(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】処理システム、ロボットシステム、制御装置、処理方法、制御方法、プログラム、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G01N 29/265 20060101AFI20250401BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20250401BHJP
B25J 9/22 20060101ALI20250401BHJP
G01N 29/11 20060101ALI20250401BHJP
G01N 29/48 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
G01N29/265
B25J13/08 Z
B25J9/22 A
G01N29/11
G01N29/48
(21)【出願番号】P 2021118966
(22)【出願日】2021-07-19
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】千葉 康徳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏昌
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 真拡
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-220608(JP,A)
【文献】特開2020-187005(JP,A)
【文献】特開2009-147320(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0102429(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N29/00-G01N29/52
G01N21/84-G01N21/958
G01B17/00-G01B17/08
G01B11/00-G01B11/30
B25J 1/00-B25J21/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向と、前記第1方向と交差する第2方向と、に沿って配列された複数の検出素子を含む検出器を、所定位置に設定し、
接合体の溶接部に対して、超音波の送信及び反射波の検出を行う探査を、前記検出器に実行させ、
前記探査により得られた前記反射波の強度を示す強度データに基づいて、前記第1方向及び前記第2方向に沿う第1面における前記溶接部の中心位置を算出し、
前記中心位置と、前記第1面における前記検出器の位置と、の間の距離を減少させるように、前記第1面に沿って前記検出器を移動させる位置調整を実行
し、
前記位置調整を実行した後の前記探査によって得られた前記強度データを用いて、前記溶接部を検査する、
処理システムであって、
過去の複数の前記位置調整における前記検出器の移動距離を用いて、
第1参照
値を算出し、
前記
第1参照
値が第1閾値を超える場合、複数の前記移動距離の少なくとも一部を用いて前記所定位置を補正
して、前記位置調整を実行する、
処理システム。
【請求項2】
前記
第1参照
値は、前記複数の移動距離の平均値又は前記複数の移動距離に基づく予測値である、請求項1記載の処理システム。
【請求項3】
前記複数の移動距離から外れ値を除外し、残りの前記移動距離を用いて前記
第1参照
値を算出する、請求項1又は2に記載の処理システム。
【請求項4】
位置ずれが検出された前記接合体に対する前記位置調整の前記移動距離を前記複数の移動距離から除外し、残りの前記移動距離を用いて前記
第1参照
値を算出する、請求項1~3のいずれか1つに記載の処理システム。
【請求項5】
1つの前記接合体における複数の前記溶接部のそれぞれに対して、前記所定位置の設定、前記探査、及び前記位置調整を実行し、
前記1つの接合体の位置ずれが検出された場合に、前記複数の溶接部の少なくとも一部に対する前記所定位置を、位置ずれ量に応じて補正する、請求項1~4のいずれか1つに記載の処理システム。
【請求項6】
前記検出器を所定姿勢に設定し、
前記強度データに基づいて、前記溶接部に対する前記検出器の傾きを算出し、
前記傾きを減少させるように前記検出器を回転させる姿勢調整を実行
し、
前記位置調整及び前記姿勢調整を実行した後の前記探査によって得られた前記強度データを用いて、前記溶接部を検査する、
請求項1~5のいずれか1つに記載の処理システム。
【請求項7】
過去の複数の前記姿勢調整における前記検出器の回転角度を用いて、
第2参照
値を算出し、
前記
第2参照
値が第2閾値を超える場合、複数の前記回転角度の少なくとも一部を用いて前記所定姿勢を補正
して、前記姿勢調整を実行する、
請求項6記載の処理システム。
【請求項8】
前記強度データにおける強度の重心位置を前記中心位置として算出する、請求項1~
7のいずれか1つに記載の処理システム。
【請求項9】
前記検出器と、前記検出器が取り付けられたマニピュレータと、を含むロボットと、
請求項1~
8のいずれか1つに記載の処理システムと、
を備えたロボットシステム。
【請求項10】
所定位置で、接合体の溶接部に対して、超音波の送信及び反射波の検出を行う探査を検出器に実行させ、
前記検出器に含まれる複数の検出素子の二次元的な配列方向に沿う第1面において、前記探査の結果から算出される前記溶接部の中心位置と、前記検出器の位置と、の間の距離を減少させるように、前記検出器を移動させる位置調整を実行する、制御装置であって、
前記探査の前に、過去の複数の前記位置調整における前記検出器の移動距離を用いて、
第1参照
値を算出し、
前記
第1参照
値が第1閾値を超える場合、複数の前記移動距離の少なくとも一部を用いて前記所定位置を補正
して、前記位置調整を実行し、
前記溶接部は、前記位置調整を実行した後の前記探査の結果を用いて検査される、制御装置。
【請求項11】
前記探査では、前記反射波の強度を示す強度データが取得され、
前記強度データにおける強度の重心位置が、前記中心位置として算出される、請求項
10記載の制御装置。
【請求項12】
第1方向と、前記第1方向と交差する第2方向と、に沿って配列された複数の検出素子を含む検出器を、所定位置に設定し、
接合体の溶接部に対して、超音波の送信及び反射波の検出を行う探査を、前記検出器に実行させ、
前記探査により得られた前記反射波の強度を示す強度データに基づいて、前記第1方向及び前記第2方向に沿う第1面における前記溶接部の中心位置を算出し、
前記中心位置と、前記第1面における前記検出器の位置と、の間の距離を減少させるように、前記第1面に沿って前記検出器を移動させる位置調整を実行
して、前記位置調整を実行し、
前記位置調整を実行した後の前記探査によって得られた前記強度データを用いて、前記溶接部を検査する、
処理方法であって、
過去の複数の前記位置調整における前記検出器の移動距離を用いて、
第1参照
値を算出し、
前記
第1参照
値が第1閾値を超える場合、複数の前記移動距離の少なくとも一部を用いて前記所定位置を補正する、
処理方法。
【請求項13】
前記複数の移動距離から外れ値を除外し、残りの前記移動距離を用いて前記
第1参照
値を算出する、請求項
