(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】電気的接続装置
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20250401BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20250401BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
G01R1/067 G
G01R1/073 E
H01L21/66 B
(21)【出願番号】P 2021046038
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】那須 美佳
(72)【発明者】
【氏名】豊田 美岬
(72)【発明者】
【氏名】今 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】須藤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】林▲崎▼ 孝幸
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-196905(JP,A)
【文献】特開2018-059797(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0227101(US,A1)
【文献】国際公開第2018/034096(WO,A1)
【文献】特表2018-513389(JP,A)
【文献】特開2018-044912(JP,A)
【文献】特開2008-292327(JP,A)
【文献】国際公開第2020/012799(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0210505(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06-1/073
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体の電気的特性の検査に使用する電気的接続装置であって、
複数のプローブと、
前記プローブが挿入される貫通孔がそれぞれ形成された、少なくとも二つのガイドプレートと、を備え、
前記プローブは、前記貫通孔に挿通されて前記二つのガイドプレートの間で湾曲した状態で保持され、
前記プローブは、
その中心軸方向に垂直な断面において矩形状を有する柱状の導体部と、
前記矩形状を構成する前記導体部の四つの面のうち、少なくとも湾曲する側の一の面に配置された絶縁性の被覆材と、を備え、
前記被覆材は前記一の面と逆方向を向く前記導体部の対向面に配置されていない
電気的接続装置。
【請求項2】
前記被覆材は、前記中心軸方向に沿
って互いに離間して配置されている、請求項1に記載の電気的接続装置。
【請求項3】
前記被覆材は、前記導体部の前記四つの面のうち、前記対向面を除く3つの面に配置されている、請求項1又は2に記載の電気的接続装置。
【請求項4】
前記導体部の少なくとも一方の端部と対向する前記被覆材の端面の前記中心軸方向に垂直な断面積が、前記端部に最近接である部分から前記中心軸方向に沿って離れるにしたがって次第に広くなる
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気的接続装置。
【請求項5】
前記導体部の2つの前記端部とそれぞれ対向する前記端面の前記断面積が、前記端部に最近接である部分から前記中心軸方向に沿って離れるにしたがって次第に広くなることを特徴とする請求項4に記載の電気的接続装置。
【請求項6】
前記被覆材を配置した前記導体部の面の面法線方向から見て、前記被覆材の前記端面の外形が、曲線状であることを特徴とする請求項4又は5に記載の電気的接続装置。
【請求項7】
前記被覆材の前記端面の前記端部に最近接である部分が、前記被覆材を配置した
前記一の面の面法線方向から見て多角形の頂点であることを特徴とする請求項4又は5に記載の電気的接続装置。
【請求項8】
前記被覆材が、前記面法線方向から見て複数の多角形を組み合わせた形状であることを特徴とする請求項7に記載の電気的接続装置。
【請求項9】
前記被覆材の前記最近接である部分が前記導体部の前記一の面に接触し、
前記端面における前記被覆材の厚さが、前記導体部の前記端部から遠ざかるにつれて次第に厚くなる
