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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】制振装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20250401BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
E04H9/02 331A
E04H9/02 331E
F16F15/02 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021040094
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139621
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】半澤 徹也
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-223233(JP,A)
【文献】特開平6-240920(JP,A)
【文献】特開2015-227605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に設置される制振装置であって、
水平面内の第一方向に沿う第一列に設置される第一積層ゴムの剛性の総和は、前記第一方向に沿い前記第一列とは異なる第二列に設置される第二積層ゴムの剛性の総和よりも小さく、
前記第一列よりも、水平面内の前記第一方向と直交する第二方向の中央側と反対側には、リニアガイド及び滑り摺動子のいずれか一方が設置されている制振装置。
【請求項2】
前記第一積層ゴムの剛性は、前記第二積層ゴムの剛性よりも小さい請求項1に記載の制振装置。
【請求項3】
前記第一積層ゴム及び前記第二積層ゴムは、前記第二方向に沿う第三列及び第四列に設置され、
前記第三列に設置される前記第一積層ゴム及び前記第二積層ゴムの剛性の総和は、前記第四列に設置される前記第一積層ゴム及び前記第二積層ゴムの剛性の総和と等しい請求項1または2に記載の制振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、風や地震による構造物の振動を低減する目的で、構造物の振動モードに同調させた振動系(同調吸振器、TMD=Tuned Mass Damper)を付加する方法が知られている。建築物の場合には、その水平方向の振動を低減するべく、主として建物の上階部にTMDを設置する。TMDの力学的な諸元は、建物側の周期及び対象とする振動モードにおける有効な質量の値とTMD側の質量との比(質量比)に応じて、適切な剛性(TMDの周期)及び減衰定数が理論的に求められている。
【0003】
TMDの具体的な構成は、コンクリートや鋼材等から成る質量体をケーブルで懸垂して振子状にしたり、質量体を免震構造で使用されるような積層ゴムで支持したりするものがある。TMDには減衰性の付加も必要であるが、オイルダンパーなどの免震・制振部材が使用される場合が多い。
【0004】
一方、構造物が建築物の場合には、その平面において、長辺方向及び短辺方向等の直交する2方向の周期が異なる場合がある。単純に懸垂した振子や円形状の積層ゴムには、その周期及び剛性に、方向による差異を付け難く、したがって、2方向の周期を同一とせざるを得ない。その場合、建物の2方向に対して適切に設定するべきTMDの諸元を、同時には設定できないことになる。
【0005】
この問題に対して、積層ゴムを用いた2方向に同一の周期を有するTMDに関して、回転慣性質量装置を用いて、1方向の周期のみを伸張させる方法(下記の特許文献1参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-227605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の制振装置では、制振柱に水平バネ要素を設けたり、減衰を与えるためにオイルダンパー又は回転慣性質量ダンパーを設置したりするため、制振装置が煩雑であるという問題点がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、水平2方向の周期が異なる構造物において、簡易な構成で、制振効果を発揮することができる制振装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る制振装置は、構造物に設置される制振装置であって、水平面内の第一方向に沿う第一列に設置される第一積層ゴムの剛性の総和は、前記第一方向に沿い前記第一列とは異なる第二列に設置される第二積層ゴムの剛性の総和よりも小さく、前記第一列よりも、水平面内の前記第一方向と直交する第二方向の中央側と反対側には、リニアガイド及び滑り摺動子のいずれか一方が設置されている