12記載の処理方法。
【請求項14】
前記検出器を所定姿勢に設定し、
前記強度データに基づいて、前記溶接部に対する前記検出器の傾きを算出し、
前記傾きを減少させるように前記検出器を回転させる姿勢調整を実行
し、
前記位置調整及び前記姿勢調整を実行した後の前記探査によって得られた前記強度データを用いて、前記溶接部を検査する、
請求項
12又は
13に記載の処理方法。
【請求項15】
過去の複数の前記姿勢調整における前記検出器の回転角度を用いて、
第2参照
値を算出し、
前記
第2参照
値が第2閾値を超える場合、複数の前記回転角度の少なくとも一部を用いて前記所定姿勢を補正
して、前記姿勢調整を実行し、
請求項
14記載の処理方法。
【請求項16】
前記強度データにおける強度の重心位置を前記中心位置として算出する、請求項
12~
15のいずれか1つに記載の処理方法。
【請求項17】
所定位置で、接合体の溶接部に対して、超音波の送信及び反射波の検出を行う探査を検出器に実行させ、
前記検出器に含まれる複数の検出素子の二次元的な配列方向に沿う第1面において、
前記探査の結果から算出される前記溶接部の中心位置と
、前記検出器の位置と
、の間の距離を減少させるように、前記検出器を移動させる位置調整を実行する、制御方法であって、
前記探査の前に、過去の複数の前記位置調整における前記検出器の移動距離を用いて、
第1参照
値を算出し、
前記
第1参照
値が第1閾値を超える場合、複数の前記移動距離の少なくとも一部を用いて前記所定位置を補正
して、前記位置調整を実行し、
前記溶接部は、前記位置調整を実行した後の前記探査の結果を用いて検査される、制御方法。
【請求項18】
請求項
12~
16のいずれか1つに記載の処理方法又は請求項
17記載の制御方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項19】
請求項
12~
16のいずれか1つに記載の処理方法又は請求項
17記載の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、処理システム、ロボットシステム、制御装置、処理方法、制御方法、プログラム、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
接合体を検査するロボットがある。このロボットについて、検査精度の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、検査精度を向上可能な、処理システム、ロボットシステム、制御装置、処理方法、制御方法、プログラム、及び記憶媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る処理システムは、第1方向と、前記第1方向と交差する第2方向と、に沿って配列された複数の検出素子を含む検出器を、所定位置に設定する。前記処理システムは、接合体の溶接部に対して、超音波の送信及び反射波の検出を行う探査を、前記検出器に実行させる。前記処理システムは、前記探査により得られた前記反射波の強度を示す強度データに基づいて、前記第1方向及び前記第2方向に沿う第1面における前記溶接部の中心位置を算出する。前記処理システムは、前記溶接部の中心位置と、前記第1面における前記検出器の位置と、の間の距離を減少させるように、前記第1面に沿って前記検出器を移動させる位置調整を実行する。前記処理システムは、過去の複数の前記位置調整における前記検出器の移動距離を用いて、参照距離を算出する。前記処理システムは、前記参照距離が第1閾値を超える場合、複数の前記移動距離の少なくとも一部を用いて前記所定位置を補正する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係るロボットシステムを示す模式図である。
【
図2】検出器及び接合体の構造を示す模式図である。
【
図3】実施形態に係る処理システムの動作を説明するための模式図である。
【
図4】探査により得られた強度データを例示する模式図である。
【
図5】実施形態のロボットシステムによる検査処理を示すフローチャートである。
【
図6】強度データを処理して得られた反射波の強度分布を示す模式図である。
【
図8】実施形態に係るロボットシステムによる補正処理を示すフローチャートである。
【
図10】実施形態に係るロボットシステムによる処理を示すフローチャートである。
【
図11】実施形態の第1変形例に係るロボットシステムによる検査処理を示すフローチャートである。
【
図14】実施形態の第1変形例に係るロボットシステムによる処理を示すフローチャートである。
【
図16】実施形態の第2変形例に係るロボットシステムによる処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
図1は、実施形態に係るロボットシステムを示す模式図である。
図1に示すように、実施形態に係るロボットシステム2は、処理システム1及びロボット20を含む。処理システム1は、制御装置10、操作端末11、及び処理装置12を含む。
【0009】
制御装置10は、ロボット20の動作を制御する。制御装置10は、いわゆるロボットコントローラである。制御装置10は、制御回路やサーボ制御部、電源装置などを含む。制御装置10は、予め記憶された動作プログラムや操作端末11によって設定された教示データなどに従って、各軸のサーボモータを制御することで、ロボット20の動作を制御する。
【0010】
操作端末11は、ロボット20を操作するための端末装置である。操作端末11は、いわゆるティーチングペンダントである。操作端末11は、制御装置10と接続され、ロボット20の動作プログラムの入力、設定の入力などを受け付ける。また、ユーザは、操作端末11を用いて、教示データの変更、修正、又は新規作成などを行える。教示データとは、ロボット20の動作をロボット20に教示するためのデータである。
【0011】
ロボット20は、マニピュレータ21と、マニピュレータ21に取り付けられた検出器22と、を含む。例えば、マニピュレータ21は、垂直多関節型である。検出器22は、エンドエフェクタとして、マニピュレータ21の先端に設けられる。マニピュレータ21は、水平多関節型又はパラレルリンク型であっても良い。マニピュレータ21は、垂直多関節型、水平多関節型、及びパラレルリンク型から選択される2種以上の組み合わせを含んでも良い。マニピュレータ21は、6自由度以上を有することが好ましい。
【0012】
検出器22は、対象に対して探査(プロービング)を実行する。探査では、対象に向けた超音波の送信と、その反射波の検出(受信)と、が実行される。検出器22は、探査によって、反射波の強度を示す強度データを取得する。検出器22は、強度データを処理装置12へ送信する。
【0013】
図1の例では、エンドエフェクタとして、吐出器25がさらに設けられている。吐出器25は、対象の表面にカプラント液を吐出する。
【0014】
探査の対象は、複数の部材が溶接によって接合された接合体である。複数の部材は、溶接部において接合されている。処理装置12は、強度データを処理し、溶接部に関するデータを取得する。例えば、処理装置12は、強度データを用いて溶接部に対する検査処理を実行する。ロボットシステム2は、同じ種類の複数の接合体50に対して、検査処理をそれぞれ実行する。