ことを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1項に記載の電気的接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体の電気的特性の検査に使用する電気的接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路などの被検査体の電気的特性をウェハから分離しない状態で検査するために、被検査体に接触するプローブを有するプローブカードを用いる(特許文献1参照。)。プローブカードでは、被検査体の検査用パッドに対応した位置にプローブを配置する。したがって、半導体集積回路の微細化により検査用パッドの配置間隔が狭くなると、プローブの配置間隔も狭くなる。プローブの配置間隔を狭くすると、被検査体の検査時にプローブがプローブヘッドの内部の空間で湾曲したときに、隣接するプローブ同士が接触する可能性がある。このため、プローブヘッドの内部の空間に、プローブを貫通させて保持するガイドフィルムを配置する対策が取られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガイドフィルムの材料に樹脂などを用いる。このため、ガイドフィルムは変形しやすい。また、樹脂は熱により変形しやすいため、ガイドフィルムは熱変形により歪みやすい。ガイドフィルムが変形すると、ガイドフィルムに形成した貫通孔を貫通したプローブがプローブヘッドの内部で摺動する動作が阻害される。その結果、プローブと検査用パッドとの接触不良や、プローブを検査用パッドと接触させた状態から検査用パッドと離間した状態に戻す動作が妨げられる。このように、プローブヘッドにガイドフィルムを使用することにより、プローブの動作が阻害される。本発明は、プローブ間のショートを抑制し、かつプローブヘッドでの動作が阻害されない電気的接続装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、被検査体の電気的特性の検査に使用する電気的接続装置であって、複数のプローブと、プローブが挿入される貫通孔がそれぞれ形成された、少なくとも二つのガイドプレートとを備える電気的接続装置が提供される。プローブは、貫通孔に挿通されて二つのガイドプレートの間で湾曲した状態で保持される。プローブは、その中心軸方向に垂直な断面において矩形状を有する柱状の導体部と、矩形状を構成する導体部の四つの面のうち、少なくとも湾曲する側の一の面に配置された絶縁性の被覆材とを備える。被覆材は一の面と逆方向を向く導体部の対向面に配置されていない。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、プローブ間のショートを抑制し、かつプローブヘッドでの動作が阻害されない電気的接続装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係るプローブの構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るプローブの導体部の中心軸方向に垂直な断面の模式図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るプローブを有するプローブカードの構成を示す模式図である。
【
図4】プローブヘッドに配置されたプローブの配列の例を示す模式図である。
【
図5】比較例のプローブとプローブヘッドの構成を示す模式図である。
【
図6】プローブをガイドプレートのガイド孔に挿入する方法を説明するための模式図である。
【
図8】比較例の被覆材を配置したプローブをガイドプレートのガイド孔に挿入する場合の障害を示す模式図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るプローブの被覆材の形状の変形例を示す模式図である(その1)。
【
図10】本発明の実施形態に係るプローブの被覆材の形状の変形例を示す模式図である(その2)。
【
図11】本発明の実施形態に係るプローブの被覆材の形状の変形例を示す模式図である(その3)。
【
図12】本発明の実施形態に係るプローブの被覆材の形状の変形例を示す模式図である(その4)。
【
図13】本発明の実施形態に係るプローブの被覆材の形状の他の変形例を示す模式図である(その1)。
【
図14】本発明の実施形態に係るプローブの被覆材の形状の他の変形例を示す模式図である(その2)。
【
図15】本発明の実施形態に係るプローブの被覆材の形成方法の例を説明するための模式図である。
【
図16】本発明の実施形態の変形例に係るプローブの被覆材の構造を示す模式図である。
【
図17】本発明の実施形態の変形例に係るプローブの被覆材の形状の例を示す模式図である。
【
図18】本発明の実施形態の変形例に係るプローブの被覆材の配置の例を示す模式図である。
【
図19】本発明の実施形態の他の変形例に係るプローブの被覆材の構造を示す模式図である。
【
図20】本発明の実施形態の他の変形例に係るプローブの被覆材の形状の例を示す模式図である。
【
図21】本発明の実施形態の他の変形例に係るプローブの被覆材の配置の例を示す模式図である。
【
図22A】本発明のその他の実施形態に係るプローブの構成を示す模式図である。