【0010】
このように構成された制振装置では、第一方向に沿う第一列に設置される第一積層ゴムの剛性の総和は、第一方向に沿う第二列に設置される第二積層ゴムの剛性の総和よりも小さい。よって、制振装置に揺れ振動モードを故意与えることができ、水平2方向の周期が異なる構造物において、制振効果を発揮することができる。また、積層ゴムの総和を第一列と第二列とで異なるようにすればよいため、簡易な構成とすることができる。
また、リニアガイド及び滑り摺動子のいずれか一方を設置することがで、第一積層ゴムの台数を減らすことができる。
【0011】
また、本発明に係る制振装置では、前記第一積層ゴムの剛性は、前記第二積層ゴムの剛性よりも小さくてもよい。
【0012】
このように構成された制振装置では、第一積層ゴムの剛性は第二積層ゴムの剛性よりも小さいため、第一積層ゴム及び第二積層ゴムを同数設置して、第一列に設置される積層ゴムの剛性の総和を、第二列に設置される積層ゴムの剛性の総和よりも小さくすることができる。
【0013】
また、本発明に係る制振装置では、前記第一積層ゴム及び前記第二積層ゴムは、前記第二方向に沿う第三列及び第四列に設置され、前記第三列に設置される前記第一積層ゴム及び前記第二積層ゴムの剛性の総和は、前記第四列に設置される前記第一積層ゴム及び前記第二積層ゴムの剛性の総和と等しくてもよい。
【0014】
このように構成された制振装置では、第二方向に沿う第三列に設置される第一積層ゴム及び第二積層ゴムの剛性の総和は、第二方向に沿う第四列に設置される第一積層ゴム及び第二積層ゴムの剛性の総和と等しい。よって、第三列と第四列との間では偏心していないため、2軸偏心よりも制御が簡易な1軸偏心とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る制振装置によれば、水平2方向の周期が異なる構造物において、簡易な構成で、制振効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る制振装置を示す平面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る制振装置を示す立面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る制振装置に回転モードを利用した柔方向の制御を示す。
図4】本発明の一実施形態に係る制振装置の設計例を示す平面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る制振装置の設計例を示す立面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る制振装置の設計例のCase2の解析モデルを示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る制振装置の設計例のCase3のTMD部分の捩れモードの様子を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る制振装置の設計例の地震応答変位波形の比較を示し、地震波KA1を入力した場合を示す。
図9】本発明の一実施形態に係る制振装置の設計例の地震応答変位波形の比較を示し、地震波OS2を入力した場合を示す。
図10】本発明の一実施形態の変形例1に係る制振装置を示す平面図である。
図11】本発明の一実施形態の変形例1に係る制振装置を示す立面図である。
図12】本発明の一実施形態の変形例2に係る制振装置を示す平面図である。
図13】本発明の一実施形態の変形例2に係る制振装置を示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る制振装置について、図面を用いて説明する。
図1及び図2に示すように、制振装置1は、支持体11と、第一積層ゴム2と、第二積層ゴム3と、錘4と、を備えている。制振装置1は、構造物の上部等の設置面10に設置される。錘4は、コンクリートや鋼材等で構成されている。
【0020】
制振装置1は、TMD(同調吸振器、Tuned Mass Damper)に、捩れ振動モードを故意に与えることにより、水平方向に異なる固有周期を備えさせ、建物側の長短異なる水平2方向の固有モードに対して、適切な振動諸元をTMDに付加するものである。
【0021】
図1に示すように、支持体11は、平板状に形成されている。複数の支持体11が、設置面10と平行に、水平面に沿って配置されている。図2に示すように、支持体11は、複数設置されていて、下側から順に、支持体11a、支持体11b、支持体11cとする。