【0015】
図2は、検出器及び接合体の構造を示す模式図である。
図2の例では、検出器22による探査の対象は、接合体50である。接合体50は、金属板51(第1部材)及び金属板52(第2部材)を含む。金属板51と金属板52は、溶接部53において接合されている。すなわち、溶接部53には、金属板51と金属板52との間の境界面が存在しない。溶接部53には、溶融した金属が混ざり合って形成された凝固部54が存在する。溶接部53は、抵抗スポット溶接により形成される。
【0016】
検出器22は、
図2に示すように、検出素子22a、伝搬部22b、及び筐体22cを含む。
【0017】
検出素子22aは、X方向(第1方向)及びY方向(第2方向)に沿って、二次元的に配列されている。X方向とY方向は、互いに交差する。この例では、Y方向は、X方向に対して垂直である。例えば、検出素子22aは、トランスデューサであり、1MHz以上100MHz以下の周波数の超音波を発する。検出素子22aは、Z方向(第3方向)に沿って超音波を送信する。Z方向は、X-Y面(第1面)に対して垂直である。
【0018】
複数の検出素子22aは、筐体22cの先端に設けられ、伝搬部22bにより被覆されている。検出器22を接合体50に接触させた際、伝搬部22bは、検出素子22aと接合体50との間に位置する。検出素子22aが超音波を発すると、超音波は、伝搬部22bを伝搬して検出器22の外部に送信される。超音波が反射されると、その反射波は、伝搬部22bを伝搬して検出素子22aに到達する。
【0019】
検出素子22aは、反射波を検出する。検出素子22aによって検出された信号の強度は、反射波の強度に対応する。検出器22は、反射波強度を示す信号(強度データ)を取得し、処理装置12に送信する。
【0020】
伝搬部22bは、超音波が伝搬し易い樹脂材料などにより構成される。伝搬部22bにより、検出器22が溶接部53へ接触した際に、検出素子22aの変形、損傷などを抑制できる。伝搬部22bは、溶接部53への接触時の変形、損傷などを抑制するために、十分な硬さを有する。
【0021】
探査時には、検出器22と接合体50との間で超音波が伝搬し易くなるように、接合体50の表面にカプラント液55が塗布される。それぞれの検出素子22aは、カプラント液55が塗布された接合体50に向けて超音波USを送信する。
【0022】
例えば
図2に示すように、1つの検出素子22aが接合体50に向けて超音波USを送信する。超音波USの一部は、接合体50の上面又は下面などで反射される。複数の検出素子22aのそれぞれは、反射波RWを検出する。探査では、それぞれの検出素子22aが順次超音波USを送信し、それぞれの反射波RWを複数の検出素子22aで検出する。
【0023】
処理装置12は、強度データを用いて、種々の処理を実行する。例えば、処理装置12は、溶接部53を検査する。処理装置12は、接合体50における溶接部53の位置を特定しても良い。処理装置12は、溶接部53の中心位置を算出しても良い。処理装置12は、溶接部53の径を算出しても良い。
【0024】
図3(a)~
図3(c)は、実施形態に係る処理システムの動作を説明するための模式図である。
図3(a)に示すように、超音波USは、伝搬部22bの表面、金属板51の上面51a及び下面51b、溶接部53の上面53a及び下面53bで反射される。
【0025】
伝搬部22bの表面、上面51a、上面53a、下面51b、及び下面53bのZ方向における位置は、互いに異なる。すなわち、これらの面と検出素子22aとの間のZ方向におけるそれぞれの距離が、互いに異なる。検出素子22aがこれらの面からの反射波を検出すると、反射波強度のピークが検出される。超音波USを送信した後、各ピークが検出されるまでの時間を算出することで、どの面で超音波USが反射されているか判別できる。
【0026】
図3(b)及び
図3(c)のそれぞれは、X-Y面内の1点において、超音波USを送信した後の時間と、反射波RWの強度と、の関係を例示するグラフである。
図3(b)及び
図3(c)において、横軸は、検出された反射波RWの強度を表す。縦軸は、超音波USを送信した後の経過時間を表す。時間は、Z方向における位置に対応する。
図3(b)のグラフは、伝搬部22bの表面、上面51a、及び下面51bからの反射波RWの検出結果を例示している。すなわち、
図3(b)のグラフは、接合されていない点からの反射波RWの検出結果を例示している。
図3(c)のグラフは、伝搬部22bの表面、上面53a、及び下面53bからの反射波RWの検出結果を例示している。すなわち、
図3(c)のグラフは、接合されている点からの反射波RWの検出結果を例示している。
【0027】
図3(b)及び
図3(c)のグラフにおいて、ピークPe10は、伝搬部22b表面からの反射波RWに基づく。ピークPe11は、上面51aからの反射波RWに基づく。ピークPe12は、下面51bからの反射波RWに基づく。超音波USの送信からピークPe11及びピークPe12が検出されるまでの時間は、それぞれ、上面51a及び下面51bのZ方向における位置に対応する。
【0028】
同様に、ピークPe13は、上面53aからの反射波RWに基づく。ピークPe14は、下面53bからの反射波RWに基づく。超音波USの送信からピークPe13及びピークPe14が検出されるまでの時間は、それぞれ、上面53a及び下面53bのZ方向における位置に対応する。
【0029】
処理装置12は、X-Y面内の各点におけるZ方向の反射波強度分布において、ピークPe12が存在するか判定する。具体的には、処理装置12は、ピークPe12が検出されうるZ方向の範囲において、ピークを検出する。処理装置12は、そのピーク強度を、閾値と比較する。Z方向の範囲及び閾値は、予め設定される。
【0030】
ピーク強度が閾値を超えている場合、処理装置12は、そのピークがピークPe12であると判定する。ピークPe12の存在は、その点において下面51bが存在し、金属板51と金属板52が接合されていないことを示す。処理装置12は、ピークPe12が検出された点を、接合されていないと判定する。処理装置12は、ピークPe12が検出されない点を、接合されていると判定する。処理装置12は、X-Y面内の各点が接合されているか、順次判定する。処理装置12は、接合されていると判定された点の集合を、溶接部53として特定する。
【0031】
例えば、処理装置12は、検査処理において、溶接部53を特定し、溶接部53の径を算出する。処理装置12は、径を、予め設定された閾値と比較する。径が閾値を超えている場合、処理装置12は、その溶接部53を合格と判定する。径が閾値以下の場合、処理装置12は、その溶接部53を不合格と判定する。閾値と比較される径は、溶接部53の長径又は短径である。
【0032】
図3(b)及び
図3(c)の例では、反射波RWの強度は、絶対値で表されている。反射波の強度は、任意の態様で表現されて良い。例えば、検出素子22aから出力される反射波強度は、位相に応じて、正の値及び負の値を含む。正の値及び負の値を含む反射波強度に基づいて、各種処理が実行されても良い。正の値及び負の値を含む反射波強度を、絶対値に変換しても良い。各時刻における反射波強度から、反射波強度の平均値を減じても良い。又は、各時刻における反射波強度から、反射波強度の加重平均値、重み付き移動平均値などを減じても良い。特定の周期の周波数成分のみが抽出されるように、フィルタリングが実行されても良い。反射波強度にこれらの処理を加えた結果を用いた場合でも、本願で説明する各種処理を実行可能である。