【
図22B】本発明のその他の実施形態に係るプローブの他の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各部の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置及び製造方法などを下記のものに特定するものでない。
【0009】
図1に示す実施形態に係るプローブ10は、被検査体の電気的特性の検査に使用する。プローブ10は、中心軸方向に垂直な断面の形状が矩形状である柱状の導体部11と、導体部11の少なくとも1つの表面に、導体部11の中心軸方向に沿って互いに離間して配置された複数の絶縁性の被覆材12を備える。
【0010】
図2に、導体部11の中心軸方向(以下、単に「中心軸方向」とも称する。)に垂直な断面を示す。
図2は、
図1のII-II方向に沿った断面図である。プローブ10の断面は、第1面101、第1面101に対向する第2面102、第1面101と第2面102にそれぞれ接続する第1の側面103および第2の側面104で定義される矩形状である。
図2に示すプローブ10では、第1の側面103から第1面101を介して第2の側面104に渡って導体部11の表面に被覆材12が配置されている。
【0011】
図面において、Y軸方向は、導体部11の中心軸方向である。中心軸方向は、後述するように、プローブ10をプローブヘッドに挿入する方向と平行である。X軸方向は、Y軸方向に垂直な、導体部11の第1面101の幅方向である。Z軸方向は、第1面101の面法線方向であり、被覆材12の厚み方向でもある。
【0012】
導体部11の少なくとも一方の端部と対向する被覆材12の端面の中心軸方向に垂直な断面積(以下、「端面の面積」と称する。)は、導体部11の端部に最近接である部分から中心軸方向に沿って離れるにしたがって次第に広くなる。
図1に示したプローブ10の被覆材12の形状は、第1面101の面法線方向から見て(以下において「平面視」という。)、両端が欠けた楕円形状である。このため、プローブ10では、導体部11の第1端部111に対向する被覆材12の第1端面121の面積が、第1端部111に最近接である部分から中心軸方向に沿って次第に広くなる。更に、導体部11の第2端部112に対向する被覆材12の第2端面122の面積が、第2端部112に最近接である部分から中心軸方向に沿って次第に広くなる。
【0013】
なお、以下において、被覆材12の第1端面121と第2端面122の一方または両方を「端面」とも称する。また、導体部11の第1端部111と第2端部112の一方または両方を「端部」とも称する。
【0014】
以下に、プローブ10の機能を説明するために、プローブ10を保持するプローブヘッドを含むプローブカードについて説明する。
【0015】
図3に、プローブ10を備えるプローブカード1を示す。プローブカード1は、被検査体2の特性の検査に使用する。被検査体2は、例えば半導体基板に形成された半導体集積回路である。プローブカード1は、第1端部111を被検査体2に向けてプローブ10を保持するプローブヘッド20、および配線基板30を備える。なお、
図3ではプローブヘッド20が保持するプローブ10の本数が4本であるが、プローブ10の本数が4本に限られないのはもちろんである。
【0016】
図3に示すように、プローブ10はプローブヘッド20を貫通する。プローブ10の第2端部112は、配線基板30に配置したランド31と接続する。ランド31は金属などの導電性材からなり、テスタなどの検査装置(図示略)とランド31が電気的に接続する。プローブカード1を介して、検査装置と被検査体2の間で電気信号が伝搬する。配線基板30は、例えばプリント基板(PCB)やインターポーザ(IP)基板である。
【0017】
プローブヘッド20は、プローブ10が貫通する貫通孔(以下、「ガイド孔」とも称する。)をそれぞれ形成した複数のガイドプレートを有する。
図3に示すプローブヘッド20は、配線基板30に対向するトップガイドプレート21、被検査体2に対向するボトムガイドプレート22、および、トップガイドプレート21とボトムガイドプレート22の間に配置されたMGCガイドプレート23を有する。MGCガイドプレート23は、ボトムガイドプレート22に近い位置に配置されている。トップガイドプレート21の外縁領域とボトムガイドプレート22の外縁領域との間にスペーサ25を配置することにより、プローブヘッド20の内部でトップガイドプレート21とMGCガイドプレート23の間に中間領域200が構成される。プローブヘッド20のガイドプレートやスペーサ25は、セラミックなどの絶縁性材或いは金属材である。
【0018】
