり、1510cm-1の吸収は、ウレタン結合に由来する吸収である。
【0044】
(密度)
ポリウレタン発泡体の密度は、特に限定されないが、20~200kg/m3の範囲であることが好ましい。密度を200kg/m3以下とすることで、ポリウレタン発泡体が軽量となり、構造物への施工性が高まる。また、20kg/m3以上とすることで、所望の難燃性を発現しやすくなる。これら観点から、ポリウレタン発泡体の密度は、20~100kg/m3の範囲であることがより好ましく、23~80kg/m3の範囲であることがさらに好ましい。ポリウレタン発泡体の密度は、JIS K7222に準拠して測定できる。
【0045】
本発明の発泡体は、特に限定されないが、例えば2液型の難燃性ウレタン樹脂組成物などのように2以上に分割される場合には、例えば、予め各成分を混合して調製されたポリオール組成物、及びポリイソシアネート組成物などの2以上に分割されたものを作製しておき、それらを混合して、発泡させることで得ることができる。各成分の混合及び発泡は、公知の方法により行うことができる。例えば高圧発泡機、低圧発泡機、吹き付け発泡機、ハンドミキサーなど公知の装置を用いて得ることができる。また、1液型の場合には、難燃性ウレタン樹脂組成物を構成する各成分を混合して得た難燃性ウレタン樹脂組成物を公知の方法で発泡させる方法が挙げられる。
【0046】
(用途)
本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物、及び該組成物を発泡させて成るポリウレタン発泡体の用途は特に限定されないが、建築物、家具、自動車、電車、船等の構造物などの空洞に充填する用途に用いたり、該構造物に対して吹き付ける用途に用いたりすることができる。中でも、構造物に対して吹き付ける用途、すなわち、吹き付け用の難燃性ウレタン樹脂組成物として用いることが好ましい。
吹き付けは、吹き付け装置(例えばGRACO社製:A-25)及びスプレーガン(例えばガスマー社製:Dガン)を利用して実施することができる。吹き付けは、別容器に入ったポリオール組成物とポリイソシアネート組成物を吹き付け装置内で温度調整し、スプレーガンの先端で両者を衝突混合させ、混合液をエア圧によりミスト化することで実施できる。吹き付け装置及びスプレーガンは公知であり、市販品を使用することができる。また原液温度設定・圧力等は一般的なウレタンフォームの吹き付け条件が適応できる。
【実施例】
【0047】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0048】
各実施例及び比較例において使用した各成分の詳細は次の通りである。
<ポリオール化合物>
(i)芳香環を有するポリエーテルポリオール
・トリレンジアミン系ポリエーテルポリオール(住化コベストロウレタン社製、製品名:ポリオールH422、水酸基価=410mgKOH/g)
(ii)芳香環を有さないポリエーテルポリオール
・ペンタエリスリトール系ポリエーテルポリオール(住化コベストロウレタン社製、製品名:O487、水酸基価=410mgKOH/g)
(iii)芳香環を有するポリエステルポリオール
・p-フタル酸系ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、製品名:RFK-509
、水酸基価=200mgKOH/g)
【0049】
<添加剤A>
・赤燐 (燐化学工業社製、製品名:ノーバエクセル140、粉体、分解温度490℃)
・ポリリン酸アンモニウム(クラリアントケミカルズ社製、製品名:EXOLIT AP422、粉体、分解温度275℃以上)
【0050】
<液状難燃剤>
・リン酸エステル系難燃剤 トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(大八化学社製、製品名:TMCPP)
・リン酸エステル系難燃剤 トリクレジルホスフェート(大八化学社製、製品名:TCP、液状、分解温度433℃)
【0051】
<整泡剤>
・シリコーン系整泡剤(東レダウコーニング社製、製品名:SH-193)