【0033】
図4は、探査により得られた強度データを例示する模式図である。
探査では、上述したように、それぞれの検出素子22aが超音波を順次送信し、それぞれの反射波を複数の検出素子22aで検出する。
図2に示す具体例では、8×8の64個の検出素子22aが設けられている。この場合、64個の検出素子22aが超音波を順次送信する。1つの検出素子22aは、反射波を64回繰り返し検出する。1つの検出素子22aからは、Z方向の反射波強度分布の検出結果が、64回出力される。1つの検出素子22aから出力された64回の反射波の強度分布は、合算される。合算された強度分布が、1回の探査において、1つの検出素子22aが設けられた座標における強度分布となる。64個の検出素子22aのそれぞれによる検出結果について、同様の処理が実行される。各検出素子22aの検出結果に対して、X方向及びY方向における分解能を向上させるために、開口合成が実行されても良い。以上の処理により、X-Y面(第1面)内の各点において、Z方向における反射波の強度分布が生成される。すなわち、X方向、Y方向、及びZ方向の各点における反射波強度を含む3次元の強度データが得られる。
【0034】
図4は、その3次元の強度分布を模式的に示している。
図4の模式図では、3次元強度データの溶接部53近傍の様子が示されている。
図4において、輝度が高い部分は、超音波の反射波強度が相対的に大きい部分である。
図4の例では、溶接部53の上面及び下面からの反射波と、これら上面と下面との間で多重反射した反射波と、が現れている。
【0035】
検査処理において溶接部に関するデータを得る場合、制御装置10は、検出器22の先端が溶接部53に接触するように、マニピュレータ21を動作させる。探査が実行されるとき、検出器22は、所定位置及び所定姿勢に設定される。例えば、検出器22の先端が、所定位置及び所定姿勢に設定される。検出器22の位置及び姿勢と対応する別の部分の位置及び姿勢が、所定位置及び所定姿勢に設定されても良い。この場合も、検出器22が所定位置及び所定姿勢に設定されると見なすことができる。例えば、所定位置及び所定姿勢は、予め教示点として設定される。
【0036】
制御装置10は、検出器22が所定位置及び所定姿勢に設定されるように、動作プログラムに従ってマニピュレータ21を動作させる。具体的には、制御装置10は、マニピュレータ21の各関節に備えられたエンコーダーから、各アクチュエーターの回転角を示すデータを取得する。制御装置10は、記憶した所定位置及び所定姿勢と、取得したデータと、に基づいて制御信号を生成する。制御装置10は、生成した制御信号をロボット20に送信し、各アクチュエーターを動作させることによってマニピュレータ21を動かす。
【0037】
図5は、実施形態のロボットシステムによる検査処理を示すフローチャートである。
検査処理(ステップS20)において、制御装置10は、吐出器25から接合体50へ、カプラント液55を吐出させる(ステップS21)。制御装置10は、検出器22を所定位置及び所定姿勢に設定する(ステップS22)。検出器22が、接合体50に接触する。制御装置10は、溶接部53に対する探査を検出器22に実行させる(ステップS23)。検出器22は、探査によって得られた強度データを、処理装置12に送信する。処理装置12は、強度データを用いて、溶接部53のX-Y面における中心位置を算出する(ステップS24)。
【0038】
処理装置12は、溶接部53のX-Y面における中心位置と、検出器22のX-Y面における位置と、の間の距離を、予め設定された閾値と比較する(ステップS25)。X-Y面における探査の範囲は、検出器22のX-Y面における位置に対応する。例えば、検出器22のX-Y面における位置は、強度データのX-Y面における中心位置に対応する。処理装置12は、溶接部53のX-Y面における中心と強度データのX-Y面における中心との間の距離を、溶接部53のX-Y面における中心と検出器22のX-Y面における位置との間の距離として算出できる。距離が閾値を超えている場合、制御装置10は、位置調整を実行する(ステップS26)。位置調整において、制御装置10は、距離を減少させるように、X-Y面に沿って検出器22を移動させる。制御装置10は、位置調整における検出器22の移動距離を保存する(ステップS27)。ステップS27の後、再度ステップS23が実行される。
【0039】
制御装置10は、X-Y面に沿う検出器22の移動前に、検出器22を接合体50から遠ざけ、X-Y面に沿う検出器22の移動後に、検出器22を接合体50に接近させても良い。これにより、検出器22と接合体50との摩擦を回避できる。
【0040】
ステップS25において距離が閾値以下の場合、処理装置12は、直前の探査によって得られた強度データを用いて、溶接部53を検査する(ステップS28)。例えば、処理装置12は、溶接部53の径を予め設定された閾値と比較する。
【0041】
上述した検査処理における、溶接部53の中心位置の算出方法について説明する。中心位置は、以下のいずれかの方法を用いて算出できる。
【0042】
図6(a)~
図6(c)は、強度データを処理して得られた反射波の強度分布を示す模式図である。
処理装置12は、強度データを処理し、
図6(a)~
図6(c)に示すデータを取得する。
図6(a)は、溶接部53近傍のX-Y面における反射波の強度分布を示す。
図6(b)は、溶接部53近傍のY-Z面における反射波の強度分布を示す。
図6(c)は、溶接部53近傍のX-Z面における反射波の強度分布を示す。
【0043】
図6(a)のデータは、X-Y面の各点において、Z方向に強度を合算することで得られる。
図6(b)のデータは、Z方向の各点において、X方向に強度を合算することで得られる。
図6(c)のデータは、Z方向の各点において、Y方向に強度を合算することで得られる。
図6(a)~
図6(c)では、反射波の強度が、模式的に二値化されて示されている。白色の点は、その点における反射波の強度が相対的に高いことを示す。黒色の点は、その点における反射波の強度が相対的に低いことを示す。
【0044】
例えば、処理装置12は、
図6(a)に示すX-Y面における反射波の強度分布について、強度の重心位置を、溶接部53の中心位置として算出する。例えば
図6(a)に示すように、二値化された画像における輝度的重心位置が算出されても良い。又は、各画素が3段階以上(例えば0~255)のいずれかの画素値を有する画像について、輝度的重心位置が算出されても良い。
【0045】
又は、処理装置12は、Z方向において、溶接部53からの反射波成分を抽出し、重心位置を算出しても良い。例えば、
図6(b)及び
図6(c)に示すように、溶接部53からの反射波が検出される周期は、その他からの反射波が検出される周期と異なる。処理装置12は、予め設定された溶接部53の厚さを用いて、Z方向において強度分布をフィルタリングする。これにより、処理装置12は、溶接部53からの反射波成分を抽出する。処理装置12は、フィルタリング後のX-Y面における強度分布の重心位置を、溶接部53の中心位置として算出する。
【0046】