ガイド孔の開口部が形成されたガイドプレートの主面の面法線方向から見て、同一のプローブ10が貫通するトップガイドプレート21のガイド孔の位置とボトムガイドプレート22およびMGCガイドプレート23のガイド孔の位置は、主面と平行な方向にずれている。このようなガイド孔の配置(オフセット配置)により、中間領域200でプローブ10は弾性変形によって湾曲する。このため、被検査体2と接触したときにプローブ10が座屈し、プローブ10が所定の押圧で被検査体2に接触する。
【0019】
図4に示すように、ガイドプレートの主面の面法線方向から見て、プローブ10は例えばマトリクス状に配置される。ただし、プローブ10の配置はマトリクス状に限られない。1つのプローブヘッド20に保持されるプローブ10の本数は、数百本~数万本にも及ぶ場合がある。そして、半導体集積回路の集積化の進行などによって検査用パッドの配置間隔が狭くなってきており、それに伴い、プローブ10の配置間隔も狭くなる。このため、隣接するプローブ10同士が接触する可能性が高くなっている。
【0020】
これに対し、プローブ10の表面には、絶縁性の被覆材12が配置されている。このため、中間領域200でプローブ10が座屈した場合にプローブ10同士が接触しても、一方のプローブ10の導体部11は、他方のプローブ10の被覆材12に接触する。このため、プローブ10の導体部11同士が接触することによるプローブ10間のショートを防止できる。
【0021】
なお、中心軸方向に沿ってプローブ10の表面に被覆材12が連続的に配置されておらず、複数の被覆材12が導体部11の中心軸方向に沿って互いに離間して配置されている。このため、プローブ10の表面に被覆材12を連続的に配置することにより発生するプローブ10の反りを抑制できる。
【0022】
一方、
図5に示す比較例のプローブカードのプローブヘッド20Mでは、トップガイドプレート21とボトムガイドプレート22の間にガイドフィルムPIおよびガイドフィルムMGFを配置する。そして、プローブ10MをガイドフィルムPIおよびガイドフィルムMGFのガイド孔に貫通させることにより、プローブ10M間でのショートを防止する。しかし、既に説明したように、変形しやすいガイドフィルムをプローブヘッド20Mに使用することによりプローブ10Mの摺動が阻害される。これに対し、被覆材12を導体部11の表面に配置した構成のプローブ10によれば、ガイドフィルムを使用せずに、プローブ10間のショートを抑制できる。したがって、プローブ10を使用したプローブカード1では、プローブ10のプローブヘッド20での動作が阻害されない。
【0023】
ところで、プローブ10をプローブヘッド20にセットするために、ガイドプレートのガイド孔にプローブ10を貫通させる。例えば、すべてのガイドプレートのガイド孔の中心軸を一致させた状態で、
図6に矢印で示すように、トップガイドプレート21、MGCガイドプレート23、およびボトムガイドプレート22の順に、連続的にプローブ10を貫通させる。このとき、
図6に示すように、第1端部111の側からプローブ10をガイドプレートのガイド孔に挿入する。
【0024】
ガイドプレートのガイド孔の内壁とプローブ10の外縁との間隔(クリアランス)を広くしすぎると、ガイド孔の内部でプローブ10の位置ぶれが生じる。その結果、プローブ10と被検査体との位置合わせ精度が低下する。したがって、クリアランスは狭い方が好ましく、クリアランスは例えば2μm~5μm程度に設定される。
【0025】
しかし、表面に被覆材12を配置したプローブ10では、プローブ10をガイド孔に挿入するときに、被覆材12がガイドプレートと衝突しやすい。特に、被覆材12の平面視での形状(以下、単に「形状」とも称する。)が、
図7に示す比較例の被覆材12aのように四角形であると、被覆材12aのガイドプレート201に接近する部分は四角形の一辺である。つまり、矢印で示すようにプローブ10がガイドプレート201に接近するときに、被覆材12aのガイドプレートに対向する領域が一定の面積を有する。このため、
図8に×印で示すように、被覆材12aの端面がガイドプレート201のガイド孔の周辺に衝突して、プローブ10をガイド孔に挿入することが阻害される障害が生じる。例えば、クリアランスが狭いほど、被覆材12がガイドプレートと衝突しやすい。
【0026】
これに対し、プローブ10の被覆材12の端面は曲面である。したがって、第1端部111と対向する被覆材12の第1端面121の面積は、第1端部111に最近接である部分から導体部11の中心軸方向に沿って離れるにしたがって次第に広くなる。このように被覆材12の端面が平面視で曲線状であるため、被覆材12のガイドプレートに接近する領域は、平面視で点状である。つまり、仮に被覆材12の第1端面121がガイドプレートに衝突しても、第1端面121とガイドプレートは面で衝突しない。このため、被覆材12がプローブヘッド20に引っ掛からずにプローブ10はそのまま移動し続ける。このように、プローブ10によれば、被覆材12の端面がガイドプレートに衝突することに起因してプローブ10の移動が阻害されることを抑制できる。