【0052】
<触媒>
(i)ウレタン化触媒
・アミノ化合物 N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、(エボニック社製、製品名「PC-8」)濃度90~100質量%
・アミノ化合物 1,2-ジメチルイミダゾール(花王社製、製品名「カオライザー
No.390」)濃度65~75質量%
・ビスマス化合物 2-エチルヘキサン酸ビスマス(日東化成社製、製品名:Bi28)濃度81~90質量%
(ii)三量化触媒
・アルカリ金属塩 2-エチルヘキサン酸カリウム(東栄化工社製、製品名:ヘキソエートカリウム15%)濃度75%質量%
<発泡剤>
・水
・HFO-1233zd<ハイドロフルオロオレフィン>(ハネウェル製、製品名:ソルスティスLBA)
【0053】
<ポリイソシアネート化合物>
・MDI(住化コベストロウレタン(株)製、製品名:44V-20)
【0054】
[ポリウレタン発泡体のヌレート化度]
各実施例及び比較例で作製したポリウレタン発泡体についてヌレート化度を測定した。ヌレート化度は、ポリウレタン発泡体について赤外線吸収スペクトルを測定し、1900~2000cm-1の平均強度をゼロに合わせた時の1500~1520cm-1の最大ピーク強度Iaに対する、1900~2000cm-1の平均強度をゼロに合わせた時の1390~1430cm-1の最大ピーク強度Ibの比(Ib/Ia)である。赤外線吸収スペクトルの測定は、ポリウレタン発泡体の表層から5mm~10mmの深さ部分を対象にATR法(全反射測定法)により行った。
測定は赤外分光光度計(サーモフィッシャー サイエンティフィック社製「Nicolet is5」)を使用して行った。
【0055】
[UL94規格による燃焼評価]
各実施例、比較例で作製したポリウレタン発泡体を切り出して、125mm×13mm×13mmのサイズの測定試料とし、UL94規格に従って燃焼試験を行った。なお、難燃性の等級は、難燃性が高いものから順に、V-0、V-1、V-2で表される。燃焼試験を5回行い、5回全てにおいてV-0の等級を満足したものを「〇」、1~4回V-0の等級を満足したものを「△」、1回もV-0の等級を満たさなかったものを「×」として評価した。
【0056】
[発泡挙動]
発泡挙動は目視により判断した。難燃性ウレタン組成物が発泡して膨張する直前の時間(クリームタイム)から発泡が停止する時間(ライズタイム)までの間に、スムースに発泡が進行したものを○、発泡速度に急激な変化が見られたもの(2段発泡)を×とした。また上記評価法以外にも、ライズカーブを用いて評価することができる。ライズカーブは横軸をポリオール組成物とポリイソシアネート組成物とを混合してからの時間、縦軸を発泡体の発泡高さとして得たグラフである。ライズカーブを評価する装置として、例えばFORMAT社製の「FOAMAT」が挙げられる。スムースな発泡をするものはライズカーブが放物線上となるが、2段発泡するものは一度発泡高さが停滞した後に、再度発泡が開始し高さ変化が起こる。
【0057】
[実施例1~4、比較例1~3]
表1の配合に従い、ポリオール組成物を構成する各成分を1000mLポリプロピレンビーカーに計りとり、20℃、10秒間ハンドミキサーで攪拌しポリオール組成物を作製した。その後10℃に冷却した該ポリオール組成物に対して同じく10℃に温調したポリイソシアネートを加えて難燃性ウレタン樹脂組成物とし、該組成物をラボディスパーで3秒間攪拌し、ポリウレタン発泡体を作製した。該ポリウレタン発泡体を用いて、上記した評価を行った。
【0058】
【0059】
なお、各触媒の質量部は製品としての質量部である。
ポリオール化合物の括弧内の数値は、水酸基価(mgKOH/g)である。
【0060】
本発明の要件を満足する各実施例の難燃性ウレタン樹脂組成物は、2段発泡することなくポリウレタン発泡体を形成し、かつポリウレタン発泡体の難燃性も優れていた。一方、本発明の要件を満足しない比較例では、発泡時に2段発泡が生じるか、あるいはポリウレタン発泡体の難燃性が劣るものとなった。