又は、処理装置12は、溶接部53を特定し、特定された溶接部53に基づいて中心位置を算出しても良い。
【0047】
図7は、特定された溶接部の一例を例示する模式図である。
図7は、探査が実行されたX-Y面の各点での、接合又は未接合の判定の結果を示す。接合又は未接合の判定が実行される領域のX方向及びY方向における範囲は、X方向及びY方向において強度データが得られた範囲に対応する。一例として、
図7に示す2次元データのX方向における範囲及びY方向における範囲は、
図4に示す3次元の強度データのX方向における範囲及びY方向における範囲にそれぞれ対応する。X方向及びY方向において、強度データが得られた範囲の一部が抽出され、抽出された領域に対して接合又は未接合の判定が実行されても良い。
図7では、強度データに基づいて接合されていると判定された点は、白色で表されている。接合されていないと判定された点は、黒色で表されている。接合されていると判定された点の集合が、溶接部53として特定される。処理装置12は、各点における接合の判定結果を用いて、
図7に示す2次元データを生成する。
【0048】
処理装置12は、特定された溶接部53のX-Y面における重心位置を溶接部53の中心位置として算出しても良い。溶接部53は、上述したように、X-Y面内の各点における接合又は未接合を判定することで、特定できる。処理装置12は、特定された溶接部53について、X-Y面において内接又は外接する円の中心を、溶接部53の中心位置として算出しても良い。
【0049】
複数の接合体50に対して
図5に示す検査処理が実行されると、位置調整における移動距離が複数保存される。制御装置10は、設定数以上の複数の移動距離が保存されると、複数の移動距離を用いて、所定位置を補正する。
【0050】
図8は、実施形態に係るロボットシステムによる補正処理を示すフローチャートである。
補正処理(ステップS10)において、制御装置10は、保存された過去の全ての移動距離から、n個の移動距離を抽出する(ステップS11)。nは、過去の全ての移動距離の数であっても良い。nは、予め設定されても良い。例えば、位置調整の実行された時間が新しいものから順番に、n個の移動距離が抽出される。制御装置10は、抽出された複数の移動距離を用いて、参照距離を算出する(ステップS12)。参照距離は、位置調整における移動距離の傾向を判定するための値である。制御装置10は、算出された参照距離を、予め設定された閾値(第1閾値)と比較する(ステップS13)。参照距離が閾値を超える場合、制御装置10は、複数の移動距離の少なくとも一部を用いて、所定位置を補正する(ステップS14)。
【0051】
例えば、制御装置10は、抽出した複数の移動距離から、X方向における移動距離の平均値と、Y方向における移動距離の平均値と、を算出する。制御装置10は、X方向における所定位置を、算出されたX方向における平均値だけシフトさせる。制御装置10は、Y方向における所定位置を、算出されたY方向における平均値だけシフトさせる。制御装置10は、複数の移動距離から予測値を算出し、所定位置を予測値だけシフトさせても良い。制御装置10は、複数の移動距離の一部から得られる平均値又は予測値を用いて、所定位置をシフトさせても良い。参照距離が閾値以下の場合、又は所定位置の補正後に、
図5に示す検査処理が実行される。
【0052】
抽出された複数の移動距離の平均値が、参照距離として用いられる。参照距離は、複数の移動距離に基づく予測値であっても良い。予測値は、近似式、カルマンフィルタ、又はモデル(人工知能)を用いて得られる。
【0053】
例えば、制御装置10は、検査処理の実行回数と複数の移動距離との関係を示す近似式を生成する。制御装置10は、その近似式を用いて、次の検査処理における移動距離の予測値を算出する。カルマンフィルタが用いられる場合、制御装置10は、過去に得られたデータに基づいて、検査処理の実行回数と複数の移動距離との関係を示す線形モデルを生成する。制御装置10は、新たな検査処理について新たな移動距離が得られると、その検査処理に対する参照距離(予測値)と、実際の移動距離と、を用いて、次の参照距離を算出する。モデルが用いられる場合、当該モデルは、過去の複数の移動距離の入力に応じて、参照距離を出力するように学習される。モデルは、ニューラルネットワークを含むことが好ましい。制御装置10は、モデルに、過去の規定数の移動距離をモデルに入力し、モデルから出力された参照距離を取得する。
【0054】
図9(a)及び
図9(b)は、移動距離及び参照距離を示す模式図である。
図9(a)及び
図9(b)において、横軸は、位置調整の実行回数Nを表す。右に進むほど、実行された時間が新しいことを示す。縦軸は、X方向における移動距離Dを表す。移動距離がゼロである点は、位置調整が実行されていないことを示す。丸のプロットは、位置調整における移動距離を示す。菱形のプロットは、参照距離を示す。
【0055】
図9(a)に示す例では、参照距離r1は、最新のi番目からi-7番目までの、8個の移動距離d
iからd
i-7を平均化して算出されている。参照距離r1は、閾値th1を超えている。このため、制御装置10は、移動距離d
iからd
i-7の少なくとも一部を用いて、X方向における所定位置を補正する。
【0056】
図9(b)に示す例では、実行回数Nと移動距離Dとの間の近似式AFが生成されている。この例では、近似式AFは、線形である。近似式AFは、非線形であっても良い。制御装置10は、近似式AFを用いて、i番目の位置調整における移動距離d
iを、参照距離r2として算出する。参照距離r2は、予め設定された閾値th1を超えている。このため、制御装置10は、複数の移動距離の少なくとも一部又は複数の移動距離から予測された参照距離r2を用いて、X方向における所定位置を補正する。
【0057】
実施形態の利点を説明する。
反射波の強度データを用いて溶接部53を検査する場合、検出器22のX-Y面における位置は、溶接部53のX-Y面における中心位置に近いことが好ましい。検出器22が溶接部53の中心に近いほど、溶接部53の全体が探査の範囲に含まれ易くなる。これにより、溶接部53の検査精度を向上できる。検出器22を溶接部53の中心に近づけるために、探査が実行されるたびに、位置調整を実行する方法が考えられる。しかし、この方法によれば、検査精度を向上できるものの、検査処理に要する時間が長くなる。
【0058】
例えば、検出器22の所定位置は、溶接部53の設計位置に合わせて設定される。設計位置は、予め設計された、溶接部53が形成される位置である。しかし、溶接装置の電極の摩耗、電極の交換、溶接装置に対する部材の位置ずれなどにより、溶接部53が設計位置からずれることがある。実施形態では、処理システム1は、過去の複数の位置調整における検出器22の移動距離を用いて、参照距離を算出する。そして、処理システム1は、参照距離が予め設定された閾値を超える場合に、複数の移動距離の少なくとも一部を用いて所定位置を補正する。これにより、次の検査処理において、所定位置に設定された検出器22と溶接部53の中心との間の距離を減少可能となる。すなわち、次の検査処理において、位置調整を省略可能となる。実施形態によれば、検査処理に要する時間を抑えつつ、検査精度を向上できる。
【0059】