【0022】
支持体11aは、設置面10の上方に間隔を有して配置されている。支持体11bは、支持体11aの上方に間隔を有して配置されている。支持体11cは、支持体11bの上方に間隔を有して配置されている。
【0023】
本実施形態では、支持体11a、支持体11b及び支持体11cの平面形状は、略矩形状をしている。支持体11aと支持体11bとは、略同一の平面形状をしている。支持体11cの平面形状は、支持体11a及び支持体11bの平面形状よりも大きい。
【0024】
図1に示すように、支持体11の水平面に沿う一方向をX方向(第二方向)とし、X方向に直交する方向(第一方向)をY方向とする。X方向は、支持体11の長辺方向に沿っている。Y方向は、支持体11の短辺方向に沿っている。
【0025】
図2に示すように、設置面10と支持体11aとの間及び上下の支持体11どうしの間には、第一積層ゴム2及び第二積層ゴム3が設置されている。
【0026】
第一積層ゴム2を、下側から順に、第一積層ゴム2a、第一積層ゴム2b、第一積層ゴム2cとする。第二積層ゴム3を、下側から順に、第二積層ゴム3a、第二積層ゴム3b、第二積層ゴム3cとする。換言すると、第一積層ゴム2a及び第二積層ゴム3aは、設置面10と支持体11aとの間に設置されている。第一積層ゴム2b及び第二積層ゴム3bは、支持体11aと支持体11bとの間に設置されている。第一積層ゴム2c及び第二積層ゴム3cは、支持体11bと支持体11cとの間に設置されている。
【0027】
図1に示すように、各層において、第一積層ゴム2は、Y方向に離間して2箇所に設置されている。第二積層ゴム3は、Y方向に離間して2箇所に設置されている。第一積層ゴム2と第二積層ゴム3とは、X方向に離間して配置されている。
【0028】
第一積層ゴム2は、X方向の座標X1を通るX1列(第一列)上に配置されているとする。第二積層ゴム3は、X方向の座標X2を通るX2列(第二列)上に配置されているとする。一方の第一積層ゴム2及び一方の第二積層ゴム3は、Y方向の座標Y1を通るY1列(第三列)上に配置されているとする。他方の第一積層ゴム2及び他方の第二積層ゴム3は、Y方向の座標Y2を通るY2列(第四列)上に配置されているとする。X1列及びX2列は、制振装置1のX方向の中央から互いに反対側であり、制振装置1のX方向の中央からの離間距離が等しい。Y1列及びY2列は、制振装置1のY方向の中央から互いに反対側であり、制振装置1のY方向の中央からの離間距離が等しい。
【0029】
各層において、一の第一積層ゴム2はX1列とY1列との交差箇所に配置され、他の第一積層ゴム2はX1列とY2列との交差箇所に配置されている。一の第二積層ゴム3はX2列とY1列との交差箇所に配置され、他の第二積層ゴム3はX2列とY2列との交差箇所に配置されている。
【0030】
第一積層ゴム2の剛性は、第二積層ゴム3の剛性よりも低い。X1列には第一積層ゴム2が2台配置されX2列には第二積層ゴム3が2台配置されているため、X1列の積層ゴムの剛性の総和A1は、X2列の積層ゴムの剛性の総和A2よりも低い。Y1列及びY2列には第一積層ゴム2及び第二積層ゴム3が1台ずつ配置されているため、Y1列の積層ゴムの剛性の総和B1とY2列の積層ゴムの剛性の総和B2とは等しい。
【0031】
TMDの諸元のうち、剛性をなす複数の積層ゴム2,3の諸元はX方向に対応するものとして選定する。ここで選定された積層ゴム2,3の水平剛性の合計(総和B1,B2)は、円形の積層ゴム単体の剛性には方向による差異がないため、TMDのY方向にも同一となる。しかし、重心からのX方向側の距離と個々の積層ゴムの剛性は、剛心が重心とずれるように、また、回転剛性が必要なだけ小さくなるように決めることができる。このようにして、X方向には無偏心、Y方向には偏心を有する系を構成している。なお、図1では減衰装置は省略されているが、オイルダンパーなどの1軸方向に作用する部材を用いれば、XY方向に異なる諸元を設定することは可能である。
【0032】
次に、本実施形態に係る制振装置の設計例について説明する。
対象とする建築構造は、平面規模を32m×50mとする。各層の質量を0.8ton/mとする(1階当たり1280ton)。30階建て(総質量38400ton)の1次モードを対象として、その等価質量を総質量の2/3程度として25600tonと考える。TMDの質量を1800ton(質量比μ=5%)とする。
【0033】
軒高に対応する建物の固有周期は、一般に4m×30階×0.025秒/m=3秒である。ここでは、長辺方向(X方向)に3.0秒とし、短辺方向に3.75秒として、2方向に対して差異を設けた想定とする。
【0034】