【0027】
なお、上記では被覆材12の形状が楕円形である場合を示した。しかし、被覆材12の形状は、導体部11の少なくとも一方の端部と対向する端面の面積が次第に広くなる形状であれば、楕円形に限定されない。例えば、
図9の変形例に示すように、被覆材12の形状が、導体部11の一方の端部に対向する端面が曲面であり、他方の端部に対向する端面が平面である、片側円形状であってもよい。また、被覆材12は、
図10(a)~
図10(d)の変形例に示すように、頂点を導体部11の端部に向けて配置した三角形状であってもよい。なお、
図10(d)に示すように、被覆材12が複数の三角形を配置した形状であってもよい。更に、被覆材12は、
図11(a)~
図11(d)の変形例に示すように頂点を導体部11の端部に向けて配置した多角形状であってもよい。また、
図12(a)~
図12(d)の変形例に示すように、被覆材12が、複数の三角形または多角形を組み合わせた形状であってもよい。
【0028】
上記のように、被覆材12の形状を多角形にして、導体部11の端部と対向する被覆材12の端面を中心軸方向と斜めに交差する傾斜面としてもよい。端面を傾斜面とし、端部に最近接である部分を平面視で多角形の頂点とすることにより、端部と対向する端面の面積が次第に広くなる。
【0029】
上記の変形例では、被覆材12の一方の端面を曲面または中心軸方向と斜めに交差する傾斜面にすることにより、ガイド孔へのプローブ10の挿入において被覆材12がガイドプレートと接触してプローブ10の移動が阻害されることを抑制できる。更に、被覆材12の両方の端面を曲面または傾斜面にすることにより、ガイドプレートからプローブ10を抜去する際にも、被覆材12がガイドプレートと接触してプローブ10の移動が阻害されることを抑制できる。例えば、第1端部111の側からプローブ10をガイドプレートのガイド孔に挿入し、第2端部112の側からプローブ10をガイドプレートのガイド孔から抜去する場合において、プローブ10の移動が阻害されることを抑制できる。
図13(a)~
図13(g)に、被覆材12の両方の端面を曲面または傾斜面にした変形例を示す。なお、
図14(a)~
図14(d)に示すように、被覆材12は、複数の多角形を組み合わせた形状であってもよい。
【0030】
以上に説明したように、実施形態に係るプローブ10では、導体部11の表面に被覆材12を配置することにより、プローブ10間のショートを抑制できる。更に、プローブ10をガイドプレートのガイド孔に挿入する際にガイドプレートと最初に近接する被覆材12の端面を曲面や傾斜面にすることにより、被覆材12がガイドプレートと接触してプローブ10の移動が阻害されることを抑制できる。
【0031】
導体部11の材料は、例えばニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)などの金属材であってもよい。或いは、導体部11の材料は、これら金属を含む合金などであってもよい。被覆材12は、例えば樹脂類、ガラス繊維、永久レジスト、セラミック蒸着物などであってもよい。
【0032】
特定の形状の被覆材12を導体部11の表面の所定の位置に形成するには、導体部11の表面に被覆材12を形成した後、被覆材12をパターニングする。例えば、
図15に示すような楕円形のパターンを形成したフォトマスク120を用いるフォトリソグラフィ技術により、導体部11の第1面101に形成した永久レジスト上にフォトマスク120上のパターンを転写する。
図15に示したフォトマスク120上の楕円形のパターンは、楕円形の両端が第1面101の横にはみ出している。このはみ出した楕円形の両端での露光により、導体部11の第1の側面103と第2の側面104に形成した永久レジストがパターニングされる。なお、フォトリソグラフィ技術を用いて樹脂、ガラス繊維、セラミック蒸着物などの被覆材12を導体部11の表面に形成してもよい。
【0033】
中心軸方向に沿った被覆材12の間隔が狭いほどプローブ10間のショートを防止できる。被覆材12の中心軸方向の長さや間隔は、導体部11の太さや材料などに応じて、プローブ10に反りが生じない範囲で任意に設定できる。また、被覆材12の厚みは、ガイド孔とプローブ10のクリアランスを確保できる範囲で、プローブ10間のショートを防止できる厚みに設定される。
【0034】
<変形例>
本発明の実施形態の変形例に係るプローブ10の被覆材12の構造を
図16(a)~
図16(c)に示す。
図16(a)~
図16(c)は、第1面101の面法線方向と垂直な方向から見た(以下において「側面視」とも称する。)、被覆材12の側面図である。
図16(a)~
図16(c)に示すように、実施形態の変形例に係るプローブ10では、導体部11の端部に最近接である被覆材12の部分が導体部11の表面に接触する。そして、被覆材12の厚さtは、導体部11の端部から遠ざかるにつれて次第に厚くなる。