また、複数の移動距離を用いて参照距離を算出することで、溶接部53の位置の変化の傾向を、所定位置に反映させることができる。例えば、移動距離のばらつきが大きい場合でも、ばらつきが参照距離へ与える影響を低減できる。ばらつきによって、所定位置が無用に補正されたり、所定位置が過度に補正されたりする可能性を低減でき、所定位置をより適切に補正できる。
【0060】
参照距離を算出する際に、抽出された複数の移動距離から、外れ値が除外されることが好ましい。外れ値を用いて参照距離が算出されると、参照距離が過度に大きくなる可能性がある。これにより、所定位置が無用に補正されたり、所定位置が過度に補正されたりする可能性がある。外れ値を除外して参照距離を算出することで、所定位置をより適切に補正できる。
【0061】
外れ値は、検定統計量を用いて判定できる。検定統計量は、グラブス検定に基づいて算出できる。グラブス検定では、検定統計量Gは、移動距離r、平均値x、及び分散σを用いて、G=(r-x)/σで算出される。平均値x及び分散σは、複数の移動距離から算出される。制御装置10は、検定統計量Gを算出する。制御装置10は、検定統計量Gが2.745を超える場合、その移動距離rを外れ値と判定する。外れ値の判定には、グラブス検定の他に、トンプソン検定が用いられても良い。
【0062】
1つの接合体50に複数の溶接部53が形成される場合は、各溶接部53に対する所定位置及び所定姿勢がそれぞれ設定される。具体的には、制御装置10は、複数の溶接部53の1つに関して補正処理を実行する場合、過去に実行された、別の接合体50における複数の溶接部53の当該1つに関する位置調整の結果を参照する。処理システム1は、複数の位置調整の結果を用いて、上述した補正処理を実行する。
【0063】
図10は、実施形態に係るロボットシステムによる処理を示すフローチャートである。
例えば、1つの接合体50には、y個の溶接部53が形成されている。制御装置10は、x番目の溶接部53に関する過去の位置調整の結果を参照する(ステップS2)。xの初期値は、1に設定される(ステップS1)。制御装置10は、参照した結果から、複数の移動量を抽出する(ステップS11)。以降は、上述した補正処理と同様に、ステップS12~S14が実行される。補正処理の後は、検査処理(ステップS20)が実行される。
【0064】
検査処理の後、制御装置10は、xがyと同じか判定する(ステップS3)。すなわち、y個の溶接部53の全てに対して、補正処理及び検査処理が行われたか判定される。xがy未満の場合、制御装置10は、xに1を加える(ステップS4)。その後、ステップS2が再度実行される。
【0065】
なお、y個の溶接部53のいずれかへの検査処理の前に、y個の溶接部53に関する補正処理が実行されても良い。例えば、検査対象の接合体50がロボット20の場所まで搬送される間に、y個の溶接部53に関する補正処理が実行されても良い。これにより、接合体50が搬送された後に、ロボット20の計算処理に要する時間を短縮できる。
【0066】
(第1変形例)
図11は、実施形態の第1変形例に係るロボットシステムによる検査処理を示すフローチャートである。
図11に示す検査処理(ステップS20a)は、
図5に示す検査処理と比べて、ステップS33~S37をさらに含む。ステップS25で距離が閾値以下と判定されると、処理装置12は、溶接部53に対する検出器22の傾きを算出する(ステップS34)。処理装置12は、傾きを予め設定された閾値と比較する(ステップS35)。傾きが閾値を超えている場合、制御装置10は、姿勢調整を実行する(ステップS36)。姿勢調整において、制御装置10は、傾きを減少させるように、検出器22を回転させる。回転中心は、検出器22の先端に設定される。制御装置10は、姿勢調整における検出器22の回転角度を保存する(ステップS37)。ステップS37の後、制御装置10は、検出器22に探査を実行させる(ステップS33)。その後、ステップS34が再度実行される。傾きが閾値以下の場合、処理装置12は、直前の探査によって得られた強度データを用いて、溶接部53を検査する(ステップS28)。
【0067】
上述した検査処理において、ステップS33~S37は、ステップS23~S27の前に実行されても良い。1回の探査の結果に基づいて、ステップS24~S27とステップS34~37が並行して実行されても良い。
【0068】
図12は、検出器を示す模式図である。
姿勢は、例えば
図12に示した、検出器22の方向D1に対応する。方向D1は、複数の検出素子22aの配列方向に対して垂直である。傾きは、検出器22の方向D1と、溶接部53の法線方向D2と、の間のX方向まわりの角度θx及びY方向まわりの角度θyによって表される。
【0069】
図12に示した姿勢を表す角度は、教示点の表現に用いられるロボット座標系における角度と異なっていても良い。制御装置10は、教示点を設定する際に、検出器22の姿勢を表す角度を、適宜ロボット座標系における角度に変換しても良い。
【0070】
図13(a)~
図13(c)は、検査において得られた画像の一例である。
傾きの算出方法について説明する。
図13(a)は、溶接部53近傍のX-Y面における反射波の強度分布を示す画像である。
図13(b)は、溶接部53近傍のY-Z面における反射波の強度分布を示す画像である。
図13(c)は、溶接部53近傍のX-Z面における反射波の強度分布を示す画像である。
図13(a)~
図13(c)の各画像において、輝度は、反射波の強度に対応する。すなわち、画素の色が明るいほど、その点における反射波強度が高いことを示している。
【0071】
角度θxは、
図13(b)に示したように、Y-Z面での検出結果に基づいて算出される。角度θyは、
図13(c)に示したように、X-Z面での検出結果に基づいて算出される。具体的には、処理装置12は、3次元の輝度勾配の平均を算出する。処理装置12は、X方向まわりの勾配の平均を角度θxとして用いる。処理装置12は、Y方向まわりの勾配の平均を角度θyとして用いる。
【0072】
図14は、実施形態の第1変形例に係るロボットシステムによる処理を示すフローチャートである。
図14に示す補正処理(ステップS10a)は、
図8に示す補正処理と比べて、ステップS15~S18をさらに含む。
【0073】
制御装置10は、保存された過去の全ての回転角度から、m個の回転角度を抽出する(ステップS15)。mは、過去の全ての移動距離の数であっても良い。mは、予め設定されても良い。mは、抽出される移動距離の数nと同じでも良い。例えば、姿勢調整の実行された時間が新しいものから順番に、m個の回転角度が抽出される。制御装置10は、抽出された複数の回転角度を用いて、参照角度を算出する(ステップS16)。参照角度は、姿勢調整における回転角度の傾向を判定するための値である。例えば、参照角度は、複数の回転角度の平均値である。参照角度は、複数の回転角度に基づく予測値であっても良い。予測値は、検査処理の実行回数と複数の回転角度との関係を示す近似式、カルマンフィルタ、又はモデル(人工知能)を用いて得られる。
【0074】
制御装置10は、算出された参照角度を、予め設定された閾値(第2閾値)と比較する(ステップS17)。参照角度が閾値を超える場合、制御装置10は、複数の回転角度の少なくとも一部を用いて、所定姿勢を補正する(ステップS18)。
【0075】