定点理論による最適パラメータとして、ここではTMDの最適な振動数比γを下記の式(1)とし、減衰定数hを下記の式(2)で与えるものとする。
【0035】
【数1】
【0036】
【数2】
【0037】
長辺方向のTMDの最適な周期は3.11秒、質量1800tonに対する最適な剛性は5.220×10N/mである。減衰定数hは13%で、減衰係数は6.908×10Nsec/mである。同様に、短辺方向のTMDの最適な周期は3.89秒となる。
【0038】
実施後のTMDを図4及び図5に示す。錘4のサイズは22m×10mで、質量は1800ton、回転慣性モーメントは6.23×10Nton・mである。積層ゴム2,3は長辺方向(X方向)に2列(各2台)及び短辺方向(Y方向)に2列(各2台)が配置されている。長辺方向(X方向)の各列の積層ゴム2,3の剛性を合計すると、列において等しく、剛性の図心に対する偏りはない。一方、短辺方向(Y方向)の各列の積層ゴム2,3の剛性の合計は、左右で大小異なっており、剛性の中心(剛心)は、図心(ここでは重心と一致している)に対して、偏っている。
【0039】
ここで、第一積層ゴム2の剛性を6.786×10N/mとし、第二積層ゴム3の剛性を1.931×10N/mとする。短辺方向(Y方向)の列ではそれぞれ2台ずつ設置されているため、低剛性側(X1列)では1.357×10N/mとなり、高剛性側(X2列)では3.863×10N/mとなる(合わせて5.220×10N/m)。長辺方向(X方向)の列では、第一積層ゴム2及び第二積層ゴム3の剛性の和は2.610×10N/mとなる(2列分では5.220×10N/mで、短辺方向(Y方向)と同じ)。なお、本設計例では十分なストロークを確保するため、積層ゴム2,3を3段に重ねているので、実際は概3倍の物性を設定することになる。
【0040】
X1列には、第一積層ゴム2の間に、第一ダンパー5aが設置されている。X2列には、第一積層ゴム2の間に、第二ダンパー5bが設置されている。Y1列及びY2列には、第一積層ゴム2と第二積層ゴム3との間に、第三ダンパー5cが設置されている。
【0041】
この系の振動特性は、1軸偏心の問題として求めることができ、長辺方向の固有周期は3.11秒、短辺方向の回転を伴うモード(図3のようなモード)の固有周期は3.89秒となる。ところで、これらの値は長辺方向および短辺方向のTMDに必要な周期とほぼ等しい。
【0042】
なお、減衰は、必要な減衰係数を剛性に比例させて配すればよい。解析上、剛性比例型減衰として簡便に扱うことができる。
【0043】
確認のため、地震応答解析により、その効果を検証する。解析モデルは以下とする。建物は質量25600ton、周期3.75秒、減衰1%とする。建物の捩じれ剛性は高いとし、1自由度系で、長辺方向(周期3秒)は省略する。
【0044】
Case1は、TMDを設置していないケースである。Case2は目的とする周期(長辺3.11秒と短辺3.89秒)と減衰を有するTMDを、偏心を与えることで設定したケースである。Case2の解析モデルを図6に、Case2におけるTMDの捩れモードを図7に示す。
【0045】
上記のモデルに以下の地震動を入力し、主系の応答加速度及び応答変位の最大値を比較して表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
主系の応答変位の時刻歴波形の例として、地震波KA1を入力した地震応答変位波形を図8に示し、地震波OS2を入力した地震応答変位波形を図9に示す。なお、入力地震動は表2の長周期地震動5波とした。表1、図8及び図9に記載の「制振」は、本実施形態に係る制振装置である。
【0048】
【表2】
【0049】
建物の最大変位及び最大加速度、その波形を見ると、本実施形態に係る制振装置のTMDにより、主系の地震時応答が低減していることがわかる。
【0050】
このように構成された制振装置1では、Y方向に沿うX1列に設置される第一積層ゴム2の剛性の総和A1は、Y方向に沿うX2列に設置される第二積層ゴム3の剛性の総和A2よりも小さい。よって、制振装置1に揺れ振動モードを故意与えることができ、水平2方向(X方向及びY方向)の周期が異なる構造物において、制振効果を発揮することができる。また、積層ゴム2,3の総和A1,A2をX1列とX2列とで異なるようにすればよいため、簡易な構成とすることができる。
【0051】
また、第一積層ゴム2の剛性は第二積層ゴム3の剛性よりも小さいため、第一積層ゴム2及び第二積層ゴム3を同数設置して、X1列に設置される積層ゴムの剛性の総和を、X2列に設置される積層ゴムの剛性の総和よりも小さくすることができる。
【0052】