図16(a)に示す被覆材12は、側面視の端面の形状が曲線状である。
図16(b)に示す被覆材12は、側面視で中心軸方向に沿って端面が傾斜する台形状である。
図16(b)に示す被覆材12は、側面視で中心軸方向に沿って端面が傾斜する三角形状である。
【0035】
なお、変形例に係るプローブ10の被覆材12の平面視の形状は任意である。例えば、
図17(a)に示すように被覆材12の端面の形状が曲面であってもよいし、
図17(b)に示すように被覆材12の形状が矩形状であってもよい。
【0036】
また、
図18(a)や
図18(b)に示すように、複数の被覆材12を中心軸方向に配列してもよい。
図18(a)は、複数の被覆材12を相互に分離して配列した構成例である。
図18(b)は、複数の被覆材12を連結して配列した構成例である。
【0037】
上記では、一方の端面の厚さtが、導体部11の端部から遠ざかるにつれて次第に厚くなる被覆材12について示した。これにより、例えば、ガイド孔へのプローブ10の挿入において被覆材12がガイドプレートと接触してプローブ10の移動が阻害されることを抑制できる。
【0038】
更に、被覆材12の両方の端面について、導体部11の端部から遠ざかるにつれて厚さtを次第に厚くすることにより、ガイドプレートからプローブ10を抜去する際にも被覆材12がガイドプレートと接触してプローブ10の移動が阻害されることを抑制できる。
図19(a)~
図19(c)に、被覆材12の両方の端面の厚さtが、端部に近い部分から次第に厚くなる変形例を示す。
図19(a)に示す被覆材12は、側面視で両方の端面の形状が曲面である。
図19(b)に示す被覆材12は、側面視で台形状であり、中心軸方向に沿って端面が傾斜する。
図19(c)に示す被覆材12は、側面視で三角形状であり、中心軸方向に沿って端面が傾斜する。
【0039】
図19(a)~
図19(c)に示した変形例でも被覆材12の平面視の形状は任意である。例えば、被覆材12平面視の形状は、
図20(a)に示すように片側円形状あってもよいし、
図20(b)に示すように矩形状であってもよいし、
図20(c)に示すように円形状であってもよい。
【0040】
また、
図21(a)~
図21(b)に示すように、複数の被覆材12を中心軸方向に配列してもよい。
図21(a)は、側面視で半円状の複数の被覆材12を相互に分離して配列した構成例である。
図21(b)は、側面視で半円状の複数の被覆材12を連結して配列した構成例である。
【0041】
(その他の実施形態)
上記のように本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0042】
例えば、上記では断面が矩形状のプローブ10の3つの面や1つの面に被覆材12を配置した例を示したが、プローブ10の2つの面や4つの面に被覆材12を配置してもよい。プローブ10の少なくとも1つの面に被覆材12を配置することにより、プローブ10間のショートを抑制できる。
【0043】
また、上記ではプローブ10の中心軸方向に垂直な断面の形状が矩形状である場合について説明したが、プローブ10の断面が他の形状であってもよい。例えば、プローブ10の断面が円形状であったり、矩形状以外の多角形状であったりしてもよい。
【0044】
また、
図22Aに示すように、プローブ10の導体部11が、管形状のバレル11Aと、バレル11Aの開口端に挿入されたプランジャ11Bを有する構造であってもよい。被覆材12は、例えばバレル11Aの表面に配置する。プランジャ11Bは、バレル11Aの内部に挿入された挿入部11B2及び挿入部11B2に連結する先端部11B1を有する棒形状である。
図22Aに示すプローブ10では、例えば、一方のプランジャ11Bの先端部11B1を被検査体に接触させ、他方のプランジャ11Bの先端部11B1をランドに接触させてもよい。なお、
図22Aに示したプローブ10は、バレル11Aの両端の開口端にそれぞれプランジャ11Bを挿入する構造であるが、
図22Bに示すように、プローブ10が、バレル11Aの一方の開口端にのみプランジャ11Bを挿入した構造であってもよい。
図22Bに示すプローブ10では、例えば、プランジャ11Bの先端部11B1を被検査体に接触させ、バレル11Aのプランジャ11Bが挿入されていない側の端部をランドに接触させてもよい。
【0045】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態などを含むことはもちろんである。
【符号の説明】
【0046】
1…プローブカード
2…被検査体
10…プローブ
11…導体部
12…被覆材
20…プローブヘッド
30…配線基板
101…第1面
102…第2面
103…第1の側面
104…第2の側面
111…第1端部
112…第2端部
121…第1端面
122…第2端面