例えば、制御装置10は、抽出した複数の回転角度から、X方向まわりの回転角度の平均値と、Y方向まわりの回転角度の平均値と、を算出する。制御装置10は、X方向まわりの所定姿勢を、算出されたX方向まわりの平均値だけ回転させる。制御装置10は、Y方向まわりの所定姿勢を、算出されたY方向まわりの平均値だけ回転させる。制御装置10は、複数の回転角度から予測値を算出し、所定姿勢を予測値だけ回転させても良い。制御装置10は、複数の回転角度の一部から得られる平均値又は予測値を用いて、所定姿勢を回転させても良い。
【0076】
参照角度が閾値以下の場合、又は所定姿勢の補正後に、
図11に示す検査処理が実行される。
【0077】
検査精度をさらに向上させるためには、溶接部53に対する検出器22の傾きは小さいことが好ましい。傾きが小さいほど、溶接部53からの反射波が検出器22によって検出され易くなる。これにより、検査精度を向上できる。傾きを小さくするために、探査が実行されるたびに、姿勢調整を実行する方法が考えられる。しかし、この方法によれば、検査処理に要する時間が長くなる。
【0078】
第1変形例によれば、処理システム1は、過去の複数の姿勢調整における検出器22の回転角度を用いて、参照角度を算出する。処理システム1は、参照角度が予め設定された閾値を超える場合、複数の回転角度の少なくとも一部を用いて所定姿勢を補正する。複数の回転角度を用いることで、溶接部53の傾きの変化の傾向を、所定姿勢に反映させることができる。これにより、次の検査処理において、溶接部53に対する所定姿勢の傾きを減少させる効果が期待できる。すなわち、次の検査処理において、姿勢調整が必要となる可能性を低減できる。第1変形例によれば、検査処理に要する時間を抑えつつ、検査精度をさらに向上できる。
【0079】
また、複数の回転角度を用いて参照角度を算出することで、検出器22の傾きの変化の傾向を、所定姿勢に反映させることができる。例えば、回転角度のばらつきが大きい場合でも、ばらつきが参照角度へ与える影響を低減できる。ばらつきによって、所定姿勢が無用に補正されたり、所定姿勢が過度に補正されたりする可能性を低減でき、所定姿勢をより適切に補正できる。
【0080】
参照角度を算出する際に、抽出された複数の回転角度から、外れ値が除外されることが好ましい。外れ値を用いて参照角度が算出されると、参照角度が過度に大きくなる可能性がある。これにより、所定姿勢が無用に補正されたり、所定姿勢が過度に補正されたりする可能性がある。外れ値を除外して参照角度を算出することで、所定姿勢をより適切に補正できる。外れ値は、上述した通り、検定統計量を用いて判定できる。
【0081】
(第2変形例)
図15は、搬送される接合体を示す模式図である。
例えば
図15に示すように、搬送装置30が、ロボット20が設置された場所まで、接合体50を搬送する。接合体50は、複数の溶接部53-1~53-7を含む。ロボットシステム2は、複数の溶接部53-1~53-7のそれぞれを順次検査する。
【0082】
接合体50を停止させる位置は、予め設定される。搬送装置30が停止すると、ロボットシステム2は、接合体50に対する検査を実行する。検出器22が所定位置及び所定姿勢に設定されたときに溶接部53に接触するように、搬送装置30の位置決めの精度は、十分に高いことが好ましい。搬送装置30の位置決めの精度が十分に高く無い場合に、ロボットシステム2は、接合体50の位置ずれが存在するか判定するように構成されても良い。
【0083】
一例として、複数の溶接部53-1~53-7の2つ以上の検査処理において、位置調整が実行された際に、同様の方向に検出器22が移動される。この場合、制御装置10は、当該方向において接合体50の位置ずれが発生していると判定する。制御装置10は、複数の溶接部53-1~53-7の残りの検査処理において、それぞれの溶接部53に対する検出器22の所定位置を、位置ずれの方向に、位置ずれ量だけシフトさせても良い。位置ずれ量のシフトは、位置ずれが検出された接合体50に対してのみ実行される。
【0084】
例えば、制御装置10は、複数の溶接部53-1~53-7の前記2つ以上における位置調整の結果を参照する。制御装置10は、参照した2つ以上の移動距離を平均化する。制御装置10は、移動距離の平均を位置ずれ量として用いる。
【0085】
ロボットシステム2は、センサ31を含んでも良い。センサ31が、接合体50の位置ずれを検出しても良い。センサ31は、イメージセンサ、光電センサ、レーザセンサ、超音波センサ、及び赤外線センサの少なくともいずれかを含む。
【0086】
センサ31が位置ずれを検出した場合、処理装置12は、以下の処理を実行しても良い。1つの接合体50における1つ目の溶接部53に対する検査処理の完了後、制御装置10は、その検査処理における位置調整(ステップS26)の移動距離を参照する。制御装置10は、参照した移動距離を、位置ずれ量として用いる。制御装置10は、その1つの接合体50の検査処理についてのみ、他の溶接部53に対する検出器22の所定位置を、参照した移動距離だけシフトさせる。
【0087】
接合体50の位置ずれが検出された際に、位置ずれ量に応じて所定位置をシフトさせることで、その接合体50への検査処理に要する時間を短縮できる。
【0088】
図16は、実施形態の第2変形例に係るロボットシステムによる処理を示すフローチャートである。
図16に示すフローチャートは、
図10に示すフローチャートと比べて、ステップS5及びS6をさらに含む。ステップS5において、制御装置10は、位置ずれが存在するか判定する。位置ずれの存在は、複数の位置調整の結果に基づいて判定されても良いし、センサ31による検出結果に基づいて判定されても良い。位置ずれが存在する場合、ステップS6において、制御装置10は、他の溶接部53に対する検出器22の所定位置を一括で補正する。
【0089】
ステップS5及びS6が実行されるタイミングは、適宜変更可能である。例えば、ステップS5及びS6は、補正処理中又は検査処理中に実行されても良い。
【0090】
位置ずれが検出された場合、位置調整における移動距離は、位置ずれが存在したことを示すデータと紐付けられて保存されることが好ましい。制御装置10は、その後の補正処理において参照距離を算出する際に、抽出した複数の移動距離から、位置ずれに係る移動距離を除外する。位置ずれした接合体50に対する補正処理では、移動距離が通常に比べて大きくなる。位置ずれに係る移動距離を用いて参照距離が算出されると、参照距離が閾値を超え易くなる。所定位置が無用に補正される可能性がある。また、所定位置が過度に補正される可能性がある。位置ずれに係る移動距離を除外することで、所定位置をより適切に補正できる。
【0091】
図17は、別の検出器の構造を示す模式図である。
以上では、探査の実行時にカプラント液55を用いる例を説明した。溶接部53の形状に応じて変形可能な伝搬部材が検出器に設けられていれば、カプラント液55は省略可能である。
【0092】
図17に示す検出器23は、第1伝搬部材22b1及び第2伝搬部材22b2を含む。第1伝搬部材22b1は、検出器23の筐体22cに取り付けられる。第1伝搬部材22b1は、超音波が伝搬可能である。例えば、第1伝搬部材22b1は、複数の検出素子22aに接触する。又は、第1伝搬部材22b1と複数の検出素子22aとの間に、別の超音波が伝搬可能な部材が設けられても良い。
【0093】