また、X方向に沿うY1列に設置される第一積層ゴム2及び第二積層ゴム3の剛性の総和B1は、X方向に沿うY2列に設置される第一積層ゴム2及び第二積層ゴム3の剛性の総和B2と等しい。よって、Y1列とY2列との間では偏心していないため、2軸偏心よりも制御が簡易な1軸偏心とすることができる。
【0053】
(変形例1)
次に、上記に示す実施形態の変形例1に係る制振装置について、主に図10及び図11を用いて説明する。
以下の変形例において、前述した実施形態で用いた部材と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0054】
図10及び図11に示すように、X1列には、第一積層ゴム2が1台設置されている。第一積層ゴム2は、Y1列とY2列との中間位置に配置されている。X1列側、詳細にはX1よりも外側(制振装置1のX方向の中央側と反対側)には、リニアガイド6が2台設置されている。リニアガイド6は、Y1列とY2列との間のY3列及びY4列に配置されている。Y3列及びY4列は、制振装置1のY方向の中央から互いに反対側であり、制振装置1のY方向の中央からの離間距離が等しい。リニアガイド6は、例えばX方向及びY方向の移動を案内するガイドである。重心を偏在させるため、錘4Aの形状を図心に対してX1列側に偏りをもたせて形状としている。
【0055】
一般に、TMDでは大きな変形能(ストローク)が必要となるが、積層ゴム2,3の変形能を高めるには口径を大きくする必要があり、それにより、剛性も大きくなる。本変形例では、低剛性側の第一積層ゴム2の数を減らすとともに、錘4Aの自重を安定して支持するために、第一積層ゴム2よりも抵抗が小さいリニアガイド6を用いていている。
【0056】
このように構成された制振装置1Aでは、Y方向に沿うX1列に設置される第一積層ゴム2の剛性の総和は、Y方向に沿うX2列に設置される第二積層ゴム3の剛性の総和よりも小さい。よって、制振装置1に揺れ振動モードを故意与えることができ、水平2方向(X方向及びY方向)の周期が異なる構造物において、制振効果を発揮することができる。また、積層ゴム2,3の総和をX1列とX2列とで異なるようにすればよいため、簡易な構成とすることができる。
【0057】
また、X1列に近いX3列にリニアガイド6を設置することがで、X1列に設置される第一積層ゴム2の台数を減らすことができる。
【0058】
(変形例2)
次に、上記に示す実施形態の変形例2に係る制振装置について、主に図12及び図13を用いて説明する。
図12及び図13に示すように、本変形例では、リニアガイド6の代わりに長大な摺動子7を2台使用して、リニアガイド6を減数している。摺動子7は、制振装置1のX方向の端部の列X4に設置されている。摺動子7は、Y1列及びY2列に配置されている。支持体11a1及び支持体11b1のX方向の長さを短くして、設置面10に支持台10aを設置して、摺動子7を支持台10aと支持体11cとの間に設置している。
【0059】
このように構成された制振装置1Bでは、Y方向に沿うX1列に設置される第一積層ゴム2の剛性の総和は、Y方向に沿うX2列に設置される第二積層ゴム3の剛性の総和よりも小さい。よって、制振装置1に揺れ振動モードを故意与えることができ、水平2方向(X方向及びY方向)の周期が異なる構造物において、制振効果を発揮することができる。また、積層ゴム2,3の総和をX1列とX2列とで異なるようにすればよいため、簡易な構成とすることができる。
【0060】
また、X1列に近いX4列に滑り摺動子7を設置することがで、X1列に設置される第一積層ゴム2の台数を減らすことができる。
【0061】
なお、上述した実施の形態において示した組立手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0062】
例えば、上記に示す実施形態では、捩れ振動モードの与え方として1軸偏心(水平二方向のうち一方向のみに偏心を有する)としているが、TMDの二方向に異なる固有周期を捩れモードを利用して発現せしめて、建物の制御に用いるという点で、2軸偏心であってもよい。
【0063】
また、上記に示す実施形態では、平面視でTMDの錘4の図心と重心とが一致しており、積層ゴム2,3の剛心をTMDの錘4の図心及び重心とずらすことにしているが、本発明はこれに限られない。例えば、錘4の版厚を不均等とし、錘4の図心と重心とを異なるものとし、積層ゴム2,3の剛心を錘4の図心と一致させてもよい(TMDが偏心しているため)。
【符号の説明】
【0064】
1,1A,1B…制振装置
2,2a,2b,2c…第一積層ゴム
3,3a,3b,3c…第二積層ゴム
6…リニアガイド
7…摺動子
A1,A2,B1,B2…総和
X1…第一列
X2…第二列
Y1…第三列
Y2…第四列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13