第2伝搬部材22b2は、第1伝搬部材22b1に取り付けられる。第2伝搬部材22b2は、第1伝搬部材22b1に接着されても良いし、図示しない固定具によって第1伝搬部材22b1に対して固定されても良い。第1伝搬部材22b1は、複数の検出素子22aと第2伝搬部材22b2との間に位置する。第2伝搬部材22b2は、超音波が伝搬可能である。第1伝搬部材22b1を伝搬した超音波は、第2伝搬部材22b2を伝搬し、検出器23の外部に送信される。
【0094】
第1伝搬部材22b1は、固体である。第1伝搬部材22b1は、検出器22の動作時にも実質的な変改が生じないように、十分な硬さを有する。第2伝搬部材22b2は、ゲル状であり、液体では無い。第2伝搬部材22b2は、第1伝搬部材22b1よりも軟らかい。すなわち、第2伝搬部材22b2の硬さは、第1伝搬部材22b1の硬さよりも小さい。このため、第2伝搬部材22b2は、第1伝搬部材22b1に比べて、容易に変形する。第1伝搬部材22b1は、探査時に、検査の対象の表面形状に応じて変形できるように、十分な軟らかさを有する。
【0095】
第1伝搬部材22b1及び第2伝搬部材22b2は、樹脂を含む。具体的な一例として、第1伝搬部材22b1は、アクリルを含む。第2伝搬部材22b2は、セグメント化ポリウレタンを含む。接合に用いられる一般的な鋼板の音響インピーダンスは、4.5×107(Pa・s/m)程度である。検出器22と接合体50との間で超音波が十分に伝搬するように、第1伝搬部材22b1及び第2伝搬部材22b2のそれぞれの音響インピーダンスは、1.0×105(Pa・s/m)よりも大きく、1.0×108(Pa・s/m)よりも小さいことが好ましい。音響インピーダンスは、JIS A1405-1(ISO 10534-1)に従って測定できる。
【0096】
図18は、ハードウェア構成を示す模式図である。
制御装置10、操作端末11、及び処理装置12は、例えば
図18に示すコンピュータ90の構成をそれぞれ含む。コンピュータ90は、CPU91、ROM92、RAM93、記憶装置94、入力インタフェース95、出力インタフェース96、及び通信インタフェース97を含む。
【0097】
ROM92は、コンピュータ90の動作を制御するプログラムを格納している。ROM92には、上述した各処理をコンピュータ90に実現させるために必要なプログラムが格納されている。RAM93は、ROM92に格納されたプログラムが展開される記憶領域として機能する。
【0098】
CPU91は、処理回路を含む。CPU91は、RAM93をワークメモリとして、ROM92又は記憶装置94の少なくともいずれかに記憶されたプログラムを実行する。プログラムの実行中、CPU91は、システムバス98を介して各構成を制御し、種々の処理を実行する。
【0099】
記憶装置94は、プログラムの実行に必要なデータや、プログラムの実行によって得られたデータを記憶する。
【0100】
入力インタフェース(I/F)95は、コンピュータ90と入力装置95aとを接続する。入力I/F95は、例えば、USB等のシリアルバスインタフェースである。CPU91は、入力I/F95を介して、入力装置95aから各種データを読み込むことができる。
【0101】
出力インタフェース(I/F)96は、コンピュータ90と出力装置96aとを接続する。出力I/F96は、例えば、Digital Visual Interface(DVI)やHigh-Definition Multimedia Interface(HDMI(登録商標))等の映像出力インタフェースである。CPU91は、出力I/F96を介して、出力装置96aにデータを送信し、出力装置96aに画像を表示させることができる。
【0102】
通信インタフェース(I/F)97は、コンピュータ90外部のサーバ97aと、コンピュータ90と、を接続する。通信I/F97は、例えば、LANカード等のネットワークカードである。CPU91は、通信I/F97を介して、サーバ97aから各種データを読み込むことができる。
【0103】
記憶装置94は、Hard Disk Drive(HDD)及びSolid State Drive(SSD)から選択される1つ以上を含む。入力装置95aは、マウス、キーボード、マイク(音声入力)、及びタッチパッドから選択される1つ以上を含む。出力装置96aは、モニタ及びプロジェクタから選択される1つ以上を含む。タッチパネルのように、入力装置95aと出力装置96aの両方の機能を備えた機器が用いられても良い。
【0104】
制御装置10及び処理装置12のそれぞれの機能は、3台以上のコンピュータの協働により実現されても良い。制御装置10及び処理装置12のそれぞれの機能が、1台のコンピュータによって実現されても良い。上述した各種処理の主体は、制御装置10及び処理装置12の間で、適宜変更可能である。
【0105】
上記の種々のデータの処理は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク及びハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、CD-R、CD-RW、DVD-ROM、DVD±R、DVD±RWなど)、半導体メモリ、又は、他の非一時的なコンピュータで読取可能な記録媒体(non-transitory computer-readable storage medium)に記録されても良い。
【0106】
例えば、記録媒体に記録された情報は、コンピュータ(または組み込みシステム)により読み出されることが可能である。記録媒体において、記録形式(記憶形式)は任意である。例えば、コンピュータは、記録媒体からプログラムを読み出し、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させる。コンピュータにおいて、プログラムの取得(または読み出し)は、ネットワークを通じて行われても良い。
【0107】
以上で説明した、処理システム、ロボットシステム、制御装置、処理方法、又は制御方法によれば、検査処理に要する時間を抑えつつ、検査精度を向上できる。同様に、コンピュータに、処理方法又は制御方法を実行させるプログラムを用いることで、検査処理に要する時間を抑えつつ、検査精度を向上できる。
【0108】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0109】
1:処理システム、 2:ロボットシステム、 10:制御装置、 11:操作端末、 12:処理装置、 20:ロボット、 21:マニピュレータ、 22:検出器、 22a:検出素子、 22b:伝搬部、 22b1:第1伝搬部材、 22b2:第2伝搬部材、 22c:筐体、 23:検出器、 25:吐出器、 30:搬送装置、 31:センサ、 50:接合体、 51:金属板、 51a:上面、 51b:下面、 52:金属板、 53,53-1~53-7:溶接部、 53a:上面、 53b:下面、 54:凝固部、 55:カプラント液、 90:コンピュータ、 91:CPU、 92:ROM、 93:RAM、 94:記憶装置、 95:入力インタフェース、 95a:入力装置、 96:出力インタフェース、 96a:出力装置、 97:通信インタフェース、 97a:サーバ、 98:システムバス、 AF:近似式、 D:移動距離、 N:実行回数、 Pe10~Pe14:ピーク、 RW:反射波、 US:超音波、 r1,r2:参照距離、 th1:閾値、 θx,θy:角度